説明

マップマッチングを考慮した車両動態管理装置

【課題】
消防などの車両動態管理装置であって、緊急車両が地図データ以外の領域を走行した場合、マップマッチングによって車両位置が地図の道路上に合わせてしまい、緊急車両の正しい現在位置を座標平面データ上に記すことができず、緊急車両の正しい軌跡とは異なる軌跡を示してしまう為、結果として正しい走行経緯を求めることが出来ない問題があった。
【解決手段】
本発明では、緊急車両が地図データの無い領域を走行する場合は、マップマッチングを解除し、GPSなどで検出した車両位置を座標平面データ上に記して、その座標平面データ上の車両位置の軌跡から走行距離を求めることが出来る車両動態管理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防車などの緊急車両に搭載されている車両動態管理装置において、“出動”、“現場到着”、“引揚”や“帰署”などの緊急車両の状態を示す動態が変化した時に、変化前の動態時に緊急車両が走行した距離を本部に送信する技術である。
【背景技術】
【0002】
緊急車両は現場への移動や、現場での活動のような公務での活動中である場合は、本部で緊急車両を管理する必要がある。例えば、緊急車両の現場への移動時には、緊急車両が出動指令を受信した場所から現場に到着するまでに走行した距離や、現場に到着した時刻などを記録する必要がある。
【0003】
従来、このような車両動態管理装置において、緊急車両は現在位置や走行距離を記録するために、定期的にGPS、ジャイロ(物体の角度や角速度を検出する計測器)やマップマッチング(所謂、現在位置座標を地図データの道路上に現在位置が来るように現在位置を補正する機能)などを用いて現在位置を計測し、この計測結果を基に緯度や経度座標がある地図上に車両の位置を示して、車両が移動した軌跡から車両の走行距離を求めていた。具体的には、まず初めに、GPSやジャイロなどで得られた信号から緊急車両の現在位置を求める。次に、その求めた緊急車両の現在位置を座標平面データ上に重畳されている地図データに合わせて、その地図データ上での緊急車両の現在位置を求める。この時、緊急車両の現在位置が地図の道路上に無かった場合、マップマッチングを用いて、緊急車両の現在位置をその現在位置から所定の範囲内にある道路上に修正し、修正後の道路上の位置を緊急車両の現在位置とする。修正後の座標平面データ上での緊急車両の現在位置から緯度と経度を求める。以上の作業を定期的に繰り返すことで、その座標平面データ上での緊急車両の位置の軌跡が求まり、その軌跡より緊急車両の走行距離を求めていた。GPSなどの測位システムから位置情報を取得し、その位置情報を地図ネットワーク上に来るようにプロットして、そのプロットされた位置情報の軌跡から走行距離を求めることが出来る技術として、特開2006―133958号公報がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006―133958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、消防などの車両動態管理装置においては、予算の都合などで地図データが限られた範囲のものしかないことがある。そのため、緊急車両が他署の応援などで遠方に出動する場合、地図データが無いエリアを走行することがある。その場合、図6に示しているようにマップマッチングによる現在位置の補正を行うと、GPSやジャイロなどで検出した緊急車両の現在位置を地図データが無いエリアを走行しているにも関わらず地図データの道路上に合わせてしまい、緊急車両の正しい現在位置を座標平面データ上に正しく示すことができず、車両の正しい走行軌跡とは異なる走行軌跡を示してしまうため、結果として座標平面データを用いて走行距離を求める本発明のような方法では、緊急車両の正確な走行距離を求めることが出来ない問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決する為に、座標平面データを用いて動態間の車両の走行距離を求める車両動態管理装置を搭載する緊急車両が地図データの無いエリアを走行する場合において、マップマッチングを解除し、GPSやジャイロなどで検出した緊急車両の現在位置を座標平面データに合わせて、その座標平面データ上での緊急車両の正しい走行軌跡を得られることにより、その走行軌跡から走行距離を求めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