説明

マラリア用ワクチン

本発明は、プラスモディウム・ビバックス(P.vivax)のCSタンパク質に由来する新規なハイブリッド/融合タンパク質、その調製方法および精製方法、特に、例えばプラスモディウム・ビバックスによって引き起こされるマラリア感染の予防における該タンパク質の医薬としての使用、該タンパク質を含む組成物/ワクチン、またはモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体などの該タンパク質に対する抗体、および特に治療における該抗体の使用に関する。本発明はまた、上記のハイブリッドタンパク質のリポタンパク質粒子およびこれを含む製剤/ワクチンならびにこれらの使用にも及ぶ。特に、本発明は、
a. プラスモディウム・ビバックスのI型スポロゾイト周囲タンパク質の反復領域に由来する1つ以上の反復ユニット、
b. プラスモディウム・ビバックスのII型スポロゾイト周囲タンパク質の反復領域に由来する1つ以上の反復ユニット、および
B型肝炎ウイルスに由来する表面抗原S、またはそのフラグメント
を含む免疫原性ハイブリッド融合タンパク質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なハイブリッド/融合タンパク質、その調製方法および精製方法、特に、例えばプラスモディウム・ビバックス(Plasmodium vivax(P.vivax))によって引き起こされるマラリア感染の予防における該ハイブリッド/融合タンパク質の医薬としての使用、該タンパク質を含む組成物/ワクチン、またはモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体などの該タンパク質に対する抗体および特に治療におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、上記のハイブリッド/融合タンパク質のリポタンパク質粒子およびこれを含む製剤/ワクチンならびにこれらの使用にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
マラリアは世界の主要な健康問題の1つであり、この疾患により毎年200〜400万人以上の人々が死亡している。この疾患の最も蔓延している形態の1つは、熱帯および亜熱帯の地域にみられる寄生原虫であるプラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる。興味深いことに、この寄生虫は15℃という低温で蚊サイクルを完結することができ、マラリアが温帯気候において蔓延するのを可能としている。
【0003】
プラスモディウム・ビバックスのライフサイクルは複雑であり、完結するためには2種類の宿主(ヒトおよび蚊)を必要とする。ヒトの感染は、感染した蚊の唾液中のスポロゾイト(胞子虫の種虫)の移入によって始まる。このスポロゾイトは肝臓へ移動し、そこで肝細胞に感染して、赤血球外細胞内段階を経て赤血球(RBC)に感染するメロゾイト(娘虫体)段階へと分化し、無性血段階で循環複製を開始する。このサイクルは、RBC中の多数のメロゾイトが有性段階の生殖母細胞へと分化することによって完結し、この生殖母細胞は蚊に摂取され、中腸において一連の段階を経て成長してスポロゾイトを産生し、これが唾液腺へと移動する。
【0004】
プラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる疾患が致命的であることはほとんどないという事実から、マラリアを予防および治療するための取り組みは、プラスモディウム・ファルシパルムによって引き起こされる疾患のより致命的な症状に集中している。
【0005】
プラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる疾患は、通常は患者の死亡をもたらさないが、増加していると考えられる症例の量、患者の生活の質に及ぼす甚大な影響、貧血および死亡をもたらす当該疾患の重度の罹患の報告の増加、ならびに経済的影響に起因して、この疾患に対する有効なワクチン接種は依然として必要とされている。
【0006】
プラスモディウム・ビバックスの特徴は、一部の株が、末梢循環に出現して臨床症状を示す前に、肝臓中に残っている潜在型によって遅延型感染を引き起こし得ることである。このため、個人が例えば伝染病汚染地域を旅行する場合、感染する可能性があり、なおかつ数ヶ月間症状を示さない可能性がある。このことはマラリアの蔓延を引き起こす可能性があり、このため伝染病汚染地域へ旅行する人は、伝染病汚染地域への旅行後一定の期間中、輸血のために献血を行うことが禁じられている。
【0007】
プラスモディウム・ビバックスによるマラリア感染は、この寄生虫が前赤血球段階でのシゾゴニー(胞子虫類の無性生殖による増殖)を経る間、肝臓内に潜在型を残す。寄生虫が肝臓から逃げる前のこの段階で寄生虫を防除する場合、患者にはこの疾患の臨床症状は観察されない。
【0008】
プラスモディウム・ビバックスのスポロゾイト段階は、マラリアワクチンの潜在的な標的として同定されている。不活性化させた(放射線照射した)スポロゾイトを用いたワクチン接種が、実験用のヒトマラリアに対する防御を誘導したことが示されている(Am. J, Trop. Med. Hyg 24: 297-402, 1975)。しかし、この方法に基づき、放射線照射したスポロゾイトを用いて、一般向けのマラリア用ワクチンを実用的且つロジスティックに製造することは可能となってはいない。
【0009】
スポロゾイトの主要な表面タンパク質は、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)として知られている。このタンパク質は、スポロゾイトが、蚊による播種の開始部位から血液循環(ここでスポロゾイトが肝臓へ移動する)へと通過する間、その運動性および侵入に関与すると考えられている。
【0010】
プラスモディア(Plasmodia)種のCSタンパク質は、非反復アミノ(N末端)フラグメントとカルボキシ(C末端)フラグメントにはさまれた中央の反復ドメイン(反復領域)によって特徴付けられる。このプラスモディウム・ビバックスの中央ドメインは、幾つかの反復ユニットのブロック(通常は、9個の直列アミノ酸のブロック)で構成される。
【0011】
特定のアジア株では、中央反復領域の後に約12アミノ酸の付加配列が存在している(配列番号11参照)。この付加配列の機能は未知である。しかし、研究はされていないが、一部の研究者によって、このアミノ酸が疾患の臨床症状の発症の遅延に関連している可能性があるという仮説が立てられている。CSタンパク質のN末端は、領域Iとして知られる5アミノ酸の配列(配列番号1を参照)によって特徴付けられると考えられている。またC末端は、領域IIとして知られる18アミノ酸の配列を含むことによって特徴付けられると考えられている。領域IIは、全てのマラリアCSタンパク質間で高く保存されている細胞接着モチーフを含む(配列番号2を参照)。
【0012】
幾つかのグループは、スポロゾイト周囲タンパク質に基づくサブユニットワクチンを提案している。これらのワクチンのうち2種類は臨床試験を経ており、その一方は合成ペプチドで、他方は組換えタンパク質である(Ballouら Lancet: i 1277 (1987)およびHerringtonら Nature 328:257 (1987))。これらのワクチンは、抗スポロゾイト応答を刺激することに成功した。それにも関わらず、一部のワクチンが全く応答を生じさせなかったため、応答の大きさは満足のいくものではなかった。さらに、追加注射における抗体レベルの「ブースティング」の不在およびin vitroリンパ球増殖アッセイの結果は、これらのボランティアの大半のT細胞が、上記の免疫優勢反復配列を認識しなかったことを示唆していた。それにも関わらず、各研究においてワクチン接種を受けたボランティアの1人は、寄生虫血症を発症しなかった。
【0013】
WO 93/10152およびWO 98/05355は、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来するワクチンについて記載しており、これらの文献に記載される方法を用いて、プラスモディウム・ファルシパルムに対するワクチン接種について多少の進歩がもたらされたと考えられる。Heppnerら 2005, Vaccine 23, 2243-50も参照のこと。
【0014】
プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質は、保存されている中央反復領域を有する。対照的に、プラスモディウム・ビバックスについては、少なくとも2つの形の(VK210またはI型およびVK247またはII型と呼ばれる)CSタンパク質が知られている。このことは、CSタンパク質の特定の種類に関係なくプラスモディウム・ビバックスに対する一般的な防御を与える所望の特性(免疫原性など)を全て有するCSタンパク質の構築物を同定することをさらに困難にする。なぜなら、I型の中央反復領域に向けられた抗体は、必ずしもII型の対応する領域上のエピトープを認識するわけではなく、逆もまた同様であるためである。
【0015】
1980〜1990年代に、組換えプラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質を発現させてワクチンとして試験したが、限られた成果しか挙げられなかった(Collinsら, 1989. Am. J. Trop. Med. Hyg. 40, 455-64)。架橋された1つ以上のエピトープを利用して多重抗原ペプチド(MAP)に基づいてワクチンを開発するために、幾つかの研究が行われている(NardelliおよびTam, 1995, Pharm. Biotechnol. 6, 803-19)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO 93/10152
【特許文献2】WO 98/05355
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Am. J, Trop. Med. Hyg 24: 297-402, 1975
【非特許文献2】Ballouら Lancet: i 1277 (1987)
【非特許文献3】Herringtonら Nature 328:257 (1987)
【非特許文献4】Heppnerら 2005, Vaccine 23, 2243-50
【非特許文献5】Collinsら, 1989. Am. J. Trop. Med. Hyg. 40, 455-64
【非特許文献6】NardelliおよびTam, 1995, Pharm. Biotechnol. 6, 803-19
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、マラリアワクチンとして使用するための、体液性応答と、また細胞性免疫応答をも生じさせると考えられる、新たな、高められた抗原を提供する。この抗原/粒子は、I型およびII型のCSタンパク質に対する抗体の産生を誘導すると考えられる。この抗原/粒子は、Tヘルパー細胞、例えば、Th1および/またはTh2細胞も誘導することができる。
【0019】
従って、本発明は、
a. プラスモディウム・ビバックスのI型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復部分に由来する1つ以上の反復ユニット、
b. プラスモディウム・ビバックスのII型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復部分に由来する1つ以上の反復ユニット、および
c. B型肝炎ウイルスに由来する表面抗原S
を含む免疫原性ハイブリッド融合タンパク質を提供する。
【0020】
配列表
配列番号1 N末端の領域I(上記)。
配列番号2 C末端の領域IIに由来するモチーフ(上記)。
配列番号3-9 I型CSタンパク質の多様な単量体。
配列番号10 II型CSタンパク質に由来する大きい方の単量体。
配列番号11 アジア株に見られる付加アミノ酸。
配列番号12 ハイブリッドタンパク質のヌクレオチド配列
(大腸菌(E Coli)中での発現用に最適化されている)。
配列番号13 ハイブリッドタンパク質CSVのアミノ酸配列。
配列番号14 II型CSタンパク質に由来する小さい方の単量体。
配列番号15 ハイブリッドタンパク質CSVのヌクレオチド配列
(酵母での発現用に最適化されている)。
配列番号16 ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sのヌクレオチド配列。
配列番号17 ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sのアミノ酸配列。
配列番号18 TS発現カセットおよび予測RTS,Sタンパク質のヌクレオチド配列。
配列番号19 ハイブリッド融合遺伝子CSV-Sのヌクレオチド配列(pHIL-D2組込み型ピキア・パストリス(Pichia pastoris)発現ベクター中にクローン化する)。
配列番号20 ピキア・パストリス中で発現させるハイブリッド融合タンパク質CSV-Sのアミノ酸配列。
