説明

マップデータを使用する乗物ESCシステムのための方法及びシステム

【課題】乗物用の改良型電子安定性制御システムを提供する。
【解決手段】乗物用の電子安定性制御(ESC)システムが開示される。電子制御ユニット(ECU)は、乗物のブレーキ及びスロットルの動作に変更を加えることで、意図された乗物方向及び/又はヨーレートと、実際の乗物方向及び/又はヨーレートとの間の差を減少することにより、乗物の横滑りを減少するようにプログラムされる。ESCシステムは、車輪速度センサ、ハンドル位置センサ、ヨーレートセンサ、及び横方向加速度センサから入力を受け取る。又、ESCシステムは、乗物が位置している道路の特性を少なくとも指示する入力も受け取り、乗物が位置する道路は、マップデータベースを使用するポジショニングシステムから決定され、又、特性は、マップデータベースから決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物の電子安定性制御システムに係る。
【背景技術】
【0002】
電子安定性制御(ESC)システムは、近代的な乗物に強力な安定性を付加するものである。ESCシステムは、事故を生じ易い道路条件、挑戦的操縦、及び運転者の反応又は能力の相違のもとで制御を維持する上で運転者の助けとなる。今日製造されている多くの乗物モデルは、ESCシステムを標準装置として装備している。ESCシステムは、将来、巾広く利用されることが予想される。
【0003】
ESCシステムとは、乗物の横滑りを検出して減少させるコンピュータベースの技術である。ESCシステムは、乗物の操向制御が失われるのを検出し、次いで、各車輪に個々に適当にブレーキをかけて、運転者のハンドル入力に基づいて乗物を運転する上で助けとなるようにする。より詳細には、電子安定性制御(ESC)システムは、安定性及び性能を改善する目的で、車輪ブレーキを個々に作動して自動車にヨーモーメントを誘起することにより動作する。ESCシステムでこれを達成するために、ESCシステムは、自動車が実際に何を行っているか、及び自動車が理想的な環境のもとで「何を行うべきか」分析する。
【0004】
従来のESC計装は、ハンドル位置センサ、横方向加速度計、車輪速度センサ、ヨーレートセンサ、ブレーキ及びスロットル入力用センサ、並びにイネーブル/ディスエイブルスイッチを含む。電子制御ユニット(ECU)及び液圧制御ユニット(HCU)によって作動が管理される。ESCシステムは、自動車の動力学に影響を及ぼすように車輪ブレーキ圧力及びエンジンスロットルを作動することができる。ESCシステム設計は、運転者から制御を奪い去ったり道路についての運転者の「感覚」を無効にしたりせずに、運転者を支援するよう試みる。ESCシステムの特徴は、いつ速度又は操向を自己調整すべきか知るためにタイヤのある程度のスリップを感じることができねばならない。ESCシステムが作動しても、運転者の反応の性質は変化しない。ESCシステムの介在は、運転者の入力をより効果的なものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のESCシステムは、有用な利益及び効果を発揮するが、改善の余地があり続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のことから、乗物用の改良された電子安定性制御(ESC)システムのための方法及びシステムが提供される。電子制御ユニット(ECU)は、乗物のブレーキ及びスロットルの動作に変更を加えることで、意図された乗物方向及び/又はヨーレートと、実際の乗物方向及び/又はヨーレートとの間の差を減少することにより、乗物の横滑りを減少するようにプログラムされる。ESCシステムは、車輪速度センサ、ハンドル位置センサ、ヨーレートセンサ、及び横方向加速度センサから入力を受け取る。又、ESCシステムは、乗物が位置している道路の特性を少なくとも指示する入力も受け取り、乗物が位置する道路は、マップデータベースを使用するポジショニングシステムから決定され、又、特性は、マップデータベースから決定される。ESCシステムは、乗物の滑りを減少するために乗物の動作をいつ及び/又はどのように変更すべきか決定する際に、その道路特性情報を使用する。
【0007】
本発明の他のシステム、方法及び特徴は、当業者であれば、添付図面及び以下の詳細な説明を検討したときに明らかになるであろう。そのような全ての付加的なシステム、方法及び特徴は、この説明に包含され、本発明の範囲内に包含され、そして特許請求の範囲により保護されることが意図される。
【0008】
以下に述べる本発明の実施例は、添付図面を参照して良く理解することができよう。添付図面におけるコンポーネントは、必ずしも同じ縮尺率でなく、本発明の原理を示す際に強調がなされている。種々の図面を通じて対応する部分は同じ参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態による電子安定性制御システムを伴う乗物を示す図である。
【図2】図1のデータベースに含まれた道路のデータベース表現に含まれるコンポーネントを示す図である。
【図3】図1の電子安定性制御システムにより遂行されるプロセスのフローチャートである。
【図4】図1の電子安定性制御システムにより遂行されるプロセスの別の実施形態のフローチャートである。
【図5】3つの操向入力のセットを示すグラフである。
【図6】マップデータが装備されたESCシステムにおいてバンク付けされたカーブでのヨーレートエラー減少を示すグラフである。
【図7】56mphの正のバンクにおける一次レーン偏差ピークを示すグラフである。
【図8】60mphの正のバンクにおける一次レーン偏差ピークを示すグラフである。
【図9】バンク付けされたカーブのESC性能メトリックを示すテーブルである。
【図10】種々の速度での正のバンクにおけるRMSヨーレートエラーを示すグラフである。
【図11】種々の速度での正のバンクにおけるRMSスリップ角度を示すグラフである。
【図12】種々の速度での正のバンクにおける一次レーン偏差ピークを示すグラフである。
【図13】種々の速度での正のバンクにおける最小事象速度を示すグラフである。
【図14】図1の電子安定性制御システムにより遂行されるプロセスの別の実施形態のフローチャートである。
【図15】図1の電子安定性制御システムの更に別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.電子安定性制御システム
図1は、電子安定性制御システム102の本実施形態を含む乗物100を示す図である。ESCシステム102は、乗物の幾つかの動作を監視するセンサと、それらセンサから入力を受け取り、乗物の動作に対する変更を決定し、それら変更を適用するコマンドをアクチュエータに出力するESCプログラムとを備えている。より詳細には、ESCシステム102のセンサの中には、ハンドルセンサ108が含まれる。このハンドルセンサ108は、乗物のハンドル112の位置(即ち、角度)を決定し、そしてそのハンドルの位置を指示する信号を連続的に又は規則的に出力する。
【0011】
又、ESCシステム102のセンサの中には、ヨーレートセンサ116も含まれる。このヨーレートセンサ116は、乗物100内に位置される。ヨーレートセンサ116は、乗物100のヨーレートを測定し、それを表す出力信号を与える。ヨーレートセンサ116は、乗物のヨーレートを指示する信号を規則的に及び/又は連続的に与える。
【0012】
又、ESCセンサは、車輪センサ120(1)、120(2)、120(3)及び120(4)を含む。これら車輪センサ120(1)、120(2)、120(3)及び120(4)は、各個々の車輪122(1)、122(2)、122(3)及び122(4)の速度(即ち、回転)を各々測定する。各車輪センサは、各車輪速度を指示する出力信号を発生する。車輪センサ120(1)、120(2)、120(3)、及び120(4)は、各車輪の速度を指示する出力信号を連続的に及び/又は規則的に発生する。
【0013】
又、ESCセンサは、横方向加速度センサ130も含む。この横方向加速度センサ130は、乗物100内に位置される。又、横方向加速度センサ130は、乗物100の横方向加速度を測定して、それを表す出力信号を発生する。更に、横方向加速度センサ130は、乗物の横方向加速度を指示する信号を規則的に及び/又は連続的に発生する。
【0014】
又、ESCセンサは、スロットルセンサ136も含む。このスロットルセンサ136は、乗物のスロットル138の位置及び/又は動作を測定する。又、スロットルセンサ136は、スロットルの位置及び/又は動作を指示する出力信号を連続的に及び/又は規則的に発生する。
【0015】
ESCシステム102は、必ずしも上述した全ての形式のセンサを含まなくてもよい。或いは又、ESCシステム102は、上述したものとは異なるセンサを含んでもよいし、又は上述したものに加えて他のセンサを含んでもよい。
【0016】
