説明

マルチフェーズコンバータ

【課題】車両搭載電源を充電することができ、且つ、他の電圧変換手段を用いなくても、その車両搭載電源からの出力電圧を昇降圧させて出力することも可能なマルチフェーズコンバータを提供する。
【解決手段】3相マルチフェーズコンバータ1は、通常運転モードと外部充放電モードにおいて運転されるものである。外部充放電モードでは、コントローラ8の指令信号に基づいて、リレースイッチSW1,SW2,SW3をオフにし、また、各スイッチング素子S1乃至S6のスイッチング操作を適宜制御することにより、U相パワーモジュール11を含む回路部分を電圧の昇降圧用のコンバータ300として機能させ、且つ、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13を含む回路部分をAC/DC変換用のインバータ400として機能させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフェーズコンバータ、例えば、車載電池を電源として用いる際に特に有用な車両搭載用マルチフェーズコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド自動車、電気自動車等の電力駆動車両は、モータに駆動電力を供給する電池、及び、電池電圧を昇圧し、且つ、その昇圧後の電圧をモータ駆動回路に出力するための昇圧コンバータを備えている。この昇圧コンバータは、電流のスイッチングにより誘導起電力を発生するインダクタや、そのスイッチングを行うためのスイッチング回路等を有しており、入力電圧に誘導起電力を加えた昇圧電圧をモータ駆動回路に出力する。すなわち、昇圧コンバータは、電池電圧よりも大きい電圧をモータ駆動回路に出力することができる。
【0003】
また、近時、商業用電源のコンセント、その他の外部電源装置等から電力を供給して車載電池を充電する車両搭載型の充電装置が開発されてきており、本出願人は、例えば特許文献1において、装置規模を小型化することが可能な車両搭載用マルチフェーズコンバータを提案している。
【0004】
図5に示す如く、この車両搭載用マルチフェーズコンバータは、車両搭載電源100と負荷200との間に設けられており、パワーモジュール111,112,113、インダクタL11,L12、4つのリレースイッチSW11,SW12,SW13,SW14、外部電源プラグ70、及び、平滑コンデンサ4を有するものである。かかる構成においては、リレースイッチSW11,SW12,SW13,SW14をオフすることにより、車両搭載電源100からの出力電圧をパワーモジュール113によって昇圧した後、パワーモジュール111,112による単相インバータ動作によって、インダクタL11,L12、及び、外部電源プラグ70を介して、図示しない商業用交流電源へ電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−220443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、かかる車載電池に商業用電源から電力を補給して充電するのとは逆に、商業用電源への送電が停止されてしまうといったような非常時又は緊急時等においては、その車載電池を、各種装置や機器へ電力供給するための電源として利用できると好適である。
【0007】
しかし、通常の家庭用電源の出力電圧がAC100Vであるのに対し、車載電池の電圧はそれよりも高い電圧、例えば200V程度であることが多い。この車載電池に、上記の特許文献1に記載されているようなマルチチフェーズコンバータ(図5)を適用した場合、それに備わる電圧変換回路の特性上、電源電圧を昇圧させることしかできないので、車載電圧よりも低い電圧(100V等)を出力することができず、そのままでは、一般家庭用の非常用又は緊急用電源としては適さない。また、その場合、AC100Vを出力するためには、マルチチフェーズコンバータ以外に降圧可能な別の電圧変換手段を追設する必要がある。
