説明

マルチストリーム分光光度計モジュール

放射性医薬品のためのマルチストリーム光学検査フローセルは、他のフローセル本体から流体分離した状態で放射性医薬品を個別に案内するための貫通した第1の長尺流体流路を画成する複数のフローセル本体を含む。各フローセル本体はさらに、互いに位置合わせされた第1及び第2のUV透過性の光ガイドと、第1の光ガイドと第2の光ガイドの間を延在する第1の検査路とを画成し、第1の長尺流体流路の一部分は、第1の光ガイドと第2の光ガイドとの間を放射性医薬品が流れるように検査路と交差する。すべてのフローセル本体の第1及び第2の検査路は、単一の検査ビームが各検査路を通ることができるように光学的に位置合わせされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性医薬品の調製又は精製の分野を対象とする。より詳細には、本発明は、マルチストリーム光学検査モジュールを対象とする。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影は、患者体内における特定の分子イメージングプローブ、いわゆるPETトレーサの空間分布を測定するものである。トレーサは、患者体内に極微量注入され、生物学的プロセスへの特異的な関与により特異的に組織と結合する、又は特定の領域で濃縮化する能力を持つ。PETトレーサは、癌の診断及び治療のコントロールに使用されている。
【0003】
現在のPETトレーサ合成手法では、ホットセル区画内の空間が不十分であることがトレーサの生成と精製の大きな制約となっている。生成量を増大させたいという要望から、小型化かつ高容量化された装置の必要性が高まっている。生成過程における重要な段階の1つは、放射性医薬品化合物の最終的な精製である。一般的なPETトレーサ合成の場合、最終的な精製は、約300barのカラム内背圧で動作する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの液体クロマトグラフィーにより行われる。図1及び図2を参照すると、その後、精製された化合物は、光学フローセル1を介して紫外光吸収が検出され、ガンマ線検出器5で活性が検出される。フローセル1は、HPLCのカラムと流体連通した流体投入ポート3a及び吐出ポート3bを有する筐体2を備え、カラムからの出力がフローセル本体を通って流れるようになっている。フローセル1はまた、筐体2内の流路の一部をはさんで位置を合致させた、互いに対向する光ポート4a(図に示す)及び4b(図では見えない)も含む。ケーブル6a及び6bが、対向した光ポートから検出器5まで延在し、それにより検出器5でフローセル1を流れる流体を光学的に検査することができる。検査の実行間の相互汚染を防止するために、各HPLCカラムには、ポンプ機構、UVフローセル、及びガンマ線検出器が対応付けられている。使用のたびに、分離システム、すなわちHPLCカラム及びフローセルを溶媒で洗浄して、システムから化学物質を除去し、残留放射能を可能な限り低減する。また、このようなシステムは定期的に消毒しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2007/182965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
市販のマルチストリームUV−Vis分光計は、各々1つのストリームを専用とする複数本の検査ビームを用いて複数のクロマトグラフィーストリームを同時に分析する高スループットの生成を主眼としている。しかし、そのような市販の多チャネルシステムは、単一チャネルの分光計と比べると大型で高価格であるだけでなく、必要以上に高性能である。カートリッジ式の自動合成システムでは複数の異なる試料の生成が可能であるが、合成器は各試料を順次生成するため、一度には1種類の合成と分析しか行うことができず、あるいは一度に1種類のみの合成と分析を行うことが必要とされる。
【0006】
したがって、複数のHPLCカラムと共に使用する簡素化された部品が必要とされている。そのような部品でホットセル内に必要な空間を最小にすることが必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来技術の光学フローセル単体を示す図である。
【図2】従来技術のフローセルに接続された分光光度計の図である。
【図3】本発明の光学フローセルの断面図である。
【図4】本発明のマルチストリーム光学フローセルの断面図である。
【図5】本発明の別のマルチストリーム光学フローセルの断面図である。
【図6】本発明のマルチストリーム光学フローセルをマルチストリーム精製システムに接続した図である。
