マニキュア液
【課題】本発明は、爪に塗布することで、静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが可能なマニキュア液を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とするマニキュア液を提供することにより上記課題を解決するものである。
【解決手段】本発明は、爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とするマニキュア液を提供することにより上記課題を解決するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布することで爪先による静電容量方式のタッチパネル操作が可能なマニキュア液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マニキュアは装飾を目的とした化粧品として、女性の間で広く用いられている。また、マニキュアには、爪の割れ防止や爪の健康維持を目的としたベースコートと呼ばれるものがあり、このようなマニキュアは女性のみならず男性のスポーツ選手の間でも広く用いられている。その他にも、色調を派手にしたりデザインを描くためのネイルカラーや、ネイルカラーを塗布した爪の表面を保護するためのトップコート等があり、用途によって適宜使い分けられている。
最近では、色だけではなく、パールやラメが混ぜ込まれたもの、速乾性に優れたもの、剥がして除去できるもの等、様々な種類のマニキュアが販売されており(特許文献1、2参照)、マニキュアによって爪を装飾する女性が増えている。また、マニキュアによる装飾に伴って、爪を長く伸ばす女性も増えているのが現状である。
【0003】
ところで、近年、我々が身近に使用している携帯電話やスマートフォン、銀行や金融機関のATM、自動販売機(自動券売機)等には、画面に触れることで操作できるタッチパネルが用いられている。タッチパネルは、電圧や超音波、光などを検出することで動作するものであり、その原理は様々である。具体的には、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、光学方式、電磁誘導方式などのタッチパネルがある。このうち、静電容量方式のタッチパネルは、画面に触れることで生じるタッチパネル表面の電荷の容量変化を検知して位置を認識し、動作するものである。
【0004】
静電容量方式のタッチパネルには、表面型と投影型との2種類の検出方式があり、それぞれ構造が異なる。
以下、図を参照しながら説明する。
【0005】
図1は、一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。
投影型静電容量方式のタッチパネル1は、透明基板2と、上記透明基板2上に配置された透明電極層3を有しており、上記透明電極層3上には保護カバー4を有している。また、投影型静電容量方式のタッチパネル1を構成する上記透明電極層3は、第1の透明電極層31および第2の透明電極層32から構成される。
【0006】
図2は、一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明電極層の一例を示す概略平面図である。上記透明電極層3は、上述したように上記第1の透明電極層31および上記第2の透明電極層32からなるものであり、上記第1の透明電極層31にはX方向の座標を検出するための透明電極31XがX方向に複数分離されて形成されており、一方、上記第2の透明電極層32にはY方向の座標を検出するための透明電極32YがY方向に複数分離されて形成される。各透明電極を複数分離して形成するのは、位置検出の精度を高めるためである。なお、図2に示す各透明電極は菱形電極であるが、その他にも田形電極等がある。
また、X方向またはY方向に形成された上記透明電極31Xおよび上記透明電極32Yは、それぞれX座標検出用導電部5XおよびY座標検出用導電部5Yに接続され、上記X座標検出用導電部5XおよびY座標検出用導電部5Yは、図示はしないが、スイッチング回路や検出回路等に接続される。上記X座標検出用導電部5XおよびY座標検出用導電部5Yは、それぞれ上記透明電極31Xと上記透明電極32Yとに所定の電圧を印加するための電極として機能し、スイッチング回路の切り替えにより透明電極31Xと透明電極32Yとのいずれか一方に選択的に電圧を印加することができる。
【0007】
図3は、投影型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
上述したように、電圧が印加された透明電極層3の表面には電界が形成され、この状態で指100が投影型静電容量方式のタッチパネルに近づくと、指100と透明電極との間の静電容量が増加する。X座標用導電部およびY座標用導電部のどの位置の静電容量が増加しているのかを検出することで、接触位置の座標を求めることができる。
【0008】
上記投影型静電容量方式のタッチパネルは、その検出方式から多点検知が可能である。そのため、現在では幅広い分野で用いられている。
【0009】
次に、図4は、一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。表面型静電容量方式のタッチパネル1は、透明基板2と、上記透明基板2上に配置された透明導電膜6と、上記透明導電膜6上に配置された保護カバー4を有するものである。
【0010】
図5は、一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明導電膜の一例を示す概略平面図である。上記透明導電膜6は、四隅に電極61があり、これらの電極によって上記透明導電膜6の表面には電界が形成されている。
【0011】
図6は、表面型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
図6に示すように、指100が表面型静電容量方式のタッチパネル1に接触すると、四隅の電極から指100を通じて微弱な電流が流れる。このとき、指100が触れた位置に近い電極ほど電流量が増加するため、四隅から流れた電流量の比率を算出することで、指100が触れた位置を検出することができる。
なお、説明してない符号については、図4と同様とすることができるので省略する。
【0012】
このように、静電容量方式のタッチパネルは、画面を押し込むことで動作する抵抗膜方式のタッチパネルとは異なり、容量の変化等によって動作するので、画面に接近、もしくは接触するだけで軽快に動作することができる。その結果、画面をなぞってページ送りする操作、また画面を叩いてキー入力する操作が可能となり、現在、静電容量方式のタッチパネルは携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末等に採用されている。また、上記静電容量方式のタッチパネルは、抵抗膜方式に比べて透過率が高いため画面がクリアである。さらに、静電容量方式のタッチパネルは、表面にガラス等の保護カバーを設けることができるので、傷に強く、耐久性や耐環境性に優れている。
【0013】
しかしながら、爪の装飾に伴って爪を伸ばす女性が急増している中、指でタッチパネルに接近、もしくは接触することが困難となり、静電容量方式のタッチパネルを操作できないといった問題があった。静電容量方式のタッチパネルが指以外に反応しないのは、静電容量方式のタッチパネルは、人体をグラウンドと仮定し、指が静電容量方式のタッチパネルに近づくと、その領域に対応する透明電極または透明導電膜表面の静電容量が変化し、その静電容量の変化によって指が接近、もしくは接触した位置を検出して動作しているからである。すなわち、静電容量方式のタッチパネルを操作できるのは、指または指と同等の静電的な導電性を有するものである。
【0014】
このような問題を解決する方法として、指の代わりに専用のスタイラスペン等の道具を用いて操作する方法があるが(特許文献3参照)、携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末等と共にスタイラスペンを持ち歩く必要があり、また片手での操作が困難等といった問題がある。そのため、さらなる解決方法が求められている。
【0015】
以上のように、マニキュア等の装飾をし、携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末等に搭載されている静電容量方式のタッチパネルを指で操作するのが困難な場合でも、静電容量方式のタッチパネルを専用の道具を使わずに容易に操作できる方法の開発が求められている。
【0016】
さらに現在では、小型化された静電容量方式のタッチパネルが多く、それに伴い入力ボタン等も小さい場合が多い。そのため、指による入力の際に誤入力や誤操作等の問題もあり、爪先によって正確に操作できる方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−326911号公報
【特許文献2】特開2006−312596号公報
【特許文献3】特開2010−3279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、爪に塗布することで、静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが可能なマニキュア液を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とするマニキュア液を提供する。
【0020】
本発明によれば、マニキュア液が導電性材料を有することにより、上記マニキュア液を塗布した爪が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触すると、指が接近、もしくは接触した時と同様に、静電容量方式のタッチパネルと上記マニキュア液を塗布した爪との間で静電容量が増加する。つまり、上記静電容量方式のタッチパネルおいて、上記マニキュア液を塗布した爪先が接近、もしくは接触した領域に対応する電極の静電容量が変化する。その静電容量の変化によって上記静電容量方式のタッチパネルは、爪先が接近、もしくは接触した領域を認識することができ、指が接近、もしくは接触した時と同様の動作をすることが可能となる。
また、従来、小型化された静電容量方式のタッチパネルでは、入力ボタン等も小さくなるため、指での操作が困難であり、スタイラスペン等の専用のペンを用いることが求められる。しかし、本発明のマニキュア液を爪に塗布することで、爪先での操作が可能となるため、小型化された静電容量方式のタッチパネルの入力ボタンを誤操作なくタッチでき、その結果、容易かつ正確な入力操作が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、爪に塗布することで静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが可能となるマニキュア液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。
【図2】一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明電極層の一例を示す概略平面図である。
【図3】一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
【図4】一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。
【図5】一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明導電膜の一例を示す概略平面図である。
【図6】一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
【図7】本発明のマニキュア液の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略図である。
【図9】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略断面図である。
【図12】実施例の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.マニキュア液
本発明のマニキュア液について説明する。
本発明のマニキュア液は、爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とする。
なお、本発明におけるマニキュア液とは、爪に塗布する前の液状のものを指し、また、マニキュアとは、マニキュア液を爪に塗布してなる塗膜を指す。
【0024】
