マルチディスプレイシステムおよび画像表示装置の配置位置検出方法
【課題】 簡単な装置構成で、各画像表示装置に対して、配置位置に関連付けられた識別情報を自動で割り振ることができるマルチディスプレイシステムを提供する。
【解決手段】 マルチディスプレイシステム1は、それぞれ表示画面10aを有し、縦方向vおよび横方向hに沿ってマトリクス状に配列された複数の画像表示装置10と、マルチ画面1aに表示させる画像の画像情報を、各画像表示装置10に出力する映像信号源20とを含み、映像信号源20は、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像の画像情報を生成して各画像表示装置10に出力し、各画像表示装置10は、映像信号源20から受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面10a上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、配置位置に関連した識別情報IDを導出する。
【解決手段】 マルチディスプレイシステム1は、それぞれ表示画面10aを有し、縦方向vおよび横方向hに沿ってマトリクス状に配列された複数の画像表示装置10と、マルチ画面1aに表示させる画像の画像情報を、各画像表示装置10に出力する映像信号源20とを含み、映像信号源20は、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像の画像情報を生成して各画像表示装置10に出力し、各画像表示装置10は、映像信号源20から受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面10a上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、配置位置に関連した識別情報IDを導出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像表示装置によって構築されるマルチディスプレイシステムおよび画像表示装置の配置位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像を表示可能な表示パネルを備える画像表示装置を複数台、平面的に並べて構築されるマルチディスプレイシステムが、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイなどとして用いられるようになっている。
【0003】
このようなマルチディスプレイシステムでは、各画像表示装置に所定の映像を表示させるために、個々の画像表示装置を識別するためのユニークな識別情報(ID:Identification Data)を、各画像表示装置に対して割り当てる必要がある。
【0004】
従来のマルチディスプレイシステムでは、このような識別情報を設定する方法として、ディップスイッチ(Dual In-line Package switch)によって設定する方法、あるいは、リモートコントローラ(以下、「リモコン」という)を操作することにより、各画像表示装置の表示画面上で設定する方法が採用されていた。
【0005】
しかしながら、いずれの方法も、ユーザが画像表示装置ごとに個別に手動で設定していかなければならず、作業が面倒であるという問題がある。さらには、手動での設定であるため、人為的な設定ミスが発生するおそれがあるという問題もある。
【0006】
そこで、かかる問題を解決するために、識別情報を自動で設定する従来技術が、たとえば特許文献1に提案されている。
【0007】
特許文献1には、ID生成手段をそれぞれ備える複数の画像表示装置と、各画像表示装置に対して映像信号を送信する制御装置とを含むマルチディスプレイシステムが開示されている。この特許文献1のマルチディスプレイシステムでは、IDが未付与の画像表示装置の電源が投入されたときに、その画像表示装置に備えられるID生成手段が、乱数やフリーランカウンタの値を使用して仮のIDを生成して制御装置へ送信し、制御装置では、受信した仮のIDが他の画像表示装置に対して既に割り当てられているか否かを判定して、未だ割り当てられていなければ、その仮のIDを正規のIDとして承認するように構成されている。
【0008】
図13は、この特許文献1の設定方法を用いた場合のIDの設定例を示す図である。図13では、画像表示装置110を縦横2×2に配列して成るマルチディスプレイシステム100を例に挙げており、各画像表示装置110に記載の数字は、当該画像表示装置110に割り当てられたIDを示している。特許文献1に係る従来技術では、前記のような方法でIDが設定されるので、各画像表示装置110に対しランダムにIDが割り振られ、結果として、画像表示装置110の配置位置と割り振られたIDとが、全く関連しないものとなってしまう。
【0009】
また、特許文献1以外の設定方法として、各画像表示装置が、各画像表示装置を制御する制御装置に対してLAN(Local Area Network)などのように並列に接続されている場合には、画像表示装置に固有のMAC(Media Access Control)アドレスなどを基にしてIDを自動で割り振ることができるが、この場合にも、特許文献1の設定方法と同様に、画像表示装置の配置位置と割り振られたIDとが、全く関連しないものとなってしまう。
【0010】
このように、画像表示装置の配置位置と割り振られたIDとが全く関連していない場合には、特に、マルチ画面に表示されるメインの映像の中に子画面表示を行う際に、不具合が生じてしまう。以下、図14を参照して、この不具合について説明する。
【0011】
図14は、2つの映像信号源165,170が接続されたマルチディスプレイシステム150を示す図である。マルチディスプレイシステム150は、複数(図14では、縦横3×3)の画像表示装置160と、各画像表示装置160における主系統の入力端子160mに接続され、各画像表示装置160へメインの映像信号を送信するメイン映像信号源165と、子画面表示用の映像信号を出力するサブ映像信号源170と、各画像表示装置160における主系統とは別系統の入力端子160sに接続され、サブ映像信号源170から出力された子画面表示用の映像信号を各画像表示装置160へ送信する映像分配器175と、各画像表示装置160を制御する制御装置180とを含んでいる。
【0012】
マルチディスプレイシステム150において子画面表示を行う際には、コンテンツ製作者が指定する最適な位置Pに子画面が表示されるように、制御装置180が、最適位置Pに対応する画像表示装置160(図14の場合、上から2段目で、左から1番目の画像表示装置160)を制御する。
【0013】
このとき、制御装置180は、割り振られたIDに基づいて画像表示装置160を制御することになるが、画像表示装置160の配置位置と割り振られたIDとが全く関連していなければ、IDに基づいて最適位置Pに対応する画像表示装置160を制御することができないという不具合が生ずる。
【0014】
また、子画面表示を行うべき最適位置Pが、予めあるIDに対応付けられている場合には、同じ画面構成を有するマルチディスプレイシステムであっても、各画像表示装置のIDがランダムに決定されるため、マルチディスプレイシステムごとに子画面表示の表示位置が異なってしまう(再現性が得られない)という不具合が生ずる。
【0015】
そこで、このような不具合を解消するために、画像表示装置の配置位置とIDとを関連付けることが可能な従来技術が、たとえば特許文献2に提案されている。
【0016】
図15は、特許文献2に記載の従来技術に係るマルチディスプレイシステム200の構成を概略的に示す斜視図である。このマルチディスプレイシステム200は、複数の画像表示装置210と、各画像表示装置210が個別に接続される複数のポート部を有するハブ220と、ハブ220を介して各画像表示装置210に映像信号を出力するサーバ230と、各画像表示装置210によって構成されるマルチ画面に表示された画像を撮影する撮影部240とを含んで構成されている。
【0017】
この特許文献2のマルチディスプレイシステム200では、各ポート部に予め対応付けられた番号が描画された画像を、各画像表示装置210に表示させ、それを撮影部240によって撮影することにより、その撮像画像に基づいて、各ポート部と当該ポート部に接続されている画像表示装置210の配置位置とを関連付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2006−343543号公報
【特許文献2】特開2008−281718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述する特許文献2の設定方法を採用すれば、画像表示装置の配置位置とIDとを関連付けることはできるが、そのためには、撮影部240すなわちカメラを設置しなければならない。このように別途カメラを設置すると、マルチディスプレイシステムの装置コストが増大してしまうという問題がある。また、このカメラは、IDを自動的に付与するためにのみ用いられるものであり、そのためだけにカメラを設置するのは不経済であるという問題もある。
【0020】
本発明の目的は、簡単な装置構成で、各画像表示装置に対して、配置位置に関連付けられた識別情報を自動で割り振ることができるマルチディスプレイシステムおよび画像表示装置の配置位置検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、それぞれ表示画面を有し、互いに直交する縦方向および横方向に沿ってマトリクス状に配列された複数の画像表示装置と、
各表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像の画像情報を、各画像表示装置に出力する画像出力部とを含むマルチディスプレイシステムであって、
前記画像出力部は、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像を前記マルチ画面に表示させるための画像情報を生成して、該画像情報を各画像表示装置に出力し、
各画像表示装置は、前記画像出力部から受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出することを特徴とするマルチディスプレイシステムである。
【0022】
また本発明は、前記予め定める表示位置は、複数箇所であり、
各画像表示装置は、各表示位置における階調値の差に基づいて、マルチディスプレイシステムにおける画像表示装置の配列構成を算出することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記画像出力部は、互いに異なる複数のグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記複数の画像情報に基づいて、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記画像出力部は、階調値が変化する方向を色ごとに異ならせたグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記画像情報に基づいて、前記予め定める表示位置における色ごとの階調値を取得することによって、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする。
【0025】
また本発明は、互いに直交する縦方向および横方向に沿って、複数の画像表示装置をマトリクス状に配列して構築されるマルチディスプレイシステムにおける各画像表示装置の配置位置検出方法であって、
各画像表示装置の表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像であって、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像の画像情報を生成する生成工程と、
生成された画像情報を各画像表示装置へ出力する出力工程と、
各画像表示装置が、受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出する識別情報導出工程とを含むことを特徴とする配置位置検出方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡単な装置構成で、各画像表示装置に対して、配置位置に関連付けられた識別情報を自動で割り振ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチディスプレイシステム1の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】映像信号源20における端子部22の外観の一例を模式的に示す図である。
