説明

マルチプレクサ

【課題】互いに異なる通過帯域を有する、3つ以上の帯域通過フィルタを備えたマルチプレクサの小型化を図る。
【解決手段】デュプレクサ6と第3の帯域通過フィルタ7とがアンテナ端子2に接続されており、デュプレクサ6と第3の帯域通過フィルタ7とが並列に接続されており、デュプレクサ6は、第1の通過帯域を有する第1の帯域通過フィルタF1と、第1の通過帯域と異なる通過帯域である第2の通過帯域を有する第2の帯域通過フィルタF2とを有し、第3の帯域通過フィルタ7は、第1及び第2の通過帯域とは異なる第3の通過帯域とを有する、マルチプレクサ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機などの通信機器に搭載され、アンテナに接続されるマルチプレクサに関し、より詳細には、3つ以上の帯域通過フィルタを備えたマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話サービスでは、加入者数が急速に増加している。また、全世界で携帯電話サービスを利用することを可能とする、グローバルローミング化が進んできている。さらに、携帯電話機で送受信する各種コンテンツの大容量化も急速に進んできている。これらの変化に対応すると共に、通信品質を高めるために、多バンド化への対応及び複数種の通信システムへの対応が携帯電話機に求められている。
【0003】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)のようなCDMA方式に対応する携帯電話機では、信号の送信と受信とが同時に行われる。そのため、携帯電話機のRF回路には、デュプレクサが搭載されている。デュプレクサは、送信フィルタと、受信フィルタと、整合回路とを備える分波器である。CDMA方式に対応する携帯電話機では、複数種の通信システムに対応するために、上記デュプレクサが複数個搭載されている。すなわち、使用される各バンドや各通信システムに対応するデュプレクサが搭載されている。しかしながら、複数個のデュプレクサが携帯電話機に搭載されると、RF回路が大きくなるという問題がある。
【0004】
RF回路を小型化する手段として、受信フィルタや送信フィルタを複数の通信システムで共通化することが考えられる。
【0005】
UMTS−BAND1は、送信帯域が1920MHz〜1980MHz、受信帯域が2110MHz〜2170MHzである。UMTS−BAND4は、送信帯域が1710MHz〜1755MHz、受信帯域が2110MHz〜2155MHzである。UMTS−BAND10は、送信帯域が1710MHz〜1770MHz、受信帯域が2110MHz〜2170MHzである。このように、UMTS−BAND1とUMTS−BAND4では、受信帯域が共通の周波数帯を有する。また、UMTS−BAND1とUMTS−BAND10では、受信帯域が共通の周波数帯を有する。このような場合、2つのバンドの受信フィルタを共通化することが考えられる。
【0006】
例えば、UMTS−BAND1とUMTS−BAND4に対応する携帯電話機においては、UMTS−BAND1のデュプレクサとUMTS−BAND4のデュプレクサとに代えて、UMTS−BAND1の送信フィルタ、UMTS−BAND4の送信フィルタ、UMTS−BAND1及びUMTS−BAND4の双方に対応する受信フィルタの3つの帯域通過フィルタからなるトリプレクサを用いることができる。このようなトリプレクサを用いることにより、RF回路の小型化を図ることができる。トリプレクサは、3つの帯域通過フィルタと、整合回路と備える分波器である。
【0007】
下記の特許文献1には、このようなトリプレクサの一例が開示されている。
【0008】
図5は、特許文献1に記載のトリプレクサの略図的回路図である。
【0009】
トリプレクサ101は、アンテナ102に接続されるアンテナ端子103を有する。アンテナ端子103に、第1,第2及び第3の整合回路104,105,106が互いに並列に接続されている。第1,第2及び第3の整合回路104,105,106には、それぞれ直列に第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109が接続されている。第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109は、それぞれ、第1,第2及び第3の端子110,111,112に接続されている。
【0010】
第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109は、通過帯域が相互に異なっている。第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109は、それぞれの通過帯域においては、挿入損失が小さくされており、減衰帯域においては、減衰量が大きくされている。また、第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109のそれぞれの通過帯域において、他の2つの帯域通過フィルタの位相は開放状態にあることが必要である。従って、例えば第1の帯域通過フィルタ107では、第2及び第3の帯域通過フィルタ108,109の各通過帯域において、位相が開放状態にある必要がある。
【0011】
しかしながら、帯域通過フィルタの設計により、他の2つの帯域通過フィルタの通過帯域における位相が開放状態になるように位相を調整することは非常に困難であった。
【0012】
