説明

マニピュレータへのサンプル取付け方法

【課題】
TEM(透過型電子顕微鏡)検査のために、例えばガラス化した生体サンプル等の凍結した含水サンプルを基板から抽出し、該サンプルをマニピュレータに取り付ける。
【解決手段】
含水サンプルは氷の形成を回避するように極低温に保持される。サンプル物質のうち、TEMにて観察される領域の外側の一部を溶解あるいは昇華させ、且つ該物質をマニピュレータ(10)に凍結させることにより、サンプル(1)とマニピュレータとの間に接合が形成される。これは、サンプルを基板から例えばTEM格子などに移送することを可能にする。好適な一実施形態において、マニピュレータ(10)の一部(2)は極低温に保持され、マニピュレータの先端部(3)が該先端部の電気的加熱によって加熱されることによって溶解又は昇華が引き起こされ、その後、マニピュレータの先端部が極低温まで冷却されることにより、サンプル(1)がマニピュレータに凍結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを基板から抽出してマニピュレータに取り付ける方法であって、基板からサンプルを少なくとも部分的に解放する段階、サンプルをマニピュレータに接触させる段階、サンプルをマニピュレータに取り付ける段階、及びサンプルを基板から取り外す段階を有する取付け方法に関する。本発明は更に、本発明に従った方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の方法は特許文献1から既知である。この方法は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)等のパーティクル光学装置にて観察且つ/或いは分析される微量サンプルの準備に使用される。
【0003】
周知のように、TEMにて観察されるサンプルは極めて薄いものである必要がある。生物学で使用されるような有機サンプルの場合には、最大で1μmの厚さが使用され得るが、生体物質の高分解能像の場合には、100nm未満の厚さが好ましい。例えば半導体サンプルなどの、より重い原子核を有する原子を含むサンプルの場合、100nm未満の厚さ、好ましくは50nm未満の厚さが一般的に使用される。
【0004】
既知の方法においては、小さいサンプルは例えば半導体ウェハ等のワークピースから切断される。この目的のため、サンプルはワークピースから、例えばイオンビームミリングによって切り離される。サンプルは完全に切り離される前に、例えばIBID(イオンビーム誘起堆積)を用いて、マニピュレータの先端部に取り付けられる。そして、サンプルは完全に解放され、更なる準備及び/又は分析のためにマニピュレータによって移送されることができる。当業者に知られているように、更なる準備には、サンプルをサンプルキャリアに取り付けることや、イオンビームを用いてマニピュレータからサンプルを分断することが含まれ得る。
【0005】
当業者に知られているように、細胞やその他の生体組織などの生体サンプルを例えばTEMにて調査するとき、物質が樹脂等に埋め込まれるか、あるいは、サンプルが極低温まで冷却されるかの何れかでなければならない。後者は、TEMの真空内で生体物質が自然状態に近い状態で観察され、また、TEMにて使用される電子ビームによって生体物質が損傷されにくい点で有利である。
【0006】
既知の方法にて開示されたIBIDを用いたサンプルへのマニピュレータの取付けは、排気されたサンプルへのガスの導入、及び集束イオンビームをサンプルに照射することを必要とする。導入されたガスはサンプルに付着し、付着したガス分子は集束イオンビームによるサンプルの照射中に分離する。分離した分子の一部は接合材を形成し、分離した分子の他の部分は揮発性ガスを形成してサンプルの表面から離れる。
【0007】
極低温で凍結されたサンプルに既知の方法を用いるときの問題は、IBIDに使用されるガスがサンプルの全体で凝固されることである。これは、汚染されたサンプル、すなわち、不所望の層で覆われたサンプルをもたらすだけでなく、サンプルとマニピュレータとの間に信頼性のない接合をもたらす。何故なら、極低温においては、付着した分子の分離に際して形成される通常は揮発性の生成物は、サンプルの表面を離れていかず、接合の形成を妨げ得るからである。
【0008】
また、特許文献2には、半導体ウェハの形態をしたサンプルをプラテン(platen)の形態をしたマニピュレータに凍結させるための方法が記載されている。しかしながら、この方法においては、サンプルとマニピュレータとの間に液体が挿入される。サンプル物質自体は相変化せず、サンプル物質は非常に硬い。
【0009】
特許文献3には、極低温のサンプル格子を極低温のサンプルホルダーに取り付けることが可能な装置が開示されている。極低温のサンプル格子上に、凍結されたサンプルが取り付けられる。極低温のサンプルホルダーは、極低温のサンプルを調べるために極低温のサンプル格子を装置のパーティクル光学素子に対して位置決めすることに使用される。この位置決めは、サンプルキャリアの平行移動及び回転を含む。この装置は、極低温でのサンプル格子のサンプルホルダーへの機械的結合に関するものであり、基板からサンプルを抽出する方法、又はサンプルを取り付ける方法を開示していない。サンプル格子はTEM検査で一般的に使用される金網であり、サンプル格子をサンプルホルダーに取り付けることは、溶解/凍結サイクルを必要としない。
【0010】
非特許文献1には、集束イオンビームを用いたガラス質の含水サンプルのミリングが開示されている。このミリングは、極低温の流体への浸漬により凍結されたTEM格子上に置かれた水の上で行われている。マニピュレータを用いたサンプルの移送は開示されておらず、基板からのサンプルの一部を凍結させること、又は凍結済みのサンプルをマニピュレータに取り付けることは何れも開示されていない。
【0011】
