説明

マルチモードコポリマー、その製造および感圧接着剤における使用

(a)不飽和C=C−二重結合を有するモノマーまたはモノマー混合物を提供するステップ;(b)開始剤の最初の添加によってラジカル(共)重合を開始するステップ;および続いて(c)調節物質として少なくとも1種のアミノ酸を添加するステップを含むラジカル(共)重合法であって、調節物質の添加が、ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物の不飽和C=C−二重結合に対して50%の転化率の達成後に行われるラジカル(共)重合法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル(共)重合法およびこの方法により入手可能な(コ)ポリマーに関する。さらに本発明は、この(コ)ポリマーを含む感圧接着剤およびそのような感圧接着剤ベースの感圧接着製品に関する。
【背景技術】
【0002】
両面感圧接着製品は、液体接着剤に比べたそれらの簡単な加工性、永続的な接着性、および適用後に硬化する必要はないという事実に基づき接続接着の利用分野において高い有用性を提供する。それらの中で支持材料を含有する製品が区別される。それらの製品には、例えばいわゆる転写式接着テープのような両面接着テープおよび無支持体製品が含まれる。両方の製品種類では、上面および下面が感圧接着性であり、すなわち永続的に接着性である。使用時点までこれらの表面を汚れおよび望まれない早期接着から保護するために、接着面が概して再剥離可能な補助支持材料で一時的に覆われる。両面感圧接着製品がシート製品である場合、下側を覆うために1枚の補助支持材料のシートが使用され、上側のために2枚目が使用される。両面感圧接着製品がロールの形に製造される場合、同じく2枚の補助支持材料を採用することができるし、また感圧接着製品の使用時点に、まず一方の感圧接着面から、続いて第二の面から再剥離されうるように表面および裏面が用意された単一のウェブも採用することができる。
【0003】
接続接着の利用では、感圧接着製品の接着性および凝集性から成る、利用に適合した組合せを達成することが常に要求される。接着力は、接着性に属し、感圧接着剤またはそれから生成した接着層についての中心的な特性値(変数)を表す。剪断強度は、凝集性に属し、感圧接着剤またはそれから生成した接着層についてのさらなる中心的な特性値である。通常、凝集性および接着性は、相反する特性である。そのときどきの一方の最適化は、そのときどきの他方の悪化につながることが多い。利用に関連して感圧接着剤の凝集性と接着性のバランスを取るという一貫した課題がある。さらにまた、感圧接着剤の凝集性だけでなく接着性もまた同時に改善することができる構想を見出すという根本的な課題が存在する。
【0004】
接着力および剪断強度は、感圧接着剤またはそれを含有する感圧接着製品の根本的で容易に実行可能な特徴づけを行うための慣用方式であるが、所与の使用のために感圧接着製品を選択することを決定するのは、たいていこれらの特性と間接的に結びついた応用技術的基準である。したがって、感圧接着剤の接着性は、むしろ系の「柔らかさ」に関連し、一方で凝集性は、むしろ「硬さ」に関連する。接着層の凝集性に関連する利用関連必要条件の一例として、接着面からそれを糊残りなく再剥離可能であることが挙げられる。接着層の接着性に関連する利用関連必要条件の一例は、被接着面上の感圧接着層の養生挙動または積層挙動、すなわち感圧接着製品の適用後に接着にとって究極の接着強度にどれだけ速く到達するかである。それらが相互に影響し合うことも、そのような利用関連基準に当てはまり、多くの場合に同様に、感圧接着剤の凝集性と関係するような利用関連基準および感圧接着剤の接着性と関係するような利用関連基準のバランスを取り、かつ/または同時に改善するという課題が存在する。
【0005】
また、上記課題がすでに著しく複雑な場合、バランスが取られた応用技術的性能プロファイルを有する感圧接着剤系を提供する必要性だけではなく、加工性、特に加工の容易さ、品質および経済性に関して十分なコーティング/切断および型抜き挙動もまた確保する感圧接着剤の必要性もさらにまた、まだ存在する。この追加の必要条件は、適切な感圧接着剤系の量をさらに制限する。そのことから、特性プロファイルと加工性の適切なバランスが達成される、さらなる構想および/または改善された構想を用意する必要があることが結論される。
【0006】
感圧接着剤にとって重要な原料の部類は、アクリレートベースの接着剤である。アクリレートベースの感圧接着剤は、特にそれが高い耐久性を有して(例えば光学)品質的に価値の高い接着に適することによって魅了する。それらは、通例、適切なモノマー混合物を有機溶媒、水または物質中で共重合させることによって重合され、たいてい架橋剤の添加を介して、または放射線および/もしくは熱の影響によって架橋される。接着技術的特性を制御するための影響要因は、とりわけそのように生産された主体ポリマーのモル質量、主体ポリマーの組成、架橋の種類および架橋度、ならびに場合により粘着付与樹脂および可塑剤のような添加剤の量および種類である。通常の構想は、例えばEveraerts[A. I. Everaerts、L. M. Clemens、「Adhesion Science & Engineering」、第2巻、M. Chaudhury、A. V. Pocius(編集)、2002、Elsevier、Amsterdam、485〜505頁(非特許文献1)]またはSatas[D. SatasらまたはA. Zoselら、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、444〜549頁(非特許文献2)]の記述に論じられている。
【0007】
凝集と接着のバランスを制御し、できればさらに両基準を同時に改善する一方法は、様々なアクリレートコポリマーを相互に混合することにあることは、すでに認識されていた。例えばSatasは、すでに良好な剪断強度および接着力の場合にラベル接着剤の粘着性(タック)もさらに改善するために、高分子アクリレートコポリマーの分散物または溶液に短鎖アクリレートコポリマーの分散物または溶液を添加することを提案している[D. Satasら、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、455〜456頁および485頁]。
【0008】
ポリマーの分子量は、適切な調節剤の使用によって調整する(減少させる)ことができる[H. -G. Elias、Makromolekuele、第1巻第6版、1999、Wiley-VCH、Weinheim、334〜340頁(非特許文献3)]。調節系としてとりわけ短鎖および長鎖アルキルメルカプタンが挙げられる。そのうえ、リモネンおよびα−メチルスチレン二量体が調節系として挙げられた。
【0009】
調節剤の効果によって短鎖ポリマーを製造することができることから、次にその短鎖ポリマーは、異なる分子量のポリマーの2種の溶液または分散物から例えば二成分ポリマー混合物に製剤化される。
【0010】
常により効率的に生産するという要求を考慮に入れると、そのような混合設計は好ましくないことが多い。それは、二成分ポリマー混合物のための少なくとも2種のポリマー成分が別々の重合アプローチで製造され、続くさらなる工程で混合されなければならないからである。
【0011】
しかしながら、1回だけの重合から生じたポリマーが、すでに分子量分布中の二つの曲線最大値を特徴とするように、この1回の重合における分子量分布を制御することも考えられる。そのときこれらの最大値のそれぞれは、いわゆるポリマーモードと関係する。したがって二つの最大値の場合、二モード分子量分布または簡単に二モードポリマーと呼ばれる。したがって二つよりも多い最大値を有する分布は、三つの最大値で三モードといった具合に名付けられる。全般に本発明の範囲で、ポリマーは、一つよりも多い曲線最大値が分子量分布中に存在するマルチモードと呼ばれる。個々の曲線最大値が完全には分離されないことにより、例えば一つだけの最大値が生じ、さらなるポリマーモードがショルダーとして認識可能であることもありうる。
