マルチフィルム敷設機およびマルチフィルム敷設方法
【課題】圃場に植付けられた作物を損傷することなく、且つ効率的にマルチフィルムを敷設することが可能なマルチフィルム敷設機およびマルチフィルム敷設方法を提供する。
【解決手段】マルチフィルム3は、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させるのに伴ってロールから引き出されて、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17によって切断される。これにより、圃場に敷設されるマルチフィルム3には、マルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って延びる切断部24が形成される。したがって、畝4に植付けられた連続鉢苗29は、マルチフィルム敷設機1によって敷設されたマルチフィルム3の切断部24から露出されるので、土壌に露出した部分がマルチフィルム3によって押し潰されて損傷してしまうことがない。
【解決手段】マルチフィルム3は、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させるのに伴ってロールから引き出されて、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17によって切断される。これにより、圃場に敷設されるマルチフィルム3には、マルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って延びる切断部24が形成される。したがって、畝4に植付けられた連続鉢苗29は、マルチフィルム敷設機1によって敷設されたマルチフィルム3の切断部24から露出されるので、土壌に露出した部分がマルチフィルム3によって押し潰されて損傷してしまうことがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場にマルチフィルムを敷設するマルチフィルム敷設機および圃場にマルチフィルムを敷設する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、トラクタ車体にフィルム敷設装置を装着したマルチフィルム敷設装置の開示がある。このマルチフィルム敷設装置は、走行しながらマルチフィルムを土壌面に被覆すると同時に、目付装置によってマルチフィルムの中央部に縦方向に沿って破り目(ミシン目)を形成する。しかしながら、特許文献1のマルチフィルム敷設装置では、土壌面に敷設されたマルチフィルムの上から目付装置を押し付けてマルチフィルムに破り目を形成することから、苗が植付けられた土壌面にマルチフィルムを敷設する場合、苗が目付装置によって押し潰されて損傷する。
【0003】
そこで、特許文献2には、移植機によって苗の植付けを行いながら、移植機の進行に応じてロールから引き出されたマルチフィルムを植付け中の連続鉢苗に沿って繰り出すマルチャを備える接地型移植機の開示がある。この接地型移植機では、鉢苗繰出し部から繰り出された連続鉢苗が植付溝に連続に植付けられると同時に、マルチャから繰り出されたマルチフィルムが植付け中の連続鉢苗に沿って敷設される。しかしながら、特許文献2の接地型移植機では、植付けられる苗の条間隔に応じた幅を有するマルチフィルムを選択する必要があることから、適合するマルチフィルムが市販されていない場合、条間隔をマルチフィルムの幅に合せるか、あるいは、マルチフィルムを切断してマルチフィルムの幅を条間隔に合せる必要がある。
【特許文献1】特開平7−99845号公報
【特許文献2】特許第3475280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、圃場に植付けられた作物を損傷することなく、且つ効率的にマルチフィルムを敷設することが可能なマルチフィルム敷設機およびマルチフィルム敷設方法を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設するマルチフィルム敷設機であって、圃場を走行可能な走行体と、該走行体に設けられて前記マルチフィルムのロール軸を回転可能に支持するロール支持手段と、前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに圃場に植付けられた作物を露出させる前記露出部を加工する加工手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチフィルム敷設機において、前記加工手段は、前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、該担持ローラによって担持された前記マルチフィルムに押圧させて前記露出部を加工する工具と、を有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマルチフィルム敷設機において、前記担持ローラを偏心支持したことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のマルチフィルム敷設機において、前記加工手段は、前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、該担持ローラに設けられて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに前記露出部を加工する加工刃と、を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1−4のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記露出部は、切断部、ミシン目あるいは穴のいずれかであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1−5のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、移植機を連結させる連結手段を有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1−6のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記ロール支持手段に支持された前記ロール軸の回転を規制する回転規制手段と、前記走行体の走行を規制する走行規制手段と、を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記走行体を旋回させるための旋回軸を有することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記走行体がトラクタであることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1−9のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、マルチフィルムを圃場へ固定するための装置を有することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項11に記載の発明は、マルチフィルム敷設機を走行させてロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設する方法であって、ロールから引き出された前記マルチフィルムに作物を露出させるための露出部を加工して、引き出し方向に沿って前記露出部が形成された前記マルチフィルムを圃場に敷設することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルム敷設機を圃場の畝に沿って前進(走行)させることにより、当該敷設機の前進に伴ってロールから引き出されたマルチフィルムに、加工手段によって露出部が加工される。これにより、マルチフィルム敷設機の進行方向に沿って露出部が形成されたマルチフィルムを、圃場に敷設することができる。
請求項2に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルム敷設機を圃場の畝に沿って前進(走行)させることにより、当該敷設機の前進に伴ってロールから引き出されたマルチフィルムは、担持ローラによって担持されて該担持ローラを回転させながら後方へ案内される。ここで、加工手段は、担持ローラに担持されたマルチフィルムに、工具を押圧して露出部を加工する。本マルチフィルム敷設機では、加工手段に担持ローラに沿って複数個の工具を配設することにより、複数列の露出部をマルチフィルムに加工することができる。したがって、例えば、複数条で作物が植付けられた畝にマルチフィルムを敷設する場合にも対応することができる。
請求項3に記載のマルチフィルム敷設機によれば、担持ローラを偏心支持することにより、担持ローラが1回転する間に、加工刃を担持ローラによって担持されたマルチフィルムから浮かせることができる。したがって、加工刃を例えばカッター刃とすると、マルチフィルムは引き出し方向に沿って断続的に切断される。このようにして加工された露出部は、ミシン目になる。
請求項4に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルム敷設機を圃場の畝に沿って前進(走行)させることにより、当該敷設機の前進に伴ってロールから引き出されたマルチフィルムは、担持ローラによって担持されて該担持ローラを回転させながら後方へ案内される。ここで、加工手段は、ロールから引き出されたマルチフィルムを担持ローラに設けられた加工刃によって加工(切断)する。本マルチフィルム敷設機では、加工手段に担持ローラに沿って複数個の加工刃を配設することにより、複数列の露出部をマルチフィルムに加工することができる。したがって、例えば、複数条で作物が植付けられた畝にマルチフィルムを敷設する場合にも対応することができる。
請求項5に記載のマルチフィルム敷設機によれば、露出部は、必要に応じて、切断部、ミシン目あるいは穴を選択することができる。ここで、露出部として切断部を選択した場合、工具あるいは加工刃を例えばカッター刃あるいは環形状のブレードとすることで実施することができる。また、露出部としてミシン目を選択した場合、前述したように、工具をカッター刃とすると共に担持ローラを偏心支持する、あるいは、加工刃を鋸歯状の切刃が形成された環形状のブレードとすることで実施することができる。さらに、露出部として穴を選択した場合、工具を、例えば担持ローラの回転に同期して担持ローラに担持されたマルチフィルムに穴あけ加工するパンチとすることで実施することができる。
請求項6に記載のマルチフィルム敷設機によれば、当該マルチフィルム敷設機に移植機を連結することで、マルチフィルムの敷設作業と作物の移植作業とを同時に実施することができる。本マルチフィルム敷設機では、マルチフィルムの幅方向に複数機の移植機を並べて連結して、さらに、各移植機に相対する工具あるいは加工刃を当該敷設機に配設することにより、マルチフィルムを敷設すると同時に、敷設されたマルチフィルムの複数列の各露出部から露出した土壌に、作物を複数条で移植することができる。なお、連結する移植機は、例えば、前述した特許文献2に記載のマルチャ付接地型移植のような、溝切器によって圃場に植溝を切りながら、この植溝に作物(苗)を投入して、さらに、作物が投入された植溝を覆土、鎮圧する溝切型移植機を使用することができる。
