説明

マルチパック用包装箱

【課題】 取り出し方の自由度が高くしかも簡単かつ確実に製品を取り出すことができるマルチパック用包装箱を提供する。
【解決手段】 本発明のマルチパック用包装箱は、複数個を並列に配置された容器群の上面を覆う上面板と、この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆う側面板と、これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する底面板とを備え、底面板を係着することにより容器群を包むように収納することができるとともに、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されており、側面板には、側面板の所定の奥側位置から手前の開口部に向けて、引き裂き除去可能な引裂き開口片が少なくとも1つ形成されており、引裂き開口片は、奥側位置付近に形成された引裂き開始窓と、これに連接して開口部側へ延びる引裂き領域形成部を有してなるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば缶ビール、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等ノンアルコール飲料缶等の一定数量の容器を並列した状態のまま包装するマルチパック用包装箱に関する。なお、本発明でいう「容器」とは、内容物が充填されている製品の形態のものをいう。
【背景技術】
【0002】
従来から、缶ビールや缶ジュース等の複数個の容器を複数個一列あるいは複数列で起立させた状態のまま整列させて置き、つぎに容器の上部、側部および下部を包み込むようにして包装した紙製のマルチパック用包装箱が使用されている。
【0003】
このようなマルチパック用包装箱の使用により、複数個の缶ビールや缶ジュース等を1個の包装体にまとめて一度にかつ簡易に持ち運ぶことができるようになり、さらに、纏め売りの効果も相俟って当該マルチパック用包装箱の使用が近年急速に拡大しつつある。
【0004】
小売店では、一般に、マルチパック用包装箱は段状の陳列棚やショーケースに収納された状態で販売されており、また、家庭で飲食する消費者は、一般にマルチパック用包装箱を段状の収納棚に収納していることが多い。いずれの場合も、収納スペース等の制約からマルチパック用包装箱は、上下にあまり隙間のない状態で収納されていることが多い。
【0005】
しかしながら、従来のマルチパック用包装箱は、その上面にしか取り出しのための開口部がついておらず、棚等に収納し、上部に隙間がない場合には、マルチパック用包装箱を開口することが極めて困難であるという問題が生じていた.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような課題を解決するために本願発明は創案されたものであって、その目的は、誰もが利用しやすいユニバーサルデザイン概念のもとにマルチパック用包装箱の仕様を見直し、特に、取り出し方の自由度が高くしかも簡単かつ確実に製品を取り出すことができるマルチパック用包装箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明は、複数個を並列に配置された容器群の上面を覆う上面板と、この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆うように配置された対向する側面板と、これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する底面板とを備え、前記底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができるとともに、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されるマルチパック用包装箱において、前記側面板には、側面板の所定の奥側位置から手前の開口部に向けて、引き裂き除去可能な引裂き開口片が少なくとも1つ形成されており、当該引裂き開口片は、奥側位置付近に切り抜かれた状態で形成された引裂き開始窓と、これに連接して開口部側へ延びる引裂き領域形成部を有してなるように構成される。
【0008】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記側面板に形成された引裂き開口片は、引き裂き除去される形状に沿って不連続な切り込み線を有し、引き裂き除去の際の切り込み線の最終端が、開口部の近傍に形成されている折り込み片の折り線の両端に実質的に向けられて形成される。
