説明

マラリア原虫その他の寄生虫の感染を検出する方法

寄生虫感染症、特にマラリアを検出する方法であって、血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用した細胞体積測定の結果から白血球部分集合の細胞体積分布を取得するステップと;その白血球部分集合の細胞体積分布から細胞体積パラメータを取得するステップと;その細胞体積パラメータを所定の基準と比較して評価し、その細胞体積パラメータがその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含む方法。この方法では、2つの異なる白血球部分集合の細胞体積パラメータから取得した判別因子も所定の基準と比較するのに使用する。この方法ではさらに、RFインピーダンス測定の結果を利用して得られた細胞分布の細胞分布パラメータを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2004年2月27日に出願された仮特許出願シリアル番号第60/548,525号に関してUSC 119(e)に基づく恩恵を主張する。なおこの出願全体は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0002】
本発明は、寄生虫の感染、特にマラリア原虫の感染を、血液サンプルの白血球の変化を測定することによって検出する方法に関する。より詳細には、本発明は、白血球部分集合の細胞体積その他の細胞特性の特別な変化に基づいて寄生虫の感染を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マラリアは、相変わらず世界で最も一般的な疾患の1つであり、1年に約3億〜5億人のマラリア感染者が発生すると見積もられている。毎年約150万人〜270万人がマラリアで亡くなっており、そのうちの100万人は5歳未満の子どもである。この疾患は最近5年間で増加していて、多くの国で社会的、経済的な発展を阻害する主要な1つの因子となっている。フランスでは1年に3400件のマラリアが検出されており、そのうちの80%がプラスモジウム・ファルシパルムによる。
【0004】
マラリアの病原媒体はメスのハマダラカからヒトに伝播する寄生原虫(プラスモジウム属)であり、そのヒトがその寄生虫の中間宿主となる。ヒトに対する4種類のプラスモジウム属特異的病原虫が存在している。それは、熱帯熱マラリア原虫(アフリカで最もよく遭遇し、場合によっては死に至る)、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫である(最後の3つは致命的ではないが、再発する可能性がある)。
【0005】
実験室でのマラリアの診断は、通常は、標準的な手続きによって確立する。この手続きは、薄膜と厚膜に塗沫した血液の赤血球内にいる寄生虫を観察し、可能であれば特異的な可溶性抗原をさらに調べる操作を含んでいる。しかしこのような検査は、患者が実際にマラリアにかかっている可能性があることが臨床上疑わしいときだけ行なわれる。マラリアが風土病になっている地域ではマラリア感染の疑いが濃いかもしれないが、マラリアが風土病ではない地域では、特に患者の経歴が十分にわからない場合には必ずしもそうとは言えない。たとえ臨床上疑わしくても、マラリアが風土病ではない地域の実験室でマラリアを検出して同定する能力が比較的弱いのは珍しいことではない。熱のある患者に対して日常的に行なわれる検査の一部として血液をカウントすることがほとんど常に要求されるとはいえ、白血球パラメータと血小板パラメータの変化が十分に明確であるためにマラリアであると直接診断できることは稀である(Kueh他、1982年、Scandinavian Journal of Haematology、第29巻、147〜152ページと、Eriksson他、1989年、Journal of Infectious Diseases、第21巻、434〜441ページ)。このような限界が臨床上どのようなことを意味するかがカナダの研究によって示されており(Kain他、1998年、Clinics in Infectious Diseases、第27巻、142〜149ページ)、マラリアにかかって戻ってきた旅行者の59%が最初の診断で見逃されていることが報告されている。正確に診断されて適切な治療が始まるまでの平均期間は、熱帯熱マラリア原虫で7.6日、三日熱マラリア原虫で5.1日であった。このような遅れは、深刻なマラリア合併症を増やすことと、死亡率を大きくすることに寄与する重要な1つの因子になる可能性がある(Humar他、1997年、Canadian Medical Association Journal、第156巻、1165〜1167ページ)。
【0006】
マラリアにかかると白血球が変化することがわかっている。そのことは、さまざまなプラスモジウム属によって産生されるヘマゾイン含有色素の存在に反映される。この色素は、場合によっては、好中球の食作用(Amodou他、1997年、East African Medical Journal、第74巻、714〜716ページ)と単球の食作用(Amodou他、1997年、East African Medical Journal、第74巻、714〜716ページ;Amodou他、1998年、Transactions of the Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene、第92巻、54〜56ページ;Arese他、1997年、Annals of Tropical and Medical Parasitology、第91巻、510〜516ページ)を受ける。マラリアの自動診断を行なうためにこのような変化が最近分析された。分析は、フロー・サイトメトリー(Kramer他、2001年、Cytometry、第45巻、133〜140ページ)によって、または2つの波長で脱分極を測定する血液分析装置(Hanscheid他、1999年、Emerging Infectious Diseases、第5巻、836〜838ページ;Mendelow他、1999年、British Journal of Haematology、第104巻、499〜503ページ;Hanscheid他、2000年、Parasitology Today、第16巻、549〜551ページ;Hanscheid他、2001年、American Journal of Tropical Medicine、第64巻、190〜192ページ;Grobusch他、2003年、Cytometry part B (clinical cytometry)、第55巻B、46〜51ページ;Scott他、2003年、Clincal and Laboratory Haematology、第25巻、77〜86ページ)によって行なう。