【図3】マルチ画面1aに表示すべき画像Vを、縦横3×3の配列構成に応じて分割したときの分割画像Va〜Viを示す図である。
【図4】画像表示装置10の構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】マルチディスプレイシステム1における各画像表示装置10の配置位置を説明するための図である。
【図6】配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V1を示す図である。
【図7】配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V2を示す図である。
【図8】位置検出用画像V1がマルチ画面1aに表示された状態を示す図である。
【図9】位置検出用画像V2がマルチ画面1aに表示された状態を示す図である。
【図10】配置位置検出処理における映像信号源20の動作を示すフローチャートである。
【図11A】配置位置検出処理における各画像表示装置10の動作を示すフローチャートである。
【図11B】配置位置検出処理における各画像表示装置10の動作を示すフローチャートである。
【図12】配置位置検出処理によって各画像表示装置10に割り振られた識別情報IDを示す図である。
【図13】特許文献1の設定方法を用いた場合のIDの設定例を示す図である。
【図14】2つの映像信号源165,170が接続されたマルチディスプレイシステム150を示す図である。
【図15】従来技術に係るマルチディスプレイシステム200の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチディスプレイシステム1の構成を概略的に示すブロック図である。
【0029】
マルチディスプレイシステム1は、それぞれ表示画面10aを有する複数台の画像表示装置10を、互いに直交する縦方向vおよび横方向hに沿ってマトリクス状に配列することによって構築され、大形のマルチ画面1aは、これらの表示画面10aによって構成される。
【0030】
マルチディスプレイシステム1を構築する画像表示装置10の配列構成は、特に限定されないが、本実施形態では、縦方向vに3台ずつ、横方向hに3台ずつ画像表示装置10を配列して成るマルチディスプレイシステム1を例に挙げて説明する。以下、このような配列構成を「縦横3×3」と称する場合がある。
【0031】
マルチディスプレイシステム1は、複数台の画像表示装置10のほかに、各画像表示装置10に対して画像情報(以下、「表示データ」と記す場合がある)を出力する映像信号源20と、各画像表示装置10の設定および調整などを行うための制御装置21とを含んで構成されている。
【0032】
本実施形態では、映像信号源20と制御装置21とが独立して設けられているが、他の実施形態では、制御装置21としての機能を映像信号源20が併せ持つように構成されてもよい。
【0033】
マルチディスプレイシステム1は、図1に示すように、各画像表示装置10が、映像信号源20に設けられる複数の映像出力端子23(図2参照)に対して、個別に接続されることによって構築されている。
【0034】
本実施形態では、映像信号源20は、マルチ画面1aに表示させるべき画像を、画像表示装置10の配列構成に応じて分割し、各分割画像の表示データを、各映像出力端子23を介して、個別に接続された各画像表示装置10へ出力するように構成されている。
【0035】
本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1は、後述する配置位置検出処理を実行することにより、各画像表示装置10が、自装置の配置位置を自動的に認識し、さらに、認識した配置位置に関連した識別情報を導出するように構成されている。
【0036】
そのために、本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1では、マルチ画面1aに表示される画像が正常な状態で表示されるように、映像信号源20と各画像表示装置10とが予め接続されているものとする。換言すれば、各画像表示装置10は、その配置位置に対応した分割画像の表示データが映像信号源20から入力されるように、映像信号源20における所定の映像出力端子23に接続されているものとする。
【0037】
ここで、各画像表示装置10と映像出力端子23の接続の一例について説明する。図2は、映像信号源20における端子部22の外観の一例を模式的に示す図である。図3は、マルチ画面1aに表示すべき画像Vを、縦横3×3の配列構成に応じて分割したときの分割画像Va〜Viを示す図である。
【0038】
端子部22には、画像表示装置10を接続するための映像出力端子23が複数設けられ、各映像出力端子23には、互いを識別するための符号が予め付されている。本実施例では、16の映像出力端子23に対し、アルファベット順にA〜Pの識別記号が予め付されている。
【0039】
映像信号源20は、各分割画像Va〜Viを所定の順序に従って、Aからアルファベット順に各映像出力端子23から出力するように構成されている。たとえば、図3に示す矢印の順序に従って、分割画像Vaの表示データを映像出力端子23Aから出力し、分割画像Vbの表示データを映像出力端子23Bから出力し、分割画像Vcの表示データを映像出力端子23Cから出力し、分割画像Vdの表示データを映像出力端子23Dから出力し、分割画像Veの表示データを映像出力端子23Eから出力し、分割画像Vfの表示データを映像出力端子23Fから出力し、分割画像Vgの表示データを映像出力端子23Gから出力し、分割画像Vhの表示データを映像出力端子23Hから出力し、分割画像Viの表示データを映像出力端子23Iから出力するように構成されている。この場合、映像出力端子23J〜23Pからは、分割画像の表示データは出力されない。
【0040】
映像信号源20をこのように構成することにより、ユーザは、各画像表示装置10を、その配置位置に従って、適切な映像出力端子23に接続することにより、各画像表示装置10に対して、その配置位置に対応した分割画像の表示データを入力させることができる。
【0041】
映像信号源20は、マルチ画面1aに表示させるべき画像を配列構造に応じて分割して出力する機能のほか、接続されている画像表示装置10との間でDDC(Display Data Channel)通信を行い、各画像表示装置10のディスプレイ情報(EDID;Extended Display Identification Data)を取得する機能を有している。
【0042】
取得されるディスプレイ情報には、画像表示装置10の許容解像度を示す情報(以下、「解像度情報」と称する)および画像表示装置10の色深度を示す情報(以下、「色深度情報」と称する)などが含まれている。
【0043】
ここで、「解像度情報」とは、画像表示装置10における横方向の画素数と縦方向の画素数とによって定義される情報のことであり、たとえば画像表示装置10がフルHD(High Definition)である場合、1920×1080ピクセルとして定義される情報である。また、「色深度情報」とは、画像表示装置10における各サブピクセル(副画素)で表示可能な階調数を示す情報のことである。
【0044】
図4は、画像表示装置10の構成を概略的に示すブロック図である。マルチディスプレイシステム1を構成する各画像表示装置10は、それぞれ同一に構成されているものとする。画像表示装置10は、特に限定はされないが、本実施形態では、液晶表示装置によって実現されているものとする。
【0045】
画像表示装置10は、画像を表示する表示部11と、表示部11を駆動する表示駆動部12と、映像入力部13と、OSD(On Screen Display)操作部14と、画像表示装置10全体を制御する制御部15と、各種情報が格納される記憶部16とを含んで構成される。
【0046】
表示部11は、本実施形態では、液晶パネルによって実現されている。液晶パネルには、複数の画素がマトリクス状に配列され、各画素には、赤(R)、緑(G)、青(B)色の光を透過する色フィルタが形成されたサブピクセルがそれぞれ設けられている。なお、サブピクセルに形成される色フィルタの色の個数は、上述した3色に限定されるものではなく、2色や4色であってもよい。
【0047】
表示駆動部12は、本実施形態では、液晶ドライバによって実現され、後述する表示データ出力部34から出力される表示データに基づいて、各サブピクセルの印加電圧を制御する。液晶パネルによって実現される表示部11の背面側には、バックライトユニットが設けられ、各サブピクセルの印加電圧に応じてバックライトユニットから出射される光の透過率を変化させることにより、階調表示が可能になっている。
【0048】
本実施形態では、各画像表示装置10は、解像度が1920×1080ピクセルであり、また各色256階調(8ビット)に構成されているものとするが、これ以外の構成であってもよい。
【0049】
映像入力部13は、映像信号源20から出力される表示データが入力され、入力された表示データを、制御部15における表示データ解析部33へ出力する。
【0050】
OSD操作部14は、画像表示装置10に設けられた操作キーおよび画像表示装置10を操作するためのリモコンから送信される信号の受信部によって実現され、このOSD操作部14を介して、ユーザによる指令が制御部15へ入力される。
【0051】
制御部15は、外部通信手段31と、演算処理部32と、表示データ解析部33と、表示データ出力部34とを含んで構成されている。
【0052】
外部通信手段31は、有線または無線による通信機能を有し、外部の装置との間で各種情報や信号の授受を行う。本実施形態では、PC(Personal Computer)などによって実現される制御装置21と通信を行うように構成されている。
【0053】
演算処理部32は、CPU(Central Processing Unit)によって実現され、記憶部16に格納される各種プログラムに従って、画像表示装置10全体の制御を行う。また、演算処理部32は、OSD生成部32aとして機能する。OSD生成部32aは、OSD操作部14から入力される指令に基づいて、メニュー画面などのOSD画面の画面データを生成する。
【0054】
表示データ解析部33は、映像入力部13から入力される表示データを解析し、該表示データが配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像の表示データである場合には、自装置の位置検出に必要な位置検出用情報41を該表示データから取得する。取得された位置検出用情報41は、記憶部16に格納される。位置検出用画像および位置検出用情報41の詳細については後述する。
【0055】
表示データ出力部34は、表示データ解析部33に入力された表示データに、必要に応じてOSD生成部32aによって生成された画面データを重ね合わせて、表示駆動部12に出力する。
【0056】
記憶部16には、各種プログラムおよび各種情報が格納される。各種情報には、表示データ解析部33によって取得された位置検出用情報41、マルチディスプレイシステム1における画像表示装置10の配列構成を示す配列構成情報42、自装置の配置位置を示す位置情報43、自装置の配置位置に基づいて導出された識別情報を示すID情報44、および、表示部11における各色の階調数に基づく最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminを示す表示部階調値情報45が含まれる。
【0057】
表示部階調値情報45は、画像表示装置10の構成に応じて予め記憶され、本実施形態では、画像表示装置10が各色256階調(8ビット)に構成されているので、最大階調値Kmax=255および最小階調値Kmin=0が予め記憶されている。
【0058】
図5は、マルチディスプレイシステム1における各画像表示装置10の配置位置を説明するための図である。以下では、図5に示すように、マルチ画面1aの正面側から見たときに、上からs行目かつ左からt列目に配置される画像表示装置10の配置位置を(s,t)と記すこととする。
【0059】
すなわち、本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1の場合、左上隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(1,1)であり、右上隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(1,3)であり、左下隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(3,1)であり、右下隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(3,3)である。
