説明

マルチモニタ制御装置

【課題】省電力モードでマルチモニタシステムが動作しているときでも、ユーザが必要とする情報を確認できるようにすることができるマルチモニタ制御装置を提供する。
【解決手段】マルチモニタ制御装置は、複数のモニタ70及び72と、モニタ70及び72のうち任意のモニタを通常モードから省電力モードに切換える省電力制御装置と、あるモニタ70が通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、モニタ70に表示されている表示要素100を、他のモニタ72に表示させる表示移動装置とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は複数モニタを持つ情報処理装置に関し、特に、複数モニタに関する省電力機構の機能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、パーソナルコンピュータ(以下「PC」)の普及が進むとともに、作業の能率化を目指して複数のモニタをPCに接続することが多くなっている。特に日本では、いわゆる事務的作業における効率を改善することが求められているため、PC等に複数のモニタを接続することが当たり前になっている。モニタの値段が以前と比較して非常に安くなったこともその一因である。
【0003】
一方、いわゆる地球温暖化問題に対処するために、職場及び家庭における電力消費を削減する必要性が強調されている。近年ではこれに加え、日本における電力供給の不安定さにより、さらに節電することが要請されている。
【0004】
そこで、上記したPCのみならず、コピー機、プリンタ、ファクシミリ装置、及びこれらの機能を併せ持つ複合機等の事務機についても省電力の必要性が強調され、電力消費の節減のために様々な工夫がされている。
【0005】
複数のモニタをパソコン等に接続すれば、単独のモニタを用いる場合と比較して消費電力が大きくなることは当然である。しかし、前述したとおり、作業効率を向上させる上では、モニタの数が多いほうがいいと考える会社も多く、その結果、複数のモニタを使用しながらいかにして消費電力を削減するかが大きな問題となっている。
【0006】
こうした問題を解決するために、後掲の特許文献1には、いわゆるマルチモニタシステムにおいて、モニタの電源を制御することで消費電力を削減する技術が提案されている。
【0007】
特許文献1に開示されたシステムでは、モニタをアクティブにしておく必要がないと思われるモニタの動作モードを変更する。例えば、モニタに表示された画面にアクティブウィンドウもマウスカーソルも存在しない状態が一定時間続いたときに、そのモニタを省電力モードに遷移させる。省電力モードとしては、モニタの電源をオフしたり、モニタをいわゆるスタンバイ状態又はサスペンド状態等に設定することが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−163035号公報(要約書、段落0011〜0013、0041〜0053)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、複数のモニタを持つマルチモニタシステムでは、省電力モードになると全てのモニタが省電力モードになる。そのためユーザは装置の動作状態又は設定等に関する情報を見ることができなくなる。その点で、特許文献1に開示されたシステムでは、あるモニタの画面にアクティブなウィンドウがないか、マウスポインタがない状態が所定時間継続すると、そのモニタのみが省電力モードになる。ユーザが集中して作業しているモニタについては表示が継続される。したがって、一方では電力消費を削減しながら、ユーザの作業に与える影響を少なくできる。
【0010】
しかし特許文献1に開示された発明にも改善の余地がある。例えばマルチモニタを備えたコンピュータ等では、特許文献1に記載されたような条件が発生することも多いかもしれない。しかし、例えば複合機等では、ユーザが特に作業をしない時間が継続していることも多い。そうした場合には、結局、全てのモニタがほぼ同時に省電力モードに遷移することが予想される。しかしそれでは、特に作業はしないが、装置の状態は表示させておきたいような場合に不便である。こうした問題を解決するために、省電力モードに移行しないように装置を設定したり、省電力モードに移行するまでの時間を長くしたりすると、電力消費の削減という目的を達成することができなくなってしまう。すなわち、ユーザの操作性を維持したり、情報の確認しやすさを維持したりしながら、電力消費を削減することは難しいことであった。
【0011】
またこうした問題は、複合機、コピー機、ファクシミリ装置又はプリンタに限らず、複数のモニタを備えた装置には必ず発生する問題である。
【0012】
それゆえに本発明の目的は、通常よりも消費電力の少ない省電力モードでマルチモニタシステムが動作しているときでも、ユーザが必要とする情報を確認できるようなマルチモニタ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明ある局面に係るマルチモニタ制御装置は、複数のモニタと、これら複数のモニタのうち任意のモニタを通常モードから省電力モードに切換える省電力制御手段と、省電力制御手段により複数のモニタのうちあるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、あるモニタに表示されている表示要素を、複数のモニタのうちの他のモニタに表示させる表示移動手段とを含む。
【0014】
あるモニタが省電力モードに切換えられるときに、そのモニタに表示されていた表示要素が、表示移動手段により他のモニタに移動して表示される。あるモニタが省電力モードに切換えられ、表示されている情報が見えない状態になっても、他のモニタにその内容が表示されるので、ユーザはあるモニタが省電力モードになっても必要な情報を見ることができる。その結果、通常よりも消費電力の少ない省電力モードで動作可能で、省電力モードでマルチモニタシステムが動作しているときでも、ユーザが必要とする情報を確認できるマルチモニタシステムを提供できる。
【0015】
好ましくは、他のモニタは、ユーザによる操作入力を検知可能なタッチパネルを含む。表示移動手段は、省電力制御手段によりあるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、あるモニタに表示されている表示要素を、タッチパネルによる操作が可能な状態でタッチパネルに移動して表示させる手段を含む。
【0016】
あるモニタに表示されていた表示要素を他のモニタに移動して表示させるときにも、移動先のモニタをタッチパネルとして操作できる。その結果、ユーザの操作性を維持できる。
【0017】
より好ましくは、表示移動手段は、省電力制御手段によりあるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、あるモニタに表示されている表示要素のある部分を他のモニタに移動して表示させる手段を含む。
【0018】
