説明

マトリクスを含まない骨形成デバイス、移植片、およびその使用方法

【課題】骨形成タンパク質とマトリクスとの混合物についての必要性を不必要にする、骨欠損、軟骨欠損、および/または骨軟骨欠損を修復するためのデバイス、移植片、およびその使用方法を提供すること。
【解決手段】哺乳動物において、空隙を限定する欠損を充填するのに十分な骨形成を誘導するための方法が本明細書中で提供され、ここで骨形成タンパク質は、単独で提供されるか、または限定された表面を有さない、生体適合性の軟式非晶質キャリア中に分散される。方法およびデバイスは、危険な大きさの欠損を充填するため、ならびに危険でない大きさの欠損における骨形成の速度を加速し、そしてその質を増強するための、注射用処方物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(継続出願データ)
本願は、先願である1997年2月7日に出願されたU.S.S.N.60/037,327(代理人整理番号第CRP−111PR号)、および1997年5月29日に出願されたU.S.S.N.60/047,909(代理人整理番号第CRP−147PR号)に基づいている。これらの両方の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本明細書中に開示される本発明は、骨形成タンパク質を用いて骨欠損を修復するための材料および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
前駆細胞の、機能的な骨、軟骨、腱および/または靭帯組織への増殖および分化をそれ自体で誘導し得る、真の軟骨形成組織モルフォゲンとして作用する能力がある、あるクラスのタンパク質が現在同定されている。これらのタンパク質は、本明細書中で「骨形成タンパク質」または「形態形成タンパク質」または「モルフォゲン」と呼ばれ、異所性の軟骨内性骨形態形成を誘導するそれらの能力により最初に同定された、骨形態形成タンパク質(BMP)ファミリーのメンバーを含む。骨形成タンパク質は、一般的に、増殖因子のTGF−βスーパーファミリーのサブグループとして当該分野で分類される(非特許文献1)。タンパク質のモルフォゲンファミリーのメンバーは、哺乳動物骨形成タンパク質−1(OP−1、BMP−7およびDrosophilaホモログ60Aとしても知られる)、骨形成タンパク質−2(OP−2、BMP−8としても知られる)、骨形成タンパク質−3(OP−3)、BMP−2(BMP−2AまたはCBMP−2A、およびDrosophilaホモログDPPとしても知られる)、BMP−3、BMP−4(BMP−2BまたはCBMP−2Bとしても知られる)、BMP−5、BMP−6、ならびにそのマウスホモログVgr−1、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、GDF3(Vgr2としても知られる)、GDF8、GDF9、GDF10、GDF11、GDF12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、GDF−5(CDMP−1またはMP52としても知られる)、GDF−6(CDMP−2としても知られる)、GDF−7(CDMP−3としても知られる)、XenopusホモログVglおよびNODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、ならびにNEURALを含む。このファミリーのメンバーは、共通の構造特色を共有し、二量体化する能力がある成熟ポリペプチド鎖を生じるための前駆体「プロ形態」からのプロセシングを含み、そして約97〜106アミノ酸のカルボキシ末端活性ドメインを含む、分泌ポリペプチド鎖をコードする。全てのメンバーは、このドメインにおけるシステインの保存パターンを共有し、そしてこれらのタンパク質の活性形態は、単一のファミリーメンバーのジスルフィド結合ホモ二量体、または2つの異なるメンバーのヘテロ二量体のいずれかであり得る(例えば、非特許文献2;非特許文献3を参照のこと)。特許文献1;特許文献2、非特許文献4、非特許文献5)、(非特許文献6、および特許文献3);(非特許文献7);(非特許文献8)もまた参照のこと。これらの開示は、これらの骨形成タンパク質の、アミノ酸およびDNA配列ならびに化学的および物理的特徴を記載する。非特許文献9);BMP9(特許文献4、1993年1月7日に公開);DPP(非特許文献10);およびVg−1(非特許文献11)もまた参照のこと。
【0004】
従って、軟骨内性骨形成を生じる形態形成事象の上記のカスケードを誘導し得る真の骨形成タンパク質は、現在、同定され、単離され、そしてクローニングされている。天然に存在しても、または合成的に調製されても、これらの骨形成因子は、遊走性前駆細胞の接着、増殖、および分化を可能にする従来のマトリクスまたは基質に関連して哺乳動物に移植された場合、接近可能な前駆細胞の漸増を誘導し、そしてそれらの増殖を刺激し、それにより軟骨細胞および骨芽細胞への分化を誘導し、そして中間軟骨の分化、血管新生、骨形成、再造形、および最後に骨髄分化をさらに誘導することが示されている。さらに、非常に多くの開業医は、これらの骨形成タンパク質が、天然に供給されるマトリクス材料(例えば、コラーゲン)または合成的に調製されたポリマーマトリクス材料のいずれかと混合された場合に、本当の置換骨が他の状態で起こらない条件下で骨形成(軟骨内性骨形成を含む)を誘導する能力を証明した。例えば、マトリクス材料と組み合わされた場合、これらの骨形成タンパク質は、大きな分節性骨欠損、脊髄固定、および骨折において新骨の形成を誘導する。例外なく、上記で参照された開示の各々は、骨形成タンパク質およびマトリクスの混合物を用いて欠損部位を包み、充填し、そして/または巻きつけることによる欠損部位での骨形成タンパク質の移植または送達を記載し、マトリクスの相対的な容量および表面積はかなりある。自発的に治癒しない非癒合欠損の場合、これまで、多量のマトリクス−骨形成因子混合物を欠損部位に移植することが従来の実施であり、この容量は、後の新骨形成用の3次元的足場を提供するために欠損を充填するのに十分である。標準的な骨折は自発的におよび処置なく治癒し得るが、一方、当該分野が骨折を骨形成タンパク質を用いて処置することを意図した程度まで、治癒を促進するためにマトリクスと共に骨形成タンパク質を欠損部位に局所的に提供することは、当該分野における実施されていた。
【0005】
多量のマトリクスを移植することは従来の知恵であり得るが、一方、特に、非治癒非癒合欠損の場合、臨床結果は、この実施の結果として特定の患者において、発生し得る。例えば、繰り返された構築または欠損修復を受けているか、またはマトリクス容量が多い患者は、コラーゲンに由来するマトリクスに対して有害な免疫学的反応を発生し得る。コラーゲンマトリクスは精製され得るが、特定の患者に強くアレルギー性である残留レベルの汚染物が残り得る。あるいは、脱鉱化された自原性、同種異系、または異種性の骨マトリクスは、コラーゲンの代わりに使用され得る。このようなマトリクスは、コラーゲンより力学的に優れており、そしていくつかの場合において有害な免疫反応を未然に防ぎ得るが、適切な調製物は、高価で多くの時間を必要とし、そして骨の信頼できる供給源の入手可能性が制限され得る。このような天然に供給されるマトリクスは、不活性材料(例えば、プラスチック)と取り替えられ得るが、プラスチックは、再吸収せず、そして単純な幾何学的外形を必要とする適用に制限されるので、適切な代用品ではない。現在まで、生分解性ポリマーおよびコポリマーもまた、非癒合欠損の修復のために骨形成タンパク質と混合されるマトリクスとして使用されてきた。このようなマトリクスは、上記の不十分のいくつかを克服し得るが、一方、これらのマトリクスの使用は、特性(例えば、ポリマー化学、粒子の大きさ、生体適合性、および操作可能性に重要な他の事項)の決定および制御をなお必要とする。
【0006】
さらに、後天的または先天的状態のために、通常、自発的修復を受ける骨折または他の欠損を治癒する能力が低減している個体は、外科的手順を必要とすることなく骨および/または軟骨の修復を増強し得る方法および注射用組成物から利益を得る。最後に、注射用処方物はまた、外科的手順を必要とすることなく骨軟骨または軟骨の欠損を修復するための手段を提供する。
【0007】
マトリクス成分にたよらない、骨欠損を修復するためのデバイス、移植片、および方法の必要性が残存する。レシピエントを傷つけ得、そして/または生体力学的およびねじれ的に理想的であり得ない空間充填マトリクス材料の付随した送達なく、骨誘導量の骨形成タンパク質の送達を可能にする、デバイス、移植片、および方法の特定の必要性が残存する。新骨形成の速度を速め、そしてその質を増強し得る、方法およびデバイス(特に、注射用デバイス)を提供するための必要性もまた残存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,011,691号明細書
【特許文献2】米国特許第5,266,683号明細書
【特許文献3】米国特許第5,266,683号明細書
【特許文献4】国際公開第93/00432号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hogan(1996)Genes&Development 10:1580−1594
【非特許文献2】Massague(1990)Annu.Rev.Cell Biol.6:597
【非特許文献3】Sampathら、(1990)J.Biol.Chem.265:13198
【非特許文献4】Ozkaynakら(1990)EMBO J. 9:2085−2093
【非特許文献5】Whartonら(1991)PNAS 88:9214−9218
【非特許文献6】Ozkaynak(1992)J.Biol.Chem. 267:25220−25227
【非特許文献7】Celesteら(1991)PNAS 87:9843−9847
【非特許文献8】Lyonsら(1989)PNAS 86:4554−4558
【非特許文献9】Wozneyら(1988)Science 242:1528−1534
【非特許文献10】Padgettら(1987)Nature 325:81−84
【非特許文献11】Weeks(1987)Cell 51:861−867
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、骨形成タンパク質とマトリクスとの混合物についての必要性を不必要にする、骨欠損、軟骨欠損、および/または骨軟骨欠損を修復するためのデバイス、移植片、およびその使用方法を提供することが、本発明の目的である。本発明は、非治癒非癒合欠損を修復するため、ならびに脊髄固定および骨折のために増強した骨形成を促進するため、ならびに軟骨または骨軟骨の欠損において関節軟骨修復を促進するための、マトリクスを含まない骨形成デバイス、移植片、およびその使用方法を提供する。本明細書中に開示された本発明の利点および特色と共に、これらのおよび他の目的は、以下の説明、図面、および請求の範囲から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、骨形成または骨形態形成タンパク質(例えば、OP−1)が、単独で、または適切なキャリアと混合され、そして従来のマトリクス材料と混合されない場合に、臨界サイズの分節性骨欠損を修復するのに十分な軟骨内性骨形成を誘導し得るという発見に基づく。従って、この発見は、これがマトリクス材料の排除を可能にするので、骨欠損を修復するための従来の材料および方法に関連した上記の問題を克服する。さらに、現存する整形外科的および再構成的実施を考慮して、この発見は予期されず、そして骨修復/形成プロセスの当該分野の現在の理解に矛盾する。
【0012】
本明細書中に開示されるように、骨形成タンパク質は、哺乳動物に提供された場合、非癒合骨欠損、骨折および融合の修復を促進するのに効果的であるマトリクスを含まないデバイスを形成するために、本明細書中に定義されるようなキャリアと混合され得ることが現在認識される。本明細書中に開示されるように、欠損部位で3次元的構造成分を提供することも必要なく、局所的欠損部位で新骨形成を誘導するための方法およびデバイスが提供される。本明細書中に意図されるように、「マトリクスを含まない」骨形成デバイスは、それがレシピエントに提供される時にマトリクスのないデバイスである。用語「マトリクス」は、3次元的形態を有し、そしてその上で軟骨内性骨形態形成に関与する特定の細胞事象が起こる、構造的成分または基質を意味することが理解され;マトリクスは、このような細胞の接着、増殖、および分化のための隙間を有する、細胞を浸潤させるための一時的な足場構造として作用する。
【0013】
本発明は、それゆえ、1つの局面において、欠損を修復するのに十分な、哺乳動物における骨形成を誘導するための新規の方法を提供する。1つの実施態様は、マトリクスを含まない骨形成デバイスを、空隙を限定する欠損位置に提供する工程を含む。マトリクスを含まないデバイスは、骨形成タンパク質単独からなり得るか、または限定された表面を有さない生体適合性の軟式非晶質キャリアとの混合物中の骨形成タンパク質からなり得る。この方法は、欠損位置を充填する新骨形成を誘導し、それにより欠損を修復する。本明細書中で意図されるように、この方法は、マトリクスを含まない骨形成デバイスを欠損位置に提供することを含み、ここでデバイスは、欠損位置での空隙を充填するのに不十分な容量で提供される。特定の実施態様において、空隙は、内因性または自発的な修復が不可能な容量を含む。本発明の方法による修復に適切な欠損の例は、臨界サイズの分節性欠損および非癒合骨折を含むが、それらに制限されない。
【0014】
別の実施態様において、本発明は、本明細書中に記載されるマトリクスを含まない骨形成デバイスを骨折欠損部位に提供することにより、骨折修復を増強するための方法および組成物を提供する。本明細書中に記載されるデバイスが骨折修復を実質的に増強する(新たに形成される骨の速度を速め、そしてその質を増強することを含む)能力は、傷つけられた個体(例えば、糖尿病患者、喫煙家、肥満個体、および後天的または先天的状態のために骨折を治癒する能力が低減している他の人(両手両足への血流が損われている個体を含む))において骨治癒を改善することに関係する。
【0015】
別の局面において、本発明は、哺乳動物において欠損を修復するのに十分な骨形成を誘導するための移植片を提供する。1つの好ましい移植片は、空隙を限定する欠損位置に配置された、マトリクスを含まない骨形成デバイスを含む。上記の方法の実施(すなわち、足場構造がない骨形成デバイスを欠損位置で哺乳動物に提供すること)は、非癒合骨欠損、骨折、および融合の修復を促進するのに十分な、新骨形成を誘導する能力がある移植片を生じる。欠損位置での骨形成デバイスの配置の際に、このように形成された移植片は、欠損空隙を充填するのに不十分な容量を有する。
【0016】
なお別の局面において、本発明は、哺乳動物において骨形成を誘導するためのマトリクスを含まない骨形成デバイスを提供する。本明細書中で意図されるように、好ましい骨形成デバイスは、適切なキャリア中に分散される骨形成的に活性なタンパク質を含む。好ましい骨形成タンパク質は、OP−1、OP−2、BMP−2、BMP−4、BMP−5、およびBMP−6(以下を参照のこと)を含むが、それらに制限されない。本明細書中に開示されるように、好ましいキャリアは、限定された表面または3次元的構造特色を有さず、生体適合性であり、軟式であり、そして非晶質である。従って、本発明のデバイスは、哺乳動物に投与された場合に、足場構造を欠き、そしてマトリクスを実質的に含まない。好ましいキャリアの例は、プルロニック(Pluronic)およびアルキルセルロースを含むが、それらに制限されない。上記で議論されたように、本発明の方法は、デバイス容量が欠損位置で空隙容量を充填するのに不十分であるように、このようなデバイスを欠損位置に提供することを含む。
【0017】
本発明の方法、移植片、およびデバイスはまた、軟骨欠損または骨軟骨欠損の修復を誘導し、そして促進または増強する能力がある。この発見の結果として、外科的手順を必要とすることなく骨および/または軟骨の修復を促進するための手段が現在利用可能である。特に、骨折修復を増強するための方法として、適切な処方物が骨折を整骨する時に骨折部位に注射されて、新骨形成の速度を速め、そしてその質を増強し得ることが意図される。
【0018】
本発明のデバイスは、種々の外形を有し得る。デバイスの性質は、骨形成タンパク質が分散されるキャリアの型に依存する。例えば、1つの好ましい実施態様は、ペースト状またはパテ状配置を有し得る;このようなデバイスは、骨形成タンパク質をゲル状キャリア(例えば、PluronicTMキャリアまたはアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース))中に分散させ、次いでこれを適切な湿潤剤(例えば、生理食塩水)で湿らせることから生じ得る。別の好ましい実施態様は乾燥粉末外形を有し得;このようなデバイスは、最初に、骨形成タンパク質を液体キャリア(例えば、賦形剤を含むかまたは含まない水)中に分散させ、続いて凍結乾燥を行うことから生じ得る。第3の処方物は、溶液(例えば、このタンパク質を、例えば、pH4.0〜4.5の酸性緩衝化溶液(例えば、酢酸またはクエン酸緩衝液)と共に組み合せることによる)である。さらに別の処方物は、骨形成タンパク質を生理学的緩衝化溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS))中に分配することにより形成された懸濁物である。デバイスの外形に依存して、デバイスを欠損位置に提供することは、種々の送達プロセスにより達成され得る。例えば、ペーストは、欠損位置の1表面に沿って覆うビーズとして押し出され得る。あるいは、粘性液体は、欠損位置の1つ以上の表面に沿ってブラシをかけられるかもしくは塗布され、または幅の広い径の針を通じて注射され得る。あまり粘性でない液体は、細い径の針に通して注射され得る。他の外形および送達の態様が意図され、そしてより詳細に以下で議論される。
【0019】
一般的に、本発明のタンパク質は、軟骨内性骨形態形成を誘導する二量体タンパク質である。骨形成タンパク質は、フォールディングされた場合、得られた二量体タンパク質が形態形成応答を誘発するのに十分な配置を採用する、1対のポリペプチドを含む。すなわち、骨形成タンパク質は、一般的に、形態形成的に許容的な環境において以下の生物学的機能の全てを誘導する:前駆細胞の増殖を刺激する;前駆細胞の分化を刺激する;分化細胞の増殖を刺激する;ならびに分化細胞の増殖および維持を支持する。前駆細胞は、それらのゲノムレパートリーおよび形態形成が誘導される許容環境の組織特異性に依存して、1つ以上の特定の型の分化細胞へ分化する能力がある中立細胞である。本発明において、骨形成タンパク質は、軟骨内性骨形成を代表する形態形成カスケードを誘導し得る。
【0020】