に、本発明の車両動態管理装置は、車両位置を検出する位置検出手段と、座標平面データを管理し、前記座標平面データ上で車両位置の継続的な管理を行う座標平面データ管理手段と、前記位置検出手段で検出した車両位置と前記座標平面データ上に重畳する地図データに基づいて、マップマッチングの実行を判定するマップマッチング判定手段と、前記マップマッチング判定手段での判定結果に基づいて、車両位置のマップマッチングを行うマップマッチング処理手段と、前記座標平面データ上での車両位置の軌跡に基づいて、車両の走行距離を計測する走行距離計測手段と、他の機器と情報の送受信を行う送受信手段と、上記各手段を制御する制御手段を少なくとも備えることを特徴とする。
【0008】
このような車両動態管理装置によれば、前記位置情報検出手段で検出した車両位置を前記制御手段が取得し、前記制御手段は取得した車両位置を前記マップマッチング判定手段に出力する。前記マップマッチング判定手段は前記座標平面データ管理手段に記憶されている座標平面データを取得し、取得した車両位置と座標平面データ上に重畳されている地図データからマップマッチングを設定するか判定し、その判定結果と車両位置と座標平面データを前記マップマッチング処理手段に出力する。前記マップマッチング判定手段での判定結果がマップマッチングを解除する場合は、前記マップマッチング処理手段は取得した車両位置をマップマッチングを行わずに前記座標平面データ上に記録し、その座標平面データを前記走行距離計測手段に出力する。前記走行距離計測手段は、取得した前記座標平面データ上に記されている車両位置の軌跡から車両の走行距離を求め、その走行距離を前記制御手段に出力する。前記制御手段は前記走行距離計測手段から取得した走行距離を前記送受信手段に出力し、前記送受信手段は取得した走行距離を少なくとも基地局へ送信する。これにより、緊急車両が地図データの無いエリアを走行する場合、マップマッチングを解除して、正確な現在位置と走行距離を計測することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
このような本発明に係る座標平面データを用いて動態間の車両の走行距離を求める車両動態管理装置によれば、緊急車両が地図データの無いエリアを走行する場合、マップマッチングを解除し、GPSやジャイロなどから得られた車両位置を座標平面データに示すことで、車両位置の軌跡が得られ、その軌跡から走行距離を計測することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両動態管理装置の構成図である。
【図2】本発明において、車両が地図データの無いエリアを走行中の地図である。
【図3】本発明におけるマップマッチング判定に関するフローチャートである。
【図4】車両が地図データの有るエリアを走行中の地図である。
【図5】座標マップのイメージ図である。
【図6】従来技術において、車両が地図データの無いエリアを走行中の地図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下の弊害を是正することを目的とするものである。マップマッチング機能を有する車両動態管理装置において、地図データの存在しないエリアを車両が走行する際、マップマッチング機能により、データ上、車両が実際の走行軌跡と異なる軌跡を走行する。その異なる軌跡により、車両の走行距離を求めることが出来ない弊害があった。その弊害の解決手段として、本発明は、緊急車両が現在走行している位置の地図データの有無を判定し、地図データが無い場合は、マップマッチングを解除し、位置検出手段で検出した現在位置を緊急車両の現在位置として座標平面データに示すことで緊急車両の走行軌跡が得られることで実現した。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施の形態における車両動態管理装置の構成に関して、図1の構成図にもとづいて説明する。
【0013】
本実施形態に関わる緊急車両に搭載される車両動態管理装置は図1に記載されているように、車両位置を検出する位置検出手段と、一部に地図データが重畳された座標平面データを管理し、前記座標平面データ上での車両位置の継続的な管理を行う座標平面データ管理手段と、前記位置検出手段で検出した車両位置が、前記座標平面データ上に重畳する地図データの範囲内に存在するか否かに基づいて、マップマッチングの実行/解除を判定するマップマッチング判定手段と、前記マップマッチング判定手段での判定結果に基づいて、車両位置のマップマッチングを行うマップマッチング処理手段と、前記座標平面データ上での車両位置の軌跡に基づいて、車両の走行距離を計測する走行距離計測手段と、他の機器と情報の送受信を行う送受信手段と、上記各手段を制御する制御手段によって構成される。以下、各構成について詳述する。