一般的なマニキュア液は、爪に塗布して乾かし、爪の表面を保護することで爪割れ等を防止する機能を有するものである。また、上述した保護機能の他に、鮮やかな色調やデザインを描くことで爪表面に美粧的効果を持たせる機能を有するものである。
以下、図を参照しながら説明する。
【0025】
図7は、本発明のマニキュア液を説明する概略断面図である。図7に示すように、本発明で称するマニキュア液を塗布してなるマニキュア10は、ベースコート用マニキュア液を塗布してなるベースコート11、ネイルカラー用マニキュア液を塗布してなるネイルカラー12、トップコート用マニキュア液を塗布してなるトップコート13を包含するものである。
ベースコート用マニキュア液とは、爪の健康を維持する目的として用いられるものであり、ネイルカラーの下地として用いる場合が多い。そのため、上記ベースコートの表面にネイルカラー用マニキュア液を塗布した際に、ネイルカラー用マニキュア液が有する色調に影響を与えないような無色または淡色のものが一般的である。
また、ネイルカラー用マニキュア液とは、一般的に、装飾を目的として用いられるものであるため、比較的有色のものが多く、色調も様々である。また、ネイルカラー用マニキュア液以外にも、ネイルポリッシュ用マニキュア液、ネイルエナメル用マニキュア液、ネイルラッカー用マニキュア液等と呼ばれることがある。
さらに、トップコート用マニキュア液とは、保護膜としての機能を有するものであり、ネイルカラーの上に塗布して用いられることが多い。そのため、ネイルカラー用マニキュア液を塗布した上から上記トップコート用マニキュア液を塗布する際に、ネイルカラー用マニキュア液が有する色調に影響を与えない無色または淡色のものが一般的である。
【0026】
ところで、従来、爪の装飾に伴って爪を伸ばした際に、静電容量方式のタッチパネルに指を接近、もしくは接触させることが困難であり、かつ上記静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが困難であるといった問題があった。
本発明によれば、マニキュア液が導電性材料を有することにより、上記マニキュア液を塗布した爪が上記静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触すると、指が接近、もしくは接触した時と同様に、静電容量方式のタッチパネルと上記マニキュア液を塗布した爪との間で静電容量が増加する。つまり、上記静電容量方式のタッチパネルおいて、上記マニキュア液を塗布した爪先が接近、もしくは接触した領域に対応する透明電極または透明導電膜表面の容量が変化し、その容量の変化によって爪が接近、もしくは接触した領域を認識することができる。このように、本発明のマニキュア液を爪に塗布することで、指が接近、もしくは接触した時と同様に、上記静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが可能となる。
また、従来、小型化された静電容量方式のタッチパネルでは、入力ボタン等も小さいため、指での操作が困難であり、スタイラスペン等の専用のペンを用いることが求められる。しかし、本発明のマニキュア液を爪に塗布することで、爪先での操作が可能となるため、小型化された静電容量方式のタッチパネルの入力ボタンを誤操作なくタッチでき、その結果、容易かつ正確な入力操作が可能となる。
以下、本発明のマニキュア液の構成成分について説明する。
【0027】
本発明のマニキュア液は、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性材料を有するものであれば特に限定されるものではない。一般的なマニキュア液の構成成分としては、例えば、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤等が挙げられ、これらの構成成分として導電性材料を含有させてマニキュア液に導電性を付与してもよいし、あるいは導電性付与のためのみの添加剤として導電性材料をマニキュア液に含有させてマニキュア液に導電性を付与してもよい。
以下、本発明に用いられる導電性材料およびマニキュア液の構成成分について説明する。
【0028】
A.導電性材料
本発明における導電性材料としては、マニキュア液に含有させることで、上記マニキュア液を塗布した爪先で静電容量方式のタッチパネルが操作できるものであれば特に限定されるものではない。
【0029】
本発明における導電性材料は、マニキュア液の構成成分である着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤、またはその他の添加剤として導電性材料が含有されていてもよく、あるいは導電性付与のためのみの添加剤として導電性材料がマニキュア液に含有されていてもよい。本発明においては、マニキュア液に導電性付与のためのみの添加剤として導電性材料が含有されていることが好ましい。
【0030】
本発明において、静電容量方式のタッチパネルを操作することができる程度の導電性とは、静電容量方式のタッチパネルの種類や大きさ等によって異なるものであるが、例えば、人の指表面と同等の抵抗値を有していれば特に限定されない。本発明のマニキュア液を爪表面に塗布した際のマニキュアの抵抗値としては、例えば、2.10×102Ω以下であることが好ましい。
【0031】
なお、上記抵抗値は、4端子測定方式LCRメータ ロレスタGP MCP−T610型(株式会社 三菱化学アナリテック)を用いて測定した値である。
【0032】
このような導電性材料の形態としては、マニキュア液に添加することによって所望の導電性を付与することができれば特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、液状、ジェル状、繊維状等の形態の導電性材料が挙げられる。
具体的な導電性材料としては、例えば、導電性顔料、導電性染料が挙げられる。
また、粉末状の導電性材料としては、スズ系酸化物、スズ−アンチモン系酸化物、酸化チタン/スズ−アンチモン系酸化物、インジウム−スズ系酸化物等が挙げられる。また、Al、Ag、Au、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Sn、W、亜鉛等の金属を用いることも可能である。上記金属粉末をマニキュア液に用いた場合には、マニキュア液に導電性を付与するとともに、マニキュア液を着色し、ラメを加えたような光沢感を与えることができる。
液状の導電性材料としては、例えば、スズ−アンチモン系酸化物塗料/分散液、インジウム−スズ系酸化物塗料/分散液等が挙げられる。
ジェル状の導電性材料としては、例えば、ポリアセチレン、p−フェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、PVC系ポリマーとブタジエン(BD)−アクリロニトリル(AN)系コポリマー混合物、グラフトコポリマー、BD−AN−塩化ビニルターポリマー、PVC−ポリウレタングラフトコポリマー、スチレン−ジエン−ピロール系タポリマー等の導電性ポリマー、ポリアセチレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体等が挙げられる。
繊維状の導電性材料としては、例えば、ポリアミド系熱可塑性重合体からなる導電ポリマー層と繊維形成性熱可塑性重合体からなる保護ポリマーとを有する白色系導電繊維を挙げることができる。
上述した他にも、コロイドや微細粒子等の形態の導電性材料を用いることも可能である。
【0033】
また、上述したように、材料自体が導電性を有している導電性材料の他にも、非導電性材料に導電性付与物質を添加してなる導電性材料等が挙げられる。
非導電性材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の一般的なポリマーが挙げられる。
導電性付与体としては、Al、Ag、Au、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Sn、W、亜鉛等の金属粉末や、ZnO、SnO2等の金属酸化物、ステンレス等の金属繊維またはウェイスカー等の金属分散系が挙げられる。また、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックや、PAN系、ピッチ系等の炭素の炭素繊維や、天然物、人工物等の黒鉛系分散剤等が挙げられる。さらに、ガラスビーズや合成繊維等が挙げられる。
【0034】
このように、本発明に用いられる導電性材料としては、上記マニキュア液に所望の導電性を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、本発明のマニキュア液を構成する皮膜形成成分として用いることができる導電性材料であってもよい。
また、上記導電性材料としては、導電性を有する金属粉末、顔料、染料、高分子材料を適宜選択し、必要に応じて複数を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
上記導電性材料が有する色調としては、本発明のマニキュア液の色調やその用途等によって適宜選択されるものであり、特に限定されない。導電性材料の色調としては、例えば、透明、白色等の淡色、黄色、茶色、青色等が挙げられる。本発明においては、ベースコート用マニキュア液やトップコート用マニキュア液に用いられる場合には、透明や白色等の淡色を呈する導電性材料であることが好ましく、ネイルカラー用マニキュア液に用いる場合には、そのネイルカラー用マニキュア液が有する色調に影響を与えないような導電性材料であることが好ましい。
【0036】
上記導電性材料の添加量としては、上記マニキュア液に所望の導電性を付与することができる程度であれば特に限定されるものではないが、添加量が少なすぎると上記マニキュア液を塗布した爪でタッチパネルを操作することが困難となる場合があり、また、金属粉末等の有色の導電性材料の添加量が多すぎると、マニキュアとしての見栄えが悪くなり、装飾機能が低下する場合がある。
【0037】
B.マニキュア液の構成成分
本発明のマニキュア液としては、導電性材料を用いることで所望の導電性を示すマニキュア液とすることができれば特に限定されるものではない。
本発明のマニキュア液を構成する成分としては、例えば、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤、等が挙げられる。これらの成分は、ネイルカラー用マニキュア液、ベースコート用マニキュア液、トップコート用マニキュア液等のマニキュア液の種類や目的に応じて適宜調整されるものである。
以下、マニキュア液の構成成分について、ネイルカラー用マニキュア液とベースコート用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液等のコート剤との場合に分けて説明する。
【0038】
1.ネイルカラー用マニキュア液の構成成分
本発明のネイルカラー用マニキュア液の構成成分は、色調や光沢等に応じて適宜調整されるものであるが、一般的なネイルカラー用マニキュア液は、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤を溶剤に混合して溶解させたものである。
以下、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤についてそれぞれ説明する。
【0039】
(1)着色成分
本来ネイルカラー用マニキュア液は、爪に装飾を施す目的を有するものであり、赤、青、緑、黄等の色調や、白、黒の明度、分光色、干渉色の飾色等、様々な色調のネイルカラー用マニキュア液が販売されている。本発明においても、上記ネイルカラー用マニキュア液の構成成分として着色成分を用いることで、様々な色調の導電性を有する本発明のネイルカラーを製造することが可能である。
【0040】
上記着色成分としては、本発明のネイルカラー用マニキュア液を所望の色調にすることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料、金属箔、プラスチック箔、魚鱗、マイカ類粉、蛍光色素等が挙げられる。
なお、本発明においては、上述した成分を1種で用いてもよいし、または複数種を混合して用いてもよい。
【0041】
本発明のネイルカラー用マニキュア液における上記着色成分の含有量としては特に限定されるものではなく、着色成分の種類や目的の色調等によって適宜調整されるものである。
なお、上記着色成分は、本発明のマニキュア液において必須の構成成分ではない。
【0042】
(2)皮膜形成成分
本発明のネイルカラー用マニキュア液を構成する皮膜形成成分としては、一般的にニトロセルロースが用いられる。ニトロセルロースは、強度が高く、速乾性に優れているからである。また、上記ニトロセルロース以外には、アセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等を用いることができる。
