説明

マルチパック用包装箱

【課題】収納された容器の容器底を固定する容器底固定片が、製造工程における搬送過程や、製品出荷後の配送過程における取り扱い時に、容器底から外れ、外部に飛び出してしまうのを抑制することのできるマルチパック用包装箱を提供する。
【解決手段】マルチパック用包装箱1は、並列配置された複数個の容器100の上面を覆う上面板2と、上面板2の両側部に連接され、各容器100の側面を覆うように対向配置される側面板3,4と、側面板3,4のそれぞれに連接され、互いに係着し得る係止部7,8を有する底面板5,6と、底面板5,6と側面板3,4との連接部位に位置する折り線3a,5aを跨ぐようにして形成されている、各容器100の容器底凹部115内に潜り込ませ得る複数の容器底固定片30とを備え、容器底固定片30は、容器底固定片30を容器底凹部115内に潜り込ませたときに、容器底凹部115に当接し得る係止爪部31を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば缶ビール、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶;缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等のノンアルコール飲料缶等の飲料が充填された容器を一定数量並列した状態のまま包装するマルチパック用包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶ビールや缶ジュース等の容器を複数個、一列で又は複数列で起立させた状態のまま整列させて置き、複数個の容器からなる容器群の上面(天面)、側面及び下面(底面)を包み込むようにして包装することのできる紙製のマルチパック用包装箱が使用されている。かかるマルチパック用包装箱は、一般に、容器群の上面(天面)を覆う上面板、上面板の対向する両端部のそれぞれに連接され、容器群の側面を覆う側面板、及び各側面板の端部に連接され、容器群の下面(底面)を覆う底面板を備え、側面板が存在しない両端部において容器群の少なくとも一部の側面を視認可能な開口部が形成されている。
【0003】
このようなマルチパック用包装箱を使用することにより、複数個の缶ビールや缶ジュース等を1個の包装体に纏め、一度にかつ簡易に持ち運ぶことができるようになり、さらに、纏め売りの効果も相俟って、当該マルチパック用包装箱の使用が近年急速に拡大しつつある。
【0004】
このようなマルチパック用包装箱においては、コストダウンや紙資源の有効活用を図るために、マルチパック用包装箱の板紙幅を縮小して使用面積を縮小することが試みられている。しかしながら、マルチパック用包装箱の板紙幅を縮小すると、一般に、容器の保持力が低下する傾向となる。すなわち、板紙幅の縮小と容器の保持力向上とは、いわゆるトレードオフの関係にあると言え、板紙幅を縮小して使用面積を縮小し、かつ、容器の保持力を向上させようとすることは、極めて困難である。
【0005】
このような問題を解決するために、従来、マルチパック用包装箱を用いて包装される容器(容器群)の保持力を向上させるために、当該マルチパック用包装箱の底面板に、各容器の底部(容器底凹部)と係合し得るロッキングタブ(容器底固定片)が形成されてなるものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6988617号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のマルチパック用包装箱において、ロッキングタブは、一部が開放する略U字状の切り取り線により構成されるものであって、当該切り取り線に沿って切り取られたロッキングタブを順次山折り、谷折りに2段に折り曲げ、折り曲げられたロッキングタブを容器底凹部内に潜り込ませ、ロッキングタブの先端部を容器底凹部の内壁に当接させることで、底面板側から容器を固定することができる。
【0008】
しかしながら、容器(容器群)を包装したマルチパック用包装箱の製造工程における搬送過程や、製品出荷後の配送過程における取り扱い時に、当該ロッキングタブが容器底凹部の内壁との当接部位から外れて外部に飛び出してしまうことがあり、それにより、マルチパック用包装箱における容器の保持力が低下してしまうという問題や、見栄えが悪くなってしまうという問題がある。
【0009】