特許文献4には、TEM検査で一般的に使用される形態をしたサンプル格子上に生体物質が配置される方法が開示されている。格子及びサンプルは極低温の流体への浸漬によって凍結された後に電子顕微鏡に移送される。この既知の方法は、サンプル格子が操作される点、及び凍結済みのサンプルの上記格子への取付けや溶解/凍結サイクルが開示されていない点で本発明と異なっている。
【0012】
特許文献5には、基板からの半導体サンプルの抽出が開示されており、サンプルは、その基板からの分離に先立って、イオンビーム誘起堆積(IBID)を用いてマニピュレータに取り付けられる。マニピュレータへのサンプルの取付けに関するマニピュレータの温度変化は記載されておらず、また、サンプル物質の溶解/凍結は開示されていない。
【0013】
特許文献6には、基板からサンプルを抽出し、サンプルをマニピュレータに取り付ける方法が開示されており、例えば金、インジウム等の可鍛(malleable)層がマニピュレータを覆っている。可鍛層は軟化あるいは溶解するように加熱され、それにより、サンプルとマニピュレータとの間に接合が形成される。
【特許文献1】米国特許第5270552号明細書
【特許文献2】米国特許第6686598号明細書
【特許文献3】国際公開第98/28776号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/036771号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1612836号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/178980号明細書
【非特許文献1】M.Marko等、「Focused ion beam milling of vitreous water:prospects for an alternative to cryo-ultramicroscopy of frozen-hydrated biological samples」、Journal of Microscopy、2006年4月、第222巻、第1号、p.42-47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、例えば極低温のサンプルをワークピースから切断し、そのサンプルをマニピュレータに、上述の問題を伴うことなく取り付ける方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題に鑑み、本発明に従った方法は、
サンプルは凍結されたサンプルであり、
少なくともサンプルのマニピュレータに接触する部分に対して、該部分を加熱し、それによりサンプル物質を部分的に相変化させることによって、サンプルはマニピュレータに取り付けられ、
その後、サンプルのマニピュレータに接触する部分をマニピュレータに凍結させ、それによりサンプルとマニピュレータとの間に接合を形成する、
ことを特徴とする。
【0016】
サンプルのマニピュレータに接触する部分を加熱し、その部分をマニピュレータに凍結させることにより、接合が形成される。冷却することは、極低温に保たれたマニピュレータ部分への熱伝導の結果として得られ、あるいは、その部分が寒い環境内の熱平衡、すなわち、サンプルを取り囲む冷却された表面によってもたらされる熱平衡、に向かって冷えることによって得られる。
【0017】
なお、加熱することはサンプル物質の溶解を引き起こし得る。しかしながら、これは必ずしも当てはまる必要はなく、サンプル物質の気化及び/又は昇華が起こり、それに続いて、サンプルとマニピュレータとの間の隙間内での気化された物質の再堆積/凝結が起こり、それにより、サンプルとマニピュレータとの間に接合が得られてもよい。
【0018】
また、ワークピースからサンプルを少なくとも部分的に解放することは、イオンミリングによって行われ得るが、ミクロトーム又はウルトラミクロトームを用いて(例えば生体組織を準備するとき)、レーザ切断ミリング、イオンビーム誘起エッチング、電子ビーム誘起エッチング等を用いて行われてもよい。サンプルをマニピュレータから解放することも同様にして行われ得るが、サンプルを基板から自由にすることによって、サンプルと基板との間に残された接続を断つことを有していてもよい。
【0019】
本発明に従った方法の一実施形態において、サンプルは水を含む。
【0020】
この方法は特に、水を含有するサンプルとともに使用するのに適しており、水は溶解あるいは気化/昇華され且つ再凍結され、それによりサンプルとマニピュレータとの間に氷の接合が形成される。
【0021】
本発明に従った方法の更なる一実施形態においては、サンプルはガラス化したサンプルである。
【0022】
ガラス化したサンプルは、氷が非晶質になるように凍結される。これは当業者に既知のプロセスであり、氷の結晶が形成される時間がないほど速くサンプルを冷却することを伴う。これは、水の相変化に起因するアーチファクトが回避されるように、例えば生体組織を凍結されるのに適した方法である。
【0023】
なお、サンプルの局所的な再凍結は、その非晶質状態を失ったサンプル領域をもたらし得る。この領域は、例えば氷の結晶を有し得る。しかしながら、この相変化が起こる領域(サンプルがマニピュレータに取り付けられる領域)を十分に小さく、且つサンプルの関心領域から十分に離して選択することにより、この領域はサンプルの有用性に必ずしも影響を及ぼさない。
【0024】
本発明に従った方法の他の一実施形態においては、この方法は更に、少なくともサンプルのマニピュレータに接触する部分に対して、該部分を加熱することによって、サンプルをマニピュレータから分離する段階を有する。
【0025】
サンプルは、しばしば、サンプルを例えば従来からのTEM格子などのサンプルホルダーに取付けた後に、あるいは少なくとも配置した後に、マニピュレータから取り外されなければならない。