【0007】
既存の血液分析装置で定期的に行なう血液分析の間にマラリアを検出できることが望ましい。すると追加コストなしにマラリアを早期に検出する助けになる。改善された診断法や早期検出法があると、患者の罹患率と死亡率を顕著に低下させることが可能になる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様は、血液サンプルを用いて寄生虫の感染を検出する方法に関する。この方法は、血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用した細胞体積測定の結果から白血球部分集合の細胞体積分布を取得するステップと;その白血球部分集合の細胞体積分布から細胞体積パラメータを取得するステップと;その細胞体積パラメータを所定の基準と比較して評価し、その細胞体積パラメータがその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含んでいる。
【0009】
寄生虫の感染は、プラスモジウム属の感染、トキソプラズマ・ゴンヂの感染、リーシュマニア属の感染、バベシア属の感染の可能性がある。細胞体積パラメータは、平均細胞体積、または細胞体積分布の変動の標準偏差である。細胞体積の測定は、インピーダンス測定、低角光散乱測定、軸性光損失測定によって行なうことができる。白血球部分集合は、単球、リンパ球、好中球のいずれかである。
【0010】
さらに別の一実施態様では、この方法は、血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用した細胞体積測定の結果から、第1の白血球部分集合の第1の細胞体積分布と、第2の白血球部分集合の第2の細胞体積分布を取得するステップと;第1の白血球部分集合の第1の細胞体積分布から第1の細胞体積パラメータを取得し、第2の白血球部分集合の第2の細胞体積分布から第2の細胞体積パラメータを取得するステップと;第1の細胞体積パラメータおよび第2の細胞体積パラメータの関数としての判別因子を取得するステップと;その判別因子を所定の基準と比較して評価し、その判別因子がその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含んでいる。好ましい一実施態様では、第1の細胞体積パラメータと第2の細胞体積パラメータは、それぞれ、第1の細胞体積分布と第2の細胞体積分布の標準偏差であり、判別因子は、第1の細胞体積分布と第2の細胞体積分布の標準偏差の関数である。
【0011】
さらに、上記の方法は、血液サンプルの示差分析から、または追加の示差分析から得られた細胞分布パターンを分析する操作をさらに含むことができる。
【0012】
本発明の一実施態様は、血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用したインピーダンス測定の結果から第1の白血球部分集合の第1の細胞分布を取得するステップと;白血球部分集合の第1の細胞分布から第1の細胞分布パラメータを取得するステップと;その第1の細胞分布パラメータを所定の基準と比較して評価し、その第1の細胞分布パラメータがその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含む方法に関する。この方法はさらに、インピーダンス測定の結果から第2の白血球部分集合の第2の細胞分布を取得するステップと;その第2の白血球部分集合の第2の細胞分布から第2の細胞分布パラメータを取得するステップと;第1の細胞分布パラメータと上記第2の細胞分布パラメータの関数としての判別因子を取得するステップと;その判別因子を所定の第2の基準と比較して評価し、その判別因子がその所定の第2の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップをさらに含むことができる。この明細書では、インピーダンスの測定は、直流インピーダンスの測定、または無線周波数インピーダンスの測定である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施態様では、寄生虫感染症(特にマラリア)を、その疾患による血液サンプル中の白血球の変化を自動化血液分析装置を用いて測定することによって検出する方法が提供される。この方法は、血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用した細胞体積測定の結果から白血球部分集合の細胞体積分布を取得するステップと;その白血球部分集合の細胞体積分布から細胞体積パラメータを取得するステップと;その細胞体積パラメータを所定の基準と比較して評価し、その細胞体積パラメータがその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含んでいる。以下に詳しく説明するように、細胞体積は、直流インピーダンス測定、低角光散乱測定、軸性光損失測定のいずれかを利用して測定することができる。
【0014】