ESCシステム102は、電子制御ユニット(ECU)144を含む。この電子制御ユニット144は、ソフトウェア、ファームウェア、又はその他のものでプログラムすることのできるマイクロプロセッサ又は他のコンピュータハードウェア装置でよい。電子制御ユニット144は、乗物に使用して動作するための標準仕様を満足する。
【0017】
電子制御ユニットは、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル回路、アナログ回路、汎用プロセッサ、又はその組み合わせでよい。1つの実施形態では、プロセッサは、関連コンポーネント又は装置の種々の電子装置及びロジックを制御し及び/又は通信するように動作できる1つ以上のプロセッサである。
【0018】
電子制御ユニット144は、電子安定性制御アプリケーション150を実行する。この電子安定性制御アプリケーション150は、ソフトウェア又はファームウェアで具現化されるプログラムである。電子安定性制御アプリケーション150は、ここに述べる電子安定性制御システムの機能を実施するためのプログラムインストラクションを実行する。電子安定性制御アプリケーション150は、電子安定性制御システムのセンサから信号入力を受け取る。より詳細には、電子安定性制御アプリケーション150は、ハンドルセンサ108、ヨーレートセンサ116、車輪センサ120(1)、120(2)、120(3)及び120(4)、横方向加速度センサ130、及びスロットルセンサ136から信号出力を受け取る。
【0019】
ESCシステム102は、ある乗物システムの動作を変更するためにESCアプリケーション150により決定されたコマンドを実行するアクチュエータを備えている。電子安定性制御アプリケーション150により決定されるように、ECU144は、1つ以上の液圧制御ユニット156及び158に信号を与える。液圧制御ユニット156は、乗物のスロットル138に関連したアクチュエータ162の動作を制御する。液圧制御ユニット158は、各車輪122(1)、122(2)、122(3)及び122(4)の1つに関連したブレーキに各々関連したアクチュエータ166(1)、166(2)、166(3)及び166(4)の動作を制御する。これらのアクチュエータにより、ESCシステム102は、乗物100の動力学(即ち、動作及び移動)に影響を及ぼすように車輪ブレーキ力及びエンジンスロットルを作動することができる。
【0020】
ESCシステム102は、イネーブル/ディスエイブルスイッチ170を備えている。このスイッチ170は、運転者がESCシステム102の動作をデアクチベートできるようにする。又、このスイッチ170は、装置100の計器パネルに装着することができる。更に、イネーブル/ディスエイブルスイッチ170は、ESCシステム102がデアクチベートされたときに運転者に通知するために警報ライト又は他のインジケータに関連付けられる。
【0021】
この実施形態では、ESCシステム102は、マップデータベース180及びポジショニングシステム184も備えている。マップデータベース180は、乗物100が走行している道路を表すデータを含む道路網のデータ表現を含む。1つの実施形態では、データ表現は、各道路を一連の道路セグメントとしてモデリングし、ここで、道路セグメントとは、交差点(即ち、道路が別の道路に接続する場所)間の道路の部分、又は道路が終了となる部分である。或いは、マップデータベース180は、道路網における道路を他の仕方で表すことができる。又、マップデータベース180は、ナビゲーションシステムの一部分でもよいし、又はナビゲーションシステムによって使用されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、マップデータベースは、必ずしもナビゲーションシステムにより使用されない。
【0022】
マップデータベース180は、乗物において、ハードドライブ、CD−ROM、DVD、フラッシュドライブ、或いはデータを記憶するのに適した他の有形媒体のような適当なデータ記憶媒体に記憶される。又、マップデータベースは、乗物から離れて位置されて、ワイヤレス通信ネットワークを経てアクセスされてもよい。或いは又、マップデータベースの一部分を乗物に配置し、別の部分を離れたところに配置してもよい。
【0023】
イリノイ州シカゴに所在するNAVTEQノースアメリカ、LLCのようなマップ開発会社により適当なマップデータベースが提供される。
【0024】
マップデータベース180は、乗物が走行する道路網を表すデータを含む。1つの実施形態では、マップデータベース180は、米国のような1つの国全体にわたる道路網を表すデータを含む。或いは又、カバレージエリアは、米国、カナダ及びメキシコのような幾つかの国に対応してもよい。別の態様によれば、マップデータベースのカバレージエリアは、国、州、地方、都市、首都エリア、規則的形状エリア、又は不規則形状エリアのような、国の一部分、又は地域内の領域だけを含んでもよい。マップデータベース180は、カバーされた地域内の全ての道路を表してもよいし、或いは又、マップデータベースは、エリア内の道路の一部分、例えば、アクセス制御された道路、又は大容量道路だけを表してもよい。
【0025】
ポジショニングシステム184は、道路網上の乗物100の位置を決定するハードウェア及びソフトウェアを含む。ポジショニングシステム184は、グローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)ユニット(例えば、GPS、ガリレオ、グロナス又はコンパス)、及び/又は他のポジショニングハードウェア186、例えば、ジャイロ、加速度計及び傾斜計を含む慣性センサ、を含む。又、ポジショニングシステム184は、車輪速度センサ120も含む。又、ポジショニングシステム184は、ポジショニングアプリケーション188も含む。このポジショニングアプリケーション188は、ポジショニングハードウェア186及びマップデータベース180により出力された情報を使用するソフトウェアルーチン又はプログラムである。ポジショニングアプリケーション188は、道路セグメントに沿った乗物の三次元位置、速度及び方向を決定する。ポジショニングアプリケーション188は、電子安定性制御アプリケーション150と同じ電子制御ユニット144にインストールされ、そこでランされ又は実行されるか、或いは又、ポジショニングアプリケーション188は、個別のプロセッサにインストールされ、そこでランされ又は実行される。
【0026】
図2は、マップデータベース180における道路セグメントのデータ表現190に含まれるデータコンポーネントの幾つかを示す図である。道路の各データ表現190は、データレコードを独特に識別するID190(I)を含む。又、道路のデータ表現190は、道路の位置及び形状に関する情報190(2)も含む。位置情報190(2)は、道路セグメントのエンドポイント(例えば、ノード)の緯度、経度及び高度と、おそらく、エンドポイント間の道路セグメントに沿った位置(例えば、形状ポイント又は連続方程式)とを含む。
【0027】
この実施形態では、道路190の表現は、ESCシステム102の動作に有用な情報を含む。マップデータベース180に含まれる道路セグメントに関する情報の幾つかの形式を以下に示す。マップデータベースの一実施形態は、これらの全ての形式のデータを含む必要がないことを理解されたい。又、マップデータベースは、それらに加えて、他の形式のデータを含むことも理解されたい。更に、道路セグメントに関する情報は、その情報が、表現された全道路セグメント又は道路セグメントの一部分に適用されるかどうか、記述された特性又は特徴が、表現された道路セグメントに沿って変化するかどうか、そのような変化がどこで生じるか、及びその変化の各側における特性又は特徴、を指示する。
【0028】
位置及び形状(ジオメトリ):道路のデータ表現は、道路の位置及び形状(ジオメトリ)を指示する情報190(2)を含む。ジオメトリは、全道路セグメントに対して指示されるか、又は道路セグメントに沿った種々のポイントにおいて指示される。道路のこの特性は、形状ポイント、スプライン、クロソイド、或いは他の手段又は式によって指示することができる。
【0029】
曲率:道路のデータ表現は、道路の曲率又は曲率半径を指示する情報190(3)を含む。曲率又は曲率半径は、全道路セグメントに対して指示されるか、又は道路セグメントに沿った種々のポイントにおいて指示される。道路のこの特性は、形状ポイント、スプライン、クロソイド、或いは他の手段又は式によって指示することができる。
【0030】
高さ及び勾配:道路のデータ表現は、道路の高さ及び勾配を指示する情報190(4)も含む。
【0031】
速度制限:道路のデータ表現は、道路に沿った速度制限を指示する情報190(5)も含む。この速度制限情報は、速度制限が道路に沿って変化するかどうか、又は速度制限が異なる時間に又は異なる条件(例えば、スクールゾーン)のもとで変化するかどうか指示する。
