説明

マトリンまたはオキシマトリンを含む皮膚状態改善用組成物

本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む皮膚状態改善用組成物に関する。有効成分のマトリンとオキシマトリンは、既存のシワ改善剤として使用されているレチノールに比べ、細胞毒性が低いながらも、コラゲナーゼ活性抑制、及びコラーゲン合成の促進などの分子的メカニズムを通じて優れたシワ改善効能、細胞内チロシナーゼの活性を抑制し、メラニンの生成を抑制する美白効果、紫外線による皮膚損傷を改善する効果、及び発毛促進または脱毛防止に非常に効果的に作用し、且つ、優れた肥満抑制効果及び抗酸化効果を有する。また、細胞毒性及び皮膚副作用がないため、化粧料、薬剤学的組成物及び食品組成物に安全に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品安定性に優れ、皮膚に対する副作用無しに安全に使用できて、皮膚状態改善効果に優れたマトリンまたはオキシマトリンを有効成分として含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シワは皮膚の老化により生じて、老化された皮膚とは、老化の過程と連関のある自然的変化の総体である。皮膚老化は、皮膚表面全体において年と関連のある皮膚機能及び構造模様の変化を示す生理的老化と、紫外線による光老化とに大別される。
【0003】
皮膚に老化が進行されると、真皮の変化が著しいが、70歳以後に現れる真皮萎縮は代表的な老化現象である。真皮の変化は、線維芽細胞(fibroblast)の数とそれらの合成能力の減少により、細胞外基質の中、大きい分子量を有した物質の変化により発生する。その具体的な変化は、コラーゲン束の分離、ムコ多糖質の合成減少、コラーゲンと弾力繊維(elastin)の数と直径の減少、コラーゲンと弾力繊維の粉砕、血管の膨張などが挙げられる。
【0004】
一般に、皮膚の水分含有量、コラーゲン含有量及び外部環境に対する免疫作用能力など、様々な複合的な要因の中、シワの形成に最も大きい影響を及ぼすのは、コラーゲンの生成量とコラーゲンの含量を減少させるコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼの発現量と活性である。
【0005】
一方、人間の皮膚色は、皮膚内部のメラニン(melanin)濃度と分布によって決定付けられる。人体皮膚のメラニン細胞から生成されるメラニン色素は、黒い色素とタンパク質の複合形態を有するフェノール系高分子物質であって、紫外線により発生する皮膚損傷を遮断する重要な役目をしている。メラニン生合成には、メラニン細胞に存在するチロシナーゼの作用が最も重要であると報告されており、チロシナーゼ(tyrosinase)は、アミノ酸の一種であるチロシン(tyrosine)を、メラニン重合体生成の中間産物であるドーパ(DOPA)及びドーオアキノン(dopaquinone)に変換することにより、皮膚黒化過程に核心的役割を行う。
【0006】
環境汚染、自動車排気ガスなどにより、ホルモン不均衡現象が深化されている。これにより、脱毛発生率が高くなり、発生年齢も段々低くなってきて、皮膚免疫システムの不調和を招来し、アトピーと乾癬のような様々な皮膚疾患などが発生している。また、インスタント食品、肉類中心の食生活変化により、幼い年にもかかわらず、肥満で苦しんでいる人口が急激に増加している。
【0007】
したがって、美的な次元だけではなく、深刻な社会問題となっている様々な現象、即ち、内因性老化と紫外線によるシワの発生、シミまたはソバカス、肥満、免疫不均衡、脱毛などのような現象を効果的に解決できる物質の開発が深度深く研究されている。
【0008】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、シワの改善、皮膚美白、紫外線による皮膚損傷の改善、脱毛防止または発毛促進、抗酸化及び抗肥満効果に優れ、安定性が高くて皮膚副作用のない新規の単一物質を開発するために鋭意研究した。その結果、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を製造すれば、その効能及び安全性に優れた、皮膚状態改善、抗酸化及び抗肥満用組成物を提供することができることを確認し、本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、皮膚状態(Skin conditions)改善用組成物であって、前記皮膚状態は、シワ、美白、紫外線による皮膚損傷、または発毛であることを特徴とする皮膚状態改善用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、抗酸化用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、抗肥満用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、皮膚状態改善方法を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、酸化防止方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、肥満抑制方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一様態によると、本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む皮膚状態(Skin conditions)改善用組成物であって、前記皮膚状態は、シワ、美白、紫外線による皮膚損傷、または発毛であることを特徴とする皮膚状態改善用組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の様態によると、本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む皮膚状態改善方法を提供する。
【0019】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、皮膚状態改善用組成物を製造するためのマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途を提供する。
