説明

マルチキャスト視聴者規模を追跡調査するための方法

方法は、それぞれの要求が確率パラメータ(P)を含むフィードバック(3)に対する複数の要求を、マルチキャストを受信する受信機に送信することを含む。各端末は対応する確率(4)でこれに応答する(または応答しない)。次に、各要求(5)に対する応答数(r)をカウントし、次に前記カウント及びパラメータから受信機(6)の数の推定値を求め、前記推定値(7)にフィルタをかける。この方法は、前記カウント及びパラメータから受信機の数(9、10、11)の上限を予測し、回答数が所定の閾値を超えるリスクが所定値未満に抑えられるように、これから新しい確率パラメータ(12)を決定することによって、以後のフィードバック要求に含まれる新しい確率パラメータを繰り返し計算することを、さらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視聴者の規模を測定することに関し、特にマルチキャスト伝送において動的に変化する視聴者の規模を推定することに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャストの1つの形式は、データのストリームをある転送先から多くの転送先に効率的に送信できるようにするIP技術である。転送先ごとに別々のユニキャストセッションをセットアップする代わりに、マルチキャストは、異なるマルチキャストグループメンバに対する経路が分岐するルータホップでパケットを複製する。これにより、数千または数百万の受信機に届く一方で、送信側はデータのストリームの単独コピーを送信できる。従来のユニキャスト通信では、送信者は視聴者メンバごとに別々の伝送セッションをセットアップし、サーバログファイルの中の要求されたストリーム数を数えることによって視聴者の規模を追跡調査できる。マルチキャスト通信では、サーバは、受信機ごとに別々のアドレス指定される代わりに単一のマルチキャストアドレスに送信されるデータのただ1つのストリームをセットアップする。次に、そのデータのストリームに関心のあるホストが対応するマルチキャストグループに加わり、そのローカルルータからデータストリームをピックアップする。したがって視聴者の規模は送信者からは見えず、時間内に急速に変化することがあるであろう。
【0003】
状況は従来のラジオ及びテレビ放送に非常に類似している。つまり、ラジオ局またはテレビ局はイーザー(ether)に番組を送出し、受信者は自分達の受信機を番組が送信されるチャネルに同調することによってお気に入りの番組を聞く、または見ることができる。
【0004】
マルチキャストグループの規模を追跡調査することは、以下の複数の用途にとっては技術的に重要である。
【0005】
・マルチキャストは、非常に多数の視聴者へインターネット上で音声ストリーム及びビデオストリームをリアルタイム送達するために使用される。これらの用途から発生する収益は主に広告収入であり、視聴者の規模の推定値及びその時間内の変動に大きく依存している。
【0006】
・マルチキャストは大規模な発行−登録の用途に使用される。これらの用途では、加入者はトピックまたはイベントのパターンに関する関心を登録し、自分達の関心に一致するイベントを非同期で受信する。トピックに登録することによって、加入者はこのトピック(例えば、特定の企業の株価)に対応するマルチキャストグループのメンバになり、そのトピックが更新されるたびに通知を受信する。発行−登録サーバは、トピックの分割及びマルチキャストグループの間でのトピックの分散を最適化するために、定期的にトピックに対するユーザの関心(トピックごとのリスナー数)を更新できる。
【0007】
マルチキャスト視聴者規模の測定(及び他の統計)は、ネットワーク層で実行できる。この手法では、メモリテーブルは並列のネットワークルータから捕捉され、監視装置に転送される。