【0008】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、車載電池等の車両搭載電源を充電することができ、且つ、他の電圧変換手段を用いなくても、その車両搭載電源からの出力電圧を昇圧だけではなく降圧させて出力することも可能なマルチフェーズコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によるマルチフェーズコンバータは、車両に搭載された車両搭載電源に接続され、且つ、その車両搭載電源の一方極に接続される第1のインダクタを有する少なくとも1つの第1のパワーモジュールと、車両搭載電源に接続され、且つ、その車両搭載電源の一方極に接続される第2のインダクタを有する少なくとも2つの第2のパワーモジュールとを備えており、車両搭載電源と少なくとも2つの第2のパワーモジュールとを接続する第1の線路には、各第2のインダクタと車両搭載電源の一方極とを接続又は遮断する開閉スイッチが設けられており、且つ、車両搭載電源と少なくとも2つの第2のパワーモジュールとを接続する第2の線路には、少なくとも2つの第2のパワーモジュールと車両搭載電源の一方極又は他方極との接続を切り換える切換スイッチとが設けられており、車両搭載電源から車両を駆動するための電力を出力する通常運転モードとして、開閉スイッチを閉じ、切換スイッチを、少なくとも2つの第2のパワーモジュールが車両搭載電源の他方極に接続されるように切り換え、且つ、車両搭載電源が外部から充電され又は車両搭載電源から外部へ電力が出力される外部充放電モードとして、開閉スイッチを開き、切換スイッチを、少なくとも2つの第2のパワーモジュールが前記車両搭載電源の一方極に接続されるように切り換える制御部を更に備え、第2のインダクタと開閉スイッチとの間に外部電源又は外部負荷が接続されるように構成されている。
【0010】
このような構成においては、制御部による開閉スイッチ及び切換スイッチの制御、並びに、各パワーモジュールの例えばスイッチング制御により、通常運転モードでは、車両搭載電源の出力電圧を昇圧した後の電力が、車両駆動用電力としてマルチフェーズコンバータから出力される。また、外部充放電モードでは、少なくとも第1のパワーモジュールを含む回路部分と、少なくとも2つのパワーモジュールを含む回路部分が遮断分離される。これにより、少なくとも第1のパワーモジュールを含む回路部分が、例えばフライバックモードで動作することにより、そこに入出力される電圧を調整(昇降圧)する機能を有するコンバータとして機能する。また、少なくとも2つの第2のパワーモジュールを含む回路部分が、例えばAC/DC変換を行うインバータとして機能し、そのインバータ側に外部電源又は外部負荷が接続されることにより、外部電源によって車両搭載電源が充電され、或いは、車両搭載電源からの出力電圧が昇降圧された電力が外部へ出力される。
【0011】
より具体的には、少なくとも1つの第1のパワーモジュール、及び、少なくとも2つの第2のパワーモジュールのそれぞれが、2つのスイッチング素子を有しており、第1のインダクタが、各第1のパワーモジュールの2つのスイッチング素子間と、車両搭載電源の一方極との間に設けられており、第2のインダクタが、各第2のパワーモジュールの前記2つのスイッチング素子間と、車両搭載電源の一方極との間に設けられており、切換スイッチが、少なくとも1つの第1のパワーモジュール、及び、少なくとも2つの第2のパワーモジュール間と、車両搭載電源との間に設けられている構成が挙げられる。
【0012】
また、第2のパワーモジュールを3つ備えており、外部充放電モードにおいては、3相交流電圧を出力するように構成しても好適である。このようにすれば、3相交流電力で駆動するような例えば家庭以外に設置された外部負荷(機器、装置等)との系統連携を図り易くなる利点がある。
【0013】
さらに、第1のパワーモジュールを少なくとも2つ備えるようにしても有用である。このようにすれば、電圧変換回路の出力を、第1のパワーモジュールの系統数に応じて増大させることができる。
【0014】
加えて、制御部が、少なくとも1つの第1のパワーモジュール、及び、少なくとも2つの第2のパワーモジュールのうち、使用するパワーモジュール及び使用しないパワーモジュールを適宜選択し、スイッチング素子の制御を行うようにしても有用である。すなわち、第1のパワーモジュール及び第2のパワーモジュールの系統数(アーム数)は、それぞれ、1つ以上及び2つ以上であれば、特に制限されず、但し、その際、全てのパワーモジュール系統、或いは、それらのパワーモジュールに備わる全てのスイッチング素子(アーム)を使用する必要はなく、例えば、外部充放電モードにおいて、上記のコンバータとインバータの出力バランスを考慮し、及び/又は、外部負荷に必要とされる電圧等を考慮して、使用するパワーモジュール及び使用しないパワーモジュールを決定するようにしても構わない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両搭載電源、第1及び第2のパワーモジュール、開閉スイッチ、及び切換スッチ、並びに、それらを制御する制御部を、マルチフェーズコンバータの回路構成部材として備え、通常運転モードと外部充放電モードでの運転を行うので、車両搭載電源を充電することができ、且つ、他の電圧変換手段を用いなくても、その車両搭載電源からの出力電圧を昇圧だけではなく降圧させて出力することが可能となる。これにより、非常時や緊急時等において、車両搭載電源を、商業用電源の代替外部電源として有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるマルチフェーズコンバータの好適な一実施形態を示すシステム構成図であり、そのマルチフェーズコンバータを通常運転モードで運転している状態を示す図である。
