説明

マルチコアファイバ

【課題】 コア間のクロストークを低減することができるマルチコアファイバを提供する。
【解決手段】 マルチコアファイバ1は、複数のコア要素10と、それぞれのコア要素10の外周面を囲むクラッド20と、を備え、それぞれのコア要素10は、コア11と、コア11の外周面を囲む第1クラッド12と、第1クラッド12の外周面を囲む第2クラッド13と、を有し、コア11の屈折率をnとし、第1クラッド12の屈折率をnとし、第2クラッド13の屈折率をnとし、クラッド20の屈折率をnとする場合、
>n>n
>n
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の全てを満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバに関し、特に、クロストークを低減することができるマルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより囲まれた構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。そして、近年光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバの数を低減させるため、複数のコアの外周が1つのクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0004】
下記特許文献1には、このようなマルチコアファイバの一例が記載されている。このマルチコアファイバにおいては、1つのクラッド内に複数のコアが配置されている。そして、それぞれのコア同士のクロストークを低減するために、それぞれのコアの伝搬定数は、互いに異なるものとされ、このためにそれぞれのコアの屈折率が互いに異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2010/038863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、マルチコアファイバが使用される用途によっては、コアの伝搬定数が異ならない方が良い場合もあり、コアの伝搬定数が異ならない場合においても、コア間のクロストークを低減することができるマルチコアファイバが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、コア間のクロストークを低減することができるマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマルチコアファイバは、複数のコア要素と、それぞれの前記コア要素の外周面を囲むクラッドと、を備え、それぞれの前記コア要素は、コアと、前記コアの外周面を囲む第1クラッドと、前記第1クラッドの外周面を囲む第2クラッドと、を有し、前記コアの屈折率をnとし、前記第1クラッドの屈折率をnとし、前記第2クラッドの屈折率をnとし、前記クラッドの屈折率をnとする場合、
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<n
の全てを満たすことを特徴とするものである。
【0009】
このようなマルチコアファイバにおいては、それぞれのコア要素において、コアが、コアの屈折率nよりも小さい屈折率nを有する第1クラッドに囲まれているため、コアを光が伝播することができる。そして、第1クラッドは、第1クラッドの屈折率nよりも小さい屈折率nを有する第2クラッドに囲まれおり、それぞれのコア要素がトレンチ構造を有しているため、コアを伝播する光は、コアにより強く閉じ込められる。また、第2クラッドの屈折率nが第1クラッドの屈折率nよりも低くされているため、光はコアと第1クラッドの領域により強く閉じこめられる。従って、それぞれのコアを伝播する光がコア要素の外に漏れることが抑制される。このため、このようなマルチコアファイバによれば、コア間のクロストークを低減することができる。
【0010】
また、前記コアの半径をrとし、前記第1クラッドの外周の半径をrとする場合に、
2.0≦r/r≦2.6
を満たすことが好ましい。
【0011】
コアと第1クラッドが、r/rが2.0以上であることにより、第1クラッドにかかる基本モードのパワー比率を小さく抑えることができ、モードフィールド径や波長分散といった特性の変動を小さく抑えることができる。従って、モードフィールド径や実効コア断面積を大きくしたままクロストークの低減をより改善することができる。また、r/rが2.6以下であることにより、コア要素の直径を小さくすることができ、互いに隣り合うコアの中心間距離を小さくすることができる。
【0012】
なお、本明細書における有効数字は、一般的な規格の考え方に準じるものであり、記載された数値よりも一桁小さい位の数が四捨五入される場合に、記載された数と等しくなる場合を含む。例えば、上記の様に2.0以上とされる場合、1.95を含み、2.6以下とされる場合、2.64を含む。
【0013】
また、上記マルチコアファイバにおいて、互いに隣り合う前記コア要素の第2クラッドの外周面同士の距離をwとする場合に、wは、5μm以上であることが好ましい。
【0014】
このようなマルチコアファイバによれば、それぞれのコア間のクロストークをより低減することができる。
【0015】
さらに、上記マルチコアファイバにおいて、互いに隣り合う前記コア要素の前記コア同士の中心間の距離をΛとする場合に、
0.18≦w/Λ≦0.47
を満たすことが好ましい。
【0016】
このようなマルチコアファイバによれば、それぞれのコア間のクロストークをさらに低減することができる。
【0017】
また、上記マルチコアファイバにおいて、前記第1クラッドの外周の半径をrとし、前記前記コアを波長が1550nmの光が伝播する場合におけるモードフィールド径をMFDとする場合に、
0.89≦r/MFD≦1.18
を満たすことが好ましい。
【0018】
第1クラッドの径とモードフィールド径の関係において、r/MFDが0.89以上であることにより、第1クラッドにかかる基本モードのパワー比率を小さく抑えることができ、モードフィールド径や波長分散といった特性の変動を小さく抑えることができる。従って、モードフィールド径や実効コア断面積を大きくしたままクロストークの低減をより改善することができる。また、r/MFDが1.18以下であることにより、コア要素の直径を小さくすることができ、互いに隣り合うコアの中心間距離を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、コア間のクロストークを低減することができるマルチコアファイバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るマルチコアファイバの様子を示す図である。
【図2】図2は、マルチコアファイバにおける第1クラッドの屈折率の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るマルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るマルチコアファイバの様子を示す図である。具体的には、図1の(A)は、本実施形態のマルチコアファイバの長さ方向に垂直な断面における構造の様子を示す図であり、図1の(B)は、図1の(A)のB−B線における屈折率分布を示す図である。
【0023】
図1の(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア要素10と、複数のコア要素10全体を包囲すると共にそれぞれのコア要素10の間を埋めて、それぞれのコア要素10の外周面を囲むクラッド20と、クラッド20の外周面を被覆する内側保護層31と、内側保護層31の外周面を被覆する外側保護層32と、を備える。
【0024】