【0020】
本発明の他の様態によると、本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む抗酸化用組成物を提供する。
【0021】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を対象に投与する段階を含む酸化防止方法を提供する。
【0022】
本発明の他の様態によると、本発明は、抗酸化用組成物を製造するためのマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途を提供する。
【0023】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む抗肥満用組成物を提供する。
【0024】
本発明の他の様態によると、本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を対象に投与する段階を含む肥満抑制方法を提供する。
【0025】
本発明の他の様態によると、本発明は、抗肥満用組成物を製造するためのマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途を提供する。
【0026】
本発明者らは、製品安定性に優れ、皮膚に対する副作用無しに安全に使用できて、シワの改善、皮膚美白、紫外線による皮膚損傷の改善または発毛の促進、抗肥満及び抗酸化効果に優れた有効物質を、天然植物を対象に開発しようと努力した。その結果、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を製造すれば、その効能と安全性に優れた、皮膚状態改善用、抗酸化及び抗肥満用組成物を提供することができることを確認した。
【0027】
本発明の組成物において、有効成分として利用されるマトリンとオキシマトリンは、主に苦参の根(sophora root)から抽出される代表的なアルカロイド物質であって、最近は、山豆根(Euchresta japonica Benth)にも存在する物質である。マトリンとオキシマトリンは、テトラシクロ−キノリジジンアルカロイド(tetracyclo-quinolizidine alkaloids)として下記化学式1及び2の構造を有する植物由来の化合物である。マトリンとオキシマトリンは、苦い味を有しており、一般に抗がん作用、B型肝炎、肝硬変治療作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、心臓病、乾癬や湿疹のような皮膚病に効能があると知られている。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
本発明の組成物において有効成分として利用されるマトリンとオキシマトリンは、天然源(natural source)である苦参、例えば、Sophora japonica, Sophora flavescens, Euchresta japonica Benthなどから抽出することができる。詳細には、前記のマトリンとオキシマトリンは、当業界に公知された多様な抽出方法を利用して得ることができ、好ましくは、抽出温度0℃〜50℃で(a)水、(b)炭素数1〜4の無水または含水低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、(c)前記低級アルコールと水との混合溶媒、(d)アセトン、(e)エチルアセテート、(f)クロロホルムまたは(g)1,3−ブチレングリコールを抽出溶媒として収得することができる。
【0031】
必要に応じて、本発明のマトリンとオキシマトリンを得るために、前記の抽出溶媒の処理後、追加的な精製過程を行うことができる。例えば、一定な分子量カットオフ値を有する限外ろ過膜を利用した分離、多様なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性または親和性による分離のために制作されたもの)による分離など、追加的に施された様々な精製方法を通じて、マトリンとオキシマトリンを得ることができる。
【0032】
本発明の組成物は、シワ改善の用途を有する。本発明の組成物は、既存のシワ改善剤として使用されているレチノールに比べ、細胞毒性が低いながらも、コラゲナーゼ活性の抑制及びコラーゲン合成の促進などの分子的メカニズムを通じて、優れたシワ改善効能を発揮し、このような事実は、下記の実施例に明確に記載されている。本発明の組成物の用途であるシワの改善は、通常的な皮膚保護用途(シワの予防、シワの除去、皮膚老化抑制など)を含むとして解釈される。
【0033】
また、本発明の皮膚状態改善用組成物は、皮膚美白用途を有する。本明細書において、用語‘美白’は、メラニン色素の沈着により引き起こされる皮膚の黒化を防止する、皮膚トラブルを改善する作用を意味する。
【0034】
本発明の皮膚美白組成物において、マトリンとオキシマトリンは、細胞内チロシナーゼの活性を抑制することにより、メラニンの生成を抑制する美白効果を示し、安定性が高く、時間の経過による成分含量の変化がほとんどなく、皮膚刺激誘発などの副作用がほとんどない。このような事実は、下記の実施例で明確に立証される。
【0035】
また、本発明の皮膚状態改善用組成物は、紫外線による皮膚損傷を緩和、改善、予防または治療する効果を有する。
【0036】
本発明の皮膚状態改善用組成物は、発毛促進または脱毛防止に非常に効果的に作用する。本明細書で使用される用語‘脱毛防止’または‘発毛促進’は、同一な意味として使用され、これは、当業界で利用されるまた他の用語‘養毛または育毛促進’と同一な意味を有する。
【0037】
本発明の組成物の有効成分であるマトリンとオキシマトリンは、優れた自由ラジカル除去効果を通じて、抗酸化効果を奏する。
【0038】
本発明の抗酸化用組成物は、酸化状態を抑制または除去し、予防または治療できる様々な疾患、疾病または異常状態に適用することができる。本発明の組成物により予防または治療できる抗酸化関連疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、心臓動脈再狭窄、再潅流傷害、パーキンソン病またはアルツハイマー病のような神経変性疾患、脳卒中、癌、老化、心血管疾患、骨粗鬆症、中枢神経系障害、末梢血管疾患及び呼吸困難を含むが、これに限定されるものではない。最も好ましくは、本発明の抗酸化用組成物は、老化の予防または治療に利用される。