【図2】図1に示すマルチフェーズコンバータを外部充放電モードで運転している状態を示すシステム構成図である。
【図3】図2に示すシステム構成図の回路展開図である。
【図4】本発明によるマルチフェーズコンバータの好適な他の一実施形態(ソフトスイッチング機能が付設されたもの)を示すシステム構成図である。
【図5】従来のマルチフェーズコンバータの一例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。またさらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0018】
図1は、本発明によるマルチフェーズコンバータの好適な一実施形態を示すシステム構成図であり、そのマルチフェーズコンバータを後記の通常運転モードで運転している状態を示す図である。3相マルチフェーズコンバータ1は、車両に設置された二次電池や燃料電池等の車両搭載電源100から出力される電圧を昇圧し、車両を駆動するための駆動モータ、駆動インバータ、発電モータ、補機等の負荷200にその昇圧電力を供給するものである(通常運転モード)。また、商業用電源等の外部電源から電力を取得して車両搭載電源100を充電するとともに、例えば商業用電源等の停電等の非常時に、車両搭載電源100から出力される電圧を適宜の使用電圧に昇圧又は降圧してその電力を車両外部の機器や装置へ供給(放電)するコンバータとしても機能する(外部充放電モード)。
【0019】
この3相マルチフェーズコンバータ1は、U相パワーモジュール11、V相パワーモジュール12、及びW相パワーモジュール13を装備するものである。それらの各パワーモジュール11,12,13は、それぞれ、インダクタL1(第1のインダクタ)及びスイッチング素子S1,S2、インダクタL2(第2のインダクタ)及びスイッチング素子S3,S4、並びに、インダクタL3(第2のインダクタ)及びスイッチング素子S5,S6を有している。
【0020】
スイッチング素子S1は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、その他のバイポーラトンンジスタ、電界効果トランジスタ(FET)等の半導体装置21に、図示の如くダイオード31が接続されたものである。すなわち、半導体装置21のコレクタ端子とエミッタ端子との間に、エミッタ端子側がアノード端子となるようダイオード31が接続されている。この場合、半導体装置21のエミッタ端子からコレクタ端子に向かって流れる電流は、ダイオード31が順方向バイアスとなることにより、そのダイオード31を流通する。同様に、スイッチング素子S2乃至S6は、それぞれ、半導体装置22乃至26に、ダイオード32乃至36が接続されたものである。
【0021】
U相パワーモジュール11のスイッチング素子S1,S2の接続節点C1には、インダクタL1の一端が接続され、そのインダクタL1の他端は、車両搭載電源100の正極(一方極)に接続されている。また、V相パワーモジュール12のスイッチング素子S3,S4の接続節点C2、及び、W相パワーモジュール13のスイッチング素子S5,S6の接続節点C3には、それぞれ、インダクタL2,L3の一端が接続されている。それらのインダクタL2,L3の他端は、リレースイッチSW2,SW3(ともに開閉スイッチ)を介して車両搭載電源100の正極(一方極)に接続されている。
【0022】
また、インダクタL2とリレースイッチSW2との間、及び、インダクタL3とリレースイッチSW3との間には、単相電源プラグ7の一方極及び他方極が接続されている。この単相電源プラグ7には、外部電源又は外部負荷が接続されるようになっている(図示においては、単相電源プラグ7をオス型で示したが、入出力部分の形態は、これに限定されない。)。
【0023】
このように、U相パワーモジュール11が「少なくとも1つの第1のパワーモジュール」に相当し、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13が「少なくとも2つの第2のパワーモジュール」に相当する。また、「開閉スイッチ」であるリレースイッチSW2,SW3は、車両搭載電源100とそれぞれV相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13とを結ぶ線路61,61(第1の線路)に設けられており、インダクタL2,L3と車両搭載電源100の正極とを接続又は遮断する。
