説明

マットレス

【課題】マットレスの吸湿性、放湿性及び透湿性を高めるとともに、良い姿勢を保てる支持性、さらには身体へソフトな感触を与えるクッション性を高めることができるマットレスを提供することを課題とする。
【解決手段】繊維で構成された板状の芯材部2と、繊維で構成された複数の板状のクッション層31〜33が積層された表層部3と、芯材部2とこの芯材部2の上に積層された表層部3とを覆う外カバー4と、を有するマットレス1であって、芯材部2は、繊維が板幅方向に並んで形成されているとともに、各クッション層31〜33よりも高い密度で形成されており、各クッション層は、繊維が板厚方向に並んで形成されているとともに、一定の密度で形成されており、積層された複数のクッション層は、芯材部2から離間するにしたがって密度が低くなるように形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
寝具として使用するマットレスは、快適な眠りを導くために、良い姿勢が保てる支持性、身体との接触面にソフトな感触を与えるクッション性、睡眠中の体温の変化に対応するための保温性、さらには、適度な湿度を保つ透湿性、吸湿性及び放湿性など非常に多くの性能が求められている。
【0003】
図8は従来のマットレスを示す断面図である。図8に示すマットレス100は、芯材部101と、芯材部101の周囲を覆う表層部102と、表層部102の周囲を覆う外カバー103と、を有している。芯材部101は、鋼線のスプリングを複数備えているもの、ウレタンフォーム、ラテックス等を層状に形成したもの、さらには繊維を固綿状に加工したもの等で形成されているが、ここでは、ポリエステル(合成繊維)を高い密度で層状に加工したものを用いている。芯材部101の繊維は、板幅方向に並んで形成されている。
【0004】
表層部102は、芯材部101の周囲を包むように形成されており、下層部102a、上層部102b、一対の側層部102c,102dを備えている。側層部102c,102dは、芯材部101の側部101a,101bをそれぞれ覆う部位である。表層部102は、ポリエステル(合成繊維)を芯材部101よりも低い密度で層状に加工して形成されている。また、表層部102の繊維は、板幅方向に並んで形成されている。このように、マットレスの各層の繊維を板幅方向に形成したものは、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
マットレス100を形成する際には、平坦な層状の表層部102を形成した後、芯材部101の周囲を表層部102で包むようにして形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−290578号公報(図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8の矢印は人体Jから発生する熱や汗等に起因する湿気の流れを示している。この矢印に示すように、上層部102bの繊維は左右方向に並んでいるため、上層部102bに流入した湿気は、繊維の方向に沿って左右方向には進みやすいが、下方向には進みにくい。これにより、上層部102b内に湿気が篭りやすくなるため、上層部102b内の湿度が上昇する。特に、上層部102bは、人体Jに近い位置に形成されているため、人体Jの熱によって相乗的に湿度が上昇する。これにより、蒸れ感、ベタツキ感が生じやすくなる。
【0008】
また、湿気が芯材部101に流入した場合、湿気は芯材部101の繊維の方向に沿って左右方向には進みやすいが、下方向には進みにくい。また、芯材部101の側部101a,101bは、側層部102c,102dで覆われるとともに、側層部102c,102dの繊維の方向が上下方向に並んでいる。これにより、芯材部101内に湿気が篭りやすくなるため、芯材部101さらには上層部102bの湿度が上昇する。これにより、より蒸れ感、ベタツキ感が生じやすくなる。
【0009】
本発明はこのような観点から創案されたものであり、マットレスの吸湿性、放湿性及び透湿性を高めるとともに、良い姿勢を保てる支持性、さらには身体へソフトな感触を与えるクッション性を高めることができるマットレスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明は、繊維で構成された板状の芯材部と、繊維で構成された複数の板状のクッション層が積層された表層部と、前記芯材部とこの芯材部の上に積層された前記表層部とを覆う外カバーと、を有するマットレスであって、前記芯材部は、前記繊維が板幅方向に並んで形成されているとともに、前記各クッション層よりも高い密度で形成されており、前記各クッション層は、前記繊維が板厚方向に並んで形成されているとともに、一定の密度で形成されており、積層された複数のクッション層は、前記芯材部から離間するにしたがって密度が低くなるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、人体から発生する熱や汗等に起因する湿気は、クッション層の板厚方向の繊維に沿って、芯材部方向、つまり、人体から離間する方向に流動する。また、芯材部内に流入した湿気は、芯材部の板幅方向の繊維に沿って流動し、芯材部の側部から外部に放出される。これにより、マットレスの吸湿性、放湿性及び透湿性が高まるため、人体に与える蒸れ感やベタツキ感を抑制することができる。