本明細書中で使用する用語「モルフォゲン」、「骨モルフォゲン」、「骨形態形成タンパク質」、「BMP」、「骨形成タンパク質」、および「骨形成因子」は、ヒト骨形成タンパク質1(hOP−1)により代表されるタンパク質のクラスを含む。hOP−1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1および2において提供される。説明の容易さのために、hOP−1は、代表的な骨形成タンパク質として本明細書中以下に列挙される。しかし、OP−1は、骨形成タンパク質として作用する能力がある真の組織モルフォゲンのTGF−βサブクラスを単に代表し、そして記載を制限すると意図されないことが当業者により認識される。他の既知のおよび有用なタンパク質は、BMP−2、BMP−3、BMP−3b、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NURAL、およびそれらの骨形成的に活性なアミノ酸改変体を含む。1の好ましい実施態様において、本発明において有用なタンパク質は、任意のこれらのタンパク質の生物学的に活性な種改変体を含み、これは、保存的アミノ酸配列改変体、縮重ヌクレオチド配列改変体によりコードされるタンパク質、および本明細書中に定義されるような保存された7つのシステイン骨格を共有し、そして本明細書中に開示される骨形成タンパク質をコードするDNA配列にハイブリダイズする能力があるDNA配列によりコードされる骨形成的に活性なタンパク質を含む。さらに別の実施態様において、有用な骨形成タンパク質は、保存された7つのシステインドメインを共有し、そして本明細書中で定義されるようなC末端活性ドメイン内で、少なくとも70%のアミノ酸配列相同性(類似性)を共有する骨形成タンパク質を含む。
【0021】
さらに別の実施態様において、本発明の骨形成タンパク質は、本明細書中に定義される一般配列(OPXならびに一般配列7および8または一般配列9および10を含む)のいずれか1つを有する骨形成的に活性なタンパク質として定義され得る。OPXは、骨形成OP1およびOP2タンパク質の種々の種間での相同性を提供し、そして本明細書中以下および配列番号3に示されるアミノ酸配列により記載される。一般配列9は、hOP1により定義される6つのシステイン骨格を含む96アミノ酸配列であり(配列番号2の残基330〜431)、そしてここで残りの残基は、OP1、OP2、OP3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−15、GDF−1、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、UNIVIN、NODAL、DORSALIN、NURAL、SCREW、およびADMPの相同性を提供する。すなわち、非システイン残基の各々は、この列挙された群のタンパク質における対応する残基から独立して選択される。一般配列10は、hOP1により定義される7つのシステイン骨格を含む102アミノ酸配列であり(配列番号2の335〜431)、そしてここで残りの残基は、上記で列挙されたタンパク質群の相同性を提供する。
【0022】
本明細書中で意図されるように、この骨形成タンパク質ファミリーは、所定のタンパク質のより長い形態、ならびに系統発生的(例えば、種および対立遺伝子的)改変体、および生合成変異体を含み、これは、タンパク質が、哺乳動物に移植された場合、これらの改変が哺乳動物において骨形成を誘導し得る外形を有する二量体種をなお形成し得るのであれば、C末端付加および欠失変異体および改変体(例えば、保存C末端システイン骨格を変え得る変異体および改変体を含む)を含む。さらに、本発明において有用な骨形成タンパク質は、種々のグリコシル化パターンおよび種々のN末端を有する形態を含み得、天然に生じるか、または生合成に由来し得、そして原核生物または真核生物宿主細胞における組換えDNAの発現により生成され得る。タンパク質は、単一種として(例えば、ホモ二量体として)活性であるか、または混合された種(ヘテロ二量体を含む)として組み合わされる。
【0023】
本発明の方法および移植片は、骨形成タンパク質が、動物において、臨界サイズの骨欠損を充填するか、または骨折修復を増強するのに十分な骨形成を誘導するためのキャリアを必要としない。このタンパク質が、本発明の実施においてキャリアと結合して提供された場合、キャリアは、上記で述べられたように足場構造を欠かなければならない。好ましいキャリアは骨形成タンパク質と混合された場合、本明細書中に定義されるようなマトリクスを実質的に含まないデバイスが形成される。「マトリクスを実質的に含まない」は、投与前に処方されるようなキャリア含有デバイスが、それ自体で足場として作用する能力がある基質を含まないことを意味すると理解される。すなわち、デバイスは、外来性供給源から導入され、そして足場として作用する能力がある基質を含まない。別の方法を述べると、送達前に、キャリアは、その化学的性質の長所により、足場構造をデバイスに与え得ないと認識される。定義により、好ましいキャリアは、限定された表面を有さず、生体適合性であり、軟式であり、そして非晶質である。本明細書中で使用する「軟式」は、弛緩しもしくは平たく(plaint)、または別の状態で、1つ以上の限定された表面を有する3次元的構造を実質的に提供または形成し得ない、キャリア処方物を意味する。本明細書中で使用する「非晶質」は、明確な3次元的形態または特定の形状を欠くこと、すなわち、特定の形状または形態を有さないか、あるいは中間の形状または形態を有することを意味する。好ましいキャリアはまた、生体適合性であり、非粒状であり、骨、軟骨および/または筋肉に対して接着性であり、そして不活性である。特定の実施態様において、水溶性キャリアが好ましい。さらに、好ましいキャリアは、本発明のデバイスに有意な容量を与えない。すなわち、好ましいキャリアは、得られるデバイスの最終容量が欠損位置での空隙の容量未満になるように、骨形成タンパク質の分散を可能にする。以下で議論されるように、好ましいキャリアは、ゲル、水溶液、懸濁物、または粘性液体であり得る。例えば、特に好ましいキャリアは、プルロニック、アルキルセルロース、酢酸緩衝液、生理学的食塩水溶液、ラクトース、マンニトールおよび/または他の糖を含み得るが限定されない。あるいは、骨形成タンパク質は、欠損部位に単独で提供され得る。
【0024】
要約すると、本発明の方法、移植片、およびデバイスは、特に、骨折および融合(脊髄固定を含む)の修復において、自発的に治癒しない骨欠損を修復するのに、ならびに新骨形成の速度および/または質を促進および増強するのに十分な軟骨内性骨形成および膜内骨形成を誘導するために使用され得る。この方法、移植片、およびデバイスはまた、骨軟骨および/または軟骨下の欠損の修復を誘導する能力がある。すなわち、この方法、移植片、およびデバイスは、新骨および上に重なる表面軟骨の形成を誘導する能力がある。本発明は、特に、コラーゲンまたはマトリクスアレルギー性レシピエントにおける使用に適する。特に、反復再構成手術を必要とする患者、ならびに金属関節を用いる再構成手順に対する代替としてガン患者における使用にもまた適する。本発明はまた、自発的な骨修復を受ける能力が損なわれた個体(例えば、糖尿病患者、喫煙家、肥満個体、免疫が傷つけられた個体、および両手足への血流が低減した任意の個体)に有用である。他の適用は、人工装具修復、脊髄固定、側弯、頭部/顔面修復、および広範囲に及ぶ同種異系移植片修復を含むが、それらに制限されない。
【0025】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)哺乳動物において、空隙を限定する欠損位置を充填するのに十分な骨形成を誘導するための方法であって、該方法が、限定された表面を有さない生体適合性の軟式非晶質キャリア中に分散された骨形成タンパク質を含む骨形成デバイスを、該位置に提供する工程を包含する、方法。
(項目2)前記欠損位置に提供される前記デバイスの容量が前記空隙を充填するのに不十分である、請求項1に記載の方法。
(項目3)前記デバイスが足場構造を欠く、請求項1に記載の方法。
(項目4)前記欠損位置が、内因性修復が不可能な容量を限定する、請求項1に記載の方法。
(項目5)前記骨形成が軟骨内性骨形成である、請求項1に記載の方法。
(項目6)前記骨形成が膜内骨形成である、請求項1に記載の方法。
(項目7)前記キャリアがゲルを含む、請求項1に記載の方法。
(項目8)前記キャリアが水溶液を含む、請求項1に記載の方法。
(項目9)前記キャリアが、アルキルセルロース;プルロニック;ゼラチン;ポリエチレングリコール(PEG);デキストリン;および植物油からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
(項目10)前記キャリアが、カルボキシメチルセルロース;マンニトール;PEG3350;プルロニックF127;およびゴマ油からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
(項目11)前記骨形成タンパク質が、OP1;OP2;OP3;BMP2;BMP3;BMP4;BMP5;BMP6;BMP9;BMP−10;BMP−11、BMP−12、BMP−15、BMP−3b、DPP;Vg1;Vgr;60Aタンパク質;GDF−1;GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11;およびそれらのアミノ酸配列改変体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
(項目12)前記骨形成タンパク質が、OP1;OP2、BMP2;BMP4;BMP5;BMP6;およびそれらのアミノ酸配列改変体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
(項目13)前記の骨形成タンパク質がモルフォゲンであり、該モルフォゲンが、ヒトOP−1の、保存された7つのシステインドメインを含む、C末端102〜106アミノ酸内で少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
(項目14)前記骨形成タンパク質がOP1である、請求項1に記載の方法。
(項目15)前記骨形成タンパク質が、生理食塩水に可溶化された成熟OP−1である、請求項1に記載の方法。
(項目16)空隙を限定する欠損位置を充填するのに十分な骨形成を誘導するためのデバイスであって、該デバイスが、限定された表面を有さない生体適合性の軟式非晶質キャリア中に分散された骨形成タンパク質を含む、デバイス。
(項目17)前記キャリアがゲルを含む、請求項16に記載のデバイス。
(項目18)前記キャリアが水溶液を含む、請求項16に記載のデバイス。
(項目19)前記のキャリアが、アルキルセルロース;プルロニック;ゼラチン;ポリエチレングリコール(PEG);デキストリン;および植物油からなる群より選択される、請求項16に記載のデバイス。
(項目20)前記キャリアが、カルボキシメチルセルロース;マンニトール;PEG3350;プルロニックF127;およびゴマ油からなる群より選択される、請求項16に記載のデバイス。
(項目21)前記骨形成タンパク質が、OP1;OP2;OP3;BMP2;BMP3;BMP4;BMP5;BMP6;BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−15、BMP−3b、BMP9;DPP;Vg1;Vgr;60Aタンパク質;GDF−1;GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11;およびそれらのアミノ酸配列改変体からなる群より選択される、請求項16に記載のデバイス。
(項目22)前記骨形成タンパク質が、OP1;OP2、BMP2;BMP4;BMP5;BMP6;およびそれらのアミノ酸配列改変体からなる群より選択される、請求項16に記載のデバイス。
(項目23)前記の骨形成タンパク質がモルフォゲンであり、該モルフォゲンが、ヒトOP−1の、保存された7つのシステインドメインを含む、C末端102〜106アミノ酸内で少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のデバイス。
(項目24)前記骨形成タンパク質がOP1である、請求項16に記載のデバイス。
(項目25)前記骨形成タンパク質が、生理食塩水に可溶化された成熟OP−1である、請求項16に記載のデバイス。
(項目26)哺乳動物において、空隙を限定する欠損位置を充填するのに十分な骨形成を誘導するための方法であって、該方法が、キャリアまたは足場構造を含まない実質的に純粋な骨形成タンパク質を該位置に提供する工程を包含する、方法。
(項目27)哺乳動物における骨形成欠損位置での仮骨形成の量または質を増強するための方法であって、該方法が、請求項16に記載のデバイスを投与する工程を包含する、方法。
(項目28)前記の骨形成タンパク質がモルフォゲンであり、該モルフォゲンが、ヒトOP−1の、保存された7つのシステインドメインを含む、C末端102〜106アミノ酸内で少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の方法。(項目29)前記骨形成タンパク質がOP1である、請求項27に記載の方法。
(項目30)前記骨形成タンパク質が、OPX(配列番号3);一般配列6(配列番号4);一般配列7(配列番号5);一般配列8(配列番号6);または一般配列9(配列番号7)により定義されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の方法。
(項目31)骨形成を促進する方法であって、該方法が、請求項16に記載のデバイスを欠損位置に提供する工程を包含する、方法。
(項目32)内因性マトリクス形成を誘導する方法であって、該方法が、請求項16に記載のデバイスを欠損位置に提供する工程を包含する、方法。
(項目33)骨欠損、軟骨欠損、または骨軟骨欠損を修復する方法であって、該方法が、マトリクスを含まない骨形成デバイスを欠損に投与する工程を包含し、ここで損傷後に該デバイスを投与する工程が遅延させられる、方法。
(項目34)前記投与する工程が、損傷後少なくとも6時間遅延させられる、請求項33に記載の方法。
(項目35)軟骨欠損を修復するためのマトリクスを含まないデバイスであって、該デバイスが骨形成タンパク質およびグリコサミノグリカンキャリアを含む、デバイス。
(項目36)前記キャリアがヒアルロン酸である、請求項35に記載のデバイス。
(項目37)軟骨欠損を修復する方法であって、該方法が、請求項35に記載のデバイスを軟骨欠損に投与する工程を包含する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
請求された本発明の主題をより明確におよび簡潔に説明するために、以下の定義は、以下の書かれた説明および添付の請求の範囲において使用される特定の用語の意味についての指針を提供することが意図される。
【0027】
「骨形成」は、軟骨内性骨の形成または膜性骨の形成を意味する。ヒトにおいて、骨形成は、胎児発生の最初の6〜8週の間に始まる。間葉起源の前駆幹細胞は予め決定された部位に移動し、ここでそれらは以下のいずれかを行う:(a)凝縮し、増殖し、そして骨形成細胞(骨芽細胞)に分化する(頭蓋において観察され、そして「膜性骨形成」と呼ばれるプロセス)、または(b)凝縮し、増殖し、そして中間体として軟骨形成細胞(軟骨芽細胞)に分化し、これは、後に骨形成細胞と取り替えられる。さらに詳細には、間葉幹細胞は、軟骨細胞に分化する。次いで、軟骨細胞は石灰化し、肥大を受け、そして現在その位置に存在する分化骨芽細胞により作られた、新たに形成される骨と取り替えられる。その後に、無機質化骨が広範に再造形され、その後、機能的な骨髄要素で充填される小骨によりふさがれる。このプロセスは長骨において観察され、そして「軟骨内性骨形成」と呼ばれる。胎児後の生活において、骨は、胚の軟骨内性骨発生の細胞プロセスを模倣することにより、損傷の際に自身で修復する能力を有する。すなわち、骨髄、骨膜、および筋肉に由来する間葉前駆幹細胞は欠損部位に移動し、そして上記の事象のカスケードを始めるように誘導され得る。そこで、それらは蓄積し、増殖し、そして軟骨に分化し、後にこの軟骨は新たに形成された骨と取り替えられる。
【0028】
本明細書中で意図される「欠損」または「欠損位置」は、修復を必要とする骨の構造的な破壊である空隙を定義する。さらに、欠損は、骨軟骨欠損(骨および上に重なる軟骨の構造的破壊の両方を含む)を定義し得る。「空隙」は、3次元的欠損(例えば、骨または関節における構造的完全性における、間隙、空洞、穴、または他の実質的な破壊)を意味すると理解される。欠損は、事故、疾患、外科的操作、および/またはプロテーシス減退の結果であり得る。特定の実施態様において、欠損位置は、内因性修復または自発的修復が不可能な容量を有する空隙である。このような欠損はまた、危険な大きさの分節性欠損と呼ばれる。当該分野は、このような欠損が、自発的な修復が不可能な約3〜4cmの、少なくとも2.5cmを超える間隙であると認識する。他の実施態様において、欠損位置は、少なくとも約0.5cmであるが、約2.5以下の、危険でない分節性欠損である。一般的に、これらは、本発明の実施により可能になる修復より生体力学的に劣っているが、いくらかの自発的な修復が可能である。特定の他の実施態様において、欠損は、骨軟骨欠損(例えば、骨軟骨栓(plug))である。本発明を用いる修復を受けやすい他の欠損は、非癒合骨折;骨空洞;腫瘍切除;できたての骨折;頭/顔異常;脊髄固定、ならびに疾患(例えば、ガン、関節炎(骨関節炎を含む)、および他の骨変性傷害)から生じる欠損を含むが、それらに制限されない。「修復」は、欠損位置での空隙を充填するのに十分な新骨形成の誘導を意味すると意図されるが、「修復」は、完全な治癒プロセス、または欠損を欠損前の生理学的/構造的状態に回復させることに100%効果的である処置を意味せず、または別の状態で必要としない。
【0029】
「マトリクス」は、足場構造を有する骨伝導性基質を意味すると当該分野で理解され、この足場構造上で浸潤細胞は、接着し、増殖し、そして最終的に骨形成となる形態形成プロセスに加わり得る。特定の実施態様において、マトリクスは粒状および多孔性であり得、多孔性は、骨形成(特に、軟骨内性骨形成)を誘導することにおいてマトリクスの有効性に重要な特色である。初めに記載されたように、マトリクスは、特定の構造成分を従来の骨形成デバイスに提供し(すなわち、これまで、多孔性の粒状マトリクス成分(例えば、コラーゲン、脱鉱化骨、または合成ポリマー)を含み)、それによりこのような細胞の接着、増殖、および分化のための隙間を有する、細胞を浸潤させるための一時的なおよび再吸収可能な足場構造として作用すると理解される。従って、用語「マトリクスを含まない骨形成デバイス」または「マトリクスを実質的に含まない」骨形成デバイスは、レシピエントに提供される時に、当該分野で認識されるマトリクスが全くないデバイスを意図する。さらに、マトリクスを実質的に含まないは、デバイスが欠損位置に提供される場合に、それ自体で足場として作用する能力がある基質が外来性供給源から導入されないことを意味すると理解される。マトリクスを含まない、またはマトリクスを実質的に含まないは、本明細書中に開示されるデバイスおよび/または移植片の欠損位置への送達後に誘導または形成される、内因性マトリクスを除外すると意図されない。従って、本発明は、本明細書中に開示されるマトリクスを含まないデバイスまたは移植片を欠損位置に提供することにより、内因性マトリクス形成を誘導する方法をさらに意図する。