そこで、トリプレクサ101では、第1,第2及び第3の整合回路104,105,106が、それぞれ、アンテナ端子103と第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109との間に接続されている。第1,第2及び第3の整合回路104,105,106により、第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109では、それぞれ、他の2つの帯域通過フィルタの通過帯域における位相が開放状態とされている。例えば、第1の帯域通過フィルタ107に、第1の整合回路104が接続されていることにより、第1の帯域通過フィルタ107では、第2及び第3の帯域通過フィルタ108,109の通過帯域における位相が開放状態とされている。上記第1,第2及び第3の整合回路104,105,106は、遅延線、キャパシタ及び/またはインダクタなどにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−57342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、トリプレクサ101では、第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109に、それぞれ、第1,第2及び第3の整合回路104,105,106を接続しなければならなかった。そのため、部品点数が増大し、かつトリプレクサ101のサイズが大きくなるという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、多バンド化への対応や複数種の通信システムへの対応が容易であり、しかも小型化を図ることができるマルチプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るマルチプレクサは、アンテナ端子と、第1の帯域通過フィルタと第2の帯域通過フィルタとを有するデュプレクサと、第3の帯域通過フィルタとを備え、第1の帯域通過フィルタは第1の通過帯域を有し、第2の帯域通過フィルタは第1の通過帯域と異なる第2の通過帯域を有し、第3の帯域通過フィルタは第1及び第2の通過帯域と異なる第3の通過帯域を有し、アンテナ端子にデュプレクサと第3の帯域通過フィルタとが並列に接続されている。
【0017】
本発明に係るマルチプレクサのある特定の局面では、第3の通過帯域が、第1及び第2の通過帯域よりも低域側または高域側に位置している。
【0018】
本発明に係るマルチプレクサの他の特定の局面では、デュプレクサとアンテナ端子との間に接続された第1の整合回路がさらに備えられている。
【0019】
本発明に係るマルチプレクサのさらに別の特定の局面では、第3の通過帯域が、第1及び第2の通過帯域よりも低域側に位置しており、第1の整合回路がハイパスフィルタである。
【0020】
本発明に係るマルチプレクサのさらに他の特定の局面では、第3の通過帯域が、第1及び第2の通過帯域よりも高域側に位置しており、第1の整合回路がローパスフィルタである。
【0021】
本発明に係るマルチプレクサのさらに他の特定の局面では、第3の帯域通過フィルタとアンテナ端子との間に接続されている第2の整合回路がさらに備えられている。
【0022】
本発明に係るマルチプレクサのさらに他の特定の局面では、第3の通過帯域において、第1及び第2の帯域通過フィルタのそれぞれのアンテナ端子からみた位相が開放状態とされており、第3の帯域通過フィルタは、第1及び第2の通過帯域において、第3の帯域通過フィルタの前記アンテナ端子からみた位相が開放状態とされている。従って、デュプレクサとアンテナ端子との間、並びに第3の帯域通過フィルタとアンテナ端子との間に、整合回路を設ける必要がなくなり、マルチプレクサのより一層の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るマルチプレクサでは、第1及び第2の帯域通過フィルタを有するデュプレクサと、第3の帯域通過フィルタとが、アンテナ端子に、互いに並列に接続されているため、マルチプレクサの小型化を図ることができる。例えば、特許文献1に記載の従来のトリプレクサでは、第1,第2及び第3の帯域通過フィルタに、それぞれ、第1,第2及び第3の整合回路を接続しなければならなかった。これに対して、本発明によれば、第1及び第2の帯域通過フィルタを有するデュプレクサと第3の帯域通過フィルタとによりトリプレクサを構成するため、従来のトリプレクサよりも整合回路の数を少なくすることが出来る。従って、マルチプレクサの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマルチプレクサの略図的回路図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るマルチプレクサの略図的回路図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るマルチプレクサの略図的回路図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るマルチプレクサの略図的回路図である。
【図5】従来のトリプレクサを説明するための略図的回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマルチプレクサ1の略図的回路図である。
【0027】
マルチプレクサ1は、アンテナ端子2と、第1,第2及び第3の端子3,4,5とを有する。アンテナ端子2と第1及び第2の端子3,4との間に、デュプレクサ6が接続されている。デュプレクサ6は、第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2を有する。第1の帯域通過フィルタF1の通過帯域は、第2の帯域通過フィルタF2の通過帯域と異なっている。デュプレクサ6の共通接続点6aと第1の端子3との間に、第1の帯域通過フィルタF1が接続されている。デュプレクサ6の共通接続点6aと第2の端子4との間に、第2の帯域通過フィルタF2が接続されている。