表示要素のうち、ある部分(例えば他と比較して重要な部分、又は操作に必要なUI(ユーザ・インターフェイス)部品が表示されている部分等)を他のモニタに移動させ、他の部分については他のモニタに表示させないようにできる。その結果、他のモニタの表示面積を有効に活用できる。もちろん、この場合の「ある部分」は、表示要素の全体であってもよい。
【0019】
さらに好ましくは、この表示させる手段は、省電力制御手段によりあるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、あるモニタに表示されている表示要素を消去させる表示消去手段と、あるモニタに表示されていた表示要素のある部分の大きさと、他のモニタに表示されている表示要素の大きさとに基づいて、両者が互いに重ならないように両者の表示の大きさ及び表示位置を調整し、他のモニタの表示領域上に両者を表示させる手段とを含む。
【0020】
通常、上記した他のモニタには別の表示要素が表示されている。そのため、あるモニタから上記した他のモニタに表示要素を移動させると、通常は両者が重なってしまう。両者の大きさに基づいて、両者が重ならないようにその表示位置及び描画倍率を調整して表示することで、必要な情報の全体を見ることができ、省電力モードでもユーザの操作性を維持できる。
【0021】
上記したあるモニタは、ユーザによる操作入力を検知可能な第1のタッチパネルを含んでもよい。この場合、表示移動手段は、第1のタッチパネルに表示されている表示要素についての、他のモニタ方向へのフリック操作を検知する第1のフリック検知手段と、第1のフリック検知手段により他のモニタ方向へのフリック操作が検知されたことに応答して、フリック操作された表示要素を第1のタッチパネル上から消去し、他のモニタに表示する、第1のフリック移動手段とを含んでもよい。マルチモニタ制御装置はさらに、フリック操作された表示要素が第1のフリック移動手段によりタッチパネル上から消去されたことにより、タッチパネルに表示すべき情報がなくなったことに応答して、省電力制御手段を制御して、タッチパネルを省電力モードに切換える第1の切換手段を含む。
【0022】
第1のタッチパネル上に表示された表示要素を、他のモニタ方向にフリックすると、その表示要素が第1のタッチパネルから消去され、他のモニタ上に移動して表示される。さらにそうした処理により、第1のタッチパネルに何も表示要素が残っていないときには、第1のタッチパネルが省電力モードに切換えられる。タッチパネルの動作モードを省電力モードに切換える操作が、直感的でかつ簡単に行なえる。またユーザが必要とする情報(表示要素)の表示が続いて行なわれるため、ユーザの操作性も維持される。
【0023】
好ましくは、上記した他のモニタは、ユーザによる操作入力を検知可能な第2のタッチパネルを含む。マルチモニタ制御装置はさらに、第2のタッチパネルに表示されている表示要素についての、第1のタッチパネル方向へのフリック操作を検知する第2のフリック検知手段と、第2のフリック検知手段により第1のタッチパネル方向へのフリック操作が検知されたことに応答して、当該フリック操作の対象である表示要素を第1のタッチパネルに表示する、第2のフリック移動手段と、第1のタッチパネルが省電力モードにあるときに、第2のフリック移動手段により第1のタッチパネル上に表示要素が表示されることに応答して、省電力制御手段を制御して、第1のタッチパネルを通常モードに遷移させる第2の切換手段とを含む。
【0024】
省電力モードへの移行の際のフリック操作とは逆の方向へのフリック操作により、第1のタッチパネルを省電力モードから通常モードに遷移させることができる。そのための操作が直感的で簡単であるという効果が得られる。
【0025】
より好ましくは、マルチモニタ制御装置は、第2のフリック検知手段により第1のタッチパネル方向へのフリック操作が検知されたことに応答して、当該フリック操作の対象である表示要素を第2のタッチパネルの表示から消去する消去手段をさらに含む。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によれば、通常よりも消費電力の少ない省電力モードで動作可能で、省電力モードでマルチモニタシステムが動作しているときでも、ユーザが必要とする情報を確認できるマルチモニタ制御装置を提供できる。またあるモニタを省電力モードにしたり、省電力モードから復帰させたりするための動作が直感的で分かりやすいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマルチモニタ制御装置を採用した複合機の外観図である。
【図2】図1に示す複合機の2つのパネルの通常の表示形態を示す模式図である。
【図3】図1に示す複合機の2つのパネルのうち、第1パネルが省電力モードとなったときの第2パネルの表示形態を示す模式図である。
【図4】図1に示す複合機の2つのパネルのうち、第1パネルが省電力モードとなったときの、簡易表示による第2パネルの表示形態を示す模式図である。
【図5】図1に示す複合機のハードウェアブロック図である。
【図6】図1に示す複合機において、図2〜図4に示すような省電力時の表示形態を実現するためのプログラムのフローチャートである。
【図7】図6に示すプログラムのうち、ユーザのフリック操作により第1パネルを通常モードから省電力モードに遷移させるためのルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図6に示すプログラムのうち、ユーザのフリック操作により第1パネルを省電力モードから通常モードに遷移させるためのルーチンを示すフローチャートである。
【図9】図1に示す複合機において、第1パネルに対する操作がされることなく所定時間が経過して第1パネルが省電力モードに遷移したときに複合機内の制御部により実行されるプログラムのフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る複合機において、第1パネルが省電力モードとなったときの第2パネルの表示態様を示す模式図である。
【図11】第2の実施の形態に係る複合機において、第1パネルが省電力モードとなったときの、簡易表示による第2パネルの表示態様を示す模式図である。
【図12】図10及び図11に示す表示形態を実現するためのプログラムのフローチャートである。
【図13】第2の実施の形態に係る複合機において、ユーザのフリック操作により第1パネルを省電力モードから通常モードに遷移させるためのルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0029】
<第1の実施の形態>
[構成]
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るマルチモニタ制御装置を採用した複合機40は、ほぼ直方体形状で下部に4つのキャスターを持つ筐体50と、筐体50の上面に配置された、ADF(Auto Document Feeder)を持つスキャナ部52と、スキャナ部52の前部に配置された操作パネル部54と、筐体50の内部に配置され、所定の記録媒体(多くの場合には記録紙)の表面に画像を形成するための画像形成部62と、筐体50の側面に設けられた、画像が形成された記録媒体を受けるための複数の排出トレイ64と、筐体50の底部に配置された給紙トレイ及び筐体50の側面に配置された給紙トレイ66から記録媒体を画像形成部62に供給し、画像が形成された記録媒体を排出トレイ64まで搬送するための給紙部60とを含む。