配列番号21 完全長組換えCSV-Sタンパク質と、切断タンパク質(CSVtr-S)との配列比較を図12に示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】酵母株サッカロミセス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)中で(構成的プロモーターを用いて)生産された、本発明のハイブリッドタンパク質の多量体リポタンパク質粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図2】本発明のハイブリッドタンパク質と比較タンパク質のウェスタンブロット(ゲルの一部)。
【図2a】本発明のハイブリッドタンパク質と比較タンパク質のウェスタンブロット(図2の全ゲル。図2のレーン1、2および3は、図2aのレーン1、2および8である)。
【図3】CSV-S融合タンパク質をコードする配列を酵母宿主細胞に導入するために用いたpRIT15546組換えベクター(エピソーマルベクター)のプラスミドマップ。
【図4】所望の抗原とB型肝炎に由来するS抗原との融合タンパク質の形成に用いたpGF1-S2(GSKが調製したプラスミド)のプラスミドマップ。SmaI部位の間に異種DNA配列をクローニングし、(12bpのSmaI DNAフラグメントの切除後)S遺伝子とのインフレーム融合を創出する。
【図5】所望の抗原とB型肝炎に由来するS抗原との融合タンパク質の形成に用いたPrit15607のプラスミドマップ。NotIを用いた消化により、酵母染色体への挿入に用いる、CSV-S発現カセットとHIS4選択マーカーを有する6.8kbの線状DNAフラグメントを遊離させる。
【図6】Y1840中で発現させた組換えタンパク質のウェスタンブロットを示す。
【図7】ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(「非在来」酵母、メタノール誘導性プロモーターによって組換え発現が駆動されるメチロトローフ酵母)中で生産される本発明のハイブリッドタンパク質の多量体リポタンパク質粒子の電子顕微鏡写真を示す。CSV-S粒子を、可溶性抽出物から(RTS,S精製法に基づいて)精製し、電子顕微鏡解析に供した。粒子は、リンタングステン酸を用いた陰性染色の後に可視化された。顕微鏡のスケールは100nmに相当する。
【図8】pRIT15582のプラスミドマップ。XhoIを用いた消化により、酵母染色体への挿入に用いる、CSV-S発現カセットとLEU2選択マーカーを有する8.5kbの線状DNAフラグメントを遊離させる。
【図9】CSV-Sカセットを組み込むために用いる線状XhoIフラグメントの制限マップ。
【図10】Y1835株中で発現させた組換えタンパク質のウェスタンブロット。
【0022】
パネルA:抗S抗体で示されるウェスタンブロット
ロードしたサンプル(全タンパク質100μg/ウェル):
1:Y1631(RTS,S産生株、比較として)
2:Y1835
3:Y1835
4:Y1834
パネルB:抗CSV抗体で示されるウェスタンブロット
ロードしたサンプル(全タンパク質100μg/ウェル):
1:Y1631(RTS,S産生株、比較として)
2:Y1295
3:Y1835
4:Y1834
5:未報告(nr)(CSVSの別の構築物)
6:未報告(nr)(S抗原のみの別の構築物)
【図11】Y1835株中で生産されたCSV-S,S混合粒子の電子顕微鏡写真。CSV-S,S粒子を、可溶性細胞抽出物から(RTS,S精製法に基づいて)精製し、電子顕微鏡解析に供した。粒子は、リンタングステン酸を用いた陰性染色の後に可視化された。顕微鏡のスケールは100nmに相当する。
【図12】組換え完全長CSタンパク質と、該CSタンパク質の切断形(CSVtr-S)との比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「ハイブリッドタンパク質」は、プラスモディウム・ビバックスのI型およびII型に由来するタンパク質を指す。
【0024】
本明細書において、「ハイブリッド融合タンパク質」は、別のタンパク質またはそのフラグメントと融合しているプラスモディウム・ビバックスのI型およびII型に由来するタンパク質を指す。
【0025】
1つの態様において、本発明のハイブリッド融合タンパク質は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質(CSV)に由来するハイブリッドタンパク質と、B型肝炎に由来する表面抗原(通常は、S抗原として知られる大きい方の表面タンパク質、例えばadw血清型に由来するS抗原)とを含む。
【0026】
本発明のCSV由来の抗原成分(すなわち、ハイブリッドタンパク質)は、通常、Sタンパク質のアミノ末端と融合する。さらに具体的には、CSVフラグメントのC末端は、このS抗原のN末端と融合する。
【0027】
B型肝炎に由来する表面抗原の存在は、上記のハイブリッドタンパク質のCSタンパク質部分の免疫原性をブーストし、安定性を助け、且つ/またはこのタンパク質の再生産に役立つと考えられる。
【0028】
一般的に、上記のハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスなどのプラスモディウムのCSタンパク質(I型またはII型)に由来するN末端フラグメント(例えば、配列番号1に示されるアミノ酸のような領域Iを含むフラグメント)も含む。
【0029】
別法として、このハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来するN末端フラグメントを含み得る。
【0030】
1つの態様において、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ファルシパルムの中央領域に由来する1つ以上の反復ユニットを含むことができる。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上の反復ユニットを含み得る。
【0031】
通常、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスなどのプラスモディウムのCSタンパク質(I型またはII型)に由来するC末端フラグメント(例えば、配列番号2に示されるような領域IIを含むフラグメント)を含む。
【0032】
別法として、このハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来するC末端フラグメントを含み得る。
【0033】
理論に拘束されるものではないが、N末端およびC末端のフラグメントは、幾つかのT細胞およびB細胞のエピトープを含むと考えられる。
【0034】
組換えタンパク質には、しばしば、クローニング工程中に非天然アミノ酸が導入され、最終的に発現されるタンパク質中で観察される。例えば、幾つか(1個、2個、3個、4個または5個など)のアミノ酸を、上記のタンパク質の開始点(N末端)に挿入することができる。タンパク質の開始点に4個のアミノ酸を挿入する場合、これらは、例えばMMAPであってよい。さらに、あるいは別法として、1個、2個、または3個(例えば1個)のアミノ酸を、このタンパク質の主要部/中央部(例えば、アミノ酸259、260、261または262のあたり)に挿入することができる。このアミノ酸挿入物は、記号Pのアミノ酸であってよい。1つの態様において、使用されるタンパク質は、クローニング工程によって該タンパク質の主要部/中央部に挿入されるアミノ酸を1つも含まない。
【0035】
本発明は、例えば図12に示され、CSVtr-Sと名付けられる、いわゆる「切断」形のハイブリッドタンパク質にも及ぶ。
【0036】
このように本発明は、少なくともCSタンパク質のN末端(アミノ酸60あたり)に見られるアルギニンリッチ領域が除去/欠失されている、切断ハイブリッドタンパク質を提供する。
【0037】
1つの態様において、本発明は、少なくともアミノ酸1〜55(または1〜56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69もしくは70)が欠失している切断ハイブリッドタンパク質を提供する。この切断ハイブリッドタンパク質は、タンパク質の開始点に挿入された4個以下のアミノ酸(例えばMMAP)を含み得る。
【0038】
1つの態様において、本発明は、完全長組換えタンパク質のアミノ酸5〜64を除外するハイブリッドタンパク質に関する。
【0039】
この/これらの切断ハイブリッドタンパク質は、下記の本発明の他の態様において用いることができる。
【0040】
本発明では、プラスモディウム・ビバックスの任意の好適な株を使用することが可能であり、例えばラテンアメリカ/南アメリカ株(すなわちSal 1、Belem)、朝鮮株、中国株、タイ株、インドネシア株、インド株、およびベトナム株が挙げられる。配列番号13の構築物は、朝鮮株(さらに具体的には、韓国株)に基づく。
【0041】
I型CSタンパク質を有するプラスモディウム・ビバックスは、II型CSタンパク質を有するプラスモディウム・ビバックスよりも優勢である。従って、本発明の1つの態様において、I型に由来する反復ユニットの方が、II型の反復ユニットよりも多くハイブリッドに含まれる。
【0042】
さらに具体的には、本発明のハイブリッドタンパク質は、1〜15個の反復ユニット(例えば9個の、I型に由来する反復ユニット)を含み得る。
【0043】
I型CSタンパク質に由来する好適な単量体の例は、配列番号3〜9に示される。
【0044】
1つの実施形態において、本発明は、様々なI型の反復ユニット(例えば、配列番号3〜9に記載される各反復ユニットの1つ)の混合物を含むハイブリッドタンパク質を提供する。
【0045】
このハイブリッド中で、1つ以上の反復ユニットを複製することができる。例えば、構築物中に配列番号3および/または4の2つの単量体を組み込むことができる。
【0046】
a) 1つの態様において、CSタンパク質は配列番号3のユニットを含む。
【0047】
b) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により直上の段落a)に記載のユニットと組み合わせて、配列番号4のユニットを含む。
【0048】
c) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により直上の段落a)またはb)に記載のユニットと組み合わせて、配列番号5のユニットを含む。
【0049】
d) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により直上の段落a)〜c)に記載のユニットの1つ以上と組み合わせて、配列番号6のユニットを含む。
【0050】
f) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により直上の段落a)〜d)に記載のユニットの1つ以上と組み合わせて、配列番号7のユニットを含む。
【0051】
g) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により直上の段落a)〜f)に記載のユニットの1つ以上と組み合わせて、配列番号8のユニットを含む。
【0052】
h) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により直上の段落a)〜g)に記載のユニットの1つ以上と組み合わせて、配列番号9のユニットを含む。
【0053】
好適な構成成分である、II型CSタンパク質の反復ユニットの例は、配列番号10および14(例えば10)に示される。
【0054】
本発明の1つの態様では、5つ以下のII型に由来する反復ユニット(例えば配列番号10に示される1つの単量体)を有するハイブリッドタンパク質が提供される。
【0055】
このハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスの特定のアジア株に見られる反復領域の端において見出される12アミノ酸(例えば配列番号11に示される)の挿入も含み得る。
【0056】
1つの実施形態において、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する257個のアミノ酸を含む。
【0057】
1つの実施形態において、ハイブリッド融合タンパク質は、494個のアミノ酸を含み、例えば、このうちの257個のアミノ酸は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する。
【0058】
1つの態様において、CSタンパク質は、完全長タンパク質を含む。
【0059】
1つの態様において、使用されるCSタンパク質は、例えば図12に示されるような切断形であり、またはアミノ酸約1〜約67が欠失している対応の切断形である。
【0060】
1つの実施形態では、クローニング工程の結果として、配列の開始点に1〜5個の付加アミノ酸(例えばMMAPまたはMMAPG)が挿入される。
【0061】
ハイブリッド融合タンパク質は、プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来する、例えばDBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPまたはこれらのフラグメントから選択される他の抗原も含み得る。
【0062】
1つの実施形態において、ハイブリッド融合タンパク質(CSV-S)は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を実質的に有する。この配列では、アミノ酸6〜262はCSVに由来し、269〜494はSに由来する。残りのアミノ酸は、遺伝的構築によって導入される(特に、これらのアミノ酸は必要に応じて変化させることができる)。
【0063】
