説明

マルチスペクトル型選択的反射構造体

選択的反射構造体と、その構造体の製造方法が記載されている。一実施態様では、複数の電磁帯域で反射特性と透過特性と吸収特性を制御することができる。a)ポリマー材料と着色剤とを含んでいて、熱透過性で視覚的に不透明な基板と、b)場合によってはレーダー信号透過性低放射率要素を含む熱反射層とを備える構造体が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁(EM)スペクトルの可視帯域、nIR帯域、SWIR帯域、MWIR帯域、LWIR帯域、レーダー帯域における反射率と透過率を制御する選択的反射構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
狩猟者や軍隊が用いるカムフラージュ材料は、一般に、電磁(EM)スペクトルの可視部でカムフラージュ特性を提供する。軍用カムフラージュが最近改善されてnIR部と短波赤外(SWIR)部へと性能が拡張されている。EMスペクトルの中波赤外(MWIR)帯域と長波赤外(LWIR)帯域で作動する熱イメージング・センサーの利用が増えているため、軍隊での利用者は、こうしたセンサー帯域へと保護が拡張されることを求めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱領域でカムフラージュ機能を実現する従来法では、EMスペクトルの可視帯域とnIR帯域で反射率がより大きくなることがしばしばある。同様に、可視帯域とnIR帯域でうまく機能すると、熱領域での検出が増えることがしばしばある。したがって効果的なマルチスペクトル(可視光、nIR、SWIR、MWIR、LWIR)型解決法を利用してEMスペクトルの異なるこれらの帯域全体を通じて単一の構造体で反射特性、透過特性、吸収特性を制御することはできていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
可視帯域、nIR帯域、MWIR帯域、LWIR帯域を含む複数のEM帯域で反射特性、透過特性、吸収特性を制御できる構造体を記載する。本発明の目的では、可視光は400〜600nmと定義し、nIRは700〜1000nmと定義し、MWIRは3〜5μmと定義し、LWIRは9〜12μmと定義する。この明細書に記載する方法は、8〜14μmの範囲の波長に適した特性を持つ構造体を形成するのにも適している。
【0005】
一実施態様では、a)ポリマー層と着色剤を含んでいて、熱透過性で視覚的に不透明な基板である第1の要素と、b)熱透過性で視覚的に不透明なその基板の1つの面に近い低放射率要素を含む熱反射層である第2の要素とを備える構造体を記載する。この構造体は、平均反射率が、i)400〜600nmの範囲の波長で約70%未満であり、ii)700〜1000nmの範囲の波長で約70%未満であり、iii)3〜5μmの範囲の波長で約25%よりも大きく、iv)9〜12μmの範囲の波長で約25%超である。
【0006】
熱反射性かつレーダー反射性である構造体を記載する。熱反射性かつレーダー透過性の他の実施態様を記載する。いくつかの構造体は、レーダー波がその構造体の厚みを透過する一方で、電磁スペクトルの複数の部分(例えば可視光、及び/又はnIR、及び/又はSWIR、及び/又はMWIR、及び/又はLWIR)で電磁波を減衰させる。いくつかの構造体は、1〜約100GHzで透過率を0%にできるのに対し、別の構造体は、1〜約100GHzで透過率が100%である。この明細書では、1〜約5GHzの周波数の範囲全体にわたって90%よりも大きな平均レーダー透過率でレーダー波を透過させることができる場合に、構造体はレーダー透過性であると見なされる。1〜約20GHzの周波数の範囲全体でレーダー透過率が90%超である構造体、及び/又は1〜約100GHzの周波数の範囲全体でレーダー透過率が90%超である構造体も製造できる。
【0007】
一実施態様では、平均反射率が、i)400〜600nmの範囲の波長で約70%未満であり、ii)700〜1000nmの範囲の波長で約70%未満であり、iii)3〜5μmの範囲の波長で約25%よりも大きく、iv)9〜12μmの範囲の波長で約25%よりも大きく、v)平均レーダー透過率が1〜5GHzの周波数の範囲全体で90%超である構造体が提供される。レーダー・センサー又はレーダー検出器とレーダー・カムフラージュ製品の間にレーダー透過性構造体を配置することができる。あるいはレーダー信号を吸収する、又は反射する、又は散乱させるレーダー・カムフラージュ層をレーダー透過性構造体と組み合わせて用いることができる。
【0008】
複数のEM帯域で面又は物体をカムフラージュする方法として、a)ポリマー材料と着色剤を含んでいて、熱透過性で視覚的に不透明な基板を用意するステップと;b)低放射率面を含む熱反射層を用意するステップと;c)熱透過性で視覚的に不透明な基板の近くにその低放射率面を配置してマルチスペクトル型選択的反射構造体を形成するステップと;d)検出手段と見られる物体の間にそのマルチスペクトル型選択的反射構造体を配置するステップを含む方法を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図2】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図3】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図4】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図5】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図6】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図7】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図8】1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【図9】構造体のいくつかの実施例に関する250nm〜2,500nmの波長での反射スペクトルである。
【図10】構造体のいくつかの実施例に関する3.0μm〜5.0μmの波長での反射スペクトルである。
【図11】構造体のいくつかの実施例に関する8.0μm〜12.0μmの波長での反射スペクトルである。
【図12】レーダー・カムフラージュ層をさらに備える1つの選択的反射構造体の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図8を参照してマルチスペクトル型選択的反射構造体を説明する。本発明の目的では、可視光は400〜600nmと定義し、nIRは700〜1000nmと定義し、MWIRは3〜5μmと定義し、LWIRは9〜12μmと定義する。MWIRとLWIRの分光応答は熱領域を表わす。
【0011】
図1に示した構造体の模式図の断面図からわかるように、一実施態様では、構造体(10)は、第1の面(12)と第2の面(13)を備えていて熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)を含む第1の要素と;熱反射層(30)を有する第2の要素とを備えている。熱反射層(30)は低放射率要素を備えていて、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)の第2の面(13)に近くに位置する。このマルチスペクトル型選択的反射構造体は、平均反射率が、i)400〜600nmの範囲の波長で約70%未満であり、ii)700〜1000nmの範囲の波長で約70%未満であり、iii)3〜5μmの範囲の波長で約25%よりも大きく、iv)9〜12μmの範囲の波長で約25%超である。
【0012】
別の一実施態様では、マルチスペクトル型選択的反射構造体は、平均反射率が、i)400〜600nmの範囲の波長で約50%未満であり、ii)700〜1000nmの範囲の波長で約70%未満であり、iii)3〜5μmの範囲の波長で約25%よりも大きく、iv)9〜12μmの範囲の波長で約25%よりも大きくなるようにされる。別の構造体は、平均反射率が、i)400〜600nmの範囲の波長で約70%未満であり、ii)700〜1000nmの範囲の波長で約50%未満であり、iii)3〜5μmの範囲の波長で約25%よりも大きく、iv)9〜12μmの範囲の波長で約25%よりも大きくなるようにされる。さらに別の実施態様では、平均反射率が、i)400〜600nmの範囲の波長で約70%未満であり、ii)700〜1000nmの範囲の波長で約70%未満であり、iii)3〜5μmの範囲の波長で約25%よりも大きく、iv)9〜12μmの範囲の波長で約35%超であるマルチスペクトル型選択的反射構造体を製造できる。
【0013】
再び図1を参照すると、構造体(10)は、着色された熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)である第1の要素を備えている。熱透過性で視覚的に不透明なこの基板(1)は、ポリマー材料(2)と着色剤(60)からなる。熱透過性基板を形成するため、ポリマー材料(2)は、3〜5μmと9〜12μmの帯域で透過率が大きいポリマーからなる。熱透過性で視覚的に不透明なこの基板(1)は、3〜5μm(MWIR)と9〜12μm(LWIR)で平均透過率が約30%超である場合に熱透過性であると見なされる。いくつかの実施態様では、3〜5μmの範囲の波長で平均透過率が約40%以上、50%以上、60%以上、70%以上のいずれか、及び/又は9〜12μmの範囲の波長で平均透過率が約40%以上、50%以上、60%以上、70%以上のいずれかである熱透過性で視覚的に不透明な基板を持つ構造体が形成される。
【0014】
熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)のポリマー材料(2)として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、微小孔性延伸PTFE(ePTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルキル・コポリマー樹脂(PFA)、ポリオレフィン(例えばポリプロピレンやポリエチレン)などが挙げられる。このポリマー材料は、多孔性又は微小孔性でも、モノリシックでもよい。この明細書では、微小孔性という用語で、アメリカ合衆国特許第3,953,566号(その記載内容と方法は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されている微小孔性ポリマー材料と同様のノードとフィブリルの微細構造を持っていて、この特許に記載されている方法で形成された微小孔性ポリマー層からなる構造を示すことができる。他の適切な微小孔性ポリマー層として、アメリカ合衆国特許第4,539,256号、第4,726,989号、第4,863,792号(これらも参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)いずれかに記載されているのと同様の微細構造が可能である。ポリマーの微小孔性構造によってポリマー/空気の界面(例えば小孔)が数多く導入されるため、可視光の波長領域でポリマーの光学的透明性が低下する。こうすることで、そうでない場合に透明又は半透明なポリマー層をより白くすることができる。
