説明

マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害剤

式(I)(式中、R1は、場合により置換されていてもよいC4-12アルキル、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表し;Zは、結合、CH2、O、S、SO、SO2、NR4、OCR4R5、CR4R5Oを表すか、あるいは、Z、R1およびQは、一緒になって、場合により置換されていてもよい縮合三環式基を形成しており;Qは、場合により置換されていてもよい5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環を表し;Xは、COR3またはN(OR8)COR9を表し;R2は、SO2R10またはSO2NR10R11を表し;R3は、OR6、NR6R7またはNR6OHを表し;R4およびR5は、互いに独立して、H、C1-6アルキル、またはC1-4アルキルアリールを表し;R6およびR7は、互いに独立して、H、C1-6アルキル、または1個もしくは複数のヘテロアリール基で置換されているC1-6アルキルを表すか、あるいは、R6およびR7は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、O、SおよびNから選択される1個または複数のヘテロ原子を場合によりさらに含んでいてもよい5員環または6員環を形成しており;R8およびR9は、互いに独立して、HまたはC1-6アルキルを表し;R10およびR11は、互いに独立して、HまたはC1-6アルキルを表す)で表される化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体(但し、N-(エトキシカルボニル)-N-[4-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]グリシンを除く)、それらの調製方法、それらを含有する製剤、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ酵素(MMP)の阻害剤としてのそれらの使用について記載する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化学化合物、それらの調製方法、それらを含有する医薬製剤、および治療におけるそれらの使用に関する。
【0002】
本発明の化合物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ酵素(MMP)の阻害剤である。
【背景技術】
【0003】
マトリックスメタロプロテイナーゼ酵素は、細胞外マトリックス成分の分解と再構築において重要な役割を果たしている。MMPの例としては、コラゲナーゼ1、2および3、ゼラチナーゼAおよびB、ストロメリシン1、2および3、マトリリシン、マクロファージメタロエラスターゼ、エナメリシン、ならびに膜型1MMP、2MMP、3MMPおよび4MMPが挙げられる。これらの酵素は、結合組織細胞と炎症細胞によって分泌される。酵素活性化は、組織損傷を引き起こすだけでなく、炎症性細胞の組織への浸潤増大を誘発し、その結果、酵素がさらに生産され、その後組織損傷をもたらす。例えば、MMP分解によって産生されるエラスチン断片は、MMP活性の部位にマクロファージを誘引することにより炎症を刺激すると考えられている。このため、MMPを阻害することにより、不適切なメタロプロテアーゼ活性が結合組織分解と炎症を引き起こしている疾患状態を治療するための手段が得られる。
【発明の開示】
【0004】
一態様では、本発明は、式(I):
【化1】

【0005】
(式中、
R1は、場合により置換されていてもよいC4-12アルキル、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表し;
Zは、結合、CH2、O、S、SO、SO2、NR4、OCR4R5、CR4R5Oを表すか、あるいは、Z、R1およびQは、一緒になって、場合により置換されていてもよい縮合三環式基を形成しており;
Qは、場合により置換されていてもよい5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環を表し;
Xは、COR3またはN(OR8)COR9を表し;
R2は、SO2R10またはSO2NR10R11を表し;
R3は、OR6、NR6R7またはNR6OHを表し;
R4およびR5は、互いに独立して、H、C1-6アルキル、またはC1-4アルキルアリールを表し;
R6およびR7は、互いに独立して、H、C1-6アルキル、または1個もしくは複数のヘテロアリール基で置換されているC1-6アルキルを表すか、あるいは、R6およびR7は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、O、SおよびNから選択される1個または複数のヘテロ原子を場合によりさらに含んでいてもよい5員環または6員環を形成しており;
R8およびR9は、互いに独立して、HまたはC1-6アルキルを表し;
R10およびR11は、互いに独立して、HまたはC1-6アルキルを表す)
で表される化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体(但し、N-(エトキシカルボニル)-N-[4-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]グリシンを除く)を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
「アリール」という記載には、単環炭素環式芳香族環(例えば、フェニル)および二環炭素環式芳香族環(例えば、ナフチル)が含まれ、また「ヘテロアリール」という記載には、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する単環および二環ヘテロ環式芳香族環が含まれる。単環ヘテロ環式芳香族環の例としては、例えば、ピリジニル、ピリミジニル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、またはイミダゾリルが挙げられ、また二環ヘテロ環式芳香族環の例としては、例えば、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、またはインドリルが挙げられる。炭素環式芳香族環およびヘテロ環式芳香族環は、例えば、1個または複数個のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、ハロゲン、(CH2)0-4OR6、(CH2)0-4SR6、SO2R6、COR6、アリールオキシ、チオアリール、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、NR6R7、-NR6COR7、-OCF3、-CF3、COOR7、-OCHCF2、-SCF3、-CONR6R7、-SO2NR6R7等の基によって場合により置換されていてもよい。
【0007】
「アルキル」の記載には、対応するアルキルの直鎖および分枝鎖の両方の脂肪族異性体が含まれる。「アルキレン」および「アルコキシ」の記載についても同様に判断すべきであることは理解されよう。
【0008】
好適には、R1は、場合により置換されていてもよいアリール、例えば置換フェニルまたは非置換フェニルを表す。
【0009】
好適には、Qは、場合により置換されていてもよいアリール、例えば非置換フェニルを表す。
【0010】
好適には、R2は、SO2R10、例えばSO2C1-4アルキル、例えばSO2CH3を表す。
【0011】
好適には、R3は、OHまたはNR6R7を表す。特に、Xは好適にはCO2Hを表す。
【0012】
好適には、Zは結合を表す。
【0013】
R6またはR7が、1個または複数個のヘテロアリール基で置換されているC1-6アルキルを表す場合、好適には、C1-6アルキル基はメチルまたはエチルであり;好適には、アルキル基は1個のヘテロアリール基で置換されている。好適には、R6またはR7の一方はHを表す。
【0014】
式(1)の化合物のサブグループの1つは、式(Ia):
【化2】

