説明

マトリックス中に埋め込まれた量子ドットの製造方法及び前記方法を用いて製造されたマトリックス中に埋め込まれた量子ドット

ポリマーを含有する溶液中に溶解されている金属前駆物質を、小滴噴霧分布を用いて基板上に配置することは知られている。引き続きカルコゲン含有試薬との気相反応は、ポリマーマトリックス中の量子ドットを生じさせる。任意の、しかしながらポリマー不含のマトリックスを生じさせるために、本発明による方法は、前駆物質(PC)からなる量子ドット(QD)の施与後に、これを引き続き施与された量子ドット(QD)及び覆われていない基板(SU)と気相の試薬(RG)とを接触させることを用意し、この試薬は生じさせるべきマトリックス(MA)の全ての成分を含有し、その際に、前駆物質(PC)及び試薬(RG)の間の化学反応は、接触と同時の又は次の温度増大によりもたされる。それゆえ、量子ドット(QD)及びマトリックス(MA)の間の調和する組成が製造されることができ、その際に量子ドット(QD)は、前駆物質(PC)及び試薬(RG)の元素からなる添加組成を有し、かつマトリックス(MA)は試薬(RG)の元素から専らなる組成を有する。相応する元素選択により、二元系、三元系又は多元系の化合物半導体が製造されることができ、これらはナノオプティクス及びナノエレクトロニクスにおいて、しかしまた太陽電池の場合に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上で、マトリックス中に埋め込まれた量子ドットを製造する方法及び前記方法を用いて製造されたマトリックス中に埋め込まれた量子ドットに関する。
【0002】
数ナノメートルに過ぎない寸法を有する物体、いわゆる量子ドット又はナノドット又は量子島又はナノ島の場合に、3つ全ての空間方向で電子の運動の自由度が制限されている("無次元系")。3つ全ての方向での線寸法はそれゆえ電荷担体のド・ブロイ波長よりも小さい。この種の量子ドットは、相応する体積材料の強く改変された電子的構造を有し、特に、状態の密度は、分子のそれと同じ大きさである。量子ドットは、不連続のエネルギースペクトルを有し、かつ多くに関して原子に類似した挙動を示し、このことは電子的構造の量子性に起因されうる。しかしながら原子とは異なり、サイズ及び電子的構造の影響を受けうる。量子ドットの低い電気容量のために、既に量子ドット中に存在している電子への別の電子の添加("単一電子トンネル")は、数十meV〜数百meVの範囲内の特定のエネルギー消費を必要とする("クーロン閉塞")。この作用は、量子ドットを介しての電流の流れの制御可能な量子化をもたらす。量子ドットのサイズ及び形は、製造方法及び使用される元素に依存する。量子ドットは、目下のところ、特にナノオプティクス及びナノエレクトロニクスにおいて、例えば光検出器及び半導体レーザーの場合、しかしまた太陽電池の場合に使用される。特に、半導体マトリックス中の二元系、三元系又は多元系の化合物半導体量子構造の製造は、効率的な太陽電池の製造の場合にますます重要性を増している。
【0003】
技術水準
量子ドットの最も利用される製造方法は、エピタキシャルStranski-Krastanov成長法であり、前記方法は、成長した基板材料上での成長する半導体の結晶格子のひずみ(Verspannung)に基づいている。この格子ひずみは、成長する層が均一に成長するのではなく、量子ドットである小さなナノメートルサイズの島が形成されることをもたらす。この方法は、前記量子ドットのサイズ及び密度の特定の制御を可能にするのに対し、配置及び位置の制御は極めて制約されてのみ可能である。量子ドットの他の製造方法は、走査型プローブ顕微鏡法の方法論を利用する。これらの方法は、前記量子ドットのサイズ及び位置の極めて良好な制御を可能にするが、しかしながら、量子ドットのそれぞれが個々に製造されなければならない逐次的方法である。それゆえ、そのような方法は、多数の量子ドットを有する構造素子には制約されてのみ適している。
【0004】