【0032】
レーン及びレーン巾:道路のデータ表現は、道路に沿ったレーンの数及び位置を指示する情報190(6)も含む。この情報は、各レーンの巾も指示する。
【0033】
路面:含まれるデータの1つの形式は、路面の形式を指示するデータである。この形式の情報190(7)は、路面が舗装であるか、未舗装であるか、セメントであるか、アスファルトであるか、砂利であるか、溝付きであるか、等、を指示する。
【0034】
路肩:道路のデータ表現は、道路に沿って路肩が存在するかどうか指示する情報190(9)も含む。この情報は、路肩が道路の両側に存在するか又は片側だけに存在するかを指示する。又、この情報は、路肩のサイズ(即ち、巾)、路肩面の形式、路肩が存在する道路に沿った長さ、及び路肩の他の特性も指示する。
【0035】
摩擦:道路のデータ表現は、路面の摩擦特性を指示する情報190(10)も含む。これは、摩擦係数又は他の手段によって指示される。
【0036】
カント:道路190のデータ表現は、道路に沿ったカント(横断勾配)を指示する情報190(11)も含む。
【0037】
ブラックスポット:道路190のデータ表現は、道路に沿った「ブラックスポット」の位置を指示する情報190(12)も含む。ブラックスポットとは、通常の事故率より高い場所である。ブラックスポット情報190(12)は、道路セグメントに沿ったブラックスポットの特定位置と、ブラックスポットに関連した事故状態の種類とを指示する。
【0038】
中央分離帯:道路のデータ表現は、道路に沿って中央分離帯が存在するかどうか指示する情報190(13)も含む。この情報190(13)は、中央分離帯のサイズ及び構造(例えば、コンクリート、眺望)を指示する。この情報190(13)は、中央分離帯を通る通路があるかどうか及びそのような通路がどこにあるかも指示する。
【0039】
ガードレール、中央分離帯及び他の路傍構造:道路のデータ表現は、道路に沿ってガードレールが存在するかどうか、もし存在すれば、ガードレールが道路の左側か、右側か、又は両側かを指示する情報190(14)も含む。又、道路のデータ表現は、道路に沿った他の構造も含む。
【0040】
他のデータ:上述したデータの形式は、排他的なものではない。道路の表現に関連した他の種類のデータ190(n)も存在する。
【0041】
II.ESC動作−概略
電子安定性制御(ESC)システムは、車輪ブレーキ、及びおそらくは、他の乗物システム、例えば、スロットルを個々に操作することにより動作し、安定性及び性能を改善する目的で自動車にヨーモーメントを誘起させる。これを達成するESCシステムの場合に、このシステムは、自動車の実際の動作及び移動に関する情報、及び理想的な環境のもとで自動車をどのように動作及び移動「すべきか」の情報を収集する。それ故、ある量の計装が、予想をなすためのオンボード動力学モデルと共に使用される。ESCシステム動作の包括的説明が、ボッシュ・オートモーティブ・ハンドブック(第6版、2004年、ロバートボッシュGmbH編集)に掲載されている。
【0042】
上述したように、ESCシステムは、自動車の測定ヨーレートと、その理想的な計算ヨーレートとの間の差を監視して制御する。ヨーレート利得式は、曲線上を移動する間にヨーレートを推定するのに使用できる。

但し、rは、ヨーレートであり、δfは、前車軸操向角であり、νxは、長手方向速度であり、Lは、ホイールベースであり、Kuは、アンダーステア勾配である。
【0043】
この式は、自動車の特定のアンダーステア勾配Kuを考慮するものであるが、道路の摩擦を考慮していない。測定された横方向加速度及び長手方向速度に基づく最大達成可能ヨーレートがある。

但し、αyは、横方向加速度である。
【0044】
最大ヨーレートの式は、摩擦係数に絶対的に依存する。摩擦係数xが与えられると、自動車は、横方向加速度がx*gに達したときに横滑りを開始する。従って、加速度は、道路の摩擦係数を越えない。修正ヨーレート推定は、上限を考慮している。
est=min(|runlimited|、|rmax|)sgn(runlimited
【0045】
ヨーレートエラーの推定値は、自動車のセンサからの測定値と、推定ヨーレートとの間の差である。
diff=rmeas−rest
【0046】
しかしながら、この推定は、横方向取り扱いの動力学を含まず、測定ヨーレートと推定ヨーレートとの間の位相差に寄与するある程度の遅れがある。ヨーレート差信号をフィルタリングし微分するある実験では、ESCアクチベーションをトリガーするための受け容れられる推定値が得られる。
【0047】
ヨーレートエラーが、あるスレッシュホールドを越えると、ESCシステムがアクチベートし、個々の車輪にブレーキをかけて、自動車に望ましいヨーモーメントを生成させる。過剰なアンダーステアは、自動車がカーブの外側に向けて意図された経路を去るようにさせ、ESCシステムのアクションは、内側の後輪ブレーキをかけて、自動車をレーンに戻させる。他方、過剰なオーバーステアは、自動車が意図された経路の内側へそれて、おそらく、スピンアウトするようにさせる。この場合のESCシステムのアクションは、外側の前輪ブレーキをかけて、スピンに対抗するようにさせる。既存の従来型ESCシステムは、実際上、運転者の意図又は道路の形状に気付かない。既存の従来型システムは、発生するヨーレートエラーに反応する。既存の従来型システムは、ヨーレートエラーに加えて、例えば、推定スリップ角エラーのような他のエラー信号を使用できることを理解されたい。
【0048】
III.ESC動作−フローチャート
図3は、図1におけるESCシステム102の本実施形態の動作を示すフローチャートである。図3は、ESCシステム102により遂行されるプロセス200を示す。この実施形態では、プロセス200は、2つの成分プロセスを含む。1つの成分プロセス204は、図1におけるESCアプリケーション150により遂行されるステップを含む。この成分プロセス204は、乗物の運転を監視し、乗物の運転に対する変更を行うためのコマンドを出力する。他方の成分プロセス208は、図1におけるポジショニングアプリケーション188により遂行されるステップを含む。この成分プロセス208は、乗物の位置と、乗物が走行する道路の特性とを決定する。本実施形態では、プロセス204及び208が並列に動作される。更に、本実施形態では、プロセス204及び208は、連続的に動作され、乗物が運転される間にそれらのステップを何回も実行するようにループし、即ち循環する。
【0049】
先ず、ポジショニングプロセス208を参照すれば、乗物の位置を指示するポジショニングハードウェア184からのデータが得られる(ステップ212)。このステップでは、入力は、地理的座標の形態である。或いは又、入力は、慣性センサ、車輪速度センサ(即ち、120)、又は他のハードウェアからのデータを含む。
【0050】
ポジショニングハードウェア184から得られた情報を使用して、ポジショニングプロセス208は、乗物位置を道路セグメントに沿った位置にマッチングさせる(ステップ216)。プロセス208は、マップデータベース180をこの目的に使用する。マップマッチングステップ216は、乗物が進行する方向及び乗物が位置するレーンを含めて、道路セグメントに沿った乗物の厳密な現在位置を決定する。別の実施形態では、マップマッチングステップ218は、乗物の前方の道路網の一部分も決定する。乗物の前方の道路網の一部分を決定することは、参考としてここに全開示を援用する米国特許第6,405,128号及び第6,735,515号に開示されたプロセスを使用して遂行される。これら特許に開示された技術及びマップデータベースからの情報を使用して、乗物の前方の道路のデータモデルが生成され、維持され、及び更新される。道路のデータモデルは、ある限度又はスレッシュホールドまで延びる。その限度は、距離、走行時間、掲示された速度限界、実際の乗物速度又は他のファクタに基づく。例えば、距離の限度は、0.5km、1km、2km、又は他の距離でよい。その限度内に交差点が位置する場合には、乗物の前方の道路のデータモデルは、乗物が走行できる複数の考えられる道路に関する情報も含む。又、データモデルは、複数の考えられる道路のうち、乗物が走行する見込みが最も高い1つの道路である「最も見込みの高い経路」を識別してもよい。「最も見込みの高い経路」の決定は、前記特許に説明されている。
【0051】
次いで、ポジショニングプロセス208は、その決定された乗物位置に関連した道路特性を決定するステップを含む(ステップ220)。ポジショニングプロセス208は、この目的でマップデータベース180からデータを得る。道路特性は、図2を参照して上述した特性のいずれかを含む。
【0052】
ポジショニングプロセスは、乗物の位置に関連した(おそらく乗物の前方の)適用可能な道路特性を決定すると、その情報をESCアプリケーション150へ出力する(ステップ226)。次いで、ポジショニングプロセス208は、ポジショニングハードウェア184から乗物位置を指示する入力を得るステップ(再びステップ212)で再開する。ポジショニングプロセス208におけるステップは、乗物が運転される間に繰り返される。
