説明

マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害剤

【課題】新規なマトリックスメタロプロテイナーゼ酵素阻害剤の提供。
【解決手段】例えば、次式(1C)


[式中、Aは、結合、C1−6アルキルまたはCH=CH−C1−4アルキルを表し、Bは、O,S,SO,SO2,CO等の結合を表し、Dは、結合、またはC1−6アルキルを表し、Eは、置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表し、R18は、ハロ、シアノ、ニトロ等を表し、mは0または整数1,2もしくは3を表す]で代表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化学化合物、それらの調製方法、それらを含有する医薬製剤、および治療におけるそれらの使用に関する。
【0002】
本発明の化合物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ酵素(MMP)の阻害剤である。
【背景技術】
【0003】
マトリックスメタロプロテイナーゼ酵素は、細胞外マトリックス成分の分解と再構築において重要な役割を果たしている。MMPの例としては、コラゲナーゼ1、2および3、ゼラチナーゼAおよびB、ストロメリシン1、2および3、マトリリシン、マクロファージメタロエラスターゼ、エナメリシン、ならびに膜型1MMP、2MMP、3MMPおよび4MMPが挙げられる。これらの酵素は、結合組織細胞と炎症細胞によって分泌される。酵素活性化は、組織損傷を引き起こすだけでなく、炎症性細胞の組織への浸潤増大を誘発し、その結果、酵素がさらに生産され、その後組織損傷をもたらす。例えば、MMP分解によって産生されるエラスチン断片は、MMP活性の部位にマクロファージを誘引することにより炎症を刺激すると考えられている。このため、MMPを阻害することにより、不適切なメタロプロテアーゼ活性が結合組織分解と炎症を引き起こしている疾患状態を治療するための手段が得られる。
【発明の開示】
【0004】
一態様では、本発明は、式(I):
【化1】

【0005】
(式中:
Aは、結合、C1-6アルキルまたはCH=CH-C1-4アルキルを表し;
Bは、結合、O、S、SO、SO2、CO、CR7R8、CO2R14、CONR14R15、N(COR14)(COR15)、N(SO2R14)(COR15)またはNR14R15を表し;
Dは、結合、またはC1-6アルキルを表し;
Eは、置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表し;
Qは、場合により置換された5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環を表し;
Xは、O、S、SO、SO2、CO、CNR5、CNOR5、CNNR5R6、NR11またはCR7R8を表し;
Yは、CR5OR11、CR5SR11、NOR5、CR5NR6R11、SO、SO2、CO、CNR5、CNOR5またはCSを表し;
R1およびR1’は、互いに独立して、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R2は、CO2R12、CH2OR12またはCONR12R13、CONR12OR13、NR12COR13、SR12、PO(OH)2、PONHR12またはSONHR12を表し;
R3は、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R4は、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリールを表し;
Zは、結合、CH2、O、S、SO、SO2、NR5、OCR5R6、CR9R10Oを表し、あるいはZ、R4およびQは、一緒になって、場合により置換された縮合三環式基を形成し;
R5およびR6は互いに独立して、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R7およびR8は互いに独立して、H、ハロ、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R9およびR10は、互いに独立して、H、場合によりハロ、シアノ、OR11またはNR6R11によって置換されたC1-6アルキル、場合によりハロ、シアノ、OR11またはNR6R11によって置換されたC1-4アルキルアリール、OR11を表し、あるいはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、R9およびR10は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を場合によりさらに含む複素環基を形成し;
R11は、H、C1-6アルキル、C1-4アルキルアリールまたはCOR5を表し;
R12およびR13は互いに独立して、H、C1-3アルキル、C1-3アルキルアリールまたはC1-3アルキルヘテロアリールを表し、あるいはそれらが結合する官能基と一緒になって、R12およびR13は、C、O、NおよびSから選択される1個または複数の原子を場合によりさらに含む複素環基を形成し;
R14およびR15は互いに独立して、H、C1-6アルキル、C1-4アルキルアリールまたはC1-4アルキルヘテロアリールを表し、あるいはそれらが結合する官能基と一緒になって、R14およびR15は、C、O、NおよびSから選択される1個または複数の原子をさらに含んでもよい複素環または縮合複素環基を形成する)で表される化合物、およびその生理学上機能的な誘導体を提供する。
【0006】
「アリール」という記載には、単環炭素環式芳香族環(例えば、フェニル)および二環炭素環式芳香族環(例えば、ナフチル)が含まれ、また「ヘテロアリール」という記載には、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する単環および二環のヘテロ環式芳香族環が含まれる。二環ヘテロ環式芳香族基においては、各環または一つの環のみに1個または複数のヘテロ-原子が存在しうる。単環ヘテロ環式芳香族環の例としては、ピリジニル、ピリミジニル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ウラシルまたはイミダゾリルが挙げられ、また二環ヘテロ環式芳香族環の例としては、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、またはインドリルが挙げられる。炭素環式芳香族環およびヘテロ環式芳香族環は、例えば、1個または複数個のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、ハロゲン、C1-6アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、-N(CH3)2、-NHCOC1-6アルキル、-OCF3、-CF3、-COOC1-6アルキル、-OCHCF2、-SCF3、-CONR6R7 -SO2N(CH3)2、-SO2CH3もしくは-SCH3基、または縮合シクロアルキルもしくは複素環(それら自体が例えばカルボニル基で置換されていてもよい)によって場合により置換されていてもよい。
【0007】
「アルキル」の記載には、対応するアルキルの直鎖および分枝鎖の両方の脂肪族異性体が含まれる。「アルキレン」および「アルコキシ」の記載についても同様に判断すべきであることは理解されよう。
【0008】
好適には、Aは、結合またはC1-6アルキル、例えばC2またはC3アルキルを表す。
【0009】
好適には、Bは、結合を表す。
【0010】
好適には、Dは、メチレンまたは結合、好ましくは結合を表す。
【0011】
例えば、A-B-Dは好適には、-CH2CH2-を表す。
【0012】
Eの任意の置換基には、1個または複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、ハロゲン、C1-6アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、-N(CH3)2、-NHCOC1-6アルキル、-OCF3、-CF3、-COOC1-6アルキル、-OCHCF2、-SCF3、-CONR5R6 -SO2N(CH3)2、-SO2CH3もしくは-SCH3基、または縮合シクロアルキルもしくは複素環(それら自体が、例えば、カルボニル基で置換されていてもよい)を含む。
【0013】
本発明の化合物の一つのサブグループにおいて、Eは、置換もしくは非置換の5員または6員のヘテロアリール、例えば、窒素含有ヘテロ芳香環基(例えば、ウラシル)を表す。
【0014】
本発明の化合物のさらなるサブグループにおいて、Eは、置換もしくは非置換の縮合複素環、例えば、窒素含有複素環によって置換されたアリール、例えば、フェニルを表す。このサブグループの例は、Eがフタルイミドを表す本発明の化合物である。
【0015】
Qの適切な任意の置換基には、1個または複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、ハロゲン、C1-6アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、-N(CH3)2、-NHCOC1-6アルキル、-OCF3、-CF3、-COOC1-6アルキル、-OCHCF2、-SCF3、-CONR5R6-SO2N(CH3)2、-SO2CH3または-SCH3基を含む。最も好適には、Qは、非置換フェニルを表わす。
【0016】
好適には、R1およびR1’の各々は、水素を表す。
【0017】
好適には、R2は、CO2R12、例えば、CO2Hを表す。
【0018】
好適には、R3は、水素を表す。
【0019】
好適には、R4は、ベンゾフラニル、フェニルまたはピリミジニルを表す。R4の好適な任意の置換基には、1個または複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、ハロゲン、C1-6アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、-N(CH3)2、-NHCOC1-6アルキル、-OCF3、-CF3、-COOC1-6アルキル、-OCHCF2、-SCF3、-CONR5R6、-SO2N(CH3)2、-SO2CH3または-SCH3基を含む。好ましくは、R4は、場合により置換されたフェニルまたは場合により置換されたピリミジニルを表す。
【0020】
好適には、Xは、CH2を表す。
【0021】
好適には、Yは、CHOR11を表す。ここでR11は好適には、H、C1-6アルキルまたはCOR5を表す。好ましくはR11は、Hを表す。好ましくはR5は、C1-6アルキルを表す。
【0022】
好適には、Zは、結合を表し、あるいはZ、R4およびQは一緒になって、縮合三環式基を表し、好ましくは、Zは結合を表す。
【0023】
式(I)で表される化合物のサブグループは、式(Ia)および式(Ib):
【化2】