マトリックス中の量子ドットのin-situ製造は、例えば米国特許出願公開(US-A1)第2004/0092125号明細書から知られている。この場合に、基板上の薄い金属層上へ、誘電性前駆物質が施与されかつ段階的に加熱され、それにより、前記金属層及び前記前駆物質は段階的に互いに重なっているので、前記前駆物質からなる量子ドットが、前記金属層中に生じる。米国特許(US-B1)第6.242.326号明細書からは、Ga滴から生じたGaAs量子ドットが、不動態化層として緩衝層及びバリヤー層で覆われることによる量子ドットの製造方法が知られている。類似の方法は、大韓民国特許出願公開(KR-A)第1020010054538号明細書から知られている。特開(JP-A)2006-080293号公報には、GaAs層上へのInAs量子ドットの自己組織化された配置の方法が開示され、その際に前記量子ドットはGaAsマトリックス中へ埋め込まれている。さらに、米国特許(US)第5.229.320号明細書からは、量子ドットを、多孔質GaAs膜を貫通してAlGaAs基板上に堆積させ、かつ次にAlGaAsからなるマトリックスを埋め込むために成長させることは知られている。分散されたナノ粒子を有するポリマーの製造方法は、独国特許出願公開(DE-T2)第601 08 913号明細書から知られており、その際にまず最初にポリマー前駆物質が堆積され、引き続きその上にナノ粒子が量子ドットとして分布され、かつこれらは加熱により前記ポリマーの架橋による前記マトリックス中へ埋め込まれる。
【0005】
最も近い技術水準は、独国特許出願公開(DE-T2)第694 11 945号明細書に記載されており、これから本発明は出発している。ここでは、まず最初に溶解可能な前駆物質が、金属又は金属化合物から蒸発可能な溶剤中に溶解されることによる方法が開示される。溶解された前駆物質は、ついで、nm寸法の微分散した小滴中で基板上へ噴霧される。この公知の方法の場合に、それゆえ、量子ドットの構造及び分布は、もはや材料及び基板に依存していない。エピタキシャル成長の相対的に強い方法制限は生じない。引き続き、ナノ構造化されて施与された前駆物質は、カルコゲン含有試薬と接触されるので、室温で、化学反応が行われて、前駆物質及び試薬からなる所望の材料組成を有する量子ドットが形成される。前記溶剤の蒸発は、前記化学反応の前、前記化学反応中又は前記化学反応後に行われることができる。前記溶剤中へ、付加的にポリマーが添加される。これは、まず第一に溶剤中の前記溶解された前駆物質の被覆(Ummantelung)に役立ち、かつ噴霧堆積の間のナノ粒子のアグロメレーションを防止する。そのうえ、前記ポリマーは基板上に堆積され、かつそこで、量子ドットが埋め込まれているマトリックスが形成される。透明なプラスチックからなるこの種のポリマーマトリックスは、光学目的のために特定の屈折率を有し、かつ他の屈折率の別のポリマー層で積み重ねられることができる。前記ポリマーは化学反応の支配下にはなく、前記試薬との相互作用が生じない。ポリマー以外の材料は、公知の方法の場合に、マトリックスの形成のために使用されることができない、それというのも、マトリックス形成は、そこで単に二次的効果に過ぎず、かつ単純な沈殿として基板上に形成されるからである。主に、前記の使用されるポリマーは、溶解された前駆物質粒子のアグロメレーション防止に利用され、かつそれに応じた材料及び性質を有しなければならない。
【0006】
米国特許出願公開(US-A1)第2003/0129311号明細書からは、類似した方法が知られているが、前記方法の場合にしかしながらまず最初に多孔質のポリマーテンプレートが形成される。前記ポリマーの細孔は、引き続き前駆物質溶液で充填され、これからついで量子ドットが生じる。
【0007】
課題設定
前記の技術水準から出発して、本発明の課題は、意図的に任意の、しかしながらポリマー不含のマトリックスが困難にする方法制限なしに製造可能である、マトリックス中に埋め込まれた量子ドットの製造方法を提供することを見出すことである。前記マトリックス組成の選択は、前記量子ドット性質から独立して行われることができるべきであるが、しかし前記量子ドットの材料組成の決定に関与するので、量子ドットとマトリックスとの間で調和する(konkordierende)組成がもたらされる。前記量子ドットの製造は、さらに、エピタキシャル成長の強い方法制限から独立したままであるべきである。その場合に、前記方法は、単純であり、安価であり、かつ頑強であり、かつ好ましくはまた、特に太陽電池技術において使用可能である化合物半導体ベースの生成物をもたらすべきである。