別の一実施態様では、この方法は、赤血球を溶解させて白血球の示差分析を行なうとき、その示差分析で利用したインピーダンス測定の結果から白血球部分集合の細胞体積分布を取得するステップと;その白血球部分集合の細胞体積分布から細胞体積パラメータを取得するステップと;その細胞体積パラメータを所定の基準と比較して評価し、その細胞体積パラメータがその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含んでいる。ここではインピーダンス測定は、直流インピーダンス測定または無線周波数インピーダンス測定にすることができる。直流インピーダンス測定は1つの細胞の細胞体積を反映しており、無線周波数インピーダンス測定はその細胞の細胞内含有量を反映している。
【0015】
この明細書で用いる細胞体積パラメータという用語は、細胞体積分布に関係するパラメータを意味する(例えば、白血球部分集合の細胞体積の平均値、白血球部分集合の細胞体積分布からの標準偏差)。この明細書では、細胞分布パラメータという用語は、インピーダンス測定から得られた細胞分布に関係するパラメータ(例えば直流インピーダンス測定または無線周波数インピーダンス測定によって測定される白血球部分集合の細胞分布の平均値または標準偏差)を意味する。これら2つのインピーダンス測定から得られる細胞分布は、細胞の異なる特性を表わしていることに注意されたい。この明細書では、所定の基準という表現は、1つ以上の細胞体積パラメータ、または細胞体積パラメータの関数(例えばパラメータまたは関数の閾値またはカットオフ値)に基づいて作った基準を意味する。所定の基準は、特徴的な細胞分布パターンをさらに備えている。一般に、基準は複数の正常な血液サンプルと、特別なタイプの異常な血液サンプル(例えばマラリア患者のサンプル)の差に基づいて決定される。異常な血液サンプルについてはあとで詳しく説明する。
【0016】
好ましい一実施態様では、溶解試薬系は、溶解試薬と安定化試薬を含んでいる。溶解試薬を血液サンプルと混合して赤血球を溶かした後、安定化剤を添加してサンプル混合物中の白血球がさらに溶解しないようにする。溶解試薬および安定化試薬とその使用法の適切な具体例は、アメリカ合衆国特許第5,155,044号、第5,731,206号、第5,786,224号、第5,686,308号、第5,843,608号に記載されている(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。このような溶解試薬および安定化試薬と血液サンプル調製法を利用し、測定の間を通じて白血球を元の状態に近い状態に維持する。したがって白血球の細胞膜は溶けない。上記の特許に記載されているように、血液サンプルを溶解試薬と接触させてからサンプル混合物の測定を開始するまでの時間から計算した溶解反応時間は約8〜約20秒の範囲である。サンプル混合物の反応と測定は、約18℃〜約28℃の範囲の通常の室温で実施する。
【0017】
サンプル混合物を測定している間に白血球をそのままの状態に維持するのに適した他の溶解試薬も本発明の目的で使用できることを理解されたい。
【0018】
一実施態様では、VCS測定を利用してサンプル混合物中の白血球の示差分析を行なう。VCS測定は、ベックマン・コールター社(フラートン、カリフォルニア州)が製造している市販のさまざまな血液分析装置で利用されている。VCS測定とは、細胞がフロー・セルを通過するときに導電性媒体の中にある細胞が発生させる直流(DCと表記する)のインピーダンス信号と、無線周波数(RFと表記する)のインピーダンス信号と、中間角光散乱信号(LSと表記する)の多次元測定を意味する。これら3種類の測定のうち、DC測定とRF測定はインピーダンスの測定であり、その測定により、導電性媒体の中を運ばれる細胞がフロー・セルを通過するときのインピーダンスの増加を検出する。この技術は、アメリカ合衆国特許第5,125,737号に十分に記載されている(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0019】
VCS測定を利用した市販の血液分析装置において、3次元散乱図を生成させる。3次元は、z軸としてのDC(DCインピーダンス信号は細胞の体積またはサイズと直接相関しているため、DCは“V”とも呼ばれる)と;y軸としての不透明度(OP)(RFとDCの関数であり、RF信号は1つの細胞の細胞含有物も反映しているために“C”または導電率とも呼ばれる)と;x軸としての回転光散乱(RLS)(光散乱とDCの関数であり、“S”とも略記される)である。3次元散乱図は、通常はDC対RLSという2次元散乱図、またはDC対OPという2次元散乱図として表示される。DC対RLSという散乱図では、4つの主要な白血球部分集合、すなわちリンパ球、単球、好中球、好酸球が互いに区別される。DC対OPという2次元散乱図では、3つの主要な白血球部分集合、すなわちリンパ球、単球、好中球+好酸球が互いに区別される。好塩基球は、1つ以上の同期散乱図を利用して区別することができる。リンパ球、単球、好中球を他のタイプの細胞から区別するには、3通りの測定(すなわちDC、RF、RLS)をすべて、または2通りの測定だけ(DCとLS、またはDCとRF)を利用できることに注意されたい。さらに、他のさまざまな方法(例えば前方散乱と側方散乱、または低角光散乱と中間角光散乱を利用した多角度光散乱測定)を利用し、白血球部分集合(中でもリンパ球、単球、好中球)を他のタイプの細胞から区別することができる。
【0020】
マラリア患者の白血球の性質は変化していることが見いだされている。特に、特定の白血球部分集合の体積と細胞体積の均一性が変化している。より詳細には、VCS測定を利用して測定すると、マラリア・サンプルでは、単球と好中球のDC平均、DCの標準偏差、リンパ球と単球の不透明度に関し、正常な血液サンプルでのこれらパラメータとの差が統計的に有意なレベルまで大きくなることがわかった。これらパラメータのうち、DC平均は細胞体積と直接関係しており、1つのパラメータの標準偏差は、そのパラメータによって表わされる細胞の1つ以上の性質の均一性または不均一性を反映している。白血球部分集合に関するこれらパラメータの変化を、マラリアを検出するための指標または判別因子として用いることができる。
