説明

マルチビーム光学器械の防護用装置

【課題】マルチビーム光学器械の防護用装置を提供する。
【解決手段】光学器械が搭載された本体200を含む人工衛星の、光学器械用の防護装置に関し、光学器械は中央の鏡、及び光を中央の鏡に向けて反射する複数の周辺鏡を含み、前記防護装置は折り畳まれた位置及び展開された位置を有し、それが展開された位置において剛性のある複数のパネル201、203を含み、本装置が各々の周辺鏡用のパイプを含む蜂の巣状の構造を形成し、パイプの断面が多角形であり、パイプが複数の周辺鏡を余計な明かりから防護するようなやり方で配置され、前記パネルが折り畳まれた位置において、衛星の本体200に対して保持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工衛星の光学器械、そして特にマルチビーム光学器械の防護用装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチビーム光学器械は、一般に光学器械内に位置する主鏡、主鏡と対向して位置する中央の副鏡、及び光を中央の副鏡に向けて反射する複数の周辺鏡を含む。これらの周辺鏡の各々は太陽光の直接入射に対して防護される必要がある。防護は光学的妨害を防止し、焦点面近傍の温度調節を可能にする。この防護は器械の光学性能を確実にする。
【0003】
人工衛星に搭載されたこれらの器械は、打ち上げロケットにより軌道に置かれる。打ち上げロケットのノーズコーン下部に割り当てられる小さい容積のため、光学器械の前方に配置された固定の防護装置を持つことは不可能である。従って、飛行において、作動段階の前にこの防護部を展開することが必要である。
【0004】
大きな構造物を展開する場合に遭遇する技術的問題は、主として次の通りである:
【0005】
格納された構成において、宇宙船の打ち上げに起因する機械的応力及び熱応力にもかかわらず、この構造物を格納し、折り畳まれた構成においてこの構造物の完全性(とりわけ非常に壊れやすい熱的保護要素が劣化しないこと)を維持するための制約された容積。
【0006】
展開中において、展開の最後における衝撃を避けるための、運動学及び速度調節に関する展開の制御。
【0007】
展開された構成において、宇宙船の制御性を保証するための、飛行中の安定性と剛性の確保、及び太陽光の入射が制限されること、および視界が邪魔されないことを確実にするための、構造物の正しい位置決めの確保。
【0008】
図1は先行技術による人工衛星の光学器械の防護装置を表わす。この装置は、光学器械を太陽103から来る迷光に対して防護するようなやり方で、人工衛星100から一定の距離に位置する平らな太陽遮蔽板101を備える。幾つかの任務において、平らな遮蔽板の使用は大型の回転要素(太陽遮蔽板)を持つことを示唆する。この解決策もまた、信頼性の問題、AOCS(Attitude Orbit Control System=姿勢軌道制御システム)妨害の問題、光学測定のレベルにおける妨害の問題、及び使用される機械要素に起因する寿命の問題をもたらす。
【0009】
さらに、一定期間中の太陽光の入射を避けるため、太陽遮蔽板の追加的旋回運動が必要であり、それはこの種類の解決策をより複雑にする。
【0010】
従って、光線の閉じた防護がより効果的な解決策であり、それは作動段階にわたって何の運動も必要としないためである。
【0011】
この種類の包み込む防護を生み出すために、フレキシブルな素地を保持し位置決めを確実にする展開可能な保持構造に基づく、幾つもの技術を用いることが可能である。
【0012】
この保持構造は膨張が可能であり、飛行中に剛性を持たせ得るが、計算によるモデル化が困難で、試験するのに複雑であるため、その展開制御は複雑となる。さらに、剛性化する方法は不可逆的であり、それゆえ飛行を目的とするモデルを地上で試験することができない。
【0013】
断熱シートから成るフレキシブルな円筒形の鞘の使用に基づく、フレキシブルな防護装置が既に知られている。この要素は格納段階の間はそれ自体が折り畳まれており、次に展開されて張力を与えられる。この解決策は多くの欠点を示す。第一に、格納時には、断熱の緩衝物を構成する膜の劣化を回避するのが困難である。これらは非常に壊れやすく機械的応力に敏感である。劣化した膜は展開状態においてダストを生じ器械の上へ散乱させ、その光学性能を低下させる。さらに、コンパクトな格納を得るため、フレキシブルな要素を折り畳む必要があり、この折り畳みは一般に不可逆的で、膜を弱くする。最後に、その正しい最終的位置決めを確実にするために、フレキシブルな要素に張力を与えるのに必要なエネルギーは、この場合展開がとりわけ再現可能でないため計算するのが困難である。