説明

マトリックス支援レーザ脱離およびイオン化質量分光分析を使用して電気伝導性領域に隣接する領域のサンプルプレート表面マスクをスキャンする方法

質量分光分析を使用して電気伝導性領域に隣接するサンプルプレート表面マスクをスキャンする方法が開示される。この方法は、電気伝導性の表面に粗い表面を用いて塗布されたマスクを含むサンプルプレートを提供し、電気伝導性の表面からなる中央部分とマスクのマージン部分とを有するサンプルサイトを提供するステップと、生物分子に有機溶媒、水溶液、およびα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸および3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸のグループから選択されたマトリクスを混合する段階を備えた検体を準備するステップと、前記検体の少なくとも1つの結晶を電気伝導性領域に隣接するマスクの一領域に形成するステップと、レーザビームを用いて前記電気伝導性領域に隣接するマスク上の領域をスキャンするステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗い疎水性表面を持ったサンプルプレートを使用した、質量分光分析におけるサンプルプレートの分析方法に関する。
【0002】
この出願は、2003年4月30日に出願された係属中の米国特許出願第10/426,599号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
マトリックス支援レーザ脱離およびイオン化質量分光分析法(MALDI−MS)は、
生物分子、特にタンパク質、ペプチド、およびDNAやRNAなどの核酸の研究や識別のための重要な分析ツールである。
【0004】
MALDI−MSは、生物分子の濃度および質量に対応するピークに応じた映像的に生物分子を特定する質量スペクトルもたらす。既知のピークのライブラリを使用して、生物分子が特定できる。
【0005】
MALDI−MSによる分析のためのサンプルの準備のため、乾燥液滴法を含んだ様々な方法が存在する。乾燥液滴法では、対象の生物分子を含む水溶液サンプルが、有機化合物、つまり容易に気化する水性−有機溶剤液中に通常懸濁されたマトリクスに混合される。生物分子、マトリクス、水溶液、および溶剤を含む結果的な液体混合物を、ここでは、標本と呼ぶ。
【0006】
標本は、所定の目標領域におけるサンプルプレートに塗布され、乾燥状態になることが可能である。溶剤が気化し始め、生物分子およびマトリクスがより凝縮されるにつれて、マトリクス分子はサンプルプレート上で乾燥しつつ溶液から結晶化する。結果としての結晶は、結晶上および/または結晶内に生物分子を取り込み、やがてサンプルプレート上に堆積する。
【0007】
サンプルプレートに標本を塗布する他の方法も知られている。電子スプレー堆積法では、非常に急速に標本結晶を形成しながら気化するマイクロ液滴の微細なミストとして、標本がサンプルプレートに塗布される。
【0008】
生物分子を分析するために、サンプルプレートが質量分光分析器のサンプル区画に挿入される。電圧がサンプルプレートにかけられ、サンプルプレートを電流が流れることを可能にし、電荷の蓄積の可能性を防ぐ。結晶を脱離するため、紫外線(UV)レーザが、手動による指示または所定の自動化された方式で目標領域をスキャンして、結晶を照射する。レーザ光線放射はマトリクス分子によって吸収され、マトリクス分子と生物分子の両方の気化をもたらす。一旦気相になると、目標領域にさらに接近する間に、マトリクス分子がプロトンを生物分子に渡すのに伴って電荷の移動が起こる。そして、イオン化された生物分子はそれらが分析される質量分光分析計に引き入れられる。データ処理によって、生物分子とマトリクス分子に対応する一連の特徴的なピークの質量スペクトルがもたらされる。ピークの形跡は、既知のピークを参照して生物分子を特定するのに使用される。
【0009】
興味深い先行技術は、生物分子などのような巨大分子の質量分光分析のためのサンプルサポート、そのようなサンプルサポートプレートの作製のための方法、および、マトリクス支援レーザ脱離(MALDI)を使用した生物分子のイオン化のために、マトリクス物質と共に溶液から、生物分子のサンプルを有するサンプルサポートプレートを取り込むための方法に関連した特許文献1(参考としてここに組み込まれている)を含んでいる。
【0010】
分析器によって使用するサンプルを保持するためのサンプルサポートに関連した特許文献2(参考としてここに組み込まれている)も興味深い。サンプルサポートは分析器によって使用するためのものであり、この分析器は照射ビームまたは加速粒子と、同じものを製作するための方法に依存する。ホルダは、通常は高分子薄膜の形態で、サポート表面に覆われた1つ以上のオリフィスを有するフレームを含む。薄膜は、分析の間、プローブビームに交差するようにサンプルを配置できる正確な位置を分離するために、疎水性および親水性の部分に分割される。
【0011】
MALDI−MSの性能は主として分析無感度を被る。MALDI−MSで使用されるサンプルプレートは、プレートに亘って電圧をかける必要性のために、通常は金属プレートである。既知のトレーは、結晶を乾燥し形成する前に、塗布された標本液滴を比較的広い領域に広げた平坦な親水性表面を有する。その結果、結晶を効果的に照射するために、UVレーザは、余分な時間を必要とするこのような拡大された領域をスキャンしなければならない。
【0012】
金属プレートの他の欠点は、それが、残念ながら、洗浄剤からの意図しない汚染に起因する不適切な結果をしばしば招くということである。金属板は高価でもあるため、それは繰り返して使用される。それぞれの使用の間において洗浄することは、それに続く分析を汚染する可能性がある。
【0013】
標本周辺部に位置決めされた格子の上および/またはその内部に、その標本が非等方的に分配される、ということが知られている。これらのマトリクス結晶のいくつかが、他のものより多くの生物分子を持っている、ということがさらに知られている。したがって、レーザが標本周辺部に存在しそうな検査区域に及ぶとき、それは、マトリクス中に比較的高い標本濃度を持った「スイート・スポット(sweet spot)」をスキャンする。照射および検出の際、スイート・スポットは生物分子の不正確な濃度の読み取りを与える。
【0014】
したがって、望まれることは、標本のMALDI−MS分析のためのサンプルプレートであって、結晶がサンプルサイトに位置するものである。
【0015】
また、望まれることは、サンプルのアーカイブ保管(archiving)を可能にし、耐久性があって費用効率のよいサンプルプレートでもある。
【0016】
また、望まれることは、サンプルサイトにおける結晶の生成を促進するために疎水性のある粗い表面でもある。さらに望まれることは、疎水性マスクの平坦領域に対する表面領域のより高い比率である。
【特許文献1】米国特許第6,287,872号明細書
【特許文献2】米国特許第5,958,345号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、標本を分析する方法を提供することが本発明の目的である。
【0018】
本発明の他の目的は、知られている分析無感度の問題を克服するサンプルプレートを提供することである