【0012】
また、積層された複数のクッション層が芯材から離間するにつれて低密度に形成されているため、人体側の層を柔らかくすることができる。これにより、クッション性を高めることができる。また、複数のクッション層が芯材部に近接するにつれて高密度に形成されているため、支持性を高めることができる。
【0013】
また、前記表層部と前記外カバーとの間に吸放湿層を有し、前記吸放湿層は、麻又は羊毛の繊維で形成されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、吸湿性又は放湿性の高い材料で吸放湿層を構成することにより、人体に与える蒸れ感やベタツキ感をより抑制することができる。
【0015】
また、前記芯材部は、芯材主部と、前記芯材主部よりも高い密度で形成された芯材補強部と、を備えていることが好ましい。また、前記クッション層は、クッション主部と、前記クッション主部よりも高い密度で形成されたクッション補強部と、を備えていることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、芯材部やクッション層のうち、例えば、大きな荷重が作用する部位や荷重が多く作用する部位の繊維を高密度にすることで、その部位を補強することができる。これにより、沈み込みや経年劣化によるヘタレを防止することができる。
【0017】
また、前記クッション層は、前記芯材部の上に積層された上層部と、前記上層部に連続し前記芯材部の両側部を覆う側層部とを有し、前記側層部の繊維は、前記芯材部の板幅方向と平行に並んで形成されていることが好ましい。
【0018】
図8で示したように、従来のマットレスにおいて芯材部の側部に側層部がある場合、湿気が外部に放出されにくいという問題があった。しかし、かかる構成によれば、側層部の繊維が芯材部の板幅方向と平行になっているため、側層部の繊維に沿って湿気が流動し、湿気が外部に放出されやすくなる。これにより、放湿性及び透湿性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるマットレスによれば、マットレスの吸湿性、放湿性及び透湿性を高めるとともに、良い姿勢を保てる支持性、さらには身体へソフトな感触を与えるクッション性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るマットレスを示す一部破断斜視図である。
【図2】図1のI−I線断面図である。
【図3】本実施形態に係るマットレスに人が寝た状態を示す断面図である。
【図4】マットレスの第一変形例を示す分解斜視図である。
【図5】マットレスの第二変形例を示す断面図である。
【図6】実施例に係る滴下試験を示す断面図である。
【図7】実施例に係る吸上げ試験を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図8】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。本実施形態の説明における上下前後左右は図1の矢印に従う。
マットレス1は、図1に示すように、ベッドの上に敷く厚手の敷物であって、略直方体を呈する。マットレス1は、マットレス1の下部に設けられる芯材部2と、芯材部2の上に配置される表層部3と、芯材部2及び表層部3を覆う外カバー4と、を主に備えている。
【0022】
芯材部2は、図1及び図2に示すように、板状を呈しマットレス1の下部に配設される。芯材部2は、人体を支持する部位であって、いわゆる底付き感を低減することができる。芯材部2は、天然繊維又は合成繊維等を層状に加工して形成されている。芯材部2の材料は、繊維であれば特に制限されないが、本実施形態ではポリエステルを用いている。
【0023】
芯材部2の繊維は、板幅方向(左右方向)に並んでいる。これにより、芯材部2に流入した湿気は、繊維に沿って左右方向に流動しやすくなっている。本実施形態では、芯材部2内の繊維の密度は均一になっている。本実施形態では、芯材部2の厚みを約50mm、幅を約900mm、長さを約1900mmに形成しているが、芯材部2の寸法はマットレス1の設計にしたがって適宜設定すればよい。