それぞれのコア要素10は、コア11と、コア11の外周面を囲む第1クラッド12と、第1クラッド12の外周面を囲む第2クラッド13とを有している。本実施形態においては、各コア要素10において、それぞれのコア11(半径r)の直径は互いに等しく、それぞれの第1クラッド12(外周の半径r)の外径は互いに等しく、それぞれの第2クラッド13(外周の半径r)の外径は互いに等しくされている。従って、それぞれの第1クラッド12の厚さは、互いに等しく、さらに、それぞれの第2クラッド13の厚さは互いに等しくされている。また、マルチコアファイバ1を構成するそれぞれの部材の大きさは、特に限定されるわけではないが、本実施形態においては、コア11の直径(2r)は、8.2μmとされ、第1クラッド12の外径(2r)は、19μmとされ、第2クラッド13の外径(2r)は、27μmとされ、クラッド20の直径は、150μmとされ、内側保護層31の外径は、220μmとされ、外側保護層32の外径は、270μmとされる。
【0025】
本実施形態においては、コア11の直径、及び、第1クラッド13の外径が上記のようにされており、コア11の半径r、第1クラッド12の外周の半径rは、
2.0<r/r<2.6
を満たしている。
【0026】
また、図1の(B)に示すように、第1クラッド12の屈折率nは、コア11の屈折率nよりも低くされ、第2クラッド13の屈折率nは、第1クラッド12の屈折率nよりも更に低くされている。さらに、クラッド20の屈折率nは、第1クラッド12の屈折率nと第2クラッド13の屈折率nとの間の屈折率とされている。別言すれば、それぞれの屈折率n〜nは、
>n>n
>n
<n
を全て満たしている。このように、それぞれのコア要素10を屈折率から見る場合に、第2クラッド13は溝状とされており、このため、コア要素10は、トレンチ構造を有している。
【0027】
なお、光ファイバの導波特性は、上記の屈折率に基づくクラッド20の屈折率に対する比屈折率差Δで規定される。i=1、2、3としたとき、nの屈折率を有する層のクラッド20に対する比屈折率差Δは、以下の式で定義される。
【数1】

【0028】
なお、図1の(B)においては、内側保護層31、及び、外側保護層32の屈折率については省略している。
【0029】
このように第2クラッド13の屈折率nが、第1クラッド12の屈折率n及びクラッド20の屈折率nよりも小さくされることで、コア11への光の閉じ込め効果が大きくなり、コア11を伝播する光がコア要素10から漏えいすることを防止することができる。そして、屈折率の低い第2クラッド13及びクラッド20が障壁となり、互いに隣り合うコア11同士のクロストークを防止することができる。
【0030】
コア11の比屈折率差Δは、特性として有するべきモードフィールド径MFDに応じて規定される。第1クラッド12のクラッド20に対する比屈折率差Δ2は、ほぼゼロであることが多いが、波長分散特性の調整のために正負の値に適時設定される。
【0031】
従って、上記屈折率n〜nについては、上記式を全て満たす限りにおいて、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、図1の(B)に示すように、第1クラッド12の屈折率nが、コア11の屈折率nとクラッド20の屈折率nとの間に設定されている。つまり、第1クラッド12の屈折率n、クラッド20の屈折率nは、
>n
を満たしている。
【0032】
また、トレンチ型のコア要素10においては、上記の様に、コア11の半径r、第1クラッド12の外周の半径rが、
2.0<r/r<2.6
を満たすことが好ましい。コア11及び第1クラッド12において、r/rが2.0以上であることにより、第1クラッド12にかかる基本モードのパワー比率を小さく抑えることができ、モードフィールド径MFDや波長分散といった特性の変動を小さく抑えることができる。従って、モードフィールド径MFDや実効コア断面積Aeffを大きくしたままクロストークの低減をより改善することができる。また、r/rが2.6以下であることにより、コア要素10の直径を小さくすることができ、互いに隣り合うコア11の中心間距離Λを小さくすることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、それぞれのコア要素10におけるコア11の屈折率nは、互いに等しくされており、それぞれのコア要素10における第1クラッド12の屈折率nは互いに等しくされており、それぞれのコア要素10における第2クラッド13の屈折率nは互いに等しくされている。
【0034】
また、本実施形態は、図1に示すように、コア要素10が7つの場合のマルチコアファイバであり、クラッド20の中心に1つのコア要素が配置され、このコア要素10のコア11の中心と、クラッド20の中心とが一致している。そして、この中心に配置されたコア要素10を取り囲むようにして、残りのコア要素10がクラッド20の外周側に配置されている。このクラッド20の外周側に配置されたそれぞれのコア要素10は、それぞれのコア11の中心が略同心円状に配置されており、それぞれのコア11の中心同士の間隔が、互いに等しくされている。さらに、クラッド20の中心に配置されたコア要素10のコア11の中心と、クラッド20の外周側に配置されたそれぞれのコア要素10のコア11の中心との間隔と、クラッド20の外周側に配置されたそれぞれのコア要素10のコア11の中心同士の間隔とは、互いに略等しくされている。こうして、互いに隣り合うコア要素10のコア11の中心間隔は、全て等しくされている。このため、互いに隣り合うコア要素10における第2クラッド13の外周面の間隔も全て等しくされている。
【0035】
そして、互いに隣り合うコア11の中心間の距離をΛとする場合、距離Λは、30μm以上とされることがクロストークを低減させる観点から好ましく、50μm以下とされることが、クラッド20の細径化の観点からより好ましい。さらに、互いに隣り合う第2クラッド13の外周面同士の距離をwとする場合に、距離wは、使用波長よりも大きくされることが、互いに隣り合うコア11同士のクロストークを低減させる観点から好ましく、使用波長の3倍以上であることが、このクロストークをより低減させることができることから好ましい。そして、距離wが5μm以上であれば、長波長の通信波長として通常使用する1500nm帯の波長に対して、3倍以上の距離となるため、通常の通信において、十分クロストークを低減できるため好ましい。
【0036】
そして、距離Λと距離wは、
0.18≦w/Λ≦0.47
を満たすことがクロストークをより低減させることができるため好ましい。
【0037】
上述のように本実施形態においては、各コア要素10において、それぞれのコア11の直径は互いに等しく、それぞれの第1クラッド12の外径は互いに等しく、それぞれの第2クラッド13の外径は互いに等しくされているが、第1クラッド12の厚さや、第2クラッド13の厚さが調整されても良い。
【0038】
このようなマルチコアファイバ1においては、それぞれのコア11に光が入力されると、それらの光がそれぞれのコア11を伝播する。このとき、コア11を伝播する光は、コア11の外周面から外側に僅かな広がりを持って伝播し、所定のモードフィールド径MFDとされる。そして、このモードフィールド径MFDと第1クラッド12の半径r2は、コア11を伝播する光の波長が1550nmである場合に、
0.89≦r/MFD≦1.88