【0019】
本発明のさらなる目的は、結晶が所定の場所に位置しているサンプルプレートを提供することである。
【0020】
本発明のまたさらなる目的は、サンプルのアーカイブ保管を可能にし、耐久性があって費用効率のよいサンプルプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のこれらの、および他の目的は、減少した領域において検体を結晶化する方法によって達成される。
【0022】
そこでは、質量分光分析を使用して電気伝導性領域に隣接するサンプルプレート表面マスクをスキャンする方法が開示される。その方法は、電気伝導性の表面に粗い表面を用いて塗布されたマスクを含むサンプルプレートを提供し、電気伝導性の表面からなる中央部分とマスクのマージン部分とを有するサンプルサイトを提供するステップと、生物分子に有機溶媒、水溶液、およびマトリックスを混合するステップを備えた検体を準備するステップと、前記サンプルサイトに標本を塗布するステップと、前記検体の少なくとも1つの結晶を前記電気伝導性領域に隣接するマスクの一領域に形成するステップと、レーザビームを用いて前記電気伝導性領域に隣接するマスク上の領域をスキャンするステップと、を有する
【0023】
いくつかの実施の態様では、レーザビームを用いて前記電気伝導性領域に隣接するマスク上の領域をスキャンする前記ステップは、パターンにおいてスキャンする段階をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施の態様では、信頼水準(confidence level)を持ったアルゴリズムに基づいてスキャンパターンを決定するステップをさらに有する。
【0025】
いくつかの実施の態様では、標本を準備する前記ステップは、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸および3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸のグループから選択されたマトリクスを混合する段階をさらに備える。
【0026】
いくつかの実施の態様では、標本を準備する前記ステップは、有機溶媒を供給する段階をさらに有する。
【0027】
いくつかの実施の態様では、標本を準備する前記ステップは、水溶液を供給する段階をさらに有する。
【0028】
いくつかの実施の態様では、標本を準備する前記ステップは、少なくとも1つの生物分子である検体を提供する。
【0029】
いくつかの実施の態様では、標本を準備する前記ステップは、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、糖たん白質、リポタンパク質、炭水化物、単糖類、二糖類、多糖類、および、それらの混合物から成るグループから選択された検体を提供する段階をさらに有する。
【0030】
いくつかの実施の態様では、その方法は、電気伝導性領域に隣接する領域におけるサンプルプレート表面マスクに標本を塗布することを含み;そして、電気伝導性の表面に粗い表面を用いて塗布されたマスクを含むサンプルプレートを提供し、電気伝導性の表面からなる中央部分とマスクのマージン部分とを有するサンプルサイトを提供するステップと、有機溶媒、水溶液、およびマトリクスによって生物分子を溶離する段階と、標本を塗布する段階とを含み、標本を準備するための液体クロマトグラフ・システムを提供するステップと、前記液体クロマトグラフ・システムと協調的に前記サンプルプレートを移動させるステップと、前記サンプルサイトに標本を塗布するステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1a、図2a、図3a、および図4aと、図1b、図2b、図3b、および図4bは、それぞれ、本発明の1つ以上の実施形態による、少なくとも1つの円形の目標領域および少なくとも1つの矩形の目標領域を有するサンプルプレートの図である。
【0032】
その中で、図1aおよび1bは、それぞれ、本発明の1つ以上の実施形態による、円形の目標領域および矩形の目標領域を有するサンプルプレートの等角図である。サンプルプレート10は目標領域24のいくつもの同様に好適な実施形態によって特徴付けられる。
【0033】
第1の実施形態では、簡単のために円形サンプルプレート10として参照され、図1aに表されたサンプルプレート10は複数の円形の目標領域24を有している。第2の実施形態では、簡単のためにチャンネル・サンプルプレート10として参照され、図1bに表されたサンプルプレート10は複数の矩形、線状、および/または曲線状の目標領域24を有している。目標領域24の幾何学的組み合わせを含むような、他の実施形態も想定される。
【0034】
図2aおよび図2bは、本発明の1つ以上の実施形態によるサンプルプレートの一区域であって、それぞれ、図1aおよび図1bの領域A−Aを取り出した拡大図である。
図3aおよび図4aと、図3bおよび図4bは、本発明の1つ以上の実施形態によるサンプルプレートの一切断面であって、それぞれ、図2aおよび図2bのB−Bで切断した断面図である。
【0035】
サンプルプレート10は、標本40(図1aおよび図1bでは明瞭にするために図示しない)として便宜上参照され、サンプルサイト20(図1aおよび図1bでは明瞭にするために図示しない)内において質量分光分析器でのその後の分析のための、マトリクスと生物分子の両方を含んだサンプルを塗布するためのサンプルプレートである。標本40は、スポッティング(spotting) すなわち液滴形成、ストリーキング法(streaking)すなわち連続した方法、スプレー法(spraying)、および/または、何らかの他の形態による乾燥液滴法(dried droplet method)を使用することによって、サンプルサイト20内に塗布できる。標本40は、電子スプレー堆積法(electrospray deposition)によってサンプルサイト20内に塗布することもできる。
【0036】
サンプルプレート10は電気伝導性の表面12aを持つ基板12と、マスク14を含み、このマスクは表面12aに選択的に塗布されて、少なくとも1つの目標領域24がサンプルサイト20内に位置する粗い表面14aを持ち、ここでさらに説明されることになるようなマスクを形成する。
【0037】
