マルチコア光ファイバ
【課題】長い範囲の側方照射を実現し、かつ長手方向に所望の光量分布が得られ、しかも簡易な加工で作製でき、機械的な信頼性が高いマルチコア光ファイバを提供する。
【解決手段】マルチコア光ファイバ1Hは、その先端において、その周囲を周回する断面略V字形状の溝部12,13,…が複数形成された先端加工部11を備え、溝部12,13,…は、コア1dに対して略垂直に形成され、複数のコア1dの少なくとも一部が開口する垂直面12a,13a,…と、この第1面に開口したコア1dから出射した光をマルチコア光ファイバ1Hの外側に向けて反射する傾斜面12b,13b,…とを有し、各溝部12,13,…は、複数のコア1dのうち、先端加工部11の後端側において当該溝部に隣接する溝部の垂直面に開口したコア1dよりもマルチコア光ファイバ1Hの中心側に配置されたコア1dの少なくとも一部を開口するように形成されている。
【解決手段】マルチコア光ファイバ1Hは、その先端において、その周囲を周回する断面略V字形状の溝部12,13,…が複数形成された先端加工部11を備え、溝部12,13,…は、コア1dに対して略垂直に形成され、複数のコア1dの少なくとも一部が開口する垂直面12a,13a,…と、この第1面に開口したコア1dから出射した光をマルチコア光ファイバ1Hの外側に向けて反射する傾斜面12b,13b,…とを有し、各溝部12,13,…は、複数のコア1dのうち、先端加工部11の後端側において当該溝部に隣接する溝部の垂直面に開口したコア1dよりもマルチコア光ファイバ1Hの中心側に配置されたコア1dの少なくとも一部を開口するように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍親和性のある光感受性物質を体内に投与した後、腫瘍組織にレーザ光を照射することにより光化学反応を引き起こさせて腫瘍組織を変成・壊死させる光線力学的療法(PDT:Photodynamic Therapy)が、癌などに対しての新しい治療法として注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
PDTでは、光ファイバを用いてレーザ光を導光し、光ファイバの先端からレーザ光を出射させて腫瘍組織に照射している。一般に、腫瘍組織への光の照射には、前方照射タイプの光ファイバが用いられるが、例えば腫瘍組織が狭窄部にあるような場合では、目的の腫瘍組織への照射が困難な場合がある。
【0004】
そこで、光ファイバの側方に光を放射できるように加工した光ファイバが種々提案されている。例えば、単芯(モノコア)の光ファイバの先端部分の側面に散乱体を設け、この散乱体により光を散乱させることで、光ファイバの側方全周方向に照射する技術が知られている。
【0005】
また、モノコアの光ファイバの先端を斜めにカットしてミラー化し、一方向の側方照射を可能とする技術や、モノコアの光ファイバの先端を円錐状に研磨して側方全周照射を可能とする技術も知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2882818号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社精工技研、「各種加工光ファイバ」、[online]、[平成19年4月3日検索]、インターネット<URL:http://www.seikoh-giken.co.jp/business/fiber.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の散乱体を用いた光ファイバでは、別部品である散乱体を取り付けるため、煩雑な加工を要し、また、機械的な信頼性が低くなっていた。
【0009】
また、上述の先端を斜めにカットしてミラー化した光ファイバや、先端を円錐状に研磨した光ファイバでは、モノコアの光ファイバを用いているため、側方照射が短い範囲に制限されていた。さらに、側方照射される光の、光ファイバ長手方向の光量分布を調整できず、所望の光量分布が得られなかった。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、長い範囲の側方照射を実現し、かつ長手方向に所望の光量分布が得られ、しかも簡易な加工で作製でき、機械的な信頼性が高いマルチコア光ファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数のコアと、これら複数のコアを囲む共通のクラッドと、この共通のクラッドの周囲を覆うジャケット管とを有するマルチコア光ファイバであって、当該マルチコア光ファイバの先端において、その周囲を周回する断面略V字形状の溝部が複数形成された先端加工部を備え、前記溝部は、前記コアに対して略垂直に形成され、前記複数のコアの少なくとも一部が開口する第1面と、この第1面に開口した前記コアから出射した光を当該マルチコア光ファイバの外側に向けて反射する第2面とを有し、前記各溝部は、前記複数のコアのうち、前記先端加工部の後端側において当該溝部に隣接する前記溝部の前記第1面に開口したコアよりも当該マルチコア光ファイバの中心側に配置されたコアの少なくとも一部を開口するように形成されている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記コア、前記クラッド、および前記ジャケット管をガラス製とした。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記先端加工部の周囲を覆うように設けられた透明な保護部をさらに備える。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記保護部は、前記先端加工部よりも屈折率が高い材料からなる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記保護部は、前記先端加工部から放射される光を散乱するための散乱体を含む。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記保護部の表面には、前記先端加工部から放射される光を散乱するための加工が施されている。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記先端加工部の先端方向前方に設けられた光を透過しない前方照射防止部をさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、長い範囲の側方照射を実現し、かつ長手方向に所望の光量分布が得られ、しかも簡易な加工で作製でき、機械的な信頼性が高いマルチコア光ファイバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。
【図2】(a)は図1におけるA−A断面図、(b)は図1に示すマルチコア光ファイバにおけるコア配列を示す拡大図である。
【図3】図1に示すマルチコア光ファイバのねじり加工部を形成する方法の一例を示す図である。
【図4】ねじり加工部におけるねじりピッチが変化しているマルチコア光ファイバの一例を示す側面図である。