【0024】
(式中:
Tは、存在しないか、またはO、S、NR16もしくはCR16R17を表し;
---は、場合により結合を表し;
G1およびG2は、互いに独立して、CHまたはNを表し;
Aは、結合、C1-6アルキルまたはCH=CH-C1-4アルキルを表し;
Bは、結合、O、S、SO、SO2、CO、CR7R8、CO2R14、CONR14R15、N(COR14)(COR15)、N(SO2R14)(COR15)、NR14R15を表し;
Dは、結合、またはC1-6アルキルを表し;
Eは、置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表し;
R16は、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R17は、HまたはC1-6アルキルを表し;
R18およびR19は、互いに独立して、ハロ、シアノ、ニトロ、OR16、SR16、COR16、NR17COR16、CONR16R17、場合により置換されたフェノキシまたは場合によりOR16によって置換されたC1-6アルキルを表し;
mおよびnは、互いに独立して、0または整数1、2もしくは3を表す)で表される化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体である。
【0025】
式(Ia)および(Ib)の化合物において、Aは好適には、アルキル、例えば、C1-4アルキル(例えば、エチル)を表す。好適には、Bは、結合を表す。好適には、Dは、結合を表す。好適には、Eは、置換もしくは非置換のヘテロアリール、例えば、窒素含有ヘテロアリール(例えば、ウラシル)を表すか、あるいはEは、置換もしくは非置換の縮合複素環、例えば、フタルイミドによって置換されたフェニルを表す。
【0026】
好ましくは、nは0であり、かつmは1である。
【0027】
好ましくは、R18は、NO2、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、SC1-6アルキル、CNおよびCOC1-6アルキルから選択されるパラ-置換基を表す。
【0028】
好ましくは、G1およびG2は共にCHまたは共にNである。
【0029】
本発明の化合物のさらなるサブグループは、式(Ic):
【化3】

【0030】
(式中、A、B、D、E、R18およびmは式(Ia)および(Ib)について前に定義したとおりである)で表される化合物ならびにその生理学上機能的な誘導体で表される。
【0031】
式(Ic)の化合物において、A-B-Dは好適には、-CH2-CH2-を表す。好適には、mは、0または1を表す。Mが1である場合に、R18は好適には、NO2、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、SC1-6アルキル、CN、OCF3、またはCOC1-6アルキルから選択されるパラ置換基を表す。
【0032】
本発明の化合物のさらなるサブグループは、式(Id):
【化4】

【0033】
(式中、R20は、フェニル、ベンゾフラリル(benzofuraryl)およびピリミジニルから選択される置換もしくは非置換のアリールまたはヘテロアリール基を表し;かつ以下の式:
【化5】

【0034】
は、少なくとも一つの窒素原子を含む置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリール基を表す)で表される化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体で表される。
【0035】
式(Id)の化合物において、R20は好適には、非置換もしくは置換フェニル、非置換ベンゾフラリル(benzofuraryl)または非置換ピリミジニルを表す。R20が、置換フェニルを表す場合に、好適には、このフェニル環はパラ位にある単一の置換基によって置換されるであろう。適切な置換基としては、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ハロゲン、C1-6アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、-N(CH32、-NHCOC1-6アルキル、-OCF3、-CF3、-CO2C1-6アルキル、OCHCF2、-SCF3、-CONR5R6、-SO2N(CH3)2、-SO2CH3または-SCH3、例えば、シアノ、COCH3、OCF3およびSCH3が挙げられる。
【0036】
「生理学上機能的な誘導体」という用語には、例えば、生体内で式(I)に変換可能であることによって、式(I)の遊離化合物と同様の生理機能を有する式(I)の化合物の化学的誘導体という意味があり、服用者へ投与した場合に、式(I)の化合物またはその活性代謝物または残基を直接的または間接的に提供し得る、式(I)の化合物の任意の製薬上許容可能なエステル、アミドおよびカルバメート、塩ならびに溶媒和物が含まれる。
【0037】
本発明はまた式(I)の化合物の塩も提供する。式(I)の化合物の好適な塩としては、生理学上許容可能な塩、ならびに生理学上許容可能でないかもしれないが、式(I)の化合物およびその生理学上許容可能な塩の調製に有用であり得る塩が挙げられる。適切ならば、酸付加塩は無機酸または有機酸から誘導することができ、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。
【0038】
溶媒和物の例としては、水和物が含まれる。
【0039】
式(I)の化合物がキラル中心を含有する場合、本発明は、エナンチオマ-(ラセミ混合物を含む)およびジアステレオ異性体の混合物、ならびに個々のエナンチオマーまで包含する。一般に、式(I)の化合物は精製された単一のエナンチオマーの形態で使用するのが好ましい。エナンチオマー的に純粋な式(I)で表される化合物は、キラル選択合成またはキラル分離によって得ることができる。
【0040】
式(I)の化合物ならびにその塩および溶媒和物は、下に記載の方法によって調製することができるが、これは、本発明のさらなる態様を構成する。
【0041】
式(I)(式中、Zは、結合を表す)の化合物を調製するための本発明による第1の方法(A)は、式(II):
【化6】

【0042】
(式中、R1、R1’、R2、R3、R3’、A、B、D、E、Q、XおよびYは、式(I)について前に定義したとおりであり、かつLは、脱離基を表す)で表される化合物と、基R4を導入するのに好適な試薬、例えば、化合物であるR4B(OH)2とを反応させるステップ、好適には、触媒(貴金属触媒等、例えばパラジウム)および好適な塩基(アルカリ金属カーボネート等、例えばセシウムカーボネート)の存在下で反応させることを含む。好ましくは、その反応は、極性有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)などの適当な溶媒中で行なう。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0043】
例えば、本発明による(場合により置換されていてもよい)ビフェニル化合物(すなわち、QおよびR4が共にフェニルである)を合成するために、好適な触媒の存在下、フェニルボロン酸を、[(4-ブロモフェニル)(メチルスルホニル)アミノ]酢酸と反応させることができる:
【化7】

【0044】
式(I)(式中、Zは、O、S、SO、SO2、またはNR5を表す)の化合物を調製するための本発明による第2の方法(B)は、式(III):
【化8】

【0045】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、A、B、DおよびEは、式(I)について前に定義したとおりであり、かつTは、OH、SHまたはNR6Hを表す)で表される化合物を、基R4を導入するのに好適な試薬、例えば、化合物R4-L(式中、Lは好適な脱離基である)と反応させることを含む。この反応は、適当な触媒(例えば、パラジウム触媒(好ましくはT=NR5Hの場合)または銅触媒(好ましくはT=OHもしくはSHの場合)の存在下で、適当な溶媒、例えば、ヘテロ原子を含有する溶媒(例えば、ピリジン)中で都合よく行われる。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0046】
ZがSOまたはSO2を表す化合物については、式(I)の化合物は、最初にZがSを表す化合物を調製し、次に、そのスルフィドをスルホキシドまたはスルホンに酸化することにより調製するのが好ましい。この酸化ステップは、当技術分野で既知の方法、例えば、スルホンの場合には過酸化水素による酸化、あるいはスルホキシドの場合にはOxone(登録商標)(ペルオキシ一硫酸カリウム)による酸化を用いて実施することができる。
【0047】
式(I)(式中、Zは、OCR5R6を表す)の化合物を調製するための本発明による第3の方法(C)は、式(IV):
【化9】

【0048】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、R5、R6、A、B、DおよびEは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基R4-Oを導入するのに好適な試薬、例えば、化合物R4-OHと反応させることを含む。この反応は、好ましくは、塩基性条件下、例えば、水酸化ナトリウム等の水酸化物水溶液の存在下で、適当な溶媒、例えばアルコール溶媒(エタノール等)中で実施する。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0049】
式(I)(式中、Zは、CR5R6Oを表す)の化合物を調製するための本発明による第4の方法(D)は、式(V):
【化10】

【0050】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、A、B、DおよびEは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基R4CR5R6を導入するのに好適な試薬、例えば、化合物R4CR5R6-L(式中、Lは好適な脱離基である)と反応させることを含む。この反応は、好ましくは、塩基性条件下、例えば、水酸化ナトリウム等の水酸化物水溶液の存在下で、適当な溶媒、例えばアルコール溶媒(エタノール等)中で実施する。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0051】
式(I)(式中、Zは、CH2を表す)の化合物を調製するための本発明による第5の方法(E)は、好適には、触媒、例えばAlCl3等のルイス酸触媒の存在下で、式(VI):
【化11】

【0052】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、A、B、DおよびEは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基R4CH2を導入するのに好適な試薬、例えば、化合物R4CH2-L(式中、Lは好適な脱離基(例えば、ハロゲン化物)である)と反応させることを含む。すなわち、フリーデル・クラフツ反応が適当であり得る。
【0053】
式(I)の化合物を調製するための本発明による第6の方法(F)は、式(VII)
【化12】

