説明

マルチコート塗装系の機能層のための塗料材料としての無水組成物

無水組成物であって、結合剤としての少なくとも1つの飽和または不飽和のエポキシ変性されたポリエステル、他の結合剤としての少なくとも1つのアクリレート−またはポリウレタンポリマー、ポリマーミクロ粒子、架橋剤としての、ブロック化されたイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂からなる官能基を含有する、少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの顔料、少なくとも1つの有機溶剤および少なくとも1つの助剤または添加剤を含有し、この場合この組成物の固体は、少なくとも50質量%である、上記無水組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、無水組成物、塗料材料としての該無水組成物の使用、該組成物を含有するマルチコート塗装系、マルチコート塗装系の製造法ならびに該マルチコート塗装系の使用に関する。更に、本発明は、前記組成物またはマルチコート塗装系で被覆された基体に関する。
【0002】
従来技術
現在では、自動車量産塗装の範囲で使用されるマルチコート塗装系は、一般に、腐蝕およびストーンチッピングから保護する、電気泳動的に施されるプライマーとその後の、ストーンチッピングから保護しかつ表面を平滑にするサーフェイサーコートとからなる。この場合、このサーフェイサーコートは、通常、既に焼き付けられたプライマー上に施され、かつ硬化される。しかし、プライマーおよびサーフェイサーコートを一緒に硬化させることも可能である。硬化されたサーフェイサーコート上には、引続き、それぞれの色調に依存して1つ以上のスプレー通路で塗装される、色付与および/または効果付与するベースコートおよびその上にウェット・オン・ウェット法で塗装される防護クリヤコートから、ワンコート塗装または装飾ツーコート塗装が施される。引続き、ワンコート塗装は、硬化されるかまたは単数または複数のベースコートおよびクリヤラッカー層は、一緒に硬化される。最後に記載された"ウェット・オン・ウェット"法の順序は、"ツーウェット(2−Wet)"、"ツーコートワンベイク(2−Coats−1−Bake)"または"ツーシーワンビー(2C1B)"とも呼称される。
【0003】
"ウェット・オン・ウェット塗装"は、中間乾燥なしのデュアルまたはマルチプル塗装のための1つの表現である(Roempp Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag Stuttgart/New York 1998,第406頁,見出し語"Nass−in−Nass−Lackierung")。
【0004】
最近、VOCおよびCO2放出量の減少は、ますます重要なこととなっている。この場合には、一面で、水性塗料、粉末塗料およびハイソリッドペイントの場合のように、低い溶剤含量を有する塗料の使用の増加の存在があった。しかし、自動車メーカーは、塗装系のコート厚さならびに作業工程の数および場合によりコートの数も減少させることにますます努力しており、この場合には、マルチコート塗装系の使用技術的性質の劣化、殊に技術的性質の劣化をまねくことはない。即ち、"ウェット・オン・ウェット・オン・ウェット系"("スリー・ウェット"、"スリー・コーツ−ワン・ベイク"および"スリー・シー・ワン・ビー"としても公知である)が開発されたが、この場合には、最初に機能層、次にベースコートおよび最後にクリヤコートがウェット・オン・ウェット法で順次に塗装され、および共に硬化される。この方法の場合には、通常、陰極電着(KTL)とベースコートとの間に存在するサーフェイサーコートは、省略される。この方法により、別々のサーフェイサーペインティングラインおよびサーフェイサーオーブンは省略されうる。これは、CO2放出量の減少と共に、使用された塗料量の減少によって、自動車メーカーにとって明らかな経済的利点も生じる。
【0005】
3C1B法において、サーフェイサーコートの機能、例えばストーンチッピングからの保護、表面の平滑さ、低い隠蔽力を有するベースコート材料の場合のベースコートの隠蔽力の支持、電気泳動的に施されたプライマーの剥離の回避およびマルチコート塗装系のUV保護は、1つの機能層によって考慮されている。この層は、UV不透過性塗料材料から取得される。更に、マルチコート塗装系の性質は、全体的に劣化されてはならない。即ち、例えば、耐蝕性の性質は、損なわれるべきではない。更に、機能層は、機能層とベースコートとの混合を阻止するために、或る程度の物理的乾燥および相応する溶解パラメーターを示すべきであり、それによって効果を付与するベースコート材料の良好なフロップ(flop)が保証される。
【0006】
特許出願US 2003/0158321の記載から、3C1B法は、公知である。この場合には、機能層は、ポリエステルメラミンをベースとし、およびさらに、ブロック化されたイソシアネート、核−外殻構造を有するNAD(Non−Aqueous Dispersion 非水性分散液)結合剤粒子およびタルクを含有する。NAD結合剤粒子は、塗装後に強い粘度上昇を生じ、それによって機能層の表面とベースコートとの間の溶解パラメーターを上昇させ、それと共に双方の層の混合が阻止される。しかし、この塗料材料は、長く柱状に流れるたれ(run)に関連して敏感性を有し、および高い層厚の際に劣悪な外観を示す。これに対して、低い層厚の場合には、UV耐性は、劣悪である。ストーンチッピングからの保護のための十分な付着力を保証するために、タルクは、添加剤として必要とされる。しかし、タルクを使用した場合には、湿分に晒した後の付着力は、不適当である。
【0007】
欧州特許出願公開第1940977号明細書および欧州特許出願公開第1954771号明細書には、それぞれ機能層が本質的にNAD結合剤粒子および/または架橋されたミクロゲル結合剤粒子を含まないような3C1B法が記載されている。
【0008】
塗装後に機能層とベースコートとの間の必要とされる物理的乾燥を保証するために、欧州特許第1940977号明細書には、非極性有機溶剤中で不溶性である、架橋されていないアクリル樹脂核と、非極性有機溶剤中で可溶性である、マクロモノマーの形の、核上でグラフトされたアクリレート安定剤とからなる分散されたグラフトポリマーが記載されている。付加的に、機能層は、少なくとも1つの非極性溶剤を含有する。前記の欧州特許出願公開明細書においても、ストーンチッピングからの保護のための付着力の改善のために機能層中にタルクが使用され、このことは、湿分に晒した後の付着力に対して不利に作用する。
【0009】
欧州特許第1954771号明細書においては、塗装後のサーフェイサーとベースコートとの間の物理的乾燥を保証するために、いわゆる"超分枝鎖状アクリレート樹脂"が使用される。この樹脂は、分子量10000〜150000Daを有する、部分的になおヒドロキシ−および/またはカルボキシモノマーを含有する、高度に枝分かれされたカプロラクトン変性アクリレートポリマーである。望ましい工業的な性能特性を達成するために、全結合剤に対して40〜95質量%の結合剤割合が使用されなければならない。しかし、機能層中でのこの高い割合のアクリレート樹脂の使用は、必ずしも全ての場合にストーンチッピングからの保護のための良好な付着力をもたらすものではない。特に、高度に顔料を配合した色調、例えば白および赤の場合には、付着力の劣悪な結果を生じうる。
【0010】
WO 2006/062666には、プライマーなしの塗装法が記載されている。この国際出願の刊行物に記載されたベースコート機能層は、UV線に対して不透過性を有する。機能層中のUV安定性成分は、二酸化チタン、カーボンブラック、一酸化鉄−および/またはアルミニウム顔料からなる少なくとも2つの成分の組合せから構成されている。生じる機能層は、15μmの層厚で、UV光の0.5%未満がベースコートを通過するようなUV透過率をもたらす。上述した機能層は、アクリレートをベースとしており、したがって常用のプライマーサーフェイサーコートと比較して僅かなストーンチッピングからの保護を有する。
【0011】
欧州特許出願公開第0893483号明細書には、車両中または車両上に設置するための感光性OEM構成成分を塗装する3C1B機能層が記載されている。この機能層は、極めて高い割合のカーボンブラックを含有する。これは、分散添加剤、有機顔料相乗剤およびUV吸収材を使用することによって可能になる。この組合せによって、2,5〜5μmの層厚において、十分なUV安定性が保証されるはずである。更に、機能層は、付加的にミクロゲル、メラミン樹脂をベースとする架橋剤およびポリエステルおよび/またはポリエーテルをベースとするOH担体からなる。しかし、欧州特許出願公開第0893483号明細書の記載から公知の塗料材料における欠点は、生じる塗膜が無煙炭プライマーとして使用することができるにすぎないことである。それというのも、それ以外に必要とされるUV安定性は、保証されないからである。しかし、殊に隠蔽色の色合いが不十分の場合に、これは、ベースコートの色調に対して強い影響を及ぼす。更に、ポリエーテルは、一般に湿分に晒した後の劣悪な付着力の結果を示す。