【図5】(a)はねじり加工部におけるねじりの中心軸が変化しているマルチコア光ファイバの一例を示す側面図、(b)は(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例1に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例2に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。
【図8】(a)は本発明の第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図、(b)は(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図、図2(a)は、図1におけるA−A断面図、図2(b)は、図1に示すマルチコア光ファイバにおけるコア配列を示す拡大図である。
【0022】
図1に示すように本発明の第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1は、その中心軸周りにねじりが加えられたねじり加工部2が先端に形成されている。
【0023】
マルチコア光ファイバ1は、図2(a)に示すように、例えば石英ガラスからなるイメージサークル1aと、このイメージサークル1aの周囲を覆うように設けられた、例えば石英ガラスからなるジャケット管1bと、さらにこのジャケット管1bの周囲を覆うように設けられた樹脂製のコーティング1cとから構成されている。マルチコア光ファイバ1の外径は約0.1mm〜5mm程度である。
【0024】
イメージサークル1aは、図2(b)に示すように、多数のコア1dと、それらを囲む共通のクラッド1eとからなる。この多数のコア1dの1つずつが独立に光を伝送する。
【0025】
ねじり加工部2は、この部分のコーティング1cが取り除かれ、コア1dを含むクラッド1eおよびジャケット管1bが、中心軸周りにねじりが加えられた状態となっているものである。ねじり加工部2において、各コア1dはねじりによりその位置が変位し、長手方向に向かってらせん形状となっている。ねじり加工部2の長さは、例えば10mm程度とすることができる。
【0026】
この発明では、マルチコア光ファイバをねじった際の1回転(360°)する長さを、ねじりピッチとして定義する。ここで、ねじり加工部2のねじりピッチは、10mm/360°〜20mm/360°程度とすることが好ましい。この範囲のねじりピッチとすることによって、多数のコア1dのうちの少なくとも一部において、伝送光を放射モードとしてコア外に放射することができる。
【0027】
ここで、ねじり加工部2を形成する方法の一例について、図3を参照して説明する。図3に示すように、マルチコア光ファイバ1のコーティング1cを部分的に取り除き、ジャケット管1bを露出させる。そして、ねじり加工部2となるこの露出部分を酸水素炎バーナなどの加熱源3で加熱する。そして、加熱により軟化した露出部分に、中心軸C周りにねじりを加えた後、冷却し、露出部分の一端側を切断する。これにより、マルチコア光ファイバ1の先端にねじり加工部2が形成される。
【0028】
図1に示すマルチコア光ファイバ1では、後端側から各コア1dに入射した入射光の少なくとも一部が、ねじり加工部2のらせん形状のコア1dにおいて、伝搬モードから放射モードへと移行し、コア1dの側面からコア外へ放射される。これにより、ねじり加工部2の側面から全周方向に光が放射される。
【0029】
このように第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1によれば、ねじり加工部2において、らせん形状を有するコア1dの側面から、伝送光を放射モードとして放射するので、ねじり加工部2の長手方向の全体にわたって光を放射することができ、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0030】
また、必要な加工がねじり加工のみであるので、加工が容易であり、別部品の接続等がないため、機械的な信頼性が高い。
【0031】
また、ねじり加工部2におけるねじりピッチを、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って変化させることで、長手方向における放射光の光量分布を所望の光量分布とすることができる。
【0032】
例えば、ねじり加工部2におけるねじりピッチを、ねじり開始部分からねじり終了部分まで一定とした場合、ねじり加工部の後端側(光の入射側)において光が多く放射し、先端側に進むにつれて放射光の光量が低下する。このため、先端に進むにつれて光量が減少するような光量分布となる。
【0033】
そこで、ねじり加工部2のねじりピッチを、後端側よりも先端側で小さくすることで、一様な光量分布に近づけることができる。このようなマルチコア光ファイバの一例を図4に示す。図4に示すマルチコア光ファイバ1Aでは、ねじり加工部2Aの先端側のねじりピッチP1を、後端側のねじりピッチP2よりも小さくしている。ねじりピッチが小さい方が、光が放射モードとして放射されやすいため、図4のようにすることで、ねじり加工部2Aからの放射光の光量分布を、長手方向での一様な光量分布に近づけることができる。
【0034】
また、ねじり加工部2におけるねじりピッチを、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って様々に変化させるようにすれば、様々な光量分布を得ることができる。
【0035】
また、ねじり加工部2におけるねじりの中心軸を、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って変化させるようにしてもよい。ねじり加工部2の形成時に、同軸でねじりを加えると、マルチコア光ファイバの中心付近に位置するコアにはほとんどねじりが加わらないことになる。このようにほとんど変形していないコアに入射した伝送光は放射モードにならず、ねじり加工部2の先端から前方に出射されてしまう。
【0036】
そこで、ねじり加工部2の形成時に、ねじりの中心軸を長手方向に沿って変化させながら、つまりせん断的にズレを生じさせながらねじりを加えることで、中心付近のコアも変形させることができる。このようにして形成されたマルチコア光ファイバの一例を図5(a),(b)に示す。図5(a)は、ねじり加工部におけるねじりの中心軸が長手方向に沿って変化しているマルチコア光ファイバの一例を示す側面図、図5(b)は、図5(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。
【0037】
図5(a),(b)に示すマルチコア光ファイバ1Bのねじり加工部2Bでは、ねじりの中心軸が、ねじり加工部2Bの長手方向に沿って変化しており、中心付近のコアにも十分なねじりが加えられている。これにより、中心付近のコアの伝送光も放射モードとすることができ、前方に出射される不要な光を減少することができる。
【0038】
なお、ねじり加工部2,2A,2Bにおいて、ジャケット管1bを除去してもよい。これにより、コア1dから放射された光がジャケット管1bで反射されることを防ぎ、照射効率を向上することができる。
【0039】
また、マルチコア光ファイバ1は、石英系ファイバに限らず、多成分ガラスファイバ、プラスチックファイバなどにより構成してもよい。
【0040】
(変形例1)