【0024】
また、スイッチング素子S1,S3,S5の図示上端(スイッチング素子S2,S4,S6との接続節点C1,C2,C3とは反対側の端)は、平滑コンデンサ4の一端に共通に接続されている。さらに、スイッチング素子S2,S4の図示下端(スイッチング素子S1,S3との接続節点C1,C2とは反対側の端)間には、リレースイッチSW1(切換スイッチ)が設けられている。このリレースイッチSW1は、スイッチング素子S4側の接点51を基点として、スイッチング素子S2側の接点52と、車両搭載電源100の正極に接続されている接点53とを切り換えるように動作する。
【0025】
このリレースイッチSW1が、接点51,52を接続した状態(図1に示す状態;以下この状態を「オン」という。)では、スイッチング素子S2,S4,S6の図示下端(スイッチング素子S1,S3,S5との接続節点C1,C2,C3とは反対側の端)は、平滑コンデンサ4の他端、及び、車両搭載電源100の負極(他方極)に共通に接続される。一方、このリレースイッチSW1が、接点51,53を接続した状態(後述する図2に示す状態;以下この状態を「オフ」という。)では、スイッチング素子S2の図示下端が車両搭載電源100の負極に接続され、スイッチング素子S4,S6の図示下端は、平滑コンデンサ4の他端、及び、車両搭載電源100の正極(一方極)に共通に接続される。
【0026】
このように、「切換スイッチ」であるリレースイッチSW1は、車両搭載電源100とV相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13とを結ぶ線路62,62,62(第2の線路)に設けられており、それらのV相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13と車両搭載電源100の正極又は負極との接続を切り換えるように動作する。
【0027】
また、スイッチング素子S1乃至S6(半導体装置21乃至26)、及び、リレースイッチSW1,SW2,SW3には、コントローラ8(制御部)が接続されており(図示において接続線路を省略)、このコントローラ8からの指令信号に基づいて、それらのスイッチング素子S1乃至S6、及び、リレースイッチSW1,SW2,SW3の開閉又は切り換えが行われるように構成されている。
(通常運転モード)
【0028】
このように構成された3相マルチフェーズコンバータ1を用いた通常運転モードにおいては、コントローラ8からの指令に基づき、図1に示す如く、リレースイッチSW1,SW2,SW3をオンにする。このモードでは、車両搭載電源100の出力電圧を昇圧した電圧が、3相マルチフェーズコンバータ1の出力電圧として、車両の駆動モータ等の負荷200へ出力されるような制御を行う。
【0029】
スイッチング素子S1乃至S6のうち、スイッチング素子S1,S3,S5をオフ、スイッチング素子S2,S4,S6をオンにすると、それらに接続されたインダクタL1,L2,L3を介して車両搭載電源100の正極から、オン状態のスイッチング素子S2,S4,S6に電流が流れる。それから、スイッチング素子S2,S4,S6をオフにすると、インダクタL1,L2,L3に誘導起電力が発生し、このとき、スイッチング素子S1,S3,S5のダイオード31,33,35はオンになり、平滑コンデンサ4の両端、及び、その先に接続された負荷200に、車両搭載電源100の出力電圧にその誘導起電力が加算された電圧が印加される。
【0030】
この際、車両搭載電源100の出力電圧に誘導起電力が加算された電圧が、平滑コンデンサ4の端子間電圧以上の場合には、平滑コンデンサ4の充電電圧が維持され、又は、平滑コンデンサ4が充電される。かかる運転により、車両搭載電源100の出力電圧よりも大きい電圧が負荷200側へ供給される。なお、この点において、平滑コンデンサ4は、出力コンデンサとして機能する。
【0031】
また、車両搭載電源100の出力電圧に誘導起電力が加算された電圧が、平滑コンデンサ4の端子間電圧よりも小さい場合、平滑コンデンサ4からは、オン状態のスイッチング素子S1,S3,S5、及びそれらに接続されるインダクタL1,L2,L3を介して、車両搭載電源100に電流が流れ得る。この場合、車両搭載電源100が充電可能に構成されたものであれば、充電される。
【0032】