【0054】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、R4、A、BおよびDは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基Eを導入するのに好適な試薬、例えば、化合物H-Eと反応させることを含む。この反応は、好ましくは、塩基性条件下(例えば、塩基(水素化カリウム等)の存在下)で、適当な溶媒、例えば、非プロトン性溶媒(ジメチルホルムアミド等)中で実施する。Lによって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、特に臭化物またはヨウ化物、およびメチルスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0055】
本発明による第7の方法(G)は、方法(A)〜(F)から選択された方法を実施して、次いで、1個または複数の官能基を相互変換することを含む。相互変換の方法には、例えば、酸化、還元、置換、脱保護など、合成化学の分野において標準的な方法を含む。
【0056】
式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物は、式(VIII):
【化13】

【0057】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、A、BおよびDは、式(I)について前に定義したとおりであり、かつUは、化合物(II)の場合に、Lであり、化合物(III)の場合に、Tであり、化合物(IV)の場合に、L(R5)(R6)CH2であり、化合物(V)の場合に、OHであり、および化合物(VI)の場合に、Hであり、かつL2は、Lよりも不安定な脱離基を表す)で表される化合物と式E-Hの化合物または式E-M+の塩とを反応させることによって調製できる。L2によって表される好適な脱離基としては、ハロゲン化物、例えば、臭化物またはヨウ化物、およびメチルスルホニルオキシ基が挙げられる。あるいは、光延型の活性化遊離基L2は、対応するアルコールとジイソプロピルアゾジカルボキシレートおよびトリフェニルホスフィンとを反応させることによって生成できる;次いで脱離基は、アニオンE-M+で置換され、生成物を生じうる。
【0058】
次に、式(VIII)の化合物は、式(IX):
【化14】

【0059】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2およびR3は式(I)について前に定義したとおりであり、かつUは式(VIII)について前に定義したとおりであり、かつL3は、脱離基を表す)で表される化合物と、式H-A-B-D-L2の化合物とを反応させることによって調製できる。この反応は好ましくは、適当な触媒(例えば、金属水素化物)の存在下、適当な溶媒、例えば、非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)中で実施される。
【0060】
次いで、式(IX)の化合物は、式(X)で表される化合物と式(XI):
【化15】

【0061】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2およびR3は式(I)について前に定義したとおりであり、かつUは式(VIII)について前に定義したとおりであり、かつL3は式(IX)について前に定義したとおりであり、かつL4は、脱離基を表す)で表される化合物とを反応させることによって調製できる。この反応は好ましくは、適当な触媒(例えば、金属水素化物)の存在下、適当な溶媒、例えば、非プロトン性溶媒(テトラヒドロフラン等)中で実施される。
【0062】
同じく、式(VII)の化合物は、式(XII):
【化16】

【0063】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3およびR4は式(VII)について前に定義したとおりであり、かつL3は、脱離基を表す)で表される化合物と式H-A-B-D-Lの化合物とを反応させることによって調製できる。この反応は好ましくは、適当な触媒(例えば、金属水素化物)の存在下、適当な溶媒、例えば、非プロトン性溶媒(ジメチルホルムアミド等)中で実施される。
【0064】
次に、式(XII)の化合物は、式(XIII)で表される化合物と式(XIV):
【化17】

