マラリア用ワクチン
本発明は、a)免疫原性粒子RTS,Sおよび/または b)1つまたはそれ以上のプラスモディウム・ビバックス(P. vivax)株のCSタンパク質およびB型肝炎に由来するS抗原ならびに場合により非融合S抗原に由来する免疫原性粒子、または c)RTS、CSV-Sおよび場合により非融合S抗原を含む免疫原性粒子、および d)少なくとも1つのチオール官能基を有する安定化剤またはそれらの混合物を含む安定化剤を含む、マラリアワクチン用の構成成分に関する。また上記構成成分の調製方法、医療(特にマラリア感染の予防)におけるその使用、上記構成成分を含む組成物/ワクチンおよび特に治療における上記ワクチンの使用も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マラリアの治療用の安定化リポタンパク質粒子、その調製方法、医療(特にマラリア感染の予防)におけるその使用、上記粒子を含む組成物/ワクチンおよび特に治療における上記ワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは世界の主要な健康問題の1つであり、この疾患により毎年200〜400万人以上の人々が死亡している。この疾患の最も蔓延している形態の1つは、熱帯および亜熱帯の地域にみられる寄生原虫であるプラスモディウム・ビバックス(P.vivax)によって引き起こされる。興味深いことに、この寄生虫は15℃という低温で蚊サイクルを完結することができ、マラリアが温帯気候において蔓延するのを可能としている。
【0003】
この疾患の最急性型の1つは、マラリアに起因する死亡の大半に関与する寄生原虫であるプラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum(P. falciparum))によって引き起こされる。
【0004】
プラスモディウム(Plasmodium)の生活環は複雑であり、完結するためには2つの宿主(ヒトおよび蚊)を必要とする。ヒトの感染は、感染した蚊の咬傷を介した血流中へのスポロゾイトの接種によって始まる。このスポロゾイトは肝臓へ移動し、そこで肝細胞に感染して、赤血球外細胞内段階を経てメロゾイト段階へと分化してこれが赤血球(RBC)に感染し、無性血液段階で循環複製を開始する。このサイクルは、RBC中の多数のメロゾイトが有性段階の生殖母細胞へと分化することによって完結し、この生殖母細胞は蚊に摂取され、中腸において一連の段階を経て成長してスポロゾイトを産生し、これが唾液腺へと移動する。
【0005】
プラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる疾患が致命的であることはほとんどないという事実から、マラリアを予防および治療するための取り組みは、プラスモディウム・ファルシパルム(P.ファルシパルム)によって引き起こされるより致死性の疾患に集中している。
【0006】
プラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる疾患は、通常は患者の死亡をもたらさないが、増加しているように思われる症例の量、患者の生活の質に及ぼす甚大な影響、貧血および死亡をもたらす当該疾患の重度罹患率の増加の報告、ならびに経済的影響のために、この疾患に対する有効なワクチン接種は依然として必要とされている。さらに、単一のワクチンで、該疾患の両方の病原に対する防御を提供することができれば有利であろう。
【0007】
プラスモディウム・ビバックスの特徴は、一部の株が、末梢循環に出現して臨床症状を示す前に、肝臓中に残っている潜在型によって遅延型感染を引き起こし得ることである。このため、個人が例えば伝染病汚染地域を旅行する場合、感染する可能性があり、なおかつ数ヶ月間症状を示さない可能性がある。これはマラリアの蔓延を引き起こす可能性があり、このため伝染病汚染地域へ旅行する人は、伝染病汚染地域への旅行後一定の期間中、輸血のための献血を行うことが禁じられている。
【0008】
プラスモディウム・ビバックスによるマラリア感染は、この寄生虫が前赤血球段階でのシゾゴニー(胞子虫類の無性生殖による増殖)を行う間、肝臓内に潜伏したままとなる。寄生虫が肝臓から抜け出す前のこの段階で寄生虫が制御される場合、患者にはこの疾患の臨床症状は観察されない。
【0009】
プラスモディウムのスポロゾイト段階は、マラリアワクチンの潜在的な標的として同定されている。不活性化した(放射線照射された)スポロゾイトを用いたワクチン接種は、実験上のヒトマラリアに対する防御を誘導することが示されている(Am. J, Trop. Med. Hyg 24: 297-402, 1975)。しかし、この方法に基づき、放射線照射されたスポロゾイトを用いて一般向けのマラリア用ワクチンを実用的且つロジスティックに製造することは可能となってはいない。
【0010】
スポロゾイトの主要な表面タンパク質は、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)として知られている。このタンパク質は、スポロゾイトが、蚊による接種の開始部位から血液循環(ここでスポロゾイトが肝臓へ移動する)へと移行する間、その運動性および侵入に関与すると考えられている。
【0011】
プラスモディア(Plasmodia)属種のCSタンパク質は、非反復アミノ基末端(N末端)フラグメントとカルボキシ末端(C末端)フラグメントにはさまれた中央の反復ドメイン(反復領域)によって特徴付けられる。このプラスモディウム・ビバックスの中央ドメインは、幾つかの反復ユニット(通常は、9個の直列アミノ酸からなる)のブロックで構成される。
【0012】
特定のアジア株では、中央反復領域の後に約12アミノ酸の付加配列が存在している(配列番号11を参照)。この付加配列の機能は未知である。しかし、研究はされていないが、一部の研究者によって、該アミノ酸がこの疾患の臨床症状の発症遅延に関連する可能性があるという仮説が立てられている。この付加配列のN末端は、領域Iとして知られる5アミノ酸の配列(配列番号1を参照)によって特徴付けられると考えられている。またC末端は、領域IIとして知られる12アミノ酸の配列を含むことによって特徴付けられるとも考えられている。領域IIは、全てのマラリアCSタンパク質間で高度に保存されている細胞接着モチーフを含む(配列番号2を参照)。
【0013】
幾つかのグループは、スポロゾイト周囲タンパク質に基づくサブユニットワクチンを提案している。これらのワクチンのうち2種類(中央反復領域のみに基づくワクチン)は1980年代初頭に臨床試験を経ており、その一方は合成ペプチドで、他方は組換えタンパク質であった(Ballouら Lancet: June 6 (1987) 1277頁以降およびHerringtonら Nature 328:257 (1987))。これらのワクチンは、抗スポロゾイト応答を刺激することに成功した。それにも関わらず、一部のワクチンが全く応答を生じさせなかったため、応答の大きさは満足のいくものではなかった。さらに、追加注射後の抗体レベルの「ブースティング(追加免疫)」の不在およびin vitroリンパ球増殖アッセイの結果は、これらのボランティアの大半のT細胞が、上記の免疫優勢反復配列を認識しなかったことを示唆していた。さらに、これらの2種類のワクチンの効力はわずかであり、ワクチン接種を受けたボランティアの1人のみが寄生虫血症を発症しなかったに過ぎなかった。これらのワクチンは、それ以上探究されなかった。
【0014】
WO 93/10152およびWO 98/05355は、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来するワクチンについて記載しており、これらの文献に記載される方法を用いて、プラスモディウム・ファルシパルムに対するワクチン接種について多少の進歩がもたらされたと考えられる。Heppnerら 2005, Vaccine 23, 2243-50も参照のこと。
【0015】
現在まで、臨床において最も進歩したマラリアワクチンは、RTS,Sと呼ばれるリポタンパク質粒子(ウイルス様粒子としても知られる粒子)に基づいている。この粒子は、直鎖リンカーを介してB型肝炎に由来するS抗原のN末端にインフレームで融合した、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質の一部(実質的にプラスモディウム・ファルシパルム(株NF54/3D7)のCSタンパク質のアミノ酸207〜395に対応する)を含む。上記のリンカーは、S抗原に由来するpreS2の一部を含み得る。さらなる詳細については、以下の考察を参照されたい。
【0016】
プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質は、保存された中央反復領域を有する。対照的に、プラスモディウム・ビバックスについては、少なくとも2つの形態の(VK210またはI型、およびVK247またはII型と呼ばれる)CSタンパク質が知られている。このことは、CSタンパク質の特定の種類にかかわらずプラスモディウム・ビバックスに対する一般的な防御を与える望ましい特性(免疫原性など)を全て有するCSタンパク質の構築物を同定することを、より困難にしている。なぜなら、I型の中央反復領域に向けられた抗体は、II型の対応する領域上のエピトープを必ずしも認識せず、逆もまた同様であるためである。
【0017】
発明者らが認識している限りでは、プラスモディウム・ビバックスの単一株に基づくRTS,Sに対応する粒子は提案されていない。
【0018】
WO 2006/088597には、ハイブリッドプラスモディウム・ビバックスCSタンパク質が記載されている。
【0019】
PCT/EP2007/057301には、WO 2006/088597のハイブリッドタンパク質とB型肝炎に由来するS抗原を含む融合タンパク質(本明細書中でCSV-Sと呼ばれる)およびこれを含むリポタンパク質粒子が記載されている。
【0020】
PCT/EP2007/057296には、CSV-S、RTSおよび場合によりSユニットを含むリポタンパク質粒子が記載されている。
【0021】
現在では、RTS,Sマラリアワクチンは、送達の直前にアジュバントで再構成される凍結乾燥抗原として提供されている。これは抗原が、特にアジュバントの存在下では、相当期間保存される場合に不安定であるためである。不安定性は、凝集および/または分解として現れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
2018/2019年までに、8300万回投与量のマラリアワクチンが必要となるだろうという試算がある。現在の凍結乾燥法は約40時間かかる。このため、現在の方法が将来のニーズに応えられるとは考えにくい。凍結乾燥サイクルを約28時間まで低下させることができるかもしれないが、これでもまだニーズに応えられる可能性は低い。さらに、サイクル時間をさらに低下させると、不満足な生成物が生じると考えられる。
【0023】
マラリアワクチンは、主にインフラストラクチャーおよび設備が不足している国での送達のためのものであるため、ワクチンが提供される形態が(特に液体製剤が提供される場合)投与まで安定であることが極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明者らが作成した予備データは、リン酸緩衝生理食塩水中で調製され、残存量のポリソルベート80(0.0062% w/w)を含むが、追加の賦形剤を有さないRTS,S精製バルク(pH 6.1)が、加速安定性試験(すなわち37℃で7日間の保存)の後に顕著な分解と酸化的凝集を示したことを示した。4℃で2ヶ月間の保存の後、わずかな凝集と分解だけが観察された。
【0025】
以下の選択肢を検討した:
・6.1から7.4まで増加したpHは、S抗原の分解を低下させたがCSタンパク質の分解を増加させたと考えられる;
・ポリソルベート80(Tween 80とも呼ばれる)濃度の0.05、0.5および1.0%までの増加が凝集と分解の両方を増加させたと考えられるが、通常は、Tween 80は抗原の凝集を減少させるため、これは驚くべきことである(発明者らは、このことが、タンパク質/抗原中のチオール基の酸化を触媒し得るTween中の残存過酸化物の存在に起因するという仮説を立てており、本発明による還元剤の使用は、この影響を防ぐと考えられる);および
・スクロース(6.2% w/w)の添加は、凝集または分解に影響を与えなかった。
【0026】
凝集過程は多くの段階において起こり、これらの段階の1つを首尾よく防ぐことができれば、凝集および/または分解を防ぐことができるという仮説が立てられている(参考文献:T.E.Creighton編-IRL Press、Oxford University Press、“Protein function: a practical approach”中のD.B. Volkin & A.M. Klibanovによる“Minimizing protein inactivation”)。
【0027】
第1段階は天然タンパク質のアンフォールディングであり、これによりこのタンパク質のより多くの疎水性領域が露出する。この疎水性領域の露出は、幾つかのタンパク質の集合をもたらす。最終段階は、ジルスフィド結合の形成によるタンパク質の不可逆的変性である。
【0028】
また、抗原を可溶化するために添加したポリソルベート80が、凝集および/または分解を触媒する残存過酸化物を含む可能性もある。
【0029】
発明者らは、多くの安定化剤/方法、例えば糖、多価アルコール、共溶媒、ポリマー、イオン、pH、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、および界面活性剤を試してみたが、所望の効果は得られなかった。例えば、アスコルビン酸の添加は顕著な凝集をもたらした。EDTA単独または抗酸化剤の存在下でのEDTAの使用は、凝集を妨げなかった。さらに亜硫酸塩の添加は、必要な安定化をもたらさなかった。一般的な安定化剤の一部は、最終マラリア製剤において使用されるアジュバント製剤と適合しなかった。今や発明者らは、特定の安定化剤、例えば1つ以上のチオール(-SH)基を含む還元剤(チオ硫酸塩、N-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、還元グルタチオンおよびチオグリコール酸ナトリウムまたはそれらの混合物、特にN-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、チオグリコール酸ナトリウムおよびそれらの混合物、特にモノチオグリセロール、システイン、およびそれらの混合物など)を使用して、プラスモディウムCSタンパク質(ファルシパルムおよび/またはビバックスのCSタンパク質)のリポタンパク質粒子を保存のために安定化させることができると考えている。
【0030】
少なくとも1つのチオール(-SH)基を含むこれらの還元剤に代えてまたはそれと組み合わせて、本発明において用いられるリポタンパク質粒子を、これらが保存されている容器から酸素を除去することによって安定化もしくはさらに安定化させることが可能であり、および/またはこの製剤を光から保護することによって(例えばアンバーガラス容器を使用することによって)その抗原を保護/さらに保護することができる。
【0031】
従って本発明は、以下:
a) 免疫原性粒子RTS,Sおよび/または
b) 1つまたはそれ以上のプラスモディウム・ビバックス株のCSタンパク質およびB型肝炎に由来するS抗原ならびに場合により非融合S抗原に由来する、免疫原性粒子、および/または
c) RTS、CSV-Sおよび場合により非融合S抗原を含む、免疫原性粒子、および
d) 少なくとも1つのチオール官能基を有する還元剤(例えば上記に挙げられるモノチオグリセロール、システイン、N-アセチルシステインまたはそれらの混合物など)を含む(かまたはそれらからなる群から選択される)安定化剤
を含む、マラリアワクチン用の構成成分を提供する。
【0032】
1つの態様において、本発明は上記のa)、b)、c)および場合によりd)を含むマラリアワクチン用の構成成分を提供し、この構成成分の調製には、容器からの酸素の除去および/または例えばアンバーガラス容器を使用することによる光からの製剤の保護などの保護手段が用いられる。
【0033】
有利には、プラスモディウムに由来するCSタンパク質と肝炎に由来するS抗原を含むリポタンパク質粒子抗原は、モノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物、および/またはバイアルからの酸素の除去および/または例えばアンバーガラス容器を使用することによる光に対する製剤の保護などの保護手段を使用して、適切に安定化させることができる。
【0034】
配列リスト
配列番号1 プラスモディウム・ビバックス(P.ビバックス)のN末端の領域I
配列番号2 プラスモディウム・ビバックスのC末端の領域IIの高度保存部分である
配列番号3〜9 プラスモディウム・ビバックスのI型CSタンパク質の多様な反復ユニット
配列番号10 プラスモディウム・ビバックスのII型CSタンパク質に由来する主たる反復ユニット
配列番号11 プラスモディウム・ビバックスのアジア株において認められた追加アミノ酸
配列番号12 プラスモディウム・ビバックスのハイブリッドタンパク質CSVのヌクレオチド配列(大腸菌での発現用に最適化)
配列番号13 プラスモディウム・ビバックスのハイブリッドタンパク質CSVのアミノ酸配列
配列番号14 プラスモディウム・ビバックスのII型CSタンパク質に由来するマイナーな反復ユニット
配列番号15 プラスモディウム・ビバックスのハイブリッドタンパク質CSVのヌクレオチド配列(酵母での発現用に最適化)
配列番号16 ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sのヌクレオチド配列
配列番号17 ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sのアミノ酸配列
配列番号18 RTS発現カセットのヌクレオチド配列
配列番号19 配列番号18からの推定RTS融合タンパク質
配列番号20〜25 CpG含有オリゴヌクレオチドの例。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】酵母エピソームベクターpRIT15546のプラスミドマップ。
【図2】所望の抗原とB型肝炎に由来するS抗原との「融合」に使用された、GSKが調製したプラスミドpGF1-S2のプラスミドマップ。異種DNA配列をSmaI部位間にクローニングし(12bpのSmaI DNAフラグメントの切り出し後)、S遺伝子とのインフレーム融合を生成する。
【図3】pRIT15582のプラスミドマップ。XhoIを用いた消化は、CSV-S発現カセットとLEU2選択マーカーを有し酵母染色体への挿入に用いられる8.5 kbの線状DNAフラグメントを遊離させる。
【図4】CSV-Sカセットを組込むために用いられる線状XhoIフラグメントの制限マップ。
【図5】Y1835株中で産生されたCSV-S,S混合粒子の電子顕微鏡写真。CSV-S,S粒子を、可溶性細胞抽出物から(RTS,S精製法に基づいて)精製し、電子顕微鏡解析に供した。粒子は、リンタングステン酸を用いた陰性染色の後に可視化された。顕微鏡のスケールは100nmに相当する。
【図6】37℃で7日間の保存+/-AOT後のSDS-Page解析を示す。AS01と混合する前(上)またはAS01と混合してから25℃で24時間後(下)の、非還元(左)および還元(右)条件下のNovexゲル。ここで: 1. Mw; 2. PB T0(時間0); 3. PB 37℃で7日間; 4. NaCl PO4 37℃で7日間; 5. NaCl PO4 37℃で7日間+AOT アンバーガラス; 6. NaCl PO4 37℃で7日間+AOT ホワイトガラス; 7. MTG 0.01% 37℃で7日間; 8. MTG 0.01% 37℃で7日間+AOT アンバーガラス; 9. MTG 0.01% 37℃で7日間+AOT ホワイトガラス; 10. MTG 0.04% 37℃で7日間; 11. MTG 0.04% 37℃で7日間+AOT アンバーガラス; 12. MTG 0.04% 37℃で7日間+AOT ホワイトガラス である。
【図7】37℃で14日間の保存後のSDS-Page解析を示す。AS01と混合する前またはAS01と混合してから25℃で24時間後の、還元(左)および非還元(右)条件下のNovexゲル。図7について以下のとおり: 1. Mw; 2. PB T0 還元; 3. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 還元; 4. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 還元; 5. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 還元; 6. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 7. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 8. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 9. PB T0 非還元; 10. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 非還元; 11. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 非還元; 12. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 非還元; 13. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 14. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 15. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元
【図8】37℃で5週間の保存後のSDS-Page解析を示す。AS01と混合する前またはAS01と混合してから25℃で24時間後の、還元(左)および非還元(右)条件下のNovexゲル。図8について以下のとおり: 1. Mw; 2. PB T0 還元; 3. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 還元; 4. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 還元; 5. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 還元; 6. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 7. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 8. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 9. PB T0 非還元; 10. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 非還元; 11. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 非還元; 12. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 非還元; 13. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 14. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 15. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元
【図9】混合ELISA αCSP-α-Sによって、モノチオグリセロールを含むかまたは含まない液体製剤中のRTS,S抗原性を示す。
【図10】抗CS血清学的検査の結果を示す。
【図11】抗HBs血清学的検査の結果を示す。
【図12】CS特異的CD4 T細胞応答を示す。
【図13】HBs特異的CD4 T細胞応答を示す。
【図14】CS特異的CD8 T細胞応答を示す。
【図15】HBs特異的CD8 T細胞応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
N-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、還元グルタチオンおよびチオグリコール酸ナトリウムまたはそれらの混合物を用いる本発明の態様は、この実施形態が硫酸ナトリウム(その使用は避けることが望ましい)の代替物の実行可能な生産を提供するという点において、さらなる利点を有する。
【0037】
理論に拘束されることは望まないが、発明者らは、安定化剤/還元剤中のチオール官能基が、抗原中のチオール官能基に結合することによって当該部位をブロックし、それが別の抗原分子上のチオール官能基と結合/相互作用することを妨げるという仮説が立てられる。さらに、安定化剤/還元剤は比較的小さいため、抗原中のエピトープおよび特にコンフォメーションエピトープが破壊されず、このため抗原の免疫原性は保持され、凝集が妨げられるとも考えられる。
【0038】
あるいはまたは加えて、tween中の過酸化物がクエンチされる。
【0039】
本発明の1つの態様において、安定化剤はモノチオグリセロールである。
【0040】
本発明の1つの態様において、安定化剤はシステインである。
【0041】
本発明の1つの態様において、安定化剤はN-アセチルシステインである。
【0042】