【0043】
(3)樹脂成分
上記皮膜形成成分の物性に柔軟性、密着性、光沢性等の特性を付与するために、上述した材料の他に樹脂成分を添加してもよい。
【0044】
このような樹脂成分としては、例えば、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニール樹脂、スチレン樹脂、マレイン酸樹脂、またはその変性樹脂、それらのコポリマー等が挙げられる。
また、天然樹脂としては、ダンマー、セラック、チクロ等が挙げられる。
【0045】
(4)油脂成分
上記皮膜形成成分の物性に除去性、修復性等の特性を付与し、また構成成分の相溶性を付与するために、上述した材料の他に油脂成分を添加してもよい。
【0046】
このような油脂成分としては、例えば、パラフィン、ワックス、脂肪酸またはそのグリセライド、高級脂肪族アルコール、カルバナロウ、ミツロウ、シリコーンワックス等が挙げられる。
【0047】
上記油脂成分の配合により、溶媒による皮膚や爪の過度の脱脂を予防できるという効果が得られる。
【0048】
(5)可塑剤
上記皮膜形成成分の物性に柔軟性を付与し、皮膜のひび割れ、剥離を防ぐために、上述した材料の他に可塑剤を添加してもよい。
【0049】
このような可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、アジピン酸ジイソオクチル、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジベンジル、トリアセチン乳酸ジセチル(DCM)等が挙げられる。
なお、上記皮膜形成成分であるニトロセルロースに対しては、1、7、7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(カンファー)が特有の可塑剤として用いられる。
【0050】
(6)溶剤
上記ネイルカラー用マニキュア液の構成成分である溶剤は、上記ネイルカラー用マニキュア液の構成成分である上述した材料を均一に溶解させるためのものである。
また、上記溶剤としては、各材料の均等溶解性の他に、塗膜の乾燥速度、展延性、平滑仕上がり、使用感、匂い等について検討し、適宜調整されるものである。
【0051】
このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、ギ酸メチル、炭酸ジメチル、エチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアルコール、イソペンタン、シクロペンタン、石油エーテル等の沸点が100℃以下の低沸点溶剤、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトンル、セロソルブ、セロソルブアセテート、シクロヘキサノン、フルフラール、ブチルアルコール、アミルアルコール、トルエン、ソルベントナフサ等の沸点が100℃〜150℃の範囲内の中沸点溶剤、ジアセトンアルコール、ペンジルアルコール、カルビトール、乳酸ブチル、安息香酸エチル、デカリン、高溶解ナフサ、パイン油、テレピン油等の沸点が150℃〜180℃の範囲内の高沸点溶剤が挙げられる。
【0052】
(7)その他の添加剤
本発明のネイルカラー用マニキュア液の構成成分としては、上述した着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤以外にも、その他の添加剤として粉末剤、糊剤、界面活性剤、安定剤、酸アルカリ剤、隠蔽剤、光沢剤、香料の一種また二種以上が挙げられ、用途や目的に応じて適宜選択される。
【0053】
2.ベースコート用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液の構成成分
本発明のベースコート用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液の構成成分は、密着性や光沢等に応じて適宜調整されるものであり、上記ネイルカラー用マニキュア液と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
但し、ベースコート用マニキュア液とトップコート用マニキュア液の場合は、その目的に合致させるために構成成分の配合組成は若干異なる。
以下、ベースコート用マニキュア液とトップコート用マニキュア液とに分けて説明する。
【0054】
(1)ベースコート用マニキュア液
一般的なベースコート用マニキュア液は、爪の健康を維持し、爪割れを防止すること等を目的として用いられるものであり、爪に直接塗布して用いる。また、ベースコート用マニキュア液を塗布した上からネイルカラー用マニキュア液を塗布する場合が多々ある。そのため、爪およびネイルカラー用マニキュア液との密着性が高いものが好ましい。
【0055】
本発明のベースコート用マニキュア液は、例えば、マニキュア液の構成成分である皮膜形成成分として硝化度が12のニトロセルロースを用いることが好ましい。
【0056】
また、樹脂成分の配合量をネイルカラー用マニキュア液等に比べてやや増やし、中沸点溶剤の配合量を増加させることが好ましい。塗膜の密着性を向上させることができるからである。
【0057】
(2)トップコート用マニキュア液
一般的なトップコート用マニキュア液は、ネイルカラー用マニキュア液等の装飾を施した爪表面に傷等が付かないよう保護することを目的として用いられるものであり、ネイルカラー用マニキュア液等の上から塗布して用いる。そのため、トップコート用マニキュア液を塗布することにより、塗面を堅くできるものが好ましい。
【0058】
本発明のトップコート用マニキュア液は、例えば、マニキュア液の構成成分である皮膜形成成分として硝化度11のニトロセルロースを用いることが好ましい。塗面を堅くすることができるからである。
【0059】
II.マニキュア液の塗布方法
本発明のマニキュア液の塗布方法について説明する。
本発明のマニキュア液は、静電容量方式のタッチパネルの表面を、上記マニキュア液を塗布した爪先が接触した際に、爪表面に塗布された上記マニキュア液を介して、上記静電容量方式のタッチパネルにおける接触位置と人体とを接続し、上記静電容量方式のタッチパネルを動作させる効果を有するものである。
上記効果を得るためには、まず本発明のマニキュア液と人体とが接触するように上記マニキュア液を塗布することが必要であり、さらに上記静電容量方式のタッチパネルの表面に爪先が接触したときの爪先の接触面にマニキュア液を塗布することが必要である。
なお、この際、上記静電容量方式のタッチパネルに接近または接触する爪先部分に塗布されたマニキュア液と、人体に接触するように塗布されたマニキュア液とが、それぞれ導通している必要がある。そのため、上記マニキュア液を、上記爪先部分から上記マニキュア液と人体とが接触する部分にかけて、一続きに塗布することが必要である。
以下、本発明のマニキュア液を人体と接触するように塗布する方法と、上記マニキュア液を静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分に塗布する方法とに分けて詳しく説明する。
【0060】
A.人体と接触させて塗布する方法
本発明のマニキュア液を人体と接触させて塗布する方法について、図を参照しながら説明する。
【0061】
図8(a)は、本発明のマニキュア液を爪表面に塗布した指を示す概略図である。図8(b)は、図8(a)のA−A線断面図であり、図8(c)は図8(a)のB−B線断面図である。
図8(a)に示すように、本発明のマニキュア液を塗布してなるマニキュア(以下、単にマニキュアと称して説明する場合がある。)10は、爪7の表面に塗布するものであり、また上記マニキュア液が塗布された爪先で静電容量方式のタッチパネルを操作することができるという効果を奏するものである。
このような効果を得るためには、上記マニキュア液を爪表面に塗布する際に、上記マニキュアと爪以外の人体の一部が接触している必要がある。静電容量方式のタッチパネルの表面に、本発明のマニキュア液が塗布された爪先が接近、もしくは接触した際、上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが上記マニキュアを介して接続された状態となり、電流が流れることで上記静電容量方式のタッチパネルが動作するからである。
【0062】
本発明において、上記マニキュアと人体とが接触しているとは、上記マニキュア液を爪の表面に塗布した際に、上記マニキュアが爪の周囲の皮膚に少なくとも一か所が触れていることを指す。
例えば、図8(a)、(b)の点線で囲った領域に示すように、指100における甘皮8と上記マニキュア10とが接触するように塗布されている状態である。なお、甘皮とは、爪半月を保護するための皮膚であり、また上記爪半月とは、爪の生え際にあって、爪を作り出す部分である。
また、図8(b)に示すように、爪7の裏面であって、爪7と皮膚との境目にある爪裏の皮膚9Bに、上記マニキュア10が接触して塗布されていてもよく、あるいは、図8(c)に示すように、爪7の長さ方向に平行し、爪7と皮膚との境目にある爪際の皮膚9Sに、上記マニキュア10が接触して塗布されていてもよい。
【0063】
また、本発明のマニキュア液であるベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液の全てを爪に塗布する場合の塗布方法としては、少なくとも人体と静電容量方式のタッチパネルとが本発明のマニキュアによって接続されていれば特に限定されるものではない。
図7は、爪7表面に導電性を有するベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液が塗布された指を示す概略断面図である。図7に示すように、ベースコート用マニキュア液が塗布されてなるベースコート(以下、単にベースコートと称して説明する場合がある。)11、ネイルカラー用マニキュア液が塗布されてなるネイルカラー(以下、単にネイルカラーと称して説明する場合がある。)12およびトップコート用マニキュア液が塗布されてなるトップコート(以下、単にトップコートと称して説明する場合がある。)13が全て人体と接触して塗布されていてもよいし、また、図示はしないが、ベースコート、ネイルカラーおよびトップコートのうちの1種もしくは2種が人体と接触するように塗布されていてもよい。本発明においては、中でも、本発明のマニキュアを人体と確実に接触させるという観点から、爪表面に塗布した本発明のマニキュアが全て人体と接触していることが好ましい。
【0064】
このように、本発明のマニキュア液を人体と接触させて塗布する際、上記マニキュアと人体、すなわち甘皮や爪際の皮膚等とが接触する面積としては、静電容量方式のタッチパネルと爪に塗布された上記マニキュアとが接触することで、上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続され、上記静電容量方式のタッチパネルを操作できれば特に限定されるものではないが、例えば、上記マニキュアと人体とが、30mm2程度の接触面積を有していることが好ましい。上記マニキュアと人体との接触面積が上述した大きさであることにより、上記マニキュアが静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した際に、上記マニキュアを介して人体と静電容量方式のタッチパネルとが接続された状態となり、十分な反応がみられるからである。
なお、ここでの接触面積とは、甘皮や爪際の皮膚等とマニキュアとが接触している全面積を指す。
【0065】
B.静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先に塗布する方法
本発明のマニキュア液を、爪表面において、静電容量方式のタッチパネルと接触する部分に塗布する方法について、図を参照しながら説明する。
【0066】
図9は、本発明のマニキュア液を爪に塗布した指を示す概略断面図である。
本発明のマニキュア10は導電性を有するため、上記マニキュア液を塗布した爪7で静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した場合でも、上記静電容量方式のタッチパネルを操作することができるという効果を奏するものである。
