説明

マルチパワーコンディショナシステム

【課題】蓄電池の放電制御を最適化することにより、総電気料金を低減することができるマルチパワーコンディショナシステムを提供する。
【解決手段】マルチパワーコンディショナシステム10の蓄電システム30は、負荷Rの過去の使用電力量および太陽光発電システム20の過去の発電電力量を過去の日付に関連付けて保持する電力量記憶部37aと、電気料金を保持する電気料金記憶部37bと、1日の総電気料金を最小化するために、使用電力量、発電電力量および電気料金に基づいて算出された蓄電池31の放電時刻および放電最大電力を過去の日付に関連付けて保持する最適放電情報記憶部37cと、電力量記憶部37aを参照して昨日との相関が最も高い一昨日以前の日を特定し、最適放電情報記憶部37cに保持されている当該日の翌日の放電時刻および放電最大電力に基づいて駆動部35を制御する制御演算部36とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムと蓄電システムとからなるマルチパワーコンディショナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、化石燃料に頼らない新たなエネルギー源、特に自然エネルギー源を利用した発電システムの検討が盛んに行われている。その中でも、太陽光発電システムは、その発電コストが既存の発電システムの発電コストと同等レベルに近付きつつあることから、今後より一層の普及が見込まれている。
【0003】
また、近年では、安価な深夜電力で充電しておいた蓄電池を電力需要が大きい昼間に放電させることで、電力需要の平準化と電気料金の低減とを図った蓄電システムも普及しつつある。例えば、特許文献1には、蓄電池を放電させる時間帯が異なる複数の放電パターンを予め記憶した蓄電システムが開示されている。この蓄電システムによれば、ユーザが1つの放電パターンを選択することにより、蓄電池を放電させるタイミングを最適化し、安価な深夜電力を有効に活用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−8385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記蓄電システムは、放電パターンの選択をユーザ任せにしているので、(1)ユーザの負担が大きい、(2)必ずしも最適な放電パターンが選択されるとは限らず深夜電力を有効に活用できない場合がある、という問題があった。
【0006】
また、上記蓄電システムと太陽光発電システムとを併用したマルチパワーコンディショナシステムにおいては、最適な放電パターンを選択するために太陽光発電システムの発電電力量や負荷の使用電力量を分析する必要があるが、これらは日々めまぐるしく変動するため、(3)最適な放電パターンの選択は事実上不可能である、という問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、蓄電池の放電制御を最適化することにより、総電気料金を低減することができるマルチパワーコンディショナシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムは、系統と負荷とを繋ぐ基幹電力線からそれぞれ分岐した電力線に接続された太陽光発電システムと蓄電システムとを備えたマルチパワーコンディショナシステムであって、太陽光発電システムは、太陽電池と、太陽電池からの電力を基幹電力線に供給する太陽光パワーコンディショナとを有し、蓄電システムは、蓄電池と、蓄電池に対して電力の供受給を行うとともに、負荷に対して電力を供給する蓄電パワーコンディショナとを有し、蓄電パワーコンディショナは、負荷の使用電力量に関する検出データと太陽電池の発電電力量に関する検出データを検出日に関連付けて記憶する電力量記憶部と、単位時間当たりの電気料金に関するデータを記憶する電気料金記憶部と、1日の総電気料金を最小にするために、使用電力量に関する検出データ、発電電力量に関する検出データおよび単位時間当たりの電気料金に関するデータに基づいて、蓄電池の放電時刻および当該放電時刻における放電最大電力に関する放電パターンを算出する制御演算部と、制御演算部で算出された放電パターンを検出日に関連付けて記憶する最適放電情報記憶部とを含み、制御演算部は、電力量記憶部を参照して昨日の使用電力量に関する検出データとの相関が最も高い一昨日以前の日を特定し、最適放電情報記憶部に保持されている当該特定日またはその翌日の放電パターンに基づいて蓄電池から負荷に電力を供給するよう制御することを特徴とする。
【0009】