監視は、次にマルチキャストグループの規模(及び他の統計)をこれらのテーブルから抽出する(高速ネットワークジャーナル(Journal of High Speed Networks)、第9巻、2000年3−4号、K.Sarac、K.Almeroth「マルチキャスト配備作業を支援すること:マルチキャスト監視のためのツールの調査(Supporting multicast deployment efforts:a survey of tools for multicast monitoring)、及び2000年12月、米国テキサス州オースチン、第11回IIFIP/IEEE分散システムに関する国際ワークショップ(11th IIFIP/IEEE International Workshop on Distributed Systems(DSOM2002))の会議録、P.Rajvarida、K Almeroth及びK.Claffy「マルチキャスト統計を監視、視覚化するためのスケラブルアーキテクチャ(A scalable architecture for monitoring and visualizing multicast statistics)」を参照されたい)。
【0008】
この手法での3つの問題点とは以下のとおりである。
【0009】
・監視装置は、ネットワークマルチキャストルータにアクセスを有することを必要とする。多くの状況では実現可能ではない要件である。さらに、監視装置がマルチキャストルータにアクセスできても、現在の規格はこれらのルータがローカル受信機数のカウントを維持することを要求しない。
【0010】
・それは、マルチキャスト機能がないネットワークの上部でのオーバレイとしてマルチキャスト伝送が構築される、アプリケーションレベルのマルチキャストには適用できない。
【0011】
・この方法は、(監視装置での情報の集中のため)数十億人の加入者が数百万のマルチキャストグループに登録している前述された発行−登録シナリオにスケーラブルではない。
【0012】
文献中、大規模マルチキャスト伝送の視聴者規模のリアルタイムエンドツーエンド推定の問題のために、多くの解決策が提案されている。2つの既知の技術とは、静的な視聴者規模を推定するための、Lieu及びNonnenmacherにより提案される方法(2000年3月、イスラエル、テルアビブ、IEEE INFOCOM2000の会議録、第2巻、952−960ページ、C.Lieu及びJ.Nonnenmacher、(放送視聴者の推定))、及び動的に変化する視聴者を推定するためのAlouf、Altman及びNainの方法、(S.Alouf、E.Altman及びP.Nain、「動的マルチキャストグループの規模の最適オンライン推定(Optimal on-line estimation of the size of a dynamic multicast group)」、http://www−sop.inria.fr/mistral/personnel/Sara.Alouf/Publications/multicast.pdf;2002年6月、米国ニューヨーク、INFOCOM2002の会議録)である。両方の方法とも送信者により視聴者のグループからフィードバックメッセージを無作為にサンプリングすることに基づいている。この無作為サンプルから、視聴者の規模は統計的な技法を使用して推論される。
【0013】
Lieuらの方法では、無作為サンプリングは、1999年6月、IEEE/ACMネットワーキングに関する報告書、第7巻、第3号、375−386ページ、タイマベースの方法(J.Nonnemacher及びE.Biersack、「大きなグループのためのスケラブルフィードバック(Scalable feedback for large groups)」、及び2002年6月21日付けの本出願人らの欧州特許出願第02254355.7号、「マルチキャスト通信におけるタイマベースのフィードバック(Timer-based feedback in multicast communication)」、M.Nekovee及びS.Olafssonも参照されたい)を使用して行われる。この方法では、送信者は、フィードバック要求とともにタイマ分散f(t)を全ての受信機に送信する。フィードバックを受信すると、各受信機はバックオフタイマをf(t)からサンプリングする。この時間の終了後、受信機は、それが任意の他の受信機からフィードバックメッセージを検出した場合には黙っており、それ以外の場合には、受信機のタイマの終了時刻を含むフィードバックを送信者(及び他の全ての受信機)に送信する。送信者は全てのフィードバックを収集する。フィードバックカウント及び受信機のタイマの終了時刻の組み合わせを使用して、受信機は視聴者規模の統計的な推定値を作成する。Mがラウンド数である場合に推定誤差は
【数1】

