マルチホルダー
【課題】 本発明は、複数の容器を脱落しないように保持できるマルチホルダーを提供することである。
【解決手段】 本発明のマルチホルダー1は、複数の上挿入孔4を有する上パネル2と、複数の下挿入孔5を有し且つ上パネル2に対向配置された下パネル3と、を有し、下パネル3が、上パネル2に対して、上下方向Yの軸を法線とする仮想平面F内の第1方向D1の少なくとも片側D11にスライド可能で、上挿入孔4が、仮想平面F内の第1方向D1に拡がった平面視紡錘形であり、下挿入孔5の縁形状が、上挿入孔4の重心が、下挿入孔5の重心に対して第1方向D1の片側D11及びそれとは反対側D12のいずれか一方側に位置ずれしている。
【解決手段】 本発明のマルチホルダー1は、複数の上挿入孔4を有する上パネル2と、複数の下挿入孔5を有し且つ上パネル2に対向配置された下パネル3と、を有し、下パネル3が、上パネル2に対して、上下方向Yの軸を法線とする仮想平面F内の第1方向D1の少なくとも片側D11にスライド可能で、上挿入孔4が、仮想平面F内の第1方向D1に拡がった平面視紡錘形であり、下挿入孔5の縁形状が、上挿入孔4の重心が、下挿入孔5の重心に対して第1方向D1の片側D11及びそれとは反対側D12のいずれか一方側に位置ずれしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容器を纏めて保持できるマルチホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内容物充填済み容器を複数一度に販売するために、これらを纏めて保持するマルチホルダーが用いられている。
マルチホルダーの中で、容器の首部を保持するものが知られている。
例えば、特許文献1には、上層及び第2層を有する上パネルと、その上パネルの下方に配置された底パネルと、を有し、前記上層に、ビンの首部が貫通する複数の囲繞開口部が設けられ、前記第2層に、前記囲繞開口部よりも小径で且つそれと同芯状に配置された複数の容器受容開口部が設けられ、前記底パネルに、前記囲繞開口部及び容器受容開口部と整合した複数の開口部が設けられているキャリアが開示されている。このキャリアは、底パネルの開口部、第2層の容器受容開口部及び上層の囲繞開口部にビンの首部を挿入し、前記容器受容開口部の上面にてビンの段部を支持することにより、複数のビンを纏めて保持できる。
【0003】
また、特許文献2には、下板部と、この下板部にヒンジ部を介して連結され且つ下板部の上面を覆う上板部と、を有し、前記下板部に、ボトルの頭部を挿入可能な大径部とボトルの首部と同径の小径部とを有するだるま型の保持孔が複数形成され、前記上板部に、それを下板部の上方に折り返したときに前記小径部と重なり且つボトルの頭部を挿入できると共にボトルの径方向移動を規制する規制孔が形成されているボトル吊下げ用ホルダーが開示されている。
【0004】
特許文献1及び2のようなマルチホルダーは、所定形状に形成されたシート材から構成できるので、低コストで作製できるという利点がある。
しかしながら、これらのマルチホルダーに内容物充填済み容器を複数保持させ、その状態でマルチホルダーの端部を持って運搬すると、容器の自重により、それらがホルダーから外れて脱落し易いという問題点がある。
従って、この種のマルチホルダーに複数の容器を保持させた包装体は、容器の脱落防止のために、容器を持って運搬するか、或いは、マルチホルダーの端部を持つ場合には振動を加えないように注意しながら運搬しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−519300号公報
【特許文献2】特開2005−313923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複数の容器を脱落しないように保持できるマルチホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマルチホルダーは、可撓性を有する上パネルと、初期位置において前記上パネルの下方に対向配置された可撓性を有する下パネルと、前記上パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の上挿入孔と、前記上挿入孔に対応して前記下パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の下挿入孔と、を有し、前記対応する下挿入孔及び上挿入孔に前記容器の首部を挿入し且つ前記容器の段部を前記上パネルの上面にて支持することにより、複数の容器を纏めて保持するマルチホルダーであって、前記初期位置にある下パネルが、前記上パネルに対して、上下方向の軸を法線とする仮想平面内の第1方向の少なくとも片側にスライド可能で、前記上挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内の第1方向に拡がった平面視細長形状であり、前記下挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内で前記第1方向に対して略直交する第2方向に拡がった平面視細長形状であり、前記上挿入孔は、その縁の前記第2方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた上孔係合部と、その縁の前記第2方向における間隔が前記上孔係合部から前記第1方向の片側に向かって短い間隔とされた上孔幅狭部と、を有し、前記下挿入孔は、その縁の前記第1方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた下孔係合部を有し、前記初期位置において、前記上挿入孔の重心が、下挿入孔の重心に対して第1方向の片側及びそれとは反対側のいずれか一方側に位置ずれしている。
【0008】
本発明の好ましいマルチホルダーは、前記第1方向の片側とは反対側における上パネルの端部に、把持部が延設されている。
【0009】
本発明の他の好ましいマルチホルダーは、前記上パネル及び下パネルが、前記第1方向の両側に前記第2方向に沿う第1側辺及び第2側辺をそれぞれ有し、前記初期位置において前記上パネルと下パネルが上下方向に所定間隔を開けて対向配置するように、前記上パネルの第1側辺と下パネルの第1側辺が第1連結パネルを介して連結され、且つ、前記上パネルの第2側辺と下パネルの第2側辺が第2連結パネルを介して連結されている。
【0010】
本発明の他の好ましいマルチホルダーは、前記上挿入孔の縁形状が、平面視略紡錘形、平面視略菱形又は平面視略細長六角形のいずれかである。
【0011】
本発明の他の好ましいマルチホルダーは、前記上挿入孔の縁形状と下挿入孔の縁形状が、同形同大又は相似形である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマルチホルダーは、複数の容器を纏めて保持することができる。本発明のマルチホルダーに内容物充填済み容器を複数保持させた包装体は、マルチホルダーの端部を持って運搬したときに、前記容器がマルチホルダーから外れて脱落し難い。特に、その運搬時、包装体に上下の振動が加わったときでも容器が脱落し難い。
本発明の好ましいマルチホルダーは、把持部が設けられているので、その把持部を持つことにより、マルチホルダーに複数の容器を保持させた包装体を容易に運搬できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーの斜視図。
【図2】同初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図3】同初期位置におけるマルチホルダーを下から見た底面図。
【図4】同初期位置におけるマルチホルダーを左横から見た側面図。
【図5】(a)は、初期位置にある下パネルを第1方向の片側に移動させてマルチホルダーを略扁平状にした状態の側面図、(b)は、初期位置にある下パネルを第1方向の反対側に移動させてマルチホルダーを略扁平状にした状態の側面図。
【図6】同マルチホルダーを形成するためのシート材を展開した状態の平面図。
【図7】マルチホルダーに容器を複数保持させた包装体の斜視図。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図。
【図9】図7のIX−IX線断面図。
【図10】同包装体を把持して持ち上げた状態の斜視図。
【図11】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図13】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図14】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図15】図14のXV−XV線断面図。
【図16】比較例1のマルチホルダーの斜視図。
【図17】同マルチホルダーを上から見た平面図。
【図18】比較例2のマルチホルダーの斜視図。
【図19】同マルチホルダーを上から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
ただし、本明細書において、「上」は、マルチホルダーの下パネルを水平面上に載せたと仮定したときに、その水平面から離れる側を指し、「下」は、前記水平面に近づく側を指す。「仮想平面」とは、上下方向の軸を法線とする仮想の面(前記水平面と平行な面)をいう。「第1方向」とは、前記仮想平面の面内の全ての放射方向の中から選ばれる1つの方向をいい、「第2方向」とは、前記仮想平面の面内において、前記第1方向に対して略直交する方向をいう。
また、「初期位置」とは、連結パネルを介して対向配置された上パネル及び下パネルの所定の位置関係であって、前記連結パネルと上パネル及び連結パネルと下パネルの何れか一方又は双方が略直角状に交わった状態の位置をいう。ただし、連結パネルが2以上設けられている場合には、そのうちの少なくとも1つの連結パネルが、前記上パネル及び下パネルの一方又は双方と略直角状に交わった状態が前記初期位置である。
【0015】
本明細書において、平面視形状は、上下方向の軸上に目線を合わせて上パネルの上面又は下パネルの下面を見たときの形状をいう。
また、本明細書において、内容物充填済み容器を、単に容器と記す場合がある。
【0016】
図1乃至図4は、本発明のマルチホルダー1を示す。
マルチホルダー1は、可撓性を有する上パネル2と、上パネル2の下方に対向配置された可撓性を有する下パネル3と、上パネル2に設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の上挿入孔4と、前記上挿入孔4に対応して下パネル3に設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の下挿入孔5と、を有するホルダー本体を有し、ホルダー本体の端部には、把持部6が延設されている。上挿入孔4及びこれに対応する下挿入孔5の形成数は、複数(2以上)であれば特に限定されないが、運搬の便を考慮すると、2個〜12個程度が好ましい。