【図7】本発明のマルチストリーム光学フローセルを使用して検出されたスペクトルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の当技術分野の必要性を鑑みて、本発明は、マルチストリーム分光光度計のモジュール、すなわち検査モジュールを提供する。この検査モジュールは、ホットセル内でマルチストリームHPLCシステムに使用されることが望ましい。検査モジュールは、単一のUV光源による検査のために配置された、本発明に係る複数の独立したフローセルを含む。本発明の独立したフローセルは、複数のフローセルを光学的に連通した状態で配列することを可能にするモジュール式の設計を採り入れている。すなわち、フローセルの検査チャネルは、単一の検査ビームがすべての検査チャネルを通って当たるように線状に配列される。所与の時に検査されるフローセルは1つのみなので、配列された全フローセルに対して1つの検査ビームで済む。
【0009】
したがって、本発明は、マルチストリーム流路配列をもたらす検査モジュールを提供する。本システムは、流路の配列と、直列に機械的接続及び光学的接続するために適合された市販の分光計及び光ファイバ部品とからなる。流路配列はホットセル内に置かれ、ホットセルの外部に置かれる分光計に光ファイバ部品を介して接続される。
【0010】
このように、本発明は、小型でモジュール方式のマルチストリーム光学フローセルを提供する。本発明の部品式フローセルは、収容すべき流れ線の数に応じて、選択可能な容量を得るように組み立てることができる。したがって、後の合成の実行間で必要とされる接続数が減り、本発明は、フローセルとHPLCカラムとの間の誤接続の可能性を解消する。本発明のマルチストリーム光学検査フローセルは、紫外線(UV)、可視光、又は赤外線(IR)スペクトルの伝達と測定を可能にする。また、本発明のマルチストリーム光学フローセルは、複数の用途、例えば放射性合成、プロセス分析、品質管理、方法開発等が可能である。本発明のマルチストリーム光学フローセルは、再使用可能とするか、又は定期的な洗浄及び保守の必要がない低コストの使い捨て部品となるように、適切な材料で製造することができる。また、本発明は、HIL GMP要件に適する。
【0011】
本発明のフローセルは、プロセス管理及び品質管理に応用することができる。検査波長に応じて、光学フローセルは、例えばポリマーなどの小型合成器用のバルク材から形成された窓を利用することができ、又は、より広い波長範囲で使用する場合は石英などの材料を組み込むことができる。合成トレーサをクロマトグラフィーで精製した後の生成物のピークの同定と検証は、しばしば、ガンマ線と紫外線の吸光度の測定の組み合わせを用いて、目標とする時間窓内の分離媒体からの出力を分析することによって行われる。さらに、精製後の生成物のピークの同定については、再調合後の品質管理又はプロセス管理に紫外線フローセルを利用することもできる。
【0012】
本発明のフローセルは、精製された生成物の無菌性を保証するために、滅菌(ガンマ線、酸化エチレン、又は蒸気)に適した材料で作製すべきである。適切な材料には、ステンレス鋼、光学品質ガラス、及びポリマーが含まれる。フローセルは、1システム当たり200cfu以下のバイオバーデンレベルを保証するために、該当するクリーンルームクラスに対応可能でなければならない。
【0013】
あるいは、本発明のフローセルは、限定ではなく例として、光学ロッドのみ(材料としては、例えば、石英、又はUV透過若しくは半透過性ポリマー、例としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びポリマー体(例えば環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエーテルイミド(Ultem(登録商標)とも称する)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(Peek(商標))、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフタラジンエーテルスルホン(PPES)、ポリフタラミド(PPA)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(Radel(登録商標)とも称する)、ポリカーボネート(PC)、フッ化エチレンポリマー(FEP))、又はこの目的に適した他の材料を使用して構築することもできる。ロッドは同軸に位置合わせされ、ポリマーブロックの中に固定される。ロッドの対向する端面間は、ポリマーブロック内部の短い長さの空の空間だけ離間している。ロッドの対向端面が、流体試料が流れる室の端部の内壁を形成する。これにより、石英ロッドの間を通って室に誘導される流体の幅に渡ってUV吸収を測定することができる。ポリマーブロックには、測定室への流体の出し入れのために導入チャネル及び排出チャネルが形成される。フローセルは単純な石英ロッドと射出成形ポリマー片のみで構成することができるため、このセルの費用は低く、製造が容易であり、それにより使い捨てにすることが可能となる。石英ロッドを用いることにより、多くの他の材料では吸光度が高くなるUV範囲まで吸光度を測定することが可能になる。これは、従来のフローセルの有用な光波長範囲を維持する一方で、費用を激減させる。