【0053】
図3のESCプロセス204を参照すれば、このプロセス204は、ESCセンサから入力を得るステップ(ステップ230)を含む。上述したように、ESCセンサは、実際の乗物運転及び意図された乗物運転を指示するセンサを含む。より詳細には、これらセンサは、ハンドルセンサ108、ヨーレートセンサ116、車輪速度センサ(集合的に120)、横方向加速度センサ130、及びスロットルセンサ136を含む。
【0054】
ESCプロセス204は、道路特性情報を幾つかの異なる仕方で使用できる。それ故、ESCプロセス204では、異なる段階において道路特性情報を得ることができる。図3に示す実施形態では、ESCプロセス204は、ポジショニングアプリケーションプロセス208のステップ226で出力された道路特性情報を得(ステップ234)、その後、実際の乗物ヨーレート及び意図された乗物ヨーレートを決定するステップ(ステップ240)が行われる。ESCプロセス204は、この段階において、実際の、又は意図されたヨーレートを決定するステップの一部分として道路特性情報が使用されるときに道路特性情報を得ることができる。このように道路特性情報を使用する幾つかの例を、以下のセクションで説明する。
【0055】
次いで、ESCプロセス204は、実際の及び意図された乗物ヨーレートを比較する(ステップ244)。実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差がスレッシュホールドを越えない場合には、ESCプロセス204は、センサ入力を得るステップ(再びステップ230)へ戻り、プロセス204は、そこから続く。
【0056】
ステップ244へ戻ると、実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差がスレッシュホールドを越える場合には、ESCプロセス204は、乗物運転に対する適当な変更(即ち、回復アクション)を決定する(ステップ248)。次いで、ESCプロセス204は、乗物アクチュエータ、即ちスロットルアクチュエータ162及び/又は個々のブレーキアクチュエータ166(1)、166(2)、166(3)及び166(4)へ適当な出力を与え(即ち、HCUを経て)、乗物の決定された運転を行う(ステップ252)。次いで、プロセス204は、センサから入力を得るように戻り(ステップ230)、プロセスは、上述したように続く。
【0057】
上述したように、ESCプロセス204は、幾つかの異なる仕方で道路特性情報を使用することができ、従って、ESCプロセス204の異なる段階において道路特性情報を得ることができる。図4は、ESCプロセス204の別の実施形態を示す。図4のESCプロセス204は、図3に示すESCプロセスと同じステップを幾つか含み、同様のステップは、同じ番号で示されている。
【0058】
図4において、ESCプロセス204は、実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差がスレッシュホールドを越えるという決定が(ステップ244で)なされた後にポジショニングアプリケーションプロセス208から道路特性情報を得る(ステップ260)。図4のESCプロセス204は、この段階において、実際の乗物運転に対して行うべき適当な変更を決定するステップの一部分として道路特性情報が使用されるときに道路特性情報を得ることができる。このように道路特性情報を使用する幾つかの例を、以下のセクションで説明する。
【0059】
別の動作方法では、ESCプロセスは、実際の又は意図されたヨーレートの決定と、実際の乗物運転に対して行うべき適当な変更の決定との両方について、道路特性情報を使用することができる。(この方法は、図3及び4の組み合わせである。)この別の動作方法では、道路特性情報は、実際の又は意図されたヨーレートを決定するステップの前に得ることができ、次いで、実際の乗物運転に対して行うべき適当な変更を決定するステップでその後に使用するために保持することができる。或いは又、道路特性情報は、これら2つの機能に対して別々に得ることもできる。
【0060】
IV.デジタルマップでのESC動作
上述したように、図2を参照して述べたもののような、道路網の特徴、特性、又は他の観点に関するマップ情報は、ESCシステムにより幾つかの異なる仕方で使用することができる。ESCシステムでマップ情報を使用できるようにする幾つかの仕方を以下に説明する。
【0061】
道路ジオメトリ:上述したように、ESCシステムは、ハンドル及びスロットルに関連したセンサのような種々のセンサ入力を使用して運転者の意図を決定する。運転者の意図を決定する上で助けとなるように、道路ジオメトリ、即ち乗物の特定位置における道路の形状及び乗物の直前の道路の形状を含む道路の形状を指示するマップ情報を使用することができる。例えば、乗物が走行している道路が左にカーブしていることをマップデータが指示する場合には、乗物を左へカーブさせるための運転者によるハンドルの操作は、意図的であると予想される。他方、乗物の前方の道路がまっすぐであることをマップデータが指示し且つ運転者の操作が乗物を左へカーブさせる場合には、ESCシステムは、ハンドルの操作が意図的でなく(例えば、運転者が眠そうであり)又は運転者が何かを避けようとしていると仮定することができる。いずれの場合にも、ESCシステムは、異なる仕方で動作することができる。例えば、乗物が道路ジオメトリの経路をたどらないように運転されるときには、ESCシステムは、乗物の運転をより積極的に変更する。
【0062】
運転者の意図を決定するのに使用されるのに加えて、道路ジオメトリを指示するマップデータは、ESCシステムにより、乗物回復戦略の一部分として使用することもできる。例えば、ESCシステムは、近付きつつあるカーブ半径を要因として乗物回復戦略の計算に入れることができる。例えば、乗物がカーブした経路をたどらねばならないことをESCが決定し、且つ前方の道路が鋭くカーブしていることをマップデータが指示する場合には、ESC回復戦略は、更に、減速を含むように、即ちスロットルアクチュエータの使用を通して、乗物の運転を変更することができる。
【0063】
勾配:道路の勾配を指示するマップデータがESCシステムによって使用される。例えば、センサからの読みは、道路の勾配を考慮し且つ勾配の瞬時変化による他の関連センサの一時的な破壊を修正するように調整することができる。更に、道路の勾配は、運転者の意図を決定するのに使用できる。例えば、乗物が下り坂勾配に接近しつつあり且つブレーキがかけられる場合に、ESCシステムは、ブレーキをかけることが意図的であったと仮定する。同様に、道路の勾配を指示するマップデータは、ESCシステムにより、回復戦略を決定するのに使用される。例えば、乗物が下り坂を進む場合に、ESC回復戦略は、乗物が上り坂を進むときに比して、より大きな力で且つより早めに、ブレーキをかけることができる。
【0064】
速度制限:乗物位置における及び乗物位置の前方の道路の速度制限を指示するマップデータがESCシステムにより使用される。例えば、乗物が掲示された速度限界を越えて運転される場合に、ESCシステムは、速度違反が、実際の乗物運転と意図された乗物運転との間の差を考慮し、それ故、乗物運転をそれに応じて変更すると仮定する。例えば、これらの環境において、ESCシステムは、スリップを避けるためにブレーキを調整するのではなく、乗物速度を下げるためにスロットルを調整するのが好ましい。
【0065】
レーン:レーンの数、位置、方向及び巾を指示するマップデータは、ESCシステムにより、運転者の意図を決定すると共に、必要に応じて、乗物の運転をどのように変更するか決定するのに使用される。例えば、乗物が右手レーンで運転されている間の急速なそれは、すぐ前にある障害物を回避するための運転者の試みを指示する。ESCシステムにより指令される回復アクションは、乗物が逆方向走行レーンへ入るのを回避させる。
【0066】
路面:乗物位置における及び乗物位置の前方の路面を指示するマップデータがESCシステムにより使用される。例えば、乗物が砂利の路面で運転されるか、又は砂利の路面に接近しつつある場合には、ESCシステムは、コンクリート又はアスファルトの路面より早めに且つ積極的にスリップを修正し始める。
【0067】
摩擦:乗物位置における及び乗物位置の前方の道路の摩擦を指示するマップデータは、上述した路面情報と同様に使用される。
【0068】
路肩:道路の路肩の存在、サイズ及び表面組成を指示するマップデータがESCシステムにより使用される。例えば、乗物が、道路から、もろい砂利より成る路肩へと滑り落ちようとする場合には、ESCシステムは、路肩がより固い材料より成る場合より積極的な修正を適用する。別の例では、路肩が全く存在しないことをマップデータが指示する場合には、ESCシステムは、乗物が道路を外れて走行するのを防止するように回復アクションを増強する。
