説明

マメ科ハギ属由来新規化合物を含有するメラニン産生抑制剤及び美白皮膚外用剤

【課題】シミ、そばかすなどのメラニンの過剰産生抑制効果を有する美白皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】マメ科ハギ属トウクサハギの抽出物あるいは単離精製した、化合物を皮膚外用剤に配合する。抽出溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく、化合物としては、Lespeflorin J1、Lespeflorin J2、Lespeflorin J3、Lespeflorin J4などが好適に例示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン産生抑制効果を有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線が多量に暴露されると皮膚に炎症を惹起したり、皮膚癌の原因となることはよく知られている。このような生体への悪影響を防ぐため、皮膚ではメラニンを産生し、その影響を防ぐ。通常、紫外線の暴露により表皮基底層に存在する色素細胞(メラノサイト)でメラニンが産生され、皮膚表面に移動し角層の剥離とともに消失していく。しかしながら、紫外線、炎症等の刺激や加齢とともにメラノサイトが活性化しメラニン産生が亢進し、またメラニンの皮膚表面への移行が正常に行われずシミ(色素沈着)といった美容上好ましくない状態を形成することとなる。
【0003】
このような皮膚内で産生されたメラニンが沈着しシミとなるため、メラニンの生成過程を阻害すること、あるいはシミの淡色化を目的にアスコルビン酸誘導体、ハイドロキノン、アルブチン、コウジ酸などを含有した皮膚外用剤が使用されてきたが、有効性の程度、製剤中の有効成分の安定性、使用時の安全性が課題となる場合が存し、新規のメラニン産生抑制剤の登場が望まれている。
【0004】
アスコルビン酸またはその誘導体の他、植物抽出物、微生物菌体抽出物や発酵生産物等が、メラニン生成に関与するチロシナーゼの活性を抑制する効果、メラニン色素を生成する細胞活性抑制効果、および基底細胞の細胞分裂を活性化する効果などを有することが報告されている(非特許文献1、特許文献1)。
【0005】
色素沈着改善効果を有する素材として、メラニン産生抑制効果をもつ天然物の探索が長年行われ、ジテルペン化合物にメラニン産生抑制効果があることが報告されている(特許文献2〜特許文献4)。マメ科ハギ属の抽出物においてもメラニン産生抑制効果が報告されており、マメ科ハギ属マルバハギの抽出物より、ハギニンA、ハギニンB、ハギニン
C、ハギニンDが単離され、これらにメラニン産生抑制作用があることが報告されている(特許文献5)。さらに、マメ科ハギ属キハギの植物体からの極性溶媒抽出物のメラニン産生抑制作用が報告されており、その活性化合物としてユークレノンa6が知られている(特許文献6)。しかしながら、マメ科ハギ属トウクサハギの地下部の抽出物にメラニン産生抑制作用があることは知られていないし、その活性成分については全く検討されてこなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−327988
【特許文献2】特許第3236130公報
【特許文献3】特開2003−63944号公報
【特許文献4】特開2003−500346号公報
【特許文献5】特開平11−322530号公報
【特許文献6】特開2007−8818号公報
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊,No.14,1995,118-126
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規なメラニン産生抑制効果を有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、日光性色素斑等のシミ改善に有効なメラニン産生抑制効果を有する化合物を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、マメ科ハギ属トウクサハギ地下部からの抽出物にメラニン産生抑制効果があることを見出し、この有効成分として次に示す一般式(1)に表される化合物群が存在することを見出した。かかる化合物群には文献未記載の新規化合物が含まれる。かかる知見より、本発明者らは、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す通りである。
【0009】


(1)
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R1、R2、R4はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)

(2)前記一般式(1)に表される化合物において、次に示す一般式(2)で示される化合物又は生理的に許容されるその塩。
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1、R2、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルケニル基を表し、R3は水酸基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表す。)

(3)(1)乃至(2)のメラニン産生抑制剤を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。

(4)前記化合物がマメ科ハギ属トウクサハギからの抽出されたものであることを特徴とする、(3)に記載の皮膚外用剤。

(5)前記化合物が外用剤全体に対して0.00001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、(3)又は(4)に記載の皮膚外用剤。