【0014】
したがって、そのような自動合成器と組み合わせて使用される分光計では、1つのUV光源及び検出器で済み、流体経路が互いに分離した状態に保たれることだけが要求される。これは、各セルを通る共通の光経路を有するフローセルの順次配列を利用することだけによって実現することができる。単一チャネルのUV、可視光、又はIR分光計を単一のデータ処理装置及び複数のフローセルと併用すると、検出システム全体の大きさを大幅に増すことなく、複数の生成物の分析を順次得ることが可能となる。放出、収集、及び検出はフローセル配列との間をつなぐ光ファイバを介して行うことができ、それにより検出器の電子部品の大半を鉛遮蔽された筐体の外側に収容することが可能となる。
【0015】
フローセル配列は、いくつかの異なる方式で実現することができる。例えば、フローセルの光学部品を整列させると共に吸収信号の光汚染の可能性を防止する目的で、UV及び可視光非透過性のスペーサを使用して市販のフローセルを順に配列することができる。そして、配列と分光計の接続は、上記のように市販の光ファイバ部品を使用することで実現することができる。
【0016】
あるいは、使い捨てのフローセル、又はカセット方式の自動合成プラットフォームのセルと同等のセルを使用してもよい。そのようなフローセルは、複数の流路及びコネクタを組み込んだ単一の成形品からなっても、又は個別の接続点を有する数個の別個のセルからなってもよい。そのような使い捨てセルは、その後、光源と検出器を適切に光学的位置合わせした状態でセルを保持すると共に光ファイバ部品の接続を提供する装置内に置かれる。
【0017】
本発明の検査モジュールは、本願と同日に出願された、本願の権利者が所有する特許出願(整理番号PZ1063)、発明の名称「MULTI−STREAM HIGH−PRESSURE LIQUID CHROMATOGRAPHY MODULE」に開示されるものなどのマルチストリーム精製システムに用いることができる。したがって、放射性合成プラットフォームからの複数の18F放射性トレーサの送達は、化合物専用のハードウェアと、異なる放射性合成間のライン間隙との組み合わせを利用したGMP準拠の多化合物放射性HPLCシステムを対象とすることができる。本発明により、化合物専用のフローセルを利用することが可能となる。従来技術では専用の多チャネル分光計を用いており、これは、1つのアセンブリにそれぞれ複数個のフローセル、光源、及び検出器を内蔵しており、それぞれは単一のデータ処理装置及びインタフェースを使用して制御分析される。そのような複数のUVフローセルを利用する従来技術のシステムでは、フローセルと対応するHPLCカラムとの間に複数回の接続と切断が必要となる。そのような接続と切断の操作はそのたびにユーザの間違いを招きやすく、特定の合成に不適切なフローセルを使用することにつながり、また、行う必要のある接続数を増大し、接続が誤って行われた場合には漏れや合成器からの出力の無駄、損失の可能性を増大させる。
【0018】
一方、本発明では、各フローセルは特定の合成及びHPLCカラムに専用であり、よって相互汚染が発生することはない。また、フローセルはシステムの検証後はいずれの時点でも交換の必要がないため、フローセルとカラムとの誤接続による間違いが回避される。
【0019】
次いで図3を参照すると、本発明はフローセル10を提供する。フローセル10はセル本体12を含み、セル本体12を貫通して長尺の流体チャネル14が画成される。セル本体12は、放射性医薬品の生成及び扱いに適した材料で形成されることが望ましい。セル本体12は、流体導入ポート16を画成する第1の面15と、流体出口ポート18を画成する第2の面17とを含み、流体チャネル14は2つのポート間を流体連通して延在する。セル本体12は、導入ポート16に近い流体入口区間20及び流体出口ポート18に近い流体出口区間22を含むように流体チャネル14を画成する。流体入口区間20と流体出口区間22との間に流体検査区間24が流体連通して延在する。
【0020】
セル本体12はまた、第1の光ポート28を画成する第3の面19と、その反対側にある、第2の光ポート30を画成する第4の面21と、それらの間に延在する長尺光チャネル26も含む。光チャネル26は、第1の光ポート28と光学連通した第1の光区間32と、第2の光ポート30と光学連通した第2の光区間34を含む。第1の光区間32及び第2の光区間34は、流体チャネル14の流体検査区間24をはさんで同軸に位置合わせされる。第1の光区間32は透明な第1の光ガイド36を収容しており、それにより光区間32を流体密封して、検査区間24から光区間32に流体の漏れがないようにする。同様に、第2の光区間34は透明な第2の光ガイド38を収容しており、それにより光区間34を流体密封して、検査区間24から光区間34に流体の漏れがないようにする。第1及び第2の光ガイド36、38は、光学的に透明なレンズ又は案内ロッド又は繊維から形成されることが望ましい。動作時には、検査光線が第1の光ガイド36からセル本体12中に誘導され、流体チャネル14の検査チャネル24を通り、次いで第2の光ガイド38を通ってセル本体12から出る。光ガイド36及び38は、フローセル10を利用する検出機器(図示せず)との間の光の自由空間結合のために、それぞれ研磨された端面36a及び38aを備える。