このような効果を得るためには、上述したように、本発明のマニキュアが人体と接触して塗布されている必要があるが、これと同時に、静電容量方式のタッチパネルと接近、もしくは接触する爪先にも、本発明のマニキュア液が塗布されている必要がある。爪先が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触したときに、本発明のマニキュアを介して上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続された状態となり、電流が流れることで上記静電容量方式のタッチパネルが動作するからである。
【0067】
本発明において、静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先に、本発明のマニキュア液を塗布するとは、例えば、図9(a)に示すように、本発明のマニキュア10が爪7の先端部分まで塗布されていてもよいし、あるいは図9(b)に示すように、爪7の先端から裏面にかけて塗布されていてもよい。本発明においては、爪先端から裏面にかけて上記マニキュア液を塗布することが好ましい。本発明のマニキュア液が塗布された爪先が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した時、上記マニキュア液が塗布された爪先と上記静電容量方式のタッチパネルの表面との間に容量が発生し、その容量の変化によって接触位置が検知されるのだが、この時に発生する容量は、接触面積に比例する。そのため、上記静電容量方式のタッチパネルに接触する爪先端領域において、より広い領域に上記マニキュア液が塗布されていることが好ましいからである。
また、爪先の裏面にまでマニキュア液を塗布する行為は元々行われており、塗布したマニキュアを剥がれにくくする効果を有する。
ここでの裏面とは、図9(b)に示すように、裏面における爪先端領域のみであってもよいし、図示はしないが、裏面全体であってもよい。
なお、図9において説明していない符号については、図8と同様とすることができるので省略する。
【0068】
図10は、本発明のマニキュア液を爪に塗布した指を示す概略断面図である。
図10に示すように、本発明のマニキュア液を塗布してなるマニキュア10は、ベースコート11、ネイルカラー12およびトップコート13を包含するものである。
本発明のベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液を爪に塗布する場合には、それら全てのマニキュア液が静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先端領域まで塗布されていてもよいし、あるいは少なくとも1種類のみが静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先端領域まで塗布されていればよい。
例えば、図10(a)に示すように、ベースコート11およびネイルカラー12は爪7の先端を覆っておらず、トップコート13のみ爪7の先端まで覆っていてもよい。また、図10(b)に示すように、ネイルカラー12およびトップコート13は爪7の先端を覆っておらず、ベースコート11のみ爪7の先端まで覆っていてもよい。さらに、図10(c)に示すように、ベースコート11およびトップコート13は爪7の先端を覆っておらず、ネイルカラー12のみ爪7の先端まで覆っていてもよい。
【0069】
なお、図10(c)では、ネイルカラー12が爪7の一部のみを覆っているが、図10(c)に示すベースコート11、ネイルカラー12およびトップコート13は、どれも導電性を有する本発明のマニキュア10である。したがって、図10(c)のように、ネイルカラー12が爪7の一部のみを覆っていても、ネイルカラー12が静電容量方式のタッチパネルと接近、もしくは接触した際に、上記静電容量方式のタッチパネルは、上記ネイルカラー12と接触しているベースコート11およびトップコート13を介して人体と電気的に接続される。したがって、本発明のベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、およびトップコート用マニキュア液を使用する際には、上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが電気的に接続されるように塗布すればよく、全てのマニキュア液を爪表面の全面に塗布する必要はなく、デザインや目的に応じて適宜調整することが可能である。
【0070】
C.マニキュア液の塗布方法
上述したように、本発明のマニキュア液の塗布方法は、静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続された状態となれば特に限定されるものではなく、デザイン等に応じて適宜選択されるものである。
【0071】
また、爪表面にベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液を塗布する際、本発明においては、ベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液のうち、少なくとも一つが導電性を有する本発明のマニキュア液であればよい。
図11は、ベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液のうち、一つのみが導電性を有する場合のマニキュア液の塗布方法を示す概略断面図である。
まず、図11(a)は、ベースコート11のみが導電性を有する場合を示す。この場合、導電性を有するベースコート11が人体(ここでは甘皮8)と接触しており、さらに静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分が上記ベースコート11で覆われている。したがって、ベースコート11上のネイルカラー12およびトップコート13が導電性を有していなくても、導電性を有する本発明のベースコート11が人体と接触し、かつ静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分を覆っていることにより、爪先が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した際に、指と同様に操作することが可能となる。
次に図11(b)は、ネイルカラーのみが導電性を有する場合を示す。この場合、上述した図11(a)と同様に、導電性を有するネイルカラー12が人体(ここでは甘皮8)に接触しており、さらに静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分を上記ネイルカラー12が覆っている。したがって、図11(b)に示す場合においても、本発明の効果が得られる。
また、図11(c)は、トップコートのみが導電性を有する場合を示す。この場合、上述した図11(a)、(b)と同様に、導電性を有するトップコート13が人体(ここでは甘皮8)に接触しており、さらに静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分を上記トップコート13が覆っている。したがって、図11(c)に示す場合においても、本発明の効果が得られる。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0074】
[実施例1]
(マニキュア混合液の調製)
下記に示す材料を混合して、マニキュア混合液とした。
ニトロセルロース 15.0重量%
アルキッド樹脂 8.0重量%
フタル酸ジプチル 4.0重量%
酢酸ブチル 30.0重量%
酢酸エチル 12.0重量%
エタノール 6.0重量%
ブタノール 3.0重量%
トルエン 22.0重量%
【0075】
(マニキュア液の調製)
次いで、上記マニキュア混合液に、導電性材料としてAg金属粉末を45重量%添加してマニキュア液とした。
【0076】
(抵抗値の測定)
マニキュアの抵抗値を、4端子測定方式LCRメータ ロレスタGP MCP−T610型(株式会社 三菱化学アナリテック)を用いて測定した。
まず、上記マニキュア液を非導電性のガラス基板上に膜厚6〜8μmに均一に塗布し、上記装置の接触端子(プローブ)4本をガラス基板上に均一に塗布されたマニキュアに接触させ、抵抗値を確認した。
【0077】
(静電容量方式のタッチパネルの操作性の確認)
次に、上記マニキュア液が、静電容量方式のタッチパネルを操作することができる程度の導電性を有するか否かについての確認を行った。
まず、上記マニキュア液を、15mm×50mmの非導電性ガラス基板上に、膜厚6〜8μmとなるように均一に塗布した。その際、上記マニキュアと静電容量方式のタッチパネルとの接触面積を確保するために、上記非導電性ガラス基板の表面全面と、裏面先端部分8mm(タッチパネルとの接触部)と、表面および裏面の塗布領域を繋ぐ非導電性ガラス基板の側面と、に上記マニキュア液を塗布した。
なお、静電容量方式のタッチパネルの操作性の確認の際には、人体と上記マニキュアとに30mm2程度の接触面をもたせ、上記マニキュアが静電容量方式のタッチパネルに接近または接触した際に、上記マニキュアを介して静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続されるような状態とした。
その後、投影型静電容量タッチパネルセンサー 評価用キット(シナプティクス社)を用いて、上記マニキュアが静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した時の信号レベルを評価し、上記マニキュアが上記静電容量方式のタッチパネルの接触認識水準を満たすかどうかを判定した。上記マニキュアと静電容量方式のタッチパネルとの接触面積は、8mmφの円形領域程度であった。なお、今回用いた静電容量方式のタッチパネルは、動作するのに1pf弱の容量形成が必要であった。
【0078】
[実施例2]
導電性材料としてAg金属粉末を、マニキュア液に対して36重量%を添加したこと以外は、実施例1と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1と同様の評価を行った。
【0079】
[実施例3]
導電性材料としてAu金属粉末を、マニキュア液に対して50重量%を添加したこと以外は、実施例1〜実施例2と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例2と同様の評価を行った。
【0080】
[実施例4]
導電性材料としてITO粉末を、マニキュア液に対して80重量%を添加したこと以外は、実施例1〜実施例3と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例3と同様の評価を行った。
【0081】
[実施例5]
導電性材料としてITO粉末を、マニキュア液に対して10重量%を添加したこと以外は、実施例1〜実施例4と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例4と同様の評価を行った。
【0082】
[実施例6]
導電性材料としてITO粉末をマニキュア液に対して40重量%、およびIZO粉末をマニキュア液に対して40重量%添加したこと以外は、実施例1〜実施例5と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例5と同様の評価を行った。
【0083】
[実施例7]
導電性材料として導電性ポリマーを、マニキュア液に対して90重量%添加したこと以外は、実施例1〜実施例6と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例6と同様の評価を行った。
【0084】
[比較例]
マニキュア液が導電性材料を有さないこと以外は実施例1〜実施例7と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例7と同様の評価を行った。
【0085】
[評価結果]
マニキュア液の抵抗値が2.10×102Ω以下である場合に、マニキュアによる静電容量方式のタッチパネルの操作が可能であることを確認した。
導電性材料の含有量に基づく実施例1〜7および比較例の抵抗値、最大検出反応値および判定結果を、表1に示す。
また、最大検出反応値の測定結果を図12に示す。
なお、静電容量方式のタッチパネルが反応する程度の最大検出反応値を示す場合には判定結果を「○」とし、最大検出反応値がそれに満たない場合には判定結果を「×」とした。
【0086】
【表1】
【符号の説明】
【0087】
1 … 静電容量方式のタッチパネル
2 … 透明基板
3 … 透明電極層
31、32… 第1透明電極層、第2透明電極層
31X、32Y …透明電極
4 … 保護カバー
5X、5Y… X座標検出用導電部、Y座標検出用導電部
6 … 透明導電膜
61 … 電極
7 … 爪
8 … 甘皮
9B … 爪裏の皮膚
9S … 爪際の皮膚
10 … マニキュア
11 … ベースコート