【0021】
DC平均と、DCの標準偏差と、単球の不透明度は、大きな単球性細胞(主として、活性化した単球、マクロファージ、色素を担持している単球など)の存在によって生じることを理解されたい。同様に、リンパ球のDCの標準偏差と不透明度の増大は、大きなリンパ球(主として、反応性リンパ球、活性化したリンパ球)の存在によって生じ、好中球のDC平均の増大は、大きな好中球(主として、未熟な好中球、活性化した好中球、寄生虫を貪食する好中球)の存在によって生じる。したがってこの明細書では、“単球”という用語に、単球、活性化した単球、マクロファージ、色素担持単球、他の単球性細胞(例えば単芽球、前単球、骨髄関連樹状細胞)。この明細書では、“好中球”という用語に、好中球、未熟な好中球、活性化された好中球、寄生虫を貪食する好中球が含まれる。色素を担持している白血球は、寄生虫を消化することによって生成する細胞内色素を含む白血球(例えばマラリア患者の血液サンプルに含まれるヘモゾインを担持する単球や好中球)を意味する。ヘモゾインは、プラスモジウム属により、ヘモグロビンを消化した最終生成物として生成される。
【0022】
一実施態様では、個々の白血球部分集合の細胞体積とその分布は、後出の実施例に記載してあるように、DCインピーダンス測定によって明らかにされる。しかし細胞体積は他の適切な手段(例えば前方光散乱測定、低角光散乱測定、軸性光損失測定)によって明らかにすることも可能であることを理解されたい。一般に、低角光散乱は、入射光から10°未満の範囲で測定される光散乱信号として定義される。軸性光損失(ALL、前方消失としても知られる)は、一般に、粒子が入射光ビームを通過して光検出器で検出されることが原因となった光エネルギーの減少である。一般にALL信号は、入射光から約0°〜約1°の角度で検出される。低角光散乱とALL信号の両方とも、細胞のサイズの影響を強く受ける。低角光散乱とALL信号を測定するための従来技術で知られている装置と方法を利用し、本発明の目的で細胞体積を測定することができる。
【0023】
さらに別の一実施態様では、マラリアは、細胞特性の変化に関する情報を2つ以上の異なる白血球部分集合から得て組み合わせることによって検出できる。例えば、2つの異なる白血球部分集合からの細胞体積パラメータを組み合わせたり、1つの白血球部分集合の細胞体積パラメータを、別の白血球部分集合の不透明度の標準偏差と組み合わせたりする。検出可能な2つ以上のパラメータの関数としての判別因子を利用すると、1つのタイプの細胞だけからの1つのパラメータを用いるよりも感度と特異度をさらに大きくできることが見いだされた。
【0024】
一実施態様では、以下の式によって定義される判別因子をマラリアを感知するための特異的指標として用いる。
D=Vsd(リンパ球)×Vsd(単球)/100
ただしDは判別因子を表わし;VはDC測定によって明らかになる細胞体積を表わし;sdは標準偏差を表わし;Vsdは細胞体積の標準偏差を表わし;Vsd(リンパ球)はDC測定で得られるリンパ球の細胞体積の標準偏差を表わす。
【0025】
実施例に示してあるように、上記の判別因子を用いた本発明の方法は、マラリアを検出する感度と特異度が大きいことがわかった。この方法は、脱分極光散乱測定を利用した公知の方法に匹敵する。
【0026】
血液サンプルを用いた上記のマラリア検出法は、他の寄生虫(例えばトキソプラズマ・ゴンヂ、リーシュマニア属、バベシア属)の感染を検出するのにも使用できる。マラリアの原因であるプラスモジウム属の感染と同様、患者がトキソプラズマ・ゴンヂ、リーシュマニア属、バベシア属のいずれかに感染したときには、その患者の末梢血の中に活性化された単球やマクロファージが存在している。特定の寄生虫に感染したことを示す基準(例えば細胞分布パラメータのカットオフ値)は、個々の感染に関して決定することができる。
【0027】
さらに、この方法には、疾患と関係する細胞分布特性のパターン認識をさらに含めることができる。例えば図1に示してあるように、マラリア・サンプルでは、DCにおいてリンパ球の下に追加の集団が一般に観察される。特定の細胞分布特性を利用し、この検出法の感度と特異度をさらに向上させることができる。
【0028】
さらに別の一実施態様では、マラリアを検出するため、本発明の方法において白血球に関する2回の別々の測定結果を利用する。より詳細には、この方法は、血液サンプルの第1のアリコートを第1の溶解試薬系に曝露して赤血球を溶解させて第1のサンプル混合物を形成するステップと;その血液サンプルの第2のアリコートを第2の溶解試薬系に曝露して赤血球を溶解させて第2のサンプル混合物を形成するステップと;第1のサンプル混合物の白血球に関する第1の示差分析を血液分析装置で実行し、白血球部分集合の細胞体積分布を取得するステップと;第2のサンプル混合物の白血球に関する第2の示差分析を血液分析装置でDCインピーダンス測定によって実行し、そのDCインピーダンス測定の結果を利用して白血球の細胞分布を取得するステップと;第1のサンプル混合物に関して得られた細胞体積分布から細胞体積パラメータを取得するステップと;第2のサンプル混合物に関して得られた細胞分布のパターンを分析するステップと;これら2つの分析結果を合わせることによって得られるプロファイルを分析し、そのプロファイルをマラリアに関する所定の基準と比較して評価するステップと;そのプロファイルがマラリアに関する所定の基準に合致している場合には血液サンプルがマラリアであることを示していることを報告するステップを含んでいる。
【0029】
第1の溶解試薬系、第1のサンプル混合物の白血球に関する第1の示差分析、第1のサンプル混合物に関して得られた細胞体積分布からの細胞体積パラメータは、VCS測定を利用して上に説明したのと同じである。