【0015】
(式中、
R10は、HまたはC1-6アルキル、好ましくはC1-4アルキル、最も好ましくはメチルを表し;
R12は、H、ハロゲン、CF3、シアノ、OCF3、ニトロ、OR13、SR13、COR、またはC1-6アルキル、例えばメチルを表し;
R13は、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表す)
およびその生理学上機能的な誘導体によって表される。
【0016】
好ましくは、R12はメタ位またはパラ位にある。最も好ましくは、R12はパラ位にある。
【0017】
式(I)の化合物のさらなるサブグループまたは代替サブグループは、式(Ia):
(式中、
R10は、HまたはC1-6アルキル、例えばC1-4アルキル、例えばメチルを表し;
R12は、H、ハロゲン、CF3、シアノ、OCF3、ニトロ、OR13、SR13、またはCOR13を表し;
R13は、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表す)
およびその生理学上機能的な誘導体によって表される。
【0018】
好ましくは、R12はメタ位またはパラ位にある。最も好ましくは、R12はパラ位にある。
【0019】
「生理学上機能的な誘導体」という用語には、例えば、生体内で式(I)に変換可能であることによって、式(I)の遊離化合物と同様の生理機能を有する式(I)の化合物の化学的誘導体という意味があり、服用者へ投与した場合に、式(I)の化合物またはその活性代謝物または残基を直接的または間接的に提供し得る、式(I)の化合物の任意の製薬上許容可能なエステル、アミドおよびカルバメート、塩ならびに溶媒和物が含まれる。
【0020】
本発明はまた式(I)の化合物の塩も提供する。式(I)の化合物の好適な塩としては、生理学上許容可能な塩、ならびに生理学上許容可能でないかもしれないが、式(I)の化合物およびその生理学上許容可能な塩の調製に有用であり得る塩が挙げられる。適切ならば、酸付加塩は無機酸または有機酸から誘導することができ、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。
【0021】
溶媒和物の例としては、水和物が含まれる。
【0022】
式(I)の化合物がキラル中心を含有する場合、本発明は、エナンチオマー(ラセミ混合物を含む)およびジアステレオ異性体の混合物、ならびに個々のエナンチオマーまで包含する。一般に、式(I)の化合物は精製された単一のエナンチオマーの形態で使用するのが好ましい。
【0023】
式(I)の化合物ならびにその塩および溶媒和物は、下に記載の方法によって調製することができるが、これは、本発明のさらなる態様を構成する。
【0024】
式(I)(式中、Zは結合を表し、R1は、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表す)の化合物を調製するための本発明による第1の方法(A)は、式(II):
【化3】

【0025】
(式中、R2、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりであり、Lは脱離基を表す)の化合物と、基R1を導入するのに好適な試薬(化合物R1B(OH)2等)とを、好適には、触媒(貴金属触媒等、例えばパラジウム)および好適な塩基(アルカリ金属カーボネート等、例えばセシウムカーボネート)の存在下で反応させることを含む。好ましくは、その反応は、極性有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)などの適当な溶媒中で行なう。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0026】
例えば、本発明による(場合により置換されていてもよい)[(1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチル-スルホニル)アミノ]酢酸の合成についは、好適な触媒の存在下、フェニルボロン酸を、[(4-ブロモフェニル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸と反応させることができる。
【化4】

【0027】
式(I)(式中、Zは結合を表し、R1は場合により置換されていてもよいC4-12アルキルを表す)の化合物を調製するための本発明による第2の方法(B)は、好適には、触媒、例えばAlCl3等のルイス酸触媒の存在下で、式(III):
【化5】

【0028】
(式中、R2、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりである)
の化合物を、基R1を導入するのに好適な試薬、例えば化合物R1-L(式中、Lは好適な脱離基、例えばハロゲン化物である)と反応させることを含む。すなわち、フリーデル・クラフツ反応が適当であり得る。
【0029】
式(I)(式中、Zは、O、S、SO、SO2、NR4、またはOCR4R5を表わし、R1は、場合により置換されていてもよいC4-12アルキルを表す)の化合物を調製するための本発明による第3の方法(C)は、式(IV):
【化6】

【0030】
(式中、X、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、Yは、OH、SH、NR4HまたはHOCR4R5を表す)
の化合物を、基R1を導入するのに好適な試薬、例えば化合物R1-L(式中、Lは好適な脱離基である)と反応させることを含む。この反応は、好ましくは、塩基性条件下、例えば、水酸化ナトリウム等の水酸化物溶液の存在下で、適当な溶媒、例えばアルコール溶媒(エタノール等)中で実施する。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0031】
ZがSOまたはSO2を表す化合物については、式(I)の化合物は、最初にZがSを表す化合物を調製し、次に、その硫化物をスルホキシドまたはスルホンに酸化することにより調製するのが好ましい。この酸化ステップは、当技術分野で既知の方法、例えば、スルホンの場合には過酸化水素による酸化、あるいはスルホキシドの場合にはOxone(登録商標)(ペルオキシ一硫酸カリウム)による酸化を用いて実施することができる。
【0032】
式(I)(式中、Zは、O、S、SO、SO2またはNR4を表し、R1は、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表す)の化合物を調製するための本発明による第4の方法(D)は、式(IV):
【化7】

