説明

マルチコアファイバ

【課題】 大容量の長距離光通信を実現できるマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【解決手段】 7個以上のコア11a〜11cと、それぞれのコア11a〜11cの外周を被覆し、断面における形状が円形であるクラッド12とを備え、互いに隣り合うコアの直径は、互いに異なり、コア11a〜11cは、おのおの使用波長においてシングルモード伝搬をし、コア11a〜11cのクラッド12に対する比屈折率差は、1.4%未満とされ、互いに隣り合う前記コアの中心間距離は、50μm未満とされ、互いに隣り合う前記コアの中心間距離と各コア11a〜11cの使用波長におけるモードフィールド径の比が、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3とされ、中心から最も遠い前記コアの外周と前記クラッドの外周との距離が、前記コアのモードフィールド径の2.5倍以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより被覆される構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。そして、近年光ファイバ通信システムの普及に伴い、光ファイバにより伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバの数を低減させるため、複数のコアの外周が1つのクラッドにより被覆されたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0004】
下記非特許文献1には、このようなマルチコアファイバが記載されている。しかし、下記非特許文献1によると、クラッド内に複数のコアが形成された光ファイバにおいては、コア同士が光学的に結合して、コア内を伝搬する光信号が互いに干渉し合う場合があるとしている。そこで、このような光信号の干渉の抑制には、コア間の距離を大きくしてコア同士が光学的に結合することを防止することや、クラッドに対する比屈折率差をより高くして光をコアに集中させることや、互いに隣り合うコア同士で大きく異なる比屈折率差としてコア同士が光学的に結合することを抑制することが有効であるとされている。そして、下記非特許文献1によれば、例えば、クラッドに対する比屈折率差が0.35%であるコアが複数用いられるマルチコアファイバの場合、コアの中心間距離が70μm以上であれば、光の干渉を小さく抑えることができ、さらに、互いに隣り合うコア同士で大きく異なる比屈折率差を持つ場合、コアの中心間距離が35μm以上であれば、光の干渉を小さく抑えることができるとされている。このように中心間距離を小さくすることで、通常用いられる125μmの光ファイバに7本のコアを配置することができるとしている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Masanori KOSHIBA “Heterogeneous multi−core fibers: proposal and design principle” IEICE Electronics Express, Vol.6, No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記非特許文献1に記載のマルチコアファイバのように、比屈折率差を高くすると、モードフィールド径が小さくなりすぎ、マルチコアファイバ同士が接続された光通信システムにおいて、接続損失が大きくなる場合がある。一方、比屈折率差が小さい場合においては、互いに隣り合うコア同士で光の干渉が生じてしまう場合がある。このように、接続損失が生じたり、互いに隣り合うコア同士で光の干渉が生じたりすると、光通信におけるエラーレートが高くなる傾向にある。従って、このような場合、一般的に通信速度を低下させたり、通信距離を短くしたりする必要が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、大容量の長距離光通信を実現できるマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマルチコアファイバは、7個以上のコアと、それぞれの前記コアの外周を被覆し、断面における形状が円形であるクラッドと、を備え、互いに隣り合う前記コアの直径は、互いに異なり、前記コアは、おのおの使用波長においてシングルモード伝搬をし、前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差は、1.4%未満とされ、互いに隣り合う前記コアの中心間距離は、50μm未満とされ、互いに隣り合うそれぞれの前記コアの中心間距離と各コアの使用波長におけるモードフィールド径の比が、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3とされ、中心から最も遠い前記コアの外周と前記クラッドの外周との距離が、前記コアのモードフィールド径の2.5倍以上あることを特徴とするものである。
【0009】
このようなマルチコアファイバによれば、7個以上のコアを有するため大容量の通信が可能である。そして、互いに隣り合うコアの直径が互いに異なり、この互いに隣り合うコアの中心間距離が50μm未満であり、この互いに隣り合うコアの中心間距離と各コアの使用波長におけるモードフィールド径との比が、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3とされる。このため、互いに隣り合うコアの光学的な結合が抑制されるので、複数のコアを配置しても、それぞれのコアを伝搬する信号光が互いに干渉することを抑制することができる。さらに、それぞれのコアの比屈折率差は1.4%未満とされるため、マルチコアファイバ同士を接続する際に接続損失が生じることが抑制できる。また、コアの外周とクラッドの外周との距離が、コアのモードフィールド径の2.5倍以上あるため、コアを伝搬する信号光がクラッドの外に漏えいすることが防止できる。こうして、光通信におけるエラーレートが低減できるため、大容量の長距離光通信が実現できる。
【0010】
また、上記マルチコアファイバにおいて、互いに隣り合う前記コアの直径の差は、互いに隣り合う前記コアの直径の平均における0.3%以上5%未満とされることが好ましい。
【0011】
このようなマルチコアファイバによれば、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均における0.3%以上とされるため、互いに隣り合うコアの光学的な結合がより抑制される。そして、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均における5%未満とされるため、それぞれのコアにおいて、光学特性を大きく変化させることなく伝送路を構成でき、それぞれのコアにおいて略同じ条件で光信号を伝搬させることができる。従って、コアに入力する光信号の条件や設備をコア毎に変える必要がなく、光信号の処理が容易になる。また、全てのコアを略同等の伝送路とみなすことができるので、複数のマルチコアファイバ同士を接続する場合、接続する側のマルチコアファイバ、及び、接続される側のマルチコアファイバにおける各コアを任意に組み合わせて接続しても、接続損失が増大する等の問題を防止できる。
【0012】
更に、上記マルチコアファイバにおいて、互いに隣り合う前記コアの直径の差は、互いに隣り合う前記コアの直径の平均における1%以上5%未満とされることがより好ましい。
【0013】
また、上記マルチコアファイバにおいて、前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差は、1.1%未満であることが好ましい。
【0014】
このように構成することにより、より接続損失を抑制することができる。
【0015】
また、上記マルチコアファイバにおいて、互いに隣り合う前記コアの比屈折率差の差が、互いに隣り合う前記コアの比屈折率差の平均の1%以上3%未満であることが好ましい。
【0016】
