説明

マルチスクリーン映像表示装置

【課題】マルチスクリーンの映像表示装置において、撮影条件が異なる様々な映像を、臨場感・没入感の高い良好な品質で観察できるように表示し、特に立体映像として撮影された映像に関して、良好な品質で観察できるように表示すること。
【解決手段】映像撮影時のカメラの撮影角度を示す情報と、複数の映像表示部間の表示画面角度を示す情報とを比較し、観察時の映像表示部間の角度を調整するか否かを判定し、判定結果をユーザに通知する構成を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像の表示装置に関するもので、特に、広視野角の映像が得られる、臨場感・没入感の高い映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨場感を高める映像表示装置として、いわゆる大画面ディスプレイや大画面プロジェクタが挙げられる。映像の表示サイズは映像鑑賞時の心理効果と関係が深く、画面やスクリーンから所定の距離だけ離れて映像を鑑賞した時、画面サイズが大きくなるに従い、すなわち画角が大きくなるに従って、臨場感に関する評価が向上するという性質がある。従って、映像表示装置の大画面化は、映像表示の高精細化と共に、臨場感向上のための重要な要素になっている。
【0003】
映像表示装置の大画面化には、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルそのものを大型化するものや、1台のプロジェクタで大画面スクリーンに投射するものの他、比較的小さな表示パネルやスクリーンおよびプロジェクタを複数枚もしくは複数台連結・連携して、トータルの画面サイズを増大させるタイプがある。この複数画面タイプは、パネルを含む装置の製造コストや、設置・運搬の容易性などを考慮すると、映像表示装置の大画面化の手法の一つとして有効であるといえる。
【0004】
このような複数画面タイプの表示装置として、特許文献1の広視野角表示装置がある。これは、正面スクリーンの左右両辺に連続するように左側面スクリーンと右側面スクリーンをそれぞれ配置し、かつ、正面スクリーンの下辺に連続する下面スクリーンを配置する構成を基本とし、それぞれのスクリーンに映像を出力するものである。その際、各スクリーン間が所定の角度をなすように配置することにより、映像鑑賞時に広い視野角を得ることを可能にしている。
【0005】
さらに、前記文献では、前記所定の角度をなすスクリーンで最適な映像を得るために、実写映像の撮影時に、各スクリーン用のカメラ間のなす角度を、前記各スクリーン間の角度に合わせるように配置する実写映像収録システムも併せて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−233982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、実写映像撮影の際には、風景中心の映像なのか人物中心の映像なのか、あるいはカメラの撮影画角など、撮影したい映像範囲や撮影できる映像範囲などに依存してカメラの配置角度が決まるものであり、あらかじめ表示装置に合わせてカメラの配置角度を決めることが適当であるとは限らない。もし、撮影時のカメラ角度と観察時のスクリーン角度との整合がとれていない場合、撮影時の視点(カメラ)と被写体の位置関係と、観察時の視点(観察者の目)と被写体の位置関係に差異が生じるため、観察される映像に歪みや違和感を生じることになる。この点について、以下、図6〜図9を用いて説明する。
【0008】
例えば、撮影画角60°のカメラを3基用い、図6のように、隣接するカメラ601と602、および602と603の撮影方向のなす角度がそれぞれ60°であるように撮影視点P0に配置し、左側面用/正面用/右側面用の映像をそれぞれ撮影したとする。カメラ3基による全体の撮影画角は180°である。撮影対象である6つの被写体604a〜604fは、点P0から等しい位置にあるものとする。このように撮影された映像は、その撮影角度に合わせて、図7に示すような表示面のなすスクリーン角度120°の3面スクリーンを用い、各スクリーンすべての正面位置である点P1から観察すると、各被写体との相対的な位置・角度関係が撮影時と相似関係になり、結果として映像全体にわたって撮影時の配置を再現した、歪みのない最適な映像が得られる。
【0009】
次に、同じ映像を、図8に示すような表示面のなすスクリーン角度135°の3面スクリーンで観察するケースを想定する。このスクリーン構成は、前記特許文献1で開示されたものと同様である。この場合、図7とはスクリーン間の角度が変わるため、表示される各被写体の位置・角度関係について撮影時との相似関係が崩れてしまう。すなわち、各被写体の配置を撮影時通りに再現できなくなり、スクリーン単位では違和感なく観察できるとしても、映像全体として見た場合に歪みを生じ違和感を覚える原因となる。
