説明

マルチトランスデューサ

【課題】入力変換部の種類によらず、入力変換部に異常があるかを判定し、異常があると判定された場合に、ユーザにその判定結果を報知する。
【解決手段】
入力端子11aから取り込まれた信号を入力変換部Aで所定の電圧範囲の電圧信号に変換し、所定の電圧範囲に変換される前段階の信号である前段信号とともに、それぞれ出力端子21a、22aから処理部30に出力する。選択部31で電圧信号および前段信号を選択的に取り出す。チェック変換部32は、入力変換部Aの種類、つまり電圧信号に対応した回路に変更し、前段信号をチェック変換部32で所定の電圧範囲であるチェック用信号に変換する。電圧信号およびチェック用信号は、A/D変換部33でディジタル変換され、CPU部35で差が検出され、その差が所定値以上である場合、入力変換部Aに異常があると判定され、伝送信号による報知および表示部37にその異常が報知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、設備または装置からの信号を処理して遠隔監視所に伝送するマルチトランスデューサに関する。
【0002】
詳しくは、この発明は、所定の入力変換部に係る出力電圧信号およびその前段階にある前段信号を選択的に取り出し、前段信号を所定の入力変換部の種類に応じて変更された回路でチェック用信号に変更し、出力電圧信号とこのチェック用信号に基づいて、所定の入力変換部に異常があるか否かを判定して異常を報知することによって、所定の入力変換部に異常があることをユーザに知らせ、異常がある入力変換部の交換をユーザに促すようにしたマルチトランスデューサに係るものである。
【背景技術】
【0003】
従来、マルチトランスデューサは入力変換部と処理部とが一体となっていたため、入力変換部だけに異常が生じた場合でも、全体を取り換えなければならなかった。これにより、入力変換部を処理部から独立した基板構成とすることが考えられ、入力変換部に異常が生じた場合でも、入力変換部だけを取り換えることが可能となる。
【0004】
このように、入力変換部が独立したマルチトランスデューサにあっては、入力変換部に異常が発生した場合に、それをユーザに知らせるようにすれば、異常がある入力変換部の交換をスムーズに行うことができるので便利である。
【0005】
そこで、従来、入力信号を、入力変換部(入力回路)に設けたアナログフィルタにかける際に、このアナログフィルタの特性変化に異常がないかを判定するための、特性変化検出器が提案されている(特許文献1参照)。この特性変化検出器は、入力変換部に設けたアナログフィルタから出力される信号値と、同一特性を有している基準アナログフィルタから出力される信号値との比較を行って、アナログフィルタの異常を判定するものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−328145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の発明では、上述したように、各入力変換部はいずれも同一特性のアナログフィルタで構成されており、異常を検出するための基準アナログフィルタは常に同じものが使用されていた。このため、入力信号の種類が異なり、これに伴って入力変換部の種類が異なるような場合には、対応することができなかった。
【0008】
また、入力変換部の種類が異なる場合に、基準アナログフィルタから入力変換部の種類に対応した別の回路に変更して異常を検出する技術については何ら示唆されていなかった。
【0009】
この発明の目的は、入力信号を変換する入力変換部の種類によらずその異常を良好に検出してユーザに知らせ、入力変換部の交換の便宜に資することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の概念は、
設備または装置からの信号を所定の電圧範囲の電圧信号に変換して出力する入力変換部と、
上記入力変換部から出力される上記電圧信号に所定の処理を行って計測値を得る処理部と、
上記処理部で得られた上記計測値を伝送する伝送部とを備えたマルチトランスデューサであって、
種類を異にする入力変換部を含む複数個の上記入力変換部のうち所定の入力変換部から出力される上記電圧信号、および該電圧信号の前段階にある前段信号を選択的に取り出す信号選択部と、