【0030】
操作パネル部54は2つのモニタ、すなわち第1パネル70及び第2パネル72を含む。本実施の形態では第1パネル70及び第1パネル70はいずれもタッチパネルである。
【0031】
複合機40の内部構成については図5を参照して後述することとし、この第1の実施の形態において第1パネル70及び第2パネル72がどのように利用され、これらに画像がどのように表示されるかについて図2〜図4を参照して説明する。なお、この複合機40は、省電力に関連した動作モードとして、第1パネル70及び第2パネル72の双方ともオンしている通常モードと、第1パネル70がオフし、第2パネル72のみがオンしている第1段階省電力モードと、第1パネル70及び第2パネル72の双方がオフしている第2段階省電力モードとがあるものとする。さらに、通常モードから第1段階省電力モードへ、第1段階省電力モードから第2段階省電力モードへ、というように2段階で省電力モードが変化するものとする。すなわち、通常モードから、第1パネル70及び第2パネル72がともにオフした第2段階省電力モードに直接遷移することはない。逆に、第2段階省電力モードから第1段階省電力モード、及び第1段階省電力モードから通常モード、というように、省電力モードの解除の際にも動作モードは段階的に遷移するものとする。
【0032】
図2を参照して、第1パネル70は、操作パネル部54の中央からやや左寄りに配置されている。操作パネル部54の右側にはテンキー90が設けられている。テンキー90のさらに右側には種々の機能キー92が設けられている。もちろん、図2に示すキー配置は一例であって、第1パネル70及びキーの配置がこれに限られるわけではない。なお、図2においては、第1パネル70及び第2パネル72の表示を分かりやすく対比するため、第2パネル72を操作パネル部54のすぐ上に配置して示してある。
【0033】
通常モードでは、図2に示すように、第1パネル70には複合機40を操作するための操作画面が表示されている。図2に示すのはコピーのための基本画面である。前述したように、複合機40は、コピー機としてだけでなくファクシミリ装置、プリンタ、及びスキャナとしても動作する。それらの機能を選択するための基本となるホーム画面が図2に示すものとは別に存在し、通常は第1パネル70に表示されている。図2に示すのは、ホーム画面において「コピー」という機能が選択されたときに表示されるコピー基本画面である。
【0034】
図2に示す例では、第2パネル72には、操作画面とは別の画面が表示されている。複合機40が例えばコンビニエンス・ストアに配置される場合には、第2パネル72には例えば広告が表示されたり、店からのお知らせ情報が表示されたりする。第2パネル72に、スキャナ部52により読取った画像のプレビューを表示してもよい。
【0035】
第1段階省電力モードでは、例えば図3に示すように、省電力のために第1パネル70がオフされる。特許文献1に記載の技術であれば第1パネル70がオフされるだけであるが、本実施の形態では、通常モードで第1パネル70に表示されていたものと同じ操作画面が第2パネル72に表示される。本実施の形態ではこの際、操作画面を第1パネル70に表示されていたものと同じ形(通常の形)で表示するか、それよりも簡略化したものを表示するかをユーザが選択できる。図3には通常の形の操作画面100を、図4には簡略化した操作画面110を、それぞれ第2パネル72の画像に重畳して表示している。図4に示す操作画面110は、図3に示す操作画面100のうち、ユーザが複合機40を操作する上で特に重要と思われる要素のみを取出して表示している。操作画面110をどのような形にするかは予め操作画面100との対で決められ、操作画面100を生成するための基本画面情報とともに、後述する記憶部に簡易画面情報として記憶されている。
【0036】
なお、本実施の形態では、通常モードから第1段階省電力モードへの遷移には、2種類のトリガーが用意されている。1つめは、図2に示す操作パネル部54に対してユーザによる操作がされることなく所定時間が経過したときである。2つめは、第1パネル70上に表示されている基本画面を、ユーザが第2パネル72に向けて指で軽く払う動作(このように、指で画面を軽く払う動作を、本明細書では「フリック」と呼ぶ。)を行なったときである。第1段階省電力モードから第2段階省電力モードへの遷移は、第1段階省電力モードにおいて何らユーザの操作がされることなく所定時間が経過したときに起こる。
【0037】
逆に、第2段階省電力モードから第1段階省電力モードへの復帰は、第2段階省電力モードにおいてユーザが操作パネル部54に対して何らかの操作を行なうか、第2パネル72に触れたときに行なわれる。第1段階省電力モードから通常モードへの復帰は、第1段階省電力モードでユーザがキーに対して何らかの操作を行なったか、第2パネル72に表示されている操作画面100又は操作画面110を第1パネル70の方向にフリックしたときに行なわれる。
【0038】
図5を参照して、複合機40は、前述したスキャナ部52、給紙部60、画像形成部62、及び操作パネル部54に加え、これらが接続されたバス120と、バス120に接続され、複合機40の各部を所定のプログラムによって制御するための、実質的にはコンピュータからなる制御部122と、バス120に接続され、制御部122の制御の下、公衆電話回線(図示せず)を介して他のファクシミリ装置とファクシミリの送受信を行なうためのファクス通信部124と、バス120に接続され、図示しないルータ及びLAN(ローカルエリアネットワーク)を介してインターネット126に接続するネットワークインターフェイス(ネットワークI/F)128と、バス120に接続され、制御部122からの制御と、操作パネル部54からの出力とにしたがい、操作パネル部54内の第1パネル70及び第2パネル72の電源を制御するためのモニタ電源制御部132と、バス120に接続され、第1パネル70及び第2パネル72の電源の省電力制御を行なうために制御部122が実行するプログラム、並びに、第1段階省電力モードの際に、第2パネル72に表示される基本画面及び簡易表示画面のためのデータを記憶する、ハードディスク等からなる不揮発性の記憶部134とを含む。
【0039】
前述したとおり、制御部122は実質的にはコンピュータであって、図示しないCPU(中央演算処理装置。図示せず。)、CPUが実行するプログラムと、その他の変数等とを格納するRAM(Random Access Memory。図示せず。単に「メモリ」と呼ぶ。)、複合機40の電源投入時にCPUが最初に実行するブートアッププログラムと、複合機40の各部をテストしたり初期化したりするためのプログラムとを記憶するROM(Read−Only Memory。図示せず。)、並びに、操作パネル部54及びバス120との入出力処理を行なうための入出力装置(図示せず)とを含んでいる。