【0030】
「骨形成デバイス」は、限定された表面を有さない、生体適合性の軟式非晶質キャリア中に分散された骨形成タンパク質を含む組成物を意味すると理解される。本発明の骨形成デバイスは、空隙を限定する欠損位置を充填するのに十分な骨形成を誘導する能力がある。骨形成デバイスは、欠損位置により限定される空隙を充填するのに不十分な容量で欠損位置に提供され、そして欠損位置に送達される場合、マトリクスを含まない。デバイスは、任意の適切な外形(例えば、ほんの少しを指定するために、液体、粉末、ペースト、またはゲル)を有し得る。本発明の方法を用いた使用に適した骨形成デバイスの好ましい特性は、骨、軟骨、および/または筋肉に接着すること、ならびにたとえ一過的でも、骨形成タンパク質の少なくとも1つの局所的供給源を欠損位置に提供するのに有効であることを含むが、それらに制限されない。本明細書中に意図されるように、タンパク質の局所的供給源を提供することは、欠損位置でのタンパク質の保持、ならびに欠損位置でのタンパク質の徐放の両方を含む。本発明により必要とされる全てのものは、骨形成デバイスが、修復が必要な空隙を限定する3次元的欠損を充填する骨形成を誘導するのに十分な濃度で骨形成タンパク質を送達するために、効果的であることである。骨形成タンパク質に加えて、種々の増殖因子、ホルモン、酵素、治療組成物、抗生物質、または他の生物活性剤もまた、骨形成デバイス内に含まれ得る。従って、種々の公知の増殖因子(例えば、EGF、PDGF、IGF、FGF、TGF−α、およびTGF−β)は骨形成デバイスと組み合わされ、そして欠損位置に送達され得る。骨形成デバイスはまた、化学療法剤、インシュリン、酵素、酵素インヒビター、および/または化学誘因物質/化学走性因子を送達するために使用され得る。
【0031】
「骨形成タンパク質」または骨形態形成タンパク質は、一般的に、最終的に軟骨内性骨形成になる、形態形成事象の完全なカスケードを誘導し得るタンパク質を意味すると理解される。本明細書中の他の場所に記載されるように、このクラスのタンパク質は、ヒト骨形成タンパク質(hOP1)により代表される。本発明の実施に有用な他の骨形成タンパク質は、OP1、OP2、OP3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP9、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−3、GDF−5,6,7、BMP10、BMP11、BMP13、BMP15、UNIVIN、NODAL、SCREW、ADMP、またはNURAL,およびそれらのアミノ酸配列改変体の骨形成的に活性な形態を含む。1つの一般的に好ましい実施態様において、骨形成タンパク質は、以下のいずれか1つを含む:OP1、OP2、OP3、BMP2、BMP4、BMP5、BMP6、BMP9、ならびにそれらのアミノ酸配列改変体およびホモログ(その種ホモログを含む)。特に好ましい骨形成タンパク質は、ヒトOP−1、BMP2、および関連タンパク質の、保存された7つのシステインドメインを定義する、C末端102〜106アミノ酸と、少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含むものである。本発明の特定の好ましい実施態様は、骨形成タンパク質OP−1を含む。特定の他の好ましい実施態様は、生理学的生理食塩水に可溶化された成熟OP−1を含む。本明細書中の他の場所でさらに記載されるように、出願人の発明を用いた使用に適した骨形成タンパク質は、ReddiおよびSampathにより記載される当該分野で認識される生物学的試験を用いる日常的な実験により同定され得る。「アミノ酸配列相同性」は、アミノ酸配列の類似性を意味すると本明細書中で理解される。相同配列は、同一のまたは類似したアミノ酸残基を共有し、ここで類似した残基は、整列された参照配列における対応アミノ酸残基の保存的置換であるか、または対応アミノ酸残基の許容される点変異である。従って、参照配列と70%アミノ酸相同性を共有する候補ポリペプチド配列は、任意の70%の整列された残基が、参照配列における対応残基と同一か、またはその保存的置換のいずれかである配列である。保存的変化の例は、別の疎水性残基の1つの疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニン)への置換、または別の極性残基の1つの極性残基への置換(例えば、リジンのアルギニンへの置換、アスパラギン酸のグルタミン酸への置換、もしくはアスパラギンのグルタミンへの置換など)を含む。用語「保存的変化」はまた、置換ポリペプチドに対して惹起された抗体がまた非置換ポリペプチドと免疫反応性であれば、非置換親アミノ酸の代わりの置換アミノ酸の使用を含む。
【0032】
本発明において有用なタンパク質は、骨形成タンパク質として同定された真核生物タンパク質(本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,011,691号を参照のこと)(例えば、OP−1、OP−2、OP−3、およびCBMP−2タンパク質、ならびにアミノ酸配列関連タンパク質(例えば、DPP(Drosophilaに由来)、Vgl(Xenopusに由来)、Vgr−1(マウスに由来)、GDF−1(ヒトに由来、Lee(1991),PNAS 88:4250−4254を参照のこと)、60A(Drosophila、Whartonら(1991)PNAS 88:9214−9218を参照のこと)、ドーサリン(dorsalin)−1(ニワトリに由来、Baslerら(1993)Cell 73:687−702およびGenbankアクセス番号L12032を参照のこと)、およびGDF−5(マウスに由来、Stormら(1994)Nature 368:639−643を参照のこと))を含む。BMP−3もまた好ましい。さらなる有用なタンパク質は、米国特許第5,011,691号に開示される生合成形態形成構築物(例えば、COP−1、3〜5、7、および16)、ならびに当該分野で公知の他のタンパク質を含む。さらに他のタンパク質は、BMP−3b(Takaoら、(1996)Biochem.Biophys.Res.Comm.219:656−662を参照のこと)、BMP−9(WO95/33830を参照のこと)、BMP−15(WO96/35710を参照のこと)、BMP−12(WO95/16035を参照のこと)、CDMP−1(WO94/12814を参照のこと)、CDMP−2(WO94/12814を参照のこと)、BMP−10(WO94/26893を参照のこと)、GDF−1(WO92/00382を参照のこと)、GDF−10(WO95/10539を参照のこと)、GDF−3(WO94/15965を参照のこと)、およびGDF−7(WO95/01802)の骨形成的に活性な形態を含む。
【0033】
さらに他の有用なタンパク質は、本明細書中に記載されるような骨形成タンパク質をコードするDNAにハイブリダイズする能力があるDNAによりコードされるタンパク質、および関連アナログ、ホモログ、ムテインなどを含む(以下を参照のこと)。
【0034】
本明細書中で使用する「キャリア」は、本発明のデバイス、移植片、および方法を用いた使用に適した、限定された表面を有さない、生体適合性の、堅くない、不定形な材料を意味する。初めに述べられたように、「堅くない」は、弛緩もしくは平たく、または別の状態で、1つ以上の限定された表面を有する3次元的構造を実質的に提供または形成し得ない、キャリア処方物を意味する。本明細書中で使用する「不定形な」は、明確な3次元的形態もしくは特定の形状を欠くこと、すなわち、特定の形状または形態を有さないか、または中間の形状もしくは形態を有することを意味する。適切なキャリアはまた非粒状性であり、そして非多孔性である(すなわち、孔がない)。本発明における使用に適したキャリアは3次元的足場構造を欠き、そして実質的にマトリクスを含まない。従って、「マトリクスを実質的に含まない」はまた、キャリア含有デバイスが欠損位置に提供された場合、それ自体で足場として作用する能力がある基質が、いずれの外来性供給源(キャリアを含む)からでも導入されないことを意味すると理解される。レシピエントへの送達およびレシピエントにおける移植の前に、キャリアは、その化学的性質により、3次元的足場構造をデバイスに与え得ないと認識される。好ましいキャリアは、少なくとも一過的に、組織(例えば、骨、軟骨、および/または筋肉)に接着する。特定の好ましいキャリアは、水溶性であり、粘性であり、および/または不活性である。さらに、好ましいキャリアは、有意な容量をデバイスに与えない。一般的に好ましいキャリアは、アルキルセルロース、プルロニック、ゼラチン、ポリエチレングリコール、デキストリン、植物油、および糖を含むが、これらに限定されない。特に好ましいキャリアは、一般的に、プルロニックF127、カルボキシメチルセルロース、ラクトース、マンニトール、およびゴマ油を含むが、それらに制限されない。他の好ましいキャリアは、酢酸緩衝液(20mM、pH4.5)、生理学的食塩水(PBS)、およびクエン酸緩衝液を含む。キャリア(例えば、酢酸、プルロニック、およびPBS)を含むデバイスの場合、注射による投与は、投与部位での特定の骨形成タンパク質の沈殿をもたらし得る。
【0035】
本明細書中で意図される「移植片」は、空隙を限定する欠損位置に配置された、限定された表面を有さない、生体適合性の、堅くない不定形のキャリア中に分散された、骨形成タンパク質を含む。すなわち、本発明の移植片は、欠損位置(この中に/上に本発明のデバイスが送達/沈着されている)自体を含むことが意図される。デバイスの送達時に、移植片は足場構造を欠き、そして実質的にマトリクスを含まないことがさらに意図される。本発明の実施から生じた移植片は、デバイスの送達時に、空隙を実質的に充填し、それにより欠損の大きさおよび形状を構造的に限定するのに十分なマトリクスの包接も足場構造も必要としない、新たに形成された骨で欠損を充填するのに十分な哺乳動物の欠損位置における骨形成を誘導する能力がある。
【0036】
本発明の方法、移植片、およびデバイスを作り、そして使用するための手段、ならびにそれらの性質および有用性に関する他の具体的な局面(請求された主題を作る方法および使用する方法を含む)は、本発明を実施するために一般的に意図される最も良い態様を構成する以下からさらに理解される。本発明は、このような例示的な研究、またはこれらの実施例において示された特定の詳細に制限されないことが認識される。
【0037】
タンパク質考察
A.骨形態形成タンパク質の生化学的、構造的、機能的特性
骨形成タンパク質または骨形態形成タンパク質であると本明細書中で同定および/または認識した天然に生じるタンパク質は、TGF−βスーパーファミリーまたはスーパー遺伝子ファミリーとして知られる配列関連タンパク質の緩い進化的グループ分け内の、別個のサブグループを形成する。天然に生じる骨モルフォゲンは、C末端領域(ドメイン)において実質的なアミノ酸配列相同性を共有する。代表的に、上述の天然に生じる骨形成タンパク質は、N末端シグナルペプチド配列(代表的に、約30残基未満)、続いて成熟C末端ドメインを生じるために切断される「プロ」ドメインを有する前駆体として翻訳される。シグナルペプチドは、Von Heijne(1986)Nucleic Acids Research 14:4683−4691の方法を用いて所定の配列において予測され得る切断部位で、翻訳の際に迅速に切断される。プロドメインは、代表的に、完全にプロセシングされた成熟C末端ドメインより約3倍大きい。本明細書中で、モルフォゲンの「プロ」形態は、フォールディングされたポリペプチド対(各々が、モルフォゲンポリペプチドのプロドメインおよび成熟ドメインを含む)を含むモルフォゲンをいう。代表的に、モルフォゲンのプロ形態は、生理学的条件下で成熟形態より可溶性である。プロ形態は、培養された哺乳動物細胞から分泌される主な形態であるらしい。
【0038】
好ましい実施態様において、形態形成ポリペプチド対は、各々が参照モルフォゲンのアミノ酸配列と定義された関係を共有する配列を含むアミノ酸配列を有する。本明細書中で、好ましい骨形成ポリペプチドは、骨形成的に活性なヒトOP−1、配列番号2に存在する配列と定義された関係を共有する。しかし、本明細書中に開示される天然に生じる配列または生合成配列のいずれか1つ以上は、同様に、参照配列として使用され得る。好ましい骨形成ポリペプチドは、少なくとも、ヒトOP−1のC末端6システインドメイン、配列番号2の残基335〜431と定義された関係を共有する。好ましくは、骨形成ポリペプチドは、少なくとも、ヒトOP−1のC末端7システインドメイン、配列番号2の残基330〜431と定義された関係を共有する。すなわち、骨形態形成活性を有する二量体タンパク質における好ましいポリペプチドはそれぞれ、参照配列に対応するか、またはそれに機能的に等価な配列を含む。
【0039】
機能的に等価な配列は、参照配列内に配置されるシステイン残基の機能的に等価な整列(これらのシステインの直線状整列を変えるが、二量体モルフォゲンタンパク質のフォールディングされた構造においてそれらの関係(形態形成活性に必要であり得る、このような鎖内または鎖間ジスルフィド結合を形成するそれらの能力を含む)を実質的に損わない、アミノ酸挿入または欠失を含む)を含む。機能的に等価な配列は、1つ以上のアミノ酸残基が参照配列(例えば、ヒトOP−1のC末端7システインドメイン(本明細書中で保存7システイン骨格とも呼ばれる))の対応残基とは異なる配列を(差違が骨形態形成活性を破壊しなければ)さらに含む。従って、参照配列における対応アミノ酸の保存的置換が好ましい。参照配列における対応残基の保存的置換であるアミノ酸残基は、対応参照残基に物理的または機能的に類似する(例えば、類似した大きさ、形状、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合を形成する能力を含む)などを有する)アミノ酸残基である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら(1978),5 Atlas of Protein Sequence and Structure,補遺3,第22章(354−352頁),Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.20007(この教示は本明細書中に参考として援用される)における容認された点変異について定義された基準を満たす置換である。
【0040】
その成熟したネイティブな形態の天然に供給される骨形成タンパク質は、SDS−PAGEにより決定されるように、代表的に、約30〜36kDaの見かけの分子量を有するグリコシル化二量体である。還元された場合、30kDaタンパク質は、約16kDaおよび18kDaの見かけの分子量を有する、2つのグリコシル化ペプチドサブユニットを生じさせる。還元された状態において、このタンパク質は、検出可能な骨形成活性を有さない。非グリコシル化タンパク質(これもまた骨形成活性を有する)は、約27kDaの見かけの分子量を有する。還元された場合、27kDaタンパク質は、哺乳動物において軟骨内性骨を誘導し得る、約14kDa〜16kDaの分子量を有する2つの非グリコシル化ポリペプチドを生じさせる。上記のように、特に有用な配列は、DPP(Drosophilaに由来する)、Vgl(Xenopusに由来する)、Vgr−1(マウスに由来する)、OP1およびOP2タンパク質、タンパク質(米国特許第5,011,691号およびOppermannらを参照のこと)、ならびにBMP2、BMP3、BMP4(WO88/00205、米国特許第5,013,649号、およびWO91/18098を参照のこと)、BMP5およびBMP6(WO90/11366、PCT/US90/01630を参照のこと)、ならびにBMP8および9として言及されるタンパク質のC末端102アミノ酸配列を含む配列を含む。
【0041】
特定の好ましい実施態様において、本明細書中で有用な骨形態形成タンパク質は、アミノ酸配列が、前述の天然に生じるタンパク質から選択される参照形態形成タンパク質と、少なくとも70%のアミノ酸配列相同性または「類似性」、および好ましくは80%の相同性または類似性を共有する配列を含む。好ましくは、参照タンパク質はヒトOP−1であり、そしてその参照配列は、ヒトOP−1の骨形成的に活性な形態に存在するC末端7システインドメイン、配列番号2の残基330〜431である。従って、本明細書中で有用な骨形態形成タンパク質は、好ましい参照配列の対立遺伝子的系統発生的対照物および他の改変体(天然に生じても、生合成的に生成されても)(例えば、「ムテイン」または「変異体タンパク質」を含む)、ならびに一般的な形態形成ファミリータンパク質の新規のメンバー(上記で示され、そして同定されたものを含む)を含む。特定の特に好ましい形態形成ポリペプチドは、OP−1の好ましい参照配列と少なくとも60%のアミノ酸同一性、さらにより好ましくはそれと少なくとも65%のアミノ酸同一性を共有する。
【0042】
他の好ましい実施態様において、本発明において有用な骨形態形成ポリペプチドファミリーおよびそのメンバーは、一般アミノ酸配列により定義される。例えば、以下に開示される一般配列7(配列番号4)および一般配列8(配列番号5)は、現在まで同定された好ましいタンパク質ファミリーメンバー(少なくとも、ヒトOP−1、OP−2、OP−3、CBMP−2A、CBMP−2B、BMP−3、60A、DPP、Vg1、BMP−5、BMP−6、Vgr−1、およびGDF−1を含む)間で共有される相同性を提供する。これらのタンパク質のアミノ酸配列は、上記で要約されたように、本明細書中でおよび/または当該分野で記載される。一般配列は、6および7システイン骨格(それぞれ、一般配列7および8)により定義される、C末端ドメインにおけるこれらの配列により共有されるアミノ酸同一性、ならびにこの配列内の可変位置の代替残基の両方を含む。一般配列は、分子間または分子内ジスルフィド結合が形成し得、そしてフォールディングされたタンパク質の3次構造に影響するようである特定の重要なアミノ酸を含み得る、適切なシステイン骨格を提供する。さらに、一般配列は、41位(一般配列7)または46位(一般配列4)での付加的なシステイン残基を考慮に入れ、それにより、OP−2およびOP−3の形態形成的に活性な配列を含む。
【0043】
【化1】