安定化剤は例えば、0.01〜10% w/v、例えば1〜5%、2〜6%、4〜7%、3〜8%、例えば0.01〜1%、0.2〜0.4%、0.1%〜0.5%、0.3〜0.8%、0.6〜0.9%、例えば実質的に0.2、0.4、0.5および0.8%、または例えば0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/vの範囲の量で、使用することができる。
【0043】
別法として、安定化剤は、0.01〜10% w/w、例えば1〜5%、2〜6%、4〜7%、3〜8%、例えば0.01〜1%、0.2〜0.4%、0.1%〜0.5%、0.3〜0.8%、0.6〜0.9%、例えば実質的に0.2、0.4、0.5および0.8 %、または例えば0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/wの範囲の量で使用することができる。
【0044】
システインの好適な量は、製剤全体の重量に対して0.1〜1.0重量%の範囲である。従って、例えば、1ヒト用量の500μl中、システインの量は100μg〜5000μgの範囲、例えば500μgである。
【0045】
1つの態様において、本発明は、以下:
a) 免疫原性粒子RTS,Sおよび/または
b) 1つまたはそれ以上のプラスモディウム・ビバックス株のCSタンパク質およびB型肝炎に由来するS抗原ならびに場合により非融合S抗原に由来する、免疫原性粒子、および
c) モノチオグリセロールを含む安定化剤
を含むマラリアワクチン用の構成成分を提供する。
【0046】
本発明のこの態様は、、容器/バイアルからの酸素の除去、および/または例えばアンバーガラス容器を使用することによる光に対する製剤の保護などのさらなる保護手段をさらに使用することができる。
【0047】
モノチオグリセロールは、式HSCH2CH(OH)CH2OHを有し、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールまたは1-チオグリセロールとしても知られている。本発明における使用のための好適な量としては、限定するものではないが、0.01〜10%、例えば0.01〜1%または0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/v、例えば0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.025、0.04、0.05または0.08% w/vの範囲が挙げられる。単一ヒト用量の250μlは、例えば10〜2500μg、例えば25〜250μgのモノチオグリセロール、例えば50、125または200μgを含み得る。
【0048】
別法として、本発明における使用のための好適な量としては、限定するものではないが、0.01〜10%、例えば0.01〜1%、0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/w、例えば0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.025、0.04、0.05または0.08% w/wの範囲が挙げられる。
【0049】
有利には、モノチオグリセロールは、本発明に従って使用される場合、アジュバント製剤(例えば、MPLおよび/またはQS21を含む水中油型エマルションまたはリポソーム製剤)と適合すると考えられる。
【0050】
さらに、モノチオグリセロールは、MPLとQS21のリポソームアジュバント製剤によって誘導されるリポタンパク質粒子の凝集を低下させ、これにより調製直後の精製バルク液体製剤と同様の液体製剤を与える。
【0051】
本明細書に関して、「精製バルク」は、バルク量(2回を超える用量)の精製抗原を指す。
【0052】
本明細書に関して、「最終バルク」は、1回または2回を超える用量の精製抗原、およびアジュバント成分を除く賦形剤(例えばリン酸緩衝生理食塩水)を指す。
【0053】
RTS,Sは、アジュバントの非存在下で0.01%モノチオグリセロールと共に50μg/mlで製剤化した場合、37℃で7日間保存後、新鮮なバルクと同一のプロファイルを有した。また0.01%モノチオグリセロールも、光によって触媒される凝集からRTS,Sを保護するのに十分であった。
【0054】
それでもなお、プラスモディウムCSタンパク質のリポタンパク質粒子の液体製剤(例えば100μg/mlの抗原および例えば1.0% w/vまで(例えば0.02、0.05または0.08%)のモノチオグリセロール)について、約2または3年間の保存期間を得ることが期待される。
【0055】
本発明の1つの態様において、還元剤はジチオトレイトールではない。
【0056】
本ワクチンの液体成分(そのアジュバント成分も含む)は、約4℃での保存を必要とする可能性がある。
【0057】
本発明の製剤は、注射に適したpHおよび浸透圧を有する。好適には、液体製剤のpHは約6.5〜7.2、例えば約6.6、6.7、6.8、6.9、7.0または7.1である。
【0058】
本発明の製剤は、例えば10回を超える用量を一緒に提供する場合、チオメルサールなどの保存剤をさらに含み得る。しかし、少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載される製剤はチオメルサールを含まない。
【0059】
研究は、RTS,S、例えば0.01または0.04%モノチオグリセロールと共に4℃または37℃で5週間後まで保存された50μg/mlのRTS,Sが、検出可能な非特異的吸着による抗原損失を有さなかったことを示した。
【0060】
さらに、加速安定性試験(すなわち37℃で7日間の保存)後に強い光に約15時間曝露(本明細書中で加速酸化試験(accelerated oxidation testing)AOTと呼ばれる)した後、RTS,S粒度分布の変化は観察されなかった。
【0061】
1つの態様において、本発明は、別々の液体製剤および当該液体製剤への添加に適したアジュバントとしてのマラリアワクチン用の構成成分として、場合により別々のバイアルの各エレメント(要素)を含むキットとして、提供される。この実施形態の1つの態様において、各バイアルは視覚的にはっきり区別することができ、例えば、1つのバイアル上の圧着キャップがそれを他のバイアルから区別されるように着色され、および/または1つのバイアルはアンバー色(褐色)(例えば抗原を含むバイアル)であり、1つのバイアルは透明(例えばアジュバントを含むバイアル)である。
【0062】
好適なバイアルとして、例えば3mLガラスバイアルが挙げられる。
【0063】
1つの態様において、本発明は抗原と安定化剤(すなわち本明細書に記載される還元剤)を含む凍結乾燥成分を提供し、この成分は後に液体アジュバントで再構成されうる。凍結乾燥成分と液体アジュバント(例えばMPLおよびQS21の水中油型製剤またはリポソーム製剤)は、キットとして提供することができる。本発明のこの態様は、再構成の直後に使用する必要がなく、少なくとも24時間の保存のために安定であり、例えば、混合後25℃で保存した場合、上記の抗原の抗原性が少なくとも24時間維持されるという利点を有する。アジュバントは、下記で詳細に検討される。
【0064】
本発明の1つの態様において、最終液体製剤が提供される。最終液体製剤とは、10回用量まで(例えば1回または2回用量)を含み、さらにアジュバント成分以外の全ての賦形剤を含む液体製剤を指す。
【0065】
1つの態様において、上記の構成成分または最終ワクチンは、単回用量として提供される。
【0066】
本明細書に関して、「ワクチン」は、ヒトへの注射に適したアジュバント成分を含む構成成分を全て含む免疫原性製剤である。
【0067】
1つの態様において、上記の構成成分または最終ワクチンは、2回用量として提供される。これは、2回用量を提供することで、最終製剤を再構成しおよび/または投与するときの重要な構成成分の損失を最小限にすることができるため、有益であり得る(例えば1回用量の量が少ない場合)。
【0068】
このためワクチンは、例えば、以下:
・バイアル1:500μl(2回用量)のRTS,S 2倍濃縮(100μg/ml) + モノチオグリセロール(0.02、0.05または0.08%)
・バイアル2:500μl(2回用量)のアジュバント 2倍濃縮(AS01)
を含む2回用量表示の2バイアル製剤として提供される。
【0069】
再構成後、上記の製剤は、1ml(2回用量)のAS01中RTS,S、+ モノチオグリセロール0.01、0.025または0.04%を提供する。
【0070】
プラスモディウム・ビバックス抗原
本発明において用いられるCSV-Sタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質(CSV)に由来する部分を含み得る。このCSV抗原は、プラスモディウム・ビバックスのI型CSタンパク質に見られるようなおよび/またはプラスモディウム・ビバックスのII型タンパク質に見られるような天然(native)タンパク質であり得る。別法として、このCSVタンパク質は、該I型およびII型のCSタンパク質に由来するエレメント(要素)を含むハイブリッドタンパク質またはキメラタンパク質であってよい。後者がS抗原に融合される場合、本明細書ではこれを「ハイブリッド融合タンパク質」と呼ぶ。
【0071】
「CSV-S」は、本明細書中で、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質由来の配列/フラグメントとB型肝炎のS抗原由来の配列とを含む融合タンパク質を包含する総称として使用される。
【0072】
ハイブリッド/キメラタンパク質は、通常:
プラスモディウム・ビバックスのI型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復部分に由来する少なくとも1つの反復ユニット、および
プラスモディウム・ビバックスのII型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復部分に由来する少なくとも1つの反復ユニット
を含む。
【0073】
一般的に、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスなどのプラスモディウムのCSタンパク質に由来するN末端フラグメント(例えば、配列番号1に示すアミノ酸のような領域Iを含むフラグメント)も含む。
【0074】
通常、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスなどのプラスモディウムのCSタンパク質に由来するC末端フラグメント(例えば、配列番号2に示すモチーフのような領域IIを含むフラグメント)を含む。
【0075】
理論に拘束されることは望まないが、上記のN末端フラグメントおよびC末端フラグメントは、数個のT細胞およびB細胞エピトープを含むと考えられる。
【0076】
本発明においては、プラスモディウム・ビバックスの任意の好適な株を使用することが可能であり、例えばラテンアメリカ株、アメリカ株(すなわちSal 1、Belem)、朝鮮株、中国株、タイ株、インドネシア株、インド株、およびベトナム株が挙げられる。配列番号13に示す構築物は、朝鮮株(より具体的には韓国株)に基づく。
【0077】
I型CSタンパク質を有するプラスモディウム・ビバックスは、II型CSタンパク質を有するプラスモディウム・ビバックスよりも蔓延している。従って、1つの態様において、本発明は、I型に由来するCSタンパク質を利用する。別の態様において、本発明は、I型に由来する反復ユニットとII型に由来する反復ユニットを含む(例えば、I型に由来する反復ユニットの方が、II型の反復ユニットよりも多くハイブリッドに含まれる)ハイブリッドタンパク質を提供する。
【0078】
さらに具体的には、本発明のハイブリッドタンパク質は、I型に由来する1〜15個の反復ユニット(例えば9個の反復ユニット)を含み得る。
【0079】
I型CSタンパク質に由来する好適な反復ユニットの例は、配列番号3〜9に示される。
【0080】
1つの実施形態において、本発明は、様々なI型の反復ユニット(例えば、配列番号3〜9に記載される各反復ユニットのうちの1つ)の混合物を有するハイブリッドを提供する。
【0081】
このハイブリッド中で、1つまたはそれ以上の反復ユニットを重複させることができる。例えば、構築物中に配列番号3および/または4の2つの反復ユニットを組み込むことができる。
【0082】
a) 1つの態様において、CSタンパク質は配列番号3のユニットを含む。
【0083】
b) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)に記載のユニットと組み合わせて、配列番号4のユニットを含む。
【0084】
c) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)またはb)に記載のユニットと組み合わせて、配列番号5のユニットを含む。
【0085】
d) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜c)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号6のユニットを含む。
【0086】
f) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜d)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号7のユニットを含む。
【0087】
g) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜f)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号8のユニットを含む。
【0088】
h) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜g)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号9のユニットを含む。
【0089】
好適な構成成分である、II型のCSタンパク質に由来する反復ユニットの例は、配列番号10および14(例えば10)に示される。
【0090】
本発明の1つの態様では、5個以下のII型に由来する反復ユニット(例えば配列番号10に示されるような、1個の反復ユニットなど)を有するハイブリッドタンパク質が提供される。
【0091】
上記のハイブリッドは、プラスモディウム・ビバックスの特定のアジア株に見られる反復領域の末端において見出される12アミノ酸(例えば配列番号11に示される)の挿入も含み得る。
【0092】
1つの実施形態において、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する約257個のアミノ酸を含む。
【0093】
本発明のCSV由来の抗原成分は、通常、Sタンパク質のアミノ末端に融合される。
【0094】
B型肝炎に由来する表面抗原の存在は、CSタンパク質部分の免疫原性をブーストし、安定性を助け、且つ/または該タンパク質の再生製造に役立つと考えられる。
【0095】
1つの実施形態において、ハイブリッド融合タンパク質は、約494個のアミノ酸を含み、例えば、そのうちの約257個のアミノ酸は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する。
【0096】
ハイブリッド融合タンパク質は、プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来するさらなる抗原も含み得る。例えば、この抗原は、DBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPまたはこれらのフラグメントから選択される。
【0097】
他の例では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原として、PfEMP-1、Pfs16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPが挙げられる。他のプラスモディウム抗原としては、プラスモディウム・ファルシパルム(P. falciparum)のEBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモディウム属種におけるそれらの類似体が挙げられる。
【0098】
1つの実施形態において、ハイブリッド融合タンパク質(CSV-S)は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する。この配列において、アミノ酸6〜262位はCSVに由来し、269〜494位はS抗原に由来する。残りのアミノ酸は、遺伝的構築(特に適宜変化させることができる)によって導入される。これらの4個のアミノ酸、Met Met Ala Proは、プラスミドpGF1-S2から特異的に誘導される(図4参照)。
【0099】
配列番号17のタンパク質のヌクレオチド配列は、配列番号16に示される。
【0100】
免疫原性CSポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞用にコドン最適化することができる。かかるコドン最適化は、WO 05/025614に詳細に記載されている。
【0101】
RTS,S
RTSと呼ばれる(すなわち、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する)本発明のタンパク質粒子の構成成分は、RTS*(プラスモディウム・ファルシパルムのNF54/3D7株に由来し、本明細書中ではRTSと呼ばれる)の説明を含むWO 93/10152に記載のように作製することができる。
【0102】
本発明の1つ以上の実施形態において、融合タンパク質中で用いられるプラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原は、実質的にそのCSタンパク質全体であってよい。
【0103】
本発明の1つの実施形態では、完全長S抗原を用いる。別の実施形態では、上記のS抗原のフラグメントを用いる。
【0104】
1つの実施形態では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原は、中央反復領域に少なくとも4個の反復ユニットを含む。さらに具体的には、この抗原は、CSタンパク質のC末端部分と実質的に相同の、少なくとも160個のアミノ酸を含有する配列を含む。このCSタンパク質は、C末端から数えて最後の12〜14個(例えば12個)のアミノ酸を欠いていてもよい。
【0105】
さらに具体的には、使用されるプラスモディウム・ファルシパルムに由来する融合タンパク質は、配列番号18に示されるRTS発現カセットのヌクレオチド配列によってコードされる融合タンパク質である。
【0106】
B型肝炎に由来するS抗原
好適なS抗原はpreS2領域を含み得る。好適な血清型の例は、adw(Nature 280:815-819, 1979)である。
【0107】
通常、B型肝炎に由来する配列は完全長S抗原である。一般に、preS2領域は含まれない。
【0108】
1つの態様において、本発明のハイブリッド融合タンパク質は、例えば米国出願公開第2006/194196号(WO 2004/113369としても公開)に記載のとおり、変異体Sタンパク質に由来する部分を含む。この文献は、標識変異体HDB05について記載する。特にこの文献は、図1と図6では変異体タンパク質と野生型タンパク質との比較を、また図4と図5では変異体の遺伝子を記載している。文献中の配列12〜22は、変異体Sタンパク質の特定のポリペプチドを表す。上記の各記載は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0109】
融合タンパク質CSV-Sは、例えば、プラスミドpGF1-S2を用いて調製することが可能であり(さらに詳細には、図2および実施例を参照のこと)、このプラスミドは、CSVに対応する適切な配列がSmaIクローニング部位に挿入されている場合、好適な条件下で融合タンパク質CSV-Sを生産することができる。
【0110】
本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、好ましくは酵母遺伝子に由来する転写制御エレメントに隣接しており、発現ベクターに組み込まれる。
【0111】
本発明において用いられるハイブリッドタンパク質の発現カセットは、例えば、以下の特性を含めて構築することができる。
・例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)のTDH3遺伝子に由来するプロモーター配列。
・適切な融合タンパク質をコードする配列。
・例えば、サッカロミセス・セレヴィシエのARG3遺伝子に由来する配列中に含まれる転写終結配列。
【0112】
特異的プロモーターの例は、サッカロミセス・セレヴィシエのTDH3遺伝子由来のプロモーターである(Mustiら)。
【0113】
次いで、好適なプラスミドを用いて、ハイブリッド融合タンパク質をコードする配列を好適な合成用宿主に挿入することができる。好適なプラスミドの例として、好適な発現カセットを担持する2ミクロンベースのベクターであるpRIT15546が挙げられる。さらに詳細には、図1および実施例を参照のこと。
【0114】
このプラスミドは、通常、選択に役立つ組込みマーカー(例えば、抗生物質耐性またはLEU2もしくはHIS栄養要求性をコードする遺伝子)を含む。
【0115】
通常、宿主は、粒子中の各融合タンパク質について発現カセットを有し、そのゲノム中に組み込まれたS抗原についての1つまたはそれ以上の発現カセットも有し得る。
【0116】
また本発明は、本発明のベクターで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であってよいが、好ましくは酵母であり、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)(例えば、RIT DC5 cir(o)という名称で寄託されているATCCデータベース(受託番号20820)中のDC5(寄託者:Smith Kline-RIT)などのサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))、および非サッカロミセス酵母が挙げられる。これらは、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)(例えば、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis))、ピキア(Pichia)(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris))、ハンセヌラ(Hansenula)(例えば、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))、ヤロウィア(Yarowia)(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))およびシュワニオミセス(Schwanniomyces)(例えば、シュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)を含む。
【0117】
本発明の融合タンパク質を発現させるための好適な組換え酵母株はY1834である(また、その使用は本発明の一部を形成する)。この組換え酵母株の作製については、実施例を参照されたい。
【0118】
本明細書中で用いられるヌクレオチド配列またはその一部(CS/ハイブリッドタンパク質をコードする部分だが、場合によりタンパク質Sをコードする部分ではない)は、酵母などの宿主中での発現用にコドン最適化することができる。
【0119】
宿主細胞は、プラスモディウム・ビバックスに由来する融合タンパク質についての発現カセットと、プラスモディウム・ファルシパルムおよび場合によりS抗原に由来する融合タンパク質についての発現カセットを含み得る。
【0120】
酵母細胞などの特定の宿主中では、融合タンパク質(S抗原を含む)は、いったん発現されると、該融合タンパク質の多数の単量体から構成されるタンパク質構造/粒子へと自発的に構築される。この酵母が2つの異なる融合タンパク質(すなわち融合タンパク質とS抗原)を発現する場合、これらは粒子中で共構築されると考えられる。
【0121】
選択されたレシピエント酵母株が、既にそのゲノム中に幾つかの組み込まれたB型肝炎S発現カセットのコピーを有する場合、その後構築された粒子は、非融合S抗原の単量体も含み得る。
【0122】
これらの粒子は、ウイルス様粒子(VLP)とも呼ばれる。この粒子は、多量体リポタンパク質粒子、または単に免疫原性粒子としても記載される。
【0123】
このようにして、以下の単量体:
a. プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する配列を含む融合タンパク質(例えばCSV-S)、および/または
b. プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する配列を含む融合タンパク質(例えばRTS)、および
c. 場合により非融合S抗原
を含む免疫原性タンパク質粒子が提供され、ここで該粒子は、例えば上記に定義されるモノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物などの安定化剤と結合している。
【0124】
1つの態様において、本発明は、上記に定義される単量体a)および/またはb)およびc)を含む免疫原性タンパク質粒子、また、該粒子を保持しながら容器またはバイアルから酸素が除去されおよび/または該粒子が例えばアンバーガラス容器により光から保護される保護体を提供する。