請求項7に記載のマルチフィルム敷設機によれば、例えば、マルチフィルムの敷設作業中に走行体を停止させると、ロールから引き出されたマルチフィルムの張力によって走行体の停止後もロールからマルチフィルムが不必要に引き出されてしまうことがあるが、本マルチフィルム敷設機では、回転規制手段によってロール軸の回転を適宜規制することで、マルチフィルムがロールから不必要に引き出されることを防ぐことができる。走行体の停止時におけるロール軸の回転を規制すると、ロールから引き出されたマルチフィルムの張力によって走行体が後退方向へ引っ張られることになるが、走行体の後退を走行規制手段によって規制することで、当該走行体が後退することを防ぐことができる。なお、回転規制手段として、例えば、ロール軸の引き出し方向の回転を解除可能に規制するラチェット機構を使用することができる。また、走行規制手段として、例えば、走行体の車輪の後退方向の回転を規制可能なワンウェイクラッチ機構を使用することができる。
請求項8に記載のマルチフィルム敷設機によれば、旋回軸を中心に走行体を旋回させることで、圃場でマルチフィルム敷設機を容易に方向転換させることができる。旋回軸は、例えば、走行体に移動用のハンドル(シャフト)を上下方向へスライド可能に設けることで構成することができる。この場合、ハンドルを下方向へスライドさせて圃場に突き立てる。この状態で走行体を旋回させることでマルチフィルム敷設機を方向転換させることができる。
請求項9に記載のマルチフィルム敷設機によれば、トラクタにロール支持手段および加工手段を設けることで、当該マルチフィルム敷設機を構成することができる。この場合、トラクタの前進(走行)に伴いロール支持手段によって支持されたロールからマルチフィルムが引き出される。ロールから引き出されたマルチフィルムには、加工手段によって露出部が加工される。これにより、トラクタの進行方向に沿って露出部が形成されたマルチフィルムを圃場に敷設することができる。
請求項10に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルムを圃場へ固定しながら敷設作業を行うことができる。これにより、例えば、ピン等でマルチフィルムを固定する作業を機械化して敷設作業と固定作業とを同時に実施することができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
請求項11に記載のマルチフィルム敷設方法によれば、マルチフィルム敷設機の進行方向に沿って露出部が形成されたマルチフィルムが圃場に敷設される。したがって、圃場に植付けられた作物をマルチフィルムに形成された露出部から露出させることにより、マルチフィルムによって作物が損傷する事態を回避することができる。また、作付け状態に応じて露出部の形状および位置を選択することができることから、多種多様な作物のマルチ栽培に対応させることができる。
【発明の効果】
【0007】
圃場に植付けられた作物を損傷することなく、且つ効率的にマルチフィルムを敷設することが可能なマルチフィルム敷設機およびマルチフィルム敷設方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1−図7に基いて説明する。なお、説明の便宜上、マルチフィルム敷設機1の前進方向(図1における下方向ならびに図3における右方向)を前方と規定する。
第1実施形態のマルチフィルム敷設機1では、当該敷設機1の前進に伴ってロール2からマルチフィルム3が引き出されて、ロール2から引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15(切断手段)の各切断ユニット17によって切断されて圃場に敷設される。
【0009】
図1−図3に示されるように、マルチフィルム敷設機1は、アルミニウム合金等からなるパイプ材を組み合わせて構成された本体フレーム5と、該本体フレーム5の四隅に配設された車輪6と、からなる走行体を有する。走行体は、前輪6(図3における右側の車輪6)の後退方向の回転(図3における反時計回り方向への回転)を規制可能なワンウェイクラッチ機構(走行規制手段)を有する。本体フレーム5の前側上部には、ロール2のロール軸を回転可能に支持するロール支持装置7(ロール支持手段)が設けられる。ロール支持装置7は、テーパー部がロール軸の両端開口部に係合されてコイルばねのばね力によってロール2を軸方向(図1における左右方向)に挟持する一対のチャック部材8、9を有する。また、ロール支持装置7は、ロール2の引き出し方向の回転(図3における反時計回り方向の回転)を許容して巻き取り方向の回転(図3における時計回り方向の回転)を規制するラチェット機構10(回転規制手段)を有する。なお、ラチェット機構10は、一側のチャック部材(第1実施形態では、右側のチャック部材8)にのみ設ければよい。
【0010】
マルチフィルム敷設機1は、ロール2から引き出されたマルチフィルム3を担持する担持ローラ11(加工手段)を有する。担持ローラ11は、本体フレーム5に架設されて左右に延びるローラフレーム12によって支持される。また、担持ローラ11は、同軸配置されて両端部が各支持部材13によって回転可能に支持された2つの軸11a、11bに分割して構成されて、各軸11a、11bには、複数個(第1実施形態では、各4個)の受けローラ14が配設される。これにより、図3に示されるように、ロール2から下方へ引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11によって担持されて後方へ導かれる。なお、各支持部材13は、各11a、11bの長さに応じてフレーム幅方向(図1における左右方向)へ移動させてローラフレーム12に固定することができる。
【0011】
マルチフィルム敷設機1は、ロール2から引き出されたマルチフィルム3を引き出し方向に沿って切断する切断装置15(加工手段)を有する。切断装置15は、本体フレーム5に架設されて左右に延びるカッターフレーム16と、該カッターフレーム16に配設された複数個(第1実施形態では、4個)の切断ユニット17と、各切断ユニット17に相対させて担持ローラ11の各11a、11bに配設される複数個の受け刃部材18と、を有する。図4に示されるように、切断ユニット17は、カッターフレーム16に設けられて前方へ延びるブラケット19と、該ブラケット19に取り付けられてコイルばね20のばね力によって右側面視(図3参照)で軸21の回りに時計回り方向へ付勢されるカッターホルダ22と、該カッターホルダ22における軸21よりも下側に固定されてコイルばね20のばね力によって切刃が相対する受け刃部材18に押圧されるカッター23(工具)と、を有する。
【0012】
図3に示されるように、マルチフィルム敷設機1は、担持ローラ11の受け刃部材18によって担持されたマルチフィルム3にカッター23の切刃が押圧されて、図5に示されるように、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させることにより、当該敷設機1の前進に伴ってロール2から引き出されたマルチフィルム3には、引き出し方向(図5における上下方向)に沿って切断部24(露出部)が形成される。なお、図4に示されるように、切断ユニット17は、コイルばね20のばね力によって付勢されるカッターホルダ22の軸21の回りの動作を規制するストッパ25を有する。該ストッパ25は、カッターホルダ22における軸21よりも上側に設けられる被規制部26をカッターフレーム16に設けられる規制部27によって規制する。これにより、カッターホルダ22の軸21の回りの動作を規制して、カッター23の切込み深さを調節することができるように構成されている。
【0013】
なお、カッター23の切込み深さは、カッターホルダ22に対する被規制部26の接続位置(軸21から接続位置までの距離)を変えることで調節することができる。また、カッター23が摩耗した場合、カッター23をカッターボルダ22に保持するためのボルトを緩めてカッター23をカッターボルダ22に対してスライドさせればよい。また、本体フレーム5は、左右の車輪6の距離が圃場の畝4の幅に応じて調節可能に構成される。さらに、本体フレーム5の幅方向両側には手押しするためのハンドル28が設けられており、各ハンドル28は作業者の体格に合せて個別に長さ調節が可能である。
【0014】
次に、第1実施形態の作用を説明する。なお、図5に示されるように、ここでは、連続鉢苗移植機によって4条の連続鉢苗29(作物)が植付けられた畝4にマルチフィルム3を敷設する場合を説明する。
まず、準備段階では、切断装置15(加工手段)の各切断ユニット17を対応する各連続鉢苗29に合せて配設すると共に、各切断ユニット17に対応して各受け刃部材18を配設しておく。また、マルチフィルム敷設機1を畝4の始端部(敷設開始位置)を跨ぐように停止させて、ロール2から引き出したマルチフィルム3の端部を当該畝4の始端部に埋設(固定)しておく。
【0015】
次に、畝4の幅方向(図5における左右方向)両側に配した2人の作業者(図示略)によって各ハンドル28を操作して、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させる。マルチフィルム敷設機1の前進に伴ってマルチフィルム3がロール2から引き出されて、引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17の各カッター23によって切断される。これにより、マルチフィルム3には、畝4に植付けられた連続鉢苗29の各条の相対位置にマルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って各切断部24(露出部)が形成されて、圃場には、この切断部24が形成されたマルチフィルム3が敷設される。図5に示されるように、畝4に植付けられた連続鉢苗29は、マルチフィルム3の相対する切断部24から露出する。
【0016】
なお、マルチフィルム敷設機1においては、マルチフィルム3の敷設作業中に走行体の移動を停止させると、ロール2から引き出されたマルチフィルム3の張力によって、ロール軸には、マルチフィルム3を引き出そうとする力(回転力)が作用する。そこで、マルチフィルム敷設機1では、図4に示されるように、ラチェット機構10(回転規制手段)によって、ロール軸の図4における反時計回り方向への回転を規制することにより、マルチフィルム3がロール2から不必要に引き出されることを防ぐことができる。他方、ラチェット機構10によって停止時におけるロール軸の回転を規制すると、ロール2から引き出されたマルチフィルム3の張力によって、当該マルチフィルム敷設機1(走行体)には、マルチフィルム敷設機1を後退させようとする力が作用する。そこで、マルチフィルム敷設機1では、前輪6の図3における反時計回り方向への回転をワンウェイクラッチ機構(走行規制手段)によって規制することにより、マルチフィルム敷設機1が後退することを防ぐことができる。
【0017】
また、図6および図7に示されるように、マルチフィルム敷設機1では、選択されたハンドル28のシャフト部(旋回軸)を圃場に突き立てて車輪6を圃場から浮かせることができる。この状態で走行体を旋回させることにより、マルチフィルム敷設機1を容易に方向転換させることができる。なお、ハンドル28のシャフト部は、ロック機構を解除することで走行体に対して軸方向へ移動可能になる。また、ハンドル28のシャフト部の下端には、当該シャフト部が土壌に深く入り込むことを防ぐための座49が設けられている。
【0018】
第1実施形態では以下の効果を奏する。
第1実施形態によれば、マルチフィルム3は、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させるのに伴ってロール2から引き出されて、担持ローラ11の通過時に、切断装置15(切断手段)の各切断ユニット17の各カッター23によって切断される。これにより、圃場に敷設されるマルチフィルム3には、マルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って延びる切断部24(露出部)が形成される。したがって、畝4に植付けられた連続鉢苗29(作物)は、マルチフィルム敷設機1によって敷設されたマルチフィルム3の切断部24から露出されるので、土壌に露出した部分がマルチフィルム3によって押し潰されて損傷してしまうことがない。