図6は、第1の実施の形態の変形例1に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。なお、図6において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6に示すように変形例1に係るマルチコア光ファイバ1Cは、図1に示したマルチコア光ファイバ1に対し、ねじり加工部2の周囲にコーティングされた保護部4と、ねじり加工部2の先端方向前方に設けられた前方照射防止部5とを追加した構成である。
【0042】
保護部4には、ねじり加工部2から放射される光を透過するように、使用波長において透明な材料を用いる。また、ねじり加工部2から放射される光が保護部4で反射されることを防止するため、保護部4には、ねじり加工部2においてジャケット管1b、コア1d、クラッド1eを構成する材料(例えば石英ガラス)よりも屈折率が高い材料を用いる。このような材料として、保護部4には、例えば高屈折率のシリコーン、エポキシ等の樹脂が用いられる。
【0043】
また、ねじり加工部2から放射される光の散乱を良くするために、保護部4に散乱体を混入させてもよいし、保護部4の表面に凹凸をつける加工を施してもよい。
【0044】
前方照射防止部5は、ねじり加工部2の先端面2aから出射される光が前方に照射されることを防止するものであり、使用波長において不透明な樹脂、ミラー、光学薄膜等により構成される。
【0045】
このようにすることで、ねじり加工部2の損傷を防ぐとともに、不要な場所に光を照射することを防ぐことができる。
【0046】
(変形例2)
図7は、第1の実施の形態の変形例2に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。なお、図7において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図7に示すように変形例2に係るマルチコア光ファイバ1Dは、図1に示したマルチコア光ファイバ1に対し、ねじり加工部2を収納するパイプ材からなる保護部6と、ねじり加工部2の先端面2aに対向して保護部6の先端に設けられた前方照射防止部7とを追加した構成である。
【0048】
保護部6には、上記変形例1の保護部4と同様に、使用波長において透明で、かつねじり加工部2よりも屈折率が高い材料(例えば、高屈折率のシリコーン、エポキシ等の樹脂)を用い、散乱体を混入させてもよいし、表面に凹凸をつける加工を施してもよい。
【0049】
前方照射防止部7は、上記変形例1の前方照射防止部5と同様の機能を有するものであり、使用波長において不透明な樹脂、ミラー、光学薄膜等により構成される。
【0050】
このようにしても、上記変形例1と同様の効果が得られる。
【0051】
なお、変形例1,2においても、ねじり加工部2のジャケット管1bを除去してもよいし、ねじり加工部2におけるねじりピッチ、およびねじりの中心軸を、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って変化させるようにしてもよい。
【0052】
(第2の実施の形態)
図8(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図、図8(b)は、図8(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。なお、図8(a),(b)において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図8(a),(b)に示すように本発明の第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Eは、その中心軸周りにねじりが加えられ、かつ先端側に進むにつれて外径が小さくなる円錐形状を有するねじり加工部8が先端に形成されている。
【0054】
ねじり加工部8は、上記第1の実施の形態で図3を参照して説明した方法によりねじりが加えられた先端部分を、円錐形状に研削し、その側面(テーパ面)をエッチング等により研磨することにより形成される。
【0055】
ねじり加工部8においては、各コア1dはねじりによりその位置が変位し、長手方向に向かうらせん形状を有するとともに、ねじり加工部8の側面に開口しており、ねじり加工部8の後端側(光の入射側)から先端側に進むにつれて、外周側のコア1dから内周側のコア1dへ順に開口している。
【0056】
ねじり加工部8におけるねじりピッチは、例えば、10mm/360°〜0.001mm/360°程度とすればよい。これにより、ねじり加工部8の側面にコア1dを開口することができる。
【0057】
図8に示すマルチコア光ファイバ1Eでは、後端側から各コア1dに入射した入射光が、ねじり加工部8の側面における各コア1dの開口面から出射する。ねじられた各コア1dは外周方向を向いて開口しているため、ねじり加工部8の側面から光が渦巻状に放射される。
【0058】
このように第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Eによれば、ねじり加工部8の側面に開口した各コア1dの開口面から光を出射するので、ねじり加工部8の長手方向の全体にわたって光を放射することができ、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0059】
また、ねじり加工部8におけるねじりピッチを、マルチコア光ファイバ1Eの長手方向に沿って変化させてもよい。これにより、第1の実施の形態と同様に、長手方向における放射光の光量分布を所望の光量分布とすることができる。
【0060】
また、ねじり加工部8におけるねじりの中心軸を、マルチコア光ファイバ1Eの長手方向に沿って変化させるようにしてもよい。第1の実施の形態と同様に、ねじり加工部8の形成時に、ねじりの中心軸をマルチコア光ファイバ1Eの長手方向に沿って変化させながらねじりを加え、中心付近のコアも変形させることで、ほとんど変形していないコアにより前方に出射される不要な光を減少することができる。
【0061】
(変形例)
図9は、第2の実施の形態の変形例に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。なお、図9において、図8に示したマルチコア光ファイバ1E、および図7に示したマルチコア光ファイバ1Dと同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図9に示すように本変形例に係るマルチコア光ファイバ1Fは、図8に示したマルチコア光ファイバ1Eに対し、図7に示したマルチコア光ファイバ1Dと同様に、保護部6と前方照射防止部7とを設けた構成である。
【0063】
このようにすることで、ねじり加工部8の損傷を防ぐとともに、不要な場所に光を照射することを防ぐことができる。
【0064】
なお、図6に示したマルチコア光ファイバ1Cと同様に、使用波長において透明な樹脂等によりねじり加工部8をコーティングすることでねじり加工部8を保護するようにしてもよい。
【0065】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。なお、図10において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図10に示すように本発明の第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Gは、その先端側に進むにつれて外径が小さくなる円錐形状を有する先端加工部10が形成されている。