【0008】
この課題の解決手段は、方法に係る請求項から引用されることができる。本発明の有利なさらなる展開は、従属請求項中に示されており、かつ以下に本発明に関連してより詳細に説明される。
【0009】
本発明は、基板上で、マトリックス中に埋め込まれた量子ドットを、まず最初に、少なくとも1つの第一の金属又は金属化合物からなる前駆物質(前駆体)からなる量子ドットが前記基板上へ施与されることによって製造する方法を提供する。高構造化又はナノ構造化された施与は、その際に前記量子ドットのジオメトリー及び密度を規定する。それにより及び前駆物質選択により、前記量子ドットの電子的性質は、基板から独立して規定され、それにより多数の異なる基板、例えば単純なガラス、金属コーティングされたガラス、単結晶ウェーハ、多結晶層、フィルムが使用されることができる。例えば、結晶質基板中のゆがんだ格子状態での結合が割愛される。本発明の場合の前駆物質の使用は、前記方法の間に前記量子ドットの最終的な構造サイズ及び自己配置の結合を高める。前記量子ドットを施与する多様な方法は、それ自体として知られており、かつさらに以下に記載される。
【0010】
前記量子ドットを施与した後に、これらの量子ドット及びこれらにより覆われていない前記基板の領域は、引き続き気相の試薬と接触される。前記試薬は、その場合に、少なくとも1つの第二の金属及び/又はカルコゲンからなり、かつ形成すべきマトリックスの全ての元素を含有し、その際に前記マトリックスは前記試薬の元素から専らなる組成を有する。前記前駆物質と前記試薬との間の化学反応は、接触と同時の又はその後の温度増大(温度処理工程)によりもたらされる。試薬と、施与された量子ドットとの間の接触は、前記量子ドットの所望の最終的な材料組成のための前駆物質の化学反応をもたらす。前記試薬が、覆われていない基板と触れるところで、試薬中の前記元素からなるマトリックスは、相応する化学量論的な比で生じる。変換された量子ドットの上部でも、マトリックスは堆積するので、前記量子ドットは、試薬との反応の実施後にin-situ形成されたマトリックス中に完全に埋め込まれている。
【0011】
本発明による方法を用いて、それゆえ、量子ドットは、元素状金属又は金属化合物から出発して、前駆物質として、多元系のもしくは元素状のカルコゲンとの気相反応によって製造されることができる。同時に、すなわちin-situ、同じ処理工程において、気相反応工程は、本発明による方法の場合に、二元系、三元系又は多元系の化合物半導体からなる好ましい形で前記マトリックスの成長のために役立ち、その中に量子ドットが、同様に化合物半導体と(1つ又はそれ以上の金属成分との、マトリックスに比較して多く)形成において埋め込まれている。その場合に、前記気相反応工程は一方では、前駆物質が直接的に最終生成物へと、例えば高められる処理温度により反応されるように、又は他方ではしかしまた、この反応が、引き続き別個の温度処理工程において行われるように、行われることができる。前記前駆物質構造の寸法、使用される前駆物質元素並びに前記気相反応の使用される元素は、その場合に、前記最終生成物の構造的、電子的及び光学的な性質を決定する。多様な方法は、前記前駆物質の製造について並びに前記気相反応について使用可能である。
【0012】
所望の寸法の島の形の金属前駆物質の堆積のために、多数の方法が使用でき、これらはついで、次の気相に基づく処理工程、例えば蒸発、スパッタリング、リソグラフィープロセス、集束イオンビーム、走査プローブ電子顕微鏡法に基づく方法、電気化学的堆積方法並びに湿式化学的な方法ILGAR及びSILARを用いて、好ましくは半導体構造へ変換されることができる。
【0013】