【0026】
本発明に従った方法の更なる一実施形態においては、上記の加熱は集束させられた光ビームによりもたらされる。
【0027】
マニピュレータ上、あるいはマニピュレータとサンプルとが接触する境界上に光ビームの焦点を合わせることにより、マニピュレータ及び/又はサンプルは、相変化が起こる温度より高い温度まで局所的に加熱される。照射を中断することにより、サンプル及び/又はマニピュレータの加熱部分は冷えることが可能になり、サンプルはマニピュレータに凍結される。なお、光ビームの焦点は好ましくは、サンプルの小さい部分のみが相変化し、サンプルの大部分が変化しないように小さくされる。このような小さい焦点を実現するために、レーザビームが使用されてもよい。また、光はサンプル上に集光されてサンプル物質を加熱してもよいし、代替的に、マニピュレータ上に集光されてマニピュレータを加熱し、サンプルとマニピュレータとが接触するところでマニピュレータがサンプルを加熱してもよい。サンプルを接触させることに先立って、マニピュレータがこのようにして加熱されることも想定される。
【0028】
本発明に従った方法の他の一実施形態においては、上記の加熱はエネルギー粒子のビームによりもたらされる。
【0029】
この実施形態においては、マニピュレータとサンプルとが接触するところで例えば電子などのエネルギー粒子のビームを集束させることにより、局所的な加熱がもたらされる。なお、ビームはサンプル上に集められてサンプル物質を加熱してもよいし、代替的に、マニピュレータ上に集められてマニピュレータを加熱し、サンプルとマニピュレータとが接触するところでマニピュレータがサンプルを加熱してもよい。サンプルを接触させることに先立って、マニピュレータがこのようにして加熱されることも想定される。
【0030】
本発明に従った方法の更なる他の一実施形態においては、上記の加熱は、マニピュレータのサンプルに接触する部分の温度によりもたらされ、相変化の瞬間におけるマニピュレータの温度は、該相変化が起こる温度より高い。
【0031】
マニピュレータのサンプルに接触する部分をサンプル物質の相変化を生じさせる温度まで加熱し、その後その部分が再び冷えることを可能にすることにより、サンプルはマニピュレータに凍結される。マニピュレータのサンプルに接触する部分の冷却は、マニピュレータの極低温に保たれた部分への熱伝導によりもたらされ得る。
【0032】
本発明に従った方法の更なる一実施形態においては、マニピュレータのサンプルに接触する部分の温度は、該部分の電気的な加熱によって変化させられる。
【0033】
電気的な加熱をもたらす電流は、加熱コイルを流れる電流として供給され得るが、マニピュレータの一部から抵抗ワイヤを介してサンプル物質に流れる電流であってもよく、多くのサンプルの抵抗率はこのような抵抗素子を加熱するのに十分な大きさの電流を導くように十分に低いことが実験により示されている。
【0034】
本発明に従った方法の他の一実施形態においては、マニピュレータの一部は、サンプル物質の凝固点より低い温度に保たれる。
【0035】
サンプルの加熱部分を冷却することは、サンプル物質の凝固点より低い温度に保たれたマニピュレータ部分への熱伝導によりもたらされ得る。
【0036】
本発明に従った方法の更なる他の一実施形態においては、当該方法は真空中で行われる。
【0037】
極低温のサンプル及び/又はマニピュレータ上へのガスの凝結は汚染をもたらすが、この凝結を回避するため、当該方法は真空中で行われることが好ましい。
【0038】
なお、水の相平衡状態図は、約6mbar(水の三重点に関する圧力)未満の圧力においては固体の氷が直接的に気体に変化する昇華として知られるプロセスを示すので、本発明に従った方法を例えば水を用いて真空中で行うことは不可能なように思われるかも知れない。しかしながら、真空中での当該方法の実行可能性が実験により示されている。これを説明する3つの機構は:
・加熱された部分がサンプルに接触するとき、氷が昇華する代わりに溶解するのに十分な高さである6mbarを超える非常に局在化された圧力又は圧力バーストが発生する。
・局所的な気化が、サンプルとマニピュレータとの間の隙間内に、このように形成されたガスの再堆積をもたらし、その結果、氷の境界が形成される。
・例えば非晶質の氷から結晶の氷への相変化によってサンプルの取付けがもたらされ、後者の相がサンプルとマニピュレータとの境界を示す。
【0039】
他のサンプル物質又は物質の相に関しても同様の代替例が可能である。
【0040】
本発明に従った方法の更なる他の一実施形態においては、当該方法は更に、荷電粒子のエネルギービームを用いてサンプルを検査且つ/或いは分析する段階を有する。
【0041】
この方法は特に、例えばクライオTEM(極低温透過電子顕微鏡)又はクライオSTEM(極低温走査型透過電子顕微鏡)等の電子顕微鏡での観察用のサンプルを準備することに適しており、その後、サンプルは検査及び/又は分析のためにクライオTEM又はクライオSTEMに導入される。このような準備はしばしば、微細なサンプルの製造中にサンプルを観察し、それにより例えば微細なサンプルの位置決め及びハンドリングを可能にするために走査電子ビーム又は走査イオンビームを用いてサンプルを検査する装置にて行われる。
【0042】
本発明に従った方法の更なる一実施形態においては、サンプルの相変化は、サンプルのうち、検査且つ/或いは分析される領域の外側の領域に制限される。
【0043】
相変化する領域を制限することにより、例えば氷の結晶の形成はその領域に制限される。領域を制限することは、サンプルの一部を短時間だけ加熱した後に素早く、その部分がガラス転移温度未満の温度まで冷えることを可能にすることによって行われ得る。冷却は、例えば、極低温に保持されたマニピュレータ部分への熱伝導によって実現される。
【0044】
本発明に従った方法の他の一実施形態においては、サンプルを解放する段階は集束イオンビームミリングを含む。