【0065】
(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3およびR4は式(I)について前に定義したとおりであり、かつL3は式(XII)について前に定義したとおりであり、かつL4は、脱離基を表す)で表される化合物とを反応させることによって調製できる。この反応は好ましくは、適当な触媒(金属水素化物等)の存在下、適当な溶媒、例えば、非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中で実施される。
【0066】
式R4B(OH)2、R4-L、R4-OH、R4CR5R6-L、R4CH2-L、H-E、H-A-B-D-L2-(X)(XI)(XIII)および(XIV)の化合物は、公知であるか、または当業者によく知られた方法で公知の化合物から調製できる。
【0067】
基X、基Y、基R2、L、L2、L3およびL4によっては、1個または複数のこれらの基が、式(I)の化合物合成の1個または複数のステップの間、保護されることが望ましい場合がある。好適な保護基は、当業者には知られている。保護基は、例えば、Theodora Greene and Peter G. M. Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(John Wiley and Sons Inc. 1999)に記載されているような、任意の慣用の保護基であってよい。
【0068】
本発明のエナンチオマー化合物は、(a)対応するラセミ混合物の成分の分離によって、例えば、キラルクロマトグラフィー、酵素的分割方法、または好適なジアステレオ異性体の調製および分離によって、(b)上述の方法により適当なキラル出発原料から直接合成することによって、あるいは、(c)キラル試薬を用いた上述の方法と同様の方法によって得ることができる。
【0069】
式(I)の化合物の対応する塩への任意変換は、好ましくは、適当な酸または塩基との反応により行うことができる。式(I)の化合物の対応する溶媒和物または他の生理学上機能的な誘導体への任意変換は、当業者に既知の方法により行うことができる。
【0070】
式(I)の化合物は、マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害が有効なすべての症状の治療において、特に、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療において有用であり得る。
【0071】
本発明の化合物が薬効を有し得る炎症性疾患および自己免疫疾患の例としては、呼吸器疾患、例えば、喘息(アレルゲン誘発型喘息反応を含む)、嚢胞性繊維症、気管支炎(慢性気管支炎を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性経肺炎症、鼻炎および上気道炎症性障害(URID)、ベンチレーター誘発型肺損傷、珪肺症、肺サルコイドーシス、特発性肺線維症、気管支肺異形成、関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、骨関節炎、感染性関節炎、乾癬性関節炎、外傷性関節炎、風疹関節炎、ライター症候群、痛風性関節炎および人工器官関節機能不全、痛風、急性滑膜炎、脊椎炎および非関節炎症症状、例えば、椎間板ヘルニア/破損椎間板/脱出椎間板症候群、粘液嚢炎、腱炎、腱滑膜炎、結合組織炎症候群ならびに靭帯捻挫および限局性筋骨格損傷に随伴する他の炎症性疾患、胃腸管の炎症性疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、憩室炎、クローン病、炎症性腸疾患、過敏性大腸症候群および胃炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、硬皮症、自己免疫性外分泌腺症、自己免疫性脳脊髄炎、糖尿病、腫瘍血管形成および転移、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、腎癌、卵巣癌、胃癌、子宮癌、膵臓癌、肝癌、口腔癌、喉癌および前立腺癌をはじめとする癌、黒色腫、急性白血病および慢性白血病、歯槽膿漏症、神経変性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、筋変性、鼡径ヘルニア、網膜変性、糖尿病性網膜症、黄斑変性、眼球炎症、骨吸収疾患、骨粗鬆症、大理石骨病、移植片対宿主反応、同種異系移植片拒絶反応、敗血症、内毒素血症、毒素性ショック症候群、結核、通常型間質性器質化肺炎および特発性器質化肺炎、細菌性髄膜炎、全身性悪液質、感染または悪性腫瘍続発性悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)続発性悪液質、マラリア、ハンセン病、皮膚リーシュマニア症、ライム病、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎線維症、肝臓線維症、膵臓炎、肝炎、子宮内膜症、疼痛、例えば、炎症および/または外傷に伴う疼痛、皮膚の炎症性疾患、例えば、皮膚炎、皮膚病、皮膚潰瘍、乾癬、湿疹、全身性脈管炎、血管性認知症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、再潅流傷害、プラーク石灰化、心筋炎、動脈瘤、卒中、肺高血圧症、左心室リモデリング、および心不全が挙げられる。
【0072】
重要な主たる疾患としては、COPDおよび呼吸器管の炎症性疾患、ならびに関節疾患および血管疾患が挙げられる。
【0073】
治療に関する本明細書の記載が所定の疾患の予防並びに治療にまで及ぶことは、当業者には明らかであろう。
【0074】
従って、本発明のさらなる態様として、薬剤で使用するための式(I)の化合物またはその生理学上許容可能な誘導体を提供する。
【0075】
本発明の別の態様によれば、炎症性疾患または自己免疫疾患治療用薬剤の製造における式(I)の化合物またはその生理学上許容可能な誘導体の使用を提供する。
【0076】
また、さらなる態様または代替の態様では、自己免疫疾患または炎症性疾患に罹患しているか、または罹患しやすいヒトまたは動物の被験体の治療方法であって、前記ヒトまたは動物被験体に、有効量の式(I)の化合物またはその生理学上機能的な誘導体を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0077】
本発明による化合物は、任意の都合のよい方法で投与用に製剤化することができる。従って、本発明はその範囲内に、式(I)の化合物またはその生理学上許容可能な誘導体を、所望の場合、1種または複数の生理学上許容可能な希釈剤または担体とともに含む医薬組成物も包含する。
【0078】
さらにまた、それらの成分を混合することを含んでなる、かかる医薬製剤の調製方法も提供する。
【0079】
本発明による化合物は、例えば、経口投与、吸入投与、鼻腔内投与、局所投与、口腔内投与、非経口投与、または直腸内投与用に、好ましくは経口投与用に製剤化することができる。
【0080】
経口投与用の錠剤およびカプセルは、慣用の添加剤、例えば結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、デンプン粘液、セルロース、またはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、またはソルビトール;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、またはシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン、クロスカルメロースナトリウム、またはデンプングリコール酸ナトリウム;あるいは湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを含み得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングすることができる。経口液体製剤は、例えば、水性または油状物性の懸濁液、溶液、乳剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であってよい。あるいは、使用前に水または他の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することができる。かかる液体製剤は、慣用の添加剤、例えば沈澱防止剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、または水素化食用脂;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアラビアゴム;非水性ビヒクル(食用油状物を含み得る)、例えば、アーモンド油状物、精製ヤシ油状物、油状物状エステル、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;あるいは保存剤、例えば、メチルまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸が含まれ得る。これらの調製物には、必要に応じて、緩衝塩、着香剤、着色剤および/または甘味剤(例えばマンニトール)も含み得る。
【0081】
局所投与用の本発明による化合物は、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤またはローション剤として、あるいは経皮貼布剤として製剤化することができる。かかる組成物は、例えば、好適な粘稠化剤、ゲル化剤、乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤および/または着色剤を添加して、水系基剤または油状物系基剤と一緒に製剤化することができる。
【0082】
ローション剤は水系基剤または油状物系基剤を用いて製剤化することができるが、一般には、1種または複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、粘稠化剤または着色剤も含有し得る。またローション剤は保存剤を含有していてもよい。
【0083】
口腔内投与では、本組成物は慣用の方法で製剤化した錠剤またはトローチ剤の形態であってよい。
【0084】
また本化合物は、ココアバターまたは他のグリセリド等の慣用の坐剤用基剤を含有する坐剤としても製剤化することができる。
【0085】
本発明による化合物は、ボーラス注射または連続注入による非経口投与用として製剤化することもでき、例えば、アンプル、バイアル、少量輸液、または予充填注射器としての単位投与形態で、あるいは追加保存剤が入った多回投与容器で提供することができる。本組成物は、水性ビヒクルまたは非水性ビヒクルに溶解した溶液、懸濁液または乳剤などの形態であってよく、酸化防止剤、バッファー、抗菌剤、および/または等張化剤等の製剤化剤(formulatory agent)を含有していてもよい。あるいは、本有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、殺菌済みの発熱物質非含有水)を用いて構成することを目的とした粉末形態であってよい。本乾燥固形物形態は、殺菌済み粉末を無菌的に個々の滅菌容器に充填することによって、あるいは無菌液を無菌的に各容器に充填して凍結乾燥することによって調製することができる。
【0086】
また本発明による医薬組成物は、他の治療薬、例えば、抗炎症剤(コルチコステロイド等(例えば、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、もしくはブデソニド)またはNSAID(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、PDE-4阻害剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、CCR-3アンタゴニスト、iNOS阻害剤、トリプターゼ阻害剤およびエラスターゼ阻害剤、β-2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシン2aアゴニスト))、またはβアドレナリン作動薬(例えば、サルメテロール、サルブタモール、ホルモテロール、フェノテロールもしくはテルブタリンおよびそれらの塩)、または抗感染薬(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬)と組み合わせて用いることができる。
【0087】
本発明の化合物を、通常吸入または鼻腔経路によって投与される他の治療薬と組み合わせて投与する場合、その得られる医薬組成物は吸入または鼻腔経路により投与され得ることは理解されよう。
【0088】
本発明の化合物は、例えば、0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜25mg/kg体重、さらに好ましくは0.3〜5mg/kg体重の量で投与するのが好都合である。本化合物は、全日用量に等しくなるよう1日2回以上投与することができる。正確な用量は、当然、患者の年齢および症状、並びに選択した特定の投与経路に応じて変わるが、最終的には担当医師の判断による。
【0089】
本発明による化合物を上述の用量範囲内で投与する場合、毒性作用はないものと思われる。
【0090】
本発明の化合物は、以下のアッセイに従ってin vitro活性について試験することができる。
【0091】
MMP-12アッセイで用いられる蛍光性ペプチド基質は、FAM-Gly-Pro-Leu-Gly-Leu-Phe-Ala-Arg-Lys(TAMRA)である。式中、FAMはカルボキシフルオレセインを表し、TAMRAはテトラメチルローダミンを表す。MMP12触媒ドメイン(残基106〜268)タンパク質は、大腸菌内で不溶性封入体の形態で発現させ、変性条件(8Mの塩酸グアニジン)下、濃縮溶液中に保管した。酵素は、アッセイ反応開始してから直接稀釈によりin situで活性型へリフォールディングした。反応液51μLを、NUNC(商標)の黒色で正方形の384ウェルプレート(各ウェルは、50mM HEPES、pH 7.5、150mM NaCl、10mM CaCl2、1μM ZnAc、0.6mM CHAPS、および2% DMSOに溶解した2μMの基質、20nMの酵素および0.001〜100μMの阻害剤を含有する)に注入する。ポジティブコントロールのウェルは阻害剤を含んでいない。ネガティブコントロールのウェルは、EDTAクエンチングを事前に施すか(下記を参照されたい)、または酵素を除くことにより行なう。室温にて120分間、反応液をインキュベートし、次いで、100mM EDTAを15μL添加することによってクエンチングする。各ウェル中の生成物形成は、Molecular Devices Acquestを用いて蛍光を測定することにより定量する。励起波長は485nMで設定し、発光波長は530nMである。IC50値は、まず、各阻害剤濃度における阻害パーセント(%I)((%I=100*(1-(I-C2)(C1-C2))(式中、C1はポジティブコントロールの平均値であり、C2はネガティブコントロールの平均値である)を算出し、次いで、次式:%I=A+((B-A)(1+((C/[I]^D)))(式中、Aは下方漸近線であり、Bは上方漸近線であり、CはIC50値であり、Dはスロープファクターである)に、%I対阻害剤濃度[I]データを挿入することによって取得した。このアッセイで試験したところ、実施例1〜12の化合物は、IC50が100ミクロモル未満であった。
【実施例】
【0092】
本発明を以下の実施例を参照することにより説明するが、本発明がこれらに限定されるものと解釈すべきではない。
【0093】
一般的な実験の詳細
LC/MSデータは下記の条件下で取得した:
・カラム:3.3cm×4.6mm ID、3μm ABZ+PLUS
・流速:3ml/分
・注入容量:5μl
・温度:室温
・UV検出範囲:215〜330nm
・溶媒:A:0.1% ギ酸+10mM 酢酸アンモニウム
B:95% アセトニトリル+0.05% ギ酸
・勾配:時間 A% B%
0.00 100 0
0.70 100 0
4.20 0 100
5.30 0 100
5.50 100 0
1H NMRスペクトルは、Bruker-Spectrospin Ultrashield 400分光光度計にて400MHzで得た。
【0094】
実施例1:5-ビフェニル-4-イル-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシペンタン酸
【化18】

【0095】
フタルイミドカリウム(8.8mg, 60μmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジメチルホルムアミド(0.5mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル5-(4-ビフェニルイル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)-2-{2-[(メチルスルホニル)オキシ]エチル}ペンタノエート(28.4mg, 50μmol)の撹拌溶液に一度に加えた。得られた溶液を80℃で1時間45分間加熱し、次いで室温まで冷却した。その揮発成分を蒸発させ、残渣をジクロロメタン(0.5mL)にとった。トリフルオロ酢酸(0.5mL)を一度に加え、得られた溶液を室温にて、1時間撹拌した。その揮発成分を蒸発させ、残渣を質量誘導(mass directed)自動分取HPLCにより精製し、白色固形物として(6.0mg, 27%)表題化合物を得た。LC/MS:3.43分;z/e 444, 計算値(M+1)444。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.85(2H), 7.70(2H), 7.55(1H), 7.50(1H), 7.45(2H), 7.30(1H), 7.25(4H), 3.85(3H), 2.95(1H), 2.75(1H), 2.60(1H), 2.20(1H), 2.05(1H), 1.90(2H)。
【0096】
実施例2:5-ビフェニル-4-イル-3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]ペンタン酸
【化19】