この構成では、過去の使用電力量および発電電力量に関するデータが過去の日付(検出日)に関連付けられて電力量記憶部に保持されるとともに、1日の総電気料金が最小化されるように算出された蓄電池の放電時刻および放電最大電力に関するデータが過去の日付に関連付けられて最適放電情報記憶部に保持されている。また、この構成では、制御演算部が、昨日との相関が最も高い一昨日以前の日を特定し、当該特定日またはその日の翌日の放電時刻および放電最大電力に関するデータに基づいて蓄電池を放電制御する。したがって、この構成によれば、過去の実績に基づいて総電気料金を最小化するのに適した放電時刻および放電最大電力が自動的に決定されるので、ユーザに負担をかけることなく、蓄電池の放電制御を常に最適化することができる。
【0010】
上記マルチパワーコンディショナシステムの具体的な構成としては、蓄電パワーコンディショナが、蓄電池に一方の入出力端が接続された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータの他方の入出力端に一方の入出力端が接続されるとともに基幹電力線に他方の入出力端が接続された双方向DC/ACインバータと、双方向DC/DCコンバータおよび双方向DC/ACインバータを駆動する駆動部とをさらに含み、制御演算部が、最適放電情報記憶部に保持されている特定日またはその翌日の放電パターンに基づいて駆動部を制御することにより、放電時刻になると、駆動部が双方向DC/DCコンバータおよび双方向DC/ACインバータを駆動して蓄電池を放電最大電力で放電させる構成が考えられる。
【0011】
上記マルチパワーコンディショナシステムの制御演算部は、例えば、使用電力量の時間変化が近似しているか否かにより昨日との相関が最も高い日を特定することができる。
【0012】
また、上記マルチパワーコンディショナシステムが、基幹電力線から分岐して太陽光発電システムに繋がれた電力線に介装された太陽光発電電流検出部と、基幹電力線上であって、太陽光発電システムに繋がれた電力線との分岐点よりも負荷側に介装された負荷使用電流検出部とをさらに備えている場合は、制御演算部が、太陽光発電電流検出部によって検出された太陽光発電電流と、負荷使用電流検出部によって検出された負荷使用電流と、系統電圧とに基づいて発電電力量および使用電力量を所定時間おきに算出し、算出した発電電力量および使用電力量に関するデータを電力量記憶部に格納すればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓄電池の放電制御を最適化することにより、総電気料金を低減することができるマルチパワーコンディショナシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムのブロック図である。
【図2】本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムにおける放電制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムの好ましい実施形態について説明する。
【0016】
[マルチパワーコンディショナシステムの構成]
図1に、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムのブロック図を示す。同図に示すように、マルチパワーコンディショナシステム10は、主に太陽光発電システム20と蓄電システム30とから構成されている。また、太陽光発電システム20は、太陽電池21および太陽光パワーコンディショナ22を備え、蓄電システム30は、蓄電池31および蓄電パワーコンディショナ32を備えている。
【0017】
太陽光発電システム20および蓄電システム30は、系統Gと負荷Rとを繋ぐ基幹電力線L1から分岐した電力線L2および電力線L3にそれぞれ接続されている。系統G側を上流、負荷R側を下流とした場合、太陽光発電システム20は蓄電システム30よりも上流において基幹電力線L1に接続されている。
【0018】
基幹電力線L1には、カレントトランスからなる系統電流検出部CT1および負荷使用電流検出部CT3が設けられている。系統電流検出部CT1および負荷使用電流検出部CT3は、基幹電力線L1を流れる電流の量を検出するためのものである。系統電流検出部CT1の出力信号、すなわち基幹電力線L1と電力線L2の接続点よりも上流における電流量に関する信号は、太陽光パワーコンディショナ22に入力される。一方、負荷使用電流検出部CT3の出力信号、すなわち基幹電力線L1と電力線L3の接続点よりも上流(基幹電力線L1と電力線L2の接続点よりは下流)における電流量に関する信号は、蓄電パワーコンディショナ32に入力される。