【0009】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記側面板に形成された引裂き開口片の引裂き領域形成部は、奥側位置から開口部に向けて、その引き裂き幅が漸増的に広幅となるように形成される。
【0010】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記側面板に形成された引裂き開口片の引裂き領域形成部は、折り線部を備え、この折り線部を基部としてフラップ状の先端領域を手前に引き上げるように引裂いたり、あるいは、一旦、折り線部を基部としてフラップ状の先端領域を押し込みにより陥没させて凹部を形成し、次いで、手前に引き上げるように引裂いたりするように作用させることができるように構成される。
【0011】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記引き裂き開始窓は、包装箱に収納される容器との関係において、容器が隣接する際に生じる隙間位置に存在するように形成される。
【0012】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記包装箱に収納される容器は、包装箱底部に立設された円筒状の容器であり、前記引き裂き開始窓は、容器が隣接する際に生じる隙間位置(谷部空間)に存在するように形成される。
【0013】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記引裂き領域形成部は、実質的な台形形状をなし、当該台形形状の上底辺の一部を切り取るように円変形体形状(略三日月形状〜円形状までの変形体)の引裂き開始窓が形成される。
【0014】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記引裂き開始窓は、その面積の60%以上が台形形状の内部に入り込むように形成される。
【0015】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記引裂き領域形成部は、実質的な台形形状をなし、当該台形形状の上底辺のさらに奥側に引裂き開始窓が連接して形成される。
【0016】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記引裂き開始窓は、略四角形形状をなして構成される。
【0017】
本発明のマルチパック包装製品は、上記記載のマルチパック用包装箱に容器を収納して構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマルチパック用包装箱は、複数個を並列に配置された容器群の上面を覆う上面板と、この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆うように配置された対向する側面板と、これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する底面板とを備え、前記底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができるとともに、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されるマルチパック用包装箱において、前記側面板には、側面板の所定の奥側位置から手前の開口部に向けて、引き裂き除去可能な引裂き開口片が少なくとも1つ形成されており、当該引裂き開口片は、奥側位置付近に形成された引裂き開始窓と、これに連接して開口部側へ延びる引裂き領域形成部を有してなるように構成されているので、マルチパック用包装箱の中に接触状態で充填されている製品容器の取り出し方の自由度が高くなり、例えば、棚等に収納し、上部に隙間がない場合であっても、包装箱を開口することができる。特に、切り抜かれた引裂き開始窓を予め設けておくことにより、最初に把持する箇所が明確になり、余分な不安を抱かせることなく安心、かつ確実に開封操作が行える。製品の取り出しも簡単でかつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のマルチパック用包装箱1の最良の形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明のマルチパック用包装箱1の展開図の一例を示したものであり、図2は、図1に示される展開された箱オリジナル紙を組み立てた斜視図であり、図3は、図1に示される展開された箱オリジナル紙を組み立てた斜視図であり、箱の中に缶ビールで代表される缶容器が収納されている状態を示す斜視図である。図4は、本発明の作用の一例を示す図面であって、具体的には引裂き開口片を除去した後に、中の缶容器を取り出す状態を示す斜視図である。図5は、マルチパック用包装箱を4個、出荷カートンケース内に納めた状態を模式的に示した概略斜視図である。図6は、マルチパック用包装箱の平面図であり、図3の平面図に相当するものである。図7〜図9は、それぞれ、本発明のマルチパック用包装箱1の他の変形例の展開図を示したものである。