【0045】
イオンビームミリングは、サンプルの相変化を伴わずに、ガラス化した基板からガラス化したサンプルを解放するために使用され得ることが知られている。このことは、例えば、先述の非特許文献1に記載されている。集束イオンビームミリングは、故に、このようなサンプルをその基板から解放するのに好ましい方法である。イオンビームミリングは、故に、例えば高粘度流体として振る舞うガラス化したサンプル等の機械的に柔軟な媒体を、解放されたサンプルにおける機械的な変形を回避しながら、解放し且つ操作することを可能にする。
【0046】
本発明に従った方法の更なる一実施形態においては、サンプルを解放する段階は、凍結されたコアから、該コアの断面に相当する薄層を切り取ることを有する。
【0047】
コアのこのような断面を形成することにより、バクテリア、ウィルス又は例えば生体組織は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)における更なる検査のために解放されることが可能である。
【0048】
本発明に従った方法のより更なる一実施形態においては、コアから薄層を切り取ることに先立って、コアは保護層で覆われる。
【0049】
コアを集束イオンビームで照射するとき、ビームの高強度部分は、焦点が形成された位置から物質をミリングする。しかしながら、焦点から離れたコア物質もビームで照射されて、コアの浸食及び/又は損傷をもたらす。コアを保護材料の薄い層で覆うことにより、このビームの低強度部分の影響が繰り延べられる。
【0050】
なお、この保護層はガスの凝結から得られる液体の層であってもよいし、例えば気相からコアに凍結された固体であってもよい。
【0051】
本発明に従った方法の更なる一実施形態においては、コアは、コアにガスの噴流を導きながらコアを該ガスの噴流に対して回転させることによって保護層で覆われる。
【0052】
本発明に従った方法の他の一実施形態においては、コアは、含水物質の高圧凍結によりガラス質のコアを生じさせることによって形成される。
【0053】
高圧凍結されたコアの形成は、それ自体が既知であり、例えば、V.R.F.Matias等、「Cryo-transmission Electron Microscopy of frozen-hydrated sections of Escherichia coli and Pseudonomas aeruginosa」、Journal of Bacteriology、2003年10月、p.6112-6118(より具体的にはp.6113のセクション「materials and methods」)に記載されている。例えば微生物を有する含水性の生体物質が、高圧凍結によって薄い銅管内に凍結させられる。本発明に従ったこの方法は、このように形成されたコアから薄層を切り取り、該薄層をマニピュレータに取り付けることに適している。
【0054】
本発明の一態様において、極低温の含水基板からサンプルを形成し、該サンプルをマニピュレータに取り付ける装置は、サンプル位置に集束イオンビームを生成するカラム、基板を位置決めするように備えられた基板を保持するステージであり、少なくとも該ステージのうち基板に接触する部分は極低温まで冷却されるステージ、及び先端部にサンプルが取り付けられるマニピュレータであり、該マニピュレータの先端部は極低温に保持されるマニピュレータを有し、マニピュレータの先端部が水の融点又は昇華点より高い温度まで加熱されるとき、マニピュレータの別の部分は極低温に保持されることを特徴とする。
【0055】
前提部に従った装置は既知であり、FEIカンパニー社から入手可能である。クライオFIBはまた、W.J.MoberlyChan等、「Cryo-FIB for thinning Cryo-TEM samples and evading ice during cryo-transfer」、Microsc. Microanal 11(Suppl2)、2005年、p.854に記載されている。極低温サンプルは、サンプルがサンプル位置に位置付けられるように装置内のステージ上に導入される。ステージは極低温に保持される。
【0056】
なお、当業者に知られているように、いわゆる冷凍シールドの存在は、サンプルを極低温に保つ助けとなる。
【0057】
このシステムは、走査型電子顕微鏡(SEMカラム)を用いてサンプルの表面を観察すること、又はTEM格子上に既に配置されているサンプルをTEMに適した厚さまで薄くすることの何れかのために使用される。
【0058】
水の溶解点又は昇華点より高い温度まで加熱され、その後、水の凝固点未満の温度まで冷却されることが可能な先端部をマニピュレータに設けることにより、薄層をマニピュレータに凍結させる(局所的に加熱する)ことによって薄層をマニピュレータに取り付けることができ、それにより、上述の方法が実行され得る。
【0059】
本発明に従った装置の一実施形態において、当該装置は更に、サンプル位置にガスの噴流を導くガス注入システムを有する。
【0060】
これは、例えばコア等のサンプルに保護層を設けることを可能にする。
【0061】
本発明に従った装置の他の一実施形態においては、基板はコアであり、当該装置は更にプログラム可能制御ユニットを備え、該プログラム可能制御ユニットは当該装置が自動的に、コアを切り取り位置に位置決めし、コアに流体の噴流を導くことによってコアを保護層で覆い、コアを薄く切り取り、それにより、コアから薄層を形成し、マニピュレータの先端部を薄層に接続して、薄層をサンプルキャリアへと移送し、且つ薄層をサンプルキャリア上に解放する、ように当該装置を制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明を、添付の図面を用いて説明する。図面において、同一の参照符号は対応する要素を指し示している。
【0063】