【0021】
本発明は、流体入口区間20と流体出口区間22を、光チャネル26に沿って相互から横方向に離間できることを企図する。本発明はさらに、流体入口区間20と流体出口区間22を、光チャネル26をはさんで線状に位置合わせできることを企図する。本発明の各実施形態では、流体チャネル14は、同じフローセル本体12の光チャネル26と交差する。
【0022】
主面19及び21はさらに、それぞれ複数の位置合わせ用ポート42a〜b及び44a〜bを画成する。下記でさらに説明するように、位置合わせ用ポートは、反対方向を向くように配置され、互いに反対側の面に配置されて、複数個のフローセルを互いに位置合わせする際の助けとなる。
【0023】
流体検査区間24に対する流体入口区間20及び出口区間22の向きは、ユーザの嗜好に応じて選択してよい。例えば、流体チャネル14は大文字の「U」字型にすることができ、その場合導入ポート及び出口ポートはフローセルの同一の面上に画成され、又は、流体チャネルは、導入ポートと出口ポートが互いに隣接する面に形成されるように形成することもできる。また、本発明は、流体検査区間が光チャネル26と単純な交差をなすように、流体導入ポートと出口ポートを同軸に位置合わせしてよいことも企図する。いずれの場合も、光ポートは2つの光ガイドで密閉されて流体の漏れを防ぐ。検査ビームは、第1の光ガイドで誘導され、検査チャネルを流れる液体の中を通り、そして第2の光ガイドに結合されて検出器のファイバの束に捕捉される。流体は、矢印Aの方向に流体チャネル14を通って誘導することができる。適切な流体導管及び接続40が、本発明の導入ポート及び出口ポートに設定されて、本発明のフローセルに出入りする流体を適切に誘導する。
【0024】
例えば、図3では、本発明のフローセル10は、フローセル10については機械加工又は射出成型を用いて適切なポリマー片、例えばCOCの中に流路を生成することによって機能する。
【0025】
フローセル10は、流体チャネル14を流体密閉するように光ガイドの周囲にエラストマ系のOリングを内蔵してもよい。光ポートの面19及び21に光コネクタ45を取り付けることができる。各光コネクタ45は、検出器からの挿入ケーブルと各ガイド36及び38との間に光学連通を提供するように、コネクタ45を貫通する長尺の開放ケーブルチャネル47を画成する。コネクタ45は、これらに限定されないが、ねじ接続、接着接続、留め具等の当技術分野で知られる従来の手段でセル本体12に取り付けることが企図される。また、導入ポート16及び排出ポート18でそれぞれ流入、流出する流体の流れは、それぞれ各ポートに位置する開放流体継手31及び33によって受容されることが望ましい。継手31及び33は各ポートに流体導管を固定する接続手段を提供し、あるいは各ポートにキャップシールを取り付けて流体チャネル14を隔離する。
【0026】
本発明では、フローセル10は、セル本体12に穿孔して光チャネル26(流体チャネル14の検査区間24を含む)を形成することで製造できることを企図する。第1の流体区間20及び第2の流体区間22も同様に穿孔することができる。そして、光ガイド36及び38は、圧入又は他の方法で取り付けることができる。そして、継手31及び33を取り付ける手段、ならびにセル本体12に光学的コネクタ45を接続する手段も機械加工によることができる。また、位置合わせ開口42a〜b及び46a〜bも同様に穿孔することができる。あるいは、本発明は、セル本体12を射出成形してよいことも企図する。そして、光ガイド36及び38を別個に挿入し、設置することができる。さらなる代法として、ポリマー注入の前に光ガイド36及び38を型に挿入して、成型の完了時にフローセル10を形成できるようにしてもよい。
【0027】
そのような各実施形態では、本発明のフローセルは、放射性医薬品化合物を扱うのに適した材料で形成される。セルの形状は、流体チャネルの「相互作用」の種々の長さと量を可能にして、種々の放射性トレーサの分離に対して本設計を簡易に適合できるようにする。光ガイドにより、フローセルに対するUV光の結合が簡略化され、それにより複雑な光学部品の必要がなくなる。例えば、フローセルは、圧入、オーバーモールド成形、又はその他の低コストの製造若しくは組み立て技術により、光ポートを密封する光ガイドとして石英ロッドを用いて形成することができる。