【0067】
先端加工部10は、マルチコア光ファイバの先端部分を円錐形状に研削し、その側面(テーパ面)をエッチング等により研磨することにより形成される。このようにして形成された先端加工部10を有するマルチコア光ファイバ1Gにおいては、各コア1dが先端加工部10の側面(テーパ面)に開口しており、先端加工部10の後端側(光の入射側)から先端側に進むにつれて、外周側のコア1dから内周側のコア1dへ順に開口している。
【0068】
先端加工部10の先端角θは、先端加工部10の側面(テーパ面)で反射されるコア1dの伝送光が、コア1dの長手方向に略垂直な方向に反射されるように、80〜90度であることが好ましい。
【0069】
図10に示すマルチコア光ファイバ1Gでは、後端側から各コア1dに入射した入射光が、先端加工部10の側面によって、コア1dの長手方向に略垂直で、マルチコア光ファイバ1Gの中心に向かう方向に反射される。これにより、先端加工部10から全周方向に光が放射される。
【0070】
このように第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Gによれば、先端加工部10の側面に開口した各コア1dの伝送光を、先端加工部10の側面によって反射することで、先端加工部10の長手方向の全体にわたって光を放射することができ、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0071】
なお、図9に示したマルチコア光ファイバ1Fと同様に、保護部6と前方照射防止部7とを設けて先端加工部10を保護するようにしてもよい。また、図6に示したマルチコア光ファイバ1Cと同様に、使用波長において透明な樹脂等により先端加工部10をコーティングすることで先端加工部10を保護するようにしてもよい。
【0072】
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。なお、図11において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図11に示すように本発明の第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Hは、その先端において、複数の断面略V字形状の溝部12,13,…を有する先端加工部11が形成されている。
【0074】
各溝部12,13,…は、先端加工部11の周囲を周回して形成され、マルチコア光ファイバ1Hの長手方向に対して略垂直に形成された垂直面12a,13a,…と、垂直面12a,13a,…に対して略45度に傾斜した傾斜面12b,13b,…とを有する。
【0075】
先端加工部11の後端に形成された溝部12の垂直面12aには、外周側に位置するコア1dが開口しており、溝部12に隣接する溝部13の垂直面13aには、垂直面12aに開口したコア1dよりも内周側のコア1dが開口している。同様に、溝部13に隣接する溝部14の垂直面14aには、垂直面13aに開口したコア1dよりも内周側のコア1dが開口し、溝部14に隣接する溝部15の垂直面15aには、垂直面14aに開口したコア1dよりも内周側のコア1dが開口している。このように、先端加工部11の先端側に向かうにつれて、外周側のコア1dから内周側のコア1dへ順に開口している。
【0076】
先端加工部11の先端部分は円錐形状に研削されている。先端加工部10の先端角θは、上記第3の実施の形態と同様に、80〜90度であることが好ましい。
【0077】
図11に示すマルチコア光ファイバ1Hでは、垂直面12a,13a,…に開口する各コア1dに後端側から入射した入射光が、垂直面12a,13a,…から出射する。そして、垂直面12a,13a,…から出射した光は、傾斜面12b,13b,…により、コア1dの長手方向に略垂直で、マルチコア光ファイバ1Hの外側に向かう方向に反射される。
【0078】
また、マルチコア光ファイバ1Hの中心付近に位置するコア1dに入射した光は、先端加工部11の先端部分のテーパ面16によって、コア1dの長手方向に略垂直で、マルチコア光ファイバ1Hの中心に向かう方向に反射される。
【0079】
このように第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Hによれば、先端加工部11に形成された複数の溝部12,13,…の傾斜面12b,13b,…、およびテーパ面16によって、各コア1dの伝送光をマルチコア光ファイバ1Hの外側に向けて反射することで、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0080】
なお、上記説明では先端加工部11に溝部が4つ形成されている場合について説明したが、溝部の数はこれに限らない。
【0081】
また、図9に示したマルチコア光ファイバ1Fと同様に、保護部6と前方照射防止部7とを設けて先端加工部11を保護するようにしてもよい。また、図6に示したマルチコア光ファイバ1Cと同様に、使用波長において透明な樹脂等により先端加工部11をコーティングすることで先端加工部11を保護するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A〜1H マルチコア光ファイバ
2,2A,2B,8 ねじり加工部
4,6 保護部
5,7 前方照射防止部
10,11 先端加工部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍親和性のある光感受性物質を体内に投与した後、腫瘍組織にレーザ光を照射することにより光化学反応を引き起こさせて腫瘍組織を変成・壊死させる光線力学的療法(PDT:Photodynamic Therapy)が、癌などに対しての新しい治療法として注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
PDTでは、光ファイバを用いてレーザ光を導光し、光ファイバの先端からレーザ光を出射させて腫瘍組織に照射している。一般に、腫瘍組織への光の照射には、前方照射タイプの光ファイバが用いられるが、例えば腫瘍組織が狭窄部にあるような場合では、目的の腫瘍組織への照射が困難な場合がある。
【0004】
そこで、光ファイバの側方に光を放射できるように加工した光ファイバが種々提案されている。例えば、単芯(モノコア)の光ファイバの先端部分の側面に散乱体を設け、この散乱体により光を散乱させることで、光ファイバの側方全周方向に照射する技術が知られている。
【0005】
また、モノコアの光ファイバの先端を斜めにカットしてミラー化し、一方向の側方照射を可能とする技術や、モノコアの光ファイバの先端を円錐状に研磨して側方全周照射を可能とする技術も知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2882818号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社精工技研、「各種加工光ファイバ」、[online]、[平成19年4月3日検索]、インターネット<URL:http://www.seikoh-giken.co.jp/business/fiber.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の散乱体を用いた光ファイバでは、別部品である散乱体を取り付けるため、煩雑な加工を要し、また、機械的な信頼性が低くなっていた。