【0014】
位置検出手段は、位置検出部11より構成され、衛星からの電波に基づいて車両の位置を測定するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機や物体の角度や角速度を検出するジャイロなどを使用して車両位置を検出するものである。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。
【0015】
座標平面データ管理手段は、座標平面データ管理部14より構成され、座標平面データを記録したHDDなどの記録媒体または記録手段である。この座標平面データは、緯度と経度を軸としており、図5に示すようなデータである。この座標平面データの一部分には地図データが重畳されている。なお、本実施例においては座標平面データ上に地図データが予め重畳されているが、本発明はこれに限定したものではなく、緯度、経度の情報を持った地図データと座標平面データが別々に存在し、座標平面データを読み出す時に両データの同座標が対応付けて、両方のデータを同時に読み出せるものでも良い。
【0016】
マップマッチング判定手段は、マップマッチング判定部12より構成される。マップマッチング判定部12は、前記位置検出部11が検出した車両位置を、前記座標平面データ管理部14に記憶されている座標平面データに当てはめて、その車両位置の座標が前記座標平面データ上に重畳する地図データの範囲内に存在するか否かに基づいて、マップマッチングの実行/解除を判定するものである。詳細は、後述する図3のフローチャートに示したような判定方法である。
【0017】
マップマッチング処理手段は、マップマッチング処理部13より構成される。マップマッチング処理部13は、マップマッチング判定手段の判定結果に応じて、現在位置の補正を行い、座標平面データ上に車両位置を記録するものである。例えば、マップマッチングをONにする判定の場合、前記マップマッチング判定部12から取得した車両位置を座標平面データ上に重畳されている地図データに合わせる。その車両位置の座標が地図データの道路座標と一致しない場合、現在位置を道路座標上に来るように車両位置の補正を行い、その補正した車両位置を座標平面データ上に記録する。本実施例では、車両位置を検出する毎に座標平面データ上に車両位置を記録しているが、本発明はこれに限定したものではなく、車両位置を複数回、例えば5回検出する毎に座標平面データ上に車両位置を記録しても良い。
【0018】
走行距離計測手段は、走行距離計測部15より構成される。前記走行距離計測部15は、取得した座標平面データ上に記された車両位置の軌跡に基づいて、車両の走行距離を計測するものである。具体的な走行距離の計測方法としては、例えば、座標平面データ上に記されている時間軸で連続した車両位置2地点の座標(緯度、経度)から2地点の直線距離を計算し、その直線距離を動態が変化するまでの車両位置の軌跡全てを積算することで動態間走行距離を求める方法などがある。これは、地図データの有無に関わらず、動態間走行距離を求める。
【0019】
送受信手段は送受信部16より構成され、車両動態管理装置が本部に車両の動態や走行距離などの情報を送信し、また本部から出動指令などの指令を受信するものである。車両の動態や走行距離などの情報を受信した本部は、送信した車両毎に情報を整理して記憶することで、緊急車両の動態を管理している。
【0020】
制御手段は制御部17より構成され、本発明による車両動態管理装置の所定の機能を総合的に制御するためのソフトウェアを記録したHDDのような記録媒体や、そのソフトウェアを処理するためのCPUやマイコンなどの処理装置を備え、これと接続された各部の制御を行っている。なお、本発明において、記録媒体はHDDに限定するものではなく、フラッシュメモリなどの記録媒体を用いても良い。また、表示装置に座標平面データを表示して、運転者に車両位置を知らせても良い。
【0021】
次に、本発明の実施の形態における動作について説明する。
【0022】
