マトリックスメタロプロテイナーゼ11ワクチン
マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を過剰発現する腫瘍および癌を治療するためのワクチンにおいて使用するための、MMP−11もしくはストロメライシン−3(ST−3)またはMMP−11をコードする核酸を含む組成物を記載する。特定の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで、MMP−11および該免疫増強要素をコードするコドンはヒト細胞における該融合ポリペプチドの発現の増強のために最適化されている。他の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む。該組成物は、単独で、または他の腫瘍関連抗原に対するワクチンならびに放射線療法および化学療法のような通常の療法と共に相乗的に使用されうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を過剰発現する腫瘍および癌を治療するためのワクチンにおいて使用するための、MMP−11もしくはストロメライシン−3(ST−3)またはMMP−11をコードする核酸を含む組成物に関する。特定の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで、MMP−11および該免疫増強要素をコードするコドンはヒト細胞における該融合ポリペプチドの発現の増強のために最適化されている。他の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む。該組成物は、単独で、または他の腫瘍関連抗原に対するワクチンならびに放射線療法および化学療法のような通常の療法と共に相乗的に使用されうる。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテイナーゼ−11(MMP−11)またはストロメライシン3(ST3)は、ほとんどではなくとも多数の浸潤性原発性癌および多数のそれらの転移癌において、そしてそれらより稀ではあるが肉腫および他の非上皮性悪性疾患において発現される(Bassetら,Critical Reviews in Oncology/Hematology 26:43−53,(1997)を参照されたい。)。MMP−11発現のレベルの測定は、癌再発の最大のリスクを有する患者を特定するために行われうる。腫瘍内に高レベルのMMP−11 RNAまたはタンパク質を有する患者では、腫瘍内に低レベルのMMP−11 RNAまたはタンパク質を有する患者の場合より再発性乳癌が頻繁に生じたことが示されている。同様に、MMP−11発現は、正常組織と比べて、膵腫瘍において上昇することが判明しており、MMP−11発現のレベルはリンパ節の関与および全体的な生存と強く関連していた(Jonesら,Clin.Cancer Res.10:2832−2845,(2004))。MMP−11 mRNA発現は、非腫瘍組織におけるMMP−11 mRNA発現と比べて結腸癌においても有意に上昇する(Thewesら,Diagn.Mol.Pathol.5:284−290,(1996))。
【0003】
癌の進行におけるMMP−11の役割はいくつかの前臨床観察により実証されている。例えば、MMP−11発現はマウスにおける腫瘍獲得を促進することが示された(Noelら,J Clin Invest 97:1924−1930(1996))。MMP−11は悪性上皮細胞の回遊をパラ分泌の様態で促進することも示されており、該ホーミングは塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)(Mariら,J.Biol.Chem.273:618−626(1998))のような細胞外マトリックス関連因子を要するらしい(Massonら,J.Cell Biol.140:1535−1541(1998))。MMP−11プロテアーゼ活性は、細胞外マトリックスを再構築しそれが微環境因子を放出するのを誘導することにより、癌の進行を調節しうる(Noelら,Oncogene 19:1605−1612(2000))。MMP−11は腫瘍状細胞に対して抗アポトーシスおよび抗壊死効果を及ぼし(Boulayら,Cancer Res.61:2189−2193(2001))、これはその触媒活性により媒介されるらしい(Wuら,J.Cell Biochem.82:549−555(2001))。MMP−11欠損は腫瘍非含有生存(tumor free survival)を増進し、局所または遠位の浸潤を調節することが示されている(Andarawewaら,Cancer Res.63:5844−5849(2003))。胃癌細胞におけるMMP−11 mRNAのノックダウンはインビトロおよびインビボの両方における腫瘍成長を劇的に抑制するらしい(Dengら,Biochem.Biophys.Res.Comm.26:274−281(2005))。MMP−11切断により生じるa1−プロテイナーゼインヒビターの切断産物はナチュラルキラー細胞(NK)に対する腫瘍細胞の感受性を低下させる点で、MMP−11は腫瘍に対する免疫系の応答を妨げることも示されている(Kataokaら,Am.J.Pathol.154:457−468,(1999))。また、MMP−11ヌルマウスにおいては、野生型マウスの場合より多数の好中球およびマクロファージが腫瘍に浸潤し、このことは、MMP−11がこれらの細胞に対する誘引物質を抑制することを示している(Boulayら,Cancer Res.61:2189−2193(2001))。したがって、MMP−11は腫瘍生成の初期段階において決定的に重要な役割を果たしているらしい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MMPの合成を遮断する、または細胞表面へMMPの活性を導く分子とMMPとの相互作用を妨げる、またはそれらの酵素活性を抑制するいくつかの物質が開発されている(EgebladおよびWerb,Nature Reviews 2:163−174(2002)に概説されている。)。それらの物質のほとんどはMMP−11に特異的なものではなく、MMPファミリーの他のメンバーの機能を妨げるものであった。しかし、これらのMMPインヒビターのいくつかを使用する臨床試験は、該インヒビターが、限られた抗腫瘍効果しか有していないことを示唆している。したがって、前記を考慮すれば、MMP−11活性を抑制または妨げる抗癌療法および治療方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の簡潔な要約
本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−1)を過剰発現する腫瘍および癌を治療するためのワクチンにおいて使用するための、MMP−11もしくはストロメライシン−3(ST−3)またはMMP−11をコードする核酸を含む組成物を提供する。特定の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで、MMP−11および該免疫増強要素をコードするコドンはヒト細胞における該融合ポリペプチドの発現の増強のために最適化されている。他の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む。該組成物は、単独で、または他の腫瘍関連抗原に対するワクチンならびに放射線療法および化学療法のような通常の療法と共に相乗的に使用されうる。
【0006】
したがって、本発明は、MMP−11ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供し、ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている(すなわち、該ヌクレオチド配列はヒト由来細胞における核酸の高発現のために最適化されている。)。
【0007】
該核酸の好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含み、特定の実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。
【0008】
該核酸の他の実施形態においては、該ポリヌクレオチドはMMP−11をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドはヒトMMP−11または霊長類由来のMMP−11をコードする。
【0009】
該核酸の更に他の実施形態においては、該核酸は、配列番号4のヌクレオチド配列を有するヌクレオチド配列を含む。
【0010】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドをコードする核酸を提供する。好ましい実施形態においては、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素(LTB)のサブユニットBよりなる群から選ばれる。
【0011】
該核酸の現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素は大腸菌(E.coli)LTBである。他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。該核酸の更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる。
【0012】
前記核酸の好ましい実施形態においては、MMP−11は、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む。
【0013】
該核酸の他の実施形態においては、MMP−11は、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる。更に他の実施形態においては、該融合ポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む。
【0014】
本発明は更に、プロモーターに機能的に連結された前記実施形態のいずれかの核酸を含む発現ベクターを提供する。本発明は更に、前記発現ベクターの実施形態のいずれかを含有する宿主細胞を提供する。本発明は更に、該融合ポリペプチドを産生する条件下、細胞培養培地内で前記宿主細胞を培養することを含む製造方法を提供する。
【0015】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドを提供する。
【0016】
該融合ポリペプチドの特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0017】
該融合ポリペプチドの現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)LTBである。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む。
【0018】
該融合ポリペプチドの好ましい実施形態においては、MMP−11は、それを触媒的に不活性にする変異を含む。好ましくは、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。更に他の実施形態においては、該融合ポリペプチドを含むMMP−11ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、あるいは該ポリペプチドは、配列番号10に示すアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明は更に、MMP−11をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドワクチンを提供し、ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。
【0020】
該ポリヌクレオチドワクチンの好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、ヒト由来または霊長類由来のMMP−11である。該ポリヌクレオチドワクチンの更にもう1つの実施形態においては、該ヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0021】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドワクチンを提供する。該ポリヌクレオチドワクチンの特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0022】
該ポリヌクレオチドワクチンの好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、ヒト由来または霊長類由来のMMP−11である。該ポリヌクレオチドワクチンの更にもう1つの実施形態においては、該ヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0023】
該ポリヌクレオチドワクチンの現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まず、更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる。
【0024】
該ポリヌクレオチドワクチンのもう1つの好ましい実施形態においては、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。
【0025】
もう1つの実施形態においては、MMP−11は、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる。更にもう1つの実施形態においては、該融合ポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む。
【0026】
該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の遺伝的アジュバントを含む。そのような遺伝的アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の通常のアジュバントを含む。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドを含むポリペプチドワクチンを提供する。好ましい実施形態においては、MMP−11は、それを触媒的に不活性にする変異を有する。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。
【0029】
該ポリペプチドワクチンの特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0030】
現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素は大腸菌(E.coli)LTBである。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む。
【0031】
該ポリペプチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、あるいは配列番号10に示すアミノ酸配列を含む。
【0032】
該ポリペプチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは、Th1またはTh2応答への免疫応答を調節しうる1以上の分子アジュバントを含む。そのような分子アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
該ポリペプチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明は、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、MMP−11をコードする核酸ヌクレオチド配列の使用;個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸の使用;および個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドの使用を提供する。
【0035】
本発明は更に、MMP−11をコードするヌクレオチド配列(ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。)を含む核酸を含むポリヌクレオチドワクチン、または免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むポリヌクレオチドワクチンを準備し、該ワクチンを個体に投与して癌を治療することを含む、個体における癌の治療方法を提供する。該融合ポリペプチドをコードする核酸の現在好ましい実施形態においては、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において存在しない、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において存在するヌクレオチドコドンで置換されている。
【0036】
前記方法の特定の実施形態においては、該個体は、化学療法、放射線療法、および腫瘍関連抗原に対するワクチンよりなる群から選ばれる1以上の治療を受けている。更に他の実施形態においては、該個体は、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有し、あるいは該個体は、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する。
【0037】
該方法の好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を有する。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、ヒト由来または霊長類由来のMMP−11である。該ポリヌクレオチドワクチンの更にもう1つの実施形態においては、該ヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0038】
該方法の特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0039】
該方法の現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まず、更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる。
【0040】
もう1つの実施形態においては、MMP−11は、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる。更にもう1つの実施形態においては、該融合ポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む。
【0041】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の遺伝的アジュバントを含む。そのような遺伝的アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の通常のアジュバントを含む。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明は更に、免疫増強要素に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドを含むワクチンを準備し、該ワクチンを個体に投与して癌を治療することを含む、個体における癌の治療方法を提供する。
【0044】
前記方法の特定の実施形態においては、該個体は、化学療法、放射線療法、および腫瘍関連抗原に対するワクチンよりなる群から選ばれる1以上の治療を受けている。更に他の実施形態においては、該個体は、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有し、あるいは該個体は、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する。
【0045】
該方法の特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0046】
該方法の現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素は大腸菌(E.coli)LTBである。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む。
【0047】
該方法の更にもう1つの実施形態においては、MMP−11は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、あるいは配列番号10に示すアミノ酸配列を含む。
【0048】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは、Th1またはTh2応答への免疫応答を調節しうる1以上の分子アジュバントを含む。そのような分子アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明は更に、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定するための方法であって、マウスにおいて癌を誘発させ、該誘発癌を有するマウスに該アナライトを投与し、該誘発癌を有するマウスにおいて該アナライトが該癌を抑制するかどうかを判定して、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定する方法を提供する。
【0051】
特定の実施形態においては、該アナライトを該マウスに投与する前に、該アナライトがMMP−11に結合することを確認する。
【0052】
更に他の実施形態においては、該マウスにおいて誘発される癌は結腸癌であり、更に他の実施形態においては、該マウスにおいて該癌を誘発するのに十分な量の1−2ジメチルヒドラジン(DMH)を該マウスに投与することにより、該マウスにおいて該癌を誘発させる。
【0053】
定義
本明細書全体および添付の特許請求の範囲において用いる単数形表現は、文脈と明らかに矛盾しない限り、複数形に対する言及を含む。
【0054】
本明細書全体および添付の特許請求の範囲においては、以下の定義および略語が適用される。
【0055】
「プロモーター」なる語は、RNAポリメラーゼが結合する、DNA鎖上の認識部位を意味する。プロモーターはRNAポリメラーゼと共に開始複合体を形成して、プロモーターの下流に位置する核酸配列の転写活性を始動し駆動する。プロモーターは、「エンハンサー」と称される配列を活性化することにより又はプロモーター内の「サイレンサー」と称される配列を抑制することにより修飾されうる。該用語は更に、誘導可能であるプロモーターおよび構成的であるプロモーターの両方を含む。
【0056】
「カセット」なる語は、ベクターから発現されるヌクレオチドまたは遺伝子配列、例えば、cDkk−4タンパク質をコードするヌクレオチドまたは遺伝子配列を意味する。一般に、カセットは、いくつかの実施形態においては該ヌクレオチドまたは遺伝子配列の発現のための調節配列を提供するベクター内に挿入された遺伝子配列を含む。他の実施形態においては、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は、その発現のための調節配列を提供する。他の実施形態においては、該ベクターはいくつかの調節配列を提供し、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は他の調節配列を提供する。例えば、該ベクターは該ヌクレオチドまたは遺伝子配列の転写のためのプロモーターを提供することが可能であり、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は転写終結配列を提供する。該ベクターにより提供されうる調節配列には、エンハンサー、転写終結配列、スプライス受容および供与配列、イントロン、リボソーム結合配列ならびにポリ(A)付加配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
「ベクター」なる語は、宿主生物または宿主組織内へのDNA断片の導入をもたらしうる何らかの手段を意味する。プラスミド、ウイルス(アデノウイルスを含む)、バクテリオファージおよびコスミドを含む種々のタイプのベクターが存在する。
【0058】
「MMP−11」なる語は、MMP−11タンパク質またはポリペプチドを意味する。
【0059】
「免疫増強要素」なる語は、完全長野生型MMP−11と比べて関連MMP−11に対する免疫応答を刺激または増強しうる、本発明のMMP−11融合ポリペプチドのポリペプチド部分を意味する。本発明の免疫増強要素には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および大腸菌(E.coli)または他の細菌種の易熱性毒素Bサブユニットよりなる群から選ばれるポリペプチドの全部または実質的部分を含むポリペプチドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」なる語は、共有結合した少なくとも2つのポリペプチドを含有するタンパク質を意味し、ここで、一方のポリペプチドは1つのタンパク質配列またはドメインに由来し、もう一方のポリペプチドは第2のタンパク質配列またはドメインに由来する。本発明の融合タンパク質は、MMP−11と、免疫増強要素またはその実質的部分を含む第2のポリペプチド(いくつかの場合にはこれは細菌毒素である。)とを含む。MMP−11は、ヒトMMP−11、または他の種に由来するMMP−11でありうる。該融合タンパク質を含むポリペプチドは、好ましくは、N末端からC末端へ連結される。MMP−11および免疫増強要素は任意の順序で融合されうる。本発明のいくつかの実施形態においては、MMP−11のC末端が免疫増強要素のアミノ末端に融合され、あるいは免疫増強要素がMMP−11のアミノ末端に融合される。
【0061】
「MMP−11融合タンパク質」なる語は、免疫増強要素またはその実質的部分を含むポリペプチドに融合されたMMP−11ポリペプチドまたはその断片もしくは変異体を含む、前記の融合タンパク質を意味する一般用語であると意図される。「MMP−11融合タンパク質」なる語は「MMP−11融合ポリペプチド」なる語と交換可能である。
【0062】
「組換えMMP−11」なる語は、遺伝子工学により修飾されたMMP−11を意味する。例えば、該用語は、本明細書に開示されている触媒的に不活性なMMP−11およびMMP−11融合ポリペプチドを含む。
【0063】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」なる語は、ホスホジエステル結合により互いに結合したヌクレオチドの任意の重合体、例えば、任意長のリボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)分子を意味すると意図される。ポリヌクレオチドまたは核酸は、遺伝子およびその断片または一部、プローブ、オリゴヌクレオチドならびにプライマーを含みうる。DNAは、相補的DNA(cDNA)またはゲノムDNA、例えば、MMP−11またはその変異体をコードする遺伝子でありうる。「核酸」および「ポリヌクレオチド」なる語は本明細書においては互換的に用いられる。
【0064】
「組換えポリヌクレオチド」または「組換え核酸」なる語は、遺伝子工学により修飾されたポリヌクレオチドを意味する。例えば、該用語は、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む、MMP−11をコードするポリヌクレオチドを含む。該用語は更に、ヌクレオチドコドンの1以上がヒトにおける発現の増強のために最適化された、MMP−11または触媒的に不活性なMMP−11をコードするポリヌクレオチドを含む。該用語はまた、本明細書に開示されているMMP−11融合ポリペプチドを含む。
【0065】
「その変異体」なる語は、組換えMMP−11またはポリヌクレオチドを意味する。例えば、触媒的に不活性なMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドは野生型MMP−11の変異体である。ヒトにおける発現の増強のためにコドンが最適化されたMMP−11、触媒的に不活性なMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、野生型MMP−11をコードする野生型ポリヌクレオチドの変異体である。
【0066】
「実質的に類似」なる語は、ある与えられた核酸またはアミノ酸配列が基準配列に対して少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より一層好ましくは95%の同一性を共有することを意味する。本発明においては、基準配列は、文脈により定められる野生型MMP−11ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列または免疫増強要素の野生型ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列の対応部分でありうる。基準配列は、例えば、野生型ヒトまたは非ヒトMMP−11配列でありうる。したがって、野生型MMP−11またはその断片に「実質的に類似」しているMMP−11配列は、野生型MMP−11の対応断片に対して、該断片の長さに沿って、少なくとも75%の同一性、好ましくは85%の同一性、より好ましくは90%の同一性、より一層好ましくは95%の同一性を共有する。与えられたMMP−11または免疫増強要素のポリペプチドまたはヌクレオチド配列が基準配列に「実質的に類似」しているかどうかは、例えば、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータープログラム・バージョン6.0のような配列解析ソフトウェアを使用して配列情報を比較することにより判定されうる。GAPプログラムは、SmithおよびWaterman(Ada.Appl.Math.2:482,1981)により修正されたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:443,1970)のアライメント法を用いるものである。
【0067】
「遺伝子」なる語は、多数の遺伝子の場合にはエキソンおよびイントロン配列の組合せを含む、遺伝子産物をコードするゲノム核酸、ならびにイントロン配列を含まない、遺伝子産物をコードするmRNAから誘導されたcDNAを意味する。
【0068】
遺伝子もしくはポリペプチド、またはそれらの変異体、断片もしくはサブユニットの「実質的部分」なる語は、基準配列の少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは90%、より一層好ましくは95%の部分を意味する。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドを説明するための「コドン最適化」、「ヌクレオチドコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化されている」、「ヌクレオチド配列が高発現のために最適化されている」などの表現は、ある生物における高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11および/または免疫増強要素のヌクレオチドコドンの1以上が、該生物における高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されていることを意味する。ある特定のアミノ酸に関する「低頻度」のヌクレオチドコドンは、該生物における高発現タンパク質をコードする核酸における最低使用頻度のヌクレオチドコドンである。ある特定のアミノ酸に関する「高頻度」のヌクレオチドコドンは、該生物における高発現タンパク質をコードする核酸における最高使用頻度のヌクレオチドコドン、または最低頻度のヌクレオチドコドンより高い使用頻度のヌクレオチドコドンである。
【0070】
「治療」なる語は治療的治療および予防的手段を意味する。治療を要する個体には、障害を既に有する個体、および障害を有する傾向にある個体または障害が予防されるべきである個体が含まれる。
【0071】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、異常細胞増殖により特徴づけられる、MMP−11の過剰発現に関連した障害または状態、例えば乳癌、結腸直腸癌および肺癌(これらの限定されるものではない)の治療剤として使用されることが意図される。
【0072】
「有効量」なる語は、免疫応答が生じるよう適度なレベルの該ポリペプチドが産生されるのに十分なワクチン組成物が導入されることを意味する。このレベルは様々となりうることが当業者に認識される。
【0073】
「アナライト」なる語は、分子、化合物、組成物、薬物、タンパク質、ペプチド、核酸、抗体およびその活性フラグメント、核酸アプタマー、ペプチドアプタマーなどを含む。
【0074】
発明の詳細な説明
本発明は、個体における、MMP−11を過剰発現する腫瘍および癌を抑制するための、特に、MMP−11を過剰発現する浸潤性癌、例えば特に乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)、または浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を抑制するための、抗MMP−11ワクチンとして使用されうる組成物を提供する。該抗MMP−11ワクチンまたは抗腫瘍関連抗原(抗TAA)ワクチンは、例えば、腫瘍細胞および基質区画を標的化する単独療法において、ならびに多重特異的細胞性免疫応答により腫瘍細胞および基質区画を標的化する別の抗TAAワクチンとの多重療法において、ならびに他の分子またはアジュバントとの多重療法において、ならびに基質構造の、細胞毒性物質に対する透過性を上昇させるという原理による、化学療法を含む療法において、ならびに放射線療法を含む療法において、ならびにMMP−11が多エピトープポリペプチドまたはミニ遺伝子の一部として与えられる前記療法のいずれかにおいて使用されうる。本発明の抗MMP−11ワクチンはポリペプチドワクチン、または好ましくはポリヌクレオチドワクチンでありうる。
【0075】