【0012】
課題
従って、本発明は、塗料材料として機能する機能層を少なくとも3つの塗装系を有するマルチコート塗装系(3C1Bマルチコート塗装系)中に中間乾燥なしに形成し、かつ公知技術水準の欠点を有しない組成物を提供するという課題に基づくものであった。この場合、機能層は、公知技術水準の3C1Bマルチコート塗装系のプライマーサーフェイサーコートと置き換えられるはずであった。
【0013】
生じるマルチコート塗装系は、優れた被膜間密着ならびに殊に極端な凝縮水条件におけるストーンチッピングからの高度な保護を有するはずであった。このマルチコート塗装系は、同様に高い透明板ガラス接着付着力を示すはずであった。
【0014】
被膜間密着は、ストーンチッピング、クロスカッティング等のような負荷によって欠陥をまねきうる、個々の層(例えば、機能層に対するCEC、ベースコートに対する機能層、クリヤコートに対するベースコート)の間の付着を意味する。
【0015】
更に、前記組成物は、ウェット・オン・ウェット・オン・ウェット法において機能層の塗装系として塗装されるはずであった。しかし、この場合、公知の機能層およびこれから形成されるマルチコート塗装系によって達成される利点は、失われるのではなく、少なくとも同程度に、特に著しく顕著にそのまま保持されるはずであった。
【0016】
従って、相応する機能層塗装系は、3C1B系において、殊に良好なヘイズ、即ちヘイズなし、良好な均展性ならびに極めて良好な目視による全体的な印象(外観)を有するはずであった。更に、ベースコートは、塗膜欠陥、例えば亀裂形成(泥割れ)および長く柱状に流れるたれを含まないはずであった。
【0017】
最後に、殊に3C1B法においてUV吸収および機能層塗装系の工業的特性を改善するために、1つの方法を提供するはずであった。
【0018】
更に、2C1Bにおいても機能層が使用可能であるはずであった。
【0019】
課題の解決
意外なことに、公知技術水準の欠点を有しない組成物が見出された。むしろ、3C1Bマルチコート塗装系において、特に良好な被膜間密着、ストーンチッピングに対する高い耐性および高い透明板ガラス接着付着力を有する機能層塗装系を形成する組成物が見出された。
【0020】
本発明による組成物が極端に高い空気湿分および温度で、ならびに事後の低温負荷下で高い透明板ガラス接着付着力および殊に同時にストーンチッピングに対する高い耐性を有する本発明によるマルチコート塗装系をもたらすことは、特に驚異的なことであった。最後に、本発明によるマルチコート塗装系は、通常、自動車の塗装系に課された工業的要求性能を満たす。
【0021】
更に、2C1Bにおいても機能層は、使用可能である。
【0022】
前記組成物は、
a.結合剤としての少なくとも1つの飽和または不飽和のエポキシ変性されたポリエステル、
b.他の結合剤としての少なくとも1つのアクリレート−またはポリウレタンポリマー、
c.ポリマーミクロ粒子、
d.架橋剤としての、ブロック化されたイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂からなる官能基を含有する、少なくとも1つのポリマー、
e.少なくとも1つの顔料、
f.少なくとも1つの有機溶剤および
g.少なくとも1つの助剤または添加剤を含有し、
この場合この組成物の固体は、少なくとも50質量%であり、およびこの組成物は、無水である。
【0023】
50質量%およびそれ以上の固体割合を有する組成物は、ハイソリッド組成物と呼称される。相応する塗料材料は、ハイソリッド塗料材料と呼称される。
【0024】
無水組成物は、水を含まないかまたは実質的に水を含まない組成物である。水の割合は、前記組成物の全質量に対して特に1質量%未満である。
【0025】
前記組成物およびその成分の固体含量は、DIN ISO 3251によれば、1.0gの初期質量で125℃の温度で60分間の試験時間で確認される。
【0026】
特に、前記組成物は、前記組成物の全質量に対してエポキシ変性されたポリエステルを5〜20質量%含有する。前記組成物の全ての成分の質量部は、総和で100質量%となる。
【0027】
特に好ましい実施態様において、本発明による組成物は、それぞれ組成物の全質量に対して、
a.結合剤としての少なくとも1つの飽和または不飽和のエポキシ変性されたポリエステル5〜20質量%、
b.他の結合剤としての少なくとも1つのアクリレート−またはポリウレタンポリマー5〜30質量%、
c.ポリマーミクロ粒子5〜20質量%、
d.架橋剤としての、ブロック化されたイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂からなる官能基を含有する、少なくとも1つのポリマー5〜15質量%、
e.少なくとも1つの顔料5〜49.5質量%、
f.少なくとも1つの有機溶剤30〜50質量%および
g.少なくとも1つの助剤または添加剤0.5〜40質量%
を含有する。
【0028】
エポキシ変性されたポリエステル結合剤(PE)
エポキシ変性されたポリエステル結合剤(PE)は、グリシジルエステル含有単位で変性されたポリエステル樹脂である。
【0029】
好ましくは、本発明による組成物は、それぞれ前記組成物の全質量に対して少なくとも1つのエポキシ変性されたポリエステル結合剤(PE)を7〜18質量%、特に有利に9〜15質量%含有する。
【0030】
エポキシ変性されたポリエステル結合剤は、特にそれぞれ固体に対して2〜40mg KOH/g、有利に5〜20mg KOH/gの酸価を有する。酸価は、DIN 53402により測定される。
【0031】
ヒドロキシル価は、特に固体に対して50〜250mg KOH/g、有利に80〜200mg KOH/gである。ヒドロキシル価は、DIN 53240により測定される。
【0032】
エポキシ変性されたポリエステル結合剤は、特に40〜90質量%、有利に50〜80質量%の固体含量を有する。
【0033】
適当なエポキシ変性されたポリエステル結合剤(PE)は、飽和または不飽和、殊に飽和であることができる。不飽和ポリエステル樹脂は、重合可能な炭素炭素二重結合を含有する不飽和ポリエステル樹脂である。飽和ポリエステル樹脂は、重合可能な炭素炭素二重結合を含有しない飽和ポリエステル樹脂である。
【0034】
特に、エポキシ変性されたポリエステル結合剤(PE)は、5000〜20000g/molの質量平均分子量を有する。7000〜18000g/mol、特に有利に9000〜16000g/molの質量平均分子量を有するエポキシ変性されたポリエステル結合剤は、好ましい。分子量は、溶離剤(1ml/分)としてのTHF(THF質量に対して+0.1質量%の酢酸)を用いてのGPC分析により、スチレンジビニルベンゼンのカラムの組合せで測定される。較正は、ポリスチレン標準を用いて実施される。
【0035】
ポリエステル樹脂(PE)は、有機ジカルボン酸またはその無水物を有機ジオールでエステル化することによって製造されるか、またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンに由来する。分枝鎖状ポリエステルポリオールを製造するために、2より高い原子価を有するポリオールまたはポリカルボン酸が少量で使用されてもよい。ジカルボン酸またはポリカルボン酸およびジオールまたはポリオールは、直鎖状または分枝鎖状の脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸またはポリカルボン酸、またはジオールまたはポリオールであることができる。
【0036】
ポリエステル樹脂の製造に適したジオールは、例えばアルキレングリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ブタンジオール−1,4、ヘキサンジオール−1,6、ネオペンチルグリコールおよび別のジオール、例えばジメチロールシクロヘキサンである。しかし、ポリオールおよびジオールの全質量に対して10質量%までの少量のポリオール、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトールを添加することも可能である。ポリエステルの酸成分は、第1に分子中に2〜44個、有利に4〜36個の炭素原子を有する低分子量ジカルボン酸またはその無水物からなる。適当な酸は、例えばo−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸および/または二量化脂肪酸である。前記酸が存在する限り、前記酸の代わりにその無水物が使用されてもよい。ポリエステルポリオールの形成において、少量の3個またはそれ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸、例えば無水トリメリット酸、または不飽和脂肪酸への無水マレイン酸の付加物が使用されてもよい。