このようなマルチコアファイバであれば、互いに隣り合うコアの比屈折率差が、互いに異なるため、隣り合うコア同士の光学的な結合がより抑制され、コアを伝搬する光の干渉がより抑制される。特に比屈折率の差が平均の1%以上とされることで、互いに隣り合うコア同士の比屈折率差が同等である場合に比して、互いに隣り合うコアの光学的な結合がより抑制される。また、互いに隣り合うコアの比屈折率差の差が平均の3%未満であることで、それぞれのコアにおいて、光学特性を大きく変ずることなく伝送路を構成でき、それぞれのコアにおいて略同じ条件で光信号を伝搬させることができる。従って、コアに入力する光信号の条件や設備をコア毎に変える必要がなく、光信号の処理が容易になる。このように全てのコアを略同等の伝送路とみなすことができるので、接続時に各コアを任意に接続しても、接続損失が増大することを防止できる。なお、例えば、互いに隣り合うコアの比屈折率差の平均が0.7%のマルチコアファイバの場合、互いに隣り合うコアの比屈折率差の平均が1%以上3%未満とは、比屈折率差で0.007%から0.021%に相当する。
【発明の効果】
【0017】
以上の様に、本発明によれば、大容量の長距離光通信を実現できるマルチコアファイバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面における様子を示す断面図である。
【図2】比屈折率差とコアの直径との関係を示す図である。
【図3】互いに隣り合うコアの直径の差と信号光の干渉の量(クロストーク量)との関係を示す図である。
【図4】コアの中心間距離とモードフィールド径との比と、長さ1kmあたりのクロストーク量との関係を示す図である。
【図5】コアの中心間距離とモードフィールド径との比と、長さ1kmあたりのクロストーク量との関係を示す図である。
【図6】コアの中心間距離とモードフィールド径と理論カットオフ波長と光信号の波長とが所定の関係を満たした値と、長さ1kmあたりのクロストーク量との関係を示す図である。
【図7】図6において互いに隣り合う一組のコアのコア径の差を変えた場合の図である。
【図8】比屈折率差とコアの中心間距離との関係を示す図である。
【図9】コアの比屈折率差と接続損失との関係を示す図である。
【図10】モードフィールド径のコアの直径の依存性を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面における様子を示す断面図である。
【図12】互いに隣り合うコアの比屈折率差の差と、信号光の干渉の量(クロストーク量)との関係を示す図である。
【図13】モードフィールド径のコアデルタの依存性を示す図である。
【図14】図1に示すマルチコアファイバの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るマルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面における様子を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、マルチコアファイバ10は、直径が互いに異なる複数のコア11a、11b、11cと、それぞれのコア11a、11b、11cの外周を被覆するクラッド12と、クラッド12の外周を被覆する内側保護層13と、内側保護層13の外周を被覆する外側保護層14とから構成される。なお、図1においては、コアの総数が7本の場合を示している。
【0022】
複数のコア11a、11b、11cは、マルチコアファイバ10の断面において、一定の間隔をあけて配置されている。具体的には、クラッド12の中心に1つのコア11aが配置されており、コア11aの周囲に複数のコア11bと複数のコア11cとが、周方向において交互並べられて配置されている。そして、コア11b及びコア11cは、互いに隣り合うコア11bとコア11cとの中心間距離が、それぞれ等しくなるように配置されている。さらに、コア11b及びコア11cは、コア11aとコア11bとの中心間距離、及び、コア11aとコア11cとの中心間距離が、互いに隣り合うコア11bとコア11cとの中心間距離と等しくなるように配置されている。このようにして、複数のコア11a、11b、11cは、コア11aを中心として、コア11a、コア11b、コア11cを一組にした三角格子状に配置されている。従って、コア11aは、コア11b及びコア11cと隣り合い、コア11bは、コア11c及びコア11aと隣り合い、コア11cは、コア11b及びコア11aと隣り合う。このように三角格子状にコア11a〜11cを配置することは、コアの充填率が高くなる観点から好ましい。なお、コアの充填率とは、コアの数をクラッド断面積で除したものを意味する。
【0023】
また、コア11aの直径、及び、コア11bの直径、及び、コア11cの直径は、上記のように互いに異なる大きさとされる。従って、互いに隣り合うコアの直径は、互いに異なる大きさとされている。このようにして、複数のコアは、直径の異なる3種類のコアにより、互いに隣り合うコアの直径が互いに異なる大きさとなるように配置されている。この互いに隣り合うコアの直径の差は、互いに隣り合うコアの直径の平均における0.3%以上5%未満とされる。さらに互いに隣り合うコアの直径の差は、互いに隣り合うコアの直径の平均における1%以上5%未満とされることがより好ましい。
【0024】
このようなマルチコアファイバ10における各構成の大きさは、その用途により適切に選択されるため、特に制限されるものではないが、例えば、コア11a、11b、11cの直径は、それぞれ4μm〜9μmとされ、クラッド12の外径は、80μm〜200μmとされ、内側保護層13の外径は、90μm〜350μmとされ、外側保護層14の外径は、120μm〜400μmとされる。また、互いに隣り合うそれぞれのコア11a、コア11b、コア11cにおける中心間距離は、それぞれ20μm以上50μm未満とされる。
【0025】
また、このマルチコアファイバ10において、複数のそれぞれのコア11a、11b、11cの屈折率は、クラッド12の屈折率よりも高くされる。そして、コア11a、11b、11cのクラッド12に対する比屈折率差(コアデルタ)は互いに等しくされる。このコアデルタは、1.4%未満とされる。
【0026】
このようなコア11a、11b、11cを構成する材料としては、例えば、屈折率を高くするドーパントが添加される石英等が挙げられる。このようなドーパントとしては、酸化ゲルマニウム(GeO)や酸化アルミニウム(Al)等が挙げられる。また、クラッド12を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されない石英や、フッ素(F)等の屈折率を下げるドーパントが添加される石英が挙げられる。また、内側保護層13及び外側保護像14を構成する材料としては、例えば、アクリレート等の紫外線硬化樹脂が挙げられる。なお、コア11a〜11cとクラッド12を含むマルチコアファイバ10の主構成材料としては、上記のように石英ガラスが一般的である。しかしながら、フッ化物ガラスやカルコゲナイド等の多成分ガラスやPMMA(Polymethylmethacrylate)等の透光性プラスチックが主構成材料として用いられても良い。
【0027】
なお、本実施形態におけるマルチコアファイバ10は光通信に用いられる為、マルチコアファイバ10のコア11a〜11cは、信号光をシングルモード伝搬する。仮に使用波長(信号波長)において、コア11a〜11cがマルチモード光を伝搬可能である場合、信号光がモード分散の影響を受けて、光通信におけるエラーレートが増加する。この信号光のシングルモード化は、理論カットオフ波長が使用波長未満になるようコアの直径、コアデルタを調整することで実現できる。また、完全に理論カットオフ以下に設計せずとも、高次モードと基本モード間の伝搬損失の差を利用して、例えば、ITU−T G.650.1に定義されているケーブルカットオフ波長が使用波長未満になるようコア11a〜11cの直径、コアデルタを調整してもよい。さらに、このケーブルカットオフ波長が使用波長以上である場合においても、線路長やケーブル構造、敷設環境等を勘案した実使用条件において、カットオフ波長(一般に実効カットオフ波長と呼ばれる。)が使用波長未満であればよい。このように理論カットオフ波長が使用波長未満にならない場合のおいても、理論カットオフ波長は、使用波長の1.19倍以下とされている。
【0028】
また、使用波長は特に限定するものではないが、一般的な通信が行われるOバンドからLバンド(1260nmから1625nm)のいずれかであることが望ましく、とくに1260nmから1340nmのOバンド、1535nmから1565nmのCバンド、1565nmから1625nmのLバンドのいずれかもしくは複数から選択されることが望ましい。また、波長多重伝送によって伝送容量を増やすこともより好ましい。
