説明

マルチパック包装体

【課題】カートンケースから取り出しを容易にするマルチパック包装体を提供する。
【解決手段】マルチパック包装体10は、上面部10aと、底面部10bと両側面部10c,10dからなる複数の円筒状容器1を整列して収容し保持する。マルチパック包装体10は、前記側面部10c,10dの略中央位置に把持片12を、一辺12aを残して切り込みにより形成している。カートンケースより取り出す場合には、把持片12を手前に引き出し、これを把持して包装体10を引き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶ビールや缶ジュースなどの円筒状飲料容器を複数個整列して包装するマルチパック包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から缶ビールや缶ジュース等を例えば4缶、6缶などと複数個まとめて販売するために缶を複数個整列させて包装する包装体、いわゆるマルチパック包装体に収容して取り扱うようにすることが行われている。図1は包装体の一例を示し、包装体1は、通常、複数個の整列した缶2を上面部1a、底面部1b及び両側面部1c,1dで囲み、前後を開口にして内部の収容された缶が露出するようにして保持するようにしている。
【0003】
そしてこの包装体は卸売業者から小売店などへの流通過程ではさらに図2に示すように、カートンケース3に複数個収納して運ばれる。このカートンケース3に収容された包装体をカートンケースから取り出す場合には、図1に示すように、カートンケース3のサイドフラップ3aを開けて引き出すようにして取り出すようにしている。しかしながら、カートンケース3に収納された包装体1が、図2に示されるように、サイドフラップ3aが開けられた開口部に包装体1の側面部1cが向けられている状態となっている場合、包装体を掴むのに適した箇所が存在せず、引き出しに苦労することとなっていた。カートンケースからこのような包装体を引き出す際、その引き出しを容易にするために、包装体の側板部の縁部に突出する手掛け用の摘み片を設けたものが提案されている(特許文献1)
【特許文献1】特開2001−233378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の手掛け用摘み片を設けたものは、カートンケースを開けた開口部に包装体に保持される缶が露出する側が向けられて収容される場合を想定して、包装体の取出を容易にするために包装体の側面部の縁部に手掛け用摘み片を設けたものである。したがって、包装体が図2のように、その側板部1cがカートンケースの開口面に位置するような場合は、好適な手掛かりとはならないという問題がある。また、側面部縁部に摘み片を突出して設けた場合は、摘み片強度が十分に確保できず、その部分でちぎれたりするおそれもある。また、摘み片を掴んで引き出すとき、包装体1全体に対し均一に力が作用せず、円滑な引き出しが難しいという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、円筒状飲料容器を複数個整列して包装するマルチパック包装体を、これを収容したカートンケースから取り出す際に、その取り出しを容易にするマルチパック包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は本発明の以下のマルチパック包装体により解決される。
【0007】
本発明の第1の発明は、複数の容器が並列された容器群の上面を覆う上面部と、前記容器群の底面を覆う底面部と、前記容器群の両側部を覆う一対の側面部とから構成され、前記容器群を収容した状態でカートンケースに収納されるマルチパック包装体であって、
前記一対の側面部のそれぞれに、一辺を残して切り込みにより形成された把持片とを有するマルチパック包装体である。
【0008】
また、本発明の一つの態様として、前記上面部は、指を挿入できる切り込み線又は孔を有することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の他の態様は、前記把持片が陳列棚の取出部に向けられた状態で前記陳列棚に設置されることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の他の態様は、上記把持片は、折り込み線が形成された直線部と切り込み線が形成された円周部とを有する円形状をなすことを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の他の態様は、前記円周部には指が挿入できるサイズの切欠が形成されていることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の態様は、前記円周部に隣接して指が挿入できるサイズの指挿入用舌片部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1の発明によれば、マルチパック包装体の側面部がカートンケースの開口部に向けられて収納されている場合であっても、側面部に形成された把持片を切り起こしてそれを把持部とし、容易にカートンケースより引き出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図3は、本発明の第1の実施例に係るマルチパック包装体(単に「包装体」という)10を示し、この包装体10は4本のビール缶を収容するためのものである。包装体10は、図1に示したものと基本的に同じ構造を有し、4本の缶2を、上面部10a、底面部10b及び一対の両側面部10c,10dで囲み、他の一対(左右)の側面部を開口にして内部の収容された缶2が露出するようにして保持するようにしており、全体として立方体に近い直方体の形状をなしている。なお、缶2の露出する開口部の4方の隅部には収容された缶2が脱落するのを防止する三角状の止め部11が設けられている。