【0021】
本発明における好適な実施の形態として、缶ビールを6個収納(直列した3缶を2列に並列させて収納)することができる一般的なマルチパック用包装箱1を一例にとって説明する。
【0022】
本発明のマルチパック用包装箱1は、図1に示される展開シート(パック用シート)を組み立てることによって形成することができ、展開シートは、図1に示されるごとく横長の略矩形形状をなしている。
【0023】
図1に示される展開シートにおいて、その中央部は上面板2を構成し、その両端にそれぞれ側面板3、4が連接されている。そして、側面板3の先端側となる図面の左側部分には底面板5が形成され、側面板4の先端側となる図面の右側部分には底面板6がそれぞれ形成されている。
【0024】
上面板2は、直列3個を並列2列に起立状態に整列させた缶ビール6個の上面を覆うように、図面の縦辺1a方向にはビール缶3缶分、横片1b方向にはビール缶2缶分の長さからなる面積を備えている。上面板2の両側には缶ビールの側部を覆うようにその高さに相当する側面板3、4がそれぞれ境界線をなす折り線2a、2bを介して連接されている。
【0025】
底面板5、6には先端部で互いに係着し得る雌側の係止部7(底面板5側)および雄側の係止部8(底面板6側)がそれぞれ形成されている。
【0026】
図面の左側に位置している底面板5側の係止部7は、先端部を形成する展開シートの一方の縦辺1aに平行な第1係止部7aと、その内側に同じく縦辺1aに平行に設けられた第2係止部7bとから構成されている。これら第1係止部7a、および第2係止部7bは、縦辺1aの中央とその両端側の3箇所にそれぞれ設けられている。
【0027】
この実施形態では、第1係止部7aの形状は切り抜かれた縦長の略四角孔となっていて、その孔の一辺aが係合部に形成され、第2係止部7bの形状は切り込みとなっている。
【0028】
これに対し、図面の右側に位置している底面板6側の雄側の係止部8は、前記第1係止部7aおよび第2係止部7bとにそれぞれ係着し得るように形成された第1係止部8aおよび第2係止部8bとから構成されている。
【0029】
この実施の形態では、第1係止部8aの形状は、縦辺1aに平行な直線で中央が内側に凹部bとなる切り込みとなっている。第2係止部8bの形状は第1係止部8aの幅から縦辺1aの外側へ先細りとなって首部dに至り、これに続く先端は首部dより幅のある頭部cとして形成されている。
【0030】
また、前記側面板3、4の横辺1b側の各端部には、内側に折り込んで前記上面板2および底面板5、6の隅部との間にビール缶の脱落を防止するためのガゼット10a、10bを構成する折り込み片9が境界線をなす折り線3b、4bを介して連接されている。なお、ガゼット10a、10bの状態は図3に分かりやすく示されている。この折り込み片9の折り目3b、4bには、内側に折り易くするために切り込み(スリット)を入れることが望ましい。
【0031】
このような底面板5、6を係着することにより、缶ビール等の容器19群を包むように収納できるマルチパック用包装箱1が組立てられる。そして、図2や図3に示されるようにマルチパック用包装箱1の側面板3、4が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部Pがそれぞれ形成される。
【0032】
本発明の実施形態における上面板2は、その開口部P側において、容器の天面蓋90の周縁に形成されているリング状突起95の一部が覗くように切り欠き部50が形成されている(図1〜図3参照)。
【0033】
このような切り欠き部50は、缶製品の引き出しが出来るだけ簡易にかつ容易に行えるように形成されている(取り出し容易性の向上)。すなわち、図3に示されるように、覗いているリング状突起95の一部を指先端に引っ掛けて引っ張ることにより、容易に缶ビールを取り出すことができる。
【0034】
このような切り欠き部50の形状は、湾曲形状をなすことが特に好ましく、当該切り欠き部50の個数は、開口部Pから覗く容器の数に対応して同じ個数形成されることが望ましい。ただし、本発明において、切り欠き部50の存在は必須のものではなく、切り欠き部50を備えていないマルチパック用包装箱であってもよいことは勿論である。
【0035】