【0033】
(式中、X、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、Yは、OH、SHまたはNR4Hを表す)
の化合物を、基R1を導入するのに好適な試薬、例えば化合物R1-L(式中、Lは好適な脱離基である)と反応させることを含む。この反応は、好適な触媒、例えばパラジウム触媒(YがNR4Hの場合に好ましい)または銅触媒(YがOHであるかSHである場合に好ましい)の存在下、適当な溶媒、例えばヘテロ原子(例えばピリジン)を含有している溶媒中で行なうのが好都合である。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0034】
ZがSOまたはSO2を表す化合物については、式(I)の化合物は、最初にZがSを表す化合物を調製し、次に、その硫化物をスルホキシドまたはスルホンに酸化することにより調製するのが好ましい。この酸化ステップは、当技術分野で既知の方法、例えば、スルホンの場合には過酸化水素による酸化、あるいはスルホキシドの場合にはOxone(登録商標)(ペルオキシ一硫酸カリウム)による酸化を用いて実施することができる。
【0035】
式(I)(式中、ZはOCR4R5を表し、R1は、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表す)の化合物を調製するための本発明による第5の方法(E)は、式(V):
【化8】

【0036】
(式中、X、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、L4は好適な脱離基である)
の化合物を、基R1-Oを導入するのに好適な試薬(化合物R1-OH等)と反応させることを含む。この反応は、好ましくは、塩基性条件下、例えば、水酸化ナトリウム等の水酸化物溶液の存在下で、適当な溶媒、例えばアルコール溶媒(エタノール等)中で実施する。L4によって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0037】
式(I)(式中、ZはCR4R5Oを表す)の化合物を調製するための本発明による第6の方法(F)は、式(IV):
【化9】

【0038】
(式中、X、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、YはOHを表す)
の化合物を、基R1CR4R5を導入するのに好適な試薬、例えば化合物R1CR4R5-L(式中、Lは好適な脱離基である)と反応させることを含む。この反応は、好ましくは、塩基性条件下、例えば、水酸化ナトリウム等の水酸化物溶液の存在下で、適当な溶媒、例えばアルコール溶媒(エタノール等)中で実施する。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0039】
式(I)(式中、ZはCH2を表す)の化合物を調製するための本発明による第7の方法(G)は、好適には、触媒、例えばAlCl3などのルイス酸触媒の存在下で、式(III):
【化10】

【0040】
(式中、R2、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりである)
の化合物を、基R1CH2を導入するのに好適な試薬、例えば化合物R1CH2-L(式中、Lは好適な脱離基、例えばハロゲン化物である)と反応させることを含む。すなわち、フリーデル・クラフツ反応は好適であり得る。
【0041】
本発明による第8の方法(H)は、式(VI):
【化11】

【0042】
の化合物またはその保護された誘導体(式中、R1、Z、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりである)を、基R2(式(I)について前に定義したとおりである)を導入するのに好適な試薬と反応させることを含む。かかる試薬の例は、塩基、例えば第三級アミン(例えばトリエチルアミン等のトリアルキルアミン)の存在下のR2-L(式中、R2は式(I)について前に定義したとおりであり、Lは、好適な脱離基、例えば塩化物などのハロゲン化物である)である。
【0043】
本発明による第9の方法(J)は、方法(A)〜(H)から選択した方法を実施した後、1個または複数個の官能基を相互変換することを含む。
【0044】
式(II)の化合物は、例えば、塩基の存在下、式:L-Q-NH-CH2X(式(VII))の化合物と式:R2-L2の化合物(式中、L、Q、XおよびR2は、式(II)について前に定義したとおりであり、L2は脱離基を表す)との反応により調製することができる。次に、式(VII)の化合物は、式:L-Q-NH2の化合物を式:X-CH2L3(式中、L、QおよびXは、前に定義したとおりであり、L3は脱離基を表す)の化合物と反応させることによって調製することができる。この反応は、好ましくは、塩基(例えば炭酸カリウム)の存在下、極性有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)中で行なう。
【0045】
式(III)の化合物は、式(II)の化合物と同様の方法で、式(VII)の化合物の代わりに式:H-Q-NH-CH2X(式(VIII))の化合物から出発して調製することができる。次に、式(VIII)の化合物は、式:H-Q-NH2の化合物を式:X-CH2L3(式中、QおよびXは、前に定義したとおりであり、L3は脱離基を表す)の化合物と反応させることにより調製することができる。この反応は、好ましくは、塩基(例えば炭酸カリウム)の存在下、極性有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)中で行なう。
【0046】
同じく、式(IV)の化合物は、式(II)の化合物と同様の方法で、式(VII)の化合物の代わりに、式:Y-Q-NH-CH2X(式(IX))(式中、YはOH、SH、NR4H、またはHCR4R5を表す)の化合物から出発して調製することができる。次に、式(IX)の化合物は、式:Y-Q-NH2の化合物を式:X-CH2L3の化合物(式中、Y、QおよびXは、前に定義したとおりであり、L3は脱離基を表す)と反応させることにより調製することができる。この反応は、好ましくは、塩基(例えば炭酸カリウム)の存在下、極性有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)中で行なう。
【0047】
同じく、式(V)の化合物は、式(II)の化合物と同様の方法で、式(VII)の化合物の代わりに、式:L4CR4R5-Q-NH-CH2X(式(X))の化合物から出発して調製することができる。次に、式(X)の化合物は、式:L4CR4R5-Q-NH2の化合物を式:X-CH2L3の化合物(式中、L4、QおよびXは、前に定義したとおりであり、L3は脱離基を表す)と反応させることによって調製することができる。この反応は、好ましくは、塩基(例えば炭酸カリウム)の存在下、極性有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)中で行なう。
【0048】
式(VI)の化合物は、基CH2X(式中、Xは、式(I)について前に定義したとおりである)を導入するのに好適な試薬との反応によって、式:R1ZQNH2(式(XI))(式中、R1、ZおよびQは、式(I)について前に定義したとおりである)の化合物から調製することができる。かかる試薬の例は、塩基(例えば炭酸カリウム)の存在下のL-CH2X(式中、Xは式(I)について前に定義したとおりであり、Lは、好適な脱離基、例えば臭化物などのハロゲン化物である)である。式(XI)の化合物は、当業者に周知の慣用の方法によって、例えば、式R1ZQNO2の化合物の還元によって調製することができる。
【0049】
式:R2-L2、L-Q-NH2、X-CH2L3、H-Q-NH2、Y-Q-NH2およびL4CR4R5-Q-NH2の化合物は既知であるか、あるいは既知の方法によって調製することができる。
【0050】
基Xによっては、基Xは、式(II)の化合物の合成ステップの間保護されることが望ましい場合がある。好適な保護基は、当業者には知られている。保護基は、例えば、Theodora GreeneおよびPeter G. M. Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(JohnWileyおよびSons Inc. 1999)に記載されているような、任意の慣用の保護基であってよい。好適なカルボン酸保護基としては、これらに限定されるものではないが、カルボン酸エステル、例えばメチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステル、アリールエステル、例えばベンジルエステルが挙げられる。
【0051】
例えば、式(II)(式中、XはCOR3であり、R3はOHであり、R2はSO2Meであり、Qはフェニルであり、Lは4-ブロモである)の化合物は、以下のスキーム(この場合、最終生成物の遊離酸基は、合成置換反応中、t-ブチルエステルとして保護されている)によって調製することができる。
【化12】