(6)化粧料であることを特徴とする、(3)乃至(5)のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(7)医薬部外品であることを特徴とする、(3)乃至(6)のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(8)美白化粧料であることを特徴とする、(3)乃至(7)のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(9)メラニン産生抑制効果を有することを特徴とする、(3)乃至(8)に記載のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(10)前記化合物を0.00001〜10質量%含有するマメ科植物の抽出物であることを特徴とする、(3)乃至(9)のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(11)一般式(1)に表される化合物又はその塩を、マメ科ハギ属トウクサハギ地下部から水を含んでもよい有機溶媒により抽出した抽出物として含有することを特徴とする、(3)乃至(10)いずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(12)前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいアルコール、ハロゲン化炭化水素、ジ(C1からC4)アルキルケトンであることを特徴とする、(11)に記載の皮膚外用剤。

(13)前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいアルコールであることを特徴とする、(11)乃至(12)いずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(14)前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいハロゲン化炭化水素であることを特徴とする、(11)乃至(12)いずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(15)前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいジ(C1からC4)アルキルケトンを特徴とする、(11)乃至(12)いずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(16)一般式(1)に表される化合物又はその塩を、前記アルコール抽出物の親水性成分の除去物として含有することを特徴とする、(11)乃至(13)いずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(17)前記抽出物におけるアルコールがメタノールであり、親水性成分の除去が、エーテルと水との液液抽出による水洗であることを特徴とする、(11)乃至(13)いずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(18)メラニン産生抑制剤としてマメ科植物の極性溶媒による抽出物で前記一般式(1)に表される化合物を0.00001〜10質量%含有するものであることを特徴とする、(3)乃至(9)のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(19)前記極性溶媒はエタノール、含水エタノール、多価アルコール、含水多価アルコールであることを特徴とする、(18)に記載の皮膚外用剤。

(20)前記抽出物は、一般式(1)に表される化合物を0.00001〜10質量%含有することを特徴とする、(17)乃至(19)のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

(21)前記極性溶媒はエタノール、含水エタノール、多価アルコール、含水多価アルコールであることを特徴とする、(20)に記載の皮膚外用剤。
【0010】
本発明により、メラニンの産生亢進に伴う皮膚の色素沈着などの美容上の課題を解決するため、新規化合物を包含する、新規メラニン産生抑制剤を含有する皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)トウクサハギからの抽出方法
本発明のメラニン抑制効果を示す化合物はマメ科ハギ属トウクサハギの植物体より、極性溶媒によって抽出される抽出物より精製して得ることができる。前記植物体としては、植物体そのものでも構わないし、植物体の乾燥物でも構わない。又、トウクサハギの植物体であれば使用する部位に特段の限定はされないが、有効成分を多く含むことから、地下部を用いることが特に好ましい。かかる抽出における極性溶媒としては、通常この様な抽出に用いられるものであれば特段の限定はなく、例えば、水、アルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチルや蟻酸メチルなどのエステル類、クロロホルムや塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類等が好ましく例示でき、水、アルコールが特に好ましい。メタノール、アセトンおよびクロロホルムの抽出物にメラニン抑制効果を示す化合物が含有されていることは、クロロホルム:メタノール=99:1を展開溶媒とした薄層クロマトグラフィーにて下記の表1のように同様な展開位置にスポットが得られることにより確認している。アルコールを溶剤とした場合、かかる抽出は、乾燥させたマメ科ハギ属トウクサハギ100〜1000gにアルコールを1〜10L加え、トウクサハギのアルコール抽出物を得る。該アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが好適に例示できるが、メタノールであることがさらに好ましい。該アルコール抽出物を乾固した後、常法に従って精製処理を加えることが出来る。かかる精製の前に前処理を加えることも出来、この様な前処理としては、例えば、水を100〜1000mL加えて懸濁し、エーテル100〜1000mLを加える。該エーテル層を乾固しエーテル抽出物を得る。残りの水層に酢酸エチルを100〜1000mL加えた後、酢酸エチル層を乾固し酢酸エチル抽出物を得ることが例示できる。この様な前処理により、抽出物中の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の濃度を濃縮することが出来る。一般式(1)に表される化合物を列挙すると以下の如くになる。
【0012】
【表1】