図1は、本発明に従った方法を実行するように装備されたマニピュレータ、及びサンプルを概略的に示している。マニピュレータ10は、先端部3を備えたロッド2を有する。マニピュレータ10は更に、ロッド2が接続された可動ステージ7を有する。可動ステージ7は先端部3を位置決めすることを可能にする。この実施形態においては、ステージ7は3つの軸X−Y−Zの全ての方向に動作可能であるように示されているが、より小さい自由度(例えば、X−Y方向の動作のみ)のステージや、より大きい自由度(例えば、X軸周りの回転)のステージも用いられ得る。マニピュレータ10はまた、ロッド2の周りに巻かれた曲げられる加熱ワイヤ4の形態をした加熱装置、及びロッド2の周りの冷却カバー5を有する。冷却カバー5は冷却ワイヤ6を介して極低温に保たれる。冷却ワイヤ6は、液体窒素や液体ヘリウム等によって極低温に保たれた冷却ブロック(図示せず)への高熱伝導率経路を形成するように、例えば、曲げられる紐状の銅ワイヤから成り得る。マニピュレータの先端部に対してサンプル1が配置される。ロッド2の先端部3は、抵抗線4に電流を流すことによって加熱されることができる。それにより、この先端部は、(加熱されず、且つ冷却カバー5による冷却のみが行われるとき)サンプル物質が凍結される極低温に保たれることが可能である。あるいは、この先端部は、加熱ワイヤ4に電流を流すことによって、サンプル物質が溶解あるいは昇華される温度に保たれることが可能である。
【0064】
なお、含水性のガラス化サンプルを用いるとき、水の再結晶化を回避するために、サンプルは水の再結晶温度未満、すなわち、約136K未満に保たれなければならない(例えば、A.Al-Amoudi等、「An oscillating cryo-knife reduces cutting induced deformation of vitreous ultrathin sections」、Journal of Microscopy、2003年10月、第212巻、第1号、p.26-33(より具体的にはp26の右欄)を参照)。このような温度は、例えば液体窒素(沸点は約70K)で銅ブレードを冷却することにより良好に達成され得る。
【0065】
図2は、本発明に従った方法を実行するように装備された代替的なマニピュレータ、及びサンプルを概略的に示している。図2は、図1に示されたものより単純ではあるが、良好な結果をもたらすマニピュレータを示している。導電性ロッド2の上に、導電性の先端部3が電気絶縁体8を介して搭載されている。絶縁体8は、例えば、セラミックビーズ又はガラスビーズとし得る。絶縁体8の内部で、抵抗ワイヤ9がロッド2と先端部3とを接続している。サンプル1及びマニピュレータの先端部3の周囲は、極低温に保たれた冷凍シールド16によって囲まれている。ロッド2にはスイッチ14を介して電圧源15が接続されていてもよく、それにより、ロッド2に電圧が印加され得る。接地電位に保持された部分に先端部3が電気的に接触し、且つスイッチ14が閉じられているとき、抵抗ワイヤ9を介してロッド2から先端部3に電流が流れる。これにより、抵抗ワイヤ9ひいては先端部3が加熱される。
【0066】
実験により、凍結あるいはガラス化した物質から成るサンプルが先端部に接触するとき、氷又はガラス化した水の抵抗は、先端部の加熱を生じさせるのに十分な低さになることが示されている。これは、サンプルの局所的な相変化を生じさせることになる。その後、スイッチ14を開くことで抵抗ワイヤ9を流れる電流を中断させることにより、先端部3はサンプルとの接触によって、且つ/或いは冷凍シールド16との平衡温度に達することによって冷却される。
【0067】
なお、先端部3は抵抗ワイヤ9の端部であってもよい。このワイヤが十分に堅い場合、絶縁体8も排除されることができ、部品数が削減される。また、サンプルと接触する前からロッド2に電圧を印加しておいて、電圧源により供給される電流を監視し、その後に先端部を位置付けることによって、サンプルと先端部との間の接触の瞬間を決定することができる。そして、これにより、先端部とサンプルとが互いにちょうど接触した状態となるようにマニピュレータ動作の終了をトリガーすることができ、再凍結後に両者間には、過度に大きくない接合がもたらされる。また、所定の時間遅れ後にロッドから電圧源を切り離すタイマーをトリガーしてもよい。これらのトリガーは、本発明に従った方法を自動的に実行するために使用され得る。
【0068】
図3は、サンプルとマニピュレータとの間の接触領域を概略的に示しており、接触領域は粒子ビームで加熱されている。この図は、サンプル1とマニピュレータ10の先端部3の一部のみを示しており、また、サンプルと先端部との間の接合部分を加熱するための別の一手法を示している。例えば、電圧30kV且つ電流100nAの電子ビームである粒子ビームを集束させることにより、接合部分に3mWのパワーが集められる。このパワーは小さいように思われるかもしれないが、ロッドの先端部は大きい必要はなく、サンプルは典型的に1μm未満の厚さで、例えば0.1mm未満の直径である(もっとも、より大きい直径又は厚さを有するサンプルが使用されてもよい)。故に、先端部は小さく且つ鋭くすることができ、1mW程度のパワーでも、接合部分の温度をサンプルの一部を溶解あるいは昇華させるのに十分な温度まで上昇させるのに十分となり得る。
【0069】
なお、この実施形態においては、抵抗ワイヤ4(図1に図示)による電気的な加熱は用いられておらず、故に、このワイヤは省略されてもよい。また、粒子ビームは、サンプル上に集束させられることによってサンプルを加熱してもよく、また、マニピュレータ上に集束させられることによってマニピュレータの先端部3を加熱してもよい。例えば接合部分から僅かに外れた先端部3の部分を照射することによって、サンプルの物質が溶解あるいは昇華させられるのであれば、接合部分そのものを照射する必要はない。
【0070】