【0028】
また、アンテナ端子2と第3の端子5との間に、第3の帯域通過フィルタ7が接続されている。すなわち、第3の帯域通過フィルタ7は、デュプレクサ6と並列に接続されている。
【0029】
また、第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域は、第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2の通過帯域と異なっている。すなわち、マルチプレクサ1は、互いに異なる通過帯域を有する3つの帯域通過フィルタを有するトリプレクサである。
【0030】
第1の帯域通過フィルタF1の通過帯域を第1の通過帯域とし、第2の帯域通過フィルタF2の通過帯域を第2の通過帯域とし、第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域を第3の通過帯域とする。本実施形態では、第1,第2及び第3の通過帯域は、第3の通過帯域<第2の通過帯域<第1の通過帯域という関係にある。すなわち、第3の通過帯域が最も低域側に位置しており、第1の通過帯域が最も高域側に位置している。言い換えれば、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、第2の通過帯域が、中間に位置する。
【0031】
本実施形態では、アンテナ端子2とデュプレクサ6との間に、第1の整合回路8が接続されている。また、アンテナ端子2と第3の帯域通過フィルタ7との間に、第2の整合回路9が接続されている。
【0032】
デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2の通過帯域である第1及び第2の通過帯域において、第3の帯域通過フィルタ7の位相が開放状態となるように、第2の整合回路9が構成されている。
【0033】
また、第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域である第3の通過帯域において、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2のそれぞれの位相が開放状態となるように、第1の整合回路8が構成されている。
【0034】
上記第1及び第2の整合回路8,9は、遅延線、キャパシタ及びインダクタなどにより構成されている。遅延線、キャパシタ及びインダクタは、チップ部品により構成されていてもよい。また、遅延線、キャパシタ及びインダクタは、マルチプレクサ1を構成する基板上の配線パターンなどにより構成されてもよい。
【0035】
デュプレクサ6においては、第1の帯域通過フィルタF1は、第2の帯域通過フィルタF2の通過帯域である第2の通過帯域において位相が開放状態とされている。また、第2の帯域通過フィルタF2は、第1の帯域通過フィルタF1の通過帯域である第1の通過帯域において位相が開放状態とされている。
【0036】
図5に示した従来のトリプレクサ101では、アンテナ端子103に、互いに並列に第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109が接続されていた。また、第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109に、それぞれ、第1,第2及び第3の整合回路104,105,106が接続されていた。従って、第1,第2及び第3の帯域通過フィルタ107,108,109という3つの帯域通過フィルタに加えて、第1,第2及び第3の整合回路104,105,106という3つの整合回路が必要であった。すなわち、従来のトリプレクサ101では、帯域通過フィルタと同じ数の整合回路が必要であった。そのため、部品点数が増大し、小型化が困難であった。
【0037】
これに対し、本実施形態のマルチプレクサ1では、デュプレクサ6と、第3の帯域通過フィルタ7と、第1及び第2の整合回路8,9とにより、トリプレクサが構成されている。よって、マルチプレクサ1は、第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2及び第3の帯域通過フィルタ7という、3つの帯域通過フィルタを備えているが、第1及び第2の整合回路8,9という、2つの整合回路で所望の特性を実現することができる。よって、整合回路の数を従来のトリプレクサ101に比べて少なくすることができ、それによって小型化を進めることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2と、第3の帯域通過フィルタ7とは、弾性表面波フィルタにより構成されている。もっとも、これらの帯域通過フィルタF1,F2,7は、弾性境界波フィルタや圧電薄膜フィルタなどの他の帯域通過フィルタにより構成されていてもよい。
【0039】