【0015】
本実施例による包装体10は、一対の側面部10c,10dの中央部に把持片12が形成されている。この把持片12は全体として直線状の折り込み線12aと半円周部12bからなる略半円形をなしている。折り込み線12aは折り込みを容易とするために罫線が施され、また、半円周部12bは容易に切り離しが容易になるように切込線が施されている。また、半円状の舌片12には、更に、半円状の切欠き12cが形成されている。この切欠き12cは把持片12を引き出す際に指を挿入するためのものであり、サイズは人差し指が挿入できる程度のものである。
【0016】
また、上面部10aと側面10c,10dの一部には包装体10を持ち運び際の手提げ部13が切込み線13a,13bによって形成されている。そして、この手提げ部13の切り起こしを容易にするために中央部に一対の孔14a,14bが形成されている。
【0017】
図4は、図3に示した包装体10の把持片12を手前に引き出した状態を示している。上述のように、図3の状態において、把持片12の半円状の切欠12cに指を挿入することにより、容易に手前に引き出すことができる。したがって、本実施例の包装体10が図2に示したようにカートンケース3に収納されている場合、把持片12を引き出し、その把持片12を把持するか、或いは、引き出した後に形成された開口13内に指を係合することにより、包装体10を手前に引き出すことができる。
【0018】
カートンケース3より取り出した包装体10を、例えば、小売店などの陳列棚に設置する際は、引き出された把持片12は元に押し戻して、図3に示すように開口13を塞ぐようにすれば、陳列などに不都合は生じない。
【0019】
本実施例のように、包装体10の側面10c,10dに把持片12を、一辺を残して切り離し可能に形成したことにより、側面11c,11dに大きな穴が形成されず、側板の外観を特に損ねることなく、また、側板上に施される模様や表示を損なう影響を最小限にすることができる。
【0020】
図5は、包装体10を形成するための展開シート20を示す。図示のように、展開シート20は長尺状シートからなり、包装体10の上面部10a、底面部10b及び一対の両側面部10c,10dに対応する区分を有し、夫々の区分の境界には点線で示す折り線21〜24が形成されている。また、各区分の境界線の両側部には止め片11が夫々折り線11aによって形成されている。
【0021】
底面部10bは、展開シートの両端に底面部10b1と底面部10b2とに分割されて位置し、一方の底面部10b1には一対の係合片15a,15bが突出して形成され、他方の底面部10b2には係合片15a,15bが挿入される孔16a,16bと、挿入される係合片15a,15bを係止するための切込み17a,17bが形成されている。
【0022】
上述の展開シート20を使用して、例えばビール缶を包装する場合は、展開シート20の上面部10a上に4本の缶を整列して配置し、境界線である折り線21,22を折り立て、次いで折り線23,24を折り、係合片15a,15bを孔16a,16bに挿入した後、夫々を切込み17a,17bに差し込んで係合させる。これにより、図3に示す状態で缶を保持する包装体10が出来上がる。
【0023】
図6及び図7は、本発明の他の実施例のマルチパック包装体30を示す。図3乃至図5に示した包装が4缶用のものであるのに対して本実施例の包装体30は6缶を収容保持する包装体である点が相違する。缶2は3缶2列で整列して保持され、したがって、全体として直方体の形状をなしている。細部構造については、図3乃至図5に示したものと差違はなく、詳細な説明は省略する。本実施例においても、把持片32を側板30c,30dに形成する点は同じである。
【0024】
本実施例の包装体30をカートンケースより取り出す場合においても、前述の実施例と同様に把持片32を引き出してこれを把持し、容易に取り出すことが可能となる。
【0025】
図8は本発明の他の実施例に係るマルチパック包装体40を示す。包装体40は、図3に示す包装体10と同様に4缶を収容する包装体であり、基本的構成は図3乃至図5に示す包装体10と変わるところはない。本実施例による包装体40は、包装体をカートンケースから引き出す際の指の係合部となる係合孔42を包装体の上面40aに形成したものである。係合孔42は、上面部40aと側面部40c,40dの境界線の略中央部に形成している。係合孔42は略半円形をなし、上記境界線上の直線部42aと上面部40aの内側に入り込むように切り欠かれた円周部42bからなる。
【0026】
包装体40の側面部40cがカートンケースの開口部側に位置する状態でカートンケースに収納されて入る場合、この包装体40をカートンケースから引き出す際には、指を係合孔42に挿入してこれに指を係合させて手前に引き出すことができる。
【0027】
図9は他の実施例を示し、図8と同様にマルチパック包装体の上面部に指を係合させるため係合孔を6缶用のマルチパック包装体に設けたものである。包装体50の上面部50aの側面部50c,50dとの境界線に沿って、中央線Lを挟んで対称的に二つの係合孔52,53が形成されている。これらの係合孔52,53は、図8に示した係合孔42と同じであり、直線部52a,53aと円周部52b,53bによって形成されている。
【0028】
本実施例の包装体50にあっても、これをカートンケースから引き出す場合には、適宜の指を係合孔52,53に押し当て、下方に押し込んで孔を形成し、指を係合させて引き出すことができる。