【0097】
実施例1と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:2.96分;z/e 423, 計算値(M+1)423。
【0098】
実施例3:5-ビフェニル-4-イル-3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]ペンタン酸
【化20】

【0099】
実施例1と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:2.98分;z/e 423, 計算値(M+1)423。
【0100】
実施例4:5-(4'-アセチルビフェニル-4-イル)-3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]ペンタン酸
【化21】

【0101】
ジメチルホルムアミド(0.5mL)に溶解した3-ヒドロキシ-5-(4-ヨードフェニル)-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロ-1(2H)-ピリミジニル)エチル]ペンタン酸(10mg, 21μmol)の溶液を、Smithマイクロ波反応バイアルに入れたp-アセチルベンゼンボロン酸(4.0mg, 25μmol)およびfibrecat FC1001(2.71% Pd;8.3mg, 2.0μmol)の混合物に一度に加えた。炭酸ナトリウム水溶液(1.0M;53μL, 53μmol)を添加し、バイアルに蓋をした。この粗製反応混合物をSmithシンセサイザーマイクロ波リアクターを用いて15分間150℃にて加熱した。冷却してバイアルの蓋を開け、内容物をWhatman 5μM濾過チューブを通して濾過し、メタノールで濾過ケーキを洗浄した(2×1mL)。濾液を蒸発させ、得られた残渣を質量誘導(mass directed)自動分取逆相HPLCにより精製し、白色固形物として表題化合物(6.0mg, 61 %)を得た。LC/MS:2.82分;z/e 465, 計算値(M+1)465。H NMR(400 MHz:DMSO-d6):8.00(2H), 7.80(2H), 7.60(4H), 7.30(2H), 6.65(1H), 3.70(3H), 3.10(3H), 2.80(1H), 2.60(2H), 2.30(1H), 1.85(2H), 1.60(1H)。
【0102】
実施例5:3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]-5-(4-ピリミジン-5-イルフェニル)ペンタン酸
【化22】

【0103】
実施例4と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:2.27分;z/e 425, 計算値(M+1)425。
【0104】
実施例6:3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]-5-[4'-(トリフルオロメトキシ)ビフェニル-4-イル]ペンタン酸
【化23】

【0105】
実施例4と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:3.28分;z/e 506, 計算値(M+1)506。
【0106】
実施例7:5-[4-(1-ベンゾフラン-2-イル)フェニル]-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシペンタン酸
【化24】

【0107】
ジメチルホルムアミド(1.0mL)に溶解した2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-(4-ヨードフェニル)ペンタン酸(25mg, 50μmol)の溶液を、Smithマイクロ波反応バイアルに入れた-ベンゾフラン-2-イルボロン酸(11mg, 70μmol)およびfibrecat FC1001(2.71% Pd;20mg, 5.0μmol)の混合物に一度に加えた。炭酸セシウム(41.0mg, 125μmol)を添加し、バイアルに蓋をした。この粗製反応混合物を、Smithシンセサイザーマイクロ波リアクターを用いて15分間150℃にて加熱した。冷却してバイアルの蓋を開け、内容物について、メタノール/ジクロロメタン(10:90;10mL)と塩酸水溶液(2.0M;10mL)との間の分配処理を行った。有機相を分離し、Whatman 5μM濾過チューブを通して濾過し、メタノールで濾過ケーキを洗浄した(2×1mL)。濾液を蒸発させ、得られた残渣を質量誘導(mass directed)自動分取逆相HPLCにより精製し、淡黄色の固形物として表題化合物(3.0mg, 12%)を得た。LC/MS:3.69分;z/e 484, 計算値(M+1)484。1H NMR(400 MHz:DMSO-d6):7.80(6H), 7.65(2H), 7.30(5H), 3.65(1H), 3.60(2H), 2.75(1H), 2.55(1H), 2.40(1H メジャー), 2.25(1H マイナー), 1.85(2H), 1.65(2H)。
【0108】
実施例8:2-[2-(1,3-ドキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-[4'-(トリフルオロメトキシ)ビフェニル-4-イル]ペンタン酸
【化25】

【0109】
実施例7と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:3.72分;z/e 528, 計算値(M+1)528。
【0110】
実施例9:2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-[4'-(メチルチオ)ビフェニル-4-イル]ペンタン酸
【化26】

【0111】
実施例7と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:3.61分;z/e 490, 計算値(M+1)490。
【0112】
実施例10:5-(4'-シアノビフェニル-4-イル)-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシペンタン酸
【化27】

【0113】
実施例7と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:3.34分;z/e 469, 計算値(M+1)469。
【0114】
実施例11:5-(4'-アセチルビフェニル-4-イル)-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシペンタン酸
【化28】

【0115】
実施例7と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:3.28分;z/e 486, 計算値(M+1)486。
【0116】
実施例12:2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-(4-ピリミジン-5-イルフェニル)ペンタン酸
【化29】

【0117】
実施例7と同様の反応シークエンスによって調製した。LC/MS:2.70分;z/e 446, 計算値(M+1)446。
【0118】
中間体1:4-ブロモメチル-ビフェニル
【化30】

【0119】
四臭化炭素(8.99g, 27.1mmol)およびトリフェニルホスフィン(7.11g, 27.1mmol)を、室温にて、ジクロロメタン(100mL)に溶解したビフェニル-4-イルメタノール(5.00g, 27.1mmol)の撹拌溶液に加えた。室温にて1.5時間、撹拌を継続し、次いでこの溶媒を、減圧下で蒸発させることによって除去した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(1:20 ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、白色固形物として表題化合物(6.37g, 95%)を得た。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.6(4 H), 7.45(4 H), 7.35(1 H), 4.55(2 H)。
【0120】
中間体2:5-ビフェニル-4-イル-3-オキソ-ペンタン酸tert-ブチルエステル
【化31】

【0121】
テトラヒドロフラン(20mL)に溶解したt-ブチルアセトアセテート(1.84mL, 11.1mmol)の溶液を、窒素雰囲気下、0℃にて、テトラヒドロフラン(10mL)に加えた水素化ナトリウム(488mg, 12.2mmol)の撹拌懸濁液に加えた。10分間の撹拌の後、n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M;7.3mL, 11.6mmol)を、2分間かけて滴下して加えた。次いで、撹拌をさらに10分間継続した。テトラヒドロフラン(6mL)に溶解した4-ブロモメチル-ビフェニル(中間体1, 3.00g, 12.2mmol)の溶液を、10分間かけて滴下して加え、得られた溶液を、0℃にて1.5時間撹拌した。6M 塩酸(15mL)を添加した;次いでこの粗製反応混合物を、ジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、次いでこの溶媒を、減圧下で蒸発させた。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(1:20 ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、黄色固形物として表題化合物(1.37g, 38%)を得た。LC/MS:3.78分;z/e 342, 計算値(M+NH4)342。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2 H), 7.50(2 H), 7.43(2 H), 7.32(1 H), 7.25(2 H), 3.34(2 H), 2.95(4 H), 1.45(9 H)。
【0122】
中間体3:tert-ブチル5-ビフェニル-4-イル-2-(2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-オキソペンタノエート
【化32】

【0123】
ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解した5-ビフェニル-4-イル-3-オキソ-ペンタン酸tert-ブチルエステル(13.7g, 42.4mmol)の溶液を、窒素雰囲気下、0℃にて、ジメチルホルムアミド(10mL)に加えた水素化ナトリウム(60%鉱油懸濁液;1.78g, 44.4mmol)の撹拌懸濁液に20分間かけて滴下して加えた。20分間撹拌した後(2-ブロモエトキシ)-t-ブチルジメチルシラン(10.0g, 46.4mmol)を、0℃にて20分間かけて滴下して加え、次いでこの反応物を、2.5時間、70℃まで加熱した。室温まで冷却して、この反応物を、水(5mL)を慎重に添加してクエンチし、次いでその揮発成分を蒸発させた。残渣について、飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)とジクロロメタン(200mL)との間の分配処理を行い、相を分離した。その水相を、ジクロロメタン(3×200mL)で洗浄し、次いで有機相を合わせ、ブライン(200mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、そしてこの溶媒を、蒸発させた。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(10%ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である無色の油状物として表題化合物(12.1g, 59%)を得た。LC/MS:4.70分;z/e 483, 計算値(M+1)483。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2H), 7.50(2H), 7.40(2H), 7.35(1H), 7.25(2H), 3.60(2H), 2.95(3H), 2.20(1H マイナー)2.0(1H メジャー), 1.55(1H), 1.45(11H), 0.85(9H), 0.5(6H)。
【0124】
中間体4:tert-ブチル5-ビフェニル-4-イル-2-(2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-ヒドロキシペンタノエート
【化33】