このような実状のもと、本発明は、収納された容器の容器底を固定する容器底固定片が、製造工程における搬送過程や、製品出荷後の配送過程における取り扱い時に、容器底から外れ、外部に飛び出してしまうのを抑制することのできるマルチパック用包装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、容器底の周縁に形成されたリング状の凸状リム部により包囲される容器底凹部を有する容器を複数個まとめて収納するためのマルチパック用包装箱であって、並列配置された複数個の容器からなる容器群の上面を覆う上面板と、前記上面板の両側部に連接され、前記各容器の側面を覆うように対向配置される側面板と、前記側面板のそれぞれに連接され、互いに係着し得る係止部を有する底面板と、前記底面板と前記側面板との連接部位に位置する折り線を跨ぐようにして形成されている、前記複数の容器のそれぞれの前記容器底凹部内に潜り込ませ得る複数の容器底固定片とを備え、前記容器底固定片は、当該容器底固定片を前記容器底凹部内に潜り込ませたときに、当該容器底凹部に当接し得る係止爪部を有することを特徴とするマルチパック用包装箱を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記側面板が存在しない両端部において前記容器群の一部の側面を視認可能な開口部が形成されており、前記複数の容器底固定片のうちの少なくとも前記開口部側に位置する前記容器に対応する容器底固定片は、前記係止爪部を有するのが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記各容器底固定片は、複数の前記係止爪部を有するのが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1〜3)においては、前記容器底固定片は、その一辺が前記底面板に固着されているとともに、当該容器底固定片の形態に沿って前記底面板から切り取られることで、前記底面板に固着される当該一辺を基部として可動可能に構成されており、前記係止爪部は、前記容器底固定片の基部と当該基部に対向する先端部との間に形成された、当該基部側に向けて開放する略半円弧状、略U字状又は略コの字状の切り込み線により構成されているのが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)においては、前記底面板から切り取られ、前記基部に沿って山折りとされ、前記基部と前記先端部との間に位置する、前記基部との平行線に沿って谷折りとされた前記容器底固定片を、前記容器底凹部内に潜り込ませたときに、前記先端部が前記容器の凸状リム部に当接し得るように、かつ前記先端部及び前記谷折りされた平行線の間の面と、前記谷折された平行線及び前記基部の間の面とのなす角度、並びに前記谷折りされた平行線及び前記基部の間の面と前記底面板とのなす角度が、いずれも90°未満となるように、前記容器底固定片が構成されており、前記係止爪部を構成する前記切り込み線の両端部が、前記谷折りとされる平行線上に位置するのが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明4,5)においては、前記容器底固定片は、前記基部と前記先端部との間に、前記基部における幅よりも広幅の拡幅部を有するのが好ましい(発明6)。
【0016】
また、本発明は、上記発明(発明1〜6)に係るマルチパック用包装箱に容器を収納してなることを特徴とするマルチパック包装製品を提供する(発明7)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収納された容器の容器底を固定する容器底固定片が、製造工程における搬送過程や、製品出荷後の配送過程における取り扱い時に、容器底から外れ、外部に飛び出してしまうのを抑制することのできるマルチパック用包装箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るマルチパック用包装箱を示す展開図である。
【図2】図2は、図1に示す展開された箱オリジナル紙を組み立てた本発明の一実施形態に係るマルチパック用包装箱(容器が収納された状態)を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態における保持フラップ機構部とこれに隣接する上部開口穴(端部開口穴)との形態(図1におけるA部の形態)を主として示す部分拡大平面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態における容器底固定片の近傍の形態(図1におけるB部の形態)を示す部分拡大平面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態における上面板とこの上面板の両端に連接する側面板との連接部近傍を示した部分拡大平面図である。