ここで、各Xaaは、独立して、以下の通りに定義される1つ以上の明記されたアミノ酸の群から選択される:「Res」は「残基」を意味し、そして残基2のXaa=(TyrまたはLys);残基3のXaa=(ValまたはIle);残基4のXaa=(Ser、Asp、またはGlu);残基6のXaa=(Arg、Gln、Ser、Lys、またはAla);残基7のXaa=(AspまたはGlu);残基8のXaa=(Leu、Val、またはIle);残基11のXaa=(Gln、Leu、Asp、His、Asn、またはSer);残基12のXaa=(Asp、Arg、Asn、またはGlu);残基13のXaa=(TrpまたはSer);残基14のXaa=(IleまたはVal);残基15のXaa=(IleまたはVal);残基16のXaa=(AlaまたはSer);残基18のXaa=(Glu、Gln、Leu、Lys、Pro、またはArg);残基19のXaa=(GlyまたはSer);残基20のXaa=(TyrまたはPhe);残基21のXaa=(Ala、Ser、Asp、Met、His、Gln、Leu、またはGly);残基23のXaa=(Tyr、Asn、またはPhe);残基26のXaa=(Glu、His、Tyr、Asp、Gln、Ala、またはSer);残基28のXaa=(Glu、Lys、Asp、Gln、またはAla);残基30のXaa=(Ala、Ser、Pro、Gln、Ile、またはAsn);残基31のXaa=(Phe、Leu、またはTyr);残基33のXaa=(Leu、Val、またはMet);残基34のXaa=(Asn、Asp、Ala、Thr、またはPro);残基35のXaa=(Ser、Asp、Glu、Leu、Ala、またはLys);残基36のXaa=(Tyr、Cys、His、Ser、またはIle);残基37のXaa=(Met、Phe、Gly、またはLeu);残基38のXaa=(Asn、Ser、またはLys);残基39のXaa=(Ala、Ser、Gly、またはPro);残基40のXaa=(Thr、Leu、またはSer);残基44のXaa=(Ile、Val、またはThr);残基45のXaa=(Val、Leu、Met、またはIle);残基46のXaa=(GlnまたはArg);残基47のXaa=(Thr、Ala、またはSer);残基48のXaa=(LeuまたはIle);残基49のXaa=(ValまたはMet);残基50のXaa=(His、Asn、またはArg);残基51のXaa=(Phe、Leu、Asn、Ser、Ala、またはVal);残基52のXaa=(Ile、Met、Asn、Ala、Val、Gly、またはLeu);残基53のXaa=(Asn、Lys、Ala、Glu、Gly、またはPhe);残基54のXaa=(Pro、Ser、またはVal);残基55のXaa=(Glu、Asp、Asn、Gly、Val、Pro、またはLys);残基56のXaa=(Thr、Ala、Val、Lys、Asp、Tyr、Ser、Gly、Ile、またはHis);残基57のXaa=(Val、Ala、またはIle);残基58のXaa=(ProまたはAsp);残基59のXaa=(Lys、Leu、またはGlu);残基60のXaa=(Pro、Val、またはAla);残基63のXaa=(AlaまたはVal);残基65のXaa=(Thr、Ala、またはGlu);残基66のXaa=(Gln、Lys、Arg、またはGlu);残基67のXaa=(Leu、Met、またはVal);残基68のXaa=(Asn、Ser、Asp、またはGly);残基69のXaa=(Ala、Pro、またはSer);残基70のXaa=(Ile、Thr、Val、またはLeu);残基71のXaa=(Ser、Ala、またはPro);残基72のXaa=(Val、Leu、Met、またはIle);残基74のXaa=(TyrまたはPhe);残基75のXaa=(Phe、Tyr、Leu、またはHis);残基76のXaa=(Asp、Asn、またはLeu);残基77のXaa=(Asp、Glu、Asn、Arg、またはSer);残基78のXaa=(Ser、Gln、Asn、Tyr、またはAsp);残基79のXaa=(Ser、Asn、Asp、Glu、またはLys);残基80のXaa=(Asn、Thr、またはLys);残基82のXaa=(Ile、Val、またはAsn);残基84のXaa=(LysまたはArg);残基85のXaa=(Lys、Asn、Gln、His、Arg、またはVal);残基86のXaa=(Tyr、Glu、またはHis);残基87のXaa=(Arg、Gln、Glu、またはPro);残基88のXaa=(Asn、Glu、Trp、またはAsp);残基90のXaa=(Val、Thr、Ala、またはIle);残基92のXaa=(Arg、Lys、Val、Asp、Gln、またはGlu);残基93のXaa=(Ala、Gly、Glu、またはSer);残基95のXaa=(GlyまたはAla)、および残基97のXaa=(HisまたはArg)。
【0044】
一般配列8(配列番号5)は一般配列7の全てを含み、そしてさらに以下の配列(配列番号6)をそのN末端に含む:
Cys Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5
従って、残基7から始まる一般配列8における各「Xaa」は、一般配列7について記載された各残基数が一般配列8において5だけ移されるという特徴を有する、一般配列7について定義された明記されたアミノ酸である。従って、一般配列7における「残基2のXaa=(TyrまたはLys)」とは、一般配列8における残基7のXaaをいう。一般配列8において、残基2のXaa=(Lys、Arg、Ala、またはGln);残基3のXaa=(Lys、Arg、またはMet);残基4のXaa=(His、Arg、またはGln);および残基5のXaa=(Glu、Ser、His、Gly、Arg、Pro、Thr、またはTyr)である。
【0045】
別の実施態様において、有用な骨形成タンパク質は、本明細書中上記に記載された、一般配列9および10により定義されるタンパク質を含む。
【0046】
上記で言及されたように、本発明において有用な特定の一般的に好ましい骨形態形成ポリペプチド配列は、hOP−1の好ましい参照配列を定義するアミノ酸配列と、60%を超える同一性、好ましくは65%を超える同一性を有する。これらの特に好ましい配列は、OP−1およびOP−2タンパク質の対立遺伝子改変体および系統発生的対照改変体(Drosophila 60Aタンパク質を含む)を含む。従って、特定の特に好ましい実施態様において、有用な形態形成タンパク質は、「OPX」(配列番号3)として呼ばれる本明細書中の一般アミノ酸配列内のポリペプチド鎖の1対を含む、活性なタンパク質を含み、OPXは、7システイン骨格を定義し、そしてOP−1およびOP−2のいくつかの同定された改変体間の相同性を提供する。本明細書中に記載されるように、所定の位置の各Xaaは、独立して、マウスまたはヒトのOP−1またはOP−2のC末端配列において対応する位置に生じる残基から選択される。
【0047】
さらに別の好ましい実施態様において、有用な骨形成的に活性なタンパク質は、低い、中程度の、または高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、参照モルフォゲン配列(例えば、OP−1、OP−2、BMP2、4、5、6、60A、GDF3、GDF6、GDF7などの保存7システインドメインを定義するC末端配列)をコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズする核酸によりコードされる配列を含む、アミノ酸配列を有するポリペプチド鎖を有する。本明細書中で使用されるように、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、40%ホルムアミド、5×SSPE、5×デンハルト溶液、および0.1%SDS中の37℃、一晩での公知の技術に従うハイブリダイゼーション、ならびに0.1×SSPE、0.1%SDS中の50℃での洗浄として定義される。標準的なストリンジェンス条件は、市販の標準的な分子クローニングテキストにおいて十分に特徴付けられる。
【0048】
上記で言及されたように、一般的に、本発明において有用なタンパク質は、上記のフォールディングされたポリペプチドの1対を含む、二量体タンパク質である。このような形態形成タンパク質は、還元された場合不活性であるが、酸化型ホモ二量体として活性であり、および本発明の他のタンパク質と組み合せて酸化されてヘテロ二量体を生成した場合、活性である。従って、形態形成的に活性なタンパク質における形態形成ポリペプチドのフォールディングされた1対のメンバーは、独立して、上記で述べられた特定のポリペプチドのいずれかから選択され得る。
【0049】
本発明の材料および方法において有用な骨形態形成タンパク質は、上記のポリペプチド鎖のいずれかを含むタンパク質(天然に存在する供給源から単離されるか、または組換えDNAもしくは他の合成技術により生成されるかのいずれか)を含み、そしてこれらのタンパク質の対立遺伝子改変体および系統発生的対照改変体、ならびにその生合成改変体(ムテイン)、ならびに種々の短縮型構築物および融合構築物を含む。欠失変異体または付加変異体もまた活性であると想像され、この変更がフォールディングされた構造においてこれらのシステインの関係を機能的に破壊しなければ、保存C末端6または7システインドメインを変更し得る欠失変異体または付加変異体を含む。従って、このような活性形態は、本明細書中に開示される詳細に記載された構築物の等価物とみなされる。タンパク質は、可変的なグリコシル化パターンを有する形態、可変的なN末端を有する形態、アミノ酸配列相同性の領域を有する関連タンパク質ファミリー、および宿主細胞における組換えDNAの発現により生成された、ネイティブなまたは生合成タンパク質の活性な短縮形態または変異形態を含み得る。
【0050】
本明細書中で意図される骨形態形成タンパク質は、原核生物または真核生物宿主細胞においてインタクトなもしくは短縮型cDNAから、または合成DNAから発現され得、そして精製され、切断され、再フォールディングされ、そして二量体化されて、形態形成的に活性な組成物を形成し得る。一般的に好ましい宿主細胞は、E.coliまたは哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、またはBSC細胞)を含む。本発明の実施において有用な骨形態形成タンパク質の詳細な説明(それらを作る方法、使用する方法、および骨形成活性について試験する方法を包含する)は、非常に多くの刊行物(米国特許第5,266,683号および同第5,011,691号を含み、これらの開示は本明細書中に参考として援用される)において開示される。
【0051】
従って、この開示を考慮して、熟練した遺伝子技術者は、適切なアミノ酸配列をコードする、種々の異なる生物学的種のcDNAまたはゲノムライブラリーから遺伝子を単離し得るか、またはDNAをオリゴヌクレオチドから構築し得、次いでそれらを宿主細胞の種々の型(原核生物および真核生物両方を含む)において発現させて、軟骨内性骨形態形成を哺乳動物において刺激し得る多量の活性なタンパク質を生成し得る。
【0052】
B.骨形態形成タンパク質、OP−1の調製
凍結乾燥タンパク質
OP−1は、標準的な凍結乾燥プロトコルを用いて、5%マンニトール、ラクトース、グリシン、または他の添加剤または膨張(bulking)剤を含む20mM酢酸緩衝液(pH4.5)から凍結乾燥され得る。この様式において再構成されるOP−1は、4℃または30℃で貯蔵され、少なくとも6ヶ月の間、生物学的に活性であることが観察された。
【0053】
OP−1はまた、水中での再構成のためにコハク酸またはクエン酸緩衝液(または他の不揮発性緩衝液)から、および20mM酢酸緩衝液(pH4.5)中での再構成のために水から凍結乾燥され得る。一般的に、添加剤(例えば、ラクトース、スクロース、グリシン、およびマンニトール)は、凍結乾燥されたマトリクスを含まない骨形成デバイスにおける使用に適する。特定の実施態様において、このようなデバイス(0.5mg/ml OP−1および5%添加剤)は、凍結乾燥前に湿潤または乾燥した外形において調製され得る。
【0054】
例えば、マンニトール(0%、1%、および5%)を含むおよび含まない、10mMおよび20mM酢酸緩衝液(pH4、4.5、および5)中のOP−1液体処方物は、少なくとも6ヶ月間安定であり、そして骨形成的に活性である。
【0055】
II.キャリア考察
既に説明されたように、本明細書中で使用する「キャリア」は、本発明のデバイス、移植片、および方法を用いた使用に適した、限定された表面を有さない、生体適合性の、堅くない、不定形の材料を意味する。適切なキャリアは、非粒状および非多孔性である(すなわち、孔がない)。本発明における使用に適したキャリアは足場構造を欠き、そして実質的にマトリクスを含まない。従って、「実質的にマトリクスを含まない」はまた、キャリア含有デバイスが欠損位置に提供される場合、それ自体が足場として作用する能力を有する基質が、外来性供給源(キャリアを含む)から導入されないことを意味することが理解される。レシピエントへの送達およびレシピエントへの移植の前に、キャリアは、その化学的性質により、3次元的足場構造をデバイスに実質的に与え得ないことが認識される。好ましいキャリアは、少なくとも一過的に、組織(例えば、骨、軟骨、および/または筋肉)に接着する。特定の好ましいキャリアは、水溶性であり、粘性であり、および/または不活性である。さらに、好ましいキャリアは、有意な容量をデバイスに与えない。一般的に好ましいキャリアは、アルキルセルロース、プルロニック(Pluronic)、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストリン、植物油、および糖類からなる群より選択される。特に好ましいキャリアは、一般的に、プルロニックF127、カルボキシメチルセルロース(CMC)(例えば、Aqualonからの低粘度CMC)、ラクトース、PEG、マンニトール、ゴマ油、およびヘタスターチ(hetastarch)(Hespan,Dupont)、ならびにその組み合わせを含むが、それらに制限されない。他の好ましいキャリアは、制限なく、酢酸緩衝液(20mM、pH4.5)、生理学的食塩水、およびクエン酸緩衝液を含む。キャリア(例えば、酢酸、プルロニック、およびPBS)を含むデバイスの場合、注射による投与は、投与部位での特定の骨形成タンパク質の沈殿をもたらし得る。
【0056】
III.処方および送達の考察
本発明のデバイスは、日常的な方法を用いて処方され得る。必要なことは、キャリアの単位容量あたりの骨形成タンパク質の所望の最終濃度を決定すること、および送達されるデバイス容量が欠損位置の空隙容量より少ないことを留意することである。タンパク質の所望の最終濃度は、タンパク質の比活性、ならびに欠損の型、容量、および/または解剖学的位置に依存する。さらに、所望のタンパク質最終濃度は、レシピエントの年齢、性別、および/または全般的な健康状態に依存し得る。代表的には、長さが少なくとも約2.5cmの危険な大きさの分節性欠損について、0.5〜1.5mgの骨形成タンパク質を含む0.05ml(またはmg)のデバイスは、間隙を修復するのに十分な骨形成を誘導することが観察された。危険でない大きさの欠損である新たな骨折の場合、約0.1〜0.5mgのタンパク質が、間隙または欠損を修復することが観察された。投薬量の最適化は日常的な実験以外を必要とせず、そして当業者の技術レベル内である。
【0057】
以下に例示されるように、本発明のデバイスは、種々の外形をとり得る。例えば、溶液中のマトリクスを含まない骨形成デバイスは、酢酸(20mM、pH4.5)もしくはクエン酸緩衝液、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.5)の溶液中に特定の形態のOP−1を可溶化することにより処方され得る。いくつかの場合において、骨形成タンパク質は完全に可溶化され得ず、そして/または投与の際に欠損位置へ沈殿し得る。懸濁物、凝集体形成物、および/またはインビボ沈殿物は、本明細書中に開示される本発明に従って行われた場合、マトリクスを含まない骨形成デバイスの効力を損わない。溶液中のマトリクスを含まないデバイスは、注射による投与に特に適する(例えば、外科的手段よりむしろ注射によりデバイスを骨折位置へ提供する)。
【0058】
概して、注射による送達に適したマトリクスを含まないデバイスの外形は、開口した手術部位での使用に好ましい外形とは異なる。例えば、マトリクスを含まないデバイスの凍結乾燥調製物は、この型の欠損の修復のための、1つの一般的に好ましい実施態様である。上記の溶液中のマトリクスを含まないデバイスは、凍結乾燥外形を調製するために使用され得る。例えば、以下に記載されるように、骨形成タンパク質OP−1は上記の緩衝液と混合され、次いで凍結乾燥され得る。OP−1はまた、マンニトール含有水から凍結乾燥され得る。
【0059】
以下に例示されるように、マトリクスを含まない骨形成デバイスの凍結乾燥外形は、危険な大きさのおよび危険でない大きさの分節性欠損における骨形成を誘導し得る。例えば、凍結乾燥デバイスを分節性欠損位置に提供する工程は、アリコートの総数が、最終的に欠損位置の空隙を充填する骨形成を誘導するのに十分な骨形成タンパク質の量を提供するように、凍結乾燥デバイスの非連続アリコートを、分節性欠損にわたって露出した筋肉の長さに沿って沈着させる工程を含む。配置に続いて、欠損部位の日常的な閉鎖を行い、それにより筋肉層および関連する組織は一層ずつ縫合されて、このアリコートを欠損位置の空隙に閉じ込める。この型の送達および外科的閉鎖は、日常的な技術および実験のみを必要とする。同様の処方物および送達方法を使用して、故障した人工装具、骨腫瘍切除、頭部/顔面再構成、脊髄固定、および広範囲に及ぶ同種異系移植片欠損により引き起こされる間隙の修復のための骨形成を誘導し得る。凍結乾燥されたマトリクスを含まないデバイスの特殊な適用に必要とされ得る上記の送達方法の任意の改変は、当業者の技術レベル内であり、そして日常的な実験のみを必要とする。
【0060】
マトリクスを含まないデバイスのなお別の外形は、以下に例示される。骨形成タンパク質およびキャリア(例えば、カルボキシメチルセルロース(低粘度、AqualonまたはプルロニックF127))は混合されて、ペーストを形成し得る。いくつかの実施態様において、生理食塩水は、だいたいにキャリアに添加されて、骨形成タンパク質(例えば、OP−1)が分散され得るペーストを形成する。ペースト外形は、欠損(例えば、空洞)の表面に塗布するために使用され得る。ペーストは、骨折欠損、軟骨または骨軟骨の欠損、ならびに人工装具移植部位の骨欠損に塗布するために使用され得る。ペーストはまた、練り歯磨きを押し出すか、またはチューブからコーキングするのと同様の様式で、欠損の中に、またはその表面の1つに沿って注射されるか、または押し出され得、その結果、マトリクスを含まないデバイスのビーズが欠損位置の長さに沿って送達される。代表的に、押し出されるビーズの直径は、欠損の型ならびに欠損位置の空隙容量により決定される。
【0061】
カルボキシメチルセルロースのようなキャリアは、パテのような外形を有するデバイスを処方するために使用され得る。当業者に明らかなように、このような外形は、キャリアと湿潤剤との比を調節することから生じ、湿潤剤が少ないほど乾燥したデバイスを生成し、そして多いほど湿ったデバイスを生成する。欠損を修復するのに適した正確なデバイス外形は、少なくとも、欠損の型および欠損の大きさに依存する。当業者は、変数を認識する。
【0062】
本発明のデバイスに適したなお別の外形は、ゲルである。これは、インビボで骨形成を誘導し得る、プルロニックを含むマトリクスを含まないデバイスにより以下に例示される。この型のゲルは、骨折ならびに間隙の修復を処置するために使用されている。この外形の1つの有用な特徴は、ゲルの粘度がキャリア量を調節することにより操作され得、それにより広範囲な適用(例えば、分節性欠損、骨折、および再構成)ならびに送達態様(例えば、注射、塗布、押し出しなど)を可能にすることである。従って、この型のデバイスは、単に骨形成タンパク質が分散されるキャリアの量を操作することにより、少なくとも、注射用液体、粘性液体、および押し出し可能なゲルの形態をとり得る。
【0063】
本発明のなお別の実施態様において、実際の骨形成デバイスの調製は、欠損位置へのその送達の直前に生じ得る。例えば、CMC含有デバイスは、手術の直前に混合するのに適していて、その場で調製され得る。1つの実施態様において、低粘度CMC(Aqualon)は、骨形成タンパク質OP−1とは別々にパッケージされ、そして放射線に曝露される。次いで、OP−1タンパク質はCMCキャリアと混合され、そして骨形成活性について試験される。この様式で調製されたデバイスは、CMCを含まない従来のデバイスと同程度に生物学的に活性であることが観察された。重ねて、必要なのは、欠損位置を充填するのに十分な骨形成を誘導するための骨形成タンパク質の有効量を決定すること、および欠損位置の空隙容量より少ないデバイス容量を維持することである。本発明のデバイスが処方される正確な様式、およびいつまたはどのように処方が達成されるかは、効力に重要ではない。
【0064】
本発明の実施は、以下の実施例からさらにより十分に理解され、実施例は本明細書中で例示のみのために示され、そしていかようにも本発明を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0065】
IV.生物学的試験
A.骨形成活性の生物学的試験:軟骨内性骨形成および関連特性
以下は、出願人の発明の範囲内で、真正の骨形成タンパク質または骨形態形成タンパク質、ならびに骨形成デバイスを同定および特徴付けるためのプロトコルを示す。
【0066】
SampathおよびReddi(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983)80:6591−6595)ならびに米国特許第4,968,590号(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)により記載されるような、当該分野で認識された骨誘導についての生物学的試験を、精製プロトコルの効力を確立するために使用する。以下で証明されるように、このアッセイは、試験サンプルをエーテル麻酔下の同種異系レシピエントラットの皮下部位に配置することからなる。胸部領域上の皮膚において無菌条件下で垂直切開(1cm)し、そしてポケットを鈍鉤を用いた解剖(blunt
dissection)により調製する。特定の状況において、約25mgの試験サンプルをポケット中深部に移植し、そして切開を、金属の皮膚クリップを用いてふさぐ。異所性(heterotropic)部位は、正常位部位の使用から生じる可能性のある不明瞭さを伴わずに、骨誘導の研究を可能にする。
【0067】
異所性部位で生じる連続的な細胞反応は複雑である。軟骨内性骨形成の多段階カスケードは以下を含む:フィブリンおよびフィブロネクチン(fbronectin)の移植マトリクスへの結合、細胞の走化性、線維芽細胞の増殖、軟骨芽細胞への分化、軟骨形成、血管侵襲、骨形成、再造形、および骨髄分化。
【0068】
ラットにおいて、この生物学的試験モデルは、以下を含むマトリクス誘導軟骨内性骨発生の段階を通して制御された進行を示す:(1)1日目、多形核白血球による一過的な浸潤;(2)2および3日目、間葉細胞の遊走および増殖;(3)5および6日目、軟骨細胞出現;(4)7日目、軟骨マトリクス形成;(5)8日目、軟骨石灰化;(9)9および10日目、血管侵入、骨芽細胞の出現、および新規骨の形成;(10)12〜18日目、骨芽細胞および骨の再造形の出現;ならびに(11)21日目、小骨における造血性骨髄分化。
【0069】
組織学的切片化および染色は、移植片における骨形成の程度を決定するために好ましい。トルイジンブルーまたはヘマトキシリン(hemotoxylin)/エオシンを用いた染色は、軟骨内性骨の最終的な発生をはっきりと証明する。12日の生物学的試験は、通常、骨誘導活性が試験サンプルに関連するか否かを決定するのに十分である。
【0070】
さらに、アルカリホスファターゼ活性は、骨形成のマーカーとして使用され得る。酵素活性は、摘出された試験材料の均質化(homogenitization)後に分光光度的に決定され得る。活性はインビボで9〜10日でピークに達し、そしてその後、ゆっくりと低下する。組織学により骨発生を示さないサンプルは、これらのアッセイ条件下でアルカリホスファターゼ活性を有さないはずである。このアッセイは、試験サンプルをラットから取り出した後、非常に迅速に、骨形成の定量に、および骨形成の評価を得るために有用である。例えば、いくつかのレベルの純度で骨形成タンパク質を含むサンプルを試験して、工業規模で生成され得る処方物を捜すために、最も効果的な用量/純度レベルを決定した。アルカリホスファターゼ活性レベルにより測定された結果および組織学的評価は、「骨形成単位」として示され得る。1骨形成単位は、12日目の最大骨形成活性の半分に必要とされるタンパク質の量を示す。さらに、種々の濃度のタンパク質をアッセイすることにより、精製スキームの各工程でのインビボでの骨誘導活性についての用量曲線を構築する。従って、当業者は、日常的な実験法のみを用いて代表的な用量曲線を構築し得る。
【0071】
B.マトリクスを含まないOP−1骨形成デバイスの移植後の骨形成
骨形成デバイスを、25mgのコラーゲンマトリクスを伴って、または伴わないかのいずれかで、62.5μgの凍結乾燥OP−1を用いて作製した。これらのデバイスを、筋肉内部位および皮下部位の両方において、上記のラット異所性骨形成アッセイを用いて、骨形成を支持するそれらの能力について評価した。さらに、形成された骨の塊を、カルシウム含有量および取り出されるデバイスの重さを測定することにより評価した。作製されたデータを、以下の表1および2に要約する。
【0072】
組織学およびカルシウム含有量の両方により証明されるように、骨は、全てのマトリクスを含まないOP−1サンプルに応答して形成した。これらのデータは、マトリクスを含まないOP−1デバイス単独を移植することが、ラット異所性部位において軟骨内性骨形成を誘導するのに十分であることを例示する。
【0073】
表1.骨形成対OP−1濃度
筋肉内部位
【0074】
【表1】