【0014】
としてのみ減少するため、視聴者推定値において高い精度を達成するために、この手順は多くのラウンドについて繰り返されなければならない。この手法の主要な技術的な問題は以下のとおりである。
【0015】
・推定手順は静的な視聴者規模にはうまく作用するが、動的に変化する視聴者規模には適切ではない。これは、規模を正確に推定するために、この方法が同じ視聴者からの複数のラウンドのフィードバック収集を必要とするためであり、推定値は、視聴者規模がこれらの収集ラウンドの間に変化するときに不正確になる。
【0016】
・視聴者からのタイマベースの無作為サンプリングは、各フィードバックメッセージがマルチキャストを介して全ての視聴者に送信されることを必要とする。これらのメッセージを処理するためのオーバヘッドは、サンプル規模(つまり各ラウンドでメッセージを送信する受信機数)が小さく、私たちがただ1つのマルチキャストグループだけを検討しているときには小さい。しかし、受信機が同時に複数のマルチキャストグループにあり、したがってこれら全てのグループからフィードバックメッセージを受信するときには、オーバヘッドは大きくなる可能性がある。
【0017】
・概して、これらの受信機はフィードバックメッセージを送信する可能性が高いため、サンプリングのためのタイマベースの機構は、送信者に対する最小の往復時間(RTT)で受信機に偏っている。この偏りは視聴者規模推定値の精度を削減する。また、平均より大きいRTTを有する受信機は送信者により「聞かれる」可能性がはるかに低いため、それはポーリング機構を不公平にする。
【0018】
Alouf、Altman及びNainの方法は、確率論マルチキャストに基づいた無作為サンプリングのためのさらに簡略な機構を使用することにより、これらの問題のいくつかを取り除く(M.H.Ammar、「確率論マルチキャスト:スケラビリティを改善するためにマルチキャストパラダイムを一般化する(Probabilistic multicast: Generalising the Multicast Paradigm to Improve Scalability)」、1994年6月、カナダ、トロント、IEEE INFOCOM94の会議録、848−855ページを参照されたい)。この方法では、送信者はフィードバックに対する要求を全受信機に送信する。要求を受信すると、各受信機は、指定された確率に従ってフィードバックを送信する、あるいは送信しない。各受信機はメッセージを送信するべきか、あるいは送信するべきでないかを残りから独立して決定するため、サンプリング機構は送信者−受信機及び受信機−受信機RTT時間によって影響を受けず、RTTがより小さい受信機に偏らない。
【0019】
送信されるメッセージの平均数は、二項式の確率分布関数(pdf)を有する無作為な可変数である。ちょうどタイマベースの手法のように、送信者は周知の統計推定技法を使用して、フィードバックカウントから視聴者規模を推定する。
【0020】
Alouf、Altman及びNainの方法は、瞬間推定値の精度を高めるために、連続フィードバックラウンドでの視聴者規模の間の統計的な依存性を利用することにより、動的に変化する視聴者規模の問題の解決策を提供する。これは、(i)視聴者規模の変動が、激しいトラフィックの中のいわゆるM/M/∞待ち行列の人口の変動によって記述されること(ニューヨーク、1975年、ジョンウィリーアンドサンズ(John Wiley&Sons)第I巻、Leonard Kleinrock、待ち行列作成システム(Queueing Systems)を参照されたい)、及び(ii)フィードバック要求も、フィードバックメッセージも失われないこと、及び(iii)視聴者規模は、フィードバック集中のリスクがないように小さいことを仮定することによって達成される。
【発明の開示】
【0021】
この手法で技術的に残っている問題は以下のとおりである。
【0022】
