マルチパス低減装置
【課題】製造コストを抑制してマルチパスを効果的に低減し得るマルチパス低減装置を提供する。
【解決手段】略長手方向Lに対向して相互に電波を送受信する子局5および携帯電話4を長手方向Lの周りで少なくとも一部分覆い、長手方向Lに延在する内表面17が存在し、内表面17の内側に、長手方向Lに交差する交差方向に突出し、かつ、長手方向Lの周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体15を、子局5および携帯電話4の間の電波の内、少なくとも内表面17に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように長手方向Lに間隔をあけて設置されている。
【解決手段】略長手方向Lに対向して相互に電波を送受信する子局5および携帯電話4を長手方向Lの周りで少なくとも一部分覆い、長手方向Lに延在する内表面17が存在し、内表面17の内側に、長手方向Lに交差する交差方向に突出し、かつ、長手方向Lの周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体15を、子局5および携帯電話4の間の電波の内、少なくとも内表面17に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように長手方向Lに間隔をあけて設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチパス低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を利用したレーダ等によるセンシングや無線通信を行う場合、建築物(ビル外壁面やトンネル内壁面等)や地表面等の電波反射体からの反射波が直接波に干渉すること、すなわち、マルチパス(多重波伝送路)が形成されることで通信及びセンシングの品質が悪化する。
この品質劣化は、センシング機器や無線通信機器の位置や方向の変化に伴って電波の反射位置(電波品質の劣化に最も寄与する一次反射波を発生する電波反射体の位置)が変化するために発生する。
従来、このマルチパスを低減させるために、一般的に、たとえば、特許文献1に示されるように電波反射体全域に亘り平面的に電波吸収体を貼り付けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−218581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示されるもののように電波反射体全域に亘り平面的に電波吸収体を貼り付けるものでは、建築物や地表面の面積が広い場合にはコストインパクトが問題となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、製造コストを抑制してマルチパスを効果的に低減し得るマルチパス低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、略一方向に対向して相互に電波を送受信する第一送受信部および第二送受信部を前記一方向の周りで少なくとも一部分覆い、前記一方向に延在する壁面が存在し、該壁面の内側に、前記一方向に交差する交差方向に突出し、かつ、前記一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体を、前記第一送受信部および前記第二送受信部の間の電波の内、少なくとも前記壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように前記一方向に間隔をあけて設置されているマルチパス低減装置である。
【0007】
第一送受信部および第二送受信部間を伝搬される電波は、直接伝搬される直接波と壁面に反射されて伝搬される反射波とに分かれる。本態様では、複数の周方向電波吸収体が、第一送受信部および第二送受信部の間の電波の内、少なくとも壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波へ強く影響する一次反射波が第一送受信部あるいは第二送受信部に伝搬されるのを防止することができる。また、強度が弱く直接波への影響が少ない2次以降の反射波の一部も第一送受信部あるいは第二送受信部へ伝搬されるのを抑制できる。
このように、特に、影響の大きい一次反射波が第一送受信部あるいは第二送受信部に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0008】
このとき、壁面の内側から一方向に交差する交差方向に、言い換えると、直接波に向って突出し、かつ、一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の電波吸収体は一方向に間隔をあけて設置されているので、電波吸収面を有さない壁面(凹)に一方向に間隔をあけて電波吸収面を有する周方向電波吸収体(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面を有する周方向電波吸収体が一方向に間隔をあけて設置されているので、電波吸収面が壁面の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面の面積を小さくすることができる。これにより、製造コストの増加を抑制することができる。
【0009】
なお、「一次反射波の見通しを遮る」とは、第一送受信部および第二送受信部間を伝搬される電波の内、壁面に一回反射する電波が、いずれかの電波吸収面に当接することを意味している。このために、周方向電波吸収体の突出量、言い換えると高さと、周方向電波吸収体同士の間隔と、が調節される。
また、周方向電波吸収体は一方向に直交する方向に延在するようにしてもよいし、傾斜されるようにしてもよい。
本態様における「送受信部」とは、電波を送信するもの、電波を受信するもの、電波を送受信するもの、電波を受けて反射するもの、を意味している。
【0010】
前記態様では、前記壁面には、前記一方向に交差する交差方向に延在し、かつ、前記一方向に延在する電波吸収面を有する一方向電波吸収体が少なくとも1個設置されているのが好適である。
【0011】
このように、壁面に一方向に延在する電波吸収面を有する一方向電波吸収体が少なくとも1個設置されるので、壁面に形成される凹凸がより多く形成されることになる。したがって、反射波の見通しをより確実に遮断することができる。
【0012】
前記態様では、前記第二送受信部は、略前記一方向に移動可能とされ、前記周方向電波吸収体は前記第一送受信部に近いものほど前記交差方向の高さが高く、あるいは、隣り合う前記周方向電波吸収体間の間隔が狭く配置されていてもよい。
【0013】
