説明

マトリックスメタロプロテイナーゼの細胞の脱分極および制御

メカニズムは、マトリックスメタロプロテイナーゼが、病状の病理学的な寄与因子と関係する病状に関連する細胞の脱分極化、次いで、該マトリックスメタロプロテイナーゼのコントロールを助ける特定の蛋白質の制御であると開示する。このきっかけによって、最終的には、マトリックスメタロプロテイナーゼの下方制御または上方制御を生じることができる。実施例は、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)が、下方制御されることを与える。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年8月25日に出願した仮特許出願番号S.N.60/497600、発明の名称:マトリックスメタロプロテイナーゼの細胞の脱分極および制御に基づき、全体を本明細書に引用し、優先権を主張するものである。
(連邦政府の委託研究開発に関する陳述書)
適用無し。
【0002】
(技術分野)
本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼが、病状の病理学的な寄与因子として関係する病状に関連する細胞の処置に有用な方法および組成物に関する。
【0003】
(技術背景)
生物の細胞膜のそれぞれの側でのイオン濃度の不均衡は、細胞機能に重要である電気化学勾配と定義する。ここで細胞機能とは、特定の細胞型の生存を維持することとしてのみ定義され、「正常な」機能は意味しない。すべての細胞で維持される該電気化学勾配は、細胞の恒常性に重要である。
【0004】
(発明の概要)
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)が病状の病理学的な寄与因子として関係する組織または循環細胞型内の細胞、または病状に関連する細胞の脱分極は、次いで特定の蛋白質の制御をもたらすとのメカニズムが報告されており、その制御は、該病状に影響する種々の生化学過程を助けることが開示されている。それをきっかけとして、最終的に、マトリックスメタロプロテイナーゼ2および/または9(MMP−2およびMMP−9)および/または他のMMPの制御をもたらす。現在の研究に基づいて、膜脱分極化剤または医薬的に活性な製剤中のカルシウム、ナトリウム、カリウムまたは他のイオン物質のようなイオン組成物が、MMPの有害な産生の結果生じる抑止によって、これらの細胞において、細胞膜脱分極化剤として作用することが明らかであり、本発明者らによって提案される。さらに、細胞膜脱分極化剤のいずれかの使用が、これらの細胞および細胞型およびMMPの制御に同様の有利な効果をもたらすことが提案される。
【0005】
(発明の詳細な説明)
膜電位、浸透力、およびダーマックス(DerMax)(登録商標)カチオン
ダーマックス(登録商標)の作用機構についての基本原理は、最初それらの塩化物の形で、K+、Rb+、Ca+2、およびZn+2を含む処置によって、すべての細胞で維持される電気化学勾配に存在することである。この勾配は、細胞の恒常性にとって重要であって、細胞膜の内側および外側でのK+、Na+、Ca+2、およびCl-イオンの異なった濃度を分配することによって達成される(図1)。
【0006】
該細胞膜の両側でのイオン濃度の不均衡は、細胞機能にとって重要である電気化学勾配と定義する。ここで細胞機能とは、特定の細胞型の生存を維持することとして定義され、「正常な」機能を意味しない。さらに、この観点から、物理化学的な処理、すなわち、ネルンストの式、ゴールドマンの式、オームの法則に基づいて進める。その代わりに明確にするため、該細胞でのダーマックスの効果は、系の平衡に基づいている。
【0007】
標準的な状態で、流入および流出をコントロールする該細胞膜は、K+、Na+、およびCl-および他の選択的な元素イオンを透過することができる。これらのイオンのうち、K+は、Na+、およびCl-よりも細胞膜への透過性がはるかに高い。最終的な効果は、細胞の外部および内部でのK+濃度が、ほとんど細胞の平衡電気化学ポテンシャルを示すことである。明らかに不連続性が存在し、もし膜がK+を漏らすなら、K+勾配は、まったく構築されず、該細胞のポテンシャルは、K+の勾配によって近似されることができない。該矛盾に対する答えは、細胞外および細胞内マトリックスとの間、すなわち、カリウムイオン(K+)チャネルをイオンが往復することができる蛋白質の進化である(図2参照)。