・この方法は、本発明者らが前記に説明したシナリオ(インターネット及びイントラネットテレビ及び無線放送、発行−登録)の典型的な状況である、非常に大きなマルチキャストグループに拡大縮小(scale)しない。これは、肯定応答数が大きくなりすぎる場合に確率をわずかに削減する可能性が言及されるが、応答確率が視聴者の規模とは無関係に選ばれるため、フィードバックメッセージの平均数が、視聴者規模が増加するにつれて大きくなり、最終的にフィードバック集中を生じさせるためである。
【0023】
・フィルタパラメータは事前に固定される。それらは、人口規模の考えられる変動及びダイナミクスに適応しない。
【0024】
・アルゴリズムは、フィードバック要求も、フィードバックメッセージもネットワークで失われることがなく、高パケット損失率が経験されることがある本物のネットワークシナリオでは影響を受けやすいと仮定する。
【0025】
本発明によると、
マルチキャスト視聴者の規模を追跡調査する方法であって、
(a)マルチキャストを受信する受信機に、それぞれが確率パラメータを含む複数の要求を送信し、それにより各端末が対応する確率で応答する、あるいは応答しないことと、
(b)各要求に対する応答数を数えることと、
(c)前記カウント及びパラメータから、受信機数の推定値を求めることと、
(d)前記推定値にフィルタをかけることと、
を含み、前記方法は、前記カウント及びパラメータから、前記受信機数の上限を予想し、前記応答数が所定の閾値を超えるリスクが所定値未満に保たれるように新しい確率パラメータをそこから決定することによって、以後のステップ(a)において含まれる新しい確率パラメータを繰り返し計算することをさらに含む方法が、提供される。
【0026】
本発明の他の態様は請求項に定義される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、添付図面に関して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、(インターネットなどの)IPネットワーク102を介して多くの受信端末103(その内の3つだけが図示されている)に接続されるサーバ100を有する、マルチキャスト構成を示す。マルチキャスト動作は従来の方法で動作するため、視聴者規模を測定するためにここで提案される追加の機能性だけが説明される。
【0029】
本発明者らは、マルチキャストグループにメッセージを送信している送信者(すなわちサーバ100)を考える。グループメンバ(103)はいつでもグループに加わり、グループを離れることができる。例は、マルチキャストがインターネット上でTVを放送するために使用されるときである。視聴者は、番組を放送するチャネルに対応するマルチキャストグループに加わることによって特定の番組を見ることができ、番組中いつでもマルチキャストグループを離れることができる。
【0030】
ここに説明される測定プロセスは以下により実現される。
【0031】
(a)要求メッセージを構築し、マルチキャスト機構を介して定期的に送信するため、(b)端末からの応答を数えるため、及び(c)結果を処理するための、送信者での追加ソフトウェア、及び、このような要求を処理し、適切な場合には応答を作成するための各端末での追加のソフトウェアである。視聴者の規模は、本発明者らがN(t)で示す、時間に依存する確率変数である。本発明者らは、送信者が、フィードバックラウンドごとのフィードバックメッセージの最大数rmaxを処理できると仮定する。目的は、常に(r(t)がrmaxを超えるときに発生する)フィードバック集中のリスクを最小限に抑える一方で、受信機からのフィードバックカウントr(t)を通してリアルタイムでN(t)(及びおそらく他の受信機属性)を正確に推定することである。
【0032】
プロセスは、ここで図2に示されるフローチャートを参照して説明される。
【0033】
1.推定は、最大視聴者規模Nmaxの初期の推量で開始する。
【0034】
2.応答確率Pの初期値は、次に、Nmaxを前提として、フィードバック集中のリスクがユーザによって定義されるリスク閾値δを下回る、最大応答確率としてPを選ぶことにより取得される。フィードバックメッセージ数は二項式の確率分布関数を有するため、規模Nmaxの人口を前提として、フィードバックメッセージの数がrmaxを超える確率は以下により示され、
【数2】