実施例に示すとおり、1,2−ジメチルヒドラジン(DMH)で誘発された結腸腫瘍を有するマウスへの抗MMP−11ワクチンの投与は該マウスの結腸組織におけるDMH誘発性発癌の進行の有意な軽減をもたらすことが判明した。感受性マウス系統、例えばA/Jにおいて、そしてそれより低い度合ではあるがBALB/cにおいても、結腸組織におけるDMH誘発性発癌の進行は以下の異なる段階を経て進行する:(1)異常陰窩形成(ACF)、(2)腺腫、(3)ポリープ、および(4)腺癌(Bird,Cancer Lett.93(1):55−71(1995)を参照されたい)。本発明者らは、MMP−11がDMH誘発性腫瘍組織において過剰発現されることを見出した。このことは、マウスにおけるDMH誘発性発癌が抗MMP−11療法およびワクチン接種のモデルとして適していることを示唆するものであった。ついで本発明者らは、マウスMMP−11(mMMP−11)(該mMMP−11は、触媒部位におけるZn結合ドメイン内に点変異を導入することにより触媒的に不活性化されている。)をコードする核酸を含む遺伝的ワクチンがマウスにおいて免疫応答を誘導すること、ならびに触媒的に不活性なmMMP−11をコードする核酸が、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)のサブユニットB易熱性毒素(LTB)をコードする核酸に連結されている場合、およびMMP−11をコードするコドンが該マウスにおける発現の増強のために最適化されている場合、およびLTBをコードするコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化されている場合に、該免疫応答が更に増強されることを見出した。最後に、本発明者らは、該遺伝的ワクチンが、マウスにおけるDMH誘発性発癌の全段階における軽減をもたらすのに有効であることを見出した。したがって、該マウスモデルの結果を考慮して、本発明は、MMP−11をコードするポリヌクレオチまたはMMP−11ポリペプチドを含む抗MMP−11ワクチン、好ましくは、後記の実施形態のいずれかを有する抗MMP−11ワクチンを提供するものである。
【0076】
本発明は、その最も基本的な実施形態において、MMP−11または後記に開示する遺伝暗号の縮重、遺伝子操作もしくはそれらの両方による変異体を適当な異種プロモーターの制御下に又は適当な異種プロモーターに連結された様態でコードする核酸またはポリヌクレオチド分子を含む核酸またはポリヌクレオチドを提供し、ここで、好ましくは、MMP−11をコードする核酸は、コードされるMMP−11を触媒的に不活性にする変異を含むよう修飾されている。MMP−11を触媒的に不活性にする変異は遺伝子操作によりポリヌクレオチド内に導入されうる。触媒的に不活性なMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドには、コードされるMMP−11を触媒的に不活性にする変異を含むようポリヌクレオチドが修飾された、ヒトおよび非ヒト種に由来するポリヌクレオチドが含まれる。非ヒト種には、霊長類、例えばチンパンジー、アカゲザル、カニクイザルなど、および非霊長類種、例えばマウス、ラット、イヌなどが含まれる。現在好ましい実施形態においては、MMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドはヒト由来であるか、あるいはヒトMMP−11のアミノ酸配列と同じ又は実質的に類似しているアミノ酸配列を有するMMP−11をコードする。ヒトMMP−11(hMMP−11)をコードするcDNAのヌクレオチド配列はGenBankアクセッション番号NM 005940(配列番号1)に記載されており、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するMMP−11をコードする。hMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の抗MMP−11ワクチンにおいて使用されうる変異体をコードするよう後記に示すとおりに修飾される。本発明の現在好ましい実施形態は、hMMP−11をコードする組換え核酸またはポリヌクレオチドを含むが、本発明は、hMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドに限定されないと理解されるべきである。本発明は更に、該組換えポリヌクレオチドが非ヒト由来のMMP−11をコードし、該組換え核酸またはポリヌクレオチドが、本発明の抗MMP−11ワクチンにおいて使用されうるMMP−11変異体をコードするよう後記に示すとおりに修飾されている実施形態を含む。
【0077】
該組換え核酸またはポリヌクレオチドの好ましい実施形態においては、該ポリヌクレオチドによりコードされるMMP−11はMMP−11の触媒的に不活性な変異体である。触媒的に不活性なMMP−11をコードするポリヌクレオチドは、MMP−11の亜鉛結合部位HEXXHXXGXXH(配列番号3)(hMMP−11の場合には配列番号2のアミノ酸215−225)を含む保存アミノ酸をコードするヌクレオチドコドンの1以上を代替アミノ酸をコードするよう遺伝子操作により修飾して触媒的に不活性なMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドを得ることにより製造される。例えば、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号4におけるヌクレオチド配列により示されるとおり、hMMP−11のアミノ酸216位の保存グルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンGAAを、アミノ酸バリンをコードするヌクレオチドコドンGTGへと変化させて、アミノ酸216位がバリンである配列番号5に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11を得た。Noelら,Oncogene 19:1605−1612(2000)は、216位のヌクレオチドコドンを、アラニンをコードするヌクレオチドコドンに変化させると、hMMP−11が触媒的に不活性になったこと、およびmMMP−11の対応領域のアミノ酸220位のグルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンを、アラニンをコードするヌクレオチドコドンに変化させると、mMMP−11が触媒的に不活性になったことを示している。触媒的に不活性なMMP−11を得るために、配列番号3のアミノ酸2位のグルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンは、バリンまたはアラニンをコードするヌクレオチドコドンに変化しているが、本発明から逸脱しない範囲で、該ヌクレオチドコドンを他のアミノ酸のものに変化させることも可能であり、あるいはZn結合ドメインのその他の保存アミノ酸の1以上をコードするコドンを、他のアミノ酸をコードするよう変化させることが可能である。
【0078】
特定のポリペプチドをコードする遺伝子または転写単位のコドン最適化は、コードされるポリペプチドの発現の増強、すなわち、該ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳の増強をもたらすことが示されている。ポリヌクレオチドワクチンの場合、コードされるポリペプチドの発現の増強は、コードされるポリペプチドをより多量に産生し、これは該ワクチンのインビボでの免疫原性の増強につながり、今度はこれが該ワクチンの効力を増強しうる。コドン最適化の場合の「発現」なる語およびその派生語は、該ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳を意味し、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を意味するものではない。本明細書中で用いる「遺伝子」なる語は、該ポリペプチドをコードするゲノムDNAまたはRNAの両方、および該ポリペプチドをコードするcDNAを意味する。
【0079】
コドン最適化は、ある遺伝子が、該遺伝子の天然環境とは異なるヌクレオチドコドン使用頻度を示す異種遺伝的環境に移される場合に、該遺伝子の異種発現を改善するための方法、あるいは高発現遺伝子をコードする、遺伝的環境に固有の遺伝子において通常は使用されない1以上のヌクレオチドコドンを該遺伝子が天然で含む場合に、該遺伝子の天然遺伝的環境における該遺伝子の異所性発現を改善するための方法である。換言すれば、コドン最適化は、特定の遺伝的環境または生物において比較的低い頻度で使用される或る遺伝子のヌクレオチドコドンを、該遺伝的環境または生物において、より高い頻度で発現遺伝子において使用されるヌクレオチドコドンで置換することを含む。そのようにして、遺伝子産物(ポリペプチド)の発現(翻訳)が増強される。その前提は、高発現遺伝子において高頻度で見出されるヌクレオチドコドンが、低頻度で見出されるヌクレオチドコドンより効率的に翻訳されるというものである。
【0080】
一般に、特定の遺伝子のヌクレオチドコドンを最適化するための方法は、生物において高度に発現される遺伝子において使用されるアミノ酸のそれぞれのヌクレオチドコドンの頻度を特定し、ついで、高発現遺伝子において低頻度で使用される関心のある遺伝子におけるヌクレオチドコドンを、高発現遺伝子において使用されるものとして特定されたヌクレオチドコドンで置換することに基づくものである(例えば、Lathe,Synthetic Oligonucleotide Probes Deduced from Amino Acid Sequence Data:Theoretical and Practical Considerations,J.Molec.Biol.:183:1−12(1985);Nakamuraら,Nuc.Acid Res.28:292(2000);Fuglsang,Protein Expression & Purification 31:247−249(2003)を参照されたい)。遺伝子をコードする、生物の核酸のヌクレオチドコドンを自動的に解析し、生物において低頻度で見出されるヌクレオチドコドンを、生物において高度に発現される遺伝子において見出されるヌクレオチドコドンで置換するよう示唆する多数のコンピュータープログラムが存在する。簡便のために、Nakamura(同誌)から導き出されたヒトに関するヌクレオチドコドン使用頻度の表を以下の表1に示し、ヒトにおいて高発現タンパク質をコードする核酸において、どのヌクレオチドコドンが低頻度で見出されるのか、およびヒトにおいて高発現タンパク質をコードする核酸において、どのヌクレオチドコドンが、より高い頻度で見出されるのを特定する。
【0081】
【表1】
【0082】
したがって、他の実施形態においては、コードされるMMP−11の発現が増強され、それにより抗MMP−11ワクチンの場合には抗MMP−11ワクチンの効力が増強されるよう、MMP−11を含むアミノ酸をコードするヌクレオチドコドンの1以上が最適化された組換えポリヌクレオチドを提供する。すなわち、ある生物において高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11および/または免疫増強要素をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、該生物において高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。好ましくは、該ヌクレオチドコドンはヒトにおけるMMP−11の発現の増強のために最適化される。しかし、別の生物、例えば霊長類における発現の増強のためにコドン最適化された組換えポリヌクレオチドは、ヒトにおける発現の増強のためにコドン最適化された組換えポリヌクレオチドの等価体である。現在のところ、MMP−11は触媒的に不活性であることが好ましく、触媒的に不活性なMMP−11はhMMP−11であることが現在好ましい。MMP−11の特定のアミノ酸に関する複数のヌクレオチドコドンが存在し、該ヌクレオチドコドンの2以上が高発現ヒト遺伝子における同じ相対使用頻度を有するか、または高発現ヒト遺伝子における最低使用頻度を伴うヌクレオチドコドンより大きな、高発現ヒト遺伝子における使用頻度を有する場合には、MMP−11におけるアミノ酸に関するヌクレオチドコドンのそれぞれは、独立して、最低使用頻度を有するヌクレオチドコドンより大きな使用頻度、または同じ使用頻度のヌクレオチドコドンのいずれかでありうる。MMP−11をコードするコドン最適化されたポリヌクレオチドにおける全てのヌクレオチドコドンが、高発現ヒト遺伝子において最高使用頻度を有するヌクレオチドコドンである必要はない。触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドンがヒトにおける発現のために最適化されている触媒的に不活性なhMMP−11のヌクレオチド配列の一例を配列番号6に示す。
【0083】
mMMP−11をコードするヌクレオチドコドンがマウスにおける発現の増強のために最適化された、触媒的に不活性なmMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチド(mMMP−11−opt)を含む抗MMP−11ワクチンの効力は、mMMP−11−optのカルボキシ末端アミノ酸をコードするヌクレオチドコドンが、大腸菌(E.coli)の免疫増強性易熱性毒素B(LTB)の実質的部分をコードするヌクレオチドコドンに連結または融合されてmMMP−11と大腸菌(E.coli)LTBとを含む融合ポリペプチドを産生するようにされた場合に更に増強されることが、マウスモデルから示された。したがって、好ましい実施形態においては、該組換えポリヌクレオチドは、免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分をコードする核酸に連結された触媒的に不活性なMMP−11(MMP−11融合ポリペプチド)をコードする核酸を含む。現在好ましい実施形態においては、該組換えポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドがhMMP−11−LTB融合タンパク質をコードするよう、大腸菌(E.coli)のLTBである免疫増強要素をコードする核酸に連結された触媒的に不活性なhMMP−11をコードする核酸を含む。他の実施形態においては、LTBをコードする核酸は、LTBシグナルペプチドをコードするコドンを含まない。大腸菌(E.coli)LTBをコードする核酸配列はGenBankアクセッション番号AB011677において入手可能であり、大腸菌(E.coli)LTBのアミノ酸配列はGenBankアクセッション番号BAA25726に示されている。該シグナルペプチドは、BAA25726に示されているアミノ酸配列のアミノ酸残基1−21を含む。該シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBのヌクレオチド配列を配列番号7に示し、そのアミノ酸配列を配列番号9に示す。該LTBをコードするヌクレオチドコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化された、該シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードするポリヌクレオチド配列を表8に示す。特に好ましい実施形態においては、触媒的に不活性なhMMP−11および該LTBをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンはヒトにおける発現に関して最適化されている。
【0084】
大腸菌(E.coli)LTBが、本明細書に開示されている融合ポリペプチド実施形態において使用した免疫増強要素ポリペプチドの起源であったが、本発明は更に、他の免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合したMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを含む実施形態をも包含する。免疫増強要素ポリペプチドの具体例には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および他の細菌種に由来するLTBが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
したがって、前記を考慮して、本発明は更に、LTBもしくはその実質的部分または別の免疫増強要素ポリペプチドもしくはその実質的部分に連結された触媒的に不活性なMMP−11含む単一融合ポリペプチドをコードする組換え核酸またはポリヌクレオチドを提供する。そのようなポリヌクレオチドの一例は、配列番号5(触媒的に不活性なhMMP−11)のアミノ酸と配列番号8(シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTB)のアミノ酸配列とを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。該ポリヌクレオチドは、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号4と、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードする配列番号7または配列番号8(ヒトにおける発現の増強のためにコドン最適化された、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードするポリヌクレオチド)とのヌクレオチド配列を含みうる。一例として、該ポリヌクレオチドは、配列番号10に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードしうる。そのようなポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0086】
好ましい実施形態においては、本明細書に開示されている組換え核酸およびポリヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドコドンは、ヒトにおけるそれによりコードされる組換えポリペプチドの発現の増強のために最適化されている。すなわち、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、組換え核酸およびポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。本明細書に開示されている融合ポリペプチドのいずれかをコードする組換えポリヌクレオチドの場合には、該組換えポリペプチドを含む免疫増強要素ポリペプチドまたはLTBをコードする組換えポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンも、ヒトにおける該融合ポリペプチドの発現の増強のために最適化されていることが更に好ましい。そのような組換えポリヌクレオチドの一例は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号6のコドン最適化ヌクレオチド配列と、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードする配列番号8のコドン最適化ヌクレオチド配列とを含むであろう。一例として、コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、配列番号12に示すヌクレオチド配列を有する。
【0087】
本発明は更に、MMP−11の亜鉛結合部位HEXXHXXGXXH(配列番号3)を含む保存アミノ酸の1以上が代替アミノ酸に改変された、触媒的に不活性なMMP−11を含む組換えポリペプチドを提供する。例えば、hMMP−11に関して配列番号5に示すとおり、hMMP−11のアミノ酸216位の保存グルタミン酸をアミノ酸バリンへと変化させて、触媒的に不活性なhMMP−11を得た。好ましくは、触媒的に不活性なMMP−11ポリペプチドは、MMP−11がそのカルボキシ末端において免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に連結された融合ポリペプチド(MMP−11融合ポリペプチド)を含む。現在好ましい実施形態においては、免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)LTBである。他の実施形態においては、該LTBはそのシグナルペプチドを含まない。MMP−11融合ポリペプチドの一例は、配列番号7に示すアミノ酸配列を有する、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBポリペプチドのアミノ末端に、カルボキシ末端において連結された配列番号5に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11を含む。該MMP−11融合ポリペプチドは、例えば、配列番号11に示すポリヌクレオチド、または配列番号12に示すコドン最適化ポリヌクレオチドによりコードされうる。
【0088】
大腸菌(E.coli)LTBが、本明細書に例示されているMMP−11融合ポリペプチド実施形態において使用した免疫増強要素ポリペプチドの起源であったが、本発明は更に、他の免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合したMMP−11を含むMMP−11融合ポリペプチドを含む実施形態をも包含する。免疫増強要素ポリペプチドの具体例には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および他の細菌種に由来するLTBが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
本発明は更に、本明細書に全体にわたって開示されている核酸分子(以下、「組換えポリヌクレオチド」と称する。)の少なくとも1つを含むベクターを提供し、ここで、好ましくは、該核酸分子は異種プロモーターに機能的に連結されている。これらのベクターはDNAまたはRNAを含みうる。ほとんどの目的においては、DNAプラスミドまたはウイルス発現ベクターが好ましい。典型的な発現ベクターには、プラスミド、修飾ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体、および他の形態のエピソーム性の又は組み込まれたDNAが含まれ、それらはいずれも、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを発現する。好ましくは、前記実施形態のいずれかをコードするヌクレオチドコドンはヒトにおける発現の増強のために最適化されている。
【0090】
DNAが好ましくはヒトにおける発現の増強のためにコドン最適化されており異種プロモーターに機能的に連結されている、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、組換え宿主細胞内での本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現のために使用されうる。そのような組換え宿主細胞を適当な条件下で培養して、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを得ることが可能である。発現ベクターには、クローニングベクター、修飾クローニングベクター、特別に設計されたプラスミドまたは特別に設計されたウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。実施例において記載する発現ベクターは、許容されうる発現ベクターである。
【0091】
本発明の核酸は、好ましくは、ヒト細胞においてそれにコードされる本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの効率的な発現をもたらす配列を含む発現カセットへと構築される。該カセットは、好ましくは、該核酸に機能的に連結された同種または異種の転写および翻訳制御配列を含有する。そのような制御配列は、少なくとも、転写プロモーター(構成的または誘導性)および転写終結配列を含み、更に他の調節要素、例えば転写エンハンサー、リボソーム結合配列、スプライス結合配列などを含みうる。ほとんどの実施形態においては、該プロモーターは異種プロモーターであるが、特定の実施形態においては、該プロモーターはMMP−11の天然プロモーターでありうる。特に有用な実施形態においては、該プロモーターは、イントロンA配列を伴う又は伴わない構成的サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーターであるが、多数の他の公知プロモーター、例えば強力免疫グロブリンプロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーター、SV40スモールまたはラージT抗原プロモーターなども使用可能であると当業者は認識するであろう。転写ターミネーターには、ウシ成長ホルモンターミネーターが含まれるが、他の公知転写ターミネーター、例えばSV40終結配列も使用可能である。プラスミドpV1JnsBおよびpV1JnsAのそれぞれは、サイトメガロウイルス(CMV)最/初期領域プロモーターおよびエンハンサー(イントロンAを伴う)およびそれに続くクローニング部位およびBGHポリアデニル化シグナルを含有し、有用な発現ベクターの具体例である。前記実施形態のいずれかにおけるMMP−11を該クローニング部位内にクローニングして該発現カセットを完成させることが可能である。
【0092】
本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現に適した商業的に入手可能な哺乳類発現ベクターには、限定的なものではないが以下のものが含まれる:pV1JnsA、V1JnsB、pVAX1(Invitrogen,Carlsbad,AC)、pcDNA3.neo(Invitrogen)、pcDNA3.1(Invitrogen)、pcDNA3.1/Myc−His(Invitrogen)、pCI−neo(Promega,Madison,WI)、pLITMUS28、pLITMUS29、pLITMUS38およびpLITMUS39(New England Bioloabs,Beverly,MA)、pcDNAI、pcDNAIamp(Invitrogen)、pcDNA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene,La Jolla,CA)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)、pBPV−l(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)および1ZD35(ATCC 37565)。
【0093】
また、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを細菌細胞内で発現させるためには、種々の細菌発現ベクターが使用されうる。発現のために適当でありうる商業的に入手可能な細菌発現ベクターには、pCR2.1(Invitrogen)、pET11a(Novagen,Madison,WI)、lambda gt11(Invitrogen)およびpKK223−3(Pharmacia)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
また、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドを真菌細胞内で発現させるためには、種々の真菌発現ベクターが使用されうる。発現に適している商業的に入手可能な真菌細胞発現ベクターには、pYES2(Invitrogen)およびPichia発現ベクター(Invitrogen)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
また、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを昆虫細胞内で発現させるためには、種々の昆虫細胞発現ベクターが使用されうる。発現のために適当でありうる商業的に入手可能な昆虫細胞発現ベクターには、pBlueBacIIIおよびpBlueBacHis2(Invitrogen)、およびpAcG2T(Pharmingen)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現のために使用されうるウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルスなど)、レトロウイルスベクター、バクテリオファージベクターおよびバキュロウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明における組換えポリヌクレオチドのいずれかをコードする組換えウイルスを製造するためのウイルスベクターの多くは商標的に入手可能である。
【0097】
現在好ましい実施形態においては、組換えウイルスを製造するために使用されるウイルスベクターはアデノウイルスベクターまたはプラスミドベクターであるが、プロモーターに連結された直鎖状DNA、または他のベクター、例えばアデノ随伴ウイルスもしくは修飾されたワクシニアウイルス、レトロウイルスもしくはレンチウイルスベクターも使用されうる。選択したベクターがアデノウイルスである場合には、該ベクターはいわゆる第1世代アデノウイルスベクターであることが現在好ましい。これらのアデノウイルスベクターは、非機能的E1遺伝子領域、好ましくは欠失アデノウイルスE1遺伝子領域を有することにより特徴づけられる。いくつかの実施形態においては、該発現カセットは、アデノウイルスE1遺伝子が通常存在する位置に挿入される。また、これらのベクターは、場合によっては、非機能的な又は欠失したE3領域を有する。使用されるアデノウイルスゲノムは、E1およびE3の両方の領域が欠失していること(ΔE1ΔE3)も好ましい。
【0098】
該アデノウイルベクターは、ウイルスE1遺伝子を発現する公知細胞系、例えば293細胞またはPERC.6細胞において、あるいは余分のタンパク質を発現するよう一過性または安定に形質転換された293またはPERC.6細胞から誘導された細胞系において増殖されうる。例えば、制御された遺伝子発現を示す構築物、例えばテトラサイクリン調節可能プロモーター系を使用する場合には、該細胞系は、該調節系に関与する成分を発現しうる。そのような細胞系の一例としてTRex−293が挙げられ、他の細胞系は当技術分野で公知である。
【0099】
アデノウイルスベクターの操作が簡便となるよう、アデノウイルスはシャトルプラスミド形態でありうる。本発明はまた、プラスミド部分とアデノウイルス部分(該アデノウイルス部分は、E1が欠失しており場合によってはE3も欠失しているアデノウイルスゲノムを含む)とを含む、触媒的に不活性なMMP−11ポリペプチドまたは触媒的に不活性なMMP−11融合ポリペプチドをコードする核酸を含む挿入された発現カセットを有するシャトルプラスミドベクターに関する。好ましい実施形態においては、アデノウイルスベクターが容易に除去されうるよう、該プラスミドのアデノウイルス部分に隣接する制限部位が存在する。該シャトルプラスミドは原核生物細胞または真核生物細胞において複製されうる。
【0100】
本発明の現在好ましい実施形態においては、本明細書に開示されている組換えMMP−11のいずれかをコードする核酸を含む発現カセットはpMRKAdS−HV0アデノウイルスプラスミド(Eminiら,WO0222080を参照されたい)内に挿入される。このプラスミドは、E1およびE3領域が欠失したAdsアデノウイルスゲノムを含む。5’シス作用性パッケージング領域をE1遺伝子内に更に伸長させて、ウイルスパッケージングの最適化に重要であることが判明している要素を組み込んで、ウイルス増幅の増強をもたらすことにより、pMRKAd5−HV0プラスミドの設計は従来のアデノベクターに比べて改良された。好都合なことに、この増強されたアデノウイルスベクターは、高継代増殖後の遺伝的安定性を維持しうる。
【0101】
本発明は更に、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた組換え宿主細胞、特に、プロモーターに機能的に連結された前記核酸分子のいずれかを含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。組換え宿主細胞には、細菌、例えば大腸菌(E.coli)、真菌細胞、例えば酵母、植物細胞、哺乳類細胞、例えばウシ、ブタ、サル、ヒトまたはげっ歯類由来の細胞系(これらに限定されるものではない)、および昆虫細胞、例えばジョウショウバエ(Drosophila)およびカイコ由来細胞系(これらに限定されるものではない)が含まれる。例えば、1つの昆虫発現系は、バキュロウイルス発現ベクター(pAcG2T,Pharmingen,San Diego,CA)と組合されたスポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)昆虫細胞(Invitrogen)を利用するものである。また、商業的に入手可能な適当でありうる哺乳類種には、限定的なものではないが以下のものが含まれる:L細胞L−M(TK−)(ATCC CCL−1.3)、L細胞L−M(ATCC CCL−1.2)、Saos−2細胞(ATCC HTB−85)、293細胞(ATCC CRL−1573)、Raji細胞(ATCC CCL−86)、CV−1細胞(ATCC CCL−70)、COS−1細胞(ATCC CRL−1650)、COS−7細胞(ATCC CRL−1651)、CHO−K1細胞(ATCC CCL−61)、3T3細胞(ATCC CCL−92)、NIH/3T3細胞(ATCC CRL−1658)、HeLa細胞(ATCC CCL−2)、C127I細胞(ATCC CRL−1616)、BS−C−1細胞(ATCC CCL−26)、MRC−5細胞(ATCC CCL−171)、HEK293T細胞(ATCC CRL−1573)、ST2細胞(Riken Cell bank,Tokyo,Japan RCB0224)、C3H10T1/2細胞(JCRB0602,JCRB9080,JCRB0003またはIFO50415)およびCPAE細胞(ATCC CCL−209)。
【0102】
前記のとおり、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを含有する発現ベクターは、それにコードされる組換えMMP−11を組換え宿主細胞内で発現させるために使用されうる。したがって、本発明は、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを組換え宿主細胞内で発現させるための方法であって、組換えMMP−11をコードする核酸を含むベクターを適当な宿主細胞内に導入し、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現を可能にする条件下で該宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。組換えMMP−11をコードするポリヌクレオチドは、構成的または誘導性でありうる異種プロモーターに機能的に連結されている。
【0103】