【0015】
ポリマー材料は、連続なポリマー・フィルムでも不連続なポリマー・フィルムでもよい。ポリマー材料は、ポリマー・フィルム又はポリマー繊維を含むことのできるポリマー層を備えている。ポリマー材料(2)の厚さ、屈折率、空孔度は、望むレベルの視覚的不透明性と熱透過性が達成されるように選択することができる。いくつかの用途では厚さが5ミクロン(μm)を超えるポリマー層が適切である可能性がある。他の実施態様では、約20μmを超えるポリマー層、又は約40μmを超えるポリマー層、又は約100μmを超えるポリマー層が適切である可能性がある。
【0016】
熱透過性で視覚的に不透明な基板を含む第1の要素は、この明細書に記載した方法で測定した光学密度が475nm〜675nmで約0.30超であるときに視覚的に不透明であると見なされる。他の実施態様では、構造体は、熱透過性で視覚的に不透明な基板として、475nm〜675nmで光学密度が約0.70超であるもの、又は約0.75超であるもの、又は約1.0超であるものを備えることができる。熱透過性で視覚的に不透明な基板の光学密度が475nm〜675nmで約1.5超である、又は約2超である、又は約3超である実施態様も有用であると考えられる。特定の光学密度、熱特性、nIR特性は、ポリマー材料(2)と着色剤(60)の組み合わせによって達成できる。
【0017】
視覚的な不透明性が望むレベルになるようにフィルムの空孔度を選択した微小孔性ポリマー・フィルムが特に適している可能性がある。図6に例示した一実施態様では、第1の要素は、微小孔性ポリマー材料(2)を含む、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)である。厚さが約5μm〜300μmの範囲の微小孔性ポリマー・フィルムが、この明細書で用いるいくつかの構造体に適している可能性がある。例えばある構造体は、厚さが約50ミクロン未満で光学密度が約0.50超である微小孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フィルムを含む、熱透過性で視覚的に不透明な基板を備えることができる。特別な一実施態様では、熱透過性で視覚的に不透明な基板は、厚さが約35ミクロンで光学密度が0.77の微小孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フィルムを含んでいる。あるいはある構造体は、厚さが約120ミクロン未満で光学密度が約0.90超である微小孔性ePTFEフィルムを含む、熱透過性で視覚的に不透明な基板を備えることができる。特別な一実施態様では、熱透過性で視覚的に不透明な基板は、厚さが約110ミクロンで光学密度が1.1の微小孔性ePTFEフィルムを含んでいる。
【0018】
着色剤を用いて可視光、nIR、SWIRの分光応答に影響を与えることができる。着色剤(60)は、光を吸収する、及び/又は屈折させる、及び/又は反射する1種類以上の添加剤で構成することができる。着色剤(60)は、ポリマー材料(2)の第1の面(12)又は第2の面(13)に配置すること、又はポリマー材料の内部に配置すること、又はポリマー材料の第1の面及び第2の面と内部の両方に配置することができる。着色剤は1種類以上の染料を含むことができる。染料として、酸性染料、分散染料、媒染染料、油溶染料などが挙げられるが、これだけに限定されることはない。着色剤は1種類以上の顔料を含むことができる。顔料として、カーボン顔料、カドミウム顔料、酸化鉄顔料、亜鉛顔料、ヒ素顔料、有機顔料などが挙げられるが、これだけに限定されることはない。ポリマー基板の表面又は内部に染料又は顔料を供給するため、着色剤は、インクやトナー、又は他の適切な印刷媒体として用いることができる。本発明で用いるのに適したインクとして、固体、水、溶媒のいずれかをベースとしたものが可能である。
【0019】
着色剤(60)は、単一の着色剤を含んでいてもよいし、例えば2種類以上の着色剤の混合物として2種類以上の着色剤(60、61、62、63)で構成されていてもよい。さらに別の一実施態様では、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)を含む第1の要素は、多数の着色剤(61、62、63)を含むことができ、その多数の着色剤は、図3に示したような離散したパターンで用いることや、カムフラージュ・パターンなどのパターンで用いることができる。多数の着色剤(61、62、63)は、第1の要素の1つの面(例えば図4に示したポリマー材料(2)の第1の面(12))上に配置された状態で、例えば適切な結合部位を有する染料を選択することによって、又はその着色剤をポリマー材料に固定する結合剤を用いることによって、ポリマー材料に接合することができる。この明細書では、ポリマー材料(2)の第1の面(12)は、検出されないようシールドする着用者又は物体の外側を向いた面、又はポリマー材料の面のうちでEMのセンサー又は検出器の方向を向いた面を意味する。図6からわかるように、着色剤(60)をポリマー材料(2)の中に吸収させて多孔性ポリマー材料の空孔の壁部を覆うことができる。あるいは着色剤(60)は、ポリマー材料(2)に充填剤として添加することができる。
【0020】
熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)が望む視覚的な不透明度になるようにするため、ポリマー材料(2)の特性(例えば材料の厚さ、屈折率、空孔度)をバランスさせる。例えば可撓性を付加するためにより薄い材料が好ましいいくつかの実施態様では、材料がより薄いことで、最終的な構造体の望ましい特性を実現するのに視覚的に透明すぎる可能性がある。したがっていくつかの実施態様では、空孔度を大きくして視覚的な不透明性を増大させることができる。視覚的な不透明性を望む範囲にするには、着色剤(60)の種類と濃度の選択にポリマー材料(2)の選択を組み合わせるてもよい。例えば光学密度が約0.30未満のポリマー材料を選択する場合には、着色剤を添加して光学密度を大きくすることができる。その結果として、ポリマー材料と着色剤を含む、熱透過性で視覚的に不透明な基板は、光学密度が約0.30よりも大きくなる。着色剤の種類と濃度の両方を選択することで、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)を備える第1の要素の望ましい視覚的不透明度を実現できる。一実施態様では、第1の要素は、厚さが約35ミクロンで光学密度が0.77の微小孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)層を含んでいる。別の一実施態様では、第1の要素は、厚さが約110ミクロンで光学密度が約1.1の微小孔性ePTFE層を含んでいる。
【0021】
一実施態様では、熱透過性で視覚的に不透明な基板である第1の要素を備える構造体は、厚さ約35ミクロンの微小孔性ePTFE層とカーボン着色剤を含んでいて、光学密度が1.5超である。別の一実施態様では、熱透過性で視覚的に不透明な基板が微小孔性ePTFE層と着色剤を含んでいて、光学密度が4.0超である構造体が形成される。同様の着色剤が含まれる別の一実施態様では、熱透過性で視覚的に不透明な基板は、視覚的に透明なモノリシック・ポリエチレン・ポリマー層を含んでいて、光学密度が1.0超である。
【0022】
EMスペクトルの可視領域で機能することに加え、EMスペクトルの近赤外(nIR)領域における反射と吸収が特定のレベルである構造体を形成することができる。好ましい構造体は、反射率が700μm〜1000μmの範囲の波長で70%未満である。ポリマー材料を含む熱透過性で視覚的に不透明な基板が望むレベルのnIR反射率を持つようにすることができる。最終構造体においてnIR反射率を望むレベルにするには、構造体に第1の要素以外の層を付加して得られる効果を折り込んで第1の要素のnIR反射率のレベルを調節するとよい。
【0023】
いくつかの実施態様では、着色剤(60)は選択的反射構造体(10)の望ましい可視光反射率に加え、特定のnIR反射率が実現されるように選択する。例えば反射性添加剤と吸収性添加剤を着色剤として選択し、色(可視光)反射率とnIR反射率の両方が望むレベルになるようにして第1の要素のポリマー材料(2)で用いることができる。一実施態様では、微小孔性材料(例えばePTFE)を含む第1の要素は、nIR添加剤(例えば炭素)を含むものを形成することができる。微小孔性材料の形成に用いるポリマー材料は1種類以上のnIR添加剤を含んでいてもよく、その場合には、nIR反射率が望むレベルの熱透過性微小孔性フィルムにすることができる。図2と図4に示してあるように、熱透過性で視覚的に不透明な第1の基板(1)に炭素、金属、TiO2などのnIR添加剤(90、91、92、93)を添加し、特定のnIR反射特性、SWIR反射特性、MWIR反射特性、LWIR反射特性を実現することができる。
【0024】
短波長赤外(SWIR)における構造体の特定の反射特性は、近赤外(IR)添加剤を用いることによって、及び/又はポリマー材料の空孔のサイズを調節することによって、及び/又はポリマー材料の厚さを調節することによって得ることもできる。構造体の適切な性能は、SWIR(900nm〜2500nm)において70%未満の反射率である。
【0025】
熱反射層の特徴を明らかにするには、広いスペクトル帯域(例えば3μm〜30μm)での平均熱放射率の測定が適している。しかし広い帯域での測定では、使用する構造体の特定の性能が十分に明らかにならない。この明細書に記載する構造体は、興味の対象となるより狭い領域で特定のスペクトル特性(例えば3μm〜5μm(MWIR)又は9μm〜12μm(LWIR)の範囲の波長で平均した性能)を提供するように設計される。いくつかの実施態様では、特定のスペクトル特性をこれらの範囲内で興味の対象となる特定の波長における特定の反射率に合わせることができる。3μm〜5μm及び/又は9μm〜12μmというより狭い範囲での反射率又は透過率が、熱特性と見なされる。
【0026】
一実施態様では、熱特性として、3μm〜5μmの範囲の波長で平均反射率が約25%以上、及び/又は9μm〜12μmの範囲の波長で平均反射率が約25%以上という性能を有するマルチスペクトル型選択的反射構造体が提供される。別の実施態様では、3μm〜5μmの範囲の波長で平均反射率が約30%以上、40%以上、50%以上、60%以上のいずれか、及び/又は9μm〜12μmの範囲の波長で平均反射率が約30%以上、40%以上、50%以上、60%以上のいずれかという構造体が形成される。いくつかの実施態様では、マルチスペクトル型選択的反射構造体は、この明細書に記載した試験法に従って測定したとき、3μm〜5μm及び/又は9μm〜12μmの範囲の波長で反射率が30%超かつ98%未満、又は30%超かつ90%未満、又は30%超かつ80%未満である。
【0027】