を満たすことが好ましい。第1クラッドの径とモードフィールド径との件径において、r/MFDが0.89以上であることにより、第1クラッド12にかかる基本モードのパワー比率を小さく抑えることができ、モードフィールド径MDFや波長分散といった特性の変動を小さく抑えることができる。従って、モードフィールド径MFDや実効コア断面積Aeffを大きくしたままクロストークの低減をより改善することができる。また、r/MFDが1.18以下であることにより、コア要素10の直径を小さくすることができ、互いに隣り合うコアの中心間距離を小さくすることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、それぞれのコア要素10において、コア11が、コア11の屈折率nよりも小さい屈折率nを有する第1クラッド12に囲まれているため、コア11を光が伝播することができる。そして、第1クラッド12は、第1クラッド12の屈折率nよりも小さい屈折率nを有する第2クラッド13に囲まれているため、コア11を伝播する光は、コア11により強く閉じ込められる。また、クラッド20の屈折率nがコア11の屈折率nよりも低くされているため、光はクラッド20側よりもコア11に引き寄せられる。従って、それぞれのコア11を伝播する光がコア要素10の外に漏れることが抑制される。このため、このようなマルチコアファイバ1によれば、コア11間のクロストークを低減することができる。
【0040】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
例えば、上記実施形態においては、図1(B)に示すように、第1クラッド12の屈折率nが、コア11の屈折率nとクラッド20の屈折率nとの間に設定されるものとしたが、本発明は、これに限らない。図2は、マルチコアファイバ1における第1クラッド12の屈折率の変形例を示す図である。図2に示すように、第1クラッド12の屈折率nが、クラッド20の屈折率nと第2クラッド13の屈折率nとの間に設定されても良い。つまり、第1クラッド12の屈折率n、クラッド20の屈折率nは、
<n
を満たしていても良い。なお、図2において、11はコア11に対応する位置を示し、12は第1クラッド12に対応する位置を示し、13は第2クラッド13に対応する位置を示し、20はクラッド20に対応する位置を示す。
【0042】
また、特に図示しないが、第1クラッド12の屈折率nと、クラッド20の屈折率nとが、等しくされても良い。つまり、第1クラッド12の屈折率n、クラッド20の屈折率nは、
=n
を満たしていても良い。
【0043】
また、上記実施形態においては、コア要素10の数を7つとしたが、本発明はこれに限らず、コア要素10は、複数であれば7つ以下でも良く、7つ以上でも良い。例えば、コア要素が3つでも良く、或いは、上述のように図1におけるクラッド20の外周側に配置されたコア要素10の更に外周側に12個個のコア要素10を配置して、19個のコア要素がそれぞれ三角格子状に配置されも良い。さらに、コア要素10が、例えば、4行×5列という具合に整列された格子状に配置されても良く、その他の配列で配置されても良い。
【0044】
また上記実施形態においては、互いに隣り合うコア要素10におけるコア11の直径(半径r)や屈折率nが互いに等しくされているが、本発明はこれに限らず、互いに隣り合うコア要素10におけるコア11の直径(半径r)及び屈折率nの少なくとも一方が、互いに異なるようにすることとしても良い。この場合、クロストークをより低減することができる。
【0045】
同様に、上記実施形態においては、互いに隣り合うコア要素10における第1クラッド12の外径rや屈折率n、及び、第2クラッド13の外径rや屈折率nが互いに等しくされているが、本発明はこれに限らず、互いに隣り合うコア要素10における第1クラッド12の外径rや屈折率n、及び、第2クラッド13の外径rや屈折率nのいずれかが、互いに異なるようにすることとしても良い。この場合においても、クロストークをより低減することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0047】
(実施例1)
上記実施形態と同様の構造のマルチコアファイバを想定して、シミュレーションを行った。このシミュレーションにおいて、それぞれのコア要素におけるコアの半径rを4.1μmとし、第1クラッドの外周の半径rを9.59μmとし、第2クラッドの外周の半径rを13.28μmとした。従って、コアの半径rと第1クラッドの外周の半径rとの比r/rは、2.34となる。また、それぞれのコア要素において、クラッドに対するコアの比屈折率差Δを0.36%とし、クラッドに対する第1クラッドの比屈折率差Δを0.00%とし、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δを−0.70%とした。さらに互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λを40μmとし、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wを13.44μmとした。従って、距離wと距離Λとの比w/Λは、0.34となる。これら条件を表1に示す。
【0048】
次に、想定したマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcをシミュレーションした。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm及び1.55μmとする場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffをシミュレーションした。そして、波長が1.55μmにおけるモードフィールド径MFDと第1クラッドの外周の半径rとの比r/MFDを求めた。さらに想定した条件のマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量をシミュレーションした。これらシミュレーションの結果を表2に示す。
【0049】
(比較例1)
半径rが4.0μmで、クラッドに対する比屈折率差Δが0.4であること以外は実施例1と同様のコアが、実施例1と同様に、実施例1と同様のクラッドに配置され、第1クラッド、及び、第2クラッドが配されないマルチコアファイバを想定した。この条件を表1に示す。
【0050】
次に、実施例1と同様にして、想定したマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、光の波長が1.31μm及び1.55μmとする場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffをシミュレーションした。さらに想定した条件のマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量をシミュレーションした。これらシミュレーションの結果を表2に示す。
【0051】
表2に示すように、クラッドの中心に配置されたコア、及び、クラッドの外周側に配置されたコアについて、実施例1のマルチコアファイバと比較例1のマルチコアファイバとでは、カットオフ波長λcに差が生じなかった。また、波長が1.31μm及び1.55μmのそれぞれの場合において、実施例1のマルチコアファイバと比較例1のマルチコアファイバとでは、モードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffに殆ど差が生じなかった。また、マルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量について、本発明による実施例1のマルチコアファイバは、−20dB以下となる良好な結果となったが、従来技術によるマルチコアファイバは、−14dBとなり、クロストークが大きい結果となった。
【0052】
(実施例2)
実施例1で想定したマルチコアファイバの条件と同様の条件となるようにして、マルチコアファイバを作製し、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、及び、第1クラッドの外周の半径r、及び、第2クラッドの外周の半径rを測定した。そして、その測定結果に基づいて、コアの半径rと第1クラッドの外周の半径rとの比r/rを求めた。また、それぞれのコア要素において、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第1クラッドの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δを測定した。さらに互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wを測定し、距離wと距離Λとの比w/Λを求めた。この結果を表1に示す。
