説明

マルチコート塗装系、その形成方法および該塗装系の使用

本発明は、それぞれ式(I)または式(II)による少なくとも1つのスルホン酸化合物を含有する、高い固体含量を有する下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜を含むマルチコート塗装系に関する。更に、本発明は、前記のマルチコート塗装系の形成方法および該マルチコート塗装系の使用ならびにマルチコート塗装系で被覆された基質に関する。更に、本発明は、高い固体含量を有する下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜中での式(I)および式(II)によるスルホン酸化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マルチコート塗装系、その形成方法、該塗装系の使用ならびにこのマルチコート塗装系で被覆されている基体に関する。
【0002】
技術水準
久しく公知の溶剤含有塗料、殊にいわゆる下塗り塗料およびクリヤラッカー、およびこれらで形成された単層または多層の色を付与する、および/または効果を付与する塗膜は、極めて良好な使用技術的性質を有する。
【0003】
しかし、絶えず成長する、市場の技術的および審美的な要求、殊に自動車製造業者およびその顧客の要求は、これまでに達成された技術的および審美的な水準の不断のさらなる開発を必要とする。
【0004】
殊に、焼付けの際に、とりわけ過剰の焼付け条件下で黄変傾向を全く有しないかまたは僅かな黄変傾向だけを有するマルチコート塗装系を形成することを可能にする新規の塗料が提供されなければならない。しかし、この場合には、公知の下塗り塗料およびクリヤラッカー、およびこれらから形成されるマルチコート塗装系によって達成される利点は、失われずに、少なくとも均一の、特に強い特性が得られたままであることにある。
【0005】
下塗り塗料およびクリヤラッカーからなるマルチコート塗装系は、自動車産業において幅広く拡大されている。このマルチコート塗装系は、その優れた特性プロフィール、例えば耐引掻性、耐化学薬品性および耐候性ならびに高い光沢のために使用されている。更に、環境保護の理由から、常に低い溶剤含量、ひいては常に高い固体含量を有する塗料が提供されなければならない(いわゆるハイソリッド、略してHS)。
【0006】
揮発性の有機成分(VOC)のための範囲を維持しかつ顧客によって要求される高い耐引掻性を有するハイソリッドのクリヤラッカーは、主にカルバメート含有結合剤系をベースとし、このカルバメート含有結合剤系は、モノマーの架橋性樹脂、例えばヘキサ(メトキシメチル)メラミン(HMMM)または混合エステル化メラミンおよび重合された結合剤との組合せで緻密な網目模様を形成する。揮発性の有機成分とは、溶剤ならびに被膜形成反応からの揮発性の分解生成物を生じる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag Stuttgart/New York 1998,ISBN 3−13−776001−1,第612頁,見出し語"Volantile organic Compounds"(VOC)参照)。
【0007】
マルチコート塗装系中の下塗り塗料は、通常、結合剤および架橋剤を含有する。結合剤は、しばしばポリマーの網目模様上にヒドロキシ官能基を有する。架橋剤として、通常、モノマーの架橋性樹脂、例えばヘキサ(メトキシメチル)メラミン(HMMM)または混合エーテル化メラミンが使用される。
【0008】
架橋剤としてのモノマーのメラミン樹脂を有する下塗り塗料およびクリヤラッカーは、付加的に強酸触媒を含有し、それによってモノマー単位の架橋は、保証される。この場合、酸性触媒として、芳香族スルホン酸(例えば、パラトルエンスルホン酸pTSA、ジノニルナフタレン−スルホン酸DNNSA、ドデシルベンゼンスルホン酸DDBNS)、フェニル燐酸、ブチルリン酸エステルおよびヒドロキシリン酸エステルが使用される。酸性触媒は、主にアミン基でブロック化され、それによって塗料系の安定性および貯蔵性は、保証される。通常、第三級アルキル化またはヘテロ環式化アミン、例えば2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン、ジメチルオキサゾリジン、トリメチルアミン等が使用される。この場合アミンは、酸性触媒と共に複合体を形成し、それによって結合剤とメラミンとの想起の反応は、阻止される。多層系を焼き付ける際に、アミン複合体は、解離し、それによって触媒の酸官能基が放出され、プロトン供与体としてメラミン結合剤反応は、促進される。
【0009】
マルチコート塗装系は、顔料が含有された下塗り塗料を最初に適用し、次に短い排気時間後に焼付け工程なしに(ウェット・オン・ウェット塗布法)クリヤラッカーを下塗り塗料上に適用し、引続き下塗り塗料およびクリヤラッカーを一緒にして焼き付けることによって形成される。
【0010】
新しい種類の3ウェット塗装法において、下塗り塗料は、プライマー代用品として塗布される。短い排気時間後、顔料が含有された下塗り塗料がその上に塗布され、短い排気時間を繰り返した後に焼付け工程なしに(ウェット・オン・ウェット・オン・ウェット塗布法)クリヤラッカーが塗布される。引続き、全部で3つの層(下塗り塗料I+IIおよびクリヤラッカー)が一緒に焼き付けられる。3ウェット塗装法の例は、WO 2006/062666および欧州特許第1940977号明細書中に記載されている。
【0011】
ウェット・オン・ウェット塗布法ならびにウェット・オン・ウェット・オン・ウェット塗布法において、前記層の少なくとも1つ、主に上側層は、黄変を生じうる。
【0012】
殊に、マルチコート塗装系の過剰焼付けの場合、このことは、量産塗装において常に起こりうるが、黄変現象を生じる。DIN 6167:1980−01によれば、例えば白色、明るい色調ではあるが、有色の高光沢およびサテン光沢の塗膜のように、実際に放射線、温度、湿度および化学反応の影響に基づいて、当該材料の場合に言うに値する黄変値を確認することができることは、黄変と呼ばれる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第601頁,見出し語"Vergilbung黄変"参照)。
【0013】
過剰の焼付けは、完全な架橋に必要とされるよりも高いエネルギー供給量を有する塗料の焼付けのための1つの表現である(焼付け時間および/または焼付け温度を超過する)(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第585頁,見出し語"Ueberbrennen過剰焼付け"参照)。
【0014】
米国特許第5288820号明細書の記載から、アミンをアセトアセテート基およびアルデヒド基と反応させることによってジヒドロピリジン誘導体が生じ、このジヒドロピリジン誘導体が、公知のように極めて強力に黄色を呈することは、公知である。
【0015】
米国特許第4369301号明細書には、黄変を減少させる、ヒドラジド基を有する2Kポリウレタン樹脂が記載されている。
【0016】
米国特許第5112931号明細書においては、1Kアクリレート中での黄変をブロック化されたポリイソシアネート塗料で減少させるために、ヒドラジド基が使用される。
【0017】
例えば、鋼製車体上でのマルチコート塗装系の黄変は、極めて望ましくない。それというのも、後のプロセスにおいて、プラスチック構成部材が車体上に取り付けられ、それによって色調のコンシステンシー(Color Harmonyカラーハーモニー)に関連する問題が生じるからである。
【0018】
欧州特許第0377931号明細書B1には、ペイントおよび塗料、なかんずくクリヤラッカーのためのスルホン酸化合物が記載されており、このスルホン酸化合物は、エレクトロ噴霧塗布法に適しており、および高い貯蔵安定性を有する。この組成物を貯蔵する場合には、脱色は、さほど広い範囲では起こらない。
【0019】
今日では、溶剤含有ハイソリッド塗料は、低粘稠な結合剤ならびに殆ど反応性でないメラミンベースの架橋性樹脂の使用を必要とする。
【0020】
低下された焼付け温度または短縮された焼付け時間の際に、オリゴマーの使用成分から耐化学薬品性のポリマー網目模様が生じうるようにするために、触媒を使用することは、必要である。この場合、反応性官能基、例えばヒドロキシル基、カルバメート基またはアミン基を有するアクリレート、ポリウレタンおよびポリエステルは、メラミン尿素で架橋することができる。適した触媒を選択することは、黄変反応と比較して短縮された焼付け時間、低い焼付け温度、改善された付着特性ならびに大きな頑強性を生じうる。質量を節約する新規材料、例えばアルミニウムまたはプラスチックを自動車の組立に使用することは、前記材料の異なる加熱プロフィールを生じる。前記材料の異なる熱輸送に基づく強い温度変動は、殊に意図しない過剰の焼付けの際に明色のソリッドカラーまたはメタリックのマルチコート塗装系において著しい黄変をまねく。
【0021】
ハイソリッドの下塗り塗料およびクリヤラッカーは、通常、モノマーの架橋性樹脂、例えばヘキサ(メトキシメチル)メラミン(HMMM)または混合エーテル化メラミンからなる。ヒドロキシ−またはカルバメート官能基での架橋反応は、最善で強酸触媒、例えばドデシルベンジルスルホン酸(DDBSA)、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)またはパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)を用いて行なわれる。NH基の高い含量を有する反応性のポリマーの架橋性樹脂は、ブロック化された触媒を用いて良好に反応する。
【0022】
ハイソリッド塗料にとって、貯蔵の際の強い粘度変化は、望ましくない。それというのも、前記材料を加工するためには、溶剤標準化剤の高いレベルの添加が必要とされるからである。これは、固体の強い還元と関連し、このことは、高められたVOC値を結果として生じた。
【0023】
課題
本発明は、公知技術水準の先に記載された欠点を排除するという課題を基礎とした。殊に過剰の焼付けの際に公知技術水準のマルチコート塗装系よりも僅かな黄変反応を有する、ハイソリッドの下塗り塗料およびクリヤラッカーに基づくマルチコート塗装系が提供されるはずである。同時に、ハイソリッドの下塗り塗料およびクリヤラッカーは、良好な貯蔵安定性を有し、殊に粘度上昇を有しないはずである。それによって、貯蔵後の塗料は、塗料がさらなる溶剤の添加なしに、例えば噴霧塗布によって塗布されうる粘度を有するはずである。
【0024】
それ故に、ハイソリッドの下塗り塗料およびクリヤラッカーから構成され、かつ塗装系の僅かな黄変と塗料の良好な貯蔵安定性との間の均衡が存在するマルチコート塗装系を見出すことができた。
【0025】
更に、公知のハイソリッドの下塗り塗料およびクリヤラッカーおよびこれらから形成された下塗り塗膜またはクリヤコートによって意図された利点、例えば良好な流展、低いビット数および色調の高いコンシステンシーは、失われずに、少なくとも同程度に維持され、好ましくはよりいっそう顕著に維持されるべきである。その上、塗膜は、良好な付着力を有するべきである。
【0026】
生じるマルチコート塗装系は、光沢の曇り(ヘーズ)を全く有しないかまたはあったとしても、僅かな光沢の曇りを有し、かつ極めて良好な全体的に亘る目視的印象(外観)を有するべきである。更に、マルチコート塗装系は、塗膜欠陥、例えば亀裂の形成(泥割れ)、明暗の色相の領域(曇り価)およびビットを含まないようにすべきである。更に、マルチコート塗装系は、目視的欠陥、例えば摩擦かぶりを示さないようにすべきである。
【0027】
更に、マルチコート塗装系を形成させるための方法が提供されるはずである。
【0028】
更に、マルチコート塗装系で被覆されている、金属および/またはプラスチックからなる基体が提供されるはずである。
【0029】
課題の解決
意外なことに、ハイソリッド下塗り塗料およびハイソリッドクリヤラッカーの良好な貯蔵安定性と共に、殊に過剰の焼付けの際に僅かに黄変が生じるようなマルチコート塗装系が見い出された。
【0030】
本発明によるマルチコート塗装系は、
i.下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する非水性下塗り塗料の少なくとも1つの下塗り塗膜および
ii.クリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有する非水性クリヤラッカーの少なくとも1つのクリヤコートを含み、
このマルチコート塗装系は、下塗り塗料およびクリヤラッカーが
A.式(I)
【化1】

〔式中、nは、1〜10であり、
1は、1〜18個のC原子を有する一価または二価のアルキル基またはアルキレン基であるか、またはそれぞれ1〜18個のC原子でモノアルキル化またはジアルキル化されたフェニル基またはナフチル基であり、
5およびR6は、互いに無関係に水素、または1〜12個のC原子を有するアルキル基であるか、またはR5およびR6は、一緒になって6〜12個のC原子を有するシクロアルキル基であり、ならびにa.R4は、水素原子を表わし、およびR2およびXは、不在であるか、またはb.R4は、メチレン基を表わし、
2は、水素原子、1〜18個のC原子を有する一価または二価のアルキル基、ビスフェノールA基またはビスフェノールF基を表わし、この場合これらの基は、置換されていてよく、および
Xは、カルボニル基または酸素原子を表わし、この場合Xは、場合によるものであり、この場合式(I)の化合物は、350〜2000g/molの数平均分子量を有し、およびnが1を上廻る場合には、基R1またはR2の少なくとも1つは、少なくとも二価である〕で示される少なくとも1つのエポキシスルホン酸化合物、または
B.式(II)
【化2】

〔式中、R1、R2、R4、R5、R6、Xおよびnは、式(I)の化合物と同様の意味を有し、および
3は、1〜18個のC原子を有するアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基、またはポリマー基であり、この場合R3は、置換されていてよく、この場合nが1を上廻る場合には、基R1、R2またはR3の少なくとも1つは、少なくとも二価である〕で示される少なくとも1つのエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたスルホン酸化合物を、それぞれの塗料の全質量に対して、0.5〜3.0質量%含有し、この場合式(II)による化合物は、少なくとも1000g/molの数平均分子量を有することによって特徴付けられる。
【0031】
この場合、過剰の焼付きの際に特に、クリヤラッカーならびに下塗り塗料において式(I)および/または(II)による少なくともそれぞれ1つのスルホン酸化合物が存在する場合に、前記塗料の良好な貯蔵安定性と共に黄変の明らかな減少が生じることは、特に驚異的なことである。
【0032】
更に、下塗り塗膜またはクリヤラッカー塗膜は、良好な流展、最小のビット数および色調の高いコンシステンシーならびに良好な付着力を示す。
【0033】
本発明によるマルチコート塗装系は、良好なヘーズおよび極めて良好な全体的に亘る目視的印象を有する。その上、マルチコート塗装系は、塗膜欠陥、例えば亀裂の形成(泥割れ)、明暗の色相の領域(曇り価)およびビットを含まない。更に、マルチコート塗装系は、目視的欠陥を全く示さない。
【0034】
式(II)のスルホン酸化合物は、欧州特許第0377931号明細書B1中に詳細に記載されている。式(I)のスルホン酸化合物は、式(II)の化合物の製造において、同様に欧州特許第0377931号明細書B1中に記載されている。
【0035】