また、畝4に複数条で連続鉢苗29(作物)が植付けられている場合、切断装置15(加工手段)の切断ユニット17および担持ローラ11(加工手段)の受け刃部材18を連続鉢苗29の条間隔に相対させて配設することで対応が可能であるため、マルチフィルム敷設機1を多種多様なマルチ栽培に適用することができる。さらに、ロール2から引き出されたマルチフィルム3を連続鉢苗29の条間隔に合せて切断するので、従来技術(特許文献2)のように条間隔に合せてロール2を切断することなく、市販のマルチフィルム3をそのまま使用することができる。
【0019】
なお、実施形態は、上述した第1実施形態に限定されるのもではなく、例えば、次のように構成してもよい。
【0020】
第1実施形態では、担持ローラ11(加工手段)を軸心で支持して、ロール2から引き出されたマルチフィルム3が担持ローラ11を通過する時に、切断装置15(加工手段)によってマルチフィルム3を切断して、マルチフィルム3に引き出し方向に沿って切断部24(露出部)を形成したが、図10および図11に示されるように、担持ローラ11を偏心支持することで、マルチフィルム3がロール2から引き出されて担持ローラ11が1回転する間の、担持ローラ11上のマルチフィルム3とカッター23との距離を変化させる。これにより、担持ローラ11が1回転した時に、担持ローラ11を通過したマルチフィルム3には、カッター23によって切断された部分とカッター23が浮いて切断されなかった部分とが形成される。
したがって、図8に示されるように、マルチフィルム敷設機1を前進させることで、圃場には、当該敷設機1の進行方向に沿って切断部と非切断部とが交互に現れたミシン目30(露出部)が形成されたマルチフィルム3が敷設される。この場合、マルチフィルム3の敷設後、図9に示されるように、ミシン目30を破ることにより畝4に植付けられた連続鉢苗29(作物)を露出させることができる。また、このときミシン目30を破らずに、ミシン目30の切断部から作物をほじくり出すようにして、作物を露出させてもよい。
この態様では、図10および図11に示されるように、カッターブラケット19に設けられたレバー43を起こして水平に保持することで、カッターホルダ22の軸21を中心とする時計回り方向への回転を時計の短針でいうと6時の位置までに規制する。この構成により、担持ローラ11上のマルチフィルム3とカッター23との距離が長くなった時に、カッター23をマルチフィルム3から浮かせることができる(図11参照)。
なお、担持ローラ11を偏心支持した場合であっても、図12に示されるように、レバー43を倒してカッターホルダ22の回転の規制を解除することで、担持ローラ11を中心で支持した場合(図4参照)と同様に、マルチフィルム3に引き出し方向に沿って切断部24(露出部)を形成することができる。
【0021】
また、第1実施形態では、工具としてカッター23を使用して切断装置15(加工手段)を構成したが、図13に示されるように、円板状のブレード45をアーム44(第1実施形態におけるカッターホルダ22に相当)の先端に回転可能に設けて切断装置15(加工手段)を構成することができる。この場合、担持ローラ11を偏心支持することで、マルチフィルム3に引き出し方向に沿ってミシン目30(露出部)を形成することができる。さらに、図14に示されるように、ブレード45を鋸歯付ブレード46とすることで、担持ローラ11を偏心支持することなく、マルチフィルム3に引き出し方向に沿ってミシン目30(露出部)を形成することができる。
【0022】
また、図15および図16に示されるように、担持ローラ11を偏心支持すると共に、アーム47(第1実施形態におけるカッターホルダ22に相当)の先端にパンチ48を設けて切断装置15(加工手段)を構成することができる。この場合、図15に示されるように、担持ローラ11が所定の回転角度位相になった時(担持ローラ11上のマルチフィルム3とカッター23との距離が最短になった時)に、パンチ48によってマルチフィルム3に例えば円形の穴(露出部)が加工される。したがって、マルチフィルム3に、所定ピッチの穴(露出部)を引き出し方向に沿って形成することができる。
【0023】
また、図17に示されるように、担持ローラ11の担持面に、フランジ状に突出させた加工刃65を設けて切断装置15(加工手段)を構成してもよい。この場合、切断ユニット17が不要となり、構造を簡易化することができる。また、対応する各連続鉢苗29に合せて加工刃65を配設することにより、複数列の切断部24(露出部)をマルチフィルム3に加工することができる。したがって、例えば、複数条で連続鉢苗29(作物)が植付けられた畝4にマルチフィルム3を敷設する場合にも対応することができる。そして、図18に示されるように、加工刃65を鋸歯付加工刃66とすることで、マルチフィルム3に引き出し方向に沿ってミシン目30(露出部)を形成することができる。
【0024】
また、第1実施形態では、本体フレーム5の四隅に車輪6を配設して走行体を構成したが、トラクタを走行体として使用することができる。この場合、トラクタに、ロール支持装置7(ロール支持手段)および切断装置15(加工手段)を取り付けることで実施することが可能である。
さらに、第1実施形態では、畝4の幅方向両側に配した2人の作業者によって各ハンドル28を操作してマルチフィルム敷設機1を前進させたが、図19に示されるように、トラクタ64にマルチフィルム敷設機1を連結して、このトラクタ64によってマルチフィルム敷設機1を牽引してもよい。
ここで、トラクタとは、図19に例示する4輪の乗用トラクタのほか、歩行用トラクタ(動力耕うん機、ティラー)やクローラトラクタなど、ロール支持手段と加工手段とを牽引可能なあらゆる移動動力源の総称である。
【0025】
(第2実施形態)
次に、図20ないし図22に基いて第2実施形態を説明する。ここでは、明細書の記載を簡潔にするために、上述した第1実施形態と同一あるいは相当の構成要素については、同一の名称及び符号を付与すると共にその詳細な説明を省略する。
図20および図21に示されるように、第2実施形態のマルチフィルム敷設機31は、第1実施形態のマルチフィルム敷設機1に、連結手段によって連続鉢苗移植機32を連結させたものである。なお、連結させる連続鉢苗移植機32には、例えば、特開平8−89028号公報に記載の連続鉢苗移植機の移植機本体(以下、従来の連続鉢苗移植機という)を使用することができる。また、連続鉢苗移植機32の基本構造は従来の連続鉢苗移植機と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
【0026】
連続鉢苗移植機32は、畝4上を滑走可能な滑走体34を有する。該滑走体34は、そり形状の部材であり、T字形状のハンドル33の下端部に設けられる。また、ハンドル33の中間部には、前方に向けて水平に延びるT字形状の移植機側連結片35(連結手段)が取り付けられる。他方、マルチフィルム敷設機31には、移植機側連結片35を係合させる連結ユニット36(連結手段)が設けられる。該連結ユニット36は、本体フレーム5に架設したローラフレーム12に取り付けられるユニット本体37と、該ユニット本体37に支持されて軸38の回りに回動可能な敷設機側連結片39と、該敷設機側連結片39とユニット本体37との間に張設された一対のコイルばね40と、を有する。
【0027】
そして、第2実施形態では、敷設機側連結片39の先端部に形成されたフックに移植機側連結片35を係合させることにより、マルチフィルム敷設機31に連続鉢苗移植機32が連結される。ところで、連続鉢苗移植機32においては、移植機本体を持ち上げるようにしてハンドル33を引っ張ることにより、連続鉢苗29(作物)の植付け高さが安定することが知られている。そこで、第2実施形態では、一対のコイルばね40のばね力によって敷設機側連結片39を跳ね上げるように付勢して、連続鉢苗移植機32に持ち上げるような力を作用させた。これにより、作業者がハンドル33を引っ張る状態を再現することができ、連続鉢苗29の植付け高さを安定化させることができる。
【0028】
なお、第2実施形態では、一対のコイルばね40のユニット本体37側の端部をスライドさせて当該端部のユニット本体37に対する接続位置を移動させることができる。これにより、一対のコイルばね40が敷設機側連結片39を跳ね上げる力、すなわち、連続鉢苗移植機32を上方へ引っ張る力を必要に応じて調節することができる。
【0029】
次に、第2実施形態の作用を説明する。なお、第2実施形態では、図22に示されるように、マルチフィルム敷設機31に2機の連続鉢苗移植機32を並べて連結して、マルチフィルム敷設機31によるマルチフィルム3の敷設作業と連続鉢苗移植機32による連続鉢苗29(作物)の移植作業とを同時に実施する場合を説明する。
まず、準備段階では、切断装置15(加工手段)の各切断ユニット17を相対する各連続鉢苗移植機32に合せて配設すると共に、各切断ユニット17に相対させて各受け刃部材18を配設しておく。また、マルチフィルム敷設機1を畝4の始端部(敷設開始位置)を跨ぐように停止させて、ロール2から引き出したマルチフィルム3の端部を当該畝4の始端部に埋設(固定)しておく。なお、4つの切断ユニット17のうち使用しない切断ユニット17のカッター23(加工刃)は、マルチフィルム3から浮かせておく。
【0030】
次に、畝4の幅方向(図22における左右方向)両側に配した2人の作業者(図示略)によって各ハンドル28を操作して、マルチフィルム敷設機31および連続鉢苗移植機32を畝4に沿って前進させる。マルチフィルム敷設機31の前進に伴ってマルチフィルム3がロール2から引き出されて、引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17の各カッター23によって切断される。これにより、マルチフィルム3には、連続鉢苗移植機32によって畝4に植付けられる連続鉢苗29(作物)の各条の相対位置に、マルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って各切断部24(露出部)が形成されて、このマルチフィルム3が圃場に敷設される。そして、マルチフィルム3の敷設と同時に、敷設されたマルチフィルム3の切断部24から露出した土壌に、連続鉢苗移植機32によって連続鉢苗29が移植される。
【0031】
第2実施形態では以下の効果を奏する。
第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同一の効果を奏することができる。
加えて、マルチフィルム3の敷設作業と連続鉢苗29(作物)の移植作業とを同時に実施することが可能になり、マルチ栽培の作業効率を大幅に向上させることができる。
また、連続鉢苗移植機32単体による移植と比較して、連続鉢苗移植機32が蛇行することがないため、連続鉢苗29(作物)を畝4に沿ってまっすぐに植付けることができる。さらに、複数条の連続鉢苗29を同時に一定の条間隔で植付けることができる。
さらに、一対のコイルばね40のばね力によって敷設機側連結片39を軸38の回りに付勢して、連続鉢苗移植機32の移植機側連結片35(連結手段)を持ち上げてハンドル28を上方へ引っ張るような力を連続鉢苗移植機32に作用させたので、連続鉢苗29(作物)の植付け高さを安定化させることができる。
【0032】
なお、実施形態は、上述した第2実施形態に限定されるのもではなく、例えば、次のように構成してもよい。