【0060】
以下、配置位置検出処理において用いられる位置検出用画像と、その位置検出用画像の分割画像に基づいて、各画像表示装置10の表示データ解析部33で取得される位置検出用情報41について説明する。
【0061】
位置検出用画像は、映像信号源20によって、マルチ画面1a用の画像として生成される。本実施形態では、2種類の位置検出用画像V1,V2が、映像信号源20によって生成される。
【0062】
図6は、配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V1を示す図であり、図7は、配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V2を示す図である。
【0063】
映像信号源20は、DDC通信によって取得された画像表示装置10の解像度情報および色深度情報に基づいて、画像の上下方向または左右方向に沿って階調値が一定の割合で(線形的に)変化する2種類のグラデーション画像を、位置検出用画像V1,V2として生成する。
【0064】
位置検出用画像V1は、画像の上下方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなモノクロのグラデーション画像である。本実施形態では、図6に示すように、上端から下端に向かうにつれて階調値が一定の割合で低下するようなグラデーション画像である。また、画像表示装置10が各色256階調(8ビット)に構成されているので、上端1ラインの各画素の階調値が255に設定され、下端1ラインの各画素の階調値が0に設定されている。
【0065】
一方、位置検出用画像V2は、画像の左右方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなモノクロのグラデーション画像である。本実施形態では、図7に示すように、画像の左端から右端に向かうにつれて階調値が一定の割合で低下するようなグラデーション画像である。また、画像表示装置10が各色256階調(8ビット)に構成されているので、左端1ラインの各画素の階調値が255に設定され、右端1ラインの各画素の階調値が0に設定されている。
【0066】
図8は、位置検出用画像V1がマルチ画面1aに表示された状態を示す図であり、図9は、位置検出用画像V2がマルチ画面1aに表示された状態を示す図である。
【0067】
画像表示装置10の解像度および色深度に基づいて生成された2種類の位置検出用画像V1,V2は、映像信号源20によって、マルチディスプレイシステム1を構築する画像表示装置10の配列構成に対応するように(本実施形態では、縦横3×3に)分割され、分割画像の表示データが、各映像出力端子23を介して各画像表示装置10へ出力される。
【0068】
分割画像の表示データが入力された各画像表示装置10では、表示データ解析部33によって、該表示データから位置検出用情報41が取得される。ここで、画像表示装置10の表示画面10aにおける画素の位置を[x,y]で表すこととする。ただし、xは、表示画面10aにおける左上隅の画素からの横方向への画素数を表し、yは、表示画面10aにおける左上隅の画素からの縦方向への画素数を表しているものとする。
【0069】
入力された分割画像の表示データが、画像の上下方向に沿って階調値が変化する位置検出用画像V1に対応する場合には、表示データ解析部33は、縦方向に沿って並ぶ所定の2つの位置[x0,y0],[x0,y1]の画素について、分割画像の表示データから階調値Z1,Z2を取得する。そして、取得した各階調値Z1,Z2と、その2つの画素の位置[x0,y0],[x0,y1]とを、位置検出用情報41として記憶部16に記憶する。
【0070】
一方、入力された分割画像の表示データが、画像の左右方向に沿って階調値が変化する位置検出用画像V2に対応する場合には、表示データ解析部33は、横方向に沿って並ぶ所定の2つの位置[x2,y2],[x3,y2]の画素について、分割画像の表示データから階調値Z3,Z4を取得する。そして、取得した各階調値Z3,Z4と、その2つの画素の位置[x2,y2],[x3,y2]とを、位置検出用情報41として記憶部16に記憶する。
【0071】
本実施形態では、表示データ解析部33は、入力された分割画像の表示データが位置検出用画像V1に対応する場合には、縦方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1(位置[0,0])と、表示画面10aにおける左下隅の画素p2(位置[0,1079])とを選択するように構成されている(図8参照)。また、入力された分割画像の表示データが位置検出用画像V2に対応する場合には、横方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1(位置[0,0])と、表示画面10aにおける右上隅の画素p3(位置[1919,0])とを選択するように構成されている(図9参照)。
【0072】
したがって、入力された分割画像の表示データが位置検出用画像V1に対応する場合、配置位置(1,1),(1,2),(1,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z1が255、画素p2の階調値Z2が170と取得される。
【0073】
また、配置位置(2,1),(2,2),(2,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z1が169、画素p2の階調値Z2が85と取得され、配置位置(3,1),(3,2),(3,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z1が84、画素p2の階調値Z2が0と取得される。
【0074】
このようにして取得された画素p1,p2の位置[0,0],[0,1079]、および画素p1,p2の階調値Z1,Z2は、各画像表示装置10において記憶部16に記憶され、後述する配置位置検出処理において、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている行mを計算するために用いられる。
【0075】
一方、入力された表示データが位置検出用画像V2に対応する場合、配置位置(1,1),(2,1),(3,1)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z3が255、画素p3の階調値Z4が170と取得される。
【0076】
また、配置位置(1,2),(2,2),(3,2)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z3が169、画素p3の階調値Z4が85と取得され、配置位置(1,3),(2,3),(3,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z3が84、画素p3の階調値Z4が0と取得される。
【0077】
このようにして取得された画素p1,p3の位置[0,0],[1919,0]、および画素p1,p3の階調値Z3,Z4は、各画像表示装置10において記憶部16に記憶され、後述する配置位置検出処理において、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている列nを計算するために用いられる。
【0078】
以下、本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1において実行される配置位置検出処理について説明する。
【0079】
図10は、配置位置検出処理における映像信号源20の動作を示すフローチャートである。各画像表示装置10を適切な映像出力端子23に接続することによりマルチディスプレイシステム1が構築され、マルチディスプレイシステム1における各装置に電源が投入されると、配置位置検出処理が開始されて、ステップs1に進む。
【0080】
ステップs1で、映像信号源20は、DDC通信によって、各画像表示装置10のディスプレイ情報を取得するとともに、端子部22に接続されている画像表示装置10の台数を、台数情報として取得し、ステップs2に進む。
【0081】
ステップs2で、映像信号源20は、マルチディスプレイシステム1の配列構造を示す情報(以下、「配列構造情報」という)を取得し、ステップs3に進む。この配列構造情報は、たとえば、ユーザが、映像信号源20に対して入力操作を行うことにより取得される。
【0082】
ステップs3で、映像信号源20は、取得した配列構造情報、解像度情報および色深度情報に基づいて、図6および図7に示すような、2種類の位置検出用画像V1,V2の表示データを生成し、ステップs4に進む。
【0083】
ステップs4で、映像信号源20は、生成した2種類の位置検出用画像V1,V2をそれぞれ、取得した配列構造情報に基づいて分割し、ステップs5に進む。本実施形態では、2種類の位置検出用画像V1,V2が、図3に示すように、縦横3×3の配列構造に応じて、縦横3×3に分割される。
【0084】
ステップs5で、映像信号源20は、位置検出用画像V1を分割した分割画像の表示データを、各映像出力端子23から出力し、ステップs6に進む。
【0085】
ステップs6で、映像信号源20は、位置検出用画像V2を分割した分割画像の表示データを出力すべきか否かを判断する。この判断は、ユーザの操作によって、出力指令が入力されたか否かに基づいて行われる。出力指令が入力された場合には、ステップs7に進み、出力指令が入力されていない場合には、入力されるまで待機する。
【0086】
位置検出用画像V1の表示データが映像信号源20から出力された後、画像表示装置10において、位置検出用画像V1に関する位置検出用情報41が取得されると、表示画面10aに、位置検出用画像の切替えを要求するOSD画面が表示される。ユーザは、そのOSD画面が表示されたことを確認して、次の処理へ進むために、映像信号源20に対して、位置検出用画像V2の出力指令を入力する。
【0087】
ステップs7で、映像信号源20は、位置検出用画像V2を分割した分割画像の表示データを、各映像出力端子23から出力する。これにより、映像信号源20側での配置位置検出処理が終了する。
【0088】
図11Aおよび図11Bは、配置位置検出処理における各画像表示装置10の動作を示すフローチャートである。
【0089】
配置位置検出処理が開始されると、ステップs11で、演算処理部32は、映像入力部13に表示データが入力されたか否かを判定し、表示データが入力された場合に、ステップs12に進む。
【0090】
ステップs12で、表示データ解析部33は、入力された表示データから解像度を判別し、ステップs13に進む。ステップs13で、演算処理部32は、入力された表示データを記憶部16に格納するとともに、表示駆動部12へ出力して表示画面10aに表示させ、ステップs14に進む。
【0091】
ステップs14で、演算処理部32は、OSD操作部14を介して、メニュー画面の表示指令が入力されたか否かを判定する。表示指令が入力された場合には、ステップs15に進み、表示指令が入力されていない場合には、表示指令が入力されるまで待機する。
【0092】
ステップs15で、演算処理部32は、メニュー画面に表示されている複数の選択項目のうち、「ID割振りモード」の項目が選択されたか否かを判定する。「ID割振りモード」が選択された場合には、ステップs17に進み、選択されなかった場合には、ステップs16に進む。
【0093】
ステップs16で、演算処理部32は、メニュー画面に表示されている複数の選択項目のうち、「位置検出用画像の切替え確認」の項目が選択されたか否かを判定する。「位置検出用画像の切替え確認」が選択された場合には、ステップs17に進み、選択されなかった場合には、ステップs24に進む。
【0094】
ステップs17で、演算処理部32は、記憶部16にID情報44が既に格納されているか否かに基づいて、自装置に識別情報が既に割り振られているか否かを判定する。識別情報が既に割り振られている場合には、ステップs18に進み、割り振られていない場合には、ステップs19に進む。
【0095】
ステップs18で、演算処理部32のOSD生成部32aは、識別情報が割振り済みであることを示すOSD画面の画像データを生成し、ステップs24に進む。
【0096】
ステップs19で、演算処理部32は、記憶部16に位置検出用画像V1に関する位置検出用情報41が既に格納されているか否かに基づいて、位置検出用画像V1から情報を取得済みか否かを判定する。取得済みでない場合には、ステップs20に進み、取得済みである場合には、ステップs22に進む。
【0097】