表2.骨形成対OP−1濃度
皮下部位
【0075】
【表2】

C.水溶性キャリアを含むマトリクスを含まないOP−1デバイス
水溶性キャリアと混合されたOP−1もまた、骨形成を支持する。この研究において、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、PEG3350、プルロニックゲル、およびコラーゲンの各々を、0.9%滅菌生理食塩水の添加によりペーストに処方した。水に溶解された10μgのOP−1をペーストに添加して、マトリクスを含まないデバイスを作製し、そしてデバイスを、直ちにラットの筋肉内に移植した。12日後、移植されたデバイスを取り出し、そしてカルシウム含有量および組織学の両方により骨形成について評価した。これらのデータは、コラーゲンマトリクスが容量充填骨形成を誘導することに必須ではないという上記の観察を確証する。評価された水溶性キャリアのうち、マンニトールは全体的に最も良い結果を証明し、他のものは比較的、匹敵すると思われた。
【0076】
表3
【0077】
【表3】

D.溶液中のマトリクスを含まないOP−1デバイス
溶液中のマトリクスを含まない骨形成デバイスもまた、筋肉内(IM)または皮内(ID)のいずれかで投与された場合、骨形成を誘導することが証明された。例示的な実験において、マトリクスを含まないOP−1デバイスを、20mM酢酸緩衝液(pH4.5)中で調製した。デバイスを、所望の用量の(5〜50mg)OP−1が100μL注射容量中で送達されるように調製した。投与の両方の形態は、カルシウム含有量、組織学、および移植片の重さにより測定されたように骨形成を誘導した。
【0078】
E.プルロニックゲルを含む、マトリクスを含まないOP−1デバイス
一般的に好ましい実験を、マトリクスを含まないOP−1デバイスのプルロニック処方物を用いて開始した。1つの実施態様において、このデバイスは、冷蔵温度で液体であるが、室温まで暖められるとゲル状であるという独特の特性を有する。これは、デバイスを冷却した場合、注射器に引き上げることを可能にし、室温で数分後に容易な注射を可能にする。これは、ゲルが損傷部位でのOP−1含有を可能にするので、このようなOP−1デバイスを骨折部位に注射するために有用である。
【0079】
1.35mLの水を添加した0.5gの市販のプルロニックF127から調製したプルロニックゲルは、冷蔵温度で粘性液体であり、そして室温で半固体ゲルである。骨形成は、マトリクスを含まないOP−1−プルロニックゲルデバイスのIM投与に応答して12日後に観察された。ゲルを筋肉に直接注射しなかったが、針を用いずに筋肉皮弁に注射した。骨はまた、これらの同じプルロニックゲルデバイスのSC投与に応答して形成した。OP−1用量(5〜25mg)を、50μlゲル中に含んた。
【0080】
ゲルデバイスからのOP−1の回収を、8M尿素緩衝液を用いて抽出し、そして抽出物をHPLC上に注入することにより決定した。ゲルからのOP−1の100%の回収率を得た。さらに、選択されたゲルの尿素抽出物は、OP−1標準と同じくらい活性であった。例えば、ゲルの1つを、注射器中の冷蔵温度での10日貯蔵後に再抽出し;OP−1の100%の回収率を得、そして再度、抽出物はOP−1標準と同じくらい活性であった。
【0081】
以下に記載されるように、濾過滅菌OP−1を、滅菌デバイスが提供され得るような無菌(aspectic)様式で、オートクレーブされたか、または照射されたゲルに添加し得る。
【0082】
OP−1を、オートクレーブされたプルロニックゲルと混合した。ゲルを調製し、オートクレーブし、次いで、OP−1との混合前に液化するように冷却した。次いで、OP−1ゲルを注射器に充填し、これを5℃で貯蔵した。サンプルは、5℃で少なくとも2週間安定であることが観察された。最初のOP−1の少なくとも約50〜60%は、5℃での7週間貯蔵後に残った。ゲルはまた、照射されたプルロニックF127から調製した。40〜50%の回収率が、5℃で7週間後に観察された。
【0083】
第2の時間経過を、マトリクスを含まないOP−1−プルロニックゲルデバイスに応答した骨形成を評価する目的のために行った。0または10μgのOP−1を含む50μl容量のプルロニックゲルを、筋肉皮弁に注射した。7、12、および21日目に取り出した移植片を、カルシウム含有量およびアルカリホスファターゼ活性について分析した。骨形成の時間経過は、標準的なコラーゲン含有OP−1デバイスを用いて観察されたものに類似した。
【0084】
V.動物研究:マトリクスを含まないOP−1デバイスおよび移植片の使用方法
A.マトリクスを含まない骨形成デバイスを用いた、イヌにおける危険な大きさの分節性欠損の治癒
実験1
以下の実験は、確立されたイヌ尺骨欠損モデルにおける、危険なおよび危険でない両方の大きさの分節性欠損を治癒するための、rhOP−1の注射用およびフリーズドライされた(freeze−dried)処方物の効力を証明する。マトリクスを含まない骨形成デバイスの3つの処方物(各々がOP−1を含む)を、危険な大きさの欠損(2.5cm)および/または危険でない大きさの欠損(5mm、3mm、1.5mm)において評価した。上記のように、危険な大きさの欠損は、自発的に治癒しない欠損である。評価される3つの処方物は、(1)20mM酢酸緩衝化溶液(pH4.5)、(2)リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、約pH7.5);および(3)凍結乾燥(フリーズドライ)タンパク質単独であった。危険な大きさの欠損に提供されたOP−1量は1.75mgであり;0.35mgのタンパク質は、危険でない大きさの欠損に提供された。創傷閉鎖の直前に、OP−1を酢酸またはPBSと混合し、次いで、計1ml中で欠損部位に注射した。凍結乾燥サンプルを、5つの別々のアリコート中で、欠損の長さに沿った別個の非連続位置で、欠損の長さに沿って置いた。
【0085】
標準的な外科技術を用いて、指示された大きさの、骨膜の分節性欠損を、20匹の目的のために育てられた(bred−for−purpose)成体雑種犬の、中間尺骨領域において左右に作出した。全ての動物は、1歳と2歳との間であり、35〜50ポンドの重さがあり、そしてUSDA認可供給者により供給された。骨の相対位置および荷重における変化を制限するために、均一な大きさおよび重さの動物を選択することに特別な注意を払った。適切な大きさ、骨格成熟、および明らかな骨異常が存在しないことを手術前に保証するために、動物をX線撮影によりスクリーニングした。動物はまた、2週間の隔離期間の間に、急性および慢性の医学的状態を排除するために臨床的にスクリーニングした。細胞の特異形態を用いた全血球算定を、手術前に行った。
【0086】
橈骨を力学的安定性のために維持したが、内部または外部固定を使用しなかった。骨破片および流出した骨髄細胞を除去するために、この部位を生理食塩水を用いて灌注し、次いで乾燥し、そしてホメオスタシスを、処方物をこの部位に提供する前に達成した。軟組織を、処方物1または2(酢酸またはPBS)の注射前に層における細部まで正確に閉じた。処方物3デバイス(凍結乾燥タンパク質単独)を、移植片を含むために組織層を閉じる前に、骨間空間に沿って置いた。次いで、この手順を、OP−1デバイスを創傷閉鎖前に提供しなかったことを除いて、反対側において繰り返した。
【0087】
動物に、手術後4日間、筋肉内に抗生物質を与え、そして日常的な腹側−背側X線写真を、適切な配置を保証するために手術直後に撮った。動物を、手術後24〜72時間、3×4回復ケースにおいて保持し、その後、それらを飼育場に移し、そして自由に運動させた。
【0088】
隔週で、X線写真を、治癒の進行を研究するために撮った。さらに、手術前血液(血清)を、提供者により抗体形成を研究するために屠殺するまで隔週で採取した。 屠殺時に、全ての尺骨をひとまとめにして回収し、そして十分に治癒した尺骨をねじれにおいて力学的に試験した。セグメントを、組織応答、骨の構造および再造形、ならびに新骨の形成および治癒の質および量について組織学により評価した。
【0089】
動物を、手術後、4、6、8、または12週で屠殺した。
【0090】
1b(3).X線写真
前肢のX線写真を手術後8週まで隔週で得、次いで手術後12週の屠殺時に再び得た。標準化された暴露時間および明暗度を使用し、そして砂袋を使用して、一致した様式で四肢を配置した。X線写真を評価し、そして欠損治癒の質および速さを認識するためにより初期のX線写真と比較した。
【0091】
力学的試験
切片化の直後に、治癒が触診により十分であると考えられた場合、標本を、シリンダーアルミニウムスリーブで50mm/分の一定変位速度の前後往復運動制御において操作され、そして製造者のプロトコルを用いてメチルメタクリレートで接着された、MTS閉ループ液圧試験機械(Minneapolis,MIN)において、ねじれにおいて破損するまで試験した。一方の端を厳密に固定し、そして他方を左回りに回転させた。イヌ尺骨はわずかな湾曲を有するので、標本回転を試験デバイスの回転と同軸にしておくために、標本を偏心的に取り付けた。ねじれ力を、自動制御液圧材料試験システムにより6cmのレバーアームを用いて適用した。同時記録を、機械前後往復運動コントローラーにより測定されるように移植片変位とみなし、そして荷重を荷重セル(cell)から記録した。データを、アナログからデジタルへの変換基板、およびパーソナルコンピューター、およびオンラインコンピューター獲得ソフトウェアを介して記録した。力−角変位曲線を作製し、これから破損までのトルクおよび角変形を得、そして破損までのエネルギー吸収を、荷重−変位曲線下の面積としてコンピューターで計算した。
【0092】
結果
キャリア材料を用いずにrhOP−1を用いて処置された危険な大きさの尺骨欠損の骨治癒特徴、力学的強度、および組織学は、標準的なOP−1デバイスを用いて処置された欠損のものと類似した。簡単には、実験観察は以下の通りであった:マトリクスを伴わずにrhOP−1を用いて処置された欠損においてX線撮影により観察された新骨形成および治癒パターンは、従来のコラーゲン含有OP−1デバイスを用いて以前に観察された治癒パターンと類似した。一般的に、新骨形成は、手術後2週間と同じくらい初期にはっきりわかった。新骨は、手術後12週で屠殺するまで、緻密化し、強化し、そして再造形し続けた。この研究は、機能的な骨癒合が、マトリクスを含まないヒトOP−1デバイスを用いて可能であることを証明した。さらに、おおまかな外観および12週の組織学的特徴は、従来のコラーゲン含有OP−1デバイスを用いて観察されたものに類似した。マトリクスを含まないOP−1デバイスを用いて処置された6つの欠損のうち、4つは、手術後12週で充実した骨癒合を有した。同じ動物における残りの2つの欠損は、X線撮影ではいくらか初期の骨形成を示したが、屠殺時には、新骨で完全に埋められていなかったか、または充填されていなかった。治癒された欠損の破損までの平均ねじれ荷重は、40.05Nであった(これは、以前に試験された、伝統的なコラーゲン含有OP−1デバイスを用いて処置された分節性欠損の約79%、および以前に試験されたインタクトなコントロール尺骨の61%に相当することを示す)。
【0093】
X線撮影により、広範囲な新骨形成は、3つ全ての処方物を用いて手術後2週で観察された。2〜12週まで、新骨は容量および放射線濃度が増加し、そして欠損を充填し、そして埋めた。手術後12週(屠殺)まで、放射線不透過性の新骨は、rhOP−1処方物を用いて処置された欠損を有意に充填および架橋した。全てのrhOP−1欠損は力学的に安定であり、そして12週での屠殺時に新骨で架橋された。X線写真の外観についての有意な差違は、3つの処方物間で見出されなかったが、処方物1および2は、全期間で処方物3よりわずかに高い得点を付けた。
【0094】
組織学的に、増殖性の新骨は、rhOP−1を用いて処置された欠損内におよびその周囲に存在した。欠損の架橋および骨治癒は、手術後12週までに、著しい新骨の増殖の領域間の線維軟骨の間隙を伴って完了した。新骨の縁の緻密化を伴う初期皮質発達の徴候は、全てのrhOP−1欠損において存在した。処方物型に基づく組織学的等級付け結果において差違はなかったが、処方物(Foundation)2は、癒合の質について処方物3および1より高い得点を付けた。
【0095】
処方物1の欠損の破損までの平均荷重は、47.64N(標準的なOP−1デバイスを用いて処置された欠損の94%および以前に試験されたインタクトなコントロールの73%)であった。処方物2の欠損の破損までの平均荷重は、51.96N(標準的なOP−1デバイスを用いて処置された欠損の102%および以前に試験されたインタクトなコントロールの80%)であった。処方物3の欠損の破損までの平均荷重は、50.86N(標準的なOP−1デバイスを用いて処置された欠損の100%および以前に試験されたインタクトなコントロールの78%)であった。処方物型間での力学的試験結果における有意な差違は示されなかった。処方物2の欠損は、破損までの最大負荷において処方物3および1よりわずかに高く得点を付けた。
【0096】
表4.rhOP−1対非処置コントロールを用いて処置された、危険なおよび危険でない大きさの欠損についての力学的試験結果。平均±SD(サンプルの大きさ)。
【0097】
【表4】