【0037】
ポリエステルジオールは、ラクトンと2価アルコールとの反応によって得られるジオールとして使用されてもよい。このポリエステルジオールは、末位ヒドロキシル基および式(−CO−(CHR2n−CH2−O)の繰返しポリエステル割合の存在を示す。この場合、nは、有利に4〜12であり、置換基R2は、それぞれ互いに無関係に水素、アルキル基、シクロアルキル基またはアルコキシ基である。好ましくは、置換基R2は何れも、12個を上廻る炭素原子を含有しない。例は、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸および/または12−ヒドロキシステアリン酸である。
【0038】
ポリエステルジオールの製造のためには、nが値4を有しかつR2置換基の全てが水素であるような非置換ε−カプロラクトンが好ましい。ラクトンとの反応は、低分子量ポリオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジメチロールシクロヘキサンによって開始される。しかし、別の反応成分、例えばアルキルジアミン(例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン)、アルキルジアルカノールアミン、または尿素化合物、例えばエチレン尿素またはN,N’−ジメチル尿素は、カプロラクトンと反応されてもよい。高分子量ジオールとして、例えばε−カプロラクタムと低分子量ジオールとの反応によって製造されるポリラクタムジオールが適している。
【0039】
ポリエステルのエポキシ変性のためには、飽和モノカルボン酸のグリシジルエステルが好ましい。特に、α位で枝分かれした、1分子当たり5〜18個のC原子を有するモノカルボン酸のグリシジルエステルが使用され、特に有利には、Shell社のVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルが使用される。このグリシジルエステルは、"Cardura E10"の名称で市場で入手可能である。
【0040】
本発明による塗料材料中に使用される、エポキシ変性されたポリエステル結合剤(PE)は、特にそれぞれポリエステル結合剤の全質量に対してエポキシ基5〜15質量%、有利に7〜13質量%の含量を有する。
【0041】
他の結合剤(BM)
本発明による組成物は、少なくとも1つのアクリレートポリマーまたはポリウレタンポリマーを他の結合剤(BM)として含有する。特に、組成物の全質量に対して5〜30質量%の割合を有する他の結合剤は、本発明による組成物中に含有されている。
【0042】
好ましくは、本発明による組成物は、それぞれ前記組成物の全質量に対して少なくとも1つの他の結合剤(BM)を10〜25質量%、特に有利に12〜23質量%含有する。
【0043】
適当なアクリレート結合剤(AC)は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、第23頁第10行〜第26頁第2行に詳細に記載されている。
【0044】
適当なポリウレタン結合剤(PUR)は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、第26頁第4行〜第28頁第30行に詳細に記載されている。
【0045】
ポリマーミクロ粒子(M)
本発明による組成物は、ポリマーミクロ粒子を含有する。特に、それぞれ組成物の全質量に対して5.0〜20.0質量%、有利に8.0〜15.0質量%が含有されている。
【0046】
本発明による組成物中のポリマーミクロ粒子は、好ましい。それというのも、それによって個々の層の混合は、阻止されうるからである。
【0047】
適当なポリマーミクロ粒子は、例えば欧州特許出願公開第480959号明細書、第3頁、第36行〜第4頁第35行、WO 96/24619、WO 99/42529、欧州特許第1173491号明細書、欧州特許第1185568号明細書、WO 03/089487、WO 03/089477、WO 01/72909およびWO 99/42531中に記載されている。ポリマー粒子は、殊に均展、静置能(standing capacity)、蒸発挙動およびベースコートによる溶解挙動の制御のために使用されてよい。
【0048】
適当なポリマーミクロ粒子は、通常、2000〜100000の質量平均分子量を有する。分子量は、溶離剤(1ml/分)としてのTHF(THF質量に対して+0.1質量%の酢酸)を用いてのGPC分析により、スチレンジビニルベンゼンのカラムの組合せで測定される。較正は、ポリスチレン標準を用いて実施される。
【0049】
適当なポリマーミクロ粒子は、特にISO 13320−1による、0.01〜10μm、有利に0.01〜5μm、特に有利に0.02〜2μmの平均粒径を有する。
【0050】
特に有利に使用されるポリマーミクロ粒子は、架橋剤の官能基と反応しうる反応性官能基を有する。この場合、殊にポリマーミクロ粒子は、ヒドロキシル基を有する。この場合、ポリマーミクロ粒子は、有利にDIN 53240による、5〜150mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル基含有ポリマーミクロ粒子は、例えばWO 01/72909中に記載されている。
【0051】
架橋ポリマーミクロ粒子は、例えば
(a)1分子当たり唯一のエチレン系不飽和基を含有するエチレン系不飽和モノマーまたはこのようなモノマーからなる混合物および
(b)1分子当たり少なくとも2つのエチレン系不飽和基を含有するエチレン系不飽和モノマーまたはこのようなモノマーからなる混合物からの混合物を、
水相中で場合によっては乳化剤の存在下または場合によってはキャリヤー樹脂の存在下で重合し、引続きこうして得られた水性ポリマーミクロ粒子分散液を有機溶剤中または有機溶剤からなる混合物中に移すことにより、得られる。
【0052】
イオン性基および/または極性基、特にヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を含有する成分を使用して製造されたポリマーミクロ粒子は、好ましい。成分(a)および(b)は、一般にそれぞれポリマーミクロ粒子の全質量に対してイオン性基および/または極性基を1〜20質量%、有利に3〜15質量%含有する。
【0053】
十分に架橋されたポリマーミクロ粒子を得るために、一般に、成分(a)1モル当たり成分(b)0.25〜1.2モル、有利に0.3〜1モルを使用することで十分である。
【0054】
しかし、本発明による組成物中に使用されるポリマーミクロ粒子(M)は、直接に有機相中で製造されてもよい。
【0055】
有利に使用されるポリマーミクロ粒子は、例えば
(c)1分子当たり少なくとも1個の反応性基(G1)を含有するエチレン系不飽和モノマー(M1)またはこのようなモノマー(M1)からなる混合物および
(d)1分子当たり少なくとも1個の、(G1)とは異なる反応性基(G2)を含有するエチレン系不飽和モノマー(M2)またはこのようなモノマー(M2)からなる混合物および
(e)場合によっては他のエチレン系不飽和モノマー(M3)またはこのようなモノマー(M3)からなる混合物からの混合物を、
有機溶剤中で場合によってはキャリヤー樹脂の存在下で重合に掛けることにより、得られる。
【0056】
適当なモノマー(M1)は、例えばヒドロキシル基、カルバメート基、アミノ基、アルコキシメチルアミノ基、アロファネート基またはイミノ基、殊にヒドロキシル基を含有するモノマーである。
【0057】
この場合、反応性基(G1)を有するモノマー(M1)は、化合物(a)が反応性基(a)および少なくとも1個のエチレン系不飽和二重結合を有しかつ別の化合物が1個のエチレン系不飽和二重結合を有する2つの化合物を反応させることによって、製造されてもよい。
【0058】
適当なモノマー(M2)は、例えばカルボキシル基を含有するモノマーである。
【0059】
適当なモノマー(M3)は、通常使用される、いわゆる中性モノマー、すなわち1分子当たり少なくとも2個のエチレン系不飽和基を含有するかまたはこのようなモノマーからなる混合物を含有する、エチレン系飽和モノマーである。
【0060】
架橋剤(V)
本発明による組成物は、この組成物の全質量に対して特に5〜15質量%の、ブロック化されたイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂の群から選択される少なくとも1つのポリマーを含有する。
【0061】