上記所定の入力変換部の種類に応じた回路に変更して、上記信号選択部で取り出された上記前段信号を、上記信号選択部で取り出された上記電圧信号に対応したチェック用信号に変換して出力するチェック変換部と、
上記チェック変換部から出力される上記チェック用信号および上記信号選択部で取り出された上記電圧信号に基づいて、上記所定の入力変換部に異常があるか否かを判定する異常判定部と、
上記異常判定部の判定結果を報知する報知部とを有する
ことを特徴とするマルチトランスデューサにある。
【0011】
この発明において、マルチトランスデューサは、種類を異にする入力変換部を含む複数個の入力変換部を有している。これらの入力変換部は、それぞれ、例えば、処理部から独立した基板となっており、設備または装置から出力されるアナログ信号、例えば、電流信号や電圧信号が取り込まれる。
【0012】
入力変換部によって取り込まれた入力信号は、例えば、入力変換部に設けられたフィルタ回路やレベル変換回路等によって所定の電圧範囲の電圧信号に変換されて出力される。所定の電圧範囲とは、例えば、アナログ/ディジタル変換を行うための電圧範囲である。1つまたは複数の入力変換部から出力される電圧信号に対して、処理部によって所定の処理、例えば、アナログ/ディジタル変換や、所定項目の演算処理等が行われた結果、伝送信号が得られる。伝送信号は、所定箇所、例えば複数のマルチトランスデューサから演算結果を収集する遠隔監視所に伝送される。
【0013】
また、入力変換部では、上述した、信号を所定の電圧範囲の電圧信号に変換するための、フィルタ回路、レベル変換回路等を通らず、電圧信号の前段階にあり、所定の電圧範囲に変換されていない前段信号が出力される。
【0014】
また、入力変換部は、入力変換部の種類を特定するための識別情報を記憶する識別情報記憶部を有していてもよい。ここで、入力変換部の種類は、その入力変換部が取り込むアナログ信号の種類(電圧信号、電流信号等)に対応している。
【0015】
複数個の入力変換部のうち所定の入力変換部に係る電圧信号および前段信号が信号選択部において選択的に取り出されて、この所定の入力変換部の異常判定に用いられる。
【0016】
また、チェック変換部は所定の入力変換部の種類に応じた回路に変更される。この回路の変更は、例えば、識別情報記憶部で記憶される識別情報に基づいて変更される。前段信号は、このチェック変換部の回路を通って、例えば、フィルタ回路、レベル回路等を通った電圧信号に対応したチェック用信号に変換されて、出力される。
【0017】
信号選択部から出力される電圧信号、およびチェック変換部から出力されるチェック用信号に基づいて、所定の入力変換部に異常があるか否かが判定される。異常の判定は、例えば、電圧信号とチェック用信号との差を検出し、その差が所定値以上であるか否かで決められ、報知部で、異常判定の判定結果が報知される。
【0018】
報知部は、例えば、発光素子で構成され、どの入力変換部に異常があるのかがわかりやすく表示される。また、伝送部から遠隔監視所に伝送する伝送信号に、入力変換部の異常を示す情報を設け、遠隔監視所に異常を報知することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、所定の入力変換部に係る出力電圧信号およびその前段階にある前段信号を選択的に取り出し、前段信号を所定の入力変換部の種類に応じて変更された回路でチェック用信号に変更し、出力電圧信号とこのチェック用信号に基づいて、所定の入力変換部に異常があるか否かを判定して異常を報知するものであり、所定の入力変換部に異常があることをユーザに知らせ、異常がある入力変換部の交換をユーザに促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、マルチトランスデューサ100の構成を示す図である。図1に示すように、マルチトランスデューサ100は、入力変換部A〜Gと、処理部30とからなる。
【0022】
入力変換部A〜Gはそれぞれ処理部30から独立した基板に形成されており、それぞれ、被取り込み箇所である設備または装置からの、アナログ信号を取り込む入力端子11a〜11gを有している。
【0023】
入力変換部A〜Gは、入力端子11a〜11gで取り込んだアナログ信号を所定の電圧範囲内の電圧信号に変換する。
【0024】
以下、図2〜図5の図面を参照しながら、入力変換部A〜Gとして用いられる入力変換部の構成例を説明する。
【0025】