図4は、図1の細部を概略的に示している。この図は、サンプルとマニピュレータとの間の接触領域を示しており、接触領域は集束光ビームで加熱されている。例えばレーザビーム等の光ビームを集束させることによって、マニピュレータの先端部3が加熱される。平行ビーム12がレンズ13によって集光され、マニピュレータの先端部3上に集束ビーム11が形成される。
【0071】
なお、レーザビームは赤外線レーザビーム、又は可視光を用いたレーザビームとし得る。また、この実施形態においては、図2の実施形態においてと同様に、抵抗ワイヤ4(図1に図示)は使用されておらず、省略されることができる。
【0072】
図5は、本発明に従った方法を実行するように装備された装置を概略的に示している。
【0073】
真空チャンバー70がSEM(走査型電子顕微鏡)カラム100及びFIB(集束イオンビーム)カラム200に接続されている。SEMカラム100は、電子ビーム102を生成する電子源101を有する。電子ビームは、静電レンズ又は磁気レンズとし得るパーティクル光学レンズ103a及び103bによって集束させられる。電子ビームは偏向器104によって偏向させられる。FIBカラム200は、イオンビーム202を生成するイオン源201を有する。イオンビームは、好ましくは静電レンズであるが磁気レンズであってもよいパーティクル光学レンズ203a及び203bによって集束させられる。イオンビームは偏向器204によって偏向させられる。真空チャンバーには、真空内のコールドフィンガーを示すデュワー(dewar)20が搭載されている。デュワーを例えば液体窒素22で充たすことによって、コールドフィンガーの温度は液体窒素の沸点近くになる。この温度は、ガラス化したサンプルをガラス化したままにするのに十分な低さである。双方のビームが互いに交差する付近で、サンプル1がステージ30上に配置される。ステージ30は、交差し合うビームに対してサンプルを位置付けることを可能にする。ステージ30は比較的単純なX−Yテーブルであってもよいが、より多くの自由度でサンプルの向きを合わせることを可能にするものであってもよい。ステージ30は、曲げられる紐状の銅ワイヤ32を介してコールドフィンガー21に接続されたプラテン31を有する。それにより、プラテン31は極低温に保たれる。マニピュレータ10は、ロッド2を囲むカバー5を備えている。ロッド2は、ロッドの先端がサンプルと接触するように位置付けられ得るように、可動ステージ7に接続されている。カバー5は、曲げられる紐状の銅ワイヤ6を介してコールドフィンガー21に接続されている。それにより、カバー5ひいてはロッド2は極低温に保たれる。例えば、1つ又は複数のビーム(102、202)の照射の結果としてサンプルから放出される例えば二次電子の形態の放射線が、検出器40によって検出される。この検出器の信号はコントローラ50によって取得される。コントローラ50はまた、カラム100、200、サンプル上でのビームの走査、ステージ30の位置、及びマニピュレータ10の位置を制御する。それにより、サンプルの像がモニタ60上に表示され得る。真空チャンバー70及びカラム100及び200の内部は、排気されたままにされる。これは、ビーム102及び202をそれらのビーム源101及び202からサンプルまで進行させ、且つ例えば二次電子をサンプルから検出器40まで進行させるために必要とされる。これはまた、サンプル上へのガスの凝結をも排除する。
【0074】
FIBカラム及びSEMカラムを有する器具は、例えばFEIカンパニー社のDualBeam(登録商標)等、商業的に入手可能である。当業者に知られているように、例えばウェハ又は生体物質などのワークピースは、該ワークピースからサンプルが解放されるように、イオンビームを用いてミリングされることができる。本発明に従ったマニピュレータを用いると、サンプルは、サンプルの局所加熱及び/又はマニピュレータの局所加熱によってマニピュレータ10に取り付けられることが可能である。これは、例えば、これらの部分を電子ビーム102で照射することと、加熱部分のその後の冷却とによる。この目的のため、ビームの電流は、最適分解能で取得される像の最適分解能のために通常使用される電流より大きくされ得る。例えば30keVの電子ビームエネルギーにおける最適分解能は、しばしば、例えば1−10pAの電流にて達成されるが、100nAを超える電流が加熱のために使用され得る。その結果、サンプルは、物質が溶解あるいは昇華された、マニピュレータとの接触部分を示す。該部分の電流を低減させることは、極低温に保たれたロッド2を介しての該部分の冷却をもたらし、故に、サンプル1はマニピュレータ10に凍結することになる。その後、サンプルは更に処理されることが可能である。この処理には、サンプルをその最終厚さまで薄くすること、及び/又は、それを従来のTEM格子23に取り付けることが含まれ得る。利用しやすさのため、ステージ30を然るべく位置決めした後にサンプルの加熱によりサンプルをマニピュレータから取り外すことによって、サンプルをTEM格子上に位置付けることができるように、TEM格子は例えばステージ30上に位置付けられてもよい。その後、TEM格子は最終的な観察のためにTEMに移送され得る。
【0075】
なお、SEMカラム100によって生成されてサンプル1を透過した電子を検出する透過電子検出器(TED)を用いて、本発明に従った装置を拡張することが可能である。これは、1つの装置でのサンプルの準備及び検査を可能にする。同一装置内の別の場所でサンプルを観察することも想定され、それにより、1つのサンプルの検査を行いながら別のサンプルをワークピースから解放することが可能になる。
【0076】
図6は、コアから切り取られた薄層がマニピュレータに取り付けられる様子を概略的に示している。
【0077】