本明細書に開示されている組換え核酸またはポリヌクレオチドのいずれかを宿主細胞内で発現させた後、組換えMMP−11ポリペプチドを、ポリペプチドに基づくワクチンにおいて使用するために回収することが可能である。ポリペプチドの精製方法は当技術分野でよく知られており、塩分別、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーの種々の組合せ又は個々の適用による細胞ライセートおよび抽出物からの精製を含む。また、組換えMMP−11は、MMP−11に特異的な、またはMMP−11融合ポリペプチドの場合には免疫増強要素ポリペプチドに特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体で調製された免疫アフィニティーカラムを使用して、他の細胞ポリペプチドから分離されうる。
【0104】
クローニング、発現ベクター、トランスフェクションおよび形質転換、ならびに発現されたタンパク質のタンパク質単離は当技術分野でよく知られており、例えばSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Edition;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,(1989)またはSambrookおよびRussell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,NY(2001)に記載されている。
【0105】
本発明の抗MMP−11ワクチンには、本明細書に開示されている組換えMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドの実施形態のいずれかをコードするポリヌクレオチドワクチン、および本明細書に開示されている組換えMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドの実施形態のいずれかを含むポリペプチドワクチンの両方が含まれる。MMP−11を過剰発現する浸潤性癌、例えば乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)または浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌に罹患した個体が、本発明のワクチンによる免疫による利益を受けうる。該抗MMP−11ワクチンは更に、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを含有する組換えアデノウイルスを含むアデノウイルス抗MMP−11ワクチンを含む。
【0106】
該核酸またはポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、その最も基本的な実施形態においては、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれか、例えば、組換えMMP−11ポリペプチドまたはMMP−11融合ポリペプチドの前記実施形態のいずれかをコードする組換え核酸分子またはポリヌクレオチドを、適当な異種プロモーターの制御下に又は適当な異種プロモーターに機能的に連結された様態で含む。コードされる組換えMMP−11ポリペプチドは、いずれかの種のMMP−11ポリペプチド、例えばヒト;チンパンジー、アカゲザル、カニクイザルのような霊長類;マウス、ラット、イヌなどのような非霊長類に由来するMMP−11(これらに限定されるものではない)のアミノ酸配列を有しうる。好ましくは、コードされる組換えMMP−11はヒトMMP−11のアミノ酸配列を有する。ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンとして使用するための、前記の遺伝子カセットおよび発現ベクター内に含有させるためのMMP−11をコードする核酸の現在好ましい実施形態を以下に例示する。
【0107】
好ましい実施形態においては、該抗MMP−11ワクチンのポリヌクレオチドによりコードされるMMP−11は触媒的に不活性である。例えば、触媒的に不活性なhMMP−11は配列番号4のヌクレオチド配列により示され、ここで、配列番号5に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11を得るために、hMMP−11の216位の保存グルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンGAAが、アミノ酸バリンをコードするヌクレオチドコドンGTGに改変されている。グルタミン酸残基をコードするヌクレオチドコドンが、バリンをコードするヌクレオチドコドンに改変されているが、本発明から逸脱しない範囲で、該ヌクレオチドコドンは他のアミノ酸に改変されることも可能であり、あるいはヒスチジン残基が他のアミノ酸に改変されうる。
【0108】
前記のとおり、特定のポリペプチドをコードする遺伝子または転写単位のコドン最適化は、コードされているポリペプチドの発現の増強、すなわち、該ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳の増強をもたらすことが示されている。ポリヌクレオチドワクチンの場合には、コードされているポリペプチド産物の発現の増強は、コードされているポリペプチドをより多量に産生し、これは該ワクチンのインビボでの免疫原性の増強につながり、今度はこれが該ワクチンの効力を増強しうる。したがって、他の実施形態においては、MMP−11を含むアミノ酸をコードするヌクレオチドコドンが、MMP−11の発現を増強するために、そしてそれにより抗MMP−11ワクチンの効力を増強するために最適化されている。すなわち、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドンがコドン最適化を受けており触媒的に不活性であるhMMP−11のヌクレオチド配列を配列番号6に示す。
【0109】
mMMP−11−optをコードするコドンのカルボキシ末端コドンが、免疫増強要素ポリペプチド(大腸菌(E.coli)LTB)をコードするコドンに連結された場合に、触媒的に不活性なコドン最適化マウスMMP−11をコードするポリヌクレオチドを含む抗MMP−11ワクチンの効力が増強されることが、実施例のマウスモデルから示されている。したがって、該抗MMP−11ワクチンの好ましい実施形態においては、該ポリヌクレオチドは、免疫増強要素ポリペプチドまたは実質的部分をコードするポリヌクレオチドに連結された触媒的に不活性なMMP−11(MMP−11融合ポリペプチド)をコードする核酸を含む。現在好ましい実施形態においては、該ポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドがMMP−11−LTB融合タンパク質をコードするよう、大腸菌(E.coli)LTBまたはその実質的部分をコードするポリヌクレオチドに連結された触媒的に不活性なMMP−11をコードする核酸を含む。他の実施形態においては、LTBをコードするポリヌクレオチドは、LTBシグナルペプチドをコードするコドンを含まない。MMP−11はhMMP−11であることが現在好ましい。シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBのヌクレオチド配列を配列番号7に示し、そのアミノ酸配列を配列番号9に示す。ヌクレオチドコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化された、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードするポリヌクレオチド配列を、配列番号8に示す。特に好ましい実施形態においては、触媒的に不活性なhMMP−11および該LTBをコードするポリヌクレオチドを含むヌクレオチドコドンはヒトにおける発現の増強のために最適化されている。
【0110】
大腸菌(E.coli)LTBが、本明細書に開示されている抗MMP−11ワクチンの融合ポリペプチド実施形態において使用した免疫増強要素ポリペプチドの起源であったが、本発明は更に、他の免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合したMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む実施形態をも包含する。免疫増強要素ポリペプチドの具体例には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および他の細菌種に由来するLTBが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
したがって、前記を考慮して、本発明は、免疫増強要素またはその実質的部分、例えば大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なMMP−11を含む単一融合ポリペプチドをコードする核酸またはポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンを提供する。そのようなワクチンの一例は、配列番号5(触媒的に不活性なhMMP−11)のアミノ酸および配列番号8(LTB)のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または配列番号4(触媒的に不活性なhMMP−11)および配列番号7(シグナルペプチドを伴わないLTBをコードする。)もしくは配列番号8(ここで、シグナルペプチドを伴わないLTBをコードするヌクレオチドコドンがヒトにおける発現に関して最適化されている。)のヌクレオチド配列をそれぞれ含む。一例として、該ワクチンは、配列番号10に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。そのようなポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0112】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンの好ましい実施形態においては、触媒的に不活性なMMP−11をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンは、前記のとおり、ヒトにおける発現の増強のために最適化されている。該免疫増強要素をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンも、ヒトにおける発現の増強のために最適化されていることが更に好ましい。そのようなポリヌクレオチドの一例は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号6のコドン最適化ヌクレオチド配列と、該LTBをコードする配列番号8のコドン最適化ヌクレオチド配列とを含むであろう。一例として、コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号12に示すヌクレオチド配列を有する。
【0113】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、直接的な注射、エレクトロポレーション、粘膜運搬などのような種々の運搬メカニズムにより投与されうる。いくつかの好ましい実施形態においては、該ワクチンは、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮下、皮内、遺伝子銃による射入、局所的または経口的に投与される。例えば、該ワクチンを三角筋の筋肉内に投与することが可能であり、0.5mLシリンジを使用して投与し次いで該注射の2分以内に電気刺激を加えることが可能である。該電気刺激は、MEDPULSER DNA運搬系(Inovio Biomedical Corporation,San Diego,CA)を用いて加えられうる。好ましくは、該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、水、食塩水(塩類液)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びそれらの組合せのような医薬上許容される担体および賦形剤中に、前記ポリヌクレオチドのいずれかを含む。現在好ましい実施形態においては、該ワクチンは食塩水溶液として製剤化される。いくつかの場合には、該ポリヌクレオチドワクチンは、細菌、例えばシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、サルモネラ属種(Salmonella spp.)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)またはリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の弱毒化株内に、該発現ベクターを含みうると想定される。該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、湿潤剤、乳化剤、バッファーなどのような補助物質をも含有しうる。
【0114】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、免疫応答がTh1またはTh2応答を調節しうる1以上の遺伝的アジュバント(1以上の分子アジュバントをコードする核酸)を含みうる。そのような遺伝的アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。Sasakiら,Methods 31:243−254(2003)は、DNAワクチンのためのアジュバント配合および運搬系に関する優れた考察を記載している(Kimら,J.Interferon Cytokine Res.20:487−498(2000)およびKimら,Human Gene Therapy 11:305−321(2000)も参照されたい)。該遺伝的アジュバントは、前記実施形態のいずれかにおけるhMMP−11をコードする発現ベクターとは別の発現ベクター上の、あるいは前記実施形態のいずれかにおけるhMMP−11をコードするのと同じ発現ベクター上の発現カセット内に提供されうる。
【0115】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他のアジュバントおよび賦形剤はVogelら,“A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients(2nd Edition)”,Vaccine and Prevention Research Program,Division of AIDS,National Institute of Allergy and Infectious Diseases,National Institutes of Health,Bethesda,MD 20892に記載されている。
【0116】
本発明のポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、好ましくは、約10μg/mL〜約5mg/mLの範囲のDNA濃度で、医薬上許容される担体中の溶液または懸濁液として投与される。一般に、プラスミドワクチンベクター約5mg、好ましくは約0.05の免疫学的または予防的に有効な量が筋肉組織内に直接投与される。適当な投与量は、ワクチン接種すべき個体に左右され、該ワクチン中に含有されるhMMP−11をコードする核酸を発現する個体の能力、および発現されたhMMP−11に反応する個体の免疫系に左右されうる。選択される厳密な投与量は、1つには、該ワクチンを投与する又はその投与を要求する医学的実施者の判断に左右されうる。
【0117】
該抗MMP−11ワクチンは更に、前記組換えポリヌクレオチドのいずれかを含む組換えアデノウイルスを含む。現在好ましくは、アデノウイルスワクチンは、約1mL未満の最終容量でリン酸緩衝食塩水のような希釈剤中で希釈されて、三角筋の筋肉内に投与される。該組換えアデノウイルスの有効量は一般には約106〜1012ウイルス粒子、好ましくは約107〜1011ウイルス粒子である。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態においては、本明細書に開示されているアデノウイルスおよびポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、増強された免疫応答を誘導するために、種々の初回/追加投与の組合せで使用される。この場合、それらの2つのベクターは「初回および追加」方式で投与される。例えば、第1のタイプのベクターを1回以上投与し、ついで、予め決められた期間、例えば2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月または他の適当な間隔の後、第2のタイプのワクチンを1回以上投与する。好ましくは、該ベクターは、同じポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組合せをコードする発現カセットを含有する。プラスミドベクターをも使用する実施形態においては、該ベクターは、哺乳類または昆虫細胞により認識される1以上のプロモーターを含有することが好ましい。好ましい実施形態においては、該プラスミドベクターは、強力なプロモーター、例えばCMVプロモーター(これに限定されるものではない)を含有するであろう。
【0119】
前記のとおり、アデノウイルスベクター抗MMP−11ワクチンおよびポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、免疫応答を誘導するための単一の治療計画の一部として脊椎動物に投与されうる。1つの実施形態においては、第1のベクターはプラスミドであり、第2のベクターはアデノウイルスベクターである。もう1つの実施形態においては、第1のベクターはアデノウイルスベクターであり、第2のベクターはプラスミドである。前記の方法においては、第1のタイプのベクターは2回以上投与されることが可能であり、該ベクターの各投与は、予め決められた期間を隔てて行われる。第1のタイプのベクターのそのような一連の投与の後、予め決められた期間の経過後に、第2のタイプのベクターの投与が1回以上行われうる。第1のタイプのベクターでの治療と同様に、第2のタイプのベクターも、予め決められた期間の後で1回以上投与されうる。
【0120】
本発明のもう1つの実施形態は、適切に滅菌された容器(例えば、アンプル、ボトル、バイアルなど)内に複数用量または単位投与系として入れられた本発明のアデノウイルスベクターまたはポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンを含むキットである。該容器は、好ましくは、ワクチン製剤の充填後に密閉される。好ましくは、該ポリヌクレオチド抗MMP−1ワクチンは、ラベルが添付された容器内に入れられる。該ラベルは該ワクチンを特定するものであり、United States Food and Drug Administrationのような政府規制機関により規定された様式の、適当な法律に基づく該ワクチンの承認、投与情報などを示す注意書き有する。該ラベルは、好ましくは、該ワクチンを患者に投与する医療専門家にとって有用な該ワクチンに関する情報を含有する。該キットは、好ましくは、該ワクチンの投与、指示、適応症および必要な警告に関する印刷された情報資料をも含有する。
【0121】
本発明の抗MMP−11ポリペプチドワクチンは、その最も基本的な実施形態においては、MMP−11の亜鉛結合部位HEXXHXXGXXH(配列番号3)を含む保存アミノ酸の1以上が代替アミノ酸に改変された、触媒的に不活性なMMP−11を含む。例えば、配列番号5に示すとおり、hMMP−11の216位の保存グルタミン酸をアミノ酸バリンへと変化させて、触媒的に不活性なhMMP−11を得た。好ましくは、触媒的に不活性なMMP−11は、MMP−11がそのカルボキシ末端において免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合または連結されたMMP−11融合ポリペプチドである。現在好ましい実施形態においては、免疫増強要素ポリペプチドはLTBポリペプチド、好ましくは、シグナルペプチドが除去されたLTBであり、例えば、配列番号7に示すアミノ酸配列を含むLTBポリペプチドに、配列番号5に示す触媒的に不活性なhMMP−11が連結されている。
【0122】
該ポリペプチド抗MMP−11ワクチンは、直接的な注射、エレクトロポレーション、粘膜運搬などのような種々の運搬メカニズムにより投与されうる。いくつかの好ましい実施形態においては、該ワクチンは、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所的または経口的に投与される。好ましくは、該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、水、食塩水(塩類液)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びそれらの組合せのような医薬上許容される担体および賦形剤中に製剤化される。該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、湿潤剤、乳化剤、バッファーなどのような補助物質をも含有しうる。該ポリペプチド抗MMP−11ワクチンは、免疫応答をTh1またはTh2応答へと調節しうる1以上の分子アジュバントを含みうる。そのような分子アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α)、腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β)、Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18、Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、IL−8、インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10)、マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α)、ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。該ポリペプチド抗MMP−11ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他のアジュバントおよび賦形剤は前記のVogelら,“A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients(2nd Edition)”に記載されている。
【0123】
本発明は更に、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定するための方法であって、マウスにおいて癌を誘発させ、該誘発癌を有するマウスに該アナライトを投与し、該誘発癌を有するマウスにおいて該アナライトが該癌を抑制するかどうかを判定して、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定する方法を提供する。特定の実施形態においては、該アナライトを該マウスに投与する前に、該アナライトがMMP−11に結合することを確認する。更に他の実施形態においては、該マウスにおいて誘発される癌は結腸癌であり、更に他の実施形態においては、該マウスにおいて該癌を誘発するのに十分な量の1−2ジメチルヒドラジン(DMH)を該マウスに投与することにより、該マウスにおいて該癌を誘発させる。
【0124】
以下の実施例は、本発明の特徴および実施形態を更に例示するために記載されており、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0125】
マウスMMP−11を発現するベクターを構築するために、基質区画の一部であったマウス繊維芽細胞からcDNAをクローニングした。全RNAをNIH−3T3細胞から抽出し、マウスMMP−11に特異的なオリゴヌクレオチドを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりcDNAを増幅した。使用したPCRプライマーは、ヌクレオチド配列5’−CCCGGGGCGG ATGGCACGGG CCGCCTGTC−3’(配列番号16)を有するフォワード5’−MMP−11、およびヌクレオチド配列5’−GTCAGMGGAA AGTRTTGGCA GGCTCAGCAC AG−3’(配列番号17)(ここで、MはAまたはCであり、RはAまたはGである。)を有する縮重オリゴヌクレオチドリバース3’−MMP−11−1473であった。RT−PCR反応を以下のとおりに行った:45℃で30秒間;94℃で2分間;ついで94℃で15秒間、58℃で30秒間および68℃で2分間の40サイクル。
【0126】
約1630bpの増幅産物を得、TAクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen,Carlsbad,CA)内にクローニングしてプラスミドpCR2.1−MMP−11を得た。クローニングされた増幅産物のDNA配列分析は、クローニングされた増幅産物のDNA配列がマウスMMP−11 cDNA(アクセッション番号:NM 008606)のヌクレオチド配列と完全に一致することを示した。マウスMMP−11をコードするcDNAをEcoRIでの消化によりpCR2.1−MMP−11から取り出し、プラスミドベクターpV1JnsのEcoRI部位内にクローニングして、発現ベクターpV1JnsB−MMP−11(図1)を得た。図1に示すとおり、MMP−11をコードするcDNAはヒトCMVプロモーターの下流に存在する。PV1jベクターはMontgomeryら,DNA Cell Biol.12:777−783(1993)に記載されている。
【0127】
MMP−11の発現を確認するために、HeLa細胞をpV1JnsB−MMP−11でトランスフェクトした。マウスMMP−11と交差反応するヒトMMP−11に対する抗体を使用するウエスタンブロットにより、細胞抽出物を分析した。図2に示すとおり、約50kDaのバンドが検出され、このことは、MMP−11が該ベクターにより発現されたことを示している。
【実施例2】
【0128】
種々のタイプの抗原をコードする遺伝子のコドン最適化はインビボにおける発現の増強および免疫原性の増強をもたらしうることが示されている。したがって、mMMP−11の発現を増強し、免疫原性を増強するためには、mMMP−11コード配列をコドン最適化した。
【0129】
mMMP−11 cDNA配列を、同じアミノ酸配列をコードするがマウス細胞における発現のために最適化されたコドン使用頻度を有するポリヌクレオチド配列に変換した(コドン使用頻度に関する全般的考察は、Lathe,J.Molec.Biol.:183:1−12(1985)を参照されたい)。該方法論は一般に、マウスにおける高発現遺伝子に一般に用いられていない、野生型mMMP−11ポリヌクレオチド配列におけるコドンを特定し、マウスにおける高発現遺伝子に一般に用いられるコドンでそれらを置換して、マウス由来の細胞における該ポリヌクレオチドの高発現のために高発現遺伝子において一般に用いられるコドンのみを含有するポリヌクレオチドを得ることよりなる。ついで新たな遺伝子配列を、これらのコドン置換により生じた望ましくない配列(例えば、「ATTTA」配列、イントロンスプライス認識部位の非意図的生成、望ましくない制限酵素部位、高いGC含量など)に関して検査した。望ましくない配列を含むコドンを他のコドン(好ましくは、実用的な場合には、同じアミノ酸をコードする、高発現遺伝子において用いられる別のコドン)で置換することにより、望ましくない配列を排除した。ついで、発現の改善に関して、合成遺伝子セグメントを試験する。マウスにおける発現のための該コドン最適化遺伝子は、Vector NTIプログラムアルゴリズム(InforMax,Rockville,MD)を使用して設計した。転写のレベルを上昇させるために、最適化されたコザック配列をATG開始コドンの5’側に挿入した。さらに、翻訳の終結を増強するために、2つの連続的な終止コドンを該コード配列の下流に挿入した。
【0130】
mMMP−11をコードするコドン最適化cDNAを、GENEART GmbH,Germanyにおいて行われたオリゴヌクレオチド構築により合成し、ついでpV1JnsAベクターのBglII/SalI部位内にクローニングして、pV1JnsA−mMMP−11optを得た。MMP−11の免疫原性を改変することなくMMP−11の酵素活性を阻害するために、220位のグルタミン酸(E)をアラニン(A)へと変化させる点変異を触媒部位に導入した(Noelら,Oncogene.19:1605−12(2000))。これはベクターpV1JnsA−mMMP−11(cat−)optを与えた。mMMP−11の触媒的に不活性な該コドン最適化変異体(mMMP−11(cat−)opt)のヌクレオチド配列を図3(配列番号3)に示し、ベクターpV1JnsA−mMMP−11(cat−)optの地図を図6Aに示す。
【0131】
WO2005077977は、大腸菌(E.coli)の易熱性毒素B(LTB)への免疫増強要素への癌胎児性抗原(CEA)の遺伝的融合がCEAに対するワクチン接種の効力を更に増強することを示した。したがって、MMP−11の効力を増強するために、シグナル配列が除去された大腸菌(E.coli)LTBに融合された触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを合成し、pV1JnsAベクターのBglII/SalI部位内にクローニングしてpV1JnsA−mMMP−11(cat−)−LTBopt(図6B)を得た。触媒的に不活性なmMMP−11LTB融合体は、GENEART GmbH,Germanyにおいて行われたオリゴヌクレオチド構築により合成した。LTBをコードするコドンを、ヒト由来の細胞における発現のために最適化した。図4は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示し、図5は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0132】
pV1JnsA−mMMP−11(cat−)−LTBoptの発現を試験するために、HeLa細胞をLipofectamine2000(Invitrogen)によりpV1jnsA−mMMP−11(cat−)−LTBoptでトランスフェクトした。全細胞抽出物を、細胞溶解バッファー(2%SDS,5mM EGTA,5mM EDTA,20mM Tris−HCl,pH7.4)を使用して調製し、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合タンパク質の発現に関してウエスタンブロットにより分析した。標準的なウエスタンブロットプロトコールに従い抗MMP−11および抗LTB抗体を使用して、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合タンパク質を検出した。抗MMP−11および−LTB抗体はBIOMOL(Exter,UK and Plymouth Meeting,PA,抗MMP−11 cat.#SA−371)およびAbeam(Cambridge,UK and MA,抗E.Coli易熱性毒素,cat#ab9199)から入手した。図7に示すとおり、両方の抗体は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合タンパク質の分子量に対応する約60KDaのバンドに結合した。
【実施例3】
【0133】
野生型mMMP−11と比較してmMMP−11(cat−)optおよびmMMP−11(cat−)−LTBoptの免疫原性能を試験するために、Zucchelliら(Enhancing B and T cell Immune response to an HCV E2 DNA vaccine by muscle electro gene transfer.J.Virol.74:11598−11607,(2000))に従い、各BALB/cマウスを、食塩水中の50μgのプラスミドDNAの4回のDNA注射により筋肉内に免疫し、ついで1週間を隔ててエレクトロポレーションを行った。最後の注射の2週間後、マウスを犠死させ、mMMP−11ペプチドに対する免疫応答をインターフェロンガンマ(IFNγ)に関する細胞内染色により測定した。図8に示すとおり、野生型および触媒的に不活性なmMMP−11optは共に、マウスにおける免疫寛容を効率的に破壊するものであった(%CD8+IFNγ+>0.1%)。mMMP−11と触媒的に不活性なmMMP−11optとの間には有意差は何ら存在しないようであった。しかし、同様に図8に示されているとおり、LTBへの触媒的に不活性なmMMP−11optの融合は免疫応答を有意に増強した(p<0.05)。
【0134】
体液性応答をウエスタンブロットにおいて測定した。体液性免疫応答を測定するために、pV1JnsB−MMP−11でトランスフェクトされたHeLa細胞からの全細胞抽出物をポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロースメンブレン上にトランスファーした。前記の免疫マウスからの血清を該メンブレンと共にインキュベートした。ついでmMMP−11に対するマウス抗体の検出を、アルカリホスファターゼに結合した抗マウスIgG(Sigma Chemicals,St.Louis,MO)を使用することにより行った。mMMP−11の分子量に対応するバンドの検出は、mMMP−11に対する抗体の存在を示す。図9に示すとおり、mMMP−11で免疫されたマウスと触媒的に不活性なmMMP−11(cat−)−LTBoptで免疫されたマウスとの間で体液性応答における見掛け上の有意差は観察されなかった。
【0135】
図8に示す結果に基づき、ワクチン接種研究の使用するための最良の免疫原としてmMMP−11(cat−)−LTBoptを選択した。
【実施例4】
【0136】
MMP−11を過剰発現する腫瘍モデルを以下のとおりに作製した。1,2−ジメチルヒドラジン(DMH)またはその代謝産物アゾキシメタンは、しばしば、腫瘍誘発研究における発癌物質として使用される。DMHは、いくつかの場合には1回の経口暴露後でさえも、多数の動物種において結腸腫瘍を誘発することが判明しているが(ChoudharyおよびH.Hansen,Chemosphere 37:801−843(1998))、典型的には6〜10回の週1回の処理が用いられる。DMHはアルキル化剤であり、この化学物質での処理はDNA塩基に対するメチル付加体、点変異、小核小体および姉妹染色分体交換を誘発することが示されている。DMHでの処理は結腸内のアポトーシス(Blakeyら,Cancer Res.45:242−249(1985))、およびヒト結腸癌に特徴的な結腸上皮細胞の細胞増殖の促進を誘発する(Maら,World J.Gastroenterol.8:847−852(2002))。