図2は、取り込まれる信号が電圧信号である場合の入力変換部Aの構成を示す図である。
【0026】
入力変換部Aは、図2に示すように、上述した入力端子11aに加えて、出力端子21a、22a、23aと、補助PT(Potential Transformer)41と、フィルタ回路42と、レベル変換回路43とを有している。補助PT41とは、計器用変圧器であり、入力端子11aから取り込まれた電圧信号は、補助PT41で電圧値が変換された後、アンチエイリアスフィルタであるフィルタ回路42にてフィルタリングされ、後述するA/D変換部33でディジタル変換を行うために、レベル変換回路43でA/D変換用の信号レベル(最大±5V)に変換される。これらを通った電圧信号は、出力端子21aから出力された後、処理部30の入力端子24aに入力される。
【0027】
また、入力端子11aから取り込まれた電圧信号は、補助PT41で電圧値が変換された後、フィルタ回路42およびレベル変換回路43からなる回路系に異常があるかをチェックするために、フィルタ回路42およびレベル変換回路43を通すことなく、前段信号として出力端子22aから出力された後、処理部30の入力端子25aに入力される。
【0028】
また、入力変換部Aは、識別情報記憶部44を有している。この識別情報記憶部44は、例えば、メモリあるいはスイッチで構成されており、入力変換部Aの種類を特定するための識別情報を記憶している。この入力変換部Aの識別情報は、この入力変換部Aが取り込むアナログ信号の種類に対応している。この識別情報記憶部44に記憶されている識別情報は、出力端子23aから出力された後、処理部30の入力端子26aに入力される。
【0029】
このように入力変換部Aに識別情報記憶部を設けることで、入力変換部Aが無作為に取り付けられるようなマルチトランスデューサであっても、入力変換部Aが取り付けられれば、識別情報記憶部44に記憶されている識別情報に基づいて、入力変換部Aであること、および入力変換部Aが取り込む信号の種類(この場合、電圧信号であること)が即座にCPU部35で特定される。
【0030】
図3は、取り込まれる信号が電流信号である場合の入力変換部Bの構成を示す図である。
【0031】
入力変換部Bは、図3に示すように、上述した入力端子11bに加えて、出力端子21b、22b、23bと、補助CT(Current Transformer)51と、電圧変換回路52と、フィルタ回路53と、レベル変換回路54とを有している。
【0032】
補助CT51とは、変流器であり、入力端子11bから取り込まれた電流信号は補助CT51で電流値が変換された後、電圧変換回路52で電圧信号に変換され、図2の場合と同様に、アンチエイリアスフィルタであるフィルタ回路53にてフィルタリングされ、レベル変換回路54で、A/D変換部33で変換するための、A/D変換用の信号レベル(最大±5V)に変換される。変換された電圧信号は、出力端子21bから出力された後、処理部30の入力端子24bに入力される。
【0033】
また、入力端子11bから取り込まれ、補助CT51を通った電流信号は、電圧変換回路52で電圧信号に変換され、フィルタ回路53およびレベル変換回路54からなる回路系に異常があるかをチェックするために、フィルタ回路53およびレベル変換回路54を通すことなく、前段信号として出力端子22bから出力された後、処理部30の入力端子25bに入力される。
【0034】
また、入力変換部Bは、入力変換部Aの場合と同様に、識別情報記憶部55を有している。この識別情報記憶部55は、例えば、メモリあるいはスイッチで構成されており、入力変換部Bの種類を特定するための識別情報を記憶している。この入力変換部Bの識別情報は、この入力変換部Bが取り込むアナログ信号の種類に対応している。この識別情報記憶部55に記憶されている識別情報は、出力端子23bから出力された後、処理部30の入力端子26bに入力される。
【0035】
図4は、取り込まれる信号が直流電流信号(DC4−20mA)である場合の入力変換部Cの構成を示す図である。
【0036】
入力変換部Cは、図4に示すように、上述した入力端子11cに加えて、出力端子21c、22c、23cと、電圧変換回路61と、絶縁アンプ62と、フィルタ回路63とを有している。入力端子11cから取り込まれた直流電流信号は、電圧変換回路61で直流電流信号からのA/D変換用の信号レベルである0〜5Vの直流電圧信号に変換された後、絶縁アンプ62で絶縁され、さらにフィルタ回路63にて交流成分が除去される。これらを通った電圧信号は、出力端子21cから出力された後、処理部30の入力端子24cに入力される。