特に、本発明による組成物は、それぞれ全結合剤の固体に対してアミノプラスト樹脂20〜25質量%およびブロック化されたイソシアネート0〜10質量%を含有する。アミノプラスト樹脂21〜24質量%が好ましい。同様に、ブロック化されたイソシアネート2〜6質量%は、好ましい。特に有利には、本発明による組成物は、アミノプラスト樹脂21〜24質量%およびブロック化されたイソシアネート2〜6質量%を含有する。
【0062】
ブロック化されたイソシアネートとして、塗料工業分野で通常使用される、ブロック化されたイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルイレンジイソシアネート(TDI);これらの二量体および三量体ならびに誘導体およびブロック化された変形がこれに該当する。
【0063】
ブロック化されたイソシアネートは、イソシアネートからブロック化剤との反応によって得ることができる。イソシアネートのためのブロック化剤として、通常使用される全てのブロック化剤、例えば相応するアルコール、アミン、ケトン、ピラゾール等、有利に130℃を下廻る脱ブロック化温度を有するブロック化剤がこれに該当する。好ましくは、ジメチルピラゾールでブロック化されたイソシアネート、殊にBayer社のDesmodur(登録商標)PL 350 SNおよびDesmodur(登録商標)VP LS 2253が使用される。
【0064】
アミノプラスト樹脂として、原理的に塗料工業分野で通常使用されるアミノプラスト樹脂が適切であり、この際、アミノプラスト樹脂の反応性によって、機能層の若干の性質を制御することができる。架橋剤が反応性であればあるほど、塗装系の均展性および塗料材料の貯蔵安定性は、ますます劣化する。例えば、均展性および貯蔵安定性は、エーテル化度およびエーテル化に使用されるアルコールにより影響を及ぼされうる。適当なアルコールは、例えばメタノールおよびブタノールである。モノマーの架橋性樹脂、例えばヘキサ(メトキシメチル)メラミン(HMMM)または混合されたエーテル化を有するメラミン、またはポリマーの架橋性樹脂が使用されてよい。好ましくは、メタノールおよび/またはブタノールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂、例えば市場でIneos Melamines社のCymel(登録商標)、Resimene(登録商標)、Maprenal(登録商標)およびLuwipal(登録商標)の商品名で入手可能な製品、殊にResimene(登録商標)747およびResimene(登録商標)755が使用される。
【0065】
好ましくは、ブロック化されていないイソシアネートは、架橋剤として含有されていない。それというのも、このブロック化されていないイソシアネートは、望ましくない粘度上昇をまねくからである。
【0066】
顔料(P)
本発明による組成物は、この組成物の全質量に対して特に5〜49.5質量%の少なくとも1つの顔料(P)を含有する。顔料8〜40質量%を含有する組成物は、好ましい。
【0067】
顔料は、染料とは異なり周囲媒体中で不溶性である、粉末状またはフレーク状の着色剤である(Roempp Lacke und Druckfarben,第451頁,見出し語"Pigmente"、参照)。
【0068】
顔料は特に、有機および無機の、着色性、効果付与性、着色効果付与性、磁気遮蔽性、電気伝導性、腐食防止性、蛍光性、およびリン光性の顔料からなる群から選択される。特に、着色および/または効果を付与する顔料が使用される。
【0069】
特に有利には、前記組成物は、少なくとも1つの効果付与性顔料、殊に少なくとも1つの金属フレーク顔料を含有する。前記組成物は、単数または複数の効果付与性顔料と一緒に場合によりなお少なくとも1つまたはそれ以上の着色性顔料を含有する。
【0070】
着色性であってもよい、適当な効果顔料の例は、金属フレーク顔料、例えば市販のアルミニウムブロンズおよび市販の特殊鋼ブロンズ、ならびに非金属性効果顔料、例えばパール光沢顔料または干渉性顔料、酸化鉄ベースのフレーク状効果顔料、または液晶効果顔料である。更に、詳細には、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,第176頁,見出し語"Effektpigmente"および第380および381頁、見出し語"Metalloxid−Glimmer−Pigmente"から"Metallpigmente"に指摘されている。
【0071】
殊に、市販のアルミニウムブロンズが使用される。この場合には、例えばEckart社のStapa(登録商標)Metalluxの名称で市場で入手可能である未処理のタイプならびに例えばWO 01/81483に記載されかつEckart社のHydrolan(登録商標)の名称で市場で入手可能である処理されたタイプ、殊にシラン化されたタイプが使用される。
【0072】
特に、金属フレーク顔料は、200〜2000nm、殊に500〜1500nmの厚さを有する。測定のために、光学顕微鏡タイプLeica DM−RX、倍率500〜1000倍が使用される。
【0073】
有利に、金属フレーク顔料は、10〜50μm、殊に13〜25μmの平均粒径を有する(Cilas(機器1064)によるISO 13320−1)。
【0074】
適当な有機および/または無機の着色性顔料は、塗料工業で通常使用される顔料である。
【0075】
適当な無機の着色性顔料の例は、白色顔料、例えば二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛またはリトポン;黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄マンガン黒またはスピネル黒;有彩顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水和物黒、コバルト緑またはウルトラマリーングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリーンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリーンバイオレットまたはコバルトバイオレットおよびマンガンバイオレット、酸化鉄レッド、カドミウムスルホセレニド、モリブデンレッドまたはウルトラマリーンレッド;褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネル相およびコランダム相またはクロムオレンジ;または酸化鉄イエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエローまたはバナジン酸ビスマスである。
【0076】
有利に本発明による組成物は、この組成物の全質量に対して無機の着色性顔料0.01〜50.0質量%を含有する。
【0077】
黒色顔料を使用する場合には、この黒色顔料の割合は、本発明による組成物中で、この組成物の全質量に対して特に0.6〜30.0質量%である。
【0078】
適当な有機の着色性顔料の例は、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリン黒である。
【0079】
更に、詳細には、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,1998,第180〜181頁,見出し語"Eisenblau−Pigmente"から"Eisenoxidschwarz",第451〜453,見出し語"Pigmente"から"Pigmentvolumenkonzentration",第563頁,見出し語"Thioindigo−Pigmente",第567頁,見出し語"Titandioxid−Pigmente",第400〜467頁,見出し語"Natuerlich vorkommende Pigmente",第459頁,見出し語"Polycyclische Pigmente",第52頁,見出し語"Azomethinpigmente","Azopigmente",および第379頁,見出し語"Metallkomplex−Pigmente"が指摘されている。
【0080】
顔料の含量は、極めて幅広く変動可能であり、第1に調節されるべき色の深さに左右され、ならびに機能層中の顔料の分散性およびUV透過率に左右される。
【0081】
有機溶剤(L)
本発明による組成物は、この組成物の全質量に対して特に30〜50質量%の少なくとも1つの有機溶剤(L)を含有する。
【0082】
好ましくは、本発明による組成物は、それぞれ前記組成物の全質量に対して少なくとも1つの有機溶剤(L)を35〜45質量%、特に有利に38〜45質量%含有する。
【0083】