サンプルプレート10は、自動化された処理装置、および/または、手動式の処理装置を使用して処理される生物実験空間に用いるのに適した大きさにされる。したがって、サンプルプレート10は、116.2mm掛ける83mm、および/または、他の何らかの便利な大きさの矩形の平面(plan)サイズを有するマイクロタイタープレートのサイズとして、適切な大きさにすることができる。サンプルプレート10は自動化された処理、および/または、手動式の処理のためのいかなる適当な厚さともすることができる。本発明の一実施形態によると、サンプルプレート10は最小0.5mm厚さで、50μm以下の最大の平面変化をもつ。明瞭にするために、ここでは、サンプルプレート10はプレートの矩形の平面形状および一般的な平面形状に関連付けて説明される。しかしながら、サンプルプレート10は、どんな平面形状も持つことができ、および/または、非平面状形を持つことができ、使用に適するようにすることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、サンプルプレート10は、サンプルプレート10を示すのに役立つ、切り込みを付けた角のような標識を持っている。他の標識が代用でき、あるいは追加で中央の切り込みを付けたり;および/または、1つ以上の物理的、化学的、光学的および/または電磁気的なマーカー;および/または、何らかの他のタイプの標識または表示する手段、および/または指し示す手段とすることができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、サンプルプレート10は、使用前および/または使用後にサンプルプレート10の一覧を作製するか、またはアーカイブ保管するための参照標識を有する。そのような標識は、1つ以上のその表面でサンプルプレート10に付属および/または一体化された、棒状タグ、英数字参照記号、化学物質および/または発光性参照、および/または、機械および/または人間により読み取り可能なインデックスおよび/またはアーカイブ参照とすることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、参照標識は結晶のイオン化において使用されるUVレーザの1つ以上の波長に感応性がある。その点で、参照標識は、UVレーザによって、機械および/または人間により読み取り可能な永久的または半永久的な参照を残しつつ、活性化および/またはマークされる。
【0041】
基板12は、望ましくは実質的に平面であり、何らかの材料および/または材料の組み合わせで作られる。基板12は電気伝導性の第1の表面12aを有する。表面12aは100メグ・オーム/スクエア(meg. ohms-per-square)以下の電気抵抗を有する。
【0042】
図3aおよび図3bで示されるように、例えば金属、合金、電気電導性プラスチック、および/またはそれらの組み合わせを使用するような電気伝導性の材料で、基板12を作ることができる。本発明の一実施形態によると、図4aおよび図4bに表されるように、基板12に塗布される電気伝導性の被覆16を使用して、表面12aを電気伝導性にすることができる。被覆16は100メグ・オーム/スクエア以下の電気抵抗を有する何らかのタイプの塗布部分とすることができる。望ましくは、被覆16は基板12の平面形状を実質的に維持する。被覆16は、金、銅、銅合金、銀合金、銀めっき、電気伝導性プラスチック、または何らかのタイプの電気伝導性高分子被覆とすることができる。望ましくは、高分子被覆はバイトロン(Baytron)P(3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸の水溶液)、CAS番号155090−83−8;ポリピロール、5パーセント(5%)の水溶液または溶剤ベースの溶液としてのCAS番号30604−81;エメラルジン(emeraldine)ベースとしてのポリアニリン、CAS番号5612−44−2;エメラルジン塩としてのポリアニリン、CAS番号25233−30−1;および/または、ポリチオフェン、ポリフェニレンおよび/またはポリビニレンの変異体を含む。
【0043】
マスク14は、粗い表面14aを持ったマスクを形成するために表面12aに選択的に塗布され、その状況で、目標領域24がサンプルサイト20内の中心に位置する。望ましくは、マスク14は1から100μmの範囲の厚さを有し、表面12aと比較して、より疎水性で、基板12との適切な接着状態を維持する材料で作られている。例えば、マスク14は、デラウェア州(Delaware)ウィルミントン(Wilmington,)のデュポン・フルオロプロダクツ(DuPont Fluoroproducts)によって製造され、販売され、および/またはライセンス供与されたテフロン(登録商標)として一般的に知られているポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)や、または何らかの他の適切な材料からなることが可能である。
【0044】
表面14aが規則的な、または繰り返しのパターンや強度のパターン、すなわち深さおよび/または表面、ならびに/あるいは材料厚さの段階付け(graduation)を有するか否かに関係なく、粗い表面14aは粗い表面特性および/または平坦でない表面特性によって特徴付けられ、均一な表面強度が欠如している非均質な表面である。
【0045】
本発明の一実施形態によると、マスク14は混合物を混ぜたもの、すなわち、質量分光分析において所定の分析結果として1つ以上のマーカーとしてとして検出されるか、またはマーキング剤の色効果を見るオペレータ(操作者)による視覚参照などの別の手段で検出されるマーキング剤を用いてドーピングされたものとすることができる。このようなマーキング剤は機器の較正に使用できる;つまり、サンプル準備の特性の安定、取り扱い、実験室手順、および/または、サンプル追跡;サンプルプレート10の作製時の特性の安定;および/または、取り扱いである。マーキング剤の例としては、カーボンブラック、チタン酸化物、酸化第一鉄、三酸化アルミ、高分子材料、着色材料、および/または、その他のものが可能である。
【0046】
本発明の一実施形態によると、マスク14は所定の粗い表面14aを用いて表面12aに塗布される。例えば、マスク14は、粗い表面14aをもたらすスクリーニング(網掛け)適用処理を使用して塗布される。望ましくは、マスク14は、結果として得られる粗い表面がメッシュサイズによって記述されるような、30×30μmから500×500μm範囲のスクリーン・メッシュサイズを有するテフロン(登録商標)を使用して塗布することができる。他のスクリーン・サイズも同様に良好に使うことができる。スクリーニングの際に、サンプルプレート10は空気乾燥でき、そして、乾燥時には、マスク14を基板12に接着するために少なくとも摂氏50度まで一度加熱される。図16を参照すると、粗い表面を持つマスクの顕微鏡写真が示されている。マスクは黒いテフロン(登録商標)で作られ、無光沢な外観を持っていることが示されている。この場合、無光沢の外観は、粗い表面を形成するためにマスクに適用されるメッシュ・スクリーンと実質的に同様のサイズおよび形状の、ポリマー表面に対する実質的に正方形の繰り返しの欠陥を呈する。
【0047】
本発明の一実施形態によると、マスク14の材料の物理的および/または化学的な操作は粗い表面14aのキメ付け(texture)および作成に使用される。例えば、エッチング、ガウジング(gouging;削ること)、スクレーピング(scraping;こすること)、酸化、光酸化、リソグラフ印刷(lithographic printing)、オフセット印刷、反転画像アクセス、および/または何らかの他の手段が使用できる。本発明のものを作製するのにおいては、マスクが基板に塗布される間、またはそれが表面に固定された後に、粗い表面がマスクに付けられる。
【0048】
サンプルサイト20は目標領域24、および目標領域24を囲むマスク14の周辺のマージン22を含んでいる。目標領域24は、電気伝導性の表面12aの領域であり、目標領域24がマスク・スポットまたは他の構造を含むような例を含んだ、多くの同等に好適な例を備えることができる。本発明の一実施形態によると、目標領域24は、円形サンプルプレート10に対する図1aに表されるような円形の平面領域を有する。本発明の一実施形態によると、目標領域24は、チャンネル・サンプルプレート10に対する図1bに表されるような、矩形、線状、および/または曲線状の平面領域を有する。目標領域24は他の平面領域を持った例を具現できる。