【0039】
多い疾患状態と自由ラジカル損傷との相関関係は、広く立証されており、酵素、イオンチャネル、構造タンパク質及び膜脂質を含む多い細胞構成成分が、反応性自由ラジカル種に対する潜在的な標的物である(Rice-Evans C, Mol Aspects of Med 13(1):1-111(1992))。前記潜在的な標的物と自由ラジカルの反応は、特定範囲の細胞機能を損傷し、病理学的変化を誘発して、究極的に細胞を死滅させる。また、生理学的な酸化により多様な疾病が引き起こされることは、米国特許第5,750,351号、5,773,209号、5,773,231号、及び5,846,959号に開示されている。
【0040】
本発明の抗酸化用組成物は、優れた自由ラジカル除去効果により、酸化的損傷からDNA、タンパク質(リポプロテイン包含)及び膜脂質を保護する。
【0041】
また、本発明の組成物の有効成分であるマトリンとオキシマトリンは、優れた肥満抑制効果を有する。
【0042】
本発明の前記化学式1及び2のマトリンとオキシマトリンは、当業界で通常的に実施される置換基の付加または置換反応により得られる誘導体の中、コラーゲンの合成増進及び/またはコラゲナーゼ(MMP-1)活性抑制によるシワ改善効果を示すか、皮膚美白、紫外線による皮膚損傷の改善、発毛促進または脱毛防止、抗酸化及び抗肥満効果を示す誘導体を含むということは、当業界の技術水準を考慮すれば、当業者に明らかなことである。より詳細には、本発明で有効成分として利用されるマトリンとオキシマトリンは、前記化学式1及び2の化合物だけではなく、前記化学式1及び2の構造を核(nucleus)として、当業界に公知の多様な置換体及び置換体結合反応を通じて得られた化学式1及び2の誘導体も本発明の範囲に含まれる。例えば、化学式1及び2において環炭素に、ヒドロキシル基、ハロ基、ニトロ基、または炭素数1〜3のアルキル基が結合されても、化学式1及び2のマトリン及びオキシマトリンと同一または類似した効能を発揮すると判断され、このような置換誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0043】
本発明の好ましい具現例において、前記マトリンまたはオキシマトリンの有効成分は、全体組成物に対し、0.00001〜15.0重量%、より好ましくは、0.0001〜10重量%、最も好ましくは、0.0001〜5重量%である。マトリンまたはオキシマトリンの有効成分の重量が0.00001重量%未満の場合は、その効果を奏し難く、15.0重量%を超過する場合は、含量の増加による効果の増加が非常に微弱で、剤形上の安定性を確保できない問題点がある。
【0044】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、化粧料組成物である。
【0045】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としてのマトリンまたはオキシマトリンの他に、化粧料組成物に通常的に利用される成分を含むが、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常的な補助剤、及び担体を含む。また、前記化粧料組成物は、その効果を増進するために、皮膚吸収促進物質をさらに含むことができる。
【0046】
本発明の化粧料組成物は、当業界で通常的に製造されるいかなる剤形にも製造でき、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳しくは、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形に製造することができる。
【0047】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、または酸化亜鉛などが利用できる。
【0048】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、またはポリアミドパウダーが利用でき、特にスプレーの場合は、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体をさらに含むことができる。
【0049】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用されて、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、またはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0050】
本発明の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガカントなどが利用できる。
【0051】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イソチオネート、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用できる。
【0052】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物として製造できる。
【0053】
本発明の組成物が薬剤学的組成物に製造される場合は、本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるもので、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0054】
本発明の薬剤学的組成物は、ラット、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に経口または非経口などの多様な経路で投与でき、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与できる。好ましくは、非経口投与の中、経皮投与、より好ましくは、塗布による局部投与(topical application)方式により適用される。