コントローラ8は、以上の原理に基づき、車両搭載電源100の出力電圧にインダクタ誘導起電力が加算された電圧を平滑コンデンサ4に印加し、平滑コンデンサ4の端子間電圧が、車両の走行制御に応じた電圧になるように、且つ、負荷200側へ供給されるように、スイッチング素子S1乃至S6を制御してDC電力を出力する。なお、インダクタL1,L2,L3に発生する誘導起電力は、それらのスイッチングタイミングやデューティを適宜に変化させることにより、所望に調整することができる。
(外部充放電モード)
【0033】
図2は、図1に示すマルチフェーズコンバータを外部充放電モードで運転している状態を示すシステム構成図であり、図3は、その回路展開図である。3相マルチフェーズコンバータ1を用いた外部充放電モードにおいては、コントローラ8からの指令に基づき、図2に示す如く、リレースイッチSW1,SW2,SW3をオフにする。このモードでは、以下に示す4通りの動作モードを実現することが可能となり、その際、U相パワーモジュール11を含む回路部分が電圧調整(昇降圧)用のコンバータ300として機能し、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13を含む回路部分がインバータ400として機能する(図3参照)。
【0034】
(1)降圧・放電モード
このモードでは、車両搭載電源100からの出力電圧を降圧し、車両搭載電源100からの出力電圧よりも低い電圧を有するAC電力を外部へ供給する。これは、例えば、車両搭載電源100電圧が200Vであるときに、単相電源プラグ7に接続した100V又はそれより低い電圧で駆動する負荷(家庭用の電化製品等)を運転するときに有効である。この場合、コントローラ8は、U相パワーモジュール11をフライバック制御によって動作させ(フライバックモード)且つスイッチング素子S1,S2のスイッチング操作を適宜制御することにより、例えば、デューティを適宜調整して、車両搭載電源100から出力される電圧を降圧し、平滑コンデンサ4を充電する。そして、コントローラ8の制御により、その充電された平滑コンデンサ4を電源として、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13を動作させ、単相電源プラグ7にAC電力を出力する。
【0035】
(2)昇圧・放電モード
このモードでは、車両搭載電源100からの出力電圧を昇圧し、車両搭載電源100からの出力電圧よりも高い電圧を有するAC電力を外部へ供給する。これは、例えば、車両搭載電源100電圧が200V未満であるときに、単相電源プラグ7に接続した200V又はそれより高い電圧で駆動する負荷(工業用機器等)を運転するときに有効である。この場合、コントローラ8は、U相パワーモジュール11をフライバック制御によって動作させ(フライバックモード)且つスイッチング素子S1,S2のスイッチング操作を適宜制御することにより、例えば、デューティを適宜調整して、車両搭載電源100から出力される電圧を昇圧し、平滑コンデンサ4を充電する。そして、コントローラ8の制御により、その充電された平滑コンデンサ4を電源として、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13を動作させ、単相電源プラグ7にAC電力を出力する。
【0036】
(3)降圧・充電モード
このモードでは、単相電源プラグ7に外部電源を接続し、そこから、3相マルチフェーズコンバータ1に車両搭載電源100の電圧よりも高いAC電力を入力し、その電圧を降圧して車両搭載電源100を充電する。この場合、コントローラ8は、外部電源から供給されたAC入力を、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13によってDC変換し、平滑コンデンサ4を充電する。そして、U相パワーモジュール11をフライバック制御によって動作させ(フライバックモード)且つスイッチング素子S1,S2のスイッチング操作を適宜制御することにより、例えば、デューティを適宜調整して、平滑コンデンサ4からの出力電圧を降圧し、車両搭載電源100を充電する。
【0037】
(4)昇圧・充電モード
このモードでは、単相電源プラグ7に外部電源を接続し、そこから、3相マルチフェーズコンバータ1に車両搭載電源100の電圧よりも低いAC電力を入力し、その電圧を昇圧して車両搭載電源100を充電する。この場合、コントローラ8は、外部電源から供給されたAC入力を、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13によってDC変換し、平滑コンデンサ4を充電する。そして、U相パワーモジュール11をフライバック制御によって動作させ(フライバックモード)且つスイッチング素子S1,S2のスイッチング操作を適宜制御することにより、例えば、デューティを適宜調整して、平滑コンデンサ4からの出力電圧を昇圧し、車両搭載電源100を充電する。