本発明の最も近くにある独国特許出願公開(DE-T2)第694 11 945号明細書からは、本発明の場合にも使用されることができ、溶解された前駆物質を施与する方法が知られているが、しかしながら、使用される前駆物質も溶解可能であることが必要条件である。前記方法は、ついで、さらなる展開において、有利に、蒸発可能な溶剤中に溶解されている液相の前駆物質により特徴付けられる。混合物である前駆物質/溶剤は、ついで、特別なノズルを用いて及び場合により電場の印加下に小滴形で前記基板上に噴霧され、その際に、前記前駆物質のアグロメレーションを生じないことが顧慮されるべきである。分離剤としてのポリマーの添加は、本発明の場合に不可能である、それというのも、これはついで妨害してまた前記マトリックス中へ組み込まれるからである。前記溶剤は、前記前駆物質と前記試薬との化学反応を開始する前、開始する間又は開始した後に、蒸発されることができるので、湿式化学反応又は乾式化学反応は、前記量子ドットの最終生成物をもたらす。
【0014】
前記前駆物質の溶解施与に加えて、しかしまた、有利に、固相の前駆物質が使用されることができる。特別な、しかし完全に単純な方法を用いて、この前駆物質は、ついで、高構造化ないしナノ構造化された形で前記基板上へ施与される。例えば、ナノ粒子の形の固相の前駆物質は、単純に散布することによって前記基板上へ施与されることができる。前記ナノ粒子を、例えばマイクロマニピュレーターで意図的に施与することは同様に可能である。
【0015】
類似の多数のプロセスは、試薬中の所望の元素と金属前駆物質との気相反応のために使用できる。好ましくは、本発明による方法の場合に半導体元素が使用される。通例、少なくとも1つの金属及び/又はカルコゲンを含有する所望の最終生成物に応じて、元素状の、二元系、三元系又は多元系の金属前駆物質の多様な組合せを使用することができ、これらは試薬中の相応する元素状の、二元系、三元系又は多元系のカルコゲニドと反応されることができる。相応して、好ましくは二元系、三元系又は多元系の化合物半導体が、前記量子構造及び前記マトリックスのために製造される。その場合に、好ましくはI〜VI族の元素が使用される。
【0016】
製造される量子構造、好ましくは化合物半導体構造の構造的、電子的及び光学的な性質が、大部分が、前駆物質及び気相反応において使用される元素に依存するのに対し、追加的な、量子ドットのために典型的な性質を、最終生成物を使用のために特に興味深くする、ナノメートル範囲内の減少されたサイズに基づいて予測することができる。これは、従来の成長方法を用いて製造された量子ドットについても報告される性質である。
【0017】
さらに、最終的な構造素子への要求がこれを必要とする場合に、追加的な処理工程として、マトリックス中に埋め込まれた量子ドットの前記の製造方法において、拡散バリヤーもしくは不動態化層の堆積が、前記施与された量子ドット上へ設けられていてよく、これは量子ドットから前駆物質元素の横方向の拡散を阻止する。
【0018】
本発明による方法を用いて、すなわち、単純な及び構造によっても材料によっても限定されずに、マトリックス中に埋め込まれている量子ドットが製造され、これらは特に、量子ドットとマトリックスとの間での調和する組成により特徴付けられており、その際に前記量子ドットは、前駆物質及び試薬の元素からなる添加組成を、及び前記マトリックスは、前記試薬の元素から専らなる組成を有する。その場合に、調和する組成は、好ましくは有利に、二元系、三元系及び/又は多元系の半導体化合物の基準に基づくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による方法の個々の処理段階を示す図。
【実施例】
【0020】
本発明による、基板上で、マトリックス中に埋め込まれた量子ドットを製造する前記方法の実施態様及びそれを用いて製造可能な生成物は、次に合成例及び略示図に基づいて、本発明のさらなる理解のためにより詳細に説明される。その場合に、前記図は、本発明による方法の個々の処理段階を示す。
【0021】
本方法は、例示的に、黄銅鉱族の三元系又は多元系の化合物半導体(Na、Cu、Ag)(Al、Ga、In、Tl)(S、Se、Te)2又は一般的にI−III−VI2化合物からなる量子ドットQDの成長並びにタイプI−VI、I2−VI、III−VI、III2−VI3等の単純な二元系化合物、例えばCuS、Cu2S、Ga2Se3、GaSeについて、記載され、かつ同様にして、III−V、II−VI及びIV族元素を含有する化合物にも移されることができる。