【0055】
本発明の薬剤学的組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により様々である。本発明の薬剤学的組成物の投与量は、経口型剤形の場合、成人基準、0.001〜100mg/kgの量を1日1回〜数回投与でき、外用剤の場合は、成人基準、1日当たり1.0〜3.0mlの量で、1日1〜5回塗布し、1ヶ月以上続けることが好ましい。但し、前記投与量は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0056】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造するか、または多用量容器内に入れて製造できる。ここで剤形は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、軟膏、クリームなどの外用剤、座剤及び滅菌注射溶液などを始めとし、薬剤学的製剤に適したいかなる形態としても使用でき、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0057】
また、本発明の組成物は、食品組成物として製造できる。
【0058】
本発明の組成物が食品組成物として製造される場合、有効成分としてマトリンまたはオキシマトリンだけではなく、食品製造時に通常的に添加される成分を含むが、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述の炭水化物の例は、単糖類(例えば、ブドウ糖、果糖など)、二糖類(マルトース、スクロース、オリゴ糖など)、及び多糖類(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。香味剤として、天然香味剤[ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど)]及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。
【0059】
例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤に製造される場合は、本発明のマトリンまたはオキシマトリンの他に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、りんご酸、果汁、トチュウ抽出液、棗抽出液、甘草抽出液などをさらに含むことができる。
【0060】
一方、本発明の具体的な実施例において、マトリンとオキシマトリンに対する皮膚累積刺激試験の結果、マトリンとオキシマトリンは、天然物質として人体に無害な物質であることが明かされた。したがって、本発明のマトリンとオキシマトリンは、毒性及び副作用がほとんどないため、長期間使用時も安心して使用でき、特に、上記のような化粧料、薬剤学的及び食品組成物に安全に適用することができる。
【0061】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次のようである:
(i)本発明の組成物は、マトリンまたはオキシマトリンを有効成分として含む。
(ii)有効成分のマトリンとオキシマトリンは、既存のシワ改善剤として使用されているレチノールに比べ、細胞毒性が低いながらも、コラゲナーゼ活性の抑制及びコラーゲン合成の促進などの分子的メカニズムを通じて、優れたシワ改善効能、細胞内チロシナーゼの活性を抑制しメラニンの生成を抑制する美白効果、紫外線による皮膚損傷を改善する効果、及び発毛促進または脱毛防止に非常に効果的に作用する優れた皮膚状態改善効果を有する。
(iii)また、有効成分のマトリンとオキシマトリンは、優れた肥満抑制効果及び抗酸化効果を有する。
(iv)本発明の組成物は、細胞毒性及び皮膚副作用がないため、化粧料、薬剤学的及び食品組成物に安全に適用することができる。
【0062】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【発明の効果】
【0063】
以上、詳細に説明したように、本発明は、マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む皮膚状態改善用組成物に関する。本発明の組成物に利用される有効成分のマトリンとオキシマトリンは、既存のシワ改善剤として使用されているレチノールに比べ、細胞毒性が低いながらも、コラゲナーゼ活性抑制、及びコラーゲン合成の促進などの分子的メカニズムを通じて優れたシワ改善効能、細胞内チロシナーゼの活性を抑制し、メラニンの生成を抑制する美白効果、紫外線による皮膚損傷を改善する効果、及び発毛促進または脱毛防止に非常に効果的に作用し、且つ、優れた肥満抑制効果及び抗酸化効果を有する。また、細胞毒性及び皮膚副作用がないため、化粧料、薬剤学的組成物及び食品組成物に安全に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の有効成分であるマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)が、RAに比べて人体線維芽細胞に対する細胞毒性が低い程度を示すグラフである。RAは、レチノイン酸(retinoic acid)を示す。RA、マトリンとオキシマトリンは、それぞれ1μM、10μMおよび50μMの量で処理された。
【図2】マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)によるコラーゲン(タイプIコラーゲン)生合成促進効果を示すグラフである。RAは、1μMの量で処理された。
【図3】本発明の有効成分のマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)によりコラゲナーゼ(MMP-1)活性が抑制される効果を示すグラフである。MMP−1及びPMAは、それぞれタイプIコラゲナーゼ及びホルボールミリステートアセテート(phorbol myristate acetate)を示す。PMAは、100nMの量で処理された。