【0030】
本発明の目的で血液サンプルを溶解させるのに適した第2の溶解試薬系は、等張性血液希釈剤と溶解試薬を含むことができる。それについては、アメリカ合衆国特許第4,346,018号、第4,521,518号、第4,528,274号、第4,962,038号、第5,763,280号、第5,834,315号、第5,882,934号、第5,935,857号、第6,573,102号に記載されている(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。第2の溶解試薬系の一例は、ベックマン・コールター社(カリフォルニア州)が製造しているライスS(登録商標)III Diff溶解試薬とアイソトン(登録商標)III希釈剤である。適切な別の一例は、同社が製造しているライスS(登録商標)4溶解試薬とアイソトン(登録商標)4希釈剤である。あるいは試薬系は、アメリカ合衆国特許第5,882,934号(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されている等張性溶解試薬でもよい。この試薬で血液サンプルを希釈すると同時に赤血球を溶解させた後、分析を行なう。
【0031】
第2のサンプル混合物の白血球に関する第2の示差分析を血液分析装置でDCインピーダンス測定によって実行し、そのDCインピーダンス測定の結果を利用して白血球の細胞分布を取得する方法は、アメリカ合衆国特許第4,286,963号、第4,485,175号、第6,673,618 B1号に十分に記載されている(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0032】
この明細書で用いる血液分析装置において、血液サンプルの第2のアリコートを血液希釈剤で希釈した後、所定量の第2の溶解試薬と混合し、赤血球を溶解させる。すると第2のサンプル混合物が形成される。上記の溶解試薬を利用して白血球の一部を溶解させる。得られる細胞分布は、ある程度、白血球部分集合の核体積に依存する。この細胞分布は、第1のサンプル混合物の測定から得られた細胞体積分布とは異なる。一般に、この細胞分布をもとにして白血球を2つまたは3つの部分集合に分けることができる。これは、一般に、2部区分または3部区分と呼ばれる。3部区分により、白血球がリンパ球、単球、顆粒球に分かれる。マラリア・サンプルでは、図1に示してあるように、リンパ球の左横に追加の集団が存在することがわかった。これは、赤血球の中にいる寄生虫、または白血球の中にある消化されたマラリアの色素によるものであろう。このような細胞分布特性を利用すると、第1のサンプル混合物の分析に基づいた上記の方法によってマラリアを検出する感度と特異度をさらに向上させることができる。
【0033】
したがって一実施態様では、上記のようにして第1のサンプル混合物に関して得られた細胞体積分布の細胞体積パラメータの分析結果を、第2のサンプル混合物に関して得られた細胞分布パターンの分析結果と合わせ、1つのプロファイルを得ることができる。このプロファイルをマラリアに関する所定の基準と比較して評価し、そのプロファイルがマラリアに関する所定の基準に合致している場合には血液サンプルがマラリアであることを示していることを報告する。
【0034】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、請求項に規定されている本発明の範囲がこの実施例に限定されると考えてはならない。以下の開示内容に従って本発明の方法を変更できることが理解されよう。
【実施例】
【0035】
(a)患者
マラリアについて研究するため、89個の全血サンプルを分析した。これらサンプルは、マラリアが風土病である地域出身の患者、またはその地域を旅行した患者に説明できない発熱があるという理由で、内科医による血液の分析を必要とした。そのうちの32人は、マラリア陽性であることがわかった。原因は、熱帯熱マラリア原虫(28人)または三日熱マラリア原虫(4人)であった。57人は、以下に説明する標準法によって陰性であることがわかった。患者の年齢は、8ヶ月〜72歳であった。
【0036】
(b)血液分析装置
すべてのサンプル(マラリア陽性またはマラリア陰性)をコールターGEN*S(登録商標)血液分析装置(ベックマン・コールター社(カリフォルニア州)が製造)で調べた。この明細書では、この血液分析装置を単に装置とも呼ぶ。この血液分析装置では、白血球に関して別々の2つの示差分析を行なう。第1の示差分析は、第1の血液サンプルのアリコートをエリスロライス(登録商標)IIと混合して赤血球を溶解させた後、スタビライス(登録商標)と混合して白血球を安定化させることによって調製した第1のサンプル混合物に対し、VCS測定を利用して実施する。VCS測定により、白血球が5つの部分集合に分かれる。すなわちリンパ球、単球、好中球、好塩基球、好酸球である。第2の示差分析は、第2の血液サンプルのアリコートをアイソトン(登録商標)希釈剤で希釈し、ライスS(登録商標)III Dif試薬と混合することによって調製した第2のサンプル混合物に対し、DCインピーダンス測定を利用して実施する。DCインピーダンス測定により、白血球の全カウント数が得られるだけでなく、1次元DCヒストグラム(一般にWBCヒストグラムと呼ばれる)を利用して白血球が3つの部分集合に分かれる。すなわちリンパ球、単球、顆粒球である。検出法を反映させるため、この明細書ではこのヒストグラムをWBC DCヒストグラムと呼ぶ。上記のすべての試薬は、ベックマン・コールター社(カリフォルニア州)が製造している。
【0037】
図1には、2つのDC対RLS散乱図(一方はマラリア陰性患者からのものであり、他方はマラリア陽性患者からのものである)と、2つのWBC DCヒストグラムが示してある。マラリア陽性サンプルでは分布の特徴がいくつか観察される。それは、単球とリンパ球の集団の広がりの異常な増加、リンパ球の集団の下にある追加の集団、WBC DCヒストグラムの左側にある追加の集団である。これらの特徴は、マラリア患者で頻繁に観察される。