【0022】
以下に、前駆物質PCは、基板SU上に適している方法(上記参照)を用いて堆積されるI族、III族の元素又はタイプI−IIIの合金からなる三元系及び多元系の化合物の場合について存在し、ついで次の温度処理工程の間に、試薬RGのガス雰囲気に暴露される。その場合に、試薬RGは、1つ又はそれ以上のカルコゲン及び前駆物質PC中に存在していない、なお完成した量子ドットQD中の所望の金属を含有する。乾燥した前駆物質PCは、実施例においてナノメートルサイズの島の形で、すなわち高構造化された形で、基板SU上へ施与される。二元系、三元系又は多元系の化合物の量子ドットQDの最終的なサイズは、一般的に、前駆物質−島のサイズとは相違していてよく、かつ気相反応工程中の条件で多様な関与する元素の拡散プロセスに依存する。これらの反応条件の機能として、その場合に、最終的な構造は、当初に施与された前駆物質−島よりも、より小さな又はより大きな寸法を示すことができる。
【0023】
例(I):Ga2Se3マトリックス中の元素状Cuからの三元系CuGaSe2量子ドット。
【0024】
ナノメートル範囲内の横及び垂直の寸法を有する前駆物質PCとしてCuからなる金属ドットは、まず最初に、ガラス(非導電性)から又はモリブデンでコーティングされたガラス(導電性)からなる基板SU上に堆積される。この前駆物質PCの堆積は、金属堆積のナノ構造化に適しているマスクの使用下での蒸発を用いて行われる。これは、しかしまた、物理的気相成長、分子ジェットエピタキシー、化学的輸送方法(化学的気相成長、金属−有機気相成長等)又は化学的又は電気化学的な方法(SILAR、ILGAR、電着、化学溶液堆積(chemische Badabscheidung)等)により行われることができる。金属前駆物質PCを有する基板SUは、引き続き、この場合にGa及びSeを含有するガス状試薬RGとの反応を可能にする温度処理工程にかけられる。温度及び他の処理パラメーター、例えば時間及び圧力に応じて、前記ガス状成分は前記Cuと反応し、その際に三元系化合物CuGaSe2はナノメートルサイズの量子ドットの形で形成される。前記処理パラメーターは、その場合に、これらの三元系量子ドットが、二元系化合物(Ga2Se3)のマトリックスMAの内部に形成され、これが前記反応と同時に三元系量子ドットへと堆積するように選択される(図参照)。その際に、マトリックスMAはまず最初に基板SU上に及びついで、変換された量子ドットQD上にも堆積されるので、量子ドットQDは、最終的にマトリックスMA中に埋め込まれている。与えられるナノメートルサイズの構造のサイズ及び形を決定する処理速度論は、処理パラメーターを介して制御されることができ、これらはとりわけ、処理温度、相応する基板温度での気相中の飽和条件及び処理期間を含む。
【0025】
例(II):In2(Se、S)3マトリックス中のCuGa合金からの五元系Cu(In、Ga)(S、Se)2量子ドット。
【0026】
この例において、前駆物質PCは、所望の組成のCu及びGaからなる金属合金からなり、この前駆物質は前記の方法を用いて製造され、かつ引き続き、温度処理工程に、気相中で試薬RGとしてIn、Se及びSと共にかけられる。反応速度論はその際に、同様に前記のように制御される。Cu(In,Ga)(Se,S)2量子ドットQDがIn2(Se,S)3マトリックスMA中に形成される。
【0027】
例(III):化学的試薬輸送を伴う金属前駆物質からの多元系I−III−VI2量子ドット。
【0028】
この例において、前駆物質PCは、I族又はIII族元素からなる島又はI族又はIII族元素の合金又はタイプI−IIIの合金もしくは島のいずれかからなり、これらはついで温度処理工程に、前駆物質PC中に含まれていない、なお必要とされる金属及び所望のカルコゲンの存在でかけられ、その際にこの工程は化学的気相輸送を用いて実施される。その際に、例えば金属ハロゲン化物、有機金属化合物及びカルコゲンハロゲン化物が、通常の化学的な又は金属−有機気相プロセスにおけるように使用される。量子ドットQDに加えて、同時に、基板SU上に、前駆物質PC中に含まれておらず、なお必要とされる金属及び所望のカルコゲンからなるマトリックスMAが形成される。