【0125】
水酸化ホウ素ナトリウム(1.05g, 27.7mmol)を、窒素雰囲気下、0℃にて、メタノール(80mL)に溶解したtert-ブチル5-ビフェニル-4-イル-2-(2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-オキソペンタノエート(12.1g, 25.2mmol)の撹拌溶液に分けて加えた。添加完了後、1.5時間撹拌を継続し、次いでこの反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(80mL)でクエンチした。得られた混合物を、ジエチルエーテル(3×200mL)で抽出し、次いで有機相を合わせ、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、そしてこの溶媒を、蒸発させた。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(10%〜50% ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である無色の油状物として表題化合物(8.47g, 69%)を得た。LC/MS:4.49分;z/e 485, 計算値(M+1)485。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.60(2H), 7.50(2H), 7.45(2H), 3.90(1H マイナー), 3.80(1H マイナー), 3.70(1H メジャー), 3.65(1H メジャー), 3.25(1H マイナー), 3.00(1H メジャー), 2.90(1H), 2.75(1H), 2.60(1H メジャー), 2.55(1H マイナー), 1.90(1H), 1.85(2H), 1.45(10 H), 0.90(9H), 0.5(6H)。
【0126】
中間体5:4-メトキシベンジル2,2,2-トリクロロエタンイミドアート(imidoate)
【化34】

【0127】
4-メトキシベンジル2,2,2-トリクロロエタンイミドアートを、「Preparation of intermediates for the synthesis of discodermolides and their polyhydroxy dienyl lactone derivatives for pharmaceutical use」- WO 0004865に記載されるSmith, Amos B. Iii;Qiu, Yuping;Kaufman, Michael;Arimoto, Hirokazu;Jones, David R.;Kobayashi, Kaoru;Beauchamp, Thomas J.らの方法を用いて調製した。
【0128】
中間体6:1,1-ジメチルエチル5-(4-ビフェニルイル)-2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート
【化35】

【0129】
三フッ化ホウ素エーテラート(8.0μL, 65μmol)を、窒素雰囲気下、0℃にて、テトラヒドロフラン(40mL)に溶解したtert-ブチル5-ビフェニル-4-イル-2-(2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-ヒドロキシペンタノエート(7.88g, 16.3mmol)および4-メトキシベンジル2,2,2-トリクロロエタンイミドアート(6.88g, 24.5mmol)の撹拌溶液に加えた。この反応物を、2時間撹拌を継続したところで、室温まで加熱した。次いで、さらに三フッ化ホウ素エーテラート(8.0μL, 65μmol)の一部を添加し、さらに2時間、室温にて、撹拌を継続した。さらに2回三フッ化ホウ素エーテラート(8.0μL, 65μmol)を加え、次いで、溶媒を蒸発させる前に、室温にて2時間、撹拌を行った。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(5%〜10% ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である淡黄色の油状物として表題化合物(3.39g, 34%)を得た。LC/MS:4.81分;z/e 605, 計算値(M+1)605。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2H), 7.45(4H), 7.35-6.80(7H), 4.50(2H), 3.80(3H), 3.60(3H), 2.95(1H), 2.80(1H), 2.65(1H), 1.85(4H), 1.45(9H), 0.85(9H), 0.5(6H)。
【0130】
中間体7:1,1-ジメチルエチル5-(4-ビフェニルイル)-2-(2-ヒドロキシエチル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート
【化36】

【0131】
テトラ-n-ブチルフッ化アンモニウム(THF中1.0M;6.2mL, 6.2mmol)の溶液を、窒素雰囲気下、0℃にて、テトラヒドロフラン(20mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル5-(4-ビフェニルイル)-2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート(3.39g, 5.61mmol)の撹拌溶液に15分間かけて滴下して加えた。この反応物を、2時間撹拌を継続したところで、室温まで加熱した。その揮発成分を蒸発させ、残渣について、酢酸エチル(100mL)と水(100mL)との間の分配処理を行った。相を分離し、水層を酢酸エチル(3×100mL)で洗浄した。有機層を合わせ、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、そしてこの溶媒を、蒸発させた。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(50%〜75% ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である黄色の油状物として表題化合物(1.6g, 58%)を得た。LC/MS:3.98分;z/e 491, 計算値(M+1)491。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2H), 7.45(4H), 7.30(5H), 6.90(2H), 4.50(2H), 3.80(3H), 3.65(2H), 2.80(2H), 2.65(1H メジャー), 2.05(1H マイナー), 1.85(3H), 1.60-1.35(11H)。
【0132】
中間体8:1,1-ジメチルエチル5-(4-ビフェニルイル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)-2-{2-[(メチルスルホニル)オキシ]エチル}ペンタノエート
【化37】

【0133】
塩化メタンスルホニル(64μL, 0.83mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジクロロメタン(2mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル5-(4-ビフェニルイル)-2-(2-ヒドロキシエチル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート(368mg, 0.751mmol)およびトリエチルアミン(15.4mg, 209μL, 1.52mmol)の撹拌溶液に一度に加えた。室温にて、1時間、撹拌した後、この粗製混合物について、飽和クエン酸水溶液(20mL)とジクロロメタン(20mL)との間の分配処理を行った。相を分離し、有機層を蒸発させ、ジアステレオマーの混合物である黄色の油状物として表題化合物(409mg, 79%)を得た。LC/MS:4.08分;z/e 586, 計算値(M+1)586。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.50(6H), 7.25(4H), 7.15(1H), 6.90(2H), 4.50(2H), 4.25(2H), 3.80(3H), 3.75(1H), 2.95(3H), 2.90-2.50(3H), 2.05(2H), 1.95-1.65(2H), 1.55-1.35(9H)。
【0134】
中間体9:5-(4-ヨード-フェニル)-3-オキソ-ペンタン酸tert-ブチルエステル
【化38】

【0135】
t-ブチルアセトアセテート(1.5mL, 9.2mmol)を、窒素雰囲気下、0℃にて、テトラヒドロフランに加えた水素化ナトリウム(60%鉱油懸濁液;400mg, 10.0mmol)の撹拌懸濁液に2分間かけて滴下して加えた。10分間撹拌した後、ヘキサンに溶解したn-ブチルリチウム(1.6M;6.0mL, 9.6mmol)を加え、次いでさらに10分間撹拌を継続した。得られた溶液をテトラヒドロフラン(4mL)に溶解した4-ヨードベンジル臭化物(2.97g, 10.0mmol)の溶液を滴下して処理し、次いで室温まで加熱した。この反応物を、室温にて40分間撹拌し、次いで、6M HCl(5mL)でクエンチした。得られた混合物を、ジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、次いでこの溶媒を、減圧下で蒸発させた。残渣をシリカゲルのフラッシュ・クロマトグラフィーにかけ(1:20〜1:10 酢酸エチル/シクロヘキサン)黄色の油状物として表題化合物(1.88g, 54%)を得た。LC/MS:3.66分;z/e 375, 計算値(M+1)375。1H NMR(400 MHz;CDCl3):7.6(2 H), 6.93(2 H), 3.33(2 H), 2.85(4 H), 1.45(9 H)。
【0136】
中間体10:1,1-ジメチルエチル2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-5-(4-ヨードフェニル)-3-オキソペンタノエート
【化39】

【0137】
ジメチルホルムアミド(25mL)に溶解した5-(4-ヨード-フェニル)-3-オキソ-ペンタン酸tert-ブチルエステル(10.0g, 26.7mmol)の溶液を、窒素雰囲気下、0℃にて、ジメチルホルムアミド(25mL)に加えた水素化ナトリウム(60%鉱油懸濁液;1.12g, 28.0mmol)の撹拌懸濁液に20分間かけて滴下して加えた。20分間の撹拌の後-(2-ブロモエトキシ)-t-ブチルジメチルシラン(7.03g, 6.31mL, 29.4mmol)を、0℃にて20分間かけて滴下して加え、次いでこの反応物を、3.5時間、70℃まで加熱した。室温まで冷却して、この反応物を、水(2mL)を慎重に加えてクエンチし、次いでその揮発成分を蒸発させた。残渣について、飽和塩化アンモニウム水溶液(150mL)とジクロロメタン(150mL)との間の分配処理を行い、そして相を分離した。その水相を、ジクロロメタン(3×150mL)で洗浄し、次いで有機相を合わせ、ブライン(150mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、そしてこの溶媒を、蒸発させた。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(25% ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である無色の油状物として表題化合物(10.0g, 70%)を得た。LC/MS:4.55分;z/e 533, 計算値(M+1)533。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2H), 6.90(2H), 3.55(3H), 2.85(4H), 2.15(2Hマイナー), 1.95(2Hメジャー), 1.40(9H), 0.85(9H), 0.5(6H)。
【0138】
中間体11:1,1-ジメチルエチル2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-ヒドロキシ-5-(4-ヨードフェニル)ペンタノエート
【化40】