【0125】
さらなる態様において、本発明は、
a) プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する配列
(例えば、I型および/またはII型の反復領域に由来する配列)
b) プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する配列(例えば、その反復領域に由来する配列)、および
c) B型肝炎のS抗原に由来する配列
を含む融合タンパク質の使用を提供し、この融合タンパク質は、好適な宿主中で発現されると該融合タンパク質および場合により非融合S抗原を含むウイルス様粒子をもたらし、本明細書に定義される還元剤(例えばモノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物から選択される)と結合した粒子を生成する。
【0126】
さらなる態様において、本発明は、
a) プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する配列
(例えば、I型および/またはII型の反復領域に由来する配列)
b) プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する配列(例えば、その反復領域に由来する配列)、および
c) B型肝炎のS抗原に由来する配列
を含む融合タンパク質の使用を提供し、この融合タンパク質は、好適な宿主中で発現されると該融合タンパク質および場合により非融合S抗原を含むウイルス様粒子をもたらし、酸素が除去されおよび/または該タンパク質/粒子が例えばアンバーガラス容器を使用することにより光から保護されている環境下で、粒子を生成する。
【0127】
このように、本発明は、免疫原性リポタンパク質粒子の形態の、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する融合タンパク質および/またはプラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する融合タンパク質(例えばRTS)を含むタンパク質粒子を安定化させるための、少なくとも1つのチオール官能基を有する還元剤(例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物、特にモノチオグリセロール)の使用にまで及ぶ。
【0128】
このように、本発明は、CSV-Sおよび/またはRTSユニットを含むVLPを安定化させるための、少なくとも1つのチオール官能基を有する還元剤(例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロールのような還元剤)の使用を提供する。1つの態様において、本発明は、本質的にCSV-Sおよび/またはRTSユニットからなる粒子を提供する。代替的態様において、生成される粒子は、CSV-Sおよび/またはRTSおよびSのユニットを含み、あるいは本質的にそれらからなる。
【0129】
本発明で用いられるリポタンパク質粒子は、in vivoで抗原タンパク質に対する免疫応答をさらに刺激することに寄与し得ると仮定される。
【0130】
さらに、少なくとも1つのチオール官能基を有する安定化剤(例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロール、システインおよびそれらの混合物など)の添加は各粒子に内部安定化を与え、このようにして該安定化剤は、所与の粒子と結合しまたは該粒子内に取り込まれるようになり得ると仮定される。
【0131】
また本発明は、免疫防御量の本発明の安定化タンパク質粒子を好適な賦形剤(例えば希釈剤)と混合して含むワクチンにも関する。
【0132】
本明細書に関して、「ワクチン」は、アジュバント成分を含み、ヒト患者への注射に適した構成成分を全て含む製剤を指す。
【0133】
本発明に関して、「安定化」は、1つ以上のチオール基を有する安定化剤(本明細書中で還元剤とも呼ばれる、例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロール、システインおよびそれらの混合物など)が含まれない対応する製剤を、例えば37℃で7日間または14日間保存される場合および/または加速安定性条件(例えば37℃で7日間)下で保存され、その後強い光の存在下で約15時間処理された場合に、参照して意味することを意図する。
【0134】
安定性は、粒子サイズ(例えば光散乱法、サイズ排除クロマトグラフィーまたはフィールドフロー分画によって測定される)および/または凝集/分解(例えばSDS-Pageおよびウエスタンブロットによって測定される)および/または抗原性(例えばELISAによって測定される)および/または免疫原性(例えばin vivoで測定される)を基準とすることができる。
【0135】
1つの態様において、「安定性」は、凝集および分解が起こらないことを指す。
【0136】
組成物
本明細書において、「賦形剤」は、医薬製剤中の、それ自体では治療効果を有さない構成成分を指す。アジュバントは賦形剤である。なぜなら抗原などの治療的成分の不存在下でアジュバントによって生理的作用がもたらされ得るが、この生理的作用は非特異的であり、それ自体では治療的でないからである。希釈剤または液体担体は、賦形剤の定義の範囲に含まれる。
【0137】
本明細書において、「免疫原性」は、使用される融合タンパク質のCS部分および/またはS抗原部分に対する特異的免疫応答を誘発する能力を指すことを意図する。この応答は、例えば、本発明のリポタンパク質粒子が、好適なアジュバントを含み/必要とし得る適切な製剤として投与される場合に生じ得る。所要の免疫原性応答を得るためには、元の用量と同様の用量またはそれより少ない用量を含むブースターが必要となる可能性がある。
【0138】
本発明による組成物/医薬製剤は、混合して、プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来する抗原(例えば、DBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPまたはこれらのフラグメントから選択される抗原)などの1種またはそれ以上のさらなる抗原も含み得る。
【0139】
他の例では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原としては、PfEMP-1、Pfs16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPが挙げられる。他のプラスモディウム抗原としては、プラスモディウム・ファルシパルムのEBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモディウム属種におけるそれらの類似体が挙げられる。
【0140】
本発明による組成物/医薬製剤は、CSV-Sを含む粒子と混合して、RTS,Sの粒子(WO 93/10152に記載)も含み得る。
【0141】
本発明のワクチンでは、粒子の水溶液を直接使用することができる。別法として、前もって凍結乾燥させた、もしくは凍結乾燥させていない本発明のタンパク質を、アジュバントと共に混合し、あるいはアジュバントに吸収させることができる。
【0142】
アジュバント
好適なアジュバントは、金属塩、水中油型エマルション、Toll様受容体アゴニスト、(特にToll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニスト)、サポニンまたはこれらの組み合わせの群から選択されるアジュバントであるが、但し金属塩は別のアジュバントとの組み合わせにおいてのみ用いられ、約60%以下の抗原が金属塩上に吸着されるようにそれらが製剤化されない限り単独では用いられない。1つの実施形態では、アジュバントは、金属塩を単独のアジュバントとしては含まない。1つの実施形態では、アジュバントは金属塩を含まない。
【0143】
1つの実施形態において、アジュバントはToll様受容体(TLR)4リガンドであり、例えば、リピドA誘導体(特にモノホスホリルリピドAまたは、さらに特に3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL))などのアゴニストである。
【0144】
3-脱アシル化モノホスホリルリピドAは、米国特許第4,912,094号および英国特許出願番号第2,220,211号(Ribi)から公知であり、Ribi Immunochem, Montana, USAから入手可能である。
【0145】
3D-MPLは、Corixa corporationから商標MPL(登録商標)の下に販売されており、主としてIFN-g(Th1)表現型を有するCD4+T細胞の応答を促進する。これは、GB 2 220 211 Aに開示されている方法に従って製造することができる。化学的には、これは3、4、5または6アシル化鎖を有する3-脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。好ましくは、本発明の組成物中で、小粒子3D-MPLが使用される。小粒子3D-MPLは、0.22μmのフィルターを通して滅菌ろ過され得るような粒子サイズを有する。かかる調製は、WO 94/21292号に記載されている。リピドAの合成誘導体は公知であり、限定するものではないが、以下:
OM174 (2-デオキシ-6-O-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)(WO 95/14026);
OM294 DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(ジヒドロゲンホスフェート)(WO 99/64301およびWO 00/0462);
OM197 MP-Ac DP(3S,9R)-3-(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-ジヒドロゲンホスフェート 10-(6-アミノヘキサノエート)(WO 01/46127)
を含むTLR4アゴニストであると考えられている。
【0146】
典型的には、3D-MPLを使用する場合、抗原と3D-MPLはミョウバンと共に送達され、または水中油型エマルションもしくは多重水中油型エマルションとして提供される。3D-MPLの組込みは、これがエフェクターT細胞応答の促進剤であるため有利である。
【0147】
使用し得る他のTLR4リガンドは、WO 9850399またはUS 6303347(AGPの調製方法も開示されている)に開示されるようなグルコサミンリン酸アルキル(AGP)、またはUS 6764840に開示される製薬上許容されるAGPの塩である。一部のAGPはTLR4アゴニストであり、他の一部はTLR4アンタゴニストである。両方とも、アジュバントとして役立つと考えられている。
【0148】
本発明で使用する別の免疫賦活剤は、Quil Aおよびその誘導体である。Quil Aは、南米の木であるキラヤ・サポナリア・モリナ(Quilaja Saponaria Molina)から単離されるサポニン調製物であり、これがアジュバント活性を有することは、Dalsgaardらが1974年に初めて説明した("Saponin adjuvant", Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)。Quil Aに付随する毒性を有することなくアジュバント活性を保持しているQuil Aの精製フラグメント(例えば、QS7とQS21(QA7とQA21としても知られている))は、HPLCによって単離されている(EP 0 362 278)。QS-21は、キラヤ・サポナリア・モリナの樹皮に由来する天然のサポニンであり、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および優勢IgG2a抗体応答を誘導する。
【0149】
ステロールをさらに含むQS21の特定の製剤が記載されている(WO 96/33739)。QS21:ステロールの比は、典型的には、重量比でほぼ1:100〜1:1程度である。通常は過剰のステロールが存在し、QS21:ステロールの比は、少なくとも1:2 w/wである。典型的には、ヒトへの投与のため、QS21とステロールは、ワクチン中に約1μg〜約100μgの範囲(例えば、用量当たり約10μg〜約50μg)で存在する。
【0150】
リポソームは一般的に、例えば、通常は室温で非晶質のホスファチジルコリン(例えば卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンまたはジラウリルホスファチジルコリン)などの中性脂肪を含む。リポソームは、飽和脂質で構成されるリポソームのリポソーム-QS21構造の安定性を高める荷電脂質も含み得る。これらの場合、荷電脂質の量は1〜20% w/w、例えば5〜10%であることが多い。リン脂質に対するステロールの比は、1〜50%(モル/モル)、例えば20〜25%である。
【0151】
これらの組成物は、MPL(3-脱アシル化モノホスホリルリピドA、3D-MPLとしても公知)を含み得る。3D-MPLは、3種類の、4、5または6アシル化鎖を有する脱-O-アシル化モノホスホリルリピドAの混合物として、GB 2 220 211(Ribi)から公知であり、Ribi Immunochem(Montana)により製造されている。
【0152】
サポニンは、ミセル、混合ミセル(通常、限定するものではないが、胆汁塩との混合物)の形態に分離してもよいし、あるいはコレステロールおよび脂質と共に製剤化される場合にはISCOMマトリックス(EP 0 109 942)、リポソームもしくは関連のコロイド構造(例えばワーム様もしくはリング様多量体複合体または脂質/層状構造およびラメラ)の形態であってもよいし、あるいは水中油型エマルション(例えば、WO 95/17210に記載される)の形態であってもよい。
【0153】
通常、サポニンは、リポソーム製剤、ISCOMまたは水中油型エマルションの形態で提供される。
【0154】
また免疫賦活オリゴヌクレオチドも使用することができる。本発明のアジュバントまたはワクチンにおいて使用するためのオリゴヌクレオチドの例として、CpG含有オリゴヌクレオチド(通常は、少なくとも3個、より好ましくは少なくとも6個以上のヌクレオチドで隔てられた2つまたはそれ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含む)が挙げられる。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチドの後ろにグアニンヌクレオチドが続いたものである。CpGオリゴヌクレオチドは、典型的にはデオキシヌクレオチドである。1つの実施形態において、このオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間結合はホスホロジチオエートであり、またはより好ましくはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲に含まれる。本発明の範囲に同様に含まれるのは、混合されたヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートの製法は、US 5,666,153、US 5,278,302およびWO 95/26204に記載されている。
【0155】
オリゴヌクレオチドの例は、以下のとおり:
TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826) - 配列番号20
TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758) - 配列番号21
ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG - 配列番号22
TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006) - 配列番号23
TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668) - 配列番号24
TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456) - 配列番号25
であり、これらの配列は、ホスホロチオエート改変ヌクレオチド間結合を含み得る。
【0156】
別のCpGオリゴヌクレオチドは、重要ではない欠失または付加を有する上記の配列を1つまたはそれ以上含み得る。
【0157】
CpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって合成することができる(例えば、EP 468520参照)。好都合には、このようなオリゴヌクレオチドは自動合成装置を利用して合成することができる。
【0158】
TLR2アゴニストの例として、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が挙げられる。イミキモッドおよびレシキモッドなどのイミダゾキノリン類は、公知のTLR7アゴニスト類である。一本鎖RNAも公知のTLRアゴニスト(ヒトではTLR8、またマウスではTLR7)であるが、他方、二本鎖RNAおよびポリIC(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸 - 市販のウイルスRNAの合成模倣剤)は、典型的なTLR3アゴニストである。3D-MPLはTLR4アゴニストの一例であるが、他方、CpGはTLR9アゴニストの一例である。
【0159】
免疫賦活剤は、代替的にまたは付加的に含めることができる。1つの実施形態において、この免疫賦活剤は、3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0160】
1つの態様において、アジュバントは3D-MPLを含む。
【0161】
1つの態様において、アジュバントはQS21を含む。
【0162】
1つの態様において、アジュバントはCpGを含む。
【0163】
1つの態様において、アジュバントは、水中油型エマルションとして製剤化される。
【0164】
1つの態様において、アジュバントは、リポソームとして製剤化される。
【0165】
アジュバントの組み合わせとして、3D-MPLとQS21(EP 0 671 948 B1)、3D-MPLとQS21を含む水中油型エマルション(WO 95/17210, WO 98/56414)、リポソーム製剤としての3D-MPLとQS21、または他の担体と共に製剤化された3D-MPL(EP 0 689 454 B1)が挙げられる。他のアジュバント系は、US 6558670およびUS 6544518に記載される、3D-MPL、QS21およびCpGオリゴヌクレオチドの組み合わせを含む。
【0166】
本発明の1つの実施形態において、本明細書中に記載の安定化粒子を、3D-MPLおよび希釈剤と組み合わせて含むワクチンが提供される。典型的には、この希釈剤は、水中油型エマルションまたはミョウバンである。
【0167】
ワクチン調製物は、Vollerら(University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A., 1978)によって編集された"New Trends and Developments in Vaccines"に一般的に記載されている。リポソーム中へのカプセル封入は、例えば、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。
【0168】
各ワクチン用量中に存在する本発明のタンパク質粒子の量は、標準的なワクチン中で重大な副作用を伴うことなく免疫防御応答を誘導する量として選択される。かかる量は、どの特異的免疫源が使用されるか、及びそのワクチンがアジュバント化されているか否かによって異なる。通常、各用量は、1〜1000μgのタンパク質、好ましくは1〜200μg、最も好ましくは10〜100μgのタンパク質を含むことが期待される。特定のワクチンの最適量は、抗体力価および患者における他の応答の観察を含む標準的な試験によって確定することができる。最初のワクチン接種の後、被験体は、好ましくは約4週間以内にブースト(追加免疫)を受け、その後、感染のリスクが存在する限り6ヶ月毎にブーストを繰り返す。本発明のタンパク質に対する免疫応答は、アジュバントおよび/または免疫賦活剤の使用により増強される。
【0169】
使用される3D-MPLの量は、通常は少ないが、ワクチン製剤に依存して、用量当たり1〜1000μg、例えば用量当たり1〜500μg、または用量当たり1〜100μg(例えば用量当たり50μgもしくは25μg)程度であってよい。
【0170】
本発明のアジュバントまたはワクチン中のCpGオリゴヌクレオチドまたは免疫賦活オリゴヌクレオチドの量は、通常は少ないが、ワクチン製剤に依存して、用量当たり1〜1000μg、例えば用量当たり1〜500μg(例えば用量当たり1〜100μg)程度であってよい。
【0171】
本発明のアジュバント中で使用するサポニンの量は、用量当たり1〜1000μg、例えば用量当たり1〜500μg(例えば用量当たり1〜250μg)、特に用量当たり1〜100μg(特に用量当たり50μgもしくは25μg)程度であってよい。
【0172】
製剤
本発明の製剤は、予防目的および治療目的の両方に使用することができる。従って本発明は、例えばマラリアの治療(または予防)用の医薬において(またはマラリアの治療/予防用医薬の製造において)使用するための、本明細書中に記載されるワクチン組成物を提供する。
【0173】
本発明の他の態様は、本発明のエレメント(要素)を含むワクチン成分およびワクチンならびにキットの調製方法を提供することであり、この方法は、当該タンパク質をコードするDNA配列を好適な宿主(例えば酵母)中で発現させるステップと、その生成物をリポタンパク質粒子として回収するステップと、当該リポタンパク質粒子を本明細書で定義される少なくとも安定化剤(特にモノチオグリセロール、システインおよびそれらの混合物、例えばモノチオグリセロール)と混合するステップを含んでなる。
【0174】
最終バルクは、通常は3mlガラスバイアルに無菌的に分配され、その後このバイアルは緩く栓をされ、凍結乾燥機に移されて約40時間の凍結乾燥サイクルを経る。
【0175】
抗原成分を調製する過程で、通常は賦形剤を添加して混合し、最終ステップとして当該抗原/リポタンパク質粒子を添加する。この調製のため、最終的には、安定化剤または代替物の使用と組み合わせて、バイアルからの酸素の除去またはアンバーガラス容器を用いることによる光に対するワクチンの保護などの保護手段も適用されうる。
【0176】
酸素が除去される本発明の態様において、製剤/構成成分/粒子等は、窒素下で保存することができる。
【0177】
多くの場合、アジュバントは本発明の抗原の液体製剤(または本発明の抗原の凍結乾燥製剤)に添加されてワクチンを形成する。
【0178】
本発明の他の態様は、上記に記載されるワクチンの有効量を投与することにより、プラスモディウム感染症にかかりやすい患者を治療する方法にある。
【0179】
他の態様において、治療のための本発明のワクチン用の抗原性成分またはワクチン(あるいはマラリアの治療/予防用医薬の製造のための当該ワクチンの使用)が提供される。
【0180】
本発明は、本明細書中に記載される様々な構成成分を1つまたはそれ以上含むプライムブーストレジメも包含する。
【0181】
本明細書において、含む(comprising)は、含有する(including)と解釈される。
【0182】
1つの態様において、本発明は、場合によりバイアル中の酸素種を除去するため充填前に窒素で洗い流した、3mLガラスバイアル(例えばアンバーバイアル)に入った本明細書中に記載の安定化マラリア抗原を提供する。
【0183】
使用されるバイアルは、シリコン処理されていてもよいし、シリコン処理されていなくてもよい。
【0184】
本発明はまた、必要に応じて、特定のエレメント(要素)を含む本明細書中に記載の本発明の態様からなる、または本質的にそれらからなる、別個の実施形態にも及ぶ。
【0185】
以下の実施例は、本発明の粒子を調製するために用い得る方法を説明するために示す。
【実施例】
【0186】
実施例1
RTS,Sマラリアワクチン(2バイアル製剤)の単回小児用量用の構成成分の処方
構成成分 量
RTS,S 25μg
NaCl 2.25mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 125μg
注射用水 体積250μLとなるまでの量
【0187】
上記の構成成分は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。最終的にpHを7.0±0.1に調整する。
【0188】
この構成成分は1つのバイアルとして、別のバイアルのアジュバント(例えばMPLとQS21のリポソーム製剤)と共に提供することができる。
構成成分 量
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 500μg
コレステロール 125μg
MPL 25μg
QS21 25μg
NaCl 2.25mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
注射用水 体積250μLとなるまでの量
【0189】
投与のため、例えば注射器を用いて上記のアジュバント製剤を構成成分製剤に加え、次いで振盪する。その後、通常の方法で上記の用量を投与する。
【0190】
最終液体製剤のpHは、約6.6+/-0.1である。
【0191】
実施例1A
本発明の最終小児液体製剤(1バイアル)は、以下の処方により調製することができる。
構成成分 量