12 … ネイルカラー
13 … トップコート
100 … 指
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布することで爪先による静電容量方式のタッチパネル操作が可能なマニキュア液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マニキュアは装飾を目的とした化粧品として、女性の間で広く用いられている。また、マニキュアには、爪の割れ防止や爪の健康維持を目的としたベースコートと呼ばれるものがあり、このようなマニキュアは女性のみならず男性のスポーツ選手の間でも広く用いられている。その他にも、色調を派手にしたりデザインを描くためのネイルカラーや、ネイルカラーを塗布した爪の表面を保護するためのトップコート等があり、用途によって適宜使い分けられている。
最近では、色だけではなく、パールやラメが混ぜ込まれたもの、速乾性に優れたもの、剥がして除去できるもの等、様々な種類のマニキュアが販売されており(特許文献1、2参照)、マニキュアによって爪を装飾する女性が増えている。また、マニキュアによる装飾に伴って、爪を長く伸ばす女性も増えているのが現状である。
【0003】
ところで、近年、我々が身近に使用している携帯電話やスマートフォン、銀行や金融機関のATM、自動販売機(自動券売機)等には、画面に触れることで操作できるタッチパネルが用いられている。タッチパネルは、電圧や超音波、光などを検出することで動作するものであり、その原理は様々である。具体的には、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、光学方式、電磁誘導方式などのタッチパネルがある。このうち、静電容量方式のタッチパネルは、画面に触れることで生じるタッチパネル表面の電荷の容量変化を検知して位置を認識し、動作するものである。
【0004】
静電容量方式のタッチパネルには、表面型と投影型との2種類の検出方式があり、それぞれ構造が異なる。
以下、図を参照しながら説明する。
【0005】
図1は、一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。
投影型静電容量方式のタッチパネル1は、透明基板2と、上記透明基板2上に配置された透明電極層3を有しており、上記透明電極層3上には保護カバー4を有している。また、投影型静電容量方式のタッチパネル1を構成する上記透明電極層3は、第1の透明電極層31および第2の透明電極層32から構成される。
【0006】
図2は、一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明電極層の一例を示す概略平面図である。上記透明電極層3は、上述したように上記第1の透明電極層31および上記第2の透明電極層32からなるものであり、上記第1の透明電極層31にはX方向の座標を検出するための透明電極31XがX方向に複数分離されて形成されており、一方、上記第2の透明電極層32にはY方向の座標を検出するための透明電極32YがY方向に複数分離されて形成される。各透明電極を複数分離して形成するのは、位置検出の精度を高めるためである。なお、図2に示す各透明電極は菱形電極であるが、その他にも田形電極等がある。
また、X方向またはY方向に形成された上記透明電極31Xおよび上記透明電極32Yは、それぞれX座標検出用導電部5XおよびY座標検出用導電部5Yに接続され、上記X座標検出用導電部5XおよびY座標検出用導電部5Yは、図示はしないが、スイッチング回路や検出回路等に接続される。上記X座標検出用導電部5XおよびY座標検出用導電部5Yは、それぞれ上記透明電極31Xと上記透明電極32Yとに所定の電圧を印加するための電極として機能し、スイッチング回路の切り替えにより透明電極31Xと透明電極32Yとのいずれか一方に選択的に電圧を印加することができる。
【0007】
図3は、投影型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
上述したように、電圧が印加された透明電極層3の表面には電界が形成され、この状態で指100が投影型静電容量方式のタッチパネルに近づくと、指100と透明電極との間の静電容量が増加する。X座標用導電部およびY座標用導電部のどの位置の静電容量が増加しているのかを検出することで、接触位置の座標を求めることができる。
【0008】
上記投影型静電容量方式のタッチパネルは、その検出方式から多点検知が可能である。そのため、現在では幅広い分野で用いられている。
【0009】
次に、図4は、一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。表面型静電容量方式のタッチパネル1は、透明基板2と、上記透明基板2上に配置された透明導電膜6と、上記透明導電膜6上に配置された保護カバー4を有するものである。
【0010】
図5は、一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明導電膜の一例を示す概略平面図である。上記透明導電膜6は、四隅に電極61があり、これらの電極によって上記透明導電膜6の表面には電界が形成されている。
【0011】
図6は、表面型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
図6に示すように、指100が表面型静電容量方式のタッチパネル1に接触すると、四隅の電極から指100を通じて微弱な電流が流れる。このとき、指100が触れた位置に近い電極ほど電流量が増加するため、四隅から流れた電流量の比率を算出することで、指100が触れた位置を検出することができる。
なお、説明してない符号については、図4と同様とすることができるので省略する。
【0012】
このように、静電容量方式のタッチパネルは、画面を押し込むことで動作する抵抗膜方式のタッチパネルとは異なり、容量の変化等によって動作するので、画面に接近、もしくは接触するだけで軽快に動作することができる。その結果、画面をなぞってページ送りする操作、また画面を叩いてキー入力する操作が可能となり、現在、静電容量方式のタッチパネルは携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末等に採用されている。また、上記静電容量方式のタッチパネルは、抵抗膜方式に比べて透過率が高いため画面がクリアである。さらに、静電容量方式のタッチパネルは、表面にガラス等の保護カバーを設けることができるので、傷に強く、耐久性や耐環境性に優れている。
【0013】
しかしながら、爪の装飾に伴って爪を伸ばす女性が急増している中、指でタッチパネルに接近、もしくは接触することが困難となり、静電容量方式のタッチパネルを操作できないといった問題があった。静電容量方式のタッチパネルが指以外に反応しないのは、静電容量方式のタッチパネルは、人体をグラウンドと仮定し、指が静電容量方式のタッチパネルに近づくと、その領域に対応する透明電極または透明導電膜表面の静電容量が変化し、その静電容量の変化によって指が接近、もしくは接触した位置を検出して動作しているからである。すなわち、静電容量方式のタッチパネルを操作できるのは、指または指と同等の静電的な導電性を有するものである。
【0014】
このような問題を解決する方法として、指の代わりに専用のスタイラスペン等の道具を用いて操作する方法があるが(特許文献3参照)、携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末等と共にスタイラスペンを持ち歩く必要があり、また片手での操作が困難等といった問題がある。そのため、さらなる解決方法が求められている。
【0015】
以上のように、マニキュア等の装飾をし、携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末等に搭載されている静電容量方式のタッチパネルを指で操作するのが困難な場合でも、静電容量方式のタッチパネルを専用の道具を使わずに容易に操作できる方法の開発が求められている。
【0016】
さらに現在では、小型化された静電容量方式のタッチパネルが多く、それに伴い入力ボタン等も小さい場合が多い。そのため、指による入力の際に誤入力や誤操作等の問題もあり、爪先によって正確に操作できる方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−326911号公報
【特許文献2】特開2006−312596号公報
【特許文献3】特開2010−3279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、爪に塗布することで、静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが可能なマニキュア液を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とするマニキュア液を提供する。
【0020】
本発明によれば、マニキュア液が導電性材料を有することにより、上記マニキュア液を塗布した爪が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触すると、指が接近、もしくは接触した時と同様に、静電容量方式のタッチパネルと上記マニキュア液を塗布した爪との間で静電容量が増加する。つまり、上記静電容量方式のタッチパネルおいて、上記マニキュア液を塗布した爪先が接近、もしくは接触した領域に対応する電極の静電容量が変化する。その静電容量の変化によって上記静電容量方式のタッチパネルは、爪先が接近、もしくは接触した領域を認識することができ、指が接近、もしくは接触した時と同様の動作をすることが可能となる。
また、従来、小型化された静電容量方式のタッチパネルでは、入力ボタン等も小さくなるため、指での操作が困難であり、スタイラスペン等の専用のペンを用いることが求められる。しかし、本発明のマニキュア液を爪に塗布することで、爪先での操作が可能となるため、小型化された静電容量方式のタッチパネルの入力ボタンを誤操作なくタッチでき、その結果、容易かつ正確な入力操作が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、爪に塗布することで静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが可能となるマニキュア液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。
【図2】一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明電極層の一例を示す概略平面図である。
【図3】一般的な投影型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
【図4】一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルの一例を示す概略斜視図である。
【図5】一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルを構成する透明導電膜の一例を示す概略平面図である。
【図6】一般的な表面型静電容量方式のタッチパネルの動作原理の一例を示す概略図である。
【図7】本発明のマニキュア液の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略図である。
【図9】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明のマニキュア液の他の例を示す概略断面図である。
【図12】実施例の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.マニキュア液
本発明のマニキュア液について説明する。
本発明のマニキュア液は、爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とする。
なお、本発明におけるマニキュア液とは、爪に塗布する前の液状のものを指し、また、マニキュアとは、マニキュア液を爪に塗布してなる塗膜を指す。
【0024】
一般的なマニキュア液は、爪に塗布して乾かし、爪の表面を保護することで爪割れ等を防止する機能を有するものである。また、上述した保護機能の他に、鮮やかな色調やデザインを描くことで爪表面に美粧的効果を持たせる機能を有するものである。
以下、図を参照しながら説明する。
【0025】
図7は、本発明のマニキュア液を説明する概略断面図である。図7に示すように、本発明で称するマニキュア液を塗布してなるマニキュア10は、ベースコート用マニキュア液を塗布してなるベースコート11、ネイルカラー用マニキュア液を塗布してなるネイルカラー12、トップコート用マニキュア液を塗布してなるトップコート13を包含するものである。