【0029】
図10乃至図12は本発明の他の実施例に係る包装体60を示す。包装体60は図3乃至図5に示した包装体10の変形例というべきものであり、把持片12の形状において異なる。したがって、他の構成要素は図3乃至図5に示されたものと共通する部分については説明の便宜上同一の符号を付すと共に、それらの説明を省略する。
【0030】
本実施例による包装体60には、一対の側面部10c,10dの中央部に把持片62が形成されている。この把持片62は全体として直線状の折り込み線62aと半円周部62bからなる略半円形をなしている。折り込み線62aは折り込みを容易とするために罫線が施され、また、半円周部62bは容易に切り離しが容易になるように切込線が施されている。
【0031】
本実施例の半円状の62には、図3に示すような半円状の切欠き12cは形成されていない。図3の切欠12cに代わるものとして、本実施例は別途に指を挿入するための指挿入用舌片63を把持片とは別に形成している。
【0032】
この指挿入用舌片63は把持片62を引き出す際に指を挿入するためのものであり、サイズは人差し指が挿入できる程度のものである。
【0033】
指挿入用舌片63は、直線状の折り込み線部63a、側辺部63b,63cと把持辺62の半円周部62bの一部と接する円周部63dからなり、全体として略矩形状をなしている。側辺部62b,62cと円周部63dは切り込み線とされ、容易に切り離すことができるようにされている。
【0034】
本実施例の包装体60を、把持片62を使用して引き出す場合、先ず、人差し指を指挿入用舌片63の部分に包装体の内側に押し込む。これによって、指挿入用舌片63の切り込み線である側辺部63b,63cと円周部63dが切り離されて、図11に示すように、指が僅かながら内部に挿入できる状態となる。次に、挿入した指で把持片62を手前に引き出すことにより、把持片62は折り込み線部63aの部分で折り倒された状態となる。この把持片62を把持するか又は形成された開口内に指を挿入して包装体60を容易に手前に引き出すことができる。
【0035】
図12は、図10の包装体を形成するための展開シート70を示す。
【0036】
以上、本発明によるマルチパック包装体について、ビール缶を包装するマルチパック包装体を4缶用及び6缶用を例に述べたが、8缶用等これ以外の本数を保持する包装体にも適用できることは明らかである。また、これらの用途も、ビール缶に限ることなく、ジュース缶やその他の飲料容器用に適用できることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】通常のマルチパック包装体を示す図である。
【図2】マルチパック包装体をカートンケースから取り出す状態を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るマルチパック包装体を示す図である。
【図4】マルチパック包装体の把持片を説明する図である。
【図5】図1のマルチパック包装体の展開シートを示す図である。
【図6】本発明の他の実施例に係るマルチパック包装体を示す図である。
【図7】マルチパック包装体の把持片を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施例に係るマルチパック包装体を示す図である。
【図9】本発明の他の実施例に係るマルチパック包装体を示す図である。
【図10】本発明の他の実施例に係るマルチパック包装体を示す図である。
【図11】図10のマルチパック包装体の把持片を説明する図である。
【図12】図10のマルチパック包装体の把持片を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1,10,20,30、40,50,60 包装体
12,32,62 把持片
42,52,53 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器が並列された容器群の上面を覆う上面部と、前記容器群の底面を覆う底面部と、前記容器群の両側部を覆う一対の側面部とから構成され、前記容器群を収容した状態でカートンケースに収納されるマルチパック包装体であって、
前記一対の側面部のそれぞれに、一辺を残して切り込みにより形成された把持片とを有するマルチパック包装体。
【請求項2】
前記上面部は、指を挿入できる切り込み線又は孔を有する請求項1に記載のマルチパック包装体。
【請求項3】
前記把持片が陳列棚の取出部に向けられた状態で前記陳列棚に設置される請求項1又は2に記載のマルチパック包装体。
【請求項4】
前記把持片は、折り込み線が形成された直線部と切り込み線が形成された円周部とを有する請求項1から3のいずれかに記載のマルチパック包装体。
【請求項5】
前記円周部には指が挿入できるサイズの切欠が形成されている請求項4に記載のマルチパック包装体。
【請求項6】
前記円周部に隣接して指が挿入できるサイズの指挿入用舌片部が形成されている請求項4に記載のマルチパック包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−47124(P2013−47124A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−268409(P2012−268409)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2007−196175(P2007−196175)の分割
【原出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】