RTS,S 25μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 125μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 500μg
コレステロール 125μg
MPL 25μg
QS21 25μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0192】
上記の液体製剤のpHは、7.0+/-0.1(抗原安定性には好ましいが、MPL安定性には全く好ましくない)、または6.1+/-0.1(MPL安定性には好ましいが、RTS,S安定性には全く好ましくない)のいずれかに調整される。そのためこの製剤は、調製後の速やかな使用が意図される。
【0193】
上記の液体製剤は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。次いで、MPLとQS21を含むリポソームのプレミックスを加え、最終的にpHを調整する。
【0194】
実施例1B
本発明のRTS,Sに対する最終成人用量(1バイアル製剤)は、以下のとおりに調製することができる。
【0195】
構成成分 量
RTS,S 50μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 250μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 1000μg
コレステロール 250μg
MPL 50μg
QS21 50μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0196】
実施例1C
実施例1Cは、実施例1、1Aまたは1Bを、例えば充填前に窒素で洗い流したアンバーバイアルに入れることによって調製することができる。
【0197】
実施例2
本発明の構成成分は、小児集団において使用するための2回用量(2バイアル製剤)として提供することもできる。
【0198】
構成成分 量
RTS,S 50μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 250μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0199】
上記の構成成分は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。最終的にpHを7.0±0.1に調整する。
【0200】
この構成成分は1つのバイアルとして、別のバイアルのアジュバント(例えばMPLとQS21のリポソーム製剤)と共に提供することができる。
【0201】
構成成分 量
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 1000μg
コレステロール 250μg
MPL 50μg
QS21 50μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0202】
投与のため、例えば注射器を用いて上記のアジュバント製剤を構成成分製剤に加え、次いで振盪する。その後、単回用量を抜き取って(500μL)通常の方法で投与する。
【0203】
最終液体製剤のpHは約6.6+/-0.1である。
【0204】
実施例2A
本発明の最終小児液体製剤(1バイアル)は、以下の処方により2回用量として調製することができる。
【0205】
構成成分 量
RTS,S 50μg
NaCl 9 mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 250μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 1000μg
コレステロール 250μg
MPL 50μg
QS21 50μg
注射用水 体積1000μLとなるまでの量
【0206】
上記の液体製剤のpHは、7.0+/-0.1(抗原安定性には好ましいが、MPL安定性には全く好ましくない)、または6.1+/-0.1(MPL安定性には好ましいが、RTS,S安定性には全く好ましくない)のいずれかに調整される。そのためこの製剤は、調製後の速やかな使用が意図される。
【0207】
上記の液体製剤は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。次いで、MPLとQS21を含むリポソームのプレミックスを加え、最終的にpHを調整する。
【0208】
実施例2B
本発明のRTS,Sの最終成人用量(1バイアル製剤)は、以下のとおりに2回用量として調製することができる。
【0209】
構成成分 量
RTS,S 100μg
NaCl 9 mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 500μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 2000μg
コレステロール 500μg
MPL 100μg
QS21 100μg
注射用水 体積1000μLとなるまでの量
【0210】
実施例2C
実施例2Cは、実施例2、2Aまたは2Bを、例えば充填前に窒素で洗い流したアンバーバイアルに入れることによって調製することができる。
【0211】
実施例3
充填体積500μlのRTS,Sマラリアワクチン(2バイアル製剤)の単回小児用量用の構成成分の処方
構成成分 量
RTS,S 25μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 50μgまたは200μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0212】
上記の構成成分は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。最終的にpHを7.0±0.1に調整する。
【0213】
この構成成分は1つのバイアルとして、別のバイアルのアジュバント(例えば充填体積500μlのMPLとQS21のリポソーム製剤)と共に提供することができる。
【0214】
構成成分 量
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 500μg
コレステロール 125μg
MPL 25μg
QS21 25μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0215】
投与のため、例えば注射器を用いて上記のアジュバント製剤を構成成分製剤に加え、次いで振盪する。その後、通常の方法で上記の用量を投与する。
【0216】
最終液体製剤のpHは約6.6+/-0.1であり、注射体積は1mlである。
【0217】
実施例4
加速安定性試験の結果は、以下を示唆する:
・pHと浸透圧は注射に適合する;
・RTS,S含有量について:4℃または37℃で5週間後、非特異的吸着による抗原損失はない;
・抗原完全性に関して(図6、7および8参照):
・加速安定性試験(37℃で7日間±AOT、37℃で14日間)後に顕著な分解はない;
・加速安定性試験(37℃で7日間±AOT、37℃で14日間)後の酸化的凝集を回避するために、不活性化することなく抗酸化剤(モノチオグリセロール)が必要とされ:
その際、
・37℃における凝集を回避するためには0.01%で十分であり;
・37℃+AOTにおける安定性のためには0.04%が必要である;
・アンバーガラスは、光に対する抗原の保護を確実にする(AOT後に見られるとおり);
・加速安定性試験(37℃で7日間)後、RTS,Sの粒度分布に変化はない;
・抗原性に関して(図9参照):
・加速安定性試験(37℃で7日間±AOT)後の酸化的凝集および抗原性増加を回避するために、不活性化することなく抗酸化剤(モノチオグリセロール)が必要とされ:
その際、
・0.01%は極めて安定した抗原性(80〜120%)を与え;
・0.04%は加速安定性試験後にわずかな抗原性の低下(-10%)を誘導する;
・AS01(MPLとQS21を含むリポソームアジュバント製剤)と混合すると:
・RTS,Sの完全性および抗原性は、混合後、25℃において少なくとも24時間維持される。
【0218】
これらのモノチオグリセロールを含むまたは含まないRTS,S液体製剤を、37℃で7日間、14日間、または5週間(図8)保存した後、SDS-Page解析を行った。
【0219】
図6は以下を示す:
・モノチオグリセロールの不存在下:37℃で7日間の保存後、RTS,Sはわずかに凝集し(ウェル3および4);AOTへの曝露前に37℃で7日間保存された白色バイアル中ではRTS,Sは完全凝集し、またわずかに分解した(ウェル6)が、アンバーガラスは、RTS,Sを光によって誘導される分解および酸化的凝集に対して保護する(ウェル5);
・モノチオグリセロール0.01%の存在下:この濃度は、37℃で7日間の保存の間RTS,Sを安定化させるのには十分である(ウェル7)が、アンバーガラスと組み合わせる場合(ウェル8)を除いて、加速酸化試験(AOT)を重ねる場合には十分ではない(ウェル9);
・モノチオグリセロール0.04%の存在下:この濃度は、37℃で7日間の保存の間RTS,Sを安定化させるのに十分であり(ウェル10)、加速酸化試験を重ねる場合にも十分である(ウェル12);この場合、アンバーガラスバイアルへの充填は不要である(ウェル11);
・AS01との混合は、25℃で24時間保存した後でも、RTS,Sプロファイルに影響を与えない。
【0220】
図7は、RTS,Sの凝集を回避するためにモノチオグリセロールが必要とされるが、いずれの濃度も、37℃で少なくとも14日間の保存の間RTS,Sを安定化させることができることを示す(ウェル10に対してウェル11および12)。
【0221】
図8は、37℃で5週間後、全ての製剤においてRTS,Sが凝集し、また分解されていることを示す;AS01は、全ての製剤において凝集を悪化させる。
【0222】
実施例5
初期時間T0(±AOT)または37℃で7日間(±AOT)または5週間の保存後、0、0.01または0.04%モノチオグリセロールを含む製剤に対する混合ELISA αCSP-αSによってRTS,Sの抗原性を測定した。これはAS01での再構成の前、直後および25℃で24時間後に測定された。
【0223】
図9は以下を示す:
・モノチオグリセロールの不存在下:
・675Wで15時間の曝露(AOT)は、50〜60%の抗原性の増加を誘発する(これはSDS-Pageで観察される酸化的凝集と関連している可能性がある)が、アンバーガラスバイアルへ充填すると、この抗原性増加がおよそ20%に制限される;
・37℃で7日間の保存は、およそ30〜40%の抗原性の増加を誘発する(これもまたSDS-Pageで観察される酸化的凝集と関連している可能性がある);
・抗原性は、37℃で7日間〜5週間の間およそ30%低下する;
・25℃で24時間後、AS01は、およそ20%の抗原性の増加を誘発する(これもまたSDS-Pageで観察される凝集と関連している可能性がある);
・0.01%モノチオグリセロールの存在下:
・モノチオグリセロールは、37℃で7日間の保存、AOT(アンバーガラスの効力を喪失させる)またはAS01との混合によって誘導される抗原性増加に対してRTS,Sを保護する(しかし、AS01中で25℃で24時間の保存と37℃で7日間の保存が重なった場合、抗原性はおよそ20%増加する);
・抗原性は、37℃で7日間〜5週間の間およそ20%低下する(→規格外);
・0.04%モノチオグリセロールの存在下:
・モノチオグリセロールは、アンバーガラスの効力を喪失させるAOTによって誘導される抗原性増加に対してRTS,Sを保護する;
・37℃で7日間の保存は、およそ20%の抗原性の低下を誘発する;
・37℃で7日間から5週間の間、抗原性は低下しない;
・25℃で24時間後、AS01は、およそ30〜40%の抗原性の増加を誘発する。
【0224】
実施例6
モノクローナル抗体によって、RTS,Sへのモノチオグリセロールの固定化がRF1-エピトープ(S)認識に与える影響を調べるため、モノチオグリセロール(MTG)で安定化されたまたは安定化されていないRTS,S液体製剤中で、T0(時間0)または37℃で7日間の保存後に、ELISA阻害アッセイによりRF1腹水に対するRTS,Sの反応性を測定した(表1参照)。
【0225】
【0226】
表1に示されるアッセイでは、エピトープRF1に対するモノクローナル抗体を使用した。
【0227】
表1では、下記2つのサンプルだけが、他のサンプルと比べて顕著に良く認識されるRF1-エピトープを有する。
【0228】
・37℃で7日間保存されたRTS,S精製バルク;
・37℃で7日間保存された、モノチオグリセロールを含まない液体製剤中のRTS,S。
【0229】
このことは、これらのサンプル中でコンフォメーション変化が起こり、それがRF1-エピトープの接近可能性を増加させることを意味する。これらの結果は、混合ELISA αCPS-αSの結果(37℃で7日間の保存後の、モノチオグリセロールを含まない製剤におけるRTS,S抗原性の増加)と並行して検討する必要がある。
【0230】
従って、発明者らは以下のように結論付ける:
・モノチオグリセロールは、T0において、RF1-エピトープの認識/接近可能性に悪影響を及ぼさないと考えられる(「新鮮な」精製バルク中と同じレベル);
・37℃で7日間保存された、モノチオグリセロールを含むRTS,S液体製剤において認識レベルは安定を保っており、そのことはRTS,Sのコンフォメーションがモノチオグリセロールによって安定化されていることを示している。
【0231】
免疫原性データ
実施例7
マウスにおいて、幾つかのRTS,S製剤の免疫原性を評価して比較した。これらの実験において、RTS,S、AS01、50mM PO4、NaCl 100mM(pH6.1)のワクチン製剤を、3種類の他のRTS,S製剤、すなわち
1) マンニトール-スクロース凍結乾燥RTS,S(アジュバントで再構成される)、
2) 0.02%モノチオグリセロールを含む液体製剤、および
3) 0.08%モノチオグリセロールを含む液体製剤
(各々、注射前にAS01と混合する)
の評価の基準として使用した。
【0232】
注目すべきことに、液体RTS,S製剤をAS01と混合した後、モノチオグリセロールの最終濃度は0.01%と0.04%であった。
【0233】
様々なRTS,S製剤によって誘発された体液性免疫応答および細胞性免疫応答を、以下および実施例8にそれぞれ記載される2つの異なる種類の免疫原性実験において測定した。
【0234】
マウス体液性免疫応答実験
a. 序論
様々なRTS,S製剤で免疫されたマウスにおいて誘発された抗CSおよび抗HBs抗体応答(全イムノグロブリン)を評価して比較した。
【0235】
b. 実験計画
実験計画は、RTS,S/AS01ワクチンの現在のin vivo効力アッセイ(すなわち、Balb/Cマウス系統、in vivo効力アッセイからの放出用量(0.25μgのRTS,S)の単回腹腔内注射、および免疫後28日目におけるELISAによる血清中の抗CSおよび抗HBs抗体応答(全イムノグロブリン)の測定)の1つに従った。
【0236】
この実験のサンプルサイズを規定するため、AS01アジュバントと共に製剤化したRTS,Sを使用して行ったin vivo効力アッセイから予測される抗CSおよび抗HBs抗体応答の変動性を用いた。これに基づき、統計学者は、90.9%の検定力(power)で、二元分散分析(two-way ANOVA)において、1群当たり25匹のマウスのサンプルサイズ(2つの異なる実験において)が、群平均間で2倍の差の検出を可能にするだろうと判定した。
【0237】
c. 結果
免疫後28日目に回収した血清を用いて、抗CS血清学的検査(全Ig)を行った。50匹マウス/群から得られた力価を対数(Log)で表し、図10に示す。
【0238】
抗CS血清学的検査の結果に関する統計分析(Dunnett法)を表4にまとめる。
【0239】
【0240】
これらの結果は、マンニトール-スクロース凍結乾燥RTS,S製剤または液体RTS,S製剤によって誘発された抗CS全Ig応答が、MPLとQS21のリポソームアジュバント製剤中に製剤化された場合のRTS,Sによって誘導された抗CS全Ig応答と統計的に異ならなかったことを示す(抗体(Ab)力価の2倍差を検出するための統計的検定力92.7%)。
【0241】
免疫後28日目に回収した血清を用いて、抗HBs血清学的検査(全Ig)を行った。50匹マウス/群から得られた力価を対数(Log)で表し、図11に示す。
【0242】
抗HBs血清学的検査の結果に関する統計分析(Dunnett法)を表5にまとめる。
【0243】
【0244】
これらの結果は、マンニトール-スクロース凍結乾燥RTS,S製剤または液体RTS,S製剤によって誘発された抗HBs全Ig応答が、MPLとQS21のリポソーム製剤中に製剤化された場合のRTS,Sによって誘導された抗HBs全Ig応答と統計的に異ならなかったことを示す(抗体(Ab)力価の2倍差を検出するための統計的検定力91.4%)。
【0245】
d. 結論
マウスにおいて、試験した3種類の代替RTS,S製剤は全て抗CSおよび抗HBs抗体応答を誘発した。さらに、上記の統計分析は、MPLおよびQS21のリポソーム製剤中で即時に再構成されるマンニトール-スクロースRTS,S凍結乾燥製剤、液体RTS,S製剤(0.02%モノチオグリセロール)または液体RTS,S製剤(0.08%モノチオグリセロール)のいずれかによって誘発された抗CSおよび抗HBs抗体応答が、AS01中で再構成される現在のRTS,S凍結乾燥製剤によって誘導された抗CSおよび抗HBs抗体応答と統計的に顕著に異ならなかったことを示した。比率2(オリジナルスケール、すなわち抗体力価)または差0.301(対数スケール)を示すための、抗CSおよび抗HBs抗体応答の分析に伴う検定力はそれぞれ少なくとも92.7%および91.4%であった。
【0246】
実施例8
マウス細胞性免疫応答実験:
a. 序論
この2種類目の実験において、HBs配列およびCS配列をカバーするペプチドプールを用いた短期間ex vivo刺激後のフローサイトメトリーに基づくサイトカイン発現T細胞の検出を用いて、HBs抗原およびCS抗原に対する細胞性免疫(CMI)応答を測定した。
【0247】
b. 実験計画
試験した群は、実施例7に記載される上記実験に由来する群と同じである。しかし実験計画は異なっていた。すなわち、抗原特異的細胞性免疫応答の評価を目的とする以前のマウス免疫原性研究のプロトコルに従って、C57BL/6マウスを、用量範囲(5μgおよび2.5μg)のAS01中RTS,S抗原で筋肉内に3回免疫した。この実験を2回行い、フローサイトメトリーに基づくアッセイを行うのに十分な細胞を回収するためにサンプルサイズを決定した。実際、各群において、4匹のマウスからプールされた(すなわち3プール/群)血球についてCMI分析を行った。このリードアウトは、1実験につき1群当たりに得られる3つの値(プール)のみでは統計的結論が得られないため、また、かかる細胞ベースのアッセイの変動性が良く知られていることから、予備的なものとして考えられる。
【0248】
c. 結果
3回目の免疫後の7日目におけるCS特異的およびHBs特異的CD4およびCD8T細胞応答を図12、13、14および15に示す。
【0249】
各グラフ中の三角は、それぞれ(i)CS配列またはHBs配列をカバーするペプチドプールを用いた末梢血リンパ球のin vitro再刺激後の4匹のマウスのプールから得られる応答を表し、また(ii)in vitro再刺激において使用したペプチドプールに応答してIL-2および/またはIFN-ガンマを産生するCD4T細胞またはCD8T細胞のパーセントを表す。
【0250】
これらの結果は、CSおよびHBs特異的CD4 T細胞応答が、試験した全てのRTS,S製剤によって誘発されることを示す。これらの抗原特異的CD4 T細胞応答は、RTS,S&AS01(現在の凍結乾燥製剤)、RTS,Sマンニトール-スクロース凍結乾燥製剤、0.02%または0.08%モノチオグリセロール(MTG)を含む液体RTS,S製剤が免疫化に使用されるか否かに関わらず同等(応答は試験した全ての用量において同等)である。
【0251】
これらの結果は、CSおよびHBs特異的CD8 T細胞応答が、試験した全てのRTS,S製剤によって誘発されることを示す。これらの抗原特異的CD8 T細胞応答は、RTS,S&AS01(現在の凍結乾燥製剤)、RTS,Sマンニトール-スクロース凍結乾燥製剤、0.02%または0.08%モノチオグリセロール(MTG)を含む液体RTS,S製剤が免疫付与に使用されるか否かに関わらず同等(応答は試験した全ての用量において同等)である。注目すべきことに、液体RTS,S製剤は、試験したいずれの用量(2.5μgおよび5μg)においてもより高いパーセントの抗原(Ag)特異的CD8 T細胞を誘導する傾向がある。しかし、上記のとおり、このリードアウトは、1実験につき1群当たりに得られる3つの値(プール)のみでは統計的結論が得られないため、また、かかる細胞ベースのアッセイの変動性が良く知られていることから、予備的なものとして考えられる。
【0252】
d. 結論
RTS,Sマンニトール-スクロース凍結乾燥製剤、液体RTS,S製剤(0.02%モノチオグリセロール)および液体RTS,S製剤(0.08%モノチオグリセロール)によって誘発されるCS特異的およびHBs特異的CD4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答は、AS01中で再構成される場合の現在のRTS,S凍結乾燥製剤によって誘発されるCS特異的およびHBs特異的CD4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答と同等である。
【0253】
参考文献
(1) Harford N, Cabezon T, Colau B, et al., "Construction and Characterization of a Saccharomyces Cerevisiae Strain (RIT4376) Expressing Hepatitis B Surface Antigen", Postgrad Med J 63, Supp. 2: 65-70, 1987.
(2) Jacobs E, Rutgers T, Voet P, et al., "Simultaneous Synthesis and Assembly of Various Hepatitis B Surface Proteins in Saccharomyces cerevisiae", Gene 80: 279-291, 1989.
(3) Vieira J and Messing J, "The pUC plasmids, an M13mp7-Derived System for Insertion Mutagenesis and Sequencing with Synthetic Universal Primers", Gene 19: 259-268, 1982.
(4) Hinnen A, Hicks JB, and Fink GR, "Transformation of Yeast", Proc Nat1 Acad Sci USA 75: 1929-1933, 1980.
(5) Broach JR, Strathern JN, and Hicks JB, "Transformation in Yeast Development of a Hybrid Cloning Vector and Isolation of the CAN 1 Gene", Gene 8: 121-133, 1979.
(6) Zhang H, et al., "Double Stranded SDNA Sequencing as a Choice for DNA Sequencing", Nucleic Acids Research 16: 1220, 1988.
(7) Dame JB, Williams JL. Mc Cutchan TF, et al., "Structure of the Gene Encoding the Immunodominant Surface Antigen on the Sporozoites of the Human Malaria Parasite Plasmodium falciparum", Science 225: 593-599, 1984.
(8) Valenzuela P, Gray P, Quiroga M, et al., "Nucleotide Sequences of the Gene Coding for the Major Protein of Hepatitis B Virus Surface Antigen", Nature 280: 815-819, 1979.
(9) In SS, Kee-Hoyung L, Young RK, et al., “ comparison of Immunological Responses to Various Types of Circumsporozoite Proteins of Plasmodium vivax in Malaria Patients of Korea”, Microbiol. Immunol. 48(2): 119-123, 2004;Microbiol. Immunol. 2004; 48(2): 119-123.
(10) Rathore D, Sacci JB, de la Vega P, et al., ”Binding and Invasion of Liver Cells by Plasmodium falciparum Sporozoites”, J. Biol. Chem. 277(9): 7092-7098, 2002.Rathore et al., 2002, J. Biol. Chem. 277, 7092-8.