ベースコート用マニキュア液とは、爪の健康を維持する目的として用いられるものであり、ネイルカラーの下地として用いる場合が多い。そのため、上記ベースコートの表面にネイルカラー用マニキュア液を塗布した際に、ネイルカラー用マニキュア液が有する色調に影響を与えないような無色または淡色のものが一般的である。
また、ネイルカラー用マニキュア液とは、一般的に、装飾を目的として用いられるものであるため、比較的有色のものが多く、色調も様々である。また、ネイルカラー用マニキュア液以外にも、ネイルポリッシュ用マニキュア液、ネイルエナメル用マニキュア液、ネイルラッカー用マニキュア液等と呼ばれることがある。
さらに、トップコート用マニキュア液とは、保護膜としての機能を有するものであり、ネイルカラーの上に塗布して用いられることが多い。そのため、ネイルカラー用マニキュア液を塗布した上から上記トップコート用マニキュア液を塗布する際に、ネイルカラー用マニキュア液が有する色調に影響を与えない無色または淡色のものが一般的である。
【0026】
ところで、従来、爪の装飾に伴って爪を伸ばした際に、静電容量方式のタッチパネルに指を接近、もしくは接触させることが困難であり、かつ上記静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが困難であるといった問題があった。
本発明によれば、マニキュア液が導電性材料を有することにより、上記マニキュア液を塗布した爪が上記静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触すると、指が接近、もしくは接触した時と同様に、静電容量方式のタッチパネルと上記マニキュア液を塗布した爪との間で静電容量が増加する。つまり、上記静電容量方式のタッチパネルおいて、上記マニキュア液を塗布した爪先が接近、もしくは接触した領域に対応する透明電極または透明導電膜表面の容量が変化し、その容量の変化によって爪が接近、もしくは接触した領域を認識することができる。このように、本発明のマニキュア液を爪に塗布することで、指が接近、もしくは接触した時と同様に、上記静電容量方式のタッチパネルを爪先で操作することが可能となる。
また、従来、小型化された静電容量方式のタッチパネルでは、入力ボタン等も小さいため、指での操作が困難であり、スタイラスペン等の専用のペンを用いることが求められる。しかし、本発明のマニキュア液を爪に塗布することで、爪先での操作が可能となるため、小型化された静電容量方式のタッチパネルの入力ボタンを誤操作なくタッチでき、その結果、容易かつ正確な入力操作が可能となる。
以下、本発明のマニキュア液の構成成分について説明する。
【0027】
本発明のマニキュア液は、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性材料を有するものであれば特に限定されるものではない。一般的なマニキュア液の構成成分としては、例えば、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤等が挙げられ、これらの構成成分として導電性材料を含有させてマニキュア液に導電性を付与してもよいし、あるいは導電性付与のためのみの添加剤として導電性材料をマニキュア液に含有させてマニキュア液に導電性を付与してもよい。
以下、本発明に用いられる導電性材料およびマニキュア液の構成成分について説明する。
【0028】
A.導電性材料
本発明における導電性材料としては、マニキュア液に含有させることで、上記マニキュア液を塗布した爪先で静電容量方式のタッチパネルが操作できるものであれば特に限定されるものではない。
【0029】
本発明における導電性材料は、マニキュア液の構成成分である着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤、またはその他の添加剤として導電性材料が含有されていてもよく、あるいは導電性付与のためのみの添加剤として導電性材料がマニキュア液に含有されていてもよい。本発明においては、マニキュア液に導電性付与のためのみの添加剤として導電性材料が含有されていることが好ましい。
【0030】
本発明において、静電容量方式のタッチパネルを操作することができる程度の導電性とは、静電容量方式のタッチパネルの種類や大きさ等によって異なるものであるが、例えば、人の指表面と同等の抵抗値を有していれば特に限定されない。本発明のマニキュア液を爪表面に塗布した際のマニキュアの抵抗値としては、例えば、2.10×102Ω以下であることが好ましい。
【0031】
なお、上記抵抗値は、4端子測定方式LCRメータ ロレスタGP MCP−T610型(株式会社 三菱化学アナリテック)を用いて測定した値である。
【0032】
このような導電性材料の形態としては、マニキュア液に添加することによって所望の導電性を付与することができれば特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、液状、ジェル状、繊維状等の形態の導電性材料が挙げられる。
具体的な導電性材料としては、例えば、導電性顔料、導電性染料が挙げられる。
また、粉末状の導電性材料としては、スズ系酸化物、スズ−アンチモン系酸化物、酸化チタン/スズ−アンチモン系酸化物、インジウム−スズ系酸化物等が挙げられる。また、Al、Ag、Au、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Sn、W、亜鉛等の金属を用いることも可能である。上記金属粉末をマニキュア液に用いた場合には、マニキュア液に導電性を付与するとともに、マニキュア液を着色し、ラメを加えたような光沢感を与えることができる。
液状の導電性材料としては、例えば、スズ−アンチモン系酸化物塗料/分散液、インジウム−スズ系酸化物塗料/分散液等が挙げられる。
ジェル状の導電性材料としては、例えば、ポリアセチレン、p−フェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、PVC系ポリマーとブタジエン(BD)−アクリロニトリル(AN)系コポリマー混合物、グラフトコポリマー、BD−AN−塩化ビニルターポリマー、PVC−ポリウレタングラフトコポリマー、スチレン−ジエン−ピロール系タポリマー等の導電性ポリマー、ポリアセチレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体等が挙げられる。
繊維状の導電性材料としては、例えば、ポリアミド系熱可塑性重合体からなる導電ポリマー層と繊維形成性熱可塑性重合体からなる保護ポリマーとを有する白色系導電繊維を挙げることができる。
上述した他にも、コロイドや微細粒子等の形態の導電性材料を用いることも可能である。
【0033】
また、上述したように、材料自体が導電性を有している導電性材料の他にも、非導電性材料に導電性付与物質を添加してなる導電性材料等が挙げられる。
非導電性材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の一般的なポリマーが挙げられる。
導電性付与体としては、Al、Ag、Au、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Pd、Pt、Sn、W、亜鉛等の金属粉末や、ZnO、SnO2等の金属酸化物、ステンレス等の金属繊維またはウェイスカー等の金属分散系が挙げられる。また、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックや、PAN系、ピッチ系等の炭素の炭素繊維や、天然物、人工物等の黒鉛系分散剤等が挙げられる。さらに、ガラスビーズや合成繊維等が挙げられる。
【0034】
このように、本発明に用いられる導電性材料としては、上記マニキュア液に所望の導電性を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、本発明のマニキュア液を構成する皮膜形成成分として用いることができる導電性材料であってもよい。
また、上記導電性材料としては、導電性を有する金属粉末、顔料、染料、高分子材料を適宜選択し、必要に応じて複数を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
上記導電性材料が有する色調としては、本発明のマニキュア液の色調やその用途等によって適宜選択されるものであり、特に限定されない。導電性材料の色調としては、例えば、透明、白色等の淡色、黄色、茶色、青色等が挙げられる。本発明においては、ベースコート用マニキュア液やトップコート用マニキュア液に用いられる場合には、透明や白色等の淡色を呈する導電性材料であることが好ましく、ネイルカラー用マニキュア液に用いる場合には、そのネイルカラー用マニキュア液が有する色調に影響を与えないような導電性材料であることが好ましい。
【0036】
上記導電性材料の添加量としては、上記マニキュア液に所望の導電性を付与することができる程度であれば特に限定されるものではないが、添加量が少なすぎると上記マニキュア液を塗布した爪でタッチパネルを操作することが困難となる場合があり、また、金属粉末等の有色の導電性材料の添加量が多すぎると、マニキュアとしての見栄えが悪くなり、装飾機能が低下する場合がある。
【0037】
B.マニキュア液の構成成分
本発明のマニキュア液としては、導電性材料を用いることで所望の導電性を示すマニキュア液とすることができれば特に限定されるものではない。
本発明のマニキュア液を構成する成分としては、例えば、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤、等が挙げられる。これらの成分は、ネイルカラー用マニキュア液、ベースコート用マニキュア液、トップコート用マニキュア液等のマニキュア液の種類や目的に応じて適宜調整されるものである。
以下、マニキュア液の構成成分について、ネイルカラー用マニキュア液とベースコート用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液等のコート剤との場合に分けて説明する。
【0038】
1.ネイルカラー用マニキュア液の構成成分
本発明のネイルカラー用マニキュア液の構成成分は、色調や光沢等に応じて適宜調整されるものであるが、一般的なネイルカラー用マニキュア液は、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤を溶剤に混合して溶解させたものである。
以下、着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤についてそれぞれ説明する。
【0039】
(1)着色成分
本来ネイルカラー用マニキュア液は、爪に装飾を施す目的を有するものであり、赤、青、緑、黄等の色調や、白、黒の明度、分光色、干渉色の飾色等、様々な色調のネイルカラー用マニキュア液が販売されている。本発明においても、上記ネイルカラー用マニキュア液の構成成分として着色成分を用いることで、様々な色調の導電性を有する本発明のネイルカラーを製造することが可能である。
【0040】
上記着色成分としては、本発明のネイルカラー用マニキュア液を所望の色調にすることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料、金属箔、プラスチック箔、魚鱗、マイカ類粉、蛍光色素等が挙げられる。
なお、本発明においては、上述した成分を1種で用いてもよいし、または複数種を混合して用いてもよい。
【0041】
本発明のネイルカラー用マニキュア液における上記着色成分の含有量としては特に限定されるものではなく、着色成分の種類や目的の色調等によって適宜調整されるものである。
なお、上記着色成分は、本発明のマニキュア液において必須の構成成分ではない。
【0042】
(2)皮膜形成成分
本発明のネイルカラー用マニキュア液を構成する皮膜形成成分としては、一般的にニトロセルロースが用いられる。ニトロセルロースは、強度が高く、速乾性に優れているからである。また、上記ニトロセルロース以外には、アセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等を用いることができる。
【0043】
(3)樹脂成分
上記皮膜形成成分の物性に柔軟性、密着性、光沢性等の特性を付与するために、上述した材料の他に樹脂成分を添加してもよい。
【0044】
このような樹脂成分としては、例えば、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニール樹脂、スチレン樹脂、マレイン酸樹脂、またはその変性樹脂、それらのコポリマー等が挙げられる。