【0137】
感受性マウス系統、例えばA/Jにおいて、そしてそれより低い度合ではあるがBALB/cにおいても、結腸組織におけるDMH誘発性発癌の進行は以下の異なる段階を経て進行する:(1)異常陰窩形成(ACF)、(2)腺腫、(3)ポリープ、および(4)腺癌。腫瘍形成のこの過程におけるmMMP−11の発現を確認するために、A/Jマウスに6回の週1回のDMHの注射を行い、最後のDMH注射の5週間後に該マウスを犠死させた。この段階で、異常陰窩およびいくつかの腺腫の両方がマウス結腸組織内に存在した。腸組織を凍結し、mMMP−11に対する抗体を使用するウエスタンブロットおよび免疫組織化学法(IHC)により分析した。未処理マウス(ビヒクル)においては、IHC分析は、正常陰窩の基底部にmMMP−11の発現を示し、mMMP−11の発現は結腸幹細胞に限定されているらしかった。異常陰窩および腺腫形成においては強力かつ広汎な発現が検出された。この観察は、DMHで処理されたマウスまたは未処理のままのマウスからの結腸組織抽出物のウエスタンブロット分析により証明された。DMH処理結腸には活性化形態のmMMP−11が存在しており(図10)、このことは該腫瘍状組織による該プロテイナーゼの過剰発現を示している。これらのデータは、DMH誘発性発癌が抗MMP−11療法およびワクチン接種に関するモデルとして適していることを示している。
【実施例5】
【0138】
この実施例は抗MMP−11ワクチンの治療効力を示す。前実施例において示したとおり、A/Jマウスで1−2ジメチルヒドラジン(DMH)の投与により誘発された異常陰窩形成(ACF)および腺腫において、MMP−11は過剰発現される。他の研究は、DMHが免疫系および遺伝的ワクチン接種の効力を妨げないことを示している。DMHが免疫系の機能および遺伝的ワクチン接種の効力を妨げるかどうかを確認するために、以下の実験を行った。
【0139】
10匹のBALB/cまたはA/Jマウスの群を第5週齢からDMHの6回の腹腔内(IP)注射で処理するか、あるいは未処理(模擬)のままとした。第8週および第11週に、該マウスのすべてに50μgのプラスミドpV1J−CEAoptの注射を行った(pV1J−CEAoptに関してはWO2005077977を参照されたい)。2週間後、マウスから採血し、pV1J−CEAoptによりコードされるCEAに対するその免疫応答を、CEAタンパク質を包含する15マーペプチドでの刺激直後の細胞内染色により分析した。BALB/cマウスでは、CD8+免疫応答が測定された。図19Aは、DMH処理BALB/cマウスと模擬処理BALB/cマウスとの間にCD8+応答における有意差が無かったことを示している。A/Jマウスでは、CD8+およびCD4+免疫応答が測定された。図19Bおよび19Cは、DMH処理A/Jマウスと模擬処理A/Jマウスとの間にCD8+およびCD4+応答における有意差が無かったことを示している。これらの結果は、DMHが免疫系の活性に影響を及ぼさないらしいことを示した。総合すると、これらのデータは、MMP−11が腫瘍関連抗原であること、およびMMP−11に対するワクチンが、MMP−11を過剰発現する癌を治療するための実施可能な手段となることを示唆した。
【0140】
抗MMP−11ワクチンの効力を試験するために、60匹のA/Jマウスの群を6回の週1回の注射でDMHで処理した。1群は未処理のままである(ナイーブ)。もう1つの群をpV1JnsA−mMMP−11(cat−)−LTBoptで免疫し、ついでエレクトロポレーションを行う(図11Aに示すスキームに示されているとおり)。最後の免疫の2週間後、mMMP−11に対する細胞性免疫(CMI)を、全タンパク質を包含する15マーペプチドのプールで分析したが、該分析群においては、乏しい免疫応答が検出されたに過ぎなかった(データ非表示)。DMHの最後の注射の7〜8週間後、1群当たり20匹のマウスを犠死させ、ACF、腺腫、ポリープおよび腺癌の存在に関して結腸を分析した。ワクチン接種されたマウスは、DMHにより誘発されたACF、腺腫、ポリープおよび腺癌の存在の有意な軽減を示している(図11B〜11E)。
【実施例6】
【0141】
もう1つのマウス系統におけるDMH発癌モデルでの腫瘍防御の効力を確認するために、BALB/cマウスを使用して、前記と同じ処理および免疫方式に従った。最後の免疫の2週間後、mMMP−11に対するCMIを、全タンパク質を包含する15マーペプチドのプールで分析した。
【0142】
免疫マウスからの脾細胞の調製のために、脾臓を犠死マウスから無菌的に摘出し、格子(grid)を通して擦り取ることにより破砕した。ACK細胞溶解バッファー(Life Technologies,Bethesda,MD)の存在下での10分間のインキュベーションにより、赤血球ライセートを得た。1200rpmで10分間の遠心分離の後、白血球をR10培地に再懸濁させた。1〜2×106個の脾細胞またはPBMC(抹消血単核細胞)を1mLのR10培地に再懸濁させた。抗原ペプチドを1μg/mLの最終濃度までブレフェルジン(Brefeldin)Aと共に加えた。mMMP−11抗原ペプチドは15マーペプチドのプールを含み、それらは一緒になって全MMP−11ペプチドを包含するものであった。ペプチドの総数は121であり、4つのプール(A,1〜30;B,31〜60;C,61〜90;D,91〜121)に分割された。
【0143】
37℃で12時間のインキュベーションの後、該細胞を3mLのFACSバッファー(1%FBSで補足され0.05% NaN3を含有するPBS)で洗浄し、室温で10分間遠心分離した。該細胞を、100μLのFACSバッファー中、抗マウスCD16/CD32と共に4℃で15分間インキュベートした。ついで、該細胞をFACSバッファーで洗浄した後、15マーmMMP−11抗原ペプチドの存在下のインキュベーションの際のIFNγの分泌に関して該細胞を分析した。
【0144】
表面抗原染色のために、アロフィコシアニン(APC)結合抗マウスCD3フィコエリトリン(PE)結合抗マウスCD4およびペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP)結合抗マウスCD8α(すべて、FACSバッファー中で1:50希釈されたもの)を該細胞に加えて100μLの最終容量とし、該細胞を暗所にて室温で30分間インキュベートした。PERMWASH(Pharmingen)での洗浄の後、細胞を100μLのCYTOFIX−CYTOPERM溶液(Pharmingen)に再懸濁させ、ボルテックスし、暗所にて4℃で20分間インキュベートした。
【0145】
細胞内染色のために、該細胞を、PerWash中で1:50希釈されたフルオレセイン(FITC)結合抗マウスインターフェロンγ(100μLの最終容量)と共に暗所にて室温で30分間インキュベートした。洗浄後、該細胞をPBS中の1% ホルムアルデヒド(250〜300μL)に再懸濁させ、FACS CALIBER(Becton Dickinson,San Jose,CA)で分析した。
【0146】
免疫群において、主として該タンパク質のC末端に対する有意な免疫応答が検出され、それはCD8+特異的であった(図12A)。惹起されたCD8+エフェクターは機能的であった。なぜなら、それは、mMMP−11抗原ペプチドで負荷された腫瘍状標的細胞を細胞溶解することが可能だったからである(図12B)。最も重要なことは、ワクチン接種マウスにおいて、ACFから腺腫の全段階において非常に有意な防御が観察されたことである(図13A〜13D)。これらのデータは、MMP−11が能動的特異的免疫療法のための最適な標的であり、遺伝的ワクチン接種が腫瘍防御において極めて効率的であることを示している。
【実施例7】
【0147】
触媒的に不活性なヒトMMP−11をコードするヌクレオチド配列のクローニングおよび最適化
マウスMMP−11と同様にして、ヒトMMP−11をヒト細胞における最高コドン使用頻度に従いコドン最適化し、220位の触媒部位内のグルタミン酸(E)のコドンをアラニン(A)のものに変化させることにより触媒的に不活性にした。コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11を含むポリヌクレオチドをオリゴヌクレオチド構築により合成し(GENEART,GmbH)、ベクターpV1JnsAのBglII/EcoRI部位内にクローニングしてpV1JnsA−hMMP−11(cat−)optを得た(図18)。触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を図14に示す。触媒的に不活性なhMMP−11のアミノ酸配列を図15に示す。ベクターpV1JnsA−hMMP−11(cat−)optはヒトにおける使用のために設計した。これは、免疫原性エピトープを特定するためにヒトMHCクラスI(例えば、HLA−A2)に関するマウストランスジェニックのような前臨床モデルにおいて使用されうる。
【0148】
hMMP−11を含む抗MMP−11ワクチンの効力を改善するために、シグナル配列が除去された大腸菌(E.coli)LTBに融合された触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを合成し、pV1JnsAベクターのBglII/SalI部位内にクローニングしてpV1Jns−MMP−11(cat−)−LTBopt(図20)を得る。pV1Jns−MMP−11(cat−)−LTBoptのヌクレオチド配列を配列番号18に示す。該ヌクレオチド配列は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードするヌクレオチドコドンを、LTBをコードするヌクレオチドコドンから分離するXbaIポリリンカーの第2ヌクレオチドから始まる。配列番号18のヌクレオチド配列においては、CMVプロモーターはヌクレオチド3647−4261を含み、イントロンAはヌクレオチド4396−5221を含み、触媒的に不活性なhMMP−11はヌクレオチド5253−6715を含み、XbaIポリリンカーはヌクレオチド6715−5を含み、LTBはヌクレオチド6−315を含み、BGHポリAはヌクレオチド382−599を含む。触媒的に不活性なヒトMMP−11−LTB融合体のポリヌクレオチドは、GENEART GmbH,Germanyにおいて行われうるオリゴヌクレオチド構築により合成されうる。
【0149】
本発明は、例示されている実施形態に関して記載されているが、本発明はそれらに限定されるものではないと理解されるべきである。本明細書中の教示を利用する当業者は、本発明の範囲内の追加的な修飾および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付されている特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1はベクターpV1JnsB−mMMP−11の地図を示す。ヒトCMVプロモーターおよびマウスMMP−11 cDNAが示されている。
【図2】図2はマウスMMP−11の発現を示す。HeLa細胞をpV1JnsB−MMP−11でトランスフェクトし、抽出物をウエスタンブロットで分析した。MMP−11の分子量に対応するバンドが検出された。
【図3】図3は、触媒的に不活性なマウスMMP−11をコードするコドン最適化核酸(mMMP−11opt)のヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。コドン最適化された触媒的に不活性なmMMP−11に対応するヌクレオチドが黒で示されており、XbaI部位を含むポリリンカーの追加的ヌクレオチドが下線で示されている。クローニング部位、コザック配列および終止コドンのヌクレオチドが斜体で示されている。mMMP−11の開始コドンが太字で示されている。
【図4】図4は、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化核酸(mMMP−11−LTBopt)のヌクレオチド配列(配列番号14)を示す。コドン最適化された触媒的に不活性なmMMP−11に対応するヌクレオチドが黒で示されており、XbaI部位を含むポリリンカーの追加的ヌクレオチドが下線で示されている。大腸菌(E.coli)LTB配列をコードするヌクレオチドが小文字で示されている。クローニング部位、コザック配列および終止コドンのヌクレオチドが斜体で示されている。
【図5】図5は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTBopt融合ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号15)を示す。触媒的に不活性なmMMP−11に対応するポリペプチドを含むアミノ酸が黒で示されており、LTB配列が斜体で示されている。ポリリンカーによりコードされるアミノ酸が下線で示されている。
【図6A】図6Aは、触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−mMMP−11(cat−)optの地図を示す。
【図6B】図6Bは、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−mMMP−11(cat−)LTBoptの地図を示す。
【図7】図7は、pV1JnsA−MMP−11(cat−)−LTBoptでトランスフェクトされたHeLa細胞におけるpV1JnsA−MMP−11(cat−)−LTBoptの発現を示す、抗MMP−11または抗LTB抗体を使用したウエスタンブロットを示す。
【図8】図8は、mMMP−11、mMMP−11optおよびmMMP−11(cat−)−LTBoptにより惹起された細胞性免疫応答を示す。DNAエレクトロポレーション(DNA−EP)の4回の週1回の注射により6匹のBALB/cマウスを免疫した。mMMP−11タンパク質のC末端を含むペプチドを使用するIFNγに関する細胞内染色により、免疫応答を測定した。丸印は、それぞれの単一のマウスに関するCD8+IFNγ+の割合(%)を表す。水平の棒線は該群の幾何平均を表す。
【図9】図9は、触媒的に不活性なmMMP−11およびmMMP−11(cat−)−LTBoptにより惹起された体液性応答を示す。DNAエレクトロポレーション(DNA−EP)の4回の週1回の注射によりBALB/cマウスを免疫した。抗体の存在をウエスタンブロットにより測定した。mMMP−11に対応する50KDaのバンドの検出はmMMP−11に対する体液性応答を示している。
【図10】図10は、mMMP−11が、DMHにより誘発されたマウス結腸腺腫において過剰発現されることを示す。A/JマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。5週間後、結腸組織をIHCおよびウエスタンブロット法により分析する。Vehはビヒクル(PBS)を意味する。
【図11A】図11Aは、結腸癌を予防するためのmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示すために行った実験の概要図を示す。A/JマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。マウスの一群を未処理のままにし(ナイーブ)、もう1つの群を50μgのプラスミドpV1J−mMMP−11(cat−)−LTBoptでワクチン接種した。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸を異常陰窩形成(ACF)(図11Bおよび11C)、ポリープ(図11D)および腺腫(図11D)に関して顕微鏡で分析した。
【図11B】図11Bは、ACFの抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図11C】図11Cは、ACFの抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図11D】図11Dは、ポリープの抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図11E】図11Eは、腺腫の抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図12A】図12Aは、抗mMMP−11遺伝的ワクチンにより惹起された免疫応答を示す。BALB/cマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。マウスの一群を未処理のままにし(ナイーブ)、もう1つの群を50μgのプラスミドpV1J−mMMP−11(cat−)−LTBoptでワクチン接種した。IFNγに関する細胞内染色により免疫応答を測定した。黒い丸印は、それぞれの単一のマウスに関するCD8+IFNγ−の割合(%)を表す。水平の棒線は該群の幾何平均を表す。
【図12B】図12Bは、抗mMMP−11遺伝的ワクチンにより惹起された免疫応答を示す。BALB/cマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。マウスの一群を未処理のままにし(ナイーブ)、もう1つの群を50μgのプラスミドpV1J−mMMP−11(cat−)−LTBoptでワクチン接種した。エフェクター細胞を7日間にわたりmMMP−11ペプチドで刺激するCTLアッセイを用いて、免疫応答を測定した。mMMP−11ペプチドで負荷(load)されていない又は負荷されたp815肥満細胞腫細胞を標的として使用した。
【図13A】図13Aは、ACFの抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をACFに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図13B】図13Bは、ACFの抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をACFに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図13C】図13Cは、ポリープの抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をポリープに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図13D】図13Dは、腺腫の抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をポリープに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図14】図14は、ヒトにおける発現のためにコドンが最適化されている、触媒的に不活性なヒトMMP−11(hMMP−11(cat−)opt)をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号4)を示す。
【図15】図15は、触媒的に不活性なhMMP−11のアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図16】図16は、MMP−11およびLTBの両方をコードするコドンがヒトにおける発現のために最適化されている、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なhMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号12)(hMMP−11(cat−)−LTBopt)を示す。LTBのアミノ酸1−21をコードするコドンは該融合ポリペプチド内に含まれない。コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11に対応するヌクレオチドが黒で示されており、XbaI部位を含むポリリンカーの追加的ヌクレオチドが下線で示されている。大腸菌(E.coli)LTB配列をコードするヌクレオチドが小文字で示されている。
【図17】図17は、触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号10)を示す。触媒的に不活性なMMP−11を含むアミノ酸が大文字で示されており、LTBを含むアミノ酸が斜体で示されており、ポリリンカーによりコードされるアミノ酸が下線で示されている。開始コドンが太字で示されている。
【図18】図18は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−hMMP−11(cat−)optの地図を示す。
【図19A】図19Aは、DMHがBALB/cマウスのCD8+免疫応答を妨げないことを示す。
【図19B】図19Bは、DMHがA/JマウスのCD8+免疫応答を妨げないことを示す。
【図19C】図19Cは、DMHがA/JマウスのCD4+免疫応答を妨げないことを示す。
【図20】図20は、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−hMMP−11(cat−)−LTBopt(配列番号18を参照されたい)の地図を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を過剰発現する腫瘍および癌を治療するためのワクチンにおいて使用するための、MMP−11もしくはストロメライシン−3(ST−3)またはMMP−11をコードする核酸を含む組成物に関する。特定の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで、MMP−11および該免疫増強要素をコードするコドンはヒト細胞における該融合ポリペプチドの発現の増強のために最適化されている。他の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む。該組成物は、単独で、または他の腫瘍関連抗原に対するワクチンならびに放射線療法および化学療法のような通常の療法と共に相乗的に使用されうる。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテイナーゼ−11(MMP−11)またはストロメライシン3(ST3)は、ほとんどではなくとも多数の浸潤性原発性癌および多数のそれらの転移癌において、そしてそれらより稀ではあるが肉腫および他の非上皮性悪性疾患において発現される(Bassetら,Critical Reviews in Oncology/Hematology 26:43−53,(1997)を参照されたい。)。MMP−11発現のレベルの測定は、癌再発の最大のリスクを有する患者を特定するために行われうる。腫瘍内に高レベルのMMP−11 RNAまたはタンパク質を有する患者では、腫瘍内に低レベルのMMP−11 RNAまたはタンパク質を有する患者の場合より再発性乳癌が頻繁に生じたことが示されている。同様に、MMP−11発現は、正常組織と比べて、膵腫瘍において上昇することが判明しており、MMP−11発現のレベルはリンパ節の関与および全体的な生存と強く関連していた(Jonesら,Clin.Cancer Res.10:2832−2845,(2004))。MMP−11 mRNA発現は、非腫瘍組織におけるMMP−11 mRNA発現と比べて結腸癌においても有意に上昇する(Thewesら,Diagn.Mol.Pathol.5:284−290,(1996))。
【0003】
癌の進行におけるMMP−11の役割はいくつかの前臨床観察により実証されている。例えば、MMP−11発現はマウスにおける腫瘍獲得を促進することが示された(Noelら,J Clin Invest 97:1924−1930(1996))。MMP−11は悪性上皮細胞の回遊をパラ分泌の様態で促進することも示されており、該ホーミングは塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)(Mariら,J.Biol.Chem.273:618−626(1998))のような細胞外マトリックス関連因子を要するらしい(Massonら,J.Cell Biol.140:1535−1541(1998))。MMP−11プロテアーゼ活性は、細胞外マトリックスを再構築しそれが微環境因子を放出するのを誘導することにより、癌の進行を調節しうる(Noelら,Oncogene 19:1605−1612(2000))。MMP−11は腫瘍状細胞に対して抗アポトーシスおよび抗壊死効果を及ぼし(Boulayら,Cancer Res.61:2189−2193(2001))、これはその触媒活性により媒介されるらしい(Wuら,J.Cell Biochem.82:549−555(2001))。MMP−11欠損は腫瘍非含有生存(tumor free survival)を増進し、局所または遠位の浸潤を調節することが示されている(Andarawewaら,Cancer Res.63:5844−5849(2003))。胃癌細胞におけるMMP−11 mRNAのノックダウンはインビトロおよびインビボの両方における腫瘍成長を劇的に抑制するらしい(Dengら,Biochem.Biophys.Res.Comm.26:274−281(2005))。MMP−11切断により生じるa1−プロテイナーゼインヒビターの切断産物はナチュラルキラー細胞(NK)に対する腫瘍細胞の感受性を低下させる点で、MMP−11は腫瘍に対する免疫系の応答を妨げることも示されている(Kataokaら,Am.J.Pathol.154:457−468,(1999))。また、MMP−11ヌルマウスにおいては、野生型マウスの場合より多数の好中球およびマクロファージが腫瘍に浸潤し、このことは、MMP−11がこれらの細胞に対する誘引物質を抑制することを示している(Boulayら,Cancer Res.61:2189−2193(2001))。したがって、MMP−11は腫瘍生成の初期段階において決定的に重要な役割を果たしているらしい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MMPの合成を遮断する、または細胞表面へMMPの活性を導く分子とMMPとの相互作用を妨げる、またはそれらの酵素活性を抑制するいくつかの物質が開発されている(EgebladおよびWerb,Nature Reviews 2:163−174(2002)に概説されている。)。それらの物質のほとんどはMMP−11に特異的なものではなく、MMPファミリーの他のメンバーの機能を妨げるものであった。しかし、これらのMMPインヒビターのいくつかを使用する臨床試験は、該インヒビターが、限られた抗腫瘍効果しか有していないことを示唆している。したがって、前記を考慮すれば、MMP−11活性を抑制または妨げる抗癌療法および治療方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の簡潔な要約
本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−1)を過剰発現する腫瘍および癌を治療するためのワクチンにおいて使用するための、MMP−11もしくはストロメライシン−3(ST−3)またはMMP−11をコードする核酸を含む組成物を提供する。特定の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで、MMP−11および該免疫増強要素をコードするコドンはヒト細胞における該融合ポリペプチドの発現の増強のために最適化されている。他の実施形態においては、該組成物は、免疫増強要素にC末端において連結された触媒的に不活性化されたMMP−11を含む。該組成物は、単独で、または他の腫瘍関連抗原に対するワクチンならびに放射線療法および化学療法のような通常の療法と共に相乗的に使用されうる。
【0006】
したがって、本発明は、MMP−11ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供し、ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている(すなわち、該ヌクレオチド配列はヒト由来細胞における核酸の高発現のために最適化されている。)。
【0007】
該核酸の好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含み、特定の実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。
【0008】
該核酸の他の実施形態においては、該ポリヌクレオチドはMMP−11をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドはヒトMMP−11または霊長類由来のMMP−11をコードする。
【0009】
該核酸の更に他の実施形態においては、該核酸は、配列番号4のヌクレオチド配列を有するヌクレオチド配列を含む。
【0010】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドをコードする核酸を提供する。好ましい実施形態においては、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素(LTB)のサブユニットBよりなる群から選ばれる。
【0011】
該核酸の現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素は大腸菌(E.coli)LTBである。他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。該核酸の更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる。
【0012】
前記核酸の好ましい実施形態においては、MMP−11は、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む。
【0013】
該核酸の他の実施形態においては、MMP−11は、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる。更に他の実施形態においては、該融合ポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む。
【0014】
本発明は更に、プロモーターに機能的に連結された前記実施形態のいずれかの核酸を含む発現ベクターを提供する。本発明は更に、前記発現ベクターの実施形態のいずれかを含有する宿主細胞を提供する。本発明は更に、該融合ポリペプチドを産生する条件下、細胞培養培地内で前記宿主細胞を培養することを含む製造方法を提供する。
【0015】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドを提供する。
【0016】
該融合ポリペプチドの特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0017】
該融合ポリペプチドの現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)LTBである。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む。
【0018】
該融合ポリペプチドの好ましい実施形態においては、MMP−11は、それを触媒的に不活性にする変異を含む。好ましくは、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。更に他の実施形態においては、該融合ポリペプチドを含むMMP−11ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、あるいは該ポリペプチドは、配列番号10に示すアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明は更に、MMP−11をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドワクチンを提供し、ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。
【0020】
該ポリヌクレオチドワクチンの好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、ヒト由来または霊長類由来のMMP−11である。該ポリヌクレオチドワクチンの更にもう1つの実施形態においては、該ヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0021】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドワクチンを提供する。該ポリヌクレオチドワクチンの特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0022】
該ポリヌクレオチドワクチンの好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、ヒト由来または霊長類由来のMMP−11である。該ポリヌクレオチドワクチンの更にもう1つの実施形態においては、該ヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0023】
該ポリヌクレオチドワクチンの現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まず、更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる。
【0024】
該ポリヌクレオチドワクチンのもう1つの好ましい実施形態においては、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。
【0025】
もう1つの実施形態においては、MMP−11は、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる。更にもう1つの実施形態においては、該融合ポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む。
【0026】
該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の遺伝的アジュバントを含む。そのような遺伝的アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の通常のアジュバントを含む。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明は更に、免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドを含むポリペプチドワクチンを提供する。好ましい実施形態においては、MMP−11は、それを触媒的に不活性にする変異を有する。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。
【0029】
該ポリペプチドワクチンの特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0030】