【0254】
配列リスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、マラリアの治療用の安定化リポタンパク質粒子、その調製方法、医療(特にマラリア感染の予防)におけるその使用、上記粒子を含む組成物/ワクチンおよび特に治療における上記ワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは世界の主要な健康問題の1つであり、この疾患により毎年200〜400万人以上の人々が死亡している。この疾患の最も蔓延している形態の1つは、熱帯および亜熱帯の地域にみられる寄生原虫であるプラスモディウム・ビバックス(P.vivax)によって引き起こされる。興味深いことに、この寄生虫は15℃という低温で蚊サイクルを完結することができ、マラリアが温帯気候において蔓延するのを可能としている。
【0003】
この疾患の最急性型の1つは、マラリアに起因する死亡の大半に関与する寄生原虫であるプラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum(P. falciparum))によって引き起こされる。
【0004】
プラスモディウム(Plasmodium)の生活環は複雑であり、完結するためには2つの宿主(ヒトおよび蚊)を必要とする。ヒトの感染は、感染した蚊の咬傷を介した血流中へのスポロゾイトの接種によって始まる。このスポロゾイトは肝臓へ移動し、そこで肝細胞に感染して、赤血球外細胞内段階を経てメロゾイト段階へと分化してこれが赤血球(RBC)に感染し、無性血液段階で循環複製を開始する。このサイクルは、RBC中の多数のメロゾイトが有性段階の生殖母細胞へと分化することによって完結し、この生殖母細胞は蚊に摂取され、中腸において一連の段階を経て成長してスポロゾイトを産生し、これが唾液腺へと移動する。
【0005】
プラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる疾患が致命的であることはほとんどないという事実から、マラリアを予防および治療するための取り組みは、プラスモディウム・ファルシパルム(P.ファルシパルム)によって引き起こされるより致死性の疾患に集中している。
【0006】
プラスモディウム・ビバックスによって引き起こされる疾患は、通常は患者の死亡をもたらさないが、増加しているように思われる症例の量、患者の生活の質に及ぼす甚大な影響、貧血および死亡をもたらす当該疾患の重度罹患率の増加の報告、ならびに経済的影響のために、この疾患に対する有効なワクチン接種は依然として必要とされている。さらに、単一のワクチンで、該疾患の両方の病原に対する防御を提供することができれば有利であろう。
【0007】
プラスモディウム・ビバックスの特徴は、一部の株が、末梢循環に出現して臨床症状を示す前に、肝臓中に残っている潜在型によって遅延型感染を引き起こし得ることである。このため、個人が例えば伝染病汚染地域を旅行する場合、感染する可能性があり、なおかつ数ヶ月間症状を示さない可能性がある。これはマラリアの蔓延を引き起こす可能性があり、このため伝染病汚染地域へ旅行する人は、伝染病汚染地域への旅行後一定の期間中、輸血のための献血を行うことが禁じられている。
【0008】
プラスモディウム・ビバックスによるマラリア感染は、この寄生虫が前赤血球段階でのシゾゴニー(胞子虫類の無性生殖による増殖)を行う間、肝臓内に潜伏したままとなる。寄生虫が肝臓から抜け出す前のこの段階で寄生虫が制御される場合、患者にはこの疾患の臨床症状は観察されない。
【0009】
プラスモディウムのスポロゾイト段階は、マラリアワクチンの潜在的な標的として同定されている。不活性化した(放射線照射された)スポロゾイトを用いたワクチン接種は、実験上のヒトマラリアに対する防御を誘導することが示されている(Am. J, Trop. Med. Hyg 24: 297-402, 1975)。しかし、この方法に基づき、放射線照射されたスポロゾイトを用いて一般向けのマラリア用ワクチンを実用的且つロジスティックに製造することは可能となってはいない。
【0010】
スポロゾイトの主要な表面タンパク質は、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)として知られている。このタンパク質は、スポロゾイトが、蚊による接種の開始部位から血液循環(ここでスポロゾイトが肝臓へ移動する)へと移行する間、その運動性および侵入に関与すると考えられている。
【0011】
プラスモディア(Plasmodia)属種のCSタンパク質は、非反復アミノ基末端(N末端)フラグメントとカルボキシ末端(C末端)フラグメントにはさまれた中央の反復ドメイン(反復領域)によって特徴付けられる。このプラスモディウム・ビバックスの中央ドメインは、幾つかの反復ユニット(通常は、9個の直列アミノ酸からなる)のブロックで構成される。
【0012】
特定のアジア株では、中央反復領域の後に約12アミノ酸の付加配列が存在している(配列番号11を参照)。この付加配列の機能は未知である。しかし、研究はされていないが、一部の研究者によって、該アミノ酸がこの疾患の臨床症状の発症遅延に関連する可能性があるという仮説が立てられている。この付加配列のN末端は、領域Iとして知られる5アミノ酸の配列(配列番号1を参照)によって特徴付けられると考えられている。またC末端は、領域IIとして知られる12アミノ酸の配列を含むことによって特徴付けられるとも考えられている。領域IIは、全てのマラリアCSタンパク質間で高度に保存されている細胞接着モチーフを含む(配列番号2を参照)。
【0013】
幾つかのグループは、スポロゾイト周囲タンパク質に基づくサブユニットワクチンを提案している。これらのワクチンのうち2種類(中央反復領域のみに基づくワクチン)は1980年代初頭に臨床試験を経ており、その一方は合成ペプチドで、他方は組換えタンパク質であった(Ballouら Lancet: June 6 (1987) 1277頁以降およびHerringtonら Nature 328:257 (1987))。これらのワクチンは、抗スポロゾイト応答を刺激することに成功した。それにも関わらず、一部のワクチンが全く応答を生じさせなかったため、応答の大きさは満足のいくものではなかった。さらに、追加注射後の抗体レベルの「ブースティング(追加免疫)」の不在およびin vitroリンパ球増殖アッセイの結果は、これらのボランティアの大半のT細胞が、上記の免疫優勢反復配列を認識しなかったことを示唆していた。さらに、これらの2種類のワクチンの効力はわずかであり、ワクチン接種を受けたボランティアの1人のみが寄生虫血症を発症しなかったに過ぎなかった。これらのワクチンは、それ以上探究されなかった。
【0014】
WO 93/10152およびWO 98/05355は、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来するワクチンについて記載しており、これらの文献に記載される方法を用いて、プラスモディウム・ファルシパルムに対するワクチン接種について多少の進歩がもたらされたと考えられる。Heppnerら 2005, Vaccine 23, 2243-50も参照のこと。
【0015】
現在まで、臨床において最も進歩したマラリアワクチンは、RTS,Sと呼ばれるリポタンパク質粒子(ウイルス様粒子としても知られる粒子)に基づいている。この粒子は、直鎖リンカーを介してB型肝炎に由来するS抗原のN末端にインフレームで融合した、プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質の一部(実質的にプラスモディウム・ファルシパルム(株NF54/3D7)のCSタンパク質のアミノ酸207〜395に対応する)を含む。上記のリンカーは、S抗原に由来するpreS2の一部を含み得る。さらなる詳細については、以下の考察を参照されたい。
【0016】
プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質は、保存された中央反復領域を有する。対照的に、プラスモディウム・ビバックスについては、少なくとも2つの形態の(VK210またはI型、およびVK247またはII型と呼ばれる)CSタンパク質が知られている。このことは、CSタンパク質の特定の種類にかかわらずプラスモディウム・ビバックスに対する一般的な防御を与える望ましい特性(免疫原性など)を全て有するCSタンパク質の構築物を同定することを、より困難にしている。なぜなら、I型の中央反復領域に向けられた抗体は、II型の対応する領域上のエピトープを必ずしも認識せず、逆もまた同様であるためである。
【0017】
発明者らが認識している限りでは、プラスモディウム・ビバックスの単一株に基づくRTS,Sに対応する粒子は提案されていない。
【0018】
WO 2006/088597には、ハイブリッドプラスモディウム・ビバックスCSタンパク質が記載されている。
【0019】
PCT/EP2007/057301には、WO 2006/088597のハイブリッドタンパク質とB型肝炎に由来するS抗原を含む融合タンパク質(本明細書中でCSV-Sと呼ばれる)およびこれを含むリポタンパク質粒子が記載されている。
【0020】
PCT/EP2007/057296には、CSV-S、RTSおよび場合によりSユニットを含むリポタンパク質粒子が記載されている。
【0021】
現在では、RTS,Sマラリアワクチンは、送達の直前にアジュバントで再構成される凍結乾燥抗原として提供されている。これは抗原が、特にアジュバントの存在下では、相当期間保存される場合に不安定であるためである。不安定性は、凝集および/または分解として現れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
2018/2019年までに、8300万回投与量のマラリアワクチンが必要となるだろうという試算がある。現在の凍結乾燥法は約40時間かかる。このため、現在の方法が将来のニーズに応えられるとは考えにくい。凍結乾燥サイクルを約28時間まで低下させることができるかもしれないが、これでもまだニーズに応えられる可能性は低い。さらに、サイクル時間をさらに低下させると、不満足な生成物が生じると考えられる。
【0023】
マラリアワクチンは、主にインフラストラクチャーおよび設備が不足している国での送達のためのものであるため、ワクチンが提供される形態が(特に液体製剤が提供される場合)投与まで安定であることが極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明者らが作成した予備データは、リン酸緩衝生理食塩水中で調製され、残存量のポリソルベート80(0.0062% w/w)を含むが、追加の賦形剤を有さないRTS,S精製バルク(pH 6.1)が、加速安定性試験(すなわち37℃で7日間の保存)の後に顕著な分解と酸化的凝集を示したことを示した。4℃で2ヶ月間の保存の後、わずかな凝集と分解だけが観察された。
【0025】
以下の選択肢を検討した:
・6.1から7.4まで増加したpHは、S抗原の分解を低下させたがCSタンパク質の分解を増加させたと考えられる;
・ポリソルベート80(Tween 80とも呼ばれる)濃度の0.05、0.5および1.0%までの増加が凝集と分解の両方を増加させたと考えられるが、通常は、Tween 80は抗原の凝集を減少させるため、これは驚くべきことである(発明者らは、このことが、タンパク質/抗原中のチオール基の酸化を触媒し得るTween中の残存過酸化物の存在に起因するという仮説を立てており、本発明による還元剤の使用は、この影響を防ぐと考えられる);および
・スクロース(6.2% w/w)の添加は、凝集または分解に影響を与えなかった。
【0026】
凝集過程は多くの段階において起こり、これらの段階の1つを首尾よく防ぐことができれば、凝集および/または分解を防ぐことができるという仮説が立てられている(参考文献:T.E.Creighton編-IRL Press、Oxford University Press、“Protein function: a practical approach”中のD.B. Volkin & A.M. Klibanovによる“Minimizing protein inactivation”)。
【0027】
第1段階は天然タンパク質のアンフォールディングであり、これによりこのタンパク質のより多くの疎水性領域が露出する。この疎水性領域の露出は、幾つかのタンパク質の集合をもたらす。最終段階は、ジルスフィド結合の形成によるタンパク質の不可逆的変性である。
【0028】
また、抗原を可溶化するために添加したポリソルベート80が、凝集および/または分解を触媒する残存過酸化物を含む可能性もある。
【0029】
発明者らは、多くの安定化剤/方法、例えば糖、多価アルコール、共溶媒、ポリマー、イオン、pH、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、および界面活性剤を試してみたが、所望の効果は得られなかった。例えば、アスコルビン酸の添加は顕著な凝集をもたらした。EDTA単独または抗酸化剤の存在下でのEDTAの使用は、凝集を妨げなかった。さらに亜硫酸塩の添加は、必要な安定化をもたらさなかった。一般的な安定化剤の一部は、最終マラリア製剤において使用されるアジュバント製剤と適合しなかった。今や発明者らは、特定の安定化剤、例えば1つ以上のチオール(-SH)基を含む還元剤(チオ硫酸塩、N-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、還元グルタチオンおよびチオグリコール酸ナトリウムまたはそれらの混合物、特にN-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、チオグリコール酸ナトリウムおよびそれらの混合物、特にモノチオグリセロール、システイン、およびそれらの混合物など)を使用して、プラスモディウムCSタンパク質(ファルシパルムおよび/またはビバックスのCSタンパク質)のリポタンパク質粒子を保存のために安定化させることができると考えている。
【0030】
少なくとも1つのチオール(-SH)基を含むこれらの還元剤に代えてまたはそれと組み合わせて、本発明において用いられるリポタンパク質粒子を、これらが保存されている容器から酸素を除去することによって安定化もしくはさらに安定化させることが可能であり、および/またはこの製剤を光から保護することによって(例えばアンバーガラス容器を使用することによって)その抗原を保護/さらに保護することができる。
【0031】
従って本発明は、以下:
a) 免疫原性粒子RTS,Sおよび/または
b) 1つまたはそれ以上のプラスモディウム・ビバックス株のCSタンパク質およびB型肝炎に由来するS抗原ならびに場合により非融合S抗原に由来する、免疫原性粒子、および/または
c) RTS、CSV-Sおよび場合により非融合S抗原を含む、免疫原性粒子、および
d) 少なくとも1つのチオール官能基を有する還元剤(例えば上記に挙げられるモノチオグリセロール、システイン、N-アセチルシステインまたはそれらの混合物など)を含む(かまたはそれらからなる群から選択される)安定化剤
を含む、マラリアワクチン用の構成成分を提供する。
【0032】
1つの態様において、本発明は上記のa)、b)、c)および場合によりd)を含むマラリアワクチン用の構成成分を提供し、この構成成分の調製には、容器からの酸素の除去および/または例えばアンバーガラス容器を使用することによる光からの製剤の保護などの保護手段が用いられる。
【0033】
有利には、プラスモディウムに由来するCSタンパク質と肝炎に由来するS抗原を含むリポタンパク質粒子抗原は、モノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物、および/またはバイアルからの酸素の除去および/または例えばアンバーガラス容器を使用することによる光に対する製剤の保護などの保護手段を使用して、適切に安定化させることができる。
【0034】
配列リスト
配列番号1 プラスモディウム・ビバックス(P.ビバックス)のN末端の領域I
配列番号2 プラスモディウム・ビバックスのC末端の領域IIの高度保存部分である
配列番号3〜9 プラスモディウム・ビバックスのI型CSタンパク質の多様な反復ユニット
配列番号10 プラスモディウム・ビバックスのII型CSタンパク質に由来する主たる反復ユニット
配列番号11 プラスモディウム・ビバックスのアジア株において認められた追加アミノ酸
配列番号12 プラスモディウム・ビバックスのハイブリッドタンパク質CSVのヌクレオチド配列(大腸菌での発現用に最適化)
配列番号13 プラスモディウム・ビバックスのハイブリッドタンパク質CSVのアミノ酸配列
配列番号14 プラスモディウム・ビバックスのII型CSタンパク質に由来するマイナーな反復ユニット
配列番号15 プラスモディウム・ビバックスのハイブリッドタンパク質CSVのヌクレオチド配列(酵母での発現用に最適化)
配列番号16 ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sのヌクレオチド配列
配列番号17 ハイブリッド融合タンパク質CSV-Sのアミノ酸配列
配列番号18 RTS発現カセットのヌクレオチド配列
配列番号19 配列番号18からの推定RTS融合タンパク質
配列番号20〜25 CpG含有オリゴヌクレオチドの例。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】酵母エピソームベクターpRIT15546のプラスミドマップ。
【図2】所望の抗原とB型肝炎に由来するS抗原との「融合」に使用された、GSKが調製したプラスミドpGF1-S2のプラスミドマップ。異種DNA配列をSmaI部位間にクローニングし(12bpのSmaI DNAフラグメントの切り出し後)、S遺伝子とのインフレーム融合を生成する。
【図3】pRIT15582のプラスミドマップ。XhoIを用いた消化は、CSV-S発現カセットとLEU2選択マーカーを有し酵母染色体への挿入に用いられる8.5 kbの線状DNAフラグメントを遊離させる。
【図4】CSV-Sカセットを組込むために用いられる線状XhoIフラグメントの制限マップ。
【図5】Y1835株中で産生されたCSV-S,S混合粒子の電子顕微鏡写真。CSV-S,S粒子を、可溶性細胞抽出物から(RTS,S精製法に基づいて)精製し、電子顕微鏡解析に供した。粒子は、リンタングステン酸を用いた陰性染色の後に可視化された。顕微鏡のスケールは100nmに相当する。
【図6】37℃で7日間の保存+/-AOT後のSDS-Page解析を示す。AS01と混合する前(上)またはAS01と混合してから25℃で24時間後(下)の、非還元(左)および還元(右)条件下のNovexゲル。ここで: 1. Mw; 2. PB T0(時間0); 3. PB 37℃で7日間; 4. NaCl PO4 37℃で7日間; 5. NaCl PO4 37℃で7日間+AOT アンバーガラス; 6. NaCl PO4 37℃で7日間+AOT ホワイトガラス; 7. MTG 0.01% 37℃で7日間; 8. MTG 0.01% 37℃で7日間+AOT アンバーガラス; 9. MTG 0.01% 37℃で7日間+AOT ホワイトガラス; 10. MTG 0.04% 37℃で7日間; 11. MTG 0.04% 37℃で7日間+AOT アンバーガラス; 12. MTG 0.04% 37℃で7日間+AOT ホワイトガラス である。
【図7】37℃で14日間の保存後のSDS-Page解析を示す。AS01と混合する前またはAS01と混合してから25℃で24時間後の、還元(左)および非還元(右)条件下のNovexゲル。図7について以下のとおり: 1. Mw; 2. PB T0 還元; 3. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 還元; 4. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 還元; 5. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 還元; 6. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 7. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 8. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 9. PB T0 非還元; 10. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 非還元; 11. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 非還元; 12. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 非還元; 13. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 14. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 15. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元
【図8】37℃で5週間の保存後のSDS-Page解析を示す。AS01と混合する前またはAS01と混合してから25℃で24時間後の、還元(左)および非還元(右)条件下のNovexゲル。図8について以下のとおり: 1. Mw; 2. PB T0 還元; 3. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 還元; 4. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 還元; 5. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 還元; 6. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 7. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 8. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 還元; 9. PB T0 非還元; 10. RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間 非還元; 11. RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間 非還元; 12. RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間 非還元; 13. (RTS,S NaCl PO4 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 14. (RTS,S MTG 0.01% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元; 15. (RTS,S MTG 0.04% 37℃で5週間)/AS01E 25℃で24時間 非還元
【図9】混合ELISA αCSP-α-Sによって、モノチオグリセロールを含むかまたは含まない液体製剤中のRTS,S抗原性を示す。
【図10】抗CS血清学的検査の結果を示す。
【図11】抗HBs血清学的検査の結果を示す。
【図12】CS特異的CD4 T細胞応答を示す。
【図13】HBs特異的CD4 T細胞応答を示す。
【図14】CS特異的CD8 T細胞応答を示す。
【図15】HBs特異的CD8 T細胞応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
N-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、還元グルタチオンおよびチオグリコール酸ナトリウムまたはそれらの混合物を用いる本発明の態様は、この実施形態が硫酸ナトリウム(その使用は避けることが望ましい)の代替物の実行可能な生産を提供するという点において、さらなる利点を有する。
【0037】
理論に拘束されることは望まないが、発明者らは、安定化剤/還元剤中のチオール官能基が、抗原中のチオール官能基に結合することによって当該部位をブロックし、それが別の抗原分子上のチオール官能基と結合/相互作用することを妨げるという仮説が立てられる。さらに、安定化剤/還元剤は比較的小さいため、抗原中のエピトープおよび特にコンフォメーションエピトープが破壊されず、このため抗原の免疫原性は保持され、凝集が妨げられるとも考えられる。
【0038】
あるいはまたは加えて、tween中の過酸化物がクエンチされる。
【0039】
本発明の1つの態様において、安定化剤はモノチオグリセロールである。
【0040】
本発明の1つの態様において、安定化剤はシステインである。
【0041】
本発明の1つの態様において、安定化剤はN-アセチルシステインである。
【0042】
安定化剤は例えば、0.01〜10% w/v、例えば1〜5%、2〜6%、4〜7%、3〜8%、例えば0.01〜1%、0.2〜0.4%、0.1%〜0.5%、0.3〜0.8%、0.6〜0.9%、例えば実質的に0.2、0.4、0.5および0.8%、または例えば0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/vの範囲の量で、使用することができる。
【0043】
別法として、安定化剤は、0.01〜10% w/w、例えば1〜5%、2〜6%、4〜7%、3〜8%、例えば0.01〜1%、0.2〜0.4%、0.1%〜0.5%、0.3〜0.8%、0.6〜0.9%、例えば実質的に0.2、0.4、0.5および0.8 %、または例えば0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/wの範囲の量で使用することができる。
【0044】
システインの好適な量は、製剤全体の重量に対して0.1〜1.0重量%の範囲である。従って、例えば、1ヒト用量の500μl中、システインの量は100μg〜5000μgの範囲、例えば500μgである。
【0045】
1つの態様において、本発明は、以下:
a) 免疫原性粒子RTS,Sおよび/または
b) 1つまたはそれ以上のプラスモディウム・ビバックス株のCSタンパク質およびB型肝炎に由来するS抗原ならびに場合により非融合S抗原に由来する、免疫原性粒子、および
c) モノチオグリセロールを含む安定化剤
を含むマラリアワクチン用の構成成分を提供する。
【0046】
本発明のこの態様は、、容器/バイアルからの酸素の除去、および/または例えばアンバーガラス容器を使用することによる光に対する製剤の保護などのさらなる保護手段をさらに使用することができる。
【0047】
モノチオグリセロールは、式HSCH2CH(OH)CH2OHを有し、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールまたは1-チオグリセロールとしても知られている。本発明における使用のための好適な量としては、限定するものではないが、0.01〜10%、例えば0.01〜1%または0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/v、例えば0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.025、0.04、0.05または0.08% w/vの範囲が挙げられる。単一ヒト用量の250μlは、例えば10〜2500μg、例えば25〜250μgのモノチオグリセロール、例えば50、125または200μgを含み得る。
【0048】
別法として、本発明における使用のための好適な量としては、限定するものではないが、0.01〜10%、例えば0.01〜1%、0.01〜0.1%、0.01〜0.02%、0.01〜0.05%、0.01〜0.08%、0.02〜0.05%、0.02〜0.08%または0.05〜0.08% w/w、例えば0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.025、0.04、0.05または0.08% w/wの範囲が挙げられる。
【0049】
有利には、モノチオグリセロールは、本発明に従って使用される場合、アジュバント製剤(例えば、MPLおよび/またはQS21を含む水中油型エマルションまたはリポソーム製剤)と適合すると考えられる。
