説明

マルチシートおよび稲作方法

【課題】雑草の発生を抑制・防止でき、水に濡れてもハンドリング性に優れ、かつ使用後の回収・廃棄作業を必要としない、マルチシートを提供する。
【解決手段】平均厚み:20〜60μmで、かつ幅方向および長手方向に所定の間隔で、複数の穴部を有する鉄箔製マルチシートとする。これにより、水田等、水分供給が充分に行われるような農地に敷設しても、含水によるハンドリング性の低下がなく、作業性に富み、かつ雑草の発生を顕著に抑制・防止できる。また、除草作業の削減と農薬使用量の大幅な削減が可能となり、稲作において、減農薬農法、無農薬農法を容易に適用可能となる。また、マルチシートの、使用後の回収・廃棄作業を必要としないという効果もある。また、マルチシートの穴部に、紙または布で挟持された種子を装着することにより、育苗作業を省略でき、農作業時間の短縮、労力の削減が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農地表面を被覆するマルチング用シート(以下、マルチシートという)に係り、とくに稲作が行われる水田等、水分供給が充分に行われるような農地において好適な、マルチシートおよびこれを用いた稲作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水田等の土壌に生える雑草類の除去方法としては、手作業で雑草類を一本一本取り除く方法、除草機を使用して雑草類を取り除く方法、土壌面に敷草等を敷いて雑草類の生長を抑制する方法、土壌に除草剤(農薬)を散布して雑草類の生長を抑制あるいは枯死させる方法、等が知られている。しかし、手作業で行う方法、除草機を使用する方法、土壌面に敷草等を敷く方法は、多大の人手と作業時間を要し、効率的でなく、また、経済的にも不利となる。一方、土壌に農薬を散布する方法は、労力が少なくて済むという利点はあるが、農薬の人体、環境への影響が問題となっている。このため、農薬の使用を従来より大幅に減少した減農薬農法や、全く農薬を使用しない無農薬農法を採用する場合が多くなっている。しかし、このような農法では当然ながら、生ずる雑草類の処置が大きな問題となっている。このため、手作業によらず、また除草剤(農薬)を利用することなく、雑草類の発生を効率的に抑制できる除草方法が熱望されていた。
【0003】
このような要望に対し、マルチシートを利用した水田等の土壌の除草方法が提案されている。この方法は、水田等をマルチシートで覆い、雑草の発生を抑制・防止する方法である。この場合、マルチシートを水田等に敷くと同時に、苗を移植しても、またシートを敷設後、手でシートに穴をあけ、苗を植えてもよい。利用するマルチシートとして、紙製、布製のマルチシートがある。紙、布は水稲等の栽培が終了した後、そのまま放置することにより生分解するため、使用後の回収、廃棄などの作業を必要としないなどの利点がある。水田等へのマルチシートの敷設は、マルチシートを取り付けられる田植え機等の機械的手段を利用することも可能となっている。
【0004】
さらに例えば、特許文献1には、再生紙マルチシートを利用して、水田における雑草の生育を抑制する方法が記載されている。特許文献1に記載された方法は、湛水状態でほぼ所定期間経つと分解する性質を有し、かつ所定幅のロール状に巻回された再生紙マルチシートを、施肥され、耕耘・代掻された水田の全面に敷設し、雑草の生育を抑制する方法であり、再生紙マルチシートの前後左右に所定間隔で種子収容穴を穿設し、これら種子収容穴に、上面側に生分解性メッシュ布を、下面側に生分解性不織布を配して所定粒数の種子を挟持し、生分解性メッシュ布、生分解性不織布の外周部を種子収容穴周辺の再生紙マルチシートに接合、固定し、直播シートとしたことに特徴がある。特許文献1に記載された方法によれば、播種とマルチングを同時に行え、育苗・田植え等の手間や、除草のための資材、労力が節約でき、また種の鳥等による食害も抑制でき、栽培、収穫作業が容易になるとしている。
【0005】