【0049】
ここでさらに説明されるように、目標領域24は、実質的に液滴状態にある間、標本40を引き付けるのに役立つ。標本40は、マスク14が目標領域24より相対的に疎水性であるので、目標領域24に引き付けられる。
【0050】
図1aに表された円形サンプルプレート10では、サンプルサイト20は、表面12aの円形の平面領域と、目標領域24上に標本40が付けられた際の平面図上の最大直径と一致する周辺のマージン22と、を持った目標領域24を含む。標本40の滴下サイズは検査の必要性に応じて、すなわち生物分子が低濃度の時には検査の感度を増加するために大きな液滴を使用することで変化させられるので、目標領域24は異なるサイズの液滴を収容するような異なったサイズとすることができ、そして、サンプルプレート10は、検査されるべき標本40の液滴寸法のために適切なサイズとされた目標領域24の直径に基づいて選択できる。
【0051】
容易に理解されるように、液滴の体積は液滴のある断面の直径に直接相関がある。さらに理解されるように、液滴の平面および半径方向の寸法は、液滴の体積を制御することによって、また、それが付着する表面の関連する親水性および/または疎水性の特性を決定することによって、予め決定されてもよい。このように、ピペッティング(分注)、または標本40の体積を制御する他の何らかの方法を使用して液滴寸法の抑制を達成できる。
【0052】
疎水性および/または親水性の特性が、液滴と、それが付着する表面との間の接触角に関連するということが知られている。角度0°は、表面の全体的な親水性の濡れを示し、角度180°は表面の全体的な疎水性を示している。テフロン(登録商標)は、通常、水に対して接触角140°から160°を持っている。
【0053】
図1bに表されたチャンネル・サンプルプレート10では、サンプルサイト20は、幅よりかなり大きな長さによって特徴付けられる表面12aの平面領域と、標本40の平面における最大直径または複数の標本40の平面における最大直径と一致する目標領域24に実質的に平行な周辺のマージン22と、を持った目標領域24を含んでいる。望ましくは、目標領域24は、0.1〜0.5mmの幅を持ち、そして、サンプルプレート10は、検査されるべき標本40の体積にとって適切な大きさとされる目標領域24の幅に基づいて選択できる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、サンプルサイト20は矩形の平面領域を持つ目標領域24を含む。
【0055】
本発明の一実施形態によると、サンプルサイト20は、らせんを含む曲線状平面領域を持った目標領域24を含んでいるが、一連の同心の平面領域のような他の曲線状平面領域も想定される。
【0056】
本発明の一実施形態によると、マスク14は、少なくとも1つのマスク・スポット24aを形成するために目標領域24の中央部に追加的に塗布される。図2cは、目標領域および本発明の一実施形態によるマスク・スポットを含むサンプルサイトの平面図である。図3cは、目標領域および本発明の一実施形態によるマスク・スポットを含むサンプルサイトの拡大正面図である。マスク・スポット24aはここでさらに説明される。
【0057】
図5から図10は、本発明の一実施形態によるサンプルプレート10上の標本40を使用する乾燥液滴法によって生成した結晶化とその結晶について表す。図5aは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの、図1aの領域A−Aを取り出した拡大図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。図5bは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの、図1bの領域A−Aを取り出した拡大図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
【0058】
図6aは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図5aのC−Cで切断した断面図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。図6bは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図5bのC−Cで切断した断面図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
図6cは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図5bのD−Dで切断した断面図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
【0059】
図7aは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの、図1aの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6aの標本が乾燥し始めた状態を示す。図7bは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの、図1bの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6bの標本が乾燥し始めた状態を示す。
【0060】
図8aは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図7aのE−Eで切断した断面図であって、図6aの標本が乾燥し始めた状態を示す。図8bは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図7bのE−Eで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥し始めた状態を示す。図8cは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図7bのF−Fで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥し始めた状態を示す。
【0061】
図9aは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの、図1aの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6aの標本が乾燥した状態を示す。図9bは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの、図1bの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6bの標本が乾燥した状態を示す。
【0062】