【0069】
ガードレール及び中央分離帯:道路に沿ったガードレール及び中央分離帯の存在を指示するマップデータは、前記路肩情報と同様に使用される。
【0070】
カント:道路に沿ったカント(バンキング)を指示するマップデータがESCシステムにより使用される。カントの程度は、乗物がカーブでスリップするかどうか及びどれほどスリップするかに直接影響する。それ故、道路のカントがより正であるほど、運転者の乗物制御を向上させるために、ESCは、あまり積極的に動作しない。例えば、乗物がカーブでスリップし、且つ乗物位置のすぐ前方で道路のカントが高くなることをマップデータが指示する場合には、道路のカントがスリップの減少に貢献すると期待されるので、ESCシステムは、あまり積極的に動作しない。
【0071】
V.実施例
アイオワ大学においてナショナルアドバンストドライビングシミュレータ(NADS)によりテスト分析が行われた。その目的は、ESCシステムの設計に適用されたデジタルマップ技術の有益さをテストし、評価することであった。選択された特定マップ属性は、道路の曲率、道路の巾、バンク角、及び道路の勾配であった。NADS開発モデルは、ESCだけをモデリングし、ABSもTCSもモデリングしない。
【0072】
このテストは、生きた運転者をループから取り除き、そして突然のレーン侵入事象により模擬されるダブルレーン変更操縦の形態で、予め記録された運転者反応の繰り返し可能なセットを与えることにより、ESCシステム自体の性能に焦点を当てたものであった。従って、人間の運転者を必要としないオフラインモデルにおいて実験が行われた。NAVTEQ ADASリサーチプラットホーム(ADAS RP)からのマップデータがNADS MiniSim PCベースのシミュレータへ一体化され、そして操向事象を障害として注入して操向及び速度コントローラによりシミュレーションが制御された。
【0073】
シミュレーションに使用される運転者入力は、人間の運転者を使用して回避操向操縦を引き出した以前のNADS ESCリサーチから抽出された。これらの操向入力は、種々の速度で様々な道路形式に適用された。基本的なクルーズコントロールが乗物速度を維持する一方、レーン追跡操向コントローラが閉ループ走行システムの基礎を与え、記録された操向プロフィールが障害として処置された。3つの操向入力のセットが図5に示されており、同じ事象に対して反応する運転者間の操向コマンドの変化の程度を示している。この調査に使用するために、全部で67の右侵入操向事象が収集された。
【0074】
デジタルマップ情報をもつ向上型ESCシステムの利益を評価するために実験的設計が生成された。その条件は、ベースライン(ESCなし)、標準的ESC、及びデジタルマップ向上型ESC(おそらく2以上)、並びに確認のためのOEM ESCシステムを含む。更に、各条件内で、種々の速度が実行され、そして全ての条件及び速度は、複数のシナリオで模擬された。条件と条件との間に最も明白なコントラストを得るために、全ての道路に0.3の摩擦係数が使用された。
【0075】
デジタルマップ情報がESCアルゴリズムの性能を改善することを期待できる状況から4つのシナリオが設計された。それらは、正にバンク付けされた右カーブ、負にバンク付けされた右カーブ、下り坂勾配、及び狭路を含む。各シナリオにおいて操向入力の完全なセットが実行された。更に、操向障害のない運転者が、高い速度でカーブシナリオを実行した。速度に関わりなく道路の同じスポットで操向障害が生じるように各シナリオにトリガーが埋め込まれた。独立変数は、ESC条件、シナリオ、及び乗物速度であった。条件と条件との間の関心ある比較を明らかにする独立変数の3つは、レーン偏差、ヨーレートエラー、及びスリップ角度エラーであった。
【0076】
実験では、3ファクタの工場設計が使用された。実際の運転者記録から操向入力を取り出すようにして各走行が67回行われた。操向入力のセットが固定され、動力学モデルは決定論的であり、そして調査には人間の相互作用がなかった。これは、通常実験の設計に組み込まれるランダム化及びブロック化の必要性を除去した。この設計から非常に多数のシミュレーション走行が得られるので、効率的で且つエラーのない処理を与える上で助けとなるようにバッチ処理及び自動分析スクリプトが開発された。
【0077】
経路追従
シナリオ運転中に適当な操向入力を自動的に与えるために経路追従操向コントローラが開発された。各シナリオを通して低い速度で手動で運転し、そして乗物位置の軌跡を経路データとしてセーブすることにより、経路が得られた。次いで、操向障害入力の存在中に種々の速度で予め記録された経路をたどるように調査運転が制御された。全操向信号は、フィードフォワード成分、フィードバックコントローラ成分、及び障害成分の組み合わせであった。この経路追従解決策は、開ループ成分が走行距離によってインデックスされ、障害入力も距離でトリガーされることを除いて、Sidhu氏等により説明されたゴールポイント解決策(A. Sidhu、D. R. Mikesell、D. A. Guenther、R. Bixel及びG. Heydingerの“Development and Implementation of a Path-Following Algorithm for an Autonomous Vehicle”、第SP−2138巻、2007年)と同様である。
【0078】
道路選択
北アメリカNAVTEQデータベースには、シナリオの要件を満足する2つの道路区分が位置されている。道路の曲率及び勾配属性がデジタルマップデータベースから使用される一方、道路巾及びバンク角度が合成される。
【0079】
選択された第1の道路セグメントは、ノースリバティにおけるアイオワシティのドゥビュークストリート北の区分であった。道路のこの区分は、カーブシナリオ及び道路巾シナリオの両方に使用された。これら各シナリオにおける走行方向は、北西から南東である。両カーブシナリオは、データベースにおける同じ物理的カーブへマップされるが、異なるバンク角度で合成される。カーブとして、南東方向に走行して、右への第1カーブが使用された。その曲率半径は、約400フィートの最小値へと減少する。第2の道路は、ドゥビューク付近のハイウェイ61の区分であった。この道路は、6%グレードで、ほとんどの道路の最大許容値であり、勾配シナリオとして良好な候補である。
【0080】
データ分析
エンジニアリングデータの完全なセットが各走行から収集された。このデータは、乗物の動力学変数、制御信号、デジタルマップ属性変数、及びESCシステム変数を含むものであった。ある条件でESCシステムがテストされる状態で乗物の性能を特徴付けるメトリックの記述的セットを得るために多量のエンジニアリングデータが減少された。次いで、「ESCなし」のベースライン条件を制御ケースとしてESCシステムの性能の著しい相違をテストするために、その減少されたデータに統計学的分析が適用された。
【0081】
主たる従属変数は、レーン偏差、ヨーレートエラー及びスリップ角度に基づくものであった。レーン偏差とは、低い速度において手動で記録された「理想的」経路からの偏位の大きさを指す。レーン偏差の減衰は、2つの測定レーン偏差ピーク間の勾配であり、これは、ピーク間の差を、それらピークの分離距離(フィート)で除算したものとして計算される。それ故、負の減衰は、安定性を表し、一方、正の減衰は、増加する振動及び不安定性を指示する。スリップ角度とは、前車軸における車輪の操向角度と自動車の速度ベクトルとの間の角度である。ヨーレートエラーとは、ESC自動車モデルで予想されるヨーレートと、乗物動力学から測定されるヨーレートとの間の差である。
【0082】
分析は、分散を分析するための混合メソッド手順が使用されるSAS統計学的ソフトウェアを利用するものであった(SASインスティテュートインク“SAS OnlineDoc, version 8”http://v8doc.sas.com/sashtml、1998年)。この混合メソッド手順は、正規分布を仮定している。全ての統計学的モデルは、上述した各従属変数と共に、独立変数としてESCアルゴリズムを含んでいる。各速度条件に対して全ての道路形式にわたり同じ分析が行われた。結果テーブルにおいて陰影付けされた有意義なp値と共に、p=0.1の有意レベルが使用された。
【0083】
結果
多くのカーブした道路は、カーブの内側に向けて自動車を傾斜するバンク角度を有し、これは、通常にバンク付けされ又は正にバンク付けされた道路と称され、調査においてテストされた負のバンクと区別される。正バンクのシナリオは、400フィートの半径及び3%のバンクをもつカーブを使用する。67の操向入力のセットが54mphから60mphまでの速度において使用された。最大曲率点の付近で操向障害がトリガーされた。ESC条件走行のセットは、次のもので構成される。ベースライン(ESCなし)、OEM ESC(OEM)、NADS ESCモデル(ESC)、及びADASエンハンスメント(ADAS)。より高い速度で操向障害なく付加的な走行が行われた。上述したESC条件に加えて、付加的なADASエンハンスメントが、エンジンスロットル変調を導入するカーブルックアヘッド(ADAS LA)と共に追加される。