また、特許文献2には、水中浮遊性繊維構造物を用いた除草方法が記載されている。特許文献2に記載された方法は、土壌表面に水を貯留し、水面上又は水中に繊維構造物を浮遊させた状態で維持しておき、土壌で雑草類が成長し、本葉が発生したのち、貯留された水を排水し、繊維構造物で、成長した雑草類を圧倒するとともに土壌を被覆して、雑草類を枯死させることに特徴がある除草方法であり、栽培植物の種子は、繊維構造物の表面又は繊維構造物中に播種することが好ましいとしている。特許文献2には、繊維構造物としては、不織布、織物、編み物、紙が例示され、特許文献2に記載された方法では、構成繊維としては綿がよいとしている。特許文献2に記載された方法によれば、除草のための資材、労力が節約でき、また種の鳥等による食害も抑制でき、また、発芽率も向上し、栽培植物の育成が簡便・容易になるとしている。
【特許文献1】特開平10−52176号公報
【特許文献2】特開2003−274769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された紙製、布製等のマルチシートは、もともと剛性が小さいか全くないため、また水に濡れ、水を吸収すると、ハンドリング性が極端に悪くなり、マルチシートの敷設位置の調整、およびその微妙な修正等が困難になるという問題があった。とくに紙製マルチシートでは雨の日の作業が困難であった。また、紙製、布製のマルチシートはともに、風雨に晒されると敷設した位置から動きやすく、また動いたのちに、元の位置等に戻す敷設位置の修正がほとんどできないという問題があった。また、紙製、布製のマルチシートは、ハンドリング性が悪いため、一旦巻きほぐすと、巻き戻すなどの作業が難しいという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、稲作で利用する水田等の水分供給が充分に行われるような農地において利用可能で、雑草の発生を抑制・防止でき、ハンドリング性に優れ、かつ使用後の回収・廃棄作業を必要としない、マルチシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した目的に合致するマルチシート用素材について鋭意研究した。その結果、マルチシート用素材として鉄箔を利用することに思い至った。鉄箔は、剛性に優れ、薄く軽量であり、しかもその特性から紙、布等より強い雑草の発生防止作用を有するうえ、使用期間終了後は腐食・溶解が進行し、元の形態を留めることがなく、使用後の回収・廃棄作業を必要としないという利点があることに想到した。
【0009】
本発明は、上記した考えに基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)水分供給が充分に行われるような農地に被覆可能なマルチシートであって、該マルチシートが、平均厚み:20〜60μmの鉄箔製で、かつ幅方向および長手方向に所定の間隔で、複数の穴部を有することを特徴とするマルチシート。
【0010】
(2)(1)において、前記複数の穴部が、直径:20〜100mmの穴部であることを特徴とするマルチシート。
(3)(1)または(2)において、前記穴部に、紙または布で挟持された種子を装着してなることを特徴とするマルチシート。
(4)(1)または(2)に記載のマルチシートを、圃場に敷設したのち、前記穴部に苗を移植し、湛水栽培することを特徴とする稲作方法。
【0011】
(5)(1)または(2)に記載のマルチシートの穴部に紙または布で挟持された種籾を装着し、圃場に敷設し、湛水栽培することを特徴とする稲作方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、剛性に富みハンドリング性に優れ、また水田等、水分供給が充分に行われるような農地に敷設する場合に、含水によるハンドリング性の低下がなく、作業性に富み、かつ雑草の発生を顕著に抑制・防止できるマルチシートを提供でき、除草作業の削減と農薬使用量の大幅な削減が可能となるという顕著な効果を奏する。そして、稲作において、減農薬農法、無農薬農法を容易に適用可能にするという効果もある。また、本発明によれば、マルチシートの、使用後の回収・廃棄作業を必要としないという効果もある。また、マルチシートの穴部に、紙または布で挟持された種子を装着することにより、育苗作業を省略でき、農作業時間の短縮、労力の削減が期待できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のマルチシートは、鉄箔製とする。本発明で使用する鉄箔は、特別な合金元素を含有しない、通常の軟鋼組成の鋼を素材として製造されることが好ましい。その鋼としては、例えば、JIS G 3141に規定されるSPCC、SPCD、SPCEクラスが例示できるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。また、鉄箔の製造方法は、とくに限定されない。例えば、上記した軟鋼組成の溶鋼を、転炉、電炉等で溶製し、連続鋳造法等で鋳造した鋼素材に、熱間圧延、冷間圧延、さらには焼鈍等を施す、通常公知の製造方法で鉄箔とすることが好ましいが、電解析出法で製造された鉄箔を使用しても何ら問題はない。