【0012】
二モードアクリレート感圧接着剤の製造方法をWO2004/056884(特許文献1)が提起している。二段階重合において、第一段階で長鎖ポリマーモードが、第二段階で短鎖ポリマーモードが調節剤の効果によって得られる。調節系としてアルコール、エーテル、ジチオエーテル、ジチオカーボネート、トリチオカーボネート、ニトロキシド、アルキルブロミド、チオール、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)およびTEMPO誘導体が挙げられる。特に調節剤としてのイソプロパノールの使用が記載されている。乾燥プロセス後に製品中に残留せず、健康上の懸念がなく、臭いおよび色に関して問題がないことから、調節剤としてイソプロパノールが多くの場合に好都合である。しかしながら、比較的小さな連鎖移動定数のため、この調節剤のかなり高い割合を採用しなければならず、そのことが、生じるポリマーの溶解特性に影響を及ぼすおそれがある。
【0013】
さらになおEP1882707(特許文献2)は、二モードポリマーおよびその製造方法を記載している。調節剤としてアルコール、エーテル、ジチオエーテル、ジチオカーボネート、トリチオカーボネート、ニトロキシド、アルキルブロミド、チオール、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)およびTEMPO誘導体が挙げられ、その際、イソプロパノール、ジチオ安息香酸ベンジルエステル、ジチオ酢酸エチルエステル、ビス−2,2’−フェニルエチルトリチオカーボネートおよびジベンジルトリチオカーボネートが特に好ましい調節剤の異型として際立っている。これらの調節系の全てが市販されているわけではない。さらになお、含硫物質は少なくともわずかな黄色味を有することが多く、これは、その物質自体と、そしてまたほんのわずかな程度に存在する不純物とに関係するおそれがある。しかしながら、光学的に価値の高い接着利用には高い純度が必要であり、すなわち、わずかな黄色味であっても概して回避すべきである。
【0014】
全てのこれらの例は、それ自体、長鎖および短鎖ポリマーモードを含む二モードの分子量分布を実現することによって、それらが感圧接着剤用の主体ポリマーを構築する特異的な接着技術−性能プロファイルを達成する試みを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2004/056884
【特許文献2】EP1882707
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】A. I. Everaerts、L. M. Clemens、「Adhesion Science & Engineering」、第2巻、M. Chaudhury、A. V. Pocius(編集)、2002、Elsevier、Amsterdam、485〜505頁
【非特許文献2】D. SatasらまたはA. Zoselら、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、444〜549頁
【非特許文献3】H. -G. Elias、Makromolekuele、第1巻第6版、1999、Wiley-VCH、Weinheim、334〜340頁
【非特許文献4】T. G. Fox、Bull. Am. Phys. Soc.、1956、1、123〜
【非特許文献5】Houben Weyl、Methoden der Organischen Chemie、E19a巻、60〜147頁
【非特許文献6】D. J. Newman、C. J. Nunn、J. K. Oliver、J. Paint. Technol.、1975、47、70〜78
【非特許文献7】D. J. Newman、C. J. Nunn、Progr. Org. Coat.、1975、3、221〜243
【非特許文献8】D. Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、632〜651頁
【非特許文献9】D. J. Kinning、H. M. Schneider、「Adhesion Science and Engineering第2巻:Surfaces、Chemistry & Applications」、M. Chaudhury、A. V. Pocius(編集)、2002、Elsevier、Amsterdam、535〜571頁
【非特許文献10】D. Jones、Y. A. Peters、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、652〜683頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、引用されたいずれの文書も、特異的な接着技術−性能プロファイルの調整以外に、良好な加工性、特に加工の容易さ、品質および経済性に関して改善されたコーティング挙動もまた確保するアプローチを開示していない。
【0018】
したがって、凝集性と接着性のすぐれたバランスを有すると同時に、改善された加工性を示す感圧接着剤を提供する必要性がさらに存在する。加えて、純度(色)、臭い、調節剤の効率、経済性、他の製剤成分との相溶性およびリスクの潜在性のような局面に関して、現況技術から公知の調節系から好ましい方向に際立ち、それにつながる欠点を解決する調節系を挙げるという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、(メタ)アクリレートコポリマーを製造するための特にアクリルモノマーおよび/またはメタクリルモノマーのラジカル(共)重合の際に、好ましくは少なくとも70重量%の少なくとも1種のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含有するモノマー混合物のラジカル(共)重合の際に、調節物質としてアミノ酸を使用することによって解決することができた。その際、(共)重合という表現および(共)重合するという概念は、本発明の範囲で種々のモノマーの共重合と同様に、均一のモノマーの重合、ならびにそれを共重合すること、場合によっては重合することも含む。好ましくは、本発明の範囲で(共)重合は、共重合である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
したがって本発明は、以下:
(a)不飽和C=C−二重結合を有するモノマーまたはモノマー混合物を提供するステップ;
(b)開始剤の最初の添加によってラジカル(共)重合を開始するステップ;および続いて
(c)調節物質として少なくとも1種のアミノ酸を添加するステップ
を含むラジカル(共)重合法であって、調節物質の添加が、ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物の不飽和C=C−二重結合に対して50%の転化率の達成後に行われるラジカル(共)重合法に関する。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、調節物質の添加は、不飽和C=C−二重結合に対して60%、特に好ましくは70%の転化率の達成後に行われる。本発明のさらなる一実施形態では、調節物質の添加は、ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物の不飽和C=C−二重結合に対して95%、好ましくは90%、特に好ましくは80%の転化率の達成まで行われる。転化率を決定するために、試験法EによりNIR−プローブを用いた反応を行うことができる。例えばガスクロマトグラフィー法のような転化率を決定するための他の方法も同じく重要であり、同じく転化率の追跡のために考慮することができる。ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物の不飽和C=C−二重結合に対して50%の転化率を達成する前の調節物質の添加は、結果として生じた(コ)ポリマーが、優れた凝集性および接着性のバランスと同時には必要な加工性を有さないことになる。
