説明

マルチカラーOLEDディスプレイ

【課題】製造効率の高い多色OLEDディスプレイを提供すること。
【解決手段】色の異なる少なくとも第1の画素と、第2の画素と、第3の画素とを備えるOLEDディスプレイは、基板上に第1の画素と第2の画素のために設けられた第1の発光層と、その基板上に上記第3の画素のために設けられた第2の発光層と;第1の画素および第2の画素と作用的関係がある第1のカラー・フィルタおよび第2のカラー・フィルタとを備えていて、第1の発光層と第2の発光層は異なるスペクトルの光を発生させ、その第1の発光層によって発生する光は、第1の画素と第2の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持ち、その第2の発光層によって発生する光は、第3の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイに関する。より詳細には、本発明は、3つ以上の画素を有する電力効率が改善されたマルチカラーOLEDディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)に基づくカラー・ディジタル画像ディスプレイがよく知られている。OLEDは、最も簡単な形態では、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これら電極に挟まれていて電荷の再結合をサポートして光を発生させる有機媒体とからなる。OLEDディスプレイを構成するには、個別にアドレスできる複数のOLED素子を画素マトリックスの形態に配置する。各画素は独立にアドレスできるOLEDを備えており、光を発生させることができる。このようなマトリックスは、発光OLED層が2組の直交する電極(行と列)に挟まれたパッシブ型にすることができる。パッシブ・マトリックス駆動のOLEDディスプレイ装置の一例が、アメリカ合衆国特許第5,276,380号に記載されている。あるいはOLEDディスプレイは、1つ以上の回路素子(例えばトランジスタやキャパシタ)を用いて各OLEDを駆動するアクティブ・マトリックス式の構成にすることもできる。アクティブ・マトリックス駆動のOLEDディスプレイ装置の一例が、アメリカ合衆国特許第5,550,066号に記載されている。
【0003】
マルチカラー・ディスプレイを構成するには、画素を配置してさまざまな色を発生させる。マルチカラー・ディスプレイは、例えば、赤色画素、緑色画素、青色画素を備える構成にすることができる。このようなディスプレイはRGBディスプレイと呼ばれる。追加の色は、赤色サブ画素、緑色サブ画素、青色サブ画素から発生する光をさまざまな比率で混合することにより、このディスプレイで実現できる。
【0004】
しかし人間の目は、緑色画素から出る光よりも赤色画素または青色画素から出る光に対して感度が低い。そのため望む明るさを実現するには、赤色画素と青色画素は緑色画素よりも多くの光を出す必要がある。するとディスプレイが大量の電力を消費することになる。
【0005】
例えばアメリカ合衆国特許第6,693,611号とアメリカ合衆国特許出願公開2002/0186214 A1に記載されているように、他のディスプレイとして、白色または他の色の光を発生させる追加の画素を緑色画素と赤色画素の間、または青色画素と緑色画素の間に備えたものが提案されている。追加の画素は、赤色画素または青色画素のいずれに対するよりも人間の目が感度のよい色の光を発生させる。そのためこれら追加画素の1つ以上を他の画素と組み合わせ、混合色(例えば白色)を発生させることができる。得られるディスプレイは、同等なRGBディスプレイと比べて少ない電力消費でこのような混合色を発生させることができる。
【0006】
アメリカ合衆国特許第6,693,611号で議論されているように、異なる3色以上の画素を有するこのようなディスプレイを構成する1つの方法は、各画素に独立したOLED発光層を設けることである。その場合、望む画素と正確に揃うようにして1つ以上のOLED発光層をパターニングする必要がある。OLED層をパターニングする方法がいくつか従来技術で知られている。例えばOLED層をシャドウ・マスクを通して堆積させ、望む領域にだけ選択的に堆積させる。そのときシャドウ・マスクを、標的とする画素と揃える必要がある。しかしこのように揃えるプロセスは非常に複雑であるため、製造のスループットが低くなる可能性がある。さらに、シャドウ・マスクと基板は正確に揃わない傾向があるため、パターニングされる層に大きな許容誤差が必要とされ、ディスプレイの表面積が無駄になる。シャドウ・マスクがディスプレイの基板と接触したときにそのマスクによってOLED画素が損傷することも起きやすい。OLED層を各層ごとに別々にパターニングするという別の方法も知られている。例えばレーザーを利用してOLED材料をドナー・シートから転写することでOLED層をパターニングする方法が知られている。しかしこの方法は、消費可能なドナー基板と複雑なレーザー書き込み装置を必要とする。レーザーで各画素に書き込む方法により製造のスループットが低下する可能性もある。OLED層をパターニングする別の方法は、溶媒に溶かしたOLED材料を、インク・ジェット印刷ヘッドを用いて液滴として堆積させる操作を含んでいる。この方法では、インク・ジェットの液滴を正確に配置する必要がある。そのため、液滴の配置と広がりを制御するための複雑な構造が必要とされ、画素領域の許容誤差が大きくなる可能性がある。
【0007】
従来技術で知られているように、ディスプレイを構成する別の方法は、広帯域白色発光OLEDをR、G、Bのカラー・フィルタと組み合わせて使用するというものである。この方法によってOLED層を正確に揃えたり正確にパターニングしたりする必要が少なくなり、従来のフォトリソグラフィ法を利用してカラー・フィルタをあらかじめパターニングすることができる。しかしこの方法ではディスプレイの消費電力がより大きくなる。なぜならカラー・フィルタが大量の光を吸収するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、上記の問題点を回避し、1つ以上のOLED層を正確にパターニングする必要が少ない、電力効率が改善されたマルチカラー・ディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、色の異なる少なくとも第1の画素と、第2の画素と、第3の画素とを備えるOLEDディスプレイであって、
a)基板上に第1の画素と第2の画素のために設けられた第1の発光層と、その基板上に上記第3の画素のために設けられた第2の発光層と;
b)第1の画素および第2の画素と作用的関係がある第1のカラー・フィルタおよび第2のカラー・フィルタとを備えていて、
第1の発光層と第2の発光層は異なるスペクトルの光を発生させ、その第1の発光層によって発生する光は、第1の画素と第2の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持ち、その第2の発光層によって発生する光は、第3の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持つことを特徴とするOLEDディスプレイによって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より効率的に製造できる、少なくとも3つの異なるカラー画素を有するマルチカラーOLEDディスプレイが提供される。
【0011】
マルチカラーOLEDディスプレイの設計がうまくなされているため、正確に揃えるステップまたはパターニング・ステップがより少ない簡単化した製造ステップを利用できる。
【0012】
本発明の1つの特徴は、本発明に従って製造したマルチカラーOLEDディスプレイが電力効率を改善できることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】異なる3色の画素を有するマルチカラーOLEDディスプレイである。
【図2】本発明の第1の実施態様による画素を上から見た図である。
【図3】図2の線3-3'に沿って切断した画素群の断面図である。
【図4】異なる4色の画素を有するマルチカラーOLEDディスプレイである。
【図5】本発明の第2の実施態様による画素を上から見た図である。
【図6】図5の線6-6'に沿って切断した画素群の断面図である。
【図7】異なる4色の画素を有する別のマルチカラーOLEDディスプレイである。
【図8】本発明の第3の実施態様による画素を上から見た図である。