このため、その正しい最終的位置決めを確実にするための、フレキシブルな要素に張力を与えるのに要するエネルギーが過大に見積もられ、それはいくつかの構成要素及び膜に対する劣化を生じさせ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、衛星が打ち上げロケットのノーズコーンの下部に取り付けられることを可能にするために、格納位置において十分コンパクトで、制御され調節された展開を可能にし、一旦展開されると、余計な太陽光線の入射に対する効果的な防護を提供し、衛星の制御を可能にする十分な剛性を有する、衛星の光学器械を防護するための装置を提案することにより、上述の問題を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このために、本発明の主題は、光学器械が搭載された本体を含む人工衛星の、光学器械用の防護装置であって、光学器械は、光学器械内に位置する主鏡、主鏡と対向して位置する中央の副鏡、及び光を中央の副鏡に向けて反射する複数の周辺鏡を含み、前記防護装置は折り畳まれた位置及び展開された位置を有し、それが展開された位置において剛性のある複数のパネルを含み、本装置が各々の周辺鏡用のパイプを含む蜂の巣状の構造を形成し、パイプの断面が多角形であり、パイプが複数の周辺鏡を余計な明かりから防護するようなやり方で配置され、前記パネルが折り畳まれた位置において、衛星の本体に対して保持されていることを特徴とする。
【0016】
有利には、本防護装置はパネルを折り畳まれた位置に保持するための手段をさらに含む。
【0017】
有利には、保持手段は蜂の巣状の穴のパネルの1つにおける各々の穴に対して配置されたタイビーム、及びタイビームを折り畳まれた位置に保持するようなやり方で、衛星の本体上に配置された結束用脚を含む。
【0018】
有利には、防護装置はさらに、折り畳まれた位置においてパネルに対して保持され、展開された位置においてパイプの縦軸に直角になるようなやり方で、継手を用いてパネルに固定された太陽電池パネルを含む。
【0019】
1つの実施形態において、パネルは中実である。
【0020】
別の実施形態において、パネルは張力をかけられた膜がその上に固定されている剛体フレームを含む。
【0021】
有利には、防護装置はそれらの表面上に直接位置する能動及び受動制御要素を含み、本装置は温度調節機能を備える。
【0022】
本発明の解決策は、その技術的特性が完全に既知であり、制御され、そして再現可能な剛性要素を採用する。この解決策は数十mの長さにも及び得る多角形の展開可能な装置の、コンパクトで剛性の高い格納を可能にする。
【0023】
本発明は、制限されない例として与えられ、図に関連している詳細記述を読むことによってさらに良く理解され、他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既に示されているが、先行技術による防護装置を表わす。
【図2a】本発明の1つの実施形態による装置を展開する段階を表わす。
【図2b】本発明の1つの実施形態による装置を展開する段階を表わす。
【図2c】本発明の1つの実施形態による装置を展開する段階を表わす。
【図2d】本発明の1つの実施形態による装置を展開する段階を表わす。
【図2e】本発明の1つの実施形態による装置を展開する段階を表わす。
【図3】本発明のこの実施形態におけるパネル保持手段の位置を表わす。
【図4】太陽発電機を含む、本発明による防護装置の変形の一実施形態を表わす。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
図2a〜2eは、本発明の1つの実施形態による装置を展開する段階を表わす。本発明のこの実施形態の防護装置は、展開された位置において6本の六角パイプの配列を形成する、継手で連結されたパネルを使用している。各々の六角形は、その1つが衛星の本体と共有で、その他の5つが単純な、又はそれ自体で動力化された継手により相互に接続された、6つのパネルで構成される。
【0026】
蜂の巣状の各穴の、本体と共通のパネルは、光が周辺鏡から中央の副鏡に向かって通ることを可能にする隙間を含む。
【0027】
パネル間の接続は、閉じた構造を得ることを可能にし、従って太陽光の入射に対する完全な漏れ防止と同様に、組立品の全体剛性を確実にする。
【0028】
各々の穴は隣接する各々の穴と共有する1つのパネルを含む。
【0029】
図2a〜2eは、本発明の1つの実施形態による装置を展開する段階を表わす。本記述の残り部分において、人工衛星の本体200に直接つながれているパネル201は第一パネルと呼ばれる。衛星本体における面の数と同じだけの第一パネル(及び従って周辺鏡)の数、すなわち本例では6つがあることに留意されたい。