【0084】
テストされた全ての速度は、公称ESCアルゴリズムとADASエンハンスメントとの間でRMSヨーレートエラーの統計学的に顕著な差を生じた。図6において統計学的に分析された4つのスピードに対してヨーレートエラーがプロットされている。エラーバーは、各バーが表すデータセットに対して95%の信頼性間隔を示している。
【0085】
ADASエンハンスメントは、速度の模擬範囲においてヨーレートエラーをうまく制御することができる。各操向入力に対する第1レーン偏差のピーク値を参照すれば、各プロットにおいて、独立サンプルが、ESC条件を使用して単調に再順序付けされる。縦軸には限度があり、軸の限度を越えた場合には、幾つかの値を示すことができない。一般的に、レーン偏差の大きさがより大きいことは、操向入力がより大きく及び/又はより迅速であることに関連している。従って、67の操向入力は、運転者操向パターンの広い範囲を表す。
【0086】
典型的な近代的道路は、12フィート巾のレーン及び10フィート巾の路肩を有することが期待される。6フィートの車巾を仮定すれば、タイヤは、道路の右側に3フィートのレーン偏差を残し、そして右側の路肩に13フィートのレーン偏差を残すことが推定される。
【0087】
図7は、56mphにおけるピークレーン偏差を示す。ADASエンハンスメントは、多くの値を2フィート以上減少した。ADAS条件ではレーン又は路肩の離脱が実際上防止されるが、ESC条件ではそのようにならない幾つかのサンプルを識別することができる。図8は、60mphにおけるピークレーン偏差を示している。値は、チャート軸の限界を素早く越えるが、ADAS有効性の明確なトレンドが観察される。より厳しいケースに対してより大きな改善が観察される。
【0088】
RMSヨーレートエラー、RMSスリップ角度、RMSレーン偏差、及びレーン偏差減衰を使用して、統計学的な分析が行われた。図9のテーブル1に示すように、全ての速度は、ESC条件とADAS条件との間でのヨーレートエラーの強い統計学的な差を示している。更に、速度が増すにつれて、顕著になる傾向があると思われる。他の3つの測定値も、速度が増すにつれて顕著になる傾向を示しているが、レーン偏差測定値は、60mphにおいてある程度弱まる。
【0089】
カーブのルックアヘッド
操向障害を適用せずに、4つのより高い速度が実行された。その結果、これらの実行に対して統計学的な分析は不要である。付加的なADASエンハンスメント、ADAS LAが追加され、カーブに接近することが予想され、そして予想される横方向加速度が過剰であるときに、システムによりエンジンスロットルが遮断される。
【0090】
図10及び11は、4つの速度に対するヨーレートエラー及びスリップ角度を示す。これらチャートから明確なランキングが明らかであり、残り部分の前にADAS LAエンハンスメントを入れる。図12は、4つの速度に対するピークレーン偏差を示す。この場合も、ADAS LAエンハンスメントは、レーン偏差性能の顕著な改善を示す。ADAS LA性能の改善の主たる理由は、図13に示すように、カーブに入る自動車の速度を下げるためにスロットルオーバーライド能力までたどることができる。
【0091】
VI.更に別の態様
図14は、図1の電子安定性制御システムにより遂行されるプロセスの別の実施形態を示す別のフローチャートである。図14のESCプロセス204は、図3に示すESCプロセスと同じステップを幾つか含み、同様のステップは、同じ番号で指示されている。
【0092】
図14は、ESCプロセス204の変更を示すもので、ポジショニングプロセス208から得た道路特性を使用してスレッシュホールドTの値を決定する(ステップ288)。次いで、このスレッシュホールドTは、実際のヨーレートを意図されたヨーレートと比較するステップ(ステップ244)に使用される。これをどのように適用するかの例として、カーブした道路で乗物が運転される場合に、スレッシュホールドTは、適宜に減少される。次いで、ESCアプリケーションは、乗物がカーブしていない道路で運転されるときに比して実際のヨーレートと意図されたヨーレートとの間の低い差のスレッシュホールドにおいて回復変更を開始する。
【0093】
図15は、マップデータを組み込んだESCシステム302の1つ以上の更に別の実施形態の一部分を示す。図15に示すESCシステム302の一部分は、図1に示したものと同じ又は同様の幾つかのコンポーネントを含み、同様のコンポーネントは、同じ番号で指示される。
【0094】
上述した実施形態と同様に、ECU144のESCアプリケーション150は、スロットルアクチュエータ162を動作してスロットルを制御するために液圧制御ユニット156を経て出力を与える。更に、ESCアプリケーション150は、乗物のブレーキに関連したアクチュエータ166を動作して個々の乗物ブレーキを制御するために液圧制御ユニット158を経て出力を与える。
【0095】
図15のESCシステム302は、1つ以上の付加的な乗物システム及び/又は動作パラメータを制御する。これらのシステム及び/又は動作パラメータは、操向330(1)、シャーシスプリングレート330(2)、シャーシロールレート(330(3)、ガタツキ減衰レート330(4)、反発減衰レート330(5)、伝達ギア選択330(6)、伝達トルクコンバータカップリング330(7)、ブレーキブーストレベル330(8)、ホイールチャンバー330(9)、及びホイールキャスター330(10)を含む。これらのシステム及び/又は動作パラメータ(集合的に330)の各々は、対応するアクチュエータ340(1)、340(2)、340(3)、340(4)、340(5)、340(6)、340(7)、340(8)、340(9)、及び340(10)に各々関連付けられる。これらのアクチュエータ(集合的に340)は、対応する液圧制御ユニット350に各々関連付けられてもよいし、或いは又、ECU144からの直接的な信号で制御されてもよい。
【0096】
付加的な乗物システム及び/又は動作パラメータの各々の場合に、ESCアプリケーション150は、マップデータベース180からの情報を使用して、実際の乗物運転に対して行うべき適当な変更を決定する。この変更は、回復アクションの一部分としてプロセス200のステップ(例えば、図4のステップ248)において決定され又は計算される。例えば、ESCアプリケーションは、シャーシスプリングレート、シャーシロールレート、ガタツキ減衰レート、反発減衰レート、又は伝達トルクコンバータのカップリングを、乗物の前方の道路が鋭くカーブしているか又は傾斜している等のマップデータベース180からの情報に基づいて、調整する(例えば、締め付ける)。或いは又、ESCアプリケーションは、伝達ギア選択、ブレーキブーストレベル、ホイールチャンバー及び/又はホイールキャスターを、マップデータベースからの情報に基づいて調整する。
【0097】
ESCシステムの実施形態は、必ずしも、図15に示す全ての乗物システム及び/又は乗物動作パラメータを制御しなくてもよい。別の実施形態では、ESCシステムは、図15に示す乗物システム及び/又は乗物運転パラメータを1つだけ制御してもよいし、全部未満を制御してもよい。更に、図15に示すものに加えて、他の乗物システム及び/又は乗物運転パラメータを、ESCシステムの実施形態により制御してもよい。
【0098】
結論
デジタルマップシステムから得られる付加的な道路情報を考慮するために慣習的なESCシステムに対し適度な控え目な適応を具現化することができる。これらの変更は、67の実世界の操向入力で、種々の速度において、且つ改善された性能が合理的に期待される異なる形式の道路上においてテストされた。全ての場合に、RMSヨーレートエラーは、一般的に改善されたレーン偏差も伴う慣習的なESCシステムを越えて、ADASエンハンストアルゴリズムを使用して著しく減少された。調査の見解において、幾つかの手段で重要性を達成する挑戦は、その大部分が、操向入力における広範囲の厳格さによって行われ、データに大きな分散を生じさせる。大きなサンプルサイズは、結果の重要性を高めることが期待される。
【0099】
ADASエンハンスメントは、典型的なアルゴリズムのチューニングをより積極的なスタンスへと移動することにより、ESC性能と運転者の「感覚」との間のトレードオフを変更する。それ故、運転者及び慣習的なESCシステムの両方に挑戦するより極端な操縦及び高い速度においてADASエンハンストESCの利益が明白であることは意外なことではない。デジタルマップデータは、ESCシステムが危険な運転環境を識別する上で助けとなり、そしてシステムを適時に又は予言的形態で、より積極的なものにすることができる。
【0100】