図10aは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図9aのG−Gで切断した断面図であって、図6aの標本が乾燥した状態を示す。図10bは、本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図9bのG−Gで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥した状態を示す。図10cは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図9bのH−Hで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥した状態を示す。
【0063】
それぞれが液滴から成っている標本40は、サンプルサイト20内のプレート10に塗布され、マスク14に接触する。そこで、標本40が少なくとも0.1mmの距離にわたって側面でマスク14に接触するのが好ましい。
【0064】
円形サンプルプレート10に対しては、標本40は目標領域24の周辺の平面図において、液滴の最大直径が目標領域24の直径を超えるような標本40の液滴を使用することによってマスク14に接触する。0.5μlの体積を有する液滴が、テフロン(登録商標)の疎水性表面で約1.0mmの直径を持つ、ということが知られているので、各々の標本40を0.1から4.0μlの間の体積とすることが好ましい。
【0065】
チャンネル・サンプルプレート10に対して、標本40はマージン22の周辺の平面図においてマスク14に接触するが、標本40の周辺も目標領域24に接触する。本発明の一実施形態によると、標本40はチャンネル・サンプルプレート10上のサンプルサイト20内で、標本40をスプレー噴射したり、またはストリーキングしたりなどして、連続して塗布される。それにおいて、標本40の塗布の幅または長さは、目標領域24の幅または長さをそれぞれ超えるので、標本40はマスク14に接触する。
【0066】
本発明の一実施形態によると、マスク・スポット24aは、マスク14の側面に接触して液滴が結晶の析出を促進するように、標本40の1滴を形成するのに適切な大きさとされる。
【0067】
標本40は、体積割合で1:1に混合した生物分子とマトリクスを含む。低い溶解性を有するものを含んだ他の構成も有利に使用でき、ここで提示された構成は限定を意図するものではないが、以下の構成に従って、マトリクスを作ることができる:
【0068】
第1の構成(CHCA構成)では、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(C10NO)と溶剤を含む水溶液が混合されてマトリクスが生成される。溶剤は、望ましくはアセトニトリル(CN)であり、pH2.3で体積率0.1%のトリフルオロ酢酸(CHF)に、30%から50%割合のアセトニトリルと70%から50%割合の水が、それぞれ混合されて溶剤が生成される。1mlの溶剤当りの1から5mgのCHCA濃度が好ましいが、CHCAは1mlの溶剤当り0.2mgから20mgの濃度で存在させることができる。第1の構成では、CHCAの代わりに他の桂皮酸または低い溶解性の他のマトリクスなど、他のマトリクスが利用できる。
【0069】
第2の構成(SA構成)では、シナピン酸(sinapinic acid)として一般的に知られている3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸(C1112)と溶剤を含む水溶液が混合されてマトリクスが生成される。溶剤は、望ましくは、アセトニトリル(CN)であり、pH2.3で体積率0.1%のトリフルオロ酢酸(CHF)に、30%から50%割合のアセトニトリルと70%から50%割合の水が混合されて溶剤が生成される。1mlの溶剤当りの1から5mgのシナピン酸濃度が好ましいが、シナピン酸は1mlの溶剤当り0.2mgから20mgの濃度で存在させることができる。
【0070】
CHCA構成は、10000ダルトンより小さい分子量を持ったペプチドおよびターゲットの生物分子のような生物分子の分析にとって好ましい。SA構成は10000ダルトン以上の分子量を持ったペプチドおよびターゲットの生物分子のような生物分子の分析にとって好ましい。
【0071】
図11および図12は、本発明の一実施形態によるマトリクス構成の様々な濃度を有するサンプルサイトにおけるハロー効果で形成された結晶の等角図である。簡単のために、円形サンプルプレート10のサンプルサイト20が表されている。その中で、結晶42はマージン22の粗い表面14a上に堆積して、目標領域24周辺のハロー効果を成す。サンプル溶液が乾燥し、サンプルサイト20上のマージン22の表面14aに結晶42の生成が続いているのに伴って、さらなる結晶42が形成される。結晶42がマージン22内で最大の数である一方で、かなり少ない量が目標領域24に堆積する。
【0072】
図11は、溶剤1ml当り1mgのCHCAの濃度にCHCAマトリクス溶液を使用して作製された円形サンプルプレート10のサンプルサイト20上の結晶42を表す。結晶42は、周辺の周りに2個の同心の結晶リングを概ね形成する目標領域24周辺部の近くのマージン22に集まる。第3のリングはどこかの領域に概ね存在している。図17は類似のサンプルの写真であって、溶剤1ml当り1mgのCHCAの濃度のCHCAマトリクス溶液を使用して作製された円形サンプルプレートのサンプルサイト上の結晶を示す。結晶は、周辺の周りの結晶リングを形成する目標領域の周辺部の近くのマージンに集まる。
【0073】
結晶リングは、溶剤が気化するのに伴う溶剤体積の減少の間に、マトリクス濃度の増加から生じるものと確信される。結晶格子が形成し始め、結晶の生成を引き起こすと知られている粗い表面14aに付着される。標本液滴が乾燥するのに従って、大体同時に多くのマトリクス結晶格子が溶液から析出する。そのような析出は一定の間隔を置いて起こり、リング状の堆積をもたらす。マトリクス結晶がより大きく析出するのに従い、標本液滴が乾燥し続けている間には、より小さい結晶が新たに形成される。結局、これらのより小さい結晶42も溶液中で維持されず、溶液から析出する。対照的に、より低い濃度のマトリクスが使用されている状況では、結晶42は1つのリングのみをもたらす。このような結晶42が図12に表されており、ここでは、サンプルサイト20上の結晶42が、溶剤1ml当り0.5mgのCHCAの濃度のCHCAマトリクス溶液を使用して作製された。図18は、溶剤1ml当り1mgの濃度の30%ACNマトリクス溶液を使用して作製された円形サンプルプレートの、サンプルサイト上の結晶を示す写真である。結晶は、周辺の周りの結晶リングを形成する目標領域の周辺部の近くのマージンに集まる。
【0074】
生物分子を分析するために、結晶42は、レーザ光線エネルギーを直接使用して結晶42をスキャンするUVレーザ(明瞭にするために図示しない)を使用して照射される。UVレーザは、通常、0.1から0.2mmの有効ビーム径を持つような何らかの適切な紫外線レーザであり、337nmの波長のレーザ光線48を発生させる。容易に理解されるように、マージン22内の結晶42に集束させることは、分析感度を妥協することなく多くの照射を得られるのに十分な結晶42を照射するために、レーザでスキャンするのに必要な領域を減少させる。比較的小さいビームの有効直径を与えた場合、必要なスキャン領域を減少させると、効率はかなり高められる。
【0075】