化合物番号2 Lespeflorin
J2の含有について確認した薄層クロマトグラフィーの結果
【0013】
(新規物質)
化合物番号1 Lespeflorin
J1 、化合物番号2 Lespeflorin J2 、化合物番号3 Lespeflorin
J3 、化合物番号4 Lespeflorin
J4
【0014】
(2)トウクサハギ抽出物からの分画操作
前記前処理された抽出物は、常法に従って精製処理される。精製の方法としては、カラムクロマトグラフィー等が好適に例示できる。前記カラムクロマトグラフィーにおける充填剤としては、通常この様な精製で使用されているものであれば特段の限定無く使用でき、例えば、シリカゲル、NH2修飾シリカゲル、オクタデシル修飾シリカゲル、CN修飾シリカゲル、「ダイアイオンHP−20」(三菱化学株式会社製)などの多孔質樹脂、DEAE等の修飾セルロースなどが好適に例示でき、シリカゲルが特に安価で好ましい。かかるシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いての精製方法を詳細に述べる。即ち、前記のエーテル抽出物又は酢酸エチル抽出物をアルコールに溶解し、カラムクロマトグラフィー用シリカゲルに吸着させる。該アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが好適に例示できるが、メタノールであることがさらに好ましい。吸着後溶媒であるアルコールは減圧下或いは加熱条件で除去し、シリカゲルを充填したカラムの上部に充填する。該シリカゲルカラムに有機溶媒を加えて化合物を溶出させ、一定量ずつ溶出分画を回収する。該有機溶媒としては、塩化メチル、2塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素とメタノールなどのアルコールの混合溶媒系を用いることが好ましい。該混合溶媒系は、最初にハロゲン化炭化水素のみを移動相として、順次これに少量ずつアルコールを混合してグラジエントをかけて、極性を徐々に挙げて溶出させることが好ましい。前記ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルムであることがさらに好ましい。アルコールとしてはメタノールが特に好適に例示できる。斯くして得られた溶出分画は、薄層クロマトグラフィーにて展開し、同じ展開位置である画分を集めて、溶媒除去し、所望により、これをさらにオクタデシル修飾シリカなどを担体としたHPLCにより単一の化合物を複数得る。これらの化合物は何れも優れたメラニン産生抑制作用を有する。かかる化合物は、そのまま含有させることも出来るが、アルカリとともに塩を形成させ、塩として含有させることも可能である。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩やトリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リシン塩やアルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。かかる一般式(1)に表される化合物乃至はその塩は唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有することも出来る。かかる化合物乃至はその塩はメラニン産生抑制剤として、総量で0.00001〜10質量%、より好ましくは、0.00005〜5質量%、更に好ましくは、0.0001〜2質量%皮膚外用剤に含有される。かかる含有は、単離した一般式(1)に表される化合物を含有させる形態でも良いし、トウクサハギの抽出物、抽出物を前処理したもの、或いは精製分画して一般式(1)に表される化合物の含有量を高めた抽出物加工品の形で含有させることも出来る。この様に一般式(1)に表される化合物の濃度を高めた抽出物の加工物の形で含有することが、皮膚外用剤の処方自由度を損なわず、好ましい。
【0015】
(3)メラニン産生抑制作用評価
斯くして得られた一般式(1)に表される化合物のメラニン産生抑制作用の評価はヒト由来のメラノサイトを用いて行う。即ち、正常ヒト表皮メラノサイト1×10〜10cells/cm2をマイクロプレートに播種する。播種翌日、前記で得られた各化合物をジメチルスルフォオキサイド(DMSO)などの溶媒に溶解した溶液を含む培地(化合物終濃度0.25×10-3〜4×10-3%)に交換し、これに放射化学的にラベルしたチオウラシル(14C-チオウラシル)を添加しさらに3日間培養する。培養終了後、トリクロロ酢酸で細胞を溶解し、水を加え遠心分離により残渣と上清に分けて、上清を廃棄する。さらに残渣に10%トリクロロ酢酸水溶液を加え、遠心分離により残渣と上清に分け、上清を除去する。残渣にシンチレーターを加えよく溶解し、液体シンチレーションカウンターで放射線量を測定する。コントロール(化合物無添加)に対する各化合物を添加した場合の放射線量の百分率をそれぞれ求め、化合物のメラニン産生抑制率を算出する。
【0016】
(4)化合物の構造決定
各化合物の化学構造については、常法に従って構造決定を行うことが出来る。核磁気共鳴スペクトルを測定し、H及び13Cのスペクトルにおける、ケミカルシフト値、スペクトル形状、結合定数、カップリングの状態から構造を決定することが出来る。補助的に元素分析や質量分析を行い同定することも出来る。化合物の新規性については、「SciFinder」を介してのCASのレジストリーファイルとの照合により決定した。
【0017】
(5)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤としては、該評価法でメラニン産生抑制効果を有する化合物を含有せしめることにより、美白用の皮膚外用剤に適用するのが好ましい。これは後記実施例に示す如く、一般式(1)に表される化合物又はその塩が優れたメラニン産生抑制作用を有するためである。美白用の皮膚外用剤の適用としては、例えば、紫外線によるシミ、ソバカスなどの色素沈着症を予防及び改善するための皮膚外用剤として使用されることが望ましく例示できる。皮膚外用剤としては、特に化粧料、医薬部外品としての使用がさらに好ましい。前記一般式(1)に表される化合物は図1に示される。
【0018】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等の前記のシリコーンに分類されないシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ポリオキシエチレンラウリル燐酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、グルコノラクトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;燐酸、クエン酸等のpH調整剤;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;アルファ−トコフェロール、ベータ−トコフェロール、ガンマ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;ベンジルアルコール、トリアセチン、クロタミトン、炭酸プロレン等炭酸ジエステル、サリチル酸エチレングリコールなどの溶剤などが好ましく例示できる。
【0019】
以下、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこのような実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0020】
(トウクサハギからの抽出)
マメ科ハギ属トウクサハギの地下部の乾燥品500gに2Lのメタノールを加え、2時間還流し、濾過することでメタノール抽出液を得た。残渣について前記の抽出法を繰り返しことで、さらにメタノール抽出液を得て、得られた該抽出液を合一後減圧下濃縮し、メタノールエキスを得た。該メタノールエキスに熱水を500mL加えて懸濁し、エーテルで連続抽出を3時間実施してエーテル分画については減圧下濃縮する。水層は酢酸エチルを加え、3時間連続抽出し減圧下濃縮する。
【0021】
(化合物の単離精製)
前記のエキスから化合物を単離精製し、メラニン産生抑制効果試験に供した。単離精製は、前記エーテル分画の濃縮エキスを30mLのメタノールに溶解し、カラムクロマトグラフィー用シリカゲル(PSQ-100B;Fuji
Silysia製)30gに加え、エキスをシリカゲルに吸着させ、減圧下でメタノールを留去した。該カラムをカラムクロマトグラフィー用シリカゲル400
g、溶出溶媒としてクロロホルムを用いて作成したカラムクロマトグラフィー (9 x 10 cm)
に付す。溶出した溶液を順次300mLずつ回収し、これを濃縮後、濃縮エキスを薄層クロマトグラフィーに供して同じ展開位置の画分を回収し13画分を得た。このうち、さらに単離精製が必要な画分は、高速液体クロマトグラフィーにて逆相系カラム(ODSカラム)で水−アセトニトリル系の溶媒のグラジエントを用いてUV検出(UV280nm)により慎重に単離精製を実施した。
【0022】
(化合物の構造決定)
各化合物をacetone-d6に溶解し、35℃で核磁気共鳴分光機(JNM
alpha-400 FT-NMR
;日本電子社製)によりH及び13Cのスペクトルを測定し、得られたケミカルシフト値、スペクトル形状、結合定数、カップリングの状態から構造を決定した。NMRのケミカルシフトは図に示した炭素位置に従い帰属した。表2から表5に各化合物のケミカルシフトの帰属を示し、太字で示した化合物番号に括弧で測定に用いた溶媒を記載した。