【0029】
次に、上述のコアデルタと、モードフィールド径との関係について説明する。
【0030】
図2は、理論カットオフ波長が1.30μmの場合のコアデルタとコアの直径との関係を示す図である。図2に示すように、コアデルタが大きくなると、コアの直径が小さくなる。よって、理論カットオフ波長が一定のときは、それぞれの波長において、コアデルタが大きくなるほど、モードフィールド径が小さくなるといえる。
【0031】
次に、外径が125μmのクラッド12に7個以上のコア11a〜11cを配置するために必要とされる各コアが満たす要件について説明する。
【0032】
まず、互いに隣り合うコアの直径の差と、信号光の干渉(クロストーク)との関係について説明する。
【0033】
図3の(a)、(b)は、マルチコアファイバ10のコア11a〜11cを伝搬する光信号の波長が1.31μm、1.55μmのそれぞれについて、互いに隣り合うコアの中心間距離が20μm、30μm、40μmのそれぞれにおいて、互いに隣り合うコアの直径の差と、信号光の干渉との関係を示す図である。図3の(a)、(b)のそれぞれにおいて、横軸は、一方のコアの直径が6μmとされる場合における他方のコアの直径を示している。また、縦軸は、それぞれのコアの直径が等しい場合のクロストーク量を1とした場合に、他方のコアの直径が変化する場合のクロストーク量を示している。なお、縦軸は、デシベル(dB)表示である。具体的には、コアの直径が6μm付近において、コアデルタが0.7%の場合の計算結果を用いて、互いに隣り合う一組のコアのクロストーク量を示している。
【0034】
図3の(a)、(b)に示すように、光信号の波長が長い1.55μmにおけるクロストーク量の方が、波長が短い1.31μmにおけるクロストーク量より多くなっている。ここで、図3の(b)に示すように、光信号の波長が1.55μmの場合において、互いに隣り合うコアの中心間距離が20μmである場合、互いに隣り合うコアの直径が0.02μm(0.3%)異なると、クロストーク量が約20dB小さくなることが分かる。同様に、互いに隣り合うコアの中心間距離が30μmである場合、互いに隣り合うコアの直径が0.02μm(0.3%)異なると、クロストーク量が、約60dB小さくなることが分かる。さらに、互いに隣り合うコアの中心間距離が40μmである場合、互いに隣り合うコアの直径が0.02μm(0.3%)異なると、クロストーク量が、約100dB小さくなることが分かる。このように、互いに隣り合うコアの直径が互いに異なると、クロストークは大幅に低減される。さらに、コアの直径の差が0.06μm(1.0%)になると、コアの直径の差が0.3%の場合よりもさらに10dB程度クロストークが低減される。このようなコアの直径の差とクロストークの関係において、本実施形態におけるマルチコアファイバ10は、上述のように、互いに隣り合うコアの直径の差が、0.3%以上(0.02μm以上)とされるため、クロストーク量が十分に低減される。
【0035】
なお、伝送上許容されるクロストークの上限は、伝送方式や伝送機器、伝送速度、伝送距離等によってさまざまであるが、一般的に−30dB程度とされる。従って、最低限満たすべき伝送距離として、より伝送特性上厳しい条件である、波長1.55μmにおいて伝送距離1kmにおけるクロストーク量が−30dBであれば問題ない。
【0036】
また、本実施形態におけるマルチコアファイバ10は、上述のように互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均における5%未満とされるため、それぞれのコアにおいて、略同じ条件で光信号を伝搬させることができる。従って、コアに入力する光信号の条件や設備をコア毎に変える必要がなく、光信号の処理が容易になる。また、全てのコアを略同等の伝送路とみなすことができるので、複数のマルチコアファイバ同士を接続時する場合において、接続する側のマルチコアファイバ、及び、接続される側のマルチコアファイバにおける各コアを任意に組み合わせて接続しても、接続損失が増大する等の問題が発生することを防止することができる。
【0037】
次に、互いに隣り合うコア同士の中心間距離について説明する。コアの中心間距離は、出来るだけ小さいことが望ましい。特に、150μmのクラッド外径のファイバに7個以上のコア、より好ましくは一般的な光ファイバのクラッド外径である125μmのファイバに7個以上のコア、もしくはコアの充填率でそれ以上のコアを充填できることを満足するためには、コアの中心間距離が50μm以下としなければならない。
【0038】
次に、コアの中心間距離Λとモードフィールド径MFDとの比(中心間距離/モードフィールド径:Λ/MFD)と、クロストーク量との関係について説明する。
【0039】
図4は、コアの中心間距離とモードフィールド径との比と、長さ1kmあたりのクロストーク量との関係を示す図である。具体的には、この関係を示すために、互いに隣り合う一組のコア間でのクロストーク量を計算により求めて、その結果を示す図である。ここで、互いに隣り合う一組のコアのコア径の差は1%あり、理論カットオフ波長λcは1.30とした。図4の(a)は、光信号の波長が1.31μmにおいて、Λ/MFDを横軸に示し、1km当たりのクロストーク量を縦軸に示した図である。図4の(b)は、光信号の波長が1.55μmにおいて、Λ/MFDを横軸に示し、1km当たりのクロストーク量を縦軸に示した図である。なお、図4において「Δ」は、コアデルタを示す。図4の(a)、(b)に示すように、コアデルタの値に関係なく、Λ/MFDが定まると、クロストーク量は略一義的に定まる。また、図4の(a)と(b)とを比較すると、Λ/MFDが同じ値である場合、光信号の波長が1.55μmのクロストーク量の方が大きくなっている。従って、光信号の波長が1.55μmにおいてクロストーク量が−30dB以下となる条件であれば、光信号の波長が1.31μmにおいても、クロストーク量が−30dBとなる。従って、最低限満たすべきクロストーク量(1km伝送時−30dB)を満たすためには、互いに隣り合う一組のコアのコア径の差が1%あり、理論カットオフ波長λcが1.30の場合、Λ/MFDが4.3以上とされる。
【0040】
図5は、図4と同様に、コアの中心間距離とモードフィールド径との比と、長さ1kmあたりのクロストーク量との関係を示す図である。具体的には、光信号の波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、理論カットオフ波長λcが1.30μmと1.50μmにおけるΛ/MFDを示す図である。なお、図5においても、図4と同様に互いに隣り合う一組のコアのコア径の差が1%である場合で計算をしている。図5に示すように、理論カットオフ波長λcが1.50μmで光信号の波長が1.31μmである場合に、1km当たりのクロストーク量が−30dBになるΛ/MFDが最も小さく、理論カットオフ波長λcが1.30μmで光信号の波長が1.55μmである場合に、1km当たりのクロストーク量が−30dBになるΛ/MFDが最も大きくなる。従って、図5よりΛ/MFDが4.3以上であれば、1kmのクロストーク量が−30dB以下になる。
【0041】
図6は、図5と同様の条件において、コアの中心間距離とモードフィールド径とカットオフ周波数と光信号の周波数とが所定の関係を満たした値と、長さ1kmあたりのクロストーク量との関係を示す図である。具体的には、光信号の波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、理論カットオフ波長λcが1.30μm及び1.50μmにおける下記式1を横軸に示し、1km当たりのクロストーク量を縦軸に示した図である。
(Λ/MFD)・(2λc/(λc+λ)) ・・・(式1)
【0042】
図6に示すように、上記式1と1km当たりのクロストーク量との関係は、光信号の波長λや理論カットオフ波長λcによらず、略直線状となる。そして、図6から、最低限満たすべきクロストーク量(1km伝送時−30dB)を満たすためには、上記式1が3.8以上であれば良いことが分かる。そして、この条件を満たしていれば、図4を用いて説明したΛ/MFDが4.3以上という条件を満たすことになる。
【0043】