【図6】図6は、図1に示す展開された箱オリジナル紙を組み立てた本発明の一実施形態における容器底固定片の近傍の形態(図1におけるB部の形態)を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態における容器底固定片を2段に折り曲げて容器底凹部に挿着させ、容器が固定された状態を示す部分拡大断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態における容器底固定片の近傍を主として示す部分拡大平面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態における容器底固定片の他の形態を示す部分拡大平面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態における容器底固定片上の係止爪部31の他の形態を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るマルチパック用包装箱について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、缶ビールを6個収納(直列した3缶を2列に並列配置させて収納)することのできる一般的なマルチパック用包装箱を例に挙げて説明するが、本発明に係るマルチパック用包装箱は、これに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチパック用包装箱を示す展開図であり、図2は、図1に示す展開された箱オリジナル紙を組み立てた本実施形態に係るマルチパック用包装箱(容器が収納された状態)を示す斜視図であり、図3は、本実施形態における保持フラップ機構部とこれに隣接する上部開口穴(端部開口穴)との形態(図1におけるA部の形態)を主として示す部分拡大平面図であり、図4は、本実施形態における容器底固定片の近傍の形態(図1におけるB部の形態)を示す部分拡大平面図であり、図5は、本実施形態における上面板とこの上面板の両端に連接する側面板との連接部近傍を示した部分拡大平面図であり、図6は、図1に示す展開された箱オリジナル紙を組み立てた本実施形態における容器底固定片の近傍の形態(図1におけるB部の形態)を示す斜視図であり、図7は、本実施形態における容器底固定片を2段に折り曲げて容器底凹部に挿着させ、容器が固定された状態を示す部分拡大断面図である。
【0021】
本実施形態に係るマルチパック用包装箱1において収納対象となる容器100は、容器底110の周縁に形成されたリング状の凸状リム部111で包囲される容器底凹部115を有するものである(図6参照)。
【0022】
本実施形態に係るマルチパック用包装箱1は、図1に示す展開シート(パック用シート)を組み立てることによって形成することができ、展開シートは、図1に示すように、横長の略矩形形状をなしている。
【0023】
なお、本実施形態に係るマルチパック用包装箱1について説明する上で、便宜上、展開シートの短手方向を「幅方向」と、展開シートの長手方向を「長さ方向」と称することとする(図1に示した矢印を参照)。
【0024】
図1に示す展開シートにおいて、その中央部は上面板2を構成し、上面板2の両端部のそれぞれに側面板3,4が折り線2aを介して連接されている。そして、側面板3における、上面板2が連接されている端部(折り線2a側)と対向する端部には底面板5が折り線3a,5aを介して連接され、側面板4における、上面板2が連接されている端部(折り線2a側)と対向する端部には底面板6が折り線3a,5aを介して連接されている。なお、折り線5aは、その両端部が開口部P側の端部にまで至るように側面板3,4と底面板5,6との境界部分に形成されているが、折り線3aは、開口部P側の端部にまでは至らないように側面板3,4と底面板5,6との境界部分に形成されている。
【0025】
本実施形態においては、上面板2は、直列3個を並列2列に起立状態に整列させた缶ビール6個の上面を覆うように、幅方向には略ビール缶3缶分、長さ方向には略ビール缶2缶分の長さからなる面積を備えている。そして、上面板2の両端部には缶ビールの側部を覆うようにその高さに相当する側面板3,側面板4がそれぞれ境界線をなす折り線2aを介して連接されている。
【0026】
底面板5,6には、互いに係着し得る係止部7(底面板5側),8(底面板6側)が、それぞれ形成されている。係止部7の係止孔7aと係止部8の切り込み部分8aとが対になり、また、係止部7の切り込み孔7bと係止部8の係止片部分8bとが対となり、底面板5,6が互いに係着される。
【0027】