ステップs20で、演算処理部32は、位置検出用画像V1の分割画像の表示データに基づいて、縦方向に沿って並ぶ2つの画素の階調値Z1,Z2の情報を取得し、該2つの画素の位置の情報とともに記憶部16に格納して、ステップs21に進む。本実施形態では、前述するように、2つの画素として、画素p1,p2が選択される。
【0098】
ステップs21で、演算処理部32のOSD生成部32aは、位置検出用画像の切替えを要求する旨のOSD画面の画像データを生成し、ステップs24に進む。
【0099】
ステップs22で、演算処理部32のOSD生成部32aは、位置検出用画像の切替えが済んでいるか否かを確認するためのOSD画面の画像データを生成し、ステップs23に進む。
【0100】
ステップs23で、演算処理部32は、ユーザによって、位置検出用画像の切替えが済んでいることを示す入力が行われたか否かを判断し、済んだことを示す入力が行われた場合には、ステップs25に進み、入力されていない場合あるいは済んでいないことを示す入力が行われた場合には、ステップs24に進む。
【0101】
ステップs24で、演算処理部32は、準備されているOSD画面の画像データを表示駆動部12へ出力して表示画面10aに表示させて、ステップs11に戻る。
【0102】
ステップs25で、演算処理部32は、位置検出用画像V2の分割画像の表示データに基づいて、横方向に沿って並ぶ2つの画素の階調値Z3,Z4の情報を取得し、該2つの画素の位置の情報とともに記憶部16に格納して、ステップs26に進む。本実施形態では、前述するように、2つの画素として、画素p1,p3が選択される。
【0103】
ステップs26で、演算処理部32は、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている配置行mを算出する(ただし、M,mは自然数)。
【0104】
具体的には、演算処理部32は、ステップs12で判別された画像表示装置10の解像度のうち縦方向の解像度Yと、ステップs20で取得された2つの画素の階調値Z1,Z2および位置[x0,y0],[x0,y1]と、表示部階調値情報45として予め記憶されている最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminとに基づいて、式(1)により行数Mを算出する。
M={(Kmax−Kmin)/(Z1−Z2)}×{(y1−y0)/Y}
…(1)
【0105】
また、演算処理部32は、式(2)により配置行mを算出する。
m=[1−{Z1/(Kmax−Kmin)}]×M+1 …(2)
【0106】
本実施形態では、行数Mは、全ての画像表示装置10でM=3と算出され、配置行mは、配置位置(1,1),(1,2),(1,3)の各画像表示装置10ではm=1と算出され、配置位置(2,1),(2,2),(2,3)の各画像表示装置10ではm=2と算出され、配置位置(3,1),(3,2),(3,3)の各画像表示装置10ではm=3と算出される。演算処理部32は、式(1),(2)によって行数Mおよび配置行mを算出すると、配列構成情報42および位置情報43として記憶部16に記憶し、ステップs27に進む。
【0107】
ステップs27で、演算処理部32は、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている配置列nを算出する(ただし、N,nは自然数)。
【0108】
具体的には、演算処理部32は、ステップs12で判別された画像表示装置10の解像度のうち横方向の解像度Xと、ステップs25で取得された2つの画素の階調値Z3,Z4および位置[x2,y2],[x3,y2]と、表示部階調値情報45として予め記憶されている最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminとに基づいて、式(3)により列数Nを算出する。
N={(Kmax−Kmin)/(Z3−Z4)}×{(x3−x2)/X}
…(3)
【0109】
また、演算処理部32は、式(4)により配置列nを算出する。
n=[1−{Z3/(Kmax−Kmin)}]×N+1 …(4)
【0110】
本実施形態では、列数Nは、全ての画像表示装置10でN=3と算出され、配置列nは、配置位置(1,1),(2,1),(3,1)の各画像表示装置10ではn=1と算出され、配置位置(1,2),(2,2),(3,2)の各画像表示装置10ではn=2と算出され、配置位置(1,3),(2,3),(3,3)の各画像表示装置10ではn=3と算出される。演算処理部32は、式(3),(4)によって列数Nおよび配置列nを算出すると、配列構成情報42および位置情報43として記憶部16に記憶し、ステップs28に進む。
【0111】
ステップs28で、演算処理部32は、記憶部16に記憶されている行数M、列数N、配置行mおよび配置列nの各情報を読み出して、ステップs29に進む。ステップs29で、演算処理部32は、読み出した各情報に基づいて、識別情報IDを導出する。
【0112】
本実施形態では、演算処理部32は、式(5)により識別情報IDを導出する。
ID=N×(m−1)+n …(5)
【0113】
たとえば配置位置(1,1)の画像表示装置10では、(N,m,n)=(3,1,1)と算出されているので、ID=1が導出される。またたとえば、配置位置(2,3)の画像表示装置10では、(N,m,n)=(3,2,3)と算出されているので、ID=6が導出される。このようにして、識別情報IDが導出されると、ステップs30に進む。
ステップs30で、演算処理部32は、導出した識別情報IDを、ID情報44として記憶部16に記憶し、配置位置検出処理を終了する。
【0114】
図11Aおよび図11Bに示すような配置位置検出処理が各画像表示装置10で実行されることにより、各画像表示装置10に対して、ユニークで、かつ配置位置に関連した識別情報IDを割り振ることができる。なお、本実施形態では、上記の式(5)によって識別情報IDを導出しているが、たとえば、ID=M×(n−1)+mという演算式で導出した場合であっても、各画像表示装置10に対して、ユニークで、かつ配置位置に関連した識別情報IDを割り振ることができる。
【0115】
図12は、配置位置検出処理によって各画像表示装置10に割り振られた識別情報IDを示す図である。本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1によれば、別途にカメラなどの装置を設けることなく、簡単な装置構成で、各画像表示装置10に対して、図12に示すような配置位置に関連付けられた識別情報IDを、自動的に割り振ることができる。
【0116】
これにより、マルチディスプレイシステム1において子画面表示を行う際に、識別情報IDに基づいて、コンテンツ製作者が指定する最適な位置に子画面を表示させることができる。
【0117】
また、本実施形態によれば、行数M、列数N、配置行mおよび配置列nの各情報を演算する際に、縦方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1と左下隅の画素p2とを選択するとともに、横方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1と右上隅の画素p3とを選択するように構成されている。2つの画素をこのように選択しているので、行数M、列数N、配置行mおよび配置列nを正確に算出することができる。
【0118】
上記の実施形態では、映像信号源20において2種類の位置検出用画像V1,V2を生成し、位置検出用画像V1に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている配置行mを算出し、位置検出用画像V2に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている配置列nを算出するように構成されていたが、他の実施形態では、一の色(たとえば赤色)のサブピクセルによって、画像の上下方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなグラデーション画像を描画し、他の色(たとえば青色)のサブピクセルによって、画像の左右方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなグラデーション画像を描画した位置検出用画像を生成し、一の色によるグラデーション画像に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている配置行mを算出し、他の色によるグラデーション画像に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている配置列nを算出するように構成されてもよい。この場合には、1種類の位置検出用画像によって行数M、列数N、配置行mおよび配置列nを算出することができるので、位置検出用画像の切替えが不要となり、ユーザによる入力操作を省略することができる。
【0119】
また、上記の実施形態では、映像信号源20において生成される位置検出用画像V1,V2の階調値の上限および下限は、画像表示装置10における最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminに基づいて決定されていたが、他の実施形態では、画像表示装置10における最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminに制限されることなく、位置検出用画像における階調値の上限および下限を、画像表示装置10の解像度やマルチディスプレイシステム1の配列構成に応じて、適宜決定するように構成してもよい。
【0120】
この場合、行数M、列数N、配置行mおよび配置列nの算出過程において、(Kmax−Kmin)に替えて、位置検出用画像における階調値の上限値と下限値との差分が用いる必要が生じてしまう。そこで、この階調値の上限値と下限値とを画像表示装置10に認識させるために、位置検出に使用されていない色(たとえば緑色)のサブピクセルに、階調値の上限値と下限値とを埋め込んでもよい。たとえば、緑色のサブピクセルを用いて、100×100ピクセル程度で、階調値の上限値と下限値とを交互に千鳥配置するなどし、この緑色のサブピクセルの階調値を取得することにより、階調値の上限値と下限値とを認識させてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 マルチディスプレイシステム
1a マルチ画面
10 画像表示装置
11 表示部
12 表示駆動部
13 映像入力部
14 OSD操作部
15 制御部
16 記憶部
20 映像信号源
32 演算処理部
33 表示データ解析部
34 表示データ出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像表示装置によって構築されるマルチディスプレイシステムおよび画像表示装置の配置位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像を表示可能な表示パネルを備える画像表示装置を複数台、平面的に並べて構築されるマルチディスプレイシステムが、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイなどとして用いられるようになっている。
【0003】
このようなマルチディスプレイシステムでは、各画像表示装置に所定の映像を表示させるために、個々の画像表示装置を識別するためのユニークな識別情報(ID:Identification Data)を、各画像表示装置に対して割り当てる必要がある。
【0004】
従来のマルチディスプレイシステムでは、このような識別情報を設定する方法として、ディップスイッチ(Dual In-line Package switch)によって設定する方法、あるいは、リモートコントローラ(以下、「リモコン」という)を操作することにより、各画像表示装置の表示画面上で設定する方法が採用されていた。
【0005】
しかしながら、いずれの方法も、ユーザが画像表示装置ごとに個別に手動で設定していかなければならず、作業が面倒であるという問題がある。さらには、手動での設定であるため、人為的な設定ミスが発生するおそれがあるという問題もある。
【0006】
そこで、かかる問題を解決するために、識別情報を自動で設定する従来技術が、たとえば特許文献1に提案されている。
【0007】
特許文献1には、ID生成手段をそれぞれ備える複数の画像表示装置と、各画像表示装置に対して映像信号を送信する制御装置とを含むマルチディスプレイシステムが開示されている。この特許文献1のマルチディスプレイシステムでは、IDが未付与の画像表示装置の電源が投入されたときに、その画像表示装置に備えられるID生成手段が、乱数やフリーランカウンタの値を使用して仮のIDを生成して制御装置へ送信し、制御装置では、受信した仮のIDが他の画像表示装置に対して既に割り当てられているか否かを判定して、未だ割り当てられていなければ、その仮のIDを正規のIDとして承認するように構成されている。