本実施形態では、第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域である第3の通過帯域は、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2の通過帯域である第1及び第2の通過帯域よりも低域側に位置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域である第3の通過帯域は、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2の通過帯域である第1及び第2の通過帯域よりも高域側に位置してもよい。すなわち、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、中間に位置する通過帯域を有する帯域通過フィルタが、デュプレクサ6を構成している第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2のいずれか一方であればよい。
【0040】
なお、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、中間に位置する通過帯域を第3の通過帯域とした場合には、デュプレクサ6を構成している第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2の一方が、第3の通過帯域よりも高域側に位置する通過帯域を有し、他方は第3の通過帯域よりも低域側に位置する通過帯域を有することとなる。この場合には、第3の帯域通過フィルタ7において、第3の通過帯域よりも低域側に位置する通過帯域と、第3の通過帯域よりも高域側に位置する通過帯域との両方において、位相を開放状態とする必要がある。従って、第3の帯域通過フィルタ7の反射のインピーダンスを急激に変化させる必要がある。しかしながら、第3の帯域通過フィルタ7の反射のインピーダンスを急激に変化させることは非常に困難である。
【0041】
これに対して、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、最も高域側または最も低域側の通過帯域を第3の通過帯域とした場合には、中間に位置する通過帯域を有する帯域通過フィルタは、デュプレクサ6を構成している第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2のいずれかとなる。この場合には、第3の帯域通過フィルタ7において、第3の通過帯域よりも低域側に位置する2つの通過帯域か、第3の通過帯域よりも高域側に位置する2つの通過帯域かにおいて、位相を開放状態とする必要がある。従って、第3の帯域通過フィルタ7の反射のインピーダンスを急激に変化させる必要はなく、容易に位相を開放状態とすることができる。従って、上記実施形態のように、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、中間に位置する通過帯域が、第1または第2の通過帯域であることが好ましい。言い換えれば、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、中間に位置する通過帯域を有する帯域通過フィルタが、第1の帯域通過フィルタF1または第2の帯域通過フィルタF2であることが好ましい。
【0042】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るマルチプレクサ11の略図的回路図である。
【0043】
マルチプレクサ11は、第1の実施形態のマルチプレクサ1における第1及び第2の整合回路8,9を備えていないことを除いては、第1の実施形態のマルチプレクサ1と同様に構成されている。従って、第1の実施形態と同様の部分に関する説明については、第1の実施形態と同様の参照番号を付与し、第1の実施形態の説明を適宜援用することにより省略する。
【0044】
マルチプレクサ11では、デュプレクサ6に整合回路が接続されておらず、かつ第3の帯域通過フィルタ7にも整合回路が接続されていない。第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2及び第3の帯域通過フィルタ7は、弾性表面波フィルタからなる。そして、第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2及び第3の帯域通過フィルタ7のそれぞれにおいて、弾性表面波フィルタを構成しているIDT電極の電極指ピッチや容量比などを調整することにより、第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2及び第3の帯域通過フィルタ7のそれぞれの位相を所望の状態としている。すなわち、第3の帯域通過フィルタ7のIDT電極の電極指ピッチや容量比などを調整することにより、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2の通過帯域である第1及び第2の通過帯域において、第3の帯域通過フィルタ7のアンテナ端子2からみた位相が開放状態とされている。また、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2のIDT電極の電極指ピッチや容量比などを調整することにより、第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域である第3の通過帯域において、第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2のそれぞれのアンテナ端子2からみた位相が開放状態とされている。
【0045】
このように、第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2及び第3の帯域通過フィルタ7のそれぞれにおいて、弾性表面波フィルタを構成しているIDT電極の電極指ピッチや容量比などを調整することにより、他の帯域通過フィルタの通過帯域におけるアンテナ端子2からみた位相を開放状態としてもよい。その場合には、整合回路を必要としないので、マルチプレクサ11では、より一層の小型化を図ることができる。