【図9】図8の線9-9'に沿って切断した画素群の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、異なる色の光を発生させる3つの画素を有するマルチカラーOLEDディスプレイの一例を示してある。例えば画素11aは赤色の光を発生させることが好ましく、画素11bは緑色光を発生させることが好ましく、画素11cは青色光を発生させることが好ましい。これらの画素は、画素群10のようにグループにして配置することができる。各画素群には色の異なる各画素が含まれるように図示してあるが、本発明がこの場合に限定されることはない。そうではなく、いくつかのカラー画素が他のカラー画素よりも多数存在していてもよい。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施態様による画素11a、11b、11cを上から見た図である。パッシブ・マトリックスの構成では、直交した電極マトリックス(例えば第1の電極110a、110b、110cと第2の電極130)を設けることによってこれらの画素にアドレスできる。すなわち画素11aは第1の電極110aと第2の電極130から構成され、画素11bは第1の電極110bと第2の電極130から構成され、画素11cは第1の電極110cと第2の電極130から構成される。この構成では、1つの列内のすべての画素が同じ第1の電極を共有しており、1つの行内のすべての画素が同じ第2の電極を共有している。このようになっているため、これらの画素はストライプ・パターンに配置されている。しかし本発明がこの配置に限定されることはなく、当業者であれば他の配置(例えばデルタ・パターン配置やクワッド配置)にすることもできよう。さらに、本発明がパッシブ・マトリックスの構成に限定されることはなく、当業者であればアクティブ・マトリックス駆動スキームを適用することができよう。
【0016】
本発明によれば、発光層123aが、画素11aと11bの両者に共通するようにこれら画素の間に設けられる。そのためには、発光層123aがこれらの画素と正確に揃うか、これらの画素に合わせてパターニングされている必要がある。発光層123cが画素11cのために設けられていて、やはり正確に揃えるステップまたは正確にパターニングするステップが必要とされる。このようにすることで、異なるこれら3色の画素を形成するのに必要な正確に揃った堆積の回数が3回から2回に減る。発光層123aは、例えば単一のシャドウ・マスクを通じて堆積させることによって、または同じインク・ジェット・ヘッドから1滴以上の液滴を正確に配置することによって、または同じドナー・シートから転写することによって、単一のステップで形成することができる。このようにして、この層は、図示したように画素11aと11bの間に連続的に形成することができる。これは、例えばシャドウ・マスクに設けられた単一の開口部を用いて層全体を堆積させることによって実現できる。同様に、発光層123cは単一の供給源から形成することができる。このような連続的配置は、製造プロセスにおいて揃えるときに許容誤差に割り当てられる表面積を小さくする上で好ましい。このような連続的配置を容易にするため、同じ発光層を共有する画素は、互いに隣り合わせに配置することが好ましい。図示してあるように、例えば画素11aは画素11bと隣り合っている。
【0017】
発光層123aは、赤と緑の間の色(または黄-オレンジ色と呼ぶ)に対応するスペクトルを有する光が発生する構成にすることが好ましい。発光層123aは、画素11aと画素11bの両方にとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光が発生する構成にする。これは、赤色、赤-オレンジ色、オレンジ色、黄-オレンジ色、黄色、黄-緑色、緑色の波長という広いスペクトルの光を発生させる材料からなる発光層を形成することによって実現できる。同様に、発光層123cは、青色に対応する光が発生する構成にすることが好ましい。発光層123cは、画素11cにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光が発生する構成にする。画素11aにとって望ましい赤色を実現するため、画素11a内で発光経路の途中に(すなわち作用的関係があるようにして)カラー・フィルタ140aを形成することで、画素11aにとって望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい赤色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。カラー・フィルタ140aは、例えば、赤色光を透過させ、より短い波長の光を吸収するように構成できる。画素11bにとって望ましい緑色を実現するため、カラー・フィルタ140bを、画素11b内に作用的関係があるようにして(すなわち画素と見る人の間の光の経路の少なくとも一部に)形成することで、画素11bにとって望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい緑色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。すなわちカラー・フィルタ140bは、例えば緑色光を透過させ、異なる波長の光を吸収するように構成できる。画素11cにとって望ましい青色は、カラー・フィルタを使用して実現することも、使用せずに実現することもできる。
【0018】
3画素の別の一実施態様は、青色光を発生させる第1の画素と、緑色光を発生させる第2の画素と、赤色光を発生させる第3の画素を設けることによって実現できる。この別の実施態様では、第1の発光層123aは、青と緑の間の色(または青-緑色と呼ぶ)に対応するスペクトルを有する光が発生する構成にすることが好ましい。発光層123aは、画素11aと画素11bの両方にとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光が発生する構成にする。これは、青色、青-緑色、緑-青色、緑色の波長という広いスペクトルの光を発生させる材料からなる発光層を形成することによって実現できる。同様に、発光層123cは、赤色に対応する光が発生する構成にすることが好ましい。発光層123cは、画素11cにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光が発生する構成にする。画素11aにとって望ましい青色を実現するため、画素11a内で発光経路の途中に(すなわち作用的関係があるようにして)カラー・フィルタ140aを形成することで、画素11aにとって望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい青色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。カラー・フィルタ140aは、例えば、青色光を透過させ、より長い波長の光を吸収するように構成できる。画素11bにとって望ましい緑色を実現するため、カラー・フィルタ140bを、画素11b内で発光経路の途中に(すなわち作用的関係があるようにして)形成することで、画素11bにとって望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい緑色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。カラー・フィルタ140bは、例えば緑色光を透過させ、異なる波長の光を吸収するように構成できる。画素11cにとって望ましい赤色は、カラー・フィルタを使用して実現することも、使用せずに実現することもできる。
【0019】
図3は、図2のデバイスを線3-3'に沿って切断した断面図である。図3から、画素11a、11b、11cがそれぞれ内部発光220a、220b、220cを発生させることがわかる。内部発光220cは、フィルタなしでデバイスから出て外部発光210cになる。内部発光220aはカラー・フィルタ140aを通過した後にデバイスを出て外部発光210aになる。同様に、内部発光220bはカラー・フィルタ140bを通過した後にデバイスを出て外部発光210bになる。カラー・フィルタ140aと140bは、従来技術で知られているラミネーション法またはスピン・コーティング法によって堆積させた有機層であることが好ましい。カラー・フィルタは、従来技術で知られているように光パターニングできることが好ましい。その場合、カラー・フィルタの材料をディスプレイの表面全体に堆積させた後に光源からの光を照射し、照射された領域または照射されない領域を溶媒を用いて除去する。この方法により、望ましい画素領域に正確に揃えることがうまくできる。しかし本発明がこの好ましい場合に限定されることはなく、当業者であれば、カラー・フィルタの材料を堆積させてパターニングするのに従来技術で知られている他の方法も利用できよう。さらに、従来技術で知られているように、全可視光の一部を吸収する追加のブラック・マトリックス構造(図示せず)を場合によっては画素間の非発光領域に堆積させて周囲光の反射を減らすことで、ディスプレイのコントラストを改善することができる。
【0020】
画素は基板100の上に構成される。図示してあるように、光は、基板100を通過してデバイスの外に出ることができる。このような構成は、ボトム・エミッション型デバイスとして知られている。基板100は、ガラスやプラスチックなどの透明な材料で構成すべきである。あるいはデバイスは、光が基板の反対側の方向に出る構成にすることもできる。このような構成は、トップ・エミッション型デバイスとして知られている。この基板は、透明でない材料(例えば金属)や、半導体材料(例えばシリコン・ウエハ)の中から選択することができる。
【0021】