第二送受信部が第一送受信部に近づくと、たとえば、第二送受信部から壁面に反射して第一送受信部へ伝搬する電波の反射角が大きくなる。周方向電波吸収体は第一送受信部に近いものほど交差方向の高さが高く、あるいは、隣り合う周方向電波吸収体間の間隔が狭く配置されているので、周方向電波吸収体は反射角が大きな電波を確実に遮ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、壁面の内側に、一方向に交差する交差方向に突出し、かつ、一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体を、第一送受信部および第二送受信部の間の電波の内、少なくとも壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように一方向に間隔をあけて設置されているので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。また、電波吸収面が壁面の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面の面積を小さくすることができ、製造コストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるマルチパス低減装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図2のY−Y断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる電波吸収体の別の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる電波吸収体のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態にかかる周方向電波吸収体の配置例を示す模式図である。
【図7】本発明の第一実施形態にかかる周方向電波吸収体の別の配置例を示す模式図である。
【図8】本発明の第一実施形態にかかるマルチパス低減装置の別の実施態様の概略構成を示す縦断面図である。
【図9】図8のZ−Z断面図である。
【図10】本発明の第二実施形態にかかるマルチパス低減装置の概略構成を示す部分斜視図である。
【図11】本発明の第三実施形態にかかる電波暗室およびマルチパス低減装置の概略構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の第三実施形態にかかるマルチパス装置の別の実施態様の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態にかかるマルチパス低減装置1について、図1〜図3を参照して説明する。このマルチパス低減装置1は、トンネル3内で無線通話を行う無線通信機である、たとえば、携帯電話(第二送受信部)4の通話環境を改善するものに適用されている。
図1は、第一実施形態にかかるマルチパス低減装置1の概略構成を示す縦断面図である。図2は、図1のX−X断面図である。図3は、図2のY−Y断面図である。
【0017】
トンネル3の内部には、長手方向(一方向)Lに間隔をあけて複数の子局(第一送受信部)5が設置されている。トンネル3の外部には、親局9が設置され、親局7および各子局5は直接通信できるように光ファイバ9によって接続されている。
子局5は、トンネル3内の走行路面(壁面)13を走行する自動車11の内部で送受信される携帯電話4と通信するものである。
【0018】
マルチパス低減装置1は、長手方向Lに沿って間隔Sをあけて複数設置された周方向電波吸収体15で構成されている。周方向電波吸収体15は略等間隔に設置されている。
周方向電波吸収体15は、図2に示されるようにトンネル3における側部および上部の内表面(壁面)17に亘って取り付けられている。内表面17は電波を反射する鋼製等通常の材料で構成されている。
周方向電波吸収体15は、略直方体形状をした電波吸収体19がそれらの電波吸収面21が揃うように内表面17に取り付けられ、略ドーム形に形成されている。
【0019】
電波吸収体19の電波吸収面21は、図1および図3に示されるようにトンネル3の長手方向Lに対し略直交する方向(交差方向)に延在するようにされている。言い換えれば、電波吸収面21は、内表面17から高さHだけ走行路面13側に突出するようにされている。電波吸収体19の電波吸収面21は、図3に示されるように平板型の電波吸収材料で形成されている。
したがって、周方向電波吸収体15は、子局5および携帯電話4を結ぶ方向、略長手方向Lの周りである内表面17および走行路面13の少なくとも一部分を覆うように取り付けられている。
【0020】
したがって、複数の周方向電波吸収体15はそれぞれ内表面17の内側から長手方向Lに直交する方向に、言い換えると、直接波R1に向って突出する電波吸収面21を有し、かつ、長手方向Lに間隔Sをあけて設置されているので、電波吸収機能を有さない内表面17(凹)に長手方向Lに間隔をあけて電波吸収面21を有する周方向電波吸収体15(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面21を有する周方向電波吸収体15が長手方向Lに間隔をあけて設置されているので、電波吸収面21が内表面17の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面21の面積を小さくすることができる。これにより、マルチパス低減装置1の製造コストの増加を抑制することができる。
【0021】
各周方向電波吸収体15の高さHおよび間隔Sは、子局5および携帯電話4間を伝搬される電波の内、少なくとも内表面17に一回反射する一次反射電波R2が、電波吸収面21に当接するように設定されている。
なお、電波吸収材料の形状は、平板型に限定されるものではなく、公知の構造をしたものを用いてよい。たとえば、図4に示されるような三角柱型、図5に示されるようなカマボコ断面型、山型、波型、四角錐等の錐体状型、錐台状型等が用いられる。
【0022】
以上のように構成された本実施形態にかかるマルチパス低減装置1の動作について説明する。
自動車11に乗車している人が、携帯電話4をかけると、携帯電話4から呼び出し信号が電波として発信される。この電波は、あらゆる方向へ発信され、一部が子局5へ伝搬される。
このように子局5および携帯電話4間を伝搬される電波は、直接伝搬される直接波R1と内表面17に反射されて伝搬される反射波R2等とに分かれる。
【0023】
本実施形態では、複数の周方向電波吸収体15が、子局5および携帯電話4の間の電波の内、少なくとも内表面17に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波R1へ強く影響する一次反射波R2が子局5あるいは携帯電話4に伝搬されるのを防止することができる。
【0024】