【0052】
また、式(I)の化合物は、合成化学の技術分野で標準の方法(酸化、還元、置換、脱保護等)を用いる相互変換により、式(I)の他の化合物から調製することもできることは当業者には明らかであろう。
【0053】
本発明のエナンチオマー化合物は、(a)対応するラセミ混合物の成分の分離によって、例えば、キラルクロマトグラフィー、酵素的分割方法、または好適なジアステレオ異性体の調製および分離によって、(b)上述の方法により適当なキラル出発原料から直接合成することによって、あるいは、(c)キラル試薬を用いた上述の方法と同様の方法によって得ることができる。
【0054】
式(I)の化合物の対応する塩への任意変換は、好ましくは、適当な酸または塩基との反応により行うことができる。式(I)の化合物の対応する溶媒和物または他の生理学上機能的な誘導体への任意変換は、当業者に既知の方法により行うことができる。
【0055】
式(I)の化合物は、マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害が有効なすべての症状の治療において、特に、炎症性疾患および自己免疫障害の治療において有用であり得る。
【0056】
本発明の化合物が薬効を有し得る炎症性症状および自己免疫障害の例としては、呼吸器疾患、例えば、喘息(アレルゲン誘発型喘息反応を含む)、嚢胞性繊維症、気管支炎(慢性気管支炎を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性経肺炎症、鼻炎および上気道炎症性障害(URID)、ベンチレーター誘発型肺損傷、珪肺症、肺サルコイドーシス、特発性肺線維症、気管支肺異形成、関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、骨関節炎、感染性関節炎、乾癬性関節炎、外傷性関節炎、風疹関節炎、ライター症候群、痛風性関節炎および人工器官関節機能不全、痛風、急性滑膜炎、脊椎炎および非関節炎症症状、例えば、椎間板ヘルニア/破損椎間板/脱出椎間板症候群、粘液嚢炎、腱炎、腱滑膜炎、結合組織炎症候群ならびに靭帯捻挫および限局性筋骨格損傷に随伴する他の炎症性症状、胃腸管の炎症性疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、憩室炎、クローン病、炎症性腸疾患、過敏性大腸症候群および胃炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、硬皮症、自己免疫性外分泌腺症、自己免疫性脳脊髄炎、糖尿病、腫瘍血管形成および転移、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、腎癌、卵巣癌、胃癌、子宮癌、膵臓癌、肝癌、口腔癌、喉癌および前立腺癌をはじめとする癌、黒色腫、急性白血病および慢性白血病、歯槽膿漏症、神経変性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、筋変性、鼡径ヘルニア、網膜変性、糖尿病性網膜症、黄斑変性、眼球炎症、骨吸収疾患、骨粗鬆症、大理石骨病、移植片対宿主反応、同種異系移植片拒絶反応、敗血症、内毒素血症、毒素性ショック症候群、結核、通常型間質性器質化肺炎および特発性器質化肺炎、細菌性髄膜炎、全身性悪液質、感染または悪性腫瘍続発性悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)続発性悪液質、マラリア、ハンセン病、皮膚リーシュマニア症、ライム病、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎線維症、肝臓線維症、膵臓炎、肝炎、子宮内膜症、疼痛、例えば、炎症および/または外傷に伴う疼痛、皮膚の炎症性疾患、例えば、皮膚炎、皮膚病、皮膚潰瘍、乾癬、湿疹、全身性脈管炎、血管性認知症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、再潅流傷害、プラーク石灰化、心筋炎、動脈瘤、卒中、肺高血圧症、左心室リモデリング、および心不全が挙げられる。
【0057】
重要な主たる疾患としては、COPDおよび呼吸器管の炎症性疾患、ならびに関節疾患および血管疾患が挙げられる。
【0058】
治療に関する本明細書の記載が所定の疾患の予防並びに治療にまで及ぶことは、当業者には明らかであろう。
【0059】
従って、本発明のさらなる態様として、薬剤で使用するための式(I)の化合物またはその生理学上許容可能な誘導体を提供する。
【0060】
本発明の別の態様によれば、炎症性症状または自己免疫障害治療用薬剤の製造における式(I)の化合物またはその生理学上許容可能な誘導体の使用を提供する。
【0061】
また、さらなる態様または代替の態様では、自己免疫疾患または炎症性疾患に罹患しているか、または罹患しやすいヒトまたは動物の被験体の治療方法であって、前記ヒトまたは動物被験体に、有効量の式(I)の化合物またはその生理学上機能的な誘導体を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0062】
本発明による化合物は、任意の都合のよい方法で投与用に製剤化することができる。従って、本発明はその範囲内に、式(I)の化合物またはその生理学上許容可能な誘導体を、所望の場合、1種または複数の生理学上許容可能な希釈剤または担体とともに含む医薬組成物も包含する。
【0063】
さらにまた、それらの成分を混合することを含んでなる、かかる医薬製剤の調製方法も提供する。
【0064】
本発明による化合物は、例えば、経口投与、吸入投与、鼻腔内投与、局所投与、口腔内投与、非経口投与、または直腸内投与用に、好ましくは経口投与用に製剤化することができる。
【0065】
経口投与用の錠剤およびカプセルは、慣用の添加剤、例えば結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、デンプン粘液、セルロース、またはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、またはソルビトール;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、またはシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン、クロスカルメロースナトリウム、またはデンプングリコール酸ナトリウム;あるいは湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを含み得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングすることができる。経口液体製剤は、例えば、水性または油性の懸濁液、溶液、乳剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であってよい。あるいは、使用前に水または他の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することができる。かかる液体製剤は、慣用の添加剤、例えば沈澱防止剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、または水素化食用脂;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアラビアゴム;非水性ビヒクル(食用油を含み得る)、例えば、アーモンド油、精製ヤシ油、油状エステル、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;あるいは保存剤、例えば、メチルまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸が含まれ得る。これらの調製物には、必要に応じて、緩衝塩、着香剤、着色剤および/または甘味剤(例えばマンニトール)も含み得る。