【0008】
この場合において、内向きの流れ、「内向き整流」は、チャネルがK+を細胞に流入させる。このモデルにおいて、細胞からのK+の漏出は、内向き整流K+チャネル(Kir)を経由する再平衡を生じる。この例、すなわち分子濃度に基づく、K+の適度な漏出では、細胞の勾配において、ダーマックス(登録商標)の有望な効果とは比較できない。MMPが病状の病理学に寄与する関係のある病状に関連する細胞によって経験される潜在的に高いK+濃度は、K+勾配を打ち消す、すなわち、細胞外のK+を+100mMまで増加することによって、細胞の初期の脱分極化を生じるK+勾配を無効にする(図3参照)。
【0009】
ダーマックス(登録商標)中のそれらの濃度が、該勾配に対して無視できるので、図3は、Rb+、Ca+2、およびZn+2の細胞外濃度を故意に無視する;さらに、Rb+およびZn+2の場合において、これらのイオンは、膜電位の維持と関連しない。標準の分子内K+の状態で、細胞外K+の適用は、細胞の脱分極化が生ずる電気化学勾配を効果的に止める。具体的には、該細胞は、K+チャネル活性化を経由して、イオン勾配の変化を相殺することができない。その結果、細胞の脱分極化によって、関連細胞の表現型の変動を生じる。表現型でのこの変化は、本質的でない酵素、とりわけ、MMP−2および/またはMMP−9ならびに他の酵素の下方制御、他の酵素または膜チャネルのような蛋白質の上方制御としてそれ自身発現する。
【0010】
細胞の脱分極化を利用する概念は、K+または他のいずれかのイオンの高濃度での適用を制限しない。実際に、有機分子の多様なファミリーは、細胞膜を脱分極化することができ、抗不整脈剤から発毛剤までの範囲で病状を治療するために臨床的に使用される。本発明において、細胞を脱分極化するいずれかの薬剤は、MMPを制御する治療終点で適用させる。
【0011】
疾病治療のためのカリウムチャネルおよび新規治療
MMP制御のためのイオン治療の発見は、新規な化学療法剤の選択肢の起源において、画期的な出来事を意味する。この概念は、細胞の電気化学勾配を制御する化学系の使用を拡張することが可能であると現在考えられる。ダーマックス(登録商標)の組成物に基づいて、前記のK+チャネル活性の変化が、治療開発のために、この新規な領域を提供することを提案する。
【0012】
蛋白質のK+ファミリーは、概して53個の電位依存性チャネル、10個のカルシウム活性化チャネル、17個の内向き整流チャネル、および14個のバックグラウンドチャネルを含む、4つのサブクラスに分類され得る。脱分極化の影響を受けやすい他のチャネルは、同様の効果を生じる。
【0013】
蛋白質発現の制御
膜電位の変化は、蛋白質発現において、多くの変化を生じる。蛋白質産生において、この変化は、異なった病状と直接関連する他の非必須で異常な蛋白質および酵素に同様の影響を与えると予想する。
【0014】
図4は、多様な膜分極化剤で処理するとき、このMMPが異常に発現する細胞において、時間経過と共にMMP−2の濃度変化を示す。図4において、「4アミノ」は、ピリジンであり、「グレイストーン」は、K+(すなわち、ダーマックス(登録商標))の有効量を含む本発明組成物であり、「テトラ」は、テトラブチルアンモニウムクロリド、および「コントロール」は、培養媒体のみである。図4から、各脱分極化剤は、MMP−2の初期低下に影響するが、約24時間後、MMP−2の濃度は、コントロールに対して劇的に増加し、「グレイストーン」を除くすべての脱分極化剤がそうなったことに気づくだろう。本発明の脱分極化剤に関して、細胞内のMMP−2レベルは、細胞内で、他の脱分極化剤よりも低いレベルまでMMP−2の濃度が最初に低下し、重要なことに、この低下する効果は、48時間の試験期間中絶え間なく続いた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、細胞膜を通過する電気化学勾配の説明である。
【図2】図2は、細胞膜を通過するカリウムカチオンの電気化学的輸送、カリウムカチオン移動の結果としてK+チャネルの開口、続いて、該K+チャネルの閉口、細胞に関連するカリウムカチオンの細胞外および細胞内濃度の機能するすべておよびその膜についての図示説明である。