【0022】
本発明の方法のステップ(c)における調節物質は、ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物に対して、好ましくは0.05〜5mol%の量で添加される。調節物質として、好ましくはチオール基、セラニル基および/またはヒドロキシ基を含有する天然および/または非天然の芳香族および被芳香族アミノ酸ベースの調節系が使用される。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1種のアミノ酸は、少なくとも1個のスルファニル基(以下にチオール基または−SH基とも表される)、少なくとも1個のセラニル基(以下に−SeH基とも表される)および/または1個のヒドロキシ基(以下に−OH基とも表される)を有する。本発明の特に好ましい一実施形態では、アミノ酸における前記基は、末端すなわち第一級(primaer)である。しかしながら、第二級および第三級の実施形態も考えられる。
【0024】
少なくとも1種のアミノ酸は、好ましくは以下の一般構造式(I)および(II)の化合物の群から選択される。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

[式中、R、RおよびRは、そのときどきに相互に独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、水素、アシル、アルカノイル、シクロアルカンカルボニル、アレンカルボニル、アルコキシカルボニル、カルバモイルおよびスルホニルから成る群から選択されるか、またはR1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、水素、アシル、アルカノイル、シクロアルカンカルボニル、アレンカルボニル、アルコキシカルボニル、カルバモイルおよびスルホニルから成る群から選択され、R2およびR3は、それらが結合しているN−原子と一緒になって環式基を意味する。式(I)および(II)におけるXは、酸素(O)、硫黄(S)またはセレン(Se)から選択され、添え数字nは、0を含めた自然数である。好ましくは0≦n≦18が当てはまる。添え数字mは、0よりも大きな自然数である。好ましくはm=1または2である]。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態では、式(I)または(II)におけるRは、
(i)直鎖または分岐のC〜C18−アルキル基、直鎖または分岐のC〜C18アルケニル基、直鎖および分岐のC〜C18−アルキニル基、アリール基、環式脂肪族、脂肪族および芳香族複素環、水素
を含む群(i)から選択され、
およびRは、前記群(i)または:
(ii)アシル基、特にアルカノイル基およびシクロアルカンカルボニル基およびアレンカルボニル基(−C(O)−R’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)−O−R’)、カルバモイル基(−C(O)−NR’R”)、スルホニル基(−SOR’)
[式中、R’およびR”は、そのときどきに相互に独立して群(i)から選択された基である]を含む群(ii)から選択される。
【0028】
R2およびR3が、それらが結合しているN原子と一緒になって環式基を意味する場合、R2およびR3は、好ましくは置換または非置換のC1〜C6−アルキレン、C1〜C6−アルキレン−O−C1〜C6−アルキレン、C1〜C6−アルキレン−CONH−C1〜C6−アルキレンまたはC1〜C6−アルキレン−COO−C1〜C6−アルキレンを形成する。
【0029】
式(I)および(II)のアミノ酸は、不斉中心(図中に星印*で目印を付ける)を有することから、キラルである。本発明の有利な一実施形態では、少なくとも1種のアミノ酸は、(D)−もしくは(L)−立体配置の光学的に純粋な物質として、またはラセミもしくはそれぞれの任意のさらなる混合物として使用される。
【0030】
本発明の特に好ましい一実施形態では、アミノ酸は、20℃以上、好ましくは50℃以上の融点を有する。好ましくは、アミノ酸はシステインまたは好ましくは窒素でアシル化されているその誘導体である。特に好ましくは、それは、N−アセチル−システインである。N−アセチル−システインは、N−アセチル−(L)−システイン、N−アセチル−(D)−システインおよびこれらの鏡像体同士のそれぞれの任意の混合物として、ならびにラセミ混合物として適する。
【0031】
本発明の方法で(共)重合されるモノマーまたはモノマー混合物として、技術者に公知の全てのラジカル重合可能なC=C−二重結合含有モノマーを使用することができる。この際、好ましくは一般構造
CH=C(R)(COOR) (III)
[式中、R=HまたはCHであり、R=Hまたは1〜30、好ましくは4〜18個の炭素原子を有する直鎖、分岐または環式の飽和または不飽和アルキル基であって、ヒドロキシ−、C1〜C6−アルコキシ−、ハロゲン−、ヒドロキシアルキル−、アミノ−、アルキルアミノ−、アシルアミノ−、カルボキシル−、アルコキシカルボニル−、スルホン酸−、スルホン酸エステル−、アルキルスルホニル−、アリールスルホニル−、スルホニル−、およびスルホンアミド基のような追加的な置換基を有するまたは有さないアルキル基を意味する]のα,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体が原料として使用される。
【0032】
非常に好ましくは一般構造(III)の意味で使用されるモノマーは、4〜18個のC原子から成るアルキル基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む。採用される化合物の特定の例は、この列挙によって限定を意図しないが:
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、t−ブチルフェニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−ウンデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,5−ジメチルアダマンチルアクリレート、4−クミルフェニルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、4−ビフェニルアクリレート、4−ビフェニルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−ナフチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、アリルアルコール、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3−メトキシアクリル酸メチルエステル、3−メトキシブチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、エチレングリコールモノメチルアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールメタクリレート350、メトキシ−ポリエチレングリコールメタクリレート500、プロピレングリコールモノメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−プロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−ブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−(1−メチル−ウンデシル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(n−オクタデシル)アクリルアミド、さらには例えばN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドのようなN,N−ジアルキル−置換アミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、ビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル、酢酸ビニルのようなビニルエステル、塩化ビニル、ハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン化ビニリデン、ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルピロリドン、スチレン、α−メチルスチレン、o−およびp−メチルスチレン、o−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、2−ポリスチレンエチルメタクリレート(4000〜13000g/molの分子量M)、ポリメチルメタクリレートエチルメタクリレート(2000〜8000g/molのM)のようなマクロモノマーである。
【0033】
そのうえ、原則的に本発明の範囲で前記モノマーと共重合可能な全てのビニル官能化化合物を使用することができる。
【0034】
モノマーは、有利には以下の放射線化学的架橋形成(例えば電子線、UV)を促進する官能基を含有するように選択することもできる。適切な共重合可能な光開始剤は、例えば電子線照射による架橋を促進するベンゾイン(メタ)アクリレート−および(メタ)アクリレート官能化ベンゾフェノン誘導体モノマー、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリレートであり、その際、この列挙は限定的なものではない。
【0035】
本発明の方法の好ましい一実施形態では、モノマー混合物は少なくとも1種のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む。特に好ましくは、モノマー混合物は、少なくとも70重量%の少なくとも1種のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む。
【0036】
本発明は、さらになお、本発明の方法によって入手可能な(コ)ポリマーに関する。好ましい一実施形態では、(コ)ポリマーは、少なくとも1種の短鎖および長鎖のポリマーモード(a)または(b):
(a)少なくとも5000g/molで最大100000g/molの、好ましくは少なくとも15000g/molで最大60000g/molの分子量M(短鎖)を有する短鎖ポリマーモード、および
(b)少なくとも500000g/molで最大3000000g/mol、好ましくは少なくとも800000g/molで最大2000000g/molの分子量M(長鎖)を有する長鎖ポリマーモードを有する(メタ)アクリレート(コ)ポリマーである。その際、分子量M(短鎖)およびM(長鎖)は、分子量分布の対応する極大値で決定されるか、または、このポリマーモードの分子量分布最大が解明されておらず、単に分子量分布におけるショルダーとして出現する場合は対応するショルダーの凸形隆起領域における曲がり方向の変化点で決定される。
【0037】
本発明の特に好ましい一実施形態では、本発明の(コ)ポリマーは、短鎖および長鎖ポリマーモード(a)および(b)の合計量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは90重量%の長鎖ポリマーモード(b)を含む。
【0038】
本発明の範囲で、挙げられた分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー決定により得られる分子量と理解されたい。このために、該当する(コ)ポリマーの溶解された試料がその流体力学的体積に応じて分離され、結果として生じた画分が時間遅れで検出される。個々の画分の分子量は、ポリスチレン標準による較正後に報告される。数平均Mは、分子量分布の第一モーメントに、重量平均Mは第二モーメントに対応する。この値は、測定曲線から計算により算出される。ポリマーモードiについての分布の極大値M(i)は、同様に評価ソフトウェアによって数学的に算出されるか、または測定曲線から図式的に算出されるかのいずれかである。ショルダーがもしあれば、測定曲線から図式的に算出される。
【0039】
本発明は、さらにまた、本発明の方法から入手可能な(コ)ポリマーを含む感圧接着剤に関する。さらになお本発明は、この感圧接着剤を含む感圧接着製品に関する。特別な一実施形態では、感圧接着製品は型抜きされた積層フィルムである。
【0040】
好ましくは、本発明の感圧接着製品中の感圧接着剤は、層の形態で存在する。本発明の感圧接着製品中の感圧接着剤の層厚は、特定の限定に供されない。特定の一実施形態では、本発明は、感圧接着製品であって、その感圧接着剤が少なくとも75μm、好ましくは少なくとも150μm、さらに好ましくは少なくとも200μmの層厚を有する感圧接着製品を含む。驚くことに、その感圧接着製品は、大きな層厚にも関わらず、コーティングパターンに関して非常に高い光学的品質で、気泡なしに、流れた跡がなく製造可能であることが見出された。
【0041】
本発明のマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーは、顕著には接着剤、特に感圧接着剤およびヒートシール剤として/に採用することができる。適用に関して(コ)ポリマー組成物が選択される。マルチモード、特に二モード(コ)ポリマーが例えば接着剤に使用される場合、それについての重要な特性は、そのガラス転移温度Tである。
【0042】
所望のガラス転移温度を実現するために、有利には、フォックス(Fox)の式に類似する式(G1)によりポリマーについて所望のT値を与えるように、モノマー混合物の量的組成物が選択される[T. G. Fox、Bull. Am. Phys. Soc.、1956、1、123〜(非特許文献4)]。
【0043】
【数1】

[式中、nは、使用されたモノマーの通し番号を、wは、そのときどきのモノマーnの質量分率(重量%)を、TG,nは、そのときどきのモノマーnから成るホモポリマーのそのときどきの静的ガラス転移温度(K(ケルビン)単位)を表す。]感圧接着剤について、ガラス転移温度は、通例25℃未満に調整される。それに応じて、コモノマーの主体が選択される。ヒートシール剤についてガラス転移温度は、好ましくは少なくとも0℃である。
【0044】
マルチモード、特に二モードコポリマーは、有利にはその組成物中に少なくとも2種類のコモノマーを有し、そのうち少なくとも1種類が、架橋反応能のある少なくとも1個の官能基を構造要素として担持する。架橋形成能のあるコモノマーの種類は、有利にはコモノマー組成物中に少なくとも1mol%存在する。2.5mol%よりも大きい、架橋形成能のある少なくとも1種のコモノマーの物質量に関する割合も、同じく十分に適切である。架橋形成能のある少なくとも1種のコモノマーに関して少なくとも一つのポリマーモードの本質的に全てのコポリマーが、このコモノマーの種類の組入れによって架橋形成可能に加工されるように組成物が選択される場合が、非常に好都合である。このポリマーモードは、存在する各ポリマーモードのことがあり、対応する二モード系は、長鎖ポリマー鎖のポリマーモードまたは短鎖ポリマー鎖のポリマーモードでありうる。全てのポリマー鎖を架橋形成可能に加工することが特に好都合である。