【0019】
太陽光発電システム20と基幹電力線L1を繋ぐ電力線L2には、カレントトランスからなる太陽光発電電流検出部CT2が設けられている。太陽光発電電流検出部CT2は、電力線L2を流れる電流、すなわち太陽光発電システム20から基幹電力線L1に向かって流れる電流の量を検出するためのものである。太陽光発電電流検出部CT2の出力信号は、蓄電パワーコンディショナ32に入力される。
【0020】
図1中に矢印で示されているように、太陽光発電システム20は、太陽電池21の発電電力を電力線L2を介して基幹電力線L1に供給する。基幹電力線L1に供給された電力は、負荷Rによって消費されるか、または系統Gに逆潮流(売電)される。
【0021】
蓄電システム30は、系統Gから供給される比較的安価な深夜電力等を用いて蓄電池31を充電するほか、蓄電池31の蓄電力を電力線L3を介して基幹電力線L1に供給する。蓄電システム30から基幹電力線L1に供給された電力は、負荷Rにのみ供給され、売電されることはない。これは、蓄電システム30がいわゆる逆潮流防止制御を行っているからである。なお、逆潮流防止制御においては、蓄電システム30の出力電圧(=系統電圧)と負荷使用電流検出部CT3で検出される上流から下流に向かって流れる電流との積、すなわち系統有効電力が負にならないように、蓄電システム30の出力電圧が制御される。
【0022】
蓄電システム30の蓄電パワーコンディショナ32は、蓄電池31に一方の入出力端が接続された双方向DC/DCコンバータ33と、当該双方向DC/DCコンバータ33の他方の入出力端に一方の入出力端が接続された双方向DC/ACインバータ34とを備えている。双方向DC/ACインバータ34の他方の入出力端は、電力線L3を介して基幹電力線L1に接続されている。
【0023】
蓄電池31の放電時において、双方向DC/DCコンバータ33は、一方の入出力端から入力された蓄電池31の蓄電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換し、当該直流電力を他方の入出力端から出力する。双方向DC/ACインバータ34は、一方の入出力端から入力された直流電力を系統Gの位相に同期した交流電力に変換し、当該交流電力を他方の入出力端から出力する。
【0024】
蓄電池31の充電時において、双方向DC/ACインバータ34は、他方の入出力端から入力された系統Gの交流電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換し、当該直流電力を一方の入出力端から出力する。双方向DC/DCコンバータ33は、他方の入出力端から入力された直流電力を適当な電圧値を有する直流電力に変換し、当該直流電力を一方の入出力端から出力する。
【0025】
図1に示すように、蓄電パワーコンディショナ32は、さらに駆動部35、制御演算部36および記憶部37を備えている。駆動部35は、双方向DC/DCコンバータ33および双方向DC/ACインバータ34に上記の動作をさせるべく、これらに含まれるIGBT等の電力用半導体スイッチング素子を駆動(開閉制御)する。記憶部37は、電力量記憶部37a、電気料金記憶部37bおよび最適放電情報記憶部37cを含み、各記憶部37a〜37cには、蓄電池31の放電制御に必要なデータが格納されている。
【0026】
制御演算部36は、太陽光発電電流検出部CT2により検出した太陽光発電電流と系統電圧とから算出した発電電力量に関するデータ、および負荷使用電流検出部CT3により検出した負荷使用電流と系統電圧とから算出した使用電力量に関するデータを所定時間おき(例えば、1時間おき)に電力量記憶部37aに格納するほか、記憶部37に保持されている各種データに基づいて駆動部35を制御し、双方向DC/DCコンバータ33および双方向DC/ACインバータ34のスイッチング素子を駆動させる。
【0027】
[マルチパワーコンディショナシステムにおける放電制御]
続いて、図2を参照しつつ、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステム10における放電制御について説明する。同図に示すように、マルチパワーコンディショナシステム10における放電制御は、ステップS1〜S3を含むフローF1とステップS4〜S7を含むフローF2とからなる。図2(A)に示すように、フローF1は1回/1時間のペースで繰り返し実行される。また、図2(B)に示すように、フローF2は1回/1日のペースで繰り返し実行される。
【0028】