【0009】
また、上述の先端を斜めにカットしてミラー化した光ファイバや、先端を円錐状に研磨した光ファイバでは、モノコアの光ファイバを用いているため、側方照射が短い範囲に制限されていた。さらに、側方照射される光の、光ファイバ長手方向の光量分布を調整できず、所望の光量分布が得られなかった。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、長い範囲の側方照射を実現し、かつ長手方向に所望の光量分布が得られ、しかも簡易な加工で作製でき、機械的な信頼性が高いマルチコア光ファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数のコアと、これら複数のコアを囲む共通のクラッドと、この共通のクラッドの周囲を覆うジャケット管とを有するマルチコア光ファイバであって、当該マルチコア光ファイバの先端において、その周囲を周回する断面略V字形状の溝部が複数形成された先端加工部を備え、前記溝部は、前記コアに対して略垂直に形成され、前記複数のコアの少なくとも一部が開口する第1面と、この第1面に開口した前記コアから出射した光を当該マルチコア光ファイバの外側に向けて反射する第2面とを有し、前記各溝部は、前記複数のコアのうち、前記先端加工部の後端側において当該溝部に隣接する前記溝部の前記第1面に開口したコアよりも当該マルチコア光ファイバの中心側に配置されたコアの少なくとも一部を開口するように形成されている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記コア、前記クラッド、および前記ジャケット管をガラス製とした。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記先端加工部の周囲を覆うように設けられた透明な保護部をさらに備える。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記保護部は、前記先端加工部よりも屈折率が高い材料からなる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記保護部は、前記先端加工部から放射される光を散乱するための散乱体を含む。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記保護部の表面には、前記先端加工部から放射される光を散乱するための加工が施されている。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバにおいて、前記先端加工部の先端方向前方に設けられた光を透過しない前方照射防止部をさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、長い範囲の側方照射を実現し、かつ長手方向に所望の光量分布が得られ、しかも簡易な加工で作製でき、機械的な信頼性が高いマルチコア光ファイバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。
【図2】(a)は図1におけるA−A断面図、(b)は図1に示すマルチコア光ファイバにおけるコア配列を示す拡大図である。
【図3】図1に示すマルチコア光ファイバのねじり加工部を形成する方法の一例を示す図である。
【図4】ねじり加工部におけるねじりピッチが変化しているマルチコア光ファイバの一例を示す側面図である。
【図5】(a)はねじり加工部におけるねじりの中心軸が変化しているマルチコア光ファイバの一例を示す側面図、(b)は(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例1に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例2に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。
【図8】(a)は本発明の第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図、(b)は(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図、図2(a)は、図1におけるA−A断面図、図2(b)は、図1に示すマルチコア光ファイバにおけるコア配列を示す拡大図である。
【0022】
図1に示すように本発明の第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1は、その中心軸周りにねじりが加えられたねじり加工部2が先端に形成されている。
【0023】
マルチコア光ファイバ1は、図2(a)に示すように、例えば石英ガラスからなるイメージサークル1aと、このイメージサークル1aの周囲を覆うように設けられた、例えば石英ガラスからなるジャケット管1bと、さらにこのジャケット管1bの周囲を覆うように設けられた樹脂製のコーティング1cとから構成されている。マルチコア光ファイバ1の外径は約0.1mm〜5mm程度である。
【0024】
イメージサークル1aは、図2(b)に示すように、多数のコア1dと、それらを囲む共通のクラッド1eとからなる。この多数のコア1dの1つずつが独立に光を伝送する。
【0025】
ねじり加工部2は、この部分のコーティング1cが取り除かれ、コア1dを含むクラッド1eおよびジャケット管1bが、中心軸周りにねじりが加えられた状態となっているものである。ねじり加工部2において、各コア1dはねじりによりその位置が変位し、長手方向に向かってらせん形状となっている。ねじり加工部2の長さは、例えば10mm程度とすることができる。
【0026】
この発明では、マルチコア光ファイバをねじった際の1回転(360°)する長さを、ねじりピッチとして定義する。ここで、ねじり加工部2のねじりピッチは、10mm/360°〜20mm/360°程度とすることが好ましい。この範囲のねじりピッチとすることによって、多数のコア1dのうちの少なくとも一部において、伝送光を放射モードとしてコア外に放射することができる。
【0027】
ここで、ねじり加工部2を形成する方法の一例について、図3を参照して説明する。図3に示すように、マルチコア光ファイバ1のコーティング1cを部分的に取り除き、ジャケット管1bを露出させる。そして、ねじり加工部2となるこの露出部分を酸水素炎バーナなどの加熱源3で加熱する。そして、加熱により軟化した露出部分に、中心軸C周りにねじりを加えた後、冷却し、露出部分の一端側を切断する。これにより、マルチコア光ファイバ1の先端にねじり加工部2が形成される。
【0028】
図1に示すマルチコア光ファイバ1では、後端側から各コア1dに入射した入射光の少なくとも一部が、ねじり加工部2のらせん形状のコア1dにおいて、伝搬モードから放射モードへと移行し、コア1dの側面からコア外へ放射される。これにより、ねじり加工部2の側面から全周方向に光が放射される。
【0029】