【0008】
図13は、この特許文献1の設定方法を用いた場合のIDの設定例を示す図である。図13では、画像表示装置110を縦横2×2に配列して成るマルチディスプレイシステム100を例に挙げており、各画像表示装置110に記載の数字は、当該画像表示装置110に割り当てられたIDを示している。特許文献1に係る従来技術では、前記のような方法でIDが設定されるので、各画像表示装置110に対しランダムにIDが割り振られ、結果として、画像表示装置110の配置位置と割り振られたIDとが、全く関連しないものとなってしまう。
【0009】
また、特許文献1以外の設定方法として、各画像表示装置が、各画像表示装置を制御する制御装置に対してLAN(Local Area Network)などのように並列に接続されている場合には、画像表示装置に固有のMAC(Media Access Control)アドレスなどを基にしてIDを自動で割り振ることができるが、この場合にも、特許文献1の設定方法と同様に、画像表示装置の配置位置と割り振られたIDとが、全く関連しないものとなってしまう。
【0010】
このように、画像表示装置の配置位置と割り振られたIDとが全く関連していない場合には、特に、マルチ画面に表示されるメインの映像の中に子画面表示を行う際に、不具合が生じてしまう。以下、図14を参照して、この不具合について説明する。
【0011】
図14は、2つの映像信号源165,170が接続されたマルチディスプレイシステム150を示す図である。マルチディスプレイシステム150は、複数(図14では、縦横3×3)の画像表示装置160と、各画像表示装置160における主系統の入力端子160mに接続され、各画像表示装置160へメインの映像信号を送信するメイン映像信号源165と、子画面表示用の映像信号を出力するサブ映像信号源170と、各画像表示装置160における主系統とは別系統の入力端子160sに接続され、サブ映像信号源170から出力された子画面表示用の映像信号を各画像表示装置160へ送信する映像分配器175と、各画像表示装置160を制御する制御装置180とを含んでいる。
【0012】
マルチディスプレイシステム150において子画面表示を行う際には、コンテンツ製作者が指定する最適な位置Pに子画面が表示されるように、制御装置180が、最適位置Pに対応する画像表示装置160(図14の場合、上から2段目で、左から1番目の画像表示装置160)を制御する。
【0013】
このとき、制御装置180は、割り振られたIDに基づいて画像表示装置160を制御することになるが、画像表示装置160の配置位置と割り振られたIDとが全く関連していなければ、IDに基づいて最適位置Pに対応する画像表示装置160を制御することができないという不具合が生ずる。
【0014】
また、子画面表示を行うべき最適位置Pが、予めあるIDに対応付けられている場合には、同じ画面構成を有するマルチディスプレイシステムであっても、各画像表示装置のIDがランダムに決定されるため、マルチディスプレイシステムごとに子画面表示の表示位置が異なってしまう(再現性が得られない)という不具合が生ずる。
【0015】
そこで、このような不具合を解消するために、画像表示装置の配置位置とIDとを関連付けることが可能な従来技術が、たとえば特許文献2に提案されている。
【0016】
図15は、特許文献2に記載の従来技術に係るマルチディスプレイシステム200の構成を概略的に示す斜視図である。このマルチディスプレイシステム200は、複数の画像表示装置210と、各画像表示装置210が個別に接続される複数のポート部を有するハブ220と、ハブ220を介して各画像表示装置210に映像信号を出力するサーバ230と、各画像表示装置210によって構成されるマルチ画面に表示された画像を撮影する撮影部240とを含んで構成されている。
【0017】
この特許文献2のマルチディスプレイシステム200では、各ポート部に予め対応付けられた番号が描画された画像を、各画像表示装置210に表示させ、それを撮影部240によって撮影することにより、その撮像画像に基づいて、各ポート部と当該ポート部に接続されている画像表示装置210の配置位置とを関連付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2006−343543号公報
【特許文献2】特開2008−281718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述する特許文献2の設定方法を採用すれば、画像表示装置の配置位置とIDとを関連付けることはできるが、そのためには、撮影部240すなわちカメラを設置しなければならない。このように別途カメラを設置すると、マルチディスプレイシステムの装置コストが増大してしまうという問題がある。また、このカメラは、IDを自動的に付与するためにのみ用いられるものであり、そのためだけにカメラを設置するのは不経済であるという問題もある。
【0020】
本発明の目的は、簡単な装置構成で、各画像表示装置に対して、配置位置に関連付けられた識別情報を自動で割り振ることができるマルチディスプレイシステムおよび画像表示装置の配置位置検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、それぞれ表示画面を有し、互いに直交する縦方向および横方向に沿ってマトリクス状に配列された複数の画像表示装置と、
各表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像の画像情報を、各画像表示装置に出力する画像出力部とを含むマルチディスプレイシステムであって、
前記画像出力部は、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像を前記マルチ画面に表示させるための画像情報を生成して、該画像情報を各画像表示装置に出力し、
各画像表示装置は、前記画像出力部から受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出することを特徴とするマルチディスプレイシステムである。
【0022】
また本発明は、前記予め定める表示位置は、複数箇所であり、
各画像表示装置は、各表示位置における階調値の差に基づいて、マルチディスプレイシステムにおける画像表示装置の配列構成を算出することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記画像出力部は、互いに異なる複数のグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記複数の画像情報に基づいて、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記画像出力部は、階調値が変化する方向を色ごとに異ならせたグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記画像情報に基づいて、前記予め定める表示位置における色ごとの階調値を取得することによって、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする。
【0025】
また本発明は、互いに直交する縦方向および横方向に沿って、複数の画像表示装置をマトリクス状に配列して構築されるマルチディスプレイシステムにおける各画像表示装置の配置位置検出方法であって、
各画像表示装置の表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像であって、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像の画像情報を生成する生成工程と、
生成された画像情報を各画像表示装置へ出力する出力工程と、
各画像表示装置が、受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出する識別情報導出工程とを含むことを特徴とする配置位置検出方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡単な装置構成で、各画像表示装置に対して、配置位置に関連付けられた識別情報を自動で割り振ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチディスプレイシステム1の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】映像信号源20における端子部22の外観の一例を模式的に示す図である。
【図3】マルチ画面1aに表示すべき画像Vを、縦横3×3の配列構成に応じて分割したときの分割画像Va〜Viを示す図である。
【図4】画像表示装置10の構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】マルチディスプレイシステム1における各画像表示装置10の配置位置を説明するための図である。
【図6】配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V1を示す図である。
【図7】配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V2を示す図である。
【図8】位置検出用画像V1がマルチ画面1aに表示された状態を示す図である。
【図9】位置検出用画像V2がマルチ画面1aに表示された状態を示す図である。
【図10】配置位置検出処理における映像信号源20の動作を示すフローチャートである。
【図11A】配置位置検出処理における各画像表示装置10の動作を示すフローチャートである。
【図11B】配置位置検出処理における各画像表示装置10の動作を示すフローチャートである。
【図12】配置位置検出処理によって各画像表示装置10に割り振られた識別情報IDを示す図である。
【図13】特許文献1の設定方法を用いた場合のIDの設定例を示す図である。
【図14】2つの映像信号源165,170が接続されたマルチディスプレイシステム150を示す図である。
【図15】従来技術に係るマルチディスプレイシステム200の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチディスプレイシステム1の構成を概略的に示すブロック図である。
【0029】
マルチディスプレイシステム1は、それぞれ表示画面10aを有する複数台の画像表示装置10を、互いに直交する縦方向vおよび横方向hに沿ってマトリクス状に配列することによって構築され、大形のマルチ画面1aは、これらの表示画面10aによって構成される。
【0030】
マルチディスプレイシステム1を構築する画像表示装置10の配列構成は、特に限定されないが、本実施形態では、縦方向vに3台ずつ、横方向hに3台ずつ画像表示装置10を配列して成るマルチディスプレイシステム1を例に挙げて説明する。以下、このような配列構成を「縦横3×3」と称する場合がある。
【0031】
マルチディスプレイシステム1は、複数台の画像表示装置10のほかに、各画像表示装置10に対して画像情報(以下、「表示データ」と記す場合がある)を出力する映像信号源20と、各画像表示装置10の設定および調整などを行うための制御装置21とを含んで構成されている。
【0032】
本実施形態では、映像信号源20と制御装置21とが独立して設けられているが、他の実施形態では、制御装置21としての機能を映像信号源20が併せ持つように構成されてもよい。
【0033】
マルチディスプレイシステム1は、図1に示すように、各画像表示装置10が、映像信号源20に設けられる複数の映像出力端子23(図2参照)に対して、個別に接続されることによって構築されている。
【0034】
本実施形態では、映像信号源20は、マルチ画面1aに表示させるべき画像を、画像表示装置10の配列構成に応じて分割し、各分割画像の表示データを、各映像出力端子23を介して、個別に接続された各画像表示装置10へ出力するように構成されている。
【0035】
本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1は、後述する配置位置検出処理を実行することにより、各画像表示装置10が、自装置の配置位置を自動的に認識し、さらに、認識した配置位置に関連した識別情報を導出するように構成されている。
【0036】