【0014】
本発明のマルチシートは、鉄箔製で、かつ複数の穴部を有する。マルチシートを、水田等水分供給が充分に行われるような農地を被覆するように、敷設すると、マルチシートで覆われた部分では、雑草の生長が完全に抑えられる。一方、マルチシートを敷設後、あるいは敷設と同時に、穴部に、苗を移植する。成長の初期にはその穴の範囲内で、移植された苗が成長する。例えば、苗を移植する移植式稲作では、移植(田植)終了後、40日間、雑草の発生と生長を防止できればよいとされている。なお、直播式稲作の場合には、80日間とされている。
【0015】
本発明の鉄箔製マルチシートは、平均厚みで20〜60μmの厚みを有する。マルチシートの厚みが、20μm以上あれば、マルチシートが敷設された水田等の中で鉄が腐食されて溶解が進行し厚みが減少するが、上記した雑草の発生と生長を防止する必要のある期間(雑草発生・生長防止必要日数)内では鉄箔として存在し、充分な雑草発生防止効果を維持できる。マルチシートの厚みが、20μm未満では、マルチシートのハンドリング性が低下するとともに、雑草発生・生長防止必要日数より短い日数で、鉄が腐食されて溶解が進行し充分な雑草発生防止効果を維持できなくなる。また、マルチシートの厚みが、60μmを超えて厚くなると、マルチシートの重量が重くなりすぎて、とくに手作業による敷設では作業性が低下する。また、マルチシートの厚みが、60μmを超えて厚くなると、刈取り時でも鉄箔が残存し、刈取り作業の邪魔になり、刈取り作業の作業性が低下する。このため、マルチシートの平均厚みは20〜60μmの範囲に限定した。
【0016】
また、本発明のマルチシートでは、複数の穴部を有する。複数の穴部は、マルチシートの幅方向および長手方向に所定の間隔で配設される。この複数の穴部に、マルチシートの敷設と同時あるいは敷設後に、苗を移植する。予め、幅方向および長手方向に所定の間隔で穴部を配設することにより、苗の移植間隔を一定に保つことができ、苗を手植えで移植する場合の作業者によるばらつきを防止でき、また、苗を機械で移植する場合には、マルチシートを突き通して穴をあける力を調整する必要がなく、作業性が向上するという利点もある。
【0017】
また、複数の穴部は、それぞれ直径:20〜100mmの穴部とすることが好ましい。穴部の直径が20mm未満では、苗の径方向への生長速度が、マルチシート(鉄箔)が腐食されて溶解が進行し径が拡大する速度を上回る場合があり、苗の生長が阻害される場合がある。一方、穴部の直径が100mmを超えて大きくなると、マルチシートの被覆領域が少なくなり雑草の発生防止効果が低下する。このため、穴部は直径:20〜100mmの範囲に限定することが好ましい。なお、穴部は、シートの幅方向および長手方向に所定の間隔で配設される。ここにおける幅方向および長手方向の所定の間隔とは、株間距離および条間距離であり、稲作を行う水田等の圃場や、移植する苗の種類等に適応した間隔とすることが好ましい。
【0018】
また、マルチシートの穴部に予め種子(種籾)を装着して行う直播の場合には、穴部が規則的に存在することにより、従来からの直播で問題となっていた、種子(種籾)の不均一分布に由来する苗(稲)の不均一分布を防止することができる。
なお、マルチシートの穴部への種子(種籾)の装着は、種子(種籾)を紙または布で挟持し、該紙、布の外周部を穴部周辺のマルチシートに、接着剤で接合するか、あるいは汎用文具であるステイプーラ等の機械的手段で固定して、行うことが好ましい。また、種子(種籾)の装着は、種子(種籾)を挟持した紙または布がマルチシートの下側(土壌側)となるように行うことが好ましい。
【0019】
上記した構成のマルチシートは、所定の幅でコイル状に巻かれた状態としておくことが、その後の保管、運搬、敷設等の作業を行ううえで好ましい。