この調査の要旨は、慣習的なESC制御技術を使用して、デジタルマップ属性データに応答してチューニングを調整することであるが、ADAS技術の使用は、アルゴリズム設計者に多数の新たな機会を開放する。道路の曲率が分かることで、システムは、既知の曲率を自動車の操向入力及び/又はヨーレートから計算された予想される乗物経路と比較することにより運転者の意図について推定を行うことができる。運転者が指定の車道経路をたどらないことを示すデータがある場合には、システムは、運転者の反応を非常回避又は運転者障害と分類し、適当な制御戦略で応答するように試みることができる(例えば、I. Dagli、M. Brost及びG.Breuelの“Action Recognition and Prediction for Driver Assistance Systems Using Dynamic Belief Networks”、Agent Technologies, Infrastructures, Tools, and Applications for E-Services、第179−194ページ、2009年を参照されたい)。
【0101】
デジタルマップデータは、道路条件及び乗物速度に応答してESCシステムの影響力を調整するように有利に使用することができる。通常の状態において有効で、しかも、快適なESC性能を発揮するパラメータチューニングは、危険な状態においてより有効であるチューニングとは異なる。マップエンハンストESCは、ある現実的な状況において著しい性能ブーストを与えることが示されている。
【0102】
上述した動作方法では、より少数の又はより多数のステップ又はアクションが与えられてもよく、又、ステップの組み合わせが与えられてもよい。又、ステップ又はアクションは、図示された順序で遂行されてもよいし、異なる順序で遂行されてもよい。この方法は、ここに述べるシステム及び/又は装置により具現化されるか、又は異なる装置又はシステムにより具現化される。方法の1つ以上のステップ又はプロセスは、完全に自動化されてもよいし又は部分的に自動化されてもよい(例えば、コンピュータ又はアルゴリズムを経て)。
【0103】
上述したシステム、プロセス、方法及び/又は技術を具現化するためのロジック、データ、ソフトウェア又はインストラクションは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体又はメモリ或いは他の有形媒体、例えば、キャッシュ、バッファ、RAM、除去可能な媒体、ハードドライブ、他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、又は他の有形媒体に設けられる。有形媒体は、種々の形式の揮発性及び不揮発性記憶媒体を含む。図面に示された機能、アクション、ステップ又はタスクは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されたロジック又はコンピュータ実行可能なインストラクションの1つ以上のセットに応答して実行される。機能、アクション又はタスクは、特定形式のインストラクションセット、記憶媒体、プロセッサ又は処理戦略とは独立したものであり、単独で又は組み合せて動作するソフトウェア、ハードウェア、集積回路、ファームウェア、マイクロコード、等により遂行することができる。同様に、処理戦略は、マルチ処理、マルチタスク、並列処理、等を含む。1つの実施形態では、インストラクションは、ローカル又はリモートシステムによって読み取るために除去可能な媒体装置に記憶される。他の実施形態では、ロジック又はインストラクションは、コンピュータネットワークを通して又は電話線を経て転送するためにリモート位置に記憶される。更に別の実施形態では、ロジック又はインストラクションは、所与のコンピュータ、中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、又はシステム内に記憶される。
【0104】
以上の説明は、本発明を例示するものに過ぎない。これは、余すところのないものではなく、又、請求項の発明を、ここに開示した正確な形態に限定するものでもない。以上の説明に鑑み、変更や修正が考えられ、又、発明を実施することから変更や修正が得られる。具現化は、システムとシステムとの間で異なってもよいことに注意されたい。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその等効物により規定される。
【符号の説明】
【0105】
100:乗物
102:電子安定性制御(ESC)システム
108:ハンドルセンサ
112:ハンドル
116:ヨーレートセンサ
120:車輪センサ
122:車輪
130:横方向加速度センサ
136:スロットルセンサ
138:スロットル
144:電子制御ユニット
150:電子安定性制御アプリケーション
156、158:液圧制御ユニット
162:スロットルアクチュエータ
166:アクチュエータ
170:イネーブル/ディスエイブルスイッチ
180:マップデータベース
184:ポジショニングシステム
186:ポジショニングハードウェア
188:ポジショニングアプリケーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用の改良型電子安定性制御システムにおいて、
乗物が走行する道路網内の道路の特性を指示するデータを含むマップデータベースと、
前記マップデータベースに作動的に結合され、前記道路網内の道路における乗物の位置を決定するためのポジショニングシステムと、
プログラミング機能を実行するように動作できるプロセッサを含む電子制御ユニットであって、この電子制御ユニットは、乗物の方向及びハンドル位置を指示するセンサに作動的に結合され、更に、この電子制御ユニットは、道路における乗物の位置を指示する情報を受け取るように前記ポジショニングシステムに作動的に結合され、更に、この電子制御ユニットは、前記乗物の個々の車輪に関連したブレーキに関連したブレーキアクチュエータへの出力を含むような電子制御ユニットと、
前記電子制御ユニット上で実行され、前記センサからの入力と、乗物が位置する道路の特性を指示する前記マップデータベースからの情報とを使用して、意図された乗物方向と実際の乗物方向との間の差を減少するために前記ブレーキアクチュエータへ出力を与えるべきかどうか決定するESCプログラムと、
を備えた電子安定性制御システム。
【請求項2】
前記ESCプログラムは、意図された乗物方向と実際の乗物方向との間の差を減少するための前記ブレーキアクチュエータへの出力も決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
乗物用の改良型電子安定性制御システムにおいて、
乗物が走行する道路網内の道路の特性を指示するデータを含むマップデータベースと、
前記マップデータベースに作動的に結合され、前記道路網内の道路における乗物の位置を決定するためのポジショニングシステムと、
プログラミング機能を実行するように動作できるプロセッサを含む電子制御ユニットであって、この電子制御ユニットは、乗物の方向及びハンドル位置を指示するセンサに作動的に結合され、更に、この電子制御ユニットは、道路における乗物の位置を指示する情報を受け取るように前記ポジショニングシステムに作動的に結合され、更に、この電子制御ユニットは、前記乗物の個々の車輪に関連したブレーキに関連したブレーキアクチュエータへの出力を含むような電子制御ユニットと、
前記電子制御ユニット上で実行され、前記センサからの入力と、乗物が位置する道路の特性を指示する前記マップデータベースからの情報とを使用して、意図された乗物方向と実際の乗物方向との間の差を減少するための前記ブレーキアクチュエータへの出力を決定するESCプログラムと、
を備えた電子安定性制御システム。
【請求項4】
前記ESCプログラムは、乗物が位置しているところからある程度前方の道路の特性を指示する前記マップデータベースからの情報を使用して、意図された乗物方向と実際の乗物方向との間の差を減少するために前記ブレーキアクチュエータへ出力を与えるべきかどうか決定する、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ESCプログラムは、乗物が位置しているところからある程度前方の道路の特性を指示する前記マップデータベースからの情報を使用して、意図された乗物方向と実際の乗物方向との間の差を減少するための前記ブレーキアクチュエータへの適当な出力を決定する、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項6】