第2実施形態では、マルチフィルム敷設機31に2機の連続鉢苗移植機32を連結したが、例えば、1機あるいは3機の連続鉢苗移植機32をマルチフィルム敷設機31に連結してもよい。
また、図23に示されるように、本体フレーム5に切断装置15(加工手段)を設けることなく、走行体を連続鉢苗移植機32を牽引するだけの装置として構成してもよい。この場合、切断装置15の代わりに、本体フレーム5に予備の苗台41を設置してもよい。これにより、移植作業を中断して苗台41を取りに行く手間を省くことができる。さらに、図24に示されるように、本体フレーム5に均平用ローラ42等のアタッチメントを装着することで、複数の作業を同一に実施して農作業を効率化することができる。
【0033】
(第3実施形態)
次に、図25ないし図29に基いて第3実施形態を説明する。ここでは、明細書の記載を簡潔にするために、上述した第1実施形態および第2実施形態と同一あるいは相当の構成要素については、同一の名称及び符号を付与すると共にその詳細な説明を省略する。
第3実施形態のマルチフィルム敷設機51は、第1実施形態のマルチフィルム敷設機1に、ピン打ち装置52を設けたものである。この構成により、マルチフィルム3の敷設作業と、ピン打ち作業、すなわち、敷設されたマルチフィルム3にコ字状のピン50を打ち込むことで切断装置15によって形成した切断部24(露出部)を畝4に固定する作業と、を同時に実施することが可能になり、マルチ栽培の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0034】
ピン打ち装置52は、図1および図2に示される4つの各切断ユニット17に相対する4つの各ピン打ちユニット53を有する。図25および図27に示されるように、ピン打ちユニット53は、本体フレーム5に取り付けられる取付部54と、該取付部54に支持されて軸55の回りに回転可能な支持アーム56と、該支持アーム56と取付部54との間に張設されたコイルばね57と、支持アーム56の先端部に取り付けられる打ち込み部58と、を有する。なお、支持アーム56は、コイルばね57のばね力によって略水平に保持される。また、コイルばね57の取付部54側の端部をスライドさせて当該端部の取付部54に対する接続位置を移動させることができる。これにより、コイルばね57が支持アーム56を軸55回りに図25および図27における時計回り方向へ付勢する力、すなわち、打ち込み部58を持ち上げようとする力を必要に応じて調節することができる。
【0035】
ピン打ち部58は、取付面が支持アームに取り付けられる取付座59と、該取付座59の取付面とは反対側の面から図25および図27における左斜め上方へ向けて延びるピン整列ガイド60と、上端部にピン打ちハンドル61が設けられて該ハンドル61を操作して下降させることでピン整列ガイド60によって整列されたピン50のうち先頭のピン50が打ち込みガイド62によって案内されて畝4に打ち込まれるピン打ち部材63と、を有する。なお、図26および図28に示されるように、4つのピン打ちユニット53の各ピン打ち部材63は、ピン打ちハンドル61によって連結される。
【0036】
次に、第3実施形態の作用を説明する。なお、第3実施形態では、4つの各切断ユニット17を有する切断装置15(図1および図2参照)と、各切断ユニット17に相対する4つの各ピン打ちユニット53を有するピン打ち装置52と、を配設して構成されるマルチフィルム敷設機51によって、マルチフィルム3の切断を含むマルチフィルム3の敷設作業と、ピン打ち作業、すなわち、敷設されたマルチフィルム3にピン50を打ち込むことでマルチフィルム3の切断部24(露出部)を畝4に固定する作業と、を同時に実施する場合を説明する。
【0037】
畝4の幅方向(図26における左右方向)両側に配した2人の作業者(図示略)によって各ハンドル28を操作してマルチフィルム敷設機51を前進させると、マルチフィルム3がロール2から引き出されて、引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17の各カッター23(図4参照)によって切断される。これにより、マルチフィルム3には、畝4に植付けられた連続鉢苗29(作物)の各条の相対位置に、マルチフィルム敷設機51の進行方向に沿って各切断部24(露出部)が形成されて、このマルチフィルム3が圃場に敷設される。
【0038】
そして、敷設されたマルチフィルム3にピン50を打ち込む場合、まず、ピン50を打ち込みたい位置にマルチフィルム敷設機51を停止させる。ここで、図25に示されるように、レバー10aを手前側へ操作してラチェット機構10(回転規制手段)を有効にすることで、マルチフィルム3の張力によりマルチフィルム3がロール2から不必要に引き出されることを防ぐことができる。マルチフィルム敷設機51を停止させた後、図27および図28に示されるように、ピン打ちハンドル61を下降させることで、ピン整列ガイド60によって整列されたピン50のうち先頭のピン50が打ち込みガイド62によって案内されつつ、図29に示されるように、ピン打ち部材63によって畝4に打ち込まれる。
【0039】
第3実施形態では以下の効果を奏する。
第3実施形態によれば、上述した第1実施形態と同一の効果を奏することができる。
加えて、複数条の連続鉢苗29(作物)が露出した各切断部24(露出部)のピン打ちを同時に行うことが可能になり、ピン打ち作業を効率化することができる。また、マルチフィルム3の敷設作業と、ピン打ち作業と、を同時に実施することが可能になり、マルチ栽培の作業効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態のマルチフィルム敷設機の平面図である。
【図2】第1実施形態のマルチフィルム敷設機の正面図である。
【図3】第1実施形態のマルチフィルム敷設機の右側面図である。
【図4】図3において切断装置(加工手段)を拡大して示した図である。
【図5】4条の連続鉢苗が植付けられた畝に第1実施形態のマルチフィルム敷設機を使用してマルチフィルムを敷設している様子を示す平面図である。
【図6】ハンドルを圃場に突き立てた状態を示すマルチフィルム敷設機の右側面図である。
【図7】ハンドルを圃場に突き立てた状態を示すマルチフィルム敷設機の正面図である。
【図8】4条の連続鉢苗が植付けられた畝に、担持ローラを偏心支持して構成されたマルチフィルム敷設機を使用してマルチフィルムを敷設している様子を示す平面図である。
【図9】図8におけるマルチフィルムの敷設後、ミシン目を破って連続鉢苗(作物)を露出させた状態を示す図である。
【図10】第1実施形態の他の態様を示す図であって、担持ローラを偏心支持してマルチフィルムにミシン目(露出部)を加工する場合に、切断ユニットのカッターが担持ローラによって担持されたマルチフィルムに切り込まれている状態を示す図である。
【図11】図10において、切断ユニットのカッターが担持ローラによって担持されたマルチフィルムから浮いた状態を示す図である。
【図12】図6において、ストッパを解除した状態、すなわち、マルチフィルムに切断部(露出部)を加工する場合を示す図である。
【図13】第1実施形態の他の態様を示す図であって、カッターに替えて円板状のブレードを採用して切断ユニットを構成した態様を示す図である。
【図14】図13のブレードを鋸歯付ブレードとした態様を示す図である。
【図15】第1実施形態の他の態様を示す図であって、カッターに替えてパンチを採用して切断ユニットを構成した態様を示し、特に、パンチによってマルチフィルムに穴が加工されている状態を示す図である。
【図16】図15において、パンチがマルチフィルムから離れている状態を示す図である。
【図17】第1実施形態の他の態様を示す図であって、担持ローラに加工刃が設けられた態様を示す図である。
【図18】図17における加工刃が鋸歯付加工刃である態様を示す図である。
【図19】第1実施形態の他の態様を示す図であって、マルチフィルム敷設機がトラクタによって牽引される態様を示す図である。
【図20】第2実施形態のマルチフィルム敷設機の平面図である。
【図21】第2実施形態のマルチフィルム敷設機の右側面図である。
【図22】2機の連続鉢苗移植機が連結された第2実施形態のマルチフィルム敷設機を使用して、マルチフィルムの敷設作業と連続鉢苗(作物)の移植作業とを同時に実施している様子を示す平面図である。
【図23】第2実施形態の他の態様を示す平面図である。
【図24】第2実施形態の他の態様を示す右側面図である。
【図25】第3実施形態のマルチフィルムの右側面図である。
【図26】第3実施形態のマルチフィルムの正面図である。
【図27】図25において打ち込みハンドルを下降させた状態を示す図である。
【図28】図26において打ち込みハンドルを下降させた状態を示す図である。
【図29】切断部(連続鉢苗)に沿ってピン打ちされたマルチフィルムを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 マルチフィルム敷設機、2 ロール、3 マルチフィルム、4 畝、5 本体フレーム(走行体)、6 車輪(走行体)、7 ロール支持装置(ロール支持手段)、10 ラチェット機構(回転規制手段)、11 担持ローラ、15 切断装置(加工手段)、23 カッター(工具)、24 切断部(露出部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場にマルチフィルムを敷設するマルチフィルム敷設機および圃場にマルチフィルムを敷設する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、トラクタ車体にフィルム敷設装置を装着したマルチフィルム敷設装置の開示がある。このマルチフィルム敷設装置は、走行しながらマルチフィルムを土壌面に被覆すると同時に、目付装置によってマルチフィルムの中央部に縦方向に沿って破り目(ミシン目)を形成する。しかしながら、特許文献1のマルチフィルム敷設装置では、土壌面に敷設されたマルチフィルムの上から目付装置を押し付けてマルチフィルムに破り目を形成することから、苗が植付けられた土壌面にマルチフィルムを敷設する場合、苗が目付装置によって押し潰されて損傷する。
【0003】
そこで、特許文献2には、移植機によって苗の植付けを行いながら、移植機の進行に応じてロールから引き出されたマルチフィルムを植付け中の連続鉢苗に沿って繰り出すマルチャを備える接地型移植機の開示がある。この接地型移植機では、鉢苗繰出し部から繰り出された連続鉢苗が植付溝に連続に植付けられると同時に、マルチャから繰り出されたマルチフィルムが植付け中の連続鉢苗に沿って敷設される。しかしながら、特許文献2の接地型移植機では、植付けられる苗の条間隔に応じた幅を有するマルチフィルムを選択する必要があることから、適合するマルチフィルムが市販されていない場合、条間隔をマルチフィルムの幅に合せるか、あるいは、マルチフィルムを切断してマルチフィルムの幅を条間隔に合せる必要がある。
【特許文献1】特開平7−99845号公報