【0139】
水酸化ホウ素ナトリウム(0.59g, 15.6mmol)を、窒素雰囲気下、0℃にて、メタノール(100mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-5-(4-ヨードフェニル)-3-オキソペンタノエート(7.55g, 14.2mmol)の撹拌溶液に分けて加えた。添加完了後、1.5時間撹拌を継続し、次いでこの反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)でクエンチした。得られた混合物を、ジエチルエーテル(3×200mL)で抽出し、次いで有機層を合わせ、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、そしてこの溶媒を、蒸発させた。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(25%〜50% ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である無色の油状物として表題化合物(5.14g, 68%)を得た。LC/MS:4.72分;z/e 535, 計算値(M+1)535。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2H), 6.95(2H), 3.85-3.55(3H), 3.30(1H マイナー), 3.00(1H メジャー), 2.80(1H), 2.65(1H), 2.55(1H メジャー), 2.50(1H マイナー), 1.95-1.65(4H), 1.45(9H), 0.90(9H), 0.5(6H)。
【0140】
中間体12:1,1-ジメチルエチル2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート
【化41】

【0141】
三フッ化ホウ素エーテラート(5.0μL, 39μmol)を、窒素雰囲気下、0℃にて、テトラヒドロフラン(40mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-3-ヒドロキシ-5-(4-ヨードフェニル)ペンタノエート(5.14g, 9.63mmol)および4-メトキシベンジル2,2,2-トリクロロエタンイミドアート(4.05g, 14.4mmol)の撹拌溶液に加えた。この反応物を、2時間撹拌を継続したところで、室温まで加熱した。次いで、さらに三フッ化ホウ素エーテラート(5.0μL, 39μmol)の一部を添加し、さらに2時間、室温にて、撹拌を継続した。溶媒を蒸発させる前に、三フッ化ホウ素エーテラート(5.0μL, 39μmol)をさらに2回加え、次いで、室温にて2時間、撹拌した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(0%〜10% ジエチルエーテル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である黄色の油状物として表題化合物(4.14g, 66%)を得た。LC/MS:4.78分;z/e 655, 計算値(M+1)655。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2H), 7.25(2H), 6.90(2H), 6.80(2H), 4.55(1H), 4.35(1H), 3.80(3H), 3.65(1H), 3.55(1H), 2.95(1H メジャー), 2.80(1H マイナー), 2.70(1H), 2.55(1H), 1.95-1.60(4H), 1.45(9H), 0.85(9H), 0.5(6H)。
【0142】
中間体13:1,1-ジメチルエチル2-(2-ヒドロキシエチル)-5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート
【化42】

【0143】
テトラ-n-ブチルフッ化アンモニウム(THF中1.0M;7.0mL, 7.0mmol)の溶液を、窒素雰囲気下、0℃にて、テトラヒドロフラン(25mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル2-(2-{[(1,1-ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)-5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート(4.14g, 6.33mmol)の撹拌溶液に15分間かけて滴下して加えた。この反応物を、2時間撹拌を継続したところで、室温まで加熱した。その揮発成分を蒸発させ、残渣について、酢酸エチル(100mL)と水(100mL)との間の分配処理を行った。相を分離し、水相を酢酸エチル(3×100mL)で洗浄した。有機層を合わせ、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、そしてこの溶媒を、蒸発させた。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(25%〜50% 酢酸エチル:シクロヘキサン)、ジアステレオマーの混合物である黄色の油状物として表題化合物(2.87g, 84%)を得た。LC/MS:3.86分;z/e 541, 計算値(M+1)541。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55-7.25(4H), 6.90-6.75(4H), 4.55-4.35(2H), 3.80(3H), 3.65(3H), 2.90-2.45(3H), 1.90-1.60(4H), 1.35(9H)。
【0144】
中間体14:1,1-ジメチルエチル5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)-2-{2-[(メチルスルホニル)オキシ]エチル}ペンタノエート
【化43】

【0145】
塩化メタンスルホニル(315μL, 5.91mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジクロロメタン(10mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル2-(2-ヒドロキシエチル)-5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート(2.00g, 3.70mmol)およびトリエチルアミン(1.03mL, 7.39mmol)の撹拌溶液に一度に加えた。室温にて、1時間、撹拌した後、この粗製混合物について、飽和クエン酸水溶液(40mL)とジクロロメタン(40mL)との間の分配処理を行った。相を分離し、有機層を蒸発させ、ジアステレオマーの混合物である黄色の油状物として表題化合物(2.3g, 100%)を得た。LC/MS:4.00分;z/e 636, 計算値(M+18)636。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.60-7.20(4H), 6.90-6.75(4H), 4.60-4.20(5H), 3.80(3H), 2.95(3H), 2.90-2.45(3H), 2.10-1.70(4H), 1.40(9H)。
【0146】
中間体15:1,1-ジメチルエチル2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート
【化44】

【0147】
フタルイミドカリウム(0.33g, 2.2mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジメチルホルムアミド(6mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)-2-{2-[(メチルスルホニル)オキシ]エチル}ペンタノエート(1.15g, 1.86mmol)の撹拌溶液に一度に加えた。得られた溶液を、80℃にて1時間45分間加熱し、次いで室温まで冷却した。その揮発成分を蒸発させ、残渣について、ジクロロメタン(50mL)と水(50mL)との間の分配処理を行った。層を分離し、有機相を蒸発させた乾燥させた。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(50% 酢酸エチル:シクロヘキサン)、ジアステレ異性体の混合物である黄色の油状物として表題化合物(0.26g, 21%)を得た。LC/MS:4.29分;z/e 687, 計算値(M+18)687。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.85(2H), 7.70(2H), 7.55-7.20(4H), 6.90-6.75(4H), 4.55-4.30(2H), 3.80(3H), 3.75(1H), 3.65(2H), 2.80-2.45(3H), 2.10-1.50(4H), 1.40(9H)。
【0148】
中間体16:1,1-ジメチルエチル5-(4-ヨードフェニル)-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロ-1(2H)-ピリミジニル)エチル]-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート
【化45】

【0149】
3-メチル-2,4(1H,3H)-ピリミジンジオン(0.28g, 2.2mmol)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジメチルホルムアミド(3mL)に加えた水素化ナトリウム(鉱油中60%懸濁液;80mg, 2.0mmol)の撹拌懸濁液に一度に加えた。得られた懸濁液を、5分間撹拌し、次いでジメチルホルムアミド(3mL)に溶解した1,1-ジメチルエチル5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)-2-{2-[(メチルスルホニル)オキシ]エチル}ペンタノエート(1.15g, 1.86mmol)の溶液を、一度に加えた。得られた溶液を1時間45分間、80℃にて加熱し、次いで室温まで冷却した。その揮発成分を蒸発させ、残渣について、ジクロロメタン(50mL)と水(50mL)との間の分配処理を行った。層を分離し、有機相を蒸発させ、乾燥させた。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(10% メタノール:ジクロロメタン)、ジアステレオマーの混合物である黄色の油状物として表題化合物(0.33g, 27%)を得た。LC/MS:3.87分;z/e 649, 計算値(M+1)649。 1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.55(2H), 7.25(2H), 7.10(1H), 6.90-6.75(4H), 5.70(1H), 4.40(2H), 3.85-3.60(6H), 3.75-2.45(3H), 2.00-1.70(4H), 1.40(9H)。
【0150】
中間体17 2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-(4-ヨードフェニル)ペンタン酸
【化46】

【0151】
トリフルオロ酢酸(5mL)を、窒素雰囲気下、室温にて、ジクロロメタン(5mL)に溶解した、1,1-ジメチルエチル2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-5-(4-ヨードフェニル)-3-({[4-(メチルオキシ)フェニル]メチル}オキシ)ペンタノエート(261mg, 0.390mmol)の撹拌溶液に一度に加えた。得られた溶液を45分間撹拌し、次いでその揮発成分蒸発させ、ジアステレオマーの混合物である黄色固形物として表題化合物(192mg, 100%)を得た。LC/MS:3.32分;z/e 493, 計算値(M+1)493。1H NMR(400 MHz:CDCl3):7.85(4H), 7.55(2H), 6.95(2H), 4.90(1H), 3.80-3.50(3H), 2.70-2.20(3H), 1.85(2H), 1.55(2H)。
【0152】
中間体18:3-ヒドロキシ-5-(4-ヨードフェニル)-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロ-1(2H)-ピリミジニル)エチル]ペンタン酸
【化47】