【0050】
さらに、モノチオグリセロールは、MPLとQS21のリポソームアジュバント製剤によって誘導されるリポタンパク質粒子の凝集を低下させ、これにより調製直後の精製バルク液体製剤と同様の液体製剤を与える。
【0051】
本明細書に関して、「精製バルク」は、バルク量(2回を超える用量)の精製抗原を指す。
【0052】
本明細書に関して、「最終バルク」は、1回または2回を超える用量の精製抗原、およびアジュバント成分を除く賦形剤(例えばリン酸緩衝生理食塩水)を指す。
【0053】
RTS,Sは、アジュバントの非存在下で0.01%モノチオグリセロールと共に50μg/mlで製剤化した場合、37℃で7日間保存後、新鮮なバルクと同一のプロファイルを有した。また0.01%モノチオグリセロールも、光によって触媒される凝集からRTS,Sを保護するのに十分であった。
【0054】
それでもなお、プラスモディウムCSタンパク質のリポタンパク質粒子の液体製剤(例えば100μg/mlの抗原および例えば1.0% w/vまで(例えば0.02、0.05または0.08%)のモノチオグリセロール)について、約2または3年間の保存期間を得ることが期待される。
【0055】
本発明の1つの態様において、還元剤はジチオトレイトールではない。
【0056】
本ワクチンの液体成分(そのアジュバント成分も含む)は、約4℃での保存を必要とする可能性がある。
【0057】
本発明の製剤は、注射に適したpHおよび浸透圧を有する。好適には、液体製剤のpHは約6.5〜7.2、例えば約6.6、6.7、6.8、6.9、7.0または7.1である。
【0058】
本発明の製剤は、例えば10回を超える用量を一緒に提供する場合、チオメルサールなどの保存剤をさらに含み得る。しかし、少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載される製剤はチオメルサールを含まない。
【0059】
研究は、RTS,S、例えば0.01または0.04%モノチオグリセロールと共に4℃または37℃で5週間後まで保存された50μg/mlのRTS,Sが、検出可能な非特異的吸着による抗原損失を有さなかったことを示した。
【0060】
さらに、加速安定性試験(すなわち37℃で7日間の保存)後に強い光に約15時間曝露(本明細書中で加速酸化試験(accelerated oxidation testing)AOTと呼ばれる)した後、RTS,S粒度分布の変化は観察されなかった。
【0061】
1つの態様において、本発明は、別々の液体製剤および当該液体製剤への添加に適したアジュバントとしてのマラリアワクチン用の構成成分として、場合により別々のバイアルの各エレメント(要素)を含むキットとして、提供される。この実施形態の1つの態様において、各バイアルは視覚的にはっきり区別することができ、例えば、1つのバイアル上の圧着キャップがそれを他のバイアルから区別されるように着色され、および/または1つのバイアルはアンバー色(褐色)(例えば抗原を含むバイアル)であり、1つのバイアルは透明(例えばアジュバントを含むバイアル)である。
【0062】
好適なバイアルとして、例えば3mLガラスバイアルが挙げられる。
【0063】
1つの態様において、本発明は抗原と安定化剤(すなわち本明細書に記載される還元剤)を含む凍結乾燥成分を提供し、この成分は後に液体アジュバントで再構成されうる。凍結乾燥成分と液体アジュバント(例えばMPLおよびQS21の水中油型製剤またはリポソーム製剤)は、キットとして提供することができる。本発明のこの態様は、再構成の直後に使用する必要がなく、少なくとも24時間の保存のために安定であり、例えば、混合後25℃で保存した場合、上記の抗原の抗原性が少なくとも24時間維持されるという利点を有する。アジュバントは、下記で詳細に検討される。
【0064】
本発明の1つの態様において、最終液体製剤が提供される。最終液体製剤とは、10回用量まで(例えば1回または2回用量)を含み、さらにアジュバント成分以外の全ての賦形剤を含む液体製剤を指す。
【0065】
1つの態様において、上記の構成成分または最終ワクチンは、単回用量として提供される。
【0066】
本明細書に関して、「ワクチン」は、ヒトへの注射に適したアジュバント成分を含む構成成分を全て含む免疫原性製剤である。
【0067】
1つの態様において、上記の構成成分または最終ワクチンは、2回用量として提供される。これは、2回用量を提供することで、最終製剤を再構成しおよび/または投与するときの重要な構成成分の損失を最小限にすることができるため、有益であり得る(例えば1回用量の量が少ない場合)。
【0068】
このためワクチンは、例えば、以下:
・バイアル1:500μl(2回用量)のRTS,S 2倍濃縮(100μg/ml) + モノチオグリセロール(0.02、0.05または0.08%)
・バイアル2:500μl(2回用量)のアジュバント 2倍濃縮(AS01)
を含む2回用量表示の2バイアル製剤として提供される。
【0069】
再構成後、上記の製剤は、1ml(2回用量)のAS01中RTS,S、+ モノチオグリセロール0.01、0.025または0.04%を提供する。
【0070】
プラスモディウム・ビバックス抗原
本発明において用いられるCSV-Sタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質(CSV)に由来する部分を含み得る。このCSV抗原は、プラスモディウム・ビバックスのI型CSタンパク質に見られるようなおよび/またはプラスモディウム・ビバックスのII型タンパク質に見られるような天然(native)タンパク質であり得る。別法として、このCSVタンパク質は、該I型およびII型のCSタンパク質に由来するエレメント(要素)を含むハイブリッドタンパク質またはキメラタンパク質であってよい。後者がS抗原に融合される場合、本明細書ではこれを「ハイブリッド融合タンパク質」と呼ぶ。
【0071】
「CSV-S」は、本明細書中で、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質由来の配列/フラグメントとB型肝炎のS抗原由来の配列とを含む融合タンパク質を包含する総称として使用される。
【0072】
ハイブリッド/キメラタンパク質は、通常:
プラスモディウム・ビバックスのI型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復部分に由来する少なくとも1つの反復ユニット、および
プラスモディウム・ビバックスのII型スポロゾイト周囲タンパク質の中央反復部分に由来する少なくとも1つの反復ユニット
を含む。
【0073】
一般的に、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスなどのプラスモディウムのCSタンパク質に由来するN末端フラグメント(例えば、配列番号1に示すアミノ酸のような領域Iを含むフラグメント)も含む。
【0074】
通常、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスなどのプラスモディウムのCSタンパク質に由来するC末端フラグメント(例えば、配列番号2に示すモチーフのような領域IIを含むフラグメント)を含む。
【0075】
理論に拘束されることは望まないが、上記のN末端フラグメントおよびC末端フラグメントは、数個のT細胞およびB細胞エピトープを含むと考えられる。
【0076】
本発明においては、プラスモディウム・ビバックスの任意の好適な株を使用することが可能であり、例えばラテンアメリカ株、アメリカ株(すなわちSal 1、Belem)、朝鮮株、中国株、タイ株、インドネシア株、インド株、およびベトナム株が挙げられる。配列番号13に示す構築物は、朝鮮株(より具体的には韓国株)に基づく。
【0077】
I型CSタンパク質を有するプラスモディウム・ビバックスは、II型CSタンパク質を有するプラスモディウム・ビバックスよりも蔓延している。従って、1つの態様において、本発明は、I型に由来するCSタンパク質を利用する。別の態様において、本発明は、I型に由来する反復ユニットとII型に由来する反復ユニットを含む(例えば、I型に由来する反復ユニットの方が、II型の反復ユニットよりも多くハイブリッドに含まれる)ハイブリッドタンパク質を提供する。
【0078】
さらに具体的には、本発明のハイブリッドタンパク質は、I型に由来する1〜15個の反復ユニット(例えば9個の反復ユニット)を含み得る。
【0079】
I型CSタンパク質に由来する好適な反復ユニットの例は、配列番号3〜9に示される。
【0080】
1つの実施形態において、本発明は、様々なI型の反復ユニット(例えば、配列番号3〜9に記載される各反復ユニットのうちの1つ)の混合物を有するハイブリッドを提供する。
【0081】
このハイブリッド中で、1つまたはそれ以上の反復ユニットを重複させることができる。例えば、構築物中に配列番号3および/または4の2つの反復ユニットを組み込むことができる。
【0082】
a) 1つの態様において、CSタンパク質は配列番号3のユニットを含む。
【0083】
b) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)に記載のユニットと組み合わせて、配列番号4のユニットを含む。
【0084】
c) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)またはb)に記載のユニットと組み合わせて、配列番号5のユニットを含む。
【0085】
d) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜c)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号6のユニットを含む。
【0086】
f) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜d)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号7のユニットを含む。
【0087】
g) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜f)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号8のユニットを含む。
【0088】
h) 1つの態様において、CSタンパク質は、場合により、すぐ上のパラグラフa)〜g)に記載のユニットの1つまたはそれ以上と組み合わせて、配列番号9のユニットを含む。
【0089】
好適な構成成分である、II型のCSタンパク質に由来する反復ユニットの例は、配列番号10および14(例えば10)に示される。
【0090】
本発明の1つの態様では、5個以下のII型に由来する反復ユニット(例えば配列番号10に示されるような、1個の反復ユニットなど)を有するハイブリッドタンパク質が提供される。
【0091】
上記のハイブリッドは、プラスモディウム・ビバックスの特定のアジア株に見られる反復領域の末端において見出される12アミノ酸(例えば配列番号11に示される)の挿入も含み得る。
【0092】
1つの実施形態において、ハイブリッドタンパク質は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する約257個のアミノ酸を含む。
【0093】
本発明のCSV由来の抗原成分は、通常、Sタンパク質のアミノ末端に融合される。
【0094】
B型肝炎に由来する表面抗原の存在は、CSタンパク質部分の免疫原性をブーストし、安定性を助け、且つ/または該タンパク質の再生製造に役立つと考えられる。
【0095】
1つの実施形態において、ハイブリッド融合タンパク質は、約494個のアミノ酸を含み、例えば、そのうちの約257個のアミノ酸は、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する。
【0096】
ハイブリッド融合タンパク質は、プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来するさらなる抗原も含み得る。例えば、この抗原は、DBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPまたはこれらのフラグメントから選択される。
【0097】
他の例では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原として、PfEMP-1、Pfs16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPが挙げられる。他のプラスモディウム抗原としては、プラスモディウム・ファルシパルム(P. falciparum)のEBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモディウム属種におけるそれらの類似体が挙げられる。
【0098】
1つの実施形態において、ハイブリッド融合タンパク質(CSV-S)は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する。この配列において、アミノ酸6〜262位はCSVに由来し、269〜494位はS抗原に由来する。残りのアミノ酸は、遺伝的構築(特に適宜変化させることができる)によって導入される。これらの4個のアミノ酸、Met Met Ala Proは、プラスミドpGF1-S2から特異的に誘導される(図4参照)。
【0099】
配列番号17のタンパク質のヌクレオチド配列は、配列番号16に示される。
【0100】
免疫原性CSポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞用にコドン最適化することができる。かかるコドン最適化は、WO 05/025614に詳細に記載されている。
【0101】
RTS,S
RTSと呼ばれる(すなわち、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する)本発明のタンパク質粒子の構成成分は、RTS*(プラスモディウム・ファルシパルムのNF54/3D7株に由来し、本明細書中ではRTSと呼ばれる)の説明を含むWO 93/10152に記載のように作製することができる。
【0102】
本発明の1つ以上の実施形態において、融合タンパク質中で用いられるプラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原は、実質的にそのCSタンパク質全体であってよい。
【0103】
本発明の1つの実施形態では、完全長S抗原を用いる。別の実施形態では、上記のS抗原のフラグメントを用いる。
【0104】
1つの実施形態では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原は、中央反復領域に少なくとも4個の反復ユニットを含む。さらに具体的には、この抗原は、CSタンパク質のC末端部分と実質的に相同の、少なくとも160個のアミノ酸を含有する配列を含む。このCSタンパク質は、C末端から数えて最後の12〜14個(例えば12個)のアミノ酸を欠いていてもよい。
【0105】
さらに具体的には、使用されるプラスモディウム・ファルシパルムに由来する融合タンパク質は、配列番号18に示されるRTS発現カセットのヌクレオチド配列によってコードされる融合タンパク質である。
【0106】
B型肝炎に由来するS抗原
好適なS抗原はpreS2領域を含み得る。好適な血清型の例は、adw(Nature 280:815-819, 1979)である。
【0107】
通常、B型肝炎に由来する配列は完全長S抗原である。一般に、preS2領域は含まれない。
【0108】
1つの態様において、本発明のハイブリッド融合タンパク質は、例えば米国出願公開第2006/194196号(WO 2004/113369としても公開)に記載のとおり、変異体Sタンパク質に由来する部分を含む。この文献は、標識変異体HDB05について記載する。特にこの文献は、図1と図6では変異体タンパク質と野生型タンパク質との比較を、また図4と図5では変異体の遺伝子を記載している。文献中の配列12〜22は、変異体Sタンパク質の特定のポリペプチドを表す。上記の各記載は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0109】
融合タンパク質CSV-Sは、例えば、プラスミドpGF1-S2を用いて調製することが可能であり(さらに詳細には、図2および実施例を参照のこと)、このプラスミドは、CSVに対応する適切な配列がSmaIクローニング部位に挿入されている場合、好適な条件下で融合タンパク質CSV-Sを生産することができる。
【0110】
本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、好ましくは酵母遺伝子に由来する転写制御エレメントに隣接しており、発現ベクターに組み込まれる。
【0111】
本発明において用いられるハイブリッドタンパク質の発現カセットは、例えば、以下の特性を含めて構築することができる。
・例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)のTDH3遺伝子に由来するプロモーター配列。
・適切な融合タンパク質をコードする配列。
・例えば、サッカロミセス・セレヴィシエのARG3遺伝子に由来する配列中に含まれる転写終結配列。
【0112】
特異的プロモーターの例は、サッカロミセス・セレヴィシエのTDH3遺伝子由来のプロモーターである(Mustiら)。
【0113】
次いで、好適なプラスミドを用いて、ハイブリッド融合タンパク質をコードする配列を好適な合成用宿主に挿入することができる。好適なプラスミドの例として、好適な発現カセットを担持する2ミクロンベースのベクターであるpRIT15546が挙げられる。さらに詳細には、図1および実施例を参照のこと。
【0114】
このプラスミドは、通常、選択に役立つ組込みマーカー(例えば、抗生物質耐性またはLEU2もしくはHIS栄養要求性をコードする遺伝子)を含む。
【0115】
通常、宿主は、粒子中の各融合タンパク質について発現カセットを有し、そのゲノム中に組み込まれたS抗原についての1つまたはそれ以上の発現カセットも有し得る。
【0116】
また本発明は、本発明のベクターで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であってよいが、好ましくは酵母であり、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)(例えば、RIT DC5 cir(o)という名称で寄託されているATCCデータベース(受託番号20820)中のDC5(寄託者:Smith Kline-RIT)などのサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))、および非サッカロミセス酵母が挙げられる。これらは、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)(例えば、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis))、ピキア(Pichia)(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris))、ハンセヌラ(Hansenula)(例えば、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))、ヤロウィア(Yarowia)(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))およびシュワニオミセス(Schwanniomyces)(例えば、シュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)を含む。
【0117】
本発明の融合タンパク質を発現させるための好適な組換え酵母株はY1834である(また、その使用は本発明の一部を形成する)。この組換え酵母株の作製については、実施例を参照されたい。
【0118】
本明細書中で用いられるヌクレオチド配列またはその一部(CS/ハイブリッドタンパク質をコードする部分だが、場合によりタンパク質Sをコードする部分ではない)は、酵母などの宿主中での発現用にコドン最適化することができる。
【0119】
宿主細胞は、プラスモディウム・ビバックスに由来する融合タンパク質についての発現カセットと、プラスモディウム・ファルシパルムおよび場合によりS抗原に由来する融合タンパク質についての発現カセットを含み得る。
【0120】
酵母細胞などの特定の宿主中では、融合タンパク質(S抗原を含む)は、いったん発現されると、該融合タンパク質の多数の単量体から構成されるタンパク質構造/粒子へと自発的に構築される。この酵母が2つの異なる融合タンパク質(すなわち融合タンパク質とS抗原)を発現する場合、これらは粒子中で共構築されると考えられる。
【0121】
選択されたレシピエント酵母株が、既にそのゲノム中に幾つかの組み込まれたB型肝炎S発現カセットのコピーを有する場合、その後構築された粒子は、非融合S抗原の単量体も含み得る。
【0122】
これらの粒子は、ウイルス様粒子(VLP)とも呼ばれる。この粒子は、多量体リポタンパク質粒子、または単に免疫原性粒子としても記載される。
【0123】
このようにして、以下の単量体:
a. プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する配列を含む融合タンパク質(例えばCSV-S)、および/または
b. プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する配列を含む融合タンパク質(例えばRTS)、および
c. 場合により非融合S抗原
を含む免疫原性タンパク質粒子が提供され、ここで該粒子は、例えば上記に定義されるモノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物などの安定化剤と結合している。
【0124】
1つの態様において、本発明は、上記に定義される単量体a)および/またはb)およびc)を含む免疫原性タンパク質粒子、また、該粒子を保持しながら容器またはバイアルから酸素が除去されおよび/または該粒子が例えばアンバーガラス容器により光から保護される保護体を提供する。
【0125】
さらなる態様において、本発明は、
a) プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する配列
(例えば、I型および/またはII型の反復領域に由来する配列)
b) プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する配列(例えば、その反復領域に由来する配列)、および
c) B型肝炎のS抗原に由来する配列
を含む融合タンパク質の使用を提供し、この融合タンパク質は、好適な宿主中で発現されると該融合タンパク質および場合により非融合S抗原を含むウイルス様粒子をもたらし、本明細書に定義される還元剤(例えばモノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物から選択される)と結合した粒子を生成する。
【0126】
さらなる態様において、本発明は、
a) プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する配列
(例えば、I型および/またはII型の反復領域に由来する配列)
b) プラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する配列(例えば、その反復領域に由来する配列)、および
c) B型肝炎のS抗原に由来する配列
を含む融合タンパク質の使用を提供し、この融合タンパク質は、好適な宿主中で発現されると該融合タンパク質および場合により非融合S抗原を含むウイルス様粒子をもたらし、酸素が除去されおよび/または該タンパク質/粒子が例えばアンバーガラス容器を使用することにより光から保護されている環境下で、粒子を生成する。
【0127】
このように、本発明は、免疫原性リポタンパク質粒子の形態の、プラスモディウム・ビバックスのCSタンパク質に由来する融合タンパク質および/またはプラスモディウム・ファルシパルムのCSタンパク質に由来する融合タンパク質(例えばRTS)を含むタンパク質粒子を安定化させるための、少なくとも1つのチオール官能基を有する還元剤(例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物、特にモノチオグリセロール)の使用にまで及ぶ。
【0128】
このように、本発明は、CSV-Sおよび/またはRTSユニットを含むVLPを安定化させるための、少なくとも1つのチオール官能基を有する還元剤(例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロールのような還元剤)の使用を提供する。1つの態様において、本発明は、本質的にCSV-Sおよび/またはRTSユニットからなる粒子を提供する。代替的態様において、生成される粒子は、CSV-Sおよび/またはRTSおよびSのユニットを含み、あるいは本質的にそれらからなる。
【0129】
本発明で用いられるリポタンパク質粒子は、in vivoで抗原タンパク質に対する免疫応答をさらに刺激することに寄与し得ると仮定される。
【0130】
さらに、少なくとも1つのチオール官能基を有する安定化剤(例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロール、システインおよびそれらの混合物など)の添加は各粒子に内部安定化を与え、このようにして該安定化剤は、所与の粒子と結合しまたは該粒子内に取り込まれるようになり得ると仮定される。
【0131】
また本発明は、免疫防御量の本発明の安定化タンパク質粒子を好適な賦形剤(例えば希釈剤)と混合して含むワクチンにも関する。
【0132】
本明細書に関して、「ワクチン」は、アジュバント成分を含み、ヒト患者への注射に適した構成成分を全て含む製剤を指す。
【0133】
本発明に関して、「安定化」は、1つ以上のチオール基を有する安定化剤(本明細書中で還元剤とも呼ばれる、例えば本明細書に記載されるモノチオグリセロール、システインおよびそれらの混合物など)が含まれない対応する製剤を、例えば37℃で7日間または14日間保存される場合および/または加速安定性条件(例えば37℃で7日間)下で保存され、その後強い光の存在下で約15時間処理された場合に、参照して意味することを意図する。
【0134】
安定性は、粒子サイズ(例えば光散乱法、サイズ排除クロマトグラフィーまたはフィールドフロー分画によって測定される)および/または凝集/分解(例えばSDS-Pageおよびウエスタンブロットによって測定される)および/または抗原性(例えばELISAによって測定される)および/または免疫原性(例えばin vivoで測定される)を基準とすることができる。
【0135】
1つの態様において、「安定性」は、凝集および分解が起こらないことを指す。
【0136】
組成物
本明細書において、「賦形剤」は、医薬製剤中の、それ自体では治療効果を有さない構成成分を指す。アジュバントは賦形剤である。なぜなら抗原などの治療的成分の不存在下でアジュバントによって生理的作用がもたらされ得るが、この生理的作用は非特異的であり、それ自体では治療的でないからである。希釈剤または液体担体は、賦形剤の定義の範囲に含まれる。
【0137】
本明細書において、「免疫原性」は、使用される融合タンパク質のCS部分および/またはS抗原部分に対する特異的免疫応答を誘発する能力を指すことを意図する。この応答は、例えば、本発明のリポタンパク質粒子が、好適なアジュバントを含み/必要とし得る適切な製剤として投与される場合に生じ得る。所要の免疫原性応答を得るためには、元の用量と同様の用量またはそれより少ない用量を含むブースターが必要となる可能性がある。
【0138】
本発明による組成物/医薬製剤は、混合して、プラスモディウム・ファルシパルムおよび/またはプラスモディウム・ビバックスに由来する抗原(例えば、DBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA1およびRBPまたはこれらのフラグメントから選択される抗原)などの1種またはそれ以上のさらなる抗原も含み得る。