そして、係止部7,8を介して底面板5,6を係着することにより、複数の缶容器100からなる容器群を包むように収納できるマルチパック用包装箱1が組立てられる(図2参照)。その結果、側面板3,4が存在しない両端部において容器群の一部の側面を視認可能な開口部Pが、それぞれ形成されることになる。
【0028】
図1に示すように、側面板3,4の両端部(開口部P側)における上面板2側には、内部に収納される容器が包装箱の開口部Pから飛び出したり脱落したりするのを防止し得る、容器の上部を保持するための保持フラップ機構部90が形成されている。
【0029】
さらに、上面板2と側面板3,4との連接部分の近傍であって、開口部Pに近い位置に、開口部P側に配置された4つの容器のそれぞれに対応する4つの端部開口穴21が形成されており、端部開口穴21の間に位置するように、略中央に配置された2つの容器のそれぞれに対応する2つの中部開口穴22が形成されている。この容器に対応する端部開口穴21及び中部開口穴22の縁部の一部が容器の上部に当接することによって、収納される容器の上部が係止される。本実施形態においては、端部開口穴21及び中部開口穴22と保持フラップ機構部90との双方の係止効果によって、これらと係合される容器の保持力を格段に向上させることができる。さらには、このような仕様によりマルチパック用包装箱1の少なくとも幅方向の寸法を短縮することができるため、紙原料の使用量の削減を図ることができる。
【0030】
図1及び図3に示すように、保持フラップ機構部90は、開口部Pの内側に折り込まれて容器を保持する機能を有する押込フラップ片92と、容器の上部を係止して抜き止め作用をする抜き止め帯片91とを有する。
【0031】
押込フラップ片92は、山折り線92aを介してマルチパック用包装箱1の内部に折り込まれるように構成されている。そのため、山折り線92aは、組み立てられたマルチパック用包装箱1における側面板3,4の開口部P側の端部を構成することになる。抜き止め帯片91は、谷折り線91aを介してその一部が押込フラップ片92に連続するとともに、谷折り線91bを介してその一部が上面板2に連続するように構成されており、抜き止め帯片91と押込フラップ片92との境界の一部は離間されている。このように、これらの境界の一部が離間されていることによって、押込フラップ片92のマルチパック用包装箱1の内部への折り込み及び抜き止め帯片91の谷折りの操作が可能となる。
【0032】
本実施形態における抜き止め帯片91の帯状形態の片端部91’は、端部開口穴21の開口形態によって形作られている。そして、山折り線92aの片端及び谷折り線91aの片端は、それぞれ、端部開口穴21に至るまで延設されている。
【0033】
本実施形態における山折り線92aは、長さ方向に平行なライン、又は上面板2に向かうに従い開口部P側方向(外側方向)に傾斜したライン(長さ方向に対する傾斜角度θ=0°超5°以下、好ましくは1〜3°)として構成されている。この山折り線92aの傾斜角度θは、マルチパック用包装箱1に収納される容器の胴径等に応じて、最適な保持力を奏し得るように適宜設定することができる。
【0034】
また、本実施形態において、端部開口穴21の開口形態は、図3に示すように、角の丸められた頂点が底面板5(6)側に向く略逆三角形状であって、最下点を側面板3(4)の開口部P側にシフトさせた形態(略逆直角三角形状)とするのが好ましい。中部開口穴22の開口形態は、図1に示すように、側面板3(4)から上面板2側に向かって拡がる略ベル形状(略鐘形状)であるのが好ましい。
【0035】
図1に示すように、本実施形態における側面板3,4の開口部P側の端辺のうち、底面板5,6側に位置する開口部P側の端辺は、押込フラップ片92の下端92bから底面板5,6側に向けて伸びる非傾斜辺3A,4Aと、この非傾斜辺3A,4Aに連続し、開口部P側方向(外側方向)に傾斜する傾斜辺3B,4Bとを含む。
【0036】
開口部Pの近傍における側面板3,4と底面板5,6との境界部においては、連接部80を介して側面板3,4と底面板5,6とが連接されている。かかる連接部80は、図4に示すように、一端が傾斜辺3B,4Bに連続し、他端が底面板5,6の開口部P側の端辺5A,6Aに連続する連接辺80A、傾斜辺3B,4Bと連接辺80Aとの連続部81にまで至る山折り線80a、及び底面板5,6の開口部P側の端辺5A,6Aと連接辺80Aとの連続部82にまで至る山折り線80bにより囲まれた領域(略三角形状の領域)として構成される。
【0037】