また、強度が弱く直接波R1への影響が少ない2次以降の反射波の一部も子局5あるいは携帯電話4へ伝搬されるのを抑制できる。これらの2次以降の反射波は、たとえ子局5あるいは携帯電話4へ伝搬されても直接波R1に比べて強度がきわめて小さいので、影響が極めて小さい。
このように、特に、影響の大きい一次反射波R2が子局5あるいは携帯電話4に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、周方向電波吸収体15は略等間隔に設置されているが、これに限定されない。
携帯電話4(自動車11)が子局5に近づくと、たとえば、携帯電話4から内表面17に反射して子局5へ伝搬する一次反射波R2の反射角αが図6に示されるように大きくなる。
【0026】
たとえば、図6に示されるように、子局5に近づくほど隣り合う周方向電波吸収体15間の間隔を小さくなるようにしてもよい。
このようにすると、周方向電波吸収体15は反射角αが大きな反射波R2を確実に遮ることができる。
また、隣り合う周方向電波吸収体15間の間隔は子局5から離れると相当大きく設定できるので、マルチパス低減装置1の製造コストの増加をより一層抑制することができる。
【0027】
また、図7に示されるように周方向電波吸収体15は子局5に近いものほど高さHが高くなるようにされてもよい。
このようにすると、周方向電波吸収体15は反射角αが大きな一次反射波R2を確実に遮ることができる。
この場合、高さHを低くすると、設置される間隔Sが小さくなるが、その分各周方向電波吸収体15の電波吸収面21の面積も小さくなるので、マルチパス低減装置1の製造コストの増加をより一層抑制することができる。
【0028】
本実施形態では、トンネル3の内部に、長手方向Lに間隔をあけて複数の子局5が設置され、子局トンネル3の外部に設置された親局7が光ファイバ9によって接続されている方式の通信システムに適用しているが、これに限らない。
たとえば、図8および図9に示されるようにトンネル3内の上部に親局7と接続された漏洩同軸ケーブル23を配設し、漏洩同軸ケーブル23に長手方向Lに間隔をあけて複数のスロット(第一送受信部)25を設けている。携帯電話4との通信は、スロット25を通る電波が漏洩同軸ケーブル23を通って親局7に送受される。
したがって、スロット25が、子局5に対応するものである。
【0029】
マルチパス低減装置1は、本実施形態のものと同様の構成をもつものが備えられているので、ここでは重複した説明を省略する。
マルチパス低減装置1の動作については、前述の本実施形態のものと同様であるので、ここでは重複した説明を省略する。
【0030】
[第二実施形態]
第二実施形態にかかるマルチパス低減装置31について、図10を用いて説明する。
このマルチパス低減装置31は、オープンスペースでのレーダ性能試験あるいは対レーダ性能試験におけるセンシング性能を改善するものに適用されている。
図10は、第二実施形態にかかるマルチパス低減装置31の概略構成を示す部分斜視図である。
【0031】
地表面(壁面)33には、レーダ装置(第一送受信部、第二送受信部)35とたとえば、航空機である測定対象物(第一送受信部、第二送受信部)37とが間隔をあけて設置されている。レーダ装置35と測定対象物37とを結ぶ方向を長手方向Lとする。
レーダ装置35および測定対象物37の一側部には、建築物39が設けられている。建築物39には、長手方向Lに延在する側壁面(壁面)41が設けられている。
【0032】
マルチパス低減装置31は、長手方向Lに沿って間隔Sをあけて複数設置された周方向電波吸収体43で構成されている。周方向電波吸収体43は略等間隔に設置されている。
周方向電波吸収体43は、図10に示されるように側壁面41および地表面33に亘って取り付けられている。側壁面41は電波を反射する鋼製等通常の材料で構成されている。
周方向電波吸収体43は、略直方体形状をした電波吸収体45がそれらの電波吸収面47が揃うように取り付けられ、略L字形状に形成されている。
【0033】
電波吸収体45の電波吸収面47は、第一実施形態の電波吸収面21と同様な構成とされている。電波吸収面47は、長手方向Lに対し略直交する方向(交差方向)に延在するようにされている。言い換えれば、電波吸収面47は、側壁面41および地表面33からレーダ装置35と測定対象物37とを結ぶ線側に高さHだけに突出するようにされている。
したがって、周方向電波吸収体43は、レーダ装置35と測定対象物37とを結ぶ線の周りの少なくとも一部分を覆うように取り付けられている。
【0034】
したがって、複数の周方向電波吸収体43は側壁面41および地表面33(凹)に長手方向Lに間隔をあけて電波吸収面47を有する周方向電波吸収体43(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面47を有する周方向電波吸収体43が長手方向Lに間隔をあけて設置されているので、電波吸収面47が側壁面41および地表面33の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面47の面積を小さくすることができる。これにより、マルチパス低減装置31の製造コストの増加を抑制することができる。
【0035】
各周方向電波吸収体43の高さHおよび間隔Sは、レーダ装置35および測定対象物37間を伝搬される電波の内、少なくとも側壁面41および地表面33に一回反射する一次反射電波R2が、電波吸収面47に当接するように設定されている。
【0036】
以上のように構成された本実施形態にかかるマルチパス低減装置1の動作について説明する。
レーダ装置35から電波を発信すると、電波は、あらゆる方向へ発信され、一部が測定対象物37へ伝搬される。測定対象物37で反射された電波がレーダ装置35へ伝搬され、レーダ装置35は測定対象物37を検出することになる。
このようにレーダ装置35および測定対象物37間を伝搬される電波は、直接伝搬される直接波R1と側壁面41および地表面33に反射されて伝搬される反射波R2等とに分かれる。
【0037】
本実施形態では、複数の周方向電波吸収体43が、レーダ装置35および測定対象物37の間の電波の内、少なくとも側壁面41および地表面33に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波R1へ強く影響する一次反射波R2がレーダ装置35あるいは測定対象物37に伝搬されるのを防止することができる。
【0038】
また、強度が弱く直接波R1への影響が少ない2次以降の反射波の一部もレーダ装置35あるいは測定対象物37とへ伝搬されるのを抑制できる。これらの2次以降の反射波は、たとえレーダ装置35あるいは測定対象物37へ伝搬されても直接波R1に比べて強度がきわめて小さいので、その影響は極めて小さい。
このように、特に、影響の大きい一次反射波R2がレーダ装置35あるいは測定対象物37に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0039】