【0037】
また、入力端子11cから取り込まれた信号は、電圧変換回路61で電圧に変換され、絶縁アンプ62で絶縁された後、フィルタ回路63に異常があるかをチェックするために、フィルタ回路63を通すことなく、前段信号として出力端子22cから出力された後、処理部30の入力端子25cに入力される。
【0038】
また、入力変換部Cは、上述した入力変換部A、Bと同様に、識別情報記憶部64を有している。この識別情報記憶部64は、例えばメモリあるいはスイッチで構成されており、入力変換部Cの種類を特定するための識別情報を記憶している。この入力変換部Cの識別情報は、この入力変換部Cが取り込むアナログ信号の種類に対応している。この識別情報記憶部64に記憶されている識別情報は、出力端子23cから出力された後、処理部30の入力端子26cに入力される。
【0039】
図5は、入力変換部Dの外部に温度センサ80が取り付けられた入力変換部Dの構成を示す図である。
【0040】
入力変換部Dは、図5に示すように、入力変換部Dの外部に取り付けられた温度センサ80と、上述した入力端子11dに加えて、出力端子21d、22d、23dと、電圧変換回路71と、絶縁アンプ72と、フィルタ回路73とを有している。
【0041】
外部に取り付けられた温度センサ80は、例えば、サーミスタである。温度センサ80から検出される温度検出信号(抵抗値)は、入力端子11dで取り込まれる。取り込まれた温度検出信号は、電圧変換回路71でA/D変換用の信号レベルである、0〜5Vの直流電圧信号に変換された後、絶縁アンプ72で絶縁され、さらにフィルタ回路73にて交流成分が除去される。これらを通った電圧信号は、出力端子21dから出力された後、処理部30の入力端子24dに入力される。
【0042】
また、入力端子11dから取り込まれた信号は、電圧変換回路71で電圧に変換され、絶縁アンプ72で絶縁された後、フィルタ回路73に異常があるかをチェックするために、フィルタ回路73を通すことなく、前段信号として出力端子22dから出力された後、処理部30の入力端子25dに入力される。
【0043】
また、入力変換部Dは、上述した入力変換部A、B、Cと同様に、識別情報記憶部74を有している。この識別情報記憶部74は、例えば、メモリあるいはスイッチで構成されており、入力変換部Dの種類を特定するための識別情報を記憶している。この入力変換部Dの識別情報は、この入力変換部Dが取り込むアナログ信号の種類に対応している。この識別情報記憶部74に記憶されている識別情報は、出力端子23dから出力される。出力された識別情報は、処理部30の入力信号26dに入力される。
【0044】
また、図1に示すその他の入力変換部E〜Gも、それぞれ、電圧信号を出力するための出力端子21e〜21g、所定の電圧範囲に変換されていない電圧信号(前段信号)を出力するための出力端子22e〜22g、識別情報を出力するための出力端子23e〜23gを有する。
【0045】
出力端子21e〜21gから出力された所定範囲の電圧信号は、図2〜図5を用いて説明した入力変換部A〜Dと同様に、それぞれ処理部30の入力端子24e〜24gに入力され、出力端子22e〜22gから出力された前段信号は、それぞれ処理部30の入力端子25e〜25gに入力され、出力端子23e〜23gから出力された識別情報は、それぞれ処理部30の入力端子26e〜26gに入力される。
【0046】
ちなみに、図1では、入力変換部A〜Gの全てが処理部30に接続されているが、実際には、遠隔監視所200に伝送する信号を得るために必要な入力変換部のみを、マルチトランスデューサ100に取り付ければよい。
【0047】
次に、図1を用いて処理部30の構成について説明する。処理部30は、選択部31と、チェック変換部32と、A/D(Analog/Digital)変換部33と、記憶部34と、CPU(Central Processing Unit)部35と、伝送部36と、表示部37とからなる。
【0048】
入力変換部A〜Gの出力端子21a〜21gから出力された電圧信号および入力変換部A〜Gの出力端子22a〜22gから出力された前段信号は、それぞれ、入力端子24a〜24gおよび入力端子25a〜25gから処理部30に取り込まれ、選択部31に供給される。