再び図1を参照すると、マルチスペクトル型選択的反射構造体(10)は、3μm〜5μmと9μm〜12μmの範囲の波長で構造体に大きな反射率を与える低放射性要素(35)を含む熱反射層(30)を有する第2の要素を備えている。この熱反射層は、この明細書に記載した放射率測定試験法に従って試験したときに放射率が約0.75未満、又は約0.6未満、又は約0.5未満、又は約0.4未満、又は約0.3未満、又は約0.2未満である。低放射性要素(35)として、放射率が約0.75未満のコーティング又は基板が可能である。低放射性要素は金属を含んでいる。金属として、Ag、Cu、Au、Ni、Sn、Al、Crなどが挙げられるが、これだけに限定されることはない。それに加え、低放射性要素は、この明細書に記載した放射率測定試験法に従って試験したときに放射率が約0.75未満、又は約0.6未満、又は約0.5未満、又は約0.4未満、又は約0.3未満、又は約0.2未満の非金属材料を含んでいてもよい。低放射性要素で用いるのに適している可能性のある非金属材料として、インジウム-スズ酸化物、炭素ナノチューブ、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリアニリンなどがある。熱反射層(30)の厚さは、いくつかの特性を実現するように選択できる。可撓性のあるマルチスペクトル型選択的反射構造体が望ましい一実施態様では、低放射性要素を含む熱反射層(30)の厚さを最小にし、厚さが約0.002インチ未満の熱反射層を選択することができる。
【0028】
一実施態様では、熱反射層(30)は、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)の第2の面(13)に付着させた低放射性要素で構成することができる。この低放射性要素は、金属を蒸着することによって、又は金属粒子を含むスプレー(例えば金属スプレー塗料)をコーティングすることによって付着させる。さらに別の一実施態様では、熱反射層(30)は、図1に例示したように、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)の第2の面(13)に介在層(4)(例えば接着剤又はスペーサ材料)を用いて低放射性要素(35)を接合することによって形成できる。熱反射層(30)は、例えば転写ホイルの形態にした低放射性要素を含むことができる。
【0029】
図6と図7に例示したような別の一実施態様では、熱反射層(30)は、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)の第2の面(13)の裏に堆積させるか、その第2の面(13)に接着させることのできる低放射性要素(35)(例えば金属含有フィルム)又は金属スプレー塗装フィルムを含むことができる。適切なフィルムの金属化は、無電解メッキ技術によって、又は蒸着によって、又はフィルムの中又は表面での金属塩の還元によって実現できる。
【0030】
あるいは、金属充填ポリマーの押し出し、又は金属面の含浸、又は金属フィルム又は金属粒子のラミネーションやカプセル化により、本発明に適した金属含有フィルムを形成できる。例えば図8に例示したように、構造体(10)は、熱透過性で視覚的に不透明な基板である第1の基板(81)を有する第1の要素(80)と、第2の基板(71)を有する第2の要素(70)を備えることができる。熱反射層を有する第2の要素(70)は、基板(71)を備えている。その基板(71)は、例えば、低放射性要素(35)を用いて金属化されていて、熱透過性で視覚的に不透明な第1の基板(71)の第2の面(13)に介在層(4)によって接着された延伸PTFEなどのフィルムである。別の一実施態様では、第2の要素(70)は、熱透過性で視覚的に不透明な第1の基板(71)の第2の面(13)の近くに配置された金属化テキスタイルを含むことができる。その金属化テキスタイルは、場合によっては第1の基板(81)に付着される。
【0031】
熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)の第2の面(13)に低放射性要素を固定することによって熱反射層(30)が形成される一実施態様では、連続又は不連続な介在層(4)を用いることができる。連続的な熱透過性介在層(4)(例えば接着剤又はスペーサ材料)を備えるマルチスペクトル型選択的反射構造体を図1に例示してある。あるいは十分な熱透過性を有する不連続な介在層(4)を用いてマルチスペクトル型選択的反射構造体の望ましい熱特性を実現することもできる。不連続な介在層(4)を有するマルチスペクトル型選択的反射構造体は、例えば図2、図4、図5、図7、図8に例示されている。
【0032】
別の一実施態様では、低放射性要素を含む熱反射層(30)を有する第2の要素が、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)を含む第1の要素の第2の面の近くに、熱透過性で視覚的に不透明なその基板にほとんど、又はまったく接触することなく位置するマルチスペクトル型選択的反射構造体が提供される。一実施態様では、介在層(4)なしに、図1に示した構造体と同様の構造体を形成することができる。本発明の文脈では、近くとは、(a)介在層なしに直近に位置する、(b)直接接着されている、(c)介在層を用いて接着されている、(d)特定の側に位置するが、別の材料からなる介在層によって他の層から分離されている、のいずれかを意味する。本発明の望ましいマルチスペクトル型性能が実現されるのであれば、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)の第2の面(13)と熱反射層(30)の間に十分に熱透過性のある材料からなる1つ以上の介在層を有する実施態様が可能である。これらの層は、互いに接着すること、又は互いに接着しないこと、又はその任意の組み合わせが可能である。
【0033】
熱反射層は、その熱反射層(30)の全面で単一の放射率を持つかある範囲の放射性を提供できる低放射性要素を含むことができる。図7に例示した一実施態様では、熱反射層(30)は、熱透過性で視覚的に不透明な基板(1)の第2の面(13)の近くに複数の離散した低放射性要素(31、32、33)を備えることができる。一実施態様では、熱反射層(30)は、低放射性要素からなる単一の連続層を含むことができる。あるいは別の一実施態様では、熱反射層(30)は、複数の低放射性要素からなる不連続なパターンを含むことができる。
【0034】
いくつかの実施態様では、マルチスペクトル型選択的反射構造体(10)は、熱反射性かつレーダー反射性である。別の実施態様では、マルチスペクトル型選択的反射構造体(10)は、熱反射性である一方でレーダー信号は透過させる構成にできる。レーダー波を透過させることができる一方で、電磁スペクトルの複数の部分(例えば可視光、及び/又はnIR、及び/又はSWIR、及び/又はMWIR、及び/又はLWIR)を減衰させる構造体も構成できる。いくつかの構造体は、1〜約100GHzで透過率を0%にできるのに対し、別の構造体は、1〜約100GHzで透過率が100%である。
【0035】
この明細書では、構造体がレーダー波を透過させることができて、この明細書に記載した方法に従って試験したときに1GHz〜約5GHzの範囲で回収した透過率のデータの平均値が約90%超であれば、その構造体はレーダー透過性であると見なされる。別の実施態様では、この明細書に記載した方法に従って試験したときに1〜約20GHzの範囲で平均レーダー透過率が90%超であるマルチスペクトル型選択的反射構造体(10)、及び/又は約1〜約100GHzの範囲で平均レーダー透過率が90%超であるマルチスペクトル型選択的反射構造体(10)を形成することができる。この明細書に記載した方法に従って試験したときに1GHz〜約5GHz、又は1GHz〜約20GHzの範囲で平均透過率が95%超である構造体、又は98%超である構造体、又は99%超である構造体も形成することができる。
【0036】
いくつかの実施態様では、熱反射とレーダー透過性に関してこの明細書に記載した方法に従って試験したとき、3μm〜5μm又は9μm〜12μmの範囲の波長、又はMWIRとLWIR両方の波長範囲で平均反射率が25%超であると同時に、1〜5GHz、又は1〜20GHz、又はその両方の範囲の周波数全体でレーダー透過率が90%超である、又は95%超である、又は98%超である、又は99%超である構造体(10)が提供されることが望ましい。
【0037】
検出されないという用途に適したあるレーダー透過性マルチスペクトル型選択的反射構造体は、少なくとも第1の面とその第1の面の反対側の第2の面に着色剤が載った微小孔性ポリマー基板を有する第1の基板を備えている。金属化フィルム又は転写された金属化フィルムを有する第2の基板が用意されて、第1の基板と第2の基板は、金属化フィルムの金属が第1の基板の第2の面を向くように配置される。一実施態様では、第2の基板は、金属化微小孔性ポリマー基板である。金属化フィルムの金属には、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)と、これらの合金のうちの少なくとも1つが含まれていてよい。なお金属がこれらに限定されることはない。レーダー透過性であることが望ましい場合には、この明細書に記載した金属の厚さ測定法に従って試験したとき、ポリマー基板に堆積される金属層の厚さが1μm未満、又は500nm未満、又は400nm未満、又は200nm未満であることが望ましかろう。第1の基板と第2の基板は、例えば縫合やラミネーションのほか、これら2つの基板を互いに接着する他の方法で固定することができる。構造体は、さらにテキスタイル製裏打ち層に貼り合わせることもできる。
【0038】
ここに説明する一実施態様には、前面部及び裏面部と、第1の基板及び第2の基板とを備えていて、両方の基板に微小孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含有する構造体が含まれる。一実施態様では、第1の基板は、着色剤を含む微小孔性ePTFEからなり構造体の前面部に対応する第1の面と、第2の面とを有する熱透過性で視覚的に不透明な層を備えている。第2の基板は金属化ePTFEを含んでおり、その金属として、例えば一実施態様では蒸着した金属、別の一実施態様ではスプレーで堆積させた金属が可能である。第1の基板と第2の基板は、第2のePTFE層の金属化面が第1の基板の第2の面の近くになるように配置される。
【0039】
疎油性で、油等級が1超である、又は2超である、又は3超である、又は4超である、又は5超である、又は6超である構造体を形成できることが望ましい。
【0040】
本発明の構造体は、軽量で200g/m2(gsm)未満にできることが重要である。本発明によるいくつかの好ましいマルチスペクトル型選択的反射構造体は150gsm未満の重量にできるが、100gsm未満であることが好ましく、50gsm未満であることがより好ましい。より大きな耐久性が望ましいいくつかの場合には、より重い裏打ち材を用いるが、すると構造体の全重量が増大することになろう。例えば一実施態様では、裏打ち材として構造体に付着させた250gsmのテキスタイルにより、構造体の全重量が約270gsm〜450gsmになる可能性がある。
【0041】