【0028】
本発明はさらに、検査信号の集束を向上させるために、光ガイドにレンズを組み込むか、又は光ガイドをレンズの形態にしてもよいことを企図する。例えば、光ガイドは、部分円錐形状にするか、又は一端若しくは両端に凹状若しくは凸状表面を備えて、媒体に入る信号又は媒体から出る信号の回折を考慮することができる。図3〜図5は、一方の側の外側凸状表面36aと、検査チャネル区間24に対向した反対側の平面表面36bとを有する第1のガイド36を示す。第2のガイド38も外側凹状表面38aを含む。第2のガイド38は同様に、第1のガイド36の表面36bに面して対向している平面表面38bを含む。したがって、図5で矢印C1及びC2で表す検査ビームは、検査チャネルを流れる流体及び/又は本体12を横切って反対側の光ポート内にあるセンサに、より集束させることができる。本発明はさらに、特定の用途で要求される場合があるように、表面36a、36b、38a、及び38bを凸状、凹状、又は平面状のいずれかに形成できることを企図する。本発明はさらに、光ガイドの1つ若しくは両方がそのような集束形状を備えてよく、又はどちらもそのような形状を備えない場合もあることを企図する。
【0029】
図4は、本発明のマルチストリーム検査モジュール50の第1の実施形態を示す。検査モジュール50は、第1のフローセル10及び第2のフローセル10’を備え、フローセル10及び10’は、単一の検査ビームが配列された両フローセルを通るように、それぞれの光チャネル26及び26’を同軸に位置合わせして配列される。検出機器からの光ケーブルは、フローセル1の第1の光ポート28と、フローセル10’の第2の光ポート30’で接続されることになる。フローセル10’の位置合わせ用開口42a〜bとフローセル10の位置合わせ用開口44a〜bはそれぞれ線状の位置合わせピン51を受けて、2つのフローセルの光チャネルを確実に位置合わせする。本発明は、当技術分野で知られる他の位置合わせ機構を使用して、光チャネルの適切な位置合わせ及び配向を得てよいことを企図する。
【0030】
したがって、検査モジュール50は、1つのみの検出機器と検査ビームを使用して、2つの異なるフローセルを流れる流体の検査を提供することができる。本発明は、モジュール50の1つのフローセルだけが、自身の流体チャネル14の検査区間24で検査する流体を能動的に案内することを企図する。したがって、各フローセルは1つの精製カラム専用とすることができ、各精製カラムは、同一又は異なる化合物に使用することができる。
【0031】
図5は、本発明の別のマルチストリーム検査モジュール60を示す。モジュール60は6個の本発明のフローセル10a〜fを組み込んでおり、各フローセルの光チャネル26a〜fは、単一の検査ビームでモジュール60のどの流体チャネル14a〜fを流れる流体をも検査できるように位置合わせされている。モジュール60は5つのスペーサ75a〜eを含み、各スペーサは、隣接するフローセル間に位置する。各スペーサ75a〜eは、それぞれスペーサ開口77a〜eを画成する不透明の平面体を備え、この開口を通して隣接する光チャネル26a〜eを収容する。スペーサ75a〜eは、フローセル10a〜f間に相対的な固定係合を提供して、光チャネル26a〜fの所望の位置合わせを保持することができる。よって、モジュール60は、各フローセル10a〜fにつき1つ、計6個の異なる精製カラムに接続することができ、各フローセルが特定カラムの生成物に専用となる。作業者は、同一又は異なる放射性トレーサに異なるカラムを使用するかどうかを決定することができる。各フローセル10a〜fに入る液体の流れをそれぞれ導入ポート16a〜fの矢印A1〜A6で表し、各フローセル10a〜fから出る流れをそれぞれ排出ポート18a〜fの矢印B1〜B6で表している。矢印C1は、光ポート30fに入る入射検査ビームを示し、矢印C2は、光ポート28aからの検査ビームの出現を示す。
【0032】
図6は、本発明のモジュール60を組み込んだマルチストリームHPLCシステム110の概略図である。マルチストリームシステム110を使用して精製できる化合物の潜在的な数は、多ポート弁(すなわちポート数)118の選択と、合成器自体の近傍でモジュールに利用できるホットセル空間とによって決まる。化合物専用の注入弁124a〜f及びHPLCプレカラム/メインカラム126l〜f及びそれに関連する配管には、市販のハードウェアを利用することができる。
【0033】
そしてモジュール60は、個々の出口ポート18a〜fで流体ラインに接続することができる。望ましくは、出口ポート18a〜fに接続される流体ラインは、カセット方式とするか、又は組み合わせた配列の形で提供することができる。モジュール60からの移送管は、鉛遮蔽された放射検出器筐体130を貫通する。放射検出器筐体130を通過後、流体は、望ましくは、化学的に不活性(非溶出性)のマニホルドを通って誘導されて流体を直接供給するか、又は供給の前にさらに調合するために流体を誘導する。