図7は、図6において互いに隣り合う一組のコアのコア径の差を変えた場合の図である。具体的には、互いに隣り合う一組のコアのコア径の差が0.3%である場合において、図6と同様にして、光信号の波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、理論カットオフ波長λcが1.30μm及び1.50μmにおける上記式1を横軸に示し、1km当たりのクロストーク量を縦軸に示した図である。図7より、互いに隣り合う一組のコアのコア径の差が0.3%である場合においては、最低限満たすべきクロストーク量(1km伝送時−30dB)を満たすためには、上記式1が3.95以上であれば良いことが分かる。また、一般的に、互いに隣り合うコアのコア径を異なるようにして、光ファイバを製造すると、コア径が互いに0.3%以上異なるため、互いに隣り合うコアのコア径が互いに異なる場合において、1km当たりのクロストーク量が−30dB以下であるためには、上記式1が3.95以上であれば良いことになる。
【0044】
次に、具体的なコア充填条件における、クロストーク許容値とコアのコアデルタの下限を説明する。図8は、コアデルタとコア間距離との関係を示す図である。具体的には、図8の(a)は、コアを伝搬する光信号の波長が1.55μmで、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均から1.0%である場合に、それぞれのコア間距離において、1km当たりのクロストーク量が−30dB以下となる場合(Λ/MFDが4.3以上となる場合)のコアデルタが満たすべき領域を示し、図8の(b)は、コアを伝搬する光信号の波長が1.55μmで、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均から0.3%である場合に、それぞれのコア間距離において、1km当たりのクロストーク量が−30dB以下となる場合(Λ/MFDが4.3以上となる場合)のコアデルタが満たすべき領域を示す。
【0045】
図8の(a)において斜線で示すように、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均から1.0%である場合において、クロストークが−30dB以下となるためには、コア間距離Λが50μmでは、コアデルタは0.27%以上とされ、コア間距離Λが40μmでは、コアデルタは0.45%以上とされ、コア間距離Λが30μmでは、コアデルタは0.75%以上とされる。また、図8の(b)において斜線で示すように、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均から0.3%である場合において、クロストークが−30dB以下となるためには、コア間距離Λが50μmでは、コアデルタは0.30%以上とされ、コア間距離Λが40μmでは、コアデルタは0.46%以上とされ、コア間距離Λが30μmでは、コアデルタは0.81%以上とされる。このように、コア間距離を小さくする為には、コアデルタを大きくする必要あること分かる。
【0046】
こうして、コア間距離を定めた場合のコアのコアデルタの実質的な下限が定まる。
【0047】
次に、コアデルタと接続損失との関係について説明する。
【0048】
図9は、コアのコアデルタと接続損失との関係を示す図である。すなわち、図9の(a)は、マルチコアファイバ10のコア11a〜11cを伝搬する光信号の波長が1.31μmとされる場合において、コアデルタと接続損失との関係を示す図であり、図9の(b)は、マルチコアファイバ10のコア11a〜11cを伝搬する光信号の波長が1.55μmとされる場合において、コアデルタと接続損失との関係を示す図である。
【0049】
具体的には、マルチコアファイバ同士を接続する場合に、接続する側のマルチコアファイバのコアの中心軸と、接続される側のマルチコアファイバのコアの中心軸とが、完全に一致した状態から、コアの中心軸のずれ(オフセット)が変化した状態の接続損失を示している。図9に示すように、コアデルタが大きくなるほど同じオフセットによる接続損失は大きくなる。また、オフセット量が同じであれば、短波長ほど接続損失は大きくなる。ここで、一般的な通信において許される接続損失は1接続点あたり0.5dB以下である。また、コネクタや融着器の性能から考えると、マルチコアファイバは中心軸のずれだけでなく、周辺コアにおいては回転ずれによるオフセットを考慮する必要があり、既存のファイバよりもオフセットが大きくなる恐れがある。しかしながら、オフセットが1.5μmを超えることは特段の欠陥がない限り考慮する必要は無い。従って、オフセットについては、最大1.5μmを考慮すれば十分である。以上の条件を考慮し、図9の(a)より、コアデルタの上限は1.4%程度とされる。また、図9の(a)より、コアデルタの上限が1.1%であることが、接続損失をより抑制する観点からより好ましい。
【0050】
ところで、光通信に用いる光ファイバにおいては、接続点数や伝送方式によるものの、接続損失が0.5dBを超える場合には、通信のエラーレートが高くなり、通信速度を低下させたり、通信距離を短くしなければならない。しかし、本実施形態のマルチコアファイバ10においては、コアデルタが1.4%未満とされるため、接続損失が0.5dB未満とされる。従って、マルチコアファイバ10同士が接続される場合においても、通信速度を低下させたり、通信距離を短くしたりせずに、光通信を行うことができる。
【0051】
次に、コアの直径の変化によるコアの光学特性の変化の一例として、モードフィールド径のコアの直径の依存性について説明する。図10は、モードフィールド径のコアの直径の依存性を示す図である。波長1.31μm、1.55μmにおける結果を示している。図10より、コアの直径の変化が5%以下であれば、実質的に略同じ条件で光信号を伝搬させることができる。従って、このような範囲であれば、コア11a、11b、11cに入力する光信号の条件をコア毎に変える必要がなく、光信号の処理が容易になる。
【0052】
次に、コアの外周と、クラッドの外周との距離について説明する。図1を用いて説明したように、マルチコアファイバ10においては、クラッド12の外周は、内側保護層13により被覆されている。この図1に示すクラッド12の外周と各コア11a〜11cの外周との距離hが近いと、各コア11a〜11cを伝搬する信号光のフィールド(電界分布)がクラッド12の外周にかかってしまい、その光は内側保護層13の外に漏洩する場合がある。そのため、中心から最も遠いコアとクラッド12の外周との距離hは、ある程度離される必要がある。また、同様に、クラッド12の外周と中心から最も遠いコア11a〜11cとが近い場合には、マルチコアファイバ10に印加される側圧や微小曲げの影響をうけやすく、マイクロベンド損失が発生しやすい。以上の鑑みると、クラッドの外周と中心から最も遠いコア11a〜11cの外周との距離hは少なくともコア11a〜11cの使用波長におけるモードフィールド径の2.5倍以上あることが好ましい。
【0053】
本実施形態におけるマルチコアファイバ10によれば、7個以上のコア11a〜11cを有するため大容量の通信が可能である。そして、互いに隣り合うコアの中心間距離が50μm未満であり、かつ、互いに隣り合うコアの中心間距離と各コアの使用波長におけるモードフィールド径の比が、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3とされ、互いに隣り合うコアの直径が互いに異なる。さらに、互いに隣り合うコアの直径が互いに異なり、各コアの使用波長λと、互いに隣り合う前記コアの中心間距離Λと、各コアの使用波長におけるモードフィールド径MFDと、コアの理論カットオフ波長λcとが、
(Λ/MFD)・(2λc/(λc+λ))≧3.95
を満たす。このため、互いに隣り合うコアの光学的な結合が抑制されるので、複数のコア11a〜11cを配置しても、それぞれのコア11a〜11cを伝搬する信号光が互いに干渉することを抑制することができる。さらに、それぞれのコア11a〜11cの比屈折率差(コアデルタ)は1.4%未満とされるため、マルチコアファイバ同士を接続する際に接続損失が生じることが抑制できる。また、コア11a〜11cの外周とクラッド12の外周との距離が、コア11a〜11cのモードフィールド径の2.5倍以上あるため、コア11a〜11cを伝搬する信号光がクラッド12の外に漏えいすることが防止できる。こうして、光通信におけるエラーレートが低減できるため、大容量の長距離光通信が実現できる。
