説明

マッピング測定装置

【課題】 本発明の解決すべき課題はリニアアレイ型検出器を用いたマッピング測定装置において、各検出素子間の特性の相違を解消することにある。
【解決手段】 直交軸X,Yで規定される試料表面上の所定領域50の試料情報を、X方向に配列された複数個Nの検出素子18A〜18Jを有したリニアアレイ型検出器18をY方向に走査することにより取得するマッピング測定装置10において、
測定領域の各測定点(1,1)〜(8,8)に対し、前記検出器18の少なくとも複数の素子で測定を行い、その平均値を得ることを特徴とするマッピング測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマッピング測定装置、特にリニアアレイ型検出器の測定面に対する相対的移動手段の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微赤外分光光度計などでは、試料上の微細部位の光学情報を取得できるが、広い領域の光学情報を微細部位ごとに得ていくためには試料面に対する検出器の相対位置を順次変更していく、いわゆるマッピング測定を行う必要がある。
例えば、下記特許文献1には全反射測定装置を用いたマッピング測定方法が開示されており、同文献図7、図8記載の方法によれば複数の検出素子が一列に並んだリニアアレイ型検出器を用いて効率的にマッピング測定を行っている。
しかしながら、リニアアレイ型検出器は複数部位の光学情報を同時に取得できるという点では極めて有用であるものの、各素子の特性は必ずしも同一とは限らず、素子間の特性を調整するためデータ補正を行うにしても煩雑な作業が必要となっていた。
【特許文献1】特開2006−208016
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題はリニアアレイ型検出器を用いたマッピング測定装置において、各検出素子間の特性の相違を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために本発明は、直交軸X,Yで規定される試料表面上の所定領域の試料情報を、X方向に配列された複数個Nの検出素子を有したリニアアレイ型検出器をY方向に走査することにより取得するマッピング測定装置において、
測定領域の各測定点に対し、前記検出器の少なくとも複数の素子で測定を行い、その平均値を得ることを特徴とする。
【0005】
また、前記装置において、
測定領域の測定開始点に前記リニアアレイ型検出器の検出素子の一つを対応させ、該位置より検出器をY方向に相対移動させて所定領域の試料情報を得ており、該アレイ型検出器をX方向に相対移動する際に少なくとも検出素子1素子分以上、N−1素子数分以下の距離を移動することが好適である。
【0006】
また、前記装置において、
マッピング測定装置は必要積算数n1のフーリエ変換型赤外分光測定装置であり、
一測定点に対し複数個n2の検出素子を対応させ、各素子によりn1/n2回以上のデータ取得を行い、各素子により得られたインターフェログラムを積算して各測定点の赤外スペクトルを得ることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるマッピング測定装置によれば、前述したように一の測定点に対し複数の検出素子で順次測定を行い、その平均化を行うこととしたので、素子間の特性の相違がキャンセルされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は一実施形態にかかるマッピング測定装置の概略構成が示されている。
同図に示すマッピング測定装置は、フーリエ変換型顕微赤外分光光度計10に適用されている。
【0009】
本実施形態において、赤外分光光度計10は、光照射手段12と、試料14の被測定面上に光を集光し、該被測定面からの反射光を集光するカセグレン型対物鏡16と、反射光を検出する検出器18と、検出器18へ向かう光を特定領域からの光に制限するアパーチャー20と、試料14からアパーチャー20へと至る光路上に設置された検出側スキャンミラー22と、光照射手段12から試料14へ至る光路上に設置された照射側スキャンミラー24とを備えている。
【0010】
前記光照射手段12は、赤外光源26と、干渉計28より構成され、赤外光源26からの光は、干渉計28により干渉光となり、照射側スキャンミラー24へと向かう。そして、照射側スキャンミラー24により反射され、対物鏡16へと送られ、対物鏡16から試料14に光が照射される。このとき、照射側スキャンミラー24の反射面の向きをコントローラー30によって制御し、試料14上の照射領域を調整する。また、試料14からの反射光は対物鏡16により集光され、検出側スキャンミラー22へと送られる。検出側スキャンミラー22では、試料からの反射光の特定の測定部位からの光のみがアパーチャー20の開口に向かうように調整されている。アパーチャー20では測定部位以外からの反射光を遮断し、測定部位からの光のみが透過する。アパーチャー20を通過した光は集光鏡32によって集光され、検出器18で検出される。検出されたデータはデータ処理回路34にて処理され、コンピュータ36により記憶・処理される。そして、照射側スキャンミラー24及び検出側スキャンミラー22の反射面の向きを変更して測定を繰り返すことにより、試料面の二次元マッピング測定を行う。
【0011】
図2には本発明のマッピング測定装置による検出器18と試料14の相対移動方法が示されている。