【0038】
血液分析装置の別のスクリーンで図2に示したパラメータを見ることができる。それは、4つの主要な集団それぞれについてのDCまたは体積(Vと表示)、不透明度(Cと表示)、回転光散乱(Sと表示)の平均値(MEAN)と標準偏差(SD)である。
【0039】
さらに、血液分析装置を利用すると、操作者が選択した基準に従って判別ルールを作ることができる。このルールは、全血サンプルの血液異常を検出するための正確な警告システムになることが示された(Amouroux他、2003年、「判別ルール」、Annales de Biologie Clinique、第61巻、576〜584ページ)。
【0040】
(c)標準法
プラスモジウム属が赤血球(RBC)に侵入しているかいないかがわかる血液塗沫試験によって全サンプルを分析し、“マラリア陽性”患者と“マラリア陰性”患者に分けた。陽性群になった32個のサンプルでは、侵入を受けたRBCの割合が0.1%〜4.65%の範囲であった。
【0041】
(d)統計的方法
それぞれのサンプルについて、血液分析装置に表示される表(図2)から、リンパ球、単球、好中球のDC、不透明度、回転光散乱の平均値と標準偏差(SD)を取得した。DC、不透明度、回転光散乱は、装置のディスプレイに表示される表では、それぞれV、C、Sとなっている。
【0042】
患者を2つのグループに分けた。マラリア陽性群とマラリア陰性群である。パラメータに対してまず最初にノンパラメトリック検定(ウィルコクソン順位和検定)を行ない、陰性群の結果と陽性群の結果を互いに比較した。次に、この検定によって有意差が見られたパラメータに対してレシーバ・オペレーティング特性曲線(ROC)分析を行ない、2つのグループで観察された違いがマラリアに特異的であるかどうかと、マラリアを検出するための最適なカットオフ基準であるかどうかを明らかにした。単球とリンパ球のDC(体積)パラメータからの判別因子に対してもROC分析を実施した。
【0043】
(e)選択されたパラメータの評価
統計的分析により、単球とリンパ球のDC(体積)パラメータは、マラリア陽性患者をマラリア陰性患者と区別する上で他のパラメータよりも有効であることがわかったため、これらパラメータについて、血液分析装置の1ヶ月にわたる再現性と安定性、装置ごとの変動、サンプルのパラメータの経時変化をさらに調べた。
【0044】
血液ドナーからの10個の血液サンプルを用いて再現性を調べた。それぞれのサンプルを血液分析装置で10回調べ、単球とリンパ球の体積パラメータの変動係数(CV)を各サンプルについて計算した。次に、各パラメータの再現性を10個のサンプルの平均CVとして表わした。Vsd(リンパ球)とVsd(単球)の再現性を上記の手続きに従って計算した。これらの値の変動係数の平均値は、それぞれ4.4%と5.5%であった。
【0045】
サンプルの経時的な変化を、血液回収後77時間にわたって1つのパラメータの変化として調べた。血液ドナーから15個のサンプルを回収し、血液を回収してから5時間、8時間後、11時間後、17時間後、29時間後、53時間後、77時間後に同じ装置で測定した。リンパ球と単球の体積の平均値と標準偏差をそれぞれ計算し、77時間の期間にわたるこれらパラメータの変化を調べた。図5に示してあるように、Vsd(リンパ球)とVsd(単球)は、血液サンプルを回収してから11時間以内は安定である。血液を回収してから5時間、8時間、11時間後のVsd(リンパ球)とVsd(単球)の平均値は、それぞれ14.8、15、15.9と、18.3、17.5、18.4であった。
【0046】
血液分析装置の安定性を、GEN*Sと同じ製造者が製造していてGEN*Sと同じVCS検出システムを有するLH750血液分析装置で調べた。ドナーからの血液サンプル群(各群には10個のサンプル)を1ヶ月にわたって定期的に調べることによって安定性を調べた。リンパ球と単球の体積の平均値と標準偏差をそれぞれの群について計算することにより、1ヶ月間の正常値の変動をモニターすることができた。装置の安定性を図4に示してある。1ヶ月間にわたり、複数の血液ドナー群からの血液サンプルのVsd(リンパ球)とVsd(単球)の平均値は、それぞれ18.6〜20.6(平均値:19.6)、15.3〜16.9(平均値:15.9)の範囲で変化し、CVは両方の値で4%であった。
【0047】
2つのLH750血液分析装置で装置間の比較を行ない、両者を製造者の要請に従ってセットした。血液ドナーからの85個の全血サンプルを第1の装置で調べ、81個のサンプルを第2の装置で調べた。Vsd(リンパ球)とVsd(単球)の平均値を比較することによって2つの装置間の差を計算した。装置間の比較結果を表1に示す。この表からわかるように、2つの異なる装置で報告されたVsd(リンパ球)とVsd(単球)はよく一致している。これら2つの装置でのVsd(リンパ球)とVsd(単球)の差は、それぞれ3.2%と1.5%であった。
【0048】
【表1】

【0049】
(f)結果
装置が報告したDC、不透明度、RLSの各パラメータに関する第1回目の分析を、陽性群と陰性群のリンパ球、単球、好中球について実施した。この分析は、ノンパラメトリック検定(ウィルコクソン順位和検定)を利用して行なった。表2に、これら2つの群の統計的結果(各パラメータに関する平均値と標準偏差)と、差の有意性を示してある。
【0050】
表2から、有意差が、好中球の1つのパラメータ(すなわち平均体積)と、リンパ球の2つのパラメータ(すなわち体積の標準偏差と、不透明度の標準偏差)と、単球の3つのパラメータ(すなわち平均体積と、体積の標準偏差と、不透明度の標準偏差)で観察されたことがわかる。2つの群で有意差を示したこれら6つのパラメータに対し、ROC分析を実施した。表3に、調べた各パラメータに関するROC分析の結果を、感度、特異度、カットオフ値について示してある。ROC曲線よりも下の面積(AUC)も示してある。