基R3は、1〜18個のC原子を有する、場合により置換された、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基である。ポリマー基R3は、エステル基、エーテル基、イソシアネート基および/またはイソシアネートをベースとする基を有していてもよい。ポリマー基R3としては、例えば式(I)の化合物と式(II)中の基R3としてのイソシアネートOCN−R3との反応の際に得られる基R3がこれに該当する。適したイソシアネートOCN−R3は、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルイレンジイソシアネート(TDI)、メチレン−ジアニリンをベースとするジイソシアネート、例えばジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはテトラメチルキシロールジイソシアネート;末位のイソシアネート基を有するポリエステルまたはポリエーテル、例えばポリプロピレングリコール1モルとイソホロンジイソシアネート2モルとからの反応生成物、またはネオペンチルグリコールとアジピン酸とからなるポリエステルジオールと過剰のイソホロンジイソシアネートとの反応生成物である。
【0036】
少なくとも35質量%の固体含量を有する本発明によるマルチコート塗装系中に含まれている下塗り塗料は、本発明の範囲内でハイソリッド下塗り塗料として記載されてもよい。同様に、少なくとも50質量%の固体含量を有するクリヤラッカーは、ハイソリッドクリヤラッカーと呼称される。下塗り塗料およびクリヤラッカーの固体含量は、DIN ISO 3251の記載により1.0gの初期質量で125℃の温度で60分間の試験時間で実施される。
【0037】
更に、本発明の対象は、マルチコート塗装系を形成させる方法である。更に、本発明は、本発明によるマルチコート塗装系を形成させるための、ハイソリッド下塗り塗料およびハイソリッドクリヤラッカー中での触媒としての式(I)および/または(II)のスルホン酸化合物の使用にも関する。最後に、本発明は、本発明によるマルチコート塗装系で被覆されている金属および/またはプラスチックからなる基体に関する。
【0038】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい実施態様は、従属請求項によって記載されている。
【0039】
本発明によるマルチコート塗装系は、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する非水性下塗り塗料の少なくとも1つの下塗り塗膜およびクリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有する非水性クリヤラッカーの少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含み、下塗り塗料中およびクリヤラッカー中でそれぞれの塗料の全質量に対して、式(I)の少なくとも1つのエポキシ−スルホン酸化合物または式(II)の少なくとも1つのエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたスルホン酸化合物をそれぞれ0.5〜3.0質量%含有することによって特徴付けられる。
【0040】
単数または複数の下塗り塗料ならびに本発明によるマルチコート塗装系の単数または複数のクリヤラッカーは、本発明によるマルチコート塗装系の塗料とも呼称される。
【0041】
本発明によるマルチコート塗装系は、互いに無関係に式(I)の少なくとも1つの化合物および式(II)の少なくとも1つの化合物を含有する、ハイソリッド下塗り塗料およびハイソリッドクリヤラッカーから形成されていてもよい。
【0042】
特に、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料および/またはクリヤラッカーは、それぞれ互いに無関係に、それぞれ式(I)および/または式(II)の化合物の少なくとも1つを1.5〜3.0質量%、有利に1.8〜2.7質量%含有する。
【0043】
式(I)の化合物は、350〜2000g/mol、有利に500〜1800g/molの数平均分子量を有する。式(II)の化合物は、特に1000〜4000g/mol、有利に1000〜3000g/molの数平均分子量を有する。数平均分子量は、DIN 55672−1(2007−08年版)の記載によりゲル浸透クロマトグラフィーを用いてTHF可溶性ポリマーに対して溶離剤としてのテトラヒドロフランを使用して測定される。較正は、ポリスチレン標準を用いて行なわれる。
【0044】
好ましくは、本発明によるマルチコート塗装系の塗料は、nが1〜5であり、有利にnが1である、式(I)または(II)の少なくとも1つの化合物を含有する。特に好ましくは、本発明によるマルチコート塗装系の少なくとも1つの下塗り塗料および少なくとも1つのクリヤラッカーは、nが1〜5であり、有利にnが1である式(I)または(II)の少なくともそれぞれ1つの化合物を含有する。
【0045】
更に、好ましい実施態様において、式(I)および(II)の化合物中のR1は、パラ−メチルフェニル基、ドデシルフェニル基またはジノニルナフチル基である。特に好ましいのは、パラ−メチルフェニル基およびドデシルフェニル基である。
【0046】
好ましい実施態様において、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料は、付加的に、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して、
a.少なくとも1つの結合剤15〜50質量%、
b.架橋剤としての少なくとも1つのメラミン樹脂誘導体5〜30質量%、
c.少なくとも1つの着色剤0.5〜49質量%、
d.少なくとも1つの有機溶剤30〜65質量%、
e.少なくとも1つの助剤または添加剤0.05〜40質量%を含有し、この場合下塗り塗料の全成分の質量の割合は、合計して100%になる。
【0047】
本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料は、添加剤として特に、ポリマー微細粒子、無機粒子、ワックスおよびワックス状化合物の群から選択された、少なくとも1つの成分を含有する。
【0048】
好ましい実施態様において、本発明によるマルチコート塗装系のクリヤラッカーは、付加的に、それぞれクリヤラッカーの全質量に対して、
a.少なくとも1つの結合剤15〜50質量%、
b.架橋剤としての少なくとも1つのメラミン樹脂誘導体5〜30質量%、
c.少なくとも1つの有機溶剤30〜50質量%、
d.少なくとも1つの助剤または添加剤0.05〜40質量%を含有し、この場合クリヤラッカーの全成分の質量の割合は、合計して100%になる。更に、本発明によるマルチコート塗装系のクリヤラッカーは、触媒、例えば市販の錫触媒および/または燐酸触媒を含有することができる。
【0049】
本発明によるマルチコート塗装系は、通常、基体上に最初にプライマーおよび場合によりサーフェイサーが塗布されるようにして形成される。その上には、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料の少なくとも1つの下塗り塗膜が存在し、さらにその上には、本発明によるマルチコート塗装系のクリヤラッカーの少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜が存在する。
【0050】
基体には、通常、常法で、例えば電気泳動塗装、浸漬、ナイフ塗布、噴霧塗布、ロール塗布等で塗布される、プライマーおよび場合によりサーフェイサーが備えられている。好ましくは、プライマーは、下塗り塗料およびクリヤラッカーが塗布される前に、少なくとも部分的または完全に硬化される。プライマーまたはサーフェイサーは、通常、3〜30分間80〜170℃の温度に加熱することによって硬化される。
【0051】
本発明によるマルチコート塗装系は、特に金属および/またはプラスチックからなる基体上に施される。
【0052】
プライマーまたはサーフェイサー層上には、本発明によるマルチコート塗装系の少なくとも1つの下塗り塗料および少なくとも1つのクリヤラッカーが塗布される。
【0053】
1つの実施態様において、マルチコート塗装系は、式(I)および/または式(II)の1つ以上の同一かまたは異なる化合物を含有する塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する下塗り塗料の少なくとも1つのさらなる下塗り塗膜を含む。
【0054】
また、本発明によるマルチコート塗装系は、下塗り塗料BIの少なくとも1つのさらなる下塗り塗膜を含んでいてもよく、この場合この下塗り塗料BIは、式(I)による化合物でもないし、式(II)による化合物でもない。下塗り塗料BIは、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する。
【0055】
1つの好ましい実施態様において、マルチコート塗装系は、最も上の塗膜が本発明によるマルチコート塗装系のクリヤラッカーのクリヤラッカー塗膜であるように構成されている。その下には、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料の下塗り塗膜が存在する。従って、本発明によるマルチコート塗装系の双方の最も上の層中に式(I)または(II)の化合物のそれぞれ少なくとも1つが含有されていることは、好ましい。特に好ましくは、本発明によるマルチコート塗装系は、1つまたは2つの下塗り塗膜および1つのクリヤラッカー塗膜を含む。
【0056】
2つの下塗り塗料と1つのクリヤラッカーとからなる塗膜は、3ウェット塗装法で硬化されてよい。
【0057】
本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料およびクリヤラッカーは、液体塗料を塗布するための通常の方法、例えば浸漬、ナイフ塗布、噴霧塗布、ロール塗布等により塗布されるが、しかし、殊に噴霧塗布により塗布される。好ましくは、噴霧塗布法、例えば圧縮空気による噴霧、エアレス噴霧、高速回転塗布、静電噴霧(ESTA)は、場合によりホット噴霧法、例えばホットエアー噴霧と組み合わせて適用される。特に好ましいのは、下塗り塗料を第1の塗布でESTAによって塗布し、第2の塗布で空気圧により塗布することである。
【0058】
特に、塗布された下塗り塗料は、短時間でフラッシュオフされるかまたは短時間で乾燥され、一般的には、30℃ないし100℃未満の温度で1〜15分間フラッシュオフさせるかまたは乾燥される。その後に、クリヤラッカーが塗布される。
【0059】
塗布された下塗り塗料および塗布されたクリヤラッカーは、共通して熱的に硬化される。クリヤラッカーがなお化学線で硬化可能である限り、なお化学線での照射によって後硬化が行なわれる。
【0060】
硬化は、或る程度の静止時間の後に行なうことができる。硬化は、30秒ないし2時間、特に1分間ないし1時間、殊に1〜45分間の時間を有することができる。静止時間は、例えば塗料層の流展および脱ガスのために、または揮発性成分の気化のために使用される。この場合、塗料層の損傷または変化、例えば早期の完全な架橋が全く生じない限り、静止時間は、90℃にまで高められた温度の使用によって、および/または減少された空気湿分 10g未満 水/kg 空気によって支持されてよいし、および/または短縮されてよい。
【0061】
硬化は、通常、90〜160℃の温度で15〜90分間行なわれる。
【0062】
湿式下塗り塗膜ならびに湿式クリヤラッカー塗膜の乾燥または状態調節のためには、有利に熱的方法および/または対流法が使用され、この場合には、常用の公知の装置、例えばトンネル炉、NIRヒーターおよびIRヒーター、ブロワーおよび吹込トンネルが使用される。これらの装置は、互いに組み合わされてもよい。
【0063】
本発明によるマルチコート塗装系において、下塗り塗膜は、一般的に3〜40μm、有利に5〜30μm、殊に7〜25μmの乾燥被膜層厚を有し、およびクリヤラッカー塗膜は、一般的に10〜120μm、有利に30〜80μm、殊に40〜70μmの乾燥被膜層厚を有する。
【0064】
下塗り塗料BIの場合により存在するさらなる下塗り塗膜は、一般的に3〜40μm、有利に5〜30μm、殊に有利に7〜25μmの乾燥被膜層厚を有する。
【0065】
更に、本発明は、次の順序で、
a.最初に、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する少なくとも1つの下塗り塗料、および
b.引続きクリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有する少なくとも1つのクリヤラッカーを基体上に塗布することにより、マルチコート塗装系を形成させる方法に関し、この場合下塗り塗料中およびクリヤラッカー中には、それぞれの塗料の全質量に対して、式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の少なくとも1つの化合物がそれぞれ0.5〜3.0質量%含有されている。好ましくは、下塗り塗料の下塗り塗膜およびクリヤラッカーの最終的なクリヤラッカー塗膜は、2つの順次の層を形成する。好ましい実施態様には、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料およびクリヤラッカーが指摘されている。
【0066】
もう1つの実施態様において、本発明は、次の順序で、
a.最初に、式(I)の化合物も式(II)の化合物も含有しない少なくとも1つの下塗り塗料BI、
b.引続き下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する少なくとも1つ下塗り塗料、および
c.その後にクリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有する少なくとも1つのクリヤラッカーを基体上に塗布することにより、マルチコート塗装系を形成させる方法に関し、この場合処理工程b.の下塗り塗料中およびクリヤラッカー中には、それぞれの塗料の全質量に対して、式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の少なくとも1つの化合物がそれぞれ0.5〜3.0質量%含有されている。好ましくは、処理工程b.の下塗り塗料の下塗り塗膜およびクリヤラッカーの最終的なクリヤラッカー塗膜は、2つの順次の層を形成する。好ましい実施態様には、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料およびクリヤラッカーが指摘されている。
【0067】
下塗り塗料BIは、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する。
【0068】
更に、本発明は、マルチコート塗装系を形成させるための、それぞれの塗料の全質量に対して、それぞれ少なくとも35質量%の固体含量を有する下塗り塗料中および少なくとも50質量%の固体含量を有するクリヤラッカー中の触媒としての式(I)および/または式(II)のスルホン酸化合物の使用に関する。式(I)および(II)の触媒は、プロトン供与体としてメラミン−結合剤反応を促進させる。好ましい実施態様には、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料およびクリヤラッカーが指摘されている。
【0069】
その上、本発明は、本発明によるマルチコート塗装系で被覆されている金属および/またはプラスチックからなる基体を含む。
【0070】
本発明のもう1つの視点は、自動車の量産塗装、多用途車の塗装および自動修復塗装、船舶産業および航空機産業のための構造部材の被覆、または家電製品用および電気機器用の構造部材またはこれらの部材の被覆のための本発明によるマルチコート塗装系の使用である。
【0071】
結合剤
本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料およびクリヤラッカーは、物理的に硬化されていてよい。
【0072】