現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素は大腸菌(E.coli)LTBである。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む。
【0031】
該ポリペプチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、あるいは配列番号10に示すアミノ酸配列を含む。
【0032】
該ポリペプチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは、Th1またはTh2応答への免疫応答を調節しうる1以上の分子アジュバントを含む。そのような分子アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
該ポリペプチドワクチンの更に他の実施形態においては、該ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明は、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、MMP−11をコードする核酸ヌクレオチド配列の使用;個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸の使用;および個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドの使用を提供する。
【0035】
本発明は更に、MMP−11をコードするヌクレオチド配列(ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。)を含む核酸を含むポリヌクレオチドワクチン、または免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むポリヌクレオチドワクチンを準備し、該ワクチンを個体に投与して癌を治療することを含む、個体における癌の治療方法を提供する。該融合ポリペプチドをコードする核酸の現在好ましい実施形態においては、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において存在しない、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において存在するヌクレオチドコドンで置換されている。
【0036】
前記方法の特定の実施形態においては、該個体は、化学療法、放射線療法、および腫瘍関連抗原に対するワクチンよりなる群から選ばれる1以上の治療を受けている。更に他の実施形態においては、該個体は、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有し、あるいは該個体は、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する。
【0037】
該方法の好ましい実施形態においては、該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11は更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を有する。現在好ましい実施形態においては、該変異はMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する。該ポリヌクレオチドワクチンの更に他の実施形態においては、MMP−11は、ヒト由来または霊長類由来のMMP−11である。該ポリヌクレオチドワクチンの更にもう1つの実施形態においては、該ヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0038】
該方法の特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0039】
該方法の現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まず、更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる。
【0040】
もう1つの実施形態においては、MMP−11は、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる。更にもう1つの実施形態においては、該融合ポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む。
【0041】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の遺伝的アジュバントを含む。そのような遺伝的アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは更に、1以上の通常のアジュバントを含む。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明は更に、免疫増強要素に連結されたMMP−11を含有する融合ポリペプチドを含むワクチンを準備し、該ワクチンを個体に投与して癌を治療することを含む、個体における癌の治療方法を提供する。
【0044】
前記方法の特定の実施形態においては、該個体は、化学療法、放射線療法、および腫瘍関連抗原に対するワクチンよりなる群から選ばれる1以上の治療を受けている。更に他の実施形態においては、該個体は、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有し、あるいは該個体は、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する。
【0045】
該方法の特定の実施形態においては、該免疫増強要素は、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる。
【0046】
該方法の現在好ましい実施形態においては、該免疫増強要素は大腸菌(E.coli)LTBである。更に他の実施形態においては、該LTBはシグナル配列を含まない。更に他の実施形態においては、該LTBは、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む。
【0047】
該方法の更にもう1つの実施形態においては、MMP−11は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、あるいは配列番号10に示すアミノ酸配列を含む。
【0048】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは、Th1またはTh2応答への免疫応答を調節しうる1以上の分子アジュバントを含む。そのような分子アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
該方法の更に他の実施形態においては、該ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明は更に、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定するための方法であって、マウスにおいて癌を誘発させ、該誘発癌を有するマウスに該アナライトを投与し、該誘発癌を有するマウスにおいて該アナライトが該癌を抑制するかどうかを判定して、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定する方法を提供する。
【0051】
特定の実施形態においては、該アナライトを該マウスに投与する前に、該アナライトがMMP−11に結合することを確認する。
【0052】
更に他の実施形態においては、該マウスにおいて誘発される癌は結腸癌であり、更に他の実施形態においては、該マウスにおいて該癌を誘発するのに十分な量の1−2ジメチルヒドラジン(DMH)を該マウスに投与することにより、該マウスにおいて該癌を誘発させる。
【0053】
定義
本明細書全体および添付の特許請求の範囲において用いる単数形表現は、文脈と明らかに矛盾しない限り、複数形に対する言及を含む。
【0054】
本明細書全体および添付の特許請求の範囲においては、以下の定義および略語が適用される。
【0055】
「プロモーター」なる語は、RNAポリメラーゼが結合する、DNA鎖上の認識部位を意味する。プロモーターはRNAポリメラーゼと共に開始複合体を形成して、プロモーターの下流に位置する核酸配列の転写活性を始動し駆動する。プロモーターは、「エンハンサー」と称される配列を活性化することにより又はプロモーター内の「サイレンサー」と称される配列を抑制することにより修飾されうる。該用語は更に、誘導可能であるプロモーターおよび構成的であるプロモーターの両方を含む。
【0056】
「カセット」なる語は、ベクターから発現されるヌクレオチドまたは遺伝子配列、例えば、cDkk−4タンパク質をコードするヌクレオチドまたは遺伝子配列を意味する。一般に、カセットは、いくつかの実施形態においては該ヌクレオチドまたは遺伝子配列の発現のための調節配列を提供するベクター内に挿入された遺伝子配列を含む。他の実施形態においては、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は、その発現のための調節配列を提供する。他の実施形態においては、該ベクターはいくつかの調節配列を提供し、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は他の調節配列を提供する。例えば、該ベクターは該ヌクレオチドまたは遺伝子配列の転写のためのプロモーターを提供することが可能であり、該ヌクレオチドまたは遺伝子配列は転写終結配列を提供する。該ベクターにより提供されうる調節配列には、エンハンサー、転写終結配列、スプライス受容および供与配列、イントロン、リボソーム結合配列ならびにポリ(A)付加配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
「ベクター」なる語は、宿主生物または宿主組織内へのDNA断片の導入をもたらしうる何らかの手段を意味する。プラスミド、ウイルス(アデノウイルスを含む)、バクテリオファージおよびコスミドを含む種々のタイプのベクターが存在する。
【0058】
「MMP−11」なる語は、MMP−11タンパク質またはポリペプチドを意味する。
【0059】
「免疫増強要素」なる語は、完全長野生型MMP−11と比べて関連MMP−11に対する免疫応答を刺激または増強しうる、本発明のMMP−11融合ポリペプチドのポリペプチド部分を意味する。本発明の免疫増強要素には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および大腸菌(E.coli)または他の細菌種の易熱性毒素Bサブユニットよりなる群から選ばれるポリペプチドの全部または実質的部分を含むポリペプチドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」なる語は、共有結合した少なくとも2つのポリペプチドを含有するタンパク質を意味し、ここで、一方のポリペプチドは1つのタンパク質配列またはドメインに由来し、もう一方のポリペプチドは第2のタンパク質配列またはドメインに由来する。本発明の融合タンパク質は、MMP−11と、免疫増強要素またはその実質的部分を含む第2のポリペプチド(いくつかの場合にはこれは細菌毒素である。)とを含む。MMP−11は、ヒトMMP−11、または他の種に由来するMMP−11でありうる。該融合タンパク質を含むポリペプチドは、好ましくは、N末端からC末端へ連結される。MMP−11および免疫増強要素は任意の順序で融合されうる。本発明のいくつかの実施形態においては、MMP−11のC末端が免疫増強要素のアミノ末端に融合され、あるいは免疫増強要素がMMP−11のアミノ末端に融合される。
【0061】
「MMP−11融合タンパク質」なる語は、免疫増強要素またはその実質的部分を含むポリペプチドに融合されたMMP−11ポリペプチドまたはその断片もしくは変異体を含む、前記の融合タンパク質を意味する一般用語であると意図される。「MMP−11融合タンパク質」なる語は「MMP−11融合ポリペプチド」なる語と交換可能である。
【0062】
「組換えMMP−11」なる語は、遺伝子工学により修飾されたMMP−11を意味する。例えば、該用語は、本明細書に開示されている触媒的に不活性なMMP−11およびMMP−11融合ポリペプチドを含む。
【0063】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」なる語は、ホスホジエステル結合により互いに結合したヌクレオチドの任意の重合体、例えば、任意長のリボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)分子を意味すると意図される。ポリヌクレオチドまたは核酸は、遺伝子およびその断片または一部、プローブ、オリゴヌクレオチドならびにプライマーを含みうる。DNAは、相補的DNA(cDNA)またはゲノムDNA、例えば、MMP−11またはその変異体をコードする遺伝子でありうる。「核酸」および「ポリヌクレオチド」なる語は本明細書においては互換的に用いられる。
【0064】
「組換えポリヌクレオチド」または「組換え核酸」なる語は、遺伝子工学により修飾されたポリヌクレオチドを意味する。例えば、該用語は、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む、MMP−11をコードするポリヌクレオチドを含む。該用語は更に、ヌクレオチドコドンの1以上がヒトにおける発現の増強のために最適化された、MMP−11または触媒的に不活性なMMP−11をコードするポリヌクレオチドを含む。該用語はまた、本明細書に開示されているMMP−11融合ポリペプチドを含む。
【0065】
「その変異体」なる語は、組換えMMP−11またはポリヌクレオチドを意味する。例えば、触媒的に不活性なMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドは野生型MMP−11の変異体である。ヒトにおける発現の増強のためにコドンが最適化されたMMP−11、触媒的に不活性なMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、野生型MMP−11をコードする野生型ポリヌクレオチドの変異体である。
【0066】
「実質的に類似」なる語は、ある与えられた核酸またはアミノ酸配列が基準配列に対して少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より一層好ましくは95%の同一性を共有することを意味する。本発明においては、基準配列は、文脈により定められる野生型MMP−11ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列または免疫増強要素の野生型ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列の対応部分でありうる。基準配列は、例えば、野生型ヒトまたは非ヒトMMP−11配列でありうる。したがって、野生型MMP−11またはその断片に「実質的に類似」しているMMP−11配列は、野生型MMP−11の対応断片に対して、該断片の長さに沿って、少なくとも75%の同一性、好ましくは85%の同一性、より好ましくは90%の同一性、より一層好ましくは95%の同一性を共有する。与えられたMMP−11または免疫増強要素のポリペプチドまたはヌクレオチド配列が基準配列に「実質的に類似」しているかどうかは、例えば、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータープログラム・バージョン6.0のような配列解析ソフトウェアを使用して配列情報を比較することにより判定されうる。GAPプログラムは、SmithおよびWaterman(Ada.Appl.Math.2:482,1981)により修正されたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:443,1970)のアライメント法を用いるものである。
【0067】
「遺伝子」なる語は、多数の遺伝子の場合にはエキソンおよびイントロン配列の組合せを含む、遺伝子産物をコードするゲノム核酸、ならびにイントロン配列を含まない、遺伝子産物をコードするmRNAから誘導されたcDNAを意味する。
【0068】
遺伝子もしくはポリペプチド、またはそれらの変異体、断片もしくはサブユニットの「実質的部分」なる語は、基準配列の少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは90%、より一層好ましくは95%の部分を意味する。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドを説明するための「コドン最適化」、「ヌクレオチドコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化されている」、「ヌクレオチド配列が高発現のために最適化されている」などの表現は、ある生物における高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11および/または免疫増強要素のヌクレオチドコドンの1以上が、該生物における高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されていることを意味する。ある特定のアミノ酸に関する「低頻度」のヌクレオチドコドンは、該生物における高発現タンパク質をコードする核酸における最低使用頻度のヌクレオチドコドンである。ある特定のアミノ酸に関する「高頻度」のヌクレオチドコドンは、該生物における高発現タンパク質をコードする核酸における最高使用頻度のヌクレオチドコドン、または最低頻度のヌクレオチドコドンより高い使用頻度のヌクレオチドコドンである。
【0070】
「治療」なる語は治療的治療および予防的手段を意味する。治療を要する個体には、障害を既に有する個体、および障害を有する傾向にある個体または障害が予防されるべきである個体が含まれる。
【0071】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、異常細胞増殖により特徴づけられる、MMP−11の過剰発現に関連した障害または状態、例えば乳癌、結腸直腸癌および肺癌(これらの限定されるものではない)の治療剤として使用されることが意図される。
【0072】
「有効量」なる語は、免疫応答が生じるよう適度なレベルの該ポリペプチドが産生されるのに十分なワクチン組成物が導入されることを意味する。このレベルは様々となりうることが当業者に認識される。
【0073】
「アナライト」なる語は、分子、化合物、組成物、薬物、タンパク質、ペプチド、核酸、抗体およびその活性フラグメント、核酸アプタマー、ペプチドアプタマーなどを含む。
【0074】
発明の詳細な説明
本発明は、個体における、MMP−11を過剰発現する腫瘍および癌を抑制するための、特に、MMP−11を過剰発現する浸潤性癌、例えば特に乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)、または浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を抑制するための、抗MMP−11ワクチンとして使用されうる組成物を提供する。該抗MMP−11ワクチンまたは抗腫瘍関連抗原(抗TAA)ワクチンは、例えば、腫瘍細胞および基質区画を標的化する単独療法において、ならびに多重特異的細胞性免疫応答により腫瘍細胞および基質区画を標的化する別の抗TAAワクチンとの多重療法において、ならびに他の分子またはアジュバントとの多重療法において、ならびに基質構造の、細胞毒性物質に対する透過性を上昇させるという原理による、化学療法を含む療法において、ならびに放射線療法を含む療法において、ならびにMMP−11が多エピトープポリペプチドまたはミニ遺伝子の一部として与えられる前記療法のいずれかにおいて使用されうる。本発明の抗MMP−11ワクチンはポリペプチドワクチン、または好ましくはポリヌクレオチドワクチンでありうる。
【0075】
実施例に示すとおり、1,2−ジメチルヒドラジン(DMH)で誘発された結腸腫瘍を有するマウスへの抗MMP−11ワクチンの投与は該マウスの結腸組織におけるDMH誘発性発癌の進行の有意な軽減をもたらすことが判明した。感受性マウス系統、例えばA/Jにおいて、そしてそれより低い度合ではあるがBALB/cにおいても、結腸組織におけるDMH誘発性発癌の進行は以下の異なる段階を経て進行する:(1)異常陰窩形成(ACF)、(2)腺腫、(3)ポリープ、および(4)腺癌(Bird,Cancer Lett.93(1):55−71(1995)を参照されたい)。本発明者らは、MMP−11がDMH誘発性腫瘍組織において過剰発現されることを見出した。このことは、マウスにおけるDMH誘発性発癌が抗MMP−11療法およびワクチン接種のモデルとして適していることを示唆するものであった。ついで本発明者らは、マウスMMP−11(mMMP−11)(該mMMP−11は、触媒部位におけるZn結合ドメイン内に点変異を導入することにより触媒的に不活性化されている。)をコードする核酸を含む遺伝的ワクチンがマウスにおいて免疫応答を誘導すること、ならびに触媒的に不活性なmMMP−11をコードする核酸が、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)のサブユニットB易熱性毒素(LTB)をコードする核酸に連結されている場合、およびMMP−11をコードするコドンが該マウスにおける発現の増強のために最適化されている場合、およびLTBをコードするコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化されている場合に、該免疫応答が更に増強されることを見出した。最後に、本発明者らは、該遺伝的ワクチンが、マウスにおけるDMH誘発性発癌の全段階における軽減をもたらすのに有効であることを見出した。したがって、該マウスモデルの結果を考慮して、本発明は、MMP−11をコードするポリヌクレオチまたはMMP−11ポリペプチドを含む抗MMP−11ワクチン、好ましくは、後記の実施形態のいずれかを有する抗MMP−11ワクチンを提供するものである。
【0076】
本発明は、その最も基本的な実施形態において、MMP−11または後記に開示する遺伝暗号の縮重、遺伝子操作もしくはそれらの両方による変異体を適当な異種プロモーターの制御下に又は適当な異種プロモーターに連結された様態でコードする核酸またはポリヌクレオチド分子を含む核酸またはポリヌクレオチドを提供し、ここで、好ましくは、MMP−11をコードする核酸は、コードされるMMP−11を触媒的に不活性にする変異を含むよう修飾されている。MMP−11を触媒的に不活性にする変異は遺伝子操作によりポリヌクレオチド内に導入されうる。触媒的に不活性なMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドには、コードされるMMP−11を触媒的に不活性にする変異を含むようポリヌクレオチドが修飾された、ヒトおよび非ヒト種に由来するポリヌクレオチドが含まれる。非ヒト種には、霊長類、例えばチンパンジー、アカゲザル、カニクイザルなど、および非霊長類種、例えばマウス、ラット、イヌなどが含まれる。現在好ましい実施形態においては、MMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドはヒト由来であるか、あるいはヒトMMP−11のアミノ酸配列と同じ又は実質的に類似しているアミノ酸配列を有するMMP−11をコードする。ヒトMMP−11(hMMP−11)をコードするcDNAのヌクレオチド配列はGenBankアクセッション番号NM 005940(配列番号1)に記載されており、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するMMP−11をコードする。hMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の抗MMP−11ワクチンにおいて使用されうる変異体をコードするよう後記に示すとおりに修飾される。本発明の現在好ましい実施形態は、hMMP−11をコードする組換え核酸またはポリヌクレオチドを含むが、本発明は、hMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドに限定されないと理解されるべきである。本発明は更に、該組換えポリヌクレオチドが非ヒト由来のMMP−11をコードし、該組換え核酸またはポリヌクレオチドが、本発明の抗MMP−11ワクチンにおいて使用されうるMMP−11変異体をコードするよう後記に示すとおりに修飾されている実施形態を含む。
【0077】
該組換え核酸またはポリヌクレオチドの好ましい実施形態においては、該ポリヌクレオチドによりコードされるMMP−11はMMP−11の触媒的に不活性な変異体である。触媒的に不活性なMMP−11をコードするポリヌクレオチドは、MMP−11の亜鉛結合部位HEXXHXXGXXH(配列番号3)(hMMP−11の場合には配列番号2のアミノ酸215−225)を含む保存アミノ酸をコードするヌクレオチドコドンの1以上を代替アミノ酸をコードするよう遺伝子操作により修飾して触媒的に不活性なMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチドを得ることにより製造される。例えば、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号4におけるヌクレオチド配列により示されるとおり、hMMP−11のアミノ酸216位の保存グルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンGAAを、アミノ酸バリンをコードするヌクレオチドコドンGTGへと変化させて、アミノ酸216位がバリンである配列番号5に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11を得た。Noelら,Oncogene 19:1605−1612(2000)は、216位のヌクレオチドコドンを、アラニンをコードするヌクレオチドコドンに変化させると、hMMP−11が触媒的に不活性になったこと、およびmMMP−11の対応領域のアミノ酸220位のグルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンを、アラニンをコードするヌクレオチドコドンに変化させると、mMMP−11が触媒的に不活性になったことを示している。触媒的に不活性なMMP−11を得るために、配列番号3のアミノ酸2位のグルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンは、バリンまたはアラニンをコードするヌクレオチドコドンに変化しているが、本発明から逸脱しない範囲で、該ヌクレオチドコドンを他のアミノ酸のものに変化させることも可能であり、あるいはZn結合ドメインのその他の保存アミノ酸の1以上をコードするコドンを、他のアミノ酸をコードするよう変化させることが可能である。
【0078】
特定のポリペプチドをコードする遺伝子または転写単位のコドン最適化は、コードされるポリペプチドの発現の増強、すなわち、該ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳の増強をもたらすことが示されている。ポリヌクレオチドワクチンの場合、コードされるポリペプチドの発現の増強は、コードされるポリペプチドをより多量に産生し、これは該ワクチンのインビボでの免疫原性の増強につながり、今度はこれが該ワクチンの効力を増強しうる。コドン最適化の場合の「発現」なる語およびその派生語は、該ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳を意味し、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を意味するものではない。本明細書中で用いる「遺伝子」なる語は、該ポリペプチドをコードするゲノムDNAまたはRNAの両方、および該ポリペプチドをコードするcDNAを意味する。
【0079】
コドン最適化は、ある遺伝子が、該遺伝子の天然環境とは異なるヌクレオチドコドン使用頻度を示す異種遺伝的環境に移される場合に、該遺伝子の異種発現を改善するための方法、あるいは高発現遺伝子をコードする、遺伝的環境に固有の遺伝子において通常は使用されない1以上のヌクレオチドコドンを該遺伝子が天然で含む場合に、該遺伝子の天然遺伝的環境における該遺伝子の異所性発現を改善するための方法である。換言すれば、コドン最適化は、特定の遺伝的環境または生物において比較的低い頻度で使用される或る遺伝子のヌクレオチドコドンを、該遺伝的環境または生物において、より高い頻度で発現遺伝子において使用されるヌクレオチドコドンで置換することを含む。そのようにして、遺伝子産物(ポリペプチド)の発現(翻訳)が増強される。その前提は、高発現遺伝子において高頻度で見出されるヌクレオチドコドンが、低頻度で見出されるヌクレオチドコドンより効率的に翻訳されるというものである。
【0080】
一般に、特定の遺伝子のヌクレオチドコドンを最適化するための方法は、生物において高度に発現される遺伝子において使用されるアミノ酸のそれぞれのヌクレオチドコドンの頻度を特定し、ついで、高発現遺伝子において低頻度で使用される関心のある遺伝子におけるヌクレオチドコドンを、高発現遺伝子において使用されるものとして特定されたヌクレオチドコドンで置換することに基づくものである(例えば、Lathe,Synthetic Oligonucleotide Probes Deduced from Amino Acid Sequence Data:Theoretical and Practical Considerations,J.Molec.Biol.:183:1−12(1985);Nakamuraら,Nuc.Acid Res.28:292(2000);Fuglsang,Protein Expression & Purification 31:247−249(2003)を参照されたい)。遺伝子をコードする、生物の核酸のヌクレオチドコドンを自動的に解析し、生物において低頻度で見出されるヌクレオチドコドンを、生物において高度に発現される遺伝子において見出されるヌクレオチドコドンで置換するよう示唆する多数のコンピュータープログラムが存在する。簡便のために、Nakamura(同誌)から導き出されたヒトに関するヌクレオチドコドン使用頻度の表を以下の表1に示し、ヒトにおいて高発現タンパク質をコードする核酸において、どのヌクレオチドコドンが低頻度で見出されるのか、およびヒトにおいて高発現タンパク質をコードする核酸において、どのヌクレオチドコドンが、より高い頻度で見出されるのを特定する。
【0081】
【表1】
【0082】
したがって、他の実施形態においては、コードされるMMP−11の発現が増強され、それにより抗MMP−11ワクチンの場合には抗MMP−11ワクチンの効力が増強されるよう、MMP−11を含むアミノ酸をコードするヌクレオチドコドンの1以上が最適化された組換えポリヌクレオチドを提供する。すなわち、ある生物において高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11および/または免疫増強要素をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、該生物において高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。好ましくは、該ヌクレオチドコドンはヒトにおけるMMP−11の発現の増強のために最適化される。しかし、別の生物、例えば霊長類における発現の増強のためにコドン最適化された組換えポリヌクレオチドは、ヒトにおける発現の増強のためにコドン最適化された組換えポリヌクレオチドの等価体である。現在のところ、MMP−11は触媒的に不活性であることが好ましく、触媒的に不活性なMMP−11はhMMP−11であることが現在好ましい。MMP−11の特定のアミノ酸に関する複数のヌクレオチドコドンが存在し、該ヌクレオチドコドンの2以上が高発現ヒト遺伝子における同じ相対使用頻度を有するか、または高発現ヒト遺伝子における最低使用頻度を伴うヌクレオチドコドンより大きな、高発現ヒト遺伝子における使用頻度を有する場合には、MMP−11におけるアミノ酸に関するヌクレオチドコドンのそれぞれは、独立して、最低使用頻度を有するヌクレオチドコドンより大きな使用頻度、または同じ使用頻度のヌクレオチドコドンのいずれかでありうる。MMP−11をコードするコドン最適化されたポリヌクレオチドにおける全てのヌクレオチドコドンが、高発現ヒト遺伝子において最高使用頻度を有するヌクレオチドコドンである必要はない。触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドンがヒトにおける発現のために最適化されている触媒的に不活性なhMMP−11のヌクレオチド配列の一例を配列番号6に示す。
【0083】
mMMP−11をコードするヌクレオチドコドンがマウスにおける発現の増強のために最適化された、触媒的に不活性なmMMP−11をコードする組換えポリヌクレオチド(mMMP−11−opt)を含む抗MMP−11ワクチンの効力は、mMMP−11−optのカルボキシ末端アミノ酸をコードするヌクレオチドコドンが、大腸菌(E.coli)の免疫増強性易熱性毒素B(LTB)の実質的部分をコードするヌクレオチドコドンに連結または融合されてmMMP−11と大腸菌(E.coli)LTBとを含む融合ポリペプチドを産生するようにされた場合に更に増強されることが、マウスモデルから示された。したがって、好ましい実施形態においては、該組換えポリヌクレオチドは、免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分をコードする核酸に連結された触媒的に不活性なMMP−11(MMP−11融合ポリペプチド)をコードする核酸を含む。現在好ましい実施形態においては、該組換えポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドがhMMP−11−LTB融合タンパク質をコードするよう、大腸菌(E.coli)のLTBである免疫増強要素をコードする核酸に連結された触媒的に不活性なhMMP−11をコードする核酸を含む。他の実施形態においては、LTBをコードする核酸は、LTBシグナルペプチドをコードするコドンを含まない。大腸菌(E.coli)LTBをコードする核酸配列はGenBankアクセッション番号AB011677において入手可能であり、大腸菌(E.coli)LTBのアミノ酸配列はGenBankアクセッション番号BAA25726に示されている。該シグナルペプチドは、BAA25726に示されているアミノ酸配列のアミノ酸残基1−21を含む。該シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBのヌクレオチド配列を配列番号7に示し、そのアミノ酸配列を配列番号9に示す。該LTBをコードするヌクレオチドコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化された、該シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードするポリヌクレオチド配列を表8に示す。特に好ましい実施形態においては、触媒的に不活性なhMMP−11および該LTBをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンはヒトにおける発現に関して最適化されている。