【0010】
また、観察画角に関して、図7の構成では撮影時と同じ180度であるが、図8の構成では135度と狭くなるため、映像全体としての臨場感・迫力が減少してしまうというデメリットも生じる。これを考慮して、図9のように、図8と同じスクリーン構成でありながら観察位置を変えることで画角を撮影時と合わせる方法も考えられるが、この場合は、各被写体の配置を撮影時通りに再現できない点は図8と同様で、加えて左右のスクリーンに対する観察角度が変わるために、映像全体としての歪みや感じる違和感がさらに大きくなる可能性がある。
【0011】
以上の記述では、簡単のため、単眼視用の映像撮影のケース、即ち各スクリーン用のカメラが一つずつである例で説明したが、立体視用の映像撮影のケースでも同様であり、さらに立体映像特有の問題を生ずる。以下、この点について説明する。立体視用の映像撮影のケースでは、各スクリーン用に2台のカメラが並列に配置された構成をとり、2台セットで両眼視差を有する一組の映像を撮影することになる。そのようなケースでは、視点と被写体との位置・角度関係が、立体映像に対する映像制作者の意図を反映したものであると共に、観察時の立体映像の品質に直接影響を与えることになる。
【0012】
すなわち、図7のように、観察位置P1と各被写体の位置・角度関係が撮影時と相似関係にあれば、各被写体の立体感を再現した良好な映像が得られるが、図8や図9のように、上記の位置・角度関係が崩れるような条件の場合、観察される立体映像は、見えるはずの領域が見えない、あるいは見えないはずの領域が見えてしまう、といった、立体映像として品質の悪い、強い違和感を覚える映像になってしまう。
【0013】
また、以上の記述では、水平方向に3面のスクリーンを配置した表示装置の構成で説明したが、上下方向にスクリーンを配置した構成でも同様の問題を生ずる。例えば、正面スクリーンの下辺に連続するように下面スクリーンを配置し、この下面スクリーンは正面スクリーンの表示面に対して手前方向に角度を持たせたような2面構成の表示装置を考える。この場合、正面スクリーン用と下面スクリーン用の一組のカメラで映像を撮影することになるが、そのカメラ間の角度とスクリーン間の角度が異なる場合、観察される映像は撮影時の被写体との位置・角度関係を再現することができず、映像の歪みや立体感の不整合、およびそれに伴う違和感を生じることとなる。
【0014】
以上説明したように、映像撮影時のカメラ配置と観察時のスクリーン配置が異なる場合、撮影時の視点(カメラ)と被写体の位置関係と、観察時の視点(観察者の目)と被写体の位置関係に差異が生じるため、観察される映像に歪みや違和感を生じることになる。特に、両眼視差を有する立体映像として撮影・観察する場合には、立体映像の品質自体を低下させるほどの強い影響を及ぼす。そして、撮影時のカメラ間角度と観察時のスクリーン角度の差が大きくなれば大きくなるほど、観察される映像の品質に与える影響がより大きくなるという性質がある。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決することを目的とする。すなわち、マルチスクリーンの映像表示装置において、撮影条件が異なる様々な映像を、臨場感・没入感の高い良好な品質で観察できるように表示し、特に立体映像として撮影された映像に関して、良好な品質で観察できるように表示することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明のマルチスクリーン映像表示装置においては、以下の手段を備える。
(1)複数の映像表示手段を備え、映像表示手段間で表示面のなす角度が可変であるマルチスクリーン映像表示装置であって、
映像情報を含む多重化データを、符号化映像データと、映像に関する付属情報とに分離するデータ分離手段と、
前記符号化映像データを復号し、表示可能な映像データを生成する映像復号手段と、
前記付属情報から、映像撮影時のカメラの撮影角度を含む撮影条件を抽出する撮影条件抽出手段と、
前記復号された映像データを、前記複数の映像表示手段に対応させて出力する映像出力手段と、
前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度を検出する表示条件検出手段と、
前記撮影条件と、前記表示条件とから、前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度に関する調整要否と必要調整量を判定する調整判定手段と、
前記調整要否または必要調整量を表す情報を出力する調整状態出力手段と、
を備えるものである。
【0017】
(2)前記複数の映像表示手段は、第1の映像表示手段と、第1の映像表示手段の左側面に連続もしくは隣接して配置される第2の映像表示手段と、第1の映像表示手段の右側面に連続もしくは隣接して配置される第3の映像表示手段とを含んで構成されるものである。