コア601は、それ自体が既知の方法である高圧凍結によって、銅管603内に形成される。銅管の内径は典型的に100μmと250μmとの間であるが、異なる外径を有するコアサンプルが得られるように、異なる内径を有する管(チューブ)が用いられてもよい。用語“銅管”は円筒形のコアサンプルが形成されることを暗に示すようであるが、チューブは必ずしも円形の内側断面を有する必要はなく、円形以外の外側断面を有するコアが得られるように、その他の断面を有するチューブが用いられてもよい。
【0078】
上記の凍結技術によってコアを形成した後、チューブ内のコアは排気された環境下に置かれる。圧力の低下により、また、凍結時の温度の低下により、コアの一部はしばしば、軸602に沿って銅管から外に延びる。コアの一部をチューブから絞り出すことも可能である。集束イオンビーム604がコア601上に集められ、それにより、コアと薄層605との間の物質が除去される。このイオンビームは好ましくは、コアが延在する方向の軸602に実質的に垂直な向きを有し、それにより、コアの垂直断面に相当する薄層が切り取られる。しかしながら、その他の角度で薄層を切り取ることも、TEM検査に使用可能な薄層を生じさせる。薄層605は、溶解とそれに続く薄層のマニピュレータへの凍結とによって、マニピュレータの先端部3に取り付けられ、その後、サンプル格子606上に配置され得る。
【0079】
なお、例えばTEMでの検査に適した薄層を解放することに先立って、コアから一部をミリングすることによってコア上に平坦面を形成することが魅力的となり得る。
【0080】
また、イオンビーム誘起堆積(IBID)によって薄層をマニピュレータに取り付けるという伝統的な方法は、室温で広く使用されているが、極低温の薄層を用いることにはあまり適していない。何故なら、使用されるガスは極低温では異なる挙動を示し、例えば、サンプル、薄層及びマニピュレータの全体上に凝結するからである。また、IBIDの化学反応は極低温では異なるものとなり、その結果、IBIDに際して形成される通常は揮発性のガスは気化しない。
【0081】
図7は、保護層で覆われたコアを概略的に示している。
【0082】
流体610の噴流はガスノズル611によってコア601に向けられる。この流体はコア上で保護層612に凝結する。保護層は液体の層であってもよいし、固体に凍結されてもよい。銅管603及びコア601を軸602の周りで回転させることにより、コアサンプルは全ての側で覆われ得る。適量の流体を適用することにより、保護層は、コアサンプルをイオンビームの低強度部分から保護するのに十分な厚さでありながら、ビームの高強度部分により容易にミリングされるのに十分な薄さで形成される。また、散乱されたイオン又は電子とのコア材料の相互作用が排除、あるいは少なくとも大きく抑制される。
【0083】
図8は、コアから薄層を切り取り、それをサンプルキャリア上に置くための装置を概略的に示している。
【0084】
図8は、図5から得られるが、ステージ30が独立に移動可能な2つの別々のステージ、すなわち、ステージ30a及びステージ30bに分離されている点で異なっている。ステージ30は、この場合、イオンビームがコアの形態のサンプル1上に平坦面を形成し、コアから薄層を切り取ることができるように、イオンビームカラム200に垂直な回転軸を有する。さらに、ノズル81がコアに向けられたガス注入システム82が付加されている。それにより、コアを回転させながらノズル81からガスを導くことによって、コアを保護層で覆うことができる。コアから切り取られた薄層は、マニピュレータ2に取り付けられた後、ステージ30b上に配置された例えばTEM格子等のサンプルキャリア23に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に従った方法を実行するように装備されたマニピュレータ、及びサンプルを概略的に示す図である。
【図2】本発明に従った方法を実行するように装備された代替的なマニピュレータ、及びサンプルを概略的に示す図である。
【図3】サンプルとマニピュレータとの間の接触領域を概略的に示す図であり、接触領域は粒子ビームで加熱されている。
【図4】サンプルとマニピュレータとの間の接触領域を概略的に示す図であり、接触領域は集束光ビームで加熱されている。
【図5】本発明に従った方法を実行するように装備された装置を概略的に示す図である。
【図6】コアを概略的に示す図であり、コアから切り取られた薄層がマニピュレータに取り付けられる。
【図7】保護層で覆われたコアを概略的に示す図である。
【図8】コアから薄層を切り取り、それをサンプルキャリア上に置くための装置を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 サンプル
2 ロッド
3 先端部
4 加熱ワイヤ
5 冷却カバー
6 冷却ワイヤ
7 ステージ
8 絶縁体
9 抵抗ワイヤ
10 マニピュレータ
11 集束ビーム
13 レンズ
14 スイッチ
15 電圧源
16 冷凍シールド
21 コールドフィンガー
23 サンプルキャリア
30、30a、30b ステージ
31 プラテン
40 検出器
50 コントローラ
70 真空チャンバー
82 ガス注入システム
100 SEMカラム
101 電子源
102 電子ビーム
103a、103b、203a、203b レンズ
104、204 偏向器
200 FIBカラム
201 イオン源
202、604 イオンビーム
601 コア
603 銅管
605 薄層
606 サンプル格子
610 流体
611 ガスノズル
612 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板からサンプルを抽出し、該サンプルをマニピュレータに取り付ける方法であって:
前記基板から前記サンプルを少なくとも部分的に解放する段階、
前記サンプルを前記マニピュレータに接触させる段階、
前記サンプルを前記マニピュレータに取り付ける段階、及び
前記サンプルを前記基板から取り外す段階、
を有し、