【0045】
架橋結合のために技術者に公知の全ての方法および試薬を使用することができる。次に、方法および/または試薬に応じて、架橋形成能のある(コ)モノマーの少なくとも1種類として、対応する適切な官能基を担持するものが選択される。架橋法として、例えばUVまたは電子線を介して開始される熱的および/または放射線化学的方法が考えられる。この架橋法の支援のために、触媒および/または開始剤のような現況技術から通常の補助物質を使用することができる。
【0046】
UV架橋のための光開始剤として、好ましくはノリッシュI型およびII型開裂剤が適し、その際、両クラスのいくつかの例は、ベンゾフェノン−、アセトフェノン−、ベンジル−、ベンゾイン−、ヒドロキシアルキルフェノン−、フェニルシクロヘキシルケトン−、アントラキノン−、チオキサントン−、トリアジン−、またはフルオレノン誘導体とすることができ、その際、この列挙が全てではない。
【0047】
非常に好ましくは、化学架橋剤によりネットワークが形成される。それに関して接着剤製剤に少なくとも1種類の架橋剤が添加される。本発明の方法に関して特に適切な架橋剤は、多官能性、特に二、三もしくは四官能性イソシアネート、または多官能性、特に二、三もしくは四官能性エポキシドである。金属キレート化合物も同様に、非常に有利な方法で使用されることがある。しかし、特にポリアクリレートと架橋形成することができる、技術者によく知られた全てのさらなる多官能性、特に二、三もしくは四官能性化合物も使用することができる。そのうえ、その有機残基の部分として場合により一つの反応性官能基を担持するシラン、とりわけトリアルコキシ有機シランを採用することができる。
【0048】
様々な架橋形成構想および/または架橋物質の組合せも可能である。したがって、マルチモード、特に二モード(コ)ポリマーは、架橋能のある2種類以上の異なるコモノマーの種類も含有することがある。
【0049】
本発明の方法により製造されたマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーを使用するために、(コ)ポリマーは、最適化するために場合によっては少なくとも1種の樹脂と混合される。場合によっては使用可能な粘着付与樹脂として、例外なく全ての公知で文献に記載された接着樹脂を、前記マルチモード、特に二モード(コ)ポリマーと組合せて使用することができる。代表的に挙げられるのは、コロホニウム樹脂、その不均化、水素化、重合、エステル化誘導体および/または塩、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂である。結果として生じた接着剤の特性を希望どおりに調整するために、これらの樹脂およびさらなる樹脂の任意の組合せを使用することができる。しかしながら、多数の本発明の方法において、接着樹脂の添加は、それが接着層の光学的品質を低下させる効果が生じることから、許容されない。
【0050】
同様に場合によっては使用可能な可塑剤として、自己接着テープ技術から公知の全ての可塑化物質を使用することができる。それには、とりわけパラフィン油およびナフテン油、オリゴブタジエンおよびオリゴイソプレンのような(官能化)オリゴマー、液体ニトリルゴム、液体テルペン樹脂、植物性および動物性の脂肪および油、フタレートおよび官能化アクリレートが含まれる。加えて上述のような感圧接着剤は、レオロジー的に有効な添加剤、触媒、開始剤、安定化剤、相溶化剤、カップリング試薬、架橋剤、酸化防止剤、さらなるエージング防止剤、遮光剤、難燃剤、顔料、染料、フィラーおよび/または発泡剤ならびに場合によっては溶媒のようなさらなる成分を含有することがある。
【0051】
マルチモード、特に二モードコポリマーにおける短鎖ポリマーモードに基づき、それらによってもたらされた応用技術的性能プロファイルに対するプラスの作用を失うことなしに、多くの場合に(マイグレーション可能な)可塑剤のさらなる添加を完全に放棄するか、またはその使用量を減少させることができる。
【0052】
本発明の方法において調節剤として少なくとも1種のアミノ酸を添加することによってマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーを製造するための重合の制御に関して、様々な可能性が考えられる。二つの有利な可能性がこの点で例として挙げられる。技術者は、本明細書に基づき、同様に本発明の範囲内のさらなる重合手順(例えばモノマーおよび/または調節剤の計量供給技術のようなもの)の構想を練ることができる。
【0053】
第一の例の重合法において、重合の始めに全てのモノマーが提供される。合計ポリマーに対する調節された(短鎖)(コ)ポリマーモードの割合は、調節物質として少なくとも1種のアミノ酸を使ってその添加時点を介して制御されうる。調節剤が重合混合物に早く添加されるほど、短鎖(コ)ポリマー分子の割合が高くなる。好ましくは重合開始から約30分後から2時間後の間に調節剤が添加される。しかしながら、重合開始後の他の時点も同じく可能である。
【0054】
この第一の例の重合法において、調節された(短鎖)(コ)ポリマーモードの分子量は、使用された調節剤の量を介して制御されうる。使用された調節剤の量が高く選択されるほど、結果として生じた、対応する(コ)ポリマーモードの分子量は低くなる。
【0055】
第二の例の重合法において、重合のために望まれるモノマーの一部は、重合開始後のある時点で初めて添加される。次に、有利には調節剤は、前述の、後に添加されたモノマーの量と同じ時点で添加される。そうすれば、調節された(短鎖)(コ)ポリマーの割合は、本質的にこの添加時点に現存するモノマーの量に起因する。調節された(短鎖)(コ)ポリマーの分子量は、添加時点に現存するモノマー量に対する使用された調節剤の比率によって定義される。
【0056】
調節剤の添加が1回だけ行われる場合、二モード(コ)ポリマーが生じる。三モード(コ)ポリマーは、重合開始後に2回の異なる時点で調節剤が添加されることにより得られる。四モード(コ)ポリマーは、重合開始後に3回の異なる時点で調節剤が添加されることにより得られる。全般にnモード(コ)ポリマーは、重合開始後に(n−1)回の異なる時点で調節剤が添加されることにより得られる。
【0057】
本明細書において二モード系について示された以下の手順は、マルチモード、特に二モード(コ)ポリマーを製造するための本発明の調節剤の使用に特に好都合であることが証明された:
溶媒を充填されたリアクターにモノマー混合物を用意し、沸騰熱まで加熱する。続いて、第一の開始剤量の添加によって重合を開始する。モノマー濃度および開始剤量に対する比率によって、長鎖ポリマーモードのポリマーのモル質量分布、とりわけ平均鎖長を調整できる。予め定義された時間の後に調節系を添加する。量および時点により短鎖ポリマーモードの割合および分子量を調整できる。必要に応じて重合プロセスの間に開始剤のさらなる添加を行う。好ましくは重合の早期経過の間に、グラフト効果が低い開始剤を用いて作業する。低い残留モノマー含量のポリマーが得られるように、高いグラフト効果を有する開始剤を重合終了ごろに使用することが適切である。
【0058】
この手順は、安定したプロセス条件および比較的単純な作業モードが優れている。バッチ作業モード以外に半バッチ法もまた考えられ、個別または複数のモノマーおよび/または溶媒および/または調節系を制御的に添加するための計量供給戦略は、本発明の範囲を逸脱することなしに利用可能である。
【0059】