有機溶剤(L)として、塗料工業で通常使用される溶剤、例えばアルコール、グリコールエーテル、エステル、エーテルエステルおよびケトン、脂肪族および/または芳香族炭化水素、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ブチルアセテート、3−ブトキシ−2−プロパノール、エチルエトキシプロピオネート、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセテート、ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、グリコール酸ブチルエステル、キシレン、トルエン、脂肪族炭化水素、例えばShellsol T(Shell社の脂肪族炭化水素)、Pine Oil 90/95(芳香族炭化水素)、Solventnaphtha(登録商標)(Exxon Mobile社の芳香族炭化水素)、Shellsol(登録商標)A(Shell社の芳香族炭化水素)、Solvesso(ExxonMobil社の芳香族炭化水素)、Benzin 135/180(BP社の芳香族炭化水素)および類似物が適している。
【0084】
前記組成物の粘度は、有機溶剤(L)の含量によって影響を及ぼされることができ、特に噴霧粘度に調節される。噴霧粘度は、塗料材料が噴霧前に溶剤の添加によって調節される粘度である(Roempp Lacke und Druckfarben,第537頁,見出し語"Spritzviskositaet")。有機溶剤(L)の含量は、有利に、本発明による機能層が23℃で、フォードNo.4カップ(Ford 4 Cup)における流出時間24秒〜30秒、有利に26〜28秒の粘度を有するように選択される。
【0085】
本発明による組成物中の有機溶剤(L)の含量は、常に、この組成物が少なくとも50質量%の固体含量を有するように選択される。特に、本発明による組成物の固体含量は、少なくとも51質量%、有利に52質量%である。機能層の固体含量は、DIN ISO 3251によれば、1.0gの初期質量で125℃の温度で60分間の試験時間で測定される。
【0086】
助剤および添加剤(Z)
本発明による組成物は、この組成物の全質量に対して特に0.5〜40質量%の少なくとも1つの助剤または添加剤(Z)を含有する。
【0087】
好ましくは、本発明による組成物は、それぞれ前記組成物の全質量に対して少なくとも1つの助剤または添加剤(Z)を1〜35質量%、特に有利に1.5〜30質量%含有する。
【0088】
適当な助剤および添加剤(Z)は、塗料工業で通常使用される、公知の助剤および添加剤である。適当な助剤および添加剤の例は、有機充填材および無機充填材、例えばタルクおよび/または染料(有機の、周囲媒体中で可溶性の黒色または彩色物質(Roempp Lacke und Druckfarben,第221頁,見出し語"Farbmittel"))ならびに例えばJohan Bielemannの書物"Lackadditive",Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998中に詳細に記載された、他の常用の助剤および添加剤、例えば酸化防止剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、レオロジー助剤、例えば流れ調整剤、濃稠化剤、垂れ防止剤およびチキソトロープ剤、ワックスおよびワックス様化合物、スリップ添加剤、反応希釈剤、易流動性助剤、乾燥剤、殺菌剤、下地の湿潤を改善するための添加剤、表面の平滑さを改善するための添加剤、艶消剤、フリーラジカル捕捉剤、光安定剤、有利に370nm未満の吸収最大を有するUV吸収剤および/または立体障害アミン(HALS)、腐蝕防止剤、難燃剤または重合抑制剤である。好ましい助剤および添加剤は、レオロジー助剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、UV吸収剤およびフリーラジカル捕捉剤である。特に好ましい助剤および添加剤は、UV吸収剤、湿潤剤ならびにレオロジー助剤である。
【0089】
特に、タルクは、含有されていない。タルクを含有する組成物は、湿分に晒した後の付着力の劣化を示す。
【0090】
発明の他の対象
更に、本発明の対象は、本発明による組成物を製造するための方法である。この場合、この組成物は、前記成分を混合および均質化によって製造されうる。
【0091】
更に、本発明の対象は、塗料材料としての前記組成物の使用である。塗料材料は、特にマルチコート塗装系における機能層の形成に使用され、この場合このマルチコート塗装系は、
a.本発明による組成物から得られた、少なくとも1つの機能層A、
b.少なくとも1つのベースコート材料の少なくとも1つのベースコートBおよび
c.少なくとも1つのクリヤコート材料の少なくとも1つのクリヤコートC
を含む。
【0092】
特に、順次に最初にA、次にB、最後にCが基体上に施され、引続きA、BおよびCが共通に硬化される(3C1B法)か、または最初にAが基体上に施され、および硬化され、その後にBおよび最後にCが基体上に施され、引続きBおよびCが共通して硬化される(2C1B法)。3C1B法により得られる、マルチコート塗装系において機能層を形成させるための使用は、好ましい。
【0093】
更に、本発明の対象は、
a.本発明による組成物から得られた、少なくとも1つの機能層A、
b.少なくとも1つのベースコート材料の少なくとも1つのベースコートBおよび
c.少なくとも1つのクリヤコート材料の少なくとも1つのクリヤコートCからなるマルチコート塗装系である。
【0094】
特に、本発明によるマルチコート塗装系は、2C1B法または3C1B法により得られる。好ましくは、本発明によるマルチコート塗装系は、3C1B法により得られる。
【0095】
本発明によるマルチコート塗装系は、特に正確には1つの機能層、正確には1つのベースコートおよび正確には1つのクリヤコートからなる。特に有利には、そのために正確には、本発明による組成物は、機能層のために、正確にはベースコートのための1つのベースコート材料および正確にはクリヤコートのための1つのクリヤコート材料が使用される。
【0096】
本発明によるマルチコート塗装系は、任意の基体上に施されてよい。基体は、多種多様の材料および材料の組合せから構成されていてよい。特に、基体は、金属、プラスチックおよび/またはガラス、特に有利に金属および/またはプラスチックからなる。
【0097】
基体は、通常、通常の方法、例えば電着、浸漬、ナイフ塗布、噴霧および/またはロール塗布で塗装された、プライマーおよび場合によりフラッシュプライマーを備えている。好ましくは、プライマーは、本発明による組成物が塗装される前に、少なくとも部分的に、または完全に硬化される。プライマーまたはサーフェイサーは、通常、3〜30分間、80〜170℃の温度に加熱することによって硬化される。
【0098】
ベースコート材料として、通常使用される全ての溶剤型の顔料が含有された塗料材料、例えばメディウムソリッド(15〜30質量%の固体割合)またはハイソリッド(固体割合少なくとも40質量%)ベースコート材料が適している。使用されるベースコート材料は、熱的に、および/または照射により、殊にUV線により硬化可能であることができる。
【0099】
ベースコート材料は、通常、官能基を有する少なくとも1つの結合剤ならびに結合剤の官能基に対して相補的な官能性を有する少なくとも1つの架橋剤を含有する。このような相補的な官能性の例は、殊に(カルボキシル/エポキシ)、(アミンまたはチオールまたはヒドロキシル/ブロック化された、または遊離のイソシアネート、またはアルコキシル化アミノ基またはエステル交換能を有する基)、((メタ)アクリロイル/CH酸またはアミンまたはヒドロキシルまたはチオール)、(カルバメート/アルコキシル化アミノ基)および((メタ)アクリロイル/(メタ)アクリロイル)である。
【0100】
殊に、ポリウレタン樹脂および/またはポリアクリレート樹脂および/またはポリエステル樹脂をベースとする、有利に相応する架橋剤と組み合わせて、殊にイソシアネート、アミノプラスト樹脂および/または無水物を組み合わせてヒドロキシル基、アミノ基、カルバメート基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基および/またはチオール基を有するベースコート材料が使用される。
【0101】
ベースコート材料は、結合剤および架橋剤と共に、Johan Bielemannの書物"Lackadditive",Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998に詳細に記載されているような、通常の助剤および/または添加剤、例えば架橋のための触媒、消泡剤、付着助剤、下地の湿潤を改善するための添加剤、レオロジー変性剤、ワックス、流れ調整剤、光安定剤、特に370nm未満の吸収最大を有する上記のUV吸収剤および/またはHALS、腐蝕防止剤、殺菌剤、難燃剤または重合抑制剤を含有する。適当な、顔料を配合した塗料材料は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書中に記載されている。