本発明のマルチホルダー1は、首部とこの首部の周囲に突設された段部とを有する容器を複数纏めて保持することができる。また、容器を保持したマルチホルダー1については、把持部6を持って運搬することができる。
【0017】
前記上パネル2と下パネル3は、上下方向に所定間隔を開けて対向配置するように、連結パネル71,72を介して連結されている。このように上パネル2と下パネル3が対向配置された初期位置を基準にして、下パネル3は、上パネル2に対して、上下方向Yの軸を法線とする仮想平面F内の第1方向D1の少なくとも片側D11にスライド可能である。ただし、前記第1方向D1の片側D11は、その第1方向D1の両側D11,D12のいずれか一方側をいう。図1乃至図4は、上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態のマルチホルダー1を示している。
【0018】
前記上挿入孔4及び下挿入孔5は、上パネル2及び下パネル3の面内の一部分を切り抜いた開口部である。上挿入孔4の縁形状(換言すると、縁形状で囲われる内側に上挿入孔4が生じている)は、前記仮想平面F内の第1方向D1に拡がった平面視細長形状である。下挿入孔5の縁形状(換言すると、縁形状で囲われる内側に下挿入孔5が生じている)は、前記仮想平面F内で前記第1方向D1に対して略直交する第2方向D2に拡がった平面視細長形状である。
【0019】
前記上挿入孔4には、上孔係合部41と上孔幅狭部42とが形成されている。この上孔係合部41は、上挿入孔4の縁の一部分であって、その縁の第2方向D2における間隔が容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた部分である。上孔幅狭部42は、上挿入孔4の縁の他の部分であって、その縁の第2方向D2における間隔が上孔係合部41から第1方向D1の片側に向かって短い間隔とされた部分である。
また、前記下挿入孔5にも、同様に、下孔係合部51と下孔幅狭部52とが形成されている。この下孔係合部51は、下挿入孔5の縁の一部分であって、その縁の第1方向D1における間隔が容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた部分である。下孔幅狭部52は、下挿入孔5の縁の他の部分であって、その縁の第1方向D1における間隔が下孔係合部51から第2方向D2の両側に向かって短い間隔とされた部分である。
【0020】
本発明においては、初期位置において上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の片側D11及びそれとは反対側D12のいずれか一方側に位置ずれするように、前記上孔係合部41及び上孔幅狭部42を有する上挿入孔4と前記下孔係合部51を有する下挿入孔5が、上パネル2と下パネル3にそれぞれ形成されている。
【0021】
具体的には、ホルダー本体は、少なくとも上パネル2及び下パネル3が可撓性を有するシート材で形成されていればよい。簡単に作製できることから、ホルダー本体は、その全体が可撓性を有するシート材から形成されていることが好ましい。なお、前記可撓性を有するとは、シート材に力を加えたときに、シート材の面内の全放射方向には殆ど変形しないが、シート材の厚み方向に大きく変化する(撓む)性質を有することをいう。
前記シート材としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂製シート、金属蒸着層を有する合成樹脂製シート、厚紙、及びこれらの積層シートなどが挙げられる。
【0022】
好ましくは、シート材として、合成樹脂製シートを含むシートが用いられ、より好ましくは、合成樹脂製シート(2枚以上の合成樹脂製シートが積層された樹脂製シートを含む)が用いられる。合成樹脂製シートの材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系などが挙げられる。
【0023】
また、シート材は、透明又は非透明のいずれでもよいし、必要に応じて、その一領域又は全領域に広告などのデザイン表示が施されていてもよい。
シート材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.25mm〜2.0mm程度である。中でも、適度な剛性及び可撓性を有することから、厚み0.25mm〜1.0mm程度のポリプロピレン製シート又はポリエステル製シートを用いることが好ましい。
【0024】
上パネル2及び下パネル3の平面視形状は、特に限定されず、任意の形状に形成できる。例えば、前記上パネル2及び下パネル3は、前記第1方向D1の両側D11,D12に第1側辺21,31及び第2側辺22,32をそれぞれ有する。この上パネル2及び下パネル3の第1側辺21,31及び第2側辺22,32は、前記第2方向D2に沿って直線状に延びる、互いに対向した平行な辺である。
上パネル2及び下パネル3のその他の辺は、それぞれ直線状、円弧状、屈曲状などの任意である。
【0025】
本実施形態では、上パネル2及び下パネル3の平面視形状は、それぞれ略矩形状(図示例では、略正方形状)とされている。
上パネル2及び下パネル3の平面視形状は、異なっていてもよいが、マルチホルダー1の作製が容易である上、後述するように不使用時に扁平状に折り畳むことができ且つマルチホルダー1の面積を小さくできるので、上パネル2及び下パネル3は、略同一形状であることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、上パネル2と下パネル3は、2つの連結パネル71,72を介して連結されている(以下、第1連結パネル71及び第2連結パネル72という)。
第1連結パネル71は、上パネル2の第1側辺21と下パネル3の第1側辺31の間を連結しており、第2連結パネル72は、上パネル2の第2側辺22と下パネル3の第2側辺32の間を連結している。
上パネル2、下パネル3、第1連結パネル71及び第2連結パネル72は、それぞれの接続境界部(前記第1側辺21,31及び第2側辺22,32)において折り曲げ可能に連結されている。
【0027】
初期位置においては、図4に示すように、第1連結パネル71と上パネル2及び下パネル3とは(その各内面が)それぞれ略直角状に交わった状態となっており、同様に、第2連結パネル72と上パネル2及び下パネル3とは(その各内面が)それぞれ略直角状に交わった状態となっている。
従って、対向配置された上パネル2及び下パネル3が初期位置にあるときには、図4に示すように、マルチホルダー1を側面から見ると、中空長方形となっている。
【0028】
第1連結パネル71の幅及び第2連結パネル72の幅(第1連結パネル71の幅及び第2連結パネル72の第2方向D2における長さ)は、第1側辺21及び第2側辺22と同じである。もっとも、第1連結パネル71の幅及び第2連結パネル72の幅は、第1側辺21及び第2側辺22よりも短い又は長くてもよい。
【0029】
第1連結パネル71と第2連結パネル72の上下方向の長さは、異なっていてもよい。もっとも、上パネル2における第1側辺21から第2側辺22までの間の長さと下パネル3における第1側辺31から第2側辺32までの長さとが略同一である場合、後述するようにマルチホルダー1を扁平状に折り畳むことができるようにするために、第1連結パネル71と第2連結パネル72の上下方向の長さは、同じであることが好ましい。
本実施形態では、第1連結パネル71及び第2連結パネル72は、略同一形状である。
なお、例えば、上述のように第1連結パネル71と第2連結パネル72の上下方向の長さが異なっている場合には、第1連結パネル71及び第2連結パネルと上パネル2及び下パネル3とは、それら全ての組み合わせがそれぞれ略直角状に交わった状態とならないが、この場合には、そのうちの1つの連結パネルが上パネル2及び下パネル3の少なくとも何れか一方と略直角状に交わった状態にあるときが本発明のマルチホルダー1の初期位置となる。
【0030】
さらに、上パネル2の端部から、把持部6が延設されている。把持部6は、マルチホルダー1に複数の内容物充填済み容器を保持させた包装体を運搬する際に、手で持つために利用される。なお、持ち易くするために、把持部6の一部分に、指が入るような孔部が1又は2以上形成されていてもよい(図示せず)。
把持部6を持ってマルチホルダー1を介して充填済み容器を吊り下げたとき、下パネル3が、上パネル2に対して第1方向D1の片側D11にスライドするように、把持部6は、上パネル2の端部から延設されている。本実施形態では、第1方向D1の片側とは反対側D12における上パネル2の端部に、把持部6が延設されている。
【0031】
本実施形態では、前記把持部6は、上パネル2の第1側辺21から上方に向かって延設されている。初期位置において、把持部6の面は、上パネル2の上面に対して略直交している。把持部6の幅(把持部6の第2方向D2における長さ)は、手で持つことができる程度であれば特に限定されず、本実施形態では、把持部6の幅は、上パネル2の第1側辺21の長さと略同じである。
【0032】
ここで、各パネル2,3,71,72は、接続境界部でヒンジ作用によって折り曲げることができるので、初期位置にある上パネル2及び下パネル3の少なくともいずれか一方に力を加えると、上パネル2と下パネル3は、仮想平面F内の第1方向D1の両側D11,D12に相対的にスライド可能である。
相対的にスライド可能とは、上パネル2がスライド移動し且つ下パネル3が動かない場合、下パネル3がスライド移動し且つ上パネル2が動かない場合、上パネル2及び下パネル3が互いに相反する方向にスライド移動する場合、を含む。
なお、上パネル2及び下パネル3は、前記第1連結パネル71及び第2連結パネル72を介して上下方向Yに所定間隔を開けて連結されているので、上パネル2及び下パネル3の少なくともいずれか一方が仮想平面F内をスライド移動する際には、上下方向Yに若干平行移動する。
【0033】
具体的には、初期位置にある上パネル2に、第1方向D1の片側D11から反対側D12に向かって力を加えると、第1連結パネル71及び第2連結パネル72が前記第1方向D1の反対側D12に倒れていくと共に、下パネル3が、上パネル2に対して第1方向D1の片側D11に相対的にスライド移動し、そのスライドに伴って上方に若干平行移動する。下パネル3及び上パネル2が相対的に移動した後、上パネル2の下面と下パネル3の上面が接し、マルチホルダー1は、略扁平状となる(図5(a)参照)。