配列番号17のCSV-S融合タンパク質の特性は、以下の表に示される。
【表1】

【0064】
配列番号20のCSV-S融合タンパク質の特性は、以下の表に示される:
【表2】

【0065】
ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sは、例えば、プラスミドpGF1-S2(さらに詳細には図4および実施例を参照のこと)を用いて調製することができる。このプラスミドは、SmaIクローニング部位にCSVに対応する適切な配列が挿入されると、この挿入物を処理して融合タンパク質CSV-Sを与える。
【0066】
配列番号17のハイブリッド融合タンパク質のヌクレオチド配列は、配列番号16に示される。この配列のCSV部分は、酵母中での発現を最適化するためにコドン最適化された。
【0067】
別法として、ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sは、例えば実施例2に記載のとおりに調製することができる。
【0068】
本発明のハイブリッド融合タンパク質の別のヌクレオチド配列は配列番号19に示され、そのアミノ酸配列は配列番号20に示される。
【0069】
本発明は、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えばDNA)も提供する。
【0070】
本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、1つの実施形態において、好ましくは酵母遺伝子に由来する転写制御エレメントに隣接し、発現ベクターに組み込まれる。
【0071】
本発明のハイブリッドタンパク質の発現カセットは、例えば、以下の特性を含めて構築することができる。
【0072】
例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)のTDH3遺伝子に由来するプロモーター配列。
【0073】
適切なCSV-Sハイブリッド融合タンパク質をコードする配列。
【0074】
例えば、サッカロミセス・セレヴィシエのARG3遺伝子に由来する配列中に含まれる転写終結配列。
【0075】
特異的プロモーターの例は、サッカロミセス・セレヴィシエのTDH3遺伝子に由来するプロモーターである(Mustiら)。
【0076】
本発明は、ハイブリッド融合タンパク質の調製に用いられるベクターにも及ぶ。
【0077】
次いで、好適なプラスミドを用いて、ハイブリッド融合タンパク質をコードする配列を好適な合成用宿主に導入することができる。好適なプラスミドの例として、CSV-S発現カセットを運ぶための2ミクロンベースのベクターであるpRIT15546が挙げられる。図3のプラスミドマップを参照のこと。
【0078】
あるいは、プラスミドは当業者に公知であり、および/または本明細書の実施例に記載されている。
【0079】
このプラスミドは、通常、選択を助ける組み込みマーカー(例えば、抗生物質耐性またはLEU2および/もしくはHIS栄養要求性をコードする遺伝子)を含む。
【0080】
1つの態様において、このプラスミドはエピソーマルである。すなわち、本発明のタンパク質の遺伝子は、宿主のDNAに組み込まれない。
【0081】
本発明は、本発明のベクターで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であってよいが、好ましくは酵母であり、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)(例えば、RIT DC5 cir(o)という名称で寄託されている(寄託者:Smith Kline-RIT)ATCCデータベース中のDC5(寄託番号20820)などのサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))、および非サッカロミセスの酵母である。これらの例として、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)(例えば、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis))、ピキア(Pichia)(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))、ハンセヌラ(Hansenula)(例えば、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))、ヤロウィア(Yarowia)(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))およびシュワニオミセス(Schwanniomyces)(例えば、シュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)が挙げられる。
【0082】
1つの態様において、本発明は、CSV-Sハイブリッド融合タンパク質および/またはその免疫原性粒子を発現する組換え酵母株Y1834(およびその使用)に関する。この組換え酵母株の作製については、実施例を参照されたい。
【0083】
1つの態様において、本発明は、CSV-Sハイブリッド融合タンパク質および/またはその免疫原性粒子を発現する組換え酵母株Y1835(およびその使用)に関する。この組換え酵母株の作製については、実施例を参照されたい。
【0084】
別の態様において、本発明は、CSV-Sハイブリッド融合タンパク質および/またはその免疫原性粒子を発現する組換え酵母株Y1840(およびその使用)に関する。
【0085】
さらに具体的には、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む上記の酵母(または別の酵母)、該融合タンパク質の調製のための該酵母の使用、および該融合タンパク質の調製に関する方法に関する。
【0086】
ヌクレオチド配列(またはその一部、例えばハイブリッドタンパク質をコードしている部分であるが、場合によりタンパク質Sをコードしている部分ではない)は、酵母などの関連宿主中での発現用にコドン最適化することができる。
【0087】
本明細書において、「コドン最適化」は、コドンが関連宿主中での発現に適するように該コドンを改変することを意味する。これは、最も最適なコドンの選択であってもよいし、そうでなくともよい。例えば、副最適化形のコドンの発現が、最適化形のコドンの発現より大きい場合には、副最適化形を選択することができる。
【0088】
酵母細胞では、上記のハイブリッド融合タンパク質(S抗原を含む)は、発現するとすぐに、該タンパク質の多数の単量体からなるリポタンパク質構造/粒子へと構築され得る。
【0089】
これらの粒子は、ウイルス様粒子(VLP)とも呼ばれる。この粒子は、多量体リポタンパク質粒子としても記載される。
【0090】
これらの粒子は多数の方法で調製することができる。例えば、プラスモディウム由来の各抗原を、別の融合パートナー(例えば、B型肝炎ウイルスの抗原またはウイルス構造タンパク質)と融合させ、これを酵母または細菌などの好適な宿主中で発現させることによる方法が挙げられる。
【0091】
選択されたレシピエント酵母株が、そのゲノム中にB型肝炎S発現カセットの1つ以上の組み込みコピーも有する場合、結果として得られた株は、ハイブリッドタンパク質を、融合タンパク質として、さらにまた非融合S抗原として合成する。これらはハイブリッド融合タンパク質の単量体とS抗原の単量体とを含むリポタンパク質粒子へと同時に構築され得る。
【0092】
理論に拘束されるものではないが、この粒子は、使用される特定の酵母によってその組成が異なり得るが、例えばY1834中で発現させる場合、本発明のハイブリッド融合タンパク質のユニット/単量体で本質的に構成されると考えられる。
【0093】
このように、上記のリポタンパク質粒子は、例えば酵母Y1835における調製の結果物である粒子のように、非融合S抗原の単量体も含み得る場合がある。
【0094】
従って、1つの態様において、本発明は、本発明のハイブリッド融合タンパク質を含む免疫原性粒子を提供する。
【0095】
このように、1つの態様において、上記の粒子は、上記のハイブリッド融合タンパク質のユニットで本質的に構成されるという点において「いわゆる」単純粒子である。本発明の別の態様において、上記の免疫原性リポタンパク質粒子は、いわゆる二重粒子または混合粒子中に、1つ以上のハイブリッド融合タンパク質と、1つ以上の非融合タンパク質Sユニットを含む。
【0096】
図1および7は、異なる酵母中で調製されたものであるが、本発明のこの態様によるリポタンパク質粒子の電子顕微鏡写真である。
【0097】
この電子顕微鏡写真に示されている粒子は、塩化セシウム勾配とスクロース勾配(特に連続塩化セシウム勾配とスクロース勾配、さらに具体的には:1つのスクロース勾配の後に3つの連続するCsCl勾配)を用いる古典的な技術によって精製した。
【0098】
本発明は、例えば塩化セシウム勾配とスクロース勾配を用いて上記の粒子を精製する方法を包含する。
【0099】
さらに、本発明のタンパク質を細胞から遊離させるために用いられる界面活性剤も、上記のリポタンパク質粒子の安定化に役立ち得ると考えられる。他の態様において、リポタンパク質粒子は界面活性剤を含む。この界面活性剤は、例えばTween(Tween20など)、briji、ポリエチレングリコールから選択することができる。上記の粒子は、例えば1重量%以下(0.5重量%もしくは0.1重量%など)の界面活性剤を含み得る。
【0100】
本発明のリポタンパク質粒子は、ハイブリッド融合タンパク質に対する免疫応答をin vivoでさらに刺激することに寄与し得ると考えられる。
【0101】
本発明はまた、免疫防御量の本発明のタンパク質または粒子を、好適な希釈剤または担体と混合して含むワクチンにも関する。
【0102】
本発明は、本発明によるハイブリッド融合タンパク質または粒子、およびマラリア抗原(特に該粒子と共通のマラリア抗原)を含むウイルスベクター、さらに場合によりアジュバントを含む組成物にも及ぶ。
【0103】
本明細書において、「賦形剤」は、それ自体では治療効果を有さない医薬製剤中の成分を指す。希釈剤または担体は、賦形剤の定義の範囲に入る。
【0104】
1つの態様において、本発明の組成物は、本明細書中に記載のハイブリッド融合タンパク質および/または粒子と、アジュバントとを含む。
【0105】
1つの実施形態において、ウイルスベクター構築物は、WO 2004/055187に記載されている。
【0106】
1つの実施形態において、上記の融合タンパク質は混合され、このため単一の製剤として利用することができる。別の実施形態において、この融合タンパク質は、別個の製剤として調製され、患者に別個に投与される。
【0107】
他の態様において、本発明は、以下:
プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する抗原を含む免疫原性融合タンパク質、および
プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する抗原を含む免疫原性融合タンパク質
を含む、プラスモディウム・ファルシパルムとプラスモディウム・ビバックスに対する併用治療に関する。
【0108】
本発明のこの態様において、融合の成分であるプラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する抗原は、I型および/もしくはII型のような天然の(ネイティブ)CSタンパク質またはそのフラグメントであってよい。あるいは、この抗原は、上記のようなハイブリッド(キメラ)タンパク質(例えば、配列番号13および/または15で同定されるタンパク質)であってよい。
【0109】
融合タンパク質の、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原成分は、WO93/10152に従って、例えばいずれも本発明のこの態様における使用に好適な、RTS, S(ここで「S」は非融合単量体を表す)またはRTSのように調製することができる。
【0110】
1つの実施形態では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原は、中央反復領域の反復ユニットを4つ以上含む。さらに具体的には、この抗原は、CSタンパク質のC末端部分と実質的に相同の、160個以上のアミノ酸を含有する配列を含む。このCSタンパク質は、C末端から数えて最後の12〜14個のアミノ酸が欠失していてもよい。
【0111】
より具体的には、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質の一部を含む上記の関連融合タンパク質は、線状リンカーを介してS抗原のN末端にインフレーム融合させた、プラスモディウム・ファルシパルム7G8のCSタンパク質のアミノ酸207〜395に実質的に相当し得る。このリンカーは、S抗原に由来するpreS2部分を含み得る。
【0112】
さらに具体的には、使用されるプラスモディウム・ファルシパルムに由来する融合タンパク質は、配列番号18に示されるRTS発現カセットのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質である。
【0113】
好適なS抗原はpreS2を含み得る。好適な血清型の例は、adw(Nature 280:815-819, 1979)である。
【0114】