【0030】
第一パネル201は、第一の継手と呼ばれる、それ自体で動力化された継手202により人工衛星の本体200に接続される。
【0031】
第一パネルに接続されたパネル203は、第二パネルと呼ばれる。各々の第一パネル201は2つの異なる継手により、2つの第二パネル203に接続される。これらの継手の1つ204はそれ自体で動力化され、もう1つの継手205は展開段階を通して自由に回転できる。
【0032】
第一パネル201を第二パネル203に接続している、それ自体で動力化された継手204は第二の継手と呼ばれる。
【0033】
図2aは透視図による、折り畳まれた位置での本発明の防護装置を、上面からの第一視図及び、単一の穴を示す上面からの単純化された第二視図によって表わす。
【0034】
展開の初めにおいて、第一の継手202は慣性的である。第二の継手204は動作する。各々の第二の継手204の動作は、各々の第二パネル203を、これら第二の継手204の各々の周りで第一パネル201に対して回転させる効果を有する。
【0035】
その他の継手は自由に回転できる。これらの継手は展開段階を通して回転が自由なままである。
【0036】
それらはパイプの縦軸に平行な複数の軸の周りで回転する。
【0037】
図2bは透視図による、第一の中間展開段階の間の本発明の防護装置を、上面からの第一視図及び、単一の穴を示す上面からの単純化された第二視図によって表わす。
【0038】
この図は、第一の継手202の駆動を開始させるための順序付けメカニズム206を示す。順序付けメカニズムは、第二パネル203の回転が十分に進み、それらの位置がその他のパネルの展開を可能にするときに働く。図に示されている例において、順序付けメカニズム206は、第二パネル203がそこに接続されている第一パネル201と一直線になったとき、第一の継手の駆動を開始させる。それらの間の継手は、ケーブルとプーリーのシステムを用いて駆動され得る。可変形状(カム)のプーリー、又は格納式のストッパーと組み合わされたこのシステムは、様々なパネルの相互に対して開くことの同期(進み/遅れ)又は順序付けもまた可能にする。
【0039】
図2cは透視図による、第二の中間展開段階の間の本発明の防護装置を、上面からの第一視図及び、単一の穴を示す上面からの単純化された第二視図によって表わす。
【0040】
この図は順序付けメカニズムの作動後の装置を示す。第一の継手202及び第二の継手204は依然として駆動されている。
【0041】
図2dは透視図による、第三の中間展開段階の間の本発明の防護装置を、上面からの第一視図及び、単一の穴を示す上面からの単純化された第二視図によって表わす。
【0042】
第三の中間段階の間に、第二の継手204は、第一パネル201及び第二パネル203が相互に対して、それらの最終的な位置にあるときロックされ、ロックは、ロックされた継手の傍にある星印により象徴される。それらがロックされた後、第二の継手204は動かなくなる。第一パネル201及び第二パネル203はそのとき共に結ばれる。第一の継手202は依然として駆動されている。
【0043】
図2eは透視図による、展開された位置における本発明の防護装置を、上面からの第一視図及び、単一の穴を示す上面からの単純化された第二視図によって表わす。
【0044】
第一の継手202はそのときロックされる。
【0045】
本発明の1つの特徴によれば、防護装置はパネルを折り畳まれた位置に保持する手段をさらに含む。
【0046】
図3は本発明の第一の実施形態における、パネル保持手段の位置を示す。
【0047】
この実施形態において、保持手段は蜂の巣状の穴のパネルの1つにおける各々の穴に対して配置されたタイビーム300、及びタイビームを折り畳まれた位置に保持するようなやり方で、衛星の本体上に配置された結束用脚301を含む。
【0048】
折り畳まれた位置において、格納されたパネルはアンテナ又は太陽発電機において使用されるもののような、タイビーム300を有する結束用脚301を用いて本体に対し保持される。
【0049】
展開された位置において、タイビーム300は光学器械の視界に入らないように、パネルの外面上に突出する。後面上に突出したとき、タイビームはパネルを通る穴をブロックし、従ってあらゆる余計な太陽光の入射を防止する。
【0050】
有利には、防護装置はさらに、折り畳まれた位置においてはパネルに対して保持され、展開された位置においてはパイプの縦軸に直角になるようなやり方で、継手を用いてパネルに固定された太陽電池パネルを含む。
【0051】
図4は、太陽発電機を含む本発明による防護装置の変形の一実施形態を表わす。本例は2つの太陽電池パネル401を示す。従って太陽電池パネルもまた展開可能であり、一定のパネルの外面上に格納される。