例えばレーダー・カムフラージュがすでになされた装置、シェルター(テントなど)、車両といった製品を覆うため、レーダー透過性のマルチスペクトル型選択的反射構造体(10)から保護カバーを作ることができる。この保護カバーは、製品が可視光、及び/又はnIR、及び/又はMWIR、及び/又はLWIRで見つからないよう保護する能力を追加できる一方で、望ましいことにこのカバーがレーダー透過性であるためにこれら製品がレーダーで見つかりにくくする能力は維持される。
【0042】
さらに別の一実施態様では、レーダー透過性であるマルチスペクトル型選択的反射構造体(10)は、図12の断面図に例示したように、レーダー・カムフラージュ層である少なくとも1つの追加層(40)を含むことができる。レーダー・カムフラージュとは、その少なくとも1つの追加層が、約1〜5GHz、又は約1〜20GHz、又は約1〜100GHzの範囲の周波数に含まれるレーダー信号を吸収する、及び/又は反射する、及び/又は散乱させることを意味する。レーダー・カムフラージュ層は、レーダー信号の完全な吸収又は反射又は散乱が可能である。あるいはレーダー・カムフラージュ層は、レーダー信号の選択的な、又はパターン化された吸収又は反射又は散乱が可能である。レーダー・カムフラージュ層(40)は、場合によっては付着手段(41)によってマルチスペクトル型選択的反射構造体(10)の熱反射層(30)に固定することができる。付着手段として、ラミネーション技術、接着剤、縫合などが可能である。あるいはレーダー・カムフラージュ層(40)は、空気又は他のレーダー透過層によってマルチスペクトル型選択的反射構造体から離した分離層にすることもできる。レーダーからどの程度保護するのが望ましいかに応じ、さまざまなレーダー・カムフラージュ層が保護を提供するのに適している。適した材料として、例えば基板のコーティングとして組み込まれる炭素及び/又は金属の粉末、及び/又は繊維、及び/又は泡、及び/又はポリマー複合材が挙げられるが、材料がこれだけに限られることはない。実例は、アメリカ合衆国特許第5,922,986号、第5,312,678号、第6,224,982号、第5,185,381号に見いだすことができる。
【0043】
液体不透性、遅燃性、化学物質や生物物質からの保護といった特性が望ましい用途では、マルチスペクトル型選択的反射構造体は、熱反射層(30)で第1の基板(1)の反対側になる側の近くに1つ以上の基板裏打ち材(5)を備えることができる。図5に例示してあるように、多孔性基板裏打ち材(5)を場合によってはマルチスペクトル型選択的反射構造体の熱反射層(30)の一方の側に設けることができる。この実施態様は、可視光、nIR、熱を反射する特性とは関係なく構造体に増強されたさまざまな特性を提供することで、本発明の有用性をさらに増大させる。図5からわかるように、例えば接着剤(8)によって熱反射層に付着させることのできるテキスタイル層が多孔性基板裏打ち材(5)として機能し、例えば耐摩耗性又は破断強度を向上させる。多孔性基板裏打ち材(5)として用いるのにテキスタイルが特に適しており、テキスタイルは、快適さと美観を維持しつつ、マルチスペクトル型選択的反射構造体の耐久性、構造安定性又は寸法安定性、遅燃性、絶縁性などを向上させることができる。このような目的に適したテキスタイルとして、織布、ニット、不織布などが挙げられるが、これだけに限定されることはない。本発明の別の一実施態様では、多孔性基板裏打ち材(5)は、多孔性フィルム又は微小孔性フィルム(例えば延伸PTFE)を含むことができる。多孔性フィルム又は微小孔性フィルムは、通気率を維持しつつ、低放射性層を保護することができる。
【0044】
この明細書に記載したMVTR試験法によって測定した構造体の通気率は、1,000(g/m2/日)超であることが望ましい。通気率を2,000(g/m2/日)よりも大きくすること、4,000(g/m2/日)よりも大きくすること、6,000(g/m2/日)よりも大きくすること、8,000(g/m2/日)よりも大きくすること、さらには10,000(g/m2/日)よりも大きくすることが、この明細書に記載した構造体で実現できる。
【0045】
マルチスペクトル型選択的反射構造体(10)は、一旦組み立てられると、多彩な用途で用いることができる。例えば用途として、衣服、カバー、シェルター、隠れ場、網製品などが挙げられる。単一又は複数のマルチスペクトル型選択的反射構造体を用いてその構造体を含む製品を製造し、適切な視野深度と反射特性を提供することができる。例えば衣服の用途で衣服の装着者を隠す一実施態様では、狭い幅で切断したマルチスペクトル型選択的反射構造体材料(すなわち1インチ×4インチのストリップ)からなる多数の層を、衣服の本体を形成するマルチスペクトル型選択的反射構造体の別の層の上に設けることが望ましかろう。こうすると、熱反射性能が増大する一方で、装着者のシルエットがよりわかりにくくなる。
【0046】
前面部と裏面部を持ち、前面部が潜在的な検出源のほうを向いたマルチスペクトル型選択的反射構造体を含む製品が形成される。前面部の反対側にある裏面部は、一般に、検出されないようシールドする物体又は身体のほうを向いている。この構造体は、熱透過性で視覚的に不透明な基板である第1の要素と、熱反射層である第2の要素とを備えていて、熱透過性で視覚的に不透明な基板は、検出源と熱反射層の間に配置される。熱反射層は、熱透過性で視覚的に不透明な層と、検出されないようシールドする物体又は身体の間に配置される。したがって製品が例えばテント、衣服、シェルター、保護カバーである場合、構造体の第1の要素は、製品の外面に対応するか、製品の外面の近くに位置し、構造体の第2の要素は、製品の内面に対応するか、製品の内面の近くに位置する。したがって第2の要素は、検出されないようシールドする物体又は身体の近くに位置する。
【0047】
この明細書に記載したマルチスペクトル型選択的反射構造体を含む製品の熱特性は、熱によって検出されないよう保護する着用者/装置とマルチスペクトル型選択的反射構造体層の間に絶縁材料又は絶縁性複合体を選択的に配置するとさらに向上させることができる。例えば一実施態様では、マルチスペクトル型選択的反射複合体を含む衣服を形成する。このマルチスペクトル型選択的反射複合体は、衣服のホット・スポットを最小にして熱の痕跡を減らすことを目的として、例えば衣服の肩部に対応する領域に絶縁材料をさらに含んでいる。長期間にわたって(例えば24時間を超えて)熱の痕跡を減らす必要がある場所では、高性能絶縁材料(例えば共有のアメリカ合衆国特許第7,118,801号に教示されている材料)が好ましい。この絶縁材料は、装置の熱い部分を隠すのにも適しており、この明細書に記載したマルチスペクトル型選択的反射構造体材料から作ったカバーと組み合わせて使用すると、熱の痕跡をさらに隠すとともに、可視光とnIRによる画像形成を抑制することができる。
【0048】
別の実施態様では、本発明のマルチスペクトル型選択的反射構造体の厚さを約20mm未満にすることができる。厚さは約10mm未満が好ましく、約7mm未満がさらに好ましく、約5mm未満がより一層好ましい。より薄い構造体が望ましい場所では、マルチスペクトル型選択的反射構造体の厚さを約3mm未満にすること、それどころか1mm未満にすることができる。
【0049】
別の実施態様では、本発明のマルチスペクトル型選択的反射構造体の重さを約20オンス/ヤード2未満にすることができる。重さは約15オンス/ヤード2未満が好ましく、約10オンス/ヤード2未満がさらに好ましく、約7オンス/ヤード2未満がより一層好ましい。
【0050】
別の実施態様では、本発明のマルチスペクトル型選択的反射構造体は、手触りを約3,000グラム未満にすることができる。手触りは、約2,000グラム未満が好ましく、約1,000グラム未満がさらに好ましく、約500グラム未満がより一層好ましい。本発明によるいくつかのマルチスペクトル型選択的反射構造体は、手触りを約300グラム未満にすることができる。手触りは、150グラム未満が好ましく、100グラム未満がさらに好ましい。
【0051】
試験法
【0052】
液体不透性試験
【0053】
液体不透性試験を以下のようにして実施した。水を代表的な試験液体として、改変したズーター試験装置を用いて材料構造体の液体不透性試験を行なった。2つのゴム製ガスケットで挟むことによって密封したサンプルの直径約4.25インチの領域に水を強制的に当てた。1つ以上のテキスタイル層を含むサンプルでは、テキスタイル層が、水を強制的に当てる面とは反対側を向くようにする。非テキスタイル・サンプル(すなわちテキスタイル層に貼り付けられていないフィルム)をズーター装置で試験するときには、サンプルの上面(すなわち水を強制的に当てるのとは反対側の面)にスクリムを配置し、サンプルが水圧を受けたときに異常に伸びないようにする。サンプルは大気圧に対して開いた状態にされており、試験者が見ることができる。サンプルに対する水圧は、水源に接続したポンプによって約1psiまで増大させる。その値は適切な計器に表示され、直列にしたバルブで調節される。試験サンプルはある角度にされて、水を循環させてサンプルの下面に水が確実に接触し、空気とは触れないようにする。サンプルの上面を3分間にわたって目で観察し、サンプルを強制的に貫通する水が出現するかどうかを調べる。表面に見られる液体の水は漏れであると解釈する。液体の水が3分以内にサンプルの表面に見られない場合には、そのサンプルは液体不透性試験に合格したと見なす(ズーター試験)。この試験に合格したサンプルをこの明細書では“液体不透性”と定義する。
【0054】
手触り試験
【0055】
スウィング-アルバート・ハンドル-O-メーター(スウィング・アルバート・インスツルメント社(フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)のモデル#211-5)を用い、試験サンプルで手触りをテストした。設置したビーム負荷を用い、試験サンプルに1/4インチのスロットを強制的に通過させた。ラミネート・サンプルを試験するときには1000グラムの負荷を用いた。この装置でサンプルの曲げ剛性と関係する抵抗力を測定し、抵抗のピーク値をディジタル表示させる。サンプルの方向性と非対称性を十分に定量化するため、X方向とY方向にそれぞれ曲げるための異なるサンプルを切断する。試験する材料から一辺4インチの正方形を切断する。
【0056】
典型的な試験では、X方向のサンプルを、X方向がスロットに対して垂直になるようにして装置の上に配置する。構造体サンプルの面が上を向いた状態で試験を開始して梁を下げ、サンプルに試験テーブル上のスロットを強制的に通過させる。抵抗のピーク値が表示され、“構造体サンプルの面が上”として記録される。次に同じサンプルをひっくり返して180°回転させ、異なる部位を曲げる。この新しい配置で再び試験を開始してサンプルにスロットを強制的に通過させる。第2の抵抗値は“構造体サンプルの面が下”として記録される。この手続きをY方向のサンプル(Y方向はスロットに対して垂直な向きである)で繰り返すと、さらに2つの数値が“構造体サンプルの面が上”、“構造体サンプルの面が下”として得られる。
【0057】
得られた4つの数値(X方向とY方向、構造体サンプルの面が上と構造体サンプルの面が下)を足し合わせると、(非対称性と方向性を考慮した)サンプルの剛性を特徴づける全手触り数がグラム(gm)を単位として得られる。少なくとも2つのこのような全手触り数を得て平均すると、記載した手触り数になった。