1つの態様において、本発明のハイブリッド融合タンパク質は、例えば公開米国出願第2006/194196号(WO 2004/113369としても公開)に記載のとおり、変異体Sタンパク質に由来する部分を含む。この文献は、HDB05と名付けられた変異体について記載している。特にこの文献は、図1と図6では変異型タンパク質と野生型タンパク質との比較について、また図4と図5では変異体の遺伝子について記載している。文献中の配列12〜22は、変異体Sタンパク質の特定のポリペプチドを表す。上記の各記載は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0115】
本発明は、上記の治療のための組み合わせの使用(特にマラリアの予防用ワクチンとしての使用)および、有効量の各成分を同時にあるいは連続的に投与してこれによりマラリアを治療または予防するステップを含んでなる、プラスモディウム感染に感受性の患者の治療方法にも関する。
【0116】
他の態様において、本発明は:
a. プラスモディウム・ビバックスのI型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復配列部分に由来する1つ以上の反復ユニット
b. プラスモディウム・ビバックスのII型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復配列部分に由来する1つ以上の反復ユニット
を含む免疫原性ハイブリッド抗原、および
プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する抗原を含む免疫原性融合タンパク質
を含む、治療のための組み合わせを提供する。
【0117】
例えば、ここで上記のハイブリッド抗原と上記の融合タンパク質は併用投与される。例えば、これらは同時投与用に混合してよく、あるいは連続投与用に製剤化してもよい。
【0118】
他の態様において:
a. プラスモディウム・ビバックスのI型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復配列部分に由来する1つ以上の反復ユニット
b. プラスモディウム・ビバックスのII型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復配列部分に由来する1つ以上の反復ユニット
を含む免疫原性ハイブリッド抗原、および
マラリア抗原(例えば上記のハイブリッド抗原)をコードするウイルスベクターを含む治療のための組み合わせが提供される。
【0119】
例えば、ここで上記のハイブリッド抗原と上記のウイルスベクターは併用投与される。例えば、これらは、同時投与用に混合してよく、あるいは、連続投与用に製剤化してもよい。
【0120】
本明細書中で使用される用語「併用して」は、上記の成分の組み合わせが、12時間以下の期間(例えば、1時間以下の期間)で投与されること、典型的には、1度に(医療従事者を訪問したときに同時に、例えばこれらが連続的にまたは同時に投与される場合)投与されることを意味する。
【0121】
本発明は、これらの各実施形態の上記の成分を含むワクチン組成物も包含する。
【0122】
本発明は、マラリアを治療するための上記の成分を含むワクチンキットも包含する。
【0123】
本発明は、例えばプラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原および/または粒子でプライミングし、プラスモディウム・ビバックスに由来する抗原および/または粒子でブースティングする、あるいはその逆を行うといった、上記の成分を含むプライムブーストレジメンにも及ぶ。
【0124】
このプライムブーストレジメンは、例えばプラスモディウム・ビバックスのみに由来する成分を含み得る。
【0125】
別の実施形態において、プライミングはプラスミド/ネイキッドDNAを用いて行い、ブースティングは本発明による抗原を用いて行うことが可能であり、また/あるいは、その逆もできる。
【0126】
別法として、プライミングは適切なウイルスベクターを用いて行い、ブースティングは本発明による抗原を用いて行うことが可能であり、またはその逆もできる。
【0127】
一般的なプライムブーストレジメンを以下に説明する。
【0128】
例えば:
プライミングは、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する1つ以上のI型反復ユニットとプラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する1つ以上のII型反復ユニットを含む抗原(例えばアジュバント化抗原)を用いて行うことが可能であり、ブースティングは同一の/対応する抗原をコードするウイルスベクターを用いて行うことができ、
プライミングは、プラスモディウム・ビバックスに由来する1つ以上の反復ユニットまたはエピトープとプラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する1つ以上の反復ユニットまたはエピトープを含む抗原(例えばアジュバント化抗原)を用いて行うことが可能であり、ブースティングは同一の/対応する抗原をコードするウイルスタンパク質を用いて行うことができ、
プライミングは、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する1つ以上のI型反復ユニットとプラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する1つ以上のII型反復ユニットを含む、またはプラスモディウム・ビバックスに由来する1つ以上の反復ユニットもしくはエピトープとプラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する1つ以上の反復ユニットもしくはエピトープを含む抗原をコードするウイルスベクターを用いて行うことが可能であり、ブースティングは、タンパク質および/または免疫原性粒子の形態の、同一の/対応するアジュバント化抗原を用いて行うことができる。
【0129】
本明細書における「抗原」は、本発明のハイブリッド融合タンパク質および/または免疫原性粒子を包含する。これらのプライムブーストレジメンでは、抗原は、通常はアジュバント化されている。
【0130】
本発明のこの/これらの態様では、プラスモディウム・ビバックスに由来するハイブリッドタンパク質に関する上記の選択も適用される。従って、1つの態様において、上記のハイブリッドタンパク質は、配列番号13の配列を有する。
【0131】
プラスモディウム・ファルシパルムに由来するRTS,Sおよび抗原(免疫原性粒子の形態)は、WO93/10152に記載のとおりに調製することができる。
【0132】
1つの態様において、本発明は、本発明によるハイブリッドタンパク質(あるいは、ハイブリッド融合タンパク質)をコードする複製能欠失型ウイルスベクターを提供する。
【0133】
好適なウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター(AAV)、麻疹ウイルス、レンチウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス(例えば牛痘、鶏痘、鳩痘、カナリア痘、スイポックスおよび羊痘/ヤギ痘)に由来するものであってよい。マラリア抗原をコードするアデノウイルスベクターを作製する方法は、例えばWO 2004/055187に記載されている。
【0134】
このベクターにコードされるタンパク質は、例えば、発現中のタンパク質のグリコシル化を妨げるように改変することができる。例えば、特定のセリン残基をアラニン残基と置換して、グリコシル化を減少させることができる。
【0135】
アデノウイルス
本発明のアデノウイルスベクターは、1つ以上の免疫原性ポリペプチドをコードする1つ以上の異種ポリヌクレオチド(DNA)を含む。
【0136】
本発明において使用するアデノウイルスベクターは、様々な哺乳動物宿主に由来するものであってよい。
【0137】
アデノウイルス(本明細書中では、「Ad」または「Adv」と呼ぶ)は、3つの主要なタンパク質(ヘキソン(II)、ペントンベース(III)および瘤線維(knobbed fibre)(IV))からなる20面体のカプシドと、他の多数の小さなタンパク質(VI、VIII、IX、IIIaおよびIVa2)で構成される特徴的な形態を有する(Russell W.C. 2000 Gen Viriol, 81:2573-2604)。このウイルスゲノムは、逆方向末端反復配列(ITR)を有する5'末端に共有結合した末端タンパク質を含む線状二本鎖DNAである。ウイルスDNAは、高塩基性タンパク質VIIおよびmuと呼ばれる小ペプチドと密接に結合している。別のタンパク質Vは、このDNA-タンパク質複合体と共にパッケージされ、タンパク質VIを介したカプシドへの構造的結合を提供する。このウイルスは、構造タンパク質の一部をプロセシングして成熟感染ウイルスを生成するために必要とされる、ウイルスがコードするプロテアーゼも含む。
【0138】
様々な哺乳動物種に感染する、100種以上の異なるアデノウイルスの血清型が単離されており、このうち51種はヒト由来である。このように、1つ以上のアデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルスに由来し得る。このようなヒト由来のアデノウイルスの例としては、Ad1、Ad2、Ad4、Ad5、Ad6、Ad11、Ad24、Ad34、Ad35、Ad50/51、特にAd5、Ad11およびAd35が挙げられる。ヒト血清型は、多数の生物学的、化学的、免疫学的および構造的基準に基づいて6つの亜属(A-F)に分類されている。
【0139】
多くの遺伝子治療試験においてAd5ベースのベクターが広く用いられているが、Ad5および他のグループCのアデノウイルスベクターの使用には、自然の感染による一般集団の既存の免疫に起因する制限があり得る。Ad5および他のグループCのメンバーは、どちらかといえば最も優勢な血清型に入る。治療中の既存のベクターへの曝露の結果として、該ベクターに対する免疫が生じ得る。これらの種類の、優勢な血清型のベクターに対する既存のまたは発生した免疫は、遺伝子治療またはワクチン接種の取り組みの有効性を制限し得る。このように、代替アデノウイルス血清型は、宿主の免疫応答を回避し得る遺伝子伝達システムの探求において極めて重要な標的となる。
【0140】
この分野の1つの代替血清型は、非ヒト霊長類(特にチンパンジーアデノウイルス)に由来する血清型である。2種類のチンパンジーアデノウイルスのゲノムについて記載している米国特許第6,083,716号を参照のこと。
【0141】
チンパンジー(「Pan」または「C」)アデノウイルスベクターが、ヒトアデノウイルスベクターと同程度に効率的に導入遺伝子産物に対して強い免疫応答を誘導することが示されている(Fitzgeraldら J. Immunol. 170:1416)。
【0142】
非ヒト霊長類アデノウイルスは、チンパンジーの腸間膜リンパ節から単離することができる。チンパンジーアデノウイルスは、ヒトアデノウイルスのサブタイプCと十分に類似しており、HEK293細胞中でE1欠失ウイルスの複製を可能とする。それにも関わらず、チンパンジーアデノウイルスは、より一般的なヒト血清型(Ad2およびAd5)とは系統発生学的に異なる。Pan6は、Pan5、Pan7およびPan9とはあまり密接には関連しておらず、血清学的に異なる。
【0143】
このように、1つ以上の上記のアデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルス(例えば、血清型Pan5、Pan6、Pan7およびPan9から選択されるチンパンジーアデノウイルス)などの非ヒト霊長類アデノウイルスに由来し得る。
【0144】
アデノウイルスベクターは、2種以上のアデノウイルス血清型に由来してもよく、各血清型は、同一のまたは異なる源に由来し得る。例えば、これらの血清型は、2種以上のヒト血清型および/または2種以上の非ヒト霊長類血清型に由来し得る。キメラアデノウイルスベクターを構築するための方法は、WO2005/001103に開示されている。
【0145】
異種DNAをアデノウイルスに挿入することに関連して特定のサイズの制限がある。ヒトアデノウイルスは、105%までの野生型ゲノム長をパッケージする能力を有する(Bettら 1993, J Virol 67 (10), 5911-21)。ヒトアデノウイルスのパッケージングの下限は、野生型ゲノム長の75%であることが示されている(Parksら 1995, J Virol 71(4), 3293-8)。
【0146】
本発明において有用なアデノウイルスの一例は、Ad2およびAd5などのヒト集団において優勢な天然の血清型とは異なるアデノウイルスである。これは、中和抗体を通じてベクターの取り込みを阻害し且つ毒性を及ぼすことによって同一の血清型の追加投与の有効性を制限する、該ベクターに対する強い免疫応答の誘導を回避する。
【0147】
このように、本発明のアデノウイルスは、優勢な天然のヒトウイルス血清型ではないアデノウイルスである。動物から単離されたアデノウイルスは、免疫学的には異なるカプシド、ヘキソン、ペントンおよび線維の構成成分を有するが、系統発生学的には密接に関連している。具体的には、本発明のウイルスは、サルアデノウイルスなどの非ヒトアデノウイルス、特にPan5、Pan6、Pan7またはPan9などのチンパンジーアデノウイルスであってよい。このようなウイルス株の例は、WO 03/000283に記載されており、American Type Culture Collection(10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209)および他の源から入手可能である。望ましいチンパンジーアデノウイルス株は、Pan5(ATCC VR-591)、Pan6(ATCC VR-592)、およびPan7(ATCC VR-593)である。