【発明を実施するための形態】
【0065】
実施例1:マトリンとオキシマトリンのシワ改善効果の測定
シワ改善効果は、通常、コラーゲン生合成能とコラゲナーゼ分解抑制能及びヒトに対する臨床試験により効果を測定することができる。
【0066】
ヒトの正常線維芽細胞(human normal fibroblast、(株)太平洋)をDMEM培地の入っている6ウェルマイクロプレートに接種し(2×105細胞/ウェル)、5%濃度のCO2培養器に37℃で24時間培養した。24時間後、各ウェルから培地を除去し、濃度別に試料を処理した後、24時間さらに培養した。培養後、細胞培地を収集し、サンプルとして利用した。試料の処理された線維芽細胞の細胞毒性を測定するために、細胞培地収集の終わった各ウェルに残っている培地の1/10となる量として1mg/ml濃度のMTT試薬を入れて3時間培養した後、培地を除去してDMSOで溶解し、540nmで吸光度を測定した。
【0067】
コラーゲン合成量は、コラーゲン測定キット(Procollagen Type I C-peptide EIA kit;MK101, Takara, Kyoto, Japan)を利用し、製造社のプロトコールによって、細胞培地内におけるプロコラーゲンタイプI C−ペプチド(type I C-peptide;PICP)の量を測定、分析した。
【0068】
コラーゲンを分解する酵素であるコラゲナーゼの活性程度を測定する方法として、コラゲナーゼに対する抗体を利用した。コラゲナーゼ活性を誘導する物質としてPMA(phorbol myristate acetate, Sigma)を処理した。コラゲナーゼ活性は、タイプIコラゲナーゼアッセイキット(Amersham Biosciences, RPN2629)を利用して、ELISAリーダー(Bio-Tek ELx808TM Series Ultra Microplate Reader, U.K)で吸光度を測定した。測定された標準値は、平均±標準偏差の形態で表示し、SPSS/PC+プログラムを利用し、t−testで有意性を検定して、その結果を表1に示した。
【0069】
【表1】

表1に示されたように、マトリンとオキシマトリンは、濃度−依存的にコラーゲン合成を増加させて、また、濃度依存的にコラゲナーゼ活性を抑制した。一方、オキシマトリンよりは、マトリンがコラーゲン合成能及びコラゲナーゼ活性抑制能にさらに優れていることが分かる。
【0070】
したがって、マトリンとオキシマトリンは、シワ改善効能を有していることが分かる。
【0071】
製造例A及び比較製造例:栄養クリームの製造
マトリンまたはオキシマトリンを含有した栄養クリーム(製造例A)の組成を表2に示した。水相の精製水、トリエタノールアミン及びプロピレングリコールを70℃に加熱して溶解させて、これに油相の脂肪酸、油性成分、乳化剤及び防腐剤を70℃に加熱して溶解した液を添加して乳化させた。乳化が完了した後、前記溶液を45℃に冷却して、マトリンまたはオキシマトリン及び香料を添加して分散した後、30℃に冷却した。一方、比較製造例は、前記製造例Aの組成において、マトリンまたはオキシマトリンを添加せず、その代わりに精製水を添加して製造した。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例2:マトリンとオキシマトリンを含有した化粧料のシワ改善効果の測定
マトリンとオキシマトリンを含有した化粧料のシワ改善効果を、臨床試験を通じて分析した。製造例A(マトリンまたはオキシマトリンを1%または5%含有した栄養クリーム)及び比較製造例(精製水を含有した栄養クリーム)で製造した栄養クリームを使用した。
【0074】
シワ改善効果は、皮膚弾力変化の測定を通じて評価した。皮膚弾力の測定は、温度24〜26℃、湿度38〜40%に一定に維持される条件で、健康な女性30名(25〜35歳)を対象に、製造例Aの4種類と比較製造例の栄養クリームをそれぞれ被検者の顔に1日2回ずつ3ヶ月間使用するようにした後、Cutometer SEM 474(Courage+Khazaka, Cologne, ドイツ)を利用して測定することにより行われて、判定基準は、皮膚弾力がない場合を0、多い場合を5にして、相対的な値を比較した。試験結果は表3に示した。
【0075】
【表3】

【0076】
表3に示されたように、本発明の製造例Aが比較製造例に比べてシワ改善効果に著しく優れており、マトリンとオキシマトリンの含有濃度が増加するにつれて皮膚弾力も向上した。
【0077】
実施例3:マトリンとオキシマトリンによるメラニン生成抑制効果の測定
マウスの色素細胞(B16 melanoma cells、韓国細胞株銀行)を利用して、マトリンとオキシマトリンによるメラニン生成抑制効果を測定し、これを、メラニン生成を抑制すると知られたアルブチンによるメラニン生成抑制効果と比較した。
【0078】
10%のFBS(fetal bovine serum)の含有されたDMEM培地で6ウェルプレートにマウスメラノーマ細胞(B-16 F10、韓国細胞株銀行)をウェル当たり1×105個接種した後、5%CO2及び37℃下で培養して、細胞が約80%以上のconfluency になるまで培養した。培養後、培地を除去し、試料を適当濃度に希釈された培地に入れ替えて、5%CO2、37℃下で三日間培養した。マトリンとオキシマトリンの濃度範囲は、細胞毒性のない10μM、100μM及び500μMにした。培地を除去した細胞をPBS(phosphate buffer saline)で洗浄し、これをトリプシンで処理し、細胞を回収した。回収された細胞は、hematocytometer(Tiefe Depth Profondeur 0.100 mm, Paul Marienfeld GmbH & Co. KG, Germany)を利用して細胞数を測定した後、5,000〜10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を除去してペレットを得た。この細胞ペレットを60℃で乾燥した後、10%DMSOの含有された1M水酸化ナトリウム液100μlを入れて、60℃恒温槽で細胞内メラニンを得た。この液をもって、マイクロプレートリーダー(microplate reader;Bio-Tek ELx8081U, U.S)で490nmで吸光度を測定し、細胞の一定数当たりのメラニン量を求めた。その結果を表4に示した。