【0018】
(3)前記複数の映像表示手段は、第1の映像表示手段と、第1の映像表示手段の下側面に連続もしくは隣接して配置される第2の映像表示手段とを含んで構成されるものである。
【0019】
(4)前記複数の映像表示手段は、両眼視差を有する立体映像を表示する構成を備えるものである。
(5)別の構成として、複数の映像表示手段を備え、映像表示手段間で表示面のなす角度が可変であるマルチスクリーン映像表示装置であって、
映像情報を含む多重化データを、符号化映像データと、映像に関する付属情報とに分離するデータ分離手段と、
前記符号化映像データを復号し、表示可能な映像データを生成する映像復号手段と、
前記付属情報から、映像撮影時のカメラの撮影角度を含む撮影条件を抽出する撮影条件抽出手段と、
前記復号された映像データを、前記複数の映像表示手段に対応させて出力する映像出力手段と、
前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度を検出する表示条件検出手段と、
前記撮影条件と、前記表示条件とから、前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度に関する調整要否と必要調整量を判定する調整判定手段と、
前記必要調整量に従って、前記映像表示手段間の各表示面のなす角度を調整する表示条件調整手段と、
を備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のマルチスクリーン映像表示装置により、撮影時のカメラ配置が異なる様々な映像を、それぞれに最適な鑑賞条件で鑑賞することができる。特に、立体視映像の鑑賞時に、映像制作者の意図した立体感および、臨場感や没入感を損なわない、高品位な映像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態の装置構成を示す概観図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における状態表示部の表示例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の装置構成を示す概観図である。
【図5】本発明の第4の実施形態の機能構成を示すブロック図である。
【図6】複数カメラによる映像の撮影条件の一例を示す概念図である。
【図7】複数スクリーンによる映像の観察条件の一例(撮影条件と一致する例)を示す概念図である。
【図8】複数スクリーンによる映像の観察条件の一例(撮影条件と一致しない例)を示す概念図である。
【図9】複数スクリーンによる映像の観察条件の一例(撮影条件と一致しない例)を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施例1)
図1に、本発明のマルチスクリーン映像表示装置の一実施形態の概観図を示す。
図1(A)は、装置を天井方向から見下ろした図で、図1(B)は、装置を正面やや斜め上方から見た図である。図示のように、マルチスクリーン映像表示装置は、スクリーン101a〜101cが順に左右方向に隣接するように配置され、隣接するスクリーン間はヒンジ部102a、102bによって角度可変に固定される。可動範囲は、矢印で示したように、中央のスクリーン101bに対して、スクリーン101a,101cの角度θ1,θ2それぞれ、0度〜90度である。各スクリーン間の角度は、ヒンジ部周辺もしくは各スクリーン裏に設置される角度センサによって検出される。また、図1(B)に示すようにスクリーンとは別の表示部103を有する。
【0023】
次に、図2に、上記マルチスクリーン映像表示装置の機能構成を示すブロック図を示す。図示の通り、本発明のマルチスクリーン映像表示装置は、データ分離部201、映像復号部202、映像条件抽出部203、映像出力部204、映像表示部205a〜205c、表示条件検出部206、表示調整判定部207、状態表示部208とから構成される。以下、各構成要素の動作について説明する。
【0024】
まず、撮影された映像情報を含む多重化データが記録もしくは伝送され、蓄積メディアや通信回線を介して本マルチスクリーン映像表示装置に入力される。データ分離部201は、この多重化データを受信し、符号化された映像データと付属情報とに分離する。そして、符号化映像データは映像復号部202へ伝送し、付属情報は撮影条件抽出部203へ伝送する。映像復号部202は、符号化映像データを対応する復号方式に従って復号し、表示可能な映像データとして映像出力部204に出力する。この映像データには、映像撮影時に複数のカメラで撮影された複数の映像が含まれている。映像出力部204は、前記複数の映像を、それぞれ対応する各映像表示部205a〜205cに振り分けて出力する。映像表示部205a〜205cは、図1の例では、スクリーン101a〜101cに該当する。