そのために、本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1では、マルチ画面1aに表示される画像が正常な状態で表示されるように、映像信号源20と各画像表示装置10とが予め接続されているものとする。換言すれば、各画像表示装置10は、その配置位置に対応した分割画像の表示データが映像信号源20から入力されるように、映像信号源20における所定の映像出力端子23に接続されているものとする。
【0037】
ここで、各画像表示装置10と映像出力端子23の接続の一例について説明する。図2は、映像信号源20における端子部22の外観の一例を模式的に示す図である。図3は、マルチ画面1aに表示すべき画像Vを、縦横3×3の配列構成に応じて分割したときの分割画像Va〜Viを示す図である。
【0038】
端子部22には、画像表示装置10を接続するための映像出力端子23が複数設けられ、各映像出力端子23には、互いを識別するための符号が予め付されている。本実施例では、16の映像出力端子23に対し、アルファベット順にA〜Pの識別記号が予め付されている。
【0039】
映像信号源20は、各分割画像Va〜Viを所定の順序に従って、Aからアルファベット順に各映像出力端子23から出力するように構成されている。たとえば、図3に示す矢印の順序に従って、分割画像Vaの表示データを映像出力端子23Aから出力し、分割画像Vbの表示データを映像出力端子23Bから出力し、分割画像Vcの表示データを映像出力端子23Cから出力し、分割画像Vdの表示データを映像出力端子23Dから出力し、分割画像Veの表示データを映像出力端子23Eから出力し、分割画像Vfの表示データを映像出力端子23Fから出力し、分割画像Vgの表示データを映像出力端子23Gから出力し、分割画像Vhの表示データを映像出力端子23Hから出力し、分割画像Viの表示データを映像出力端子23Iから出力するように構成されている。この場合、映像出力端子23J〜23Pからは、分割画像の表示データは出力されない。
【0040】
映像信号源20をこのように構成することにより、ユーザは、各画像表示装置10を、その配置位置に従って、適切な映像出力端子23に接続することにより、各画像表示装置10に対して、その配置位置に対応した分割画像の表示データを入力させることができる。
【0041】
映像信号源20は、マルチ画面1aに表示させるべき画像を配列構造に応じて分割して出力する機能のほか、接続されている画像表示装置10との間でDDC(Display Data Channel)通信を行い、各画像表示装置10のディスプレイ情報(EDID;Extended Display Identification Data)を取得する機能を有している。
【0042】
取得されるディスプレイ情報には、画像表示装置10の許容解像度を示す情報(以下、「解像度情報」と称する)および画像表示装置10の色深度を示す情報(以下、「色深度情報」と称する)などが含まれている。
【0043】
ここで、「解像度情報」とは、画像表示装置10における横方向の画素数と縦方向の画素数とによって定義される情報のことであり、たとえば画像表示装置10がフルHD(High Definition)である場合、1920×1080ピクセルとして定義される情報である。また、「色深度情報」とは、画像表示装置10における各サブピクセル(副画素)で表示可能な階調数を示す情報のことである。
【0044】
図4は、画像表示装置10の構成を概略的に示すブロック図である。マルチディスプレイシステム1を構成する各画像表示装置10は、それぞれ同一に構成されているものとする。画像表示装置10は、特に限定はされないが、本実施形態では、液晶表示装置によって実現されているものとする。
【0045】
画像表示装置10は、画像を表示する表示部11と、表示部11を駆動する表示駆動部12と、映像入力部13と、OSD(On Screen Display)操作部14と、画像表示装置10全体を制御する制御部15と、各種情報が格納される記憶部16とを含んで構成される。
【0046】
表示部11は、本実施形態では、液晶パネルによって実現されている。液晶パネルには、複数の画素がマトリクス状に配列され、各画素には、赤(R)、緑(G)、青(B)色の光を透過する色フィルタが形成されたサブピクセルがそれぞれ設けられている。なお、サブピクセルに形成される色フィルタの色の個数は、上述した3色に限定されるものではなく、2色や4色であってもよい。
【0047】
表示駆動部12は、本実施形態では、液晶ドライバによって実現され、後述する表示データ出力部34から出力される表示データに基づいて、各サブピクセルの印加電圧を制御する。液晶パネルによって実現される表示部11の背面側には、バックライトユニットが設けられ、各サブピクセルの印加電圧に応じてバックライトユニットから出射される光の透過率を変化させることにより、階調表示が可能になっている。
【0048】
本実施形態では、各画像表示装置10は、解像度が1920×1080ピクセルであり、また各色256階調(8ビット)に構成されているものとするが、これ以外の構成であってもよい。
【0049】
映像入力部13は、映像信号源20から出力される表示データが入力され、入力された表示データを、制御部15における表示データ解析部33へ出力する。
【0050】
OSD操作部14は、画像表示装置10に設けられた操作キーおよび画像表示装置10を操作するためのリモコンから送信される信号の受信部によって実現され、このOSD操作部14を介して、ユーザによる指令が制御部15へ入力される。
【0051】
制御部15は、外部通信手段31と、演算処理部32と、表示データ解析部33と、表示データ出力部34とを含んで構成されている。
【0052】
外部通信手段31は、有線または無線による通信機能を有し、外部の装置との間で各種情報や信号の授受を行う。本実施形態では、PC(Personal Computer)などによって実現される制御装置21と通信を行うように構成されている。
【0053】
演算処理部32は、CPU(Central Processing Unit)によって実現され、記憶部16に格納される各種プログラムに従って、画像表示装置10全体の制御を行う。また、演算処理部32は、OSD生成部32aとして機能する。OSD生成部32aは、OSD操作部14から入力される指令に基づいて、メニュー画面などのOSD画面の画面データを生成する。
【0054】
表示データ解析部33は、映像入力部13から入力される表示データを解析し、該表示データが配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像の表示データである場合には、自装置の位置検出に必要な位置検出用情報41を該表示データから取得する。取得された位置検出用情報41は、記憶部16に格納される。位置検出用画像および位置検出用情報41の詳細については後述する。
【0055】
表示データ出力部34は、表示データ解析部33に入力された表示データに、必要に応じてOSD生成部32aによって生成された画面データを重ね合わせて、表示駆動部12に出力する。
【0056】
記憶部16には、各種プログラムおよび各種情報が格納される。各種情報には、表示データ解析部33によって取得された位置検出用情報41、マルチディスプレイシステム1における画像表示装置10の配列構成を示す配列構成情報42、自装置の配置位置を示す位置情報43、自装置の配置位置に基づいて導出された識別情報を示すID情報44、および、表示部11における各色の階調数に基づく最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminを示す表示部階調値情報45が含まれる。
【0057】
表示部階調値情報45は、画像表示装置10の構成に応じて予め記憶され、本実施形態では、画像表示装置10が各色256階調(8ビット)に構成されているので、最大階調値Kmax=255および最小階調値Kmin=0が予め記憶されている。
【0058】
図5は、マルチディスプレイシステム1における各画像表示装置10の配置位置を説明するための図である。以下では、図5に示すように、マルチ画面1aの正面側から見たときに、上からs行目かつ左からt列目に配置される画像表示装置10の配置位置を(s,t)と記すこととする。
【0059】
すなわち、本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1の場合、左上隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(1,1)であり、右上隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(1,3)であり、左下隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(3,1)であり、右下隅に配置される画像表示装置10の配置位置は(3,3)である。
【0060】
以下、配置位置検出処理において用いられる位置検出用画像と、その位置検出用画像の分割画像に基づいて、各画像表示装置10の表示データ解析部33で取得される位置検出用情報41について説明する。
【0061】
位置検出用画像は、映像信号源20によって、マルチ画面1a用の画像として生成される。本実施形態では、2種類の位置検出用画像V1,V2が、映像信号源20によって生成される。
【0062】
図6は、配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V1を示す図であり、図7は、配置位置検出処理に用いられる位置検出用画像V2を示す図である。
【0063】
映像信号源20は、DDC通信によって取得された画像表示装置10の解像度情報および色深度情報に基づいて、画像の上下方向または左右方向に沿って階調値が一定の割合で(線形的に)変化する2種類のグラデーション画像を、位置検出用画像V1,V2として生成する。
【0064】
位置検出用画像V1は、画像の上下方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなモノクロのグラデーション画像である。本実施形態では、図6に示すように、上端から下端に向かうにつれて階調値が一定の割合で低下するようなグラデーション画像である。また、画像表示装置10が各色256階調(8ビット)に構成されているので、上端1ラインの各画素の階調値が255に設定され、下端1ラインの各画素の階調値が0に設定されている。
【0065】
一方、位置検出用画像V2は、画像の左右方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなモノクロのグラデーション画像である。本実施形態では、図7に示すように、画像の左端から右端に向かうにつれて階調値が一定の割合で低下するようなグラデーション画像である。また、画像表示装置10が各色256階調(8ビット)に構成されているので、左端1ラインの各画素の階調値が255に設定され、右端1ラインの各画素の階調値が0に設定されている。
【0066】
図8は、位置検出用画像V1がマルチ画面1aに表示された状態を示す図であり、図9は、位置検出用画像V2がマルチ画面1aに表示された状態を示す図である。
【0067】
画像表示装置10の解像度および色深度に基づいて生成された2種類の位置検出用画像V1,V2は、映像信号源20によって、マルチディスプレイシステム1を構築する画像表示装置10の配列構成に対応するように(本実施形態では、縦横3×3に)分割され、分割画像の表示データが、各映像出力端子23を介して各画像表示装置10へ出力される。
【0068】
分割画像の表示データが入力された各画像表示装置10では、表示データ解析部33によって、該表示データから位置検出用情報41が取得される。ここで、画像表示装置10の表示画面10aにおける画素の位置を[x,y]で表すこととする。ただし、xは、表示画面10aにおける左上隅の画素からの横方向への画素数を表し、yは、表示画面10aにおける左上隅の画素からの縦方向への画素数を表しているものとする。
【0069】
入力された分割画像の表示データが、画像の上下方向に沿って階調値が変化する位置検出用画像V1に対応する場合には、表示データ解析部33は、縦方向に沿って並ぶ所定の2つの位置[x0,y0],[x0,y1]の画素について、分割画像の表示データから階調値Z1,Z2を取得する。そして、取得した各階調値Z1,Z2と、その2つの画素の位置[x0,y0],[x0,y1]とを、位置検出用情報41として記憶部16に記憶する。
【0070】
一方、入力された分割画像の表示データが、画像の左右方向に沿って階調値が変化する位置検出用画像V2に対応する場合には、表示データ解析部33は、横方向に沿って並ぶ所定の2つの位置[x2,y2],[x3,y2]の画素について、分割画像の表示データから階調値Z3,Z4を取得する。そして、取得した各階調値Z3,Z4と、その2つの画素の位置[x2,y2],[x3,y2]とを、位置検出用情報41として記憶部16に記憶する。