ボトム・エミッション型デバイスの場合には、図示してあるように、第1の電極110a、110b、110cは光透過性にし、透明な導電性材料(例えばインジウム-スズ酸化物(ITO)またはインジウム-亜鉛酸化物(IZO))で構成することが好ましい。第2の電極130は、反射性の導電性材料(例えばアルミニウム、銀、マグネシウム-銀合金など)で構成することが好ましい。これらの電極を単層または複数層で構成することで、望ましい光吸収特性または光反射特性と、導電特性とを実現できる。逆にトップ・エミッション型デバイスでは、第2の電極を透明にし、第1の電極を反射性にする。トップ・エミッション型デバイスでは、カラー・フィルタ140a、140bは光の経路となる第2の電極の側に配置するとよかろう。第1の電極を列方向に配置し、第2の電極を行方向に配置した状態が図示してあるが、逆の配置も可能である。
【0022】
上記の実施態様は、異なる3色の画素を設けるものとして説明してある。しかし異なる4色の画素を設ける別の実施態様ではいくつかの利点が得られる。例えば図4では、赤色光を発生させる第1の画素11aと、緑色光を発生させる第2の画素11bと、青色光を発生させる第3の画素11cと、第1の画素、第2の画素、第3の画素のいずれとも異なる色の光を発生させる第4の画素11dとを本発明に従って設けることにより、マルチカラー・ディスプレイを構成することができる。図5は、本発明の第2の実施態様による画素11a、11b、11c、11dを上から見た図である。発光層123aが画素11a、11b、11dに共通するようにこれら画素の間に設けられるため、正確に揃えるステップまたは正確にパターニングするステップが1回必要とされる。発光層123cが画素11c、11dのために設けられるため、正確に揃えるステップまたは正確にパターニングするステップがやはり1回必要とされる。このようにすることで、異なるこれら4色の画素を形成するのに必要な正確に揃った堆積の回数が4回から2回に減る。発光層123aと123cは、すでに説明したようにして形成することができる。
【0023】
発光層123aは、赤と緑の間の色に対応するスペクトルを有する光が発生する構成にすることが好ましく、画素11aと11bにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。同様に、発光層123cは、青色に対応する光が発生する構成にすることが好ましく、画素11cにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。発光層123aと発光層123cは画素11dの位置で重なっている。画素11dにおける発光層123aと発光層123cの組み合わせは、画素11dにとって望ましい色に対応する広帯域スペクトル成分を持つ光が発生する構成にする。広帯域発光は、可視波長域全体で発光するスペクトルとして定義され、色は白色になる可能性がある。画素11aにとって望ましい赤色を実現するため、画素11a内で発光経路の途中にカラー・フィルタ140aを形成することで、望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい赤色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11bにとって望ましい緑色を実現するため、画素11b内で発光経路の途中にカラー・フィルタ140bを形成することで、望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい緑色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11dにとって望ましい広帯域の白色は、カラー・フィルタなしで実現する。画素11cにとって望ましい青色は、カラー・フィルタを使用して実現することも、使用せずに実現することもできる。このようにして製造したマルチカラーOLEDディスプレイは、より大きな電力効率を持つことができる。従来技術で知られているように、画素11dで用いるフィルタなしの高効率広帯域発光スペクトルをより多く使用し、効率がより低い赤色画素、緑色画素、青色画素をより少なく使用することで、はるかにニュートラルな成分を含む色を発生させることができる。効率は、例えば電流1アンペア(A)当たりのカンデラ(cd)で測定することができる。このような高効率の発光により、電力消費がより少ない、言い換えるならば電力効率の高いディスプレイが実現される。
【0024】
図6は、図5のデバイスを線6-6'に沿って切断した断面図である。図6から、画素11a、11b、11c、11dがそれぞれ内部発光220a、220b、220c、220dを発生させることがわかる。内部発光220cと220dは、フィルタなしでデバイスから出て、それぞれ外部発光210cと210dになる。内部発光220aはカラー・フィルタ140aを通過した後にデバイスを出て外部発光210aとなる。同様に、内部発光220bはカラー・フィルタ140bを通過した後にデバイスを出て外部発光210bになる。カラー・フィルタ140aと140cは、すでに説明したように有機層であることが好ましい。
【0025】
画素は基板100の上に構成される。ボトム・エミッション型デバイスの場合には、光は、図示してあるように基板100を通って外に出ることができる。第1の電極110a、110b、110c、110dは光透過性にし、すでに説明したような透明な導電性材料で構成することが好ましい。第2の電極130は、すでに説明したような反射性の導電性材料で構成することで、望ましい光吸収特性または光反射特性と、導電特性とを実現することが好ましい。
【0026】
4画素の別の一実施態様は、青色光を発生させる第1の画素11aと、緑色光を発生させる第2の画素11bと、赤色光を発生させる第3の画素11cと、第1の画素、第2の画素、第3の画素のいずれとも異なる色の光を発生させる第4の画素11dを設けることによって実現できる。発光層123aは、青と緑の間の色に対応するスペクトルを有する光が発生する構成にすることが好ましく、画素11aと11bにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。同様に、発光層123cは、赤色に対応する光が発生する構成にすることが好ましく、画素11cにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。発光層123aと発光層123cは画素11dの位置で重なっている。発光層123aと発光層123cの組み合わせは、画素11dにとって望ましい色に対応する広帯域スペクトル成分を持つ光が発生する構成にする。画素11aにとって望ましい青色を実現するため、画素11a内で発光経路の途中にカラー・フィルタ140aを形成することで、望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい青色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11bにとって望ましい緑色を実現するため、画素11b内で発光経路の途中にカラー・フィルタ140bを形成することで、望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい緑色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11dにとって望ましい広帯域の白色は、カラー・フィルタなしで実現する。画素11cにとって望ましい赤色は、カラー・フィルタを使用して実現することも、使用せずに実現することもできる。
【0027】
図7は、異なる色の光を出す4つの画素を含むマルチカラーOLEDディスプレイの一実施態様である。例えば画素11aは赤色光を発生させることが好ましく、画素11bは緑色光を発生させることが好ましく、画素11cは青色光を発生させることが好ましい。画素11dは、画素11bの緑色光と画素11cの青色光の間の色の光を発生させることが好ましい。これらの画素は、画素群10のようにグループにして配置することができる。各画素群には色の異なる各画素が含まれるように図示してあるが、本発明がこの場合に限定されることはない。そうではなく、いくつかのカラー画素が他のカラー画素よりも多数存在していてもよい。例えば赤色画素が黄色画素の2倍の数存在していてよい。このようになっているため、各画素群はすべての色の画素を含まねばならないわけではない。
【0028】
図8は、本発明の第3の実施態様による画素11a、11b、11c、11dを上から見た図である。パッシブ・マトリックスの構成では、直交した電極マトリックス(例えば第1の電極110a、110b、110c、110dと第2の電極130)を設けることによってこれらの画素にアドレスできる。すなわち画素11aは第1の電極110aと第2の電極130から構成され、画素11bは第1の電極110bと第2の電極130から構成され、画素11cは第1の電極110cと第2の電極130から構成され、画素11dは第1の電極110dと第2の電極130から構成される。この構成では、1つの列内のすべての画素が同じ第1の電極を共有しており、1つの行内のすべての画素が同じ第2の電極を共有している。このようになっているため、これらの画素はストライプ・パターンに配置されている。しかし本発明がこの配置に限定されることはなく、当業者であれば他の配置(例えばデルタ・パターン配置やクワッド配置)にすることもできよう。さらに、本発明がパッシブ・マトリックスの構成に限定されることはなく、当業者であればアクティブ・マトリックス駆動スキームを適用することができよう。