【0139】
他の例では、プラスモディウム・ファルシパルムに由来する抗原としては、PfEMP-1、Pfs16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAPが挙げられる。他のプラスモディウム抗原としては、プラスモディウム・ファルシパルムのEBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモディウム属種におけるそれらの類似体が挙げられる。
【0140】
本発明による組成物/医薬製剤は、CSV-Sを含む粒子と混合して、RTS,Sの粒子(WO 93/10152に記載)も含み得る。
【0141】
本発明のワクチンでは、粒子の水溶液を直接使用することができる。別法として、前もって凍結乾燥させた、もしくは凍結乾燥させていない本発明のタンパク質を、アジュバントと共に混合し、あるいはアジュバントに吸収させることができる。
【0142】
アジュバント
好適なアジュバントは、金属塩、水中油型エマルション、Toll様受容体アゴニスト、(特にToll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニスト)、サポニンまたはこれらの組み合わせの群から選択されるアジュバントであるが、但し金属塩は別のアジュバントとの組み合わせにおいてのみ用いられ、約60%以下の抗原が金属塩上に吸着されるようにそれらが製剤化されない限り単独では用いられない。1つの実施形態では、アジュバントは、金属塩を単独のアジュバントとしては含まない。1つの実施形態では、アジュバントは金属塩を含まない。
【0143】
1つの実施形態において、アジュバントはToll様受容体(TLR)4リガンドであり、例えば、リピドA誘導体(特にモノホスホリルリピドAまたは、さらに特に3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL))などのアゴニストである。
【0144】
3-脱アシル化モノホスホリルリピドAは、米国特許第4,912,094号および英国特許出願番号第2,220,211号(Ribi)から公知であり、Ribi Immunochem, Montana, USAから入手可能である。
【0145】
3D-MPLは、Corixa corporationから商標MPL(登録商標)の下に販売されており、主としてIFN-g(Th1)表現型を有するCD4+T細胞の応答を促進する。これは、GB 2 220 211 Aに開示されている方法に従って製造することができる。化学的には、これは3、4、5または6アシル化鎖を有する3-脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。好ましくは、本発明の組成物中で、小粒子3D-MPLが使用される。小粒子3D-MPLは、0.22μmのフィルターを通して滅菌ろ過され得るような粒子サイズを有する。かかる調製は、WO 94/21292号に記載されている。リピドAの合成誘導体は公知であり、限定するものではないが、以下:
OM174 (2-デオキシ-6-O-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)(WO 95/14026);
OM294 DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(ジヒドロゲンホスフェート)(WO 99/64301およびWO 00/0462);
OM197 MP-Ac DP(3S,9R)-3-(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-ジヒドロゲンホスフェート 10-(6-アミノヘキサノエート)(WO 01/46127)
を含むTLR4アゴニストであると考えられている。
【0146】
典型的には、3D-MPLを使用する場合、抗原と3D-MPLはミョウバンと共に送達され、または水中油型エマルションもしくは多重水中油型エマルションとして提供される。3D-MPLの組込みは、これがエフェクターT細胞応答の促進剤であるため有利である。
【0147】
使用し得る他のTLR4リガンドは、WO 9850399またはUS 6303347(AGPの調製方法も開示されている)に開示されるようなグルコサミンリン酸アルキル(AGP)、またはUS 6764840に開示される製薬上許容されるAGPの塩である。一部のAGPはTLR4アゴニストであり、他の一部はTLR4アンタゴニストである。両方とも、アジュバントとして役立つと考えられている。
【0148】
本発明で使用する別の免疫賦活剤は、Quil Aおよびその誘導体である。Quil Aは、南米の木であるキラヤ・サポナリア・モリナ(Quilaja Saponaria Molina)から単離されるサポニン調製物であり、これがアジュバント活性を有することは、Dalsgaardらが1974年に初めて説明した("Saponin adjuvant", Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)。Quil Aに付随する毒性を有することなくアジュバント活性を保持しているQuil Aの精製フラグメント(例えば、QS7とQS21(QA7とQA21としても知られている))は、HPLCによって単離されている(EP 0 362 278)。QS-21は、キラヤ・サポナリア・モリナの樹皮に由来する天然のサポニンであり、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および優勢IgG2a抗体応答を誘導する。
【0149】
ステロールをさらに含むQS21の特定の製剤が記載されている(WO 96/33739)。QS21:ステロールの比は、典型的には、重量比でほぼ1:100〜1:1程度である。通常は過剰のステロールが存在し、QS21:ステロールの比は、少なくとも1:2 w/wである。典型的には、ヒトへの投与のため、QS21とステロールは、ワクチン中に約1μg〜約100μgの範囲(例えば、用量当たり約10μg〜約50μg)で存在する。
【0150】
リポソームは一般的に、例えば、通常は室温で非晶質のホスファチジルコリン(例えば卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンまたはジラウリルホスファチジルコリン)などの中性脂肪を含む。リポソームは、飽和脂質で構成されるリポソームのリポソーム-QS21構造の安定性を高める荷電脂質も含み得る。これらの場合、荷電脂質の量は1〜20% w/w、例えば5〜10%であることが多い。リン脂質に対するステロールの比は、1〜50%(モル/モル)、例えば20〜25%である。
【0151】
これらの組成物は、MPL(3-脱アシル化モノホスホリルリピドA、3D-MPLとしても公知)を含み得る。3D-MPLは、3種類の、4、5または6アシル化鎖を有する脱-O-アシル化モノホスホリルリピドAの混合物として、GB 2 220 211(Ribi)から公知であり、Ribi Immunochem(Montana)により製造されている。
【0152】
サポニンは、ミセル、混合ミセル(通常、限定するものではないが、胆汁塩との混合物)の形態に分離してもよいし、あるいはコレステロールおよび脂質と共に製剤化される場合にはISCOMマトリックス(EP 0 109 942)、リポソームもしくは関連のコロイド構造(例えばワーム様もしくはリング様多量体複合体または脂質/層状構造およびラメラ)の形態であってもよいし、あるいは水中油型エマルション(例えば、WO 95/17210に記載される)の形態であってもよい。
【0153】
通常、サポニンは、リポソーム製剤、ISCOMまたは水中油型エマルションの形態で提供される。
【0154】
また免疫賦活オリゴヌクレオチドも使用することができる。本発明のアジュバントまたはワクチンにおいて使用するためのオリゴヌクレオチドの例として、CpG含有オリゴヌクレオチド(通常は、少なくとも3個、より好ましくは少なくとも6個以上のヌクレオチドで隔てられた2つまたはそれ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含む)が挙げられる。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチドの後ろにグアニンヌクレオチドが続いたものである。CpGオリゴヌクレオチドは、典型的にはデオキシヌクレオチドである。1つの実施形態において、このオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間結合はホスホロジチオエートであり、またはより好ましくはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲に含まれる。本発明の範囲に同様に含まれるのは、混合されたヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートの製法は、US 5,666,153、US 5,278,302およびWO 95/26204に記載されている。
【0155】
オリゴヌクレオチドの例は、以下のとおり:
TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826) - 配列番号20
TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758) - 配列番号21
ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG - 配列番号22
TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006) - 配列番号23
TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668) - 配列番号24
TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456) - 配列番号25
であり、これらの配列は、ホスホロチオエート改変ヌクレオチド間結合を含み得る。
【0156】
別のCpGオリゴヌクレオチドは、重要ではない欠失または付加を有する上記の配列を1つまたはそれ以上含み得る。
【0157】
CpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって合成することができる(例えば、EP 468520参照)。好都合には、このようなオリゴヌクレオチドは自動合成装置を利用して合成することができる。
【0158】
TLR2アゴニストの例として、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が挙げられる。イミキモッドおよびレシキモッドなどのイミダゾキノリン類は、公知のTLR7アゴニスト類である。一本鎖RNAも公知のTLRアゴニスト(ヒトではTLR8、またマウスではTLR7)であるが、他方、二本鎖RNAおよびポリIC(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸 - 市販のウイルスRNAの合成模倣剤)は、典型的なTLR3アゴニストである。3D-MPLはTLR4アゴニストの一例であるが、他方、CpGはTLR9アゴニストの一例である。
【0159】
免疫賦活剤は、代替的にまたは付加的に含めることができる。1つの実施形態において、この免疫賦活剤は、3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0160】
1つの態様において、アジュバントは3D-MPLを含む。
【0161】
1つの態様において、アジュバントはQS21を含む。
【0162】
1つの態様において、アジュバントはCpGを含む。
【0163】
1つの態様において、アジュバントは、水中油型エマルションとして製剤化される。
【0164】
1つの態様において、アジュバントは、リポソームとして製剤化される。
【0165】
アジュバントの組み合わせとして、3D-MPLとQS21(EP 0 671 948 B1)、3D-MPLとQS21を含む水中油型エマルション(WO 95/17210, WO 98/56414)、リポソーム製剤としての3D-MPLとQS21、または他の担体と共に製剤化された3D-MPL(EP 0 689 454 B1)が挙げられる。他のアジュバント系は、US 6558670およびUS 6544518に記載される、3D-MPL、QS21およびCpGオリゴヌクレオチドの組み合わせを含む。
【0166】
本発明の1つの実施形態において、本明細書中に記載の安定化粒子を、3D-MPLおよび希釈剤と組み合わせて含むワクチンが提供される。典型的には、この希釈剤は、水中油型エマルションまたはミョウバンである。
【0167】
ワクチン調製物は、Vollerら(University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A., 1978)によって編集された"New Trends and Developments in Vaccines"に一般的に記載されている。リポソーム中へのカプセル封入は、例えば、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。
【0168】
各ワクチン用量中に存在する本発明のタンパク質粒子の量は、標準的なワクチン中で重大な副作用を伴うことなく免疫防御応答を誘導する量として選択される。かかる量は、どの特異的免疫源が使用されるか、及びそのワクチンがアジュバント化されているか否かによって異なる。通常、各用量は、1〜1000μgのタンパク質、好ましくは1〜200μg、最も好ましくは10〜100μgのタンパク質を含むことが期待される。特定のワクチンの最適量は、抗体力価および患者における他の応答の観察を含む標準的な試験によって確定することができる。最初のワクチン接種の後、被験体は、好ましくは約4週間以内にブースト(追加免疫)を受け、その後、感染のリスクが存在する限り6ヶ月毎にブーストを繰り返す。本発明のタンパク質に対する免疫応答は、アジュバントおよび/または免疫賦活剤の使用により増強される。
【0169】
使用される3D-MPLの量は、通常は少ないが、ワクチン製剤に依存して、用量当たり1〜1000μg、例えば用量当たり1〜500μg、または用量当たり1〜100μg(例えば用量当たり50μgもしくは25μg)程度であってよい。
【0170】
本発明のアジュバントまたはワクチン中のCpGオリゴヌクレオチドまたは免疫賦活オリゴヌクレオチドの量は、通常は少ないが、ワクチン製剤に依存して、用量当たり1〜1000μg、例えば用量当たり1〜500μg(例えば用量当たり1〜100μg)程度であってよい。
【0171】
本発明のアジュバント中で使用するサポニンの量は、用量当たり1〜1000μg、例えば用量当たり1〜500μg(例えば用量当たり1〜250μg)、特に用量当たり1〜100μg(特に用量当たり50μgもしくは25μg)程度であってよい。
【0172】
製剤
本発明の製剤は、予防目的および治療目的の両方に使用することができる。従って本発明は、例えばマラリアの治療(または予防)用の医薬において(またはマラリアの治療/予防用医薬の製造において)使用するための、本明細書中に記載されるワクチン組成物を提供する。
【0173】
本発明の他の態様は、本発明のエレメント(要素)を含むワクチン成分およびワクチンならびにキットの調製方法を提供することであり、この方法は、当該タンパク質をコードするDNA配列を好適な宿主(例えば酵母)中で発現させるステップと、その生成物をリポタンパク質粒子として回収するステップと、当該リポタンパク質粒子を本明細書で定義される少なくとも安定化剤(特にモノチオグリセロール、システインおよびそれらの混合物、例えばモノチオグリセロール)と混合するステップを含んでなる。
【0174】
最終バルクは、通常は3mlガラスバイアルに無菌的に分配され、その後このバイアルは緩く栓をされ、凍結乾燥機に移されて約40時間の凍結乾燥サイクルを経る。
【0175】
抗原成分を調製する過程で、通常は賦形剤を添加して混合し、最終ステップとして当該抗原/リポタンパク質粒子を添加する。この調製のため、最終的には、安定化剤または代替物の使用と組み合わせて、バイアルからの酸素の除去またはアンバーガラス容器を用いることによる光に対するワクチンの保護などの保護手段も適用されうる。
【0176】
酸素が除去される本発明の態様において、製剤/構成成分/粒子等は、窒素下で保存することができる。
【0177】
多くの場合、アジュバントは本発明の抗原の液体製剤(または本発明の抗原の凍結乾燥製剤)に添加されてワクチンを形成する。
【0178】
本発明の他の態様は、上記に記載されるワクチンの有効量を投与することにより、プラスモディウム感染症にかかりやすい患者を治療する方法にある。
【0179】
他の態様において、治療のための本発明のワクチン用の抗原性成分またはワクチン(あるいはマラリアの治療/予防用医薬の製造のための当該ワクチンの使用)が提供される。
【0180】
本発明は、本明細書中に記載される様々な構成成分を1つまたはそれ以上含むプライムブーストレジメも包含する。
【0181】
本明細書において、含む(comprising)は、含有する(including)と解釈される。
【0182】
1つの態様において、本発明は、場合によりバイアル中の酸素種を除去するため充填前に窒素で洗い流した、3mLガラスバイアル(例えばアンバーバイアル)に入った本明細書中に記載の安定化マラリア抗原を提供する。
【0183】
使用されるバイアルは、シリコン処理されていてもよいし、シリコン処理されていなくてもよい。
【0184】
本発明はまた、必要に応じて、特定のエレメント(要素)を含む本明細書中に記載の本発明の態様からなる、または本質的にそれらからなる、別個の実施形態にも及ぶ。
【0185】
以下の実施例は、本発明の粒子を調製するために用い得る方法を説明するために示す。
【実施例】
【0186】
実施例1
RTS,Sマラリアワクチン(2バイアル製剤)の単回小児用量用の構成成分の処方
構成成分 量
RTS,S 25μg
NaCl 2.25mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 125μg
注射用水 体積250μLとなるまでの量
【0187】
上記の構成成分は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。最終的にpHを7.0±0.1に調整する。
【0188】
この構成成分は1つのバイアルとして、別のバイアルのアジュバント(例えばMPLとQS21のリポソーム製剤)と共に提供することができる。
構成成分 量
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 500μg
コレステロール 125μg
MPL 25μg
QS21 25μg
NaCl 2.25mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
注射用水 体積250μLとなるまでの量
【0189】
投与のため、例えば注射器を用いて上記のアジュバント製剤を構成成分製剤に加え、次いで振盪する。その後、通常の方法で上記の用量を投与する。
【0190】
最終液体製剤のpHは、約6.6+/-0.1である。
【0191】
実施例1A
本発明の最終小児液体製剤(1バイアル)は、以下の処方により調製することができる。
構成成分 量
RTS,S 25μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 125μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 500μg
コレステロール 125μg
MPL 25μg
QS21 25μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0192】
上記の液体製剤のpHは、7.0+/-0.1(抗原安定性には好ましいが、MPL安定性には全く好ましくない)、または6.1+/-0.1(MPL安定性には好ましいが、RTS,S安定性には全く好ましくない)のいずれかに調整される。そのためこの製剤は、調製後の速やかな使用が意図される。
【0193】
上記の液体製剤は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。次いで、MPLとQS21を含むリポソームのプレミックスを加え、最終的にpHを調整する。
【0194】
実施例1B
本発明のRTS,Sに対する最終成人用量(1バイアル製剤)は、以下のとおりに調製することができる。
【0195】
構成成分 量
RTS,S 50μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 250μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 1000μg
コレステロール 250μg
MPL 50μg
QS21 50μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0196】
実施例1C
実施例1Cは、実施例1、1Aまたは1Bを、例えば充填前に窒素で洗い流したアンバーバイアルに入れることによって調製することができる。
【0197】
実施例2
本発明の構成成分は、小児集団において使用するための2回用量(2バイアル製剤)として提供することもできる。
【0198】
構成成分 量
RTS,S 50μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 250μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0199】
上記の構成成分は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。最終的にpHを7.0±0.1に調整する。
【0200】
この構成成分は1つのバイアルとして、別のバイアルのアジュバント(例えばMPLとQS21のリポソーム製剤)と共に提供することができる。
【0201】
構成成分 量
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 1000μg
コレステロール 250μg
MPL 50μg
QS21 50μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0202】
投与のため、例えば注射器を用いて上記のアジュバント製剤を構成成分製剤に加え、次いで振盪する。その後、単回用量を抜き取って(500μL)通常の方法で投与する。
【0203】
最終液体製剤のpHは約6.6+/-0.1である。
【0204】
実施例2A
本発明の最終小児液体製剤(1バイアル)は、以下の処方により2回用量として調製することができる。
【0205】
構成成分 量
RTS,S 50μg
NaCl 9 mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 250μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 1000μg
コレステロール 250μg
MPL 50μg
QS21 50μg
注射用水 体積1000μLとなるまでの量
【0206】
上記の液体製剤のpHは、7.0+/-0.1(抗原安定性には好ましいが、MPL安定性には全く好ましくない)、または6.1+/-0.1(MPL安定性には好ましいが、RTS,S安定性には全く好ましくない)のいずれかに調整される。そのためこの製剤は、調製後の速やかな使用が意図される。
【0207】
上記の液体製剤は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。次いで、MPLとQS21を含むリポソームのプレミックスを加え、最終的にpHを調整する。
【0208】
実施例2B
本発明のRTS,Sの最終成人用量(1バイアル製剤)は、以下のとおりに2回用量として調製することができる。
【0209】
構成成分 量
RTS,S 100μg
NaCl 9 mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 500μg
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 2000μg
コレステロール 500μg
MPL 100μg
QS21 100μg
注射用水 体積1000μLとなるまでの量
【0210】
実施例2C
実施例2Cは、実施例2、2Aまたは2Bを、例えば充填前に窒素で洗い流したアンバーバイアルに入れることによって調製することができる。
【0211】
実施例3
充填体積500μlのRTS,Sマラリアワクチン(2バイアル製剤)の単回小児用量用の構成成分の処方
構成成分 量
RTS,S 25μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
モノチオグリセロール 50μgまたは200μg
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0212】
上記の構成成分は、RTS,S抗原を、注射用水、NaCl 1500mM、リン酸緩衝液(Na/K2) 500mM(50倍希釈した場合にpH6.8)およびモノチオグリセロールの10%水溶液の混合物に加えることによって調製する。最終的にpHを7.0±0.1に調整する。
【0213】
この構成成分は1つのバイアルとして、別のバイアルのアジュバント(例えば充填体積500μlのMPLとQS21のリポソーム製剤)と共に提供することができる。
【0214】
構成成分 量
1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC) 500μg
コレステロール 125μg
MPL 25μg
QS21 25μg
NaCl 4.5mg
リン酸緩衝液(Na/K2) 10mM
注射用水 体積500μLとなるまでの量
【0215】
投与のため、例えば注射器を用いて上記のアジュバント製剤を構成成分製剤に加え、次いで振盪する。その後、通常の方法で上記の用量を投与する。
【0216】
最終液体製剤のpHは約6.6+/-0.1であり、注射体積は1mlである。
【0217】
実施例4
加速安定性試験の結果は、以下を示唆する:
・pHと浸透圧は注射に適合する;
・RTS,S含有量について:4℃または37℃で5週間後、非特異的吸着による抗原損失はない;
・抗原完全性に関して(図6、7および8参照):
・加速安定性試験(37℃で7日間±AOT、37℃で14日間)後に顕著な分解はない;
・加速安定性試験(37℃で7日間±AOT、37℃で14日間)後の酸化的凝集を回避するために、不活性化することなく抗酸化剤(モノチオグリセロール)が必要とされ:
その際、
・37℃における凝集を回避するためには0.01%で十分であり;
・37℃+AOTにおける安定性のためには0.04%が必要である;
・アンバーガラスは、光に対する抗原の保護を確実にする(AOT後に見られるとおり);
・加速安定性試験(37℃で7日間)後、RTS,Sの粒度分布に変化はない;
・抗原性に関して(図9参照):
・加速安定性試験(37℃で7日間±AOT)後の酸化的凝集および抗原性増加を回避するために、不活性化することなく抗酸化剤(モノチオグリセロール)が必要とされ:
その際、
・0.01%は極めて安定した抗原性(80〜120%)を与え;
・0.04%は加速安定性試験後にわずかな抗原性の低下(-10%)を誘導する;
・AS01(MPLとQS21を含むリポソームアジュバント製剤)と混合すると:
・RTS,Sの完全性および抗原性は、混合後、25℃において少なくとも24時間維持される。
【0218】
これらのモノチオグリセロールを含むまたは含まないRTS,S液体製剤を、37℃で7日間、14日間、または5週間(図8)保存した後、SDS-Page解析を行った。
【0219】
図6は以下を示す:
・モノチオグリセロールの不存在下:37℃で7日間の保存後、RTS,Sはわずかに凝集し(ウェル3および4);AOTへの曝露前に37℃で7日間保存された白色バイアル中ではRTS,Sは完全凝集し、またわずかに分解した(ウェル6)が、アンバーガラスは、RTS,Sを光によって誘導される分解および酸化的凝集に対して保護する(ウェル5);