【0035】
したがって、Pの値の考えられる最大は以下を解くことにより取得できるであろう。
【数3】

【0036】
前記方程式では、B(Nmax,P)は二項式の分布であり、Iは不完全なベータ関数、
すなわち、
【数4】

【0037】
を表す。
【0038】
現在のインプリメンテーションでは、方程式(1)から数値的にPを見つけるためにニュートン−ラプソン反復方法のバージョンが使用される。
【0039】
3.いったんP(t)が検出されると、送信者は(Pの値を含む)フィードバックに対する要求をマルチキャストする。
【0040】
4.各受信機は0≦X≦1の範囲で乱数Xを選択し、X≦P(t)の場合にだけフィードバックメッセージを送信する。
【0041】
5.送信者は合計r個のフィードバックメッセージをこのラウンドから収集する。
【0042】
6.その結果、視聴者規模は、
【数5】

【0043】
として推定される。
【0044】
ここではγは確率論的な推定誤差である。これを計算することは必須ではないが、必要とされる場合、それは
【数6】

【0045】
に比例する。
【0046】
(方程式2、及び対応する誤差式は、未知のパラメータN(t)で二項式の分布に適用される統計推定理論の周知の最大尤推定方法を使用して引き出された。)
フローチャートに示される2つの分岐が、動作している2つの推定プロセスがある、つまりそれらが代替経路ではないことを示すために、明確にするために描かれることに留意されたい。
【0047】
7.視聴者規模の推定(方程式(2))は、その大きさがサンプリングされた受信機の規模に反比例する統計的な推定誤差を含んでいる。本発明者らは、リアルタイムで推定誤差を削減し、使用可能な過去のデータを利用するための方法を提供する。図示されるように、これは、各測定の後に測定プロセス中に発生する(代替インプリメンテーションについて以下を参照されたい)。これは、視聴者規模N(t)の正確な値の上に重畳される時間依存雑音として推定誤差n(t)を考えることにより達成される。測定された視聴者規模
【数7】

【0048】
の中の信号対雑音比は、次に、視聴者人口の最良の二乗平均推定値を提供するウィナーフィルタで
【数8】

【0049】
にフィルタをかけることによって最大限にされる。当初、フィルタパラメータは、視聴者規模変動に関する履歴情報、及び検討中の適用(例えば、インターネットテレビ、発行−登録等)に基づいて固定されるが、視聴者規模測定が進行するにつれて、これらのパラメータは、それらが視聴者規模変動の実際のパターンに適応できるように定期的に計算し直される。
【0050】
時間tで視聴者規模の改善される推定値は以下から取得される。
【数9】

【0051】
ここでは、
【数10】

【0052】
は最適ウィナーフィルタカーネル(Wiener filtering kernel)である。
【0053】
このカーネルは、信号(N(t))及び雑音(n(t))が統計的に無相関であり、これらの電力スペクトルN(ω)及びn(ω)が、
【数11】

【数12】

【0054】
によって近似できると仮定することにより取得され、
この場合K、α及びAは調整可能なパラメータであり、
【数13】

【0055】
である。
【0056】
したがって、これは
【数14】

【0057】
の視聴者規模
【数15】

【0058】
の電力スペクトル
【数16】

【0059】
のモデルを表していることになる。
【0060】
(ω)の前記選択は、αを増加することにより、一般的な時間変化する視聴者規模はフィルタパラメータの決定に十分である精度をもってモデル化できる一方、方程式(5)のα→0制限がゆっくりと変化する視聴者規模を正確にモデル化するという事実により動機付けされる。さらに、n(ω)に仮定される形は、白色雑音の仮定に対応する。本発明者らのシミュレーション研究は、これが視聴者規模測定における統計的な雑音の妥当な推定値であることを示す。
【0061】
8.視聴者規模測定のプロセスの間のフィルタパラメータβの適応は以下のように実行される。送信者は、規模Mのスライドウィンドウ上で
【数17】

【0062】
の過去の値を蓄積する。それは、次に
【数18】

【0063】
の過去の値に関して高速フーリエ変換(FFT)を実行することによって信号と雑音の電力スペクトルを推定する(データポイントが均等に分布していない場合には、電力スペクトルを評価するためにローム(Lomb)アルゴリズムが使用される)。これらのスペクトルは、次に、パラメータK、α及びAの新しい値を取得するために最小二乗法を使用して方程式(8)によって示されるパラメータ化された形式に適合され、それらからフィルタパラメータβの新しい値が方程式(7)を使用して取得される。
【0064】
フィルタカーネルh(t)が時間内に急激に減衰するため、規模
【数19】