このように第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1によれば、ねじり加工部2において、らせん形状を有するコア1dの側面から、伝送光を放射モードとして放射するので、ねじり加工部2の長手方向の全体にわたって光を放射することができ、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0030】
また、必要な加工がねじり加工のみであるので、加工が容易であり、別部品の接続等がないため、機械的な信頼性が高い。
【0031】
また、ねじり加工部2におけるねじりピッチを、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って変化させることで、長手方向における放射光の光量分布を所望の光量分布とすることができる。
【0032】
例えば、ねじり加工部2におけるねじりピッチを、ねじり開始部分からねじり終了部分まで一定とした場合、ねじり加工部の後端側(光の入射側)において光が多く放射し、先端側に進むにつれて放射光の光量が低下する。このため、先端に進むにつれて光量が減少するような光量分布となる。
【0033】
そこで、ねじり加工部2のねじりピッチを、後端側よりも先端側で小さくすることで、一様な光量分布に近づけることができる。このようなマルチコア光ファイバの一例を図4に示す。図4に示すマルチコア光ファイバ1Aでは、ねじり加工部2Aの先端側のねじりピッチP1を、後端側のねじりピッチP2よりも小さくしている。ねじりピッチが小さい方が、光が放射モードとして放射されやすいため、図4のようにすることで、ねじり加工部2Aからの放射光の光量分布を、長手方向での一様な光量分布に近づけることができる。
【0034】
また、ねじり加工部2におけるねじりピッチを、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って様々に変化させるようにすれば、様々な光量分布を得ることができる。
【0035】
また、ねじり加工部2におけるねじりの中心軸を、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って変化させるようにしてもよい。ねじり加工部2の形成時に、同軸でねじりを加えると、マルチコア光ファイバの中心付近に位置するコアにはほとんどねじりが加わらないことになる。このようにほとんど変形していないコアに入射した伝送光は放射モードにならず、ねじり加工部2の先端から前方に出射されてしまう。
【0036】
そこで、ねじり加工部2の形成時に、ねじりの中心軸を長手方向に沿って変化させながら、つまりせん断的にズレを生じさせながらねじりを加えることで、中心付近のコアも変形させることができる。このようにして形成されたマルチコア光ファイバの一例を図5(a),(b)に示す。図5(a)は、ねじり加工部におけるねじりの中心軸が長手方向に沿って変化しているマルチコア光ファイバの一例を示す側面図、図5(b)は、図5(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。
【0037】
図5(a),(b)に示すマルチコア光ファイバ1Bのねじり加工部2Bでは、ねじりの中心軸が、ねじり加工部2Bの長手方向に沿って変化しており、中心付近のコアにも十分なねじりが加えられている。これにより、中心付近のコアの伝送光も放射モードとすることができ、前方に出射される不要な光を減少することができる。
【0038】
なお、ねじり加工部2,2A,2Bにおいて、ジャケット管1bを除去してもよい。これにより、コア1dから放射された光がジャケット管1bで反射されることを防ぎ、照射効率を向上することができる。
【0039】
また、マルチコア光ファイバ1は、石英系ファイバに限らず、多成分ガラスファイバ、プラスチックファイバなどにより構成してもよい。
【0040】
(変形例1)
図6は、第1の実施の形態の変形例1に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。なお、図6において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6に示すように変形例1に係るマルチコア光ファイバ1Cは、図1に示したマルチコア光ファイバ1に対し、ねじり加工部2の周囲にコーティングされた保護部4と、ねじり加工部2の先端方向前方に設けられた前方照射防止部5とを追加した構成である。
【0042】
保護部4には、ねじり加工部2から放射される光を透過するように、使用波長において透明な材料を用いる。また、ねじり加工部2から放射される光が保護部4で反射されることを防止するため、保護部4には、ねじり加工部2においてジャケット管1b、コア1d、クラッド1eを構成する材料(例えば石英ガラス)よりも屈折率が高い材料を用いる。このような材料として、保護部4には、例えば高屈折率のシリコーン、エポキシ等の樹脂が用いられる。
【0043】
また、ねじり加工部2から放射される光の散乱を良くするために、保護部4に散乱体を混入させてもよいし、保護部4の表面に凹凸をつける加工を施してもよい。
【0044】
前方照射防止部5は、ねじり加工部2の先端面2aから出射される光が前方に照射されることを防止するものであり、使用波長において不透明な樹脂、ミラー、光学薄膜等により構成される。
【0045】
このようにすることで、ねじり加工部2の損傷を防ぐとともに、不要な場所に光を照射することを防ぐことができる。
【0046】
(変形例2)
図7は、第1の実施の形態の変形例2に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。なお、図7において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図7に示すように変形例2に係るマルチコア光ファイバ1Dは、図1に示したマルチコア光ファイバ1に対し、ねじり加工部2を収納するパイプ材からなる保護部6と、ねじり加工部2の先端面2aに対向して保護部6の先端に設けられた前方照射防止部7とを追加した構成である。
【0048】
保護部6には、上記変形例1の保護部4と同様に、使用波長において透明で、かつねじり加工部2よりも屈折率が高い材料(例えば、高屈折率のシリコーン、エポキシ等の樹脂)を用い、散乱体を混入させてもよいし、表面に凹凸をつける加工を施してもよい。
【0049】
前方照射防止部7は、上記変形例1の前方照射防止部5と同様の機能を有するものであり、使用波長において不透明な樹脂、ミラー、光学薄膜等により構成される。
【0050】
このようにしても、上記変形例1と同様の効果が得られる。
【0051】
なお、変形例1,2においても、ねじり加工部2のジャケット管1bを除去してもよいし、ねじり加工部2におけるねじりピッチ、およびねじりの中心軸を、マルチコア光ファイバの長手方向に沿って変化させるようにしてもよい。
【0052】
(第2の実施の形態)
図8(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図、図8(b)は、図8(a)に示すマルチコア光ファイバを先端側から見た図である。なお、図8(a),(b)において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図8(a),(b)に示すように本発明の第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Eは、その中心軸周りにねじりが加えられ、かつ先端側に進むにつれて外径が小さくなる円錐形状を有するねじり加工部8が先端に形成されている。