・モノチオグリセロール0.01%の存在下:この濃度は、37℃で7日間の保存の間RTS,Sを安定化させるのには十分である(ウェル7)が、アンバーガラスと組み合わせる場合(ウェル8)を除いて、加速酸化試験(AOT)を重ねる場合には十分ではない(ウェル9);
・モノチオグリセロール0.04%の存在下:この濃度は、37℃で7日間の保存の間RTS,Sを安定化させるのに十分であり(ウェル10)、加速酸化試験を重ねる場合にも十分である(ウェル12);この場合、アンバーガラスバイアルへの充填は不要である(ウェル11);
・AS01との混合は、25℃で24時間保存した後でも、RTS,Sプロファイルに影響を与えない。
【0220】
図7は、RTS,Sの凝集を回避するためにモノチオグリセロールが必要とされるが、いずれの濃度も、37℃で少なくとも14日間の保存の間RTS,Sを安定化させることができることを示す(ウェル10に対してウェル11および12)。
【0221】
図8は、37℃で5週間後、全ての製剤においてRTS,Sが凝集し、また分解されていることを示す;AS01は、全ての製剤において凝集を悪化させる。
【0222】
実施例5
初期時間T0(±AOT)または37℃で7日間(±AOT)または5週間の保存後、0、0.01または0.04%モノチオグリセロールを含む製剤に対する混合ELISA αCSP-αSによってRTS,Sの抗原性を測定した。これはAS01での再構成の前、直後および25℃で24時間後に測定された。
【0223】
図9は以下を示す:
・モノチオグリセロールの不存在下:
・675Wで15時間の曝露(AOT)は、50〜60%の抗原性の増加を誘発する(これはSDS-Pageで観察される酸化的凝集と関連している可能性がある)が、アンバーガラスバイアルへ充填すると、この抗原性増加がおよそ20%に制限される;
・37℃で7日間の保存は、およそ30〜40%の抗原性の増加を誘発する(これもまたSDS-Pageで観察される酸化的凝集と関連している可能性がある);
・抗原性は、37℃で7日間〜5週間の間およそ30%低下する;
・25℃で24時間後、AS01は、およそ20%の抗原性の増加を誘発する(これもまたSDS-Pageで観察される凝集と関連している可能性がある);
・0.01%モノチオグリセロールの存在下:
・モノチオグリセロールは、37℃で7日間の保存、AOT(アンバーガラスの効力を喪失させる)またはAS01との混合によって誘導される抗原性増加に対してRTS,Sを保護する(しかし、AS01中で25℃で24時間の保存と37℃で7日間の保存が重なった場合、抗原性はおよそ20%増加する);
・抗原性は、37℃で7日間〜5週間の間およそ20%低下する(→規格外);
・0.04%モノチオグリセロールの存在下:
・モノチオグリセロールは、アンバーガラスの効力を喪失させるAOTによって誘導される抗原性増加に対してRTS,Sを保護する;
・37℃で7日間の保存は、およそ20%の抗原性の低下を誘発する;
・37℃で7日間から5週間の間、抗原性は低下しない;
・25℃で24時間後、AS01は、およそ30〜40%の抗原性の増加を誘発する。
【0224】
実施例6
モノクローナル抗体によって、RTS,Sへのモノチオグリセロールの固定化がRF1-エピトープ(S)認識に与える影響を調べるため、モノチオグリセロール(MTG)で安定化されたまたは安定化されていないRTS,S液体製剤中で、T0(時間0)または37℃で7日間の保存後に、ELISA阻害アッセイによりRF1腹水に対するRTS,Sの反応性を測定した(表1参照)。
【0225】
【0226】
表1に示されるアッセイでは、エピトープRF1に対するモノクローナル抗体を使用した。
【0227】
表1では、下記2つのサンプルだけが、他のサンプルと比べて顕著に良く認識されるRF1-エピトープを有する。
【0228】
・37℃で7日間保存されたRTS,S精製バルク;
・37℃で7日間保存された、モノチオグリセロールを含まない液体製剤中のRTS,S。
【0229】
このことは、これらのサンプル中でコンフォメーション変化が起こり、それがRF1-エピトープの接近可能性を増加させることを意味する。これらの結果は、混合ELISA αCPS-αSの結果(37℃で7日間の保存後の、モノチオグリセロールを含まない製剤におけるRTS,S抗原性の増加)と並行して検討する必要がある。
【0230】
従って、発明者らは以下のように結論付ける:
・モノチオグリセロールは、T0において、RF1-エピトープの認識/接近可能性に悪影響を及ぼさないと考えられる(「新鮮な」精製バルク中と同じレベル);
・37℃で7日間保存された、モノチオグリセロールを含むRTS,S液体製剤において認識レベルは安定を保っており、そのことはRTS,Sのコンフォメーションがモノチオグリセロールによって安定化されていることを示している。
【0231】
免疫原性データ
実施例7
マウスにおいて、幾つかのRTS,S製剤の免疫原性を評価して比較した。これらの実験において、RTS,S、AS01、50mM PO4、NaCl 100mM(pH6.1)のワクチン製剤を、3種類の他のRTS,S製剤、すなわち
1) マンニトール-スクロース凍結乾燥RTS,S(アジュバントで再構成される)、
2) 0.02%モノチオグリセロールを含む液体製剤、および
3) 0.08%モノチオグリセロールを含む液体製剤
(各々、注射前にAS01と混合する)
の評価の基準として使用した。
【0232】
注目すべきことに、液体RTS,S製剤をAS01と混合した後、モノチオグリセロールの最終濃度は0.01%と0.04%であった。
【0233】
様々なRTS,S製剤によって誘発された体液性免疫応答および細胞性免疫応答を、以下および実施例8にそれぞれ記載される2つの異なる種類の免疫原性実験において測定した。
【0234】
マウス体液性免疫応答実験
a. 序論
様々なRTS,S製剤で免疫されたマウスにおいて誘発された抗CSおよび抗HBs抗体応答(全イムノグロブリン)を評価して比較した。
【0235】
b. 実験計画
実験計画は、RTS,S/AS01ワクチンの現在のin vivo効力アッセイ(すなわち、Balb/Cマウス系統、in vivo効力アッセイからの放出用量(0.25μgのRTS,S)の単回腹腔内注射、および免疫後28日目におけるELISAによる血清中の抗CSおよび抗HBs抗体応答(全イムノグロブリン)の測定)の1つに従った。
【0236】
この実験のサンプルサイズを規定するため、AS01アジュバントと共に製剤化したRTS,Sを使用して行ったin vivo効力アッセイから予測される抗CSおよび抗HBs抗体応答の変動性を用いた。これに基づき、統計学者は、90.9%の検定力(power)で、二元分散分析(two-way ANOVA)において、1群当たり25匹のマウスのサンプルサイズ(2つの異なる実験において)が、群平均間で2倍の差の検出を可能にするだろうと判定した。
【0237】
c. 結果
免疫後28日目に回収した血清を用いて、抗CS血清学的検査(全Ig)を行った。50匹マウス/群から得られた力価を対数(Log)で表し、図10に示す。
【0238】
抗CS血清学的検査の結果に関する統計分析(Dunnett法)を表4にまとめる。
【0239】
【0240】
これらの結果は、マンニトール-スクロース凍結乾燥RTS,S製剤または液体RTS,S製剤によって誘発された抗CS全Ig応答が、MPLとQS21のリポソームアジュバント製剤中に製剤化された場合のRTS,Sによって誘導された抗CS全Ig応答と統計的に異ならなかったことを示す(抗体(Ab)力価の2倍差を検出するための統計的検定力92.7%)。
【0241】
免疫後28日目に回収した血清を用いて、抗HBs血清学的検査(全Ig)を行った。50匹マウス/群から得られた力価を対数(Log)で表し、図11に示す。
【0242】
抗HBs血清学的検査の結果に関する統計分析(Dunnett法)を表5にまとめる。
【0243】
【0244】
これらの結果は、マンニトール-スクロース凍結乾燥RTS,S製剤または液体RTS,S製剤によって誘発された抗HBs全Ig応答が、MPLとQS21のリポソーム製剤中に製剤化された場合のRTS,Sによって誘導された抗HBs全Ig応答と統計的に異ならなかったことを示す(抗体(Ab)力価の2倍差を検出するための統計的検定力91.4%)。
【0245】
d. 結論
マウスにおいて、試験した3種類の代替RTS,S製剤は全て抗CSおよび抗HBs抗体応答を誘発した。さらに、上記の統計分析は、MPLおよびQS21のリポソーム製剤中で即時に再構成されるマンニトール-スクロースRTS,S凍結乾燥製剤、液体RTS,S製剤(0.02%モノチオグリセロール)または液体RTS,S製剤(0.08%モノチオグリセロール)のいずれかによって誘発された抗CSおよび抗HBs抗体応答が、AS01中で再構成される現在のRTS,S凍結乾燥製剤によって誘導された抗CSおよび抗HBs抗体応答と統計的に顕著に異ならなかったことを示した。比率2(オリジナルスケール、すなわち抗体力価)または差0.301(対数スケール)を示すための、抗CSおよび抗HBs抗体応答の分析に伴う検定力はそれぞれ少なくとも92.7%および91.4%であった。
【0246】
実施例8
マウス細胞性免疫応答実験:
a. 序論
この2種類目の実験において、HBs配列およびCS配列をカバーするペプチドプールを用いた短期間ex vivo刺激後のフローサイトメトリーに基づくサイトカイン発現T細胞の検出を用いて、HBs抗原およびCS抗原に対する細胞性免疫(CMI)応答を測定した。
【0247】
b. 実験計画
試験した群は、実施例7に記載される上記実験に由来する群と同じである。しかし実験計画は異なっていた。すなわち、抗原特異的細胞性免疫応答の評価を目的とする以前のマウス免疫原性研究のプロトコルに従って、C57BL/6マウスを、用量範囲(5μgおよび2.5μg)のAS01中RTS,S抗原で筋肉内に3回免疫した。この実験を2回行い、フローサイトメトリーに基づくアッセイを行うのに十分な細胞を回収するためにサンプルサイズを決定した。実際、各群において、4匹のマウスからプールされた(すなわち3プール/群)血球についてCMI分析を行った。このリードアウトは、1実験につき1群当たりに得られる3つの値(プール)のみでは統計的結論が得られないため、また、かかる細胞ベースのアッセイの変動性が良く知られていることから、予備的なものとして考えられる。
【0248】
c. 結果
3回目の免疫後の7日目におけるCS特異的およびHBs特異的CD4およびCD8T細胞応答を図12、13、14および15に示す。
【0249】
各グラフ中の三角は、それぞれ(i)CS配列またはHBs配列をカバーするペプチドプールを用いた末梢血リンパ球のin vitro再刺激後の4匹のマウスのプールから得られる応答を表し、また(ii)in vitro再刺激において使用したペプチドプールに応答してIL-2および/またはIFN-ガンマを産生するCD4T細胞またはCD8T細胞のパーセントを表す。
【0250】
これらの結果は、CSおよびHBs特異的CD4 T細胞応答が、試験した全てのRTS,S製剤によって誘発されることを示す。これらの抗原特異的CD4 T細胞応答は、RTS,S&AS01(現在の凍結乾燥製剤)、RTS,Sマンニトール-スクロース凍結乾燥製剤、0.02%または0.08%モノチオグリセロール(MTG)を含む液体RTS,S製剤が免疫化に使用されるか否かに関わらず同等(応答は試験した全ての用量において同等)である。
【0251】
これらの結果は、CSおよびHBs特異的CD8 T細胞応答が、試験した全てのRTS,S製剤によって誘発されることを示す。これらの抗原特異的CD8 T細胞応答は、RTS,S&AS01(現在の凍結乾燥製剤)、RTS,Sマンニトール-スクロース凍結乾燥製剤、0.02%または0.08%モノチオグリセロール(MTG)を含む液体RTS,S製剤が免疫付与に使用されるか否かに関わらず同等(応答は試験した全ての用量において同等)である。注目すべきことに、液体RTS,S製剤は、試験したいずれの用量(2.5μgおよび5μg)においてもより高いパーセントの抗原(Ag)特異的CD8 T細胞を誘導する傾向がある。しかし、上記のとおり、このリードアウトは、1実験につき1群当たりに得られる3つの値(プール)のみでは統計的結論が得られないため、また、かかる細胞ベースのアッセイの変動性が良く知られていることから、予備的なものとして考えられる。
【0252】
d. 結論
RTS,Sマンニトール-スクロース凍結乾燥製剤、液体RTS,S製剤(0.02%モノチオグリセロール)および液体RTS,S製剤(0.08%モノチオグリセロール)によって誘発されるCS特異的およびHBs特異的CD4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答は、AS01中で再構成される場合の現在のRTS,S凍結乾燥製剤によって誘発されるCS特異的およびHBs特異的CD4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答と同等である。
【0253】
参考文献
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(5) Broach JR, Strathern JN, and Hicks JB, "Transformation in Yeast Development of a Hybrid Cloning Vector and Isolation of the CAN 1 Gene", Gene 8: 121-133, 1979.
(6) Zhang H, et al., "Double Stranded SDNA Sequencing as a Choice for DNA Sequencing", Nucleic Acids Research 16: 1220, 1988.
(7) Dame JB, Williams JL. Mc Cutchan TF, et al., "Structure of the Gene Encoding the Immunodominant Surface Antigen on the Sporozoites of the Human Malaria Parasite Plasmodium falciparum", Science 225: 593-599, 1984.
(8) Valenzuela P, Gray P, Quiroga M, et al., "Nucleotide Sequences of the Gene Coding for the Major Protein of Hepatitis B Virus Surface Antigen", Nature 280: 815-819, 1979.
(9) In SS, Kee-Hoyung L, Young RK, et al., “ comparison of Immunological Responses to Various Types of Circumsporozoite Proteins of Plasmodium vivax in Malaria Patients of Korea”, Microbiol. Immunol. 48(2): 119-123, 2004;Microbiol. Immunol. 2004; 48(2): 119-123.
(10) Rathore D, Sacci JB, de la Vega P, et al., ”Binding and Invasion of Liver Cells by Plasmodium falciparum Sporozoites”, J. Biol. Chem. 277(9): 7092-7098, 2002.Rathore et al., 2002, J. Biol. Chem. 277, 7092-8.
【0254】
配列リスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マラリアワクチン用の構成成分であって、以下:
a) 免疫原性粒子RTS,Sおよび/または
b) 1つまたはそれ以上のプラスモディウム・ビバックス(P. vivax)株のCSタンパク質およびB型肝炎に由来するS抗原ならびに場合により非融合S抗原に由来する、免疫原性粒子、または
c) RTS、CSV-Sおよび場合により非融合S抗原を含む免疫原性粒子、および
d) 少なくとも1つのチオール官能基を有する安定化剤またはそれらの混合物を含む、安定化剤
を含む、前記構成成分。
【請求項2】
安定化剤が、N-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、還元グルタチオンおよびチオグリコール酸ナトリウムまたはそれらの混合物である、請求項1に記載の構成成分。
【請求項3】
安定化剤が、モノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物である、請求項2に記載の構成成分。
【請求項4】
構成成分が液体製剤である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項5】
液体製剤のpHが約6.5〜7.2である、請求項4に記載の構成成分。
【請求項6】
製剤が凍結乾燥されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項7】
安定化剤がシステインであり、0.1〜1.0% w/wの範囲で存在する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項8】
安定化剤がモノチオグリセロールであり、製剤中に0.01〜1% w/wの範囲で存在する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項9】
構成成分がガラスバイアル中に保存されている、請求項1〜8のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項10】
ガラスバイアルがアンバー色である、請求項9に記載の構成成分。
【請求項11】
ガラスバイアルがシリコン処理されている、請求項9または10に記載の構成成分。
【請求項12】
ガラスバイアルがシリコン処理されていない、請求項9または10に記載の構成成分。
【請求項13】
前記構成成分が、アジュバント成分を除く注射の1回用量のエレメントを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項14】
1回用量が25μgのRTS,Sを含む、請求項13に記載の構成成分。
【請求項15】
2.25mgの塩化ナトリウムをさらに含む、請求項14に記載の構成成分。
【請求項16】
125μgのモノチオグリセロールをさらに含む、請求項14または15に記載の構成成分。
【請求項17】
250μLの注射用水をさらに含む、請求項13〜16のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項18】
前記構成成分が、アジュバント成分を除く注射の2回用量のエレメントを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項19】
1回用量が50μgのRTS,Sを含む、請求項1〜12および18のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項20】
4.5mgの塩化ナトリウムをさらに含む、請求項19に記載の構成成分。
【請求項21】
250μgのモノチオグリセロールをさらに含む、請求項19または20に記載の構成成分。
【請求項22】
500μLの注射用水をさらに含む、請求項1〜12または19〜21のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項23】
さらなるマラリア抗原をさらに含む、請求項1〜23のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項24】
さらなるマラリア抗原が、プラスモディウム・ファルシパルム(P. falciparum)および/またはプラスモディウム・ビバックスに由来し、該抗原が、DBPの受容体結合ドメインであるPv RIIのようなDBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA、RBPまたはそのフラグメント、PfEMP-1、Pfs 16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAP、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモディウム属種におけるそれらの類似体から選択される、請求項23に記載の構成成分。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の構成成分と、以下:
a. QS21および3D-MPLを含む水中油型製剤、または
b. QS21および3D-MPLを含むリポソーム製剤
から選択されるアジュバントとを含む、マラリア用ワクチン。
【請求項26】
前記タンパク質をコードするDNA配列を好適な宿主中で発現させるステップと、生成物を回収するステップと、回収された生成物を安定化剤と混合するステップとを含んでなる、請求項1〜24のいずれか1つに記載の構成成分の調製方法。
【請求項27】
マラリアの予防または治療のための、請求項1〜24のいずれか1つに記載のマラリアワクチン用の構成成分または請求項25に記載のワクチン。
【請求項28】
マラリアの予防または治療のための医薬の製造における、請求項1〜24のいずれか1つに記載の構成成分または請求項25に記載のワクチンの使用。
【請求項29】
請求項25に記載のワクチンの有効量を投与することにより、プラスモディウム感染症にかかりやすい患者を治療する方法。
【請求項1】
マラリアワクチン用の構成成分であって、以下:
a) 免疫原性粒子RTS,Sおよび/または
b) 1つまたはそれ以上のプラスモディウム・ビバックス(P. vivax)株のCSタンパク質およびB型肝炎に由来するS抗原ならびに場合により非融合S抗原に由来する、免疫原性粒子、または
c) RTS、CSV-Sおよび場合により非融合S抗原を含む免疫原性粒子、および
d) 少なくとも1つのチオール官能基を有する安定化剤またはそれらの混合物を含む、安定化剤
を含む、前記構成成分。
【請求項2】
安定化剤が、N-アセチルシステイン、モノチオグリセロール、システイン、還元グルタチオンおよびチオグリコール酸ナトリウムまたはそれらの混合物である、請求項1に記載の構成成分。
【請求項3】
安定化剤が、モノチオグリセロール、システインまたはそれらの混合物である、請求項2に記載の構成成分。
【請求項4】
構成成分が液体製剤である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項5】
液体製剤のpHが約6.5〜7.2である、請求項4に記載の構成成分。
【請求項6】
製剤が凍結乾燥されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項7】
安定化剤がシステインであり、0.1〜1.0% w/wの範囲で存在する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項8】
安定化剤がモノチオグリセロールであり、製剤中に0.01〜1% w/wの範囲で存在する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項9】
構成成分がガラスバイアル中に保存されている、請求項1〜8のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項10】
ガラスバイアルがアンバー色である、請求項9に記載の構成成分。
【請求項11】
ガラスバイアルがシリコン処理されている、請求項9または10に記載の構成成分。
【請求項12】
ガラスバイアルがシリコン処理されていない、請求項9または10に記載の構成成分。
【請求項13】
前記構成成分が、アジュバント成分を除く注射の1回用量のエレメントを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項14】
1回用量が25μgのRTS,Sを含む、請求項13に記載の構成成分。
【請求項15】
2.25mgの塩化ナトリウムをさらに含む、請求項14に記載の構成成分。
【請求項16】
125μgのモノチオグリセロールをさらに含む、請求項14または15に記載の構成成分。
【請求項17】
250μLの注射用水をさらに含む、請求項13〜16のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項18】
前記構成成分が、アジュバント成分を除く注射の2回用量のエレメントを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項19】
1回用量が50μgのRTS,Sを含む、請求項1〜12および18のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項20】
4.5mgの塩化ナトリウムをさらに含む、請求項19に記載の構成成分。
【請求項21】
250μgのモノチオグリセロールをさらに含む、請求項19または20に記載の構成成分。
【請求項22】
500μLの注射用水をさらに含む、請求項1〜12または19〜21のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項23】
さらなるマラリア抗原をさらに含む、請求項1〜23のいずれか1つに記載の構成成分。
【請求項24】
さらなるマラリア抗原が、プラスモディウム・ファルシパルム(P. falciparum)および/またはプラスモディウム・ビバックスに由来し、該抗原が、DBPの受容体結合ドメインであるPv RIIのようなDBP、PvTRAP、PvMSP2、PvMSP4、PvMSP5、PvMSP6、PvMSP7、PvMSP8、PvMSP9、PvAMA、RBPまたはそのフラグメント、PfEMP-1、Pfs 16抗原、MSP-1、MSP-3、LSA-1、LSA-3、AMA-1およびTRAP、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、Pf332、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs48/45、Pfs230および他のプラスモディウム属種におけるそれらの類似体から選択される、請求項23に記載の構成成分。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の構成成分と、以下:
a. QS21および3D-MPLを含む水中油型製剤、または
b. QS21および3D-MPLを含むリポソーム製剤
から選択されるアジュバントとを含む、マラリア用ワクチン。
【請求項26】
前記タンパク質をコードするDNA配列を好適な宿主中で発現させるステップと、生成物を回収するステップと、回収された生成物を安定化剤と混合するステップとを含んでなる、請求項1〜24のいずれか1つに記載の構成成分の調製方法。
【請求項27】
マラリアの予防または治療のための、請求項1〜24のいずれか1つに記載のマラリアワクチン用の構成成分または請求項25に記載のワクチン。
【請求項28】
マラリアの予防または治療のための医薬の製造における、請求項1〜24のいずれか1つに記載の構成成分または請求項25に記載のワクチンの使用。
【請求項29】
請求項25に記載のワクチンの有効量を投与することにより、プラスモディウム感染症にかかりやすい患者を治療する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2011−507816(P2011−507816A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538733(P2010−538733)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067925
【国際公開番号】WO2009/080715
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067925
【国際公開番号】WO2009/080715
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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