【0024】
表層部3は、図1及び図2に示すように、板状を呈し芯材部2の上に積層される。表層部3は、人体側に位置し主として人体にソフトな感触を与える部位である。表層部3は、芯材部2側から第一クッション層31と、第二クッション層32と、第三クッション層33とを積層して形成されている。
【0025】
本実施形態に係る各クッション層31〜33は、天然繊維又は合成繊維を薄板状に加工して形成される。各クッション層31〜33の材料は、繊維であれば特に制限されないが、本実施形態ではポリエステルを用いている。各クッション層31〜33は、本実施形態では同等の厚み及び大きさで形成されている。各クッション層31〜33は、芯材部2から離間するにつれて薄くなるように形成してもよい。
【0026】
図2に示すように、各クッション層31〜33の繊維は、板厚方向(上下方向)に並んでいる。これにより、表層部3に流入した湿気は、繊維に沿って上下方向に流動しやすくなっている。また、各クッション層31〜33の各層内の繊維の密度は、均一になっている。
【0027】
積層された第一クッション層31、第二クッション層32及び第三クッション層33の密度は、芯材部2から離間するにしたがって、小さくなるように形成されている。つまり、第一クッション層31、第二クッション層32及び第三クッション層33のうち、第一クッション層31の密度が最も大きく、第三クッション層33の密度が最も小さい。また、芯材部2の密度は、第一クッション層31の密度よりも大きくなるように形成されている。よって、各層の密度の関係は、芯材部2>第一クッション層31>第二クッション層32>第三クッション層33となっている。
【0028】
各クッション層31〜33は、本実施形態では、各クッション層の厚みを約15〜20mm、幅を約900mm、長さを約1900mmに形成しているが、各クッション層の寸法はマットレス1の設計にしたがって、適宜設定すればよい。また、各クッション層31〜33は、本実施形態では、同じ種類の合成繊維を用いているが、異なる種類の材料を用いてもよい。
【0029】
外カバー4は、図1及び図2に示すように、芯材部2及び表層部3を包み込む部材である。外カバー4は、本実施形態では、綿製の布地を用いている。外カバー4の材料は特に制限されるものではなく、例えばキルト等の吸放湿性の高い材料を用いてもよい。
【0030】
また、図1に示すように、マットレス1の側面には、ファスナー5が形成されている。ファスナー5は、マットレス1の側面1a、側面1b及び側面1cに亘って高さ方向の中央に形成されている。つまり、マットレス1の側面1dにはファスナー5が設けられていないため、ファスナー5を全開状態にすると側面1dを支点にして、外カバー4が開くように形成されている。なお、マットレス1の側面全周に亘って、ファスナー5が設けられていてもよい。
【0031】
マットレス1の製造方法は、芯材部2及び各クッション層31〜33をそれぞれ形成した後、各層を積層させる。そして、外カバー4で芯材部2及び表層部3を覆って形成する。
【0032】
図3に示すように、マットレス1によれば、人体Jから発生する熱や汗等に起因する湿気は、各クッション層31〜33の板厚方向(上下方向)の繊維に沿って流動するため、人体Jから離間する方向、つまり、下方へ移動しやすくなる。芯材部2に流入した湿気は、芯材部2の板幅方向(左右方向)の繊維に沿って流動し、芯材部2の側部から外部に放出される。これにより、マットレス1の吸湿性、放湿性及び透湿性が高まるため、人体に与える蒸れ感やベタツキ感を抑制することができる。
【0033】
また、図8に示すように、従来のマットレス100であると、湿気が人体Jに近い位置で流動するため、表層部102内の湿気と人体Jから発生する熱及び湿気とで相乗的に湿度が上昇してしまうという問題があった。しかし、図3に示す本実施形態によれば、湿気を下方に流動させて、人体Jから離れた位置で流動させることができるため、表層部3での湿度の上昇を抑制できる。
【0034】
また、各クッション層31〜33が芯材部2から離間するにつれて低密度に形成されているため、人体側の層を柔らかくすることができる。これにより、クッション性を高めることができる。
また、各クッション層31〜33が芯材部2に近接するにつれて高密度に形成されているため、支持性を高めることができる。
【0035】
また、芯材部2に近接するにつれて各クッション層31〜33が高密度になっているため、第一クッション層31では第三クッション層33に比べて湿気(水)の通り道が多くなる。第一クッション層31の方が、単位体積当りの繊維が多いため、水がつたう繊維が多くなり、下方に向けての水分の移動が促進される。つまり、繊維の密度が高くなるに連れて、毛細管現象が促進されるため、マットレス1の吸湿性、放湿性及び透湿性が高まり、人体に与える蒸れ感やベタツキ感を抑制することができる。