図4に示すように、連接部80は、側面板3(4)と底面板5(6)との連接部分(境界部分)に位置するようにして設けられる。そして、連接辺80Aは、底面板5(6)の開口部P側の端辺5A(6A)よりも内側に位置し、山折り線3aを開口部P側に向けて伸ばした仮想線VLと交差するように位置する。このような位置関係で連接部80が設けられていることで、当該連接部80(連接辺80A)に対して衝撃が加わり難くなり、仮に連接部80(連接辺80A)に対して衝撃が加わったとしても、山折り線80a,80bに沿って連接部80がマルチパック用包装箱1の内側に向けて折れ曲がることで当該衝撃を吸収し得るため、当該連接部80の破損を抑制することができる。すなわち、山折り線80a,80bの存在により、連接部80に加えられた衝撃に対する緩衝効果が奏されることになる。
【0038】
図4に示すように、本実施形態において、連接辺80Aは、傾斜辺3B(4B)と端辺5A(6A)との間に介在しており、その形状は、角部が丸められた折曲部を両端部に有する形状であってもよいし、開口部P側に向けて凸になる湾曲形状を有していてもよい。連接辺80Aがこのような形状を有することで、連接部80(連接辺80A)に対して加わった衝撃を分散することができるため、連接部80の破損をより抑制することができる。
【0039】
2本の山折り線80a,80bのなす角度θ’は、連接部80(連接辺80A)に対して加わった衝撃を吸収可能であり、当該連接部80の破損を抑制可能である限り特に制限されるものではないが、好適には90〜100°程度である。
【0040】
傾斜辺3B(4B)と連接辺80Aとの連続部81、及び端辺5A(6A)と連接辺80Aとの連続部82は、開口部P側に向けて凹になる湾曲形状(曲率半径0.7mm程度(R0.7))を有している。連続部81,82は、連接部80(連接辺80A)に加わった衝撃が集中しやすい部分であり、また、当該連続部81,82に至る山折り線80a,80b部分がその他の部分(折り線が形成されていない部分)に比して低強度であることで、連続部81,82が角形状を有していると、当該衝撃により山折り線80a,80bに沿って破損しやすくなる。しかし、本実施形態においては、連続部81,82が湾曲形状を有していることで、連接部80(連接辺80A)に加わった衝撃が連続部81,82に集中し難くなるため、山折り線80a,80bに沿って破損するのを抑制することができる。
【0041】
なお、傾斜辺3B(4B)は、折曲点3C(4C)にて連続部81に向かって折れ曲がり、当該連続部81にて連接辺80Aに連続している。また、端辺5A(6A)は、折曲点5B(6B)にて連続部82に向かって折れ曲がり、当該連続部82にて連接辺80Aに連続している。かかる折曲点3C(4C),5B(6B)は、開口部P側に向けて凸になる湾曲形状(曲率半径1mm程度(R1))を有している。これにより、当該折曲点3C(4C),5B(6B)に手指が触れたとしても痛みを伴うことがないという効果を奏し得る。
【0042】
なお、図5に示すように、両端部の容器に対応して設けられた端部開口穴21の中心線G1は、両端部に位置して収納されている容器の中心線B1より、外方(開口部側)にずれているのが望ましい。端部に位置する端部開口穴21の中心線G1は、端部基準線L1と平行な線であり、容器の中心線B1も、端部基準線L1と平行な線である。ずれ距離K1(単位:mm)は、0.5〜3.0mm程度に設定すればよい。このようにして両端部に位置する端部開口穴21の中心位置を、缶容器の中心位置に対して、幅方向の外側に向けて所望の距離K1のずれを生じさせることによって、缶の保持力を向上させることができる。
【0043】
中部開口穴22は、その幅P22が端部開口穴21の幅P11よりも大きくなるように形成されるのが望ましい。これらの幅の比(P22/P11)は、好ましくは1.1〜1.5、より好ましくは1.2〜1.4の範囲で適宜設定することができる。さらに、中部開口穴22は、その開口面積S2が端部開口穴21の開口面積S1よりも大きくなるように形成されるのが好ましい。これらの開口面積比(S2/S1)は、1.1〜3.1の範囲で適宜設定することができる。
【0044】
なお、図1に示すように、上面板2には、指を挿入して持ち上げるための2つのフィンガーホール16と、切り取り線17とが形成されている。この切り取り線17により、上面引裂き開口片が形成されており、上面引裂き開口片の引き剥がし操作が可能となっている。
【0045】
図1に示すように、側面板3,4と底面板5,6との境界部分には、収容される複数の容器のそれぞれに対応する容器底固定片30が、側面板3,4と底面板5,6との折り線3a,5aを跨ぐようにして形成されている。容器底固定片30は、その一辺が基部33として底面板5,6に固着されているとともに、容器底固定片30の形態に沿って底面板5,6から切り取られることで、基部33を基線として可動可能に構成されている。