[第三実施形態]
第三実施形態にかかるマルチパス低減装置51について、図11を用いて説明する。
このマルチパス低減装置51は、外部からの電磁波の影響を受けず、かつ逆に外部に影響を与えないように電気的に隔離された実験設備である電波暗室50におけるレーダ反射断面積(Radar Cross Section:RCS)計測のセンシング性能を改善するものに適用されている。
図11は、第三実施形態にかかる電波暗室50およびマルチパス低減装置51の概略構成を示す斜視図である。
【0040】
電波暗室50は、中空の略直方体形状をしている。電波暗室50の下面53には、コンパクトレンジシステム55と、たとえば、航空機である測定対象物(第一送受信部、第二送受信部)57とが長手方向Lに間隔をあけて設置されている。
コンパクトレンジシステム55には、電波を送受信する電波送受信機59と、電波送受信機59からの電波を略平面波に変換するセレーションエッジタイプのリフレクタ(第一送受信部、第二送受信部)61とが設けられている。リフレクタ61は、測定対象物57から反射された電波を受けて電波送受信機59に送信させる機能を有している。
【0041】
マルチパス低減装置51は、長手方向Lに沿って間隔Sをあけて複数設置された周方向電波吸収体63で構成されている。周方向電波吸収体63は略等間隔に設置されている。
周方向電波吸収体63は、図11に示されるように下面53、両側の側面65,67および上面69に亘って取り付けられている。下面53、両側の側面65,67および上面69は電波を反射する鋼製等通常の材料で構成されている。
周方向電波吸収体63は、略直方体形状をした電波吸収体71がそれらの電波吸収面73が揃うように取り付けられ、略矩形形状に形成されている。
【0042】
電波吸収体65の吸収面71は、第一実施形態の電波吸収面21と同様な構成とされている。吸収面71は、長手方向Lに対し略直交する方向(交差方向)に延在するようにされている。言い換えれば、吸収面71は、下面53、両側の側面65,67および上面69からリフレクタ61と測定対象物57とを結ぶ線側に高さHだけに突出するようにされている。
したがって、周方向電波吸収体63は、リフレクタ61と測定対象物57とを結ぶ線の周りのすべてを覆うように取り付けられている。
【0043】
したがって、複数の周方向電波吸収体63は下面53、両側の側面65,67および上面69(凹)に長手方向Lに間隔をあけて電波吸収面73を有する周方向電波吸収体63(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面73を有する周方向電波吸収体63が長手方向Lに間隔をあけて設置されているので、電波吸収面73が下面53、両側の側面65,67および上面69の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面73の面積を小さくすることができる。これにより、マルチパス低減装置51の製造コストの増加を抑制することができる。
【0044】
各周方向電波吸収体63の高さHおよび間隔Sは、リフレクタ61および測定対象物57間を伝搬される電波の内、少なくとも下面53、両側の側面65,67および上面69に一回反射する一次反射電波R2が、電波吸収面73に当接するように設定されている。
【0045】
以上のように構成された本実施形態にかかるマルチパス低減装置51の動作について説明する。
電波送受信機59から電波を発信すると、電波は、リフレクタ61で平面波に変換され、一部が測定対象物37へ伝搬される。測定対象物57で反射された電波がリフレクタ61へ伝搬され、リフレクタ61から電波送受信機59に伝搬される。電波送受信機59が受信した電波に基づいてRCSを測定する。
このとき、特に、測定対象物57で反射される電波は、あらゆる方向に伝搬される。この電波は、たとえば、リフレクタ61に直接伝搬される直接波R1と下面53、両側の側面65,67および上面69に反射されて伝搬される反射波R2等とに分かれる。
【0046】
本実施形態では、複数の周方向電波吸収体63が、測定対象物57からの電波の内、少なくとも下面53、両側の側面65,67および上面69に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波R1へ強く影響する一次反射波R2がリフレクタ61を介して電波送受信機59に伝搬されるのを防止することができる。
【0047】
また、強度が弱く直接波R1への影響が少ない2次以降の反射波の一部もリフレクタ61を介して電波送受信機59に伝搬されるのを抑制できる。これらの2次以降の反射波は、たとえ電波送受信機59へ伝搬されても直接波R1に比べて強度がきわめて小さいので、その影響は極めて小さい。
このように、特に、影響の大きい一次反射波R2が電波送受信機59に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0048】
なお、図12に示されるように、下面53および上面69に長手方向Lに延在する電波吸収面75を有する複数の長手方向電波吸収体(一方向電波吸収体)77を設置するようにしてもよい。
このようにすると、下面53および上面69に形成される凹凸がより多く形成されることになるので、反射波の見通しをより確実に遮断することができる。
長手方向電波吸収体77は、両側の側面65,67に設けるようにしてもよい。
【0049】
また、長手方向電波吸収体77は前記第一実施形態および第二実施形態に用いるようにしてもよい。
【0050】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,31,51 マルチパス低減装置
4 携帯電話
5 子局
15、43,63 周方向電波吸収体
17 内表面
19 電波吸収体
21,47,73,75 電波吸収面
25 スロット
33 地表面
35 レーダ装置
37 測定対象物
41 側壁面
53 下面
57 測定対象物
61 リフレクタ
65,67 側面
69 上面
77 長手方向電波吸収体
L 長手方向
R2 一次反射波
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチパス低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を利用したレーダ等によるセンシングや無線通信を行う場合、建築物(ビル外壁面やトンネル内壁面等)や地表面等の電波反射体からの反射波が直接波に干渉すること、すなわち、マルチパス(多重波伝送路)が形成されることで通信及びセンシングの品質が悪化する。
この品質劣化は、センシング機器や無線通信機器の位置や方向の変化に伴って電波の反射位置(電波品質の劣化に最も寄与する一次反射波を発生する電波反射体の位置)が変化するために発生する。