【0036】
また、表層部3を複数のクッション層で形成したため、クッション性を高めることができる。これにより、長期間使用することによる芯材部2のヘタリや弾性の低下を小さくすることができる。また、表層部3に劣化が生じた場合は、表層部3のみを交換すればよいため、維持コストを低減することができるとともにエコロジカルである。
【0037】
<第一変形例>
次に、本発明の第一変形例について説明する。図4は、本発明の第一変形例を示した分解斜視図である。第一変形例に係る芯材部2A及び表層部3Aには補強部が形成されている点で前記した実施形態と相違する。なお、芯材部2A及び表層部3Aを外カバー(図示省略)の中に収納する点については、前記した実施形態と同等である。
【0038】
図4に示すように、第一変形例に係る芯材部2Aは、芯材主部51と、芯材補強部52(52a,52b)を備えている。芯材主部51は、繊維の密度が前記した実施形態と同等に形成された部位である。一方、芯材補強部52は、繊維の密度が芯材主部51よりも高く形成された部位である。芯材補強部52の位置は特に制限されないが、例えば、図4に示すように芯材部2Aの周縁部や臀部が位置する部位に設定することが好ましい。芯材部2Aの繊維は板厚方向に並んでいる。
【0039】
第一変形例に係る表層部3Aは、第一クッション層31A、第二クッション層32A及び第三クッション層33Aを有する。表層部3Aの繊維は板厚方向に並んでいる。第一クッション層31A、第二クッション層32A及び第三クッション層33Aは、クッション主部61と、クッション補強部62(62a,62b)をそれぞれ備えている。クッション主部61は、繊維の密度が前記した実施形態と同等に形成された部位である。一方、クッション補強部62は、繊維の密度がクッション主部61よりも高く形成された部位である。クッション補強部62の位置は特に制限されないが、例えば、図4に示すように、表層部3の周縁部や臀部が位置する部位に設定することが好ましい。
【0040】
通常、マットレス1は、沈み込みや経年劣化によるヘタレが発生するが、負荷が作用する回数が多い部位や、大きな荷重が作用する部位については、その沈み込み等が大きくなる。しかし、本実施形態のように、沈み込み等が大きい部位については繊維の密度を高めることで、補強することができる。これにより、沈み込みや経年劣化によるヘタレを防止することができる。第一変形例では、補強する部位をマットレス1の周縁と臀部周りとしたが、補強する部位は利用者の体系や要望に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
また、第一変形例では全部の層の密度を高めることで補強したが、これに限定されるものではなく、例えば、いずれか単一の層の一部を補強するだけでもよい。また、第一変形例では各層の密度を高めることで補強したが、例えば、各層の間にネットを介設したり、各層を構成する繊維の外径(太さ)を大きくしたりして補強してもよい。
【0042】
<第二変形例>
次に、本発明の第二変形例について説明する。図5は、本発明の第二変形例を示した断面図である。第二変形例に係るマットレス1Bは、芯材部2の周囲を囲むように表層部3Bが形成されている点及び吸放湿層73を備えている点で実施形態と相違する。なお、芯材部2及び外カバー4は実施形態と同等であるため説明を省略する。
【0043】
表層部3Bは、芯材部2の周囲に形成された第一クッション層71と、第一クッション層71の周囲に形成された第二クッション層72と、を有する。第一クッション層71は、下層部71a、上層部71b、左層部71c、右層部71dを備えており、断面視矩形の中空部を備えた筒状に形成されている。左層部71cは、芯材部2の側部2aを覆う部位である。右層部71dは、芯材部2の側部2bを覆う部位である。第一クッション層71の板厚は、芯材部2の三分の一程度になっている。第一クッション層71の繊維は、板厚方向に並んでいる。
【0044】
第二クッション層72は、下層部72a、上層部72b、左層部72c、右層部72dを備えており、断面視矩形の中空部を備えた筒状に形成されている。左層部72cは、第一クッション層71の左層部71cと重なっている。右層部72dは、第一クッション層71の右層部71dと重なっている。第二クッション層72は、第一クッション層71と略同等の厚みになっている。第二クッション層72の繊維は、板厚方向に並んでいる。
【0045】