なお、図1における、符号13はコンプレッションホール(6箇所)、符号14aは山折り線、符号14bは谷折り線をそれぞれ表している。さらに符号15aはトップガゼットホール(4箇所)、符号15bはボトムガゼットホール(4箇所)、符号16はフィンガーホール(2箇所)、符号17は切り取り線をそれぞれ表している。上面板2に符号17で示されている切り取り線は、上面引裂き開口片を形成している。図1の符号17a側から上面引裂き開口片の引き剥がし操作が開始されるようになっている。
【0036】
(本発明の要部構造の説明)
本発明の要部は、側面板3および/または側面板4に、側面板の所定の奥側位置から手前の開口部Pに向けて、引き裂き除去可能な引裂き開口片が形成されている点にある。
【0037】
本発明の実施形態においては、一方の側面板4に引き裂き除去可能な引裂き開口片40が形成されている場合が例示してある。本発明における奥側位置とは、開口部Pから側面板の中ほどに進んだ箇所、すなわち引裂き開口片の先端部分近傍を示している。
【0038】
本発明における引裂き開口片40は、奥側位置付近に切り抜かれた状態で形成された引裂き開始窓αと、これに連接して開口部P側へ延びる引裂き領域形成部βを備えている。本発明では切り抜かれた穴の状態で存在している引裂き開始窓αも引裂き開口片40の一部として含むように定義している。
【0039】
引裂き開口片40は、引き裂き除去される形状(引裂き領域形成部β形状)に沿って不連続な切り込み線を有し、引き裂き除去の際の切り込み線の最終端49が、開口部Pの近傍に形成されている折り込み片9の折り線4bの両端に実質的に向けられて形成されている。
【0040】
ここで、『実質的に向けられて形成されている』とは、容器の取り出し口を形成するために引裂き開口片40を除去する際に、折り込み片9の折り線4bの両端を経由して、開口片40が除去されるようになっていることを意味する。これによって、引裂き開口片40を包装箱本体から容易に引き離すことができる。
【0041】
引裂き除去操作に際し、引裂き開口片40が折り込み片9の折り線4bの両端の位置まで来た後は、引裂き抵抗はほとんどないため、その後、いっきに裂き開口片40を引き裂き除去することができる。
【0042】
引裂き開口片の切り取られる形状(引裂き領域形成部β形状)は、図示のごとく奥側位置から開口部Pに向けて、その引き裂き幅が漸増的に広幅となるように形成されることが好ましい。図4に示されるように引裂き開口片40を取り除いた後に、取り除いた側から手を挿入して包装箱本体内部の製品を取り易くするためである。
【0043】
さらに、引裂き開口片40の形状について詳述すると、図1および図2に示されるように引裂き開口片40の引裂き領域形成部βの切り取り線形状は、「実質的な台形形状」をなしており、図で示される台形形状の上底辺H1の一部を切り取るように「円変形体形状」の引裂き開始窓αが形成されている。
【0044】
「実質的な台形形状」とは、角部が湾曲になっていたり、切り取り線等による直線の蛇行や歪みが生じている場合も台形形状とみなすという意味である。「円変形体形状」とは、略三日月形状から略円形状に至るまでの各変形体のすべての形状をいい、中でも特に、好ましくは、略半円形状から略円形状に至るまでの各変形体である。図1や図2に具体的に示される引裂き開始窓αの形状は、略半円形状のものであり、指の断面形状に類似させるようにするのがよい。引裂き開始窓αの形状を指が挿入できる程度の大きさの穴とすることにより、開口の開始が容易となる。また、このような引裂き開始窓αを予め設けておくことにより、最初に把持する箇所が明確になり、余分な不安を抱かせることなく安心、かつ確実に開封操作を行うことができる。
【0045】
上述のごとく引裂き領域形成部βの台形形状の上底辺H1の一部を切り取るように形成されている円変形体形状の引裂き開始窓αは、その面積の60%以上、特に70〜95%が引裂き領域形成部βの台形形状の内部に入り込むように形成されることが望ましい。引裂き開始窓αに指を挿入した場合に、指による引っ張り力が引裂き領域形成部βに伝わり易く、開封操作が比較的容易に行なえるからである。
【0046】
引裂き領域形成部βは、引裂き開始窓αに繋がり先端近傍を形成する湾曲状の切取り部46と、この湾曲状の切取り部46に連接して開口部P側に向かう切り取り領域47と、切取り部46から切り取り領域47に入ったところで、湾曲状の切取り部46をあたかも弧状として描くように形成された折り線部E(図面においては2本の型押しされた折り線部E)を有している。折り線部Eは、ここを基部としてフラップ状の先端領域45aを手前に引き上げるように引裂いたり、あるいは、一旦、折り線部Eを基部としてフラップ状の先端領域45aを押し込みにより陥没させて凹部を形成し、次いで、手前に引き上げるように引裂いたりするように作用させることができる。