一方、初期位置にある上パネル2に、第1方向D1の反対側D12から片側D11に向かって力を加えると、第1連結パネル71及び第2連結パネル72が前記第1方向D1の反対側D12に倒れていくと共に、下パネル3が、上パネル2に対して第1方向D1の反対側D12に相対的にスライド移動し、そのスライドに伴って上方に若干平行移動する。下パネル3及び上パネル2が相対的に移動した後、上パネル2の下面と下パネル3の上面が接し、マルチホルダー1は、略扁平状となる(図5(b)参照)。
【0034】
このように上パネル2の下面と下パネル3の上面が接するように移動させることにより、マルチホルダー1を側面から見て、マルチホルダー1を略扁平状に折り畳むことができる。通常、本発明のマルチホルダー1は、不使用時に、図5(a)又は図5(b)のような略扁平状にして保管・流通に供される。
【0035】
上パネル2の面内には、複数の上挿入孔4が所定間隔を開けて形成されている。下パネル3の面内にも、前記上挿入孔4に対応した下挿入孔5が所定間隔を開けて複数形成されている。
上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態において、上パネル2の上から見て、対応する上挿入孔4と下挿入孔5は、図2及び図3に示すように、その縁形状が完全に一致していないが、上挿入孔4の開口の一部分と下挿入孔5の開口の一部分は、重なっている。
【0036】
各上挿入孔4の平面視形状は、それぞれ円形ではなく、前記第1方向D1に拡がった細長形状であり、一方、各下挿入孔5の平面視形状は、それぞれ円形ではなく、前記第2方向D2に拡がった平面視細長形状である。
好ましくは、各上挿入孔4の平面視形状は、その第1方向D1における最大開口幅が第2方向D2における最大開口幅よりも大きく、一方、各下挿入孔5の平面視形状は、その第2方向D2における最大開口幅が第1方向D1における最大開口幅よりも大きい。
【0037】
また、上挿入孔4及び下挿入孔5の各縁形状は、無端状の線からなる。すなわち、上挿入孔4及び下挿入孔5は、それぞれ上パネル2及び下パネル3の面内に、放射方向に延びる有端状の切断線などを有しない、無端状の切断線を形成することにより、開口されている。上挿入孔4及び下挿入孔5が無端状の線で形成されていることにより、容器の首部を挿入して内容物充填済み容器を吊り下げたときに、容器の自重によって上挿入孔4の縁及び下挿入孔5の縁に亀裂が生じることを防止できる上、容器の脱落を確実に防止できる。
【0038】
前記上挿入孔4は、その縁の第2方向D2における間隔が容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の直径よりも短い間隔とされた上孔係合部41と、その縁の第2方向D2における間隔が上孔係合部41から第1方向D1の片側D11及び反対側D12に向かってそれぞれ短い間隔とされた上孔幅狭部42と、を有する。
【0039】
具体的には、上孔係合部41は、上パネル2の上面から容器の段部が出るように前記下挿入孔5及び上挿入孔4に容器の首部を挿入したときに、上挿入孔4の縁が前記首部に接し又は近接し且つ容器の段部を上パネル2の上面(上挿入孔4の縁周辺における上パネル2の上面)にて下方から支持する部分である。上孔幅狭部42は、前記上孔係合部41を基準にして、そこから第1方向D1の片側D11及び第1方向D1の反対側D12に向かって間隔が短くなっていく上挿入孔4の縁部分である。従って、上孔幅狭部42は、第1方向D1の両側D11,D12にそれぞれ形成されている。もっとも、上孔幅狭部42は、第1方向D1の両側D11,D12に必ずしも形成されていなくてもよく、少なくとも第1方向D1の片側D11に形成されていればよい。
【0040】
下孔係合部51は、上パネル2の上面から容器の段部が出るように前記下挿入孔5及び上挿入孔4に容器の首部を挿入したときに、下挿入孔5の縁が前記首部に接し又は近接する部分である。下孔幅狭部52は、前記下孔係合部51を基準にして、そこから第2方向D2の片側D21及び第2方向D2の反対側D22に向かって間隔が短くなっていく下挿入孔5の縁部分である。従って、下孔幅狭部52は、第2方向D2の両側D21,D22にそれぞれ形成されている。もっとも、下孔幅狭部52は、第2方向D2の片側D21又は反対側D22のみに形成されていてもよい。或いは、下挿入孔5が、下孔幅狭部52を有しなくてもよい。なお、下孔幅狭部52を有しない下挿入孔5としては、例えば、その縁形状が平面視長方形に形成された下挿入孔などが該当する。
【0041】
本実施形態では、上挿入孔4及び下挿入孔5は、平面視略紡錘形に形成されている。なお、略紡錘形には、楕円形が含まれる。
略紡錘形の上挿入孔4は、その縁の第2方向D2における間隔が第1方向D1の中央部において最も広くなっており、この第1方向D1の中央部における縁部分が上孔係合部41に相当する。
また、略紡錘形の下挿入孔5は、その縁の第1方向D1における間隔が第2方向D2の中央部において最も広くなっており、この第2方向D2の中央部における縁部分が下孔係合部51に相当する。
図示した略紡錘形の上挿入孔4及び下挿入孔5は、同形同大であるが(ただし、向きは異なる)、若干大きさの異なる相似形であってもよい。
【0042】
上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態において、図2及び図3に示すように、各上挿入孔4の重心G4は、対応する各下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の片側D11に位置ずれしている。
好ましくは、下パネル3が上パネル2に対して第1方向D1の片側D11に相対的にスライド移動したときに、上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5上を通過するような位置に、上挿入孔4及び下挿入孔5がそれぞれ配置されている。
【0043】
上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態において、上挿入孔4の重心G4と下挿入孔5の重心G5のずれ長さ(上パネル2の上から見て、上挿入孔4の重心G4と下挿入孔5の重心G5との第1方向D1における間隔)は、適宜設定される。好ましくは、前記ずれ長さは、第1連結パネル71及び第2連結パネル72の上下方向Yの長さの1/4倍〜2倍である。具体的な数値では、初期位置における前記ずれ長さは、3mm以上が好ましい。前記ずれ長さが3mm未満であると、上挿入孔4と下挿入孔5をずらした効果が得られないおそれがある。また、上挿入孔5及び下挿入孔5に容器の首部を挿入し易くするためには、上挿入孔4及び下挿入孔5の開口が出来るだけ上下に重なっている部分を有することが好ましい。このような容器の首部の挿入時の便を考慮すると、初期位置における前記ずれ長さは、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。
【0044】
ここで、図6は、上記マルチホルダー1を形成するために所定形状に切り抜かれたシート材の展開平面図である。同図の二点鎖線は、折り罫線を示す。この折り罫線は、特に限定されず、例えば、シート材の厚み方向に切り込んだVノッチ線、ミシン目線などが挙げられる。
図6のシート材に付された符号は、マルチホルダー1の各部にそれぞれ対応しているため、その説明は省略する。ただし、図6の符号11は、糊代部を示す。
このシート材を、上パネル2及び下パネル3の第1側辺21,31及び第2側辺22,32において略直角状にそれぞれ折り曲げ、糊代部11を第1連結パネル71に接着剤などを介して接着することにより、上記マルチホルダー1が得られる。
【0045】
上記マルチホルダー1の使用時には、図7乃至図9に示すように、内容物充填済み容器9が装着される。
内容物充填済み容器9は、飲料などが充填されたものであり、図示した容器9は、いわゆるボトル型容器である。
容器9は、内容物を充填する胴部91と、胴部91の上方に連続した胴部よりも小径な首部92と、首部92の中途部に突設された段部93と、を有する。段部93は、首部92の直径よりも大きい直径を有する径大部である。前記段部93は、例えば、容器9の上部に装着されたキャップ部の下端部、又は、キャップ部の下方に位置し且つ首部92の周囲から径外方向に突設された鍔部(ネックリング)などから構成される。通常、首部92の外形及び段部93の外形の平面視形状は、円形である。
容器9の容量は、特に限定されず、例えば、100mL〜2L、好ましくは100mL〜1Lの容器が挙げられる。
【0046】
この容器9の首部92を、マルチホルダー1の下パネル3の下方から下挿入孔5及び上挿入孔4に挿入し、容器9の段部93を上挿入孔4より上側に出す。上述のように下挿入孔5と上挿入孔4は位置ずれしているが、容器9の首部92を下挿入孔5から上挿入孔4に挿入する際には、下パネル3及び上パネル2を撓ませながら上パネル2を下パネル3に対して第1方向D1の反対側D12にスライドさせれば、容器9の首部92を下挿入孔5及び上挿入孔4に簡単に挿入できる。同様にして、上下一対の上挿入孔4及び下挿入孔5の全てに各容器9をそれぞれ挿入することにより、図7乃至図9に示すような、本発明のマルチホルダー1に内容物充填済み容器9を複数保持させた包装体が得られる。
【0047】
上記包装体においては、図7に示すように、上パネル2及び下パネル3が第1方向D1に相対的に位置ずれし、図8及び図9に示すように、容器9の首部92が上挿入孔4の上孔係合部41及び下挿入孔5の下孔係合部51に位置することにより、容器9の段部93が上挿入孔4の縁周辺における上パネル2の上面にて下方から支持されている。
かかる包装体のマルチホルダー1の把持部6を手で持ち上げると、図10に示すように、容器9の自重により、下パネル3が上パネル2に対して更に第1方向D1の片側D11にスライドして位置ずれする。下パネル3の位置ずれにより、上挿入孔4の上孔係合部41と下パネル3の下孔係合部51が容器9の首部92に強く押圧されて密着する。
このため、マルチホルダー1の把持部6を持って複数の容器9を吊り下げて運搬したときに、容器9が脱落し難くなる。特に、その運搬時、包装体が上下に振れることによって容器9に上下の振動が加わっても、マルチホルダー1から容器9が脱落し難い。
【0048】
次に、本発明のマルチホルダーの他の実施形態を説明する。ただし、以下の他の実施形態に係るマルチホルダーの説明において、上記実施形態と同様の構成及び効果に関する説明は省略し、用語及び符号をそのまま援用する。
【0049】