【0065】
の間隔の間のみ過去の統計を蓄積することで実際には十分であることに留意されたい。人口が平均率
【数20】

【0066】
でサンプリングされると仮定すると、蓄積する必要のある過去の統計の数は、
【数21】

【0067】
でなければならない。
【0068】
前記適応ステップは、必ずしも毎反復時に発生する必要がないことに留意されたい。
【0069】
9.視聴者の規模を推定することに加え、本発明者らは視聴者規模の上限を動的に推定する方法を提供する。これは以下のように行われる。受信されるフィードバックメッセージの数r(t)とリスクパラメータεを前提として、r(t)フィードバックメッセージの中の確率1−εで結果として生じる場合がある考えられる視聴者の最大規模を見つけ出す。ベイズの定理を使用し、二項式の確率分布関数のポアゾン近似を行うと、観察r(t)を前提として、特定の値Nmaxを超える視聴者の規模の条件付き確率が
【数22】

【0070】
により示され、ここではPgが不完全なガンマ関数であることを示すことができる。
【0071】
この考えられる最大規模から、
【数23】

【0072】
が(ニュートン−ラプソン反復のバージョンを使用して)以下を解くことにより得られ、
【数24】

【0073】
ここではPgは不完全なガンマ関数である。
【0074】
10.この推定値
【数25】

【0075】
は、次に、以下の方程式(10)を使用して視聴者規模の上限のフィルタにかけられた推定値
【数26】

【0076】
を提供するために、ステップ(7)に説明されるのと同様にフィルタにかけられる。
【数27】

【0077】
このバージョンでは、使用されるパラメータはステップ7で使用される(8で適応される)パラメータである。
【0078】
11.この推定値
【数28】

【0079】
は、次に、以下のように次のラウンドでの最大視聴者規模を予想するために使用される。
【数29】

【0080】
12.この予想を使用して、サンプリング確率P(ti+1)が方程式(1)から計算され、P(ti+1)を含む新しいフィードバック要求が受信機に送信される。すなわち、前記ステップはステップ(3)から繰り返される。いったん所望される数の測定値が収集されると、この反復はステップ13で終わる。
【0081】
いくつかのオプションの変型及び追加のステップがここで説明される。
【0082】
A.ステップ7でのフィルタリングは、測定が続行中に実行されるとして示され、それは測定プロセスが続行中にフィルタにかけられた結果
【数30】

【0083】
が入手できるように、測定値がほぼリアルタイムで必要とされる場合に有利である場合がある。しかしながら、前述されたようにこのフィルタリングをオフラインで実行することは、フィルタが全てのデータにアクセスできるという点で有利である場合がある。このケースでは、フィルタリング7(及び適応8)は、反復終了後に発生する。しかしながら、上限
【数31】

【0084】
のステップ10でのフィルタリングは必ずループ内に残らなければならず、したがって適応もループ内で発生しなければならない。このケースでは、非因果的(non−causal)フィルタを使用することが可能になる。これが行われると、フィルタカーネルは、方程式(4)の代わりに
【数32】

【0085】
を使用することにより(t−t)の負の値を収容するために修正されなければならない。
【0086】
B.ネットワーク損失に対する推定アルゴリズムのロバスト性(robustness)を強化する
ネットワークに損失が多い場合、フィードバックに対する要求のいくつかが、それらが受信機に到達する前に失われる可能性がある。また、受信機からのフィードバックメッセージのいくつかが送信者に到達しないことが起こることもある。視聴者規模の最大尤推定(方程式2)は、全ての受信機が等しい確率Pをもってフィードバックに対する要求に応えるように、ネットワーク内に損失がないという仮定の下で取得される。
【0087】
この方法は、視聴者規模を推定する際に損失の影響を平均的に考慮に入れるための方法を提供する。
【0088】
受信機での損失の可能性が(受信機jに対し)qである場合には、この受信機からのフィードバックメッセージが送信者に届く確率は、もはやPではなく、
=P(1−qとなるであろう。本発明者らは、以下のように推定手順にこの影響を考慮に入れる。本発明者らは、各受信機が独自の損失確率を測定する(受信機は、例えば、パケットシーケンスを見ることによって自らが属する各マルチキャストグループから到達していないパケット数を数えることによってこれを行うことができる)と仮定する。フィードバック収集中、応答がサンプリングされるそれらの受信機は、この測定値を送信者に送り返す。送信者はこれから平均パケット損失
【数33】