欠損を、不安定性のために試験しなかった。
【0098】
20mM酢酸緩衝液(pH4.5)および5%マンニトールを用いた処方物もまた試験した。危険でない大きさの欠損(5mm間隙)を用いた研究は、コントロールと比較して、OP−1が存在した場合、治癒速度において明らかな増加を示した。特に、8週で、コントロールは、インタクトな尺骨の強さの平均14%であったが、一方、OP−1処置欠損は、平均79%であった。X線撮影により、新骨は手術後2週間と同じくらい初期にはっきりわかり、そして8週までに、rhOP−1処方物を用いて処置された欠損を有意に充填および架橋し始めた。6つの非処置コントロール欠損のいずれもが、研究期間の終わりに完全に治癒しなかった。処方物1(酢酸緩衝液)を用いた3つの欠損のうちの1つ、および処方物2(PBS)を用いて処置された3つの欠損のうちの3つは、8週で新骨により完全に充填および架橋された。OP−1を受けた6つ全ての欠損は新骨形成を有し、そして力学的に安定であった。処方物2の欠損は、処方物1を用いて処置された欠損より、X線写真等級付け結果、破損までに吸収されたエネルギー、および癒合の組織学的な質において有意に高い得点を付けた。他の点では、破損までの平均荷重、角変形、および全般的な組織学的外観について2つの処方物間での差違は見出されなかった。両方の処方物は、コントロール欠損と比較して、全てのカテゴリーにおいて有意に高い得点を付けた。組織学的に、増殖性の新骨は、rhOP−1を用いて処置された欠損内におよびその周囲に存在した。欠損の架橋および骨治癒は、手術後8週までに、著しい新骨の増殖の領域間の線維軟骨の間隙を伴ってほとんど完了した。初期皮質発達および骨再構築の証拠は、いくつかのrhOP−1欠損において存在した。非処置コントロールの全ては不完全な癒合をもたらしたが、潜在的なより長い期間の治癒が、宿主骨末端および骨内膜領域からのいくらかの新骨形成により示された。処方物2の欠損の破損までの平均荷重は、53.23N(標準的なOP−1デバイスを用いて処置された危険な大きさの欠損の104.5%、および以前に試験されたインタクトなコントロールの81.6%)であった。0.35mgのOP−1を用いて処置された危険でない大きさの欠損と、以前に試験された、キャリア材料を伴わない1.5mgのOP−1(注射用処方物)を用いて処置された危険な大きさの欠損との比較は、破損までの平均荷重において有意な差違を示さなかった。
【0099】
C.マトリクスを含まない骨形成デバイスを用いた骨折欠損の治癒
ウサギ骨折研究
ウサギ骨折修復モデル研究(尺骨中骨幹(midshaft)骨折)はまた、本発明の方法およびデバイスの効力を証明する。この研究は、3つの外形:1)酢酸緩衝液(pH4.5)(可溶性OP−1)、2)PBS(懸濁物OP−1)、および3)プルロニック(pluronic)ゲル中の、マトリクスを含まないOP−1デバイスの投与の効果を比較した。4匹のウサギを、骨折作出の直後に各群において処置し;反対側のコントロールは、欠損のない腕であった。動物を、処置後3週間で屠殺した。要約すると、酢酸またはプルロニックを含むOP−1デバイスを注射された動物は、X線写真試験、全体的な試験、および組織学的試験により、有意により大きな骨折仮骨を示した。OP−1を用いて処置された全ての尺骨についての破損までの平均ねじれ荷重は、8.89±2.99N(平均±標準偏差)(8サンプル)であった。一方、非処置コントロール尺骨についての破損までの平均荷重は、7.9±2.92N(9サンプル)であった。
【0100】
1a.試験物質の説明
溶液中のマトリクスを含まないOP−1デバイスを利用した。評価された3つの溶液外形は以下の通りであった:(1)リン酸緩衝化生理食塩水と混合したrhOP−1(8.71mg OP−1/ml)。デバイスを、個々のバイアルにパッケージした。送達されるデバイス容量の概算範囲は、部位あたり30μl〜110μlであった;(2)20mM酢酸緩衝液(pH4.5)と混合したrhOP−1(0.99mg OP−1/ml)。デバイスを、130μを含む個々のバイアルにパッケージした。デバイスを注射器に引き上げた。全ての場合において、100μl未満を各部位に送達した。送達される移植片容量の概算範囲は、部位あたり60μ〜90μlである;および(3)プルロニックゲル中のrhOP−1(0.87mg OP−1/ml)。このデバイスを、注射器にパッケージした。デバイスを、欠損部位への投与まで冷凍保存した(1分未満の時間経過)。全てのThickゲルを、全ての場合において、大きなゲージ(18)の針を用いて送達した。
【0101】
全ての場合において、約100μgのrhOP−1を各骨折部位に送達するために、投薬量を換算した。
【0102】
計12匹の成体雄ウサギ(目的のために育てられた成体雄ホワイトニュージーランドウサギ、研究開始において少なくとも9ヶ月齢)を利用した。全ての動物は骨格的に成熟し、そして2.4〜3.0kgの重さがあり、そしてUSDA認可売り主により供給された。動物を、隔離期間の間に急性および慢性の医学的状態を排除するためにスクリーニングし、そして適切な大きさ、骨格成熟、および明らかな骨異常が存在しないことを確実にするためにX線撮影によりスクリーニングした。治癒される骨折の強さの変化性を制限するために、均一な性、大きさ、および重量の動物を選択することに特別な注意を払った。実験的横骨折(traverse fracture)を、標準的な外科技術を用いて各動物の中央尺骨において左右に作出した。左尺骨は、各動物における非処置コントロールとして作用した。簡単には、標準的な滅菌技術を用いて、長さが約2.0cmの横切開を作り、そして鋭いおよび鈍い切開を用いて得られた右尺骨を曝露することにより、左右骨折を誘導した。横断骨切り術を、電気外科用のこぎりを用いて尺骨中央において行った。次いで、この部位を、再吸収可能な縫糸で閉じた。次いで、溶液中のマトリクスを含まないOP−1デバイスを、骨折部位へ軟組織を通して注射した。次いで、この手順を、OP−1デバイスをこれらの骨折部位に提供しなかったことを除いて、左側において繰り返した。
【0103】
動物に、手術後4日間、筋肉内抗生物質を投与した。手術後、十分に意識があり、そして重みを支えるまで、動物を回復かごにおいて保持し、この後、それらを標準的なかごに移し、そして自由に運動させた。肢をギプス包帯しなかった。
【0104】
毎週、X線写真を、治癒の進行を研究するために撮った。全ての動物を、手術後3週で屠殺した。全ての尺骨をひとまとめにして回収し、そしてねじれにおいて力学的に試験した。骨折治癒を、新骨形成ならびに治癒の質および量について組織学によりさらに評価した。
【0105】
手術後1週で、初期の新骨形成は、全ての骨折においてはっきりとわかった。軽度に放射線不透過性の物質の痕跡は、骨膜の縁に沿って存在した。新骨形成の量は、手術後1週で、(非処置)骨折よりOP−1マトリクスを含まないデバイスを用いた骨折において有意に多かった。手術後2週で、新骨形成の継続は、マトリクスを含まないOP−1デバイスを用いて処置された全ての骨折においてはっきりとわかった。3週で、骨の仮骨は大きく、そして骨折は、OP−1の存在下で実質的にまたは完全に治癒した。しかし、左(非処置)側において、骨折線は、3週でまだはっきりとわかり、そして形成された仮骨の量はより少なかった。
【0106】
いずれかのOP−1デバイスを用いて処置された全ての尺骨についての、破損までの平均ねじれ負荷は、8.89±2.99N(8)(平均±標準偏差(サンプルの大きさ))であった。非処置コントロール尺骨についての破損までの平均負荷は、7.91±2.92N(9)であった。
【0107】
より大きな新骨容量および完全な骨折部位の架橋は、左と比較して、右の(OP−1デバイス処置された)骨折全てにおいて観察された。処置骨折の軟組織へ伸長した、仮骨の増殖が観察された。左(非処置)側は、骨膜および骨内膜の縁での新骨増殖、ならびに骨折での初期軟骨形成を一様に証明したが、骨折の一致した完全な骨架橋を証明しなかった。
【0108】
X線写真結果と一致して、より大きな容量の新骨が、OP−1デバイスを用いて処置された部位において観察された。
【0109】
2.ヤギ骨折研究
マトリクスを含まないOP−1デバイスを用いた増強した骨折修復を評価するためのさらに別の動物モデルは、ヤギモデル(脛骨中骨幹急性骨折)である。この研究は、標準的な外科技術を用いた骨折作出直後に注射された、酢酸緩衝液中の0.5mg OP−1、酢酸緩衝液中の1mg OP−1、およびPBSに沈殿された1mg OP−1を比較する。上記のイヌおよびウサギ研究と同様に、動物を観察し、そして動物の世話をし、そして代表的に、処置後2、4、および6週で屠殺する。
【0110】
増強した骨折修復は、ウサギ研究について証明されたように、これらの動物におけるマトリクスを含まない骨形成デバイスの含有から生じることが認識される。
【0111】
D.マトリクスを含まないOP−1デバイスを用いた骨軟骨欠損の修復
ウサギにおける骨軟骨欠損
以下の研究は、マトリクスを含まない骨形成デバイスが、骨の上に重なる関節軟骨の修復を増強し得ること、ならびに下にある骨の修復を増強し得ることの両方を証明する。この研究において、標準的なウサギ骨軟骨欠損モデルを使用して、この種類の欠損を治癒するためのOP−1の種々の注射用形態を評価した。
【0112】
OP−1を含む、マトリクスを含まないデバイスを、2つの異なる注射用送達処方物および1つの凍結乾燥処方物に調製した。全てのサンプルは、125μgのOP−1を含んだ。処方物1:5%マンニトールを含む20mM酢酸緩衝液(pH4.5)、50μl全容量;処方物2:リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)懸濁物;および処方物3:1サンプルアリコートでの凍結乾燥。
【0113】
計6匹の成体雄ウサギを利用した。直径が全厚4.0mmの骨軟骨欠損を、標準的な外科技術を用いて、計12の欠損のために各動物の膝蓋骨溝において左右に作出した。左欠損は3つのOP−1処方物のうちの1つを受け、そして右側欠損は非処置コントロールとして作用した。全ての動物を手術後12週で屠殺し、そして遠位大腿骨をひとまとめにして回収した。欠損部位を、本明細書中上記のように、組織学的におよび全体的に評価した。
【0114】
1つを除く全てのPBS群欠損において、OP−1側は、骨および軟骨両方の再生を伴う有意な治癒を示す。治癒は、OP−1を用いなかったコントロール欠損の大部分において観察され得るが、修復は劣り;通常、下にある骨の不完全な治癒および(薄いトルイジン染色により見られるように)軟骨におけるグリコサミノグリカン(GAG)の著しい低生成がある。
ヒツジモデル
骨軟骨および軟骨の欠損修復はまた、標準的なヤギまたはヒツジモデルにおいて評価され得る。例えば、標準的な外科技術を用いて、研究における各ヒツジを両方の前膝関節において手術し、そして関節あたり2つの欠損を作出する(外側顆および内側顆上の各々の欠損)。一方の関節は、各顆において2つの標準化された部分的な厚さの軟骨欠損(直径が5mm)を有するが、一方、他方の関節は、2つの類似するが、より深い完全な厚さの骨軟骨欠損(軟骨下骨において約1〜2mm)を有する。一方の関節で動物を、マトリクスを含まない骨形成デバイス処方物を用いて処置し、そして他方の関節を非処置コントロールとした。各群は、8週で初期に屠殺されたサブグループ、および6〜7ヶ月間の長期評価のために保持された別のサブグループを有する。本明細書中に記載される処方物のいずれかを用いるマトリクスを含まないデバイスは、本明細書中上記の結果と一致して、関節軟骨および下にある骨の両方の修復の速さおよび質を実質的に増強することが予測される。
【0115】
E.マトリクスを含まない骨形成デバイスを用いた、イヌにおける危険でない大きさの分節性欠損の治癒
実験2
上記の実験1(節V.A.1を参照のこと)において既に例示されるように、rhOP−1の注射用処方物を使用して、危険でない大きさの(例えば、5mm、3mm、1.5mm)欠損を治癒し得る。後に続く実験は実験1の拡大であり、そして3mm欠損モデルに焦点を合わせる。より詳細に以下に例示されるように、rhOP−1を用いて処置された危険でない大きさの(3mm)欠損は、進んだ治癒およびより広範囲な新骨形成を証明した。以下に証明されるように、3mm欠損は、骨折修復プロセスの促進を評価するための、一致したおよび再現可能なモデルを提供した。
【0116】
この実験は、2つのOP−1処方物(酢酸/ラクトース緩衝液中のrhOP−1(OP/緩衝液)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)中のrhOP−1(OP/CMC)ゲル)を用いて処置された、危険でない大きさの欠損の治癒を手術後4週で評価する。以下に要約された結果は、CMC溶液中および酢酸緩衝液溶液中の注射用rhOP−1を用いて処置された、危険でない大きさの欠損が、CMCおよび緩衝液ビヒクルコントロールならびに非処置コントロールと比較して、有意により早く治癒したことを証明する:X線撮影により、両方のOP−1処置群(OP/CMCおよびOP/緩衝液)における欠損は、手術後4週までに、初期の放射線不透過性の骨形成および骨の架橋を示した。OP/CMC処置欠損は、外側尺骨縁に沿った不均一な濃度の骨および宿主骨皮質との合併により、ほとんど完全に充填されそして埋められた。増殖性の新骨は、OP/緩衝液処置欠損に存在した。ビヒクルコントロール欠損(CMCおよび緩衝液のみ)のいずれもが、4週での骨欠損治癒の証拠を示さなかった。OP/CMCおよびOP/緩衝液処置欠損の組織学的外観は同様であった。OP処置欠損において、有意な量の新骨は、欠損皮質で、および欠損部位を横切って伸長する尺骨骨膜に沿って形成した。骨欠損架橋は、4週間期間でほぼ完全であった。鉱化軟骨および線維組織は、OP処置欠損に存在した。対照的に、ビヒクルコントロール欠損は、線維組織で充填されそして取り囲まれ、そして欠損皮質において最小量の新骨形成を有した。平均して、4週でのOP/CMC処置欠損は、CMCビヒクルコントロールの14%と比較して、インタクトな尺骨の強さの51%のねじれ強さを有した。OP/緩衝液溶液を用いて処置された欠損は、インタクトな尺骨の強さの44%の平均ねじれ強さを有したが、一方、緩衝液コントロール欠損は、インタクトな尺骨のねじれ強さの9%しか達しなかった。OP/CMC処置群およびOP/緩衝液処置群の両方は、4週(9%)および8週(27%)での非処置コントロールより大きな力学的強さを有した。
【0117】
実験設計
試験サンプルは、注射用送達マトリクス系中の組換えヒト骨形成タンパク質−1(rhOP−1)からなった。2つのrhOP−1処方物および2つのビヒクルのみのコントロールを評価し、そして以前に試験および報告された非処置コントロール欠損と比較した。これらの3つの処方物のうち2つのみをここで報告する。1つの処方物(OP/CMC)は、3つの滅菌注射器において供給される、100μlカルボキシメチルセルロース(CMC)ゲル中の0.35mg rhOP−1からなった。第2の処方物(OP/緩衝液)は、OP−1溶液として供給される、100μl酢酸緩衝液中の0.35mg rhOP−1からなった。ビヒクルのみのコントロールは、3つの滅菌注射器において供給される100μl CMCゲル(CMCコントロール)、およびコントロール溶液として供給される100μl酢酸緩衝液(緩衝液コントロール)からなった。既知の量および含有量のサンプルを、Creative BioMolecules,Inc.(Hopkinton,MA)により滅菌して製作および供給された。
【0118】
左右尺骨の分節性欠損(長さが3.0mm)を全ての動物において作出した。右欠損は、各処方物の3つの部位が研究されるように、2つのrhOP−1処方物のうちの1つを受けた。左欠損は、rhOP−1を含まないビヒクルのみのコントロールを受けた。毎週、治癒の進行を研究するためにX線写真を撮った。屠殺時に、全ての尺骨をひとまとめにして回収し、そして十分に治癒した場合、ねじれにおいて力学的に試験した。セグメントを、組織応答、新骨の形成の質および量、ならびに治癒の程度について組織学により評価した。目的のために育てられた成体雄雑種犬を、それらの入手可能性、操作の容易さ、解剖学的な大きさ、ならびに既知の骨修復および再造形特徴のために本研究において利用した。全ての動物は骨格的に成熟し、44〜63ポンド(平均54ポンド)の重さがあり、そしてMartin Creek Kennels,USDA番号71−B−108(Willowford,AK)により供給された。骨の幾何学および荷重における変化性を制限するために、均一な大きさおよび重さの動物を選択することに特別な注意を払った。
【0119】
手術
5.0mg/ポンド体重の投薬量でペントタール(pentothal)ナトリウムの静脈内注射により麻酔を投与した。誘導後、気管内管を入れ、そして麻酔をイソフルオラン吸入により維持した。両方の前肢を、滅菌様式で準備し、そしてだらりと伸ばした(draped)。長さが約2センチメートルの横切開を作り、そして尺骨曝露を、鈍いおよび鋭い切開を用いて得た。3.0mmの大きさの欠損を、振動のこぎりを用いて尺骨中央において作出した。橈骨を力学的研究のために維持し、そして内部または外部固定を使用しなかった。骨破片および流出した骨髄細胞を除去するために、この部位を生理食塩水を用いて洗浄した。軟組織を、欠損周囲の層において細部まで正確に閉じた。次いで、適切なサンプル処方物を、処置スケジュールどおりに欠損部位に注射した。次いで、この手順を、適切なサンプルを用いて反対側において繰り返した。
【0120】
X線写真
前肢のX線写真を、手術後4週まで毎週得た。標準化された曝露時間および明暗度を使用した。X線写真結果を定量するために、各X線写真に、表5に記載される等級付け尺度に基づいて数値得点を割り当てた。
【0121】
表5
【0122】
【表5】