【0102】
ベースコート材料は、ポリマーミクロ粒子を含有していてよい。それによって、比較的良好なフロップ挙動が達成されうる。
【0103】
本発明によるマルチコート塗装系のクリヤコート材料として、通常使用される全ての透明塗料材料、例えば一成分系塗料材料ならびに二成分系または多成分系塗料材料として配合されていてよい、通常使用される水性または溶剤型の透明塗料材料が適している。更に、粉末スラリークリヤコートも適している。好ましくは、透明塗料材料(クリヤコート材料)は、少なくとも40質量%の固体割合を有する。使用される透明塗料材料は、熱的に、および/または照射により、殊にUV線により硬化可能であることができる。
【0104】
透明塗料材料は、通常、官能基を有する少なくとも1つの結合剤ならびに結合剤の官能基に対して相補的な官能性を有する少なくとも1つの架橋剤を含有する。このような相補的な官能性の例は、殊に以下の互いにそれぞれ相補的な対である:(カルボキシル/エポキシ)、(アミンまたはチオールまたはヒドロキシル/ブロック化された、または遊離のイソシアネート、またはアルコキシル化アミノ基またはエステル交換能を有する基)、((メタ)アクリロイル/CH酸またはアミンまたはヒドロキシルまたはチオール)、(カルバメート/アルコキシル化アミノ基)および((メタ)アクリロイル/(メタ)アクリロイル)である。
【0105】
殊に、ポリウレタン樹脂および/またはポリアクリレート樹脂および/またはポリエステル樹脂をベースとする、有利に相応する架橋剤と組み合わせて、殊にイソシアネート、アミノプラスト樹脂および/または無水物を組み合わせてヒドロキシル基、アミノ基、カルバメート基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基および/またはチオール基を有する透明塗料材料が使用される。
【0106】
透明塗料材料は、結合剤および架橋剤と共に、Johan Bielemannの書物"Lackadditive",Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998に詳細に記載されているような、通常の助剤および/または添加剤、例えば架橋のための触媒、消泡剤、付着助剤、下地の湿潤を改善するための添加剤、表面の平滑さを改善するための添加剤、艶消剤、光安定剤、特に370nm未満の吸収最大を有するUV吸収剤および/またはHALS、腐蝕防止剤、殺菌剤、難燃剤または重合抑制剤を含有する。
【0107】
適当な透明塗料材料は、例えばWO 03/050194A1、米国特許第2008/076868号明細書A1およびWO 06/063304A1中に記載されている。
【0108】
本発明によるマルチコート塗装系の機能層Aは、特に5〜40μm、有利に10〜30μm、特に有利に15〜25μm、殊に有利に15〜25μmの乾燥塗膜厚を有する。
【0109】
ベースコートBの乾燥塗膜は、特に5〜40μm、有利に10〜30μm、特に有利に15〜25μm、殊に有利に18〜25μmである。
【0110】
クリヤコートCは、特に10〜120μm、有利に30〜80μm、殊に40〜70μmの乾燥塗膜厚を有する。
【0111】
更に、本発明の対象は、本発明によるマルチコート塗装系を製造するための方法である。この場合、本発明による組成物は、基体上に施される。基体は、特に下塗り処理される。引続き、少なくとも1つのベースコート材料および引続き少なくとも1つのクリヤコート材料が施される。特に、前記組成物ならびにベースコート材料およびクリヤコート材料は、共通に硬化される(3C1B法)か、または前記組成物は、最初に施され、硬化され、引続きベースコート材料およびクリヤコート材料は、施され、および共通に硬化される(2C1B法)。好ましくは、前記組成物ならびにベースコート材料およびクリヤコート材料は、共通に硬化される。
【0112】
ベースコート材料およびクリヤコート材料は、本発明による組成物と全く同様に、液体塗料材料を施すための通常の方法、例えば浸漬法、ナイフ塗布法、噴霧法およびロール塗布により施されるが、しかし、殊に噴霧法により施される。特に、噴霧塗装方法、例えば圧縮空気噴霧、エアレススプレー、高速回転塗布、静電噴霧塗装(ESTA)、場合によってはホットスプレーの塗装と関連した、例えば熱風ホットスプレーが使用される。特に、ベースコート材料を第1の塗装でESTAによって施し、第2の塗装で空気圧により施すのは、好ましい。
【0113】
3C1B法において、本発明による組成物は、塗装後に、特に30℃ないし100℃未満の温度で1〜15分間フラッシュされるかまたは乾燥される。その後に、ベースコート材料は、塗装され、特に30℃ないし100℃未満の温度で1〜15分間短時間フラッシュされるかまたは短時間乾燥される。引続き、透明塗料材料が塗装される。
【0114】
塗装された本発明による組成物(湿式機能層)、塗装されたベースコート材料(湿式ベースコート)および塗装されたクリヤコート材料(湿式クリヤコート)は、特に少なくとも熱的に硬化される。また、クリヤコート材料がなお化学線で硬化可能である限り、なお後硬化は、化学線での照射によって行われる。硬化は、或る程度の静止時間後に行うことができる。この硬化は、30秒〜2時間、特に1分〜1時間、殊に1〜45分間の期間であってよい。この静止時間は、例えば塗装層の均展および脱気のために、または揮発成分の蒸発のために用いられる。静止時間は、この場合に塗料層の損傷または変化が全く起こらず、場合によっては早期の完全な架橋が起こる限り、90℃までの高められた温度の使用および/または減少された空気湿分(水10g未満/空気kg)によって支持されてよいし、および/または短縮されてよい。
【0115】
硬化は、通常、90〜160℃の温度で15〜90分間行われる。
【0116】
湿式機能層、湿式ベースコートならびに湿式クリヤコートの乾燥または状態調節のためには、有利に熱的方法および/または対流法が使用され、この場合には、通常の公知の装置、例えば貫通型炉、放射型NIRヒーターおよび放射型IRヒーター、ブロワーおよびトンネル型ブロワーが使用される。前記装置は、互いに組み合わされてもよい。
【0117】
2C1B法においては、同様に行われるが、しかし、前記組成物は、最初に塗装され、乾燥され、および硬化される。引続き、ベースコート材料およびクリヤコート材料は、前記に方法により塗装され、乾燥され、および硬化される。
【0118】
更に、本発明の対象は、基体を被覆するための本発明によるマルチコート塗装系の使用である。当該基体は、特に上記の基体である。
【0119】
本発明によるマルチコート塗装系は、殊に自動車量産塗装の範囲内で使用されるが、しかし、ユーティリティービークル塗装および自動車修復塗装の範囲内でも使用され、実際に自動車車体または車体内装修理部材または車体外装修理部材の被覆のために使用される。しかし、この本発明によるマルチコート塗装系は、別の範囲、例えば船舶建造および航空機製造のための構成部品または家庭電化製品および電気器具またはこれらの部品の被覆にも適している。
【0120】
更に、本発明の対象は、本発明による組成物で被覆された基体である。特に、本発明による組成物は、マルチコート塗装系の機能層を形成する。
【0121】
更に、本発明の対象は、本発明によるマルチコート塗装系で被覆された基体である。
【0122】
以下、本発明は、実施例につきさらに詳説される。
【実施例】
【0123】

以下、百分率の記載は、質量%として説明する。
【0124】
1.エポキシ変性されたポリエステル結合剤(E−PE)の製造
攪拌機、抵抗加熱ヒーター、温度計、ポールリング(Pall−Ring)が充填された充填塔を有し、頭上温度計、蒸留ブリッジ、凝縮用冷却器および受器を装備した、2 lの四口フラスコ中に、1,6−ヘキサンジオール81.0質量部、ネオペンチルグリコール108.0質量部、グリセリン28.0質量部、トリメチロールプロパン38,0質量部、アジピン酸99.0質量部、無水フタル酸157.0質量部およびイソフタル酸125.0質量部を計量供給する。この反応混合物を攪拌しながら急速に160℃に加熱し、160℃で30分間維持する。前記塔の頭上温度が103℃を上廻らないように、温度を1.5時間で160℃から190℃に上昇させる。次に、150℃に冷却し、Cardura E 10 P 63,0質量部およびキシレン7.0質量部を添加し、引続き加熱し、165℃で1時間維持する。次に、230℃に加熱し、および酸価が10mg KOH/gの値を下廻るようになるまで230℃で維持する。エポキシ変性されたポリエステルをさらに冷却し、ソルベントナフサ 155/185 238.0質量部、1−メトキシプロピルアセテート24.0質量部およびエチルエトキシプロピオネート35.0質量部の混合物で溶解する。濃度65%の結合剤溶液が生じる。
【0125】