【特許文献2】特許第3475280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、圃場に植付けられた作物を損傷することなく、且つ効率的にマルチフィルムを敷設することが可能なマルチフィルム敷設機およびマルチフィルム敷設方法を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設するマルチフィルム敷設機であって、圃場を走行可能な走行体と、該走行体に設けられて前記マルチフィルムのロール軸を回転可能に支持するロール支持手段と、前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに圃場に植付けられた作物を露出させる前記露出部を加工する加工手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチフィルム敷設機において、前記加工手段は、前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、該担持ローラによって担持された前記マルチフィルムに押圧させて前記露出部を加工する工具と、を有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマルチフィルム敷設機において、前記担持ローラを偏心支持したことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のマルチフィルム敷設機において、前記加工手段は、前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、該担持ローラに設けられて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに前記露出部を加工する加工刃と、を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1−4のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記露出部は、切断部、ミシン目あるいは穴のいずれかであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1−5のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、移植機を連結させる連結手段を有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1−6のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記ロール支持手段に支持された前記ロール軸の回転を規制する回転規制手段と、前記走行体の走行を規制する走行規制手段と、を有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記走行体を旋回させるための旋回軸を有することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、前記走行体がトラクタであることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1−9のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機において、マルチフィルムを圃場へ固定するための装置を有することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項11に記載の発明は、マルチフィルム敷設機を走行させてロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設する方法であって、ロールから引き出された前記マルチフィルムに作物を露出させるための露出部を加工して、引き出し方向に沿って前記露出部が形成された前記マルチフィルムを圃場に敷設することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルム敷設機を圃場の畝に沿って前進(走行)させることにより、当該敷設機の前進に伴ってロールから引き出されたマルチフィルムに、加工手段によって露出部が加工される。これにより、マルチフィルム敷設機の進行方向に沿って露出部が形成されたマルチフィルムを、圃場に敷設することができる。
請求項2に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルム敷設機を圃場の畝に沿って前進(走行)させることにより、当該敷設機の前進に伴ってロールから引き出されたマルチフィルムは、担持ローラによって担持されて該担持ローラを回転させながら後方へ案内される。ここで、加工手段は、担持ローラに担持されたマルチフィルムに、工具を押圧して露出部を加工する。本マルチフィルム敷設機では、加工手段に担持ローラに沿って複数個の工具を配設することにより、複数列の露出部をマルチフィルムに加工することができる。したがって、例えば、複数条で作物が植付けられた畝にマルチフィルムを敷設する場合にも対応することができる。
請求項3に記載のマルチフィルム敷設機によれば、担持ローラを偏心支持することにより、担持ローラが1回転する間に、加工刃を担持ローラによって担持されたマルチフィルムから浮かせることができる。したがって、加工刃を例えばカッター刃とすると、マルチフィルムは引き出し方向に沿って断続的に切断される。このようにして加工された露出部は、ミシン目になる。
請求項4に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルム敷設機を圃場の畝に沿って前進(走行)させることにより、当該敷設機の前進に伴ってロールから引き出されたマルチフィルムは、担持ローラによって担持されて該担持ローラを回転させながら後方へ案内される。ここで、加工手段は、ロールから引き出されたマルチフィルムを担持ローラに設けられた加工刃によって加工(切断)する。本マルチフィルム敷設機では、加工手段に担持ローラに沿って複数個の加工刃を配設することにより、複数列の露出部をマルチフィルムに加工することができる。したがって、例えば、複数条で作物が植付けられた畝にマルチフィルムを敷設する場合にも対応することができる。
請求項5に記載のマルチフィルム敷設機によれば、露出部は、必要に応じて、切断部、ミシン目あるいは穴を選択することができる。ここで、露出部として切断部を選択した場合、工具あるいは加工刃を例えばカッター刃あるいは環形状のブレードとすることで実施することができる。また、露出部としてミシン目を選択した場合、前述したように、工具をカッター刃とすると共に担持ローラを偏心支持する、あるいは、加工刃を鋸歯状の切刃が形成された環形状のブレードとすることで実施することができる。さらに、露出部として穴を選択した場合、工具を、例えば担持ローラの回転に同期して担持ローラに担持されたマルチフィルムに穴あけ加工するパンチとすることで実施することができる。
請求項6に記載のマルチフィルム敷設機によれば、当該マルチフィルム敷設機に移植機を連結することで、マルチフィルムの敷設作業と作物の移植作業とを同時に実施することができる。本マルチフィルム敷設機では、マルチフィルムの幅方向に複数機の移植機を並べて連結して、さらに、各移植機に相対する工具あるいは加工刃を当該敷設機に配設することにより、マルチフィルムを敷設すると同時に、敷設されたマルチフィルムの複数列の各露出部から露出した土壌に、作物を複数条で移植することができる。なお、連結する移植機は、例えば、前述した特許文献2に記載のマルチャ付接地型移植のような、溝切器によって圃場に植溝を切りながら、この植溝に作物(苗)を投入して、さらに、作物が投入された植溝を覆土、鎮圧する溝切型移植機を使用することができる。
請求項7に記載のマルチフィルム敷設機によれば、例えば、マルチフィルムの敷設作業中に走行体を停止させると、ロールから引き出されたマルチフィルムの張力によって走行体の停止後もロールからマルチフィルムが不必要に引き出されてしまうことがあるが、本マルチフィルム敷設機では、回転規制手段によってロール軸の回転を適宜規制することで、マルチフィルムがロールから不必要に引き出されることを防ぐことができる。走行体の停止時におけるロール軸の回転を規制すると、ロールから引き出されたマルチフィルムの張力によって走行体が後退方向へ引っ張られることになるが、走行体の後退を走行規制手段によって規制することで、当該走行体が後退することを防ぐことができる。なお、回転規制手段として、例えば、ロール軸の引き出し方向の回転を解除可能に規制するラチェット機構を使用することができる。また、走行規制手段として、例えば、走行体の車輪の後退方向の回転を規制可能なワンウェイクラッチ機構を使用することができる。
請求項8に記載のマルチフィルム敷設機によれば、旋回軸を中心に走行体を旋回させることで、圃場でマルチフィルム敷設機を容易に方向転換させることができる。旋回軸は、例えば、走行体に移動用のハンドル(シャフト)を上下方向へスライド可能に設けることで構成することができる。この場合、ハンドルを下方向へスライドさせて圃場に突き立てる。この状態で走行体を旋回させることでマルチフィルム敷設機を方向転換させることができる。
請求項9に記載のマルチフィルム敷設機によれば、トラクタにロール支持手段および加工手段を設けることで、当該マルチフィルム敷設機を構成することができる。この場合、トラクタの前進(走行)に伴いロール支持手段によって支持されたロールからマルチフィルムが引き出される。ロールから引き出されたマルチフィルムには、加工手段によって露出部が加工される。これにより、トラクタの進行方向に沿って露出部が形成されたマルチフィルムを圃場に敷設することができる。
請求項10に記載のマルチフィルム敷設機によれば、マルチフィルムを圃場へ固定しながら敷設作業を行うことができる。これにより、例えば、ピン等でマルチフィルムを固定する作業を機械化して敷設作業と固定作業とを同時に実施することができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
請求項11に記載のマルチフィルム敷設方法によれば、マルチフィルム敷設機の進行方向に沿って露出部が形成されたマルチフィルムが圃場に敷設される。したがって、圃場に植付けられた作物をマルチフィルムに形成された露出部から露出させることにより、マルチフィルムによって作物が損傷する事態を回避することができる。また、作付け状態に応じて露出部の形状および位置を選択することができることから、多種多様な作物のマルチ栽培に対応させることができる。
【発明の効果】
【0007】
圃場に植付けられた作物を損傷することなく、且つ効率的にマルチフィルムを敷設することが可能なマルチフィルム敷設機およびマルチフィルム敷設方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1−図7に基いて説明する。なお、説明の便宜上、マルチフィルム敷設機1の前進方向(図1における下方向ならびに図3における右方向)を前方と規定する。
第1実施形態のマルチフィルム敷設機1では、当該敷設機1の前進に伴ってロール2からマルチフィルム3が引き出されて、ロール2から引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15(切断手段)の各切断ユニット17によって切断されて圃場に敷設される。
【0009】
図1−図3に示されるように、マルチフィルム敷設機1は、アルミニウム合金等からなるパイプ材を組み合わせて構成された本体フレーム5と、該本体フレーム5の四隅に配設された車輪6と、からなる走行体を有する。走行体は、前輪6(図3における右側の車輪6)の後退方向の回転(図3における反時計回り方向への回転)を規制可能なワンウェイクラッチ機構(走行規制手段)を有する。本体フレーム5の前側上部には、ロール2のロール軸を回転可能に支持するロール支持装置7(ロール支持手段)が設けられる。ロール支持装置7は、テーパー部がロール軸の両端開口部に係合されてコイルばねのばね力によってロール2を軸方向(図1における左右方向)に挟持する一対のチャック部材8、9を有する。また、ロール支持装置7は、ロール2の引き出し方向の回転(図3における反時計回り方向の回転)を許容して巻き取り方向の回転(図3における時計回り方向の回転)を規制するラチェット機構10(回転規制手段)を有する。なお、ラチェット機構10は、一側のチャック部材(第1実施形態では、右側のチャック部材8)にのみ設ければよい。