フローF1のステップS1では、太陽光発電電流検出部CT2により検出した太陽光発電電流と系統電圧に基づき、制御演算部36が発電電力量を求める。また、ステップS2では、負荷使用電流検出部CT3により検出した負荷使用電流と系統電圧に基づき、制御演算部36が使用電力量を求める。発電電力量および使用電力量は、それぞれ次式により求められる。
【数1】

ステップS1およびステップS2は、実行順序を逆にしてもよい。すなわち、使用電力量を先に求め、その後で発電電力量を求めてもよい。
【0029】
ステップS3では、ステップS1およびステップS2で求めた発電電力量および使用電力量に関するデータを、制御演算部36が電力量記憶部37aに格納する。発電電力量および使用電力量に関するデータは、その日の日付に関連付けられて格納される。また、前記の通り、フローF1は1回/1時間のペースで繰り返し実行される。したがって、電力量記憶部37aには、表1および表2のようなデータが蓄積されていく。電力量記憶部37aに保持させるデータの量は任意に設定することができるが、放電制御を最適化するためには、過去数週間〜1年間程度のデータを保持させておくことが好ましい。なお、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステム10を使用開始した直後においては、蓄積データが存在しないか、または足りないため、放電制御の最適化に支障をきたすおそれがある。このため、電力量記憶部37aには、初期値として、当該マルチパワーコンディショナシステム10を設置する住宅等の1ヶ月の電気料金、太陽電池21の発電容量等に基づいたデフォルトデータが予め記憶されており、蓄積データに基づいて放電制御を行うのかデフォルトデータに基づいて放電制御を行うのかをユーザが任意に選択できることが好ましい。
【表1】

【表2】

【0030】
次に、フローF2について説明する。フローF2にはステップS4〜S7が含まれるが、このうちステップS4〜S6は1日の始め(0時〜6時頃)に実行され、ステップS7は1日の終り(23時以降)に実行される。ステップS4〜S6を1日の始めに実行するのは、負荷Rの使用電力が増加する前にその日の放電時刻等を決定しておく必要があるからである。また、ステップS7を1日の終りに実行するのは、その日の23時台の発電電力量データおよび使用電力量データを参照する必要があるからである。
【0031】
フローF2のステップS4では、制御演算部36が電力量記憶部37aを参照し、昨日との相関が最も高い一昨日以前の日(以下、「相関日」という)を特定する。相関日の特定は、例えば自己相関関数を用いて、昨日の使用電力量の時間変化と一昨日以前の各日の使用電力量の時間変化との相関値を求め、相関値が最も高い日を相関日とすることにより行われる。通常、時間変化が近似した日同士は相関値が高くなる傾向にある。
【0032】
ステップS5では、制御演算部36が最適放電情報記憶部37cから相関日の翌日の放電時刻データおよび放電最大電力データを読み出す。後で詳細に説明するが、放電時刻データおよび放電最大電力データは、昨日以前のステップS7において制御演算部36が最適放電情報記憶部37cに格納したものである。
【0033】
ステップS6では、読み出した放電時刻データおよび放電最大電力データに基づいて制御演算部36が駆動部35を制御する。これにより、放電時刻になると駆動部35が双方向DC/DCコンバータ33および双方向DC/ACインバータ34を駆動し、蓄電池31は放電最大電力で放電する。
【0034】
ステップS7では、電力量記憶部37aに保持されているその日の発電電力量データおよび使用電力量データと、電気料金記憶部37bに保持されている電気料金データとに基づいて、制御演算部36がその日の放電時刻および放電最大電力を求め、放電時刻データおよび放電最大電力データとして最適放電情報記憶部37cに格納する。
【0035】
電気料金記憶部37bには、系統Gを介して電力会社から1kWhの電力を購入した場合に支払うべき電気料金のデータと、電力会社に1kWhの電力を売却した場合に支払われるべき電気料金のデータが予め格納されている。これら電気料金データは、料金改定がある度に手動で、または自動的に最新のものに更新される。表3に、電気料金データの一例を示す。
【表3】

【0036】
上表に示すように、買電時の電気料金は電力需要の平準化を促すために、時間帯によって異なっている。このため、電力会社から10kWhの電力を購入する場合であっても、7:00〜9:59の間に購入するのと、10:00〜16:59の間に購入するのとでは、電力会社に支払うべき額に差が生じる。また、蓄電池31の蓄電力を10kWh放電させることにより電力会社から購入する電力を減らして総電気料金を低減する場合であっても、7:00〜9:59の間に放電させるのと、10:00〜16:59の間に放電させるのとでは、低減できる額に差が生じる。したがって、総電気料金を最小化するためには、どの時間帯に、どの程度の電力を放電させるのかが極めて重要である。