【0049】
また、入力変換部A〜Gの出力端子23a〜23gから出力された識別情報は、入力端子26a〜26gから処理部30に取り込まれ、CPU部35に供給される。
【0050】
選択部31は、例えばマルチプレクサである。また、選択部31は信号選択部を構成している。選択部31では、例えば、入力端子24a〜24g、入力端子25a〜25gから取り込まれた多数の電圧信号、前段信号の中から、所定の入力変換部に係る電圧信号および前段信号が選択的に取り出される。選択部31で取り出された電圧信号は、A/D変換部33へと送られる。
【0051】
このように、選択部31を設けることによって、複数の電圧信号を順次切り替えて、A/D変換部33でA/D変換を行うことにより、A/D変換部33を複数設ける必要がなく、複数の電圧信号のサンプリングを低コストで行うことができる。
【0052】
選択部31からA/D変換部33へ送られてくる電圧信号は、A/D変換部33において、ディジタルデータに変換された後にCPU部35に供給される。
【0053】
CPU部35は、記憶部34に記憶されている、いかなる位置の入力変換部からの出力電圧信号を用いて、いかなる処理を行って、いかなる計測値を得るかという情報に基づいて、所定の入力変換部からの電圧信号を用いて演算処理を行う。この情報の記憶は、例えば、入力変換部を処理部30に取り付ける際に、予めユーザの操作により行われる(操作部は図示せず)。
【0054】
CPU部35で算出された計測値は、読み出し可能な記憶部34に記憶される。また、例えば、所定時間毎に送られてくる遠隔監視所200からの読み出し要求に応じて、伝送信号として、伝送部36で、出力端子27から出力され、伝送線を介して遠隔監視所200に伝送される。
【0055】
このようにして、入力変換部A〜Gで所定の電圧範囲の電圧信号に変換された電圧信号は、演算処理に用いられ、これらに基づいて計測値が算出されるので、例えば、入力変換部Aに設けられたフィルタ回路42またはレベル変換回路43、つまり入力変換部Aに異常がある場合は、入力変換部Aからの電圧信号を用いて演算処理を行ったとき、算出された計測値が大幅に変動するおそれがある。そこで、入力変換部Aに異常があるかを点検し、異常があると判定した場合に、ユーザに報知し、その交換を促すことが望まれる。
【0056】
チェック変換部32は、選択部31で取り出された所定の入力変換部からの前段信号を、所定の入力変換部からの電圧信号に対応したチェック用信号に変換する。この場合、チェック変換部32の回路は、CPU部35の制御のもと、所定の入力変換部の識別情報に基づいて変更される。例えば、所定の入力変換部が入力変換部Aであるときは、フィルタ回路42、レベル変換回路43に相当する回路系に変更される。
【0057】
また、例えば、所定の入力変換部が入力変換部Cであるときは、フィルタ回路63に相当する回路系に変更される。このチェック変換部32からのチェック用信号は、A/D変換部33でディジタル信号に変換された後に、CPU部35に供給される。CPU部35は、所定の入力変換部に係る電圧信号、およびチェック用信号に基づいて、この所定の入力変換部に異常があるか否かを判定する。
【0058】
以下、入力変換部Aに異常があるか否かを判定し、異常があると判定する場合に、遠隔監視所200および付近のユーザに報知を行う場合のCPU部35の動作について説明する。
【0059】
図6は、入力変換部Aの異常を判定する際のCPU部35の動作を示すフローチャートである。以下、図6のフローチャートを用いて、CPU部35の動作について説明する。
【0060】
まず、CPU部35は、ステップST1で、選択部31を入力変換部Aに係る電圧信号および前段信号を取り出す状態として動作を開始する。
【0061】
ステップST2では、CPU部35は、識別情報記憶部44から出力された識別情報に基づいて、チェック変換部32の回路を、フィルタ回路42、レベル変換回路43に相当する回路系に変更する。
【0062】
これにより、選択部31で取り出された前段信号は、チェック変換部32において、入力変換部Aで変換された電圧信号と同じ電圧範囲であるチェック用信号に変換される。
【0063】