【0040】
複合機40の省電力動作モードを実現するためのプログラム等は、実行時に記憶部134から読出され、制御部122内のメモリにロードされて実行される。
【0041】
[プログラム構成]
図6を参照して、複合機40の省電力モードを実現するためのプログラムは、起動後、最初に複合機40の各部の初期設定を行なうステップ150と、省電力モードに関する設定及びその他の種々の設定に関する情報を記憶部134から読出し、メモリに格納するステップ152と、第1パネル70及び第2パネル72に表示すべき初期画面を記憶部134から読出し、メモリに格納するステップ154とを含む。
【0042】
このプログラムはさらに、メモリに格納された画面に関する情報に基づき、第1パネル70の描画内容を第1パネル70のための、メモリ内の描画領域に描画するステップ156と、第2パネル72の描画内容を第2パネル72のための描画領域に描画するステップ158とを含む。これら描画領域に描画された情報(画像)は、所定間隔で図示しないモニタ制御部により読出され、それぞれ第1パネル70及び第2パネル72に表示される。ただし、モニタの電源がオフしている場合には、描画領域に描画がされても当然のことながらモニタには表示されない。
【0043】
このプログラムはさらに、ユーザが何らかの操作をするまで待機するステップ160と、ユーザが何らかの操作を行なった場合、その操作がフリックか否かを判定して制御の流れを分岐させるステップ162と、操作がフリックであるときに、さらにそのフリックの方向が第1パネル70から第2パネル72への方向か否かを判定し、結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ164とを含む。ここで、第1パネル70から第2パネル72への方向か否かの判定は、第1パネル70と第2パネル72との位置関係から定められるものであって、システム構成により異なってくる。多くの場合、第1パネル70の中心点から第2パネル72への中心点に向かう線分を想定し、その線分を中心とする所定角度(例えば60度)をなす扇型内でフリック操作がされた場合に第1パネル70から第2パネル72の方向へのフリック操作がされたと判定すればよい。もちろん、この角度は第1パネル70と第2パネル72との大きさの相違に依存して変化するものであり、上記した60度に限定されるものではない。後述するように第2パネル72から第1パネル70の方向へのフリックを判定するときも同様である。
【0044】
ステップ162の判定がNOの場合、すなわち検知された操作がフリック以外の場合には制御はステップ180に進む。ステップ180は、図6では1つのボックスとして描いてあるが、実際には、検知された操作に応じて種々の処理が行なわれる。図6では図を簡略化し、説明を明瞭にするために、ステップ180を単なる1つのボックスとして記載してあることに注意されたい。ステップ180でユーザの操作に対する処理を行なった後、制御はステップ156に戻る。
【0045】
ステップ164の判定がYESの場合、ステップ166でさらに、第1パネル70を省電力モードに遷移させる条件が整ったか否かを判定して制御を分岐させるステップ166を含む。ここで、本実施の形態で第1パネル70から第2パネル72の方向にユーザがフリックをしたときのこの装置の機能について説明する。すなわち、本実施の形態では、こうした操作をした場合には、フリックがされた位置(指が最初に触れた位置)に表示されていた表示要素が第1パネル70から第2パネル72に移動することになる。その結果、第1パネル70に何も表示されないことになれば、第1パネル70を省電力モードに遷移させる。フリックされた表示要素を第2パネルに移動させてもまだ第1パネル70に何かが表示されているのであれば、第1パネル70は省電力モードには遷移させない。なお、ここでいう「表示要素」としては様々なものが考えられる。画面全体の場合もあるし、画面の一部を構成するUI部品である場合もある。いわゆるウィンドウである場合もあるし、1つのウィンドウ内のタブである場合もあるし、プログラムの実行中に開かれるダイアログ画面である場合もあり得る。いずれにせよ、表示要素は、1つのまとまりとして操作の対象、又は監視の対象となるようなUI部品である。
【0046】
したがって、ステップ166では、上記したような条件にしたがって、第1パネル70を省電力モードに遷移させるべきか否かが判定される。判定がYESならステップ168で第1パネル70を省電力モードに遷移させるよう、モニタ電源制御部132に対して指示する。
【0047】
その後、第1パネル70を省電力モードに遷移させる場合もそうでない場合も、フリックされた表示要素を第2パネル72に移動させる処理を行なう。すなわち、フリックされた要素を第1パネル70上に表示されるべき描画領域から消去し、第2パネル72に表示させる。制御はステップ156に戻る。
【0048】
ステップ164でフリックの方向が第1パネル70から第2パネル72への方向ではないと判定された場合には、制御はステップ172に進み、フリックの方向がその逆、すなわち第2パネル72から第1パネル70への方向か否かを判定する。本実施の形態では、第1パネル70が省電力モードであるときにこのような操作がされた場合には、第1パネル70を省電力モードから通常モードに遷移させてから、フリックされた表示要素を第2パネル72から第1パネル70に移動させる。以下に述べるステップ174〜178でそのための処理を行なう。一方、ステップ172の判定がNOであれば、制御はステップ180に進み、フリックの方向に応じて予め定められた処理が実行される。もちろん、そうした処理が定められていなければステップ180では何もされない。
【0049】
ステップ172で、フリックの方向が第2パネル72から第1パネル70への方向であると判定された場合、ステップ174において、第2パネル72の表示要素のうち、フリックされた位置にあった表示要素を第1パネル70に移動させる処理が行なわれる。より具体的には、第2パネル72の描画領域に描画されていた表示要素が、第2パネル72の描画領域からクリアされ、第1パネル70のための描画領域に描画されるように出力先が変更される。
【0050】
続くステップ176で、第1パネル70が省電力モードか否かが判定される。判定がNOなら何もせず制御はステップ156に戻る。この結果、所定時間後に第1パネル70のための描画領域に描画された画像が第1パネル70のためのモニタ制御部(図示せず)により読出され、第1パネル70に表示される。一方、第2パネル72のための描画領域に描画された画像が第2パネル72のためのモニタ制御部(図示せず)により読出され、第2パネル72上に表示される。この描画領域からは、ユーザによりフリックされた表示要素はクリアされているので、これ以後、第2パネル72にはその表示要素は表示されない。
【0051】
ステップ176の判定がYESである場合、ステップ178で第1パネル70を通常モードに戻す。具体的には、制御部122は、モニタ電源制御部132に対して第1パネル70の電源をオンするように指示を出し、モニタ電源制御部132がその指示に応答して第1パネル70をオンさせ、第1パネル70のためのモニタ制御部への電源供給を開始する。その結果、それまで省電力モードだった第1パネル70に、ユーザがフリックした表示要素が表示される。制御はこの後、ステップ156に戻る。