【0089】
を推定し、視聴者規模の最大尤推定の中でPを
【数34】

【0090】
で置換することによりこれを考慮する。その結果、視聴者規模の訂正された推定値は、
【数35】

【0091】
から取得され、ここでは括弧内の項は、ネットワーク損失から生じる推定された視聴者規模に対する訂正である。この変型は、方程式(2)の代わりに方程式(13)を使用することによって実現される。
【0092】
C.フィードバック集中制限を緩和する
フィードバックの集中は、送信者に同時に届くフィードバックメッセージ数がrmaxを超えるときに発生する。送信者は、集中の可能性が特定の閾値以下となるように応答確率Pの値を選ぶことに加えて、それが応答を受信する間隔を引き伸ばすことによって集中の確率をさらに削減できる。これは、パラメータPとともに第2のパラメータSを送信することによって達成できる。その結果、フィードバック手順は以下のように修正される。
【0093】
各受信機は一様な乱数Xを選択し、X<Pの場合にだけフィードバックを送信すると決定する。決定を下した後、受信機は、間隔[0,2S]内で一様に分布する乱数sを選択し、このフィードバックを送信する前に時間sの間待機する。このアルゴリズムの最終的な影響は、単位時間あたりで送信されるフィードバックメッセージの平均数が
【数36】