【0010】
マルチフィルム敷設機1は、ロール2から引き出されたマルチフィルム3を担持する担持ローラ11(加工手段)を有する。担持ローラ11は、本体フレーム5に架設されて左右に延びるローラフレーム12によって支持される。また、担持ローラ11は、同軸配置されて両端部が各支持部材13によって回転可能に支持された2つの軸11a、11bに分割して構成されて、各軸11a、11bには、複数個(第1実施形態では、各4個)の受けローラ14が配設される。これにより、図3に示されるように、ロール2から下方へ引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11によって担持されて後方へ導かれる。なお、各支持部材13は、各11a、11bの長さに応じてフレーム幅方向(図1における左右方向)へ移動させてローラフレーム12に固定することができる。
【0011】
マルチフィルム敷設機1は、ロール2から引き出されたマルチフィルム3を引き出し方向に沿って切断する切断装置15(加工手段)を有する。切断装置15は、本体フレーム5に架設されて左右に延びるカッターフレーム16と、該カッターフレーム16に配設された複数個(第1実施形態では、4個)の切断ユニット17と、各切断ユニット17に相対させて担持ローラ11の各11a、11bに配設される複数個の受け刃部材18と、を有する。図4に示されるように、切断ユニット17は、カッターフレーム16に設けられて前方へ延びるブラケット19と、該ブラケット19に取り付けられてコイルばね20のばね力によって右側面視(図3参照)で軸21の回りに時計回り方向へ付勢されるカッターホルダ22と、該カッターホルダ22における軸21よりも下側に固定されてコイルばね20のばね力によって切刃が相対する受け刃部材18に押圧されるカッター23(工具)と、を有する。
【0012】
図3に示されるように、マルチフィルム敷設機1は、担持ローラ11の受け刃部材18によって担持されたマルチフィルム3にカッター23の切刃が押圧されて、図5に示されるように、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させることにより、当該敷設機1の前進に伴ってロール2から引き出されたマルチフィルム3には、引き出し方向(図5における上下方向)に沿って切断部24(露出部)が形成される。なお、図4に示されるように、切断ユニット17は、コイルばね20のばね力によって付勢されるカッターホルダ22の軸21の回りの動作を規制するストッパ25を有する。該ストッパ25は、カッターホルダ22における軸21よりも上側に設けられる被規制部26をカッターフレーム16に設けられる規制部27によって規制する。これにより、カッターホルダ22の軸21の回りの動作を規制して、カッター23の切込み深さを調節することができるように構成されている。
【0013】
なお、カッター23の切込み深さは、カッターホルダ22に対する被規制部26の接続位置(軸21から接続位置までの距離)を変えることで調節することができる。また、カッター23が摩耗した場合、カッター23をカッターボルダ22に保持するためのボルトを緩めてカッター23をカッターボルダ22に対してスライドさせればよい。また、本体フレーム5は、左右の車輪6の距離が圃場の畝4の幅に応じて調節可能に構成される。さらに、本体フレーム5の幅方向両側には手押しするためのハンドル28が設けられており、各ハンドル28は作業者の体格に合せて個別に長さ調節が可能である。
【0014】
次に、第1実施形態の作用を説明する。なお、図5に示されるように、ここでは、連続鉢苗移植機によって4条の連続鉢苗29(作物)が植付けられた畝4にマルチフィルム3を敷設する場合を説明する。
まず、準備段階では、切断装置15(加工手段)の各切断ユニット17を対応する各連続鉢苗29に合せて配設すると共に、各切断ユニット17に対応して各受け刃部材18を配設しておく。また、マルチフィルム敷設機1を畝4の始端部(敷設開始位置)を跨ぐように停止させて、ロール2から引き出したマルチフィルム3の端部を当該畝4の始端部に埋設(固定)しておく。
【0015】
次に、畝4の幅方向(図5における左右方向)両側に配した2人の作業者(図示略)によって各ハンドル28を操作して、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させる。マルチフィルム敷設機1の前進に伴ってマルチフィルム3がロール2から引き出されて、引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17の各カッター23によって切断される。これにより、マルチフィルム3には、畝4に植付けられた連続鉢苗29の各条の相対位置にマルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って各切断部24(露出部)が形成されて、圃場には、この切断部24が形成されたマルチフィルム3が敷設される。図5に示されるように、畝4に植付けられた連続鉢苗29は、マルチフィルム3の相対する切断部24から露出する。
【0016】
なお、マルチフィルム敷設機1においては、マルチフィルム3の敷設作業中に走行体の移動を停止させると、ロール2から引き出されたマルチフィルム3の張力によって、ロール軸には、マルチフィルム3を引き出そうとする力(回転力)が作用する。そこで、マルチフィルム敷設機1では、図4に示されるように、ラチェット機構10(回転規制手段)によって、ロール軸の図4における反時計回り方向への回転を規制することにより、マルチフィルム3がロール2から不必要に引き出されることを防ぐことができる。他方、ラチェット機構10によって停止時におけるロール軸の回転を規制すると、ロール2から引き出されたマルチフィルム3の張力によって、当該マルチフィルム敷設機1(走行体)には、マルチフィルム敷設機1を後退させようとする力が作用する。そこで、マルチフィルム敷設機1では、前輪6の図3における反時計回り方向への回転をワンウェイクラッチ機構(走行規制手段)によって規制することにより、マルチフィルム敷設機1が後退することを防ぐことができる。
【0017】
また、図6および図7に示されるように、マルチフィルム敷設機1では、選択されたハンドル28のシャフト部(旋回軸)を圃場に突き立てて車輪6を圃場から浮かせることができる。この状態で走行体を旋回させることにより、マルチフィルム敷設機1を容易に方向転換させることができる。なお、ハンドル28のシャフト部は、ロック機構を解除することで走行体に対して軸方向へ移動可能になる。また、ハンドル28のシャフト部の下端には、当該シャフト部が土壌に深く入り込むことを防ぐための座49が設けられている。
【0018】
第1実施形態では以下の効果を奏する。
第1実施形態によれば、マルチフィルム3は、マルチフィルム敷設機1を畝4に沿って前進させるのに伴ってロール2から引き出されて、担持ローラ11の通過時に、切断装置15(切断手段)の各切断ユニット17の各カッター23によって切断される。これにより、圃場に敷設されるマルチフィルム3には、マルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って延びる切断部24(露出部)が形成される。したがって、畝4に植付けられた連続鉢苗29(作物)は、マルチフィルム敷設機1によって敷設されたマルチフィルム3の切断部24から露出されるので、土壌に露出した部分がマルチフィルム3によって押し潰されて損傷してしまうことがない。
また、畝4に複数条で連続鉢苗29(作物)が植付けられている場合、切断装置15(加工手段)の切断ユニット17および担持ローラ11(加工手段)の受け刃部材18を連続鉢苗29の条間隔に相対させて配設することで対応が可能であるため、マルチフィルム敷設機1を多種多様なマルチ栽培に適用することができる。さらに、ロール2から引き出されたマルチフィルム3を連続鉢苗29の条間隔に合せて切断するので、従来技術(特許文献2)のように条間隔に合せてロール2を切断することなく、市販のマルチフィルム3をそのまま使用することができる。
【0019】
なお、実施形態は、上述した第1実施形態に限定されるのもではなく、例えば、次のように構成してもよい。
【0020】
第1実施形態では、担持ローラ11(加工手段)を軸心で支持して、ロール2から引き出されたマルチフィルム3が担持ローラ11を通過する時に、切断装置15(加工手段)によってマルチフィルム3を切断して、マルチフィルム3に引き出し方向に沿って切断部24(露出部)を形成したが、図10および図11に示されるように、担持ローラ11を偏心支持することで、マルチフィルム3がロール2から引き出されて担持ローラ11が1回転する間の、担持ローラ11上のマルチフィルム3とカッター23との距離を変化させる。これにより、担持ローラ11が1回転した時に、担持ローラ11を通過したマルチフィルム3には、カッター23によって切断された部分とカッター23が浮いて切断されなかった部分とが形成される。
したがって、図8に示されるように、マルチフィルム敷設機1を前進させることで、圃場には、当該敷設機1の進行方向に沿って切断部と非切断部とが交互に現れたミシン目30(露出部)が形成されたマルチフィルム3が敷設される。この場合、マルチフィルム3の敷設後、図9に示されるように、ミシン目30を破ることにより畝4に植付けられた連続鉢苗29(作物)を露出させることができる。また、このときミシン目30を破らずに、ミシン目30の切断部から作物をほじくり出すようにして、作物を露出させてもよい。
この態様では、図10および図11に示されるように、カッターブラケット19に設けられたレバー43を起こして水平に保持することで、カッターホルダ22の軸21を中心とする時計回り方向への回転を時計の短針でいうと6時の位置までに規制する。この構成により、担持ローラ11上のマルチフィルム3とカッター23との距離が長くなった時に、カッター23をマルチフィルム3から浮かせることができる(図11参照)。
なお、担持ローラ11を偏心支持した場合であっても、図12に示されるように、レバー43を倒してカッターホルダ22の回転の規制を解除することで、担持ローラ11を中心で支持した場合(図4参照)と同様に、マルチフィルム3に引き出し方向に沿って切断部24(露出部)を形成することができる。
【0021】
また、第1実施形態では、工具としてカッター23を使用して切断装置15(加工手段)を構成したが、図13に示されるように、円板状のブレード45をアーム44(第1実施形態におけるカッターホルダ22に相当)の先端に回転可能に設けて切断装置15(加工手段)を構成することができる。この場合、担持ローラ11を偏心支持することで、マルチフィルム3に引き出し方向に沿ってミシン目30(露出部)を形成することができる。さらに、図14に示されるように、ブレード45を鋸歯付ブレード46とすることで、担持ローラ11を偏心支持することなく、マルチフィルム3に引き出し方向に沿ってミシン目30(露出部)を形成することができる。
【0022】
また、図15および図16に示されるように、担持ローラ11を偏心支持すると共に、アーム47(第1実施形態におけるカッターホルダ22に相当)の先端にパンチ48を設けて切断装置15(加工手段)を構成することができる。この場合、図15に示されるように、担持ローラ11が所定の回転角度位相になった時(担持ローラ11上のマルチフィルム3とカッター23との距離が最短になった時)に、パンチ48によってマルチフィルム3に例えば円形の穴(露出部)が加工される。したがって、マルチフィルム3に、所定ピッチの穴(露出部)を引き出し方向に沿って形成することができる。
【0023】