【0054】
ねじり加工部8は、上記第1の実施の形態で図3を参照して説明した方法によりねじりが加えられた先端部分を、円錐形状に研削し、その側面(テーパ面)をエッチング等により研磨することにより形成される。
【0055】
ねじり加工部8においては、各コア1dはねじりによりその位置が変位し、長手方向に向かうらせん形状を有するとともに、ねじり加工部8の側面に開口しており、ねじり加工部8の後端側(光の入射側)から先端側に進むにつれて、外周側のコア1dから内周側のコア1dへ順に開口している。
【0056】
ねじり加工部8におけるねじりピッチは、例えば、10mm/360°〜0.001mm/360°程度とすればよい。これにより、ねじり加工部8の側面にコア1dを開口することができる。
【0057】
図8に示すマルチコア光ファイバ1Eでは、後端側から各コア1dに入射した入射光が、ねじり加工部8の側面における各コア1dの開口面から出射する。ねじられた各コア1dは外周方向を向いて開口しているため、ねじり加工部8の側面から光が渦巻状に放射される。
【0058】
このように第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Eによれば、ねじり加工部8の側面に開口した各コア1dの開口面から光を出射するので、ねじり加工部8の長手方向の全体にわたって光を放射することができ、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0059】
また、ねじり加工部8におけるねじりピッチを、マルチコア光ファイバ1Eの長手方向に沿って変化させてもよい。これにより、第1の実施の形態と同様に、長手方向における放射光の光量分布を所望の光量分布とすることができる。
【0060】
また、ねじり加工部8におけるねじりの中心軸を、マルチコア光ファイバ1Eの長手方向に沿って変化させるようにしてもよい。第1の実施の形態と同様に、ねじり加工部8の形成時に、ねじりの中心軸をマルチコア光ファイバ1Eの長手方向に沿って変化させながらねじりを加え、中心付近のコアも変形させることで、ほとんど変形していないコアにより前方に出射される不要な光を減少することができる。
【0061】
(変形例)
図9は、第2の実施の形態の変形例に係るマルチコア光ファイバを示す一部断面側面図である。なお、図9において、図8に示したマルチコア光ファイバ1E、および図7に示したマルチコア光ファイバ1Dと同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図9に示すように本変形例に係るマルチコア光ファイバ1Fは、図8に示したマルチコア光ファイバ1Eに対し、図7に示したマルチコア光ファイバ1Dと同様に、保護部6と前方照射防止部7とを設けた構成である。
【0063】
このようにすることで、ねじり加工部8の損傷を防ぐとともに、不要な場所に光を照射することを防ぐことができる。
【0064】
なお、図6に示したマルチコア光ファイバ1Cと同様に、使用波長において透明な樹脂等によりねじり加工部8をコーティングすることでねじり加工部8を保護するようにしてもよい。
【0065】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。なお、図10において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図10に示すように本発明の第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Gは、その先端側に進むにつれて外径が小さくなる円錐形状を有する先端加工部10が形成されている。
【0067】
先端加工部10は、マルチコア光ファイバの先端部分を円錐形状に研削し、その側面(テーパ面)をエッチング等により研磨することにより形成される。このようにして形成された先端加工部10を有するマルチコア光ファイバ1Gにおいては、各コア1dが先端加工部10の側面(テーパ面)に開口しており、先端加工部10の後端側(光の入射側)から先端側に進むにつれて、外周側のコア1dから内周側のコア1dへ順に開口している。
【0068】
先端加工部10の先端角θは、先端加工部10の側面(テーパ面)で反射されるコア1dの伝送光が、コア1dの長手方向に略垂直な方向に反射されるように、80〜90度であることが好ましい。
【0069】
図10に示すマルチコア光ファイバ1Gでは、後端側から各コア1dに入射した入射光が、先端加工部10の側面によって、コア1dの長手方向に略垂直で、マルチコア光ファイバ1Gの中心に向かう方向に反射される。これにより、先端加工部10から全周方向に光が放射される。
【0070】
このように第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Gによれば、先端加工部10の側面に開口した各コア1dの伝送光を、先端加工部10の側面によって反射することで、先端加工部10の長手方向の全体にわたって光を放射することができ、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0071】
なお、図9に示したマルチコア光ファイバ1Fと同様に、保護部6と前方照射防止部7とを設けて先端加工部10を保護するようにしてもよい。また、図6に示したマルチコア光ファイバ1Cと同様に、使用波長において透明な樹脂等により先端加工部10をコーティングすることで先端加工部10を保護するようにしてもよい。
【0072】
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバを示す側面図である。なお、図11において、図1に示したマルチコア光ファイバ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図11に示すように本発明の第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Hは、その先端において、複数の断面略V字形状の溝部12,13,…を有する先端加工部11が形成されている。
【0074】
各溝部12,13,…は、先端加工部11の周囲を周回して形成され、マルチコア光ファイバ1Hの長手方向に対して略垂直に形成された垂直面12a,13a,…と、垂直面12a,13a,…に対して略45度に傾斜した傾斜面12b,13b,…とを有する。
【0075】
先端加工部11の後端に形成された溝部12の垂直面12aには、外周側に位置するコア1dが開口しており、溝部12に隣接する溝部13の垂直面13aには、垂直面12aに開口したコア1dよりも内周側のコア1dが開口している。同様に、溝部13に隣接する溝部14の垂直面14aには、垂直面13aに開口したコア1dよりも内周側のコア1dが開口し、溝部14に隣接する溝部15の垂直面15aには、垂直面14aに開口したコア1dよりも内周側のコア1dが開口している。このように、先端加工部11の先端側に向かうにつれて、外周側のコア1dから内周側のコア1dへ順に開口している。