【0025】
映像表示部205a〜205cは、入力された映像をそれぞれ表示する。一方、撮影条件抽出部203は、付属情報から、撮影時のカメラ配置角度を含む撮影条件を抽出し、表示調整判定部207へ出力する。また、表示条件検出部206は、映像表示部205aと205bの間、および、205bと205cの間の、各スクリーン角度を検出し、表示条件として表示調整判定部207へ出力する。表示調整判定部207は、入力された撮影条件と表示条件とから、映像表示部205a〜205cに関する調整の要否とその調整量を判定し、判定結果を状態表示部208に出力する。状態表示部208は、入力された判定結果を、文字や図形などを用いた可視情報として表示する。状態表示部208は、図1の例では、表示部103に該当する。
【0026】
ここで、表示条件検出部206と表示調整判定部207の動作に関して詳細に説明する。表示条件検出部は、図1において、スクリーン101aと101bの間の角度θ1および、スクリーン101bと101c間の角度θ2を角度センサによって検出し、表示調整判定部207に出力する。角度センサが検出するスクリーン間の角度θ(θ1,θ2)は、スクリーンの表示面のなす角度をθ´とするとき、θ=180―θ´の関係にある角度である。ここでθ´は、表示面のなす角度のうちの劣角側の角度を指す。すなわち、正面のスクリーン(図1の例ではスクリーン101b)の配置面から手前側に起き上がった角度を意味するものである。
表示調整判定部207は、入力されたθ1、θ2と、撮影条件抽出部203から別途入力される撮影カメラ間の角度α1、α2とを比較し(図6参照)、その差分を必要調整量Δθ1、Δθ2として算出する。撮影カメラ間の角度α1、α2は、より具体的には、カメラの光軸間のなす角度を指すものである。ここでΔθ1、Δθ2がゼロの場合は調整不要と判定し、何らかの値を持つ場合は、調整必要と判定する。
【0027】
このようにして得られた調整要否とその必要調整量の判定結果は、文字や記号として可視情報にした上で状態表示部208に表示する。図3に、状態表示部の表示例を示す。図3(A)・(B)いずれも、太線が現在のスクリーンの角度すなわちθ1やθ2に相当する位置を示し、△のマークが調整目標であるα1やα2の角度位置を示している。ユーザがこの表示を確認しながら、各スクリーンの角度を調整し、最終的に両者の角度が一致した時に、△マークの色を変えて調整が完了したことをユーザに通知する。スクリーン角度の調整手段は図示していないが、直接スクリーンを手動で動かす構成でもよいし、ダイヤルやハンドル操作などによって電気的・機械的制御を介してスクリーン角度を変える構成でもよい。また、調整が完了したことをユーザに通知する手段は、△マークの色を変える他に、画面全体の色を変えたり、表示内容を点滅させたり、別途インジケータのランプを点灯させたり、あるいはチャイムなどの音信号で通知してもよい。
【0028】
また、上記の例では、表示調整の判定結果を表示する状態表示部208を備える構成を示したが、この状態表示部208を備えなくともよい。その場合は、図3と同様の情報を映像表示部205a〜205cに映像と重畳して表示する構成でもよい。あるいは、映像としては表示せず、LEDなどの発光デバイスを用いたインジケータによる表示でもよい。例えば、LEDを3素子用いて、必要調整量が正の時/ゼロの時/負の時にそれぞれを点灯や点滅させる構成でもよい。あるいは、可視情報としては一切表示せず、音によって知らせる構成でもよい。例えば、角度が広すぎる時は「ピピッピピッ」角度が狭すぎる時は「ピッピッ」、角度が調整不要になった時には「ピー」とそれぞれアラーム音を鳴らし、調整の要否と調整方向を知らせる構成でもよい。
【0029】
なお、上記実施例において、撮影条件を含む映像の付属情報は、多重化データからデータ分離部で分離する構成としたが、撮影条件抽出部203に直接入力される構成でも良い。その際、撮影条件抽出部203の出力である撮影時のカメラ角度を、ユーザが直接指定する構成でもよく、そのための入力手段を別途備えていてもよい。
【0030】
以上、本発明の一実施例に関して説明したが、本発明の映像表示部は、液晶パネルやプラズマパネル等で構成される映像表示システムであってもよいし、プロジェクタとスクリーンで構成される映像表示システムであってもよく、その表示方式や機器構成に依存しない。
【0031】
(実施例2)
続いて、本発明のマルチスクリーン映像表示装置の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態では3つ備えた映像表示部を2つ備える構成の例である。その他の構成要素は第1の実施形態と同様であるが、映像表示部の配置が第1の実施形態では左右方向に隣接していたのに対し、第2の実施形態では上下(垂直方向)に隣接する構成である点が最大の相違点である。