【0029】
本発明によれば、発光層123aは画素11a、11bに共通するように設けられる。そのため発光層123aをこれらの画素と正確に揃えること、またはこれらの画素に合わせてパターニングすることが必要とされる。同様に、発光層123cが画素11c、11dのために設けられていて、やはり正確に揃えるステップまたは正確にパターニングするステップが1回必要とされる。このようにすることで、異なるこれら4色の画素を形成するのに必要な正確に揃った堆積の回数が4回から2回に減る。発光層123aと123cは、すでに説明したようにして形成することができる。発光層123aは、図示してあるように、画素11aと画素11bの間に連続的に形成することができる。これは、例えばシャドウ・マスクの単一の開口部を通じて層全体を堆積させることによって実現できる。このような連続的配置は、製造プロセスにおいて揃えるときに許容誤差に割り当てられる表面積を小さくする上で好ましい。このような連続的配置を容易にするため、同じ発光層を共有する画素は、互いに隣り合わせに配置することが好ましい。図示してあるように、例えば画素11aと画素11bは隣り合って堆積されている。しかし本発明がこの好ましい実施態様に限定されることはなく、別の実施態様として、発光層を2つの画素の間で不連続にすること、すなわち2つの画素を離すことも可能である。このような別の実施態様は、正確に揃った堆積の回数が少なくなるという点でやはり有利である。
【0030】
発光層123aは、すでに説明したように赤と緑の間の色に対応するスペクトルを有する光が発生する構成にすることが好ましく、画素11aと画素11bにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。これは、赤〜緑の波長の広いスペクトルを持つ光を発生させる材料からなる発光層を形成することによって実現できる。発光層123cは、すでに説明したように青と緑の間の色に対応するスペクトルを持つ光が発生する構成にすることが好ましく、画素11cと11dにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。これは、青〜緑の波長の広いスペクトルを持つ光を発生させる材料からなる発光層を形成することによって実現できる。このようになっているため、このフィルタなしのスペクトルを持つ発光は画素11dで利用することが好ましい。画素11aにとって望ましい赤色を実現するため、画素11a内で発光経路の途中であるこの画素と見る人の間にカラー・フィルタ140aを形成することで、画素11aにとって望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい赤色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11bにとって望ましい緑色を実現するため、画素11b内で発光経路の途中であるこの画素と見る人の間にカラー・フィルタ140bを形成することで、発光画素11bにとって望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい緑色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11cにとって望ましい青色を実現するため、画素11c内で発光経路の途中であるこの画素と見る人の間にカラー・フィルタ140cを形成することで、発光画素11cにとって望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい青色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11dにとって望ましい広範囲にわたる青-緑色は、カラー・フィルタなしで実現される。このようにして製造したマルチカラーOLEDディスプレイは、より大きな電力効率を持つことができる。従来技術で知られているように、画素11dで用いるフィルタなしの高効率広帯域発光スペクトルを効率がより低い青色画素または緑色画素の代わりに多く使用し、色域内の色を発生させることができる。
【0031】
4画素の別の一実施態様は、青色光を発生させる第1の画素11aと、緑色光を発生させる第2の画素11bと、赤色光を発生させる第3の画素11cを設けることによって実現できる。第4の画素11dは、画素11bの緑色と画素11cの赤色の間の色を有する光を発生させることが好ましい。発光層123aは、青と緑の間の色に対応するスペクトルを有する光が発生する構成にすることが好ましく、画素11aと11bにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。同様に、発光層123cは、赤色と緑色の間の色に対応するスペクトルを有する光が発生する構成にすることが好ましく、画素11cと画素11dにとって望ましい色に対応するスペクトル成分を持つ光を発生させる。画素11aにとって望ましい青色を実現するため、画素11a内で発光経路の途中にカラー・フィルタ140aを形成することで、望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい青色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11bにとって望ましい緑色を実現するため、画素11b内で発光経路の途中にカラー・フィルタ140bを形成することで、望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい緑色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11cにとって望ましい赤色を実現するため、画素11c内で発光経路の途中にカラー・フィルタ140cを形成することで、望ましくないスペクトル成分を吸収し、望ましい赤色に対応する望ましいスペクトル成分を通過させる。画素11dにとって望ましい広帯域の黄-オレンジ色は、カラー・フィルタなしで実現する。このようにして製造したマルチカラーOLEDディスプレイは、より大きな電力効率を持つことができる。従来技術で知られているように、画素11dで用いるフィルタなしの高効率広帯域発光スペクトルを効率がより低い赤色画素または緑色画素の代わりに多く使用し、色域内の色を発生させることができる。
【0032】
図9は、図8のデバイスを線9-9'に沿って切断した断面図である。図9から、画素11a、11b、11c、11dがそれぞれ内部発光220a、220b、220c、220dを発生させることがわかる。内部発光220dは、フィルタなしでデバイスから出て外部発光210dになる。内部発光220aはカラー・フィルタ140aを通過した後にデバイスを出て外部発光210aになる。内部発光220bはカラー・フィルタ140bを通過した後にデバイスを出て外部発光210bになる。内部発光220cはカラー・フィルタ140cを通過した後にデバイスを出て外部発光210cになる。すでに説明したように、カラー・フィルタ140a、140b、140cは有機層であることが好ましい。
【0033】
画素は基板100の上に構成される。ボトム・エミッション型デバイスの場合には、光は、図示してあるように基板100を通って外に出ることができる。第1の電極110a、110b、110c、110dは光透過性にし、すでに説明したような透明な導電性材料で構成することが好ましい。第2の電極130は、すでに説明したような反射性の導電性材料で構成することで、望ましい光吸収特性または光反射特性と、導電特性とを実現することが好ましい。
【0034】
必ずしも必要なわけではないが、正孔注入層(図示せず)を形成して第1の電極110a、110b、110c、110dの上に配置すると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つことができる。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、無機酸化物(例えばバナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、ニッケル酸化物(NiOx))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。
【0035】
必ずしも必要でなわけではないが、正孔輸送層122を形成して電極110a、110b、110c、110dの上に配置すると有用であることがしばしばある。正孔輸送層122で有用な正孔輸送材料として芳香族第三級アミンなどの化合物があることがよく知られている。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0036】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(A):
【化1】