【0094】
により与えられ、r<(1+S)rmaxの場合にフィードバック集中を回避できるように、間隔Sで受信機からのフィードバックを拡散することである。したがって、集中制限は、rmaxの代わりに事実上(1+S)rmaxである。ステップ(2)では、方程式(1)は、次にrmaxの代わりに(1+S)rmaxを挿入することによって、それからPを計算するために新しい限度が使用されるように修正される。これから計算されるPの値は、rmaxを使用して計算される値より大きくなり(本発明者らはガンマ関数の形状からこれを知っている)、したがってさらに多くのフィードバックがラウンドごとに生成され、人口推定の精度は改善される。
【0095】
前述された方法は、視聴者推定がネットワークルータからの支援なく、非常に大規模なマルチキャストシナリオを考慮に入れて、アプリケーションレベルで実行できる場合に、エンドツーエンド方法に対処する。
【0096】
それは、受信機からのフィードバックをサンプリングするための適応方法、及び視聴者規模の動的な変動に統計的な誤差のフィルタリングを適応させるための方法を使用することにより、前述された問題点のいくつかを軽減する。
【0097】
適応サンプリング方法は、フィードバック集中のリスクを最小限に抑えると同時に、送信者が考えられる最大数のフィードバックメッセージを受信することを確実にするのに役立つ。適応フィルタリングは推定値の信号対雑音比を最大限にするために時間内での視聴者の規模変動のパターンに動的に順応する。さらに、本発明者らは、ネットワークにおける大きなパケット損失に対する推定方法、及びランダムタイマを使用して集中制限を緩和するための方法の、ロバスト性を改善するための手順も説明した。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】ネットワークの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態の動作を描くフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャスト視聴者の規模を追跡調査する方法は、
(a)前記マルチキャストを受信する受信機に、それぞれが確率パラメータ(P)を含む複数の要求を送信し、それにより各端末が対応する確率で応答する、あるいは応答しないことと、
(b)各要求に対する応答数(r)をカウントすることと、
(c)前記カウント及びパラメータから、受信機数の推定値を求めることと、
(d)前記推定値にフィルタをかけることと、
を含み、前記方法は、前記カウント及びパラメータから、前記受信機数の上限を予想し、前記応答数が所定の閾値を超えるリスクが所定値未満に保たれるように新しい確率パラメータをそこから決定することによって、以後のステップ(a)において含まれる新しい確率パラメータを繰り返し計算することをさらに含む。
【請求項2】
新しい確率パラメータを計算する前記ステップは、
使用される前記確率パラメータを前提として、観察されるものに等しい応答数を受信する所定の確率に対応する最大視聴者規模を推定することと、
前記推定された最大視聴者規模及び前記最大視聴者規模の少なくとも1つの過去の値を使用して、前記予想を実行することと、
前記予想された最大規模とともに、前記応答数がそれらを受信するために使用可能な容量を超えるリスクが所定のリスク閾値を下回ることを含むであろう、前記新しい確率パラメータ(P(t+1))を決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予想の前に前記推定された最大規模のフィルタにかけられたバージョンを生成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定される最大規模の前記フィルタリングはウィナーフィルタによって実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記推定値の電力スペクトルに依存して、前記推定される最大規模の前記フィルタリングの前記パラメータを適応して調整することを含む、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予想は前記推定される最大規模の過去の値を外挿することにより実行される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記推定値の前記フィルタリングはウィナーフィルタにより実行される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記推定値の過去の値の前記電力スペクトルの関数として、前記推定値の前記フィルタリングの前記パラメータを適応して調整することを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記推定値の前記フィルタリングは、前記推定値を求めることを終えた後に実行される、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記推定値の前記フィルタリングは、新しい推定値が求められるたびに実行される、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記同じフィルタパラメータは、前記推定値の前記フィルタリング及び前記最大推定規模の前記フィルタリングのために使用される、請求項5および8に従属するときの請求項10に記載の方法。
【請求項12】
要求または応答の損失の前記確率を測定することと、前記第1の推定された規模に訂正を適用することを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
マルチキャスト視聴者の規模を推定する方法であって、
(a)前記マルチキャストを受信する受信機に、それぞれが確率パラメータ(P)を含む複数の要求を送信し、それにより各端末が対応する確率で応答する、あるいは応答しないことと、
(b)各要求に対する応答数(r)をカウントすることと、
(c)前記カウントから、以後のステップ(a)に含まれる新しい確率パラメータを決定することと、
を含む、方法。
【請求項14】
マルチキャスト視聴者の規模を推定する方法は、
(a)前記マルチキャストを受信する受信機に、それぞれが確率パラメータ(P)を含む複数の要求を送信し、それにより各端末が対応する確率をもって応答する、あるいは応答しないことと、
(b)各要求に対する応答数(r)をカウントすることと、
(c)前記カウント及びパラメータから、前記受信機数の推定値を求めることと、
(d)前記推定値にフィルタをかけることと、
を含み、前記方法は、前記カウント及びパラメータから前記受信機数の上限を予想し、それから新しい確率パラメータを決定することによって、以後のステップ(a)に含まれる新しい確率パラメータを繰り返し計算することをさらに含む。
【請求項15】
マルチキャスト視聴者の規模を推定する方法は、
(a)前記マルチキャストを受信する受信機に、それぞれが確率パラメータ(P)を含む複数の要求を送信し、それによって各端末が対応する確率で応答する、あるいは応答しないことと、
(b)各要求に対する応答数(r)をカウントすることと、
(c)前記カウント及びパラメータから、前記受信機数の推定値を求めることと、
(d)前記推定値にフィルタをかけることと、
を含み、前記推定値の過去の値の電力スペクトルの関数として、前記推定値の前記フィルタリングの前記パラメータを適応して調整することとを含む。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−518138(P2006−518138A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502306(P2006−502306)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000681
【国際公開番号】WO2004/075511
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(390028587)ブリティッシュ・テレコミュニケーションズ・パブリック・リミテッド・カンパニー (104)
【氏名又は名称原語表記】BRITISH TELECOMMUNICATIONS PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】