【0037】
総電気料金を最小化するための放電時刻および放電最大電力の算出方法は種々考えられるが、本実施形態では、一例として下記方法により放電時刻および放電最大電力の算出を行う。
【0038】
すなわち、1日の買電額(電力会社に支払う額)および売電額(電力会社から支払われる額)を次式により求めた後、

買電額=Σ{BP(t)×C(t)}
売電額=Σ{SP(t)×D(t)}

買電額と売電額の差額の計算をすることにより1日の総電気料金を求める。ただし、BP(t)、SP(t)、C(t)、D(t)は、それぞれt時台の買電電力量、売電電力量、買電時の電気料金、売電時の電気料金、t=0〜23である。
【0039】
上記の計算を、放電時刻および放電最大電力を変化させながら繰り返し行い、1日の総電気料金が最も安くなる放電時刻および放電最大電力を、放電時刻データおよび放電最大電力データとして最適放電情報記憶部37cに格納する。なお、放電時刻および放電最大電力の組は1つに限定されず、1日につき複数の組があってもよい。
【0040】
表4に、放電時刻データおよび放電最大電力データの一例を示す。
【表4】

上表から明らかなように、○月1日は、13:00〜14:59の間に放電最大電力10kWhで蓄電池31の放電を行うのが電気料金の観点から望ましいのに対し、○月2日は、12:00〜12:59の間に放電最大電力10kWhで1回目の放電を行った後、さらに15:00〜16:59の間に放電最大電力5kWhで2回目の放電を行うことが望ましい。
【0041】
翌日以降のステップS5では、相関日の翌日の放電時刻データおよび放電最大電力データが最適放電情報記憶部37cから読み出され、読み出した放電時刻データおよび放電最大電力データにしたがって蓄電池31の放電制御が行われる。例えば、相関日が○月1日の場合は、ステップS5において、その翌日である○月2日の放電時刻データおよび放電最大電力データ(12:00〜12:59/10kWh、15:00〜16:59/5kWh)が読み出される。そして、ステップS6において、12:00〜12:59と15:00〜16:59の2回に分けて蓄電池31の放電が行われる。
【0042】
以上、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、フローF1を1回/1時間のペースで繰り返し実行したが、2回/1時間のペースにしてもよいし、0.5回/1時間のペースにしてもよい。ただし、相関日を正しく特定し、かつ放電時刻および放電最大電力を精度よく求めるためには、1時間あたりの実行回数を1回以上とすることが望ましい。
また、表1〜表4は全て一例であり、記憶部37に保持されているデータの形式は任意の形式とすることができる。
【0043】
また、昨日の使用電力量の時間変化と一昨日以前の各日の使用電力量の時間変化との相関値が高い日が複数存在する場合には、相関値に加え、曜日または平日か休日かを加味して相関日を特定してもよい。例えば、相関値が同じ日が複数存在する場合には、次に昨日の曜日と同じ曜日か否かを判断し、複数の相関値が同じ日のうち昨日と同じ曜日があれば、当該日を相関日として特定するようにしてもよい。さらに、例えば、昨日が休日の場合には、複数の相関値が同じ日のうち休日に該当する日があれば、当該日を相関日として特定するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、制御演算部36が最適放電情報記憶部37cから相関日の翌日の放電時刻データおよび放電最大電力データを読み出し、当該読み出した放電時刻データおよび放電最大電力データに基づいて制御演算部36が駆動部35を制御しているが、これに限定されず、最適放電情報記憶部37cから相関日それ自体の放電時刻データおよび放電最大電力データを読み出し、当該読み出した放電時刻データおよび放電最大電力データに基づいて制御演算部36が駆動部35を制御してもよい。昨日のデータと最も相関の高い日(相関日)から当日の蓄電池31の放電制御を実行する上では、相関日の翌日のデータを読み出すことが好ましいといえるが、相関日その日のデータを読み出しても、本願発明の作用効果を奏する。すなわち、相関日その日の放電時刻データおよび放電最大電力データに基づいて駆動部35を制御しても、総電気料金を最小化するのに適した放電時刻および放電最大電力を自動的に決定することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 マルチパワーコンディショナシステム