【0084】
大腸菌(E.coli)LTBが、本明細書に開示されている融合ポリペプチド実施形態において使用した免疫増強要素ポリペプチドの起源であったが、本発明は更に、他の免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合したMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを含む実施形態をも包含する。免疫増強要素ポリペプチドの具体例には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および他の細菌種に由来するLTBが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
したがって、前記を考慮して、本発明は更に、LTBもしくはその実質的部分または別の免疫増強要素ポリペプチドもしくはその実質的部分に連結された触媒的に不活性なMMP−11含む単一融合ポリペプチドをコードする組換え核酸またはポリヌクレオチドを提供する。そのようなポリヌクレオチドの一例は、配列番号5(触媒的に不活性なhMMP−11)のアミノ酸と配列番号8(シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTB)のアミノ酸配列とを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。該ポリヌクレオチドは、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号4と、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードする配列番号7または配列番号8(ヒトにおける発現の増強のためにコドン最適化された、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードするポリヌクレオチド)とのヌクレオチド配列を含みうる。一例として、該ポリヌクレオチドは、配列番号10に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードしうる。そのようなポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0086】
好ましい実施形態においては、本明細書に開示されている組換え核酸およびポリヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドコドンは、ヒトにおけるそれによりコードされる組換えポリペプチドの発現の増強のために最適化されている。すなわち、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、組換え核酸およびポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。本明細書に開示されている融合ポリペプチドのいずれかをコードする組換えポリヌクレオチドの場合には、該組換えポリペプチドを含む免疫増強要素ポリペプチドまたはLTBをコードする組換えポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンも、ヒトにおける該融合ポリペプチドの発現の増強のために最適化されていることが更に好ましい。そのような組換えポリヌクレオチドの一例は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号6のコドン最適化ヌクレオチド配列と、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードする配列番号8のコドン最適化ヌクレオチド配列とを含むであろう。一例として、コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、配列番号12に示すヌクレオチド配列を有する。
【0087】
本発明は更に、MMP−11の亜鉛結合部位HEXXHXXGXXH(配列番号3)を含む保存アミノ酸の1以上が代替アミノ酸に改変された、触媒的に不活性なMMP−11を含む組換えポリペプチドを提供する。例えば、hMMP−11に関して配列番号5に示すとおり、hMMP−11のアミノ酸216位の保存グルタミン酸をアミノ酸バリンへと変化させて、触媒的に不活性なhMMP−11を得た。好ましくは、触媒的に不活性なMMP−11ポリペプチドは、MMP−11がそのカルボキシ末端において免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に連結された融合ポリペプチド(MMP−11融合ポリペプチド)を含む。現在好ましい実施形態においては、免疫増強要素ポリペプチドは大腸菌(E.coli)LTBである。他の実施形態においては、該LTBはそのシグナルペプチドを含まない。MMP−11融合ポリペプチドの一例は、配列番号7に示すアミノ酸配列を有する、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBポリペプチドのアミノ末端に、カルボキシ末端において連結された配列番号5に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11を含む。該MMP−11融合ポリペプチドは、例えば、配列番号11に示すポリヌクレオチド、または配列番号12に示すコドン最適化ポリヌクレオチドによりコードされうる。
【0088】
大腸菌(E.coli)LTBが、本明細書に例示されているMMP−11融合ポリペプチド実施形態において使用した免疫増強要素ポリペプチドの起源であったが、本発明は更に、他の免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合したMMP−11を含むMMP−11融合ポリペプチドを含む実施形態をも包含する。免疫増強要素ポリペプチドの具体例には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および他の細菌種に由来するLTBが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
本発明は更に、本明細書に全体にわたって開示されている核酸分子(以下、「組換えポリヌクレオチド」と称する。)の少なくとも1つを含むベクターを提供し、ここで、好ましくは、該核酸分子は異種プロモーターに機能的に連結されている。これらのベクターはDNAまたはRNAを含みうる。ほとんどの目的においては、DNAプラスミドまたはウイルス発現ベクターが好ましい。典型的な発現ベクターには、プラスミド、修飾ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体、および他の形態のエピソーム性の又は組み込まれたDNAが含まれ、それらはいずれも、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを発現する。好ましくは、前記実施形態のいずれかをコードするヌクレオチドコドンはヒトにおける発現の増強のために最適化されている。
【0090】
DNAが好ましくはヒトにおける発現の増強のためにコドン最適化されており異種プロモーターに機能的に連結されている、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、組換え宿主細胞内での本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現のために使用されうる。そのような組換え宿主細胞を適当な条件下で培養して、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを得ることが可能である。発現ベクターには、クローニングベクター、修飾クローニングベクター、特別に設計されたプラスミドまたは特別に設計されたウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。実施例において記載する発現ベクターは、許容されうる発現ベクターである。
【0091】
本発明の核酸は、好ましくは、ヒト細胞においてそれにコードされる本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの効率的な発現をもたらす配列を含む発現カセットへと構築される。該カセットは、好ましくは、該核酸に機能的に連結された同種または異種の転写および翻訳制御配列を含有する。そのような制御配列は、少なくとも、転写プロモーター(構成的または誘導性)および転写終結配列を含み、更に他の調節要素、例えば転写エンハンサー、リボソーム結合配列、スプライス結合配列などを含みうる。ほとんどの実施形態においては、該プロモーターは異種プロモーターであるが、特定の実施形態においては、該プロモーターはMMP−11の天然プロモーターでありうる。特に有用な実施形態においては、該プロモーターは、イントロンA配列を伴う又は伴わない構成的サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーターであるが、多数の他の公知プロモーター、例えば強力免疫グロブリンプロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーター、SV40スモールまたはラージT抗原プロモーターなども使用可能であると当業者は認識するであろう。転写ターミネーターには、ウシ成長ホルモンターミネーターが含まれるが、他の公知転写ターミネーター、例えばSV40終結配列も使用可能である。プラスミドpV1JnsBおよびpV1JnsAのそれぞれは、サイトメガロウイルス(CMV)最/初期領域プロモーターおよびエンハンサー(イントロンAを伴う)およびそれに続くクローニング部位およびBGHポリアデニル化シグナルを含有し、有用な発現ベクターの具体例である。前記実施形態のいずれかにおけるMMP−11を該クローニング部位内にクローニングして該発現カセットを完成させることが可能である。
【0092】
本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現に適した商業的に入手可能な哺乳類発現ベクターには、限定的なものではないが以下のものが含まれる:pV1JnsA、V1JnsB、pVAX1(Invitrogen,Carlsbad,AC)、pcDNA3.neo(Invitrogen)、pcDNA3.1(Invitrogen)、pcDNA3.1/Myc−His(Invitrogen)、pCI−neo(Promega,Madison,WI)、pLITMUS28、pLITMUS29、pLITMUS38およびpLITMUS39(New England Bioloabs,Beverly,MA)、pcDNAI、pcDNAIamp(Invitrogen)、pcDNA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene,La Jolla,CA)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)、pBPV−l(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)および1ZD35(ATCC 37565)。
【0093】
また、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを細菌細胞内で発現させるためには、種々の細菌発現ベクターが使用されうる。発現のために適当でありうる商業的に入手可能な細菌発現ベクターには、pCR2.1(Invitrogen)、pET11a(Novagen,Madison,WI)、lambda gt11(Invitrogen)およびpKK223−3(Pharmacia)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
また、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドを真菌細胞内で発現させるためには、種々の真菌発現ベクターが使用されうる。発現に適している商業的に入手可能な真菌細胞発現ベクターには、pYES2(Invitrogen)およびPichia発現ベクター(Invitrogen)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
また、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを昆虫細胞内で発現させるためには、種々の昆虫細胞発現ベクターが使用されうる。発現のために適当でありうる商業的に入手可能な昆虫細胞発現ベクターには、pBlueBacIIIおよびpBlueBacHis2(Invitrogen)、およびpAcG2T(Pharmingen)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現のために使用されうるウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルスなど)、レトロウイルスベクター、バクテリオファージベクターおよびバキュロウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明における組換えポリヌクレオチドのいずれかをコードする組換えウイルスを製造するためのウイルスベクターの多くは商標的に入手可能である。
【0097】
現在好ましい実施形態においては、組換えウイルスを製造するために使用されるウイルスベクターはアデノウイルスベクターまたはプラスミドベクターであるが、プロモーターに連結された直鎖状DNA、または他のベクター、例えばアデノ随伴ウイルスもしくは修飾されたワクシニアウイルス、レトロウイルスもしくはレンチウイルスベクターも使用されうる。選択したベクターがアデノウイルスである場合には、該ベクターはいわゆる第1世代アデノウイルスベクターであることが現在好ましい。これらのアデノウイルスベクターは、非機能的E1遺伝子領域、好ましくは欠失アデノウイルスE1遺伝子領域を有することにより特徴づけられる。いくつかの実施形態においては、該発現カセットは、アデノウイルスE1遺伝子が通常存在する位置に挿入される。また、これらのベクターは、場合によっては、非機能的な又は欠失したE3領域を有する。使用されるアデノウイルスゲノムは、E1およびE3の両方の領域が欠失していること(ΔE1ΔE3)も好ましい。
【0098】
該アデノウイルベクターは、ウイルスE1遺伝子を発現する公知細胞系、例えば293細胞またはPERC.6細胞において、あるいは余分のタンパク質を発現するよう一過性または安定に形質転換された293またはPERC.6細胞から誘導された細胞系において増殖されうる。例えば、制御された遺伝子発現を示す構築物、例えばテトラサイクリン調節可能プロモーター系を使用する場合には、該細胞系は、該調節系に関与する成分を発現しうる。そのような細胞系の一例としてTRex−293が挙げられ、他の細胞系は当技術分野で公知である。
【0099】
アデノウイルスベクターの操作が簡便となるよう、アデノウイルスはシャトルプラスミド形態でありうる。本発明はまた、プラスミド部分とアデノウイルス部分(該アデノウイルス部分は、E1が欠失しており場合によってはE3も欠失しているアデノウイルスゲノムを含む)とを含む、触媒的に不活性なMMP−11ポリペプチドまたは触媒的に不活性なMMP−11融合ポリペプチドをコードする核酸を含む挿入された発現カセットを有するシャトルプラスミドベクターに関する。好ましい実施形態においては、アデノウイルスベクターが容易に除去されうるよう、該プラスミドのアデノウイルス部分に隣接する制限部位が存在する。該シャトルプラスミドは原核生物細胞または真核生物細胞において複製されうる。
【0100】
本発明の現在好ましい実施形態においては、本明細書に開示されている組換えMMP−11のいずれかをコードする核酸を含む発現カセットはpMRKAdS−HV0アデノウイルスプラスミド(Eminiら,WO0222080を参照されたい)内に挿入される。このプラスミドは、E1およびE3領域が欠失したAdsアデノウイルスゲノムを含む。5’シス作用性パッケージング領域をE1遺伝子内に更に伸長させて、ウイルスパッケージングの最適化に重要であることが判明している要素を組み込んで、ウイルス増幅の増強をもたらすことにより、pMRKAd5−HV0プラスミドの設計は従来のアデノベクターに比べて改良された。好都合なことに、この増強されたアデノウイルスベクターは、高継代増殖後の遺伝的安定性を維持しうる。
【0101】
本発明は更に、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた組換え宿主細胞、特に、プロモーターに機能的に連結された前記核酸分子のいずれかを含むベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。組換え宿主細胞には、細菌、例えば大腸菌(E.coli)、真菌細胞、例えば酵母、植物細胞、哺乳類細胞、例えばウシ、ブタ、サル、ヒトまたはげっ歯類由来の細胞系(これらに限定されるものではない)、および昆虫細胞、例えばジョウショウバエ(Drosophila)およびカイコ由来細胞系(これらに限定されるものではない)が含まれる。例えば、1つの昆虫発現系は、バキュロウイルス発現ベクター(pAcG2T,Pharmingen,San Diego,CA)と組合されたスポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)昆虫細胞(Invitrogen)を利用するものである。また、商業的に入手可能な適当でありうる哺乳類種には、限定的なものではないが以下のものが含まれる:L細胞L−M(TK−)(ATCC CCL−1.3)、L細胞L−M(ATCC CCL−1.2)、Saos−2細胞(ATCC HTB−85)、293細胞(ATCC CRL−1573)、Raji細胞(ATCC CCL−86)、CV−1細胞(ATCC CCL−70)、COS−1細胞(ATCC CRL−1650)、COS−7細胞(ATCC CRL−1651)、CHO−K1細胞(ATCC CCL−61)、3T3細胞(ATCC CCL−92)、NIH/3T3細胞(ATCC CRL−1658)、HeLa細胞(ATCC CCL−2)、C127I細胞(ATCC CRL−1616)、BS−C−1細胞(ATCC CCL−26)、MRC−5細胞(ATCC CCL−171)、HEK293T細胞(ATCC CRL−1573)、ST2細胞(Riken Cell bank,Tokyo,Japan RCB0224)、C3H10T1/2細胞(JCRB0602,JCRB9080,JCRB0003またはIFO50415)およびCPAE細胞(ATCC CCL−209)。
【0102】
前記のとおり、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを含有する発現ベクターは、それにコードされる組換えMMP−11を組換え宿主細胞内で発現させるために使用されうる。したがって、本発明は、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを組換え宿主細胞内で発現させるための方法であって、組換えMMP−11をコードする核酸を含むベクターを適当な宿主細胞内に導入し、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかの発現を可能にする条件下で該宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。組換えMMP−11をコードするポリヌクレオチドは、構成的または誘導性でありうる異種プロモーターに機能的に連結されている。
【0103】
本明細書に開示されている組換え核酸またはポリヌクレオチドのいずれかを宿主細胞内で発現させた後、組換えMMP−11ポリペプチドを、ポリペプチドに基づくワクチンにおいて使用するために回収することが可能である。ポリペプチドの精製方法は当技術分野でよく知られており、塩分別、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーの種々の組合せ又は個々の適用による細胞ライセートおよび抽出物からの精製を含む。また、組換えMMP−11は、MMP−11に特異的な、またはMMP−11融合ポリペプチドの場合には免疫増強要素ポリペプチドに特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体で調製された免疫アフィニティーカラムを使用して、他の細胞ポリペプチドから分離されうる。
【0104】
クローニング、発現ベクター、トランスフェクションおよび形質転換、ならびに発現されたタンパク質のタンパク質単離は当技術分野でよく知られており、例えばSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Edition;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,(1989)またはSambrookおよびRussell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,NY(2001)に記載されている。
【0105】
本発明の抗MMP−11ワクチンには、本明細書に開示されている組換えMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドの実施形態のいずれかをコードするポリヌクレオチドワクチン、および本明細書に開示されている組換えMMP−11またはMMP−11融合ポリペプチドの実施形態のいずれかを含むポリペプチドワクチンの両方が含まれる。MMP−11を過剰発現する浸潤性癌、例えば乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)または浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌に罹患した個体が、本発明のワクチンによる免疫による利益を受けうる。該抗MMP−11ワクチンは更に、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれかを含有する組換えアデノウイルスを含むアデノウイルス抗MMP−11ワクチンを含む。
【0106】
該核酸またはポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、その最も基本的な実施形態においては、本明細書に開示されている組換えポリヌクレオチドのいずれか、例えば、組換えMMP−11ポリペプチドまたはMMP−11融合ポリペプチドの前記実施形態のいずれかをコードする組換え核酸分子またはポリヌクレオチドを、適当な異種プロモーターの制御下に又は適当な異種プロモーターに機能的に連結された様態で含む。コードされる組換えMMP−11ポリペプチドは、いずれかの種のMMP−11ポリペプチド、例えばヒト;チンパンジー、アカゲザル、カニクイザルのような霊長類;マウス、ラット、イヌなどのような非霊長類に由来するMMP−11(これらに限定されるものではない)のアミノ酸配列を有しうる。好ましくは、コードされる組換えMMP−11はヒトMMP−11のアミノ酸配列を有する。ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンとして使用するための、前記の遺伝子カセットおよび発現ベクター内に含有させるためのMMP−11をコードする核酸の現在好ましい実施形態を以下に例示する。
【0107】
好ましい実施形態においては、該抗MMP−11ワクチンのポリヌクレオチドによりコードされるMMP−11は触媒的に不活性である。例えば、触媒的に不活性なhMMP−11は配列番号4のヌクレオチド配列により示され、ここで、配列番号5に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11を得るために、hMMP−11の216位の保存グルタミン酸をコードするヌクレオチドコドンGAAが、アミノ酸バリンをコードするヌクレオチドコドンGTGに改変されている。グルタミン酸残基をコードするヌクレオチドコドンが、バリンをコードするヌクレオチドコドンに改変されているが、本発明から逸脱しない範囲で、該ヌクレオチドコドンは他のアミノ酸に改変されることも可能であり、あるいはヒスチジン残基が他のアミノ酸に改変されうる。
【0108】
前記のとおり、特定のポリペプチドをコードする遺伝子または転写単位のコドン最適化は、コードされているポリペプチドの発現の増強、すなわち、該ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳の増強をもたらすことが示されている。ポリヌクレオチドワクチンの場合には、コードされているポリペプチド産物の発現の増強は、コードされているポリペプチドをより多量に産生し、これは該ワクチンのインビボでの免疫原性の増強につながり、今度はこれが該ワクチンの効力を増強しうる。したがって、他の実施形態においては、MMP−11を含むアミノ酸をコードするヌクレオチドコドンが、MMP−11の発現を増強するために、そしてそれにより抗MMP−11ワクチンの効力を増強するために最適化されている。すなわち、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドンがコドン最適化を受けており触媒的に不活性であるhMMP−11のヌクレオチド配列を配列番号6に示す。
【0109】
mMMP−11−optをコードするコドンのカルボキシ末端コドンが、免疫増強要素ポリペプチド(大腸菌(E.coli)LTB)をコードするコドンに連結された場合に、触媒的に不活性なコドン最適化マウスMMP−11をコードするポリヌクレオチドを含む抗MMP−11ワクチンの効力が増強されることが、実施例のマウスモデルから示されている。したがって、該抗MMP−11ワクチンの好ましい実施形態においては、該ポリヌクレオチドは、免疫増強要素ポリペプチドまたは実質的部分をコードするポリヌクレオチドに連結された触媒的に不活性なMMP−11(MMP−11融合ポリペプチド)をコードする核酸を含む。現在好ましい実施形態においては、該ポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドがMMP−11−LTB融合タンパク質をコードするよう、大腸菌(E.coli)LTBまたはその実質的部分をコードするポリヌクレオチドに連結された触媒的に不活性なMMP−11をコードする核酸を含む。他の実施形態においては、LTBをコードするポリヌクレオチドは、LTBシグナルペプチドをコードするコドンを含まない。MMP−11はhMMP−11であることが現在好ましい。シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBのヌクレオチド配列を配列番号7に示し、そのアミノ酸配列を配列番号9に示す。ヌクレオチドコドンがヒトにおける発現の増強のために最適化された、シグナルペプチドを伴わない大腸菌(E.coli)LTBをコードするポリヌクレオチド配列を、配列番号8に示す。特に好ましい実施形態においては、触媒的に不活性なhMMP−11および該LTBをコードするポリヌクレオチドを含むヌクレオチドコドンはヒトにおける発現の増強のために最適化されている。
【0110】
大腸菌(E.coli)LTBが、本明細書に開示されている抗MMP−11ワクチンの融合ポリペプチド実施形態において使用した免疫増強要素ポリペプチドの起源であったが、本発明は更に、他の免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合したMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む実施形態をも包含する。免疫増強要素ポリペプチドの具体例には、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および他の細菌種に由来するLTBが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
したがって、前記を考慮して、本発明は、免疫増強要素またはその実質的部分、例えば大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なMMP−11を含む単一融合ポリペプチドをコードする核酸またはポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンを提供する。そのようなワクチンの一例は、配列番号5(触媒的に不活性なhMMP−11)のアミノ酸および配列番号8(LTB)のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または配列番号4(触媒的に不活性なhMMP−11)および配列番号7(シグナルペプチドを伴わないLTBをコードする。)もしくは配列番号8(ここで、シグナルペプチドを伴わないLTBをコードするヌクレオチドコドンがヒトにおける発現に関して最適化されている。)のヌクレオチド配列をそれぞれ含む。一例として、該ワクチンは、配列番号10に示すアミノ酸配列を有する触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。そのようなポリペプチドは、配列番号11に示すヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0112】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンの好ましい実施形態においては、触媒的に不活性なMMP−11をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンは、前記のとおり、ヒトにおける発現の増強のために最適化されている。該免疫増強要素をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチドコドンも、ヒトにおける発現の増強のために最適化されていることが更に好ましい。そのようなポリヌクレオチドの一例は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードする配列番号6のコドン最適化ヌクレオチド配列と、該LTBをコードする配列番号8のコドン最適化ヌクレオチド配列とを含むであろう。一例として、コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号12に示すヌクレオチド配列を有する。
【0113】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、直接的な注射、エレクトロポレーション、粘膜運搬などのような種々の運搬メカニズムにより投与されうる。いくつかの好ましい実施形態においては、該ワクチンは、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮下、皮内、遺伝子銃による射入、局所的または経口的に投与される。例えば、該ワクチンを三角筋の筋肉内に投与することが可能であり、0.5mLシリンジを使用して投与し次いで該注射の2分以内に電気刺激を加えることが可能である。該電気刺激は、MEDPULSER DNA運搬系(Inovio Biomedical Corporation,San Diego,CA)を用いて加えられうる。好ましくは、該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、水、食塩水(塩類液)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びそれらの組合せのような医薬上許容される担体および賦形剤中に、前記ポリヌクレオチドのいずれかを含む。現在好ましい実施形態においては、該ワクチンは食塩水溶液として製剤化される。いくつかの場合には、該ポリヌクレオチドワクチンは、細菌、例えばシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、サルモネラ属種(Salmonella spp.)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)またはリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の弱毒化株内に、該発現ベクターを含みうると想定される。該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、湿潤剤、乳化剤、バッファーなどのような補助物質をも含有しうる。
【0114】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、免疫応答がTh1またはTh2応答を調節しうる1以上の遺伝的アジュバント(1以上の分子アジュバントをコードする核酸)を含みうる。そのような遺伝的アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α);腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β);Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18;Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF);IL−8;インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10);マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α);ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。Sasakiら,Methods 31:243−254(2003)は、DNAワクチンのためのアジュバント配合および運搬系に関する優れた考察を記載している(Kimら,J.Interferon Cytokine Res.20:487−498(2000)およびKimら,Human Gene Therapy 11:305−321(2000)も参照されたい)。該遺伝的アジュバントは、前記実施形態のいずれかにおけるhMMP−11をコードする発現ベクターとは別の発現ベクター上の、あるいは前記実施形態のいずれかにおけるhMMP−11をコードするのと同じ発現ベクター上の発現カセット内に提供されうる。