【0058】
水蒸気透過率(MVTR)
【0059】
水蒸気透過率(MVTR)の測定に利用した試験を以下に説明する。この手続きは、フィルム、コーティング、被覆製品の試験に適していることがわかっている。
【0060】
この手続きでは、35重量部の酢酸カリウムと15重量部の蒸留水からなる約70mlの飽和塩溶液を、口の位置での内径が6.5cmである133mlのポリプロピレン製カップの中に入れた。(Crosbyに付与された)アメリカ合衆国特許第4,862,730号に記載されている方法で試験した最小MVTRが約85,000g/m2/24時間である延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜をカップの口に熱で密封し、溶液を収容するぴんと張った漏れない微小孔性障壁を作り出した。
【0061】
同様の延伸PTFE膜を水浴の表面に取り付けた。温度制御室と水循環浴を用いて水浴組立体を23℃+0.2℃に制御した。
【0062】
試験するサンプルを温度23℃、相対湿度50%の条件で放置した後、試験手続きを実行した。第1の基板が水浴と反対側を向くようにサンプルを配置し、反対側の面を、水浴の表面に取り付けた延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と接触させた後、少なくとも15分間にわたって平衡させてからカップ組立体を導入した。カップ組立体の重さを誤差1/1000gで測定し、試験サンプルの中心に逆向きに配置した。
【0063】
水浴の中にある水と飽和塩溶液の間の駆動力によって水が輸送されることで、拡散によってその方向に水流束が得られた。サンプルを15分間にわたって試験した後、カップ組立体を除去し、1/1000g以内の誤差で再び重さを測定した。
【0064】
カップ組立体の増えた重量からサンプルのMVTRを計算し、24時間でのサンプルの表面積1平方メートル当たりの水のグラム数として表わした。
【0065】
可視スペクトルと近赤外スペクトルに関する反射率の試験法
【0066】
鏡面反射放射と拡散放射の両方を回収するSpectralon(登録商標)(Labsphere DRA 2500)で覆った直径150mmの積分球を取り付けたUV/VIS/nIR分光測光器(パーキン-エルマー社のラムダ950)を用い、サンプルのほぼ法線方向の分光半球反射率(例えば構造体の第1の基板の着色側)を可視光と近赤外光(nIR)の範囲で測定した。反射率の測定は、二重ビーム動作モードで250nmから2500nmまで20nmの間隔で行ない、Spectralon(登録商標)材料を基準として用いた。
【0067】
裏打ち材を有する単層としてサンプルを測定した。使用した裏打ち材は、無光沢の黒色で覆ったポリマー・シートであった。測定値は少なくとも3つの異なる領域で取得し、測定した領域のデータを平均した。この作業において、すべての測定をほぼ法線方向の入射光で実施した。すなわちサンプルを、鏡面反射成分を含めて法線から10°以下の角度で見た。利用する標準的な開口サイズに関し、分光測光器の測光精度が1%以内、波長の精度が2nm以内になるように較正した。裏打ち材の材料に起因する信号の損失を補償するため、サンプルの反射率は、積分球を用いた材料の反射率に関するASTM:E903-96標準試験法に従って計算した。
【0068】
分光測光器による可視光と近赤外の範囲での測定結果を、回収した全データ点の中の特定の波長範囲の平均半球反射率として表1に示してある。
【0069】
熱赤外スペクトルの範囲での半球分光反射率と半球分光透過率の試験法
【0070】
熱赤外スペクトルのほぼ法線方向の分光半球透過率と分光半球反射率は、本発明の設計と評価にとって非常に重要である。測定した分光半球反射率と分光半球透過率を用い、キルヒホッフの法則(ε=1-R-T;不透明な基板に関してはε=1-R。ただしεは放射率であり、Rは反射率であり、Tは透過率である)を通じて方向性放射率を計算することができる。
【0071】
方向性の半球透過率と半球反射率を測定するため、サンプルを、鏡面反射成分を含めて法線から10°以下の角度で見た。サンプルの分光半球透過率と分光半球反射率を、600cm-1〜5000cm-1の範囲で分光解像度8cm-1にて測定した。光放射源と波数選択性は、Bio-Rad FTS-6000フーリエ変換赤外(FTIR)分光測光器によって提供された。この分光測光器は、セラミックで被覆した球形の光源とGeで被覆したKBrビーム・スプリッタを有する構成であった。半球測定の構成は、散乱性の金で被覆した直径150mmの積分球(Mid-IR Integral IR、パイク・テクノロジーズ社)を用いて実現し、サンプルは、この球の表面に切れ込みを入れて作ったポートに取り付ける。液体窒素で冷却したMCT検出器を球の頂部に取り付けてあるため、視野は球の底面の一部に限られる。Mid-IR Integral IRは、サンプルの8°を照射するという特徴があり、反射率測定サンプルは、上を向いた球のサンプル・ポートに直接配置するか、薄い赤外透過ウインドウの上方に配置する。
【0072】
反射率を測定するため、約40mm2の正方形の区画をサンプルから切り出し、積分球の水平な18mmの反射率サンプリング・ポートに取り付けた。測定では参照基準として散乱性の金を用い、すべてのサンプルを、無光沢の黒色塗料で覆ったポリマーでできた裏打ち材材料の表面に配置する。各サンプルのスペクトルを迅速走査モードでサンプルごとに200回走査して回収した。各サンプルで3つの読み取り値を取得し、得られたデータを平均した。裏打ち材の材料に起因する信号の損失を補償するため、サンプルの反射率は、積分球を用いた材料の反射率に関するASTM:E903-96標準試験法に従って計算した。
【0073】
標準的な2インチ×3インチのサンプル・ホルダを取り付けた透過率ステーションにサンプルを配置し、透明な材料と不透明な材料の透過率を2μm〜17μmの領域で測定した。次にこの装置を絶対測定(100%)位置にセットし、その測定位置でサンプルなしの100%信号を記録する。次にサンプルを所定の位置に配置し、透過率の読み取り値を記録する。透過した信号を100%信号で割った値が透過率に等しい。
【0074】
表1には、3μm〜5μmと9μm〜12μmの帯域で回収して平均した全データ点に関する方向性の半球透過率と半球反射率のデータが含まれている。
【0075】
透過光学密度試験の方法
【0076】
この明細書の目的では、視覚的不透明性は光学密度(OD)として測定する。
【0077】
トビアス・アソシエイツ社(アイヴィーランド、ペンシルヴェニア州、アメリカ合衆国)が供給しているデスクトップ式密度計モデルTRX-N装置を用い、サンプルの透過光学密度を室温で測定した。この装置は、光源と、475nm〜675nmで分光応答が20%超であるシリコン光検出器からなる。この装置は、透過モードと反射モードの両方でフィルムの光学密度を測定することができる。すべての測定で透過モードを使用した。
【0078】
光学密度は、ヒトの目の応答に近い測定値である。光学密度は、以下の式:
OD = Log 1/T
で定義される。ここにODは光学密度であり、Tは透過率である。
【0079】
装置は、約10分間のウォーム・アップ時間を必要とする。試験領域は直径約3mmであり、測定するサンプルは、試験領域を完全にカバーするのに十分な幅であった。試験手続きは以下の通りである。
1.厚さ0.0075インチの基準PETフィルムをサンプル・ポートの上に置く。
2.検出器のアームを光ポートの位置まで下げ、制御ボタンを押すことによってゼロにセットする。
3.ディジタルの読み取り値がゼロになっていなくてはならない。
4.結果を記録する。
5.試験サンプルを光テーブルの上に載せる。そのとき、試験サンプルが光ポートを覆うようにする。
6.光ポートを覆っているサンプルの位置まで検出器のアームを下げ、制御ボタンを押す。
7.LEDディスプレイから結果を読み取って記録する。
8.残りのサンプルに関してステップ5〜8を繰り返す。
【0080】
光学密度の測定値は、それぞれが1つの数字を表わす7個の発光ダイオードに表示される。この明細書の目的では、材料は、475〜675nmで光学密度が0.30超であるときに視覚的に不透明であると見なす。
【0081】
放射率測定試験の方法
【0082】
デバイシーズ&サービシーズ社(テキサス州、アメリカ合衆国)が供給している携帯式放射率計モデルAE装置を用い、室温近くでのサンプルの赤外放射率を測定した。この放射率計では、標準的な高放射率材料及び低放射率材料と比べて全熱放射率が測定される。
【0083】
デバイシーズ&サービシーズ社のモデルAEという放射率計は、測定ヘッドとスケーリング・ディジタル電圧計からなる。測定ヘッドは、付属する放射線検出器が355Kに加熱される設計になっているため、試験サンプルは測定中を通じて周囲温度に維持される。放射線検出器は、2つの高εと2つの低εを備えた差分式熱電対であるため、それ自体とサンプルの間で放射によって移動する熱にだけ反応する。この検出器は、赤外放射の波長に対してほぼ一定の反応をし、4.3mmの距離からサンプルの直径50mmの領域を見る。製造業者は、検出器の出力電圧がεに対して±0.01単位の誤差で線形であり、Td4-Ts4に比例すると述べている(ただしTdとTsは、それぞれ検出器と試験サンプルの絶対温度である)。それぞれが直径66.7mmで厚さ4mmの2つの“基準”が放射率計に取り付けられている。その基準のεは0.06と0.90である。この放射率計は、約60分間のウォーム・アップ時間を必要とする。放射率計は相対的であるため、使用前に較正する必要がある。2つの基準を熱シンクの上に置き、両方とも周囲温度にする。
【0084】
次に検出ヘッドを高放射率の基準の上方に配置し、電圧計の利得を調節し、約90秒間にわたって平衡させた後に読み取り値が0.90になるようにする。次に検出ヘッドを低放射率の基準の上方に配置し、オフセット・トリマーを調節して電圧計の読み取り値が0.06になるようにする。放射率計を一方の基準から他方の基準へと移動させたときに電圧計の読み取り値が調節なしにこれら2つの値を示すようになるまで調節を繰り返す。
【0085】
放射率を測定するため、サンプルを基準と似た形状とサイズに切断した後、熱シンクの上に置いて平衡させる。検出ヘッドをその上方に配置すると、電圧計の読み取り値が、試験面の半球放射率を直接与える。モデルAEという放射率計は、半球放射率をほぼ3〜30μmの範囲の波長で測定する。
【0086】
レーダー透過性
【0087】
選択した本発明の実施例に関するレーダー透過性試験をASTM試験法D 4935-99に従って実施した。この試験法の標準的な固定具は、内径1.3インチ、外径3.0インチの試験領域を持ち、約1GHz〜約5GHzで平均損失をdBを単位として与える。
【0088】