【0034】
図6に示すように、平坦基部90がHPLCモジュール110の弁、導管、及びカラムを支持する。検査モジュール60は、基部90上に支持される必要はない。制御システム132がHPLCモジュール110の全体の制御及び操作を提供し、システム及び動作の状態を表示すると共にシステム動作についての作業者入力を受け取る対話式データディスプレイ134を含む。図では汎用制御ケーブル136が制御システム132から基部90に延びており、これは、制御システム132がHPLCモジュール110の弁及びカラムの動作を指示することを示している。
【0035】
HPLCモジュール110は、トレーサ合成器112及び洗浄液容器142からの出力と選択弁118との間に選択的な連通を提供する第1の供給弁140を含む。弁140は、合成器112及び流体容器142からの出力と流体連通したそれぞれ第1の投入ポート140a及び第2の投入ポート140bを含む。本発明は、合成器112からの出力は、合成器112からの出力を保持する別個の容器であっても、又は出力を直接弁140に供給するように合成器112に直接接続された長尺導管であってもよいことを企図する。洗浄液容器142は、弁118とモジュール60の間にある専用部品の導管を洗浄するのに適した洗浄/吐水用液を保持して、異なる合成器バッチの出力を扱うために導管がGMP準拠となるようにする。長尺導管142aが、容器142の洗浄液を弁140のポート140bに誘導する。また、弁140は、制御システム132の制御下で動作して、合成器の出力流体又は洗浄液を弁140を通じて誘導し、排出ポート140cから送達用導管144を通して、選択弁118の導入ポート146に誘導する。
【0036】
選択弁118は制御システム132で操作され、導入ポート146から入った流体を排出ポート148a〜fの1つを通じて選択的に誘導するように構成される。各排出ポート148a〜fは、それぞれの固定流体流路150a〜fと流体連通して接続される。固定流体流路150a〜fはそれぞれ、長尺の第1の流導管152a〜f、注入弁124a〜f、長尺の第2の流導管154a〜f、及びHPLCカラム126a〜fを含む。溶離液導管156a〜fが、それぞれのHPLCカラム126a〜fからモジュール60のそれぞれのフローセル10a〜fまで延在する。
【0037】
HPLCモジュール110はHPLCポンプ158を含み、これは制御システム132で操作されて、各固定流体流路150と各注入弁124a〜fを通じてそれぞれのHPLCカラム126a〜fに流体を選択的に誘導する。HPLCモジュール110はポンプ弁160を備え、これも制御システム132によって操作されてポンプ158の作用を注入弁124a〜fのうち選択されたものに誘導する。圧力水路162がポンプ158からポンプ弁160の導入ポート164まで延在する。ポンプ弁160は、圧力水路から入ったポンプ流体を選択的に投入ポート164に誘導し、弁160を通じ、ポンプ吐出ポート160a〜fの1つから出すように構成される。HPLCモジュール110は、弁160の個々の吐出ポート160a〜fと注入弁124a〜fのポンプ導入ポート168a〜fとの間に延在する長尺のポンプ導管166a〜fを備える。
【0038】
各注入弁124a〜fはさらに、それぞれ導管152a〜fと流体連通した流体導入ポート170a〜fを含む。各注入弁124a〜fはさらに、それぞれ第2の流導管154a〜fと流体連通した流体排出ポート172a〜fをそれぞれ含む。さらに、各注入弁124a〜fは、洗浄液を容器142から試料容器又は廃液容器(図示せず)に誘導するための試料ポート174a〜fを含む。容器142及び試料ポート174a〜fの1つから誘導された洗浄液は品質管理のために点検して、それぞれ導管152a〜fがGMP標準に準拠して洗浄されたことを保証することができる。
【0039】
各光学フローセル10a〜fは、それぞれ溶離液導管56a〜fに取り外し可能に接続される。本発明は、フローセル10a〜fのいずれかがその溶離液導管156a〜fから取り外された時には、溶離液導管156a〜fの開放端に蓋をして導管を密閉することを企図する。不使用のフローセルも各自の溶離液導管の接続ポートで蓋をする。フローセルモジュール60は、各フローセルを流れる流体を検査するための単一のUV分光計検出器178に接続される。検出器178は制御システム132で操作され、制御システム132は、検出器178で収集されたデータの読み出し及び格納も行う。このように、各フローセル10a〜fは、それぞれ導入ポート16a〜fで各自の溶離液導管156a〜fに接続される。
【0040】