【0115】
該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他のアジュバントおよび賦形剤はVogelら,“A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients(2nd Edition)”,Vaccine and Prevention Research Program,Division of AIDS,National Institute of Allergy and Infectious Diseases,National Institutes of Health,Bethesda,MD 20892に記載されている。
【0116】
本発明のポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、好ましくは、約10μg/mL〜約5mg/mLの範囲のDNA濃度で、医薬上許容される担体中の溶液または懸濁液として投与される。一般に、プラスミドワクチンベクター約5mg、好ましくは約0.05の免疫学的または予防的に有効な量が筋肉組織内に直接投与される。適当な投与量は、ワクチン接種すべき個体に左右され、該ワクチン中に含有されるhMMP−11をコードする核酸を発現する個体の能力、および発現されたhMMP−11に反応する個体の免疫系に左右されうる。選択される厳密な投与量は、1つには、該ワクチンを投与する又はその投与を要求する医学的実施者の判断に左右されうる。
【0117】
該抗MMP−11ワクチンは更に、前記組換えポリヌクレオチドのいずれかを含む組換えアデノウイルスを含む。現在好ましくは、アデノウイルスワクチンは、約1mL未満の最終容量でリン酸緩衝食塩水のような希釈剤中で希釈されて、三角筋の筋肉内に投与される。該組換えアデノウイルスの有効量は一般には約106〜1012ウイルス粒子、好ましくは約107〜1011ウイルス粒子である。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態においては、本明細書に開示されているアデノウイルスおよびポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、増強された免疫応答を誘導するために、種々の初回/追加投与の組合せで使用される。この場合、それらの2つのベクターは「初回および追加」方式で投与される。例えば、第1のタイプのベクターを1回以上投与し、ついで、予め決められた期間、例えば2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月または他の適当な間隔の後、第2のタイプのワクチンを1回以上投与する。好ましくは、該ベクターは、同じポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組合せをコードする発現カセットを含有する。プラスミドベクターをも使用する実施形態においては、該ベクターは、哺乳類または昆虫細胞により認識される1以上のプロモーターを含有することが好ましい。好ましい実施形態においては、該プラスミドベクターは、強力なプロモーター、例えばCMVプロモーター(これに限定されるものではない)を含有するであろう。
【0119】
前記のとおり、アデノウイルスベクター抗MMP−11ワクチンおよびポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、免疫応答を誘導するための単一の治療計画の一部として脊椎動物に投与されうる。1つの実施形態においては、第1のベクターはプラスミドであり、第2のベクターはアデノウイルスベクターである。もう1つの実施形態においては、第1のベクターはアデノウイルスベクターであり、第2のベクターはプラスミドである。前記の方法においては、第1のタイプのベクターは2回以上投与されることが可能であり、該ベクターの各投与は、予め決められた期間を隔てて行われる。第1のタイプのベクターのそのような一連の投与の後、予め決められた期間の経過後に、第2のタイプのベクターの投与が1回以上行われうる。第1のタイプのベクターでの治療と同様に、第2のタイプのベクターも、予め決められた期間の後で1回以上投与されうる。
【0120】
本発明のもう1つの実施形態は、適切に滅菌された容器(例えば、アンプル、ボトル、バイアルなど)内に複数用量または単位投与系として入れられた本発明のアデノウイルスベクターまたはポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンを含むキットである。該容器は、好ましくは、ワクチン製剤の充填後に密閉される。好ましくは、該ポリヌクレオチド抗MMP−1ワクチンは、ラベルが添付された容器内に入れられる。該ラベルは該ワクチンを特定するものであり、United States Food and Drug Administrationのような政府規制機関により規定された様式の、適当な法律に基づく該ワクチンの承認、投与情報などを示す注意書き有する。該ラベルは、好ましくは、該ワクチンを患者に投与する医療専門家にとって有用な該ワクチンに関する情報を含有する。該キットは、好ましくは、該ワクチンの投与、指示、適応症および必要な警告に関する印刷された情報資料をも含有する。
【0121】
本発明の抗MMP−11ポリペプチドワクチンは、その最も基本的な実施形態においては、MMP−11の亜鉛結合部位HEXXHXXGXXH(配列番号3)を含む保存アミノ酸の1以上が代替アミノ酸に改変された、触媒的に不活性なMMP−11を含む。例えば、配列番号5に示すとおり、hMMP−11の216位の保存グルタミン酸をアミノ酸バリンへと変化させて、触媒的に不活性なhMMP−11を得た。好ましくは、触媒的に不活性なMMP−11は、MMP−11がそのカルボキシ末端において免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に融合または連結されたMMP−11融合ポリペプチドである。現在好ましい実施形態においては、免疫増強要素ポリペプチドはLTBポリペプチド、好ましくは、シグナルペプチドが除去されたLTBであり、例えば、配列番号7に示すアミノ酸配列を含むLTBポリペプチドに、配列番号5に示す触媒的に不活性なhMMP−11が連結されている。
【0122】
該ポリペプチド抗MMP−11ワクチンは、直接的な注射、エレクトロポレーション、粘膜運搬などのような種々の運搬メカニズムにより投与されうる。いくつかの好ましい実施形態においては、該ワクチンは、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮下、皮内、局所的または経口的に投与される。好ましくは、該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、水、食塩水(塩類液)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びそれらの組合せのような医薬上許容される担体および賦形剤中に製剤化される。該ポリヌクレオチド抗MMP−11ワクチンは、湿潤剤、乳化剤、バッファーなどのような補助物質をも含有しうる。該ポリペプチド抗MMP−11ワクチンは、免疫応答をTh1またはTh2応答へと調節しうる1以上の分子アジュバントを含みうる。そのような分子アジュバントには、共刺激分子、例えばCD80およびCD86;炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1α(IL−1α)、腫瘍壊死因子αおよびβ(TNF−αおよびTNF−β)、Th1サイトカイン、例えばIL−2、IL−12、IL−15およびIL−18、Th2サイトカイン、例えばIL−4、IL−5およびIL−10、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、IL−8、インターフェロンγ誘導タンパク質10(γIP−10)、マクロファージ抑制タンパク質1α(MIP−1α)、ならびにRANTESが含まれるが、これらに限定されるものではない。該ポリペプチド抗MMP−11ワクチンは1以上の通常のアジュバントを含みうる。通常のアジュバントには、無機塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、細菌由来アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA、コレラ毒素、ムラミルペプチド、脂質粒子、例えばカチオニックリポソームおよびマンナン被覆リポソーム、乳化剤アジュバント、例えばQS−21、および合成アジュバント、例えばウベニメクス(ubenimex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他のアジュバントおよび賦形剤は前記のVogelら,“A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients(2nd Edition)”に記載されている。
【0123】
本発明は更に、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定するための方法であって、マウスにおいて癌を誘発させ、該誘発癌を有するマウスに該アナライトを投与し、該誘発癌を有するマウスにおいて該アナライトが該癌を抑制するかどうかを判定して、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定する方法を提供する。特定の実施形態においては、該アナライトを該マウスに投与する前に、該アナライトがMMP−11に結合することを確認する。更に他の実施形態においては、該マウスにおいて誘発される癌は結腸癌であり、更に他の実施形態においては、該マウスにおいて該癌を誘発するのに十分な量の1−2ジメチルヒドラジン(DMH)を該マウスに投与することにより、該マウスにおいて該癌を誘発させる。
【0124】
以下の実施例は、本発明の特徴および実施形態を更に例示するために記載されており、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0125】
マウスMMP−11を発現するベクターを構築するために、基質区画の一部であったマウス繊維芽細胞からcDNAをクローニングした。全RNAをNIH−3T3細胞から抽出し、マウスMMP−11に特異的なオリゴヌクレオチドを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりcDNAを増幅した。使用したPCRプライマーは、ヌクレオチド配列5’−CCCGGGGCGG ATGGCACGGG CCGCCTGTC−3’(配列番号16)を有するフォワード5’−MMP−11、およびヌクレオチド配列5’−GTCAGMGGAA AGTRTTGGCA GGCTCAGCAC AG−3’(配列番号17)(ここで、MはAまたはCであり、RはAまたはGである。)を有する縮重オリゴヌクレオチドリバース3’−MMP−11−1473であった。RT−PCR反応を以下のとおりに行った:45℃で30秒間;94℃で2分間;ついで94℃で15秒間、58℃で30秒間および68℃で2分間の40サイクル。
【0126】
約1630bpの増幅産物を得、TAクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen,Carlsbad,CA)内にクローニングしてプラスミドpCR2.1−MMP−11を得た。クローニングされた増幅産物のDNA配列分析は、クローニングされた増幅産物のDNA配列がマウスMMP−11 cDNA(アクセッション番号:NM 008606)のヌクレオチド配列と完全に一致することを示した。マウスMMP−11をコードするcDNAをEcoRIでの消化によりpCR2.1−MMP−11から取り出し、プラスミドベクターpV1JnsのEcoRI部位内にクローニングして、発現ベクターpV1JnsB−MMP−11(図1)を得た。図1に示すとおり、MMP−11をコードするcDNAはヒトCMVプロモーターの下流に存在する。PV1jベクターはMontgomeryら,DNA Cell Biol.12:777−783(1993)に記載されている。
【0127】
MMP−11の発現を確認するために、HeLa細胞をpV1JnsB−MMP−11でトランスフェクトした。マウスMMP−11と交差反応するヒトMMP−11に対する抗体を使用するウエスタンブロットにより、細胞抽出物を分析した。図2に示すとおり、約50kDaのバンドが検出され、このことは、MMP−11が該ベクターにより発現されたことを示している。
【実施例2】
【0128】
種々のタイプの抗原をコードする遺伝子のコドン最適化はインビボにおける発現の増強および免疫原性の増強をもたらしうることが示されている。したがって、mMMP−11の発現を増強し、免疫原性を増強するためには、mMMP−11コード配列をコドン最適化した。
【0129】
mMMP−11 cDNA配列を、同じアミノ酸配列をコードするがマウス細胞における発現のために最適化されたコドン使用頻度を有するポリヌクレオチド配列に変換した(コドン使用頻度に関する全般的考察は、Lathe,J.Molec.Biol.:183:1−12(1985)を参照されたい)。該方法論は一般に、マウスにおける高発現遺伝子に一般に用いられていない、野生型mMMP−11ポリヌクレオチド配列におけるコドンを特定し、マウスにおける高発現遺伝子に一般に用いられるコドンでそれらを置換して、マウス由来の細胞における該ポリヌクレオチドの高発現のために高発現遺伝子において一般に用いられるコドンのみを含有するポリヌクレオチドを得ることよりなる。ついで新たな遺伝子配列を、これらのコドン置換により生じた望ましくない配列(例えば、「ATTTA」配列、イントロンスプライス認識部位の非意図的生成、望ましくない制限酵素部位、高いGC含量など)に関して検査した。望ましくない配列を含むコドンを他のコドン(好ましくは、実用的な場合には、同じアミノ酸をコードする、高発現遺伝子において用いられる別のコドン)で置換することにより、望ましくない配列を排除した。ついで、発現の改善に関して、合成遺伝子セグメントを試験する。マウスにおける発現のための該コドン最適化遺伝子は、Vector NTIプログラムアルゴリズム(InforMax,Rockville,MD)を使用して設計した。転写のレベルを上昇させるために、最適化されたコザック配列をATG開始コドンの5’側に挿入した。さらに、翻訳の終結を増強するために、2つの連続的な終止コドンを該コード配列の下流に挿入した。
【0130】
mMMP−11をコードするコドン最適化cDNAを、GENEART GmbH,Germanyにおいて行われたオリゴヌクレオチド構築により合成し、ついでpV1JnsAベクターのBglII/SalI部位内にクローニングして、pV1JnsA−mMMP−11optを得た。MMP−11の免疫原性を改変することなくMMP−11の酵素活性を阻害するために、220位のグルタミン酸(E)をアラニン(A)へと変化させる点変異を触媒部位に導入した(Noelら,Oncogene.19:1605−12(2000))。これはベクターpV1JnsA−mMMP−11(cat−)optを与えた。mMMP−11の触媒的に不活性な該コドン最適化変異体(mMMP−11(cat−)opt)のヌクレオチド配列を図3(配列番号3)に示し、ベクターpV1JnsA−mMMP−11(cat−)optの地図を図6Aに示す。
【0131】
WO2005077977は、大腸菌(E.coli)の易熱性毒素B(LTB)への免疫増強要素への癌胎児性抗原(CEA)の遺伝的融合がCEAに対するワクチン接種の効力を更に増強することを示した。したがって、MMP−11の効力を増強するために、シグナル配列が除去された大腸菌(E.coli)LTBに融合された触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを合成し、pV1JnsAベクターのBglII/SalI部位内にクローニングしてpV1JnsA−mMMP−11(cat−)−LTBopt(図6B)を得た。触媒的に不活性なmMMP−11LTB融合体は、GENEART GmbH,Germanyにおいて行われたオリゴヌクレオチド構築により合成した。LTBをコードするコドンを、ヒト由来の細胞における発現のために最適化した。図4は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合ポリペプチドをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を示し、図5は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0132】
pV1JnsA−mMMP−11(cat−)−LTBoptの発現を試験するために、HeLa細胞をLipofectamine2000(Invitrogen)によりpV1jnsA−mMMP−11(cat−)−LTBoptでトランスフェクトした。全細胞抽出物を、細胞溶解バッファー(2%SDS,5mM EGTA,5mM EDTA,20mM Tris−HCl,pH7.4)を使用して調製し、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合タンパク質の発現に関してウエスタンブロットにより分析した。標準的なウエスタンブロットプロトコールに従い抗MMP−11および抗LTB抗体を使用して、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合タンパク質を検出した。抗MMP−11および−LTB抗体はBIOMOL(Exter,UK and Plymouth Meeting,PA,抗MMP−11 cat.#SA−371)およびAbeam(Cambridge,UK and MA,抗E.Coli易熱性毒素,cat#ab9199)から入手した。図7に示すとおり、両方の抗体は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTB融合タンパク質の分子量に対応する約60KDaのバンドに結合した。
【実施例3】
【0133】
野生型mMMP−11と比較してmMMP−11(cat−)optおよびmMMP−11(cat−)−LTBoptの免疫原性能を試験するために、Zucchelliら(Enhancing B and T cell Immune response to an HCV E2 DNA vaccine by muscle electro gene transfer.J.Virol.74:11598−11607,(2000))に従い、各BALB/cマウスを、食塩水中の50μgのプラスミドDNAの4回のDNA注射により筋肉内に免疫し、ついで1週間を隔ててエレクトロポレーションを行った。最後の注射の2週間後、マウスを犠死させ、mMMP−11ペプチドに対する免疫応答をインターフェロンガンマ(IFNγ)に関する細胞内染色により測定した。図8に示すとおり、野生型および触媒的に不活性なmMMP−11optは共に、マウスにおける免疫寛容を効率的に破壊するものであった(%CD8+IFNγ+>0.1%)。mMMP−11と触媒的に不活性なmMMP−11optとの間には有意差は何ら存在しないようであった。しかし、同様に図8に示されているとおり、LTBへの触媒的に不活性なmMMP−11optの融合は免疫応答を有意に増強した(p<0.05)。
【0134】
体液性応答をウエスタンブロットにおいて測定した。体液性免疫応答を測定するために、pV1JnsB−MMP−11でトランスフェクトされたHeLa細胞からの全細胞抽出物をポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロースメンブレン上にトランスファーした。前記の免疫マウスからの血清を該メンブレンと共にインキュベートした。ついでmMMP−11に対するマウス抗体の検出を、アルカリホスファターゼに結合した抗マウスIgG(Sigma Chemicals,St.Louis,MO)を使用することにより行った。mMMP−11の分子量に対応するバンドの検出は、mMMP−11に対する抗体の存在を示す。図9に示すとおり、mMMP−11で免疫されたマウスと触媒的に不活性なmMMP−11(cat−)−LTBoptで免疫されたマウスとの間で体液性応答における見掛け上の有意差は観察されなかった。
【0135】
図8に示す結果に基づき、ワクチン接種研究の使用するための最良の免疫原としてmMMP−11(cat−)−LTBoptを選択した。
【実施例4】
【0136】
MMP−11を過剰発現する腫瘍モデルを以下のとおりに作製した。1,2−ジメチルヒドラジン(DMH)またはその代謝産物アゾキシメタンは、しばしば、腫瘍誘発研究における発癌物質として使用される。DMHは、いくつかの場合には1回の経口暴露後でさえも、多数の動物種において結腸腫瘍を誘発することが判明しているが(ChoudharyおよびH.Hansen,Chemosphere 37:801−843(1998))、典型的には6〜10回の週1回の処理が用いられる。DMHはアルキル化剤であり、この化学物質での処理はDNA塩基に対するメチル付加体、点変異、小核小体および姉妹染色分体交換を誘発することが示されている。DMHでの処理は結腸内のアポトーシス(Blakeyら,Cancer Res.45:242−249(1985))、およびヒト結腸癌に特徴的な結腸上皮細胞の細胞増殖の促進を誘発する(Maら,World J.Gastroenterol.8:847−852(2002))。
【0137】
感受性マウス系統、例えばA/Jにおいて、そしてそれより低い度合ではあるがBALB/cにおいても、結腸組織におけるDMH誘発性発癌の進行は以下の異なる段階を経て進行する:(1)異常陰窩形成(ACF)、(2)腺腫、(3)ポリープ、および(4)腺癌。腫瘍形成のこの過程におけるmMMP−11の発現を確認するために、A/Jマウスに6回の週1回のDMHの注射を行い、最後のDMH注射の5週間後に該マウスを犠死させた。この段階で、異常陰窩およびいくつかの腺腫の両方がマウス結腸組織内に存在した。腸組織を凍結し、mMMP−11に対する抗体を使用するウエスタンブロットおよび免疫組織化学法(IHC)により分析した。未処理マウス(ビヒクル)においては、IHC分析は、正常陰窩の基底部にmMMP−11の発現を示し、mMMP−11の発現は結腸幹細胞に限定されているらしかった。異常陰窩および腺腫形成においては強力かつ広汎な発現が検出された。この観察は、DMHで処理されたマウスまたは未処理のままのマウスからの結腸組織抽出物のウエスタンブロット分析により証明された。DMH処理結腸には活性化形態のmMMP−11が存在しており(図10)、このことは該腫瘍状組織による該プロテイナーゼの過剰発現を示している。これらのデータは、DMH誘発性発癌が抗MMP−11療法およびワクチン接種に関するモデルとして適していることを示している。
【実施例5】
【0138】
この実施例は抗MMP−11ワクチンの治療効力を示す。前実施例において示したとおり、A/Jマウスで1−2ジメチルヒドラジン(DMH)の投与により誘発された異常陰窩形成(ACF)および腺腫において、MMP−11は過剰発現される。他の研究は、DMHが免疫系および遺伝的ワクチン接種の効力を妨げないことを示している。DMHが免疫系の機能および遺伝的ワクチン接種の効力を妨げるかどうかを確認するために、以下の実験を行った。
【0139】
10匹のBALB/cまたはA/Jマウスの群を第5週齢からDMHの6回の腹腔内(IP)注射で処理するか、あるいは未処理(模擬)のままとした。第8週および第11週に、該マウスのすべてに50μgのプラスミドpV1J−CEAoptの注射を行った(pV1J−CEAoptに関してはWO2005077977を参照されたい)。2週間後、マウスから採血し、pV1J−CEAoptによりコードされるCEAに対するその免疫応答を、CEAタンパク質を包含する15マーペプチドでの刺激直後の細胞内染色により分析した。BALB/cマウスでは、CD8+免疫応答が測定された。図19Aは、DMH処理BALB/cマウスと模擬処理BALB/cマウスとの間にCD8+応答における有意差が無かったことを示している。A/Jマウスでは、CD8+およびCD4+免疫応答が測定された。図19Bおよび19Cは、DMH処理A/Jマウスと模擬処理A/Jマウスとの間にCD8+およびCD4+応答における有意差が無かったことを示している。これらの結果は、DMHが免疫系の活性に影響を及ぼさないらしいことを示した。総合すると、これらのデータは、MMP−11が腫瘍関連抗原であること、およびMMP−11に対するワクチンが、MMP−11を過剰発現する癌を治療するための実施可能な手段となることを示唆した。
【0140】
抗MMP−11ワクチンの効力を試験するために、60匹のA/Jマウスの群を6回の週1回の注射でDMHで処理した。1群は未処理のままである(ナイーブ)。もう1つの群をpV1JnsA−mMMP−11(cat−)−LTBoptで免疫し、ついでエレクトロポレーションを行う(図11Aに示すスキームに示されているとおり)。最後の免疫の2週間後、mMMP−11に対する細胞性免疫(CMI)を、全タンパク質を包含する15マーペプチドのプールで分析したが、該分析群においては、乏しい免疫応答が検出されたに過ぎなかった(データ非表示)。DMHの最後の注射の7〜8週間後、1群当たり20匹のマウスを犠死させ、ACF、腺腫、ポリープおよび腺癌の存在に関して結腸を分析した。ワクチン接種されたマウスは、DMHにより誘発されたACF、腺腫、ポリープおよび腺癌の存在の有意な軽減を示している(図11B〜11E)。
【実施例6】
【0141】
もう1つのマウス系統におけるDMH発癌モデルでの腫瘍防御の効力を確認するために、BALB/cマウスを使用して、前記と同じ処理および免疫方式に従った。最後の免疫の2週間後、mMMP−11に対するCMIを、全タンパク質を包含する15マーペプチドのプールで分析した。
【0142】
免疫マウスからの脾細胞の調製のために、脾臓を犠死マウスから無菌的に摘出し、格子(grid)を通して擦り取ることにより破砕した。ACK細胞溶解バッファー(Life Technologies,Bethesda,MD)の存在下での10分間のインキュベーションにより、赤血球ライセートを得た。1200rpmで10分間の遠心分離の後、白血球をR10培地に再懸濁させた。1〜2×106個の脾細胞またはPBMC(抹消血単核細胞)を1mLのR10培地に再懸濁させた。抗原ペプチドを1μg/mLの最終濃度までブレフェルジン(Brefeldin)Aと共に加えた。mMMP−11抗原ペプチドは15マーペプチドのプールを含み、それらは一緒になって全MMP−11ペプチドを包含するものであった。ペプチドの総数は121であり、4つのプール(A,1〜30;B,31〜60;C,61〜90;D,91〜121)に分割された。
【0143】
37℃で12時間のインキュベーションの後、該細胞を3mLのFACSバッファー(1%FBSで補足され0.05% NaN3を含有するPBS)で洗浄し、室温で10分間遠心分離した。該細胞を、100μLのFACSバッファー中、抗マウスCD16/CD32と共に4℃で15分間インキュベートした。ついで、該細胞をFACSバッファーで洗浄した後、15マーmMMP−11抗原ペプチドの存在下のインキュベーションの際のIFNγの分泌に関して該細胞を分析した。
【0144】
表面抗原染色のために、アロフィコシアニン(APC)結合抗マウスCD3フィコエリトリン(PE)結合抗マウスCD4およびペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP)結合抗マウスCD8α(すべて、FACSバッファー中で1:50希釈されたもの)を該細胞に加えて100μLの最終容量とし、該細胞を暗所にて室温で30分間インキュベートした。PERMWASH(Pharmingen)での洗浄の後、細胞を100μLのCYTOFIX−CYTOPERM溶液(Pharmingen)に再懸濁させ、ボルテックスし、暗所にて4℃で20分間インキュベートした。
【0145】
細胞内染色のために、該細胞を、PerWash中で1:50希釈されたフルオレセイン(FITC)結合抗マウスインターフェロンγ(100μLの最終容量)と共に暗所にて室温で30分間インキュベートした。洗浄後、該細胞をPBS中の1% ホルムアルデヒド(250〜300μL)に再懸濁させ、FACS CALIBER(Becton Dickinson,San Jose,CA)で分析した。
【0146】
免疫群において、主として該タンパク質のC末端に対する有意な免疫応答が検出され、それはCD8+特異的であった(図12A)。惹起されたCD8+エフェクターは機能的であった。なぜなら、それは、mMMP−11抗原ペプチドで負荷された腫瘍状標的細胞を細胞溶解することが可能だったからである(図12B)。最も重要なことは、ワクチン接種マウスにおいて、ACFから腺腫の全段階において非常に有意な防御が観察されたことである(図13A〜13D)。これらのデータは、MMP−11が能動的特異的免疫療法のための最適な標的であり、遺伝的ワクチン接種が腫瘍防御において極めて効率的であることを示している。
【実施例7】
【0147】
触媒的に不活性なヒトMMP−11をコードするヌクレオチド配列のクローニングおよび最適化
マウスMMP−11と同様にして、ヒトMMP−11をヒト細胞における最高コドン使用頻度に従いコドン最適化し、220位の触媒部位内のグルタミン酸(E)のコドンをアラニン(A)のものに変化させることにより触媒的に不活性にした。コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11を含むポリヌクレオチドをオリゴヌクレオチド構築により合成し(GENEART,GmbH)、ベクターpV1JnsAのBglII/EcoRI部位内にクローニングしてpV1JnsA−hMMP−11(cat−)optを得た(図18)。触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を図14に示す。触媒的に不活性なhMMP−11のアミノ酸配列を図15に示す。ベクターpV1JnsA−hMMP−11(cat−)optはヒトにおける使用のために設計した。これは、免疫原性エピトープを特定するためにヒトMHCクラスI(例えば、HLA−A2)に関するマウストランスジェニックのような前臨床モデルにおいて使用されうる。
【0148】
hMMP−11を含む抗MMP−11ワクチンの効力を改善するために、シグナル配列が除去された大腸菌(E.coli)LTBに融合された触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを合成し、pV1JnsAベクターのBglII/SalI部位内にクローニングしてpV1Jns−MMP−11(cat−)−LTBopt(図20)を得る。pV1Jns−MMP−11(cat−)−LTBoptのヌクレオチド配列を配列番号18に示す。該ヌクレオチド配列は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードするヌクレオチドコドンを、LTBをコードするヌクレオチドコドンから分離するXbaIポリリンカーの第2ヌクレオチドから始まる。配列番号18のヌクレオチド配列においては、CMVプロモーターはヌクレオチド3647−4261を含み、イントロンAはヌクレオチド4396−5221を含み、触媒的に不活性なhMMP−11はヌクレオチド5253−6715を含み、XbaIポリリンカーはヌクレオチド6715−5を含み、LTBはヌクレオチド6−315を含み、BGHポリAはヌクレオチド382−599を含む。触媒的に不活性なヒトMMP−11−LTB融合体のポリヌクレオチドは、GENEART GmbH,Germanyにおいて行われうるオリゴヌクレオチド構築により合成されうる。
【0149】
本発明は、例示されている実施形態に関して記載されているが、本発明はそれらに限定されるものではないと理解されるべきである。本明細書中の教示を利用する当業者は、本発明の範囲内の追加的な修飾および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付されている特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1はベクターpV1JnsB−mMMP−11の地図を示す。ヒトCMVプロモーターおよびマウスMMP−11 cDNAが示されている。
【図2】図2はマウスMMP−11の発現を示す。HeLa細胞をpV1JnsB−MMP−11でトランスフェクトし、抽出物をウエスタンブロットで分析した。MMP−11の分子量に対応するバンドが検出された。
【図3】図3は、触媒的に不活性なマウスMMP−11をコードするコドン最適化核酸(mMMP−11opt)のヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。コドン最適化された触媒的に不活性なmMMP−11に対応するヌクレオチドが黒で示されており、XbaI部位を含むポリリンカーの追加的ヌクレオチドが下線で示されている。クローニング部位、コザック配列および終止コドンのヌクレオチドが斜体で示されている。mMMP−11の開始コドンが太字で示されている。
【図4】図4は、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化核酸(mMMP−11−LTBopt)のヌクレオチド配列(配列番号14)を示す。コドン最適化された触媒的に不活性なmMMP−11に対応するヌクレオチドが黒で示されており、XbaI部位を含むポリリンカーの追加的ヌクレオチドが下線で示されている。大腸菌(E.coli)LTB配列をコードするヌクレオチドが小文字で示されている。クローニング部位、コザック配列および終止コドンのヌクレオチドが斜体で示されている。
【図5】図5は、触媒的に不活性なmMMP−11−LTBopt融合ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号15)を示す。触媒的に不活性なmMMP−11に対応するポリペプチドを含むアミノ酸が黒で示されており、LTB配列が斜体で示されている。ポリリンカーによりコードされるアミノ酸が下線で示されている。
【図6A】図6Aは、触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−mMMP−11(cat−)optの地図を示す。
【図6B】図6Bは、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なmMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−mMMP−11(cat−)LTBoptの地図を示す。