また、天然樹脂としては、ダンマー、セラック、チクロ等が挙げられる。
【0045】
(4)油脂成分
上記皮膜形成成分の物性に除去性、修復性等の特性を付与し、また構成成分の相溶性を付与するために、上述した材料の他に油脂成分を添加してもよい。
【0046】
このような油脂成分としては、例えば、パラフィン、ワックス、脂肪酸またはそのグリセライド、高級脂肪族アルコール、カルバナロウ、ミツロウ、シリコーンワックス等が挙げられる。
【0047】
上記油脂成分の配合により、溶媒による皮膚や爪の過度の脱脂を予防できるという効果が得られる。
【0048】
(5)可塑剤
上記皮膜形成成分の物性に柔軟性を付与し、皮膜のひび割れ、剥離を防ぐために、上述した材料の他に可塑剤を添加してもよい。
【0049】
このような可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、アジピン酸ジイソオクチル、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジベンジル、トリアセチン乳酸ジセチル(DCM)等が挙げられる。
なお、上記皮膜形成成分であるニトロセルロースに対しては、1、7、7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(カンファー)が特有の可塑剤として用いられる。
【0050】
(6)溶剤
上記ネイルカラー用マニキュア液の構成成分である溶剤は、上記ネイルカラー用マニキュア液の構成成分である上述した材料を均一に溶解させるためのものである。
また、上記溶剤としては、各材料の均等溶解性の他に、塗膜の乾燥速度、展延性、平滑仕上がり、使用感、匂い等について検討し、適宜調整されるものである。
【0051】
このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、ギ酸メチル、炭酸ジメチル、エチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアルコール、イソペンタン、シクロペンタン、石油エーテル等の沸点が100℃以下の低沸点溶剤、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトンル、セロソルブ、セロソルブアセテート、シクロヘキサノン、フルフラール、ブチルアルコール、アミルアルコール、トルエン、ソルベントナフサ等の沸点が100℃〜150℃の範囲内の中沸点溶剤、ジアセトンアルコール、ペンジルアルコール、カルビトール、乳酸ブチル、安息香酸エチル、デカリン、高溶解ナフサ、パイン油、テレピン油等の沸点が150℃〜180℃の範囲内の高沸点溶剤が挙げられる。
【0052】
(7)その他の添加剤
本発明のネイルカラー用マニキュア液の構成成分としては、上述した着色成分、皮膜形成成分、樹脂成分、油脂成分、可塑剤、溶剤以外にも、その他の添加剤として粉末剤、糊剤、界面活性剤、安定剤、酸アルカリ剤、隠蔽剤、光沢剤、香料の一種また二種以上が挙げられ、用途や目的に応じて適宜選択される。
【0053】
2.ベースコート用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液の構成成分
本発明のベースコート用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液の構成成分は、密着性や光沢等に応じて適宜調整されるものであり、上記ネイルカラー用マニキュア液と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
但し、ベースコート用マニキュア液とトップコート用マニキュア液の場合は、その目的に合致させるために構成成分の配合組成は若干異なる。
以下、ベースコート用マニキュア液とトップコート用マニキュア液とに分けて説明する。
【0054】
(1)ベースコート用マニキュア液
一般的なベースコート用マニキュア液は、爪の健康を維持し、爪割れを防止すること等を目的として用いられるものであり、爪に直接塗布して用いる。また、ベースコート用マニキュア液を塗布した上からネイルカラー用マニキュア液を塗布する場合が多々ある。そのため、爪およびネイルカラー用マニキュア液との密着性が高いものが好ましい。
【0055】
本発明のベースコート用マニキュア液は、例えば、マニキュア液の構成成分である皮膜形成成分として硝化度が12のニトロセルロースを用いることが好ましい。
【0056】
また、樹脂成分の配合量をネイルカラー用マニキュア液等に比べてやや増やし、中沸点溶剤の配合量を増加させることが好ましい。塗膜の密着性を向上させることができるからである。
【0057】
(2)トップコート用マニキュア液
一般的なトップコート用マニキュア液は、ネイルカラー用マニキュア液等の装飾を施した爪表面に傷等が付かないよう保護することを目的として用いられるものであり、ネイルカラー用マニキュア液等の上から塗布して用いる。そのため、トップコート用マニキュア液を塗布することにより、塗面を堅くできるものが好ましい。
【0058】
本発明のトップコート用マニキュア液は、例えば、マニキュア液の構成成分である皮膜形成成分として硝化度11のニトロセルロースを用いることが好ましい。塗面を堅くすることができるからである。
【0059】
II.マニキュア液の塗布方法
本発明のマニキュア液の塗布方法について説明する。
本発明のマニキュア液は、静電容量方式のタッチパネルの表面を、上記マニキュア液を塗布した爪先が接触した際に、爪表面に塗布された上記マニキュア液を介して、上記静電容量方式のタッチパネルにおける接触位置と人体とを接続し、上記静電容量方式のタッチパネルを動作させる効果を有するものである。
上記効果を得るためには、まず本発明のマニキュア液と人体とが接触するように上記マニキュア液を塗布することが必要であり、さらに上記静電容量方式のタッチパネルの表面に爪先が接触したときの爪先の接触面にマニキュア液を塗布することが必要である。
なお、この際、上記静電容量方式のタッチパネルに接近または接触する爪先部分に塗布されたマニキュア液と、人体に接触するように塗布されたマニキュア液とが、それぞれ導通している必要がある。そのため、上記マニキュア液を、上記爪先部分から上記マニキュア液と人体とが接触する部分にかけて、一続きに塗布することが必要である。
以下、本発明のマニキュア液を人体と接触するように塗布する方法と、上記マニキュア液を静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分に塗布する方法とに分けて詳しく説明する。
【0060】
A.人体と接触させて塗布する方法
本発明のマニキュア液を人体と接触させて塗布する方法について、図を参照しながら説明する。
【0061】
図8(a)は、本発明のマニキュア液を爪表面に塗布した指を示す概略図である。図8(b)は、図8(a)のA−A線断面図であり、図8(c)は図8(a)のB−B線断面図である。
図8(a)に示すように、本発明のマニキュア液を塗布してなるマニキュア(以下、単にマニキュアと称して説明する場合がある。)10は、爪7の表面に塗布するものであり、また上記マニキュア液が塗布された爪先で静電容量方式のタッチパネルを操作することができるという効果を奏するものである。
このような効果を得るためには、上記マニキュア液を爪表面に塗布する際に、上記マニキュアと爪以外の人体の一部が接触している必要がある。静電容量方式のタッチパネルの表面に、本発明のマニキュア液が塗布された爪先が接近、もしくは接触した際、上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが上記マニキュアを介して接続された状態となり、電流が流れることで上記静電容量方式のタッチパネルが動作するからである。
【0062】
本発明において、上記マニキュアと人体とが接触しているとは、上記マニキュア液を爪の表面に塗布した際に、上記マニキュアが爪の周囲の皮膚に少なくとも一か所が触れていることを指す。
例えば、図8(a)、(b)の点線で囲った領域に示すように、指100における甘皮8と上記マニキュア10とが接触するように塗布されている状態である。なお、甘皮とは、爪半月を保護するための皮膚であり、また上記爪半月とは、爪の生え際にあって、爪を作り出す部分である。
また、図8(b)に示すように、爪7の裏面であって、爪7と皮膚との境目にある爪裏の皮膚9Bに、上記マニキュア10が接触して塗布されていてもよく、あるいは、図8(c)に示すように、爪7の長さ方向に平行し、爪7と皮膚との境目にある爪際の皮膚9Sに、上記マニキュア10が接触して塗布されていてもよい。
【0063】
また、本発明のマニキュア液であるベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液の全てを爪に塗布する場合の塗布方法としては、少なくとも人体と静電容量方式のタッチパネルとが本発明のマニキュアによって接続されていれば特に限定されるものではない。
図7は、爪7表面に導電性を有するベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液が塗布された指を示す概略断面図である。図7に示すように、ベースコート用マニキュア液が塗布されてなるベースコート(以下、単にベースコートと称して説明する場合がある。)11、ネイルカラー用マニキュア液が塗布されてなるネイルカラー(以下、単にネイルカラーと称して説明する場合がある。)12およびトップコート用マニキュア液が塗布されてなるトップコート(以下、単にトップコートと称して説明する場合がある。)13が全て人体と接触して塗布されていてもよいし、また、図示はしないが、ベースコート、ネイルカラーおよびトップコートのうちの1種もしくは2種が人体と接触するように塗布されていてもよい。本発明においては、中でも、本発明のマニキュアを人体と確実に接触させるという観点から、爪表面に塗布した本発明のマニキュアが全て人体と接触していることが好ましい。
【0064】
このように、本発明のマニキュア液を人体と接触させて塗布する際、上記マニキュアと人体、すなわち甘皮や爪際の皮膚等とが接触する面積としては、静電容量方式のタッチパネルと爪に塗布された上記マニキュアとが接触することで、上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続され、上記静電容量方式のタッチパネルを操作できれば特に限定されるものではないが、例えば、上記マニキュアと人体とが、30mm2程度の接触面積を有していることが好ましい。上記マニキュアと人体との接触面積が上述した大きさであることにより、上記マニキュアが静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した際に、上記マニキュアを介して人体と静電容量方式のタッチパネルとが接続された状態となり、十分な反応がみられるからである。
なお、ここでの接触面積とは、甘皮や爪際の皮膚等とマニキュアとが接触している全面積を指す。
【0065】
B.静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先に塗布する方法
本発明のマニキュア液を、爪表面において、静電容量方式のタッチパネルと接触する部分に塗布する方法について、図を参照しながら説明する。
【0066】
図9は、本発明のマニキュア液を爪に塗布した指を示す概略断面図である。
本発明のマニキュア10は導電性を有するため、上記マニキュア液を塗布した爪7で静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した場合でも、上記静電容量方式のタッチパネルを操作することができるという効果を奏するものである。
このような効果を得るためには、上述したように、本発明のマニキュアが人体と接触して塗布されている必要があるが、これと同時に、静電容量方式のタッチパネルと接近、もしくは接触する爪先にも、本発明のマニキュア液が塗布されている必要がある。爪先が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触したときに、本発明のマニキュアを介して上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続された状態となり、電流が流れることで上記静電容量方式のタッチパネルが動作するからである。
【0067】