HPLCモジュール110は加えて、検査モジュール60のフローセル10a〜fからの使い捨て流体経路122の部分を通って流れる流体の活性を検出する放射能検出器184を含む。流体経路122は6つの長尺の中空導管122a〜fを含み、各導管は、モジュール60の排出ポート18a〜fに接続される。流体経路122の各導管は、各自の弁マニホルド195まで延在することが企図される。図を簡潔にするために、図には1つのみのマニホルド195(導管122aに接続される)を示す。マニホルド195の弁調整と動作は、制御システム132又は別個の外部制御システム(図示せず)で制御して、モジュール60からの出力流体を直接調剤瓶に誘導するか、又は供給の前にさらに流体を調合するために別のシステムに誘導することができる。
【0041】
本発明のフローセルは、適切なポリマーから形成されるものと説明したが、それに代えて適切な金属を使用して形成してもよい。ポリマーでフローセルを形成すると低費用の使い捨てユニットを得ることができ、一方、金属でカラムを形成すると、洗浄、滅菌が可能で、複数回使用するために構成された検査モジュール用のフローセルを得ることができる。
(作用)
分析時には、光源光と検出器の間にある不使用セルの空気/石英の界面が原因となって信号の干渉が発生する可能性がある。この干渉を最小に抑えるために、不使用フローセル10の流体チャネル14に、屈折率が石英(R.I.=1.4585)に近い溶媒を配置することができる。そのような溶媒には、DMSO(1.4793)、クロロホルム(1.4458)、アセトニトリル(1.3441)、及び水(1.3330)がある。
【0042】
予備実験では、上記のシステムでは屈折が大きな問題とならないことが示されている。図7は5つのUVクロマトグラムを重ねたものを示すが、これは、従来の方式で使用した単一のフローセルと、不使用セルに空気又は水を入れて順次使用した4セルの配列とで得られたスペクトルからなる。このクロマトグラムの重ね合わせは、信号強度又は分解能の損失がこの構成では問題とならないことを実証している。水溶離液に1mLmin-1の流量で1分及び3分の間隔でHPLC点検基準を繰り返し注入することにより、254nmのスペクトルが得られた。ピークの高さは16〜20mVである。
【0043】
本発明の特定実施形態を図示し、説明したが、当業者には、本発明の教示から逸脱することなく変更及び改変を加えてよいことが明らかであろう。前述の説明及び添付図面に示す事柄は単なる例示として提供されるものであり、限定ではない。本発明の実際の範囲は、従来技術に基づき適切な観点で見た特許請求の範囲に定義されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性医薬品のためのマルチストリーム光学検査フローセルであって、
前記放射性医薬品を案内するための貫通した第1の長尺流体流路を画成する第1のフローセル本体であって、さらに、
該第1のフローセル本体を貫通して延在する長尺光チャネル、
前記光チャネル内に位置する、互いに位置合わせされた第1及び第2のUV透過性の光ガイド、及び
前記放射性医薬品が前記第1の光ガイドと第2の光ガイドの間を流れるように前記第1の光ガイドと第2の光ガイドの間を延在する前記流体流路の第1の検査路
を画成する第1のフローセル本体と、
前記放射性医薬品を案内するための貫通した第2の長尺流体流路を画成する第2のフローセル本体であって、さらに、
該第2のフローセル本体を貫通して延在する長尺光チャネル、
前記光チャネル内に位置する、互いに位置合わせされた第1及び第2のUV透過性の光ガイド、及び
前記放射性医薬品が前記第1の光ガイドと第2の光ガイドの間を流れるように前記第1の光ガイドと第2の光ガイドの間を延在する前記流体流路の第1の検査路
を画成する第2のフローセル本体とを含み、
単一の検査ビームが前記光チャネルの両方を通ることができるように、前記第1の光チャネルと第2の光チャネルを光学的に位置合わせする、光学検査フローセル。
【請求項2】
各前記フローセル本体がさらに、
第1の光ポート及び第2の光ポートであって、前記第1の光ガイドが前記第1の光ポートを密封し、前記第2の光ガイドが前記第2の光ポートを密封する、第1の光ポート及び第2の光ポートと、
流体導入ポート、及び前記流体導入ポートと前記検査路との間を流体連通して延在する流体入口区間と、
流体出口ポート、及び前記流体出口ポートと前記検査路との間を流体連通して延在する流体出口区間と
を画成する、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項3】
各前記流体導入ポート及び各前記流体出口ポートを、各自の前記フローセル本体の同一表面に画成する、請求項2記載の光学検査フローセル。
【請求項4】
各前記流体導入ポート及び各前記流体出口ポートを、各自の前記フローセル本体の対向する表面に画成する、請求項2記載の光学検査フローセル。
【請求項5】
各前記流体導入ポート及び各前記流体出口ポートを、各自の前記フローセル本体の非同一面表面に画成する、請求項2記載の光学検査フローセル。
【請求項6】
各前記第1の光ポート及び各前記第2の光ポートを、各自の前記フローセル本体の対向する表面に画成する、請求項2記載の光学検査フローセル。