次に、CPU部35は、ステップST3で、A/D変換部33でディジタル変換されたチェック用信号と、同じくA/D変換部33でディジタル変換された電圧信号との差を検出する。そして、ステップST4において、CPU部35は、これらから検出される差が所定値以上であるかを判定する。
【0064】
CPU部35は、ステップST4で、ステップST3で検出された差が所定値以上ではないと判定する場合は、ステップST6で、入力変換部Aに異常がないと判定する。この後、ステップST9で、CPU部35は一連の動作を終了する。
【0065】
逆に、CPU部35は、ステップST4で、ステップST3で検出された差が所定値以上であると判定する場合は、ステップST5で入力変換部Aに異常があると判定し、ステップST7で、異常が発生した入力変換部を特定できる情報、および異常があることを検出した時刻を異常情報として、記憶部34に記憶する。
【0066】
なお、ステップST5およびステップST6のCPU部35の動作により、このCPU部35は異常判定部を構成している。
【0067】
次に、CPU部35は、ステップST8で、入力変換部Aに異常が生じたことを報知する。遠隔監視所200への報知は、例えば、遠隔監視所200から所定時間毎に送られてくる読み出し要求時に、その異常情報を伝送し報知する。また、付近のユーザには、例えば、異常が検出された入力変換部をユーザが容易に知ることができるように、表示部37に表示をする。このとき、表示部37は報知部を構成している。CPU部35は、ステップST8で遠隔監視所200への報知および表示部37に表示をした後、ステップST9で一連の動作を終了する。
【0068】
なお、詳細説明は省略するが、他の入力変換部B〜Gの異常判定も同様に行われる。
【0069】
図7は、ステップST8で、CPU部35が表示部37に入力変換部A〜Gの状態を表示するときの、表示例を示した図である。
【0070】
表示部37は、マルチトランスデューサ100の筐体(図示せず)の、ユーザの目に入りやすい位置に設けられている。表示部37は、入力位置(a)〜(g)が縦に並べられ、その横には、LED(Light Emitting Diode)等で構成されたライトが取り付けられている。ここで、入力位置の(a)〜(g)は、それぞれ処理部30の入力端子(24a、25a、26a)〜(24g、25g、26g)の位置を示している。
【0071】
ライトが点滅している場合はその左に書かれた位置に接続された入力変換部が異常であることを示す。ライトが点灯している場合はその左に書かれた位置に接続された入力変換部が正常であることを示す。また、ライトが消灯している場合は、その左に書かれた位置に入力変換部が接続されていないか、接続されている入力変換部に電源が入っていないことを示す。
【0072】
図7に示すように、入力位置(a)および入力位置(c)のライトは点滅しているので、そこに接続されている入力変換部に異常があり、故障している可能性があることを示している。また、入力位置(b)および入力位置(d)のライトは点灯しているので、そこに接続されている入力変換部は正常に動作していることがわかる。さらに、入力位置(e)〜(g)のライトはいずれも消灯の状態なので、入力変換部がその箇所に接続されていないか、そこに接続されている入力変換部の電源が切られていることがわかる。
【0073】
このように、入力位置(a)〜(g)のいずれかに接続されている入力変換部に異常がある場合、異常がある入力変換部の接続位置の横に取り付けられたランプが点滅することで、異常が生じている入力変換部をユーザに容易に知らせることができる。
【0074】
また、ユーザは報知内容を確認することで、迅速に入力変換部の異常を対処することができる。例えば、図1に示すように、入力変換部A〜Gが処理部30から独立した構成である場合は、異常がある入力変換部だけを取り換えればよい。
【0075】
なお、上述の実施の形態においては、表示部37で、ライトを点滅、点灯、消灯させることによって、入力位置(a)〜(g)に接続される入力変換部の状態を表すようにしたが、ライトの色を変えるようにしてもよい。
【0076】
例えば、赤色、緑色、黄色のライトをそれぞれ入力位置(a)〜(g)の横に取り付け、赤色のライトが点灯しているときは、その位置に接続される入力変換部に異常があることを示し、緑色のライトが点灯しているときは、その位置に接続された入力変換部が正常に動作していることを示し、黄色のライトが点灯している場合は、その位置に入力変換部が接続されていないか、その位置に接続された入力変換部に電源が入っていないことを示す。