上記実施形態において、上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の片側D11に位置ずれしているが、図11に示すように、上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の反対側D12(第1方向D1の片側とは反対側D12)に位置ずれしていてもよい。このように上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の反対側D12に位置ずれしたマルチホルダー1に容器を装着する場合には、下パネル3及び上パネル2を撓ませながら上パネル2を下パネル3に対して第1方向D1の片側D11にスライドさせることにより、容器の首部を下挿入孔5及び上挿入孔4に簡単に挿入できる。かかるマルチホルダー1を用いた包装体も、上記実施形態と同様に把持部6を手で持ち上げると、容器の自重により、下パネル3が上パネル2に対して第1方向D1の片側D11にスライドするので、上挿入孔4の上孔係合部41と下パネル3の下孔係合部51が容器の首部に強く押圧されて密着し、容器が脱落し難い。
【0050】
上記実施形態における上挿入孔4及び下挿入孔5の具体的な形状は、平面視略紡錘形を例示したが、上挿入孔4及び下挿入孔5の具体的な形状はこれに限定されず、例えば、図12に示すような平面視略菱形、又は、図13に示すような平面視略細長六角形などであってもよい。また、例えば、上挿入孔4を平面略紡錘形にし、下挿入孔5を平面視略菱形に形成するなどのように、それらの形状を適宜選択して、上挿入孔4と下挿入孔5を異なる形状としてもよい。
これらの場合でも、上記実施形態で説明したように、下挿入孔5については、第2方向D2に長い平面視長方形を選択することも可能である。
【0051】
さらに、上記実施形態のマルチホルダー1に、図14及び図15に示すような、上パネル2と下パネル3の上下方向の間隔を保持する間隔保持部8を設けてもよい。
間隔保持部8は、例えば、上パネル2の下面と下パネル3の上面の間に介在し、上パネル2を上方に且つ下パネル3を下方に付勢する部分である。
間隔保持部8は、上パネル2及び下パネル3の少なくともいずれか一方から延設されていることが好ましい。
【0052】
具体的には、間隔保持部8は、図15に示すように、上パネル2の第3側辺23及び第4側辺24からそれぞれ延設された上シート片81と、下パネル3の第3側辺33及び第4側辺34からそれぞれ延設された下シート片82と、からなり、各上シート片81及び下シート片82は、それぞれ上パネル2及び下パネル3に対して折り曲げ可能である。この上シート片81及び下シート片82は、上パネル2と下パネル3の間に折り曲げられ、且つ互いの端部が当接されている。上下一対の上シート片81及び下シート片82の板バネ作用によって、上パネル2が上方に付勢され且つ下パネル3が下方に付勢されるので、初期位置において対向配置された上パネル2と下パネル3の所定間隔を維持できる。
【0053】
上記実施形態において、連結パネルは、上パネル2の第1側辺21,31と下パネル3の第1側辺21,31を連結する第1連結パネル71と、上パネル2の第2側辺22,32と下パネル3の第2側辺22,32を連結する第2連結パネル72と、からなるが、これに限定されない。例えば、連結パネルが、上パネル2の第1側辺21,31と下パネル3の第1側辺21,31を連結する第1連結パネル71のみから構成されていてもよい。また、連結パネルは、上パネル2及び下パネル3の側辺(第1側辺又は第2側辺)に設ける場合に限定されず、例えば、上パネル2及び下パネル3の面内に設けることも可能である。このように連結パネルを1つ設ける場合、又は、連結パネルの1つ又は複数の連結パネルのうちの1つ又は2つ以上を上パネル2及び下パネル3の面内に設ける場合には、そのうちの1つの連結パネルが上パネル2及び下パネル3の少なくとも何れか一方と略直角状に交わった状態にあるときが初期位置となる。
【0054】
また、上記実施形態のマルチホルダー1には、上パネル2に把持部6が延設されているが、このような把持部6が延設されていなくもよい。上述のように把持部6が延設されていれば、持つための部分を大きく確保でき、運搬に便利であるが、上パネル2の端部を手で持って運搬することもできるので、必ずしも把持部6を設けなければならないわけではない。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例及び比較例によって、何ら限定されるものではない。
【0056】
[実施例]
厚み0.30mmのポリプロピン製シートを、図6に示すような形状に形成した。図6においては、実施例で使用したシート材の実物を縮尺した図示している。
このシート材の糊代部を第1連結パネルに接着剤を用いて接着することにより、図1乃至図4に示すような、実施例に係るマルチホルダーを作製した。
【0057】
この実施例のマルチホルダーの上パネル及び下パネルは、それぞれ1辺約135mmの正方形で、第1連結パネル及び第2連結パネルの上下方向の長さは、約15mmとした。
各上挿入孔及び下挿入孔は、図示したように、全て平面視略紡錘形で且つ同じ大きさとした。各上挿入孔及び下挿入孔の長手方向の最大開口幅(上挿入孔にあっては、第1方向における最大開口幅であり、下挿入孔にあっては、第2方向における最大開口幅)は、約46mm、その短手方向の最大開口幅(上挿入孔にあっては、第2方向における最大開口幅であり、下挿入孔にあっては、第1方向における最大開口幅)は、約26mmとした。また、上挿入孔の重心と下挿入孔の重心のずれ長さが約5mmとなるように、各上挿入孔及び下挿入孔を配置した。
【0058】
市販の500mLの水入りボトル型容器(いわゆるPETボトル)を4本準備し、実施例のマルチホルダーに保持させることにより、図7に示すような包装体を作製した。
なお、このボトル型容器の首部の直径は、約24mmで、段部(キャップ部の下方に位置する鍔部)の直径は、約31mmであった。
この包装体の把持部を持って吊り下げたところ、いずれの容器も脱落しなかった。さらに、この把持部を持った状態の包装体を落差30cmくらいで素早く上下に振ったところ、いずれの容器も脱落しなかった。
【0059】
[比較例1]
比較例1では、図16及び図17に示すようなマルチホルダーを作製した。
具体的には、上挿入孔及び下挿入孔が、同形同大であって、長さ約3mmの有端状の切断線が放射状に且つ均等に12本形成された直径約26mmの円形であること、並びに、初期位置においてその円形の上挿入孔及び下挿入孔を同芯状(重心を一致させた状態)に配置したこと以外は、上記実施例と同様にして、比較例1のマルチホルダーを作製した。
このマルチホルダーに、上記実施例と同様に、4本の水入りボトル型容器を保持させた後、把持部を持って吊り下げたところ、いずれの容器も脱落しなかった。さらに、この把持部を持った状態の包装体を落差10cmくらいで上下に振ったところ、一部の容器が脱落した。また、把持部を持った状態の包装体を落差30cmくらいで素早く上下に振ったところ、全ての容器が簡単に脱落してしまった。
【0060】
[比較例2]
比較例2では、図18及び図19に示すようなマルチホルダーを作製した。
具体的には、初期位置において上挿入孔の重心と下挿入孔の重心が上下に一致するように上挿入孔及び下挿入孔を配置したこと以外は、上記実施例と同様にして、比較例2のマルチホルダーを作製した。
このマルチホルダーに、上記実施例と同様に、4本の水入りボトル型容器を保持させた後、把持部を持って吊り下げたところ、いずれの容器も脱落しなかった。さらに、この把持部を持った状態の包装体を落差30cmくらいで素早く上下に振ったところ、3本の容器が脱落してしまった。
【0061】
実施例のマルチホルダーと比較例2のマルチホルダーの相違点は、重心をずらして上挿入孔及び下挿入孔を配置したか、重心を一致させて配置したかである。かかる相違点は、僅かな違いのように思えたが、その効果の違いは極めて顕著であった。このような効果の相違が出ることは、本発明者らは予測できず、驚くべき結果であった。
【符号の説明】
【0062】
1…マルチホルダー、2…上パネル、21…上パネルの第1側辺、22…上パネルの第2側辺、3…下パネル、31…下パネルの第1側辺、32…下パネルの第2側辺、4…上挿入孔、41…上孔係合部、42…上孔幅狭部、5…下挿入孔、51…下孔係合部、52…下孔幅狭部、6…把持部、71…第1連結パネル、72…第2連結パネル、F…仮想平面、D1…第1方向、D11…第1方向の片側、D12…第1方向の反対側、D2…第2方向、D21…第2方向の片側、D22…第2方向の反対側、G4…上挿入孔の重心、G5…下挿入孔の重心
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容器を纏めて保持できるマルチホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内容物充填済み容器を複数一度に販売するために、これらを纏めて保持するマルチホルダーが用いられている。
マルチホルダーの中で、容器の首部を保持するものが知られている。
例えば、特許文献1には、上層及び第2層を有する上パネルと、その上パネルの下方に配置された底パネルと、を有し、前記上層に、ビンの首部が貫通する複数の囲繞開口部が設けられ、前記第2層に、前記囲繞開口部よりも小径で且つそれと同芯状に配置された複数の容器受容開口部が設けられ、前記底パネルに、前記囲繞開口部及び容器受容開口部と整合した複数の開口部が設けられているキャリアが開示されている。このキャリアは、底パネルの開口部、第2層の容器受容開口部及び上層の囲繞開口部にビンの首部を挿入し、前記容器受容開口部の上面にてビンの段部を支持することにより、複数のビンを纏めて保持できる。
【0003】
また、特許文献2には、下板部と、この下板部にヒンジ部を介して連結され且つ下板部の上面を覆う上板部と、を有し、前記下板部に、ボトルの頭部を挿入可能な大径部とボトルの首部と同径の小径部とを有するだるま型の保持孔が複数形成され、前記上板部に、それを下板部の上方に折り返したときに前記小径部と重なり且つボトルの頭部を挿入できると共にボトルの径方向移動を規制する規制孔が形成されているボトル吊下げ用ホルダーが開示されている。
【0004】
特許文献1及び2のようなマルチホルダーは、所定形状に形成されたシート材から構成できるので、低コストで作製できるという利点がある。
しかしながら、これらのマルチホルダーに内容物充填済み容器を複数保持させ、その状態でマルチホルダーの端部を持って運搬すると、容器の自重により、それらがホルダーから外れて脱落し易いという問題点がある。
従って、この種のマルチホルダーに複数の容器を保持させた包装体は、容器の脱落防止のために、容器を持って運搬するか、或いは、マルチホルダーの端部を持つ場合には振動を加えないように注意しながら運搬しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−519300号公報