減少した領域は、標本40を製作するのに伝統的な構成が使用された際に照射しなければならない領域に比較して、有利に示される。この例を示すために、DHBとして知られている2,5−ジヒドロキシ安息香酸(C)を使用し、本発明の構成と比較する。DHB構成では、結晶42は目標領域24で生成する。したがって、DHB構成の結晶42を照射するために、目標領域24全体をスキャンしなければならない。よって、もし目標領域24が1mmの直径であるならば、スキャンされるべき領域は0.25πmmである。結晶42を照射するために、マトリクスがCHCA構成またはSA構成で、サンプルサイト20が1.2mmの直径を有する状況では、スキャンされるべき領域は0.11πmmである。これは伝統的なスキャン領域の44%であるにすぎない必要スキャン領域をもたらす。図19は、大きな表面積をカバーする伝統的な目標領域に形成されるDHB結晶の写真である。
【0076】
図13は、本発明の一実施形態によるサンプルプレートの一切断面である図5aのE−Eで切断した断面図であって、結晶がUVレーザでスキャンされている状態を示す。図13はCHCA構成とSA構成を使用して作製された結晶42をスキャンする状況を例証している。
【0077】
レーザ光線48はスキャンパターン50(明瞭にするために図示しない)を走査し、その状況で、それが図13の文字Aによって示された第1地点で結晶42を照射する。パターン50が進み続けるに従って、図13の文字Bによって示された第2地点でレーザ光線48は他の結晶42を照射し、そしてさらに処理が進んで、図13の文字Cによって示された第3地点では、それは他の結晶42を照射し、さらに先に進む。そこでは、レーザを静止状態に保持してプレート10を動かすか、またはレーザを動かしてプレート10を保持するか、および/または、両方の組み合わせによって、スキャンパターン50が達成できることが理解される。
【0078】
図14aおよび図14bは、本発明の一実施形態によるスキャンパターン50を例証する。パターン50は、経路の長さを最小にすることによって、照射される結晶42の数を最大化しつつ、効率的に結晶42を照射する何種類かのパターン、巡回路、または他の横断路とすることができる。
【0079】
図14aおよび図14bは、本発明の一実施形態による円形サンプルプレートにおける図1の領域A−Aの拡大図であって、CHCAまたはシナピン酸を使用して作製された照射結晶42に対するスキャン経路を示す。レーザ光線48(明瞭にするために図示しない)は2つの所定の境界によって限定されるパターン50を利用する:すなわち目標領域24のほぼ周辺にある内側境界52aと、マージン22内にある外側境界52bである。境界52aおよび52bは、オペレータ(操作者)の経験、統計的なサンプリングに応じて、アルゴリズム、あるいは他の何らかの適切な手段によって、予め設定できる。
【0080】
スキャンパターン50の一例が図14aに示されている。パターン50は目標領域24の境界52aとサンプルサイト20内の境界52bとの間を振動する交差パターンである。他の例が図14bに示されている。そこでは、パターン50は境界52aで始まり、境界52bにおける1つ以上の巡回路終点で終わる渦巻きパターンである。他のパターンまたはパターンの組み合わせもパターン50として使用できる。
【0081】
図14aに示された交差パターンに対して、アルゴリズムは、百分率または比率で表現される一定の信頼度cに基づいてマージン22の領域をカバーするよう要求される振動の数n、を含むことができる。信頼度レベル1は、すべての結晶42が照射されたという確実性を意味することができる。このようにして、
【0082】
n=(3xr)/rxc (式1)
【0083】
ここで、rは目標領域24の半径で、rはレーザ光線48の有効半径である。そこで、目標領域24の直径が1mmで、レーザ光線48の有効直径が0.1mmであって、信頼度75%が望まれるならば、境界52aおよび52bがマージン22の周辺にある場合に、56.25回の振動が必要である。
【0084】
同様に、パターン50は、UVレーザの時間と行程をさらに短縮するのに、そして、チャンネル・サンプルプレート上の結晶42をより効率的に照射するのに、有利に使うことができる。図15aおよび図15bは、チャンネル・サンプルプレートにおける一つのサンプルサイトの拡大図であって、CHCAまたはSAを使用して作製された照射結晶に対する、本発明の一実施形態によるスキャン経路を示す。
【0085】
そこでは、同様に、レーザ光線48が2つの所定の境界によって限定されるパターン50を利用する。:すなわち目標領域24のほぼ周辺にある内側境界52aと、サンプルサイト20内部またはそれに一致する外側境界52bである。境界52aおよび52bは、オペレータ(操作者)の経験、統計的なサンプリングに応じて、アルゴリズム、および/あるいは他の何らかの適切な手段によって、予め設定できる。図15aで示されているのは、境界52aおよび52bの間を行き来するスキャンパターン50であり、そして図15bで示されているのは、渦巻きパターン50の経路である。また、他のパターンも使用できる。
【0086】
本発明の一実施形態によると、標本40は、電子スプレー堆積法を使用してサンプルプレート10に塗布される。電子スプレー堆積法に重要なのは、標本40が滑らかで一定の塗布状態に堆積されるということである。サンプルプレート10がプラットフォーム(台)上を動く一方で、液体クロマトグラフ・システムは溶剤を使用して標本40を溶離し、そして、標本40は質量分光分析のためにサンプルプレート10に電子スプレーによって塗布される。
【0087】
サンプルプレート10は、チャンネル・サンプルプレートまたは円形サンプルプレートであり、液体クロマトグラフ・システムと共に協力して1つの位置から他の1つの位置まで進む。本発明の一実施形態によると、サンプルプレートは所定の速度で動作する移動プラットフォーム上に設置される。望ましくは、プラットフォームはオペレータ(操作者)が制御でき、調整が可能であって、電子スプレー堆積と協力する所定の正確な速度を保証する1つ以上のチェック機構をさらに含む。
【0088】
マイクロ液体クロマトグラフ・システムまたはナノ液体クロマトグラフ・システムなどの液体クロマトグラフ・システムが、標本40を溶離して、それをサンプルプレート10に電子スプレーによって塗布するために提供される。通常、液体クロマトグラフ・システムは逆相分配(reversed-phase)カラムを含む。液体クロマトグラフ・システムは、1mlの溶剤当り1mgのCHCA濃度のCHCA構成、または、1mlの溶剤当り1mgのSA濃度のSA構成のマトリクスによって溶離される。しかし、他のマトリクスも使用できる。そこでは、アセトニトリルの比率は、通常15から60分の溶離期間に、カラムから標本40を溶離する過程で0%から70%に変化する。
【0089】
本発明の一実施形態によると、標本40は、ストリーキングなどの液体状態の標本40の直接塗布によってチャンネル・サンプルプレート10に塗布される。そこでは、固定液体クロマトグラフ・システムが標本40を適用する間、サンプルプレート10はプラットフォーム上を動く。標本40は、目標領域24の所定長さに亘って連続的な速度で、望ましくは目標領域24の長さ1mm当り1μlの速度で、チャンネル・サンプルプレート10に塗布されるが、標本40は目標領域24のサイズに合致した速度でサンプルプレート10に塗布される。望ましくは、標本40は目標領域24の周辺から0.2mm以下にあるサンプルサイト20内に塗布される。そして、UVレーザを使用して粗い表面から標本が照射され、標本40はその粗い表面14aに堆積する結晶42を速やかに形成する。