【0077】
また、上述の実施の形態においては、ユーザに報知をする方法として、表示部37で表示をするようにしたがマルチトランスデューサ100にスピーカを取り付けて、音声で報知をするようにしてもよい。音声で報知をする場合は、「入力位置(a)に接続された入力変換部で異常が発生しています。点検して下さい。」等、具体的にどの入力変換部に異常があるのかが、わかりやすくユーザに伝えられる。
【0078】
このように、音声で入力変換部の異常が報知されることによって、ユーザがマルチトランスデューサ100の付近にいない場合でも、入力変換部に異常があることを知らせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明は、入力変換部に異常が生じているかを判定し、異常があると判定した場合にユーザに報知するものであり、例えば、設備または装置からの信号を処理して遠隔監視所に伝送するマルチトランスデューサに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施の形態としてのマルチトランスデューサの構成を示す図である。
【図2】電圧信号に対応した入力変換部Aの構成を示す図である。
【図3】電流信号に対応した入力変換部Bの構成を示す図である。
【図4】直流電流信号に対応した入力変換部Cの構成を示す図である。
【図5】温度検出信号に対応した入力変換部Dの構成を示す図である。
【図6】入力変換部に異常があるかを判定する場合のCPU部の動作を示すフローチャートである。
【図7】入力変換部の状態を表示した表示例である。
【符号の説明】
【0081】
A〜G…入力変換部、11a〜11g,24a〜24g,25a〜25g,26a〜26g…入力端子、21a〜21g,22a〜22g,23a〜23g,27…出力端子、30…処理部、31…選択部、32…チェック変換部、33…A/D変換部、34…記憶部、35…CPU部、36…伝送部、37…表示部、41…補助PT、42,53,63,73…フィルタ回路、43,54…レベル変換回路、44,55,64,74…識別情報記憶部、51…補助CT、52,61,71…電圧変換回路、62,72…絶縁アンプ、80…温度センサ、100…マルチトランスデューサ、200…遠隔監視所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備または装置からの信号を所定の電圧範囲の電圧信号に変換して出力する入力変換部と、
上記入力変換部から出力される上記電圧信号に所定の処理を行って計測値を得る処理部と、
上記処理部で得られた上記計測値を伝送する伝送部とを備えたマルチトランスデューサであって、
種類を異にする入力変換部を含む複数個の上記入力変換部のうち所定の入力変換部から出力される上記電圧信号、および該電圧信号の前段階にある前段信号を選択的に取り出す信号選択部と、
上記所定の入力変換部の種類に応じた回路に変更して、上記信号選択部で取り出された上記前段信号を、上記信号選択部で取り出された上記電圧信号に対応したチェック用信号に変換して出力するチェック変換部と、
上記チェック変換部から出力される上記チェック用信号および上記信号選択部で取り出された上記電圧信号に基づいて、上記所定の入力変換部に異常があるか否かを判定する異常判定部と、
上記異常判定部の判定結果を報知する報知部とを有する
ことを特徴とするマルチトランスデューサ。
【請求項2】
上記入力変換部は、該入力変換部の種類を特定するための識別情報を記憶する識別情報記憶部をさらに有し、
上記チェック変換部は、上記識別情報記憶部が記憶する上記識別情報に基づいて上記前段信号を上記チェック用信号に変換するための回路を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチトランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−207035(P2007−207035A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26167(P2006−26167)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000211293)中国電機製造株式会社 (69)
【Fターム(参考)】