20 太陽光発電システム
21 太陽電池
22 太陽光パワーコンディショナ
30 蓄電システム
31 蓄電池
32 蓄電パワーコンディショナ
33 双方向DC/DCコンバータ
34 双方向DC/ACインバータ
35 駆動部
36 制御演算部
37 記憶部
37a 電力量記憶部
37b 電気料金記憶部
37c 最適放電情報記憶部
G 系統
L1 基幹電力線
CT1 系統電流検出部
CT2 太陽光発電電流検出部
CT3 負荷使用電流検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統と負荷とを繋ぐ基幹電力線からそれぞれ分岐した電力線に接続された太陽光発電システムと蓄電システムとを備えたマルチパワーコンディショナシステムであって、
前記太陽光発電システムは、太陽電池と、前記太陽電池からの電力を前記基幹電力線に供給する太陽光パワーコンディショナとを有し、
前記蓄電システムは、蓄電池と、前記蓄電池に対して電力の供受給を行うとともに、前記負荷に対して電力を供給する蓄電パワーコンディショナとを有し、
前記蓄電パワーコンディショナは、
前記負荷の使用電力量に関する検出データと前記太陽電池の発電電力量に関する検出データを検出日に関連付けて記憶する電力量記憶部と、
単位時間当たりの電気料金に関するデータを記憶する電気料金記憶部と、
1日の総電気料金を最小にするために、前記使用電力量に関する検出データ、前記発電電力量に関する検出データおよび前記単位時間当たりの電気料金に関するデータに基づいて、前記蓄電池の放電時刻および当該放電時刻における放電最大電力に関する放電パターンを算出する制御演算部と、
前記制御演算部で算出された放電パターンを前記検出日に関連付けて記憶する最適放電情報記憶部と
を含み、
前記制御演算部は、前記電力量記憶部を参照して昨日の前記使用電力量に関する検出データとの相関が最も高い一昨日以前の日を特定し、前記最適放電情報記憶部に保持されている当該特定日またはその翌日の前記放電パターンに基づいて前記蓄電池から前記負荷に電力を供給するよう制御することを特徴とするマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項2】
前記蓄電パワーコンディショナは、
前記蓄電池に一方の入出力端が接続された双方向DC/DCコンバータと、
前記双方向DC/DCコンバータの他方の入出力端に一方の入出力端が接続されるとともに前記基幹電力線に他方の入出力端が接続された双方向DC/ACインバータと、
前記双方向DC/DCコンバータおよび前記双方向DC/ACインバータを駆動する駆動部と
をさらに含み、
前記制御演算部が、前記最適放電情報記憶部に保持されている前記特定日またはその翌日の前記放電パターンに基づいて前記駆動部を制御することにより、
前記放電時刻になると、前記駆動部が前記双方向DC/DCコンバータおよび前記双方向DC/ACインバータを駆動して前記蓄電池を前記放電最大電力で放電させることを特徴とする請求項1に記載のマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項3】
前記制御演算部は、前記使用電力量の時間変化が近似しているか否かにより昨日との相関が最も高い日を特定することを特徴とする請求項1または2に記載のマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項4】
前記基幹電力線から分岐して前記太陽光発電システムに繋がれた電力線に介装された太陽光発電電流検出部と、
前記基幹電力線上であって、前記太陽光発電システムに繋がれた電力線との分岐点よりも負荷側に介装された負荷使用電流検出部と
をさらに備え、
前記制御演算部は、前記太陽光発電電流検出部によって検出された太陽光発電電流と、前記負荷使用電流検出部によって検出された負荷使用電流と、系統電圧とに基づいて前記発電電力量および前記使用電力量を所定時間おきに算出し、算出した前記発電電力量および前記使用電力量に関するデータを前記電力量記憶部に格納することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマルチパワーコンディショナシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−51834(P2013−51834A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188811(P2011−188811)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】