【0071】
本実施形態では、表示データ解析部33は、入力された分割画像の表示データが位置検出用画像V1に対応する場合には、縦方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1(位置[0,0])と、表示画面10aにおける左下隅の画素p2(位置[0,1079])とを選択するように構成されている(図8参照)。また、入力された分割画像の表示データが位置検出用画像V2に対応する場合には、横方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1(位置[0,0])と、表示画面10aにおける右上隅の画素p3(位置[1919,0])とを選択するように構成されている(図9参照)。
【0072】
したがって、入力された分割画像の表示データが位置検出用画像V1に対応する場合、配置位置(1,1),(1,2),(1,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z1が255、画素p2の階調値Z2が170と取得される。
【0073】
また、配置位置(2,1),(2,2),(2,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z1が169、画素p2の階調値Z2が85と取得され、配置位置(3,1),(3,2),(3,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z1が84、画素p2の階調値Z2が0と取得される。
【0074】
このようにして取得された画素p1,p2の位置[0,0],[0,1079]、および画素p1,p2の階調値Z1,Z2は、各画像表示装置10において記憶部16に記憶され、後述する配置位置検出処理において、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている行mを計算するために用いられる。
【0075】
一方、入力された表示データが位置検出用画像V2に対応する場合、配置位置(1,1),(2,1),(3,1)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z3が255、画素p3の階調値Z4が170と取得される。
【0076】
また、配置位置(1,2),(2,2),(3,2)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z3が169、画素p3の階調値Z4が85と取得され、配置位置(1,3),(2,3),(3,3)の各画像表示装置10では、画素p1の階調値Z3が84、画素p3の階調値Z4が0と取得される。
【0077】
このようにして取得された画素p1,p3の位置[0,0],[1919,0]、および画素p1,p3の階調値Z3,Z4は、各画像表示装置10において記憶部16に記憶され、後述する配置位置検出処理において、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている列nを計算するために用いられる。
【0078】
以下、本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1において実行される配置位置検出処理について説明する。
【0079】
図10は、配置位置検出処理における映像信号源20の動作を示すフローチャートである。各画像表示装置10を適切な映像出力端子23に接続することによりマルチディスプレイシステム1が構築され、マルチディスプレイシステム1における各装置に電源が投入されると、配置位置検出処理が開始されて、ステップs1に進む。
【0080】
ステップs1で、映像信号源20は、DDC通信によって、各画像表示装置10のディスプレイ情報を取得するとともに、端子部22に接続されている画像表示装置10の台数を、台数情報として取得し、ステップs2に進む。
【0081】
ステップs2で、映像信号源20は、マルチディスプレイシステム1の配列構造を示す情報(以下、「配列構造情報」という)を取得し、ステップs3に進む。この配列構造情報は、たとえば、ユーザが、映像信号源20に対して入力操作を行うことにより取得される。
【0082】
ステップs3で、映像信号源20は、取得した配列構造情報、解像度情報および色深度情報に基づいて、図6および図7に示すような、2種類の位置検出用画像V1,V2の表示データを生成し、ステップs4に進む。
【0083】
ステップs4で、映像信号源20は、生成した2種類の位置検出用画像V1,V2をそれぞれ、取得した配列構造情報に基づいて分割し、ステップs5に進む。本実施形態では、2種類の位置検出用画像V1,V2が、図3に示すように、縦横3×3の配列構造に応じて、縦横3×3に分割される。
【0084】
ステップs5で、映像信号源20は、位置検出用画像V1を分割した分割画像の表示データを、各映像出力端子23から出力し、ステップs6に進む。
【0085】
ステップs6で、映像信号源20は、位置検出用画像V2を分割した分割画像の表示データを出力すべきか否かを判断する。この判断は、ユーザの操作によって、出力指令が入力されたか否かに基づいて行われる。出力指令が入力された場合には、ステップs7に進み、出力指令が入力されていない場合には、入力されるまで待機する。
【0086】
位置検出用画像V1の表示データが映像信号源20から出力された後、画像表示装置10において、位置検出用画像V1に関する位置検出用情報41が取得されると、表示画面10aに、位置検出用画像の切替えを要求するOSD画面が表示される。ユーザは、そのOSD画面が表示されたことを確認して、次の処理へ進むために、映像信号源20に対して、位置検出用画像V2の出力指令を入力する。
【0087】
ステップs7で、映像信号源20は、位置検出用画像V2を分割した分割画像の表示データを、各映像出力端子23から出力する。これにより、映像信号源20側での配置位置検出処理が終了する。
【0088】
図11Aおよび図11Bは、配置位置検出処理における各画像表示装置10の動作を示すフローチャートである。
【0089】
配置位置検出処理が開始されると、ステップs11で、演算処理部32は、映像入力部13に表示データが入力されたか否かを判定し、表示データが入力された場合に、ステップs12に進む。
【0090】
ステップs12で、表示データ解析部33は、入力された表示データから解像度を判別し、ステップs13に進む。ステップs13で、演算処理部32は、入力された表示データを記憶部16に格納するとともに、表示駆動部12へ出力して表示画面10aに表示させ、ステップs14に進む。
【0091】
ステップs14で、演算処理部32は、OSD操作部14を介して、メニュー画面の表示指令が入力されたか否かを判定する。表示指令が入力された場合には、ステップs15に進み、表示指令が入力されていない場合には、表示指令が入力されるまで待機する。
【0092】
ステップs15で、演算処理部32は、メニュー画面に表示されている複数の選択項目のうち、「ID割振りモード」の項目が選択されたか否かを判定する。「ID割振りモード」が選択された場合には、ステップs17に進み、選択されなかった場合には、ステップs16に進む。
【0093】
ステップs16で、演算処理部32は、メニュー画面に表示されている複数の選択項目のうち、「位置検出用画像の切替え確認」の項目が選択されたか否かを判定する。「位置検出用画像の切替え確認」が選択された場合には、ステップs17に進み、選択されなかった場合には、ステップs24に進む。
【0094】
ステップs17で、演算処理部32は、記憶部16にID情報44が既に格納されているか否かに基づいて、自装置に識別情報が既に割り振られているか否かを判定する。識別情報が既に割り振られている場合には、ステップs18に進み、割り振られていない場合には、ステップs19に進む。
【0095】
ステップs18で、演算処理部32のOSD生成部32aは、識別情報が割振り済みであることを示すOSD画面の画像データを生成し、ステップs24に進む。
【0096】
ステップs19で、演算処理部32は、記憶部16に位置検出用画像V1に関する位置検出用情報41が既に格納されているか否かに基づいて、位置検出用画像V1から情報を取得済みか否かを判定する。取得済みでない場合には、ステップs20に進み、取得済みである場合には、ステップs22に進む。
【0097】
ステップs20で、演算処理部32は、位置検出用画像V1の分割画像の表示データに基づいて、縦方向に沿って並ぶ2つの画素の階調値Z1,Z2の情報を取得し、該2つの画素の位置の情報とともに記憶部16に格納して、ステップs21に進む。本実施形態では、前述するように、2つの画素として、画素p1,p2が選択される。
【0098】
ステップs21で、演算処理部32のOSD生成部32aは、位置検出用画像の切替えを要求する旨のOSD画面の画像データを生成し、ステップs24に進む。
【0099】
ステップs22で、演算処理部32のOSD生成部32aは、位置検出用画像の切替えが済んでいるか否かを確認するためのOSD画面の画像データを生成し、ステップs23に進む。
【0100】
ステップs23で、演算処理部32は、ユーザによって、位置検出用画像の切替えが済んでいることを示す入力が行われたか否かを判断し、済んだことを示す入力が行われた場合には、ステップs25に進み、入力されていない場合あるいは済んでいないことを示す入力が行われた場合には、ステップs24に進む。
【0101】
ステップs24で、演算処理部32は、準備されているOSD画面の画像データを表示駆動部12へ出力して表示画面10aに表示させて、ステップs11に戻る。
【0102】
ステップs25で、演算処理部32は、位置検出用画像V2の分割画像の表示データに基づいて、横方向に沿って並ぶ2つの画素の階調値Z3,Z4の情報を取得し、該2つの画素の位置の情報とともに記憶部16に格納して、ステップs26に進む。本実施形態では、前述するように、2つの画素として、画素p1,p3が選択される。
【0103】
ステップs26で、演算処理部32は、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている配置行mを算出する(ただし、M,mは自然数)。
【0104】
具体的には、演算処理部32は、ステップs12で判別された画像表示装置10の解像度のうち縦方向の解像度Yと、ステップs20で取得された2つの画素の階調値Z1,Z2および位置[x0,y0],[x0,y1]と、表示部階調値情報45として予め記憶されている最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminとに基づいて、式(1)により行数Mを算出する。
M={(Kmax−Kmin)/(Z1−Z2)}×{(y1−y0)/Y}
…(1)
【0105】
また、演算処理部32は、式(2)により配置行mを算出する。
m=[1−{Z1/(Kmax−Kmin)}]×M+1 …(2)
【0106】
本実施形態では、行数Mは、全ての画像表示装置10でM=3と算出され、配置行mは、配置位置(1,1),(1,2),(1,3)の各画像表示装置10ではm=1と算出され、配置位置(2,1),(2,2),(2,3)の各画像表示装置10ではm=2と算出され、配置位置(3,1),(3,2),(3,3)の各画像表示装置10ではm=3と算出される。演算処理部32は、式(1),(2)によって行数Mおよび配置行mを算出すると、配列構成情報42および位置情報43として記憶部16に記憶し、ステップs27に進む。
【0107】
ステップs27で、演算処理部32は、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている配置列nを算出する(ただし、N,nは自然数)。
【0108】
具体的には、演算処理部32は、ステップs12で判別された画像表示装置10の解像度のうち横方向の解像度Xと、ステップs25で取得された2つの画素の階調値Z3,Z4および位置[x2,y2],[x3,y2]と、表示部階調値情報45として予め記憶されている最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminとに基づいて、式(3)により列数Nを算出する。
N={(Kmax−Kmin)/(Z3−Z4)}×{(x3−x2)/X}
…(3)
【0109】
また、演算処理部32は、式(4)により配置列nを算出する。
n=[1−{Z3/(Kmax−Kmin)}]×N+1 …(4)
【0110】