吸放湿層73は、表層部3Bと外カバー4との間に形成され、表層部3Bの外側を包むように形成されている。吸放湿層73は、本実施形態では、羊毛又は麻のニードルパンチで構成している。例えば、ポリエステルは吸湿性に乏しいが、吸放湿層73に羊毛や麻を用いることで、保湿した水分が人体へ戻るのを抑制したり、マットレス1Bの最下面での水分の結露等を抑制したりしてカビの発生を予防できる。吸放湿層73の材料は、羊毛又は麻に限定されるものではなく、吸湿性及び放湿性の高い材料を用いることが好ましい。
【0046】
マットレス1Bを形成する際には、第一クッション層71及び第二クッション層72をそれぞれ繊維が板厚方向に並ぶように層状に形成した後、芯材部2の周囲を包むようにして形成される。さらに、表層部3Bの周囲を吸放湿層73で包むようにして形成される。左層部71c及び左層部72cの繊維の方向は、芯材部2の繊維の方向と略平行となる。また、右層部71d及び右層部72dの繊維の方向も、芯材部2の繊維の方向と略平行となる。
【0047】
第二変形例では、吸放湿層73を有するため、人体Jから発生する熱や汗等に起因する湿気は、吸放湿層73に一旦吸湿され、表層部3B側に向けて放湿される。また、湿気は、第一クッション層71の上層部71b及び第二クッション層72の上層部72bの板厚方向(上下方向)に並んだ繊維に沿って流動するため、人体Jから離間する方向、つまり、下方へ流動しやすくなる。芯材部2に流入した湿気は、芯材部2の板幅方向の繊維に沿って流動し、芯材部2の側部2aから第一クッション層71の左層部71cへ流入するとともに、芯材部2の側部2bから第一クッション層71の右層部71dへ流入する。
【0048】
第一クッション層71の左層部71c及び第二クッション層72の左層部72cに流入した湿気は、芯材部2の繊維の方向と平行に並んだ繊維に沿って流動し、外部に放出される。また、第一クッション層71の右層部71d及び第二クッション層72の右層部72dに流入した湿気は、芯材部2の繊維の方向と平行に並んだ繊維に沿って流動し、外部に放出される。つまり、芯材部2、左層部71c,72c及び右層部71d,72dの繊維は芯材部2の板幅方向(左右方向)と平行に形成されているため、図8に示す従来のマットレスに比べて湿気が外部にスムーズに放出される。
【0049】
また、芯材部2から下方に流動した湿気は、第一クッション層71の下層部71a及び第二クッション層72の下層部72aの板厚方向(上下方向)に並んだ繊維に沿って流動し、吸放湿層73に一旦吸湿され下方から外部に放出される。
【0050】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では表層部3を三層構造としたが、二層以上であれば何層であってもよい。また、本発明を座布団やイスのクッション等に採用してもよい。
【0051】
また、図3に示すように前記した実施形態において、表層部3と外カバー4との間に吸放湿層を介設してもよし、芯材部2と外カバー4との間に吸放湿層を介設してもよい。これにより、マットレス1の吸湿性及び放湿性をより高めることができる。特に、芯材部2の下端は結露が発生しやすくカビの発生の原因になるが、芯材部2と外カバー4との間に吸放湿層を介設することで芯材部2の下端における吸湿性及び放湿性が高まる。これにより、芯材部2の下端における結露の発生を防止できる。また、前記した実施形態では、芯材部2の上のみに表層部3を設けたが、芯材部2の下にも表層部を設けてもよい。
【実施例】
【0052】
次に本発明の実施例について説明する。実施例では、以下に示す滴下試験と吸上げ試験を行った。
【0053】
<滴下試験>
滴下試験では、図6に示すように、層状に形成された合成繊維を積層させた試験体201に色水を滴下し、試験体内を流動する色水の流れを観察した。試験体201は、芯材部202と、表層部203とを積層して形成されている。
【0054】
芯材部202は、ポリエステルを用いており、厚さは100mmである。芯材部202の繊維の方向は板幅方向(左右方向)に並んでいる。
【0055】
第一クッション層203A及び第二クッション層203Bは、ポリエステルを用いており、厚さは30mmである。第一クッション層203A及び第二クッション層203Bの繊維は板厚方向(上下方向)に並んでいる。第一クッション層203Aは、第二クッション層203Bよりも高いい密度で形成されている。また、芯材部202は、第一クッション層203Aよりも高い密度で形成されている。
【0056】
試験体201に3ccの色水Wを垂らすと、色水が通った軌跡に水筋Sが現れる。水筋Sは、第二クッション層203Bに現れる水筋S1、第一クッション層203Aに現れる水筋S21,S22、芯材部202に現れる水筋S3で構成されている。
【0057】