【請求項7】
前記第1及び第2の光ガイドを石英で形成する、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項8】
前記フローセル本体をポリマー材料で形成する、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項9】
前記第1のフローセル本体をステンレス鋼で形成する、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項10】
前記第1及び第2のフローセル本体のための接続及び位置合わせ機構をさらに含み、それにより、単一の検査ビームで検査するために各光チャネルを線状に位置合わせして用意する、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項11】
前記第1及び第2の検査フローセルの一方の前記検査チャネルが、前記光チャネルと前記流路とが交差する前記光ガイドの形成材料に近い屈折率の流体を保持する、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項12】
前記第1のフローセル本体と第2のフローセル本体との間に位置する不透明のスペーサをさらに含む、請求項2記載の光学検査フローセル。
【請求項13】
前記スペーサが、前記第1のフローセル本体の前記第2の光ポート及び前記第1のフローセル本体の前記第1の光ポートと位置が合致した貫通開口を画成する平面体を含んでなる、請求項12記載の光学検査フローセル。
【請求項14】
前記第1のフローセル本体内の前記光ガイドの1つがレンズを含んでなる、請求項2記載の光学検査フローセル。
【請求項15】
前記レンズが、平面状、凸状、及び凹状表面の1つを含む、請求項14記載の光学検査フローセル。
【請求項16】
前記レンズが前記第1のフローセル本体の前記第2のレンズであり、前記レンズが、前記第2のフローセル本体の前記第1のレンズに面して対向した凸状表面を含む、請求項15記載の光学検査フローセル。
【請求項17】
第3、第4、第5、及び第6のフローセル本体をさらに含み、前記第3、第4、第5、及び第6のフローセル本体が各々、
該フローセル本体を貫通して延在する長尺光チャネルと、
前記光チャネル内に位置する、位置合わせされた第1及び第2のUV透過性の光ガイドと、
前記放射性医薬品が前記第1の光ガイドと第2の光ガイドの間を流れるように、前記第1の光ガイドと第2の光ガイドの間を延在する前記流体流路の第1の検査路と
を含み、
単一の検査ビームが各前記検査路を通り、前記通路から信号情報を提供できるように、各前記フローセル本体の前記検査路を光学的に位置合わせする、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項18】
前記第1及び第6のフローセル本体が光ファイバのための継手を収容し、各前記継手は、各自のフローセル本体の光ポートと位置を合致させて配置される、請求項17記載の光学検査フローセル。
【請求項19】
前記第1及び第2の長尺流体流路の少なくとも一方の一部が前記検査路の少なくとも一部に沿って延在する、請求項1記載の光学検査フローセル。
【請求項20】
放射性医薬品のためのマルチストリーム光学検査フローセルであって、
複数のフローセル本体を含み、各前記フローセル本体は、他の前記フローセル本体から流体分離した状態で放射性医薬品を個別に案内するための貫通した第1の長尺流体流路を画成し、各前記フローセル本体はさらに長尺光チャネルを画成し、互いに位置合わせされた第1及び第2の光学的に透明な光ガイドを含み、各前記フローセル本体の前記長尺流体流路は、前記第1の光ガイドと第2の光ガイドとの間を放射性医薬品を誘導するために前記フローセル本体の前記光チャネルと交差する検査路を含み、各前記複数のフローセル本体の前記光チャネルは、単一の検査ビームが各前記光チャネルを通ることができるように光学的に位置合わせされる、光学検査フローセル。
【請求項21】
複数の精製カラムを含む放射性医薬品の精製システムであって、各前記精製カラムは、請求項20記載の検査フローセルの個々の前記フローセルに至る溶離液導管を提供する、精製システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−507615(P2013−507615A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533345(P2012−533345)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/051964
【国際公開番号】WO2011/044453
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】