【0046】
また、図4に示すように、容器底固定片30には、折り線5aと同一線(基端部32)上に端部34a,34aが位置し、基部33側に向けて開放する略半円弧状の切り取り線34が2つ形成されており、この2つの切り取り線34のそれぞれにより囲まれた領域として2つの係止爪部31が構成されている。
【0047】
かかる容器底固定片30は、図6及び図7に示すように、基部33を基線として山折りに折り曲げられるとともに、係止爪部31を構成する切り取り線34の端部34a,34aを結ぶ基端部32を基線として谷折りに折り曲げられ、その状態で缶容器100の容器底凹部115内に潜り込ませたときに、先端35がリング状の凸状リム部111の内側湾曲部に当接されるように構成され、これにより、容器底が固定される。そして、基端部32を基線として谷折りに折り曲げられるときに、略半円弧状の切り取り線34により切り取られ、基部33及び基端部32を含む面と同一平面を構成するようにして立設する係止爪部31が現れることになる。この係止爪部31が缶容器100の容器底凹部115に当接することにより容器底固定片30が缶容器の底部(容器底凹部115内)に係止されるとともに、先端35が容器底凹部115内から飛び出してしまうのを、係止爪部31と容器底凹部115面との摩擦により抑制することができる。その結果として、容器がその底部において強固に固定されることになる。
【0048】
また、容器底固定片30は、マルチパック用包装箱1に収納される缶容器100との位置関係において、基部33及び基端部32を基線として2段に折り曲げられ、容器底凹部115内に潜り込ませたときに、先端35及び基端部32を含む面30aと、基端部32及び基部33を含む面30bとのなす角度θ1が90°未満となるように、かつ底面板5(6)と、基端部32及び基部33を含む面30bとのなす角度θ2が90°未満となるように構成されている。すなわち、容器底固定片30は、容器底凹部115内に潜り込ませた状態において、2段に折り曲げられた容器底固定片30と底面板5(6)とにより、略Z字状に構成されることになる。これにより、容器底固定片30によって容器を容器底から保持することができる。
【0049】
なお、係止爪部31の基端部32からの長さ方向における長さは、基部33と基端部32との間の長さ方向における長さ、及び缶容器100の容器底凹部115の缶容器100の軸方向における深さ等に応じて適宜設定することができる。しかし、係止爪部31の当該長さを極端に長くしてしまうと、容器底固定片30を基端部32に沿って谷折りに折り曲げたときに、係止爪部31が切り取り線34に沿って切り取られず、係止爪部31を立設させることができなかったり、係止爪部31が途中から又は基端部32に沿って折れ曲がってしまったりするおそれがある。したがって、係止爪部31の当該長さは、容器底固定片30を基端部32に沿って谷折りに折り曲げたときに、係止爪部31が切り取り線34に沿って切り取られ、係止爪部31を立設させることができ、かつ係止爪部31が折れ曲がることのない程度の長さとするのが望ましい。
【0050】
このような容器底固定片30の好適な形態について、以下に説明する。
図8に示すように、複数(6つ)の容器底固定片30のうち、幅方向略中央に位置する2つの容器底固定片30は、基部33と先端35との間であって、基部33から、先端35の容器底の固定に必要な設置幅W1に至るまでの間に、基部33の両側部の幅(基準幅)W0よりも広幅の2つの拡張部36,38を有する。先端35は、容器100の容器底110周縁に形成されたリング状の凸状リム部111の内側湾曲形状に沿った形状を有する。このような形状を有することで、リング状の凸状リム部111の内側に当該先端35を当接させたときに、容器の保持力を向上させることができる。
【0051】
図8に示す容器底固定片30は、基部33から先端35に向かっていく途中に、幅方向外方に膨らむ第1の拡張部38(幅W4)を有し、さらに先端35側に、幅方向外方に膨らむ第2の拡張部36(幅W5)を有する。つまり、2つの広幅の拡張部のうち、第2の拡張部36が、容器底の固定に必要な設置幅W1に至る直前に設けられており、第1の拡張部38が第2の拡張部36よりも基部33側に設けられている。第2の拡張部36を設けることにより、容器底固定片30の先端35における容器底の固定に必要な設置幅W1を増大させることができるとともに、極端な凹凸のない簡易な容器底固定片30の形態が実現でき、高速自動充填機械によるパッケージングをより確実に行なうことができる。