前記サンプルは凍結されたサンプルであり、
少なくとも前記サンプルの前記マニピュレータに接触する部分に対して、該部分を加熱し、それにより前記サンプルの物質を部分的に相変化させることによって、前記サンプルは前記マニピュレータに取り付けられ、
その後、前記サンプルの前記マニピュレータに接触する前記部分を前記マニピュレータに凍結させ、それにより前記サンプルと前記マニピュレータとの間に接合を形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サンプルは水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルはガラス化したサンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも前記サンプルの前記マニピュレータに接触する前記部分に対して、該部分を加熱することによって、前記サンプルを前記マニピュレータから分離する段階、を更に有する請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記加熱は集束光ビームを用いて加熱することによりもたらされる、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記加熱はエネルギー粒子のビームを用いて加熱することによりもたらされる、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルの前記加熱は、前記マニピュレータの前記サンプルに接触する部分の温度によりもたらされ、相変化の瞬間における前記マニピュレータの前記温度は、該相変化が起こる温度より高い、請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記マニピュレータの前記サンプルに接触する部分の温度は、該部分の電気的な加熱によって変化させられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マニピュレータの一部の温度は、前記サンプルの物質の凝固点より低い温度に保たれる、請求項1乃至8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
真空中で行われる請求項1乃至9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
荷電粒子のエネルギービームを用いて前記サンプルを検査且つ/或いは分析する段階、を更に有する請求項1乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルの前記相変化は、前記サンプルのうち、検査且つ/或いは分析される領域の外側の領域に制限される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルを解放する段階は集束イオンビームミリングを含む、請求項1乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルを解放する段階は、凍結されたコアから、該コアの断面に相当する薄層を切り取ることを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コアから前記薄層を切り取ることに先立って、前記コアは保護層で覆われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コアは、前記コアにガスの噴流を導きながら前記コアを前記ガスの噴流に対して回転させることによって、前記保護層で覆われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コアは、含水物質の高圧凍結によりガラス質のコアを生じさせることによって形成される、請求項14乃至16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
極低温の含水基板からサンプルを形成し、該サンプルをマニピュレータに取り付ける装置であって:
サンプル位置に集束イオンビームを生成するカラム、
前記基板を位置決めするように備えられた前記基板を保持するステージであり、少なくとも該ステージのうち前記基板に接触する部分は極低温まで冷却されるステージ、及び
先端部にサンプルが取り付けられるマニピュレータであり、該マニピュレータの前記先端部は極低温に保持されるマニピュレータ、
を有し、
前記マニピュレータの前記先端部が水の融点又は昇華点より高い温度まで加熱されるとき、前記マニピュレータの別の部分は極低温に保持される、
ことを特徴とする装置。
【請求項19】
前記サンプル位置にガスの噴流を導くガス注入システム、を更に有する請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記基板はコアであり、当該装置は更にプログラム可能制御ユニットを備え、該プログラム可能制御ユニットは当該装置が自動的に:
前記コアを切り取り位置に位置決めし、
前記コアに流体の噴流を導くことによって前記コアを保護層で覆い、
前記コアを薄く切り取り、それにより、前記コアから薄層を形成し、
前記マニピュレータの前記先端部を前記薄層に接続して、前記薄層をサンプルキャリアへと移送し、且つ
前記薄層を前記サンプルキャリア上に解放する、
ように当該装置を制御する、
請求項18又は19に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−14719(P2009−14719A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168430(P2008−168430)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】