【0053】
表1に示すように、作製したマルチコアファイバにおいては、第1クラッドの外周の半径r、及び、第2クラッドの外周の半径r、及び、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δ、及び、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wが、実施例1で設定した条件と僅かに異なった。
【0054】
次に、作製したマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcを測定した。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm、及び、1.55μmである場合おいて、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffを測定した。そして、波長が1.55μmにおけるモードフィールド径MFDと第1クラッドの外周の半径rとの比r/MFDを求めた。さらに、作製したマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0055】
表2に示すように、クラッドの中心に配置されたコア、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcは、実施例1のシミュレーション結果と同様の結果となった。また、波長が1.31μm及び1.55μmにおけるモードフィールド径及び実効コア断面積は、実施例1のシミュレーション結果と殆ど変わらない結果となった。さらに、マルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量は、実施例1のシミュレーション結果と、同様の結果となった。
【0056】
(比較例2)
比較例1で想定したマルチコアファイバの条件と同様の条件となるようにして、マルチコアファイバを作製し、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、及び、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、互いに隣り合うコアの中心間の距離Λを測定した。その結果を表1に示す。
【0057】
次に、作製したマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcを測定した。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm、及び、1.55μmである場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffを測定した。さらに、作製したマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0058】
表2に示すように、作製したマルチコアファイバにおいても、クラッドの中心に配置されたコア、及び、クラッドの外周側に配置されたコアについて、実施例2のマルチコアファイバと比較例2のマルチコアファイバとでは、カットオフ波長λcに差が生じなかった。また、波長が1.31μm及び1.55μmのそれぞれの場合において、実施例2のマルチコアファイバと比較例2のマルチコアファイバとでは、モードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffに殆ど差が生じなかった。また、マルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量について、本発明による実施例2のマルチコアファイバは、−20dB以下となる良好な結果となったが、従来技術によるマルチコアファイバは、−14dBとなり、クロストークが大きい結果となった。
【0059】
(実施例3)
実施例2で作製したマルチコアファイバに対して、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wが小さくなるようにして、マルチコアファイバを作製した。そして、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、及び、第1クラッドの外周の半径r、及び、第2クラッドの外周の半径rを測定した。そして、その測定結果に基づいて、コアの半径rと第1クラッドの外周の半径rとの比r/rを求めた。また、それぞれのコア要素において、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第1クラッドの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δを測定した。さらに、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wを測定し、距離wと距離Λとの比w/Λを求めた。この結果を表1に示す。
【0060】
表1に示すように、作製したマルチコアファイバにおいては、コアの半径rは、実施例2のマルチコアファイバのコアの半径rと同様の大きさになり、第1クラッドの屈折率Δも実施例2における第1クラッドの屈折率Δと同じになったが、第1クラッドの外周の半径r、及び、第2クラッドの外周の半径r、及び、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δは、実施例2と若干異なる値となった。また、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wは、表1に示す結果となった。
【0061】
次に、作製したマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcを測定した。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm、及び、1.55μmである場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffを測定した。そして、波長が1.55μmにおけるモードフィールド径MFDと第1クラッドの外周の半径rとの比r/MFDを求めた。さらに、作製したマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0062】
表2に示すように、実施例3で作製したマルチコアファイバにおいては、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcは、実施例2と同様の値となったが、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λcは、1390nmと実施例2のマルチコアファイバよりも大きな値となった。これは、距離wを小さくすることで、クラッドの外周側に配置されたコア要素の第2クラッドによる壁ができ、クラッドの中心に配置されたコア要素から高次モードが逃げづらくなったためと考えられる。また、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm、及び、1.55μmである場合におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffは、実施例2の測定結果よりも大きな値となった。そして、作製したマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量は、−25dBとなり良好な結果であったが、実施例2の測定結果よりも大きい結果となった。
【0063】
(実施例4)