本発明の範囲内で"物理的硬化"の概念は、塗料からの溶剤放出による被膜形成によって、塗料から1つの層を硬化させることを意味し、この場合塗膜内での結合は、結合剤のポリマー分子のルーピングにより行なわれる(この概念に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第73および74頁,見出し語"Bindemittel結合剤"参照)。または、しかし、被膜形成は、結合剤粒子の凝集により行なわれる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第274および275頁、見出し語"Haertung硬化")。このために、通常、架橋剤は、不要である。場合により、物理的硬化は、空気酸素、熱または化学線での照射によって補助されてよい。
【0073】
下塗り塗料および/またはクリヤラッカーは、熱的に硬化可能であってよい。この場合これらの下塗り塗料および/またはクリヤラッカーは、自己架橋性または外部架橋性であってよい。
【0074】
本発明の範囲内で、"自己架橋性"の概念は、それ自体架橋反応を生じる結合剤の性質を示す。このための前提条件は、結合剤中に、架橋に必要とされる、既に2つの種類の相補的な反応性の官能基が含有されていることであるか、または結合剤は、"それ自体と反応しうる"反応性の官能基を含有することである。これとは異なり、1つの種類の相補的な反応性の官能基が結合剤中に存在し、別の種類の官能基が架橋剤中に存在するような塗料は、外部架橋性と呼称される。これに関しては、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998,"Hartung",第274〜276頁、殊に第275頁下方に指摘されている。
【0075】
この場合、結合剤として適しているのは、自動車産業の範囲において下塗り塗料およびクリヤラッカー中で通常使用される結合剤であり、この場合当業者に公知の方法で結合剤の製造に使用される構成成分の種類および量の選択により、下塗り塗料およびクリヤラッカーのための結合剤の性質、ひいては適性は、制御される。
【0076】
好ましくは、一面でチオ基、ヒドロキシル基、N−メチロールアミノ−N−アルコキシメチルアミノ基、イミノ基、カルバメート基、アロファネート基および/またはカルボキシル基、有利にヒドロキシル基またはカルボキシル基を含有する結合剤が使用され、他面、無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、ブロック化イソシアネート基、ウレタン基、メチロール基、メチロールエーテル基、シロキサン基、カーボネート基、アミノ基、ヒドロキシル基および/またはβ−ヒドロキシアルキルアミド基、有利にエポキシ基、β−ヒドロキシアルキルアミド基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化ウレタン基またはブロック化アルコキシメチルアミノ基およびブロック化されていないイソシアネート基、ブッロク化されていないウレタン基またはブロック化されていないアルコキシメチルアミノ基が使用される。
【0077】
自己架橋性塗料の場合には、結合剤は、殊にメチロール基、メチロールエーテル基および/またはN−アルコキシメチルアミノ基を含有する。
【0078】
本発明によるマルチコート塗装系の塗料への使用に特に好適である相補的な反応性の官能基は、一面でヒドロキシル基であり、他面ブロック化されたイソシアネート基、ブロック化されたウレタン基またはブロック化されたアルコキシメチルアミノ基、およびブロック化されていないイソシアネート基、ブロック化されていないウレタン基またはブロック化されていないアルコキシメチルアミノ基である。
【0079】
前記の反応性の官能基に関連して結合剤の官能性は、極めて幅広く変動することができ、殊に達成すべき架橋密度により、および/またはそれぞれ使用される架橋剤の官能性により左右される。例えば、ヒドロキシル基含有結合剤の場合には、OH価は、DIN 53240により、特に15〜300mg KOH/g、有利に20〜250mg KOH/g、特に有利に25〜200mg KOH/g、殊に有利に30〜150mg KOH/g、殊に35〜120mg KOH/gである。
【0080】
前記の相補的な官能基は、ポリマー化学の通常の公知方法により結合剤中に組み込むことができる。これは、例えば相応する反応性の官能基であるモノマーの組み込みによって、および/またはポリマー類似の反応により行なうことができる。
【0081】
適した結合剤は、一般的に400〜5000g/molの数平均分子量を有する。分子量は、スチレン−ジビニルベンゼン−組合せカラム上での溶離剤(1ml/分)としてのTHF(+0.1%酢酸)でのGPC分析により測定される。較正は、ポリスチレン標準を用いて実施される。
【0082】
特に、結合剤は、それぞれ下塗り塗料またはクリヤラッカーの全質量に対して15〜50質量%、有利に20〜40質量%の量で使用される。
【0083】
例えば、エチレン系不飽和のモノマー、またはポリ付加樹脂および/または重縮合樹脂のランダムに、交互に、および/またはブロック状に構成された直鎖状および/または分枝鎖状の(コ)ポリマーおよび/または櫛状に構成された(コ)ポリマーは、結合剤として適している。前記の概念については、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第457頁、見出し語"Polyaddtionポリ付加"および"Polyadditionsharzeポリ付加樹脂(Polyaddukteポリ付加物)"ならびに第463頁および第464頁、見出し語"Polykondensate重縮合体"、"Polykondensation重縮合"および"Polykondensationsharze重縮合樹脂"、ならびに第73頁および第74頁、見出し語、"Bindemittel結合剤"に指摘されている。
【0084】
適した(コ)ポリマーの例は、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは部分鹸化されたポリビニルエステル、殊に(メタ)アクリレートコポリマーである。(メタ)アクリレートの概念は、アクリレートならびにメタクリレートである。
【0085】
適したポリ付加樹脂および/または重縮合樹脂の例は、ポリエステル、アルキド、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂、アミン付加物、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタンまたはポリエステル−ポリエーテル−ポリウレタン、殊にポリエステルである。
【0086】
これらの結合剤の中で、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーおよびポリエステル、殊に(メタ)アクリレート(コ)ポリマーは、特殊な利点を有し、したがって特に有利に使用される。
【0087】
適したポリエステル樹脂は、飽和または不飽和、殊に飽和であってよく、例えば欧州特許第787159号明細書、第4頁、第26〜63頁に記載されている。
【0088】
適したアクリレート樹脂は、当業者に公知の方法により反応性の官能基を有するオレフィン系の不飽和モノマーを使用しながら、場合によってはモノマーとの組合せで反応性の官能基なしに製造されてよい。
【0089】
反応性の官能基を有する適したオレフィン系の不飽和モノマーの例は、次の通りである:
a)1分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシメチルアミノ基、カルバメート基、アロファネート基またはイミノ基を有するモノマー、例えば
酸でエステル化されているアルキレングリコールに由来するか、またはα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸とアルキレンオキシド、例えば酸化エチレンまたは酸化プロピレンとの反応によって得られる、アクリル酸、メタクリル酸または別のα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、殊にヒドロキシアルキル基が20個までの炭素原子を含有する、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチル−、2−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシブチル−、4−ヒドロキシブチルアクリレート、−メタクリレート、−エタクリレート、−クロトネート、−マレネート、−フマレートまたは−イタコネート;またはヒドロキシシクロ−アルキルエステル、例えば1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン−、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−ジメタノール−またはメチルプロパンジオールモノアクリレート、−モノメタクリレート、−モノエタクリレート、−モノクロトネート、−モノマレエート、−モノフマレートまたは−モノイタコネート;環式エステルからの反応生成物、例えばε−カプロラクトンおよびこのヒドロキシアルキル−または−シクロアルキルエステル;
オレフィン系不飽和アルコール、例えばアリルアルコール;
ポリオール、例えばトリメチロールプロパンモノ−またはジアリルエーテル、またはペンタエリトリットモノ−、−ジ−または−トリアリルエーテル;
アクリル酸および/またはメタクリル酸と1分子当たり5〜18個のC原子を有する、α−位で分枝化されたモノカルボン酸、殊にベルサチックVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応生成物、または反応生成物の代わりに、さらに1分子当たり5〜18個のC原子を有する、α−位で分枝化されたモノカルボン酸、殊にベルサチックVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの重合反応中または重合反応後に反応される等価の量のアクリル酸および/またはメタクリル酸;
アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アリルアミンまたはN−メチルイミノエチルアクリレート;
N,N−ジ(メトキシメチル)アミノエチルアクリレートまたは−メタクリレート、またはN,N−ジ(ブトキシメチル)アミノプロピルアクリレートまたは−メタクリレート;
(メタ)アクリル酸アミド、例えば(メタ)アクリル酸アミド、N−メチル−、N−メチロール−、N,N−ジメチロール−、N−メトキシメチル−、N,N−ジ(メトキシメチル)−、N−エトキシメチル−および/またはN,N−ジ(エトキシエチル)−(メタ)アクリル酸アミド;
アクリロイルオキシ−またはメタクリロイルオキシエチル−、プロピル−またはブチルカルバメートまたは−アロファネート;カルバメート基を含有する適したモノマーのさらなる例は、米国特許第3479328号明細書、米国特許第3674838号明細書、米国特許第4126747号明細書、米国特許第4279833号明細書または米国特許第4340497号明細書中に記載されている。
b)1分子当たり少なくとも1個の酸基を有するモノマー、例えば
アクリル酸、β−カルボキシルエチルアクリレート、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸;
オレフィン系不飽和スルホン−またはホスホン酸、またはこれらの部分エステル;
マレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルまたはフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル;または
ビニル安息香酸(全ての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全ての異性体)またはビニルベンゼンスルホン酸(全ての異性体)。
c)エポキシ基を含有するモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のグリシジルエステル、またはアリルグリシジルエーテル。
【0090】
前記種類の高官能性モノマーは、一般的により少ない量で使用される。本発明の範囲内で高官能性モノマーのより少ない量とは、コポリマー、殊に(メタ)アクリレートコポリマーの架橋またはゲル化を生じないような量である。
【0091】
反応性の官能基なしの適したオレフィン系不飽和モノマーの例は、特にアクリル酸、メタクリル酸または別のα,β−オレフィン系不飽和カルボン酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物ならびにこれらのモノマーの混合物である。
【0092】
更に、結合剤として適しているのは、ポリウレタン樹脂である。ポリウレタン樹脂は、当業者に公知の方法で、
有利に400〜5000の数平均分子量を有する、ポリエステル−およびポリエーテルポリオールからなる群から選択された、少なくとも1つのポリオール、および
少なくとも1つのポリイソシアネートならびに
場合によっては分子中に少なくとも1個のイソシアネート反応性の官能基および少なくとも1個の(潜在的な)アニオン基を含有する少なくとも1つの化合物、
場合によっては少なくとも1個のイソシアネート反応性の官能基を含有する、少なくとも1つのさらなる化合物および
場合によっては分子中にヒドロキシル−および/またはアミノ基を含有する、60〜600ダルトンの数平均分子量の少なくとも1つの化合物を反応させることによって得られる。
【0093】
この種のポリウレタン樹脂は、例えば欧州特許第228003号明細書および欧州特許第574417号明細書中に記載されている。
【0094】
この種のポリウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート成分として塗料産業の範囲内で通常使用されるイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,4−または1,3−ビス(イソシアナト−メチル)シクロヘキサン、1,4−または1,3−または1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4−または2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、商品名DDI 1410でHenkel社によって販売されているような二量体脂肪酸に由来するジイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルヘプタンまたは1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサンまたはテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)またはこれらのポリイソシアネートからの混合物、有利にテトラメチルキシリレン−ジイソシアネート(TMXDI)および/またはイソホロンジイソシアネート、有利にイソホロンジイソシアネートを使用することにより、得られる。
【0095】
ヒドロキシル基またはアミノ基を有する連鎖延長剤として、有利にトリメチロールプロパンおよびジエタノールアミンが使用される。
【0096】
記載されたポリウレタン樹脂と一緒に、または記載されたポリウレタン樹脂の代わりに、下塗り塗料中の結合剤として、当業者に公知の方法で、エチレン系不飽和モノマーをポリウレタン樹脂の存在下で重合させることにより得られる、いわゆるアクリル化ポリウレタン樹脂も適している。この場合には、二重結合なしのポリウレタン樹脂および/または二重結合を有するポリウレタン樹脂を使用することが可能である。
【0097】
結合剤として、側位および/または末位の二重結合を有する、殊に側位のエテニルアリーレン基および/または末位のエテニルアリーレン基を有するアクリル化ポリウレタン樹脂が使用されてもよい。
【0098】