屠殺
動物を、静脈内バルビツール酸(barbituate)過量を用いて屠殺した。尺骨および橈骨をすぐにひとまとめにして採集し、そして生理食塩水につかったダイアパー(diaper)に入れた。両方の尺骨の拡大写真を撮り、そして接触X線写真を撮った。軟組織を、欠損部位から注意深く解剖して離した。水冷式のこぎりを使用して、尺骨を9cmの均一な長さに切り、欠損部位を試験標本の中央に集中させた。
【0123】
力学的試験
切片化の直後に、治癒が手を使った操作により十分であると考えられた場合、標本を、50mm/分の一定変位速度のストローク(stroke)制御において操作されたMTS閉ループ液圧試験機械(Minneapolis,MN)において、ねじれの破損まで試験した。骨セグメントの各末端を、シリンダーアルミニウムスリーブに取り付け、そしてメチルメタクリレートで接着した。一方の端を厳密に固定し、そして他方を左回りに回転させた。イヌ尺骨はわずかな湾曲を有するので、標本回転を試験デバイスの回転と同軸にしておくために、標本を偏心的に取り付けた。ねじれ力を、自動制御液圧物質試験システムにより6cmのレバーアームを用いて適用した。同時記録を、機械ストロークコントローラーにより測定されるように移植片変位から作成し、一方、荷重を荷重セルから記録した。データを、アナログからデジタルへの変換ボアーク(voarch)、パーソナルコンピューター、およびオンラインコンピューター獲得ソフトウェアを介して記録した。力−角変位曲線を作製し、これから破損までのトルクおよび角変形を得、そして破損までのエネルギー吸収を、荷重−変位曲線下の面積としてコンピューターで計算した。
【0124】
組織学
試験標本および非試験標本の両方を、組織学的評価のために調製した。個々の標本を、力学的試験の直後または非試験標本の切片化の後に、10%緩衝化ホルマリン溶液中の浸漬により固定した。水冷式ダイアモンドのこぎりの上で、標本をその長軸下で2等分することにより、標本を分割した。この手順により、異なる組織学的調製物(脱石灰化されていない研削した切片および脱石灰化されていないミクロトーム切片を含む)のための各標本の2つの部分を得た。
【0125】
固定後、脱石灰化されていない切片のために示された標本を、70%〜100%の段階的なエチルアルコール溶液中で水和した。次いで、標本をメチルメタクリレートモノマー中に入れ、そして重合させた。高速水冷式Mark V CS600−A(East Grandy,CT)切片化のこぎり上で、標本を約700〜1,000ミクロン厚の切片に切ることにより、研削した切片を得た。これらの切片をアクリルスライドに取り付け、そして金属砥石車(grinding wheel)を用いて100ミクロン厚まで研削し、そして微小X線写真を標準化された技術を用いて作った。微小X線撮影後、切片を約50ミクロンまでさらに研削し、そして癒合の質、皮質骨および格子状骨の外観および質、骨髄要素の存在、骨再造形、ならびに炎症応答を評価する組織学的等級付け(表6)のために塩基性フクシンおよびトルイジンブルーを用いて染色した。
【0126】
表6
【0127】
【表6】

実験結果
X線写真評価
各部位についてのX線写真等級の要約を表7に提供する。手術後4週間で、OP/CMCで処置された欠損は、可能な6点の中から3.0の平均X線写真等級を有した。OP/緩衝液で処置された欠損は、4.0の平均X線写真等級を有した。CMCビヒクルコントロールおよび緩衝液のみのコントロールで処置された欠損では、それぞれの最終的なX線写真等級は平均1.33および1.0であった。両方のOP−1処置群(OP/CMCおよびOP/緩衝液)において、手術後3週間という初期に、欠損においておよび外側欠損縁に沿って形成する放射線不透過性の新骨の徴候があった。4週目で、有意な量の新骨が、欠損内におよび周囲の皮下組織において形成した。OP/CMC欠損は、ほとんど完全に充填され、そして外側尺骨縁に沿って不均一な濃度の骨でつなげられた。新骨は、欠損皮質と有意に統合した。3つのOP/緩衝液処置欠損のうち2つにおいて、宿主皮質は相変わらず目に見えたが、増殖性の新骨が存在した。対照的に、OP/CMCまたはOP/緩衝液欠損のいずれもが、手術後4週間までに完全に架橋または充填されなかった。CMCコントロール群において、初期の新骨は、3週目で宿主骨皮質を不明瞭にし、そして放射線濃度が増大し続けた。重ねて、対照的に、緩衝液コントロール欠損は、4週目で、欠損皮質での放射線濃度のわずかな増加のみを示した。各群のコントロール欠損のいずれもが、骨欠損治癒の証拠を示さなかった。
【0128】
表7
【0129】
【表7】

OP/CMC=100μl CMCゲル中に0.35mg rhOP−1
CMCコントロール=100μl CMCビヒクルのみのゲル
OP/緩衝液=100μl酢酸緩衝液溶液中に0.35mg rhOP−1
緩衝液コントロール=100μl酢酸緩衝液ビヒクルのみの溶液。
【0130】
OP/CMC−4週間
手術後1週間では、いずれのOP/CMC欠損のX線写真外観にも変化はなかった。2週間で、放射線不透過性領域の痕跡が、切断骨末端に存在していた。3週間で、欠損内でおよび外側欠損縁に沿って形成する新骨の放射性濃度が増大した。1つの欠損は、初期骨架橋の徴候を示した。4週間で、OP/CMC欠損は、両方の欠損内に有意な量の放射性不透過性の新骨を有した。欠損は、ほとんど完全に充填され、そして外側尺骨縁に沿って不均一な濃度の骨でつなげられた。新骨は、欠損皮質と有意に統合した。OP/CMC処置欠損はいずれも、手術後4週で完全に充填されず、新骨と固く架橋されもしなかった。各欠損についての最終的なX線写真等級は、可能な6点の中から3であった(平均3.0±0.0、n=3)。
【0131】
CMCコントロール−4週間
手術後2週間で、いずれのCMCコントロール欠損のX線写真外観にも有意な変化はなかった。3週間で、宿主皮質は、3つの欠損のうち2つにおいて新骨により不明瞭になり始めた。4週間で、CMC欠損は、欠損皮質で新骨活性のいくつかの証拠を示したが、骨欠損治癒の証拠を示さなかった。最終的なX線写真等級は、可能な6点の中から1、2、および1であった(平均1.33±0.58、n=3)。
【0132】
OP/緩衝液−4週間
手術後1週間で、いずれのOP/緩衝液処置欠損のX線写真外観にも変化はなかった。手術後2週間で、放射線不透過性領域の痕跡が、OP/緩衝液処置欠損内でおよび欠損縁に沿って存在した。有意な新骨形成もまた、欠損周囲の皮下組織において見られた。3週間で、新骨の斑点が、欠損において、および上に重なる軟組織において形成された新骨において現れた。4週間で、OP−1処置欠損を充填および架橋する放射線不透過性の新骨形成が有意に増加した。3つの欠損のうち2つにおいて、皮質は相変わらず目に見えるが、増殖性の新骨は欠損を充填し、そして埋めた。OP/緩衝液処置欠損のいずれもが、4週間での屠殺時期で新骨で完全に充填されないか、または固く架橋されなかった。最終的なX線写真等級は、それぞれ、可能な6点の中から3、4、および5であった(平均4.0±1.0、n=3)。
【0133】
緩衝液コントロール−4週間
手術後3週間で、緩衝液のみのコントロールを用いて処置されたいずれの欠損のX線写真外観にも有意な変化はなかった。4週間で、皮質での放射線濃度の増加が観察されたが、欠損治癒の徴候ははっきりとわからなかった。各部位についての最終的なX線写真等級は、それぞれ、可能な6点の中から1であった(平均1.0±0.0、n=3)。
【0134】
肉眼観察
OP−1欠損:全てのOP/CMCおよびOP/緩衝液処置欠損は、手では安定であり、そして肉眼で、欠損部位での多量の新骨形成を示した。
ビヒクルコントロール欠損:CMCおよび緩衝液のみのコントロール欠損のいずれもが、4週間で手では安定でなかったが、全てを力学的に試験した。
【0135】
力学的試験
力学的試験結果の要約は表8に示す。
【0136】
OP/CMC
手術後4週間で、OP/CMCを用いて処置された3mm欠損の破損までの平均荷重は、33.08±16.41N(n=3)であった。これは、予め試験したインタクトなコントロールの強さの14%を示す。平均角変形は、33.13±15.32度であった。破損までに吸収された平均エネルギーは、41.64±30.52Nm度であった。
【0137】
CMCコントロール
手術後4週間で、CMCコントロールを用いて処置された3mm欠損の破損までの平均荷重は、9.32±16.41N(n=3)であった。これは、予め試験したインタクトなコントロールの強さの14%を示す。平均角変形は、33.36±25.95度であった。破損までに吸収された平均エネルギーは、10.53±8.62Nm度であった。
【0138】
OP/緩衝液
手術後4週間で、OP/緩衝液を用いて処置された3mm欠損の破損までの平均荷重は、29.03±16.79N(n=3)であった。これは、予め試験したインタクトなコントロールの強さの44%を示す。平均角変形は、36.14±14.71度であった。破損までに吸収された平均エネルギーは、37.87±27.73Nm度であった。
【0139】
緩衝液コントロール
手術後4週間で、緩衝液コントロールを用いて処置された3mm欠損の破損までの平均荷重は、5.62±1.65N(n=3)であった。これは、予め試験したインタクトなコントロールの強さの9%を示す。平均角変形は、24.91±12.03度であった。破損までに吸収された平均エネルギーは、3.94±4.12Nm度であった。
【0140】
表8
【0141】
【表8】

組織学
組織学的等級付け結果の要約を、表9に示す。12の合計点の中で、OP/CMCを用いて処置された欠損の平均組織学的等級は、7.00±0.87であった。CMCコントロール欠損の平均組織学的等級は、4.50±0.87であった。OP/緩衝液欠損および緩衝液コントロールの平均組織学的等級は、それぞれ、6.08±0.14および4.0±1.0であった。
【0142】
OP/CMC
処置は、4週間での、鉱化軟骨の領域を伴う初期骨軟骨架橋をもたらした。OP/CMCを用いて処置された欠損において、有意な新骨形成は、尺骨の骨膜領域および骨内膜領域において観察され、そして欠損縁を超えて伸長した。鉱化軟骨およびいくつかの線維組織の領域は、欠損内に存在した。欠損の架橋は、4週間まで完全ではなかった。宿主皮質は相変わらず目に見えたが、新骨の形成および再造形の徴候があった。
【0143】
CMCコントロール
完全な骨治癒は、4週で、いずれのCMCコントロール欠損でも観察されなかった。コントロール欠損は、骨架橋の徴候を伴わない線維性癒合をもたらした。欠損を充填し、そして取り囲む線維組織および鉱化軟骨が観察された。非常に少量の新骨は、尺骨骨膜に沿って、および宿主皮質近くの尺骨骨内膜領域で形成した。宿主皮質再吸収の徴候は、欠損末端で観察された。
【0144】
OP/緩衝液
処置された欠損は、鉱化軟骨および線維組織により充填された。欠損縁近くの尺骨の骨内膜および骨膜領域において形成された新骨、および新骨による架橋の初期徴候ははっきりわかったが、欠損のいずれもが完全にはつながれなかった。宿主骨皮質は、新骨との合体の徴候を示したが、4週までに完全に不明瞭にされなかった。宿主骨皮質のいくつかの再造形および新骨の縁に沿った初期の緻密化が観察された。新骨はまた、欠損部位の上に重なる皮下組織層において形成し、そして欠損縁を超えて伸長した。
【0145】
緩衝液コントロール
完全な骨治癒は、手術後4週で、いずれの緩衝液コントロール欠損でも観察されなかった。非処置欠損は、骨架橋の徴候を伴わない線維性癒合を示し;欠損を充填し、そして取り囲む線維組織が観察された。他の非処置欠損は、線維性癒合または他の癒合の徴候を示さなかった。新骨形成は緩衝液コントロール欠損においてほとんど観察されなかった。骨内膜の新骨は、尺骨骨髄空洞から伸長し、そして骨膜の新骨は、外側欠損縁に沿って形成した。宿主骨末端は、皮質再吸収の徴候と共に目に見えた。
【0146】
表9
【0147】
【表9】

実験3
組換えヒト骨形成タンパク質−1(rhOP−1)は、骨コラーゲンマトリクスと組み合せて移植された場合、生物学的および生体力学的の両方で機能的である新骨の形成により、動物における危険な大きさの骨幹の分節性欠損を治癒することが示された。本研究の目的は、イヌの危険でない大きさの欠損モデルにおいて骨治癒を速めるための、rhOP−1のマトリクスを含まない注射可能な処方物の効力を評価することであった。
【0148】
長さが3.0mmの、左右の骨骨膜の分節性欠損を、18匹の成体雄雑種犬の中間尺骨において作製した。橈骨を、付加固定なく力学的安定性のために維持した。軟組織を、rhOP−1注射前に閉じた。9匹の動物は一方の欠損においてrhOP−1処方物を、そして反対側の欠損においてビヒクルコントロールを受け、そしてこれらの動物を手術後4週間で屠殺した。9匹の非処置コントロール欠損を、rhOP−1処置と比較して4、8、および12週間の期間で評価した。治癒の進行を研究するために、X線写真を規則的な間隔で撮った。屠殺時に、治癒が十分な場合、全ての尺骨をねじれにおいて力学的に試験した。脱石灰化されていない組織学的切片を、新骨形成の質および量ならびに治癒の程度について評価した。
【0149】
X線撮影により、新骨形成は、rhOP−1処置欠損において手術後2週間と同じくらい初期にはっきりわかり、そして4週間で新骨が欠損を架橋した。対照的に、ビヒクルコントロール部位は、手術後4週間では、ほとんどまたは全く骨形成を示さなかった。さらに、rhOP−1を用いて処置された欠損のねじれ強さは、4週間で、4週間のビヒクルまたは非処置コントロールより有意に大きかった。さらに、4週間の処置欠損のねじれ強さは、実質的に、12週間の非処置コントロールの強さに等しかった。欠損治癒および骨形成の明らかな促進は、rhOP−1処置から生じた。組織学的発見は、X線写真結果および力学的試験結果と相関した。
【0150】
本研究の結果は、危険でない大きさの欠損に注射された骨形成タンパク質が、欠損治癒(骨折仮骨形成および架橋骨形成を含む)を速め得ることを確証する。rhOP−1を用いて処置された欠損は、非処置コントロールより有意に速く新骨を形成し、そしてより早く骨折の強さおよび剛性を回復させた。
【0151】
要約すると、本明細書中上記のマトリクスを含まないデバイスが欠損修復を実質的に増強する能力(新たに形成される骨の速度を速めること、およびその質を増強することを含む)は、易感染性(compromised)個体(例えば、糖尿病患者、喫煙家、肥満個体、老齢個体、骨粗鬆症に罹患した患者、ステロイド使用者、および後天的または先天的状態のために、骨折を治癒する能力が低減しているヒト(それらの両手両足への血流が損われている個体を含む))における骨治癒を改善することについて関係を有する。このような個体は、前駆細胞を促進する能力の低減から生じる難治性治癒を経験し、そして壊疽および/または敗血症を受けやすい。
【0152】
本明細書中に開示される方法および処方物は、骨形成を速めることにより増強した骨修復を提供する。具体的には、本明細書中に開示される方法およびプロトコルに従って、骨形成(骨仮骨形成および架橋を含む)の速度が速められ得る。本明細書中に例示されるように、架橋形成はより速く起こり、そして短い時間枠でより安定な骨形成を可能にし、それにより新たに形成する骨の生体力学的強さを増強する。
【0153】
仮骨形成が、最終的に骨形成となる多段階治癒プロセスにおける1つの段階であることは当該分野で周知である。具体的には、治癒プロセスは、5つの段階を含む:衝撃(impact)、炎症、軟仮骨形成、固い仮骨形成、および再造形。衝撃は骨折の開始で始まり、そしてエネルギーが完全に分散されるまで続く。炎症段階は、骨折部位での血腫形成、断片末端での骨壊死、および炎症浸潤物により特徴付けられる。肉芽組織は徐々に血腫を置換し、線維芽細胞はコラーゲンを生成し、そして破骨細胞は壊死骨を除去し始める。疼痛および腫張の鎮静は、第3の、すなわち軟仮骨の段階の開始を示す。この段階は、増大した血管分布および豊富な新たな軟骨形成により特徴付けられる。軟仮骨段階の終わりは、断片を接合する線維組織または軟骨組織に関係する。第4の、すなわち固い仮骨の段階の間、仮骨は網状骨に変わり、そして臨床的に治癒されたように見える。治癒プロセスの最後の段階は、網状骨から層板骨へのゆっくりとした再造形および骨髄管の再構成を含む(「Current Diagnosis&Treatment in Orthopedics」H.B.Skinner編(LANGE Medical Book Publ.) を参照のこと)。
【0154】
F.マトリクスを含まない骨形成デバイスを用いた軟骨欠損の修復(ヒツジ)
実験1
上記のものに類似した材料および方法を用いて(D.2の関係部分を参照のこと)、例示的な骨形成タンパク質OP−1が、マトリクスを含まないデバイス中で投与された場合、重みを支える(weight bearing)関節において活性な難骨形成および軟骨欠損修復を誘導し得ることをさらに証明するために、以下の研究を行った。
【0155】
既に上記のように、欠損は軟骨の構造的な破壊であり、そして3次元的欠損(例えば、構造的完全性における、間隙、空洞、穴、または他の実質的な破壊)である空隙の外形をとり得る。関節軟骨における欠損は、関節軟骨の全奥行を通して、および/または肋軟骨下骨に伸長し得るか(骨軟骨欠損)、あるいは欠損は表面にあり、そして軟骨組織自体に制限され得る(軟骨欠損または肋軟骨下欠損)。
【0156】
最初に、損傷を受けた軟骨マトリクスは、すぐ近くの細胞構成物により放出されるメタロプロテイナーゼによる分解を受ける。タンパク質分解は、損傷を受けたマトリクス成分を一掃し、それによりマトリクスにトラップされた同化作用サイトカインを放出する。一般的に理解されるように、マトリクスから放出されたサイトカインは、軟骨細胞の増殖、および重要なことに新たな巨大分子マトリクスの合成を刺激する。顕微鏡により決定されるように、増殖軟骨細胞のクラスターの存在は、軟骨修復応答の最初の指標の1つである。恐らく、この修復応答は、プロテアーゼの異化作用効果に逆らい、そして増強したマトリクス合成により組織を安定化する。
【0157】
関節軟骨および関節軟骨の修復は、標準的な組織学的および組織化学的手段により容易に研究される。この技術は当該分野で周知であり、そして多数の組織化学的染料(トルイジンブルー、ヘマトキシリンおよびエオシン、von Kossa、サフラニンO、およびMassonトリクローム(trichrome)染料を含むが、それらに制限されない)のうちのいずれか1つにより染色される軟骨切片の顕微鏡調査を含む。異なる染料の適用後、当業者は、増殖軟骨細胞の同定、ならびに軟骨細胞により合成されるマトリクス(例えば、コラーゲンおよびプロテオグリカン)の質および量の決定により軟骨の修復応答を評価し得る。
【0158】
本明細書中で使用する関節軟骨は、特に、関節における骨部分の関節をなす表面を覆う無血管の非鉱化組織である、硝子軟骨をいう。生理学的条件下で、関節軟骨は、軟骨下骨と呼ばれる、非常に血管のある鉱化骨の上に重なる。関節軟骨は、細胞外マトリクス(コラーゲン原線維(主に、II型コラーゲンならびにより少ない型(例えば、IX型およびXI型))、種々のプロテオグリカン(グリコサミノグリカンを含む)、他のタンパク質、ならびに水を含む)に埋められた軟骨細胞と呼ばれる特殊化した軟骨形成細胞により特徴付けられる。
【0159】
本研究において、膝の重みを支える顆表面上の1〜2mmの総深さ×7mmの総直径の軟骨欠損の修復を評価するためのモデルとして、ヒツジを使用した。この欠損は部分的な厚さの軟骨欠損であり、そして欠損創作後の出血の欠如からはっきりわかるように軟骨下骨を含まなかった。さらなる確認を、屠殺時の薄切片の組織学により得;欠損は、軟骨下骨に伸長しなかった。
【0160】
実験プロトコルを表10に提供する。標準化された外科技術を用いて、2mmの総深さ×7mmの総直径の欠損を、右および左の膝の、各顆の重みを支える表面上に外科的に作った。右膝は、コントロール膝として働いた。液体の、20mM酢酸ナトリウム(pH4.5)中のマトリクスを含まないOP−1デバイス(50または250μg OP−1)を、関節内関節への注射を介した単一ボーラスとして送達したか、または局所的に移植された皮下ミニポンプ(ALZET(R)2002,ALZA Scientific Pr
oducts,Palo Alto,CA)を介して断続的に送達した(2週間持続期間で1時間あたり0.5μL;計200μL)かのいずれかで行った。非常に多くの適切なミニポンプが容易に利用可能であり、そして医薬品および/または治療薬剤の送達のために当業者により日常的に使用され;当業者は、この状況下で送達の好ましい態様および速度を認識する。軟骨欠損の治癒を、標準的な組織学的および組織化学的方法により評価した。
【0161】
表10 ヒツジにおける軟骨欠損修復
【0162】
【表10】