【0054】
さらに、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均における0.3%以上5%未満とされるため、互いに隣り合うコアの光学的な結合がより抑制される。そして、互いに隣り合うコアの直径の差が、互いに隣り合うコアの直径の平均における5%未満とされるため、それぞれのコア11a〜11cにおいて、光学特性を大きく変化させることなく伝送路を構成でき、それぞれのコア11a〜11cにおいて略同じ条件で光信号を伝搬させることができる。従って、コア11a〜11cに入力する光信号の条件や設備をコア毎に変える必要がなく、光信号の処理が容易になる。また、全てのコア11a〜11cを略同等の伝送路とみなすことができるので、複数のマルチコアファイバ同士を接続時する場合においても、接続する側のマルチコアファイバ、及び、接続される側のマルチコアファイバにおける各コアを任意に接続しても、接続損失が増大する等の問題が発生することを防止できる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図11を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図10は、本発明の第2実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面における様子を示す断面図である。
【0056】
図11に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ20は、19本のコアを有する。これらのコアは、3種類のコア11a、11b、11cから構成され、マルチコアファイバ20の断面において、コア11aが中心に配置される。そして、コア11a、11b、11cが一組とされて、それぞれのコアが三角格子状に配置される。こうして互いに隣り合うコアが、異なる直径のコアとされる。本実施形態においても三角格子状にコア11a〜11cを配置することは、コアの充填方法として、コアの充填率が高くなるので好ましい。
【0057】
コア11a、11b、11cの直径、及び、互いに隣り合うそれぞれのコア11a、11b、11cにおける中心間距離は、第1実施形態と同様とされる。さらに本実施形態においては、コア11a及びコア11b及びコア11cのコアデルタが互いに異なる。つまり、マルチコアファイバ20は、互いに隣り合うコアのコアデルタが異なる構成とされている。このようにコア11a、11b、11cにおいて、互いにコアデルタを変えるには、上述した石英に添加されるドーパントの量を、それぞれのコア11a、11b、11c毎に変えれば良い。
【0058】
次に、互いに隣り合うコアのコアデルタの差と、信号光の干渉との関係について説明する。
【0059】
図12は、互いに隣り合うコアのコアデルタの差と、信号光の干渉との関係を示す図である。具体的には、図12の(a)は、光信号の波長が1.31μmである場合において、互いに隣り合う一組のコアのクロストーク量を示す図であり、一方のコアのコアデルタが0.7%である場合に、他方のコアのコアデルタが横軸とされている。同様に、図12の(b)は、光信号の波長が1.55μmである場合において、互いに隣り合う一組のコアのクロストーク量を示す図であり、一方のコアのコアデルタが0.7%である場合に、他方のコアのコアデルタが横軸とされている。
【0060】
図12の(a)に示すように、光信号の波長が1.31μmである場合においては、互いに隣り合うコアの中心間距離が20μmである場合に、互いに隣り合うコアのコアデルタの差が、0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)異なると、クロストークの量が約−53dBとなる。さらに、互いに隣り合うコアの中心間距離が30μmである場合に、互いに隣り合うコアのコアデルタの差が、0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)異なると、クロストークの量が約−110dBとなる。さらに、互いに隣り合うコアの中心間距離が40μmである場合に、互いに隣り合うコアのコアデルタの差が、0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)異なると、クロストークの量が約−165dBとなる。さらに、コアデルタの差が0.021%(コアデルタ0.7%に対して3%)になると、コアデルタの差が0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)の場合よりもさらに10dB程度クロストークが低減される。
【0061】
同様に図12の(b)に示すように、光信号の波長が1.55μmである場合においては、互いに隣り合うコアの中心間距離が20μmである場合に、互いに隣り合うコアのコアデルタの差が、0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)異なると、クロストークの量が約−35dBとなる。さらに、互いに隣り合うコアの中心間距離が30μmである場合に、互いに隣り合うコアのコアデルタの差が、0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)異なると、クロストークの量が約−75dBとなる。さらに、互いに隣り合うコアの中心間距離が40μmである場合に、互いに隣り合うコアのコアデルタの差が、0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)異なると、クロストークの量が約−120dBとなる。さらに、コアデルタの差が0.021%(コアデルタ0.7%に対して3%)になると、コアデルタの差が0.007%(コアデルタ0.7%に対して1%)の場合よりもさらに10dB程度クロストークが低減される。
【0062】
このように、本実施形態におけるマルチコアファイバ20は、互いに隣り合うコアのコアデルタが、異なるため、第1実施形態と比べ更にクロストーク量が、低減されている。
【0063】
本実施形態におけるマルチコアファイバ20によれば、互いに隣り合うコアの比屈折率差(コアデルタ)が互いに異なるため、隣り合うコア同士の光学的な結合がより抑制され、コアを伝搬する光の干渉がより抑制される。
【0064】
次に、コアデルタの変化によるコアの光学特性の変化の一例として、モードフィールド径のコアデルタの依存性について説明する。図13は、モードフィールド径のコアデルタの依存性を示す図である。図13は、波長1.31μm、1.55μmにおけるモードフィールド径のコアデルタの依存性の結果を示している。図13より、コアの直径の変化が3%以下であれば、実質的に略同じ条件で光信号を伝搬させることができる。従って、このような範囲であれば、コア11a、11b、11cに入力する光信号の条件をコア毎に変える必要がなく、光信号の処理が容易になる。
【0065】
以上、本発明について、第1、第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
例えば、第1実施形態において、コア11a、11b、11cのコアデルタは、互いに等しいとされたが、互いに隣り合うコアの屈折率が互いに異なるものとしても良い。この場合、隣り合うコア同士の光学的な結合がより抑制され、コアを伝搬する光の干渉がより抑制される。
【0067】
また、第1実施形態においてはコアが7本の例を示し、第2実施形態においてはコアが19本の例を示したが、本発明においては、コアは他の数でも良い。図14は、このようなコアの数が異なる、図1に示すマルチコアファイバの変形例を示す図である。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図14に示すように、本例におけるマルチコアファイバ30は、10本のコアを有する。これらのコアは、4本のコアが直線状に配列され、この4本のコアを挟むように、それぞれ3本のコアが配列されている。また、これらのコアは、3種類のコア11a、11b、11cから構成され、コア11a、11b、11cが一組とされて、それぞれのコアが三角格子状に配置される。こうして互いに隣り合うコアが、異なる直径のコアとされる。なお、本例においても三角格子状にコア11a〜11cを配置することは、コアの充填方法として、コアの充填率が高くなるので好ましい。コア11a、11b、11cの直径、及び、互いに隣り合うそれぞれのコア11a、11b、11cにおける中心間距離は、第1実施形態と同様とされる。さらに本実施形態においては、コア11a及びコア11b及びコア11cのコアデルタが互いに異なる。つまり、マルチコアファイバ20は、互いに隣り合うコアのコアデルタが異なる構成とされている。このように互いにコア11a、11b、11cにおいて互いにコアデルタを変えるには、上述した石英に添加されるドーパントの量を、それぞれのコア11a、11b、11c毎に変えれば良い。