こうして得られたエポキシ変性されたポリエステル(E−PE)は、それぞれ固体に対して、DIN 53402による酸価8mg KOH/gおよびDIN 53240によるOH価102mg KOH/gを有する。ポリエステルの固体は、65質量%である。質量平均分子量は、14500g/molである。ポリエステル中のエポキシ基の割合は、ポリエステルの全質量に対して10質量%である。
【0126】
2.エポキシ変性なしの(PE)の製造
反応器中で二量体脂肪酸29.1質量部、1,6−ヘキサンジオール28.5質量部、イソフタル酸8.4質量部およびトルエン1.2質量部からなる混合物を窒素雰囲気下で徐々に154℃に加熱する。引続き、この混合物を40分間、193℃に加熱する。この場合、反応経過は、水分離器を用いて追跡される。酸価10mg KOH/gの達成後に、反応混合物を149℃に冷却する。引続き、無水トリメリット酸11.2質量部を、滴下漏斗を使用しながら徐々に添加する。
【0127】
無水トリメリット酸の完全な添加後に、166℃に加熱する。この場合、反応経過は、酸価の測定によって追跡される。酸価32mg KOH/gの達成後に、反応器を107℃に冷却し、n−ブタノール10.9質量部、n−プロポキシプロパノール9.6質量部およびジメタノールアミン0.01質量部からなる混合物を、滴下漏斗を使用しながら徐々に添加する。49℃への冷却後、固体をn−ブタノール1.2質量部の添加によって73.0%に調節する。
【0128】
こうして得られた、エポキシ変性なしのポリエステル樹脂(PE)は、それぞれ固体に対して酸価31mg KOH/gおよびOH価422mg KOH/gを有する。質量平均分子量は、4511g/molである。
【0129】
3.エロジルペーストの製造
実験室用ミル(Getzmann Labormuehle SL 25;粉砕媒体:SAZ 0.6〜0.8mm;エネルギー投入量:100Wh/kg)中に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、製造例1.1、第17頁、第156節に記載されたアクリレート結合剤40.0質量部、ソルベッソ(Solvesso) 100 42.0質量部、ブタノール8.0質量部、エロジル R972 10.0質量部(Degussa社の市販の珪酸)からなる練り顔料100.0gを石英砂200.0質量部(粒径0.7〜1mm)と一緒に計量供給し、水冷却しながら30分間微粉砕する。引続き、石英砂を分離除去する。
【0130】
4.硫酸バリウムペーストの製造
実験室用ミル(上記参照)中に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、製造例1.1、第17頁、第156節に記載されたアクリレート結合剤19.5質量部、ソルベントナフサ 160/180 10.7質量部(Exxon Mobile社)、ベントン(Bentone) 34 0.6質量部(Elementis Specialeties)、エタノール0.2質量部、Blanc Fixe Micro65.0質量部(Sachtleben社の市販の硫酸バリウム)および酢酸ブチル4.0質量部からなる練り顔料100.0gを石英砂200.0質量部(粒径0.7〜1mm)と一緒に計量供給し、水冷却しながら30分間微粉砕する。引続き、石英砂を分離除去する。
【0131】
5.白色ペーストの製造
実験室用ミル(上記参照)中に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、製造例1.1、第17頁、第156節に記載されたアクリレート結合剤152.0質量部、ペンチルプロピオネート33.6質量部、ベントン(Bentone) 34 6.4質量部およびTiPure(登録商標)R902 528.0質量部(Du Pont de Nemours and Company社の市販の二酸化チタン)からなる練り顔料800.0gを石英砂1100.0質量部(粒径0.7〜1mm)と一緒に計量供給し、水冷却しながら30分間微粉砕する。引続き、石英砂を分離除去する。
【0132】
6.黒色ペーストの製造
実験室用ミル(上記参照)中に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、製造例1.1、第17頁、第156節に記載されたアクリレート結合剤81.6質量部、ペンチルプロピオネート44.8質量部、ソルベッソ(Solvesso) 100 401.6質量部、市販の分散添加剤136.8質量部、市販の顔料相乗剤15.2質量部およびMonarch(登録商標) 900 120.0質量部(Cabot Corp.社の市販のカーボンブラック)からなる練り顔料800.0gを石英砂1100.0質量部(粒径0.7〜1mm)と一緒に計量供給し、水冷却しながら30分間微粉砕する。引続き、石英砂を分離除去する。
【0133】
7.アルミニウム効果顔料(A)のスラリーの製造
スラリーを、11μmの平均粒径を有するコーンフレーク型の市販のノンリーフィングタイプのアルミニウム効果顔料ペースト40.0質量部(Toyal社のAlpate 88037)および酢酸ブチル60.0質量部から、攪拌しながら製造する。
【0134】
8.本発明による機能層および比較の機能層F−1〜F−4の製造
機能層F−1〜F−4を次の成分(質量%で)の混合および均質化によって製造する:
【0135】
【表1】

【0136】
第1表の説明:
1 ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、製造例1.2/1.3、第17頁、第157/158節の記載のミクロゲル
2 Ineos Melamines社のResimene 755
3 Ineos Melamines社のResimene 747
4 Tinuvin 384−2、BASF SE社の95%メトキシ−2−プロピルアセテート(MPA)
5 BASF SE社のTinuvin 123
6 Lindau Chemicals社のLindron 22
7 ドイツ連邦共和国特許出願公開第2006053776号明細書A1、製造例1.1、第17頁、第156節に記載のアクリレート結合剤
8 Desmodul PL 350、Bayer AG社の75%1−メトキシ−2−プロピルアセテート(MPA)/ソルベントナフサ(SN) 160/180
9 Nacure(登録商標) 5225、King Industries,Inc.社のドデシルベンジルスルホン酸(DDBSA)。
【0137】
F−1およびF−2は、アクリレートまたはアクリレート結合剤およびポリエステルの混合物を有する比較例の機能層である。F−3およびF−4は、エポキシ変性されたポリエステルを有する本発明による機能層であり、この場合F−4は、付加的な架橋剤としてブロック化されたイソシアネートを含有する。
【0138】
機能層F−1〜F−4は、酢酸ブチルで、フォードカップNo.4(FC4)の27秒の噴霧粘度に調節された。
【0139】
【表2】

【0140】
9.3ウェットオン塗装3W−1〜3W−4の形成
技術的性質の試験のために、23μmの乾燥塗膜厚を有する機能層F−1〜F−4を、通常の公知の陰極電着および焼き付けによる電着塗膜で被覆された鋼製基体(車体パネル)からなる試験パネル上に施し(BASF Coatings社のCathoguard(登録商標)500、乾燥塗膜厚20μm)、室温で5分間のフラッシング後に、市販の銀色のハイソリッドベースコート(BASF Coatings社のColorClass HS、乾燥塗膜厚18μm)で上塗りした。引続き、第1の2つの層を5分間フラッシュし、市販のハイソリッド1K(一成分系)クリヤコート(BASF Coatings社のUreGloss、乾燥塗膜厚45μm)で上塗りした。その後に、得られた3C1Bマルチコート塗装系3W−1〜3W−4を140℃のパネル温度で20分間焼き付けた。
【0141】
こうして得られた3C1Bマルチコート塗装系3W−1〜3W−4の被膜間密着をフォード試験法BI 106−01によるクロスカット試験により試験した。フォード試験法BI 106−01によるクロスカット試験のための評価目盛は、0〜10の範囲を含み、この場合2を上廻る評価は、潜在的な付着問題を示す。
【0142】
マルチコート塗装系のストーンチッピングに対する耐性は、フォード試験法BI 157−06により試験された。フォード試験法BI 157−06によるストーンチッピング試験のための評価目盛は、1〜10の範囲を含み、この場合4を下廻る評価は、ストーンチッピングに対する不足した耐性を示す。
【0143】
ストーンチッピング試験ならびにクロスカット試験を、一定の凝縮水耐候(CCC,constant condensation climate)試験前ならびに該耐候試験の240時間後に実施した。
【0144】