互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λを実施例3で作製したマルチコアファイバと同様にすると共に、第1クラッド、第2クラッドの厚さを調整することで、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wが小さくなるようにして、マルチコアファイバを作製した。そして、作製したマルチコアファイバのコアの半径r、及び、第1クラッドの外周の半径r、及び、第2クラッドの外周の半径rを測定した。そして、その測定結果に基づいて、コアの半径rと第1クラッドの外周の半径rとの比r/rを求めた。また、それぞれのコア要素において、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第1クラッドの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δを測定した。さらに、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wを測定し、距離wと距離Λとの比w/Λを求めた。この結果を表1に示す。
【0064】
表1に示すように、作製したマルチコアファイバにおいては、第1クラッドの屈折率Δは、実施例3における第1クラッドの屈折率Δと同じ屈折率になったが、コアの半径r、及び、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δは、実施例3と若干異なる値となった。また、第1クラッドの外周の半径r、及び、第2クラッドの外周の半径r、及び、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wは、表1に示す結果となった。
【0065】
次に、作製したマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcを測定した。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm、及び、1.55μmである場合おいて、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffを測定した。そして、波長が1.55μmにおけるモードフィールド径MFDと第1クラッドの外周の半径rとの比r/MFDを求めた。さらに、作製したマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0066】
表2に示すように、本実施例で作製したマルチコアファイバにおいては、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcは、実施例3と然程変わらない値となったが、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λcは、1530nmと実施例3のマルチコアファイバよりも更に大きな値となった。これは、実施例3よりも更に距離wを小さくすることで、クラッドの中心に配置されたコア要素から高次モードが更に逃げづらくなったためと考えられる。また、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm、及び、1.55μmである場合におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffは、実施例2の測定結果よりも若干小さな値となった。これは、第1クラッド及び第2クラッドの厚さが実施例3のマルチコアファイバよりも大きくなり、コアに光を閉じ込める力が強くなったためと考えられる。また、100km用いた場合におけるクロストーク量は、−24dBとなり良好な結果であったが、実施例3の測定結果よりも若干大きい結果となった。
【0067】
(実施例5)
第1クラッド、第2クラッドの厚さを調整すると共に、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λを実施例4で作製したマルチコアファイバの距離Λよりも小さくすることで、実施例4で作製したマルチコアファイバの距離wよりも、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wが小さくなるマルチコアファイバを想定してシミュレーションを行った。また、中心コアにおいても、1300nm帯でのシングルモード伝送が保証できるように、1260nm以下のカットオフ波長となるような設計を行った。このとき想定したマルチコアファイバの条件を表1に示す。
【0068】
表1に示すように、想定したマルチコアファイバにおいては、コアの半径r、及び、第1クラッドの外周の半径r、及び、第2クラッドの外周の半径rを、及び、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、及び、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wを、実施例4のマルチコアファイバと若干異なる値とした。この距離wは、実施例4のマルチコアファイバの距離wよりも小さい値とした。また、第1クラッドの屈折率Δは、実施例4における第1クラッドの屈折率Δと同じ屈折率としたが、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、及び、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δは、実施例4のマルチコアファイバと若干異なる値とした。
【0069】
次に、想定したマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcをシミュレーションした。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm及び1.55μmとする場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffをシミュレーションした。そして、波長が1.55μmにおけるモードフィールド径MFDと第1クラッドの外周の半径rとの比r/MFDを求めた。さらに想定した条件のマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量をシミュレーションした。これらシミュレーションの結果を表2に示す。
【0070】
表2に示すように、本実施例で想定したマルチコアファイバにおいては、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λcが1260nmとなり、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcが1170nmとなった。こうして、それぞれ実施例4のマルチコアファイバよりも小さな値となり、全てのコアにおいて1300nm帯での伝送を保証できる特性を有することができた。また、カットオフ波長が短くなるとマクロベンド損失が劣化し、実用が難しい光ファイバになる傾向があるが、本発明のようにトレンチ構造を有することにより、短いカットオフ波長でも実用的な曲げ損失を確保することが出来る。また、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm、及び、1.55μmである場合におけるモードフィールド径MFD及び実効コア断面積Aeffは、実施例2の測定結果よりも若干小さな値となった。また、想定したマルチファイバコアを100km用いた場合におけるクロストーク量は、−20dBとなり良好な結果であったが、実施例4の測定結果よりも若干大きい結果となった。
【0071】
以下に表1を示す。表1においては、想定したマルチコアの各部位の大きさや屈折率の条件や、作製したマルチコアの各部位の大きさの測定結果が示されている。
【表1】

【0072】
以下に表2を示す。表2においては、想定したマルチコアファイバのシュミレーションした結果や、作製したマルチコアファイバの測定結果が示されている。