ラジカル重合用の開始剤として、アクリレートまたは他のモノマーに関して公知の全ての通常の開始剤を使用することができる。C中心型ラジカルの生成は、Houben Weyl、Methoden der Organischen Chemie、E19a巻、60〜147頁(非特許文献5)に記載されている。この方法は、類似の方法で適用することができる。ラジカル源の例は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドおよびアゾ化合物であり、典型的なラジカル開始剤のいくつかの非限定的な例として、本明細書においてペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、アゾジイソ酸ブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、過炭酸ジイソプロピル、tert−ブチルペルオクトエート、ベンズピナコールが挙げられる。非常に好ましい一変形形態では、開始剤は、転化率が90%を超えて上昇するように複数のステップでそこに添加される。そのようにして、ポリマー中に残る残留モノマー含量は、10重量%未満に減少させることができる。
【0060】
開始剤は、有利には重合の開始前または開始時にモノマー溶液に与えることができ、重合の間にも開始剤を追加計量供給することができる。開始剤は、好ましくはモノマー混合物に対して0.001〜1重量%、好ましくは0.025〜0.1重量%の割合で反応溶液に使用される。
【0061】
その際、重合を開始するために使用された開始剤は、好ましくはポリマーにおいて側鎖を形成する傾向が低いように選択され、それらのグラフト活性(Pfropfwirksamkeit)は、好ましくは開始剤が添加されたときに反応混合物の温度でε<5の値未満である。残留モノマーの割合を0%近くにするために、またはそれどころか完全に除去するために、重合の終わりごろに高いグラフト活性の開始剤を用いた最終的な開始が適切である。
【0062】
本発明に関連して、原則的に重合を実施するために技術者によく知られた全ての溶媒を溶媒として採用することができる。その際、有機溶媒、特に脂肪族または芳香族炭化水素、エステルおよびエーテルと同様に水も可能である。十分にふさわしい有機溶媒の例は、アセトン、ベンジン(軽質ベンジン(Siedegrenzenbenzin))、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチルである。混合物も同様に考えられる。好ましくは、溶媒(混合物)は、重合が沸騰冷却の条件下で実施できるように選択される。
【0063】
マルチモード、特に二モード(コ)ポリマーを製造するための、本発明の範囲の重合法は、高い固体含量での反応制御を可能にし、同じく結果として生じた高い固体含量も可能にする。固体含量は、重合の終わりに好ましくは少なくとも45重量%、非常に好ましくは少なくとも50重量%である。
【0064】
そのように得られたポリマー溶液は、感圧接着剤またはヒートシール剤のような接着剤のためのコーティング製剤の成分として著しく適する。
【0065】
本発明のマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーベースの対応する接着剤製剤のさらなる加工の際に、高い出発固体含量に応じて同じく高い固体含量の溶媒含有コーティング製剤が得られうる。これらは、好ましくは少なくとも35重量%、非常に好ましくは少なくとも45重量%である。
【0066】
本発明の接着剤製剤は、好ましくは溶媒コーティングプロセスによりウェブ上にコーティングされる。マルチモード性により、および条件付きで短鎖ポリマー鎖の存在により、高い固体含量で一モード長鎖ポリマーに比べて低い溶液粘度が生じる。このことから、本発明の接着剤製剤を高い固体含量で常により高い光学的品質のコーティングパターンでコーティングすることができるという利点がもたらされる。さらなるプロセス技術的利点は、増加した固体含量に起因する。それで、溶媒コーティングプロセスでは少量の溶媒だけを除去する必要がある。少ない固体含量のコーティング製剤の場合と同じ乾燥機および同じ乾燥機の調整を使用する場合、これは、ウェブ速度の上昇およびそれに伴う経済性の増加を可能にする。
【0067】
本発明の感圧接着剤は高い固体含量でコーティングできるので、乾燥機の溶媒負荷が低いという結果にもなる。それゆえに、同じ乾燥機および同じ乾燥機調整を使用する場合の低い固体含量のコーティング製剤で可能であろうよりも大きな有効幅で、高い固体含量の本発明の感圧接着剤製剤をコーティングする可能性を提供する。またこれは、プロセスの経済性増加へとつながる。
【0068】
そのうえ、好ましくは少なくとも35重量%、非常に好ましくは少なくとも40重量%の高い固体含量を有する本発明の接着剤製剤は、高い接着剤塗布量を実現するために特に適切である。これに関して高い接着剤塗布量は、乾燥後に少なくとも75μmの層厚を有する量と理解されたい。また、少なくとも125μm、それどころか200μmを超える、より高い接着剤塗布量は、例えば接着剤の伸びおよび気泡の不在に関して優れた光学的品質のコーティングパターンでコーティングされうる。同様にコーティング剤は、極度に低い残留溶媒含量の接着剤層が実現されるように顕著に乾燥されうる。この結果は、適切な溶媒(混合物)の選択によってさらに促進される。これに関しては、例えばNewmanら[D. J. Newman、C. J. Nunn、J. K. Oliver、J. Paint. Technol.、1975、47、70〜78(非特許文献6);D. J. Newman、C. J. Nunn、Progr. Org. Coat.、1975、3、221〜243(非特許文献7)]の文書を参照されたい。当然、より薄い層も非常にうまく製造可能である。コーティング品質についてなされた記載もそれらの層にも当てはまる。
【0069】
コーティングのために原則的に技術者に公知の全ての方法、特に溶媒ベースのコーティング法を採用することができる。例としてロール、ドクターブレードおよびノズル法が挙げられる。
【0070】
この実施は、その応用技術的特性(接着性、凝集性)におけるバランスだけでなく、改善された加工性も達成するという課題を解決する本発明のマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーが、接着剤製剤成分として顕著に適切であることを明らかにする。非常に良好な凝集性で良好な接着性を示す高い分子量の一モードポリマーに比べて、同じ溶媒粘度のマルチモード、特に二モードコポリマーを用いると、より高い固体含量で作業することができ、これは、生産効率および/または達成可能な層厚および/または乾燥度に関する利点につながる。
【0071】
本発明の方法により、感圧接着剤に顕著に使用することができるマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーが利用可能になる。これらは感圧接着剤層として、例えば片面または両面感圧接着製品の少なくとも一つの層として、使用することができる。
【0072】
片面感圧接着製品は、本発明のマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーを含有する感圧接着剤製剤の少なくとも一つの層を含有する。さらにそれらは、少なくとも一つの支持材料、フィルム、織物、スクリムまたは紙を含有する。支持材料は、さらなる層を担持しうるか、または化学的および/もしくは物理的に前処理することができる。特に、感圧接着剤層に面する支持体面は、接着改善性アンダーコート(プライマー)で加工されることがあり、かつ/またはコロナ、プラズマまたは火炎のような物理的方法により処理されていることがある。感圧接着剤層の方に向いていない支持体面は、その製品をロールに巻上げ、利用のために再度繰出しできるように剥離効果のあるコートで加工することができる。しかしまた、使用時点までに望まれない接着または汚染から保護するために、感圧接着剤層を剥離ライナー、剥離紙または剥離フィルムで覆うこともできる。
【0073】
片面感圧接着製品は、自己接着テープ、自己接着ラベルまたは自己接着フィルムとして製造することができる。
【0074】