で表わされるものがある。ただし、
Q1とQ2は、独立に選択された芳香族第三級アミン部分であり、
Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。
【0037】
一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環基(例えばナフタレン部分)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0038】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B):
【化2】

で表わされる。ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化3】

に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に、アリール基の中から選択される。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環基(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0039】
芳香族第三級アミン基の別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミン基として、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミン基としては、一般式(D):
【化4】

で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に選択したアリーレン基(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)であり;
nは1〜4の中から選択され;
Ar、R7、R8、R9は、独立に選択したアリール基である。
【0040】
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環基(例えばナフタレン)である。
【0041】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜約6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0042】
OLEDデバイスの正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合には、後者は、トリアリールアミンと電子注入・輸送層の間に位置する層として配置される。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン;
トリ(p-トリル)アミン;
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン;
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
ポリ(N-ビニルカルバゾール);
N,N'-ジ-1-ナフタレニル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフトアセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン。
【0043】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。さらに、正孔輸送ポリマー材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0044】
発光層123aと123cは正孔-電子再結合に応答して光を発生させる。発光層123aと123cは正孔輸送層122の上に配置されるが、本発明を実施するのに正孔輸送層122は必要でない。有用な有機発光材料はよく知られている。アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の各発光層は発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、ゲスト化合物またはドーパントをドープしたホスト材料を含んでいる。光は主としてドーパントから発生する。本発明の実施には、そのようなホスト/ドーパント発光層とOLEDデバイスが関係する。発光層123aは第1のホストを含んでおり、発光層123cは第2のホストを含んでいる。どのホストも同じ材料にすることができる。どのホストも、単一のホスト材料を含むこと、または複数のホスト材料の混合物を含むことができる。ドーパントは、特定のスペクトルを持つ着色光が発生するように選択する。ドーパントは、蛍光が強い染料の中から一般に選択され、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。発光層123aは、第1の色の光を出す発光材料(例えば黄-オレンジ色発光材料や赤-オレンジ色発光材料)を含んでいる。発光層123cは、第2の色の光を出す材料(例えば青色発光材料や青-緑色発光材料)を含んでいる。本発明の実施が、層がこの順番である場合に限定されることはない。例えば発光層123aは、青色発光材料または青-緑色発光材料を含むことができ、発光層123cは、赤色発光材料、赤-オレンジ色発光材料、黄-オレンジ色発光材料を含むことができる。発光層に含まれるホスト材料としては、電子輸送材料、または正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする他の材料が可能である。ドーパントは通常は強い蛍光染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。
【0045】
ホスト材料および発光材料としては、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料が可能である(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV))。ホストがポリマーである場合、小分子発光材料は、ホスト・ポリマーの中に分子として分散させること、または発光材料を微量成分とコポリマー化してホスト・ポリマーに添加することができる。
【0046】
望ましいホスト材料は連続膜を形成することができる。発光層は、デバイスの膜の形態、電気的特性、発光効率、寿命を改善するため、2種類以上のホスト材料を含むことができる。発光層は、有効な正孔輸送特性を有する第1のホスト材料と、有効な電子輸送特性を有する第2のホスト材料を含むことができる。
【0047】
ドーパントとして染料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の発光励起状態と基底状態のエネルギー差として定義される光学的バンドギャップの値であり、その値は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差にほぼ等しい。ホスト材料からドーパント分子にエネルギーが効率的に移動するための必要条件、またはドーパントからホストにエネルギーが逆に移動するのを阻止するための必要条件は、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。
【0048】
有用であることが知られているホストおよび発光分子として、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,294,870号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,534,199号に開示されているものなどがある。
【0049】
他の有機発光材料としてポリマー物質が可能である。それは例えば、譲受人に譲渡されたWolkらによるアメリカ合衆国特許第6,194,119号とその中で引用されている参考文献に教示されているポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ-ポリフェニレンビニレン、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体である。
【0050】
リン光発光体(三重項励起状態から光を出す材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)に適したホスト材料は、三重項エキシトンがホスト材料からリン光材料に効率的に移動できるように選択せねばならない。この移動が起こるためには、リン光材料の励起状態のエネルギーが、ホストの最低三重項状態と基底状態のエネルギー差よりも小さいという条件が満たされることが非常に望ましい。しかしホストのバンド・ギャップは、OLEDの駆動電圧が許容できないほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662 A1に記載されている。適切なホスト材料としては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホスト材料の例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-N,N'-(ジカルバゾール)-ビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)であり、これらの誘導体も望ましいホスト材料に含まれる。
【0051】
リン光材料を用いたOLEDデバイスは、正孔とリン光材料とを含む発光層にエキシトンまたは電子-正孔再結合中心を限定するのを助けるため、適切なホストに加え、少なくとも1種類のエキシトン阻止層または正孔阻止層を必要とすることがしばしばある。一実施態様では、このような阻止層は、リン光発光層とカソードの間に配置されてリン光発光層と接触することになろう。阻止層のイオン化ポテンシャルは、正孔がホストから電子輸送層(または金属をドープされた有機層)に移動するためのエネルギー障壁が存在するような大きさである一方で、電子親和性は、電子が電子輸送層(または金属をドープされた有機層)からホストとリン光材料とを含む発光層へと容易に移動するよう大きさでなくてはならない。さらに、絶対に必要というわけではないが、阻止材料の三重項エネルギーがリン光材料の三重項エネルギーよりも大きいことが望ましい。適切な正孔阻止材料は、WO 00/70655 A2とWO 01/93642 A1に記載されている。有用な材料を2つ挙げると、バソクプロイン(BCP)とビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(Balq)である。アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068528 A1に記載されているように、Balq以外の金属錯体も正孔とエキシトンを阻止することが知られている。アメリカ合衆国特許出願公開2003/0175553 A1には、電子/エキシトン阻止層でfac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2)イリジウム(III)(Irppz)を使用することが記載されている。
【0052】
発光層123aは、1種類のホスト材料、または複数のホストからなる混合物と、1種類の発光材料とを含んでいる。一実施態様では、ホスト材料は、1種類以上の電子輸送材料、または1種類以上のテトラセン誘導体である。ホスト材料として有用な電子輸送材料(例えば8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体(一般式E))は、発光層123aにおいて有用なホスト化合物の1つのクラスを形成する。
【0053】
【化5】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜3の整数であり;
Zは、各々に独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0054】
以上の説明から、金属は、1価、2価、3価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(ホウ素、アルミニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の1価、2価、3価の金属を使用することができる。
【0055】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0056】
キレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)];
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II);
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III);
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム];
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)];
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)];
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
【0057】
発光層123aにおけるホストまたは共同ホストとして有用なテトラセン誘導体の例は、
【化6】