【0047】
この折り線部Eの存在により、フラップ状の折込により形成されたフラップ状の先端領域45aがそのままの形態を維持しやすくなり(すなわち、折り線部Eに沿って折られた形態が維持されて、もとの平面状態に戻り難くなる)、さらに把持操作を簡単に行なうことができる。
【0048】
また、上述した引き裂き開始窓αは、把持操作を確実に行うために、包装箱に収納される容器との関係において、容器が隣接する際に生じる隙間位置に存在するように形成されることが望ましい。すなわち、マルチパック用包装箱に収納される缶ビール容器が包装箱底部に立設されるように配置され、2×3の配列状態(例えば図2に示されるように開口部Pに2個見える)で収納されている場合、引き裂き開始窓αは、容器同士が隣接する際に生じる隙間位置(谷部空間)に存在するように形成されることが好ましい。
【0049】
上記の配置形態の場合、1個目の容器と2個目の容器との接触部位、2個目の容器と3個目の容器との接触部位の2箇所に隙間位置(谷部空間)に存在することになる。いずれの隙間位置(谷部空間)に引き裂き開始窓αを形成してもよいが、箱強度や引き裂き操作のやり易さ等を考慮すれば、開口部Pから最初の隙間位置(谷部空間)に引き裂き開始窓αを形成するようにすることが望ましい。
【0050】
なお、隙間位置(谷部空間)は、図6の平面図に明瞭に示されているのでこの図面を参照してご理解頂きたい。図6は、上述したように組み立てられたマルチパック用包装箱の上面板2側から見た平面図である。
【0051】
また、図1に示されるごとく引き裂き開始窓αの両脇から連接されている湾曲状の切取り部46は、点線状の切り込み線によって形取られて構成するのが良い。また、湾曲状の切取り部46に連接する切り取り領域47は、図1に示されるごとく『へ』の字状の切り込み線、すなわち切り取り領域47を形取る点線状の切り込み線部分と、この点線状の切り込み線部分の奥側位置に連接すると共に、引裂き開口片の内側に切り込まれた線部を備える『へ』の字状の切り込み線により形成するのが良い。ただし、『へ』の字状の切り込み線に限定されることなく、例えば、点線状やY字状等の他の切り込み形状としてもよい。
【0052】
また、上述してきた図1および図2に示されるような引裂き開口片40は、例えば、図7〜図9にそれぞれ示されるような形態の引裂き開口片40に改変してもよい。
【0053】
図7に示される引裂き開口片40が図1に示されるそれと異なる点は、引裂き開始窓α1の形状が図1のものと比較して、より半円形状に近い形になっている点にある。すなわち、最も奥に位置するラインL1がより直線に近くなっている。
【0054】
また、図8に示される引裂き開口片40が図1に示されるそれと大きく異なる点は、実質的な台形形状をなしている引裂き領域形成部βの上底辺H1のさらに奥側に、四角形形状の引裂き開始窓α2を連接して設けているところにある(ただし、最奥部に位置する角部は湾曲形状とされている)。引裂き開始窓α2の幅W2は、上底辺H1の長さとほぼ同程度に設定されている。引裂き開始窓α2の奥域長さD2は指が入る程度の大きさとされる。図8に示される引裂き開始窓α2の形状では、窓が大きく形成されており指が3本程度入るようになっているので、開封の際により力が入りやすくなるというメリットがある。引裂きに力が必要な資材の場合に特に有効な形態である。なお、図8において、折り線部Eは1本の場合が例示してある。
【0055】
また、図9に示される引裂き開口片40が図1に示されるそれと大きく異なる点は、実質的な台形形状をなしている引裂き領域形成部βの上底辺のさらに奥側に、四角形形状の引裂き開始窓α3を連接して設けているところにある。ただし、引裂き開始窓α3は、その幅W3が奥部に行くにつれて漸減するように形成されており、しかも最奥部に位置する角部は湾曲形状とされており、あたかも跳び箱の最上部の部分のような形状をなしている。図9に示される引裂き開始窓α3の形状は、引裂きのために特に力を必要とするが、デザイン上、どうしても引裂き開始窓を大きく切り欠けない場合に特に有効な形態である。
【0056】
上述してきた本発明の実施形態では、側面板4に引裂き開口片40を形成させた場合を例示したが、これに限定されることなく、対向する側面板3、4にそれぞれ、引裂き開口片40を鏡像関係に一対形成(合計2つ形成)させるようにしてもよい。
【0057】
また、2つの開口部Pに向けて4つの引裂き開口片を形成することもできる。すなわち、対向する側面板3、4にそれぞれ、鏡像関係に形成された引き裂き除去可能な引裂き開口片を2対、合計4つ形成するようにしてもよい。また、この4つの状態から1つの引裂き開口片の形成を省略して3つの引裂き開口片としてもよい。