【0153】
中間体17と同様の反応によって調製した。LC/MS:2.85分;z/e 473, 計算値(M+1)473。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中:
Aは、結合、C1-6アルキルまたはCH=CH-C1-4アルキルを表し;
Bは、結合、O、S、SO、SO2、CO、CR7R8、CO2R14、CONR14R15、N(COR14)(COR15)、N(SO2R14)(COR15)、NR14R15を表し;
Dは、結合、またはC1-6アルキルを表し;
Eは、置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表し;
Qは、場合により置換された5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環を表し;
Xは、O、S、SO、SO2、CO、CNR5、CNOR5、CNNR5R6、NR11またはCR7R8を表し;
Yは、CR5OR11、CR5SR11、NOR5、CR5NR6R11、SO、SO2、CO、CNR5、CNOR5またはCSを表し;
R1およびR1’は、互いに独立して、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R2は、CO2R12、CH2OR12またはCONR12R13、CONR12OR13、NR12COR13、SR12、PO(OH)2、PONHR12またはSONHR12を表し;
R3は、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R4は、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリールを表し;
Zは、結合、CH2、O、S、SO、SO2、NR5、OCR5R6、CR9R10Oを表し、あるいはZ、R4およびQは、一緒になって、場合により置換された縮合三環式基を形成し;
R5およびR6は、互いに独立して、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R7およびR8は、互いに独立して、H、ハロ、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R9およびR10は、互いに独立して、H、場合によりハロ、シアノ、OR11またはNR6R11によって置換されたC1-6アルキル、場合によりハロ、シアノ、OR11またはNR6R11によって置換されたC1-4アルキルアリール、OR11を表し、あるいはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、R9およびR10は、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を場合によりさらに含む複素環基を形成し;
R11は、H、C1-6アルキル、C1-4アルキルアリールまたはCOR5を表し;
R12およびR13は互いに独立して、H、C1-3アルキル、C1-3アルキルアリールまたはC1-3アルキルヘテロアリールを表し、あるいはそれらが結合する官能基と一緒になって、R12およびR13は、C、O、NおよびSから選択される1個または複数の原子を場合によりさらに含む複素環基を形成し;
R14およびR15は互いに独立して、H、C1-6アルキル、C1-4アルキルアリールまたはC1-4アルキルヘテロアリールを表し、あるいはそれらが結合する官能基と一緒になって、R14およびR15は、C、O、NおよびSから選択される1個または複数の原子をさらに含んでもよい複素環または縮合複素環基を形成する)
で表される化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体。
【請求項2】
式(Ia)または(Ib):
【化2】

(式中:
Tは、存在しないか、またはO、S、NR16もしくはCR16R17を表し;
---は、場合により結合を表し;
G1およびG2は、互いに独立して、CHまたはNを表し;
Aは、結合、C1-6アルキルまたはCH=CH-C1-4アルキルを表し;
Bは、結合、O、S、SO、SO2、CO、CR7R8、CO2R14、CONR14R15、N(COR14)(COR15)、N(SO2R14)(COR15)、NR14R15を表し;
Dは、結合、またはC1-6アルキルを表し;
Eは、置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表し;
R16は、H、C1-6アルキルまたはC1-4アルキルアリールを表し;
R17は、HまたはC1-6アルキルを表し;
R18およびR19は、互いに独立して、ハロ、シアノ、ニトロ、OR16、SR16、COR16、NR17COR16、CONR16R17、場合により置換されたフェノキシまたは場合によりOR16によって置換されたC1-6アルキルを表し;
mおよびnは、互いに独立して、0または整数1、2もしくは3を表す)
で表される化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体。
【請求項3】
式(Ic):
【化3】

(式中、
Aは、結合、C1-6アルキルまたはCH=CH-C1-4アルキルを表し;
Bは、結合、O、S、SO、SO2、CO、CR7R8、CO2R14、CONR14R15、N(COR14)(COR15)、N(SO2R14)(COR15)、NR14R15を表し;
Dは、結合、またはC1-6アルキルを表し;
Eは、置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを表し;
R18およびR19は、互いに独立して、ハロ、シアノ、ニトロ、OR16、SR16、COR16、NR17COR16、CONR16R17、場合により置換されたフェノキシまたは場合によりOR16によって置換されたC1-6アルキルを表し;
mおよびnは、互いに独立して、0または整数1、2もしくは3を表す)
で表される請求項1に記載の化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体。
【請求項4】
式(Id):
【化4】

(式中、R20は、フェニル、ベンゾフラリル(benzofuraryl)およびピリミジニルから選択される置換もしくは非置換のアリールまたはヘテロアリール基を表し;かつ以下の式
【化5】

は、少なくとも一つの窒素原子を含む置換アリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリール基を表す)
で表される請求項1に記載の化合物、ならびにその生理学上機能的な誘導体。
【請求項5】
以下から選択される請求項1または請求項2に記載の化合物:
5-ビフェニル-4-イル-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イルエチル]-3-ヒドロキシペンタン酸;
5-ビフェニル-4-イル-3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,6-ジオキソ-3,6-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]ペンタン酸;
5-ビフェニル-4-イル-3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]ペンタン酸;
5-(4'-アセチルビフェニル-4-イル)-3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]ペンタン酸;
3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]-5-(4-ピリミジン-5-イルフェニル)ペンタン酸;
3-ヒドロキシ-2-[2-(3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)エチル]-5-[4'-(トリフルオロメトキシ)ビフェニル-4-イル]ペンタン酸;
5-[4-(1-ベンゾフラン-2-イル)フェニル]-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシペンタン酸;
2-[2-(1,3-ドキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-[4'-(トリフルオロメトキシ)ビフェニル-4-イル]ペンタン酸;
2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-[4'-(メチルチオ)ビフェニル-4-イル]ペンタン酸;
5-(4'-シアノビフェニル-4-イル)-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシペンタン酸;
5-(4'-アセチルビフェニル-4-イル)-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシペンタン酸;および
2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)エチル]-3-ヒドロキシ-5-(4-ピリミジン-5-イルフェニル)ペンタン酸。
【請求項6】
薬剤に使用するための請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
自己免疫疾患または炎症性疾患に罹患しているか、または罹患しやすいヒトまたは動物被験体の治療方法であって、該ヒトまたは動物被験体に有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
炎症性疾患または自己免疫疾患の治療用薬剤の製造における請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物および製薬上許容可能なそれらの担体、ならびに場合により1個または複数の他の治療薬を含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に定義した式(I)で表される化合物の調製方法であって、以下:
(A)式(I)(式中、Zは結合を表す)の化合物を調製するために、式(II):
【化6】

(式中、R1、R1’、R2、R3、R3’、A、B、D、E、Q、XおよびYは、式(I)について前に定義したとおりであり、かつLは、脱離基を表す)で表される化合物を、基R4を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;
(B)式(I)(式中、Zは、O、S、SO、SO2、またはNR5を表す)の化合物を調製するために、式(III):
【化7】

(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、A、B、DおよびEは式(I)について前に定義したとおりであり、かつTは、OH、SHまたはNR6Hを表す)で表される化合物を、基R4を導入するのに好適な試薬と反応させ、続いてTがSHの場合には、スルフィドを場合により酸化してスルホキシドまたはスルホンにするステップ;
(C)式(I)(式中、Zは、OCR4R5を表す)の化合物を調製するために、式(IV):
【化8】

(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、R5、R6、A、B、DおよびEは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基R4-Oを導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;
(D)式(I)(式中、Zは、CR5R6Oを表す)の化合物を調製するために、式(V):
【化9】

(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、A、B、DおよびEは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基R4CR5R6を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;
(E)式(I)(式中、Zは、CH2を表す)の化合物を調製するために、式(VI):
【化10】

(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、A、B、DおよびEは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基R4CH2を導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;
(F)式(I)の化合物を調製するために、式(VII):
【化11】

(式中、Q、X、Y、R1、R1’、R2、R3、R4、A、BおよびDは式(I)について前に定義したとおりである)で表される化合物を、基Eを導入するのに好適な試薬と反応させるステップ;あるいは
(G)ステップ(A)〜(F)から選択されたステップを実施して、次いで、1個または複数の官能基を相互変換するステップ、
を含む、前記方法。

【公開番号】特開2012−107031(P2012−107031A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12663(P2012−12663)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2006−525794(P2006−525794)の分割
【原出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】