両面感圧接着製品は、本発明のマルチモード、特に二モードコポリマーを含有する感圧接着剤製剤の少なくとも一つの層を含有する。それらは、とりわけ両面自己接着テープまたはフィルム、好ましくは転写式接着テープまたはフィルムである。転写式接着テープまたはフィルムは、少なくとも一つ、両面自己接着テープまたはフィルムは、少なくとも二つの感圧接着層を含有する。加えて、両面自己接着テープおよびフィルムは、支持材料の少なくとも一つの薄層を含有する。
【0075】
利用時点まで感圧接着表面を汚染および望まれない早期接着から保護するために、それらは、概して再剥離可能な補助支持材料、いわゆる剥離ライナーで一時的に覆われる。両面感圧接着製品がシート製品である場合、下面を覆うために剥離ライナー材料のシートが1枚使用され、上面のために2枚目が使用される。ロール形の両面感圧接着製品が製造される場合、同様に二つの剥離ライナー材料を採用することができるし、また感圧接着製品の利用時点にまず一方の感圧接着表面から、次に第二の表面から再剥離されうるように表側および裏側が準備された単一のウェブも採用することができる。
【0076】
両面感圧接着製品の構築は、第一および第二剥離層ならびにそれらの間に配置された本発明の少なくとも一つの感圧接着剤層を含む。剥離層が異なる剥離ライナーの剥離層である場合、使用されるライナーは、異なる形態および/またはサイズを有することがある。例えば剥離ライナーはその寸法において感圧接着剤層およびもう一方の剥離ライナーからはみ出ることがある。同様に、剥離ライナーが同じ形態および/またはサイズを有し、形態および/またはサイズにおいて感圧接着剤層からはみ出る製品構築も構想可能である。一実施形態では、両面感圧接着製品は、ラベルウェブに対応する形態をとることができる。それで、例えば第一の剥離ライナーはウェブ形態をとることがあるが、一方で感圧接着剤層は、反復的な、例えば型抜きにより分離された(類似のラベル形態の)断片の形態でその上に適用される。次に第二の剥離ライナーは、同じく感圧接着剤の範囲内の反復的な断片だけに限定されることもあるし、また本質的に第一の剥離ライナーの形態および/またはサイズに対応する形態および/またはサイズを有することもある。しかしながら後者の場合、有利な一実施形態では感圧接着剤面の範囲内で第二の剥離ライナーに型抜きがあるようにされる。
【0077】
マルチモード、特に二モード(コ)ポリマー支持体ベースの感圧接着製品が採用される場合、この列挙により限定を意図するわけではないが、この支持フィルムを製造するために全てのフィルム形成性および押出可能ポリマーを使用することができる。好ましい一設計では、ポリオレフィンが使用される。好ましいポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブチレンおよび/またはヘキシレンから製造され、その際そのときどきに純粋なモノマーを重合させることもできるし、また前述のモノマーの混合物を共重合させることもできる。重合法によって、およびモノマーの選択によって、軟化温度および/または引っ張り強さのようなポリマーフィルムの物理的および機械的特性が制御されうる。
【0078】
本発明のさらなる好ましい一設計では、ポリ酢酸ビニルが支持体ベース材料として使用される。ポリ酢酸ビニルは、酢酸ビニルに加えて、コモノマーとしてビニルアルコールも含有することがあり、その際、遊離アルコール部分は広い範囲内で変動することがある。本発明のさらなる好ましい一設計では、ポリエステルが支持フィルムとして使用される。本発明の特に好ましい一設計では、ポリエチレンテレフタレート(PET)ベースのポリエステルが使用される。特に特定の高透明性PETフィルムが使用されることがある。それで、例えば三菱社の商品名Hostaphan(商標)のフィルムまたは東レ社の商品名Lumirror(商標)のフィルムまたはDuPont Teijin社の商品名Melinex(商標)のフィルムが適する。ポリエステルのさらなる非常に好ましい種類は、ポリブチレンテレフタレートフィルムである。ポリエチレンナフタレート(PEN)も適切である。本発明のさらなる好ましい一設計では、ポリ塩化ビニル(PVC)がフィルムとして使用される。温度安定性の向上のために、このフィルムに含有されるポリマー成分は、補剛性コモノマーを使用して製造することができる。そのうえ、それと同じ特性改善を得るために、本発明のプロセスの進行中にフィルムを放射線架橋することができる。PVCがフィルム原料として採用される場合、それは、場合によっては可塑化成分(可塑剤)を含有することがある。本発明のさらなる好ましい一設計では、フィルムを製造するためにポリアミドが使用される。ポリアミドは、1種のジカルボン酸および1種のジアミンから、または複数のジカルボン酸およびジアミンから成ることがある。ジカルボン酸およびジアミン以外に、高官能性カルボン酸およびアミンも上記ジカルボン酸およびジアミンとも組合せて使用されうる。フィルムの補剛のために、好ましくは環式、芳香族または複素環式芳香族の出発モノマーが使用される。本発明のさらなる好ましい一設計では、フィルムを製造するためにポリメタクリレートが使用される。この場合、モノマー(メタクリレートまたは一部はアクリレートでもある)の選択によりフィルムのガラス転移温度を制御することができる。そのうえ、例えばフィルムの可撓性を高めるため、またはガラス転移温度を降下もしくは上昇させるため、または結晶セグメントの形成を最小化するために、ポリメタクリレートは、添加剤も含有することがある。本発明のさらなる好ましい一設計では、フィルムの製造のためにポリカーボネートが使用される。さらになお、本発明のさらなる一設計では、支持フィルムを製造するためにビニル芳香族およびビニル複素環式芳香族ベースのポリマーおよびコポリマーが使用することができる。例としてポリスチレン(PS)が挙げられる。そのうえ、ポリエーテルスルホンフィルムおよびポリスルホンフィルムが支持材料として使用されることがある。これは、例えばBASF社から商品名Ultrason(商標)EおよびUltrason(商標)Sで購入することができる。さらになお、特に好ましくは高透明性TPUフィルムも使用することができる。これは、例えばElastogran GmbH社から市販されている。ポリビニルアルコールおよびポリビニルブチラールベースの高透明性フィルムも使用することができる。
【0079】
フィルム形成材料を製造するために、フィルム形成特性を改善、結晶セグメントの形成傾向を低下および/または目的の機械的特性を改善もしくは場合によっては悪化させる添加剤およびさらなる成分をこれに添加することが適切でありうる。
【0080】
単層フィルムに加えて、例えば共押出で製造された多層フィルムも使用することができる。このために、前記ポリマー材料を相互に組合せることができる。
【0081】
さらになお、そのフィルムを処理することができる。それで、例えばアルミニウム、酸化亜鉛、SiOまたは酸化インジウムスズを用いて気相成長またはスパッタリングを行うこともでき、また、塗料または接着促進剤を塗布することもできる。さらなる可能な添加は、添加剤としてフィルム中に存在しうるかまたは保護層として塗布されうるUV保護剤である。
【0082】
支持フィルムは、例えば光学コーティングも有しうる。光学コーティングとして、特に反射を減少させるコーティングが適する。これは、例えば空気/光学コーティングの通過についての屈折率差の低下によって達成される。
【0083】