である。ただし、
R1〜R6は各環上の1個以上の置換基を著わし、各置換基の選択は、個別に、以下のカテゴリー:
カテゴリー1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
カテゴリー2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール;
カテゴリー3:4〜24個の炭素原子を持ち、縮合芳香族環または縮合芳香族環系を完成させる炭化水素;
カテゴリー4:単結合を通じて結合されるか、縮合複素芳香族環系を完成させる 5〜24個の炭素原子を持つヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール(チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系);
カテゴリー5:炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
カテゴリー6:フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ
の中からなされる。
【0058】
好ましい一実施態様では、ホスト材料は、1種類以上のテトラセン誘導体と、1種類以上の電子輸送材料の混合物を含むことができる。
【0059】
この好ましい実施態様では、発光層123aの発光材料は可視スペクトルの黄-オレンジ色部分に発光のピークを持ち、以下の構造の黄-オレンジ色発光化合物:
【化7】

を含むことができる。ただしA1〜A6は各環上の1つ以上の置換基を表わし、各置換基の選択は、個別に、以下のカテゴリー:
カテゴリー1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
カテゴリー2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール;
カテゴリー3:4〜24個の炭素原子を持ち、縮合芳香族環または縮合芳香族環系を完成させる炭化水素;
カテゴリー4:単結合を通じて結合されるか、縮合複素芳香族環系を完成させる 5〜24個の炭素原子を持つヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール(チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系);
カテゴリー5:炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
カテゴリー6:フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ
の中からなされる。
【0060】
発光層123aで用いるのに特に役立つ黄-オレンジ色ドーパントの例として、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン(P3);6,11-ジフェニル-5,12-ビス(4-(6-メチル-ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル)ナフタセン(P4);5,6,11,12-テトラ(2-ナフチル)ナフタセン(P5);化合物L49とL50などがあり、その一般式を以下に示す。
【0061】
【化8】

【0062】
適切な黄-オレンジ色ドーパントとしては、それぞれがやはり黄-オレンジ色ドーパントである化合物の混合物も可能である。
【0063】
有用な別の一実施態様では、発光層123cに含まれる発光材料は、可視スペクトルの黄-オレンジ色部分に発光のピークを持ち、上記の黄-オレンジ色発光材料とホストを含むことができる。有用なさらに別の一実施態様では、発光層123cは赤色部分に発光のピークを持ち、赤色または赤-オレンジ色の光を出すドーパントを含むことができる。赤色または赤-オレンジ色の光を出す適切なドーパントとして、以下の構造を有するジインデノペリレン化合物:
【化9】

などが挙げられる。ただしX1〜X16は、独立に、ヒドロ、または赤色光を出す置換基の中から選択される。
【0064】
特に好ましいジインデノペリレン・ドーパントは、ジベンゾ{[f,f']-4,4',7,7'-テトラフェニル}ジインデノ-[1,2,3-cd:1',2',3'-lm]ペリレン(以下のTPDBP)である。
【0065】
【化10】

【0066】
本発明において有用な他の赤色ドーパントまたは赤-オレンジ色ドーパントは、以下の一般式で表わされるDCMというクラスの染料:
【化11】

に属する。ただし、
Y1〜Y5は、ヒドロ、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリールの中から独立に選択した1つ以上の基であり;
Y1〜Y5は、独立に非環式基を含むか、ペアで結合して1つ以上の縮合環を形成するが、Y3とY5がともに縮合環を形成することはない。
【0067】
赤-オレンジ色の光を出す有用かつ便利な一実施態様では、Y1〜Y5は、独立に、ヒドロ、アルキル、アリールの中から選択される。好ましい1つのDCMドーパントは、以下に示すDCJTBである。
【0068】
【化12】

【0069】
有用な赤色ドーパントまたは赤-オレンジ色ドーパントとして、それぞれがやはり赤色ドーパントまたは赤-オレンジ色ドーパントである化合物の混合物も可能である。
【0070】
発光層123cは、1種類のホスト材料、または複数のホスト材料の混合物と、1種類の発光材料とを含んでいる。この好ましい実施態様では、発光層123cは、可視スペクトルの青色部分〜青-緑色部分に発光のピークを持つ。一実施態様では、ホスト材料は、1種類以上のアントラセン誘導体またはモノ-アントラセン誘導体である。9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式F)は、発光層123cにおいて有用な1つのクラスを構成する。
【0071】
【化13】

ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は各環上の1個以上の置換基を表わし、各置換基の選択は、個別に、以下のグループ:
グループ1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
グループ2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール;
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルいずれかの縮合芳香族環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の縮合複素芳香族環系を完成させるのに必要な 5〜24個の炭素原子を持つヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素、塩素、臭素、シアノ
の中からなされる。
【0072】
ベンズアゾール誘導体(一般式G):
【化14】