【特許文献2】特開2005−313923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複数の容器を脱落しないように保持できるマルチホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマルチホルダーは、可撓性を有する上パネルと、初期位置において前記上パネルの下方に対向配置された可撓性を有する下パネルと、前記上パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の上挿入孔と、前記上挿入孔に対応して前記下パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の下挿入孔と、を有し、前記対応する下挿入孔及び上挿入孔に前記容器の首部を挿入し且つ前記容器の段部を前記上パネルの上面にて支持することにより、複数の容器を纏めて保持するマルチホルダーであって、前記初期位置にある下パネルが、前記上パネルに対して、上下方向の軸を法線とする仮想平面内の第1方向の少なくとも片側にスライド可能で、前記上挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内の第1方向に拡がった平面視細長形状であり、前記下挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内で前記第1方向に対して略直交する第2方向に拡がった平面視細長形状であり、前記上挿入孔は、その縁の前記第2方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた上孔係合部と、その縁の前記第2方向における間隔が前記上孔係合部から前記第1方向の片側に向かって短い間隔とされた上孔幅狭部と、を有し、前記下挿入孔は、その縁の前記第1方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた下孔係合部を有し、前記初期位置において、前記上挿入孔の重心が、下挿入孔の重心に対して第1方向の片側及びそれとは反対側のいずれか一方側に位置ずれしている。
【0008】
本発明の好ましいマルチホルダーは、前記第1方向の片側とは反対側における上パネルの端部に、把持部が延設されている。
【0009】
本発明の他の好ましいマルチホルダーは、前記上パネル及び下パネルが、前記第1方向の両側に前記第2方向に沿う第1側辺及び第2側辺をそれぞれ有し、前記初期位置において前記上パネルと下パネルが上下方向に所定間隔を開けて対向配置するように、前記上パネルの第1側辺と下パネルの第1側辺が第1連結パネルを介して連結され、且つ、前記上パネルの第2側辺と下パネルの第2側辺が第2連結パネルを介して連結されている。
【0010】
本発明の他の好ましいマルチホルダーは、前記上挿入孔の縁形状が、平面視略紡錘形、平面視略菱形又は平面視略細長六角形のいずれかである。
【0011】
本発明の他の好ましいマルチホルダーは、前記上挿入孔の縁形状と下挿入孔の縁形状が、同形同大又は相似形である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマルチホルダーは、複数の容器を纏めて保持することができる。本発明のマルチホルダーに内容物充填済み容器を複数保持させた包装体は、マルチホルダーの端部を持って運搬したときに、前記容器がマルチホルダーから外れて脱落し難い。特に、その運搬時、包装体に上下の振動が加わったときでも容器が脱落し難い。
本発明の好ましいマルチホルダーは、把持部が設けられているので、その把持部を持つことにより、マルチホルダーに複数の容器を保持させた包装体を容易に運搬できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーの斜視図。
【図2】同初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図3】同初期位置におけるマルチホルダーを下から見た底面図。
【図4】同初期位置におけるマルチホルダーを左横から見た側面図。
【図5】(a)は、初期位置にある下パネルを第1方向の片側に移動させてマルチホルダーを略扁平状にした状態の側面図、(b)は、初期位置にある下パネルを第1方向の反対側に移動させてマルチホルダーを略扁平状にした状態の側面図。
【図6】同マルチホルダーを形成するためのシート材を展開した状態の平面図。
【図7】マルチホルダーに容器を複数保持させた包装体の斜視図。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図。
【図9】図7のIX−IX線断面図。
【図10】同包装体を把持して持ち上げた状態の斜視図。
【図11】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図13】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図14】本発明の他の実施形態に係る、初期位置におけるマルチホルダーを上から見た平面図。
【図15】図14のXV−XV線断面図。
【図16】比較例1のマルチホルダーの斜視図。
【図17】同マルチホルダーを上から見た平面図。
【図18】比較例2のマルチホルダーの斜視図。
【図19】同マルチホルダーを上から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
ただし、本明細書において、「上」は、マルチホルダーの下パネルを水平面上に載せたと仮定したときに、その水平面から離れる側を指し、「下」は、前記水平面に近づく側を指す。「仮想平面」とは、上下方向の軸を法線とする仮想の面(前記水平面と平行な面)をいう。「第1方向」とは、前記仮想平面の面内の全ての放射方向の中から選ばれる1つの方向をいい、「第2方向」とは、前記仮想平面の面内において、前記第1方向に対して略直交する方向をいう。
また、「初期位置」とは、連結パネルを介して対向配置された上パネル及び下パネルの所定の位置関係であって、前記連結パネルと上パネル及び連結パネルと下パネルの何れか一方又は双方が略直角状に交わった状態の位置をいう。ただし、連結パネルが2以上設けられている場合には、そのうちの少なくとも1つの連結パネルが、前記上パネル及び下パネルの一方又は双方と略直角状に交わった状態が前記初期位置である。
【0015】
本明細書において、平面視形状は、上下方向の軸上に目線を合わせて上パネルの上面又は下パネルの下面を見たときの形状をいう。
また、本明細書において、内容物充填済み容器を、単に容器と記す場合がある。
【0016】
図1乃至図4は、本発明のマルチホルダー1を示す。
マルチホルダー1は、可撓性を有する上パネル2と、上パネル2の下方に対向配置された可撓性を有する下パネル3と、上パネル2に設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の上挿入孔4と、前記上挿入孔4に対応して下パネル3に設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の下挿入孔5と、を有するホルダー本体を有し、ホルダー本体の端部には、把持部6が延設されている。上挿入孔4及びこれに対応する下挿入孔5の形成数は、複数(2以上)であれば特に限定されないが、運搬の便を考慮すると、2個〜12個程度が好ましい。
本発明のマルチホルダー1は、首部とこの首部の周囲に突設された段部とを有する容器を複数纏めて保持することができる。また、容器を保持したマルチホルダー1については、把持部6を持って運搬することができる。
【0017】
前記上パネル2と下パネル3は、上下方向に所定間隔を開けて対向配置するように、連結パネル71,72を介して連結されている。このように上パネル2と下パネル3が対向配置された初期位置を基準にして、下パネル3は、上パネル2に対して、上下方向Yの軸を法線とする仮想平面F内の第1方向D1の少なくとも片側D11にスライド可能である。ただし、前記第1方向D1の片側D11は、その第1方向D1の両側D11,D12のいずれか一方側をいう。図1乃至図4は、上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態のマルチホルダー1を示している。
【0018】
前記上挿入孔4及び下挿入孔5は、上パネル2及び下パネル3の面内の一部分を切り抜いた開口部である。上挿入孔4の縁形状(換言すると、縁形状で囲われる内側に上挿入孔4が生じている)は、前記仮想平面F内の第1方向D1に拡がった平面視細長形状である。下挿入孔5の縁形状(換言すると、縁形状で囲われる内側に下挿入孔5が生じている)は、前記仮想平面F内で前記第1方向D1に対して略直交する第2方向D2に拡がった平面視細長形状である。
【0019】
前記上挿入孔4には、上孔係合部41と上孔幅狭部42とが形成されている。この上孔係合部41は、上挿入孔4の縁の一部分であって、その縁の第2方向D2における間隔が容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた部分である。上孔幅狭部42は、上挿入孔4の縁の他の部分であって、その縁の第2方向D2における間隔が上孔係合部41から第1方向D1の片側に向かって短い間隔とされた部分である。
また、前記下挿入孔5にも、同様に、下孔係合部51と下孔幅狭部52とが形成されている。この下孔係合部51は、下挿入孔5の縁の一部分であって、その縁の第1方向D1における間隔が容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた部分である。下孔幅狭部52は、下挿入孔5の縁の他の部分であって、その縁の第1方向D1における間隔が下孔係合部51から第2方向D2の両側に向かって短い間隔とされた部分である。
【0020】
本発明においては、初期位置において上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の片側D11及びそれとは反対側D12のいずれか一方側に位置ずれするように、前記上孔係合部41及び上孔幅狭部42を有する上挿入孔4と前記下孔係合部51を有する下挿入孔5が、上パネル2と下パネル3にそれぞれ形成されている。
【0021】
具体的には、ホルダー本体は、少なくとも上パネル2及び下パネル3が可撓性を有するシート材で形成されていればよい。簡単に作製できることから、ホルダー本体は、その全体が可撓性を有するシート材から形成されていることが好ましい。なお、前記可撓性を有するとは、シート材に力を加えたときに、シート材の面内の全放射方向には殆ど変形しないが、シート材の厚み方向に大きく変化する(撓む)性質を有することをいう。
前記シート材としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂製シート、金属蒸着層を有する合成樹脂製シート、厚紙、及びこれらの積層シートなどが挙げられる。