【0148】
チンパンジーアデノウイルスの使用は、標的集団中のアデノウイルスに対する既存の免疫が欠如している、特に交差中和抗体が欠如していることから、ヒトアデノウイルス血清型の使用よりも有利であると考えられる。チンパンジーアデノウイルスと既存の中和抗体の応答との交差反応は、特定の候補ヒトアデノウイルスベクターの場合の、標的集団の35%と比較すると、標的集団の2%しか示されない。チンパンジーアデノウイルスは、より一般的なヒトのサブタイプAd2およびAd5とは異なるが、ヒトのサブグループEのAd4(優勢なサブタイプではない)とより密接に関連している。Pan6は、Pan5、Pan7およびPan9とはそれほど密接には関連していない。
【0149】
本発明のアデノウイルスは、複製欠損型であってよい。このことは、本発明のアデノウイルスが、野生型ウイルスと比べて非相補細胞中で複製する能力が低下していることを意味する。これは、例えば複製に関与する遺伝子を欠失させる(例えば、E1a、E1b、E3またはE4遺伝子の欠失)ことによりウイルスを変異させることによってもたらされ得る。
【0150】
本発明によるアデノウイルスベクターは、機能的E1欠失を含む複製欠損型アデノウイルスに由来し得る。このように、本発明によるアデノウイルスベクターは、アデノウイルスE1aおよびE1bを発現させる能力の欠如による複製欠損型であってよく、すなわち、E1aとE1bが機能的に欠失している。組換えアデノウイルスは、他の遺伝子の機能的欠失(WO 03/000283参照)、例えば、E3またはE4遺伝子の欠失も生じさせ得る。アデノウイルスの遅延型初期遺伝子E3は、本発明の組換えウイルスの一部を形成するアデノウイルス配列から除去することができる。E3の機能は、組換えアデノウイルス粒子の生産には必要ではない。従って、本発明において有用な組換えアデノウイルスをパッケージするためにこの遺伝子産物の機能を置換することは不必要である。1つの特定の実施形態において、組換えアデノウイルスは、機能的に欠失したE1およびE3遺伝子を有する。このようなベクターの構築は、Royら, Human Gene Therapy 15:519-530, 2004に記載されている。
【0151】
組換えアデノウイルスは、E4 ORF6機能を保持することが望ましいが、E4遺伝子の機能的欠失を有するように構築することもできる。本発明によるアデノウイルスベクターは、遅延型初期遺伝子E2aの欠失も含み得る。欠失は、アデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1〜L5のいずれかに生じさせることもできる。同様に、中間遺伝子IXおよびIVaの欠失が有用であり得る。
【0152】
アデノウイルスの他の構造遺伝子または非構造遺伝子中に他の欠失を生じさせることができる。上記の欠失は個々に用いることができる。すなわち、本発明において使用するためのアデノウイルス配列は、E1の欠失のみを含み得る。別法として、全遺伝子または該遺伝子の生物学的活性を破壊するのに有効なその一部の欠失は、任意の組み合わせで使用することができる。例えば、1つの例となるベクターにおいて、アデノウイルス配列は、E1遺伝子およびE4遺伝子の欠失、またはE1、E2aおよびE3遺伝子の欠失、またはE1およびE3遺伝子の欠失(例えば、E1aおよびE1bの機能的欠失、ならびにE3の少なくとも一部の欠失)、またはE3の欠失を伴うもしくは伴わない、E1、E2aおよびE4遺伝子の欠失等を有し得る。このような欠失は、これらの遺伝子の部分的なまたは完全な欠失であってよく、他の変異(例えば温度感受性変異)と組み合わせて使用して所望の結果を達成することができる。
【0153】
アデノウイルスベクターは、ウイルスがその中で複製し得る任意の好適な細胞株上で生産することができる。特に、ウイルスベクターから失われてその複製特性の低下をもたらす因子(例えば、E1および/またはE4)を与える相補細胞株を使用することができる。限定するものではないが、このような細胞株は、特にHeLa(ATCC受託番号CCL 2)、A549(ATCC受託番号CCL 185)、HEK 293、KB(CCL 17)、デトロイト(例えばDetroit 510、CCL 72)およびWI-38(CCL 75)細胞であってよい。これらの細胞株は全て、American Type Culture Collection(10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209)から入手することができる。他の好適な親細胞株は、PER.C6(登録商標)細胞(Centre for Applied Microbiology and Research (CAMR, UK)におけるEuropean Collection of Animal Cell Cultures (ECACC)に、ECACC番号96022940で寄託された細胞に代表される)またはHer 96細胞(Crucell社)などの他の源から入手することができる。
【0154】
本発明は、本発明のタンパク質をコードするウイルスベクターを作製するための公知の細胞株の使用に及ぶ。
【0155】
免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞用にコドン最適化することができる。かかるコドン最適化は、WO 05/025614に詳細に記載(例えば、37頁から開始)されている。
【0156】
本発明の1つの実施形態において、上記のウイルスベクターは、N末端リーダー配列を含有するポリヌクレオチド構築物を含む。このシグナル配列、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、個別に、全て任意に存在または欠失している。本発明の1つの実施形態では、これらの領域は全て、存在しているけれども改変されている。
【0157】
本発明によるアデノウイルススベクター中で使用するためのプロモーターは、HCMV IE遺伝子に由来するプロモーターであってよく、例えばWO 02/36792に記載されるとおり、エクソン1を含むHCMV IE遺伝子の5'非翻訳領域が含まれ、イントロンAは完全にまたは部分的に除去されている。
【0158】
幾つかの抗原が融合タンパク質に融合される場合、このタンパク質は、単一のプロモーターの制御下で、1つのポリヌクレオチドによってコードされるだろう。
【0159】
本発明の別の実施形態では、幾つかの抗原は、個々のプロモーターを通じて別個に発現させることが可能であり、上記の各プロモーターは、同一であっても異なっていてもよい。本発明のさらに別の実施形態では、上記の抗原の一部を第1のプロモーターに連結し、他の抗原を第1のプロモーターと同一であっても異なっていてもよい第2のプロモーターに連結して、融合を形成することができる。
【0160】
このように、上記のアデノウイルススベクターは、各々が1つのプロモーターの制御下で1つの抗原をコードする発現カセットを1つ以上含み得る。あるいは、またはさらに、このアデノウイルススベクターは、各々が1つのプロモーターの制御下で2つ以上の抗原をコードする発現カセットを1つ以上含むことが可能であり、これによりこれらの抗原は融合として発現される。各発現カセットは、アデノウイルスベクター中の2つ以上の位置に存在し得る。
【0161】
上記のポリヌクレオチド、すなわち発現対象の免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、アデノウイルスの欠失領域のいずれか(例えば、E1欠失領域)に挿入することができる。
【0162】
2つ以上の、免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、融合として連結させることが可能であり、結果として得られたタンパク質は、融合タンパク質として発現させることができ、または別個のタンパク質産物として発現させることが可能であり、あるいは融合タンパク質として発現させた後に続けてさらに小さなサブユニットに分解することができる。
【0163】
本明細書の文脈において、「免疫原性」は、免疫応答を誘発する能力を指す。この応答は、例えば、本発明のタンパク質が、好適なアジュバントを含み/必要とし得る適切な製剤として投与される場合に生じる。所要の免疫原性応答を得るためには、元の用量と同様の用量またはそれより少ない用量を含むブースター(異なる実体を用いたブースティング、すなわち異種ブースティングを含む)が必要となる可能性がある。
【0164】
本発明による組成物/医薬製剤は、プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来する抗原(例えば、DBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPまたはこれらのフラグメントから選択される抗原)などの1種以上の他の抗原も混合して含み得る。
【0165】
他の例では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原としては、PfEMP-1、Pfs16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPが挙げられる。他のプラスモディウム抗原としては、プラスモディウム・ファルシパルムのEBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモディウム属の種におけるこれらの類似体が挙げられる。
【0166】
本発明のワクチンでは、上記のハイブリッド抗原の水溶液を直接使用することができる。別法として、前もって凍結乾燥させた、もしくは凍結乾燥させていない本発明のタンパク質を、アジュバント(限定するものではないが、例えばミョウバン、ムラミルジペプチド、Quil Aなどのサポニンが挙げられる)と共に混合し、あるいはこれらと共に吸収させることができる。
【0167】
特定のアジュバントは、金属塩が、別のアジュバントとの組み合わせにおいてのみ用いられ、約60%以下の抗原が金属塩上に吸着されるようにこれらが製剤化されない限り単独では用いられないという条件で、金属塩、水中油型エマルション、Toll様受容体アゴニスト、(特にToll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニスト)、サポニンまたはこれらの組み合わせの群から選択されるアジュバントである。さらに具体的には、約50%以下、例えば40%の抗原が金属塩上に吸着され、1つの実施形態においては、約30%以下の抗原が金属塩上に吸着される。金属塩上に吸着される抗体のレベルは、当技術分野で周知の技術によって測定することができる。遊離抗原のレベルは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などのリン酸イオンの存在下で本発明の組成物を製剤化することによって、または金属塩に対する抗原の割合を増やすことによって増加させることができる。1つの実施形態では、アジュバントは、金属塩を単独のアジュバントとしては含まない。1つの実施形態では、アジュバントは金属塩を含まない。
【0168】
1つの実施形態において、アジュバントはToll様受容体(TLR)4リガンドであり、例えば、リピッドA誘導体(特にモノホスホリルリピッドAまたは、さらに具体的には3-脱アシル化モノホスホリルリピッドA(3D-MPL))などのアゴニストである。
【0169】
3-脱アシル化モノホスホリルリピッドAは、米国特許第4,912,094号および英国特許出願番号第2,220,211号(Ribi)から公知であり、Ribi Immunochem, Montana, USAから入手可能である。
【0170】
3D-MPLは、Corixa corporationから商標MPL(登録商標)の下に販売されており、主としてIFN-g(Th1)表現型に対するCD4+T細胞の応答を促進する。3D-MPLは、GB 2 220 211 Aに開示されている方法に従って製造することができる。化学的には、3D-MPLは3-脱アシル化モノホスホリルリピッドAと、3、4、5または6アシル化鎖との混合物である。通常は、本発明の組成物中で、小粒子3D-MPLが用いられる。小粒子3D-MPLは、0.22μmのフィルターを通して滅菌ろ過され得るような粒子サイズを有する。このような調製は、国際特許出願のWO 94/21292号に記載されている。
【0171】
リピッドAの合成誘導体は公知であり、限定するものではないが、以下に挙げられるようなTLR4アゴニストであると考えられている。
【0172】
OM174 (2-デオキシ-6-O-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)(WO 95/14026)。
【0173】
OM294 DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(ジヒドロゲンホスフェート)(WO99 /64301およびWO 00/0462)。
【0174】