【0023】
【表2】

HMBC correlations, optimized for 8
Hz, are from proton(s) stated to the
carbon.
a-c) Assignments are interchangeable in each
column.
【0024】
【表3】

HMBC correlations, optimized for 8
Hz, are from proton(s) stated to the
carbon.
a-c) Assignments are interchangeable in each
column.
【0025】
【表4】

HMBC correlations, optimized for 8
Hz, are from proton(s) stated to the
carbon.
a-c) Assignments are interchangeable in each
column.
【0026】
【表5】

HMBC correlations, optimized for 8
Hz, are from proton(s) stated to the
carbon.
a-c) Assignments are interchangeable in each
column.
【0027】
<試験例1> メラニン産生抑制作用試験
メラニン合成過程に特異的に細胞に取り込まれるチオウラシル(試験では14Cラベルしたチオウラシルを使用)を用いて、前記メラニン産生抑制作用を評価した。24ウェルのプレートを使用し、4.5×10個/cmの濃度で正常ヒト表皮メラノサイト(倉敷紡績社製)を播種し、二酸化炭素雰囲気下、37℃で24時間培養を行った。DMSOに対象化合物を溶解し培地に加え、翌日該培地を前日の培地と交換した。14Cラベルしたチオウラシルを0.25μCi(マイクロキュリー)添加し前記培養条件と同様の条件で3日間培養した。各ウェルから培養液を除去し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、トリクロロ酢酸(TCA)50μLを添加し細胞を溶解する。細胞が完全に溶解した後、水500μLを加え、ウェル中の全液性成分をチューブに移し、15分以上氷冷下で放置後、15000rpmで5分間遠心分離した。遠心分離後のチューブから上清を除去し、再度10%TCA500μLを添加し、氷冷下15分以上放置した。その後、15000rpmで5分間遠心分離した。再度上清を除去し、シンチレーターとしてアクアゾル-2(パーキンエルマー社製)を1mL加え、液体シンチレーションカウンター(LSC-6100:アロカ社製)にて放射線量を測定した。コントロールとして、該化合物を含まないサンプルを前記同様に調製し、コントロールに対する各化合物の放射線量の百分率を求め、メラニン量(%)とした。結果を表6に示す。
【0028】
一般式(1)で表される化合物の試験例1のメラニン産生抑制作用試験におけるメラニン産生抑制効果を以下に示す。