側位および/または末位の二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂は、少なくとも1個の遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマー(1−1)を、少なくとも1個のエチレン系不飽和二重結合およびNCO基に対して反応性の基、殊にヒドロキシル基またはアミノ基を有する化合物(1−2)と反応させることによって得ることができる。
【0099】
側位および/または末位の二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂は、NCO基に対して反応性の少なくとも1個の基、殊に少なくとも1個のヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリウレタンプレポリマー(11−1)を、少なくとも1個のエチレン系不飽和二重結合および遊離イソシアネート基を有する化合物(11−2)と反応させることによって得られてもよい。
【0100】
更に、オレフィン系不飽和モノマーを側位および/または末位の二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂の存在下で重合させることによって得られるグラフトコポリマーは、結合剤として使用される。
【0101】
殊に、少なくとも1つの重合導入されたオレフィン系不飽和モノマーからなる疎水性芯材および少なくとも1つの親水性のアクリル化ポリウレタンからなる親水性外殻を含むグラフトコポリマーが使用される。しかし、少なくとも1つの疎水性のアクリル化ポリウレタンからなる疎水性芯材および少なくとも1つの重合導入されたオレフィン系不飽和モノマーからなる親水性外殻を含むグラフトコポリマーも適している。
【0102】
適したアクリル化ポリウレタン樹脂ならびにこれから製造されたグラフトコポリマーは、例えばWO 01/25307、第5頁、第14行〜第45頁、第4行、および欧州特許第787159号明細書、第2頁第27行〜第7頁第13行中に記載されている。
【0103】
記載されたポリウレタン樹脂は、場合によっては1つ以上のポリアクリレート樹脂および/または1つ以上のポリエステル樹脂との組合せで使用されてよい。
【0104】
架橋剤
本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料またはクリヤラッカー中の架橋剤の含量は、それぞれ各塗料の全体量に対して有利に5〜30質量%、特に有利に7〜20質量%である。
【0105】
場合によっては使用される架橋剤として、下塗り塗料は、遊離イソシアネートまたはブロック化されたイソシアネートおよび/またはアミノプラスト樹脂を含有することができる。
【0106】
この場合、イソシアネートとしては、原理的に結合剤として適したポリウレタン樹脂の記述に記載された、塗料産業の範囲内で通常使用されるイソシアネート、有利にTACTおよびジメチルピラゾールによりブロック化された三量体のヘキサメチレンジイソシアネートならびに2成分系塗料の場合に三量体のヘキサメチレンジイソシアネートがこれに該当する。
【0107】
ブロック化剤としては、通常使用されるブロック化剤、例えば相応するアルコール、アミン、ケトン、ピラゾール等がこれに該当し、好ましいのは、130℃未満の脱ブロック化温度を有するブロック化剤である。
【0108】
原理的には、塗料産業の範囲内で通常使用されるアミノプラスト樹脂が適しており、この場合には、アミノプラスト樹脂の反応性により、下塗り塗料の性質は、制御されうる。好ましくは、メタノールおよび/またはブタノールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂、例えば市場でCymel(登録商標)、Resimene(登録商標)、Maprenal(登録商標)およびLuwipal(登録商標)の商品名で入手可能な製品、殊にResimene(登録商標)747およびResimene(登録商標)755が使用される。
【0109】
着色剤
下塗り塗料は、少なくとも1つの着色剤を含有する。"着色剤"は、色を付与する全ての物質のための総称である。この着色剤は、DIN 55944:1990−04により、周囲媒体中へのその溶解後に染料および顔料中に分配されている。染料は、周囲媒体中で可溶性の黒色または彩色の有機物質である(Roempp Lacke und Druckfarben,第221頁,見出し語"Farbmittel着色剤")。これに対して、顔料は、染料とは異なり周囲媒体中で不溶性の粉末状または小板状の着色剤である(Roempp Lacke und Druckfarben,第451頁,見出し語"Pigmente顔料")。
【0110】
特に、着色剤は、顔料である。特に、顔料は、有機および無機の、色を付与し、効果を付与し、色および効果を付与し、磁気的に遮蔽され、導電性、耐蝕性、蛍光性および燐光性の顔料からなる群からの顔料が選択される。好ましくは、着色顔料および/または効果顔料が使用される。
【0111】
特に有利には、下塗り塗料は、効果を付与する、少なくとも1つの顔料、殊に少なくとも1つの金属小板顔料を含有する。単数または複数の効果顔料と一緒に、下塗り塗料は、場合によりなお少なくとも1つまたは多数の着色顔料を含有する。
【0112】
色を付与することもできる、適した効果顔料の例は、金属小板顔料、例えば市販のアルミニウム青銅および市販のステンレス鋼青銅、ならびに非金属性効果顔料、例えば
真珠箔顔料または干渉顔料、酸化鉄ベースの小板状効果顔料または液晶効果顔料である。これに関しては、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第176頁,見出し語"Effektpigmente効果顔料"および第380および381頁,見出し語"Metalloxid−Glimmer−Pigmente金属酸化物−雲母−顔料"ないし"Metallpigmente金属顔料"に指摘されている。
【0113】
殊に、市販のアルミニウム青銅が使用される。この場合には、例えばEckart社のStapa(登録商標)Meralluxの名称で市場で入手可能である未処理のタイプならびに例えばWO 01/81483中に記載されかつ例えばEckart社のHydrolan(登録商標)の名称で市場で入手可能である処理されたタイプ、殊にシラン処理されたタイプが使用される。
【0114】
特に、金属小板顔料は、200〜2000nm、殊に500〜1500nmの厚さを有する。
【0115】
好ましくは、金属小板顔料は、10〜50μm、殊に13〜25μmの平均粒径を有する(Cilas(機器 1064)によるISO 13320−1)。
【0116】
適した有機および/または無機の着色顔料は、塗料産業において通常使用される顔料である。更に、塗料産業で通常使用される染料も使用可能である。
【0117】
適した無機の着色顔料の例は、白色顔料、例えば二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛またはリトポン;黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄−マンガン黒またはスピネル黒;彩色顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水和物緑、コバルト緑またはウルトラマリーン緑、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはコバルトバイオレットおよびマンガンバイオレット、酸化鉄赤、硫セレン化カドミウム、モリブデン酸塩の赤またはウルトラマリンレッド;褐色酸化鉄、混合型褐色、スピネル相およびコランダム相またはクロムオレンジ;または黄色酸化鉄、ニッケルチタン黄、クロムチタン黄、硫化カドミウム、硫化亜鉛カドミウム、クロム黄またはバナジン酸ビスマスである。
【0118】
適した有機の着色顔料の例は、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリン黒である。
【0119】
これに関しては、補足的にRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998,第180および181頁,見出し語"Eisenblau−Pigmente鉄青顔料"ないし"Eisenoxidschwarz",第451〜453頁,見出し語"Pigmente顔料"ないし"Pigmentvolumenkonzentration顔料容積濃度",第563頁,見出し語"Thiindigo−Pigmenteチオインジゴ顔料",第567頁,見出し語"Titandioxid−Pigmente二酸化チタン顔料",第400および467頁,見出し語"Natuerlich vorkommende Pigmente",第459頁,見出し語"Polycyclische Pigmente多環式顔料",第52頁,見出し語"Azomethinpigmenteアゾメチン顔料","Azopigmenteアゾ顔料",および第379頁,見出し語"Metallkomplex−Pigmente金属錯体顔料"に指摘されている。
【0120】
顔料の含量は、極めて幅広く変動可能であり、第1に調節されるべき、色の濃さおよび/または効果の強さにより左右され、ならびに下塗り塗料中の顔料の分散性により左右される。好ましくは、顔料の含量は、一体色塗料の場合に、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して1〜49質量%である。好ましくは、顔料の含量は、メタリック塗料の場合に、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して0.5〜40質量%、有利に0.5〜35質量%、特に有利に1〜30質量%である。
【0121】
有機溶剤
本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料に対する溶剤の含量は、特に下塗り塗料の全質量に対して30〜65質量%、有利に30〜62質量%、特に有利に30〜60質量%である。
【0122】
好ましい下塗り塗料は、フォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間として、23℃で16秒〜35秒、特に有利に18〜25秒の粘度を有する。固体含量は、少なくとも35質量%、有利に少なくとも38質量%、特に有利に少なくとも40質量%である。
【0123】
本発明によるマルチコート塗装系のクリヤラッカーに対する溶剤の含量は、特にそれぞれクリヤラッカーの全質量に対して30〜50質量%、有利に30〜48質量%である。
【0124】
好ましいクリヤラッカーは、フォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)からの流出時間として、23℃で40秒〜60秒、特に有利に45〜50秒の粘度を有する。固体含量は、少なくとも50質量%、有利に少なくとも52質量%である。
【0125】
溶剤としては、通常、塗料産業において使用される全ての溶剤、例えばアルコール、グリコールエーテル、エステル、エーテルエステルおよびケトン、脂肪族および/または芳香族の炭化水素、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ブチルアセテート、3−ブトキシ−2−プロパノール、エチルエトキシプロピオネート、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセテート、ブタノール、ジプロピレングリコール−メチルエーテル、グリコール酸ブチルエステル、キシレン、トルエン、Shellso(登録商標)T、Pine Oel 90/95,Solventnaphtha(登録商標),Shellsol(登録商標)A、Solvesso、ベンジン135/180等が適している。
【0126】
塗料(下塗り塗料およびクリヤラッカー)は、非水性である。
【0127】
助剤および添加剤
前記成分以外に、下塗り塗料および/またはクリヤラッカーは、通常の公知の助剤および添加剤を通常の量で含有することができ、好ましくは、それぞれの塗料の全質量に対して0.05〜40質量%、特に有利に0.5〜30質量%含有することができる。
【0128】
適した助剤および添加剤の例は、有機および無機の充填剤、例えばタルク、および/またはならびに通常の助剤および添加剤、例えば酸化防止剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、レオロジー助剤、例えば流展剤、濃稠化剤、垂れ防止剤およびチキソトロープ剤、ワックス、スリップ添加剤、反応希釈剤、易流動性助剤、乾燥剤、殺生剤、下地の湿潤を改善するための添加剤、表面の平滑さを改善するための添加剤、艶消剤、ラジカル捕捉剤、光安定剤、特に370nm下で吸収最大を有する上記のUV吸収剤および/またはHALS、腐蝕抑制剤、難燃剤または重合抑制剤であり、例えばこれらは、Johan Bielemann著の"Lackadditive"の書物,Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998中に詳細に記載されている。好ましい助剤および添加剤は、レオロジー助剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、UV吸収剤およびラジカル捕捉剤である。特に好ましい助剤および添加剤は、UV吸収剤および湿潤剤である。
【0129】
特に、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料は、添加剤としてポリマーマクロ粒子、安定化された無機粒子、ワックスおよびワックス様化合物からなる群から選択された、少なくとも1つの成分を含有する。
【0130】
ポリマーマイクロ粒子(M)
好ましくは、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料中には、ポリマーマイクロ粒子が使用される。適したポリマーマイクロ粒子は、例えば欧州特許出願公開第480959号明細書、第3頁、第36行〜第4頁第35行、WO 96/24619、WO 99/42529、欧州特許第1173491号明細書、欧州特許第1185568号明細書、WO 03/089487、WO 03/089477、WO 01/72909およびWO 99/42531中に記載されている。ポリマーマイクロ粒子は、殊にクリヤラッカーによって流展、蒸発挙動および初期溶解挙動を制御するために使用されてよい。
【0131】
適したポリマーマイクロ粒子は、通常、2000〜100000の数平均分子量を有する。分子量は、スチレン−ジビニルベンゼン−組合せカラム上での溶離剤(1ml/分)としてのTHF(+0.1%酢酸)でのGPC分析により測定される。較正は、ポリスチレン標準を用いて実施される。
【0132】
更に、適したポリマーマイクロ粒子は、通常、ISO 13320−1による0.01〜10μm、殊に0.01〜5μm、殊に有利に0.02〜2μmの平均粒径を有する。 特に有利に使用されるポリマーマイクロ粒子は、架橋剤の官能基と反応しうる、反応性の官能基を有する。この場合には、殊にポリマーマイクロ粒子は、ヒドロキシル基を有する。この場合、ポリマーマイクロ粒子は、有利にDIN 53240による5〜150mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル含有のポリマーマイクロ粒子は、例えばWO 01/72909中に記載されている。
【0133】
架橋されたポリマーマイクロ粒子は、例えば次のもの:
(a)1分子当たり1個のエチレン系不飽和基を含有するエチレン系不飽和モノマーまたはこのようなモノマーからの混合物および
(b)1分子当たり少なくとも2個のエチレン系不飽和基を含有するエチレン系不飽和モノマーまたはこのようなモノマーからの混合物からなる混合物を
水相中で場合によっては乳化剤の存在下または場合によってはキャリヤー樹脂の存在下で重合し、引続きこうして得られた水性ポリマーマイクロ粒子分散液を有機溶剤または有機溶剤からなる混合物中に運搬することにより、得ることができる。