実質的に同様にして1GHz〜20GHzでのレーダー透過測定を実施したが、以下の点が異なっている。試験用の標準的な固定具の代わりに直径7mmの同軸ケーブルを試験用固定具として用いた。この1GHz〜20GHzでの試験に関しては、2ポート式ベクトル・ネットワーク分析器(VNA)の各ポートに試験用同軸ケーブルが取り付けられる。試験中の装置(DUT)の各ケーブルの端部には、IEEE規格287-2007に基づくサイズが7mmの一般精度グレードの同軸コネクタが存在することになろう。VNAは、401個のデータ点と、“経由”接続として互いに接続された試験ケーブルとを用いて500MHz〜20GHzを掃引する設定にされている。出力は、S21-LOGMAG、すなわちdBを単位とした挿入損失に設定されており、“応答”型の較正が実行される。次に試験ケーブルを分離し、(直径1/2インチに切断した)サンプルを7mmのインターフェイスの上方に配置して試験ケーブルを再び接続する。
【0089】
上に説明したようにしてサンプルを測定し、1〜5GHzの範囲と1〜20GHzの範囲で平均した透過率のデータを得る。サンプルは、測定範囲全体での平均透過率が90%超である場合にレーダー透過性であると見なされる。
【0090】
この明細書に記載した実施例に従って製造した材料のサンプルを試験して損失をdBを単位として記録し、平均レーダー透過率(%)を以下の式に従って計算した。
透過率(%)=[10(dB損失/10)]×100
調べた範囲での透過率(%)を表3に示す。
【0091】
撥油性試験
【0092】
この試験では、AATCC試験法118-1983を以下のように改変した方法を利用して油等級を測定した。本発明の熱透過性で視覚的に不透明な要素の第2の面は一般に熱反射性要素に付着させるため、熱透過性で視覚的に不透明なこの要素の第1の面だけを試験することができた。したがってこの明細書で報告する油等級は、構造体の熱透過性で視覚的に不透明な要素の第1の面に対して行なった測定の結果である。サンプルの表面に試験する油を3滴載せる。3分後、サンプルを湿らせない/サンプルに吸収されることのない最高点の油に対応するサンプルに油等級の数値を1つ割り当てる。より大きな数値は、試験したサンプルの撥油性がより優れていることを示す。撥油性が望ましい場合には、2以上の値、4以上の値、5以上の値、それどころか6以上の値が好ましい。
【0093】
金属の厚さ試験
【0094】
従来技術でよく知られている装置と方法を利用して蒸着によって調製したサンプルについて、可能な場合に熱反射層とレーダー反射層の金属の厚さを間接法で測定した。厚さは、1秒ごとの堆積速度をオングストロームを単位として与えるInficon Sentinal III水晶モニタで決定した。堆積時間に基づき、厚さの公称値を堆積時間に堆積速度を掛けて計算した。
【0095】
熱反射層として金属ホイルを有するサンプルに関しては、金属ホイルの厚さをミツトヨ社の第2804F-10マイクロメータを用いて測定した後、構造体に組み込んだ。
【実施例】
【0096】
実施例1
炭素被覆ePTFEと金属化ePTFEを有する構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0097】
第1の基板を表わす炭素被覆ePTFEを含む第1の要素をアメリカ合衆国特許出願公開第2007/0009679号の実施例3に記載されているようにして製造したが、以下の点が異なっている。使用したePTFE膜は、厚さが約30μm、重さが約9g/m2、空孔の平均サイズが約0.2μmであった。使用したカーボン・ブラックの量は、ePTFE膜の約0.9重量%であった。第1の要素の第1の基板の光学密度と熱反射特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0098】
熱反射層を表わす金属化ePTFEを含む第2の要素をアメリカ合衆国特許第5,955,175号に従って製造した。金属化した側で放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。熱反射層の金属化ePTFEの金属の厚さを計算すると約200nmであった。
【0099】
次に第1の要素を第2の要素の金属化された側に配置し、両者の間には0.5ミルのポリエチレン・フィルム層を配置した。ジオ・ナイト社のモデル178SU熱プレスを約350°Fで約10秒間使用してこれらの層を互いに接合し、構造体を形成した。この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて炭素被覆ePTFE側で測定したマルチスペクトル試験の結果を表1と図9、図10、図11に示してある。表1に示してあるように、この構造体は、可視光の反射率が約8%、nIRの反射率が約12%、MWIRの反射率が約28%、LWIRの反射率が約50%であった。
【0100】
図9、図10、図11の分光応答曲線は、試験した広い範囲の波長で反射率と透過率が変化することを示している。ここに示した平均結果は、これらの図面のデータから、表1に示した個々の波長範囲で計算される。図11にはさらに、構造体に関する約8μm〜約9μmの反射率のデータが含まれている。
【0101】
実施例2
炭素被覆ePTFE層と、Alホイルと、テキスタイル製裏打ち材とを備える構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0102】
第1の基板を表わす炭素被覆ePTFEからなる第1の要素を実施例1に記載したようにして製造した。第1の要素の第1の基板の光学密度と熱反射特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0103】
テキスタイル製裏打ち材に接着されていて熱反射層を表わす不連続なホイル層を含む第2の要素を製造した。この第2の要素は、クラウン・ロール・リーフ社からのAl転写ホイル層(要素#MG39-100G)に穿孔して約30%のオープン領域を設けて不連続な転写ホイル層を形成することによって形成した。連続な熱可塑性ポリウレタン接着剤(8)を用いて不連続な転写ホイル層をテキスタイル製裏打ち材に接着し、熱反射層を表わす第2の要素を形成した。ジオ・ナイト社のモデル178SU熱プレスを約280°Fで約8秒間使用してこれらの層を互いに接合した。不連続なアルミニウム転写ホイルの側で放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0104】
次に第1の要素を第2の要素のホイル側の上に載せ、実施例1に記載したように熱プレスを用いて互いに接合し、不連続な転写ホイル層のオープン領域に対応する部分をポリウレタン接着剤で第1の要素に直接接着して構造体を形成した。この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて第1の要素の側で測定したマルチスペクトル試験の結果を表1に示してある。この構造体は、可視光の反射率が約7%、nIRの反射率が約11%、MWIRの反射率が約31%、LWIRの反射率が約43%であった。このサンプルの手触りは、この明細書に記載した手触り試験法によって測定すると、186グラムであった。
【0105】
実施例3
着色ePTFE層とテキスタイル製裏打ち材を含む構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0106】
黒いSharpie(登録商標)永久マーカーからなる単一の実質的に連続なコーティングを有する1.2ミルのePTFE層(空孔の平均サイズが約0.2ミクロンで、重さが約18g/m2)を着色して構造体の第1の基板に含めることによって第1の要素を製造した。第1の基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0107】
熱反射層が含まれるようにするため、クラウン・ロール・リーフ社からのAl転写ホイル層(要素#MG39-100G)に穿孔して約30%のオープン領域を設けて不連続な転写ホイル層を形成することによって第2の要素を形成した。Al転写ホイルの金属の厚さを計算すると約0.0008インチであった。連続な熱可塑性ポリウレタン接着剤を用いてこの不連続な転写ホイル層をテキスタイル製裏打ち材に接着した。ジオ・ナイト社のモデル178SU熱プレスを約280°Fで約8秒間使用してホイル層とテキスタイル製裏打ち材層を互いに接合した。不連続なアルミニウム転写ホイルの側で放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0108】
第1の要素の非着色側を第2の要素のホイル側の上に載せ、実施例1に記載したようにして熱プレスを用いて第1の要素と第2の要素を互いに接合し、構造体を形成した。不連続な転写ホイル層のオープン領域に対応する部分をポリウレタン接着剤で第1の要素に直接接着した。
【0109】
この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて第1の要素の側で測定したマルチスペクトル試験の結果を表1に示してある。この構造体は、可視光の反射率が約5%、nIRの反射率が約11%、MWIRの反射率が約48%、LWIRの反射率が約43%であった。
【0110】
実施例4
印刷したePTFEと金属化ePTFEを含む構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0111】
1.2ミルのePTFEフィルム(空孔の平均サイズが約0.2ミクロンで、重さが約18g/m2)からなる第1の要素を、ロディア社からの約13%のRhodapex ES-2と約6%のヘキサノールを含む水溶液で被覆した後、放置して乾燥させた。被覆されたePTFEフィルムにHPデザインジェット110プラス・プリンタを用いてカラー画像を印刷し、第1の基板を作った。第1の要素の第1の基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0112】
金属化ePTFE材料からなる第2の要素をアメリカ合衆国特許第5,955,175号に従って製造した。そのとき、金を金属として使用し、疎油性コーティングを省略して熱反射層を作り出した。金属化された側で放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0113】
実施例1に記載したようにして、0.5ミルのポリエチレン層を用い、第1の要素の印刷されていない側を第2の要素の金属化された側に接合した。
【0114】
この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて第1の要素側から測定したマルチスペクトル試験の結果を表1と図9、図10、図11に示してある。この構造体は、表1に示してあるように、可視光の反射率が約38%、nIRの反射率が約62%、MWIRの反射率が約60%、LWIRの反射率が約47%であった。図9に示した分光応答から、表面に印刷されているePTFEからなる第1の要素を含む構造体は、主に250nm〜600nmの可視波長領域の反射率に影響を与えることがわかる。
【0115】
実施例5
実質的に実施例1に従って構造体のサンプルを製造したが、以下の点が異なっている。
【0116】
炭素被覆ePTFE層の代わりに、黒いSharpie(登録商標)永久マーカーからなる単一の実質的に連続なコーティングを有する1.2ミルのePTFE層(空孔の平均サイズが約0.2ミクロンで、重さが約18g/m2)を着色して第1の要素の第1の基板を作り出すことによって第1の要素を製造した。第1の基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0117】