OM197 MP-Ac DP(3S-,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-ジヒドロゲンホスフェート 10-(6-アミノヘキサノエート)(WO 01/46127)。
【0175】
典型的には、3D-MPLを使用する場合、抗原と3D-MPLはミョウバンと共に送達され、または水中油型エマルションもしくは多重水中油型エマルションとして提供される。3D-MPLの組み込みは、これがエフェクターT細胞応答の促進剤であるため有利である。別法として、3D-MPLをリポソームとして製剤化することができる。
【0176】
使用し得る他のTLR4リガンドは、WO 9850399またはUS 6303347(AGPの調製方法も開示されている)に開示されるようなグルコサミンリン酸アルキル(AGP)、またはUS 6764840に開示される、製薬上許容されるAGPの塩である。一部のAGPはTLR4アゴニストであり、他の一部はTLR4アンタゴニストである。いずれもアジュバントとして有用であると考えられる。
【0177】
本発明で使用する別の免疫賦活剤は、Quil Aおよびその誘導体である。Quil Aは、南米の木であるキラヤ・サポナリア・モリナ(Quilaja Saponaria Molina)から単離されるサポニン調製物であり、これがアジュバント活性を有することは、Dalsgaardらが1974年に初めて記載した("Saponin adjuvants", Archiv. fuer die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)。Quil Aに伴う毒性を有することなくアジュバント活性を保持しているQuil Aの精製フラグメント(例えば、QS7とQS21(QA7とQA21としても公知))は、HPLCによって単離されている(EP 0 362 278)。QS21は、キラヤ・サポナリア・モリナの樹皮に由来する天然のサポニンであり、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および主要なIgG2a抗体応答を誘導する。
【0178】
ステロールをさらに含むQS21の特定の製剤が記載されている(WO 96/33739)。QS21:ステロールの比は、典型的には、重量比でほぼ1:100〜1:1程度である。
【0179】
通常は、過剰のステロールが存在し、QS21:ステロールの比は、少なくとも1:2 w/wである。典型的には、ヒトへの投与のためには、QS21とステロールは、ワクチン中に約1μg〜約100μgの範囲(例えば、単位用量当たり約10μg〜約50μg)で存在する。
【0180】
リポソームは一般的に、例えば、通常は室温で非晶質のホスファチジルコリン(例えば卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンまたはジラウリルホスファチジルコリン)などの中性脂肪を含む。
【0181】
リポソームは、飽和脂質で構成されるリポソームのリポソーム-QS21構造の安定性を高める荷電脂質も含み得る。これらの場合、荷電脂質の量は1〜20% w/w、例えば5〜10%であることが多い。リン脂質に対するステロールの比は、1〜50%(モル/モル)、例えば20〜25%である。
【0182】
これらの組成物は、MPL(3-脱アシル化モノホスホリルリピッドA、3D-MPLとしても公知)を含み得る。3D-MPLは、3種類の、4、5または6個のアシル化鎖を有する脱-O-アシル化モノホスホリルリピッドAの混合物として、GB 2 220 211(Ribi)から公知であり、Ribi Immunochem(Montana)により製造されている。
【0183】
通常、本発明の組成物中では、0.22μmのフィルターを通して滅菌ろ過され得るような粒子サイズを有する小粒子3D-MPLが用いられる。このような調製は、WO 94/21292号に記載されている。
【0184】
サポニンは、コレステロールおよび脂質と共に製剤化される場合には、ミセル、混合ミセル(通常、限定するものではないが、胆汁塩を含む)の形態、またはISCOMマトリックス(EP 0 109 942)、リポソームもしくは関連のコロイド構造(例えばワーム様もしくはリング様多量体複合体または脂質/層状構造およびラメラ)の形態に分けることが可能であり、あるいは水中油型エマルション(例えば、WO 95/17210に記載されるような)の形態に分けることができる。サポニンは、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの金属塩と会合させ得ることが多い(WO 98/15287)。
【0185】
通常、サポニンは、リポソーム、ISCOMまたは水中油型エマルションの形態で提供される。
【0186】
免疫賦活オリゴヌクレオチドも使用することができる。本発明のアジュバントまたはワクチンとして使用するためのオリゴヌクレオチドの例として、CpG含有オリゴヌクレオチド(通常は、少なくとも3個、大抵は少なくとも6個以上のヌクレオチドで分けられた2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含む)が挙げられる。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチドにグアニンヌクレオチドが続くものである。CpGオリゴヌクレオチドは、典型的にはデオキシヌクレオチドである。1つの実施形態において、このオリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間結合はホスホロジチオエートであり、またはさらに好ましくはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲に含まれる。同様に本発明の範囲内に包含されるのは、混合したヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートの製造法は、US 5,666,153、US 5,278,302およびWO 95/26204に記載されている。
【0187】
オリゴヌクレオチドの例は、以下のとおり:
TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)
TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456)
であり、これらの配列は、ホスホロチオエート改変ヌクレオチド間結合を含み得る。
【0188】
代替CpGオリゴヌクレオチドは、重要ではない欠失または付加を有する1つ以上の上記の配列を含み得る。
【0189】
CpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって合成することができる(例えば、EP 468520参照)。好都合なことに、このようなオリゴヌクレオチドは自動合成装置を利用して合成することができる。
【0190】
TLR2アゴニストの例として、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が挙げられる。イミキモッドおよびレシキモッドなどのイミダゾキノリン類は、公知のTLR7アゴニスト類である。一本鎖RNAも公知のTLRアゴニスト(ヒトではTLR8、またマウスではTLR7)であり、他方、二本鎖RNAおよびポリIC(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸-ウイルスRNAの市販の合成模倣物)は、典型的なTLR3アゴニストである。3D-MPLはTLR4アゴニストの一例であるが、他方、CpGはTLR9アゴニストの一例である。
【0191】
免疫賦活剤は、別法として、あるいは付加的に包含させることができる。1つの実施形態において、この免疫賦活剤は、3-脱アシル化モノホスホリルリピッドA(3D-MPL)である。
【0192】
アジュバントの組み合わせとして、3D-MPLとQS21(EP 0 671 948 B1)、3D-MPLとQS21を含む水中油型エマルション(WO 95/17210, WO 98/56414)、または他の担体と共に製剤化された3D-MPL(EP 0 689 454 B1)が挙げられる。他の好ましいアジュバント系は、US 6558670およびUS 6544518に記載される、3D-MPL、QS21およびCpGオリゴヌクレオチドの組み合わせを含む。
【0193】
1つの態様において、アジュバントは3D-MPLを含む。
【0194】
1つの態様において、アジュバントはQS21を含む。
【0195】
1つの態様において、アジュバントはCpGを含む。
【0196】
1つの態様において、アジュバントはQS21と3D-MPLを含む。
【0197】
1つの態様において、アジュバントはQS21、3D-MPLおよびCpGを含む。
【0198】
1つの態様において、アジュバントは、水中油型エマルションとして製剤化される。
【0199】
1つの態様において、アジュバントは、リポソームとして製剤化される。
【0200】
本発明の1つの実施形態において、本明細書中に記載のハイブリッドタンパク質(例えばCSV-S)を、3D-MPLおよび担体と組み合わせて含むワクチンが提供される。典型的には、この担体は、水中油型エマルションまたはミョウバンである。
【0201】
さらに具体的には、本発明のハイブリッドタンパク質は、本明細書中に記載の粒子または混合粒子として提供される。
【0202】
本発明のタンパク質を、リポソームなどの微粒子中にカプセル化することもできる。
【0203】
ワクチン調製物は、Vollerら(University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A., 1978)によって編集される"New Trends and Developments in Vaccines"に一般的に記載されている。リポソームへのカプセル化は、例えば、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。
【0204】
各ワクチン用量中に存在する本発明のタンパク質の量は、標準的なワクチン中で重大な副作用を伴うことなく免疫防御応答を誘導する量として選択される。かかる量は、どの特異的免疫源が使用されるか、及びワクチンがアジュバント化されているか否かによって異なる。通常、各単位用量は、1-1000μgのタンパク質、例えば1-200μg(10-100μgなど)、さらに特に10-40μgのタンパク質を含むことが期待される。特定のワクチンの最適量は、抗体力価および患者のその他の応答の観察を含む標準的な研究によって確定することができる。最初のワクチン接種の後、被験体は、好ましくは約4週間以内にブーストを受け、その後、感染のリスクが存在する限り6ヶ月毎にブーストを繰り返す。本発明のタンパク質に対する免疫応答は、アジュバントおよび/または免疫賦活剤の使用により増強される。
【0205】
使用される3D-MPLの量は、通常は少ないが、ワクチン製剤に応じて、単位用量当たり1-1000μg、一般的に単位用量当たり1-500μg、またさらに単位用量当たり1〜100μgなど(単位用量当たり10、20、30、40、50、60、70、80または90μg)の範囲内であってよい。
【0206】
本発明のアジュバントまたはワクチン中のCpGオリゴヌクレオチドまたは免疫賦活オリゴヌクレオチドの量は、通常は少ないが、ワクチン製剤に応じて、単位用量当たり1-1000μg、通常は単位用量当たり1-500μg、またさらに単位用量当たり1-100μgなど(単位用量当たり10、20、30、40、50、60、70、80または90μg)の範囲内であってよい。
【0207】
本発明のアジュバント中で使用するサポニンの量は、単位用量当たり1-1000μg、通常は単位用量当たり1-500μg、さらに単位用量当たり1-250μgなど、またさらに具体的には単位用量当たり1-100μg(単位用量当たり10、20、30、40、50、60、70、80または90μg)の範囲内であってよい。
【0208】
他の態様において、本発明は、本明細書中に記載されるようなプラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来するハイブリッドタンパク質を含む、プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスによって引き起こされるマラリアに対する免疫防御を与えるワクチンの組み合わせを提供する。
【0209】
1つの態様において、本明細書に記載される免疫原性粒子を含み、場合により混合したTRS, Sの免疫原性粒子(WO 93/10152に記載)と適切な免疫賦活アジュバントをさらに含むワクチンが提供される。
【0210】
本発明の製剤は、予防目的の治療および治療目的の治療の両方に用いることができる。
【0211】
従って、本発明は、治療のための、本明細書中に記載される本発明の態様のいずれか(特に医薬として使用するための本明細書中に記載されるワクチン組成物)の使用を提供する。
【0212】
本発明の他の態様は、好適な宿主(好ましくは酵母)中で本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現させるステップと、その産物を回収するステップとを含んでなる、本発明のハイブリッドタンパク質の製造方法を提供することである。
【0213】
本発明は、本明細書に記載の態様を1つ以上用いる、ワクチンなどの医薬組成物の製造方法にも及ぶ。
【0214】
本発明の他の態様は、上記のワクチンの有効量を投与することによりプラスモディウム感染に感受性の患者を治療する方法にある。