【0052】
図7を参照して、図6のステップ170では、最初に、複合機40の設定情報中の、第1パネル70に表示されていた表示要素に関する簡易表示フラグがオンか否か(セットされているかリセットされているか)に応じて制御の流れが分岐される。簡易表示フラグがオンの場合には、ステップ202において、第1パネル70の表示用ルーチンのうち、指定された表示要素の表示ルーチンに対し、指定された表示要素の表示に簡易表示画面を使用して、第2パネル72のための描画領域に描画するように設定をする。具体的には、ルーチンが使用する表示オブジェクトを簡易表示画面用のオブジェクトに置換える。さらに、この表示要素の表示位置及び表示の倍率を調整し、調整後の表示位置(描画領域のアドレス)を、予め定められていた値(第2パネル72のための描画領域内で、簡易表示画面用に予め定められていた位置)に設定する。続くステップ204で、第2パネル72の描画領域のうち、第1パネル表示用ルーチンにより簡易表示用画面が表示される位置にマスクを設定し、この位置にはそれまで第2パネル72に表示されていた画像が描画されないようにする。ステップ204の後、制御は親ルーチン(図6のステップ170の末尾)に戻る。なお、表示位置及び描画倍率については固定しておくこともできるし、第2パネル72に表示されている表示要素ごとに、第1パネル70から移動する表示要素の表示位置及び描画倍率を変化させ、調整することもできる。
【0053】
一方、ステップ200の判定が否定の場合には、ステップ206及び208において、それぞれ上記ステップ202及び204と同様の処理を通常表示用画面を用いて行なう。すなわち、ステップ206において、第1パネル70の表示用ルーチンのうち、指定された表示要素の表示ルーチンに対し、指定された表示要素の表示に通常表示画面を使用して、第2パネル72のための描画領域に描画するように設定をする。具体的には、ルーチンが使用する表示オブジェクトを通常表示画面用のオブジェクトに置換える。さらに、この表示要素の表示位置(描画領域のアドレス)を、予め定められていた値(第2パネル72のための描画領域内で、通常表示画面用に予め定められていた位置)に設定する。続くステップ208で、第2パネル72の描画領域のうち、第1パネル表示用ルーチンにより通常表示用画面が表示される位置にマスクを設定し、この位置にはそれまで第2パネル72に表示されていた画像が描画されないようにする。ステップ208の後、制御は親ルーチン(図6のステップ170の末尾)に戻る。
【0054】
図8を参照して、図6のステップ174は、第1パネル表示用ルーチンに、通常表示用画面を使用して、第1パネル70のための描画領域に表示要素を描画するように設定する。具体的には、ルーチンが使用する表示オブジェクトを通常表示画面用のオブジェクトに置換える。さらに、この表示要素の表示位置(描画領域のアドレス)を、第1パネル70のための描画領域内で、通常表示画面用に予め定められていた位置に設定する。この後、ステップ222で、第2パネル72の表示用描画領域に対し、それまで第1パネル70の表示用ルーチンが描画していた領域に関して設定されていたマスクを削除する。この後、制御は親ルーチンに戻る。
【0055】
以上に説明したのは、ユーザが第1パネル70又は第2パネル72に表示されている表示要素をフリックしたときに、第1パネル70を省電力モードにするか否かに関する機構である。これらとは別に、通常モードにおいてユーザが複合機40を操作しないで所定時間が経過すると、第1パネル70が省電力モードになる。このときの第1パネル70の電力制御は制御部122とは別にモニタ電源制御部132が単独で実行する。このとき、モニタ電源制御部132は、第1パネル70が省電力モードになったことを示す割込信号を制御部122に対して与えるものとする。制御部122は、この割込信号に応答して、図9に制御構造を示すプログラムを実行し、第1パネル70に表示されていた表示要素を第2パネル72に移動させる。
【0056】
図9を参照して、このルーチンでは、第1パネル70に出力されていた全ての表示要素の出力先を、第2パネル72のための描画領域に変更する処理が行なわれる。この処理の内容は、図6のステップ170で行なわれる処理(図7に示す処理)と同じである。
【0057】
なお、この実施の形態のように割込により出力先を切替える場合、描画領域を定める変数は、メモリではなくハードディスク等、割込発生時にもそのアドレスが変化しない記憶装置内に格納しておくことが望ましい。
【0058】
[動作]
複合機40は以下のように動作する。以下の説明では、既に複合機40の電源が投入され、第1パネル70及び第2パネル72が、図2に示すような状態にあるものとする。図6のプログラムでは、ステップ150〜ステップ158までが完了していることになる。
【0059】
(1)通常モードでユーザが第1パネル70を第2パネル72側にフリックしたとき
この場合、図6のプログラムでは、ステップ160,162,164及びステップ166の経路をたどる。ステップ166で、第1パネル70に表示されている表示要素を第2パネル72に移動させると第1パネル70に何も表示されないことになるか否かが判定される。ステップ166の判定がYESの場合、ステップ168の処理が実行される。すなわち、制御部122はモニタ電源制御部132に対して第1パネル70を省電力モードに遷移させるように指示を出す。この結果、複合機40は、第1段階省電力モードになる。次に、ステップ170で第1パネル70に表示されていた表示要素のうち、ユーザにフリックされたものを第2パネル72に移動して表示させる。ここで、この表示要素に対して準備された簡易表示フラグがオンか否かにより、ステップ170での処理が異なってくる。
【0060】
(1A)簡易表示フラグがオフの場合
この場合、ステップ170での処理として、図7のステップ200、206及び208の経路の処理が実行される。すなわち、ステップ200でNOと判定される。ステップ206で、第1パネル70の表示要素の表示ルーチンに対し、この表示要素の表示に通常表示画面を用い、かつこの通常表示画面の画像を第2パネル72用の描画領域に描画するように設定を行なう。ステップ208で、第2パネル72用の描画領域内で、第1パネル70から移動される表示要素の通常表示用画面の表示位置にマスクを設定する。この後、親ルーチンに制御を戻す。
【0061】
(1B)簡易表示フラグがオンの場合
この場合、図7のステップ200,202及び204の経路の処理が実行される。すなわち、すなわち、ステップ200でYESと判定される。ステップ202で、第1パネル70の表示要素の表示ルーチンに対し、この表示要素の表示に簡易表示画面を用い、かつこの簡易表示画面の画像を第2パネル72用の描画領域に描画するように設定を行なう。ステップ208で、第2パネル72用の描画領域内で、第1パネル70から移動される表示要素の簡易表示用画面の表示位置にマスクを設定する。この後、親ルーチンに制御を戻す。