実施例1のようにして製造した第2の要素の金属化された側で放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0118】
次に、不連続なポリウレタン接着剤を用い、第1の要素の非着色側を第2の要素の金属化された側に接合した。次に、不連続なポリウレタン接着剤を用い、テキスタイルを第2の要素の金属化されていない側に接合して構造体を形成した。この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて第1の要素の側で測定したマルチスペクトル試験の結果を表1と図9、図10、図11に示してある。この構造体は、表1に示してあるように、可視光の反射率が約5%、nIRの反射率が約12%、MWIRの反射率が約53%、LWIRの反射率が約54%であった。
【0119】
この実施例に従って製造したサンプルはレーダー透過性であり、この明細書に記載した方法で試験したとき、平均透過率は、1〜5GHzの範囲全体と1〜20GHzの範囲全体の両方で約100%であった。このサンプルについて手触り測定(重さの単位はg/m2(gsm))と疎油性の試験も行なった。その結果を表3に示す。
【0120】
実施例6
金属コーティングで接合した2つの炭素被覆ePTFE層を含む構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0121】
実施例1に記載したようにして、第1の要素の第1の基板を表わす炭素被覆ePTFEのサンプルを製造した。第1の基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0122】
第1の要素の炭素被覆ePTFEからなる第1の基板をほぼ等しい2つの区画に分割した。1つの区画にKrylon Interior/exterior金メタリック・スプレー塗料(要素番号1510-H597)を缶に記載されている指示に従って塗装し、熱反射層を作り出した。残っている塗装されていない区画の炭素被覆されていない側を他方の区画の湿っている塗料の上に配置して手で滑らかにすることで、皺を除去した。すると塗料が接着剤と低放射性要素の両方として機能し、複合サンプルが形成される。このサンプルを約10分間放置して乾燥させ、デバイシーズ&サービシーズ社(10290 モンロー・ドライヴ #202、ダラス、テキサス州、75229)のモデルAEという放射率計を用いて測定した。
【0123】
この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて第1の要素の側で測定したマルチスペクトル試験の結果を表1に示してある。この構造体は、可視光の反射率が約9%、nIRの反射率が約13%、MWIRの反射率が約31%、LWIRの反射率が約41%であった。
【0124】
この実施例に従って製造したサンプルはレーダー透過性であり、この明細書に記載した方法で試験したとき、平均透過率は、1〜5GHzの範囲全体と1〜20GHzの範囲全体の両方で約100%であった。このサンプルについて手触り測定(重さの単位はg/m2(gsm))と疎油性の試験も行なった。その結果を表3に示す。
【0125】
実施例7
ポリプロピレンと金属を含む構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0126】
黒いSharpie(登録商標)永久マーカーからなる単一の実質的に連続なコーティングを有する2.5ミルのポリプロピレン・フィルムの一方の側を着色することによって第1の要素の第1の基板を製造した。第1の基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0127】
金属化ePTFE材料を含む熱反射層を実質的にアメリカ合衆国特許第5,955,175号に従って製造した。金属化された側で放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0128】
次に、ジオ・ナイト社のモデル178SU熱プレスを約350°Fで約10秒間使用して第1の基板の非着色側を熱反射層の金属化された側に接合し、構造体を形成した。
【0129】
この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて着色側から測定したマルチスペクトル試験の結果を表1と図9、図10、図11に示してある。この構造体は、表1に示してあるように、可視光の反射率が約7%、nIRの反射率が約16%、MWIRの反射率が約43%、LWIRの反射率が約78%であった。
【0130】
実施例8
金属化ポリウレタンからなる構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0131】
蒸着を利用し、1ミルのポリウレタン・フィルム(ディアフィールド・ウレタンズ社、要素番号1710S、ディアフィールド、マサチューセッツ州)のサンプルを含む第1の基板を金属化した。蒸着によって約300nmのアルミニウムをこの第1の基板の第2の面に堆積させた。次にこのサンプルの金属化されていない側を、黒いSharpie(登録商標)永久マーカーからなる単一の実質的に連続なコーティングで着色した。
【0132】
実質的にSharpie(登録商標)マーカーで被覆されたポリウレタン・フィルムの金属化されていない側を利用し、この第1の基板サンプルの特性を測定した。この基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に“第1の要素”として示してある。
【0133】
この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて着色側から測定したマルチスペクトル試験の結果を表1に示してある。この構造体は、可視光の反射率が約7%、nIRの反射率が約13%、MWIRの反射率が約54%、LWIRの反射率が約18%であった。
【0134】
実施例9
ポリウレタン・フィルムとアルミニウム・フィルムを含む構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0135】
黒いSharpie(登録商標)永久マーカーからなる単一の実質的に連続なコーティングを有する2.0ミルのポリエチレン・フィルム層を着色して構造体の第1の基板に含めることによって第1の要素を製造した。第1の基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0136】
Stor-It(登録商標)商標のアルミニウム・ホイルを含む第2の要素を熱反射層として用いた。この熱反射層で使用したアルミニウム・ホイルの金属の厚さを計算すると、約0.001インチであった。放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0137】
ポリエチレン・フィルムの着色されていない側をアルミニウム・ホイルの近くに配置し、マルチスペクトル型選択的反射構造体として使用した。この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて着色側から測定したマルチスペクトル試験の結果を表1と図9、図10、図11に示してある。この構造体は、表1に示してあるように、可視光の反射率が約7%、nIRの反射率が約23%、MWIRの反射率が約70%、LWIRの反射率が約73%であった。
【0138】
この実施例に従って製造したサンプルはレーダー透過性ではなく、この明細書に記載した方法で試験したとき、平均透過率は、1〜5GHzの範囲全体と1〜20GHzの範囲全体で約0%であった。このサンプルについて手触り測定(重さの単位はg/m2(gsm))と疎油性の試験も行なった。その結果を表3に示す。
【0139】
実施例10
実質的に実施例5に従って構造体のサンプルを製造したが、以下の点が異なっている。不連続なポリウレタン接着剤の代わりに3M社のSuper 77(登録商標)多目的接着剤からなる連続コーティングを用い、第1の要素と第2の要素を接合した。テキスタイル製裏打ち材も省略した。
【0140】
実施例5のようにして製造した第1の要素の第1の基板の光学密度と熱反射特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0141】
実施例5のように金属化された側で第2の要素の放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0142】
この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて着色側から測定したマルチスペクトル試験の結果を表1に示してある。この構造体は、可視光の反射率が約4%、nIRの反射率が約9%、MWIRの反射率が約34%、LWIRの反射率が約16%であった。
【0143】
実施例11
ポリウレタン・フィルムの代わりに1.5ミルのポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムを用い、実質的に実施例8に従って構造体のサンプルを製造した。熱反射層に関して放射率を金属化されていない側から測定し、値を表1に示してある。
【0144】
実質的にSharpie(登録商標)マーカーで被覆されたPETフィルムの金属化されていない側を利用し、実施例8のようにして第1の基板の特性を測定した。この基板の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に“第1の要素”として示してある。
【0145】
この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて着色側から測定したマルチスペクトル試験の結果を表1に示してある。この構造体は、可視光の反射率が約7%、nIRの反射率が約17%、MWIRの反射率が約63%、LWIRの反射率が約5%であった。
【0146】
実施例12
ePTFEと金属化ePTFEを含む構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0147】
1.2ミルのePTFEフィルム(空孔の平均サイズが約0.2ミクロンで、重さが約18g/m2)からなる第1の要素の光学密度と熱透過特性をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0148】
熱反射層を表わす金属化ePTFEを有する第2の要素をアメリカ合衆国特許第5,955,175号に従って製造した。金属化した側で放射率をこの明細書の試験法に従って測定し、表1に示してある。
【0149】
次に、第1の要素を第2の要素の金属化された側に配置し、両者の間には0.5ミルのポリエチレン・フィルム層を配置した。ジオ・ナイト社のモデル178SU熱プレスを約350°Fで約10秒間使用してこれらの層を互いに接合し、構造体を形成した。この実施例に従って製造し、サンプルの炭素被覆ePTFE側で測定したサンプル構造体に関するマルチスペクトル試験の結果を表1と図9、図10、図11に示してある。
【0150】