また、図17に示されるように、担持ローラ11の担持面に、フランジ状に突出させた加工刃65を設けて切断装置15(加工手段)を構成してもよい。この場合、切断ユニット17が不要となり、構造を簡易化することができる。また、対応する各連続鉢苗29に合せて加工刃65を配設することにより、複数列の切断部24(露出部)をマルチフィルム3に加工することができる。したがって、例えば、複数条で連続鉢苗29(作物)が植付けられた畝4にマルチフィルム3を敷設する場合にも対応することができる。そして、図18に示されるように、加工刃65を鋸歯付加工刃66とすることで、マルチフィルム3に引き出し方向に沿ってミシン目30(露出部)を形成することができる。
【0024】
また、第1実施形態では、本体フレーム5の四隅に車輪6を配設して走行体を構成したが、トラクタを走行体として使用することができる。この場合、トラクタに、ロール支持装置7(ロール支持手段)および切断装置15(加工手段)を取り付けることで実施することが可能である。
さらに、第1実施形態では、畝4の幅方向両側に配した2人の作業者によって各ハンドル28を操作してマルチフィルム敷設機1を前進させたが、図19に示されるように、トラクタ64にマルチフィルム敷設機1を連結して、このトラクタ64によってマルチフィルム敷設機1を牽引してもよい。
ここで、トラクタとは、図19に例示する4輪の乗用トラクタのほか、歩行用トラクタ(動力耕うん機、ティラー)やクローラトラクタなど、ロール支持手段と加工手段とを牽引可能なあらゆる移動動力源の総称である。
【0025】
(第2実施形態)
次に、図20ないし図22に基いて第2実施形態を説明する。ここでは、明細書の記載を簡潔にするために、上述した第1実施形態と同一あるいは相当の構成要素については、同一の名称及び符号を付与すると共にその詳細な説明を省略する。
図20および図21に示されるように、第2実施形態のマルチフィルム敷設機31は、第1実施形態のマルチフィルム敷設機1に、連結手段によって連続鉢苗移植機32を連結させたものである。なお、連結させる連続鉢苗移植機32には、例えば、特開平8−89028号公報に記載の連続鉢苗移植機の移植機本体(以下、従来の連続鉢苗移植機という)を使用することができる。また、連続鉢苗移植機32の基本構造は従来の連続鉢苗移植機と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
【0026】
連続鉢苗移植機32は、畝4上を滑走可能な滑走体34を有する。該滑走体34は、そり形状の部材であり、T字形状のハンドル33の下端部に設けられる。また、ハンドル33の中間部には、前方に向けて水平に延びるT字形状の移植機側連結片35(連結手段)が取り付けられる。他方、マルチフィルム敷設機31には、移植機側連結片35を係合させる連結ユニット36(連結手段)が設けられる。該連結ユニット36は、本体フレーム5に架設したローラフレーム12に取り付けられるユニット本体37と、該ユニット本体37に支持されて軸38の回りに回動可能な敷設機側連結片39と、該敷設機側連結片39とユニット本体37との間に張設された一対のコイルばね40と、を有する。
【0027】
そして、第2実施形態では、敷設機側連結片39の先端部に形成されたフックに移植機側連結片35を係合させることにより、マルチフィルム敷設機31に連続鉢苗移植機32が連結される。ところで、連続鉢苗移植機32においては、移植機本体を持ち上げるようにしてハンドル33を引っ張ることにより、連続鉢苗29(作物)の植付け高さが安定することが知られている。そこで、第2実施形態では、一対のコイルばね40のばね力によって敷設機側連結片39を跳ね上げるように付勢して、連続鉢苗移植機32に持ち上げるような力を作用させた。これにより、作業者がハンドル33を引っ張る状態を再現することができ、連続鉢苗29の植付け高さを安定化させることができる。
【0028】
なお、第2実施形態では、一対のコイルばね40のユニット本体37側の端部をスライドさせて当該端部のユニット本体37に対する接続位置を移動させることができる。これにより、一対のコイルばね40が敷設機側連結片39を跳ね上げる力、すなわち、連続鉢苗移植機32を上方へ引っ張る力を必要に応じて調節することができる。
【0029】
次に、第2実施形態の作用を説明する。なお、第2実施形態では、図22に示されるように、マルチフィルム敷設機31に2機の連続鉢苗移植機32を並べて連結して、マルチフィルム敷設機31によるマルチフィルム3の敷設作業と連続鉢苗移植機32による連続鉢苗29(作物)の移植作業とを同時に実施する場合を説明する。
まず、準備段階では、切断装置15(加工手段)の各切断ユニット17を相対する各連続鉢苗移植機32に合せて配設すると共に、各切断ユニット17に相対させて各受け刃部材18を配設しておく。また、マルチフィルム敷設機1を畝4の始端部(敷設開始位置)を跨ぐように停止させて、ロール2から引き出したマルチフィルム3の端部を当該畝4の始端部に埋設(固定)しておく。なお、4つの切断ユニット17のうち使用しない切断ユニット17のカッター23(加工刃)は、マルチフィルム3から浮かせておく。
【0030】
次に、畝4の幅方向(図22における左右方向)両側に配した2人の作業者(図示略)によって各ハンドル28を操作して、マルチフィルム敷設機31および連続鉢苗移植機32を畝4に沿って前進させる。マルチフィルム敷設機31の前進に伴ってマルチフィルム3がロール2から引き出されて、引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17の各カッター23によって切断される。これにより、マルチフィルム3には、連続鉢苗移植機32によって畝4に植付けられる連続鉢苗29(作物)の各条の相対位置に、マルチフィルム敷設機1の進行方向に沿って各切断部24(露出部)が形成されて、このマルチフィルム3が圃場に敷設される。そして、マルチフィルム3の敷設と同時に、敷設されたマルチフィルム3の切断部24から露出した土壌に、連続鉢苗移植機32によって連続鉢苗29が移植される。
【0031】
第2実施形態では以下の効果を奏する。
第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同一の効果を奏することができる。
加えて、マルチフィルム3の敷設作業と連続鉢苗29(作物)の移植作業とを同時に実施することが可能になり、マルチ栽培の作業効率を大幅に向上させることができる。
また、連続鉢苗移植機32単体による移植と比較して、連続鉢苗移植機32が蛇行することがないため、連続鉢苗29(作物)を畝4に沿ってまっすぐに植付けることができる。さらに、複数条の連続鉢苗29を同時に一定の条間隔で植付けることができる。
さらに、一対のコイルばね40のばね力によって敷設機側連結片39を軸38の回りに付勢して、連続鉢苗移植機32の移植機側連結片35(連結手段)を持ち上げてハンドル28を上方へ引っ張るような力を連続鉢苗移植機32に作用させたので、連続鉢苗29(作物)の植付け高さを安定化させることができる。
【0032】
なお、実施形態は、上述した第2実施形態に限定されるのもではなく、例えば、次のように構成してもよい。
第2実施形態では、マルチフィルム敷設機31に2機の連続鉢苗移植機32を連結したが、例えば、1機あるいは3機の連続鉢苗移植機32をマルチフィルム敷設機31に連結してもよい。
また、図23に示されるように、本体フレーム5に切断装置15(加工手段)を設けることなく、走行体を連続鉢苗移植機32を牽引するだけの装置として構成してもよい。この場合、切断装置15の代わりに、本体フレーム5に予備の苗台41を設置してもよい。これにより、移植作業を中断して苗台41を取りに行く手間を省くことができる。さらに、図24に示されるように、本体フレーム5に均平用ローラ42等のアタッチメントを装着することで、複数の作業を同一に実施して農作業を効率化することができる。
【0033】
(第3実施形態)
次に、図25ないし図29に基いて第3実施形態を説明する。ここでは、明細書の記載を簡潔にするために、上述した第1実施形態および第2実施形態と同一あるいは相当の構成要素については、同一の名称及び符号を付与すると共にその詳細な説明を省略する。
第3実施形態のマルチフィルム敷設機51は、第1実施形態のマルチフィルム敷設機1に、ピン打ち装置52を設けたものである。この構成により、マルチフィルム3の敷設作業と、ピン打ち作業、すなわち、敷設されたマルチフィルム3にコ字状のピン50を打ち込むことで切断装置15によって形成した切断部24(露出部)を畝4に固定する作業と、を同時に実施することが可能になり、マルチ栽培の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0034】
ピン打ち装置52は、図1および図2に示される4つの各切断ユニット17に相対する4つの各ピン打ちユニット53を有する。図25および図27に示されるように、ピン打ちユニット53は、本体フレーム5に取り付けられる取付部54と、該取付部54に支持されて軸55の回りに回転可能な支持アーム56と、該支持アーム56と取付部54との間に張設されたコイルばね57と、支持アーム56の先端部に取り付けられる打ち込み部58と、を有する。なお、支持アーム56は、コイルばね57のばね力によって略水平に保持される。また、コイルばね57の取付部54側の端部をスライドさせて当該端部の取付部54に対する接続位置を移動させることができる。これにより、コイルばね57が支持アーム56を軸55回りに図25および図27における時計回り方向へ付勢する力、すなわち、打ち込み部58を持ち上げようとする力を必要に応じて調節することができる。
【0035】
ピン打ち部58は、取付面が支持アームに取り付けられる取付座59と、該取付座59の取付面とは反対側の面から図25および図27における左斜め上方へ向けて延びるピン整列ガイド60と、上端部にピン打ちハンドル61が設けられて該ハンドル61を操作して下降させることでピン整列ガイド60によって整列されたピン50のうち先頭のピン50が打ち込みガイド62によって案内されて畝4に打ち込まれるピン打ち部材63と、を有する。なお、図26および図28に示されるように、4つのピン打ちユニット53の各ピン打ち部材63は、ピン打ちハンドル61によって連結される。
【0036】
次に、第3実施形態の作用を説明する。なお、第3実施形態では、4つの各切断ユニット17を有する切断装置15(図1および図2参照)と、各切断ユニット17に相対する4つの各ピン打ちユニット53を有するピン打ち装置52と、を配設して構成されるマルチフィルム敷設機51によって、マルチフィルム3の切断を含むマルチフィルム3の敷設作業と、ピン打ち作業、すなわち、敷設されたマルチフィルム3にピン50を打ち込むことでマルチフィルム3の切断部24(露出部)を畝4に固定する作業と、を同時に実施する場合を説明する。
【0037】
畝4の幅方向(図26における左右方向)両側に配した2人の作業者(図示略)によって各ハンドル28を操作してマルチフィルム敷設機51を前進させると、マルチフィルム3がロール2から引き出されて、引き出されたマルチフィルム3は、担持ローラ11の通過時に、切断装置15の各切断ユニット17の各カッター23(図4参照)によって切断される。これにより、マルチフィルム3には、畝4に植付けられた連続鉢苗29(作物)の各条の相対位置に、マルチフィルム敷設機51の進行方向に沿って各切断部24(露出部)が形成されて、このマルチフィルム3が圃場に敷設される。
【0038】