【0062】
上記(1A)及び(1B)のいずれの場合も、ステップ170の後、制御はステップ156に戻り、第1パネル用の画像と第2パネル用の画像とがそれぞれの描画領域に描画される。これらのうち、第1パネル用の画像は、第1パネル70が省電力モードになっているため、第1パネル70に表示されることはなく、第2パネル用の画像のみが第2パネル72に表示される。この後、ステップ160でユーザの入力待ちになる。
【0063】
この結果、第1パネル70及び第2パネル72の状態は、簡易表示フラグがオフのときは図3に示すようになり、簡易表示フラグがオンのときには図4に示すようになる。
【0064】
(2)通常モードでユーザが第2パネル72から第1パネル70にフリックした場合
この場合、図6のルーチンではステップ160,162,164、及びステップ172の経路の処理が実行される。ステップ172の判定はYESとなり、ステップ174で第2パネル72に表示されている表示要素が、第1パネル70に移動して表示される。具体的には、図8を参照して、ステップ220で第1パネル70に描画されるべき表示要素の表示用ルーチンに対し、通常表示画面を使用して第1パネル70に画面を描画するように設定をする。ステップ222において、第1パネル70に移動された表示要素のためのマスクを第2パネル72用の描画領域から削除する。この後、制御は図6のステップ176に進む。
【0065】
ステップ176では、第1パネル70が省電力モードか否かが判定される。ここでは第1パネル70が通常モードになっているため、判定はNOとなり、制御はステップ156に戻る。ステップ156及びステップ158の処理により、ユーザによりフリックされた表示要素が第1パネル70に表示される。第2パネル72の表示からは、この表示要素が消去される。
【0066】
(3)通常モードで、ユーザの操作がない状態が所定時間継続した場合
この場合には、図6に示すルーチンとは別に、モニタ電源制御部132が上記条件を検出し、第1パネル70を省電力モードに遷移させる。同時にモニタ電源制御部132は、制御部122に対して第1パネル70が省電力モードに遷移したことを示す割込信号を与える。これに応答して、制御部122は、図9に示すプログラムを起動する。
【0067】
図9に示すプログラムでは、ステップ230で、それまで第1パネル70に表示されていた表示要素を全て第2パネル72に移動させる。具体的には、個々の表示要素について図7に示した処理を実行する。この処理により、第1パネル70の全画面が第2パネル72に移動する。第1パネル70及び第2パネル72の状態は、簡易表示フラグがオフのときは図3に示すようになり、簡易表示フラグがオンのときには図4に示すようになる。
【0068】
(4)第1段階省電力モードで表示要素が第2パネル72から第1パネル70にフリックされた場合
この場合の動作は、ステップ176の判定がYESとなることを除き、上記(2)と同じである。ステップ176の判定がYESとなると、制御部122はモニタ電源制御部132に対して、第1パネル70を通常モードに復帰させるように指示を出す。第1パネル70は通常モードに復帰し、第1パネル70用の描画領域に描画された画面が第1パネル70上に表示される。この結果、第1パネル70及び第2パネル72の状態は、図3又は図4に示すようなものから、図2に示すようなものに変化する。この後、複合機40はユーザの入力待ちとなる(ステップ160)。
【0069】
(5)第1段階省電力モードで、ユーザの操作がない状態が所定時間継続した場合
この場合には、図6に示すプログラムとは独立に、モニタ電源制御部132が上記条件の成立を検知し、第2パネル72を省電力モードに遷移させる。この結果、第1パネル70及び第2パネル72には何も表示されない状態となる。すなわち、複合機40は第2段階省電力モードとなる。ただしこの場合も、第2パネル72用の描画領域には、表示される画面が常に書込まれている。第2パネル72のモニタ制御回路の電源がオフしているため、描画領域にデータが書込まれても第2パネル72には表示されないだけである。
【0070】
(6)第2段階省電力モードでユーザの操作があったとき
複合機40が第2段階省電力モードであるときに何らかのユーザ操作があると、モニタ電源制御部132はそれを検知し、第2パネル72を省電力モードから通常モードに遷移させる。第2パネル72用の描画領域には、第2段階省電力モードでも画像は書込まれているため、第2パネル72が通常モードに復帰すると共に第2パネル72の表示が再開される。
【0071】
(7)第1段階省電力モードで、ユーザ操作が検知された場合
この場合、モニタ電源制御部132は第1パネル70を省電力モードから通常モードに復帰させる。本実施の形態では、この場合には第1パネル70及び第2パネル72の表示は何ら変更しない。単に第1パネル70が活性化されるだけである。
【0072】
以上のとおり、この第1の実施の形態に係る複合機40によれば、2つのパネルを持つ複合機40において、省電力モードを複数段階とすることができる。第1段階省電力モードでは、通常モードから省電力モードに遷移されたパネルに表示されていた表示要素が第2パネル72に移動される。その結果、消費電力を抑えながら、必要な情報をパネルに表示し続けることが可能になる。
【0073】
簡易表示フラグにより、第2パネル72に移動された表示要素について簡易表示にするか、通常表示にするかを選択できる。その結果、第1パネル70の表示と第2パネル72の表示との重要度に応じ、省電力モードでの表示態様をユーザにとってもっとも有効な内容に設定できる。ただし、このような選択は追加的な機能であって、こうした機能を設けず、例えば常に通常表示を用いたり、第2パネル72では常に簡易表示を用いたりするようにしてもよい。
【0074】
<第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態では、例えば図3及び図4に示されるように、それまで第1パネル70に表示されていた表示要素を、第2パネル72の表示要素に重畳して表示している。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、両者をまとめた1つの画面を作って第2パネル72に表示したり、第2パネル72の表示領域を分割して、第1パネル70に表示されていた表示要素が第2パネル72の表示要素と重ならないように表示したりしてもよい。以下に説明する第2の実施の形態に係る複合機は、後者の方法で、第1段階省電力モードでは第2パネル72の表示領域を分割して表示するものである。
【0075】
この実施の形態では、第1段階省電力モードでは、図10に示されるように、第2パネル72の表示領域を分割位置240で左右の2つの領域に分割し、左側領域には第1パネル70に表示されていた表示要素である操作画面242を、右側領域には第2パネル72に表示されていた表示要素である操作画面244を、それぞれ表示する。どのような比率で第2パネル72を分割するかは、予め操作画面242と操作画面244との組合せによって決めておいてもよいし、表示要素の組合せにかかわらず、常に一定の比率(例えば1:1、1:2等)で分割するようにしてもよい。この場合、表示要素を縮小して第2パネル72用の描画領域に描画する必要がある。