【図7】図7は、pV1JnsA−MMP−11(cat−)−LTBoptでトランスフェクトされたHeLa細胞におけるpV1JnsA−MMP−11(cat−)−LTBoptの発現を示す、抗MMP−11または抗LTB抗体を使用したウエスタンブロットを示す。
【図8】図8は、mMMP−11、mMMP−11optおよびmMMP−11(cat−)−LTBoptにより惹起された細胞性免疫応答を示す。DNAエレクトロポレーション(DNA−EP)の4回の週1回の注射により6匹のBALB/cマウスを免疫した。mMMP−11タンパク質のC末端を含むペプチドを使用するIFNγに関する細胞内染色により、免疫応答を測定した。丸印は、それぞれの単一のマウスに関するCD8+IFNγ+の割合(%)を表す。水平の棒線は該群の幾何平均を表す。
【図9】図9は、触媒的に不活性なmMMP−11およびmMMP−11(cat−)−LTBoptにより惹起された体液性応答を示す。DNAエレクトロポレーション(DNA−EP)の4回の週1回の注射によりBALB/cマウスを免疫した。抗体の存在をウエスタンブロットにより測定した。mMMP−11に対応する50KDaのバンドの検出はmMMP−11に対する体液性応答を示している。
【図10】図10は、mMMP−11が、DMHにより誘発されたマウス結腸腺腫において過剰発現されることを示す。A/JマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。5週間後、結腸組織をIHCおよびウエスタンブロット法により分析する。Vehはビヒクル(PBS)を意味する。
【図11A】図11Aは、結腸癌を予防するためのmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示すために行った実験の概要図を示す。A/JマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。マウスの一群を未処理のままにし(ナイーブ)、もう1つの群を50μgのプラスミドpV1J−mMMP−11(cat−)−LTBoptでワクチン接種した。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸を異常陰窩形成(ACF)(図11Bおよび11C)、ポリープ(図11D)および腺腫(図11D)に関して顕微鏡で分析した。
【図11B】図11Bは、ACFの抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図11C】図11Cは、ACFの抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図11D】図11Dは、ポリープの抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図11E】図11Eは、腺腫の抑制におけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図12A】図12Aは、抗mMMP−11遺伝的ワクチンにより惹起された免疫応答を示す。BALB/cマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。マウスの一群を未処理のままにし(ナイーブ)、もう1つの群を50μgのプラスミドpV1J−mMMP−11(cat−)−LTBoptでワクチン接種した。IFNγに関する細胞内染色により免疫応答を測定した。黒い丸印は、それぞれの単一のマウスに関するCD8+IFNγ−の割合(%)を表す。水平の棒線は該群の幾何平均を表す。
【図12B】図12Bは、抗mMMP−11遺伝的ワクチンにより惹起された免疫応答を示す。BALB/cマウスをDMHの6回のIP注射で処理した。マウスの一群を未処理のままにし(ナイーブ)、もう1つの群を50μgのプラスミドpV1J−mMMP−11(cat−)−LTBoptでワクチン接種した。エフェクター細胞を7日間にわたりmMMP−11ペプチドで刺激するCTLアッセイを用いて、免疫応答を測定した。mMMP−11ペプチドで負荷(load)されていない又は負荷されたp815肥満細胞腫細胞を標的として使用した。
【図13A】図13Aは、ACFの抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をACFに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図13B】図13Bは、ACFの抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をACFに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図13C】図13Cは、ポリープの抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をポリープに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図13D】図13Dは、腺腫の抑制におけるBALB/cマウスにおけるmMMP−11(cat−)−LTBopt遺伝的ワクチンの治療効力を示す。最後のDMH注射の7〜8週間後、マウスを犠死させ、結腸をポリープに関して顕微鏡で分析した。白い丸印はマウス1匹当たりの形成数を示し、黒い丸印は該群の幾何平均を示す。統計分析(Tスチューデント検定)が示されている。
【図14】図14は、ヒトにおける発現のためにコドンが最適化されている、触媒的に不活性なヒトMMP−11(hMMP−11(cat−)opt)をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号4)を示す。
【図15】図15は、触媒的に不活性なhMMP−11のアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図16】図16は、MMP−11およびLTBの両方をコードするコドンがヒトにおける発現のために最適化されている、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なhMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号12)(hMMP−11(cat−)−LTBopt)を示す。LTBのアミノ酸1−21をコードするコドンは該融合ポリペプチド内に含まれない。コドン最適化された触媒的に不活性なhMMP−11に対応するヌクレオチドが黒で示されており、XbaI部位を含むポリリンカーの追加的ヌクレオチドが下線で示されている。大腸菌(E.coli)LTB配列をコードするヌクレオチドが小文字で示されている。
【図17】図17は、触媒的に不活性なhMMP−11−LTB融合ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号10)を示す。触媒的に不活性なMMP−11を含むアミノ酸が大文字で示されており、LTBを含むアミノ酸が斜体で示されており、ポリリンカーによりコードされるアミノ酸が下線で示されている。開始コドンが太字で示されている。
【図18】図18は、触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−hMMP−11(cat−)optの地図を示す。
【図19A】図19Aは、DMHがBALB/cマウスのCD8+免疫応答を妨げないことを示す。
【図19B】図19Bは、DMHがA/JマウスのCD8+免疫応答を妨げないことを示す。
【図19C】図19Cは、DMHがA/JマウスのCD4+免疫応答を妨げないことを示す。
【図20】図20は、大腸菌(E.coli)LTBに連結された触媒的に不活性なhMMP−11をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含むベクターpV1J−hMMP−11(cat−)−LTBopt(配列番号18を参照されたい)の地図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、MMP−11をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸。
【請求項2】
該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11が更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項2記載の核酸。
【請求項4】
MMP−11がヒトMMP−11である、請求項1記載の核酸。
【請求項5】
MMP−11が霊長類由来のMMP−11である、請求項1記載の核酸。
【請求項6】
該ヌクレオチド配列が配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の核酸。
【請求項7】
免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項8】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項7記載の核酸。
【請求項9】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項7記載の核酸。
【請求項10】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項7記載の核酸。
【請求項11】
該LTBが、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされている、請求項10記載の核酸。
【請求項12】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項7記載の核酸。
【請求項13】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、請求項7記載の核酸。
【請求項14】
MMP−11が、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされている、請求項7記載の核酸。
【請求項15】
該融合ポリペプチドが、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む、請求項7記載の核酸。
【請求項16】
プロモーターに機能的に連結された請求項1記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項17】
請求項16記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項18】
該融合ポリペプチドの製造のための条件下、細胞培養培地内で請求項17記載の宿主細胞を培養することを含んでなる製造方法。
【請求項19】
プロモーターに機能的に連結された請求項7記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項20】
請求項19記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項21】
該融合ポリペプチドの製造のための条件下、細胞培養培地内で請求項20記載の宿主細胞を培養することを含んでなる製造方法。
【請求項22】
免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含んでなる融合ポリペプチド。
【請求項23】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項24】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項24記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
該LTBが、配列番号9に示すアミノ酸を含む、請求項25記載の融合ポリペプチド。
【請求項27】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項28】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項27記載の融合ポリペプチド。
【請求項29】
MMP−11が、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項30】
該ポリペプチドが、配列番号10に示すアミノ酸配列を含む、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項31】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、MMP−11をコードするヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドワクチン。
【請求項32】
該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11が更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む、請求項32記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項33】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項33記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項34】
MMP−11がヒトMMP−11である、請求項32記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項35】
MMP−11が霊長類由来のMMP−11である、請求項32記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項36】
該ヌクレオチド配列が配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項33記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項37】
免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドワクチン。
【請求項38】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項39】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項40】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項41】
該LTBが、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる、請求項41記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項42】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項43】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項44】
MMP−11が、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項45】
該融合ポリペプチドが、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項46】
遺伝的アジュバントを更に含む、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項47】
免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドを含んでなるポリペプチドワクチン。
【請求項48】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項49】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項50】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項52記載のポリペプチドワクチン。
【請求項51】
該LTBが、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む、請求項53記載のポリペプチドワクチン。
【請求項52】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項53】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項55記載のポリペプチドワクチン。
【請求項54】
MMP−11が、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項55】
該融合ポリペプチドが、配列番号10に示すアミノ酸配列を含む、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項56】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸の使用。
【請求項57】
個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含む融合ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項58】
個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含む融合ポリペプチドの使用。
【請求項59】
(a)マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチド配列(ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。)を含む核酸を含むワクチン、または免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むワクチンを準備すること、および
(b)該ワクチンを個体に接種して癌を治療すること
を含んでなる、個体における癌の治療方法。
【請求項60】
該個体が、化学療法、放射線療法および腫瘍関連抗原に対するワクチンよりなる群から選ばれる1以上の治療を受けている、請求項62記載の方法。
【請求項61】
該個体が、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有する、請求項62記載の方法。
【請求項62】
該個体が、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する、請求項62記載の方法。
【請求項63】
(a)免疫増強要素に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドを含むワクチンを準備すること、および
(b)該ワクチンを個体に接種して癌を治療すること
を含んでなる、個体における癌の治療方法。
【請求項64】
該個体が、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有する、請求項66記載の方法。
【請求項65】
該個体が、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する、請求項66記載の方法。
【請求項66】
マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定するための方法であって、
(a)マウスにおいて該癌を誘発させること、
(b)該誘発癌を有するマウスに該アナライトを投与すること、および
(c)該誘発腫瘍を有するマウスにおいて該アナライトが該癌を抑制するかどうかを判定して、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定すること
を含む、前記方法。
【請求項67】
該アナライトを該マウスに投与する前に、該アナライトがMMP−11に結合することを確認する、請求項69記載の方法。
【請求項68】
該マウスにおいて誘発される癌が結腸癌である、請求項69記載の方法。
【請求項69】
該マウスにおいて該癌を誘発するのに十分な量の1−2ジメチルヒドラジン(DMH)を該マウスに投与することにより、該マウスにおいて該癌を誘発させる、請求項69記載の方法。
【請求項1】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、MMP−11をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸。
【請求項2】
該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11が更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項2記載の核酸。
【請求項4】
MMP−11がヒトMMP−11である、請求項1記載の核酸。
【請求項5】
MMP−11が霊長類由来のMMP−11である、請求項1記載の核酸。
【請求項6】
該ヌクレオチド配列が配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の核酸。
【請求項7】
免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項8】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項7記載の核酸。
【請求項9】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項7記載の核酸。
【請求項10】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項7記載の核酸。
【請求項11】
該LTBが、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされている、請求項10記載の核酸。
【請求項12】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項7記載の核酸。
【請求項13】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、請求項7記載の核酸。
【請求項14】
MMP−11が、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされている、請求項7記載の核酸。
【請求項15】
該融合ポリペプチドが、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む、請求項7記載の核酸。
【請求項16】
プロモーターに機能的に連結された請求項1記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項17】
請求項16記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項18】
該融合ポリペプチドの製造のための条件下、細胞培養培地内で請求項17記載の宿主細胞を培養することを含んでなる製造方法。
【請求項19】
プロモーターに機能的に連結された請求項7記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項20】
請求項19記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項21】
該融合ポリペプチドの製造のための条件下、細胞培養培地内で請求項20記載の宿主細胞を培養することを含んでなる製造方法。
【請求項22】
免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含んでなる融合ポリペプチド。
【請求項23】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項24】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項24記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
該LTBが、配列番号9に示すアミノ酸を含む、請求項25記載の融合ポリペプチド。
【請求項27】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項28】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項27記載の融合ポリペプチド。
【請求項29】
MMP−11が、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項30】
該ポリペプチドが、配列番号10に示すアミノ酸配列を含む、請求項22記載の融合ポリペプチド。
【請求項31】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、MMP−11をコードするヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドワクチン。
【請求項32】
該ヌクレオチド配列によりコードされるMMP−11が更に、MMP−11を触媒的に不活性にする変異を含む、請求項32記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項33】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項33記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項34】
MMP−11がヒトMMP−11である、請求項32記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項35】
MMP−11が霊長類由来のMMP−11である、請求項32記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項36】
該ヌクレオチド配列が配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項33記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項37】
免疫増強要素ポリペプチドまたはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドワクチン。
【請求項38】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項39】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項40】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項41】
該LTBが、配列番号8に示すヌクレオチド配列によりコードされる、請求項41記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項42】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項43】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項44】
MMP−11が、配列番号4に示すヌクレオチド配列によりコードされる、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項45】
該融合ポリペプチドが、配列番号11に示すヌクレオチド配列を含む、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項46】
遺伝的アジュバントを更に含む、請求項38記載のポリヌクレオチドワクチン。
【請求項47】
免疫増強要素またはその実質的部分に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドを含んでなるポリペプチドワクチン。
【請求項48】
該免疫増強要素が、熱ショックタンパク質(HSP)70、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、破傷風トキソイドの断片C(FrC)、FrCのN末端ドメイン(DOM)、免疫グロブリンGlの定常鎖の重フラグメント(FcIgG)、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)由来のコレラ毒素(CT)および易熱性毒素のサブユニットB(LTB)よりなる群から選ばれる、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項49】
該免疫増強要素が大腸菌(E.coli)の易熱性毒素のサブユニットB(LTB)である、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項50】
該LTBがシグナル配列を含まない、請求項52記載のポリペプチドワクチン。
【請求項51】
該LTBが、配列番号9に示すアミノ酸配列を含む、請求項53記載のポリペプチドワクチン。
【請求項52】
MMP−11が、それを触媒的に不活性にする変異を含む、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項53】
該変異がMMP−11の亜鉛結合ドメイン内に存在する、請求項55記載のポリペプチドワクチン。
【請求項54】
MMP−11が、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項55】
該融合ポリペプチドが、配列番号10に示すアミノ酸配列を含む、請求項50記載のポリペプチドワクチン。
【請求項56】
ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される該融合ポリペプチドをコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている、マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸の使用。
【請求項57】
個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含む融合ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項58】
個体における癌を治療するための医薬における、免疫増強要素に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含む融合ポリペプチドの使用。
【請求項59】
(a)マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)をコードするヌクレオチド配列(ここで、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸において低頻度で見出される、MMP−11をコードするヌクレオチドコドンの1以上が、ヒトにおける高発現タンパク質をコードする核酸においてより高い頻度で見出されるヌクレオチドコドンで置換されている。)を含む核酸を含むワクチン、または免疫増強要素に連結されたMMP−11を含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むワクチンを準備すること、および
(b)該ワクチンを個体に接種して癌を治療すること
を含んでなる、個体における癌の治療方法。
【請求項60】
該個体が、化学療法、放射線療法および腫瘍関連抗原に対するワクチンよりなる群から選ばれる1以上の治療を受けている、請求項62記載の方法。
【請求項61】
該個体が、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有する、請求項62記載の方法。
【請求項62】
該個体が、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する、請求項62記載の方法。
【請求項63】
(a)免疫増強要素に連結されたマトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を含有する融合ポリペプチドを含むワクチンを準備すること、および
(b)該ワクチンを個体に接種して癌を治療すること
を含んでなる、個体における癌の治療方法。
【請求項64】
該個体が、乳癌、結腸癌、頭部および頚部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌(基底細胞癌)、子宮癌(子宮頚癌および子宮内膜癌)よりなる群から選ばれる浸潤性癌を有する、請求項66記載の方法。
【請求項65】
該個体が、浸潤へと進展するリスクを有する非浸潤性癌を有する、請求項66記載の方法。
【請求項66】
マトリックスメタロプロテイナーゼ11(MMP−11)を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定するための方法であって、
(a)マウスにおいて該癌を誘発させること、
(b)該誘発癌を有するマウスに該アナライトを投与すること、および
(c)該誘発腫瘍を有するマウスにおいて該アナライトが該癌を抑制するかどうかを判定して、MMP−11を過剰発現する癌を抑制するアナライトを特定すること
を含む、前記方法。
【請求項67】
該アナライトを該マウスに投与する前に、該アナライトがMMP−11に結合することを確認する、請求項69記載の方法。
【請求項68】
該マウスにおいて誘発される癌が結腸癌である、請求項69記載の方法。
【請求項69】
該マウスにおいて該癌を誘発するのに十分な量の1−2ジメチルヒドラジン(DMH)を該マウスに投与することにより、該マウスにおいて該癌を誘発させる、請求項69記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【公表番号】特表2009−509553(P2009−509553A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533917(P2008−533917)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009536
【国際公開番号】WO2007/042169
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009536
【国際公開番号】WO2007/042169
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
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