そして、敷設されたマルチフィルム3にピン50を打ち込む場合、まず、ピン50を打ち込みたい位置にマルチフィルム敷設機51を停止させる。ここで、図25に示されるように、レバー10aを手前側へ操作してラチェット機構10(回転規制手段)を有効にすることで、マルチフィルム3の張力によりマルチフィルム3がロール2から不必要に引き出されることを防ぐことができる。マルチフィルム敷設機51を停止させた後、図27および図28に示されるように、ピン打ちハンドル61を下降させることで、ピン整列ガイド60によって整列されたピン50のうち先頭のピン50が打ち込みガイド62によって案内されつつ、図29に示されるように、ピン打ち部材63によって畝4に打ち込まれる。
【0039】
第3実施形態では以下の効果を奏する。
第3実施形態によれば、上述した第1実施形態と同一の効果を奏することができる。
加えて、複数条の連続鉢苗29(作物)が露出した各切断部24(露出部)のピン打ちを同時に行うことが可能になり、ピン打ち作業を効率化することができる。また、マルチフィルム3の敷設作業と、ピン打ち作業と、を同時に実施することが可能になり、マルチ栽培の作業効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態のマルチフィルム敷設機の平面図である。
【図2】第1実施形態のマルチフィルム敷設機の正面図である。
【図3】第1実施形態のマルチフィルム敷設機の右側面図である。
【図4】図3において切断装置(加工手段)を拡大して示した図である。
【図5】4条の連続鉢苗が植付けられた畝に第1実施形態のマルチフィルム敷設機を使用してマルチフィルムを敷設している様子を示す平面図である。
【図6】ハンドルを圃場に突き立てた状態を示すマルチフィルム敷設機の右側面図である。
【図7】ハンドルを圃場に突き立てた状態を示すマルチフィルム敷設機の正面図である。
【図8】4条の連続鉢苗が植付けられた畝に、担持ローラを偏心支持して構成されたマルチフィルム敷設機を使用してマルチフィルムを敷設している様子を示す平面図である。
【図9】図8におけるマルチフィルムの敷設後、ミシン目を破って連続鉢苗(作物)を露出させた状態を示す図である。
【図10】第1実施形態の他の態様を示す図であって、担持ローラを偏心支持してマルチフィルムにミシン目(露出部)を加工する場合に、切断ユニットのカッターが担持ローラによって担持されたマルチフィルムに切り込まれている状態を示す図である。
【図11】図10において、切断ユニットのカッターが担持ローラによって担持されたマルチフィルムから浮いた状態を示す図である。
【図12】図6において、ストッパを解除した状態、すなわち、マルチフィルムに切断部(露出部)を加工する場合を示す図である。
【図13】第1実施形態の他の態様を示す図であって、カッターに替えて円板状のブレードを採用して切断ユニットを構成した態様を示す図である。
【図14】図13のブレードを鋸歯付ブレードとした態様を示す図である。
【図15】第1実施形態の他の態様を示す図であって、カッターに替えてパンチを採用して切断ユニットを構成した態様を示し、特に、パンチによってマルチフィルムに穴が加工されている状態を示す図である。
【図16】図15において、パンチがマルチフィルムから離れている状態を示す図である。
【図17】第1実施形態の他の態様を示す図であって、担持ローラに加工刃が設けられた態様を示す図である。
【図18】図17における加工刃が鋸歯付加工刃である態様を示す図である。
【図19】第1実施形態の他の態様を示す図であって、マルチフィルム敷設機がトラクタによって牽引される態様を示す図である。
【図20】第2実施形態のマルチフィルム敷設機の平面図である。
【図21】第2実施形態のマルチフィルム敷設機の右側面図である。
【図22】2機の連続鉢苗移植機が連結された第2実施形態のマルチフィルム敷設機を使用して、マルチフィルムの敷設作業と連続鉢苗(作物)の移植作業とを同時に実施している様子を示す平面図である。
【図23】第2実施形態の他の態様を示す平面図である。
【図24】第2実施形態の他の態様を示す右側面図である。
【図25】第3実施形態のマルチフィルムの右側面図である。
【図26】第3実施形態のマルチフィルムの正面図である。
【図27】図25において打ち込みハンドルを下降させた状態を示す図である。
【図28】図26において打ち込みハンドルを下降させた状態を示す図である。
【図29】切断部(連続鉢苗)に沿ってピン打ちされたマルチフィルムを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 マルチフィルム敷設機、2 ロール、3 マルチフィルム、4 畝、5 本体フレーム(走行体)、6 車輪(走行体)、7 ロール支持装置(ロール支持手段)、10 ラチェット機構(回転規制手段)、11 担持ローラ、15 切断装置(加工手段)、23 カッター(工具)、24 切断部(露出部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設するマルチフィルム敷設機であって、
圃場を走行可能な走行体と、
該走行体に設けられて前記マルチフィルムのロール軸を回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに圃場に植付けられた作物を露出させる前記露出部を加工する加工手段と、
を有することを特徴とするマルチフィルム敷設機。
【請求項2】
前記加工手段は、
前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、
該担持ローラによって担持された前記マルチフィルムに押圧させて前記露出部を加工する工具と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項3】
前記担持ローラを偏心支持したことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項4】
前記加工手段は、
前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、
該担持ローラに設けられて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに前記露出部を加工する加工刃と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項5】
前記露出部は、切断部、ミシン目あるいは穴のいずれかであることを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項6】
移植機を連結させる連結手段を有することを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項7】
前記ロール支持手段に支持された前記ロール軸の回転を規制する回転規制手段と、
前記走行体の走行を規制する走行規制手段と、
を有することを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項8】
前記走行体を旋回させるための旋回軸を有することを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項9】
前記走行体がトラクタであることを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項10】
マルチフィルムを圃場へ固定するための装置を有することを特徴とする請求項1−9のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項11】
マルチフィルム敷設機を走行させてロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設する方法であって、
ロールから引き出された前記マルチフィルムに作物を露出させるための露出部を加工して、引き出し方向に沿って前記露出部が形成された前記マルチフィルムを圃場に敷設することを特徴とするマルチフィルム敷設方法。
【請求項1】
ロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設するマルチフィルム敷設機であって、
圃場を走行可能な走行体と、
該走行体に設けられて前記マルチフィルムのロール軸を回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに圃場に植付けられた作物を露出させる前記露出部を加工する加工手段と、
を有することを特徴とするマルチフィルム敷設機。
【請求項2】
前記加工手段は、
前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、
該担持ローラによって担持された前記マルチフィルムに押圧させて前記露出部を加工する工具と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項3】
前記担持ローラを偏心支持したことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項4】
前記加工手段は、
前記マルチフィルムのロール軸に対して平行に配設されて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムを担持する担持ローラと、
該担持ローラに設けられて前記ロールから引き出された前記マルチフィルムに前記露出部を加工する加工刃と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項5】
前記露出部は、切断部、ミシン目あるいは穴のいずれかであることを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項6】
移植機を連結させる連結手段を有することを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項7】
前記ロール支持手段に支持された前記ロール軸の回転を規制する回転規制手段と、
前記走行体の走行を規制する走行規制手段と、
を有することを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項8】
前記走行体を旋回させるための旋回軸を有することを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項9】
前記走行体がトラクタであることを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項10】
マルチフィルムを圃場へ固定するための装置を有することを特徴とする請求項1−9のいずれかに記載のマルチフィルム敷設機。
【請求項11】
マルチフィルム敷設機を走行させてロールから引き出されたマルチフィルムを圃場に敷設する方法であって、
ロールから引き出された前記マルチフィルムに作物を露出させるための露出部を加工して、引き出し方向に沿って前記露出部が形成された前記マルチフィルムを圃場に敷設することを特徴とするマルチフィルム敷設方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2009−296929(P2009−296929A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154655(P2008−154655)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000231981)日本甜菜製糖株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000231981)日本甜菜製糖株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
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