【0066】
局所投与用の本発明による化合物は、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤またはローション剤として、あるいは経皮貼布剤として製剤化することができる。かかる組成物は、例えば、好適な粘稠化剤、ゲル化剤、乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤および/または着色剤を添加して、水系基剤または油系基剤と一緒に製剤化することができる。
【0067】
ローション剤は水系基剤または油系基剤を用いて製剤化することができるが、一般には、1種または複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、粘稠化剤または着色剤も含有し得る。またローション剤は保存剤を含有していてもよい。
【0068】
口腔内投与では、本組成物は慣用の方法で製剤化した錠剤またはトローチ剤の形態であってよい。
【0069】
また本化合物は、ココアバターまたは他のグリセリド等の慣用の坐剤用基剤を含有する坐剤としても製剤化することができる。
【0070】
本発明による化合物は、ボーラス注射または連続注入による非経口投与用として製剤化することもでき、例えば、アンプル、バイアル、少量輸液、または予充填注射器としての単位投与形態で、あるいは追加保存剤が入った多回投与容器で提供することができる。本組成物は、水性ビヒクルまたは非水性ビヒクルに溶解した溶液、懸濁液または乳剤などの形態であってよく、酸化防止剤、バッファー、抗菌剤、および/または等張化剤等の製剤化剤(formulatory agent)を含有していてもよい。あるいは、本有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、殺菌済みの発熱物質非含有水)を用いて構成することを目的とした粉末形態であってよい。本乾燥固形物形態は、殺菌済み粉末を無菌的に個々の滅菌容器に充填することによって、あるいは無菌液を無菌的に各容器に充填して凍結乾燥することによって調製することができる。
【0071】
また本発明による医薬組成物は、他の治療薬、例えば、抗炎症剤(コルチコステロイド等、(例えば、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、もしくはブデソニド)またはNSAID(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、PDE-4阻害剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、CCR-3アンタゴニスト、iNOS阻害剤、トリプターゼ阻害剤およびエラスターゼ阻害剤、β-2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシン2aアゴニスト))、またはβアドレナリン作動薬(例えば、サルメテロール、サルブタモール、ホルモテロール、フェノテロールもしくはテルブタリンおよびそれらの塩)、または抗感染薬(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬)と組み合わせて用いることができる。
【0072】
本発明の化合物を、通常吸入または鼻腔経路によって投与される他の治療薬と組み合わせて投与する場合、その得られる医薬組成物は吸入または鼻腔経路により投与され得ることは理解されよう。
【0073】
本発明の化合物は、例えば、0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜25mg/kg体重、さらに好ましくは0.3〜5mg/kg体重の量で投与するのが好都合である。本化合物は、全日用量に等しくなるよう1日2回以上投与することができる。正確な用量は、当然、患者の年齢および症状、並びに選択した特定の投与経路に応じて変わるが、最終的には担当医師の判断による。
【0074】
本発明による化合物を上述の用量範囲内で投与する場合、毒性作用はないものと思われる。
【0075】
本発明の化合物は、以下のアッセイに従ってin vitro活性について試験することができる。
【0076】
MMP-12アッセイで用いられる蛍光性ペプチド基質は、FAM-Gly-Pro-Leu-Gly-Leu-Phe-Ala-Arg-Lys(TAMRA)である。式中、FAMはカルボキシフルオレセインを表し、TAMRAはテトラメチルローダミンを表す。MMP12触媒ドメイン(残基106〜268)タンパク質は、大腸菌内で不溶性封入体の形態で発現させ、変性条件(8Mの塩酸グアニジン)下、濃縮溶液中に保管した。酵素は、アッセイ反応開始してから直接稀釈によりin situで活性型へリフォールディングした。反応液51μLを、NUNC(商標)の黒色で正方形の384ウェルプレート(各ウェルは、50mM HEPES、pH 7.5、150mM NaCl、10mM CaCl2、1μM ZnAc、0.6mM CHAPS、および2% DMSOに溶解した2μMの基質、20nMの酵素および0.001〜100μMの阻害剤を含有する)に注入する。ポジティブコントロールのウェルは阻害剤を含んでいない。ネガティブコントロールのウェルは、EDTAクエンチングを事前に施すか(下記を参照されたい)、または酵素を除くことにより行なう。室温にて120分間、反応液をインキュベートし、次いで、100mM EDTAを15μL添加することによってクエンチングする。各ウェル中の生成物形成は、Molecular Devices Acquestを用いて蛍光を測定することにより定量する。励起波長は485nMで設定し、発光波長は530nMである。IC50値は、まず、各阻害剤濃度における阻害パーセント(%I)((%I = 100*(1-(I-C2)/(C1-C2))(式中、C1はポジティブコントロールの平均値であり、C2はネガティブコントロールの平均値である)を算出し、次いで、次式:%I = A+((B-A)/(1+((C/[I]^D)))(式中、Aは下方漸近線であり、Bは上方漸近線であり、CはIC50値であり、Dはスロープファクターである)に、%I対阻害剤濃度[I]データを挿入することによって取得した。このアッセイで試験したところ、実施例1〜11の化合物は、IC50が100ミクロモル未満であった。
【0077】
本発明を以下の実施例を参照することにより説明するが、本発明がこれらに限定されるものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0078】
一般的な実験の詳細
LC/MSデータは下記の条件下で取得した:
・カラム:3.3cm×4.6mm ID、3μm ABZ+PLUS
・流速:3ml/分
・注入容量:5μl
・温度:室温
・UV検出範囲:215〜330nm
・溶媒: A: 0.1% ギ酸+10mM 酢酸アンモニウム
B: 95% アセトニトリル+0.05% ギ酸
・勾配: 時間 A% B%
0.00 100 0
0.70 100 0
4.20 0 100
5.30 0 100
5.50 100 0
1H NMRスペクトルは、Bruker-Spectrospin Ultrashield 400分光光度計にて400MHzで得た。
【0079】
すべての合成出発原料と試薬は、販売者から入手して用いた。
【0080】
実施例1
【化13】