【0032】
図4に、本発明のマルチスクリーン映像表示装置の第2の実施形態の概観図を示す。
図4(A)は、装置を真横から見た図で、図4(B)は、装置を正面やや斜め上方から見た図である。図示のように、スクリーン401a〜401bが上下方向に隣接するように配置され、スクリーン間はヒンジ部402によって角度可変に固定される。可変範囲は、点線矢印で示したように、正面のスクリーン401aに対するスクリーン401bの角度θ3が0度〜90度である。スクリーン間の角度は、ヒンジ部周辺もしくは各スクリーン裏に設置される角度センサによって検出される。なお、図示は省略したが、図1(B)に示した表示部103と同等の表示部を備えてもよい。
【0033】
本実施形態のマルチスクリーン映像表示装置に関しては、機能構成を示すブロック図と動作の説明は省略する。基本的に図2に示した構成と同様であり、違いは前述の通り、映像表示部の数と配置のみである。すなわち、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、映像表示部間の角度の検出と、別途入力される撮影条件に基づいて、スクリーン角度の調整要否判定を行い、判定結果をユーザに通知する。
以上の構成により、第1の実施形態と同様、撮影条件と表示条件を整合させることができ、良好な品質の映像を観察することを可能にするものである。
【0034】
(実施例3)
続いて、本発明のマルチスクリーン映像表示装置の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、各映像表示部が、両眼視差を有する立体視映像の表示機能を備えることを特徴とするものである。
【0035】
立体視映像の表示機能を備える場合、本発明のマルチスクリーン映像表示装置は、映像復号部202において、両眼視差を有する1組の映像データを復号する機能を備え、映像出力部203において、復号された各映像データを対応する映像表示部205a〜205cに出力する機能を備え、映像表示部205a〜205cにおいては、伝送された1組の映像を左目用映像と右目用映像とに区別して表示する機能を備える。本発明においては、立体映像の表示方法は特定の方式に限定されるものではなく、パララックスバリアによる表示方式,レンチキュラによる表示方式,電子シャッター(メガネ)を利用する表示方式,偏光フィルム(メガネ)を利用する表示方式,等、両眼視差を有する立体映像を対象にしたものであれば、いずれの方式も適用可能である。
【0036】
以上の説明は第1の実施形態を参照して説明したものであるが、第2の実施形態に関しても同様に適用することができる。いずれにしても、立体表示の可能な映像表示部を使用する際には、前述の通り、撮影条件と観察条件が異なる場合に映像品質に与える影響がより大きくなるが、本発明の構成によりこれを避け、良好な品質の立体視映像を表示・観察することを可能にするものである。
【0037】
(実施例4)
続いて、本発明のマルチスクリーン映像表示装置の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、各映像表示部間のスクリーン角度を自動調整する機能を有する表示条件調整手段を備えることを特徴とするものである。
【0038】
図5に、第4の実施形態のマルチスクリーン映像表示装置の機能構成を示すブロック図を示す。図示の通り、本発明のマルチスクリーン映像表示装置は、図2の機能構成と比較して、状態表示部208がなくなり、新たに表示条件調整部508が追加になっている。
ここで、表示条件調整部508の動作について、図5および、第1の実施形態の機器構成を示す図1を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
表示条件調整部508は、ロータリーアクチュエータとその制御部とで構成され、アクチュエータは、図1に示すヒンジ部102a、102bに内蔵されて設置される。前記制御部は、表示条件検出部508に含まれる角度センサによる検出結果を参照しながら、ロータリーアクチュエータを制御し、表示調整判定部207で決定した調整量に達するまで、各スクリーン間の角度を自動調整するものである。このような構成を備えることにより、ユーザが調整要否と調整量を確認しながらスクリーンの角度を変える手間を省いて、簡便に撮影条件と観察条件の整合をとることができ、結果として良好な映像をユーザが観察することを可能にするものである。
【0040】
以上、本発明に関する4つの実施形態について説明した。
以上の説明では、映像表示手段としてのスクリーン数が3ないし2の例を示したが、スクリーン数はこれに限らず、3を超える数で構成されていても良く、また、スクリーン配置も左右方向のみ、上下方向のみの構成の他、左右方向と上下方向が混在したものであっても良い。いずれの場合でも、隣接する各スクリーン間には、スクリーン角度を可変とするヒンジ部およびその角度を検出する角度センサを備え、その検出角度と映像撮影時の各スクリーン用のカメラ間角度を示す情報とを比較して最適なスクリーン角度を判定する手段を備えることによって、本発明のマルチスクリーン映像表示装置を構成することができる。