【0090】
新規な本発明はさらなる実施形態も意図している。本発明の一実施形態によると、作製されたサンプルプレート10はサンプルサイト20を含み、その状況で、マスク14が表面12aによって囲まれるように、粗い表面14aを用いて選択的にマスク14が表面12aに塗布される。標本40は、スポッティング、ストリーキング、スプレー法、または電子スプレー堆積法による乾燥液滴法を使用して、サンプルプレート10に塗布することができる。標本40は、サンプルプレート10を標本によって、またはその中でウォッシング(washing)または浸漬(submerging)することによっても塗布できる。そして、結晶42は、周辺のマージン22内のマスク14上に形成されることになり、レーザ光線48を使用して効率的に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1a】本発明の一実施形態による円形の目標領域を有するサンプルプレートの等角図である。
【図1b】本発明の一実施形態による矩形の目標領域を有するサンプルプレートの等角図である。
【図2a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一区域である図1aの領域A−Aを取り出した拡大図である。
【図2b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一区域である図1bの領域A−Aを取り出した拡大図である。
【図2c】本発明の一実施形態による目標領域およびマスク・スポットを含んだ円形サンプルサイトの平面図である。
【図3a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図2aのB−Bで切断した断面図である。
【図3b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図2bのB−Bで切断した断面図である。
【図3c】本発明の一実施形態による目標領域およびマスク・スポットを含んだ円形サンプルサイトの拡大正面図である。
【図4a】本発明の一実施形態による基板に塗布された電気伝導性の被覆を有する円形サンプルプレートの一切断面である図2aのB−Bで切断した断面図である。
【図4b】本発明の一実施形態による基板に塗布された電気伝導性の被覆を有するチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図2bのB−Bで切断した断面図である。
【図5a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの、図1aの領域A−Aを取り出した拡大図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
【図5b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの、図1bの領域A−Aを取り出した拡大図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
【図6a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図5aのC−Cで切断した断面図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
【図6b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図5bのC−Cで切断した断面図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
【図6c】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図5bのD−Dで切断した断面図であって、サンプルサイトに標本が塗布された状態を示す。
【図7a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの、図1aの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6aの標本が乾燥し始めた状態を示す。
【図7b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの、図1bの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6bの標本が乾燥し始めた状態を示す。
【図8a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図7aのE−Eで切断した断面図であって、図6aの標本が乾燥し始めた状態を示す。
【図8b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図7bのE−Eで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥し始めた状態を示す。
【図8c】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図7bのF−Fで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥し始めた状態を示す。
【図9a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの、図1aの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6aの標本が乾燥した状態を示す。
【図9b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの、図1bの領域A−Aを取り出した拡大図であって、図6bの標本が乾燥した状態を示す。
【図10a】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図9aのG−Gで切断した断面図であって、図6aの標本が乾燥した状態を示す。
【図10b】本発明の一実施形態によるチャンネル・サンプルプレートの一切断面である図9bのG−Gで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥した状態を示す。
【図10c】本発明の一実施形態による円形サンプルプレートの一切断面である図9bのH−Hで切断した断面図であって、図6bの標本が乾燥した状態を示す。
【図11】本発明の一実施形態によるマトリクス構成の異なった濃度を有するサンプルサイトの周りのハロー効果で結晶した結晶の等角図である。
【図12】本発明の一実施形態によるマトリクス形成の異なった濃度を有するサンプルサイトの周りのハロー効果で結晶した結晶の等角図である。
【図13】本発明の一実施形態によるサンプルプレートの一切断面である図5aのE−Eで切断した断面図であって、結晶がUVレーザでスキャンされている状態を示す。