本発明において、静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先に、本発明のマニキュア液を塗布するとは、例えば、図9(a)に示すように、本発明のマニキュア10が爪7の先端部分まで塗布されていてもよいし、あるいは図9(b)に示すように、爪7の先端から裏面にかけて塗布されていてもよい。本発明においては、爪先端から裏面にかけて上記マニキュア液を塗布することが好ましい。本発明のマニキュア液が塗布された爪先が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した時、上記マニキュア液が塗布された爪先と上記静電容量方式のタッチパネルの表面との間に容量が発生し、その容量の変化によって接触位置が検知されるのだが、この時に発生する容量は、接触面積に比例する。そのため、上記静電容量方式のタッチパネルに接触する爪先端領域において、より広い領域に上記マニキュア液が塗布されていることが好ましいからである。
また、爪先の裏面にまでマニキュア液を塗布する行為は元々行われており、塗布したマニキュアを剥がれにくくする効果を有する。
ここでの裏面とは、図9(b)に示すように、裏面における爪先端領域のみであってもよいし、図示はしないが、裏面全体であってもよい。
なお、図9において説明していない符号については、図8と同様とすることができるので省略する。
【0068】
図10は、本発明のマニキュア液を爪に塗布した指を示す概略断面図である。
図10に示すように、本発明のマニキュア液を塗布してなるマニキュア10は、ベースコート11、ネイルカラー12およびトップコート13を包含するものである。
本発明のベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液およびトップコート用マニキュア液を爪に塗布する場合には、それら全てのマニキュア液が静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先端領域まで塗布されていてもよいし、あるいは少なくとも1種類のみが静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先端領域まで塗布されていればよい。
例えば、図10(a)に示すように、ベースコート11およびネイルカラー12は爪7の先端を覆っておらず、トップコート13のみ爪7の先端まで覆っていてもよい。また、図10(b)に示すように、ネイルカラー12およびトップコート13は爪7の先端を覆っておらず、ベースコート11のみ爪7の先端まで覆っていてもよい。さらに、図10(c)に示すように、ベースコート11およびトップコート13は爪7の先端を覆っておらず、ネイルカラー12のみ爪7の先端まで覆っていてもよい。
【0069】
なお、図10(c)では、ネイルカラー12が爪7の一部のみを覆っているが、図10(c)に示すベースコート11、ネイルカラー12およびトップコート13は、どれも導電性を有する本発明のマニキュア10である。したがって、図10(c)のように、ネイルカラー12が爪7の一部のみを覆っていても、ネイルカラー12が静電容量方式のタッチパネルと接近、もしくは接触した際に、上記静電容量方式のタッチパネルは、上記ネイルカラー12と接触しているベースコート11およびトップコート13を介して人体と電気的に接続される。したがって、本発明のベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、およびトップコート用マニキュア液を使用する際には、上記静電容量方式のタッチパネルと人体とが電気的に接続されるように塗布すればよく、全てのマニキュア液を爪表面の全面に塗布する必要はなく、デザインや目的に応じて適宜調整することが可能である。
【0070】
C.マニキュア液の塗布方法
上述したように、本発明のマニキュア液の塗布方法は、静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続された状態となれば特に限定されるものではなく、デザイン等に応じて適宜選択されるものである。
【0071】
また、爪表面にベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液を塗布する際、本発明においては、ベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液のうち、少なくとも一つが導電性を有する本発明のマニキュア液であればよい。
図11は、ベースコート用マニキュア液、ネイルカラー用マニキュア液、トップコート用マニキュア液のうち、一つのみが導電性を有する場合のマニキュア液の塗布方法を示す概略断面図である。
まず、図11(a)は、ベースコート11のみが導電性を有する場合を示す。この場合、導電性を有するベースコート11が人体(ここでは甘皮8)と接触しており、さらに静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分が上記ベースコート11で覆われている。したがって、ベースコート11上のネイルカラー12およびトップコート13が導電性を有していなくても、導電性を有する本発明のベースコート11が人体と接触し、かつ静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分を覆っていることにより、爪先が静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した際に、指と同様に操作することが可能となる。
次に図11(b)は、ネイルカラーのみが導電性を有する場合を示す。この場合、上述した図11(a)と同様に、導電性を有するネイルカラー12が人体(ここでは甘皮8)に接触しており、さらに静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分を上記ネイルカラー12が覆っている。したがって、図11(b)に示す場合においても、本発明の効果が得られる。
また、図11(c)は、トップコートのみが導電性を有する場合を示す。この場合、上述した図11(a)、(b)と同様に、導電性を有するトップコート13が人体(ここでは甘皮8)に接触しており、さらに静電容量方式のタッチパネルと接触する爪先部分を上記トップコート13が覆っている。したがって、図11(c)に示す場合においても、本発明の効果が得られる。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0074】
[実施例1]
(マニキュア混合液の調製)
下記に示す材料を混合して、マニキュア混合液とした。
ニトロセルロース 15.0重量%
アルキッド樹脂 8.0重量%
フタル酸ジプチル 4.0重量%
酢酸ブチル 30.0重量%
酢酸エチル 12.0重量%
エタノール 6.0重量%
ブタノール 3.0重量%
トルエン 22.0重量%
【0075】
(マニキュア液の調製)
次いで、上記マニキュア混合液に、導電性材料としてAg金属粉末を45重量%添加してマニキュア液とした。
【0076】
(抵抗値の測定)
マニキュアの抵抗値を、4端子測定方式LCRメータ ロレスタGP MCP−T610型(株式会社 三菱化学アナリテック)を用いて測定した。
まず、上記マニキュア液を非導電性のガラス基板上に膜厚6〜8μmに均一に塗布し、上記装置の接触端子(プローブ)4本をガラス基板上に均一に塗布されたマニキュアに接触させ、抵抗値を確認した。
【0077】
(静電容量方式のタッチパネルの操作性の確認)
次に、上記マニキュア液が、静電容量方式のタッチパネルを操作することができる程度の導電性を有するか否かについての確認を行った。
まず、上記マニキュア液を、15mm×50mmの非導電性ガラス基板上に、膜厚6〜8μmとなるように均一に塗布した。その際、上記マニキュアと静電容量方式のタッチパネルとの接触面積を確保するために、上記非導電性ガラス基板の表面全面と、裏面先端部分8mm(タッチパネルとの接触部)と、表面および裏面の塗布領域を繋ぐ非導電性ガラス基板の側面と、に上記マニキュア液を塗布した。
なお、静電容量方式のタッチパネルの操作性の確認の際には、人体と上記マニキュアとに30mm2程度の接触面をもたせ、上記マニキュアが静電容量方式のタッチパネルに接近または接触した際に、上記マニキュアを介して静電容量方式のタッチパネルと人体とが接続されるような状態とした。
その後、投影型静電容量タッチパネルセンサー 評価用キット(シナプティクス社)を用いて、上記マニキュアが静電容量方式のタッチパネルに接近、もしくは接触した時の信号レベルを評価し、上記マニキュアが上記静電容量方式のタッチパネルの接触認識水準を満たすかどうかを判定した。上記マニキュアと静電容量方式のタッチパネルとの接触面積は、8mmφの円形領域程度であった。なお、今回用いた静電容量方式のタッチパネルは、動作するのに1pf弱の容量形成が必要であった。
【0078】
[実施例2]
導電性材料としてAg金属粉末を、マニキュア液に対して36重量%を添加したこと以外は、実施例1と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1と同様の評価を行った。
【0079】
[実施例3]
導電性材料としてAu金属粉末を、マニキュア液に対して50重量%を添加したこと以外は、実施例1〜実施例2と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例2と同様の評価を行った。
【0080】
[実施例4]
導電性材料としてITO粉末を、マニキュア液に対して80重量%を添加したこと以外は、実施例1〜実施例3と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例3と同様の評価を行った。
【0081】
[実施例5]
導電性材料としてITO粉末を、マニキュア液に対して10重量%を添加したこと以外は、実施例1〜実施例4と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例4と同様の評価を行った。
【0082】
[実施例6]
導電性材料としてITO粉末をマニキュア液に対して40重量%、およびIZO粉末をマニキュア液に対して40重量%添加したこと以外は、実施例1〜実施例5と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例5と同様の評価を行った。
【0083】
[実施例7]
導電性材料として導電性ポリマーを、マニキュア液に対して90重量%添加したこと以外は、実施例1〜実施例6と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例6と同様の評価を行った。
【0084】
[比較例]
マニキュア液が導電性材料を有さないこと以外は実施例1〜実施例7と同様にしてマニキュア液を調整し、実施例1〜実施例7と同様の評価を行った。
【0085】
[評価結果]
マニキュア液の抵抗値が2.10×102Ω以下である場合に、マニキュアによる静電容量方式のタッチパネルの操作が可能であることを確認した。
導電性材料の含有量に基づく実施例1〜7および比較例の抵抗値、最大検出反応値および判定結果を、表1に示す。
また、最大検出反応値の測定結果を図12に示す。
なお、静電容量方式のタッチパネルが反応する程度の最大検出反応値を示す場合には判定結果を「○」とし、最大検出反応値がそれに満たない場合には判定結果を「×」とした。
【0086】
【表1】
【符号の説明】
【0087】
1 … 静電容量方式のタッチパネル
2 … 透明基板
3 … 透明電極層
31、32… 第1透明電極層、第2透明電極層
31X、32Y …透明電極
4 … 保護カバー
5X、5Y… X座標検出用導電部、Y座標検出用導電部
6 … 透明導電膜
61 … 電極
7 … 爪
8 … 甘皮
9B … 爪裏の皮膚
9S … 爪際の皮膚
10 … マニキュア
11 … ベースコート
12 … ネイルカラー
13 … トップコート
100 … 指
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とするマニキュア液。
【請求項1】
爪表面に塗布された塗膜が、静電容量方式のタッチパネルが動作する程度の導電性を爪先に付与可能となる量の導電性材料を有することを特徴とするマニキュア液。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−75859(P2013−75859A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216664(P2011−216664)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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