【表2】

【0073】
(実施例6)
次に海底ケーブルの様な長距離伝送用の光ファイバとして用いることができるマルチコアファイバを想定して、シミュレーションを行った。このような光ファイバにおいては、光の波長が1550nmにおける実効コア断面積Aeffが110μm程度であるため、これに合わせて、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、第1クラッドの外周の半径r、第2クラッドの外周の半径r、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、クラッドに対する第1クラッドの比屈折率差Δ、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δ、隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wを複数想定し、それぞれ条件によるマルチコアファイバを6−1から6−79とした。そして、想定したマルチファイバコアを100km用いた場合におけるクロストーク量をそれぞれ求めた。
【0074】
この結果を表3に示す。
【表3】

表3に示すように、想定した何れのマルチコアファイバにおいても、クロストークは−20dBより小さく、良好な結果となった。
【0075】
(実施例7〜実施例10)
次に、上記実施形態と同じ構造を有し、実施例6よりも、実効コア断面積Aeffが大きい光ファイバを想定した。具体的には、光の波長が1.55μmにおける実効コア断面積Aeffが130μmであるマルチコアファイバを複数想定し、これに合わせて、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、第1クラッドの外周の半径r、第2クラッドの外周の半径r、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、クラッドに対する第1クラッドの比屈折率差Δ、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δ、隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wをそれぞれ想定した。
【0076】
これら条件を表4に示す。
【表4】

【0077】
表4に示すように、想定した実施例7〜10のそれぞれのマルチコアファイバにおいて、実施例7〜10へとコアの半径rが大きくなるようにした。ただし、(r/r)が互いに同じになるように、rを調整した。また、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λをそれぞれ等しくして、実施例7〜10へと順に距離wが大きくなるようにし、w/Λは、実施例7〜10へと順に大きくなるようにした。
【0078】
(比較例3、比較例4)
次に、第1クラッド、及び、第2クラッドが配されず、実施例7〜10で想定したマルチコアファイバと光の波長が1.55μmにおける実効コア断面積Aeffが同じマルチコアファイバを想定した。これに合わせて、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λをそれぞれ想定した。これら条件を上記表4に示す。
【0079】
表4に示すように、比較例3のマルチコアファイバにおけるコアの半径rは、実施例7〜10におけるマルチコアファイバのコアの半径rよりも大きくなるようにし、さらに、比較例3のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δは、実施例7〜10のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δよりも大きな値となるようにした。さらに、互いに隣り合うコアの中心間距離Λを、実施例7〜10と同様にした。また、比較例4のマルチコアファイバにおけるコアの半径rは、比較例3におけるマルチコアファイバのコアの半径rよりも大きくなるようにし、さらに、比較例4のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δは、比較例3のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δよりも大きな値となるようにした。
【0080】
次に、想定した実施例7〜10、及び、比較例3、4のマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcをシミュレーションした。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm及び1.55μmとする場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFDをシミュレーションし、この結果から、波長が1.55μmにおける(r/MFD)を求めた。さらに、実効コア断面積Aeffをシミュレーションした。さらに想定した条件のマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量をシミュレーションした。
【0081】
これらシミュレーションの結果を表5に示す。
【表5】

【0082】
表5に示すように、実効コア断面積Aeffが大きい場合においても、実勢例7〜10のマルチコアファイバによれば、比較例3、4のマルチコアファイバよりも、クロストークを低減することができる結果となった。さらに、(r/MFD)が小さいほどクロストークが低減される結果となり、特に実施例7の様に、波長が1.55μmにおける(r/MFD)が0.9より小さくなると、極めてクロストークを低減できる結果となった。
【0083】
(実施例11〜実施例14)
次に、上記実施形態のマルチコアファイバと同じ構造を有し、実施例7〜10よりも、実効コア断面積Aeffが大きい光ファイバを想定した。具体的には、光の波長が15.5μmにおける実効コア断面積Aeffが150μmであるマルチコアファイバを複数想定し、これに合わせて、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、第1クラッドの外周の半径r、第2クラッドの外周の半径r、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、クラッドに対する第1クラッドの比屈折率差Δ、クラッドに対する第2クラッドの比屈折率差Δ、隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λ、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離wをそれぞれ想定した。
【0084】
これら条件を表6に示す。
【表6】

【0085】
表6に示すように、想定した実施例11〜14のそれぞれのマルチコアファイバにおいて、実施例11〜14へとコアの半径rが大きくなるようにした。ただし、想定した実施例11〜14のそれぞれの光ファイバにおいて、(r/r)が実施例7〜10のマルチコアファイバの(r/r)と同じになるように、第1クラッドの外周の半径rを調整した。また、それぞれの実施例11〜14のマルチコアファイバにおける互いに隣り合うコアの中心間の距離Λを、実施例7〜10の距離Λと等しくして、実施例11〜14へと順に距離wが大きくなるようにし、w/Λが、実施例11〜14へと順に大きくなるようにした。
【0086】
(比較例5、比較例6)
次に、第1クラッド、及び、第2クラッドが配されず、実施例11〜14で想定したマルチコアファイバと、光の波長が15.5μmにおける実効コア断面積Aeffが同じマルチコアファイバを想定した。これに合わせて、それぞれのコア要素におけるコアの半径r、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ、隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λをそれぞれ想定した。これら条件を表6に示す。