従来、このマルチパスを低減させるために、一般的に、たとえば、特許文献1に示されるように電波反射体全域に亘り平面的に電波吸収体を貼り付けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−218581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示されるもののように電波反射体全域に亘り平面的に電波吸収体を貼り付けるものでは、建築物や地表面の面積が広い場合にはコストインパクトが問題となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、製造コストを抑制してマルチパスを効果的に低減し得るマルチパス低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、略一方向に対向して相互に電波を送受信する第一送受信部および第二送受信部を前記一方向の周りで少なくとも一部分覆い、前記一方向に延在する壁面が存在し、該壁面の内側に、前記一方向に交差する交差方向に突出し、かつ、前記一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体を、前記第一送受信部および前記第二送受信部の間の電波の内、少なくとも前記壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように前記一方向に間隔をあけて設置されているマルチパス低減装置である。
【0007】
第一送受信部および第二送受信部間を伝搬される電波は、直接伝搬される直接波と壁面に反射されて伝搬される反射波とに分かれる。本態様では、複数の周方向電波吸収体が、第一送受信部および第二送受信部の間の電波の内、少なくとも壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波へ強く影響する一次反射波が第一送受信部あるいは第二送受信部に伝搬されるのを防止することができる。また、強度が弱く直接波への影響が少ない2次以降の反射波の一部も第一送受信部あるいは第二送受信部へ伝搬されるのを抑制できる。
このように、特に、影響の大きい一次反射波が第一送受信部あるいは第二送受信部に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0008】
このとき、壁面の内側から一方向に交差する交差方向に、言い換えると、直接波に向って突出し、かつ、一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の電波吸収体は一方向に間隔をあけて設置されているので、電波吸収面を有さない壁面(凹)に一方向に間隔をあけて電波吸収面を有する周方向電波吸収体(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面を有する周方向電波吸収体が一方向に間隔をあけて設置されているので、電波吸収面が壁面の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面の面積を小さくすることができる。これにより、製造コストの増加を抑制することができる。
【0009】
なお、「一次反射波の見通しを遮る」とは、第一送受信部および第二送受信部間を伝搬される電波の内、壁面に一回反射する電波が、いずれかの電波吸収面に当接することを意味している。このために、周方向電波吸収体の突出量、言い換えると高さと、周方向電波吸収体同士の間隔と、が調節される。
また、周方向電波吸収体は一方向に直交する方向に延在するようにしてもよいし、傾斜されるようにしてもよい。
本態様における「送受信部」とは、電波を送信するもの、電波を受信するもの、電波を送受信するもの、電波を受けて反射するもの、を意味している。
【0010】
前記態様では、前記壁面には、前記一方向に交差する交差方向に延在し、かつ、前記一方向に延在する電波吸収面を有する一方向電波吸収体が少なくとも1個設置されているのが好適である。
【0011】
このように、壁面に一方向に延在する電波吸収面を有する一方向電波吸収体が少なくとも1個設置されるので、壁面に形成される凹凸がより多く形成されることになる。したがって、反射波の見通しをより確実に遮断することができる。
【0012】
前記態様では、前記第二送受信部は、略前記一方向に移動可能とされ、前記周方向電波吸収体は前記第一送受信部に近いものほど前記交差方向の高さが高く、あるいは、隣り合う前記周方向電波吸収体間の間隔が狭く配置されていてもよい。
【0013】
第二送受信部が第一送受信部に近づくと、たとえば、第二送受信部から壁面に反射して第一送受信部へ伝搬する電波の反射角が大きくなる。周方向電波吸収体は第一送受信部に近いものほど交差方向の高さが高く、あるいは、隣り合う周方向電波吸収体間の間隔が狭く配置されているので、周方向電波吸収体は反射角が大きな電波を確実に遮ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、壁面の内側に、一方向に交差する交差方向に突出し、かつ、一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体を、第一送受信部および第二送受信部の間の電波の内、少なくとも壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように一方向に間隔をあけて設置されているので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。また、電波吸収面が壁面の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面の面積を小さくすることができ、製造コストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるマルチパス低減装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図2のY−Y断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる電波吸収体の別の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる電波吸収体のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態にかかる周方向電波吸収体の配置例を示す模式図である。
【図7】本発明の第一実施形態にかかる周方向電波吸収体の別の配置例を示す模式図である。
【図8】本発明の第一実施形態にかかるマルチパス低減装置の別の実施態様の概略構成を示す縦断面図である。
【図9】図8のZ−Z断面図である。
【図10】本発明の第二実施形態にかかるマルチパス低減装置の概略構成を示す部分斜視図である。