次に、上記した構成を有するマルチシートの使用方法について、水田における稲作を例にして説明する。なお、本発明のマルチシートは、水田に限らず、水分供給が十分に行える農地においても使用できることは言うまでもない。
【0020】
まず、マルチシートを敷設する圃場を準備する。圃場は、予め、施肥し、耕耘・代掻し、適正な水深に調整しておくことは言うまでもない。
このように準備された圃場に隙間無く、本発明のマルチシートを敷設する。本発明のマルチシートの敷設は、従来のマルチシートの敷設の場合と同様に、コイル状に巻かれたマルチシートを巻きほぐしながら行うことが好ましく、従来と同様の人力によるか、田植機装着式敷設機等を用いて行うことができる。なお、本発明のマルチシートは、剛性に富み、ハンドリング性がよく、従来の紙製、布製のマルチシートに比べて敷設作業上の注意点は格段に少なくなる。また、マルチシートの敷設に際しては、隣同士のマルチシートをラップさせて、隙間が生じないようにする必要があることは言うまでもない。
【0021】
マルチシート敷設後、あるいは敷設と同時に、穴部には、苗が移植される。苗を移植後、従来と同様の水管理を行い、湛水栽培する。なお、穴部に種籾を装着されたマルチシートでは、従来の直播と同様に、発芽、生長に応じて、適正な水管理を行い、湛水栽培することが好ましい。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
平均厚み:60μmの鉄箔(幅W:880mm、長さL:5000mm)に、図1に示すように、幅方向にbの間隔で、長さ方向にaの間隔で、複数の穴部(直径d)を配設し、コイル状に巻いたマルチシートとした。aは165mm、bは300mm、dは50mmとした。なお、鉄箔は、高炉および転炉を用いて溶製した、通常の軟鋼組成(SPCC)の溶鋼を連続鋳造法で鋳造し、鋼素材(スラブ)として、該鋼素材(スラブ)を、熱間圧延、冷間圧延および焼鈍工程を経て、製造されたものを使用した。
【0023】
約30aの面積をもつ水田を圃場として、予め、施肥し、耕耘・代掻し、適正な水深に調整した。そして、圃場の中心部に、1区画が5000mm×5000mmの区画を4区画用意した。そのうち2区画を、上記した本発明のマルチシートを敷設する区画A(本発明例)とし、残り2区画をマルチシートを敷設しない区画B(比較例)とし、本発明例の区画Aと比較例の区画Bを市松模様となるように配置した。
【0024】
本発明例の区画Aでは、コイル状に巻いた本発明のマルチシートを巻きほぐしながら敷設し、同時に通常の方法で育苗した稲の苗を、マルチシートの穴部に移植した。なお、マルチシートを幅方向に隣り合うマルチシートとそれぞれ重ね合わせながら、1区画で、6枚敷設し、1区画のほぼ全面(幅約5000mm×長さ5000mm)を本発明のマルチシートで被覆した。なお、穴部の間隔が、幅方向で重なりを含む領域でも重なりを含まない領域と同じ、165mmになるように、隣り合うマルチシートとの重なりを55mmとした。
【0025】
マルチシートを敷設しない比較例の区画Bでは、移植する稲の苗の間隔は、本発明例の区画Aと植栽密度が同じとなるように、条間隔(:a)は165mm、株間隔(:b)は300mmとした。
上記した方法で、5月中旬に苗を移植(田植え)し、9月中旬に稲刈りを行い、玄米を収穫した。なお、苗(稲)の生育過程では、除草剤の散布は一切行わなかった。また、苗の生育過程では、マルチシートの敷設の有無によって、苗の生育に大きな差は認められなかった。一方、雑草は、マルチシートを敷設しなかった比較例の区画Bで、苗の移植後、数週間でコナギ等が生育しはじめ、稲刈りまで成長しつづけた。稲刈り後で測定した結果、比較例の区画Bでは、面積率で約60%の領域で雑草の成長が認められた。本発明のマルチシートを敷設した区画A(本発明例)では、雑草の生長は認められなかった(面積率でほぼ0%)。
【0026】
また、稲刈り時に、各区画から20株ずつ(本発明例の区画計40株、比較例の区画計40株)を採取し、各株における穂数、草丈、籾数を測定し、統計処理し、表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明例の区画Aで育成された稲は、比較例の区画Bで育成された稲に比べて、玄米収量も多く、よい育成状態であったことがわかる。