【図3】図3は、細胞のカリウム、ルビジウム、カルシウムおよび亜鉛カチオンの細胞外および細胞内カチオン濃度および細胞環境への本発明の脱分極化剤の添加についての図示説明である。
【図4】図4は、種々の脱分極化剤の存在下において、マトリックスメタロプロテイナーゼの濃度変化を経時的にグラフで説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスメタロプロテイナーゼが、病状の病理学的な寄与因子として関係する病状に関連する細胞の処置方法であって、該方法は、生物での細胞膜およびカルシウム、ナトリウム、カリウムまたは他のカチオン性またはアニオン性イオンチャネルの透過性に変化または影響を与える化学系を含み、該細胞の細胞膜のための脱分極化剤の医薬的に有効な量を細胞に導入する工程、それにより少なくとも一つのマトリックスメタロプロテイナーゼの細胞内部での形成、または外部への輸送を調節する環境を該細胞内に構築し、同時に、好ましいイオンが細胞膜を通過移動するのを助け、その結果、該細胞膜の恒常性をもたらす環境を該細胞内に構築する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
該マトリックスメタロプロテイナーゼの調節が、MMP−2またはMMP−9のものである、請求項1の方法。
【請求項3】
該調節が、少なくとも一つのマトリックスメタロプロテイナーゼの細胞内部での形成または外部への輸送を抑止し、同時に、好ましいイオンの細胞膜の通過移動を助け、その結果、該細胞膜の恒常性をもたらす環境を該細胞内に構築する、請求項1の方法。
【請求項4】
該調節が、少なくとも一つのマトリックスメタロプロテイナーゼの細胞内部での形成または外部への輸送を促進し、同時に、好ましいイオンの細胞膜の通過移動を助け、その結果、該細胞膜の恒常性をもたらす環境を該細胞内に構築する、請求項1の方法。
【請求項5】
細胞膜を通過する電気化学勾配およびその結果生じる該細胞膜の脱分極を効果的に止めるために、溶液にイオン種を付加することによって、細胞環境の浸透圧を変化させ、そして、少なくとも一つのマトリックスメタロプロテイナーゼの細胞内部での形成または外部への輸送を調節することを助ける環境を構築することを特徴とする、生体細胞内でのMMP制御のためのイオン治療の方法。
【請求項6】
該細胞外カチオンが、細胞膜を通過する電気化学勾配およびその結果生じた該細胞膜の脱分極ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼの細胞内部での形成または外部への輸送に有害な環境の構築を効果的に止めるために、カリウム、ルビジウム、カルシウムおよび亜鉛カチオンの少なくとも一つを含む細胞外カチオンを含む、請求項3の方法。
【請求項7】
該細胞外カチオンがカリウムである、請求項3の方法。
【請求項8】
カリウムカチオンが、重量の約0.1〜約5%の間の濃度で、該溶液中に存在する、請求項3の方法。
【請求項9】
細胞の細胞膜の脱分極化剤が公知の膜脱分極化剤である、請求項1の方法。
【請求項10】
該細胞膜の脱分極化剤が、4−アミノピリジン、テトラブチルアンモニウムクロリド、ミノキシジル、アポミン、クロマカリムおよびその組合せである、請求項9の方法。
【請求項11】
該細胞膜を通過する選択されたイオン物質の移動を調節するために、有効な化学物質を含む溶液を該細胞環境に導入する工程からなる生物細胞の電気化学勾配の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503449(P2007−503449A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524816(P2006−524816)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/027592
【国際公開番号】WO2005/020909
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(504206816)グレイストーン メディカル グループ、インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】