【0081】
[(4'-シアノ-1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
ジメトキシエタン(1mL)中の[(4-ブロモフェニル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸(中間体3、20mg、65μmol)の溶液を、Smithマイクロ波反応バイアルに入れた4-シアノフェニルボロン酸(9.5mg、65μmol)およびfibrecat FC1001(2.71% Pd;25mg、6.5μmol)の混合物に一度に添加した。炭酸ナトリウム水溶液(1.0M;130μL、130μmol)を添加し、バイアルに蓋をした。この粗製反応混合物をSmithシンセサイザーマイクロ波リアクターを用いて15分間150℃にて加熱した。冷却してバイアルの蓋を開け、内容物をWhatman 5μM濾過チューブを通して濾過し、メタノールで濾過ケーキを洗浄した(2×1mL)。濾液を蒸発させ、得られた残留物を質量誘導(mass directed)自動分取逆相HPLCにより精製し、白色固形物として表題化合物(1.1mg、5%)を得た。LC/MS: 2.94分; z/e 329, 計算値(M-1) 329。1H NMR (400 MHz:MeOD): 7.80 (4H), 7.75 (2H), 7.65 (2H), 4.45 (2H), 3.10 (3H)。
【0082】
実施例2
【化14】

【0083】
{(メチルスルホニル)[4'-(トリフルオロメトキシ)-1,1'-ビフェニル-4-イル]アミノ}酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 3.41分; z/e 407, 計算値(M+18) 407。
【0084】
実施例3
【化15】

【0085】
[(4'-アセチル-1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 2.98分; z/e 365, 計算値(M+18) 365。
【0086】
実施例4
【化16】

【0087】
[(4'-メトキシ-1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 3.17分; z/e 353, 計算値(M+18) 353。
【0088】
実施例5
【化17】

【0089】
[(4'-メチル-1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 3.24分; z/e 337, 計算値 (M+18) 337。
【0090】
実施例6
【化18】

【0091】
[(3'-シアノ-1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 3.05分; z/e 348, 計算値 (M+18) 348。
【0092】
実施例7
【化19】

【0093】
[(3'-アセチル-1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 2.82分; z/e 365, 計算値 (M+18) 365。
【0094】
実施例8
【化20】

【0095】
[(4'-エトキシ-1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 3.24分; z/e 367, 計算値 (M+18) 367。
【0096】
実施例9
【化21】

【0097】
[(1,1'-ビフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 3.04分; z/e 323, 計算値 (M+18) 323。
【0098】
実施例10
【化22】

【0099】
[(ピリジン-3-イルフェニル-4-イル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸(すなわち、N-(メチルスルホニル)-N-(4-ピリジン-3-イルフェニル)グリシン)
実施例1と同様にして調製した。LC/MS: 1.86分; z/e 307, 計算値 (M+1) 307。
【0100】
実施例11
【化23】

【0101】
N-{4-[(3-メチルブチル)オキシ]フェニル}-N-(メチルスルホニル)-グリシン
トリフルオロ酢酸(2.5mL)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジクロロメタン(5mL)に溶解した1,1-ジメチルエチルN-{4-[(3-メチルブチル)オキシ]フェニル}-N-(メチルスルホニル)グリシネート(中間体7、140mg、0.378mmol)の撹拌溶液に一度に添加した。得られた混合物を3時間撹拌し、次いで、揮発物を蒸発させた。オレンジ色の粗製生成物の一部を逆相質量誘導(mass directed)分取HPLCにより精製し、白色固形物(20mg)として表題化合物を得た。LC/MS: 3.22分; z/e 333, 計算値 (M+18) 333。1H NMR (400 MHz; MeOD): 0.95 (6H), 1.75 (2H), 1.85 (1H), 3.05 (3H), 4.05 (2H), 4.35 (2H), 6.90 (2H), 7.40 (2H)。
【0102】
中間体1
【化24】

【0103】
tert-ブチル[(4-ブロモフェニル)アミノ]アセテート
t-ブチルブロモアセテート(6.24g、4.72mL、32.0mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジメチルホルムアミド(100mL)に溶解した4-ブロモナニリン(bromonaniline)(5.00g、29.1mmol)および炭酸カリウム(4.02g、29.1mmol)の撹拌懸濁液に一度に添加した。得られた混合物を14時間撹拌し、次いで、揮発物を蒸発させた。残渣をジクロロメタン(50mL)と水(50mL)の間に分配した。水相をジクロロメタン(3×50mL)で抽出し、次いで、有機抽出物を合わせ、乾燥(硫酸マグネシウム)させ、溶媒を蒸発させた。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(20%酢酸エチル:シクロヘキサン)、白色固形物(5.86g、70%)として表題化合物を得た。LC/MS: 3.65分; z/e286および288, 計算値(M+1) 286および288。1H NMR (400 MHz: CDCl3): 7.30 (2H), 6.50 (2H), 4.35 (1H), 3.75 (2H), 1.45 (9H)。
【0104】
中間体2
【化25】