【0079】
【表4】

【0080】
上記表4から確認できるように、マトリンとオキシマトリンは、濃度依存的にメラニンの生成を抑制した。また、同じ処理濃度において、マトリンとオキシマトリンの両方ともアルブチンよりメラニン生成抑制率が高いことが分かる。
【0081】
実施例4:マトリンとオキシマトリンによる細胞内チロシナーゼ活性抑制効果の測定
マウスの色素細胞(B16 melanoma cells)を利用して、マトリンとオキシマトリンによるメラニン生成抑制効果を測定し、これを、メラニン生成を抑制すると知られたアルブチンによる細胞内チロシナーゼ活性抑制効果と比較した。
【0082】
本実験は、マウスメラノーマ(Murine melanoma)(B-16 F1)細胞を10%のFBS(fetal bovine serum)の含有されたDMEM培地で6ウェルプレートにウェル当たり1×105個接種した後、5%CO2及び37℃下で、細胞がウェルの底に約80%以上付着するまで培養した。培養後、培地を除去し、試料を適当濃度に希釈された培地に入れ替えて、5%CO2、37℃下で三日間培養した。マトリンとオキシマトリンの濃度範囲は、細胞毒性のない10μM、100μM、500μMにした。培地を除去した細胞をPBS(phosphate buffer saline)で洗浄し、これをトリプシンで処理して細胞を回収した。回収された細胞は、hematocytometerを利用して細胞数を測定した後、5,000〜10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を除去してペレットを得た。この細胞ペレットを、溶解緩衝液を利用して粉砕した後、12,000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を収集した。この液をもって、マイクロプレートリーダー(microplate reader)で492nmで吸光度を測定し、細胞の一定数当たりチロシナーゼ活性を求めた。その結果を表5に示した。
【0083】
【表5】

【0084】
上記表5に記載のように、マトリンとオキシマトリンが、アルブチンより細胞内チロシナーゼ抑制率が高いことが分かった。
【0085】
実施例5:動物水準での美白効果の評価
人に類似して紫外線により色素沈着が生じると知られた褐色モルモット(Brown guinea pigs、Charles River Laboratories, Inc.)を使用して、マトリンとオキシマトリンによる美白効果を測定した。
【0086】
前記褐色モルモットにおいて、紫外線(UV)による色素沈着を誘発するために、褐色モルモット腹部の毛を除去した皮膚に、3×3cm2の正方形窓が設けられた遮光用アルミニウムホイルを接着した後、SEランプ(波長290〜320nm、東芝)で紫外線を照射した(総照射エネルギー量=1350mJ/cm2)。紫外線照射後、アルミニウムホイルを剥がし、下記のような方法により試料(マトリン、オキシマトリンまたはアルブチン)を塗布した。紫外線照射後、2〜3日後に色素沈着が現れ、約2週後に最高に到達し、この時から各試料を塗布した。塗布回数は、1日1回または2回とし、50日間続けた。試料は、特定の溶媒(プロピレングリコール:エタノール:水=5:3:2の混合溶媒)を使用して溶解及び希釈して、綿棒で塗布し、他の部位に、必ず溶媒を塗布する対照部位を備えた。効果判定と共に、累積刺激性についても観察した。
【0087】
色差計(CR2002 chromameter, MINOLTA, JP)を使用して、皮膚の黒白程度を測定して効果を判定し、その結果を表6に示した。色を表示するためにL***表色系を使用して、本発明ではL*値を指標とした。L*値は、標準白板で矯正し、L*値は、一つの部位に5回以上繰り返して測定して、色素沈着を均等にした。塗布開始時点と完了時点における皮膚色の差異(ΔL*)を求めて、この値から効果を判定した。
[数学式1]
ΔL*=塗布00日後のL*値−塗布開始日のL*
ΔL*値を、試料塗布部位と対照群部位に対して求めた後、それを比較すれば、美白物質の効果が分かる。実験結果を表6に示した。
【0088】
【表6】

【0089】
上記表6に記載のように、マトリンとオキシマトリンは、濃度依存的に美白効果を示した。また、マトリンとオキシマトリンは、アルブチンより優れた美白効果を示し、試験物質塗布試験の間、累積刺激を示すものは観察されず、安全性にも優れていることが分かった。
【0090】
実施例6:マトリンとオキシマトリンの人体皮膚に対する安全性確認実験
マトリンとオキシマトリンが人体皮膚に安全かどうかを確認するために、皮膚安全性検証実験を行った。このために皮膚累積刺激試験を行った。
【0091】
スクアレンをベースに、マトリンまたはオキシマトリンを1%、5%及び10%添加した剤形を製造して、これを使用し、健康な30名の成人を対象に、上腕部位に隔日で総9回の24時間累積貼布を施すことにより、マトリンとオキシマトリンが皮膚に刺激を与えるかどうかを測定した。
【0092】
貼布方法は、フィンチャンバー(Epitest Ltd, Finland)を利用した。チャンバーに前記各皮膚外用剤を15μlずつ滴下した後、貼布を施した。毎回皮膚に表れた反応の程度を、下記の数学式2を利用して点数化し、その結果を表7に示した。
[数学式2]
平均反応度=[[{(反応指数×反応度)/総被検者数}×最高点数(4点)]×100]÷検査回数(9回)
ここで、反応度において、±は1点、+は2点、++は4点の点数を付与し、平均反応度が3未満の場合、安全な組成物と判定した。
【0093】
【表7】

【0094】
上記表7において、試験群1、2、3、4、5及び6の場合、±、+及び++に該当する人の数がそれぞれ0名、1名、2名、0名、2名及び2名であって、平均反応度が3以下の反応度を示すため、マトリンとオキシマトリンは、明らかな累積刺激様相を示さない、人体皮膚に非常に安全な物質と判定された。
【0095】
実施例7:抗酸化効果