【0076】
先端加工部11の先端部分は円錐形状に研削されている。先端加工部10の先端角θは、上記第3の実施の形態と同様に、80〜90度であることが好ましい。
【0077】
図11に示すマルチコア光ファイバ1Hでは、垂直面12a,13a,…に開口する各コア1dに後端側から入射した入射光が、垂直面12a,13a,…から出射する。そして、垂直面12a,13a,…から出射した光は、傾斜面12b,13b,…により、コア1dの長手方向に略垂直で、マルチコア光ファイバ1Hの外側に向かう方向に反射される。
【0078】
また、マルチコア光ファイバ1Hの中心付近に位置するコア1dに入射した光は、先端加工部11の先端部分のテーパ面16によって、コア1dの長手方向に略垂直で、マルチコア光ファイバ1Hの中心に向かう方向に反射される。
【0079】
このように第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ1Hによれば、先端加工部11に形成された複数の溝部12,13,…の傾斜面12b,13b,…、およびテーパ面16によって、各コア1dの伝送光をマルチコア光ファイバ1Hの外側に向けて反射することで、長い範囲の側方照射を実現できる。
【0080】
なお、上記説明では先端加工部11に溝部が4つ形成されている場合について説明したが、溝部の数はこれに限らない。
【0081】
また、図9に示したマルチコア光ファイバ1Fと同様に、保護部6と前方照射防止部7とを設けて先端加工部11を保護するようにしてもよい。また、図6に示したマルチコア光ファイバ1Cと同様に、使用波長において透明な樹脂等により先端加工部11をコーティングすることで先端加工部11を保護するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A〜1H マルチコア光ファイバ
2,2A,2B,8 ねじり加工部
4,6 保護部
5,7 前方照射防止部
10,11 先端加工部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアと、これら複数のコアを囲む共通のクラッドと、この共通のクラッドの周囲を覆うジャケット管とを有するマルチコア光ファイバであって、
当該マルチコア光ファイバの先端において、その周囲を周回する断面略V字形状の溝部が複数形成された先端加工部を備え、
前記溝部は、前記コアに対して略垂直に形成され、前記複数のコアの少なくとも一部が開口する第1面と、この第1面に開口した前記コアから出射した光を当該マルチコア光ファイバの外側に向けて反射する第2面とを有し、
前記各溝部は、前記複数のコアのうち、前記先端加工部の後端側において当該溝部に隣接する前記溝部の前記第1面に開口したコアよりも当該マルチコア光ファイバの中心側に配置されたコアの少なくとも一部を開口するように形成されているマルチコア光ファイバ。
【請求項2】
前記コア、前記クラッド、および前記ジャケット管をガラス製とした請求項1に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項3】
前記先端加工部の周囲を覆うように設けられた透明な保護部をさらに備える請求項1または2に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項4】
前記保護部は、前記先端加工部よりも屈折率が高い材料からなる請求項3に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項5】
前記保護部は、前記先端加工部から放射される光を散乱するための散乱体を含む請求項3または4に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項6】
前記保護部の表面には、前記先端加工部から放射される光を散乱するための加工が施されている請求項3乃至5のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項7】
前記先端加工部の先端方向前方に設けられた光を透過しない前方照射防止部をさらに備える請求項3乃至6のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項1】
複数のコアと、これら複数のコアを囲む共通のクラッドと、この共通のクラッドの周囲を覆うジャケット管とを有するマルチコア光ファイバであって、
当該マルチコア光ファイバの先端において、その周囲を周回する断面略V字形状の溝部が複数形成された先端加工部を備え、
前記溝部は、前記コアに対して略垂直に形成され、前記複数のコアの少なくとも一部が開口する第1面と、この第1面に開口した前記コアから出射した光を当該マルチコア光ファイバの外側に向けて反射する第2面とを有し、
前記各溝部は、前記複数のコアのうち、前記先端加工部の後端側において当該溝部に隣接する前記溝部の前記第1面に開口したコアよりも当該マルチコア光ファイバの中心側に配置されたコアの少なくとも一部を開口するように形成されているマルチコア光ファイバ。
【請求項2】
前記コア、前記クラッド、および前記ジャケット管をガラス製とした請求項1に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項3】
前記先端加工部の周囲を覆うように設けられた透明な保護部をさらに備える請求項1または2に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項4】
前記保護部は、前記先端加工部よりも屈折率が高い材料からなる請求項3に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項5】
前記保護部は、前記先端加工部から放射される光を散乱するための散乱体を含む請求項3または4に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項6】
前記保護部の表面には、前記先端加工部から放射される光を散乱するための加工が施されている請求項3乃至5のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項7】
前記先端加工部の先端方向前方に設けられた光を透過しない前方照射防止部をさらに備える請求項3乃至6のいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−118560(P2012−118560A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10015(P2012−10015)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2007−304959(P2007−304959)の分割
【原出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2007−304959(P2007−304959)の分割
【原出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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