【表2】

【0051】
見てわかるようにROC分析から得られるカットオフ値を、マラリアを示す基準として使用する。表3に示した結果から、2つのパラメータ( Vsd(リンパ球)×Vsd(単球))が、90%を超える感度と60%を超える特異度を示し、AUCはそれぞれ0.876と0.822であることがわかった。したがってこれら2つのパラメータが、マラリア陽性サンプルをマラリア陰性サンプルと区別する上で特に好ましい。
【0052】
【表3】

【0053】
さらに、以下の式によって定義される判別因子(D)をこれら2つのパラメータから導出し、検出の特異度をさらに改善した。
D = Vsd(リンパ球)×Vsd(単球)/100
【0054】
図3に示してあるように、この判別因子に対して実施したROC分析から、判別因子の値が5.06よりも大きいと、感度96.9%と特異度82.5%でマラリアが存在していることがわかった。さらに、100%の感度に対応するカットオフ値は4.81であり、そのときの特異度は77.2%であった。
【0055】
したがってこの判別因子は特異度を82.5%に改善し、感度は96.9%と高かった。表4に示してあるように、マラリアの検出にこの判別因子を使用する場合の性能は、文献に報告されている公知の検出法に匹敵する。
【0056】
【表4】

*Scott他、2003年、Clinical and Laboratory Haematology、第25巻、77〜86ページ
Grobusch他、2003年、Cytometry part B (clinical cytometry、第55巻B、46〜51ページ
Kramer他、2001年、Cytometry、第45巻、133〜140ページ
Hancheid他、2001年、American Journal of Tropical Medicine、第64巻、190〜192ページ
Mendelow他、1999年、British Journal of Haematology、第104巻、499〜503ページ。
【0057】
本発明を特に好ましい実施態様を参照して説明してきた。しかし本発明の精神を逸脱することなくさまざまな変更をなしうること、そしてそのような変更が添付の請求項の範囲に含まれることがわかるであろう。本発明を詳細に説明し、添付の図面に図示したが、本発明の範囲がそれだけに限定されると考えてはならず、その好ましい実施態様の具体例であると見なすべきである。しかし明細書で説明し、添付の請求項に規定した本発明の精神と範囲において、そして法律的にそれと同等な範囲において、さまざまな改変や変更をなしうることは明らかであろう。この明細書で引用したすべての特許とそれ以外の刊行物は、参考として明らかな形でこの明細書に組み込まれているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】マラリア陰性サンプル(左側)とマラリア陽性サンプル(右側)に関するVCS散乱図とDC白血球分布ヒストグラムである。
【図2】コールター社のGen*S血液分析装置とLH血液分析装置で得られたDC(V)、不透明度(C)、RLS(S)というパラメータの値を示す表である。
【図3】判別因子(Vsd(リンパ球)×Vsd(単球))のROC曲線である。カットオフと、対応する感度および特異度のほか、曲線下の面積(AUC)が示してある。
【図4】血液ドナーから1ヶ月かけて回収したいくつかのサンプル群(各群には10人のドナーが含まれる)におけるVsd(単球)とVsd(リンパ球)の変動を示している。
【図5】15人の血液ドナーからなる群におけるVsd(単球)とVsd(リンパ球)の経時変化を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプルを用いて寄生虫感染を検出する方法であって、
(a)血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;
(b)そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用した細胞体積測定の結果から白血球部分集合の細胞体積分布を取得するステップと;
(c)その白血球部分集合の細胞体積分布から細胞体積パラメータを取得するステップと;
(d)その細胞体積パラメータを所定の基準と比較して評価し、その細胞体積パラメータがその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含む方法。
【請求項2】
上記白血球の部分集合が単球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記白血球の部分集合がリンパ球である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記白血球の部分集合が好中球である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記細胞体積パラメータが、上記細胞体積分布の標準偏差である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記細胞体積パラメータが、上記細胞体積分布の平均値である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記細胞体積測定がインピーダンスの測定である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記細胞体積測定が、低角光散乱測定または軸性光損失測定である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記寄生虫感染がプラスモジウム属の感染である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記寄生虫感染が、トキソプラズマ・ゴンヂの感染、リーシュマニア属の感染、バベシア属の感染のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