スーパーオキシドジスムターゼ(Superoxide dismutase;SOD)は、スーパーオキシドアニオンをH22とO2に転換させる抗酸化酵素と知られている。この実験は、キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)により発生したスーパーオキシドアニオンが、試験に使用された試料により除去された比率を観察することにより、試料の抗酸化能を評価する方法である。実験は、Dojindo(日本)から購入したキット(SOD Assay Kit-WST)を使用して行い、製造社のプロトコールによって実験した。実験結果は、表8に示した。
【0096】
【表8】

上記表8から確認できるように、本発明のマトリン及びオキシマトリンは、濃度依存的に抗酸化効果を発揮した。一方、マトリンよりはオキシマトリンが抗酸化能により優れていた。
【0097】
実施例8:抗炎症効能の評価
抗炎症効果があるかどうかを調べるために、ヒト単核球細胞であるTHP−1細胞を利用して、通常の方法によりCOX活性抑制能実験を行った。COX活性測定は、F. J. Van de Ouderaaa and Muytenhekが発表したMethods in Enzymology 43:9(1994)によって行った。THP−1細胞株(韓国細胞株銀行)を培養した後、24ウェルプレートに細胞を分株した。ウェル当たりインキュベーション容量は500μlに合わせて、LPS(lipopolysaccahride, Sigma)1μg/mlと下記表に表記された溶媒にそれぞれ溶かした試料2μlを添加した後、24〜48時間同一な条件で培養した。24〜48時間後、各ウェルにカルシウムイオノフォア(calcium ionophore、Sigma)と[1-14C]アラキドン酸1μl(in EtOH, 0.1 μCi/ml, Sigma)を添加後、同一な条件で10分間培養した。培養後、各ウェルにクエン酸を添加し、pHを3.5に合わせて振った後、各培養液を500μl取って、マイクロ遠心分離機チューブに分株した後、エチルアセテート700μlを添加し、10分間振とう抽出した。エチルアセテート層を500μl取って、スピード真空乾燥機を利用して20分間濃縮し、濃縮した残余部分を20μlエチルアセテートで溶かした後、TLCプレートにオーセンティックスタンダード(authentic standard)と共に適用した。放射能バンドは、オーセンティックエイコサノイドスタンダード(authentic eicosanoid standards)で確認して、確認されたバンドの放射能は、BAS 2000 bio-imaging analyzer(Fuji, JP)を利用して測定した(表9)。
【0098】
【表9】

上記表9に記載のように、マトリンとオキシマトリンは、処理濃度が増加するほど、COXの活性を効果的に抑制していることが分かる。これにより、炎症抑制効能があることが分かる。
【0099】
実施例9:免疫抑制能の評価
本発明に使用された試料が、炎症に係る免疫関連反応を抑制するかどうかを、インターロイキン−2ルシフェラーゼレポーター(interleukin-2 luciferase reporter)活性実験を通じて再び調査した。インターロイキン−2プロモータは、炎症に係る免疫関連サイトカインの生産に重要な役割をすると報告されている。インターロイキン−2ルシフェラーゼ活性を測定するために、次のような方法を使用した。ヒトTリンパ球細胞株であるJurkat細胞(韓国細胞株銀行)を、6ウェルにそれぞれ1×106個の細胞を分株した後、superfect transfection reagent(In vitrogen)を利用して、インターロイキン−2ルシフェラーゼレポータープラスミドDNA(IL-2 luciferase reporter plasmid DNA)を形質感染(transfection)させた。形質感染後、24時間が経過した後、PHA(Phytohemaglutinin, Sigma)(100ng/ml)を処理し、Jurkat細胞を活性化させると同時に、それぞれの試料を濃度別に処理した。24時間後細胞を収集し、蛍光光度計(luminometer;Berthold Technologies GmbH&Co.KG, Germany)を利用して、ルシフェラーゼ活性を測定した。表10に結果を示した。
【0100】
【表10】

上記表10に記載のように、マトリンとオキシマトリンは、処理濃度が増加するほど、インターロイキン−2の発現を抑制することにより、免疫調節機能を有していることが分かる。
【0101】
実施例10:抗肥満効果
肥満抑制試験は、一般によく知られた動物を利用し、下記の方法により行った。その結果を表11に示した。
【0102】
肥満抑制活性の測定方法は、以下のようである:
Crj:生後7週のICR系雄性マウス(obtained from Charles River Japan Ltd)を1週間予備飼育した後、1群当たり7匹として実験に使用した。動物は、温度23±1℃、湿度55±5%、照明時間12時間/日に設定された恒温恒湿室で飼育し、試料としてLabo MR(manufactured by Nippon Nosan)を使用して、水は自由に摂取するようにした。マトリンは、0.1%、1%となるようにリポソーム剤形(レシチン5%に溶かしたもの)に製造した。各試料溶液は、マウス10g当たり0.1ml投与されるように濃度調整して、投与量を1.5g/kg、1g/kgにした。また、対照群は、5%レシチンエマルジョンにした。マウスは、投与する前日から絶食状態にして、翌日強制に単回投与した。試験期間は、2週間とし、体重及び一般症状を測定、観察した。
【0103】
【表11】

上記表11から確認できるように、マトリンとオキシマトリンは、肥満抑制効果を示した。投与濃度が高くなるほど、その効能が高くなることを観察することができた。
【0104】
実施例11:脱毛防止及び育毛効果
脱毛防止と育毛効果に対する効果を測定するために、試料を、防腐剤と粘増剤のみを含有したハイドロゲルベースにして試験を行った。製造した発毛促進用外用液剤を利用して、弱化または放射能露出による脱毛患者10名の脱毛部位に1日2回、それぞれ3ccずつ6ヶ月間適用した。その結果、脱毛患者8名から新しい毛根が発生するなど、優れた効果を示した。試験結果を表12に示した。対照群としてモキシジル(moxidil、Hanmi pharmaceutical. Co. Ltd.)を使用した。