【0038】
このように構成された3相マルチフェーズコンバータ1によれば、通常運転モードにおいて、車両搭載電源100からの出力電圧を昇圧して、車両の駆動モータ等の負荷200に電力を供給することができる。また、それだけではなく、外部充放電モードにおいて、外部電源から供給される電力を利用し、その電圧を適宜昇降圧して(つまり、外部電源の電圧の大小に依らず)、車両搭載電源100を充電することができるとともに、且つ、車両搭載電源100から出力電圧を利用し、その電圧を適宜昇降圧して(つまり、車両搭載電源100の電圧の大小に依らず)、外部の負荷(機器、装置等)に電力を供給して動作させることが可能となる。よって、3相マルチフェーズコンバータ1の他に余計な電圧変換手段を用いなくても、車両搭載電源100からの出力電圧を所望の電圧に昇降圧させて種々の外部負荷を動作させることが可能となる。これにより、商業用電源や外部電源等が喪失してしまう非常時や緊急時に、独立した電源として有効に使用することができる。
【0039】
なお、上述したとおり、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、車両搭載電源100の出力電圧に含まれるリップル成分を充放電によって更に低減するべく、車両搭載電源100と例えばインダクタL1,L2,L3との間に適宜のコンデンサを設けてもよい。また、平滑コンデンサ4の両極端側に適宜の開閉スイッチを設けてもよく、通常運転モードにおいて、単相電源プラグ7の電極間に電圧が生じないように、その電極手前に適宜の開閉スイッチを設置してもよい。
【0040】
さらに、パワーモジュールの数は図示より多くてもよく、外部充放電モードにおいてコンバータ300及びインバータ400の一部を構成する各パワーモジュールを増設しても構わない。例えば、V相パワーモジュール12及びW相パワーモジュール13に加えて更にパワーモジュールを1系統追設してインバータ400を構成すれば、外部充放電モードにおいては、3相交流電圧を出力することが可能となり、3相交流電力で駆動するような例えば家庭以外に設置された外部負荷(機器、装置等)との系統連携を図り易くなる。この場合、単相電源プラグ7に替えて又は加えて、適宜の電源プラグを設置すればよく、また、インバータ400における3系統のパワーモジュールのうち、1系統を使用しないようにすれば、図2に示すのと同様に動作が可能である。
【0041】
また、U相パワーモジュール11に加えて更にパワーモジュールを1系統以上追設してコンバータ300を構成すれば、車両搭載電源100の出力が同じでも、コンバータ300からの出力を、パワーモジュールの系統数に応じて増大させることができる。
【0042】
このように、コンバータ300及びインバータ400を構成するパワーモジュールの数に制限はないものの、電力効率等を最適化する観点から、コントローラ8が、使用するべき系統を適宜選択してコンバータ300とインバータ400との出力バランスを平衡化するような制御を行うように構成することが好ましい。さらにまた、3相マルチフェーズコンバータ1が搭載される車両は、3相マルチフェーズコンバータ1が搭載される移動手段全般を含む概念であり、ハイブリッド自動車、電気自動車等に加え、それら以外にも、例えば、二輪自動車、三輪自動車、船舶、鉄道車両等が含まれる。
【0043】
また、U相パワーモジュール11(第1のパワーモジュール)にソフトスイッチング機能を付加しても有用である。この場合の構成としては、例えば、図4に示す如く、スイッチング素子S1と車両搭載電源100との間にソフトスイッチング回路9を設けた構成が挙げられる。このソフトスイッチング回路9は、直列接続したコンデンサ81及びダイオード82をスイッチング素子S1の両端に跨設し、インダクタL1と車両搭載電源100との間にインダクタL4を設け、さらに、接続節点C4,C5間に、リレースイッチSW4に跨設されたダイオード83、及び、リレースイッチSW4の一端に結線されたダイオード84を直列接続した構成を有する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したとおり、本発明は、マルチフェーズコンバータ、それを備える一般的な車両、それらを含む機器、システム、設備等、及び、それらの製造に広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…3相マルチフェーズコンバータ1(マルチフェーズコンバータ)、4…