【0022】
好ましくは、シート材として、合成樹脂製シートを含むシートが用いられ、より好ましくは、合成樹脂製シート(2枚以上の合成樹脂製シートが積層された樹脂製シートを含む)が用いられる。合成樹脂製シートの材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系などが挙げられる。
【0023】
また、シート材は、透明又は非透明のいずれでもよいし、必要に応じて、その一領域又は全領域に広告などのデザイン表示が施されていてもよい。
シート材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.25mm〜2.0mm程度である。中でも、適度な剛性及び可撓性を有することから、厚み0.25mm〜1.0mm程度のポリプロピレン製シート又はポリエステル製シートを用いることが好ましい。
【0024】
上パネル2及び下パネル3の平面視形状は、特に限定されず、任意の形状に形成できる。例えば、前記上パネル2及び下パネル3は、前記第1方向D1の両側D11,D12に第1側辺21,31及び第2側辺22,32をそれぞれ有する。この上パネル2及び下パネル3の第1側辺21,31及び第2側辺22,32は、前記第2方向D2に沿って直線状に延びる、互いに対向した平行な辺である。
上パネル2及び下パネル3のその他の辺は、それぞれ直線状、円弧状、屈曲状などの任意である。
【0025】
本実施形態では、上パネル2及び下パネル3の平面視形状は、それぞれ略矩形状(図示例では、略正方形状)とされている。
上パネル2及び下パネル3の平面視形状は、異なっていてもよいが、マルチホルダー1の作製が容易である上、後述するように不使用時に扁平状に折り畳むことができ且つマルチホルダー1の面積を小さくできるので、上パネル2及び下パネル3は、略同一形状であることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、上パネル2と下パネル3は、2つの連結パネル71,72を介して連結されている(以下、第1連結パネル71及び第2連結パネル72という)。
第1連結パネル71は、上パネル2の第1側辺21と下パネル3の第1側辺31の間を連結しており、第2連結パネル72は、上パネル2の第2側辺22と下パネル3の第2側辺32の間を連結している。
上パネル2、下パネル3、第1連結パネル71及び第2連結パネル72は、それぞれの接続境界部(前記第1側辺21,31及び第2側辺22,32)において折り曲げ可能に連結されている。
【0027】
初期位置においては、図4に示すように、第1連結パネル71と上パネル2及び下パネル3とは(その各内面が)それぞれ略直角状に交わった状態となっており、同様に、第2連結パネル72と上パネル2及び下パネル3とは(その各内面が)それぞれ略直角状に交わった状態となっている。
従って、対向配置された上パネル2及び下パネル3が初期位置にあるときには、図4に示すように、マルチホルダー1を側面から見ると、中空長方形となっている。
【0028】
第1連結パネル71の幅及び第2連結パネル72の幅(第1連結パネル71の幅及び第2連結パネル72の第2方向D2における長さ)は、第1側辺21及び第2側辺22と同じである。もっとも、第1連結パネル71の幅及び第2連結パネル72の幅は、第1側辺21及び第2側辺22よりも短い又は長くてもよい。
【0029】
第1連結パネル71と第2連結パネル72の上下方向の長さは、異なっていてもよい。もっとも、上パネル2における第1側辺21から第2側辺22までの間の長さと下パネル3における第1側辺31から第2側辺32までの長さとが略同一である場合、後述するようにマルチホルダー1を扁平状に折り畳むことができるようにするために、第1連結パネル71と第2連結パネル72の上下方向の長さは、同じであることが好ましい。
本実施形態では、第1連結パネル71及び第2連結パネル72は、略同一形状である。
なお、例えば、上述のように第1連結パネル71と第2連結パネル72の上下方向の長さが異なっている場合には、第1連結パネル71及び第2連結パネルと上パネル2及び下パネル3とは、それら全ての組み合わせがそれぞれ略直角状に交わった状態とならないが、この場合には、そのうちの1つの連結パネルが上パネル2及び下パネル3の少なくとも何れか一方と略直角状に交わった状態にあるときが本発明のマルチホルダー1の初期位置となる。
【0030】
さらに、上パネル2の端部から、把持部6が延設されている。把持部6は、マルチホルダー1に複数の内容物充填済み容器を保持させた包装体を運搬する際に、手で持つために利用される。なお、持ち易くするために、把持部6の一部分に、指が入るような孔部が1又は2以上形成されていてもよい(図示せず)。
把持部6を持ってマルチホルダー1を介して充填済み容器を吊り下げたとき、下パネル3が、上パネル2に対して第1方向D1の片側D11にスライドするように、把持部6は、上パネル2の端部から延設されている。本実施形態では、第1方向D1の片側とは反対側D12における上パネル2の端部に、把持部6が延設されている。
【0031】
本実施形態では、前記把持部6は、上パネル2の第1側辺21から上方に向かって延設されている。初期位置において、把持部6の面は、上パネル2の上面に対して略直交している。把持部6の幅(把持部6の第2方向D2における長さ)は、手で持つことができる程度であれば特に限定されず、本実施形態では、把持部6の幅は、上パネル2の第1側辺21の長さと略同じである。
【0032】
ここで、各パネル2,3,71,72は、接続境界部でヒンジ作用によって折り曲げることができるので、初期位置にある上パネル2及び下パネル3の少なくともいずれか一方に力を加えると、上パネル2と下パネル3は、仮想平面F内の第1方向D1の両側D11,D12に相対的にスライド可能である。
相対的にスライド可能とは、上パネル2がスライド移動し且つ下パネル3が動かない場合、下パネル3がスライド移動し且つ上パネル2が動かない場合、上パネル2及び下パネル3が互いに相反する方向にスライド移動する場合、を含む。
なお、上パネル2及び下パネル3は、前記第1連結パネル71及び第2連結パネル72を介して上下方向Yに所定間隔を開けて連結されているので、上パネル2及び下パネル3の少なくともいずれか一方が仮想平面F内をスライド移動する際には、上下方向Yに若干平行移動する。
【0033】
具体的には、初期位置にある上パネル2に、第1方向D1の片側D11から反対側D12に向かって力を加えると、第1連結パネル71及び第2連結パネル72が前記第1方向D1の反対側D12に倒れていくと共に、下パネル3が、上パネル2に対して第1方向D1の片側D11に相対的にスライド移動し、そのスライドに伴って上方に若干平行移動する。下パネル3及び上パネル2が相対的に移動した後、上パネル2の下面と下パネル3の上面が接し、マルチホルダー1は、略扁平状となる(図5(a)参照)。
一方、初期位置にある上パネル2に、第1方向D1の反対側D12から片側D11に向かって力を加えると、第1連結パネル71及び第2連結パネル72が前記第1方向D1の反対側D12に倒れていくと共に、下パネル3が、上パネル2に対して第1方向D1の反対側D12に相対的にスライド移動し、そのスライドに伴って上方に若干平行移動する。下パネル3及び上パネル2が相対的に移動した後、上パネル2の下面と下パネル3の上面が接し、マルチホルダー1は、略扁平状となる(図5(b)参照)。
【0034】
このように上パネル2の下面と下パネル3の上面が接するように移動させることにより、マルチホルダー1を側面から見て、マルチホルダー1を略扁平状に折り畳むことができる。通常、本発明のマルチホルダー1は、不使用時に、図5(a)又は図5(b)のような略扁平状にして保管・流通に供される。
【0035】
上パネル2の面内には、複数の上挿入孔4が所定間隔を開けて形成されている。下パネル3の面内にも、前記上挿入孔4に対応した下挿入孔5が所定間隔を開けて複数形成されている。
上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態において、上パネル2の上から見て、対応する上挿入孔4と下挿入孔5は、図2及び図3に示すように、その縁形状が完全に一致していないが、上挿入孔4の開口の一部分と下挿入孔5の開口の一部分は、重なっている。
【0036】
各上挿入孔4の平面視形状は、それぞれ円形ではなく、前記第1方向D1に拡がった細長形状であり、一方、各下挿入孔5の平面視形状は、それぞれ円形ではなく、前記第2方向D2に拡がった平面視細長形状である。
好ましくは、各上挿入孔4の平面視形状は、その第1方向D1における最大開口幅が第2方向D2における最大開口幅よりも大きく、一方、各下挿入孔5の平面視形状は、その第2方向D2における最大開口幅が第1方向D1における最大開口幅よりも大きい。
【0037】
また、上挿入孔4及び下挿入孔5の各縁形状は、無端状の線からなる。すなわち、上挿入孔4及び下挿入孔5は、それぞれ上パネル2及び下パネル3の面内に、放射方向に延びる有端状の切断線などを有しない、無端状の切断線を形成することにより、開口されている。上挿入孔4及び下挿入孔5が無端状の線で形成されていることにより、容器の首部を挿入して内容物充填済み容器を吊り下げたときに、容器の自重によって上挿入孔4の縁及び下挿入孔5の縁に亀裂が生じることを防止できる上、容器の脱落を確実に防止できる。
【0038】
前記上挿入孔4は、その縁の第2方向D2における間隔が容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の直径よりも短い間隔とされた上孔係合部41と、その縁の第2方向D2における間隔が上孔係合部41から第1方向D1の片側D11及び反対側D12に向かってそれぞれ短い間隔とされた上孔幅狭部42と、を有する。
【0039】
具体的には、上孔係合部41は、上パネル2の上面から容器の段部が出るように前記下挿入孔5及び上挿入孔4に容器の首部を挿入したときに、上挿入孔4の縁が前記首部に接し又は近接し且つ容器の段部を上パネル2の上面(上挿入孔4の縁周辺における上パネル2の上面)にて下方から支持する部分である。上孔幅狭部42は、前記上孔係合部41を基準にして、そこから第1方向D1の片側D11及び第1方向D1の反対側D12に向かって間隔が短くなっていく上挿入孔4の縁部分である。従って、上孔幅狭部42は、第1方向D1の両側D11,D12にそれぞれ形成されている。もっとも、上孔幅狭部42は、第1方向D1の両側D11,D12に必ずしも形成されていなくてもよく、少なくとも第1方向D1の片側D11に形成されていればよい。
【0040】