なお、本発明のマルチシートでは、腐食による減量は、重量%で、移植後2ヶ月で30%、稲刈り後で60%であった。したがって、初期の厚みが20μm程度あれば、移植後2ヶ月までは鉄箔として存在し、雑草の発生を防止できることがわかる。
(実施例2)
実施例1と同じ構造のマルチシートを使用し、実施例1と同じ規模(4区画)の圃場で、実施例1と同様に2区画でマルチシートを敷設し、本発明例とした。1区画の大きさは実施例1と同様に5000×5000mmである。なお、マルチシートの各穴部には、3〜5粒の種籾を包んだ(挟持した)ガーゼ(布)を、該ガーゼ(布)がマルチシートの下側(土壌側)となるように、ステイプーラで予め機械的に固定した。残り2区画は、比較例として実施例1と同様に、マルチシートの敷設は行わなかった。本発明例の2区画と比較例の2区画とは、実施例1と同様に、市松模様に配置した。なお、比較例の2区画では、本発明例の区画と植栽密度が同じとなるように、本発明例におけるマルチシートの穴部に相当する位置に、ガーゼ(布)に包まれた(挟持された)3〜5粒の種籾を埋め込んだ。
【0029】
上記した方法で、5月中旬に播種し、10月上旬に稲刈りを行い、玄米を収穫した。なお、苗(稲)の生育過程では、除草剤の散布は一切行わなかった。
マルチシートの敷設の有無によって、苗の生育過程で雑草の生育に関し、大きな差が認められた。マルチシートを敷設しない比較例の区画では、ヒエなどのイネ科の雑草が多数発生した。一方、本発明のマルチシートを敷設した区画(本発明例)では、ヒエの発生は極微小であった。
【0030】
また、マルチシートを敷設しなかった比較例の区画では、コナギを中心とした雑草も生育しており、稲刈り後で測定した結果、雑草の生育は、総面積率で約80%に達していた。一方、本発明のマルチシートを敷設した区画(本発明例)では、雑草の生育は総面積率で1%以下であった。
また、玄米の収量は、本発明のマルチシートを敷設した区画(本発明例)で605g/mであり、比較例の区画では、ヒエの発生により510g/mであった。本発明のマルチシートを敷設した区画(本発明例)における玄米の収量は、実施例1の95%であるが、直播栽培の収量としては、高度な値である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のマルチシートにおける穴部の配置の一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 マルチシート
2 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分供給が充分に行われるような農地に被覆可能なマルチシートであって、該マルチシートが、平均厚み:20〜60μmの鉄箔製で、かつ幅方向および長手方向に所定の間隔で、複数の穴部を有することを特徴とするマルチシート。
【請求項2】
前記複数の穴部が、直径:20〜100mmの穴部であることを特徴とする請求項1に記載のマルチシート。
【請求項3】
前記穴部に、紙または布で挟持された種子を装着してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチシート。
【請求項4】
請求項1または2に記載のマルチシートを、圃場に敷設したのち、前記穴部に苗を移植し、湛水栽培することを特徴とする稲作方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のマルチシートの穴部に紙または布で挟持された種籾を装着したのち、圃場に敷設し、湛水栽培することを特徴とする稲作方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−77647(P2009−77647A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248743(P2007−248743)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(591006298)JFEテクノリサーチ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】