(第一の実施形態)緊急車両が地図データの存在する領域から地図データの無い領域へ走行する場合について、図1のシステム構成図を基に説明する。まず、始めに緊急車両は、本部からの出動指令に応じて現場に向けて出動する。この時、緊急車両の動態を“待機”から“出動”に切り替える。図4のような、車両が地図データの有る位置で、動態を“待機”から“出動”に切替えた時について以下に説明する。
【0023】
車両動態管理装置内の位置検出部11は、車両が現場に向けて走行している間、定期的に、例えば500ミリ秒間隔で緊急車両の現在位置を検出する。検出方法としては、GPS受信機で得た情報とジャイロを用いて得た情報から緊急車両の現在位置を検出する。位置検出部11で検出した現在位置についての情報を制御部17が取得し、マップマッチング判定部12に出力する。
【0024】
マップマッチング判定部12では、位置検出部11で検出した車両位置が地図データ上に有るか否かを判定する。具体的には、マップマッチング判定部12は、座標平面データ管理部14に記憶されている座標平面データを取得し、制御部17から取得した車両位置の座標が座標平面データ管理部14から取得した座標平面データ上に重畳されている地図データの範囲内であるか、他には、車両の進行方向への予測位置が地図データの範囲内であるかなどの条件を満たしているか等を判定する。
【0025】
判定手順としては図3(a)のフローチャートのような手順で判定を行う。まず初めに、ステップS31では、図3(b)のフローチャートのように車両動態管理装置がマップマッチングを実行する機能が組み込まれている確認と、車両と車両動態管理装置が実行するのに適当な状態になっているのかを判定する為に以下の条件を全て満たすか否かを判定する。一つ目の条件は、緊急車両に搭載されている車両動態管理装置にマップマッチングの機能が有ること。二つ目の条件は、緊急車両の現在の動態がマップマッチングを有効にする動態であること。例えば“出動”や“引揚”などがマップマッチングを有効にする動態である。三つ目の条件は、車両動態管理装置の表示中の地図のスケールがマップマッチングをOFFにするスケールより大きいか、または、そのスケールより小さくても詳細マップマッチングが設定されていること。この条件は、地図のスケールが小さい場合、道路が拡大され過ぎて、車両の現在位置が道路の進行方向の車線ではなく、反対車線に表示されてしまうことがある為である。ただし、前記記載の地図スケールの条件を満たしていない場合でも、マップマッチングをONにする設定がされている場合は、マップマッチングをONにする。以上、三つの条件を全て満たす場合YESとなりステップ32に進み、一つでも条件を満たさない場合はNOとなりマップマッチングをOFFにする判定になる。本実施例では、緊急車両は上記全てを満たすので、YESとなりステップ32に進む。
【0026】
ステップS32では、図3(c)のフローチャートのようにマップマッチングを解除する設定、動態、状況ではないことを確認する為に、以下の条件の内一つでも該当するか否かを判定する。一つ目の条件は、緊急車両が署所の車庫位置にいる時にマップマッチングを解除する設定になっていないこと。二つ目の条件は、緊急車両の現在の動態が車庫位置でマップマッチングを解除する動態ではないこと。例えば、マップマッチングを解除する動態としては車両が車庫に戻った時の“帰署”があり、マップマッチングを解除しない動態としては“出動”、“引揚”がある。三つ目の条件は、車両の現在位置が署所の車庫ではないこと。以上、三つの条件の内一つでも満たす場合はYESとなりステップ33に進み、三つの条件全て満たさない場合はNOとなりマップマッチングをOFFにする判定になる。本実施例では、緊急車両の現在位置は署所の車庫では無く、一般道路を走行しているので、YESとなりステップ33に進む。
【0027】
ステップS33では、車両がこれから進行する方向の予測位置を求め、その予測位置の地図データの有無を判定する。この予測位置は、現在の車両位置から進行方向に予め決められた距離、例えば50m進んだ先の地点である。地図データが有る場合はYESとなりステップ34に進み、地図データが無い場合はNOとなりマップマッチングをOFFにする判定になる。本実施例では、緊急車両の進行方向の予測位置に地図データがあるので、YESとなりステップ34に進む。
【0028】
ステップS34では、車両位置が地図データの範囲内で有るか否かを判定する。地図データが有る場合は、YESとなりステップ35に進み、地図データが無い場合はNOとなりマップマッチングをOFFにする判定になる。本実施例では、緊急車両は地図データが有る領域を走行中なので、YESとなりステップ35に進む。
【0029】