【0076】
図11に示すように、例えば第1パネル70から第2パネル72に表示要素を移動する際に、簡易表示のための操作画面252のような横長の表示要素を用いる場合もある。この場合には、第2パネル72の表示領域を分割位置250で上限に2分し、一方には操作画面252を、他方にはそれまで第2パネル72に表示されていた表示要素である操作画面254を表示することも可能である。
【0077】
第2パネル72を横方向に分割するか、縦方向に分割するか、それらの分割比率をどのようにするかはいずれも設計事項に属する。たとえば第2パネル72に表示される表示要素の縦方向の大きさがある比率以上に異なっている場合には上下に分割し、そうでない場合には左右に分割する、という方法で分割方向を決めてもよい。この場合、比率は双方の縦又は横の寸法により調整できる。
【0078】
図12に、この第2の実施の形態の複合機において、第1パネル70に表示されていた表示要素を第2パネル72に移動するためのルーチンを示す。この処理は、図6のステップ170に相当する処理であり、図7に示すルーチンと置換えることができる。
【0079】
図12を参照して、このルーチンは、簡易表示フラグがオンか否かにより制御の流れを分岐させるステップ270と、簡易表示フラグがオンのときに実行されるステップ272及び274と、簡易表示フラグがオフのときに実行されるステップ278及び280と、ステップ274又は280の後に実行されるステップ276とを含む。
【0080】
ステップ272では、第2パネル72に表示される表示要素の大きさに応じて、第2パネル72用の描画領域を上下又は左右に分割する。この分割の際の比率の計算には、第1パネル70に表示されていた表示要素の簡易表示画面の大きさが使用される。
【0081】
ステップ274では、第1パネル70の表示要素の描画ルーチンを、その表示要素の簡易表示画面を使用するように設定する。
【0082】
続いてステップ276では第1パネル70に表示されていた表示要素のための描画ルーチンと、第2パネル72に表示されていた表示要素のための描画ルーチンとについて、その描画領域の位置に、それぞれステップ272で分割された領域を示す値を書込んでこのルーチンから復帰する。
【0083】
一方、簡易表示がオフの場合には、ステップ278では、第2パネル72に表示される表示要素の大きさに応じて、第2パネル72用の描画領域を上下又は左右に分割する。この分割の際の比率の計算には、第1パネル70に表示されていた表示要素の通常表示画面の大きさが使用される。
【0084】
ステップ280では、第1パネル70の表示要素の描画ルーチンを、その表示要素の通常表示画面を使用するように設定し、前述したステップ276に制御を進める。
【0085】
以上の処理を図6のステップ170に代えて行なうことにより、第1パネル70から第2パネル72に表示要素がフリックされたときのこの第2の実施の形態の機能を実現できる。
【0086】
一方、第2パネル72から第1パネル70へのフリック操作があったときには、図6のステップ174に代えて、第1パネル70及び第2パネル72の表示を通常の表示に変える処理が行なわれる。具体的には、図13に示すような処理を行なう。このルーチンは、第1パネル70に移動される表示要素の描画ルーチンについて、通常表示画面を用いるように設定するステップ282と、第1パネル70及び第2パネル72に表示される表示要素の各々について、その描画ルーチンの描画位置及び描画倍率に、それぞれ第1パネル70及び第2パネル72に対応した初期値を書込んで親ルーチンに制御を復帰させるステップ284とを含む。
【0087】
この第2の実施の形態では、ユーザが第1パネル70に表示されている表示要素を第2パネル72に向けてフリックし、それにより第1パネル70に表示される要素がなくなるときには(図6のステップ166でYES)、図12のステップ270が実行される。
【0088】
簡易表示フラグがオンであれば、ステップ272で第2パネル72をどのように分割するかが第1パネル70から第2パネル72に移動させられる表示要素の簡易表示画面の大きさを用いて決定される。ステップ274で、第1パネル70から第2パネル72に移動させられる表示要素の描画ルーチンが、簡易表示画面を用いるよう設定される。ステップ276で、第1パネル70及び第2パネル72の表示要素の各々に対し、第2パネル72用の描画領域のうち、ステップ272で決定された比率にしたがった描画領域に画像を書込むように、描画位置及び描画倍率が設定される。その結果、この後に図6のステップ158が実行されることにより、それまで第1パネル70に表示されていたものと第2パネル72に表示されていたものとが、第2パネル72を分割した形で第2パネル72に表示される。
【0089】
簡易表示フラグがオフの場合も複合機の動作は同様である。簡易表示フラグがオンのときと異なる事項の1番目は、ステップ206における第2パネル72の描画領域の分割の計算に、第1パネル70から第2パネル72に移動される表示要素の通常表示画面が用いられる点である。2番目は、ステップ208及び210において、その表示要素の表示用ルーチンについて、通常表示画面を用いるような設定が行なわれる点である。
【0090】
以上のようにこの第2の実施の形態によれば、第1省電力モードでは第2パネル72の表示領域が分割され、それら表示領域に、互いに重ならないように表示要素が表示される。したがって、第2パネル72に表示されていた表示要素を用いた操作を行なう場合にも支障はない。通常表示を用いた場合には、情報が全て継続して表示されることになるため、ユーザがわざわざ複合機の第1段階省電力モードを解除させる必要はない。
【0091】
なお、第1及び第2の実施の形態では、いずれも簡易表示フラグを用いて通常画面と簡易表示画面とを切替えている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば第1パネル70から第2パネル72に表示要素を移動させるときには常に元のままの表示とすることもできるし、簡易表示画面があれば必ず簡易表示画面を用いるようにすることもできる。
【0092】
また上記実施の形態では、ユーザが第1パネル70から第2パネル72に向けてフリック操作をし、フリックされた表示要素を第1パネル70から第2パネル72に移動させた後に第1パネル70に残る表示要素が何も無くなれば、第1パネル70を省電力モードに遷移させる。逆に第2パネル72に表示されている表示要素を第1パネル70にフリックしたとき、第1パネル70が省電力モードであれば第1パネル70を通常モードに遷移させている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。こうしたフリックによる第1パネル70のモード遷移をしない実施の形態も考えられる。その場合には、操作がない時間があるしきい値を超えたときのみに第1パネル70を省電力モードに遷移させ、第1段階省電力モードで何かの操作が検知されたときに第1パネル70を通常モードに遷移させるような実施の形態も可能である。