【図11】本発明の第三実施形態にかかる電波暗室およびマルチパス低減装置の概略構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の第三実施形態にかかるマルチパス装置の別の実施態様の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態にかかるマルチパス低減装置1について、図1〜図3を参照して説明する。このマルチパス低減装置1は、トンネル3内で無線通話を行う無線通信機である、たとえば、携帯電話(第二送受信部)4の通話環境を改善するものに適用されている。
図1は、第一実施形態にかかるマルチパス低減装置1の概略構成を示す縦断面図である。図2は、図1のX−X断面図である。図3は、図2のY−Y断面図である。
【0017】
トンネル3の内部には、長手方向(一方向)Lに間隔をあけて複数の子局(第一送受信部)5が設置されている。トンネル3の外部には、親局9が設置され、親局7および各子局5は直接通信できるように光ファイバ9によって接続されている。
子局5は、トンネル3内の走行路面(壁面)13を走行する自動車11の内部で送受信される携帯電話4と通信するものである。
【0018】
マルチパス低減装置1は、長手方向Lに沿って間隔Sをあけて複数設置された周方向電波吸収体15で構成されている。周方向電波吸収体15は略等間隔に設置されている。
周方向電波吸収体15は、図2に示されるようにトンネル3における側部および上部の内表面(壁面)17に亘って取り付けられている。内表面17は電波を反射する鋼製等通常の材料で構成されている。
周方向電波吸収体15は、略直方体形状をした電波吸収体19がそれらの電波吸収面21が揃うように内表面17に取り付けられ、略ドーム形に形成されている。
【0019】
電波吸収体19の電波吸収面21は、図1および図3に示されるようにトンネル3の長手方向Lに対し略直交する方向(交差方向)に延在するようにされている。言い換えれば、電波吸収面21は、内表面17から高さHだけ走行路面13側に突出するようにされている。電波吸収体19の電波吸収面21は、図3に示されるように平板型の電波吸収材料で形成されている。
したがって、周方向電波吸収体15は、子局5および携帯電話4を結ぶ方向、略長手方向Lの周りである内表面17および走行路面13の少なくとも一部分を覆うように取り付けられている。
【0020】
したがって、複数の周方向電波吸収体15はそれぞれ内表面17の内側から長手方向Lに直交する方向に、言い換えると、直接波R1に向って突出する電波吸収面21を有し、かつ、長手方向Lに間隔Sをあけて設置されているので、電波吸収機能を有さない内表面17(凹)に長手方向Lに間隔をあけて電波吸収面21を有する周方向電波吸収体15(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面21を有する周方向電波吸収体15が長手方向Lに間隔をあけて設置されているので、電波吸収面21が内表面17の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面21の面積を小さくすることができる。これにより、マルチパス低減装置1の製造コストの増加を抑制することができる。
【0021】
各周方向電波吸収体15の高さHおよび間隔Sは、子局5および携帯電話4間を伝搬される電波の内、少なくとも内表面17に一回反射する一次反射電波R2が、電波吸収面21に当接するように設定されている。
なお、電波吸収材料の形状は、平板型に限定されるものではなく、公知の構造をしたものを用いてよい。たとえば、図4に示されるような三角柱型、図5に示されるようなカマボコ断面型、山型、波型、四角錐等の錐体状型、錐台状型等が用いられる。
【0022】
以上のように構成された本実施形態にかかるマルチパス低減装置1の動作について説明する。
自動車11に乗車している人が、携帯電話4をかけると、携帯電話4から呼び出し信号が電波として発信される。この電波は、あらゆる方向へ発信され、一部が子局5へ伝搬される。
このように子局5および携帯電話4間を伝搬される電波は、直接伝搬される直接波R1と内表面17に反射されて伝搬される反射波R2等とに分かれる。
【0023】
本実施形態では、複数の周方向電波吸収体15が、子局5および携帯電話4の間の電波の内、少なくとも内表面17に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波R1へ強く影響する一次反射波R2が子局5あるいは携帯電話4に伝搬されるのを防止することができる。
【0024】
また、強度が弱く直接波R1への影響が少ない2次以降の反射波の一部も子局5あるいは携帯電話4へ伝搬されるのを抑制できる。これらの2次以降の反射波は、たとえ子局5あるいは携帯電話4へ伝搬されても直接波R1に比べて強度がきわめて小さいので、影響が極めて小さい。
このように、特に、影響の大きい一次反射波R2が子局5あるいは携帯電話4に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、周方向電波吸収体15は略等間隔に設置されているが、これに限定されない。
携帯電話4(自動車11)が子局5に近づくと、たとえば、携帯電話4から内表面17に反射して子局5へ伝搬する一次反射波R2の反射角αが図6に示されるように大きくなる。
【0026】
たとえば、図6に示されるように、子局5に近づくほど隣り合う周方向電波吸収体15間の間隔を小さくなるようにしてもよい。
このようにすると、周方向電波吸収体15は反射角αが大きな反射波R2を確実に遮ることができる。
また、隣り合う周方向電波吸収体15間の間隔は子局5から離れると相当大きく設定できるので、マルチパス低減装置1の製造コストの増加をより一層抑制することができる。
【0027】
また、図7に示されるように周方向電波吸収体15は子局5に近いものほど高さHが高くなるようにされてもよい。
このようにすると、周方向電波吸収体15は反射角αが大きな一次反射波R2を確実に遮ることができる。
この場合、高さHを低くすると、設置される間隔Sが小さくなるが、その分各周方向電波吸収体15の電波吸収面21の面積も小さくなるので、マルチパス低減装置1の製造コストの増加をより一層抑制することができる。
【0028】
本実施形態では、トンネル3の内部に、長手方向Lに間隔をあけて複数の子局5が設置され、子局トンネル3の外部に設置された親局7が光ファイバ9によって接続されている方式の通信システムに適用しているが、これに限らない。
たとえば、図8および図9に示されるようにトンネル3内の上部に親局7と接続された漏洩同軸ケーブル23を配設し、漏洩同軸ケーブル23に長手方向Lに間隔をあけて複数のスロット(第一送受信部)25を設けている。携帯電話4との通信は、スロット25を通る電波が漏洩同軸ケーブル23を通って親局7に送受される。