【0134】
好ましいのは、イオン性基および/または極性基、特にヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を含有する成分を使用しながら製造されたポリマーマイクロ粒子である。成分(a)および(b)は、一般的にイオン性基および/または極性基を1〜20質量%、有利に3〜15質量%含有する。
【0135】
十分に架橋されたポリマーマイクロ粒子を得るために、一般的に成分(a)1モルに対して成分(b)を0.25〜1.2モル、有利に0.3〜1モル使用することで十分である。
【0136】
しかし、下塗り塗料中に使用されたポリマーマイクロ粒子(M)は、直接有機相中で製造されてもよい。
有利に使用されるポリマーマイクロ粒子は、例えば次のもの:
(c)1分子当たり少なくとも1個の反応性基(G1)を含有する、エチレン系不飽和モノマー(M1)またはこのようなモノマー(M1)からの混合物および
(d)場合によっては1分子当たり少なくとも1個の、(G1)とは異なる反応性基(G2)を含有する、エチレン系不飽和モノマー(M2)またはこのようなモノマー(M2)からの混合物および
(e)場合によってはさらなるエチレン系不飽和モノマー(M3)またはこのようなモノマー(M3)からの混合物からなる混合物を
有機溶剤中で場合によってはキャリヤー樹脂の存在下で重合に掛けることにより、得ることができる。
【0137】
適したモノマー(M1)は、例えばヒドロキシル基、カルバメート基、アミノ基、アルコキシメチル−アミノ基、アロファネート基またはイミノ基、殊にヒドロキシル基を含有するモノマーである。
【0138】
この場合、反応性基(G1)を有するモノマー(M1)は、化合物(a)が反応性基(a)および少なくとも1個のエチレン系不飽和二重結合を有しかつ別の化合物がエチレン系不飽和二重結合を有するような2つの化合物を反応させることによって製造されてもよい。
【0139】
適したモノマー(M2)は、例えばカルボキシル基を含有するモノマーである。
【0140】
適したモノマー(M3)は、通常使用される、いわゆる中性モノマー、即ち反応性基を全く有しないエチレン系不飽和モノマーである。
ポリマーマイクロ粒子(M)は、本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料中で、通常、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して3〜30質量%、殊に10〜25質量%の量で使用される。
【0141】
無機粒子(N)
本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料は、1〜800nm、有利に3〜250nm、特に有利に4〜100nmの粒径を有する、単数または複数の無機粒子(N)を含有することができる。この粒径は、下塗り塗料中への混入前に分散された粒子(N)の大きさに関連する。粒径は、例えば電子顕微鏡検査法によって測定されうる。
【0142】
適した無機粒子(N)は、例えばWO 2008/058590中に記載されている。
【0143】
好ましくは、単数または複数の無機粒子(N)は、3〜200nm、殊に3〜30nmの一次粒径を有する。上記の着色剤(色を付与する物質)とは異なり、下塗り塗料中で使用される無機粒子(N)は、通常、本質的に無色であり、殊に下塗り塗料の色調に影響を及ぼさない。
【0144】
無機粒子(N)は、独立した粒子として、または凝集塊の形で存在することができるが、しかし、この場合好ましくは、独立した粒子が使用される。
【0145】
殊に、無機粒子(N)は、なかんずく下塗り塗料の望ましい使用を保証するために、簡単に安定して下塗り塗料中に混入することができるべきである。従って、無機粒子(N)は、長時間に亘って(自動車塗装の範囲内で、例えば30℃までの温度での貯蔵の際に12時間までの時間に亘って)安定して分散されたままであるか、または塗料混合の通常の手段で、例えば攪拌機を用いて簡単に再分散可能であるべきである。
【0146】
好ましくは、DIN 53217による0.8〜4.5g/cm3の密度を有する無機粒子(N)が使用される。
【0147】
無機粒子(N)は、通常、元素の周期律表の主族および副族の金属、有利に第3主族〜第5主族、第3副族〜第6副族ならびに第1副族および第2副族の金属の化合物ならびにランタニド、殊にホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、バリウム、ゲルマニウム、錫、砒素、アンチモン、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびセリウム、殊にアルミニウム、ケイ素、バリウム、銀、セリウム、チタンおよびジルコニウムの化合物の群から選択される。
【0148】
特に、金属の化合物は、酸化物、オキシド水和物、硫酸塩または燐酸塩である。適した無機粒子(N)は、有利に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、および遷移金属、特にモリブデンおよびタングステンのポリ酸およびヘテロポリ酸をベースとする、親水性および疎水性、殊に親水性の粒子からなる群から選択される。特に有利には、二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムをベースとする粒子、殊に熱分解法二酸化ケイ素またはコロイド状二酸化ケイ素が使用される。
【0149】
殊に有利には、凝集塊および凝集体が鎖状構造を有しかつ酸水素炎中での四塩化ケイ素の火炎加水分解によって製造可能である、親水性の熱分解法二酸化ケイ素が使用される。この熱分解法二酸化ケイ素は、例えばAerosil(登録商標)の商品名でDugussa社から販売されている。
【0150】
しかし、無機粒子(N)として、いわゆるゾル、殊にオルガノゾルが使用されてもよい。この種のゾルは、例えば米国特許第4522958号明細書、第7欄、第26行〜第11欄、第14行に記載されている。この場合には、殊に無機粒子がインサイチュー(in−situ)で形成されかつ該無機粒子の形成中および/または形成後に安定剤(S)で変性されているようなケイ酸をベースとするゾルを挙げることができる(いわゆる安定化された無機粒子)。
【0151】
この場合、この粒子は、当業者に公知の多数の種々の技術により製造されてよい。
【0152】
無機粒子(N)をペーストとして混入することは、有利である。ペースト樹脂または粉砕樹脂として下塗り塗料中に含有された、既に記載された結合剤が使用される場合には、さらなる利点を生じる。殊に、粒子(N)のためのペースト樹脂または粉砕樹脂として、顔料の分散にも使用される結合剤が使用される。
【0153】
好ましくは、粒子(N)は、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して0.2〜2質量%、特に有利に0.5〜1.5質量%の量で使用される。
【0154】
安定剤(S)
無機粒子(N)は、少なくとも部分的に、無機粒子(N)の表面と相互作用しうる少なくとも1個の基(S1)および1つ以上の疎水性部分構造を有する安定剤(S)で変性されている。
【0155】
適した安定剤(S)は、例えばWO 2008/058590中に記載されている。
【0156】
安定剤(S)は、基(S1)を介して無機粒子(N)と相互作用しうる。この場合には、安定剤を物理的力によってのみ無機粒子との相互作用を生じることができるが、しかし、少なくとも部分的に基(S1)と無機粒子の表面上に通常存在する官能基との化学反応が生じてもよい。即ち、殊に親水性の無機粒子は、その表面上にヒドロキシル基を有し(例えば、SiO2タイプの場合、SiOH基の形で)、このヒドロキシル基は、化学的に基(S1)と相互作用を生じ、ならびに物理的な相互作用、例えば水素橋によっても基(S1)と相互作用を生じる。
【0157】
ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、ホスフェート基、ホスホネート基、ビスホスホネート基、スルフェート基またはスルホネート基、または窒素含有親水性基、またはこれらの混合物の群から選択される安定剤の基(S1)は、好ましい。特に好ましいのは、ヒドロキシル基ならびにカルボキシル基を含有する安定剤(S)である。更に、特に好ましいのは、ヒドロキシル基ならびにカルボキシル基およびエーテル基を含有する安定剤(S)である。殊に、それぞれ安定剤(S)の固体に対してDIN 53240による10〜150mg KOH/gのヒドロキシル価およびDIN EN ISO 3682による2〜50mg KOH/gの酸価を有する安定剤(S)が使用される。
【0158】
安定剤(S)は、なお1つ以上の疎水性の部分構造を有することができる。この疎水性の基は、下塗り塗料の有機成分、殊に溶剤、結合剤およびワックスまたはワックス様化合物(W)との相互作用を生じうる。
【0159】
即ち、安定剤(S)は、殊に単数または複数の疎水性の部分構造を有する、1つ以上の有機基(R1)を含有していてもよい。更に、単数または複数の有機基(R1)は、場合によってはなお親水性の部分構造を有し、および/または基(S1)は、少なくとも部分的または完全に前記有機基(R1)に結合されていてよい。
【0160】
安定剤(S)の疎水性の部分構造が少なくとも部分的に、アルキル基またはアルケニル基、殊に5〜50個のC原子を有するアルキル基またはアルケニル基の群から選択されていることは、好ましい。
【0161】
特に有利には、疎水性の部分構造として、飽和および/または不飽和の脂肪酸、殊に分子中に5〜30個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の脂肪酸の基、例えば吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペルラゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、油酸、エライジン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリシン酸、リノール酸、リシネン酸、リシノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、クルパノドン酸、α−エラエオステアリン酸、α−リカン酸、α−パリナル酸、シリノール酸およびイサノール酸、および前記脂肪酸の混合物および/または記載された脂肪酸の相応するヒドロキシ酸またはこれらの混合物の基が使用される。殊に有利には、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシラウリン酸、リシノール酸またはこれらの混合物の基を含有する安定剤が使用される。
【0162】
更に、二量体脂肪酸および三量体脂肪酸ならびにこれらの混合物の相応する基、および二量体脂肪酸および/または三量体脂肪酸と記載された脂肪酸との相応する混合物の基も適している。
【0163】
殊に好ましくは、安定剤(S)として、記載された(ヒドロキシ)脂肪酸、(ヒドロキシ)二量体脂肪酸および/または(ヒドロキシ)三量体脂肪酸のエステル、殊にポリアルキレングリコールとのエステル、特に有利に6〜20個のC原子を有するポリアルキレングリコール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびこれらの混合物とのエステルが使用される。この場合には、殊にヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸およびヒドロキシステアリン酸とトリエチレングリコール、テトラエチレングリコールとのエステル、および前記ヒドロキシル化合物の混合物、前記エステルの混合物および前記エステルと酸との混合物を挙げることができる。
【0164】
例えば相応する市販の化合物は、これが必要な構造を有する限り安定剤(S)として適している。従って、例えば市場でAvecia GmbH社のSolsperse(登録商標)、殊にSolsperse(登録商標) 39000、Th.Goldschmidt社のDispers(登録商標)、殊にDispers(登録商標)652の商品名のもの、およびDegussa社の相応する添加剤が適している。
【0165】
安定剤(S)は、通常、それぞれ使用された無機粒子(N)の質量に対して3〜40質量%、殊に5〜20質量%、殊に有利に8〜12質量%の量で使用される。
【0166】
安定剤(S)での無機粒子(N)の変性は、特に40℃で28日に亘る貯蔵の場合も下塗り塗料ならびにこの貯蔵された下塗り塗料から形成される塗膜の性質の重大な劣化、殊に下塗り塗料のレオロジー特性の劣化および生じる塗膜のフロップ(flop)の劣化が全く起こらないことが保証される。
【0167】
ワックスおよびワックス様化合物(W)
本発明によるマルチコート塗装系の下塗り塗料は、付加的に1つ以上のワックスおよび/または1つ以上のワックス様化合物を含有することができる。"(W)"は、ワックスならびにワックス様化合物である。
【0168】
適したワックスおよびワックス様化合物は、例えばWO 2008/058590中に記載されている。
【0169】
本発明に関連して、"ワックス"および"ワックス様化合物"は、次の性質を有する、天然で、および合成により取得される全ての物質である:
1.20℃で混練可能または固体。
2.粗大ないし微細な結晶、半透明ないし不透明。
3.分解なしに40℃を超えて溶融。
4.既に融点を僅かに上廻り低粘稠。
5.粘稠度および溶解性において著しく温度に依存。
6.弱い圧力下で研磨可能。
【0170】
物質が前記性質の複数の性質を満たさない場合には、この物質は、本発明の範囲内でもはや"ワックス"ではない(Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie;第4版増補改訂版;Verlag Chemie;Weinheim;Deerfield Beach,Florida;Basel,1983,第3頁参照)。
【0171】
ワックスまたはワックス様化合物(W)は、変性されていてよいし、および/または変性されていなくともよい。自体公知の通常の全てのワックスが適しているが、しかし、この場合には、合成ワックスを使用することが好ましい。
【0172】
天然ワックスの例は、植物性ワックス、例えばカルナウバ蝋、カンデリラ蝋、エスパルトワックス、グアルマワックス、木蝋、コルクワックス、モンタンワックス、オーリクリー蝋、玄米胚芽油、サトウキビ蝋、動物性ワックス、例えば蜜ろう、尾腺油、羊毛蝋、セラック蝋、鯨蝋、および地ろう、例えばセレシンおよびオゾケライトである。
【0173】
化学的に変性されたワックスの例は、水素化ホホバワックス、モンタンエステルワックスおよびサソールワックスである。
【0174】
また、例えば、変性されたポリオレフィンワックスおよび変性されていないポリオレフィンワックス、例えばポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックスおよびポリアミドワックスは、適している。更に、ワックスと同様に有機溶剤中での溶解性の顕著な温度依存性を示すポリアクリレートポリマーおよびポリアクリレートコポリマーも適している。
【0175】
ワックスまたはポリアクリレートポリマーおよびポリアクリレートコポリマーは、一般的に300〜20000g/mol、有利に1000〜10000g/molの数平均分子量および70〜180℃のウベローデによる滴点(Tropfpunkte nach Ubbelohde)を有する。滴点は、滑剤の1つの特性値である。この滴点は、滑剤グリースが標準化された試験条件下で伸びた液滴を形成するような温度を示す。この滴点は、DIN ISO 2176により調整される。
【0176】
ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスは、飽和モノカルボン酸または不飽和モノカルボン酸、またはこれらのアミドまたはエスエルに由来する、通常、コモノマー単位0.5〜40質量%を有するホモポリマーまたはコポリマーである。このようなコモノマー単位の例は、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリルアミド、ステアリン酸またはステアリン酸アミドまたはビニルアセテートの残基である。ポリオレフィンワックスは、市場で様々な呼称で入手可能である。
【0177】
ポリアミドワックスとしては、通常の塗料に使用される全てのポリアミドワックス、例えば市場で例えばDisparlon(登録商標)の名称で入手可能な脂肪酸含有のポリアミドワックスがこれに該当する。
【0178】
更に、ワックス様のポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンまたは変性シロキサン、例えばポリエステル変性されたシリコーン、ポリエーテル変性されたシリコーンおよびアクリレート変性されたシリコーンが適している。
【0179】
化合物(W)は、有利にそれぞれ下塗り塗料の全質量に対して0.2〜2質量%、特に有利に0.5〜1.5質量%の量で使用される。
【0180】
好ましい下塗り塗料は、殊に、無機粒子(N)およびワックスおよび/またはワックス様化合物(W)の全体量がそれぞれ下塗り塗料の全質量に対して0.4〜4質量%、特に有利に1〜3質量%であるような量で粒子(N)および単数または複数の化合物(W)が使用される場合に得られる。
【0181】
好ましくは、無機粒子(N)およびワックスおよび/またはワックス様化合物(W)の全体量がメタリック顔料の含量なしに着色顔料の含量に一致される。下塗り塗料の着色顔料の含量が少なければ少ないほど、無機粒子(N)およびワックスおよび/またはワックス様化合物(W)の全体量は、ますます高くなる。それというのも、着色顔料の含量が少ない場合には、一般的にフロップは、よりいっそう重要になるからである。メタリック顔料または効果顔料を含有しない塗料、いわゆる一体色下塗り塗料の場合には、同様に無機粒子(N)およびワックスおよび/またはワックス様化合物(W)からなる組合せが使用され、この場合この組合せは、殊に安定化作用を有するが、しかし、この場合には、一般的に無機粒子およびワックスおよび/またはワックス様化合物(W)の僅かな全体量で十分である。
【0182】
次に、本発明を実施例に関連してさらに説明する。
【実施例】
【0183】

1.クリヤラッカーの製造
1.1.チキソトロープペースト#1の製造(CC−T#1)
Vollrath社の実験室用攪拌機ミル中に、ヒドロキシル基およびカルバメート基を含有するメタクリレートコポリマー326.0質量部、酢酸ペンチル394.0質量部およびDegussa社のAerosil(登録商標)805 10.0質量部(Degussa AG社の熱分解法珪酸)からなる粉砕装填材料730.0gを、石英砂1100.0質量部(粒径0.7〜1mm)と一緒に装填し、および水冷下に30分間分散させた。引続き、石英砂を分離除去した。
【0184】
1.2.チキソトロープペースト#2の製造(CC−T#2)
Vollrath社の実験室用攪拌機ミル中に、ヒドロキシル基およびカルバメート基を含有するメタクリレートコポリマー326.0質量部、酢酸ペンチル394.0質量部およびCab−o−SilTM TS610 10.0質量部(Cabot Corp.社の疎水性珪酸)からなる粉砕装填材料730.0gを、石英砂1100.0質量部(粒径0.7〜1mm)と一緒に装填し、および水冷下に30分間分散させた。引続き、石英砂を分離除去した。
【0185】
1.3.本発明によるマルチコート塗装系のクリヤラッカーおよび比較クリヤラッカーのための練り顔料CC−V0の製造
本発明によるマルチコート塗装系、CC−V3およびCC−V6、のクリヤラッカーおよび本発明によらないマルチコート塗装系、CC−V1、CC−V2、CC−V4およびCC−V5のクリヤラッカーを製造するために、最初に練り顔料CC−V0を、次の成分の混合および均質化によって製造した:
ヒドロキシル基およびカルバメート基を含有するメタクリレートコポリマー153.0質量部、
カルバメート官能性アクリレート228.0質量部、
エポキシ−アクリレート−結合剤16.0質量部、
メタクリレートコポリマー88.0質量部、
市販のSCAアクリレート100.0質量部、
製造例1.1.からのチキソトロピーペースト#1(CC−T#1)42.0質量部、
製造例1.2.からのチキソトロピーペースト#2(CC−T#2)84.0質量部、
市販のヘキサメトキシメチル−メラミン樹脂101.0質量部、
イソブタノール22.0質量部、
市販の錫触媒2.0質量部(ジブチル錫ジアセテート)、
オクタン酸3.0質量部、
燐酸−n−ブチルエステル0.4質量部、
チキソトロピーを改善するための市販の添加剤2.0質量部(ポリヒドロキシカルボン酸−アミドの52%の溶液)、
市販のシリコーン不含のポリエステルベースの流展添加剤2.0質量部、
市販のシリコーン不含の脱気剤2.0質量部(ビニルエーテルコポリマーとアクリレートとの組合せの77%の溶液)、
市販のヒドロキシフェニルトリアジンベースのUV吸収剤9.0質量部、
市販の立体障害アミン(HALS)5.0質量部、
酢酸ペンチル20.6質量部、
SolventnaphtaTM47.0質量部、市販のUV吸収剤8.0質量部の混合物、および
ブチルジグリコールアセテート40.0質量部。
【0186】
1.3.1.比較一成分系クリヤラッカーCC−V1の製造(ブロック化されていないDDBSA触媒との比較)
一成分系クリヤラッカーCC−V1の製造のために、製造例1.3.からの練り顔料CC−V0 97.5質量部に市販のブロック化されていないドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒0.9質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5076)を添加し、キシレン4.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で48秒の噴霧粘度に調節した。その後に、一成分系クリヤラッカーCC−V1は、クリヤラッカーの全質量に対して53.7質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0187】
1.3.2.比較一成分系クリヤラッカーCC−V2の製造(アミンによりブロック化されたDDBSA触媒との比較)
一成分系クリヤラッカーCC−V2の製造のために、製造例1.3.からの練り顔料CC−V0 97.5質量部に市販のアミンによりブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒2.5質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5225)を添加し、キシレン5.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で48秒の噴霧粘度に調節した。その後に、一成分系クリヤラッカーCC−V2は、クリヤラッカーの全質量に対して53.4質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0188】
1.3.3.一成分系クリヤラッカーCC−V3の製造(式(II)によるエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたDDBSA触媒を用いて)
一成分系クリヤラッカーCC−V3の製造のために、製造例1.3.からの練り顔料CC−V0 97.5質量部に市販のエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒2.5質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)55414)を添加し、キシレン4.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で48秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明により使用しうる一成分系クリヤラッカーCC−V3は、クリヤラッカーの全質量に対して53.1質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0189】
1.3.4.比較一成分系クリヤラッカーCC−V4の製造(ブロック化されていないp−TSA触媒との比較)
一成分系クリヤラッカーCC−V4の製造のために、製造例1.3.からの練り顔料CC−V0 97.5質量部に市販のブロック化されていないパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒1.6質量部(King Industries,Inc.社のK−Cure(登録商標)1040)を添加し、キシレン5.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で48秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明によらない一成分系クリヤラッカーCC−V4は、クリヤラッカーの全質量に対して53.8質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0190】
1.3.5.比較一成分系クリヤラッカーCC−V5の製造(アミンによりブロック化されたp−TSA触媒との比較)
一成分系クリヤラッカーCC−V5の製造のために、製造例1.3.からの練り顔料CC−V0 97.5質量部に市販のアミンによりブロック化されたパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒2.5質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)2500)を添加し、キシレン4.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で48秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明によらない一成分系クリヤラッカーCC−V5は、クリヤラッカーの全質量に対して53.8質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0191】
1.3.6.一成分系クリヤラッカーCC−V6の製造(式(I)によるエポキシによりブロック化されたp−TSA触媒を用いて)
一成分系クリヤラッカーCC−V6の製造のために、製造例1.3.からの練り顔料CC−V0 97.5質量部に市販のエポキシによりブロック化されたパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒2.5質量部(Cytec Surface Specialities社のCycat(登録商標)VXK 6357)を添加し、キシレン5.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で48秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明により使用しうる一成分系クリヤラッカーCC−V6は、クリヤラッカーの全質量に対して53.4質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0192】
2.下塗り塗料の製造
2.1アクリレート結合剤の製造(BC−B)
反応器中にソルベッソ(Solvesso)100 13.2質量部を装入し、167℃に加熱する。この反応器に、0.35バールの反応器中の圧力で4時間に亘って、アクリル酸2.1質量部、ヒドロキシエチルアクリレート10.8質量部、2−エチルヘキシルアクリレート11.5質量部、ブチルアクリレート11.5質量部およびスチレン14.3質量部からなるモノマー混合物とジ−第三ブチルペルオキシド0.7質量部およびソルベッソ(Solvesso)100(50%で)中のジクミルペルオキシドの溶液11.1質量部からなる開始剤混合物とを同時に添加する。引続き、上記の温度および圧力で1時間維持し、その後に1時間に亘ってε−カプロラクトン21.5質量部を添加する。150℃に冷却し、および0.35バールの圧力で1.5時間維持する。この反応混合物を冷却し、ソルベッソ(Solvesso)100 4.0質量部を用いて、結合剤の全質量に対して75質量%の固体含量に調節する。こうして得られたアクリレート樹脂は、それぞれ固体に対して23mg KOH/gの酸価および73mg KOH/gのOH価を有する。
【0193】
2.2.キャリヤー樹脂の製造(BC−1)
反応器中にキシレン5.8質量部、トルエン5,8質量部およびメタンスルホン酸0.2質量部を装入し、104℃に加熱する。引続き、12−ヒドロキシステアリン酸80.6質量部を反応器に供給し、171℃で還流下に反応水を除去しながら煮沸する。反応を130℃の固体含量に対して35の酸価が達成された際に終結させる。冷却後、ソルベントナフサ8.0質量部を有する固体をキャリヤー樹脂溶液の全質量に対して80.0質量部に調節する。
【0194】
2.3.ポリマーマイクロ粒子の製造(BC−M)
反応器中にソルベントナフサ43.2質量部、N,N−ジメチルココサミン0.08質量部および酢酸エチル1.0質量部を装入し、104℃に加熱する。反応器に0.69バールの反応器中での圧力で2時間で、メチルメタクリレート27.6質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート3.8質量部、グリシジルメタクリレート0.8質量部、上記のキャリヤー樹脂12.8質量部(BC−1)、メタクリル酸1.5質量部およびオクチルメルカプタン1.5質量部からなるモノマー混合物と第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート2.3質量部およびソルベントナフサ5.1質量部からなる開始剤混合物とを同時に添加する。引続き、3時間上記の温度および圧力で維持し、その後冷却し、ソルベントナフサ7.5質量部を用いてポリマーマイクロ粒子溶液の全質量に対して41.0%の固体含量に調節する。
【0195】
2.4.安定化された無機粒子の製造(BC−N)
受器中で、2.1.に記載のアクリレート結合剤10.0質量部、Degussa社のAerosil(登録商標)380 6.0質量部(380m2/gの比表面積(BET)、7nmの一次粒子の平均寸法およびか焼した物質に対する少なくとも99.8質量%のSiO2含量を有するDegussa AG社の市販の親水性熱分解法珪酸)、ソルベントナフサ41.7質量部、酢酸ブチル41.7質量部および6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、ラウリン酸およびポリエチレングリコールを含有する、安定剤の全質量に対して2時間および130℃での96.2%の非揮発性含量、それぞれ130℃での固体含量に対して50mg KOH/gのOH価および17,2mg KOH/gの酸価を有する安定剤(S)としての脂肪酸エステル0.6質量部(例えば、Th.Goldschmidt社の脂肪酸エステルSolsperse 39000をベースとする市販の湿潤添加剤)を2時間および130℃で混合し、および分散させる。
【0196】
2.5.ワックス分散液の製造(BC−W)
BASF AG社のポリエチレンワックスEVA 1 6.0質量部(87〜92℃の融点、約95℃のウベローデ滴点および約6500g/molの質量平均分子量を有するエチレン/ビニルアセテートコポリマーをベースとする市販のポリエチレンワックス)およびキシレン40.0質量部を徐々に攪拌しながら100℃で溶解する。更に、攪拌しながらこの溶液を70℃に冷却し、徐々に酢酸ブチル54.0質量部(工業用、約85%の)を添加し、この場合には、望ましいワックスの沈殿が開始する。更に、攪拌しながら分散液をさらに35℃にまで冷却させる。