本実施形態では、列数Nは、全ての画像表示装置10でN=3と算出され、配置列nは、配置位置(1,1),(2,1),(3,1)の各画像表示装置10ではn=1と算出され、配置位置(1,2),(2,2),(3,2)の各画像表示装置10ではn=2と算出され、配置位置(1,3),(2,3),(3,3)の各画像表示装置10ではn=3と算出される。演算処理部32は、式(3),(4)によって列数Nおよび配置列nを算出すると、配列構成情報42および位置情報43として記憶部16に記憶し、ステップs28に進む。
【0111】
ステップs28で、演算処理部32は、記憶部16に記憶されている行数M、列数N、配置行mおよび配置列nの各情報を読み出して、ステップs29に進む。ステップs29で、演算処理部32は、読み出した各情報に基づいて、識別情報IDを導出する。
【0112】
本実施形態では、演算処理部32は、式(5)により識別情報IDを導出する。
ID=N×(m−1)+n …(5)
【0113】
たとえば配置位置(1,1)の画像表示装置10では、(N,m,n)=(3,1,1)と算出されているので、ID=1が導出される。またたとえば、配置位置(2,3)の画像表示装置10では、(N,m,n)=(3,2,3)と算出されているので、ID=6が導出される。このようにして、識別情報IDが導出されると、ステップs30に進む。
ステップs30で、演算処理部32は、導出した識別情報IDを、ID情報44として記憶部16に記憶し、配置位置検出処理を終了する。
【0114】
図11Aおよび図11Bに示すような配置位置検出処理が各画像表示装置10で実行されることにより、各画像表示装置10に対して、ユニークで、かつ配置位置に関連した識別情報IDを割り振ることができる。なお、本実施形態では、上記の式(5)によって識別情報IDを導出しているが、たとえば、ID=M×(n−1)+mという演算式で導出した場合であっても、各画像表示装置10に対して、ユニークで、かつ配置位置に関連した識別情報IDを割り振ることができる。
【0115】
図12は、配置位置検出処理によって各画像表示装置10に割り振られた識別情報IDを示す図である。本実施形態に係るマルチディスプレイシステム1によれば、別途にカメラなどの装置を設けることなく、簡単な装置構成で、各画像表示装置10に対して、図12に示すような配置位置に関連付けられた識別情報IDを、自動的に割り振ることができる。
【0116】
これにより、マルチディスプレイシステム1において子画面表示を行う際に、識別情報IDに基づいて、コンテンツ製作者が指定する最適な位置に子画面を表示させることができる。
【0117】
また、本実施形態によれば、行数M、列数N、配置行mおよび配置列nの各情報を演算する際に、縦方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1と左下隅の画素p2とを選択するとともに、横方向に沿って並ぶ2つの画素として、表示画面10aにおける左上隅の画素p1と右上隅の画素p3とを選択するように構成されている。2つの画素をこのように選択しているので、行数M、列数N、配置行mおよび配置列nを正確に算出することができる。
【0118】
上記の実施形態では、映像信号源20において2種類の位置検出用画像V1,V2を生成し、位置検出用画像V1に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている配置行mを算出し、位置検出用画像V2に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている配置列nを算出するように構成されていたが、他の実施形態では、一の色(たとえば赤色)のサブピクセルによって、画像の上下方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなグラデーション画像を描画し、他の色(たとえば青色)のサブピクセルによって、画像の左右方向に沿って階調値が一定の割合で変化するようなグラデーション画像を描画した位置検出用画像を生成し、一の色によるグラデーション画像に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における行数M、および自装置が配置されている配置行mを算出し、他の色によるグラデーション画像に基づいて、マルチディスプレイシステム1の配列構成における列数N、および自装置が配置されている配置列nを算出するように構成されてもよい。この場合には、1種類の位置検出用画像によって行数M、列数N、配置行mおよび配置列nを算出することができるので、位置検出用画像の切替えが不要となり、ユーザによる入力操作を省略することができる。
【0119】
また、上記の実施形態では、映像信号源20において生成される位置検出用画像V1,V2の階調値の上限および下限は、画像表示装置10における最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminに基づいて決定されていたが、他の実施形態では、画像表示装置10における最大階調値Kmaxおよび最小階調値Kminに制限されることなく、位置検出用画像における階調値の上限および下限を、画像表示装置10の解像度やマルチディスプレイシステム1の配列構成に応じて、適宜決定するように構成してもよい。
【0120】
この場合、行数M、列数N、配置行mおよび配置列nの算出過程において、(Kmax−Kmin)に替えて、位置検出用画像における階調値の上限値と下限値との差分が用いる必要が生じてしまう。そこで、この階調値の上限値と下限値とを画像表示装置10に認識させるために、位置検出に使用されていない色(たとえば緑色)のサブピクセルに、階調値の上限値と下限値とを埋め込んでもよい。たとえば、緑色のサブピクセルを用いて、100×100ピクセル程度で、階調値の上限値と下限値とを交互に千鳥配置するなどし、この緑色のサブピクセルの階調値を取得することにより、階調値の上限値と下限値とを認識させてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 マルチディスプレイシステム
1a マルチ画面
10 画像表示装置
11 表示部
12 表示駆動部
13 映像入力部
14 OSD操作部
15 制御部
16 記憶部
20 映像信号源
32 演算処理部
33 表示データ解析部
34 表示データ出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ表示画面を有し、互いに直交する縦方向および横方向に沿ってマトリクス状に配列された複数の画像表示装置と、
各表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像の画像情報を、各画像表示装置に出力する画像出力部とを含むマルチディスプレイシステムであって、
前記画像出力部は、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像を前記マルチ画面に表示させるための画像情報を生成して、該画像情報を各画像表示装置に出力し、
各画像表示装置は、前記画像出力部から受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出することを特徴とするマルチディスプレイシステム。
【請求項2】
前記予め定める表示位置は、複数箇所であり、
各画像表示装置は、各表示位置における階調値の差に基づいて、マルチディスプレイシステムにおける画像表示装置の配列構成を算出することを特徴とする請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項3】
前記画像出力部は、互いに異なる複数のグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記複数の画像情報に基づいて、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする請求項1または2記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項4】
前記画像出力部は、階調値が変化する方向を色ごとに異ならせたグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記画像情報に基づいて、前記予め定める表示位置における色ごとの階調値を取得することによって、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする請求項1または2記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項5】
互いに直交する縦方向および横方向に沿って、複数の画像表示装置をマトリクス状に配列して構築されるマルチディスプレイシステムにおける各画像表示装置の配置位置検出方法であって、
各画像表示装置の表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像であって、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像の画像情報を生成する生成工程と、
生成された画像情報を各画像表示装置へ出力する出力工程と、
各画像表示装置が、受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出する識別情報導出工程とを含むことを特徴とする配置位置検出方法。
【請求項1】
それぞれ表示画面を有し、互いに直交する縦方向および横方向に沿ってマトリクス状に配列された複数の画像表示装置と、
各表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像の画像情報を、各画像表示装置に出力する画像出力部とを含むマルチディスプレイシステムであって、
前記画像出力部は、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像を前記マルチ画面に表示させるための画像情報を生成して、該画像情報を各画像表示装置に出力し、
各画像表示装置は、前記画像出力部から受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出することを特徴とするマルチディスプレイシステム。
【請求項2】
前記予め定める表示位置は、複数箇所であり、
各画像表示装置は、各表示位置における階調値の差に基づいて、マルチディスプレイシステムにおける画像表示装置の配列構成を算出することを特徴とする請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項3】
前記画像出力部は、互いに異なる複数のグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記複数の画像情報に基づいて、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする請求項1または2記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項4】
前記画像出力部は、階調値が変化する方向を色ごとに異ならせたグラデーション画像の画像情報を生成し、
各画像表示装置は、前記画像情報に基づいて、前記予め定める表示位置における色ごとの階調値を取得することによって、自装置の縦方向および横方向における配置位置を認識することを特徴とする請求項1または2記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項5】
互いに直交する縦方向および横方向に沿って、複数の画像表示装置をマトリクス状に配列して構築されるマルチディスプレイシステムにおける各画像表示装置の配置位置検出方法であって、
各画像表示装置の表示画面により構成されるマルチ画面に表示させる画像であって、階調値が一定の割合で変化するグラデーション画像の画像情報を生成する生成工程と、
生成された画像情報を各画像表示装置へ出力する出力工程と、
各画像表示装置が、受信した画像情報に基づいて、自装置の表示画面上での予め定める表示位置における階調値を取得し、取得した階調値に基づいて、自装置の配置位置を認識し、認識した配置位置に関連した識別情報を導出する識別情報導出工程とを含むことを特徴とする配置位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−64802(P2013−64802A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202421(P2011−202421)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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