前記ESCプログラムは、乗物が位置しているところの道路の特性を指示する前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物速度を下げるために乗物のスロットルに関連したスロットルアクチュエータへ出力を与えるべきかどうか決定する、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項7】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、道路の形状を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項8】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、道路の巾を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項9】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、道路の勾配を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項10】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、道路の摩擦を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項11】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、路面を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項12】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、路肩を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項13】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、カントを含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項14】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、ブラックスポットを含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項15】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、ガードレールを含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項16】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、道路の中央分離帯を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項17】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、制限速度情報を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項18】
前記ESCプログラムにより使用される前記マップデータベースからの道路の特性は、曲率を含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項19】
前記乗物方向は、乗物のヨーレートを含む、請求項1又は3に記載のシステム。
【請求項20】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物の操向操作、方向及びレートも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項21】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物シャーシのスプリングレートも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項22】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物シャーシのロールレートも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項23】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、車輪のガタツキ減衰レートも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項24】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、車輪の反発減衰レートも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項25】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物の伝達ギア選択も変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項26】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物の伝達トルクコンバータカップリングも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項27】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物のブレーキブーストレベルも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項28】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物のホイールチャンバーも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項29】
前記ESCプログラムは、前記マップデータベースからの情報を使用して、乗物のホイールキャスターも変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項30】
乗物の電子安定性制御システムの動作方法において、
道路網内の道路に沿った乗物の位置を決定するステップと、
道路に沿った乗物の位置における道路の特性を決定するためにマップデータベースにアクセスするステップと、
実際の乗物ヨーレート及び意図された乗物ヨーレートを指示する乗物のセンサからの出力を得るステップと、
前記センサからの出力及び乗物の位置における道路の特性を使用して、実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差を減少するためにブレーキアクチュエータへ出力を与えるべきかどうか決定するステップと、
を備えた方法。
【請求項31】
前記センサからの出力及び乗物の位置における道路の特性を使用して、実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差を減少するためにブレーキアクチュエータへ出力を与えるべきかどうか決定した後に、前記センサからの出力及び乗物の位置における道路の特性を使用して、実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差を減少するためにブレーキアクチュエータへ付与すべき出力を決定するステップを更に備えた、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
乗物の電子安定性制御システムの動作方法において、
道路網内の道路に沿った乗物の位置を決定するステップと、
道路に沿った乗物の位置における道路の特性を決定するためにマップデータベースにアクセスするステップと、
実際の乗物ヨーレート及び意図された乗物ヨーレートを指示する乗物のセンサからの出力を得るステップと、
前記センサからの出力及び乗物の位置における道路の特性を使用して、実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差を減少するためにブレーキアクチュエータへ出力を与えるべきかどうか決定するステップと、
前記センサからの出力及び乗物の位置における道路の特性を使用して、実際の乗物ヨーレートと意図された乗物ヨーレートとの間の差を減少するためのブレーキアクチュエータに対する適当な出力を決定するステップと、
を備えた方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−219089(P2011−219089A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−98721(P2011−98721)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(508351118)ナヴテック ノース アメリカ リミテッド ライアビリティ カンパニー (20)
【Fターム(参考)】