【0197】
2.6.アルミニウム効果顔料のペーストの製造(BC−E)
ペーストを14μmの平均粒径を有する銀ドルタイプの市販の非リーフィング性のアルミニウム効果顔料ペースト33.3質量部(Eckart社のMetallux 2192)、酢酸ブチル33.3質量部および項目2.1.に記載のアクリレート結合剤33.4質量部(BC−B)から攪拌しながら製造する。
【0198】
2.7.アエロジル(Aerosil)ペーストの製造(BC−A)
Vollrath社の実験室用攪拌機ミル中に、項目2.1.に記載のアクリレート結合剤30.0質量部(BC−B)、ソルベントナフサ160/180 47.0質量部、ブタノール10.0質量部、Aerosil R805 13.0質量部(Degussa社の市販のAerosil)からなる粉砕装填材料100.0gを装填し、および水冷下に30分間分散させた。引続き、石英砂を分離除去した。
【0199】
2.8.硫酸バリウム−ペーストの製造(BC−BP)
Vollrath社の実験室用攪拌機ミル中に、項目2.1.に記載のアクリレート結合剤19.5質量部(BC−B)、ソルベントナフサ160/180 10.7質量部、ベントン(Bentone)34 0.6質量部(Elementis Specialeties社の市販のレオロジー添加剤)、エタノール0.2質量部、Blanc Fixe Micro65.0質量部(Sachtleben社の市販の硫酸バリウム)および酢酸ブチル4.0質量部からなる粉砕装填材料100gを装填し、および水冷下に30分間分散させた。引続き、石英砂を分離除去した。
【0200】
2.9.白色のペーストの製造(BC−WP)
Vollrath社の実験室用攪拌機ミル中に、項目2.1.に記載のアクリレート結合剤152.0質量部(BC−B)、ペンチルプロピオネート33.6質量部、ベントン(Bentone)34 6.4質量部およびTiPure(登録商標)R902 528.0質量部(DuPont de Nemours and Company社の市販の二酸化チタン)を、石英砂1100.0質量部(粒径0.7〜1mm)と一緒に装填し、および水冷下に30分間分散させた。引続き、石英砂を分離除去した。
【0201】
2.10.CAB溶液の製造(BC−C)
受器中で酢酸ブチル76.0質量部をCAB 551−0.2 24.0質量部(Eastman社の市販のセルロースアセトブチレート)と30分間混合する。
【0202】
2.11.本発明によるマルチコート塗装系の一体色塗料および比較一体色塗料のための練り顔料U−BC−V0の製造
本発明によるマルチコート塗装系の一体色塗料U−BC−V3およびU−BC−V6、および本発明によらないマルチコート塗装系の一体色塗料U−BC−V1、U−BC−V2、U−BC−V4およびU−BC−V5の製造のために、最初に練り顔料U−BC−V0を次の成分の混合および均質化によって製造する:
項目2.3.に記載のポリマーマイクロ粒子18.0質量部(BM−M)、
ペンチルプロピオネート1.3質量部、
酢酸ブチル3.0質量部、
市販のヘキサメトキシメチル/ブチルメラミン樹脂9.0質量部、
ポリブチルアクリレート樹脂をベースとする市販の湿潤添加剤0.1質量部、
項目2.7.に記載のアエロジルペースト3.5質量部(BC−A)、
項目2.8.に記載のBaSO4ペースト4.6質量部(BC−BP)、
項目2.9.に記載の白色ペースト40.0質量部(BC−WP)、
項目2.1.に記載の結合剤12.5質量部(BC−B)、
項目2.10.に記載のCAB溶液2.5質量%(BC−C)、
市販のヒドロキシフェニルトベンズトリアゾールベースのUV吸収剤0.5質量部、
エタノール0.3質量部および
酢酸ブチル2.2質量部。
【0203】
2.11.1.一体色塗料U−BC−V1の製造(ブロック化されていないDDBSA触媒との比較)
一体色下塗り塗料の製造のために、製造例2.11からの練り顔料U−BC−V0 97.5質量部に市販のブロック化されていないドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒0.9質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5076)を添加し、酢酸ブチル17.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、下塗り塗料U−BC−V1は、下塗り塗料の全質量に対して51.7質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0204】
2.11.2.比較一体色下塗り塗料U−BC−V2の製造(アミンによりブロック化されたDDBSA触媒との比較)
一体色下塗り塗料U−BC−V2の製造のために、製造例2.11からの練り顔料U−BC−V0 97.5質量部に市販のアミンによりブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒2.5質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5225)を添加し、酢酸ブチル18.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明によらない下塗り塗料U−BC−V2は、下塗り塗料の全質量に対して50.4質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0205】
2.11.3.一成分系下塗り塗料U−BC−V3の製造(式(II)によるエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたDDBSA触媒を用いて)
一体色下塗り塗料U−BC−V3の製造のために、製造例2.11からの練り顔料U−BC−V0 97.5質量部に市販のエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒2.5質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5414)を添加し、酢酸ブチル17.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明により使用しうる下塗り塗料U−BC−V3は、下塗り塗料の全質量に対して51.1質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0206】
2.11.4.比較一体色下塗り塗料U−BC−V4の製造(ブロック化されていないp−TSA触媒との比較)
一体色下塗り塗料U−BC−V4の製造のために、製造例2.11からの練り顔料U−BC−V0 97.5質量部に市販のブロック化されていないパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒1.6質量部(King Industries,Inc.社のK−Cure(登録商標)1040)を添加し、酢酸ブチル17.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、下塗り塗料U−BC−V4は、下塗り塗料の全質量に対して51.8質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0207】
2.11.5.比較一体色下塗り塗料U−BC−V5の製造(アミンによりブロック化されたp−TSA触媒との比較)
本発明によらない一体色下塗り塗料U−BC−V5の製造のために、製造例2.11からの練り顔料U−BC−V0 97.5質量部に市販のアミンによりブロック化されたパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒2.5質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)2500)を添加し、酢酸ブチル17.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明によらない下塗り塗料U−BC−V5は、下塗り塗料の全質量に対して50.8質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0208】
2.11.6.一成分系下塗り塗料U−BC−V6の製造(式(I)によるエポキシによりブロック化されたp−TSA触媒を用いて)
一体色下塗り塗料U−BC−V6の製造のために、製造例2.11からの練り顔料U−BC−V0 97.5質量部に市販のエポキシによりブロック化されたパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒2.5質量部(Cytec Surface Specialities社のCycat(登録商標)VXK 6357)を添加し、酢酸ブチル17.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明により使用しうる下塗り塗料U−BC−V6は、下塗り塗料の全質量に対して51.4質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0209】
2.12.本発明によるマルチコート塗装系のメタリック下塗り塗料および比較メタリック下塗り塗料のための練り顔料M−BC−V0の製造
本発明によるマルチコート塗装系のメタリック下塗り塗料M−BC−V3およびM−BC−V6、および本発明によらないマルチコート塗装系のメタリック下塗り塗料M−BC−V1、M−BC−V2、M−BC−V4およびM−BC−V5の製造のために、最初に練り顔料M−BC−V0を次の成分の混合および均質化によって製造する:
項目2.5.に記載のワックス分散液10.0質量部(BC−W)、
項目2.3.に記載のポリマーマイクロ粒子22.0質量部(BC−M)、
市販のヘキサメトキシメチル/ブチルメラミン樹脂11.5質量部、
項目2.4.に記載の無機粒子8.0質量部(BC−N)、
アミン樹脂により変性されたアクリルコポリマーをベースとする市販のシリコーン不含の湿潤添加剤0.5質量部、
市販のヒドロキシフェニルトベンズトリアゾールベースのUV吸収剤0.5質量部、
項目2.1.に記載の結合剤21.0質量部(BC−B)、
項目2.10.に記載のCAB溶液3.0質量部(BC−C)、
項目2.6に記載のアルミニウム効果顔料のペースト20.4質量部(BC−E)および
酢酸ブチル1.1質量部。
【0210】
2.12.1.比較メタリック下塗り塗料B−BC−V1の製造(ブロック化されていないDDBSA触媒との比較)
メタリック下塗り塗料の製造のために、製造例2.12からの練り顔料B−BC−V0 98.0質量部に市販のブロック化されていないドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒0.7質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5076)を添加し、酢酸ブチル2.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、下塗り塗料M−BC−V1は、下塗り塗料の全質量に対して40.8質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0211】
2.12.2.比較メタリック下塗り塗料M−BC−V2の製造(アミンによりブロック化されたDDBSA触媒との比較)
メタリック下塗り塗料M−BC−V2の製造のために、製造例2.12からの練り顔料B−BC−V0 98.0質量部に市販のアミンによりブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒2.0質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5225)を添加し、酢酸ブチル2.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、本発明によらない下塗り塗料M−BC−V2は、下塗り塗料の全質量に対して40.4質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0212】
2.12.3.メタリック下塗り塗料M−BC−V3の製造(式(II)によるエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたDDBSA触媒を用いて)
メタリック下塗り塗料M−BC−V3の製造のために、製造例2.12からの練り顔料M−BC−V0 98.0質量部に市販のエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒2.0質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)5414)を添加し、酢酸ブチル3.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、下塗り塗料M−BC−V3は、下塗り塗料の全質量に対して40.1質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0213】
2.12.4.比較メタリック下塗り塗料M−BC−V4の製造(ブロック化されていないp−TSA触媒との比較)
メタリック下塗り塗料M−BC−V4の製造のために、製造例2.12からの練り顔料M−BC−V0 98.0質量部に市販のブロック化されていないパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒1.3質量部(King Industries,Inc.社のK−Cure(登録商標)1040)を添加し、酢酸ブチル2.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、下塗り塗料M−BC−V4は、下塗り塗料の全質量に対して41.1質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0214】
2.12.5.比較メタリック下塗り塗料M−BC−V5の製造(アミンによりブロック化されたp−TSA触媒との比較)
メタリック下塗り塗料M−BC−V5の製造のために、製造例2.12からの練り顔料B−BC−V0 98.0質量部に市販のアミンによりブロック化されたパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒2.0質量部(King Industries,Inc.社のNacure(登録商標)2500)を添加し、酢酸ブチル2.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、下塗り塗料M−BC−V5は、下塗り塗料の全質量に対して40.8質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0215】
2.11.6.メタリック下塗り塗料M−BC−V6の製造(式(I)によるエポキシによりブロック化されたp−TSA触媒を用いて)
本発明により使用しうるメタリック下塗り塗料M−BC−V6の製造のために、製造例2.12からの練り顔料M−BC−V0 98.0質量部に市販のエポキシによりブロック化されたパラ−トルエンスルホン酸(p−TSA)触媒2.0質量部(Cytec Surface Specialities社のCycat(登録商標)VXK 6357)を添加し、酢酸ブチル4.0質量部を用いて23℃でフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23秒の噴霧粘度に調節した。その後に、下塗り塗料M−BC−V6は、下塗り塗料の全質量に対して40.4質量%の固体含量を有していた(1時間/125℃)。
【0216】
3.試験結果
3.1.クリヤラッカーならびに一体色下塗り塗料およびメタリック下塗り塗料の貯蔵安定性試験