【0068】
また、第1実施形態、第2実施形態、上記変形例において、それぞれのコアは、直径が異なる3種類のコア11a〜11cを用いたが、全てのコアの直径が異なる構成をとしても良い。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0070】
(実施例1)
第1実施形態と同様にして、長さが2.5kmのマルチコアファイバを作成した。このマルチコアファイバは、クラッドの直径を142μmとして、中心に直径が6.0μmのコアを配置すると共に、中心に配置したコアと直径のみが異なる6本のコアを、中心に配置したコアの周りに配置した。このとき、コア同士の中心間距離Λがそれぞれ40μmで、中心のコアの周りに配置されたコアの外周とクラッドの外周との最小距離が28μmで、それぞれのコアが三角格子状に配置されるようにした。なお、コアの直径をファイバ化する前の母材で確認したところ互いに隣り合う2つのコアにおいて、その2つのコア径の平均に対して、コアの直径の差が0.3%以上、5%未満の差を有していた。また、それぞれのコアには、酸化ゲルマニウム(GeO)が6.8mol%含有した石英を用い、クラッドには、ドーパントを含有しない石英を用いた。このときコアデルタは、0.7%であった。
【0071】
このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおけるモードフィールド径MFDは、6.6μmであり、波長λが1.55μmにおけるモードフィールド径MFDは、7.4μmであった。この値は、7つのすべてのコアにおいて1%以内の誤差であり、ほぼ同じ値であった。従って、このマルチコアファイバは、波長λが1.31μmの場合と1.55μmの場合とにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3を満たしていた。また、波長が1.31μm及び1.55μmの信号光において、(中心から最も遠いコアとクラッドの外周との距離)/(モードフィールド径)≧2.5を満たしていた。
【0072】
また、このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおける実効断面積(Aeff)は、34.5μm2であり、波長λが1.55μmにおける実効断面積(Aeff)は、42.5μm2であった。さらにケーブルカットオフ波長、ゼロ分散波長を測定したところ、それぞれ1.27μm、1351nmであった。また、理論カットオフ波長λcは、1.287μmであった。従って、上述の式1の値は、波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、3.95以上となっていた。また、伝搬損失を測定したところ、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ0.54dB/km、0.36dB/kmであった。この損失の値は、中心のコア、その周りの6個のコアについて測定してもほぼ同じ値であった。
【0073】
また、長さ2492m(2.492km)で入射側で中心に信号光を入射し、中心と外側のコアから出てきた信号光の強度を測定し、その中心と外側の強度の比からクロストーク量を測定した。その結果、1km当たりのクロストーク量は、波長1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ−65dB、−56dBとなり、十分に小さなクロストーク量であった。
【0074】
(実施例2)
実施例1と同様にして、長さが2.0kmのマルチコアファイバを作成した。ただし、このマルチコアファイバは、クラッドの直径を125μmとして、中心に直径が5.25μmのコアを配置すると共に、中心に配置したコアと直径のみが異なる6本のコアを、中心に配置したコアの周りに配置した。このとき、コア同士の中心間距離Λがそれぞれ35.2μmで、中心のコアの周りに配置されたコアの外周とクラッドの外周との最小距離が24.7μmで、それぞれのコアが三角格子状に配置されるようにした。なお、コアの直径をファイバ化する前の母材で確認したところ互いに隣り合う2つのコアにおいて、その2つのコア径の平均に対して、コアの直径の差が0.3%以上、5%未満の差を有していた。また、それぞれのコア及びクラッドの材料は、実施例1と同様にした。従って、コアデルタは、実施例1と同様であった。
【0075】
このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおけるモードフィールド径MFDは、6.3μmであり、波長λが1.55μmにおけるモードフィールド径MFDは、7.3μmであった。この値は、7つのすべてのコアにおいて1%以内の誤差であり、ほぼ同じであった。従って、このマルチコアファイバは、波長λが1.31μmの場合と1.55μmの場合とにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3を満たしていた。また、波長が1.31μm及び1.55μmの信号光において、(中心から最も遠いコアとクラッドの外周との距離)/(モードフィールド径)≧2.5を満たしていた。
【0076】
また、このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおける実効断面積(Aeff)は、31.1μm2であり、波長λが1.55μmにおける実効断面積(Aeff)は、40.1μm2であった。さらにケーブルカットオフ波長、ゼロ分散波長を測定したところ、それぞれ1.12μm、1409nmであった。また、理論カットオフ波長λcは、1.125μmであった。従って、上述の式1の値は、波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、3.95以上となっていた。また、伝搬損失を測定したところ、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ0.65dB/km、0.44dB/kmであった。この損失の値は、中心のコア、その周りの6個のコアについて測定してもほぼ同じ値であった。
【0077】
また、長さ1970m(1.97km)で入射側で中心に光を入射し、中心と外側のコアから出てきた光の強度を測定し、その中心と外側の強度の比からクロストーク量を測定した。その結果、1km当たりのクロストーク量は、波長λが1.31μm、1.55μmにおいて、それぞれ−62dB、−38dBであり、十分に小さなクロストーク量であった。
【0078】
(実施例3)
実施例1と同様にして、長さが2.0kmのマルチコアファイバを作成した。ただし、このマルチコアファイバは、クラッドの直径を125.8μmとして、中心に直径が5.25μmのコアを配置すると共に、中心に配置したコアと直径のみが異なる6本のコアを、中心に配置したコアの周りに配置した。このとき、コア同士の中心間距離Λがそれぞれ42μmで、中心のコアの周りに配置されたコアの外周とクラッドの外周との最小距離が18.25μmで、それぞれのコアが三角格子状に配置されるようにした。なお、コアの直径をファイバ化する前の母材で確認したところ互いに隣り合う2つのコアにおいて、その2つのコア径の平均に対して、コアの直径の差が0.3%以上、5%未満の差を有していた。また、それぞれのコア及びクラッドの材料は、実施例1と同様にした。従って、コアデルタは、実施例1と同様であった。
【0079】
このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおけるモードフィールド径MFDは、6.3μmであり、波長λが1.55μmにおけるモードフィールド径MFDは、7.3μmであった。この値は、7つのすべてのコアで1%以内でほぼ同じであった。従って、このマルチコアファイバは、波長λが1.31μmの場合と1.55μmの場合とにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3を満たしていた。また、波長λが1.55μmの信号光において、(中心から最も遠いコアとクラッドの外周との距離)/(モードフィールド径)=2.5であった。
【0080】
また、このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおける実効断面積(Aeff)は、31.1μm2であり、波長λが1.55μmにおける実効断面積(Aeff)は、40.1μm2であった。ケーブルカットオフ波長、ゼロ分散波長を測定したところ、それぞれ1.12μm、1409nmであった。また、理論カットオフ波長λcは、1.125μmであった。従って、上述の式1の値は、波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、3.95以上となっていた。また、伝搬損失を測定したところ、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ0.65dB/km、0.44dB/kmであった。この損失の値は、中心のコア、その周りの6個のコアについて測定してもほぼ同じ値であった。
【0081】
また、長さ1970m(1.97km)で入射側で中心に光を入射し、中心と外側のコアから出てきた光の強度を測定し、その中心と外側の強度の比からクロストーク量を測定した。その結果、1km当たりのクロストーク量は、波長λが1.31μm、1.55μmにおいて、それぞれ−64dB、−53dBであり、十分に小さなクロストーク量であった。
【0082】
(実施例4)
実施例1と同様にして、長さが1.2kmのマルチコアファイバを作成した。ただし、このマルチコアファイバは、クラッドの直径を145μmとして、中心に直径が8.3μmのコアを配置すると共に、中心に配置したコアと直径のみが異なる6本のコアを、中心に配置したコアの周りに配置した。このとき、コア同士の中心間距離Λがそれぞれ41.6μmで、中心のコアの周りに配置されたコアの外周とクラッドの外周との最小距離が27.35μmで、それぞれのコアが三角格子状に配置されるようにした。なお、コアの直径をファイバ化する前の母材で確認したところ互いに隣り合う2つのコアにおいて、その2つのコア径の平均に対して、コアの直径の差が0.3%以上、5%未満の差を有していた。また、それぞれのコアには、酸化ゲルマニウム(GeO)が3.9mol%含有した石英を用い、クラッドには、ドーパントを含有しない石英を用いた。このときコアデルタは、0.4%であった。
【0083】
このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおけるモードフィールド径MFDは、8.61μmであり、波長λが1.55μmにおけるモードフィールド径MFDは、9.66μmであった。この値は、7つのすべてのコアで1%以内であり、ほぼ同じであった。従って、このマルチコアファイバは、波長λが1.31μmの場合と1.55μmの場合とにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3を満たしていた。また、波長λが1.31μm及び1.55μmの信号光において、(中心から最も遠いコアとクラッドの外周との距離)/(モードフィールド径)≧2.5を満たしていた。
【0084】
また、このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおける実効断面積(Aeff)は、59.4μm2であり、波長λが1.55μmにおける実効断面積(Aeff)は、72.4μm2であった。ケーブルカットオフ波長、ゼロ分散波長を測定したところ、それぞれ1.28μm、1314nmであった。また、理論カットオフ波長λcは、1.401μmであった。従って、上述の式1の値は、波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、3.95以上となっていた。また、伝搬損失を測定したところ、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ0.77dB/km、0.82dB/kmであった。この損失の値は、中心のコア、その周りの6個のコアについて測定してもほぼ同じ値であった。
【0085】
また、長さ1200m(1.2km)で入射側で中心に光を入射し、中心と外側のコアから出てきた光の強度を測定し、その中心と外側の強度の比からクロストーク量を測定した。その結果、1km当たりのクロストーク量は、波長λが1.31μm、1.55μmにおいて、それぞれ−72dB、−39dBであり、十分に小さなクロストーク量であった。
【0086】
(比較例1)
コア同士の中心間距離Λがそれぞれ47μmで、中心のコアの周りに配置されたコアの外周とクラッドの外周との最小距離が12.9μmとしたこと以外は、実施例3と同様にしてマルチコアファイバを作成した。
【0087】
このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおけるモードフィールド径MFDと、波長λが1.55μmにおけるモードフィールド径MFDは、それぞれ実施例3と同様であり、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3を満たしていた。また、信号光の波長λが1.55μmにおいて、(中心から最も遠いコアとクラッド12の外周との距離)/(モードフィールド径)=1.77であり、2.55よりも小さい値であった。
【0088】
また、このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおける実効断面積(Aeff)は、31.1μm2であり、波長1.55μmにおける実効断面積(Aeff)は、40.1μm2であった。さらにケーブルカットオフ波長、ゼロ分散波長を測定したところ、それぞれ1.12μm、1409nmであった。また、理論カットオフ波長λcは、1.125μmであった。従って、上述の式1の値は、波長λが1.31μm、1.55μmのそれぞれにおいて、3.95以上となっていた。
【0089】
また、信号光の伝搬損失を測定したところ、中心のコアは、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ0.65dB/km、0.44dB/kmであった。その周りの6個のコアにおける信号光の伝搬損失は、波長λが1.31μm、1.55μmにおいて、それぞれ0.69dB/km、1.2dB/kmであった。この結果より、外側のコアの伝搬損失が中心コアに比べて高いことが分かった。これは、モードフィールド径に対して中心から最も遠いコアとクラッド12の外周との距離が小さいためであると考えられる。
【0090】
(比較例2)
実施例1と同様にして、長さが5.0kmのマルチコアファイバを作成した。ただし、このマルチコアファイバは、クラッドの直径を138μmとして、中心に直径が7.9μmのコアを配置すると共に、中心に配置したコアと直径のみが異なる6本のコアを、中心に配置したコアの周りに配置した。このとき、コア同士の中心間距離Λがそれぞれ39μmで、中心のコアの周りに配置されたコアの外周とクラッドの外周との最小距離が26.05μmで、それぞれのコアが三角格子状に配置されるようにした。なお、コアの直径をファイバ化する前の母材で確認したところ互いに隣り合う2つのコアにおいて、その2つのコア径の平均に対して、コアの直径の差が0.3%以上、5%未満の差を有していた。また、それぞれのコアには、酸化ゲルマニウム(GeO)が3.9mol%含有した石英を用い、クラッドには、ドーパントを含有しない石英を用いた。このときコアデルタは、0.4%であった。
【0091】
このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおけるモードフィールド径MFDは、8.58μmであり、波長λが1.55μmにおけるモードフィールド径MFDは、9.64μmであった。この値は、7つのすべてのコアで1%以内であり、ほぼ同じであった。従って、このマルチコアファイバは、波長λが1.31μmの場合と1.55μmの場合とにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)は、4.5と4.05となり、波長λが1.31μmの場合は、4.3以上となったが、波長λが1.55μmの場合には、4.3より小さくなった。また、波長λが1.31μm及び1.55μmの信号光において、(中心から最も遠いコアとクラッドの外周との距離)/(モードフィールド径)≧2.5を満たしていた。