【0029】
【表6】

メラニン量はDMSOのみを加えた溶媒対照群に対する各化合物添加時のメラニン産生量(%)を示す
【0030】
以上の結果より、溶媒対照群であるDMSOに比べて0.25〜4×10−3%の濃度において、化合物により抑制率は異なるものの、著しいメラニン産生抑制効果が確認された。
【0031】
皮膚外用剤として、以下のようなローションを調製した。
【0032】
<処方例1>
【表7】

37.9
【0033】
さらに、以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である乳液を作製した。即ち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を80℃に加熱した。(A)の混合物に(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、更に(C)を加えて中和し、その後35℃にまで撹拌、冷却し、処方例2の乳液を得た。
【0034】
<処方例2>

【表8】


【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によりマメ科ハギ属トウクサハギの地下部の抽出物より見出されたメラニン産生抑制効果を有する一般式(1)に表される化合物を皮膚外用剤に配合することにより、シミ、そばかすなどのメラニンの過剰産生に伴う美容上重要な課題を解決することが出来る。
【0036】
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R1、R2、R4はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)


【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】化合物番号1から4の化学構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次に示す一般式(1)で示されるフラボノイド、又は生理的に許容されるその塩からなるメラニン産生抑制剤。
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R1、R2、R4はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)に表される化合物において、次に示す一般式(2)で示される化合物又は生理的に許容されるその塩。
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1、R2、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルケニル基を表し、R3は水酸基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表す。)
【請求項3】
請求項1乃至請求項2のメラニン産生抑制剤を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項4】
前記化合物がマメ科ハギ属トウクサハギからの抽出されたものであることを特徴とする、請求項3に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記化合物が外用剤全体に対して0.00001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
化粧料であることを特徴とする、請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
医薬部外品であることを特徴とする、請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
美白化粧料であることを特徴とする、請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
メラニン産生抑制効果を有することを特徴とする、請求項3乃至請求項8に記載のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
前記化合物を0.00001〜10質量%含有するマメ科植物の抽出物であることを特徴とする、請求項3乃至請求項9のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
一般式(1)に表される化合物又はその塩を、マメ科ハギ属トウクサハギ地下部から水を含んでもよい有機溶媒により抽出した抽出物として含有することを特徴とする、請求項3乃至請求項10いずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいアルコール、ハロゲン化炭化水素、ジ(C1からC4)アルキルケトンであることを特徴とする、請求項11に記載の皮膚外用剤。
【請求項13】
前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいアルコールであることを特徴とする、請求項11乃至請求項12いずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項14】
前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいハロゲン化炭化水素であることを特徴とする、請求項11乃至請求項12いずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項15】
前記抽出物の抽出に用いる有機溶媒が水を含んでもよいジ(C1からC4)アルキルケトンを特徴とする、請求項11乃至請求項12いずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項16】
一般式(1)に表される化合物又はその塩を、前記アルコール抽出物の親水性成分の除去物として含有することを特徴とする、請求項11乃至請求項13いずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項17】
前記抽出物におけるアルコールがメタノールであり、親水性成分の除去が、エーテルと水との液液抽出による水洗であることを特徴とする、請求項11乃至請求項13いずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項18】
メラニン産生抑制剤としてマメ科植物の極性溶媒による抽出物で前記一般式(1)に表される化合物を0.00001〜10質量%含有するものであることを特徴とする、請求項3乃至請求項9のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項19】
前記極性溶媒はエタノール、含水エタノール、多価アルコール、含水多価アルコールであることを特徴とする、請求項18に記載の皮膚外用剤。
【請求項20】
前記抽出物は、一般式(1)に表される化合物を0.00001〜10質量%含有することを特徴とする、請求項17乃至請求項19のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項21】
前記極性溶媒はエタノール、含水エタノール、多価アルコール、含水多価アルコールであることを特徴とする、請求項20に記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−155236(P2009−155236A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333418(P2007−333418)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】