ステップS35では、マップマッチングを有効にする状態であるか否かを確認する為に、以下の条件を満たすか否かを判定する。一つ目の条件は、現在、車両動態管理装置のマップマッチング機能が有効状態であること。この条件は、現在車両動態管理装置の状態がマップマッチング実行中であるか否かを確認するものである。二つ目の条件は、マップマッチングを有効にする所定速度以上であること。これは、本実施例におけるマップマッチング機能は緊急車両が走行中の場合のみ機能するためであり、一定の速度以上の時、車両が走行中であると判断される為である。以上、二つの条件の内いずれか一つでも満たす場合は、YESとなりマップマッチングをONの判定にする、どちらも満たさない場合はNOとなりマップマッチングをOFFの判定にする。本実施例では、緊急車両はマップマッチング中なので、YESとなりマップマッチングをONの判定になる。そして、マップマッチング判定部12で判定をした結果と車両位置と座標平面データを、マップマッチング処理部13に出力する。
【0030】
マップマッチング判定部12の判定結果をマップマッチング処理部13が実行し、車両位置を求め、求めた車両位置を座標平面データ上に記録し、その座標平面データを走行距離計測部15に出力する。本実施例では、マップマッチングをONの状態にする判定なので、マップマッチング処理部13はマップマッチングを用いて、取得した緊急車両の車両位置を座標平面データ上に重畳されている地図データの道路上に補正する。補正方法としては、マップマッチング処理部13が取得した車両位置をマップマッチング判定部12から取得した座標平面データ上に合わせる。その取得した車両位置の座標が座標平面データ上に重畳されている地図データの道路上の座標と一致していない場合、車両の車両位置を地図データの道路上に来るように補正をする。そして、その地図データの道路上の位置座標を車両位置の座標とし、その車両位置を座標平面データに記録し、その座標平面データを走行距離計測部15に出力する。なお、必要に応じて予めユーザがマップマッチングを解除するように設定することができる。
【0031】
走行距離計測部15はマップマッチング処理部13から取得した座標平面データに記されている地点と前回座標平面データ上に記されている地点との間の距離を求める。そして、走行距離計測部15内に記憶されている前回地点までに求めた走行距離に今回求めた距離を加算し、“出動”へ動態を変化した時から今回記録された位置までの走行距離を求める。その求めた走行距離を制御部17に出力する。車両位置の軌跡を記録した座標平面データを制御部17を介して、座標平面データ管理部14に戻す。座標平面データ管理部14は取得した座標平面データを保存する。
【0032】
以上の作業を車両動態管理装置は繰り返し行う。この作業を繰り返して、図2のように、車両が地図データの無い領域に到達した状態について以下に説明する。
【0033】
まず、車両が図4の状態の場合と同様に、位置検出部11で車両の現在位置を検出する。その検出した車両位置を制御部17は位置検出部11から取得し、マップマッチング判定部12に出力する。
【0034】
次に、マップマッチング判定部12は図3のフローチャートに記載されている判定手順に従って判定を行う。図2のように車両が地図データの無いエリアを走行し、ステップS31、ステップS32の判定がYESとなる場合、マップマッチング判定部12の判定はステップS33まで進む。ステップS33の判定基準は車両の進行方向の予測位置に地図データが有るか否かである。図2に示すように、車両(図2の下向き三角形)の進行方向には地図データがない為、ステップ33の判定はNOとなりマップマッチングを解除するステップに進む。これにより、マップマッチング判定部12でマップマッチングをOFFにする判定になる。その結果をマップマッチング処理部13に出力する。本実施例では、車両位置が地図データの範囲内であっても、車両の進行方向に地図データが無い場合は予めマップマッチングを解除しておく。これにより、地図データの有るエリアと無いエリアの境目を車両が走行した場合、マップマッチングの実行と解除が何度も切替わることがなくなる。
【0035】
マップマッチング処理部13は、マップマッチング判定部12の判定結果を受けて、マップマッチングをOFFにし、マップマッチングによる車両位置の補正は行わず、前記マップマッチング判定部より取得した車両位置の座標を座標平面データに記録し、その座標平面データを走行距離計測部15に出力する。
【0036】