試験体201に色水Wを滴下すると、第二クッション層203Bに水筋S1ができた。水筋S1は、一定の幅で蛇行状になっている。第二クッション層203Bを流下した水は、第一クッション層203Aに流入する。第一クッション層203Aでは、第二クッション層203Bに比べて単位体積当りの繊維の量が多く水の通り道が増えたため、左右方向に拡散しながら第二クッション層203Bの流下速度よりも速く下方へ移動した。芯材部202に流入した水分は、芯材部202の繊維の方向が横方向であるため、下には流下せず横方向へ広がった。
【0058】
水筋S21は、薄い点在模様になっている。水筋S22は、第一クッション層203Aと芯材部202との境界部分で左右方向に広がって色も濃くなっている。水筋S3は、芯材部202と第一クッション層203Aとの境界部分に沿って左右方向に広がっている。水筋S3は下方には延在していない。
【0059】
実施例では、第一クッション層203Aの流下速度は、第二クッション層203Bの流下速度より速かった。これは、第一クッション層203Aは、第二クッション層203Bよりも高密度に形成されているため、単位体積当りの繊維が多い。このため、色水Wがつたう繊維が多くなり、下方に向けて色水W(湿気)の移動が促進される。つまり、繊維の密度が高くなるに連れて、毛細管現象が促進されるため、吸湿性、放湿性及び透湿性が高まり、人体に与える蒸れ感やベタツキ感を抑制することができる。
【0060】
<吸上げ試験>
吸上げ試験では、図7に示すように、同等の形状からなる第一試験体301及び第二試験体302をシャーレLに入った色水Wに浸し、各試験体によって吸い上げられる色水Wを観察した。第一試験体301及び第二試験体302は、繊維が縦方向に並んだポリエステルであって、1〜2cm角の直方体を呈する。第二試験体302の密度は、第一試験体301の密度よりも大きくなっている。第一試験体301及び第二試験体302の下部2mm程度が色水Wに浸かるようにして10分ほど静置する。
【0061】
図7の(b)は、10分間静置した第一試験体301及び第二試験体302を取り出して平坦面に載置した状態を示す。図7の(b)に示すように、密度の高い第二試験体302の方が、毛細管現象によって色水Wを多く吸い上げていることがわかる。つまり、合成繊維の密度が高い方が、湿気(水)の吸湿性が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0062】
1 マットレス
2 芯材部
3 表層部
4 外カバー
31 第一クッション層
32 第二クッション層
33 第三クッション層
51 芯材主部
52 芯材補強部
73 吸放湿層
61 クッション主部
62 クッション補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維で構成された板状の芯材部と、
繊維で構成された複数の板状のクッション層が積層された表層部と、
前記芯材部とこの芯材部の上に積層された前記表層部とを覆う外カバーと、を有するマットレスであって、
前記芯材部は、前記繊維が板幅方向に並んで形成されているとともに、前記各クッション層よりも高い密度で形成されており、
前記各クッション層は、前記繊維が板厚方向に並んで形成されているとともに、一定の密度で形成されており、
積層された複数のクッション層は、前記芯材部から離間するにしたがって密度が低くなるように形成されていることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
前記表層部と前記外カバーとの間に吸放湿層を有し、
前記吸放湿層は、麻又は羊毛の繊維で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記芯材部は、芯材主部と、前記芯材主部よりも高い密度で形成された芯材補強部と、を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のマットレス。
【請求項4】
前記クッション層は、クッション主部と、前記クッション主部よりも高い密度で形成されたクッション補強部と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のマットレス。
【請求項5】
前記クッション層は、
前記芯材部の上に積層された上層部と、前記上層部に連続し前記芯材部の両側部を覆う側層部とを有し、
前記側層部の繊維は、前記芯材部の板幅方向と平行に並んで形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のマットレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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