【0041】
また、映像表示手段としてのスクリーンの表示面のなす角度に関する調整要否または必要調整量を表す情報を出力する状態表示部208と、必要調整量に従ってスクリーンの各表示面のなす角度を調整する表示条件調整部508とを合わせもった構成としてもよい。この場合、必要調整量を表示することでユーザが必要調整量を知ることができ、かつ、ユーザはスクリーンの角度調整を手動で行う必要なく、最適な映像品質を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
101a〜101c…映像表示部、102a,102b…ヒンジ部、103…状態表示部、201…データ分離部、202…映像復号部、203…撮影条件抽出部、204…映像出力部、205a〜205c…映像表示部、206…表示条件検出部、207…表示調整判定部、208…状態表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の映像表示手段を備え、該映像表示手段間で表示面のなす角度が可変であるマルチスクリーン映像表示装置において、
映像情報を含む多重化データを、符号化映像データと、映像に関する付属情報とに分離するデータ分離手段と、
前記符号化映像データを復号し、表示可能な映像データを生成する映像復号手段と、
前記付属情報から、映像撮影時のカメラの撮影角度を含む撮影条件を抽出する撮影条件抽出手段と、
前記復号された映像データを、前記複数の映像表示手段に対応させて出力する映像出力手段と、
前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度を検出する表示条件検出手段と、
前記撮影条件と、前記表示条件とから、前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度に関する調整要否と必要調整量を判定する調整判定手段と、
前記調整要否または必要調整量を表す情報を出力する調整状態出力手段と
を備えることを特徴とする、マルチスクリーン映像表示装置。
【請求項2】
前記複数の映像表示手段は、第1の映像表示手段と、第1の映像表示手段の左側面に連続もしくは隣接して配置される第2の映像表示手段と、第1の映像表示手段の右側面に連続もしくは隣接して配置される第3の映像表示手段とを含んで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のマルチスクリーン映像表示装置。
【請求項3】
前記複数の映像表示手段は、第1の映像表示手段と、第1の映像表示手段の下側面に連続もしくは隣接して配置される第2の映像表示手段とを含んで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のマルチスクリーン映像表示装置。
【請求項4】
前記複数の映像表示手段は、両眼視差を有する立体映像を表示する構成を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1に記載のマルチスクリーン映像表示装置。
【請求項5】
複数の映像表示手段を備え、映像表示手段間で表示面のなす角度が可変であるマルチスクリーン映像表示装置において、
映像情報を含む多重化データを、符号化映像データと、映像に関する付属情報とに分離するデータ分離手段と、
前記符号化映像データを復号し、表示可能な映像データを生成する映像復号手段と、
前記付属情報から、映像撮影時のカメラの撮影角度を含む撮影条件を抽出する撮影条件抽出手段と、
前記復号された映像データを、前記複数の映像表示手段に対応させて出力する映像出力手段と、
前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度を検出する表示条件検出手段と、
前記撮影条件と、前記表示条件とから、前記複数の映像表示手段間の各表示面のなす角度に関する調整要否と必要調整量を判定する調整判定手段と、
前記必要調整量に従って、前記映像表示手段間の各表示面のなす角度を調整する表示条件調整手段と、を備えることを特徴とする、マルチスクリーン映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−35590(P2011−35590A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178807(P2009−178807)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】