【0093】
さらに、上記実施の形態では、複合機は2つのパネルを持っている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、3つ以上のパネルを持つ装置にも同様に適用できる。第1及び第2のパネルについて上記実施の形態で述べた構成を、一般的に第N番目のパネルと第N+1番目のパネルとの間で実現することにより、3個以上のパネルを持つ装置の場合でも同様の機能を実現できる。
【0094】
さらに、上記実施の形態では、第1段階省電力モードでは第1パネル70を、第2段階昇電力モードでは第1パネル70に加えて第2パネル72を、それぞれ省電力モードに遷移させている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。図1に示すような構成を持つ装置において、第1段階省電力モードでは、操作パネル部54以外の場所に設けられたパネル(例えば第2パネル72)を省電力モードに遷移させ、第2段階省電力モードでは第2パネル72に設けられた第1パネル70を省電力モードに遷移させるような実施の形態も可能である。
【0095】
上記実施の形態では、第1パネル70及び第2パネル72の双方ともタッチパネルである。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。たとえば、第1パネル70のみがタッチパネルで、第2パネル72は通常のモニタであってもよい。
【0096】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0097】
40 複合機
50 筐体
52 スキャナ部
54 操作パネル部
60 給紙部
62 画像形成部
70 第1パネル
72 第2パネル
100,110,242,244,252,254 操作画面
122 制御部
132 モニタ電源制御部
134 記憶部
240,250 分割位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモニタと、
前記複数のモニタのうち任意のモニタを通常モードから省電力モードに切換える省電力制御手段と、
前記省電力制御手段により前記複数のモニタのうちあるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、前記あるモニタに表示されている表示要素を、前記複数のモニタのうちの他のモニタに表示させる表示移動手段とを含む、マルチモニタ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチモニタ制御装置であって、
前記他のモニタは、ユーザによる操作入力を検知可能なタッチパネルを含み、
前記表示移動手段は、前記省電力制御手段により前記あるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、前記あるモニタに表示されている表示要素を、前記タッチパネルによる操作が可能な状態で前記タッチパネルに移動して表示させる手段を含む、マルチモニタ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のマルチモニタ制御装置であって、
前記表示移動手段は、前記省電力制御手段により前記あるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、前記あるモニタに表示されている表示要素のある部分を前記他のモニタに移動して表示させる手段を含む、マルチモニタ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のマルチモニタ制御装置であって、
前記表示させる手段は、
前記省電力制御手段により前記あるモニタが通常モードから省電力モードに切換えられることに応答して、前記あるモニタに表示されている表示要素を消去させる表示消去手段と、
前記あるモニタに表示されていた前記表示要素の前記ある部分の大きさと、前記他のモニタに表示されている前記表示要素の大きさとに基づいて、両者が互いに重ならないように両者の表示の大きさ及び表示位置を調整し、前記他のモニタの表示領域上に両者を表示させる手段とを含む、マルチモニタ制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のマルチモニタ制御装置であって、
前記あるモニタは、ユーザによる操作入力を検知可能な第1のタッチパネルを含み、
前記表示移動手段は、
前記第1のタッチパネルに表示されている表示要素についての、前記他のモニタ方向へのフリック操作を検知する第1のフリック検知手段と、
前記第1のフリック検知手段により前記他のモニタ方向へのフリック操作が検知されたことに応答して、前記フリック操作された表示要素を前記第1のタッチパネル上から消去し、前記他のモニタに表示する、第1のフリック移動手段とを含み、
前記マルチモニタ制御装置はさらに、前記フリック操作された表示要素が前記第1のフリック移動手段により前記タッチパネル上から消去されたことにより、前記タッチパネルに表示すべき情報がなくなったことに応答して、前記省電力制御手段を制御して、前記タッチパネルを省電力モードに切換える第1の切換手段を含む、マルチモニタ制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のマルチモニタ制御装置であって、
前記他のモニタは、ユーザによる操作入力を検知可能な第2のタッチパネルを含み、
前記マルチモニタ制御装置はさらに、
前記第2のタッチパネルに表示されている表示要素についての、前記第1のタッチパネル方向へのフリック操作を検知する第2のフリック検知手段と、
前記第2のフリック検知手段により前記第1のタッチパネル方向へのフリック操作が検知されたことに応答して、当該フリック操作の対象である表示要素を前記第1のタッチパネルに表示する、第2のフリック移動手段と、
前記第1のタッチパネルが前記省電力モードにあるときに、前記第2のフリック移動手段により前記第1のタッチパネル上に表示要素が表示されることに応答して、前記省電力制御手段を制御して、前記第1のタッチパネルを前記通常モードに遷移させる第2の切換手段とを含む、マルチモニタ制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のマルチモニタ制御装置であって、前記第2のフリック検知手段により前記第1のタッチパネル方向へのフリック操作が検知されたことに応答して、当該フリック操作の対象である表示要素を前記第2のタッチパネルの表示から消去する消去手段をさらに含む、マルチモニタ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−57728(P2013−57728A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194825(P2011−194825)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】