【0052】
一方、開口部P近傍に位置する4つの容器底固定片30は、第1の拡張部38が、幅方向内側に向かって広幅となっているが、開口部P側に向かっては広幅となっていない点以外は、上述した幅方向略中央に位置する2つの容器底固定片30と略同様の構成を有する。当該容器底固定片30における第1の拡張部38を、開口部P側に向かって広幅としてしまうと、容器底固定片30がその形態に沿って切り取られた後の開口穴の縁部と、底面板5,6の開口部側端片との間の長さが短くなってしまい、当該部分の強度が低下してしまうおそれがある。
【0053】
なお、容器底固定片30は、上述のものに限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような形態のものであってもよい。
【0054】
図9に示すように、容器底固定片30は、基部33の両側部の幅(基準幅)W0よりも広幅W4の拡張部38,38を有し、当該拡張部38,38は、可動片の先端35に向かって両側部に設けられている。
【0055】
かかる容器底固定片30においては、基準幅W0の基部33近傍から広幅の拡張部38,38に至るまでに、可動片の両側部にそれぞれ括れ部39,39(幅W2)が設けられている。すなわち、容器底固定片30は、基部33から先端35に向かう途中に括れ部39を有し、当該括れ部39からさらに先端35に向かう両側部に、それぞれ、外方に脹らむ拡張部38を有する。
【0056】
一方、開口部P近傍に位置する4つの容器底固定片30は、拡張部38が、幅方向内側に向かってのみ膨らんでいるが、開口部P側に向かっては膨らんでいない点以外は、上述した幅方向略中央に位置する2つの容器底固定片30と略同様の構成を有する。
【0057】
上述したような構成を備える本実施形態に係るマルチパック用包装箱1の中に容器(6個の缶容器)を収納することにより、マルチパック包装製品が完成する。
【0058】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0059】
上記実施形態においては、缶ビールを包装するためのマルチパック用包装箱を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等のノンアルコール飲料缶などその他の各種缶製品に適用してもよい。
【0060】
上記実施形態においては、すべての容器底固定片30に係止爪部31を構成する切り取り線34が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、開口部P側に位置する4つの容器底固定片30に少なくとも当該切り取り線34が形成されていればよく、幅方向略中央に位置する2つの容器底固定片30には当該切り取り線34が形成されていなくてもよい。
【0061】
上記実施形態においては、各容器底固定片30に2つの切り取り線34が形成され、当該容器底固定片30を2段に折り曲げたときに、2つの係止爪部31が立設するように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各容器底固定片30に1つの切り取り線34が形成されていてもよいし、3つ以上の切り取り線34が形成されていてもよい。
【0062】
上記実施形態において、各容器底固定片30に形成されている切り取り線34の形状(係止爪部31の形状)は、基部33側に向けて開放する略半円弧状であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、図10に示すように、当該形状は、基部33側に向けて開放する略U字状(図10(A))、略コの字状(図10(B))、略台形状(図10(C))等であってもよい。
【実施例】
【0063】
〔実施例1〕
図1に示す展開シートを組み立てて、350mL缶ビール6本を纏めて包装したマルチパック用包装箱1を20パック用意した。次に、直方体形状のラップアラウンド式包装箱5ケースのそれぞれに当該マルチパック用包装箱1を4パック(縦2パック×横2パック)ずつ纏めて梱包した。そして、当該ラップアラウンド包装箱の底面板側における任意の一の角部から落下するように、所定の高さから各ラップアラウンド式包装箱を落下させた。
【0064】
〔比較例1〕
係止爪部31が設けられていない以外は実施例1と同様の構成を有するマルチパック用包装箱を用意し、実施例1と同様にしてラップアラウンド式包装箱を落下させた。
【0065】