したがって、スロット25が、子局5に対応するものである。
【0029】
マルチパス低減装置1は、本実施形態のものと同様の構成をもつものが備えられているので、ここでは重複した説明を省略する。
マルチパス低減装置1の動作については、前述の本実施形態のものと同様であるので、ここでは重複した説明を省略する。
【0030】
[第二実施形態]
第二実施形態にかかるマルチパス低減装置31について、図10を用いて説明する。
このマルチパス低減装置31は、オープンスペースでのレーダ性能試験あるいは対レーダ性能試験におけるセンシング性能を改善するものに適用されている。
図10は、第二実施形態にかかるマルチパス低減装置31の概略構成を示す部分斜視図である。
【0031】
地表面(壁面)33には、レーダ装置(第一送受信部、第二送受信部)35とたとえば、航空機である測定対象物(第一送受信部、第二送受信部)37とが間隔をあけて設置されている。レーダ装置35と測定対象物37とを結ぶ方向を長手方向Lとする。
レーダ装置35および測定対象物37の一側部には、建築物39が設けられている。建築物39には、長手方向Lに延在する側壁面(壁面)41が設けられている。
【0032】
マルチパス低減装置31は、長手方向Lに沿って間隔Sをあけて複数設置された周方向電波吸収体43で構成されている。周方向電波吸収体43は略等間隔に設置されている。
周方向電波吸収体43は、図10に示されるように側壁面41および地表面33に亘って取り付けられている。側壁面41は電波を反射する鋼製等通常の材料で構成されている。
周方向電波吸収体43は、略直方体形状をした電波吸収体45がそれらの電波吸収面47が揃うように取り付けられ、略L字形状に形成されている。
【0033】
電波吸収体45の電波吸収面47は、第一実施形態の電波吸収面21と同様な構成とされている。電波吸収面47は、長手方向Lに対し略直交する方向(交差方向)に延在するようにされている。言い換えれば、電波吸収面47は、側壁面41および地表面33からレーダ装置35と測定対象物37とを結ぶ線側に高さHだけに突出するようにされている。
したがって、周方向電波吸収体43は、レーダ装置35と測定対象物37とを結ぶ線の周りの少なくとも一部分を覆うように取り付けられている。
【0034】
したがって、複数の周方向電波吸収体43は側壁面41および地表面33(凹)に長手方向Lに間隔をあけて電波吸収面47を有する周方向電波吸収体43(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面47を有する周方向電波吸収体43が長手方向Lに間隔をあけて設置されているので、電波吸収面47が側壁面41および地表面33の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面47の面積を小さくすることができる。これにより、マルチパス低減装置31の製造コストの増加を抑制することができる。
【0035】
各周方向電波吸収体43の高さHおよび間隔Sは、レーダ装置35および測定対象物37間を伝搬される電波の内、少なくとも側壁面41および地表面33に一回反射する一次反射電波R2が、電波吸収面47に当接するように設定されている。
【0036】
以上のように構成された本実施形態にかかるマルチパス低減装置1の動作について説明する。
レーダ装置35から電波を発信すると、電波は、あらゆる方向へ発信され、一部が測定対象物37へ伝搬される。測定対象物37で反射された電波がレーダ装置35へ伝搬され、レーダ装置35は測定対象物37を検出することになる。
このようにレーダ装置35および測定対象物37間を伝搬される電波は、直接伝搬される直接波R1と側壁面41および地表面33に反射されて伝搬される反射波R2等とに分かれる。
【0037】
本実施形態では、複数の周方向電波吸収体43が、レーダ装置35および測定対象物37の間の電波の内、少なくとも側壁面41および地表面33に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波R1へ強く影響する一次反射波R2がレーダ装置35あるいは測定対象物37に伝搬されるのを防止することができる。
【0038】
また、強度が弱く直接波R1への影響が少ない2次以降の反射波の一部もレーダ装置35あるいは測定対象物37とへ伝搬されるのを抑制できる。これらの2次以降の反射波は、たとえレーダ装置35あるいは測定対象物37へ伝搬されても直接波R1に比べて強度がきわめて小さいので、その影響は極めて小さい。
このように、特に、影響の大きい一次反射波R2がレーダ装置35あるいは測定対象物37に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0039】
[第三実施形態]
第三実施形態にかかるマルチパス低減装置51について、図11を用いて説明する。
このマルチパス低減装置51は、外部からの電磁波の影響を受けず、かつ逆に外部に影響を与えないように電気的に隔離された実験設備である電波暗室50におけるレーダ反射断面積(Radar Cross Section:RCS)計測のセンシング性能を改善するものに適用されている。
図11は、第三実施形態にかかる電波暗室50およびマルチパス低減装置51の概略構成を示す斜視図である。
【0040】
電波暗室50は、中空の略直方体形状をしている。電波暗室50の下面53には、コンパクトレンジシステム55と、たとえば、航空機である測定対象物(第一送受信部、第二送受信部)57とが長手方向Lに間隔をあけて設置されている。
コンパクトレンジシステム55には、電波を送受信する電波送受信機59と、電波送受信機59からの電波を略平面波に変換するセレーションエッジタイプのリフレクタ(第一送受信部、第二送受信部)61とが設けられている。リフレクタ61は、測定対象物57から反射された電波を受けて電波送受信機59に送信させる機能を有している。
【0041】
マルチパス低減装置51は、長手方向Lに沿って間隔Sをあけて複数設置された周方向電波吸収体63で構成されている。周方向電波吸収体63は略等間隔に設置されている。
周方向電波吸収体63は、図11に示されるように下面53、両側の側面65,67および上面69に亘って取り付けられている。下面53、両側の側面65,67および上面69は電波を反射する鋼製等通常の材料で構成されている。
周方向電波吸収体63は、略直方体形状をした電波吸収体71がそれらの電波吸収面73が揃うように取り付けられ、略矩形形状に形成されている。
【0042】
電波吸収体65の吸収面71は、第一実施形態の電波吸収面21と同様な構成とされている。吸収面71は、長手方向Lに対し略直交する方向(交差方向)に延在するようにされている。言い換えれば、吸収面71は、下面53、両側の側面65,67および上面69からリフレクタ61と測定対象物57とを結ぶ線側に高さHだけに突出するようにされている。