フォード規格のWSK−M11−P57−A1による、熱および湿気に晒すカタプラズマ試験(Cataplasma−Test)の前および後の透明板ガラス接着付着力の試験のために、3C1Bマルチコート塗装系3W−1〜3W−4で被覆された試験パネルを、室温で24時間貯蔵し、次に透明板ガラス接着コンパウンドBetaseal(登録商標)1858−1(Dow Automotive社から商業的に入手可能な、湿分硬化型のイソシアネートベースの接着剤)をストリップ状に3C1Bマルチコート塗装系3W−1〜3W−4の全体のクリヤコート層上に長手方向に施した(厚さ約3mm、幅10mm)。接着剤を50%の湿度および25℃で72時間硬化させた。
【0145】
接着剤が完全に硬化した後に、いわゆるクイックナイフ接着試験(Quick−Knife−Test)を実施する。そのために、それぞれ12mmの間隔で接着剤に対して垂直方向に切れ込みを入れ、硬化した接着剤を長手方向に手で引き出す。その際に接着剤コンパウンド内でもっぱら亀裂を生じた場合には、接着剤/マルチコート塗装系の被膜間密着、ひいては透明板ガラス接着付着力は、十分であるとして評価される。接着剤/クリヤコートの層間剥離またはマルチコート塗装系内での破損を生じた場合には、透明板ガラス接着付着力は、もはや十分ではない。
【0146】
透明板ガラス接着を室温で試験した後、3C1Bマルチコート塗装系3W−1〜3W−4を親水性の綿織物(Hartmann社の脱脂綿、No.110406/2)に包み、湿度100%で70℃で14日間、引続き−20℃で2時間ならびに再び23℃で2時間貯蔵する。その後に、この綿織物を取出し、2時間に亘って、晒された3C1Bマルチコート塗装系3W−1〜3W−4上で上記のクイックナイフ接着試験を実施する。透明板ガラス接着試験のための評価目盛は、1〜5の範囲を含み、この場合、評価1は、完全な層間剥離に相当し、評価5は、透明板ガラス接着コンパウンド内での全体の破損に相当する。"u"の補充は、層間剥離の分離平面を示し、この場合には、この分離平面は、プライマー層内に位置している。
【0147】
第3表は、個々の結果をまとめたものである。
【0148】
【表3】

【0149】
第3表にまとめられた結果は、本発明による3C1Bマルチコート塗装系3W−3および3W−4が優れた透明板ガラス接着付着力を有することを強調しており、熱および湿気に晒した後の顕著な結果は、エポキシ変性されたポリエステルのバーサチック酸の疎水性の性質によって支持される。比較試料3W−1および3W−2は、熱および湿気に晒すカタプラズマ試験の後に機能層内で破損を示す。これは、望ましいことではない。それというのも、透明板ガラス接着付着力は、安全性に関連したテーマであるからである。自動車安全基準(MVSS)は、ウィンドシールドおよびマルチコート塗装系に対して完全な付着力を示す接着剤を必要としている。
【0150】
その機能層がポリエステル結合剤を含有しない、本発明によらない3C1Bマルチコート塗装系3W−1は、明らかに劣悪な、ストーンチッピングに対する耐性を示す。ストーンチッピングは、ポリエステル結合剤の使用によって改善され、エポキシ変性されたポリエステルを有する3C1Bマルチコート塗装系3W−3および3W−4は、ストーンチッピングに対する優れた耐性をもたらし、湿気に晒した後でもストーンチッピングに対する優れた耐性をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水組成物であって。
a.結合剤としての少なくとも1つの飽和または不飽和のエポキシ変性されたポリエステル、
b.他の結合剤としての少なくとも1つのアクリレート−またはポリウレタンポリマー、
c.ポリマーミクロ粒子、
d.架橋剤としての、ブロック化されたイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂からなる官能基を含有する、少なくとも1つのポリマー、
e.少なくとも1つの顔料、
f.少なくとも1つの有機溶剤および
g.少なくとも1つの助剤または添加剤を含有し、
この場合この組成物の固体は、少なくとも50質量%である、上記無水組成物。
【請求項2】
ポリエステルが前記組成物の全質量に対して5〜20質量%の割合で含有されており、この場合全ての成分の質量割合は、総計で100質量%となる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、それぞれ組成物の全質量に対して、
a.他の結合剤としての少なくとも1つのアクリレート−またはポリウレタンポリマー5〜30質量%、
b.ポリマーミクロ粒子5〜20質量%、
c.架橋剤としての、ブロック化されたイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂からなる官能基を含有する、少なくとも1つのポリマー5〜15質量%、
d.少なくとも1つの顔料5〜49.5質量%、
e.少なくとも1つの有機溶剤30〜50質量%および
f.少なくとも1つの助剤または添加剤0.5〜40質量%を含有する、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ポリエステルが5000〜20000g/molの質量平均分子量を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリエステル中のエポキシ基の割合は、ポリエステルの全質量に対して5〜15質量%である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
粘度が23℃で、フォードNo.4カップからの24秒〜30秒の流出時間に相当する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
塗料材料としての請求項1から6までのいずれか1項に記載の無水組成物の使用。
【請求項8】
塗料材料は、マルチコート塗装系における機能層の形成に使用され、この場合このマルチコート塗装系は、
a.請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物から得られる、少なくとも1つの機能層A、
b.少なくとも1つのベースコート材料の少なくとも1つのベースコートBおよび
c.少なくとも1つのクリヤコート材料の少なくとも1つのクリヤコートCを含む、請求項7記載の使用。
【請求項9】
マルチコート塗装系であって、
a.請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物から得られる、少なくとも1つの機能層A、
b.少なくとも1つのベースコート材料の少なくとも1つのベースコートBおよび
c.少なくとも1つのクリヤコート材料の少なくとも1つのクリヤコートCからなるマルチコート塗装系。
【請求項10】
順次に最初に層A、次に層B、引続き層Cが基体上に施され、引続きA、BおよびCが共通に硬化される、請求項9記載のマルチコート塗装系。
【請求項11】
最初に層Aが基体上に施され、および硬化され、その後にB、最後にCが基体上に施され、引続きBおよびCが共通に硬化される、請求項9記載のマルチコート塗装系。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系を製造するための方法において、請求項1から6までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの組成物を基体上に塗装し、引続き少なくとも1つのベースコート材料を塗装し、引続き少なくとも1つのクリヤコート材料を塗装することを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系を製造するための方法。
【請求項13】
前記組成物ならびにベースコート材料およびクリヤコート材料を共通に硬化させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
基体を被覆するための、請求項9から11までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系の使用。
【請求項15】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物で被覆された基体。
【請求項16】
請求項9から11までのいずれか1項に記載のマルチコート塗装系で被覆された基体。

【公表番号】特表2013−516503(P2013−516503A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546435(P2012−546435)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070796
【国際公開番号】WO2011/080268
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】