この構造体は、表1に示してあるように、可視光の反射率が約86%、nIRの反射率が約73%、MWIRの反射率が約56%、LWIRの反射率が約83%であった。
【0151】
実施例13
炭素被覆ePTFEと金属化ポリエステルを含む構造体のサンプルを以下のようにして製造した。
【0152】
第1の基板として実施例1のような炭素被覆ePTFEからなる第1の要素を用意することによってサンプルを製造した。次に、熱反射層(30)を表わすレアード社からのNi/Cu金属化ポリエステル・タフタ(製品#3027-217)からなる第2の要素を第1の基板の近くに配置した。製品仕様表には、このNi/Cu金属化ポリエステル・タフタの金属の厚さが152μmであると記載されている。この実施例に従って製造した構造体のサンプルについて第1の要素側から測定したマルチスペクトル試験の結果を表1と図9、図10、図11に示してある。この構造体は、表1に示してあるように、可視光の反射率が約10%、nIRの反射率が約15%、MWIRの反射率が約44%、LWIRの反射率が約61%であった。
【0153】
この実施例に従って製造したサンプルはレーダー透過性ではなく、この明細書に記載した方法で試験したとき、平均透過率は、1〜5GHzの範囲全体と1〜20GHzの範囲全体で約0%であった。このサンプルについて手触り測定(重さの単位はg/m2(gsm))と疎油性の試験も行なった。その結果を表3に示す。
【0154】
実施例14
複合体のマルチスペクトル反射特性を測定するため、ゴア社の商品#WJIX102108HZを入手した。ゴア社のこの商品は軍隊仕様に合致したファブリックの代表例であり、許容可能な外観とnIR特性を有するが、熱反射特性の条件はない。このファブリックは、テキスタイル製裏打ち材を有する二成分フィルムに貼り合わせたカムフラージュ印刷付きテキスタイルである。4つのカラー・パターンの各色(ライト・タン、アーバン・タン、ライト・コヨーテ、ハイランド)を、それぞれ14a、14b、14c、14dとして測定した。マルチスペクトル試験の結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部と裏面部とを含む構造体であって、
該構造体が、第1の微小孔性ポリマー層と着色剤とを含有する、熱透過性であって視覚的に不透明である基板を含み、該基板が、該構造体の該前面部に近位である第1面と、第2面とを有し、
また、該構造体が、熱透過性であって視覚的に不透明である該基板の該第2面に近接する低放射率要素を含有する熱反射層を含み、該熱反射層が該構造体の該裏面部に近接し、
さらに、該構造体が、
i)400〜600nmの範囲の波長で平均反射率が約70%未満であり、
ii)9〜12μmの範囲の波長で平均反射率が約25%超であり、及び
iii)1GHz〜約5GHzの範囲の周波数で平均レーダー透過率が90%超である、
構造体。
【請求項2】
さらに、700〜1000nmの範囲の波長で平均反射率が約70%未満である、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
1GHz〜約20GHzの周波数の範囲全体で平均レーダー透過率が90%超である、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
1GHz〜約20GHzの範囲の周波数で平均レーダー透過率が99%超である、請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記第1の微小孔性ポリマー層が第1の微小孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記熱反射層がポリマー層を含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記熱反射層が金属化ポリマー層を含む、請求項6に記載の構造体。
【請求項8】
前記熱反射層が第2の微小孔性ポリマー層を含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
前記第2の微小孔性ポリマー層が金属化されている、請求項8に記載の構造体。
【請求項10】
前記第2の微小孔性ポリマー層が金属化ePTFEを含む、請求項9に記載の構造体。
【請求項11】
前記熱反射層が第2の微小孔性延伸PTFE層を含み、前記低放射率要素が該第2の微小孔性延伸PTFE層の金属化された面から形成するように堆積された金属であり、該金属化された面が、熱透過性であって視覚的に不透明である前記基板の前記第2面に近接する、請求項5に記載の構造体。
【請求項12】
前記金属の厚さが約1μm未満である、請求項1に記載の構造体。
【請求項13】
前記金属の厚さが約500nm未満である、請求項1に記載の構造体。
【請求項14】
前記金属の厚さが約400nm未満である、請求項1に記載の構造体。
【請求項15】
前記熱反射層が、介在接着層によって熱透過性で視覚的に不透明な前記基板に接合されている、請求項1に記載の構造体。
【請求項16】
前記低放射率要素が、蒸着された金属粒子を前記第2の微小孔性延伸ePTFE層の表面に含む、請求項11に記載の構造体。
【請求項17】
前記低放射率要素が、金属粒子を含むスプレー・コーティングを前記第2の微小孔性延伸ePTFE層の表面に備える、請求項5に記載の構造体。
【請求項18】
前記低放射率要素がAlを含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項19】
前記低放射率要素がCuを含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項20】
前記低放射率要素がAuを含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項21】
前記低放射率要素が、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)及び、それらの合金の中から選択される、請求項1に記載の構造体。
【請求項22】
前記熱反射層に近い位置かつ熱透過性で視覚的に不透明な前記基板の反対側に、レーダー信号を減衰させるためのレーダー・カムフラージュ層をさらに備える、請求項1に記載の構造体。
【請求項23】
前記レーダー・カムフラージュ層がレーダー吸収要素を備える、請求項22に記載の構造体。
【請求項24】
前記レーダー・カムフラージュ層がレーダー反射要素を備える、請求項22に記載の構造体。
【請求項25】
前記レーダー・カムフラージュ層が、レーダー吸収要素の複数の離散領域と、レーダー反射要素の複数の離散領域を備える、請求項22に記載の構造体。
【請求項26】
前記レーダー・カムフラージュ層が、熱透過性で視覚的に不透明な前記基板とは反対側で熱反射層に貼り合わされている、請求項22に記載の構造体。
【請求項27】
油等級が1超である、請求項1に記載の構造体。
【請求項28】
油等級が2超である、請求項1に記載の構造体。
【請求項29】
手触りが500g未満である、請求項1に記載の構造体。
【請求項30】
手触りが300g未満である、請求項1に記載の構造体。
【請求項31】
手触りが200g未満である、請求項1に記載の構造体。
【請求項32】
レーダー・カムフラージュ車両に、視覚的であって、かつ、熱的であるカムフラージュを提供する方法であって、
該方法が
a.前面部、裏面部、
該前面部に近接する、熱透過性であって視覚的に不透明である基板、及び
熱透過性であって視覚的に不透明である該基板に近接する低放射率要素を含有する熱反射層を含む構造体であって
該構造体が、
i)400〜600nmの範囲の波長で平均反射率が約70%未満であり、
ii)9〜12μmの範囲の波長で平均反射率が約25%超であり、及び
iii)1GHz〜約5GHzの範囲の周波数で平均レーダー透過率が90%超である、
構造体を形成する工程、並びに、
b.検出器と該レーダー・カムフラージュ車両との間に該構造体を配置し、該構造体の該前面部が検出器に向くような位置に配置される、工程
を含む方法。
【請求項33】
レーダー透過性であって、熱的、かつ、視覚的にカムフラージュ性がある構造体を生産する方法であって、該方法が、
a.熱透過性の第1の微小孔性ポリマー材料を含んでいて第1の面と第2の面を有する第1の基板を提供する工程、
b.着色剤を用意する工程、
c.該着色剤を該第1の基板の少なくとも第1の面に付着させて熱透過性で視覚的に不透明な層を形成する工程、
d.低放射率要素を含む第2の基板を提供する工程、
e.該第2の基板の低放射率要素を該第1の基板の第2面に向くような位置に配置される工程、並びに
f.該第1の基板と該第2の基板を接着することにより、400〜600nmの範囲の波長で平均反射率が約70%未満であり、9〜12μmの範囲の波長で平均反射率が約25%超であり、及び1GHzから約20GHzの範囲の周波数でレーダー透過率が90%超である構造体を形成する工程 を含む方法。
【請求項34】
熱透過性の前記ポリマー材料がePTFEを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ePTFEに着色剤を印刷することにより、熱透過性で視覚的に不透明な前記基板を形成する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法において、前記第2の基板が第2の微小孔性ポリマー層を含み、この方法が、その第2の微小孔性ポリマー層に金属を蒸着するステップをさらに含む方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法において、前記第2の基板が第2の微小孔性ポリマー層を含み、この方法が、その第2の微小孔性ポリマー層に金属をスプレーするステップをさらに含む方法。
【請求項38】
前記第1の微小孔性ポリマー層と前記第2の微小孔性ポリマー層を互いに固定するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
接着剤として金属スプレーを用いて前記第1の微小孔性ポリマー層と前記第2の微小孔性ポリマー層を互いに固定するステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記構造体の第2の基板に近い側に貼り合わされた少なくとも1つの追加層を備える、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの追加層がテキスタイル層である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの追加層がレーダー・カムフラージュ層である、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−500382(P2012−500382A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523790(P2011−523790)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/002162
【国際公開番号】WO2010/021644
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】