は、発光層123cにおいて有用なホストの別のクラスを構成する。ただし、
nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
R'は、水素;1〜24個の炭素原子を含むアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);5〜20個の炭素原子を含むアリール、またはヘテロ原子で置換されたアリール(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルや、他の複素環系);ハロ(クロロ、フルオロなど);縮合芳香族環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Lは、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかを含んでいて複数のベンズアゾゾールを共役または非共役に結合させる結合単位である。
【0073】
有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0074】
2003年10月24日にLelia Cosimbescuによって「アントラセン誘導体ホストを含むエレクトロルミネッセンス・デバイス」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/693,121号(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)において、ある種の非対称アントラセンがOLEDデバイスにおいて極めて有用であり、そのOLEDデバイスが高効率であることが見いだされた。このような化合物は、OLEDデバイスの青色、青-緑色、緑色の光を出す青色発光層において特に有用であることがわかった。青色または青-緑色の発光層123cは、ホスト材料として一般式(I)のモノ-アントラセン誘導体:
【化15】

を含むことができる。ただし、R1〜R10は以下のようになっている。
R1〜R8はHである。
R9は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないナフチル基である。ただしR9とR10は同じではなく、アミンとイオウ化合物を含んでいない。R9は、1つ以上の縮合環をさらに備えていて芳香族縮合環系(例えばフェナントリル、ピレニル、フルオランテン、ペリレン)を形成している置換されたナフチル基であるか、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたナフチル基であるか、縮合した2つの環からなる置換されていないナフチル基であることが好ましい。R9は、パラ位が置換された2-ナフチルまたは1-ナフチルか、パラ位が置換されていない2-ナフチルまたは1-ナフチルであることが好ましい。
R10は、脂肪族炭素環のメンバーを有する縮合環を含まないビフェニル基である。R10は、置換されていて芳香族縮合環(例えばナフチル、フェナントリル、ペリレン)を形成しているビフェニル基か、1個以上の置換基(例えばフッ素、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、複素環式オキシ基、カルボキシ基、トリメチルシリル基)で置換されたビフェニル基か、置換されていないビフェニル基であることが好ましい。R10は、置換されていない4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、縮合環を含まない他のフェニル環で置換されていて三フェニル環系を形成している4-ビフェニルまたは3-ビフェニルか、2-ビフェニルであることが好ましい。特に有用なのは、9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンである。
【0075】
発光層123cで使用するのに役立つモノ-アントラセン・ホスト材料の例をいくつか挙げると以下のようになる。
【0076】
【化16】

【0077】
【化17】

【0078】
【化18】

【0079】
【化19】

【0080】
特に有用なのは9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセン(ホスト-1)である。
【0081】
好ましい一実施態様では、発光層123cのホスト材料は、上記の1種類以上のアントラセン誘導体またはモノ-アントラセン誘導体と、1種類以上の芳香族アミン誘導体との混合物を含むことができる。発光層123cの芳香族アミン誘導体としては、正孔輸送特性を持つ任意のアミンが可能であり、正孔輸送層122におけるのと同じ可能な正孔輸送材料の中から選択できる。特に有用なのは、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)である。
【0082】
この好ましい実施態様では、発光層123cの青色発光材料は、可視スペクトルの青色部分にピークを持ち、青色発光ドーパントとして、ペリレンまたはその誘導体、ジスチリルベンゼンの青色発光誘導体、1つ以上のアリールアミン置換基を有するジスチリルビフェニル、以下の構造を有する化合物:
【化20】

などを含むことができる。ただしこの構造において、
AとA'は、独立に、少なくとも1個の窒素を含む6員の芳香族環系に対応するアジン環系を表わし;
(Xa)nと(Xb)mは、独立に選択した1個以上の置換基を表わし、非環式置換基を含んでいるか、合わさってAまたはA’と縮合した環を形成し;
mとnは、独立に0〜4であり;
ZaとZbは、独立に選択した置換基であり;
1、2、3、4、1’、2’、3’、4’は、炭素原子または窒素原子として独立に選択され;
Xa、Xb、Za、Zb、1、2、3、4、1’、2’、3’、4’は、青色の光を出すように選択される。
【0083】
上記のクラスのドーパントの例をいくつか挙げると、以下のようなものがある。
【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
好ましい青色ドーパントは、BEPとテトラ-t-ブチルペリレン(TBP)である。有用な青色ドーパントとして、それぞれがやはり青色ドーパントである化合物の混合物が可能である。
【0087】
別の好ましい一実施態様では、発光層123cの発光材料は、可視スペクトルの青-緑色部分にピークを持ち、ジスチリルアレンの青-緑色発光誘導体として、例えばジスチリルベンゼンやジスチリルビフェニルを含むことができる。その中には、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載された化合物も含まれる。青色または青-緑色の光を出すジスチリルアレンの誘導体のうちで特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたもの(ジスチリルアミンとしても知られる)である。例として、以下に示す一般構造(N1)を持つビス[2-[4-[N,N-ジアリールアミノ]フェニル]ビニル]-ベンゼン:
【化23】

と、以下に示す一般構造(N2)を持つビス[2-[4-[N,N-ジアリールアミノ]フェニル]ビニル]ビフェニル:
【化24】

がある。
【0088】
一般式(N1)と(N2)においてR1〜R4は同じでも異なっていてもよく、独立に1つ以上の置換基(例えばアルキル、アリール、縮合したアリール、ハロ、シアノ)を表わす。好ましい一実施態様では、R1〜R4は独立にアルキル基であり、それぞれが1〜約10個の炭素原子を含んでいる。このクラスの特に有用な青-緑色ドーパントは、1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)である。
【0089】
【化25】

【0090】
本発明の有用な一実施態様では、発光層123cは、一般式(3)の青-緑色ドーパント:
【化26】

を含んでいる。ただしR1〜R4は、同じでも異なっていてもよく、それぞれが水素または1個以上の置換基(例えばアルキル基(メチル基など)、アルコキシ基(メトキシ基など)、アリール基(フェニル基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基など))を表わす。
【0091】
発光層123cの青-緑色発光ドーパントの特に有用な実施態様を一般式(4-1)〜一般式(4-5)として示す。
【0092】
【化27】