【0087】
表6に示すように、比較例5のマルチコアファイバにおけるコアの半径rは、実施例7〜10におけるマルチコアファイバのコアの半径rよりも大きくなるようにし、さらに、比較例5のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δは、実施例7〜10のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δよりも大きな値となるようにした。さらに、互いに隣り合うコアの中心間距離Λを、実施例11〜14と同様にした。また、比較例6のマルチコアファイバにおけるコアの半径rは、比較例5におけるマルチコアファイバのコアの半径rよりも大きくなるようにし、さらに、比較例6のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δは、比較例5のマルチコアファイバにおけるコアの比屈折率差Δよりも大きな値となるようにした。
【0088】
次に、想定した実施例11〜14、及び、比較例5、6のマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcをシミュレーションした。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm及び1.55μmとする場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFDをシミュレーションし、この結果から、波長が1.55μmにおける(r/MFD)を求めた。さらに、実効コア断面積Aeffをシミュレーションした。さらに想定した条件のマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量をシミュレーションした。
【0089】
これらシミュレーションの結果を表7に示す。
【表7】

【0090】
表7に示すように、実効コア断面積Aeffが実施例7〜11よりも大きい場合においても、実勢例11〜14のマルチコアファイバによれば、比較例5、6のマルチコアファイバよりも、クロストークを低減することができる結果となった。さらに、(r/MFD)が小さいほどクロストークが低減される結果となった。
【0091】
(実施例15〜実施例19)
次に、上記実施形態のマルチコアファイバと同じ構造を有し、第2クラッドの比屈折率差Δが、実施例1〜5のマルチコアファイバにおける第2クラッドの比屈折率差Δよりも、さらに小さいマルチコアファイバを想定した。
【0092】
実施例15、実施例17、実施例19のマルチコアファイバは、コアの半径r、及び、第1クラッドの外周の半径r、及び、コアの比屈折率差Δ、及び、第1クラッドの屈折率Δ、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λが、実施例4のマルチコアファイバのそれぞれの値と同様となるようにした。そして、実施例15のマルチコアファイバは、第2クラッドの外周の半径rが、実施例4のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rよりも小さくなるようにした。つまり、実施例15のマルチコアファイバは、屈折率が低くトレンチ部となっている第2クラッドの厚さが、実施例4のマルチコアファイバよりも薄い形状とした。また、実施例17のマルチコアファイバは、第2クラッドの外周の半径rが、実施例4のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rと、実施例15のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rとの間の大きさになるようにした。また、実施例19のマルチコアファイバは、第2クラッドの外周の半径rが、実施例4のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rと、実施例17のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rとの間の大きさになるようにした。従って、実施例17、及び、実施例19のマルチコアファイバも、実施例15のマルチコアファイバと同様に、第2クラッドの厚さが、実施例4のマルチコアファイバよりも薄い形状とした。
【0093】
また、実施例16、実施例18のマルチコアファイバは、コアの半径r、及び、第1クラッドの外周の半径r、及び、コアの比屈折率差Δ、及び、第1クラッドの屈折率Δ、互いに隣り合うコア要素におけるコアの中心間の距離Λが、実施例3のマルチコアファイバのそれぞれの値と同様となるようにした。そして、実施例16のマルチコアファイバは、第2クラッドの外周の半径rが、実施例3のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rよりも小さくなるようにした。つまり、実施例16のマルチコアファイバは、屈折率が低くトレンチ部となっている第2クラッドの厚さが、実施例3のマルチコアファイバよりも薄い形状とした。また、実施例18のマルチコアファイバは、第2クラッドの外周の半径rが、実施例3のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rと、実施例16のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rとの間の大きさになるようにした。従って、実施例18のマルチコアファイバも、実施例16のマルチコアファイバと同様に、第2クラッドの厚さが、実施例3のマルチコアファイバよりも薄い形状とした。
【0094】
これら条件を表8に示す。
【表8】

【0095】
表8に示すように、実施例15のマルチコアファイバにおいては、上述のように第2クラッドの外周の半径rが、実施例4のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rよりも小さい分だけ、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離w及びw/Λが、実施例4のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λよりも大きくなっている。また、実施例17のマルチコアファイバにおいては、上述のように、第2クラッドの外周の半径rが、実施例4のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rと、実施例15のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rとの間の大きさであるため、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離w及びw/Λが、実施例4のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λと、実施例15のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λとの間の大きさになっている。また、実施例19のマルチコアファイバにおいては、上述のように、第2クラッドの外周の半径rが、実施例4のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rと、実施例17のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rとの間の大きさであるため、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離w及びw/Λが、実施例4のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λと、実施例17のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λとの間の大きさになっている。