下孔係合部51は、上パネル2の上面から容器の段部が出るように前記下挿入孔5及び上挿入孔4に容器の首部を挿入したときに、下挿入孔5の縁が前記首部に接し又は近接する部分である。下孔幅狭部52は、前記下孔係合部51を基準にして、そこから第2方向D2の片側D21及び第2方向D2の反対側D22に向かって間隔が短くなっていく下挿入孔5の縁部分である。従って、下孔幅狭部52は、第2方向D2の両側D21,D22にそれぞれ形成されている。もっとも、下孔幅狭部52は、第2方向D2の片側D21又は反対側D22のみに形成されていてもよい。或いは、下挿入孔5が、下孔幅狭部52を有しなくてもよい。なお、下孔幅狭部52を有しない下挿入孔5としては、例えば、その縁形状が平面視長方形に形成された下挿入孔などが該当する。
【0041】
本実施形態では、上挿入孔4及び下挿入孔5は、平面視略紡錘形に形成されている。なお、略紡錘形には、楕円形が含まれる。
略紡錘形の上挿入孔4は、その縁の第2方向D2における間隔が第1方向D1の中央部において最も広くなっており、この第1方向D1の中央部における縁部分が上孔係合部41に相当する。
また、略紡錘形の下挿入孔5は、その縁の第1方向D1における間隔が第2方向D2の中央部において最も広くなっており、この第2方向D2の中央部における縁部分が下孔係合部51に相当する。
図示した略紡錘形の上挿入孔4及び下挿入孔5は、同形同大であるが(ただし、向きは異なる)、若干大きさの異なる相似形であってもよい。
【0042】
上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態において、図2及び図3に示すように、各上挿入孔4の重心G4は、対応する各下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の片側D11に位置ずれしている。
好ましくは、下パネル3が上パネル2に対して第1方向D1の片側D11に相対的にスライド移動したときに、上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5上を通過するような位置に、上挿入孔4及び下挿入孔5がそれぞれ配置されている。
【0043】
上パネル2及び下パネル3が初期位置にある状態において、上挿入孔4の重心G4と下挿入孔5の重心G5のずれ長さ(上パネル2の上から見て、上挿入孔4の重心G4と下挿入孔5の重心G5との第1方向D1における間隔)は、適宜設定される。好ましくは、前記ずれ長さは、第1連結パネル71及び第2連結パネル72の上下方向Yの長さの1/4倍〜2倍である。具体的な数値では、初期位置における前記ずれ長さは、3mm以上が好ましい。前記ずれ長さが3mm未満であると、上挿入孔4と下挿入孔5をずらした効果が得られないおそれがある。また、上挿入孔5及び下挿入孔5に容器の首部を挿入し易くするためには、上挿入孔4及び下挿入孔5の開口が出来るだけ上下に重なっている部分を有することが好ましい。このような容器の首部の挿入時の便を考慮すると、初期位置における前記ずれ長さは、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。
【0044】
ここで、図6は、上記マルチホルダー1を形成するために所定形状に切り抜かれたシート材の展開平面図である。同図の二点鎖線は、折り罫線を示す。この折り罫線は、特に限定されず、例えば、シート材の厚み方向に切り込んだVノッチ線、ミシン目線などが挙げられる。
図6のシート材に付された符号は、マルチホルダー1の各部にそれぞれ対応しているため、その説明は省略する。ただし、図6の符号11は、糊代部を示す。
このシート材を、上パネル2及び下パネル3の第1側辺21,31及び第2側辺22,32において略直角状にそれぞれ折り曲げ、糊代部11を第1連結パネル71に接着剤などを介して接着することにより、上記マルチホルダー1が得られる。
【0045】
上記マルチホルダー1の使用時には、図7乃至図9に示すように、内容物充填済み容器9が装着される。
内容物充填済み容器9は、飲料などが充填されたものであり、図示した容器9は、いわゆるボトル型容器である。
容器9は、内容物を充填する胴部91と、胴部91の上方に連続した胴部よりも小径な首部92と、首部92の中途部に突設された段部93と、を有する。段部93は、首部92の直径よりも大きい直径を有する径大部である。前記段部93は、例えば、容器9の上部に装着されたキャップ部の下端部、又は、キャップ部の下方に位置し且つ首部92の周囲から径外方向に突設された鍔部(ネックリング)などから構成される。通常、首部92の外形及び段部93の外形の平面視形状は、円形である。
容器9の容量は、特に限定されず、例えば、100mL〜2L、好ましくは100mL〜1Lの容器が挙げられる。
【0046】
この容器9の首部92を、マルチホルダー1の下パネル3の下方から下挿入孔5及び上挿入孔4に挿入し、容器9の段部93を上挿入孔4より上側に出す。上述のように下挿入孔5と上挿入孔4は位置ずれしているが、容器9の首部92を下挿入孔5から上挿入孔4に挿入する際には、下パネル3及び上パネル2を撓ませながら上パネル2を下パネル3に対して第1方向D1の反対側D12にスライドさせれば、容器9の首部92を下挿入孔5及び上挿入孔4に簡単に挿入できる。同様にして、上下一対の上挿入孔4及び下挿入孔5の全てに各容器9をそれぞれ挿入することにより、図7乃至図9に示すような、本発明のマルチホルダー1に内容物充填済み容器9を複数保持させた包装体が得られる。
【0047】
上記包装体においては、図7に示すように、上パネル2及び下パネル3が第1方向D1に相対的に位置ずれし、図8及び図9に示すように、容器9の首部92が上挿入孔4の上孔係合部41及び下挿入孔5の下孔係合部51に位置することにより、容器9の段部93が上挿入孔4の縁周辺における上パネル2の上面にて下方から支持されている。
かかる包装体のマルチホルダー1の把持部6を手で持ち上げると、図10に示すように、容器9の自重により、下パネル3が上パネル2に対して更に第1方向D1の片側D11にスライドして位置ずれする。下パネル3の位置ずれにより、上挿入孔4の上孔係合部41と下パネル3の下孔係合部51が容器9の首部92に強く押圧されて密着する。
このため、マルチホルダー1の把持部6を持って複数の容器9を吊り下げて運搬したときに、容器9が脱落し難くなる。特に、その運搬時、包装体が上下に振れることによって容器9に上下の振動が加わっても、マルチホルダー1から容器9が脱落し難い。
【0048】
次に、本発明のマルチホルダーの他の実施形態を説明する。ただし、以下の他の実施形態に係るマルチホルダーの説明において、上記実施形態と同様の構成及び効果に関する説明は省略し、用語及び符号をそのまま援用する。
【0049】
上記実施形態において、上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の片側D11に位置ずれしているが、図11に示すように、上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の反対側D12(第1方向D1の片側とは反対側D12)に位置ずれしていてもよい。このように上挿入孔4の重心G4が下挿入孔5の重心G5に対して第1方向D1の反対側D12に位置ずれしたマルチホルダー1に容器を装着する場合には、下パネル3及び上パネル2を撓ませながら上パネル2を下パネル3に対して第1方向D1の片側D11にスライドさせることにより、容器の首部を下挿入孔5及び上挿入孔4に簡単に挿入できる。かかるマルチホルダー1を用いた包装体も、上記実施形態と同様に把持部6を手で持ち上げると、容器の自重により、下パネル3が上パネル2に対して第1方向D1の片側D11にスライドするので、上挿入孔4の上孔係合部41と下パネル3の下孔係合部51が容器の首部に強く押圧されて密着し、容器が脱落し難い。
【0050】
上記実施形態における上挿入孔4及び下挿入孔5の具体的な形状は、平面視略紡錘形を例示したが、上挿入孔4及び下挿入孔5の具体的な形状はこれに限定されず、例えば、図12に示すような平面視略菱形、又は、図13に示すような平面視略細長六角形などであってもよい。また、例えば、上挿入孔4を平面略紡錘形にし、下挿入孔5を平面視略菱形に形成するなどのように、それらの形状を適宜選択して、上挿入孔4と下挿入孔5を異なる形状としてもよい。
これらの場合でも、上記実施形態で説明したように、下挿入孔5については、第2方向D2に長い平面視長方形を選択することも可能である。
【0051】
さらに、上記実施形態のマルチホルダー1に、図14及び図15に示すような、上パネル2と下パネル3の上下方向の間隔を保持する間隔保持部8を設けてもよい。
間隔保持部8は、例えば、上パネル2の下面と下パネル3の上面の間に介在し、上パネル2を上方に且つ下パネル3を下方に付勢する部分である。
間隔保持部8は、上パネル2及び下パネル3の少なくともいずれか一方から延設されていることが好ましい。
【0052】
具体的には、間隔保持部8は、図15に示すように、上パネル2の第3側辺23及び第4側辺24からそれぞれ延設された上シート片81と、下パネル3の第3側辺33及び第4側辺34からそれぞれ延設された下シート片82と、からなり、各上シート片81及び下シート片82は、それぞれ上パネル2及び下パネル3に対して折り曲げ可能である。この上シート片81及び下シート片82は、上パネル2と下パネル3の間に折り曲げられ、且つ互いの端部が当接されている。上下一対の上シート片81及び下シート片82の板バネ作用によって、上パネル2が上方に付勢され且つ下パネル3が下方に付勢されるので、初期位置において対向配置された上パネル2と下パネル3の所定間隔を維持できる。
【0053】
上記実施形態において、連結パネルは、上パネル2の第1側辺21,31と下パネル3の第1側辺21,31を連結する第1連結パネル71と、上パネル2の第2側辺22,32と下パネル3の第2側辺22,32を連結する第2連結パネル72と、からなるが、これに限定されない。例えば、連結パネルが、上パネル2の第1側辺21,31と下パネル3の第1側辺21,31を連結する第1連結パネル71のみから構成されていてもよい。また、連結パネルは、上パネル2及び下パネル3の側辺(第1側辺又は第2側辺)に設ける場合に限定されず、例えば、上パネル2及び下パネル3の面内に設けることも可能である。このように連結パネルを1つ設ける場合、又は、連結パネルの1つ又は複数の連結パネルのうちの1つ又は2つ以上を上パネル2及び下パネル3の面内に設ける場合には、そのうちの1つの連結パネルが上パネル2及び下パネル3の少なくとも何れか一方と略直角状に交わった状態にあるときが初期位置となる。
【0054】
また、上記実施形態のマルチホルダー1には、上パネル2に把持部6が延設されているが、このような把持部6が延設されていなくもよい。上述のように把持部6が延設されていれば、持つための部分を大きく確保でき、運搬に便利であるが、上パネル2の端部を手で持って運搬することもできるので、必ずしも把持部6を設けなければならないわけではない。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例及び比較例によって、何ら限定されるものではない。