【0105】
【表12】

上記表12から確認できるように、本発明のマトリンとオキシマトリンは、発毛剤として販売されているモキシジルとほぼ等しい発毛効果を奏することが分かる。
【0106】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む皮膚状態(skin conditions)改善用組成物であって、前記皮膚状態は、シワ、美白、紫外線による皮膚損傷、または発毛であることを特徴とする、皮膚状態改善用組成物。
【請求項2】
マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む抗酸化用組成物。
【請求項3】
マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む抗肥満用組成物。
【請求項4】
前記マトリンまたはオキシマトリンは、組成物の総重量に対し、0.0001〜10重量%含まれることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、化粧料組成物であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーからなる群から選択される剤形を有することを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、薬剤学的組成物であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、食品組成物であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む皮膚状態改善方法。
【請求項10】
前記皮膚状態は、シワ、美白、紫外線による皮膚損傷、または発毛であることを特徴とする、請求項9に記載の皮膚状態改善方法。
【請求項11】
マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を対象に投与する段階を含む酸化防止方法。
【請求項12】
マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)を有効成分として含む組成物を対象に投与する段階を含む肥満抑制方法。
【請求項13】
前記マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)は、組成物の総重量に対し、0.0001〜10重量%含まれることを特徴とする、請求項9乃至12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物は、化粧料組成物であることを特徴とする、請求項9乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーからなる群から選択される剤形を有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は、薬剤学的組成物であることを特徴とする、請求項9乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記組成物は、食品組成物であることを特徴とする、請求項9乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
皮膚状態改善用組成物を製造するためのマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項19】
前記皮膚状態は、シワ、美白、紫外線による皮膚損傷、または発毛であることを特徴とする、請求項18に記載のマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項20】
抗酸化用組成物を製造するためのマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項21】
抗肥満用組成物を製造するためのマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項22】
前記マトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)は、組成物の総重量に対し、0.0001〜10重量%含まれることを特徴とする、請求項18乃至21に記載のマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項23】
前記組成物は、化粧料組成物であることを特徴とする、請求項18乃至22のいずれかに記載のマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項24】
前記組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーからなる群から選択される剤形を有することを特徴とする、請求項23に記載のマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項25】
前記組成物は、薬剤学的組成物であることを特徴とする、請求項18乃至22のいずれかに記載のマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。
【請求項26】
前記組成物は、食品組成物であることを特徴とする、請求項18乃至22のいずれかに記載のマトリン(matrine)またはオキシマトリン(oxymatrine)の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519292(P2010−519292A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550802(P2009−550802)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001021
【国際公開番号】WO2008/102997
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508237786)
【Fターム(参考)】