同図(A)において、試料14の矩形状被測定領域((X,Y)=(1,1)〜(8,8))50に対し、検出器18の右端検出素子18Aを被測定領域50の左下端部(測定開始点)に位置させ情報を得る。この際には、右端検出素子18Aのみが、被測定領域50の座標(X,Y)=(1,1)の位置の情報のみを得ることになり、他の検出素子18B〜18Jは被測定領域外のデータを得ていることになるから、これらの被測定領域外のデータは必要により削除される。そして、この状態から検出器18をY方向(図中上方向)に1ステップ移動させ、被測定領域50の座標(X,Y)=(1,2)の地点で情報を得る(同図(B))。
このようにして順次Y方向に検出器18を移動させ、被測定領域50の座標(1,1)〜(1,8)までの情報を検出素子18Aにより得る(同図(C))。
【0012】
次に、検出器18をX方向に1素子分移動しYを原点位置まで復帰する(同図(D))。すなわち、検出素子18Aは被測定領域(2,1)に、また検出素子18Bは被測定領域(1,1)に位置することになる。この状態から、図2(B)〜(D)の各ステップを繰り返し、(1,1)〜(1,8)を検出素子18Bにより得、また(2,1)〜(2,8)のデータを検出素子18Aにより取得し、同様の操作を検出素子18Jが被測定領域(8,8)の測定を行うまで継続する。
【0013】
この結果、被測定領域50の測定点(1,1)〜(1,8)の全点について、各検出素子18A〜18Jによる測定が行われることになる。
そして、これら各測定点での各素子18A〜18Jのデータは、データ処理回路34及びコンピュータ36によりインターフェログラム積算により平均化される。
【0014】
図3には本実施形態にかかる装置の測定方法がさらに詳細に示されている。
従来、図3(A)に示すように、リニアアレイ型検出器18を用いたマッピング測定はその測定素子列の巾でY方向にスキャンを行い、そのY方向終端まで至ると、次に検出器を測定素子列幅だけX方向に移動し、そのままY方向終端までスキャンする。
このように測定効率を向上させるため、検出器の巾ごとにステップ移動させ、(1,1)〜(1,8)は検出素子18Aのみにより、また(2,1)〜(2,8)は検出素子18Bのみにより…というように各測定点は一の測定素子のみにより情報取得がなされていた。
【0015】
これに対し本実施形態によれば、図3(B)に示すように、一の測定点に対し各測定素子が情報取得するようにしているので、測定素子間の特性の相違が解消され、均一なデータを取得することができる。
【0016】
また、本実施形態においてはマッピング測定装置としてフーリエ変換型赤外分光測定装置を用いている。このようなフーリエ変換型の場合、一度に広い波長領域のデータを取得できるという利点があるが、一度に取得できるデータ値のS/N比は小さい為、各測定点で複数回のデータ採取を行い、積算する必要がある。
したがって、図3(A)に示すような測定手法を用いた場合にも、各点で各測定素子が複数回のデータ取得を行わなければならない。
【0017】
一方本実施形態によれば、一測定点に対し複数の測定素子でデータ取得を行い、これらを積算することにより、スペクトルデータを得ているため、各採取データは効率的に利用できる。
すなわち、スペクトルデータを得るための適正な積算データ数をn1、測定素子数をn2とすれば、各測定素子による各測定点での必要取得データ数はn1/n2でよい。
なお、本実施形態においては各測定点に対し各測定素子が少なくとも一度は対応するように構成したが、これに限られるものではなく、例えばX方向へのステップ移動を2素子分或いは3素子分以上とすることも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるフーリエ変換型赤外分光光度計の概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる分光光度計の検出器移動制御機構の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる分光光度計の検出器移動制御機構を従来例と比較した説明図である。
【符号の説明】
【0019】
10 赤外分光光度計(マッピング測定装置)
12 光照射手段
14 試料
18 検出器
22,24 スキャンミラー
30 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交軸X,Yで規定される試料表面上の所定領域の試料情報を、X方向に配列された複数個Nの検出素子を有したリニアアレイ型検出器をY方向に走査することにより取得するマッピング測定装置において、
測定領域の各測定点に対し、前記検出器の少なくとも複数の素子で測定を行い、その平均値を得ることを特徴とするマッピング測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
測定領域の測定開始点に前記リニアアレイ型検出器の検出素子の一つを対応させ、該位置より検出器をY方向に相対移動させて所定領域の試料情報を得ており、該アレイ型検出器をX方向に相対移動する際に少なくとも検出素子1素子分以上、N−1素子数分以下の距離を移動することを特徴とするマッピング測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、
マッピング測定装置は必要積算数n1のフーリエ変換型赤外分光測定装置であり、
一測定点に対し複数個n2の検出素子を対応させ、各素子によりn1/n2回以上のデータ取得を行い、各素子により得られたインターフェログラムを積算して各測定点の赤外スペクトルを得ることを特徴とするマッピング測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−298576(P2008−298576A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144833(P2007−144833)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】