【0029】
ハロゲン化物は、ハロゲン原子及びハロゲンよりも電気陰性ではない元素又は基からなる二元系化合物である。塩形成ハロゲンF、Cl、Br、Iと共に、相応するフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物が形成される。相手としての金属又はカルコゲンと結合して、相応する金属ハロゲン化物又はカルコゲンハロゲン化物が形成される。金属ハロゲン化物は、特に光技術の場合に使用される。有機金属化合物は、有機基又は有機化合物が直接金属原子に結合されている化合物である。本発明の場合に、特に、当業者には、通常の化学的な又は金属−有機気相プロセスにおける使用のために知られている全ての金属ハロゲン化物、有機金属化合物及びカルコゲンハロゲン化物が使用されることができる。
【0030】
例(IV):化学的試薬輸送を伴う磁性前駆物質からの磁性を有する多元系I−III−VI2−量子ドット。
【0031】
この例において、前駆物質PCは、前記のように金属からなり、その際にこれらの金属に、磁性元素、例えばMn又はFeの数パーセント又はそれ以上の特定の割合が混合される。温度処理工程は、ついで再び前記のように行われる。前記マトリックスMAの組成については、前もって記載されたものに対して何も変わらない。前記磁化は、量子ドットQDの領域内でのみ行われる。
【0032】
前記の例について:
処理パラメーター 前駆物質:
マスク開口部 <0.5mmないしリソグラフィー限界
(Cu)> 1000℃
基板(ガラス) 25℃
圧力 1×10-4Pa
堆積時間 <10s。
【0033】
処理パラメーター 試薬:
III2VI3マトリックス中の量子ドットCuInS2、CuGaS2、CuGaSe2、Cu(In、Ga)(S、Se)2のCVD堆積について
(III2VI3) 600℃
基板 520℃
圧力 10000Pa
HClガス流(輸送) 160ml/min
2ガス流(支持体) 460ml/min
沈殿時間 10min。
【0034】
マトリックスGa2Se3のMBEプロセスについて
(Ga) 920℃
(Se) 200℃
基板 450℃
圧力 2×10-6Pa
沈殿時間 105min。
【0035】
マトリックスMA中に埋め込まれた量子ドットQDの成長についての典型的なパラメーターの一般的な記載
処理圧:蒸発に基づく系(PVD、MBE)においてUHV(10-6mbar及びそれ未満)から、化学的輸送に基づく系において低圧(10-1〜102mbar)、電着の場合に周囲圧力及びそれ以上。
【0036】
処理温度:使用される金属前駆物質のタイプに依存。Cu−Al−Naを基礎とする前駆物質PCについて約300℃(〜300°C)から及びそれ以上;In−Gaを基礎とする前駆物質について室温から及びそれ以上。温度上限は、基板SUの使用されるタイプにより設定される:標準ガラスについて約600℃、金属箔について1000℃超、プラスチック基板について250〜300℃未満。Cu、In及びSeのような元素の化学反応は、発熱で行われるので、ここでは処理温度として室温で十分である。
【0037】
処理時間:堆積及びプロセス技術に依存。前駆物質PCの堆積は、数秒以内に行われることができる。既に同時に又は次に行われる加熱プロセスは、 − 加熱−冷却−サイクルなしで − 2〜3秒ないし時間、継続していてよい(量子ドットQDの所望の材料組成及び前記マトリックスMAの層厚に応じて)。
【0038】
材料品質及び元素純度:提案された方法が、濃度及びドープ高さに関して不純物の挿入(Einlagerungen)により理論的に影響を受けないにも関わらず、最終的な構造の官能性及び電気光学的性質は、方法に関与される元素の純度についての特定の極限値を示すことを必要にしうる。
【符号の説明】
【0039】
MA マトリックス
PC 前駆物質
QD 量子ドット
RG 試薬