上記落下試験の結果、実施例1のマルチパック用包装箱1においては、容器底固定片30が容器底から外れ、飛び出してしまうことがなかったが、比較例1のマルチパック用包装箱合計20パック(ラップアラウンド式包装箱5ケース×マルチパック用包装箱4パック)中の7パックにおいて、落下の衝撃によって容器底固定片が容器底から外れ、飛び出してしまった。
【0066】
上記試験結果から明らかなように、実施例1のマルチパック用包装箱によれば、容器底固定片に係止爪部が設けられていることで、容器底から容器底固定片が外れて、飛び出してしまうのを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のマルチパック用包装箱は、例えば缶ビール、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等ノンアルコール飲料缶等の一定数量の容器を包装するための包装箱であり、包装産業一般において利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…マルチパック用包装箱
2…上面板
3,4…側面板
5,6…底面板
30…容器底固定片
31…係止爪部
P…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器底の周縁に形成されたリング状の凸状リム部により包囲される容器底凹部を有する容器を複数個まとめて収納するためのマルチパック用包装箱であって、
並列配置された複数個の容器からなる容器群の上面を覆う上面板と、
前記上面板の両側部に連接され、前記各容器の側面を覆うように対向配置される側面板と、
前記側面板のそれぞれに連接され、互いに係着し得る係止部を有する底面板と、
前記底面板と前記側面板との連接部位に位置する折り線を跨ぐようにして形成されている、前記複数の容器のそれぞれの前記容器底凹部内に潜り込ませ得る複数の容器底固定片と
を備え、
前記容器底固定片は、当該容器底固定片を前記容器底凹部内に潜り込ませたときに、当該容器底凹部に当接し得る係止爪部を有することを特徴とするマルチパック用包装箱。
【請求項2】
前記側面板が存在しない両端部において前記容器群の一部の側面を視認可能な開口部が形成されており、
前記複数の容器底固定片のうちの少なくとも前記開口部側に位置する前記容器に対応する容器底固定片は、前記係止爪部を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項3】
前記各容器底固定片は、複数の前記係止爪部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項4】
前記容器底固定片は、その一辺が前記底面板に固着されているとともに、当該容器底固定片の形態に沿って前記底面板から切り取られることで、前記底面板に固着される当該一辺を基部として可動可能に構成されており、
前記係止爪部は、前記容器底固定片の基部と当該基部に対向する先端部との間に形成された、当該基部側に向けて開放する略半円弧状、略U字状又は略コの字状の切り込み線により構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項5】
前記底面板から切り取られ、前記基部に沿って山折りとされ、前記基部と前記先端部との間に位置する、前記基部との平行線に沿って谷折りとされた前記容器底固定片を、前記容器底凹部内に潜り込ませたときに、前記先端部が前記容器の凸状リム部に当接し得るように、かつ前記先端部及び前記谷折りされた平行線の間の面と、前記谷折された平行線及び前記基部の間の面とのなす角度、並びに前記谷折りされた平行線及び前記基部の間の面と前記底面板とのなす角度が、いずれも90°未満となるように、前記容器底固定片が構成されており、
前記係止爪部を構成する前記切り込み線の両端部が、前記谷折りとされる平行線上に位置することを特徴とする請求項4に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項6】
前記容器底固定片は、前記基部と前記先端部との間に、前記基部における幅よりも広幅の拡幅部を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマルチパック用包装箱に容器を収納してなることを特徴とするマルチパック包装製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43653(P2013−43653A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180421(P2011−180421)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】