走行距離計測部15はマップマッチング処理部13から取得した座標平面データに記録されている地点と前回記録された地点との間の距離を求める。そして、走行距離計測部15内に記憶されている前回地点までに求めた走行距離に今回求めた距離を加算し、“出動”へ動態を変化した時から今回記録された位置までの走行距離を求める。その求めた走行距離を制御部17に出力する。
【0037】
以上の作業を車両が現場に到着するまで、繰り返し行う。車両が現場に到着すると、車両動態管理装置は車両の動態を“現場到着”に切替える。動態を切替えた時、車両が“出動”動態時に走行した距離や、車両位置などの情報を車両動態管理装置内の送受信部16が制御部17より取得し、本部に送信する。情報を受信した本部は送信した車両毎に情報を整理して記録し、管理する。本実施例のように、車両の動態間走行距離や送信時の車両位置などの情報を、動態が切替わった時に送受信部16が本部に送信する。
【0038】
(第二の実施形態)緊急車両が地図データの無い領域の病院から地図データの有る領域の署所へ引き揚げる場合について、図1のシステム構成図を基に説明する。病院に人を搬送し終え署所に引き上げる時、車両の動態を“病院到着”から“引揚”に切替える。図2のような、車両が地図データの無い位置で動態を“引揚”に切替えた後について以下に説明する。
【0039】
第一の実施形態と同様に、動態を“引揚”に切替えてから署所までの走行中、緊急車両は500ミリ秒間隔で緊急車両の現在位置を検出する。制御部17は位置検出部11より検出した車両位置を取得し、その車両位置をマップマッチング判定部12に出力する。
【0040】
マップマッチング判定部12では、位置検出部11で検出した車両位置が座標平面データ上に重畳されている地図データ上に有るか否かを判定する。本実施例では図2に示しているように、緊急車両は地図データが無い領域を走行しているため、マップマッチングをOFFにする判定となる。その判定結果と車両位置と座標平面データをマップマッチング判定部12はマップマッチング処理部13に出力する。
【0041】
マップマッチング処理部13は、マップマッチング判定部12の判定結果を受けて、マップマッチングをOFFにし、マップマッチングによる車両位置の補正は行わず、前記マップマッチング判定部より取得した車両位置の座標を座標平面データに記録し、その座標平面データを走行距離計測部15に出力する。
【0042】
走行距離計測部15はマップマッチング処理部13から取得した座標平面データに記録されている地点と前回座標平面データに記録されている地点との間の距離を求める。そして、走行距離計測部15内に記憶されている前回地点までに求めた走行距離に今回求めた距離を加算し、“引揚”へ動態を変化した時から今回記された位置までの走行距離を求めることが出来る。その求めた走行距離を制御部17に出力する。車両位置の軌跡を記録した座標平面データを制御部17を介して、座標平面データ管理部14に戻す。座標平面データ管理部14は取得した座標平面データを保存する。以上の作業を、車両が地図データの有る領域に入るまで繰り返し行う。
【0043】
車両が図4のように地図データが存在する領域にまで走行してきた場合、マップマッチング判定部12はマップマッチングをONにする判定を行う。その判定結果を受けて、マップマッチング処理部13は、マップマッチングによる補正をし、車両位置を求める。その車両位置の座標を座標平面データに記録し、その座標平面データを走行距離計測部15に出力する。走行距離計測部15は取得した座標平面データに記録されている地点と前回座標平面データに記されている地点との間の距離を求める。そして、走行距離計測部15内に記憶されている前回地点までに求めた走行距離に今回求めた距離を加算し、“引揚”へ動態を変化した時から今回記された位置までの走行距離を求める。その求めた走行距離を制御部17に出力する。車両位置の軌跡を記録した座標平面データを制御部17を介して、座標平面データ管理部14に戻す。座標平面データ管理部14は取得した座標平面データを保存する。
【0044】
以上の作業を車両が署所に到着するまで、繰り返し行う。車両が署所に到着すると、車両の動態を“帰署”に切替える。動態を切替えた時、車両が“引揚”動態時に走行した距離や、車両位置などの情報を車両動態管理装置内の送受信部16が制御部17より取得して、本部に送信する。情報を受信した本部は送信した車両毎に情報を整理して記録し、管理する。
【0045】