【0105】
tert-ブチル[(4-ブロモフェニル)(メチルスルホニル)アミノ]アセテート
ジクロロメタン(100mL)に溶解したtert-ブチル[(4-ブロモフェニル)アミノ]アセテート(中間体1、5.86g、20.5mmol)、塩化メタンスルホニル(2.58g、1.74mL、22.5mmol)、トリエチルアミン(4.15g、5.71mL、41.0mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(260mg、2.05mmol)の溶液を14時間、加熱還流した。塩化メタンスルホニル(2.58g、1.74mmol、22.5mmol)の第2の小分け分量を添加し、さらに48時間継続して加熱還流した。反応物を室温まで冷却し、塩酸水溶液で抽出した(1.0M;3×50mL)。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)させ、蒸発乾固した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(10%ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、淡いクリーム状固形物(2.37g、32%)として表題化合物を得た。LC/MS: 3.35分; z/e 381および383, 計算値(M+18) 381および383。1H NMR (400 MHz:CDCl3) : 7.55 (2H), 7.35 (2H), 4.30 (2H), 3.10 (3H), 1.45 (9H)。
【0106】
中間体3
【化26】

【0107】
[(4-ブロモフェニル(メチルスルホニル)アミノ]酢酸
トルエン(88mL)に溶解したtert-ブチル[(4-ブロモフェニル)(メチルスルホニル)アミノ]アセテート(中間体2、1.00g、2.74mmol)およびシリカゲル(13.7g)の懸濁液を4時間加熱還流した。反応物を室温まで冷却し、濾過し、メタノール/ジクロロメタン(20/80;2×100mL)で濾過ケーキを洗浄した。有機濾液をまとめて蒸発させることにより、白色固形物(0.81g、95%)として表題化合物を得た。LC/MS: 2.81分; z/e 325および327, 計算値 (M+18) 325および327。1H NMR (400 MHz:MeOD): 7.45 (2H), 7.35 (2H), 4.45 (2H), 3.05 (3H)。
【0108】
中間体4
【化27】

【0109】
1-[(3-メチルブチル)オキシ]-4-ニトロベンゼン
1-ブロモ-3-メチルブタン(7.07g、5.60mL、46.8mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジメチルホルムアミド(50mL)に溶解した4-ニトロフェノール(5.00g、35.9mmol)および炭酸カリウム(5.46g、49.5mmol)の撹拌懸濁液に一度に添加した。得られた混合物を16時間室温にて撹拌し、次いで、揮発物を蒸発させた。ジエチルエーテル(50mL)と水(50mL)の間に残渣を分配し、それらの相を分離させた。エーテル(2×50mL)で水相を抽出し、次いで、有機抽出物を合わせて乾燥させた(硫酸マグネシウム)。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(10%ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、淡黄色の油状物(6.63g、88%)として表題化合物を得た。LC/MS:3.69分。1H NMR (400 MHz;CDCl3):0.95(6H), 1.75 (2H), 1.85 (1H), 4.05 (2H), 6.95 (2H), 8.20 (2H)。
【0110】
中間体5
【化28】

【0111】
{4-[(3-メチルブチル)オキシ]フェニル}アミン
5%の活性炭担持型パラジウム(100mg)を、窒素雰囲気下、室温にて、酢酸エチル(40mL)に溶解した1-[(3-メチルブチル)オキシ]-4-ニトロベンゼン(中間体4、2.00g、9.56mmol)の撹拌溶液に一度に添加した。窒素を水素と置換し、4時間撹拌を継続した。水素を窒素と置換し、次いで、その粗製反応混合物をシーライトのプラグを通して濾過した。溶質を蒸発乾固し、無色の油状物(1.71g、100%)として表題化合物を得た。これは精製を行うことなく用いた。LC/MS: 2.29分; z/e 180, 計算値 (M+1) 180。1H NMR (400 MHz;CDCl3): 0.95 (6H), 1.65 (2H), 1.85 (1H), 3.10 (2H), 3.90 (2H), 6.65 (2H), 6.75 (2H)。
【0112】
中間体6
【化29】

【0113】
1,1-ジメチルエチルN-{4-[(3-メチルブチル)オキシ]フェニル}グリシネート
t-ブチルブロモアセテート(1.12g、0.85mL、5.76mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジメチルホルムアミド(23.4mL)に溶解した{4-[(3-メチルブチル)オキシ]フェニル}アミン(中間体5、0.85g、4.8mmol)および炭酸カリウム(0.66g、4.8mmol)の撹拌懸濁液に5分間かけて滴下して加えた。14時間撹拌した後、揮発物を蒸発させ、ジクロロメタン(50mL)と水(50mL)の間に残渣を分配させた。これらの相を分離し、水相をジクロロメタン(2×50mL)で洗浄した。有機相を合わせ、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、次いで、溶媒を蒸発させた。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(10%ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、無色の油状物(1.38g)として、表題化合物(分離不可能な、一置換対二置換が10:1の混合物)を得た。一置換生成物:LC/MS:3.77分;z/e 294, 計算値 (M+1) 294。1H NMR (400 MHz;CDCl3): 0.90 (6H), 1.45 (9H), 1.65 (2H), 1.85 (1 H), 3.75 (2H), 3.90 (2H), 6.55 (2H), 6.80 (2H)。
【0114】
中間体7
【化30】