【0215】
ワクチンは、非経口ワクチンを包含する。
【0216】
このように本発明は、治療のための、本発明のハイブリッド融合タンパク質および/またはリポタンパク質粒子のような抗原およびこれらを含む組成物の使用、ならびに特にマラリア(例えばプラスモディウム・ビバックスおよび/またはプラスモディウム・ファルシパルムによって引き起こされるマラリア)の治療用/予防用の医薬の製造における使用に及ぶ。
【0217】
タンパク質および/またはこれをコードするウイルスベクターは、例えばWO 2004/037189に具体的に記載されているとおり、プライムブーストレジメンにおいて投与することができる。
【0218】
本明細書の文脈において、含む(comprising)は、包含する(including)と解釈される。
【0219】
特定のエレメントを含む本発明の態様はまた、関連の要素「からなる」あるいは関連の要素「から本質的になる」上記の態様にまで及ぶことも意図する。
【実施例】
【0220】
実施例1
Y1834株の説明
酵母組換え株Y1834は、CSV-S融合タンパク質を発現する。この株は、組換え発現ベクターpRIT15546で形質転換されたサッカロミセス・セレヴィシエ宿主株DC5からなる。
【0221】
DC5は、以下の遺伝子型:leu2-3、leu2-112、his3、can1-11を有する実験室酵母株(ATCC No: 20820)である。二重leu-2変異は、機能的LEU-2遺伝子のコピーを運ぶpRIT15546ベクターの取り込みと維持の選択を可能とする。成長培地からロイシンが欠如している場合、LEU-2遺伝子を有するベクターを含む細胞だけが成長することができる。
【0222】
ベクターpRIT15546は、CSV-S発現カセットを含む酵母エピソーム型発現ベクター(2μベースのベクター)である。組換え発現は、酵母TDH3遺伝子に由来するプロモーターによって駆動される(構成的発現)。pRIT15546ベクターの構築は、以下に詳述する。
【0223】
pRIT15546ベクターの構築
酵母発現用の適切なコドン使用頻度を有するCSV合成遺伝子を構築し、pUC57ベクター中にサブクローン化した(GenBank/EMBL 受託番号Y14837)。結果として得られたプラスミドpUC57/CSVと酵母発現ベクターpGf1-S2を、両方とも適切な酵素で制限した。ベクターpGf1-S2は、多段階クローニング法により(GSKにおいて)構築した。S発現カセットを既に含むこのベクターは、B型肝炎ウイルスのS遺伝子とのN末端インフレーム融合などの融合遺伝子の構築を可能とする。配列検証後の最終的な発現ベクターは、pRIT15546と名付けた(図3)。
【0224】
DC5株の形質転換
ロイシンおよびヒスチジン栄養要求性DC5株を、酵母標準プロトコルを用いて組換えプラスミドpRIT15546で形質転換した。形質転換した細胞を、寒天選択プレート上にプレーティングした。1つの形質転換細胞を選択し、Y1834という正式名称を受けた。
【0225】
組換えタンパク質の発現:
Y1834を、30℃において、最終濃度8μg/mlになるまでヒスチジンを補充したYNB(Yeast Nitrogen Base、Kracker Scientific社から発売)最小培地中で、O.D.(620nm)が約0.5(本発明では0.770)になるまで成長させる。その後細胞を回収し、細胞抽出物を調製する。
【0226】
抽出物の調製:
細胞を破壊緩衝液中で再懸濁し、機械的に破壊する(ガラスビーズ)。抽出物は、5000rpmで5-10間遠心分離する。上清画分はSDS-PAGE(4-20%)にかける。
【0227】
破壊緩衝液: 50mM リン酸ナトリウム緩衝液(PH:7.5)
4mM EDTA
Tween20(0.5%)
+プロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete/ROCHE社)
細胞濃度: 5mlの破壊緩衝液中に100 mlの培養液(OD:0.5)
= 濃度10 OD単位/ml。
【0228】
粗抽出物の浄化(清澄化): 抽出物は、5-10分間/5000rpmで遠心分離した。
【0229】
組換えタンパク質の検出
浄化した抽出物をSDS-PAGE(4-20%)にかけ、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、免疫染色に供した。図2を参照されたい。
【0230】
ウェスタンブロット解析:
試薬 = マウスモノクローナル抗体抗S(GSK Biologicalsが製造)-(希釈:1/500)
市販の抗S抗体は、本発明の方法において用いられり抗S抗体に代替し得る。別法として、抗CSV抗体を使用することができる(例えば国立衛生研究所(NIH)から入手可能な、MR4として知られる抗CSV抗体)。
【0231】
CSV-S融合タンパク質:
理論分子量: 51794ダルトン
見掛けの分子量:55 kDa
実施例2:
Y1840株の説明
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)株Y1840は、CSV-S融合タンパク質を発現する。Y1840株は、ゲノム中に組み込まれたCSV-S融合遺伝子の4つのコピーを含む。CSV-S融合タンパク質を発現する株を得るため、ピキア・パストリス株GS115を、CSV-Sカセットと機能的HIS4遺伝子を含む組み込み線状DNAフラグメントで形質転換した。
【0232】
GS115は、以下の遺伝子型:his4を有する実験室酵母株(受託番号:20864)である。このhis4変異は、CSV-Sカセットと機能的HIS4遺伝子を含むpRIT15607由来の線状DNAフラグメントの取り込みの選択を可能とする。
【0233】
ベクターpRIT15607は、CSV-S発現カセットを含むピキア・パストリス組み込み発現ベクターである。組換え発現は、強力な、厳密に調節されたメタノール誘導性AOX1プロモーターによって駆動される。pRIT15607ベクターの構築は以下に詳述する。
【0234】
pRIT15607ベクターの構築
pRIT15546上に存在するCSV-S融合遺伝子をPCRで増幅し、pGEM-T Easy中間ベクター(Promega、カタログ番号A1360)中にクローン化した。配列検証後、この組換えプラスミドを適切な制限酵素で消化し、pHIL-D2ピキア・パストリス組み込みベクター中にクローン化した。配列検証後、最終的な発現ベクターをpRIT15607と名付けた(図5)。pRIT15607プラスミドにコードされるCSV-S融合タンパク質は、メチオニン2がバリンで置換されていることを除いて、配列番号17に詳述される配列とほとんど同一である(配列番号19および配列番号20参照)。NotIエンドヌクレアーゼを用いたpRIT15607の消化は、内在性AOX1遺伝子座での相同組換えによって酵母ゲノム中に組み込まれ得る、6816bpの線状フラグメントを遊離させる。
【0235】
GS115株の形質転換
GS115宿主株を、組換えプラスミドpRIT15607で形質転換した。形質転換前に、発現カセットとHIS4選択マーカーを含む線状DNAフラグメントを放出させるために、NotIを用いて組み込みベクターを制限した。NotI制限は、AOX1遺伝子座における組み込みを助ける。形質転換させた細胞は、寒天選択プレート上にプレーティングした。定量的ドットブロット解析によって多コピー組み込みクローンを選択した。選択された、高いコピー数の組み込みCSV-S発現カセットを有するクローンのうち、最も高いCSV-S組換えタンパク質の発現レベルを示す1つのクローンを選択し、正式名称Y1840を与えた。このクローンは、CSV-S融合遺伝子の4つのコピーを含む。
【0236】
組換えタンパク質の発現:
Y1840を、30℃で、炭素源として1%グリセロールを補充したYNB(Yeast Nitrogen Base、Kracker Scientific社から発売)最小培地中で、O.D.(620nm)が約0.5(この場合は0.709)になるまで成長させる。その後細胞を回収し、炭素源(誘導物質)として1%メタノールを補充した同量のYNB培地中に再懸濁し、30℃で約16時間インキュベートする。
【0237】
抽出物の調製:
メタノール誘導した細胞を遠心分離し、細胞ペレットを破壊緩衝液中で再懸濁し、機械的に破壊する(ガラスビーズまたはフレンチプレス)。抽出物は、5〜10分間、5000rpmで遠心分離する。上清画分は、SDS-PAGE(12.5%)にかける。
【0238】
破壊緩衝液: 60mM Na2HPO4
40mM NaH2PO4
1mM MgSO4
10Mm KCl
Tween20(0.5%)
2Mm PMSF
細胞濃度: 2.5 mlの破壊緩衝液中に100 mlの培養液(OD:0.5)
= 濃度20 OD単位/ml。
【0239】
粗抽出物の浄化: 抽出物は、5-10分間/5000rpmで遠心分離した。
【0240】
組換えタンパク質の検出
浄化した抽出物をSDS-PAGE(12.5%)にかけ、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、免疫染色に供した。図6を参照されたい。
【0241】
ウェスタンブロット解析:
試薬: マウスモノクローナル抗体抗S(GSK Biologicalsが製造)
-(希釈:1/250)
市販の抗S抗体は、本発明の方法において用いられる抗S抗体に代替し得る。別法として、抗CSV抗体を使用することができる(例えば国立衛生研究所(NIH)から入手可能な、MR4として知られる抗CSV抗体)。
【0242】
CSV-S融合タンパク質: 理論分子量: 51762ダルトン
見掛けの分子量:55 kDa
実施例3:
Y1835株の説明
酵母組換え株Y1835は、CSV-S融合タンパク質とS抗原とを同時に発現する。CSV-SとSタンパク質を共発現する株を得るため、S発現カセットの5つの組み込みコピーを既に含むサッカロミセス・セレヴィシエ株Y1295を、組換え組み込み発現ベクターpRIT15582で形質転換した。
【0243】
Y1295株は、多段階形質転換法によってGSKにおいて構築した。Y1295株の構築は、WO 93/10152に記載されている。Y1295株は、以下の遺伝子型:leu2-3、leu2-112、gal1を有する。leu-2の変異は、CSV-Sカセットと機能的LEU2遺伝子を含むpRIT15582由来の線状DNAフラグメントの取り込みの選択を可能とする。
【0244】
ベクターpRIT15582は、CSV-S発現カセットを運ぶ酵母組み込み発現ベクター(Tyベースのベクター)である。組換え発現は、酵母TDH3遺伝子に由来するプロモーターによって駆動される(構成的発現)。pRIT15582ベクターの構築は、以下に詳述する。
【0245】
pRIT15582組み込みベクターの構築
pRIT15582ベクターを構築するために使用した出発物質は、発現プラスミドpRIT15546(図3)であった。このプラスミドの構築は、実施例1に記載される。HindIIIエンドヌクレアーゼを用いたpRIT 15546の消化により、完全なCSV-S発現カセット(pTDH3 + CSV-S + tARG3)に対応する、3706bpの長さのDNAフラグメントが遊離する。このHindIII DNAフラグメント(T4DNAポリメラーゼで充填後)を、Tyベースの組み込みベクターpRIT13144上の固有のSalIクローニング部位に挿入した(SalI制限/T4処理)。結果として得られたプラスミドpRIT15582は、上記の発現カセットに加えて、選択マーカーとして酵母LEU2遺伝子を含む(図8)。XhoIエンドヌクレアーゼを用いたpRIT15582の消化により、内在性Tyエレメントを含む自由端の相同組換えによって酵母ゲノム中に組込まれ得る、図4に示す8500bpの線状フラグメントが遊離する。
【0246】
Y1295株の形質転換
SとCSV-Sタンパク質の両方を発現する株を得るため、Y1295株を8500bpの線状XhoIフラグメント(図9)で形質転換し、Leu+コロニーを選抜した。様々な割合でゲノム中に存在する、両方の発現カセットのセットを含む幾つかの組み込み体を得た。CSV-Sカセットの4つのコピーを含む1つの形質転換体を選択し、正式名称Y1835が与えられた。
【0247】
組換えタンパク質の発現:
Y1835を、30℃で、YNB(Yeast Nitrogen Base、Kracker Scientific社から発売)最小培地中で、O.D.(620nm)が約0.5(0.8)になるまで成長させる。その後細胞を回収し、細胞抽出物を調製する。
【0248】
免疫ブロッティングによる発現産物の解析:
抽出物の調製:
細胞を破壊緩衝液中で再懸濁し、機械的に破壊する(ガラスビーズ)。抽出物は、5000rpmで5-10分間遠心分離する。上清画分はSDS-PAGE(12.5%)にかける。
【0249】
破壊緩衝液: 50mM リン酸ナトリウム緩衝液(PH:7.5)
4mM EDTA
Tween20(0.5%)
+プロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete/ROCHE社)
細胞濃度: 2.5mlの破壊緩衝液中に100 mlの培養液(OD:0.5)
= 濃度20 OD単位/ml。
【0250】
粗抽出物の浄化: 抽出物は、5-10分間/5000rpmで遠心分離した。
【0251】
組換えタンパク質の検出
浄化した抽出物をSDS-PAGE(12.5%)にかけ、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、免疫染色に供した。