なお、本実施例では、マップマッチング判定基準として図3のフローチャートに示した流れで判定を行なったが、本発明はこの手順に限定したものではなく、各ステップでの判定だけや、各々ステップを組み合わせた判定基準を用いても良い。例えば、現在位置の地図データの有無だけで判定を行っても良く、また、現在位置が地図データの範囲内で在るか否かと進行方向の予測位置が地図データの範囲内で在るか否かの両方だけで判定を行っても良い。
【0046】
また、前記走行距離計測部15での走行距離を計測する方法、本実施例の方法に限定されるものではなく、例えば、1秒毎に車両位置間の走行距離を求め、3秒間分の走行距離の平均走行距離を積算して全体の走行距離を求めても良い。
【符号の説明】
【0047】
11 位置検出部
12 マップマッチング判定部
13 マップマッチング処理部
14 座標平面データ管理部
15 走行距離計測部
16 送受信部
17 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両位置を検出する位置検出手段と、
一部に地図データが重畳された座標平面データを管理し、前記座標平面データ上での車両位置の継続的な管理を行う座標平面データ管理手段と、
前記位置検出手段で検出した車両位置が、前記座標平面データ上に重畳する地図データの範囲内に存在するか否かに基づいて、マップマッチングの実行を判定するマップマッチング判定手段と、
前記マップマッチング判定手段での判定結果に基づいて、車両位置のマップマッチングを行うマップマッチング処理手段と、
前記座標平面データ上での車両位置の軌跡に基づいて、車両の走行距離を計測する走行距離計測手段と、
他の機器と情報の送受信を行う送受信手段と、
上記各手段を制御する制御手段とを少なくとも備えた車両動態管理装置であって、
前記マップマッチング判定手段にてマップマッチングを解除すると判定された場合は、前記マップマッチング処理手段でマップマッチングを行わず、前記位置検出手段で検出した車両位置を前記座標平面データ上に記録することで、車両位置の軌跡を管理することを特徴とする車両動態管理装置。
【請求項2】
車両位置を検出する位置検出手段と、
一部に地図データが重畳された座標平面データを管理し、前記座標平面データ上での車両位置の継続的な管理を行う座標平面データ管理手段と、
前記位置検出手段で検出した車両位置が、前記座標平面データ上に重畳する地図データの範囲内に存在するか否かに基づいて、マップマッチングの実行を判定するマップマッチング判定手段と、
前記マップマッチング判定手段での判定結果に基づいて、車両位置のマップマッチングを行うマップマッチング処理手段と、
前記座標平面データ上での車両位置の軌跡に基づいて、車両の走行距離を計測する走行距離計測手段と、
他の機器と情報の送受信を行う送受信手段と、
上記各手段を制御する制御手段とを少なくとも備えた車両動態管理装置であって、
前記位置情報検出手段で検出した車両位置を前記制御手段が取得し、
前記制御手段は取得した車両位置を前記マップマッチング判定手段に出力し、
前記マップマッチング判定手段は前記座標平面データ管理手段に記憶されている座標平面データを取得し、
前記マップマッチング判定手段は取得した車両位置と座標平面データからマップマッチングを設定するか判定し、その判定結果と車両位置を前記マップマッチング処理手段に出力し、
前記マップマッチング判定手段での判定結果がマップマッチングを解除する場合は、前記マップマッチング処理手段は取得した車両位置をマップマッチングを行わずに前記座標平面データ上に記し、その座標平面データを前記走行距離計測手段に出力し、
前記走行距離計測手段は、取得した前記座標平面データ上に記されている車両位置の軌跡から車両の走行距離を求め、その走行距離を前記制御手段に出力し、
前記制御手段は前記走行距離計測手段から取得した走行距離を前記送受信手段に出力し、
前記送受信手段は取得した走行距離を少なくとも基地局へ送信することを特徴とする車両動態管理装置。
【請求項3】
前記マップマッチング処理手段が車両位置を記した座標平面データを画面上に表示する表示装置を有することを特徴とする請求項1、2に記載の車両動態管理装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175434(P2010−175434A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19469(P2009−19469)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】