したがって、周方向電波吸収体63は、リフレクタ61と測定対象物57とを結ぶ線の周りのすべてを覆うように取り付けられている。
【0043】
したがって、複数の周方向電波吸収体63は下面53、両側の側面65,67および上面69(凹)に長手方向Lに間隔をあけて電波吸収面73を有する周方向電波吸収体63(凸)が突出した凹凸構造が形成されていることになる。
このように電波吸収面73を有する周方向電波吸収体63が長手方向Lに間隔をあけて設置されているので、電波吸収面73が下面53、両側の側面65,67および上面69の全面を覆うようなものと比べて電波吸収面73の面積を小さくすることができる。これにより、マルチパス低減装置51の製造コストの増加を抑制することができる。
【0044】
各周方向電波吸収体63の高さHおよび間隔Sは、リフレクタ61および測定対象物57間を伝搬される電波の内、少なくとも下面53、両側の側面65,67および上面69に一回反射する一次反射電波R2が、電波吸収面73に当接するように設定されている。
【0045】
以上のように構成された本実施形態にかかるマルチパス低減装置51の動作について説明する。
電波送受信機59から電波を発信すると、電波は、リフレクタ61で平面波に変換され、一部が測定対象物37へ伝搬される。測定対象物57で反射された電波がリフレクタ61へ伝搬され、リフレクタ61から電波送受信機59に伝搬される。電波送受信機59が受信した電波に基づいてRCSを測定する。
このとき、特に、測定対象物57で反射される電波は、あらゆる方向に伝搬される。この電波は、たとえば、リフレクタ61に直接伝搬される直接波R1と下面53、両側の側面65,67および上面69に反射されて伝搬される反射波R2等とに分かれる。
【0046】
本実施形態では、複数の周方向電波吸収体63が、測定対象物57からの電波の内、少なくとも下面53、両側の側面65,67および上面69に反射する一次反射波R2の見通しを遮るように設置されているので、少なくとも強度が強く、直接波R1へ強く影響する一次反射波R2がリフレクタ61を介して電波送受信機59に伝搬されるのを防止することができる。
【0047】
また、強度が弱く直接波R1への影響が少ない2次以降の反射波の一部もリフレクタ61を介して電波送受信機59に伝搬されるのを抑制できる。これらの2次以降の反射波は、たとえ電波送受信機59へ伝搬されても直接波R1に比べて強度がきわめて小さいので、その影響は極めて小さい。
このように、特に、影響の大きい一次反射波R2が電波送受信機59に伝搬されるのを防止できるので、マルチパスを効果的に低減でき、電波環境を改善することができる。
【0048】
なお、図12に示されるように、下面53および上面69に長手方向Lに延在する電波吸収面75を有する複数の長手方向電波吸収体(一方向電波吸収体)77を設置するようにしてもよい。
このようにすると、下面53および上面69に形成される凹凸がより多く形成されることになるので、反射波の見通しをより確実に遮断することができる。
長手方向電波吸収体77は、両側の側面65,67に設けるようにしてもよい。
【0049】
また、長手方向電波吸収体77は前記第一実施形態および第二実施形態に用いるようにしてもよい。
【0050】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,31,51 マルチパス低減装置
4 携帯電話
5 子局
15、43,63 周方向電波吸収体
17 内表面
19 電波吸収体
21,47,73,75 電波吸収面
25 スロット
33 地表面
35 レーダ装置
37 測定対象物
41 側壁面
53 下面
57 測定対象物
61 リフレクタ
65,67 側面
69 上面
77 長手方向電波吸収体
L 長手方向
R2 一次反射波
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略一方向に対向して相互に電波を送受信する第一送受信部および第二送受信部を前記一方向の周りで少なくとも一部分覆い、前記一方向に延在する壁面が存在し、
該壁面の内側に、前記一方向に交差する交差方向に突出し、かつ、前記一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体を、前記第一送受信部および前記第二送受信部の間の電波の内、少なくとも前記壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように前記一方向に間隔をあけて設置されていることを特徴とするマルチパス低減装置。
【請求項2】
前記壁面には、前記一方向に交差する交差方向に延在し、かつ、前記一方向に延在する電波吸収面を有する一方向電波吸収体が少なくとも1個設置されていることを特徴する請求項1に記載のマルチパス低減装置。
【請求項3】
前記第二送受信部は、略前記一方向に移動可能とされ、前記周方向電波吸収体は前記第一送受信部に近いものほど前記交差方向の高さが高く、あるいは、隣り合う前記周方向電波吸収体間の間隔が狭く配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチパス低減装置。
【請求項1】
略一方向に対向して相互に電波を送受信する第一送受信部および第二送受信部を前記一方向の周りで少なくとも一部分覆い、前記一方向に延在する壁面が存在し、
該壁面の内側に、前記一方向に交差する交差方向に突出し、かつ、前記一方向の周りに延在する電波吸収面を有する複数の周方向電波吸収体を、前記第一送受信部および前記第二送受信部の間の電波の内、少なくとも前記壁面に反射する一次反射波の見通しを遮るように前記一方向に間隔をあけて設置されていることを特徴とするマルチパス低減装置。
【請求項2】
前記壁面には、前記一方向に交差する交差方向に延在し、かつ、前記一方向に延在する電波吸収面を有する一方向電波吸収体が少なくとも1個設置されていることを特徴する請求項1に記載のマルチパス低減装置。
【請求項3】
前記第二送受信部は、略前記一方向に移動可能とされ、前記周方向電波吸収体は前記第一送受信部に近いものほど前記交差方向の高さが高く、あるいは、隣り合う前記周方向電波吸収体間の間隔が狭く配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチパス低減装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−142178(P2011−142178A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1377(P2010−1377)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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