【0046】
図3は、本発明の第3の実施形態に係るマルチプレクサ21の略図的回路図である。
【0047】
マルチプレクサ21は、アンテナ端子2とデュプレクサ6との間に整合回路8Aが接続されており、アンテナ端子2と第3の帯域通過フィルタ7との間に整合回路が接続されていないことを除いては、第1の実施形態のマルチプレクサ1と同様に構成されている。従って、第1の実施形態と同様の部分に関する説明については、第1の実施形態と同様の参照番号を付与し、第1の実施形態の説明を適宜援用することにより省略する。
【0048】
第2の実施形態の説明から明らかなように、本発明においては、弾性表面波フィルタからなる第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2及び/または第3の帯域通過フィルタ7のそれぞれにおいて、弾性表面波フィルタを構成しているIDT電極の電極指ピッチや容量比などを調整することにより、整合回路を省略することができる。本実施形態では、第3の帯域通過フィルタ7のIDT電極の電極指ピッチや容量比などを調整することにより、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2の通過帯域である第1及び第2の通過帯域において、第3の帯域通過フィルタ7の位相が開放状態とされている。
【0049】
本実施形態では、アンテナ端子2とデュプレクサ6との間に、整合回路8Aが接続されている。整合回路8Aは、第1のキャパシタ22と、第1,第2及び第3のインダクタ23,24,25とにより構成されている。詳細には、アンテナ端子2とデュプレクサ6の共通接続点6aとの間に、第1のキャパシタ22が接続されている。第1のキャパシタ22と並列に、第1のインダクタ23が接続されている。アンテナ端子2とグラウンド電位との間に、第2のインダクタ24が接続されている。共通接続点6aとグラウンド電位との間に、第3のインダクタ25が接続されている。
【0050】
第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域である第3の通過帯域において、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2のそれぞれの位相が開放状態となるように、整合回路8Aが構成されている。また、整合回路8Aは、第1のキャパシタ22と第1のインダクタ23とからなるLC共振回路と、並列に接続された第2及び第3のインダクタ24,25とを有する構成であるため、ハイパスフィルタとして機能する。
【0051】
よって、マルチプレクサ21は、第1,第2及び第3の通過帯域が、第3の通過帯域<第2の通過帯域<第1の通過帯域という関係にある場合、または第3の通過帯域<第1の通過帯域<第2の通過帯域という関係にある場合に有効である。すなわち、マルチプレクサ21は、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、第3の通過帯域が最も低域側に位置する場合に有効である。
【0052】
これは、整合回路8Aにより、相対的に最も低域側にある第3の通過帯域の信号がデュプレクサ6に伝送することを抑制し、第1及び第2の通過帯域の信号をデュプレクサ6に効果的に伝送することができることによる。
【0053】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るマルチプレクサ31の略図的回路図である。
【0054】
マルチプレクサ31は、第3の実施形態のマルチプレクサ21における整合回路8Aに代えて、整合回路8Bが接続されていることを除いては、第3の実施形態のマルチプレクサ21と同様に構成されている。従って、整合回路8B以外の説明については、第3の実施形態の説明を適宜援用することにより省略する。
【0055】
本実施形態では、アンテナ端子2とデュプレクサ6との間に、整合回路8Bが接続されている。整合回路8Bは、第1,第2及び第3のキャパシタ22,26,27と、第1のインダクタ23とにより構成されている。詳細には、アンテナ端子2とデュプレクサ6の共通接続点6aとの間に、第1のキャパシタ22が接続されている。第1のキャパシタ22と並列に、第1のインダクタ23が接続されている。また、アンテナ端子2とグラウンド電位との間に、第2のキャパシタ26が接続されている。共通接続点6aとグラウンド電位との間に、第3のキャパシタ27が接続されている。
【0056】
第3の帯域通過フィルタ7の通過帯域である第3の通過帯域において、デュプレクサ6の第1及び第2の帯域通過フィルタF1,F2のそれぞれの位相が開放状態となるように、整合回路8Bが構成されている。
【0057】
また、整合回路8Bは、第1のキャパシタ22と第1のインダクタ23とからなるLC共振回路と、並列に接続された第2及び第3のキャパシタ26,27とを有する構成であるため、ローパスフィルタとして機能する。
【0058】
よって、マルチプレクサ31は、第1,第2及び第3の通過帯域が、第1の通過帯域<第2の通過帯域<第3の通過帯域という関係にある場合、または第2の通過帯域<第1の通過帯域<第3の通過帯域という関係にある場合に有効である。すなわち、マルチプレクサ31は、第1,第2及び第3の通過帯域のうち、第3の通過帯域が最も高域側に位置する場合に有効である。これは、整合回路8Bにより、相対的に最も高域側に位置する第3の通過帯域の信号がデュプレクサ6に伝送することを抑制し、第1及び第2の通過帯域の信号をデュプレクサ6に効果的に伝送することができることによる。
【0059】