【0056】
[実施例]
厚み0.30mmのポリプロピン製シートを、図6に示すような形状に形成した。図6においては、実施例で使用したシート材の実物を縮尺した図示している。
このシート材の糊代部を第1連結パネルに接着剤を用いて接着することにより、図1乃至図4に示すような、実施例に係るマルチホルダーを作製した。
【0057】
この実施例のマルチホルダーの上パネル及び下パネルは、それぞれ1辺約135mmの正方形で、第1連結パネル及び第2連結パネルの上下方向の長さは、約15mmとした。
各上挿入孔及び下挿入孔は、図示したように、全て平面視略紡錘形で且つ同じ大きさとした。各上挿入孔及び下挿入孔の長手方向の最大開口幅(上挿入孔にあっては、第1方向における最大開口幅であり、下挿入孔にあっては、第2方向における最大開口幅)は、約46mm、その短手方向の最大開口幅(上挿入孔にあっては、第2方向における最大開口幅であり、下挿入孔にあっては、第1方向における最大開口幅)は、約26mmとした。また、上挿入孔の重心と下挿入孔の重心のずれ長さが約5mmとなるように、各上挿入孔及び下挿入孔を配置した。
【0058】
市販の500mLの水入りボトル型容器(いわゆるPETボトル)を4本準備し、実施例のマルチホルダーに保持させることにより、図7に示すような包装体を作製した。
なお、このボトル型容器の首部の直径は、約24mmで、段部(キャップ部の下方に位置する鍔部)の直径は、約31mmであった。
この包装体の把持部を持って吊り下げたところ、いずれの容器も脱落しなかった。さらに、この把持部を持った状態の包装体を落差30cmくらいで素早く上下に振ったところ、いずれの容器も脱落しなかった。
【0059】
[比較例1]
比較例1では、図16及び図17に示すようなマルチホルダーを作製した。
具体的には、上挿入孔及び下挿入孔が、同形同大であって、長さ約3mmの有端状の切断線が放射状に且つ均等に12本形成された直径約26mmの円形であること、並びに、初期位置においてその円形の上挿入孔及び下挿入孔を同芯状(重心を一致させた状態)に配置したこと以外は、上記実施例と同様にして、比較例1のマルチホルダーを作製した。
このマルチホルダーに、上記実施例と同様に、4本の水入りボトル型容器を保持させた後、把持部を持って吊り下げたところ、いずれの容器も脱落しなかった。さらに、この把持部を持った状態の包装体を落差10cmくらいで上下に振ったところ、一部の容器が脱落した。また、把持部を持った状態の包装体を落差30cmくらいで素早く上下に振ったところ、全ての容器が簡単に脱落してしまった。
【0060】
[比較例2]
比較例2では、図18及び図19に示すようなマルチホルダーを作製した。
具体的には、初期位置において上挿入孔の重心と下挿入孔の重心が上下に一致するように上挿入孔及び下挿入孔を配置したこと以外は、上記実施例と同様にして、比較例2のマルチホルダーを作製した。
このマルチホルダーに、上記実施例と同様に、4本の水入りボトル型容器を保持させた後、把持部を持って吊り下げたところ、いずれの容器も脱落しなかった。さらに、この把持部を持った状態の包装体を落差30cmくらいで素早く上下に振ったところ、3本の容器が脱落してしまった。
【0061】
実施例のマルチホルダーと比較例2のマルチホルダーの相違点は、重心をずらして上挿入孔及び下挿入孔を配置したか、重心を一致させて配置したかである。かかる相違点は、僅かな違いのように思えたが、その効果の違いは極めて顕著であった。このような効果の相違が出ることは、本発明者らは予測できず、驚くべき結果であった。
【符号の説明】
【0062】
1…マルチホルダー、2…上パネル、21…上パネルの第1側辺、22…上パネルの第2側辺、3…下パネル、31…下パネルの第1側辺、32…下パネルの第2側辺、4…上挿入孔、41…上孔係合部、42…上孔幅狭部、5…下挿入孔、51…下孔係合部、52…下孔幅狭部、6…把持部、71…第1連結パネル、72…第2連結パネル、F…仮想平面、D1…第1方向、D11…第1方向の片側、D12…第1方向の反対側、D2…第2方向、D21…第2方向の片側、D22…第2方向の反対側、G4…上挿入孔の重心、G5…下挿入孔の重心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する上パネルと、初期位置において前記上パネルの下方に対向配置された可撓性を有する下パネルと、前記上パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の上挿入孔と、前記上挿入孔に対応して前記下パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の下挿入孔と、を有し、
前記対応する下挿入孔及び上挿入孔に前記容器の首部を挿入し且つ前記容器の段部を前記上パネルの上面にて支持することにより、複数の容器を纏めて保持するマルチホルダーであって、
前記初期位置にある下パネルが、前記上パネルに対して、上下方向の軸を法線とする仮想平面内の第1方向の少なくとも片側にスライド可能で、
前記上挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内の第1方向に拡がった平面視細長形状であり、
前記下挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内で前記第1方向に対して略直交する第2方向に拡がった平面視細長形状であり、
前記上挿入孔は、その縁の前記第2方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた上孔係合部と、その縁の前記第2方向における間隔が前記上孔係合部から前記第1方向の片側に向かって短い間隔とされた上孔幅狭部と、を有し、
前記下挿入孔は、その縁の前記第1方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた下孔係合部を有し、
前記初期位置において、前記上挿入孔の重心が、下挿入孔の重心に対して第1方向の片側及びそれとは反対側のいずれか一方側に位置ずれしていることを特徴とするマルチホルダー。
【請求項2】
前記第1方向の片側とは反対側における上パネルの端部に、把持部が延設されている請求項1に記載のマルチホルダー。
【請求項3】
前記上パネル及び下パネルが、前記第1方向の両側に前記第2方向に沿う第1側辺及び第2側辺をそれぞれ有し、
前記初期位置において前記上パネルと下パネルが上下方向に所定間隔を開けて対向配置するように、前記上パネルの第1側辺と下パネルの第1側辺が第1連結パネルを介して連結され、且つ、前記上パネルの第2側辺と下パネルの第2側辺が第2連結パネルを介して連結されている請求項1または2に記載のマルチホルダー。
【請求項4】
前記上挿入孔の縁形状が、平面視略紡錘形、平面視略菱形又は平面視略細長六角形のいずれかである請求項1〜3のいずれか一項に記載のマルチホルダー。
【請求項5】
前記上挿入孔の縁形状と下挿入孔の縁形状が、同形同大又は相似形である請求項1〜4のいずれか一項に記載のマルチホルダー。
【請求項1】
可撓性を有する上パネルと、初期位置において前記上パネルの下方に対向配置された可撓性を有する下パネルと、前記上パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の上挿入孔と、前記上挿入孔に対応して前記下パネルに設けられ且つ容器の首部を挿入可能な複数の下挿入孔と、を有し、
前記対応する下挿入孔及び上挿入孔に前記容器の首部を挿入し且つ前記容器の段部を前記上パネルの上面にて支持することにより、複数の容器を纏めて保持するマルチホルダーであって、
前記初期位置にある下パネルが、前記上パネルに対して、上下方向の軸を法線とする仮想平面内の第1方向の少なくとも片側にスライド可能で、
前記上挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内の第1方向に拡がった平面視細長形状であり、
前記下挿入孔の縁形状が、前記仮想平面内で前記第1方向に対して略直交する第2方向に拡がった平面視細長形状であり、
前記上挿入孔は、その縁の前記第2方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた上孔係合部と、その縁の前記第2方向における間隔が前記上孔係合部から前記第1方向の片側に向かって短い間隔とされた上孔幅狭部と、を有し、
前記下挿入孔は、その縁の前記第1方向における間隔が前記容器の首部を挿入可能で且つ前記容器の段部の径よりも短い間隔とされた下孔係合部を有し、
前記初期位置において、前記上挿入孔の重心が、下挿入孔の重心に対して第1方向の片側及びそれとは反対側のいずれか一方側に位置ずれしていることを特徴とするマルチホルダー。
【請求項2】
前記第1方向の片側とは反対側における上パネルの端部に、把持部が延設されている請求項1に記載のマルチホルダー。
【請求項3】
前記上パネル及び下パネルが、前記第1方向の両側に前記第2方向に沿う第1側辺及び第2側辺をそれぞれ有し、
前記初期位置において前記上パネルと下パネルが上下方向に所定間隔を開けて対向配置するように、前記上パネルの第1側辺と下パネルの第1側辺が第1連結パネルを介して連結され、且つ、前記上パネルの第2側辺と下パネルの第2側辺が第2連結パネルを介して連結されている請求項1または2に記載のマルチホルダー。
【請求項4】
前記上挿入孔の縁形状が、平面視略紡錘形、平面視略菱形又は平面視略細長六角形のいずれかである請求項1〜3のいずれか一項に記載のマルチホルダー。
【請求項5】
前記上挿入孔の縁形状と下挿入孔の縁形状が、同形同大又は相似形である請求項1〜4のいずれか一項に記載のマルチホルダー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−136251(P2012−136251A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289568(P2010−289568)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(000202154)相互印刷紙器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(000202154)相互印刷紙器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
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