平滑コンデンサ、7…単相電源プラグ、8…コントローラ(制御部)、9…ソフトスイッチング回路、11…U相パワーモジュール(第1のパワーモジュール)、12…V相パワーモジュール(第2のパワーモジュール)、13…W相パワーモジュール(第2のパワーモジュール)、21,22,23,24,25,26…半導体装置、31,32,33,34,35,36…ダイオード、51,52,53…接点、61…線路(第1の線路)、62…線路(第2の線路)、81…コンデンサ、82,83,84…ダイオード、100…車両搭載電源、200…負荷、300…コンバータ、400…インバータ、C1,C2,C3,C4,C5…接続節点、L1…インダクタ(第1のインダクタ)、L2,L3…インダクタ(第2のインダクタ)、L4…インダクタ、S1,S2,S3,S4,S5,S6…スイッチング素子、SW1…リレースイッチ(切換スイッチ)、SW2,SW3…リレースイッチ(開閉スイッチ)、SW4…リレースイッチ、111,112,113…パワーモジュール、L11,L12…インダクタ、SW11,SW12,SW13,SW14…リレースイッチ、70…外部電源プラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車両搭載電源に接続され、且つ、前記車両搭載電源の一方極に接続される第1のインダクタを有する少なくとも1つの第1のパワーモジュールと、
前記車両搭載電源に接続され、且つ、前記車両搭載電源の一方極に接続される第2のインダクタを有する少なくとも2つの第2のパワーモジュールと、
を備えており、
前記車両搭載電源と前記少なくとも2つの第2のパワーモジュールとを接続する第1の線路には、前記各第2のインダクタと前記車両搭載電源の一方極とを接続又は遮断する開閉スイッチが設けられており、且つ、前記車両搭載電源と前記少なくとも2つの第2のパワーモジュールとを接続する第2の線路には、前記少なくとも2つの第2のパワーモジュールと前記車両搭載電源の一方極又は他方極との接続を切り換える切換スイッチとが設けられており、
前記車両搭載電源から前記車両を駆動するための電力を出力する通常運転モードとして、前記開閉スイッチを閉じ、前記切換スイッチを、前記少なくとも2つの第2のパワーモジュールが前記車両搭載電源の他方極に接続されるように切り換え、且つ、前記車両搭載電源が外部から充電され又は前記車両搭載電源から外部へ電力が出力される外部充放電モードとして、前記開閉スイッチを開き、前記切換スイッチを、前記少なくとも2つの第2のパワーモジュールが前記車両搭載電源の一方極に接続されるように切り換える、制御部を更に備え、
前記第2のインダクタと前記開閉スイッチとの間に、外部電源又は外部負荷が接続される、
マルチフェーズコンバータ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のパワーモジュール、及び、前記少なくとも2つの第2のパワーモジュールが、それぞれ、2つのスイッチング素子を有しており、
前記第1のインダクタは、前記各第1のパワーモジュールの前記2つのスイッチング素子間と、前記車両搭載電源の一方極との間に設けられており、
前記第2のインダクタは、前記各第2のパワーモジュールの前記2つのスイッチング素子間と、前記車両搭載電源の一方極との間に設けられており、
前記切換スイッチは、前記少なくとも1つの第1のパワーモジュール、及び、前記少なくとも2つの第2のパワーモジュール間と、前記車両搭載電源との間に設けられている、
請求項1記載のマルチフェーズコンバータ。
【請求項3】
前記第2のパワーモジュールを3つ備えており、前記外部充放電モードにおいては、3相交流電圧を出力可能に構成されている、
請求項1又は2記載のマルチフェーズコンバータ。
【請求項4】
前記第1のパワーモジュールを少なくとも2つ備える、
請求項1乃至3の何れか1項記載のマルチフェーズコンバータ。
【請求項5】
前記制御部は、前記少なくとも1つの第1のパワーモジュール、及び、前記少なくとも2つの第2のパワーモジュールのうち、使用するパワーモジュール及び使用しないパワーモジュールを適宜選択し、前記スイッチング素子の制御を行う、
請求項1乃至4の何れか1項記載のマルチフェーズコンバータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−81301(P2013−81301A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219966(P2011−219966)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】