SU 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(SU)上で、マトリックス(MA)中に埋め込まれた量子ドット(QD)を製造するに際し、少なくとも1つの第一の金属又は金属化合物からなる前駆物質(PC)からなる量子ドット(QD)を基板(SU)上に施与し、かつ引き続き、施与された量子ドット(QD)及び覆われていない基板(SU)を少なくとも1つの第二の金属及び/又はカルコゲンからなる気相の試薬(RG)と接触させることで製造する方法であって、マトリックス(MA)が試薬(RG)の元素から専らなる組成を有し、かつ前駆物質(PC)と試薬(RG)との間の化学反応が、接触と同時に又は次の温度増大によってもたされることを特徴とする、マトリックス(MA)中に埋め込まれた量子ドット(QD)を製造する方法。
【請求項2】
蒸発可能な溶剤中に溶解されている液相の前駆物質(PC)であり、これが小滴形で基板(SU)上に噴霧され、かつ前駆物質(PC)と試薬(RG)との間の化学反応を開始する前、開始する間又は開始した後に蒸発される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
高構造化ないしナノ構造化された形で基板(SU)上へ施与される固相の前駆物質(PC)である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前駆物質(PC)及び試薬(RG)のためにI、II、III、IV、V及びVI族の元素を使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前駆物質(PC)及び試薬(RG)のために半導体元素を使用する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
磁性元素を前駆物質(PC)中に混合する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
通常の化学的な又は金属−有機気相プロセスにおいて使用される金属ハロゲン化物、有機金属化合物及び/又はカルコゲンハロゲン化物を試薬(RG)中へ混合する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
施与された量子ドット(QD)上へ拡散バリヤー又は不動態化層を施与する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
量子ドット(QD)とマトリックス(MA)との間での調和する組成であり、その際に、量子ドット(QD)が、前駆物質(PC)及び試薬(RG)の元素からなる添加組成を有し、かつマトリックス(MA)が、前記試薬(RG)の元素から専らなる組成を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を用いて製造された、マトリックス中に埋め込まれた量子ドット。
【請求項10】
二元系、三元系及び/又は多元系の半導体化合物に基づく調和する組成である、請求項9記載のマトリックス中の量子ドット。

【公表番号】特表2010−513032(P2010−513032A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540597(P2009−540597)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002230
【国際公開番号】WO2008/074298
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(591157202)ヘルムホルツ−ツェントルム ベルリン フュア マテリアリーエン ウント エネルギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz−Zentrum Berlin fuer Materialien und Energie GmbH
【住所又は居所原語表記】Glienicker Str.100,D−14109 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】