【0052】
継手は衛星の本体に対して、パネル401の反対側に位置する。太陽発電機は同様に、望遠鏡の遮光絞り板の反対側のベースに、又は格納が許容されれば任意の位置に置かれ得る。
【0053】
継手は、太陽電池パネル401が、パイプの縦軸に直角な軸の周りを旋回できるようにする。折り畳まれた位置において、太陽電池パネル401の縦軸はパイプの縦軸に平行である。展開可能な遮光板パネル用に使われる結束システムは、太陽発電機用に使われるものでもあり得る。展開された位置において、太陽電池パネルの縦軸はパイプの縦軸に対して直角である。
【0054】
本発明の1つの変形において、パネルは中身が詰まっている。本発明の1つの変形において、パネルはそこに張力をかけられた膜が固定されている剛体フレームを含む。
【0055】
器械の良好な性能を保証するため、防護装置はパネルの表面上に直接位置する能動及び受動制御要素の追加のおかげで、温度制御機能もまた備え得る。
【0056】
(能動及び受動)温度制御を可能にする構成要素は、剛性のある基材に接続され、従って折り畳まれた位置及び展開中における機械的応力から保護される。
【符号の説明】
【0057】
100 人工衛星
101 太陽遮蔽板
102 該当なし
103 太陽
200 人工衛星の本体
201 第一パネル
202 第一の継手
203 第二パネル
204 第二の継手
205 もう1つの継手
206 順序付けメカニズム
300 タイビーム
301 結束用脚
401 太陽電池パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学器械が搭載された本体(200)を含む人工衛星の、光学器械を防護するのを目的とする防護装置であって、前記光学器械が、前記光学器械内に位置する主鏡、前記主鏡と対向して位置する中央の副鏡、及び光を前記中央の副鏡に向けて反射する複数の周辺鏡を含み、前記防護装置が折り畳まれた位置及び展開された位置を有し、それが前記展開された位置において剛性のある複数のパネルを含み、前記装置が各々の周辺鏡用のパイプを含む蜂の巣状の構造を形成し、前記パイプの断面が多角形であり、前記パイプが複数の前記周辺鏡を余計な明かりから防護するようなやり方で配置され、前記パネルが前記折り畳まれた位置において、前記衛星の前記本体(200)に対して保持されるように意図されていることを特徴とする防護装置。
【請求項2】
前記パネルを前記折り畳まれた位置において保持するための手段をさらに含む、請求項1に記載の防護装置。
【請求項3】
保持手段が蜂の巣状の穴の前記パネルの1つにおける各々の穴に対して配置されたタイビーム(300)、及び前記タイビームを前記折り畳まれた位置に保持するようなやり方で、前記衛星の本体上に配置されることを目的とする結束用脚を含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の防護装置。
【請求項4】
前記折り畳まれた位置において前記パネルに対して保持され、前記展開された位置において前記パイプの縦軸に直角になるようなやり方で、継手を用いて前記パネルに固定された太陽電池パネル(401)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防護装置。
【請求項5】
前記パネルの中身が詰まっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の防護装置。
【請求項6】
張力をかけられた膜がそこに固定されている剛体フレームを前記パネルが含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の防護装置。
【請求項7】
前記防護パネルが、それらの表面に直接位置している能動及び受動制御要素を含み、前記装置が温度制御機能を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の防護装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の防護装置を含む光学器械。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図2e】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−232738(P2012−232738A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−105046(P2012−105046)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】