【0058】
また、2つの引裂き開口片を対角に配置してもよい。
【0059】
なお、上記の実施形態では、2×3配列のいわゆる6缶マルチパック用包装箱について説明してきたが、2×4配列のいわゆる8缶マルチパック用包装箱についても同様に適用することができる。8缶マルチパック用包装箱の場合、1個目の容器と2個目の容器との接触部位、2個目の容器と3個目の容器との接触部位、3個目の容器と4個目の容器との接触部位の3箇所に隙間位置(谷部空間)に存在することになる。いずれの隙間位置(谷部空間)に引き裂き開始窓α〜α3を形成してもよいが、この場合もやはり開口部Pから最初の隙間位置(谷部空間)に引き裂き開始窓α〜α3を形成するようにすることが望ましい。
【0060】
(具体的包装作用の一例の説明)
次に具体的包装作用の一例を説明する。まず、図1に示されるパック用シートを裏返して、その上面板2の部分の上部に缶ビール6本の底部を上向きとして直列した3缶を2列に並列させて載置する。
【0061】
その上で、缶ビールの側部を覆うように側面板3、4を折り線2a、2bを境界線として内側に折り、各折り込み片9を内側に折り込み、上面板2と側面板3、4との隅部にトップガゼット10aを、また側面板3、4と底面板5、6との隅部にボトムガゼット10bをそれぞれ形成し、さらに缶ビールの底部を覆うように底面板5および6を折り線3a、4aを境界線として内側に折り、底面板6に設けられている雄側の第1係止部8aの凹部bを底面板5の雌側の第1係止部7aの横長の四角孔を形成する一辺aに係着させることにより缶ビールを包装する。その係着が脱落しないように、底面板6に設けられている形態固定用のフック片8bを、頭部から底面板5に設けられている雌側の係止部7bおよび7cのスリットを通して互いに係着させてフック片8bの首部dで抜け止めする。
【0062】
このパック用シート1を上面板2面が上になるように反転させると図3に示されるような斜視図の形態となる。
【0063】
なお、上述のマルチパック用包装箱に容器を収納することによりマルチパック包装製品が出来あがる。
【0064】
(引裂き開口片40を除去する操作の一例の説明(図1の例)
引裂き開口片40の引裂き開始窓αに指先を挿入した後、指先を挿入したまま把持して引裂き領域形成部βを起こしながら手前の開口部P側に引く。
【0065】
すると、引裂き開口片40の形状を形取っている切り取り線(ミシン目)に沿って、引裂き開口片40は開口部P側に徐々に切り取られて行き、折り込み片9の折り線4bの両端近傍を経由していっきに引き裂き除去される。
【0066】
しかる後、図4に示されるように引裂き開口片40を取り除いた後に形成された取り出し開口部に、手を挿入して包装箱本体内部の製品を取り出す操作が行われる。
【0067】
なお、本発明における実施形態では缶ビールの包装を例にとって説明したが、このものに限定されるものではない。例えば、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等のノンアルコール飲料缶などその他の各種缶製品にも適用できることは勿論のことである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のマルチパック用包装箱は、例えば缶ビール、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等ノンアルコール飲料缶等の一定数量の容器を包装するための包装箱であり、包装産業一般に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のマルチパック用包装箱の展開図の一例を示したものである。
【図2】図1に示される展開された箱オリジナル紙を組み立てた斜視図である。
【図3】図1に示される展開された箱オリジナル紙に缶製品を収納した状態で組み立てた斜視図である。
【図4】引裂き開口片を取り除いた後に形成された取り出し開口部に、手を挿入して包装箱本体内部の製品を取り出す状態を示す斜視図である。
【図5】マルチパック用包装箱を4個、出荷カートンケース内に納めた状態を模式的に示した概略斜視図である。
【図6】マルチパック用包装箱の平面図であり、図3の平面図に相当する。
【図7】本発明のマルチパック用包装箱の他の変形例の展開図を示したものである。
【図8】本発明のマルチパック用包装箱の他の変形例の展開図を示したものである。
【図9】本発明のマルチパック用包装箱の他の変形例の展開図を示したものである。
【符号の説明】
【0070】
1…マルチパック用包装箱