例示的な塗料CC−V1〜CC−V6、U−BC−V1〜U−BC−V6およびM−BC−V1〜M−BC−V6の中から、貯蔵安定性をこれらの例示的な塗料の60℃の温度での3日間の貯蔵によってフォード3フローカップ(Ford 3 Flow Cup)中で23℃での貯蔵前および貯蔵後に測定した。結果は、第1表中に記載されている。
【0217】
【表1】

【0218】
ブロック化されていない触媒を用いての例示的な塗料は、貯蔵安定性において明らかな欠点を示す。アミンによりブロック化された触媒を用いての塗料およびエポキシ−(イソシアネート)によりブロック化された触媒は、貯蔵の際に粘度の僅かな上昇だけを示す。
【0219】
3.2.マルチコート塗装系V1〜V24の製造
例示的な塗料CC−V1〜CC−V6、U−BC−V1〜U−BC−V6およびM−BC−V1〜M−BC−V6の比色特性を試験するために、通常の公知方法で寸法10cm×20cmの試験パネルを製造した。このために、コイル被覆されたパネルを、BASF Coatings AG社のポリエステルをベースとする、市販の常用の白色または灰色のサーフェイサーで被覆し、その後に生じるサーフェイサー被膜を20℃および65%の相対空気湿度で5分間フラッシュオフさせ、および空気循環炉内で165℃のパネルの温度で5分間焼き付けた。
【0220】
白色のサーフェイサーを有する試験パネルを一体色下塗り塗料U−BCの塗装のために使用し、灰色のサーフェイサーを有する試験パネルをメタリック下塗り塗料M−BCのために使用した。
【0221】
3.2.1.マルチコート塗装系V1〜V6の形成
試験パネルを20℃に冷却した後、第1のシリーズにおいて一体色下塗り塗料U−BC−V1〜U−BC−V6を1回の静電吹付塗布(ESTA)によって25μmの乾燥膜厚で塗布した。引続き、下塗り塗膜を5分間フラッシュオフさせ、クリヤラッカーCC−V1〜CC−V6で約45μmの乾燥膜厚で上塗りした。このシリーズにおいて、下塗り塗料U−BC−V1をクリヤラッカーCC−V1と組合せてマルチコート塗装系V1を生じ、下塗り塗料U−BC−V2をクリヤラッカーCC−V2と組み合わせてマルチコート塗装系V2を生じ、さらに以下同様。その後に、下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜を140℃のパネル温度で10分間焼き付けた。160℃のパネル温度で10分間で第2のシリーズの試験パネルの焼きすぎを生じた。
【0222】
3.2.2.マルチコート塗装系V7〜V12の形成
第2のシリーズにおいて、灰色のサーフェイサーを有する試験パネル上に下塗り塗料M−BC−V1〜M−BC−V6を2回の静電吹付塗布(ESTA)によって18μmの乾燥膜厚で塗布した。引続き、下塗り塗膜を5分間フラッシュオフさせ、クリヤラッカーCC−V1〜CC−V6で約45μmの乾燥膜厚で上塗りした。このシリーズにおいて、下塗り塗料M−BC−V1をクリヤラッカーCC−V1と組合せてマルチコート塗装系V7を生じ、下塗り塗料M−BC−V2をクリヤラッカーCC−V2と組み合わせてマルチコート塗装系V8を生じ、さらに以下同様。その後に、下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜を140℃のパネル温度で10分間焼き付けた。160℃のパネル温度で10分間で同じシリーズの試験パネルの焼きすぎを生じた。
【0223】
3.2.3.マルチコート塗装系V13〜V18の形成
第3のシリーズにおいて、白色のサーフェイサーを有する試験パネル上に下塗り塗料U−BC−V1〜U−BC−V6を1回の静電吹付塗布(ESTA)によって25μmの乾燥膜厚で塗布した。引続き、下塗り塗膜を5分間フラッシュオフさせ、クリヤラッカーCC−V2で約45μmの乾燥膜厚で上塗りした。このシリーズにおいて、下塗り塗料U−BC−V1をクリヤラッカーCC−V2と組合せてマルチコート塗装系V13を生じ、下塗り塗料U−BC−V2をクリヤラッカーCC−V2と組み合わせてマルチコート塗装系V14を生じ、さらに以下同様。その後に、下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜を140℃のパネル温度で10分間焼き付けた。160℃のパネル温度で10分間で第2のシリーズの試験パネルの焼きすぎを生じた。
【0224】
3.2.4.マルチコート塗装系V19〜V24の形成
第4のシリーズにおいて、白色のサーフェイサーを有する試験パネル上に下塗り塗料U−BC−V2を1回の静電吹付塗布(ESTA)によって25μmの乾燥膜厚で塗布した。引続き、下塗り塗膜を5分間フラッシュオフさせ、クリヤラッカーCC−V1〜CC−V6で約45μmの乾燥膜厚で上塗りした。このシリーズにおいて、下塗り塗料U−BC−V2をクリヤラッカーCC−V1と組合せてマルチコート塗装系V19を生じ、下塗り塗料U−BC−V2をクリヤラッカーCC−V2と組み合わせてマルチコート塗装系V20を生じ、さらに以下同様。その後に、下塗り塗膜およびクリヤラッカー塗膜を140℃のパネル温度で10分間焼き付けた。160℃のパネル温度で10分間で第2のシリーズの試験パネルの焼きすぎを生じた。
【0225】
この場合、マルチコート塗装系V3、V6、V9およびV12は、本発明によるマルチコート塗装系である。別の組合せは、比較試験の本発明によらないマルチコート塗装系を生じた。
【0226】
3.3.得られたマルチコート塗装系V1〜V24の試験
マルチコート塗装系V1およびV24をX−Rite社の分光光度計(MA68 II Multo−Angle Spectrophotometer)を用いて測定し、黄変度db*を記録した。マルチコート塗装系V1〜V6のための色調対照として、140℃で焼き付けたマルチコート塗装系V1を採用した。V7〜V12には、140℃で焼き付けたV7を使用し、V13〜V18には、140℃で焼き付けたV13を使用し、およびV19〜V24には、140℃で焼き付けたV19を使用した。メタリックマルチコート塗装系のために算出された相対黄変度を、目視角度15°、25°、45°、75°および110°の平均値を用いて計算し、および式
【0227】
【数1】

により算出した。
【0228】
上記式において、マルチコート塗装系V7の対照rは、140℃で焼き付けられ、試料pは、試験V7〜V12である。
【0229】
一体色の白色の色調について、黄変db*0.5は、明らかに目視可能である。
黄変結果は、第2表中に記載されている。
【0230】
【表2】

【0231】
第2表中にまとめた結果は、本発明によるマルチコート塗装系V3、V6、V9およびV12が140℃ならびに160℃の焼きすぎ温度(Ueberbrennungstemperatur)で全く黄変を有しない事実を示す。付加的にこのマルチコート塗装系は、良好な貯蔵安定性を示す(上記参照)。
【0232】
本発明によらないマルチコート塗装系V2、V5、V6およびV11について、高い黄変度が算出された。本発明によらないマルチコート塗装系V1、V4、V7およびV10は、実際に良好な黄変度を示すが、しかし、劣悪な貯蔵安定性を有する。
【0233】
下塗り塗料だけ、またはクリヤラッカーだけが式(I)または(II)の化合物を含有するような本発明によらないマルチコート塗装系V13〜V24は、140℃の温度で極めて良好な黄変結果を示す。しかし、このマルチコート塗装系が焼きすぎを生じた場合(160℃)には、黄変度は、明らかに上昇する。
【0234】
従って、本発明によるマルチコート塗装系だけは、塗膜の焼きすぎの際(160℃)に同時に良好な貯蔵安定性と共に僅かな黄変度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する非水性下塗り塗料の少なくとも1つの下塗り塗膜および
ii.クリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有する非水性クリヤラッカーの少なくとも1つのクリヤラッカー塗膜を含む、マルチコート塗装系であって、下塗り塗料およびクリヤラッカーが
A.式(I)
【化1】

〔式中、nは、1〜10であり、
1は、1〜18個のC原子を有する一価または二価のアルキル基またはアルキレン基であるか、またはそれぞれ1〜18個のC原子を有するモノアルキル化またはジアルキル化されたフェニル基またはナフチル基であり、
5およびR6は、互いに無関係に水素、または1〜12個のC原子を有するアルキル基であるか、またはR5およびR6は、一緒になって6〜12個のC原子を有するシクロアルキル基であり、ならびに
a.R4は、水素原子を表わし、およびR2およびXは、不在であるか、または
b.R4は、メチレン基を表わし、
2は、水素原子、1〜18個のC原子を有する一価または二価のアルキル基、ビスフェノールA基またはビスフェノールF基を表わし、この場合これらの基は、置換されていてよく、および
Xは、カルボニル基または酸素原子を表わし、この場合Xは、場合によるものであり、この場合式(I)の化合物は、350〜2000g/molの数平均分子量を有し、およびnが1を上廻る場合には、基R1またはR2の少なくとも1つは、少なくとも二価である〕で示される少なくとも1つのエポキシ−スルホン酸化合物、または
B.式(II)
【化2】

〔式中、R1、R2、R4、R5、R6、Xおよびnは、式(I)の化合物と同様の意味を有し、および
3は、1〜18個のC原子を有するアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基、またはポリマー基であり、この場合R3は、置換されていてよく、この場合nが1を上廻る場合には、基R1、R2またはR3の少なくとも1つは、少なくとも二価である〕で示される少なくとも1つのエポキシ−イソシアネートによりブロック化されたスルホン酸化合物を、それぞれの塗料の全質量に対して、それぞれ0.5〜3.0質量%含有し、この場合式(II)による化合物は、少なくとも1000g/molの数平均分子量を有する、前記のマルチコート塗装系。
【請求項2】
少なくとも1つの下塗り塗料またはクリヤラッカーは、nが1〜5である式(I)または(II)の少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1記載のマルチコート塗装系。
【請求項3】
下塗り塗料および/またはクリヤラッカーがそれぞれ互いに無関係に、式(I)または(II)の少なくとも1つの化合物を、それぞれの塗料の全質量に対してそれぞれ1.5〜3.0質量%含有する、請求項1または2記載のマルチコート塗装系。
【請求項4】
下塗り塗料および/またはクリヤラッカーがそれぞれ互いに無関係に、式(I)または(II)の少なくとも1つの化合物を、それぞれの塗料の全質量に対してそれぞれ1.8〜2.7質量%含有する、請求項1または2記載のマルチコート塗装系。
【請求項5】
下塗り塗料が、付加的に、それぞれ下塗り塗料の全質量に対して、
a.少なくとも1つの結合剤15〜50質量%、
b.架橋剤としての少なくとも1つのメラミン樹脂誘導体5〜30質量%、
c.少なくとも1つの着色剤0.5〜49質量%、
d.少なくとも1つの有機溶剤30〜65質量%、
e.少なくとも1つの助剤または添加剤0.05〜40質量%を含有し、この場合下塗り塗料の全成分の質量の割合は、合計して100%になる、請求項1から4までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系。
【請求項6】
下塗り塗料が添加剤としてポリマーマイクロ粒子、無機粒子、ワックスおよびワックス様化合物の群から選択された、少なくとも1つの成分を含有する、請求項5記載のマルチコート塗装系。
【請求項7】
クリヤラッカーが、付加的に、それぞれクリヤラッカーの全質量に対して、
a.少なくとも1つの結合剤15〜50質量%、
b.架橋剤としての少なくとも1つのメラミン樹脂誘導体5〜30質量%、
c.少なくとも1つの有機溶剤30〜50質量%、
d.少なくとも1つの助剤または添加剤0.05〜40質量%を含有し、この場合クリヤラッカーの全成分の質量の割合は、合計して100%になる、請求項1から6までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系。
【請求項8】
それぞれの塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する下塗り塗料の少なくとも1つの他の下塗り塗膜が含まれ、この下塗り塗料は、式(I)および/または(II)による、1つ以上の、同一かまたは異なる化合物を含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系。
【請求項9】
式(I)による化合物も式(II)による化合物も含有しない下塗り塗料BIの少なくとも1つの他の下塗り塗膜が含まれる、請求項1から8までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系を形成させる方法であって、
次の順序で、
a.最初に、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する少なくとも1つの下塗り塗料、および
b.引続きクリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有する少なくとも1つのクリヤラッカーを基体上に塗布し、この場合下塗り塗料中およびクリヤラッカー中には、それぞれの塗料の全質量に対して、式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の少なくとも1つの化合物がそれぞれ0.5〜3.0質量%含有されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系を形成させる方法。
【請求項11】
次の順序で、
a.最初に、式(I)の化合物も式(II)の化合物も含有しない少なくとも1つの下塗り塗料BI、
b.引続き下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する少なくとも1つ下塗り塗料、および
c.その後にクリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有する少なくとも1つのクリヤラッカーを基体上に塗布し、この場合第2の下塗り塗料中およびクリヤラッカー中には、それぞれの塗料の全質量に対して、式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の少なくとも1つの化合物がそれぞれ0.5〜3.0質量%含有されている、請求項10記載のマルチコート塗装系の形成方法。
【請求項12】
マルチコート塗装系を形成させるための、下塗り塗料の全質量に対して少なくとも35質量%の固体含量を有する下塗り塗料中、およびクリヤラッカーの全質量に対して少なくとも50質量%の固体含量を有するクリヤラッカー中の触媒としての式(I)および/または(II)のスルホン酸化合物の使用。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系で被覆された、金属および/またはプラスチックからなる基体。
【請求項14】
自動車の量産塗装、輸送用車両塗装および自動車修復塗装のため、船舶建造および航空機の組立のための構成部材を被覆するため、または家庭用電化製品および電気機器またはこれらの部材のための構成部材を被覆するための請求項1から9までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系の使用。

【公表番号】特表2012−524674(P2012−524674A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506395(P2012−506395)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002439
【国際公開番号】WO2010/121799
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】