【0093】
本発明の別の実施態様では、発光層123aの発光材料は可視スペクトルの青色部分または青-緑色部分に発光のピークを持ち、上記の青色または青-緑色の発光材料とホストを含むことができる。
【0094】
必ずしも必要なわけではないが、電子輸送材料(例えば電子輸送層124)を含む有機層を発光層123aと123cの上に形成すると有用なことがしばしばある。電子輸送層124で用いると好ましい電子輸送材料は金属キレート化オキシノイド化合物であり、その中にはオキシン(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)そのものも含まれる。このような化合物は電子を注入して輸送するのを助け、どれも高性能を示し、容易に薄膜の形態になる。考慮するオキシノイド化合物の例は、一般式(E)を満たすものである。
【0095】
【化28】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜3の整数であり;
Zは、各々に独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0096】
以上の説明から、金属は、1価、2価、3価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(ホウ素、アルミニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の1価、2価、3価の金属を使用することができる。
【0097】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0098】
有用なキレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)];
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II);
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III);
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム];
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)];
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)];
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
【0099】
他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤などがある。一般式(G)を満たすベンズアゾールも有用な電子輸送材料である。
【0100】
他の電子輸送材料として、ポリマー物質が可能である。それは例えば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレンや、他の導電性ポリマー有機材料(例えば『導電性分子と導電性ポリマーのハンドブック』、第1〜4巻、H.S. Nalwa編、ジョン・ワイリー&サンズ社、チチェスター、1997年に記載されているもの)である。
【0101】
電子注入層(図示せず)がカソードと電子輸送層の間に存在していてもよい。電子注入材料の例として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化アルカリ金属塩(例えば上記のLiF)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をドープした有機層などがある。
【0102】
正孔輸送層122、発光層123aと123c、電子輸送層124のための望ましい有機材料は、従来技術で知られているいくつかの方法のうちの任意の1つ以上の方法で堆積させ、パターニングすることができる。例えば加熱した供給源から熱によって有機材料を蒸発させることによって堆積させ、シャドウ・マスク構造を用いて選択的にブロック状に堆積させることでパターンを実現できる。あるいは材料をまずドナー・シートに堆積させ、そのドナー・シートをディスプレイの基板と接触させるか、ディスプレイの基板の近くに配置し、レーザーで書き込むことによって材料を選択的に転写することができる。あるいはいくつかの材料を溶媒に溶かした後、液滴射出装置(例えばインク・ジェット・ヘッド)によって溶液の液滴を基板上の望む位置に選択的に堆積させる。
【0103】
従来技術で知られているように、デバイスは、環境からの水分を防止してデバイスが分解するのを防ぐため、封止手段(図示せず)をさらに備えることができる。封止手段は、基板に気密に取り付けられたガラス・カバーまたは金属カバーにすること、または画素の上にコーティングされた水分不透過材料からなる薄膜にすることができる。封止手段はさらに、水分を吸収するための乾燥剤も含むことができる。
【符号の説明】
【0104】
10 画素群
11a 画素
11b 画素
11c 画素
11d 画素
100 基板
110a 第1の電極
110b 第1の電極
110c 第1の電極
110d 第1の電極
122 正孔輸送層
123a 発光層
123c 発光層
124 電子輸送層
130 第2の電極
140a カラー・フィルタ
140b カラー・フィルタ
140c カラー・フィルタ
210a 外部発光
210b 外部発光
210c 外部発光
210d 外部発光
220a 内部発光
220b 内部発光
220c 内部発光
220d 内部発光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色の異なる少なくとも第1の画素と、第2の画素と、第3の画素とを備えるOLEDディスプレイであって、
a)基板上に上記第1の画素と上記第2の画素のために設けられた第1の発光層と、その基板上に上記第3の画素のために設けられた第2の発光層と;
b)上記第1の画素および上記第2の画素と作用的関係がある第1のカラー・フィルタおよび第2のカラー・フィルタとを備えていて、
上記第1の発光層と上記第2の発光層は異なるスペクトルの光を発生させ、その第1の発光層によって発生する光は、上記第1の画素と上記第2の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持ち、その第2の発光層によって発生する光は、上記第3の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持つことを特徴とするOLEDディスプレイ。
【請求項2】
上記第1の発光層によって発生する光スペクトルが黄-オレンジ色の光に対応する実質的スペクトル成分を持ち、上記第2の発光層によって発生する光スペクトルが青色の光に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項3】
上記第3の画素に対応するカラー・フィルタは設けられていない、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項4】
上記第1のカラー・フィルタが赤色の光を通過させて他の色の光を吸収し、上記第2のカラー・フィルタが緑色の光を通過させて他の色の光を吸収する、請求項2に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項5】
上記第1の発光層によって発生する光スペクトルが青-緑色の光に対応する実質的スペクトル成分を持ち、上記第2の発光層によって発生する光スペクトルが赤色の光に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項6】
上記第1のカラー・フィルタが青色の光を通過させて他の色の光を吸収し、上記第2のカラー・フィルタが緑色の光を通過させて他の色の光を吸収する、請求項5に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項7】
上記第1の発光層が、上記第1の画素と上記第2の画素の間で連続している、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項8】
上記第1の発光層と上記第2の発光層を重ねて上記第1の画素、上記第2の画素、上記第3の画素のいずれとも異なるスペクトルを持つ光を発生させる第4の画素をさらに備えていて、このように第1の発光層と第2の発光層を重ねることによって発生する光スペクトルが、その第4の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項9】
上記第1の発光層によって発生する光スペクトルが黄-オレンジ色の光に対応する実質的スペクトル成分を持ち、上記第2の発光層によって発生する光スペクトルが青色の光に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項8に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項10】
上記第1のカラー・フィルタが赤色の光を通過させて他の色の光を吸収し、上記第2のカラー・フィルタが緑色の光を通過させて他の色の光を吸収する、請求項9に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項11】
上記第1の発光層と上記第2の発光層を重ねることによって発生する光スペクトルが、広帯域白色光に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項8に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項12】
上記第4の画素が、上記第2の画素と上記第3の画素の隣に配置されているか、上記第1の画素と上記第3の画素の隣に配置されている、請求項8に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項13】
上記第1の発光層が、上記第1の画素、上記第2の画素、上記第4の画素の間で連続しており、上記第2の発光層が、上記第3の画素と上記第4の画素の間で連続している、請求項8に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項14】
上記第2の発光層が第4の画素のために上記基板上に設けられていると同時に、第3のカラー・フィルタが上記第3の画素と作用的関係があるようにして設けられていて、上記第2の発光層によって発生する光が、上記第3の画素および上記第4の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項15】
上記第1の発光層によって発生する光スペクトルが黄-オレンジ色の光に対応する実質的スペクトル成分を持ち、上記第2の発光層によって発生する光スペクトルが青-緑色の光に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項14に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項16】
上記第3のカラー・フィルタが青色光を通過させて他の色の光を吸収する、請求項14に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項17】
上記第2の発光層が第4の画素のために上記基板上に設けられていると同時に、第3のカラー・フィルタが上記第3の画素と作用的関係があるようにして設けられていて、上記第2の発光層によって発生する光が、上記第3の画素および上記第4の画素にとって望ましい光出力に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項5に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項18】
上記第1の発光層によって発生する光スペクトルが青-緑色の光に対応する実質的スペクトル成分を持ち、上記第2の発光層によって発生する光スペクトルが黄-オレンジ色の光に対応する実質的スペクトル成分を持つ、請求項17に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項19】
上記第3のカラー・フィルタが赤色光を通過させて他の色の光を吸収する、請求項17に記載のOLEDディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−195310(P2012−195310A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156174(P2012−156174)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2008−509019(P2008−509019)の分割
【原出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】