第1〜第4の実施形態から明らかなように、本発明に係るマルチプレクサでは、アンテナ端子2とデュプレクサ6との間及びアンテナ端子2と第3の帯域通過フィルタ7との間には、整合回路が設けられていなくてもよく、整合回路が必要に応じて適宜設けられてもよい。いずれにしても、トリプレクサを構成する際に、1つのデュプレクサと1つの帯域通過フィルタとを用いるだけでよいため、マルチプレクサの小型化を図ることができる。
【0060】
また、本発明に係るマルチプレクサは、携帯電話機においてアンテナと接続されるが、マルチプレクサとアンテナとのインピーダンスの整合を図るために、アンテナとアンテナ端子との間に、インピーダンス整合用インダクタが接続されていてもよい。
【0061】
また、第1〜第4の実施形態のマルチプレクサ1,11,21,31では、互いに異なる通過帯域を有する3つの帯域通過フィルタからなるトリプレクサが構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記実施形態の構成に加えて、さらに、アンテナ端子に接続されており、かつデュプレクサ6及び第3の帯域通過フィルタ7に並列に接続されている、他の1つ以上の帯域通過フィルタや1つ以上のデュプレクサが設けられていてもよい。
【0062】
第1〜第4の実施形態のマルチプレクサ1,11,21,31は、複数の通信システムで受信フィルタや送信フィルタを共通化してなる分波器として好適に用いることができる。
【0063】
例えば、UMTS−BAND1とUMTS−BAND4とに対応する携帯電話機に搭載されるマルチプレクサでは、デュプレクサ6をUMTS−BAND1の送信フィルタと、UMTS−BAND1及びUMTS−BAND4の双方に対応する受信フィルタとにより構成し、第3の帯域通過フィルタ7をUMTS−BAND4の送信フィルタにより構成することができる。
【0064】
また、UMTS−BAND1とUMTS−BAND10とに対応する携帯電話機に搭載されるマルチプレクサでは、デュプレクサ6をUMTS−BAND1の送信フィルタと、UMTS−BAND1及びUMTS−BAND10の双方に対応する受信フィルタとにより構成し、第3の帯域通過フィルタ7をUMTS−BAND10の送信フィルタにより構成することができる。
【0065】
もっとも、本発明に係るマルチプレクサは、このような特定の通信システムに対応する携帯電話機のみに用いられるものではなく、複数のバンドや複数種の通信システムに対応する携帯電話機に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1,11,21,31…マルチプレクサ
2…アンテナ端子
3…第1の端子
4…第2の端子
5…第3の端子
6…デュプレクサ
6a…共通接続点
7…第3の帯域通過フィルタ
8…第1の整合回路
8A,8B…整合回路
9…第2の整合回路
22…第1のキャパシタ
23…第1のインダクタ
24…第2のインダクタ
25…第3のインダクタ
26…第2のキャパシタ
27…第3のキャパシタ
F1…第1の帯域通過フィルタ
F2…第2の帯域通過フィルタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ端子と、
第1の帯域通過フィルタと第2の帯域通過フィルタとを有するデュプレクサと、
第3の帯域通過フィルタとを備え、
前記第1の帯域通過フィルタは第1の通過帯域を有し、
前記第2の帯域通過フィルタは前記第1の通過帯域と異なる第2の通過帯域を有し、
前記第3の帯域通過フィルタは前記第1及び第2の通過帯域と異なる第3の通過帯域を有し、
前記アンテナ端子に前記デュプレクサと前記第3の帯域通過フィルタとが並列に接続されている、マルチプレクサ。
【請求項2】
前記第3の通過帯域が、前記第1及び第2の通過帯域よりも低域側または高域側に位置している、請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記デュプレクサと前記アンテナ端子との間に接続された第1の整合回路をさらに備える、請求項1または2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
前記第3の通過帯域が、前記第1及び第2の通過帯域よりも低域側に位置しており、前記第1の整合回路がハイパスフィルタである、請求項3に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記第3の通過帯域が、前記第1及び第2の通過帯域よりも高域側に位置しており、前記第1の整合回路がローパスフィルタである、請求項3に記載のマルチプレクサ。
【請求項6】
前記第3の帯域通過フィルタと前記アンテナ端子との間に接続された第2の整合回路をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項7】
前記デュプレクサは、前記第3の通過帯域において、前記第1及び第2の帯域通過フィルタのそれぞれの前記アンテナ端子からみた位相が開放状態とされており、前記第3の帯域通過フィルタは、前記第1及び第2の通過帯域において、前記第3の帯域通過フィルタの前記アンテナ端子からみた位相が開放状態とされている、請求項1または2に記載のマルチプレクサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62556(P2013−62556A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4997(P2010−4997)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】