【図14a】円形サンプルプレートにおける図1aの領域A−Aの拡大図であって、CHCAまたはSAを使用して作製された照射結晶に対する、本発明の一実施形態による経路を示す。
【図14b】円形サンプルプレートにおける図1aの領域A−Aの拡大図であって、CHCAまたはSAを使用して作製された照射結晶に対する、本発明の一実施形態による経路を示す。
【図15a】チャンネル・サンプルプレートにおける一つのサンプルサイトの拡大図であって、CHCAまたはSAを使用して作製された照射結晶に対する、本発明の一実施形態による経路を示す。
【図15b】チャンネル・サンプルプレートにおける一つのサンプルサイトの拡大図であって、CHCAまたはSAを使用して作製された照射結晶に対する、本発明の一実施形態による経路を示す。
【図16】本発明の一実施形態による粗い表面を持ったマスクの写真である。
【図17】本発明の一実施形態によるサンプルサイトの周りに結晶した結晶を示す写真である。
【図18】図17に示したものとは異なる標本を使用して、本発明の一実施形態によるサンプルサイトの周りに結晶した結晶を示す写真である。
【図19】大きな表面を持った目標領域におけるDHB結晶を示す写真である。
【符号の説明】
【0092】
10 サンプルプレート
12 基板
14 マスク
16 被覆
20 サンプルサイト
22 マージン
24 目標領域
40 標本
42 結晶
48 レーザ光線
50 スキャンパターン
52a 境界
52b 境界


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導性の表面に粗い表面を用いて塗布されたマスクを含むサンプルプレートを提供し、電気伝導性の表面からなる中央部分とマスクのマージン部分とを有するサンプルサイトを提供するステップと、
少なくとも1つの検体と少なくとも1つのマトリクスを接触させる段階を備え、標本を準備するステップと、
前記サンプルサイトに標本を塗布するステップと、
前記検体の少なくとも1つの結晶を前記電気伝導性領域に隣接するマスクの一領域に形成するステップと、
レーザビームを用いて前記電気伝導性領域に隣接するマスク上の領域をスキャンするステップと、
を有することを特徴とする、質量分光分析を使用して電気伝導性領域に隣接するサンプルプレート表面マスクをスキャンする方法。
【請求項2】
レーザビームを用いて前記電気伝導性領域に隣接するマスク上の領域をスキャンする前記ステップは、パターンにおいてスキャンする段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
信頼水準を持ったアルゴリズムに基づいてスキャンパターンを決定するステップをさらに有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
標本を準備する前記ステップは、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸および3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸のグループから選択されたマトリクスを提供する段階をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
標本を準備する前記ステップは、有機溶媒を供給する段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
標本を準備する前記ステップは、水溶液を供給する段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標本を準備する前記ステップは、少なくとも1つの生物分子である検体を提供する段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
標本を準備する前記ステップは、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、糖たん白質、リポタンパク質、炭水化物、単糖類、二糖類、多糖類、および、それらの混合物から成るグループから選択された検体を提供する段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電気伝導性の表面に粗い表面を用いて塗布されたマスクを含むサンプルプレートを提供し、電気伝導性の表面からなる中央部分とマスクのマージン部分とを有するサンプルサイトを提供するステップと、
有機溶媒、水溶液、およびマトリクスによって生物分子を溶離する段階と、標本を塗布する段階とを含み、標本を準備するための液体クロマトグラフ・システムを提供するステップと、
前記液体クロマトグラフ・システムと協調的に前記サンプルプレートを移動させるステップと、
前記サンプルサイトに標本を塗布するステップと、
を含むことを特徴とする、電気伝導性領域に隣接する領域におけるサンプルプレート表面マスクに標本を塗布する方法。
【請求項10】
前記マトリクスは、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸および3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸のグループから選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
標本を塗布する前記ステップは、1mm当たり少なくとも1μlの比率で前記標本を塗布するステップをさらに有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
標本を塗布する前記ステップは、前記マスク上の電気伝導性の表面の周辺部の少なくとも0.2mm以内に標本を塗布するステップをさらに有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
生物分子を溶離する段階を含み標本を準備するための液体クロマトグラフ・システムを提供するステップは、
オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、炭水化物、単糖類、二糖類、多糖類、および、それらの混合物から成るグループから選択された生物分子を溶離する段階をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
電気伝導性の表面に粗い表面を用いて塗布されたマスクを含むサンプルプレートを提供する前記ステップは、合成ポリマーからなるマスクを選択する段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2006−525520(P2006−525520A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514178(P2006−514178)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/013440
【国際公開番号】WO2004/100207
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・エルエーエス・インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】