【0252】
ウェスタンブロット解析(図10):
試薬: 1/マウスモノクローナル抗体抗S(GSK Biologicalsが製造)
-(希釈:1/250)
2/ウサギポリクローナル抗体抗CSV(WRAIRが好意により提供)
-(希釈:1/20,000)。
【0253】
市販の抗S抗体ならびに抗プラスモディウム・ビバックス/CSP抗体は、本発明の方法において用いられる抗S抗体ならびに抗プラスモディウム・ビバックス/CSP抗体に代替し得る。
【0254】
参考文献:








【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. プラスモディウム・ビバックス(P.vivax)のI型スポロゾイト周囲タンパク質の反復領域に由来する1つ以上の反復ユニット、
b. プラスモディウム・ビバックスのII型スポロゾイト周囲タンパク質の反復領域に由来する1つ以上の反復ユニット、および
c. B型肝炎ウイルスに由来する表面抗原S、またはそのフラグメント
を含む免疫原性ハイブリッド融合タンパク質。
【請求項2】
タンパク質が、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来するN末端フラグメントをさらに含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
N末端フラグメントが、配列番号1に示されるような領域(I)として知られるフラグメントを含む、請求項2に記載のタンパク質。
【請求項4】
タンパク質が、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来するC末端フラグメントをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
C末端フラグメントが、配列番号2に示されるモチーフのような領域(II)として知られる部分を含む、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
I型反復ユニットが、プラスモディウム・ビバックスの株:ラテンアメリカ株(すなわちSal 1、Belem)、朝鮮株、中国株、タイ株、インドネシア株、インド株、およびベトナム株の1種以上に由来する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項7】
I型反復ユニットが、配列番号3〜9に示される単量体の1種以上から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項8】
I型反復ユニットを9つ以上含む、請求項6または7に記載のタンパク質。
【請求項9】
II型単量体が、配列番号10または14に示される単量体の1種以上から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項10】
II型反復配列を1つ含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項11】
プラスモディウム・ビバックスの特定のアジア株に見られる反復領域の末端に位置する12アミノ酸挿入をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項12】
アミノ酸が配列番号11に示されるアミノ酸である、請求項11に記載のタンパク質。
【請求項13】
B型肝炎のS抗原がadw血清型に由来する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項14】
プラスモディウム・ファルシパルム(P. falciparium)および/またはプラスモディウム・ビバックスに由来する1つ以上の他の抗原をさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項15】
抗原が、DBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPから選択される、請求項14に記載のタンパク質。
【請求項16】
配列番号13に示されるハイブリッドスポロゾイト周囲タンパク質配列を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のハイブリッド融合タンパク質と、アジュバントとを含む組成物。
【請求項18】
アジュバントが、
水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの金属塩、
水中油型エマルション、
Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニストなどのToll様受容体アゴニスト、
Quil AならびにQS7および/またはQS21のようなQuil Aの誘導体などのサポニン、
CpGを含むオリゴヌクレオチド、
3D-MPL、
(2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)、
DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール-1,10-ビス(ジヒドロゲンホスフェート)、および
MP-Ac DP(3S-,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール-1-ジヒドロゲンホスフェート 10-(6-アミノヘキサノエート)、
またはこれらの組み合わせ
を含む群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
アジュバントが:
水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの金属塩と会合したサポニン、
水中油型製剤の形態などの3D-MPL、QS21およびCpGオリゴヌクレオチド、
QS21およびステロールなどのステロールをさらに含むようなリポソーム形態のサポニン、ならびに
ISCOM、
を含む群から選択される、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来する1つ以上の他の抗原を混合してさらに含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
界面活性剤をさらに含む、請求項17〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
界面活性剤が、Tween20などのTween、briji、ポリエチレングリコールから選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
組成物が非経口ワクチンなどのワクチンである、請求項17〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1〜16のいずれか1項に定義されるハイブリッドタンパク質を含む多量体リポタンパク質粒子。
【請求項25】
請求項24に定義される粒子と、1種以上の賦形剤/担体とを含む組成物。
【請求項26】
アジュバントをさらに含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
アジュバントが、
水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの金属塩、
水中油型エマルション、
Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニストなどのToll様受容体アゴニスト、
Quil AならびにQS7および/またはQS21のようなQuil Aの誘導体などのサポニン、
CpGを含むオリゴヌクレオチド、
3D-MPL、
(2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)、
DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール-1,10-ビス(ジヒドロゲンホスフェート)、および
MP-Ac DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール-1-ジヒドロゲンホスフェート 10-(6-アミノヘキサノエート)、
またはこれらの組み合わせ
を含む群から選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
アジュバントが:
水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの金属塩と会合したサポニン、
水中油型製剤の形態などの3D-MPL、QS21およびCpGオリゴヌクレオチド、
QS21およびステロールなどのステロールをさらに含むようなリポソーム形態のサポニン、ならびに
ISCOM、
を含む群から選択される、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来する1つ以上の他の抗原を混合してさらに含む、請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
界面活性剤をさらに含む、請求項25〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
界面活性剤が、Tween20などのTween、briji、ポリエチレングリコールから選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
組成物が非経口ワクチンなどのワクチンである、請求項25〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
治療において使用するための、請求項1〜16のいずれか1項に定義されるタンパク質、または請求項17〜23のいずれか1項に定義される組成物もしくは請求項25〜32のいずれか1項に定義される組成物。
【請求項34】
マラリアの治療/予防用の医薬の製造のための、請求項1〜16のいずれか1項に定義されるタンパク質または請求項24に定義される粒子の使用。
【請求項35】
マラリアがプラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
請求項1〜16のいずれか1項に定義されるタンパク質または請求項17〜23もしくは23〜32のいずれか1項に定義される組成物の有効量を、特にワクチンとして投与し、これによりマラリアを治療または予防するステップを含んでなる、プラスモディウム感染に感受性の患者を治療する方法。
【請求項37】
請求項1〜16のいずれか1項に定義されるタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
【請求項38】
請求項37に定義されるヌクレオチド配列を含む宿主。
【請求項39】
好適な宿主中で前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現させるステップと、その生成物を回収するステップとを含んでなる、請求項1〜16のいずれか1項に定義されるタンパク質の製造方法。
【請求項40】
宿主が酵母である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
酵母が:
サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(S. carlsberoensis)、クリュイベロミセス・ラクティス(K. Lactis)、Y1834およびDC5などの、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomycees)、クリュイベロミセス(Kluveromyces)、ピキア(Pichia)(ピキア・パストリア(Pichia pastoria)など)、ハンセヌラ(Hansenula)(ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)など)、ヤロウィア(Yarowia)、シュワニオミセス(Schwaniomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ザイゴサッカロミセス(Zygoaccharomyces)
を含む群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
生成物が、界面活性剤を含む好適な組成物を用いた処理による宿主細胞の溶解により回収される、請求項40または41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
界面活性剤が、Tween20などのTween、briji、ポリエチレングリコールを含む群から選択される、請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−543569(P2009−543569A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519966(P2009−519966)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057301
【国際公開番号】WO2008/009652
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【出願人】(509016520)
【Fターム(参考)】