2…上面板
3、4…側面板
5、6…底面板
15a…トップガゼットホール
15b…ボトムガゼットホール
40…引裂き開口片
50…切り欠き部
α…引裂き開始窓
β…引裂き領域形成部
E…折り線部
P…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個を並列に配置された容器群の上面を覆う上面板と、
この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆うように配置された対向する側面板と、
これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する底面板とを備え、前記底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができるとともに、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されるマルチパック用包装箱において、
前記側面板には、側面板の所定の奥側位置から手前の開口部に向けて、引き裂き除去可能な引裂き開口片が少なくとも1つ形成されており、
当該引裂き開口片は、奥側位置付近に切り抜かれた状態で形成された引裂き開始窓と、これに連接して開口部側へ延びる引裂き領域形成部を有してなることを特徴とするマルチパック用包装箱。
【請求項2】
前記側面板に形成された引裂き開口片は、引き裂き除去される形状に沿って不連続な切り込み線を有し、引き裂き除去の際の切り込み線の最終端が、開口部の近傍に形成されている折り込み片の折り線の両端に実質的に向けられて形成されてなる請求項1に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項3】
前記側面板に形成された引裂き開口片の引裂き領域形成部は、奥側位置から開口部に向けて、その引き裂き幅が漸増的に広幅となるように形成されてなる請求項1または請求項2に記載のマルチパック用包装箱。
装箱。
【請求項4】
前記側面板に形成された引裂き開口片の引裂き領域形成部は、折り線部を備え、この折り線部を基部としてフラップ状の先端領域を手前に引き上げるように引裂いたり、あるいは、一旦、折り線部を基部としてフラップ状の先端領域を押し込みにより陥没させて凹部を形成し、次いで、手前に引き上げるように引裂いたりするように作用させることができるようになっている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項5】
前記引き裂き開始窓は、包装箱に収納される容器との関係において、容器が隣接する際に生じる隙間位置に存在するように形成されてなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項6】
前記包装箱に収納される容器は、包装箱底部に立設された円筒状の容器であり、
前記引き裂き開始窓は、容器が隣接する際に生じる隙間位置(谷部空間)に存在するように形成されてなる請求項5に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項7】
前記引裂き領域形成部は、実質的な台形形状をなし、当該台形形状の上底辺の一部を切り取るように円変形体形状(略三日月形状〜円形状までの変形体)の引裂き開始窓が形成されてなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項8】
前記引裂き開始窓は、その面積の60%以上が台形形状の内部に入り込むように形成されてなる請求項7に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項9】
前記引裂き領域形成部は、実質的な台形形状をなし、当該台形形状の上底辺のさらに奥側に引裂き開始窓が連接して形成されてなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項10】
前記引裂き開始窓は、略四角形形状をなす請求項9に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のマルチパック用包装箱に容器を収納してなるマルチパック包装製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−302276(P2007−302276A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131022(P2006−131022)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】