3ヶ月ミニポンプ研究(群IIIおよびIV)の現在まで集められた結果は、マトリクスを含まないOP−1デバイスが、軟骨形成およびその後の軟骨欠損修復を誘導し得ることを明らかにする。軟骨欠損修復の証拠は、コントロール欠損において12週で、ほとんど観察されなかった。しかし、標準的な組織学的および組織化学的評価により、新たな軟骨形成ならびに古い軟骨および新しい軟骨の融合は、マトリクスを含まないOP−1処置動物において見出された。軟骨修復の基準として、当該分野で認識される組織学的および組織化学的なしるしを用いて、OP−1は、滑膜細胞の欠損領域への内部成長を刺激した。これらの細胞は、完全な厚さのプロテオグリカンに富む関節軟骨細胞に分化し、そして軟骨欠損修復はそれから生じた。
【0163】
成体動物における、軟骨下骨の関与しない、部分的な厚さの軟骨欠損の治癒は前例がなく、そして活性な軟骨形成が、マトリクスを含まない骨形成デバイスにより誘導される修復プロセスの特色であることを証明する。マトリクスを含まない骨形成デバイスは、インビボで軟骨欠損を修復するために使用され得ることがこれらの研究により結論された。このような修復は、大動物モデル(例えば、ヒツジ)における重みを支える関節で起こり得ることが、特に重要である。
【0164】
マトリクスを含まないOP−1デバイスを用いた軟骨欠損修復の他の研究(例えば、上記の群IおよびIIに概説されるような実験)は、現在、なお進行中である。上記のミニポンプ送達実験パラダイムを用いて得られた結果に類似した結果が期待され、すなわち、関節内関節に注射された、注射可能なマトリクスを含まないデバイスの単一ボーラスは、重みを支える関節において軟骨欠損を修復すると期待される。
【0165】
G.マトリクスを含まない骨形成デバイスを用いて危険でない大きさの分節性欠損を治癒する代替方法
1.実験1:危険でない大きさの欠損の修復に対する、マトリクスを含まない骨形成デバイスの遅延した投与の効果(イヌ)
本研究の目的は、損傷後、種々の遅延した投与時間でマトリクスを含まないOP−1デバイスを用いて処置された危険でない大きさの欠損の治癒を評価することである。以下で例示される特定のデバイスは、マトリクスを含まない骨形成デバイスの注射可能な処方物である。他のデバイスの実施態様は、同様の結果を生じると期待される。
【0166】
簡単には、実験観察は以下の通りである:一般に、マトリクスを含まないOP−1デバイスを用いて処置された危険でない大きさの分節性欠損は、損傷後4週で、注射可能なキャリアコントロールと比較して有意に大きな程度まで治癒した。欠損治癒のうち少なくとも1つのしるし(特に、増強した尺骨の力学的強さ)が、マトリクスを含まないOP−1デバイスが投与される損傷後時間を操作することにより増強され得ることを示す予期しない結果は、特に重要である。
【0167】
本実験の目的および本明細書中で使用する目的のために、損傷は、欠損の偶然発生(例えば、予期しない物理的災難は、危険でない大きさの欠損の発生をもたらす)、欠損の意図的発生(例えば、外科的操作は、危険でない大きさの欠損の発生をもたらす)、または以下の疾患もしくは障害:ほんの少し例を挙げれば、低酸素症;虚血;一次性新形成および転移性新形成;感染性疾患;炎症疾患;いわゆる膠原病(コラーゲン合成、分解、もしくは正常マトリクスにおける欠損を含む);先天的疾患、遺伝病、もしくは発生的疾患;栄養的疾患;代謝的疾患;特発性疾患;および異常な無機質ホメオスタシスに関連する疾患の1つ以上により引き起こされる、非外傷的に誘導される欠損、を意味する。
【0168】
本明細書中に例示される若干の方法は、治癒プロセスの開始後にマトリクスを含まないデバイスを欠損部位に投与する工程を意図し;治癒プロセス段階およびそれらに関連する生理学的事象は前述した。本発明の別の方法は、欠損部位での内因性マトリクス成熟間に、マトリクスを含まないデバイスを欠損部位に投与する工程を含み;軟骨内性骨形成間の内因性マトリクス形成に関連する事象もまた前述した。現在好ましい実施態様において、本発明は、遅延した損傷後時間で、マトリクスを含まないデバイスを投与する工程を含む、骨欠損、軟骨欠損、または骨軟骨欠損を修復する方法を提供する。このような遅延は、以下に記載のように短期間、中期間、または長期間であり得る。投与を遅延する程度は状況に依存し、そして当業者はその重要性を容易に認識する。
【0169】
以下で証明されるように、改善した治癒および欠損修復は、損傷後経過した時間での、マトリクスを含まないデバイスの欠損部位への投与から生じる。例えば、遅延した投与時間は、損傷後、少なくとも0.5時間から少なくとも6.0時間までの時間を含み得;あるいは、遅延した投与時間は、損傷後、少なくとも6時間から24時間までの時間、または少なくとも24時間から48時間までの時間を含み得る。現在好ましい1つの実施態様において、遅延は、少なくとも6時間である。他の損傷後投与時間もまた本発明により意図される。特定の他の現在好ましい実施態様において、遅延した投与時間は、損傷後、少なくとも48時間から少なくとも72時間の範囲であり得る。なお他の実施態様において、投与時間は、72時間を有意に過ぎた範囲であり得、例えば、マトリクスを含まない骨形成デバイスは、骨治癒の再造形段階と同じくらい遅れて欠損部位に投与され得る。マトリクスを含まない骨形成デバイスが、損傷後、複数の時点で、危険でない大きさの欠損部位に投与される方法もまた意図される。例えば、現在好ましい複数時点投与は、損傷後、0.5〜6時間および7日である。複数の遅延した投与は、欠損位置への手を使った送達により、または前述したようなミニポンプを用いた自動化送達により達成され得る。
【0170】
実験設計
計12匹の成体雑種犬を利用した。始めに記載したように、長さが3.0mmの、左右の尺骨の分節性欠損を全ての動物において創作した。この特定の研究において例示されるように、使用されたOP−1のマトリクスを含まない処方物は、始めに記載したように3.5mg OP−1/mlであり、100μLラクトース/酢酸緩衝液中で送達された。12匹の動物に、種々の損傷後の時点で右欠損においてマトリクスを含まないデバイスを投与し、そしてコントロールデバイスを、種々の損傷後時間点で左欠損に投与した。3匹の動物を欠損創作時(0時間)に処置し、3匹を損傷後6時間で処置し、そして3匹を損傷後48時間で処置した。全ての動物を、手術後4週で屠殺した。毎週、治癒の進行を研究するために、X線写真を撮った。屠殺時に、骨セグメントを、組織応答、新骨形成の質および量、ならびに治癒の程度について組織学により評価した。全ての尺骨をひとまとめにして回収し、そしてねじれについては力学的に試験した。
【0171】
始めに記載したように、切片化の直後に、尺骨を、50mm/分の一定変位速度の前後往復運動制御において操作されたMTS閉ループ液圧試験機械において、ねじれの破損まで試験した。一方の端を厳密に固定し、そして他方を右回りに回転させた。ねじれ力を、自動制御液圧材料試験システムにより6cmのレバーアームを用いて適用した。同時記録を、機械前後往復運動コントローラーにより測定されるように移植片変位とみなし、一方、荷重を荷重セルから記録した。データを、アナログからデジタルへの変換配線盤、およびパーソナルコンピューター、およびオンラインコンピューター獲得ソフトウェアを介して記録した。力−角変位曲線を作製し、これから破損までのトルクおよび角変形を得、そして破損までのエネルギー吸収を、荷重−変位曲線下の面積としてコンピューターで計算した。
【0172】
結果
全ての標本を、手術後4週で力学的に試験した。力学的に、損傷後6時間でマトリクスを含まないOP−1デバイスを受けた欠損は、最も高いねじれ強さを有し;インタクトな尺骨の73%は、48時間での64%および0時間での60%に匹敵した。損傷後0時間、6時間、および48時間でのコントロール欠損は、それぞれ、23%、28%、および24%の強さを有した。
【0173】
本研究は、本発明の特定の実施態様において、危険でない大きさの欠損の改善した治癒が、損傷後のマトリクスを含まない骨形成デバイスの欠損位置への遅延した投与により達成され得るという驚くべき結果を証明する。この予期しない結果は、欠損部位での骨治癒または内因性マトリクス形成の段階(ほんの少し例を挙げれば、血餅形成、前駆細胞浸潤、および仮骨形成(特に、軟仮骨)のような事象を含むが、それらに制限されない)に関係する。さらに、骨を含む他の欠損修復プロセス(例えば、本明細書中に記載の修復に類似した骨軟骨欠損の修復)は、損傷後の、マトリクスを含まない骨形成デバイスの欠損部位への遅延した投与により改善され得る。
【0174】
H.マトリクスを含まない骨形成デバイスを用いた軟骨欠損修復のさらなる研究(ヒツジ)
1.実験1:骨形成タンパク質のキャリアとしてのグリコサミノグリカンおよび他のポリマー
前述したように、化合物の特定の好ましいカテゴリーが、本明細書中で意図されるマトリクスを含まないデバイス中のキャリアとして適切である。現在好ましいカテゴリーのうち、潤滑剤(特に、天然に生じ、そして生理学的機能(例えば、ほんの少し例を挙げれば、細胞の保護および潤滑ならびに組織完全性の維持)を天然に行う潤滑剤)として当該分野で認識される化合物である。このような化合物はまた、一般的に、湿潤剤および水分保持剤である。現在好ましい潤滑剤の1つのサブカテゴリーは、グリコサミノグリカンとして知られる生体ポリマーを含む。本発明により意図されるグリコサミノグリカンは、ほんの少し例を挙げれば、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン、ケラタンを含むが、それらに制限されない。スルホン化ならびに非スルホン化形態は、本発明において使用され得る。他のグリコサミノグリカンはマトリクスを含まないデバイスを処方するために適し、そして当業者は、せいぜい日常的な実験を用いて他の適切な化合物を確かめることを知っているか、または確かめ得るかのいずれかである。グリコサミノグリカンのより詳細な説明については、Aspinall,Polysaccharides,Pergamon Press,Oxford(1970)を参照のこと。
【0175】
特に好ましいグリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸(HA)である。HAは、天然に生じる陰イオン多糖すなわち複合糖である。これは、軟骨および滑液において見出される。HAは、化粧等級および医療等級の両方において入手可能であり;医療等級は、一般的に、本発明を用いた使用に好ましい。HAは、低分子量から高分子量の範囲であり得る。本発明の特定の実施態様において、高分子量材料が好ましく;例のみとして、生理食塩水と混合された、HA 190(1.9a10Da;1%が現在好ましいが、0.5〜2.0%の範囲の濃度が適する)は、軟骨欠損を修復するために、関節内に毎週2回、投与され得る(0.1ml/kg)。他の実施態様において、低分子量HA(例えば、HA80、0.8×10Da;1%が好ましいが、4%未満またはそれに等しい濃度が適する)は使用され得る。本明細書中に提供される教示を用いて、当業者は、高分子量HAが、欠損修復のために低分子量材料より好ましい(および逆もまた同じ)状況を評価し得る。さらに、当業者は、溶液中のHAが粘性液体であり、そして粘度が分子量およびHA含有量を調節することにより操作され得ることをさらに認識する。例えば、いくつかの実施態様において、関節における滑液の粘度に近づけることが好ましい。本明細書中で提供される教示と共に、普通の技術および日常的な実験を用いて、当業者は、軟骨欠損修復のためのキャリアとしてHAを用いたマトリクスを含まない骨形成デバイスを処方し得;デバイス粘度ならびにタンパク質含有量は、状況により必要とされるようにおよび本明細書中に教示されるように、容易に調節され得る。HAは、いくつかの供給源(Sigma Chemical Company(St.Louis,MO)、Genzyme Pharmaceuticals(Cambridge,MA)、およびCollaborative Laboratories(East Setauket,NY)を含む)から市販されている。
【0176】
本発明のマトリクスを含まない骨形成デバイスを用いる使用に適した、グリコサミノグリカンおよび他のポリマー性キャリア(例えば、ヒアルロン酸)は、上記のヒツジ軟骨欠損モデルにおいて評価され得る。例えば、2つの2×7mmの欠損を、ヒツジ両膝関節の内側顆および外側顆の重みを支える表面において、標準的な外科手順により作る。一方の膝関節を、OP−1/ヒアルロン酸のマトリクスを含まないデバイスの関節内投与により処置し、そして他方の関節をヒアルロン酸単独を用いて処置する。
【0177】
2群のヒツジを研究する:群Iを8週で屠殺し、そして群IIを6ヶ月で屠殺する。始めに記載したように、軟骨欠損の治癒は、放射線学ならびに標準的な組織学的および組織化学的方法により評価され得る。各膝のX線写真を、月一回の間隔で撮った。関節鏡調査を、屠殺直前の麻酔下で標準的な技術および装置を用いて行った。屠殺直後に、膝関節の標本を、10%中性緩衝化ホルマリン中で固定した。標本を縦に2等分し、そして1つの切片を、70〜100%の段階的なエチルアルコール溶液中で脱石灰化し、そしてメチルメタクリレートに包埋し、切片化し、そして組織学的等級付けのために染色する。
【0178】
ヒアルロン酸を含むマトリクスを含まないデバイスは、軟骨欠損修復の速度を増強し得、そして達成される修復の程度を改善し得ることが期待される。修復は、標準的な軟骨特徴付け方法(染色および固定された組織切片の組織学的等級付け、軟骨特異的巨大分子(例えば、II型コラーゲンおよびアグリカン)の局在、プロテオグリカンプロフィールの決定、および力学的試験を含む)により動物モデルにおいて評価され得る。前述の全ては、日常的な実験および当該分野での知識を用いて当業者により達成され得る。
【0179】
等価物
本発明は、その精神または本質的な特徴を逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。従って、前述の実施態様は、全ての点で、本明細書中に記載される本発明に対して制限するよりむしろ例示的であるとみなされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の説明よりむしろ添付の請求の範囲により示され、従って、請求の範囲の同等の意味および範囲内にある全ての変化は、請求の範囲に含まれると意図される。
【0180】
(配列表)
【化2】

【0181】
【化3】

【0182】
【化4】

【0183】
【化5】

【0184】
【化6】

【0185】
【化7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2012−102145(P2012−102145A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25783(P2012−25783)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【分割の表示】特願2009−11457(P2009−11457)の分割
【原出願日】平成10年2月5日(1998.2.5)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】