血液サンプルを用いて寄生虫感染を検出する方法であって、
(a)血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;
(b)そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用した細胞体積測定の結果から、第1の白血球部分集合の第1の細胞体積分布と、第2の白血球部分集合の第2の細胞体積分布を取得するステップと;
(c)上記第1の白血球部分集合の第1の細胞体積分布から第1の細胞体積パラメータを取得し、上記第2の白血球部分集合の第2の細胞体積分布から第2の細胞体積パラメータを取得するステップと;
(d)上記第1の細胞体積パラメータおよび上記第2の細胞体積パラメータの関数としての判別因子を取得するステップと;
(e)その判別因子を所定の基準と比較して評価し、その判別因子がその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含む方法。
【請求項12】
上記第1の細胞体積パラメータと第2の細胞体積パラメータが、それぞれ、上記第1の細胞体積分布と上記第2の細胞体積分布の標準偏差であり;上記判別因子が、上記第1の細胞体積分布と上記第2の細胞体積分布の標準偏差の関数である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記第1の白血球部分集合が単球である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記第2の白血球部分集合がリンパ球である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
上記細胞体積測定がインピーダンスの測定である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
上記細胞体積測定が、低角光散乱測定または軸性光損失測定である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
上記寄生虫感染がプラスモジウム属の感染である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
上記寄生虫感染が、トキソプラズマ・ゴンヂの感染、リーシュマニア属の感染、バベシア属の感染のいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
血液サンプルを用いて寄生虫感染を検出する方法であって、
(a)血液サンプルを溶解試薬系と混合して赤血球細胞を溶解させてサンプル混合物を形成するステップと;
(b)そのサンプル混合物の白血球を血液分析装置で示差分析し、その示差分析で利用したインピーダンス測定の結果から第1の白血球部分集合の第1の細胞分布を取得するステップと;
(c)上記白血球部分集合の第1の細胞分布から第1の細胞分布パラメータを取得するステップと;
(d)その第1の細胞分布パラメータを所定の基準と比較して評価し、その第1の細胞分布パラメータがその所定の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップを含む方法。
【請求項20】
上記インピーダンス測定が、直流インピーダンス測定または無線周波数インピーダンス測定である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記細胞分布パラメータが、上記第1の細胞分布の標準偏差である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
上記細胞分布パラメータが、上記第1の細胞分布の平均値である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
上記寄生虫感染がプラスモジウム属の感染である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
上記寄生虫感染が、トキソプラズマ・ゴンヂの感染、リーシュマニア属の感染、バベシア属の感染のいずれかである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
上記白血球部分集合が、単球、リンパ球、好中球のいずれかである、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
上記インピーダンス測定の結果から第2の白血球部分集合の第2の細胞分布を取得するステップと;
その第2の白血球部分集合の第2の細胞分布から第2の細胞分布パラメータを取得するステップと;
上記第1の細胞分布パラメータと上記第2の細胞分布パラメータの関数としての判別因子を取得するステップと;
その判別因子を所定の第2の基準と比較して評価し、その判別因子がその所定の第2の基準を満たしている場合には、寄生虫感染を示していることを報告するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−525674(P2007−525674A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500905(P2007−500905)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/005402
【国際公開番号】WO2005/088301
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505275295)ベックマン コールター,インコーポレイティド (25)
【Fターム(参考)】