【0115】
1,1-ジメチルエチルN-{4-[(3-メチルブチル)オキシ]フェニル}-N-(メチルスルホニル)グリシネート
メタンスルホニルクロリド(93mg、63μL、0.82mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジクロロメタン(2mL)に溶解した1,1-ジメチルエチルN-{4-[(3-メチルブチル)オキシ]フェニル}グリシネート(中間体6、0.20g、0.68mmol)およびトリエチルアミン(138mg、189μL、1.36mmol)の撹拌溶液に一度に添加した。3時間撹拌を継続し、次いで、塩酸水溶液(1.0M; 2mL)を添加した。有機相を分離し、水相をジクロロメタン(3×5mL)で洗浄した。有機相を合わせ、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、次いで、蒸発乾固させた。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(30%ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、白色固形物(140mg、56%)として表題化合物を得た。LC/MS:3.72分; z/e 389, 計算値 (M+18) 389。1H NMR (400 MHz;CDCl3): 0.95 (6H), 1.45 (9H), 1.70 (2H), 1.85 (1H), 3.10 (3H), 3.95 (2H), 4.30 (2H), 6.85 (2H), 7.35 (2H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
R1は、場合により置換されていてもよいC4-12アルキル、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表し;
Zは、結合、CH2、O、S、SO、SO2、NR4、OCR4R5、CR4R5Oを表すか、あるいは、Z、R1およびQは、一緒になって、場合により置換されていてもよい縮合三環式基を形成しており;
Qは、場合により置換されていてもよい5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環を表し;
Xは、COR3またはN(OR8)COR9を表し;
R2は、SO2R10またはSO2NR10R11を表し;
R3は、OR6、NR6R7またはNR6OHを表し;
R4およびR5は、互いに独立して、H、C1-6アルキル、またはC1-4アルキルアリールを表し;
R6およびR7は、互いに独立して、H、C1-6アルキル、または1個もしくは複数のヘテロアリール基で置換されているC1-6アルキルを表すか、あるいは、R6およびR7は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、O、SおよびNから選択される1個または複数のヘテロ原子を場合によりさらに含んでいてもよい5員環または6員環を形成しており;
R8およびR9は、互いに独立して、HまたはC1-6アルキルを表し;
R10およびR11は、互いに独立して、HまたはC1-6アルキルを表す)
で表される化合物、またはその生理学上機能的な誘導体(但し、N-(エトキシカルボニル)-N-[4-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]グリシンを除く)。
【請求項2】
式(Ia):
【化2】

(式中、
R10は、HまたはC1-6アルキルを表し;
R12は、H、ハロゲン、CF3、シアノ、OCF3、ニトロ、OR13、SR13、COR13、またはC1-6アルキルを表し;
R13は、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表す)
で表される請求項1に記載の化合物、またはその生理学上機能的な誘導体。
【請求項3】
薬剤において使用するための請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
自己免疫疾患または炎症性症状に罹患しているか、または罹患しやすいヒトまたは動物被験体の治療方法であって、前記ヒトまたは動物被験体に有効量の請求項1または請求項2に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
炎症性症状または自己免疫疾患治療用薬剤の製造における請求項1または請求項2に記載の化合物の使用。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の化合物および製薬上許容可能な担体、ならびに場合により1種または複数の他の治療薬を含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に定義した式(I)で表される化合物の調製方法であって、
(A) 式(I)(式中、Zは結合を表し、R1は、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表す)の化合物の調製において、式(II):
【化3】

(式中、R2、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりであり、Lは脱離基を表す)
の化合物を、基R1を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;あるいは、
(B) 式(I)(式中、Zは結合を表し、R1は、場合により置換されていてもよいC4-12アルキルを表す)の化合物の調製において、式(III):
【化4】

(式中、R2、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりである)
の化合物を、基R1を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;あるいは、
(C) 式(I)(式中、Zは、O、S、SO、SO2、NR4、またはOCR4R5を表わし、R1は、場合により置換されていてもよいC4-12アルキルを表す)の化合物の調製において、式(IV):
【化5】

(式中、X、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、Yは、OH、SH、NR4HまたはHCR4R5を表す)
の化合物を、基R1を導入するのに好適な試薬と反応させ、次いで、YがSHの場合には硫化物をスルホキシドまたはスルホンへ場合により酸化するステップ;あるいは、
(D) 式(I)(式中、Zは、O、S、SO、SO2またはNR4を表し、R1は、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表す)の化合物の調製において、式(IV):
【化6】

(式中、X、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、Yは、OH、SHまたはNR4Hを表す)
の化合物を、基R1に結合するのに好適な試薬と反応させ、次いで、YがSHの場合には硫化物をスルホキシドまたはスルホンへ場合により酸化するステップ;あるいは、
(E) 式(I)(式中、ZはOCR4R5を表し、R1は、場合により置換されていてもよいC2-6アルキルアリール、または場合により置換されていてもよい5員もしくは6員のアリールもしくはヘテロアリールを表す)の化合物の調製において、式(V):
【化7】

(式中、X、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、L4は好適な脱離基である)
の化合物を、基R1-Oを導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;あるいは、
(F) 式(I)(式中、ZはCR4R5Oを表す)の化合物の調製において、式(IV):
【化8】

(式中、R2およびQは、式(I)について前に定義したとおりであり、YはOHを表す)
の化合物を、基R1CR4R5-を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;あるいは、
(G) 式(I)(式中、ZはCH2を表す)の化合物の調製において、式(III):
【化9】

(式中、R2、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりである)
の化合物を、基R1CH2を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;あるいは、
(H) 式(VI):
【化10】

の化合物またはその保護された誘導体(式中、R1、Z、QおよびXは、式(I)について前に定義したとおりである)を、基R2(式(I)について前に定義したとおりである)を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;あるいは、
(J) ステップ(A)〜ステップ(G)から選択したステップを実施し、次いで、1個または複数の官能基を相互変換するステップ
を含む、前記方法。

【公表番号】特表2007−506664(P2007−506664A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515980(P2006−515980)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006553
【国際公開番号】WO2004/113279
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】