【0092】
また、このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおける実効断面積(Aeff)は、58.6μm2であり、波長λが1.55μmにおける実効断面積(Aeff)は、71.6μm2であった。ケーブルカットオフ波長、ゼロ分散波長を測定したところ、それぞれ1.26μm、1316nmであった。また、理論カットオフ波長λcは、1.331μmであった。従って、上述の式1の値は、3.74となり3.95より小さな値となった。また、伝搬損失を測定したところ、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ0.76dB/km、0.80dB/kmであった。この損失の値は、中心のコア、その周りの6個のコアについて測定してもほぼ同じ値であった。
【0093】
また、長さ5000m(5.0km)で入射側で中心に光を入射し、中心と外側のコアから出てきた光の強度を測定し、その中心と外側の強度の比からクロストーク量を測定した。その結果、1km当たりのクロストーク量は、波長λが1.31μm、1.55μmにおいて、それぞれ−59dB、−27dBとなり、波長λが1.31μmにおいては、十分に小さなクロストーク量であったが、波長λが1.55μmにおいては、−30dBより大きな値となり、クロストーク量が多いことが分かった。これは、波長λが1.55μmにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)が4.3より小さく、また、上記式1の値が3.95よりも小さな値であることが原因であると考えられる。
【0094】
(比較例3)
実施例1と同様にして、長さが3.0kmのマルチコアファイバを作成した。ただし、このマルチコアファイバは、クラッドの直径を125μmとして、中心に直径が7.2μmのコアを配置すると共に、中心に配置したコアと直径のみが異なる6本のコアを、中心に配置したコアの周りに配置した。このとき、コア同士の中心間距離Λがそれぞれ35.2μmで、中心のコアの周りに配置されたコアの外周とクラッドの外周との最小距離が23.9μmで、それぞれのコアが三角格子状に配置されるようにした。なお、コアの直径をファイバ化する前の母材で確認したところ互いに隣り合う2つのコアにおいて、その2つのコア径の平均に対して、コアの直径の差が0.3%以上、5%未満の差を有していた。また、それぞれのコアには、酸化ゲルマニウム(GeO)が3.9mol%含有した石英を用い、クラッドには、ドーパントを含有しない石英を用いた。このときコアデルタは、0.4%であった。
【0095】
このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおけるモードフィールド径MFDは、8.18μmであり、波長λが1.55μmにおけるモードフィールド径MFDは、9.36μmであった。この値は、7つのすべてのコアで1%以内であり、ほぼ同じであった。従って、このマルチコアファイバは、波長λが1.31μmの場合と1.55μmの場合とにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)は、4.30と3.76となり、波長λが1.31μmの場合は、4.3以上となったが、波長λが1.55μmの場合には、4.3より小さくなった。また、波長λが1.31μm及び1.55μmの信号光において、(中心から最も遠いコアとクラッドの外周との距離)/(モードフィールド径)≧2.5を満たしていた。
【0096】
また、このマルチコアファイバの波長λが1.31μmにおける実効断面積(Aeff)は、52.3μm2であり、波長λが1.55μmにおける実効断面積(Aeff)は、66.3μm2であった。ケーブルカットオフ波長、ゼロ分散波長を測定したところ、それぞれ1.13μm、1338nmであった。また、理論カットオフ波長λcは、1.204μmであった。従って、上述の式1の値は、3.29となり3.95より小さな値となった。また、伝搬損失を測定したところ、波長λが1.31μm、及び、1.55μmにおいて、それぞれ0.85dB/km、0.95dB/kmであった。この損失の値は、中心のコア、その周りの6個のコアについて測定してもほぼ同じ値であった。
【0097】
また、長さ3000m(3.0km)で入射側で中心に光を入射し、中心と外側のコアから出てきた光の強度を測定し、その中心と外側の強度の比からクロストーク量を測定した。その結果、1km当たりのクロストーク量は、波長λが1.31μm、1.55μmにおいて、それぞれ−39dB、−12.5dBとなり、波長λが1.31μmにおいては、十分に小さなクロストーク量であったが、波長λが1.55μmにおいては、−30dBより大きな値となり、クロストーク量が多いことが分かった。これは、波長λが1.55μmにおいて、(中心間距離)/(モードフィールド径)が4.3より小さく、また、上記式1の値が3.95よりも小さな値であることが原因であると考えられる。
【0098】
以上より、本発明にかかるマルチコアファイバによれば、クロストークが少ないため、大容量の長距離光通信を実現できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、大容量の長距離光通信を実現できるマルチコアファイバが提供される。
【符号の説明】
【0100】
10、20、30・・・マルチコアファイバ
11a、11b、11c・・・コア
12・・・クラッド
13・・・内側保護層
14・・・外側保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7個以上のコアと、
それぞれの前記コアの外周を被覆し、断面における形状が円形であるクラッドと、
を備え、
互いに隣り合う前記コアの直径は、互いに異なり、
前記コアは、おのおの使用波長においてシングルモード伝搬をし、
前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差は、1.4%未満とされ、
互いに隣り合う前記コアの中心間距離は、50μm未満とされ、
互いに隣り合うそれぞれの前記コアの中心間距離と各コアの使用波長におけるモードフィールド径の比が、(中心間距離)/(モードフィールド径)≧4.3とされ、
中心から最も遠い前記コアの外周と前記クラッドの外周との距離が、前記コアのモードフィールド径の2.5倍以上ある
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
互いに隣り合う前記コアの直径の差は、互いに隣り合う前記コアの直径の平均における0.3%以上5%未満とされる
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
互いに隣り合う前記コアの直径の差は、互いに隣り合う前記コアの直径の平均における1%以上5%未満とされる
ことを特徴とする請求項2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差は、1.1%未満である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
互いに隣り合う前記コアの比屈折率差の差が、互いに隣り合う前記コアの比屈折率差の平均の1%以上3%未満である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−92801(P2013−92801A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−7370(P2013−7370)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2011−528801(P2011−528801)の分割
【原出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】