【0096】
また、実施例16のマルチコアファイバにおいては、上述のように第2クラッドの外周の半径rが、実施例3のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rよりも小さい分だけ、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離w及びw/Λが、実施例3のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λよりも大きくなっている。また、実施例18のマルチコアファイバにおいては、上述のように、第2クラッドの外周の半径rが、実施例3のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rと、実施例15のマルチコアファイバにおける第2クラッドの外周の半径rとの間の大きさであるため、互いに隣り合う第2クラッドの外周面同士の距離w及びw/Λが、実施例3のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λと、実施例16のマルチコアファイバにおける距離w及びw/Λとの間の大きさになっている。
【0097】
次に、想定した実施例15〜19のマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcをシミュレーションした。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm及び1.55μmとする場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFDをシミュレーションし、この結果から、波長が1.55μmにおける(r/MFD)を求めた。さらに、実効コア断面積Aeffをシミュレーションした。さらに想定した条件のマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量をシミュレーションした。
【0098】
これらシミュレーションの結果を表9に示す。
【表9】

【0099】
表9に示すように、実施例15のマルチコアファイバは、第2クラッドが実施例4のマルチコアファイバよりも薄いにもかかわらず、第2クラッドの比屈折率差Δを実施例4のマルチコアファイバよりも小さくすることにより、実施例4のマルチコアファイバのクロストークと大きく差が無い結果となった。さらに、実施例17のマルチコアファイバのクロストークは、実施例15のマルチコアファイバのクロストークよりも低減され、さらに実施例19のマルチコアファイバのクロストークは、実施例17のマルチコアファイバのクロストークよりも低減される結果となった。
【0100】
また、実施例16のマルチコアファイバは、第2クラッドが実施例3のマルチコアファイバよりも薄いにもかかわらず、第2クラッドの比屈折率差Δを実施例3のマルチコアファイバよりも小さくすることにより、実施例3のマルチコアファイバのクロストークと大きく差が無い結果となった。さらに、実施例18のマルチコアファイバのクロストークは、実施例16のマルチコアファイバのクロストークよりも低減さる結果となった。
【0101】
(実施例20〜実施例22)
次に、第1クラッドの比屈折率差Δが変化することにより、クロストークがどのように変化するかを調べた。実施例20においては、実施例2と略同様のマルチコアファイバを想定し、実施例21においては、実施例20のマルチコアファイバよりも、第1クラッドの比屈折率差Δが小さいマルチコアファイバを想定し、実施例22においては、実施例20のマルチコアファイバよりも、第1クラッドの比屈折率差Δが大きいマルチコアファイバを想定した。
【0102】
これら条件を表10に示す。
【表10】

【0103】
次に、想定した実施例20〜21のマルチコアファイバにおいて、クラッドの中心に配置されたコアのカットオフ波長λc、及び、クラッドの外周側に配置されたコアのカットオフ波長λcをシミュレーションした。さらに、それぞれのコアを伝播する光の波長が1.31μm及び1.55μmとする場合において、それぞれの波長におけるモードフィールド径MFDをシミュレーションし、この結果から、波長が1.55μmにおける(r/MFD)を求めた。さらに、実効コア断面積Aeffをシミュレーションした。さらに想定した条件のマルチコアファイバを100km用いた場合におけるクロストーク量をシミュレーションした。
【0104】
これらシミュレーションの結果を表11に示す。
【表11】

【0105】
表11に示すように、第1クラッドの比屈折率差Δがマイナスである実施例21のマルチコアファイバ(第1クラッドの屈折率がクラッドの屈折率よりも低いマルチコアファイバ)や第1クラッドの比屈折率差Δがプラスである実施例22のマルチコアファイバ(第1クラッドの屈折率がクラッドの屈折率よりも高いマルチコアファイバ)は、第1クラッドの比屈折率差Δがゼロである実施例20のマルチコアファイバ(第1クラッドの屈折率とクラッドの屈折率とが同じマルチコアファイバ)とほぼ同等のクロストーク、光学特性を維持できる結果となった。
【0106】
以上の実施例より、本発明のマルチファイバコアによれば、コア間のクロストークを低減することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明したように、本発明によれば、コア間のクロストークを低減することができるマルチコアファイバが提供される。
【符号の説明】
【0108】
1・・・マルチコアファイバ
10・・・コア要素
11・・・コア
12・・・第1クラッド
13・・・第2クラッド
20・・・クラッド
31・・・内側保護層
32・・・外側保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア要素と、
それぞれの前記コア要素の外周面を囲むクラッドと、
を備え、
それぞれの前記コア要素は、コアと、前記コアの外周面を囲む第1クラッドと、前記第1クラッドの外周面を囲む第2クラッドと、を有し、
前記コアの屈折率をnとし、前記第1クラッドの屈折率をnとし、前記第2クラッドの屈折率をnとし、前記クラッドの屈折率をnとする場合、
>n>n
>n
<n
の全てを満たす
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
前記コアの半径をrとし、前記第1クラッドの外周の半径をrとする場合に、
2.0≦r/r≦2.6
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
互いに隣り合う前記コア要素の第2クラッドの外周面同士の距離をwとする場合に、wは、5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
互いに隣り合う前記コア要素の前記コア同士の中心間の距離をΛとする場合に、
0.18≦w/Λ≦0.47
を満たすことを特徴とする請求項3に記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
前記第1クラッドの外周の半径をrとし、前記前記コアを波長が1550nmの光が伝播する場合におけるモードフィールド径をMFDとする場合に、
0.89≦r/MFD≦1.18
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−118495(P2012−118495A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98687(P2011−98687)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】