マルチモード、特に二モード(コ)ポリマーベースの感圧接着製品に剥離ライナーが採用される場合、これは、片面または両面を剥離加工されることがある。同じく片面または両面剥離ライナーを製造するために、原則的に、好ましくは片面または両面に剥離システムを備える全てのフィルム形成性および押出可能ポリマーを使用することができる。例は、この点で引用されるSatas、KinningおよびJonesの編集に見出すことができる[D. Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、632〜651頁(非特許文献8);D. J. Kinning、H. M. Schneider、「Adhesion Science and Engineering第2巻:Surfaces、Chemistry & Applications」、M. Chaudhury、A. V. Pocius(編集)、2002、Elsevier、Amsterdam、535〜571頁(非特許文献9);D. Jones、Y. A. Peters、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、652〜683頁(非特許文献10)]。
【0084】
剥離ライナーは、概して片面または両面に好ましくはシリコーンベースの剥離塗料を備える支持フィルムから成る。本発明の好ましい一設計では、剥離ライナー用の支持材料としてポリオレフィンが使用される。好ましいポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブチレンおよび/またはヘキシレンから製造され、その際、そのときどきに純粋なモノマーを重合させることもできるし、また、記載されたモノマーの混合物を共重合させることもできる。重合法によって、およびモノマーの選択によって、例えば軟化温度および/または引っ張り強さのようなポリマーフィルムの物理的および機械的特性が制御されうる。本発明の特に好ましい一実施形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET)ベースのポリエステルが剥離ライナー用の支持材料として使用される。特に特定の高透明性PETフィルムを使用することができる。それで、例えば三菱社の商品名Hostaphan(商標)のフィルムまたは東レ社の商品名Lumirror(商標)のフィルムまたはDuPont Teijin社の商品名Melinex(商標)のフィルムが適する。
【0085】
そのうえ多様な紙が、場合によっては安定化押出コーティングとも組合せて剥離ライナー用の支持材料として問題になる。全ての記載された剥離ライナーは、例えばしかし好ましくはシリコーンベースの離型剤を用いた1回または複数回のコーティング作業によってその抗接着特性を得る。その際、塗布は、片面または両面に行われることがある。
【0086】
加えて剥離ライナーは、剥離剤としてフルオロシリコーン処理を担持することがある。フルオロシリコーン系に加えて、剥離ライナーへのフッ素化炭化水素コーティングも考慮される。
【0087】
剥離層の剥離特性を調整するための、技術者によく知られた全ての構想が、本発明の範囲で原則的に使用可能である。制御可能性の編集は、Satas、KinningおよびJonesがまとめている[D. Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、632〜651頁(非特許文献8);D. J. Kinning、H. M. Schneider、「Adhesion Science and Engineering第2巻:Surfaces、Chemistry & Applications」、M. Chaudhury、A. V. Pocius(編集)、2002、Elsevier、Amsterdam、535〜571頁(非特許文献9);D. Jones、Y. A. Peters、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology」、D. Satas(編)、第3版、1999、Satas & Associates、Warwick、652〜683頁(非特許文献10)]。これは、両面剥離ライナーの場合または二つの剥離ライナーを有する製品設計の場合に重要である。良好な取扱い性のために、両方の剥離層の剥離力に段階を付けなければならない。
【0088】
一つまたは複数の感圧接着剤層の接着剤塗布量は、場合によっては相互に独立して選択することができる。その量は、1g/mから1000g/mの間、特に10g/mから500g/mの間、非常に好ましくは20g/mから300g/mの間にある。
【0089】
一つよりも多い感圧接着剤層が採用される場合、それらの層は、化学的性質、製剤および/または架橋状態に関して同じまたは異なる種類でありうる。また、支持体不含の異型は、二つ以上の感圧接着層を含有することがある。
【0090】
両面感圧接着製品に支持体が採用される場合、好ましい一計画では、フィルム厚は、4μmから200μmの間、特に好ましくは12μmから100μmの間である。原料の種類、製剤、化学的特性、物理的特性、表面処理および/または厚さに関して相互に独立して選択することのできる、一つよりも多い支持フィルムを採用することができる。複数の支持体薄層が採用される場合、その薄層は、さらなる感圧接着層または同じくヒートシールもしくはコールドシール層のような他の接着層によって相互に結合されていることがある。
【0091】
剥離層を用いて両面加工された剥離ライナーは、好ましくは少なくとも20μmで150μm未満の厚さを有する。片面に剥離層を備える剥離ライナーについて同様の値の範囲が好まれる。
【0092】
剥離ライナーの組合せが採用される場合、第一の剥離ライナーと第二の剥離ライナーの厚さは同じであるか、または異なりうる。他方で、適切な剥離ライナーの厚さは、20μmから150μmの間にある。特に有利な剥離ライナーの厚さの組合せは、そのときどきで30μm〜80μmの範囲の厚さを有する剥離ライナーから成る。特に有利な剥離ライナーの厚さの組合せは、36μm(第一剥離ライナーの厚さ)および50μm(第二剥離ライナーの厚さ)またはその逆、ならびに50μmおよび75μmまたはその逆である。
【0093】
本発明のマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーベースの感圧接着剤は、接着性および凝集性から成る非常に有利な組合せを有する感圧接着製品を提供することを可能にする(例参照)。これにとって、独特な粘弾性が重要である。本発明の感圧接着剤は、適切な架橋形成によって一方で部分的に「硬く」(それは莫大な弾性成分の割合を有する)、同時に部分的に「軟らかい」(それは高い接着力を有する)ように調整されうる。弾性成分の割合は、接着力を損ねることなしに85%を超えることがある。85%を超える非常に高い弾性成分の割合の場合、接着力も、高分子量を有する一モードポリマーベースの感圧接着剤よりも高い水準にある。本発明の教示にしたがって、粘弾性プロファイル中のその「硬い」成分の割合のため、非常に良好に型抜きされうる感圧接着製品が入手可能である。そのような良好に型抜き可能な設計は、また、スリット/型抜きの縁で接着剤が滲出(「にじみ出し」)する傾向が極度に低いことでも際立っている。良好な型抜き性は、ロータリーダイカットに加えて平台式型抜きの場合にも現れる。対応する感圧接着剤は部分的に「硬く」、そのことが型抜きプロセスに適性をもたらすにもかかわらず、それらの接着剤は同時に積層プロセスに非常にうまく利用可能である。これは、粘弾性プロファイル中の「軟らかい」成分の割合に起因する。この「軟らかさ」は、被積層基材上に感圧接着層がよく広がる原因となる。
【0094】
その特定の応用技術的特性バランスおよび高品質のコーティングパターンを有する優れたコーティング性に基づき、本発明のマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーは、品質的に高価値の光学的接着のための両面感圧接着製品、特に転写式接着テープに顕著に適するが、このことは、本明細書に応用例として言及される。それに関して最適に透明で無色の接着層を得るために、感圧接着剤は、純粋なアクリレートとして構想され、すなわちそれに接着樹脂は添加されない。したがって、マルチモード、特に二モード性は、非常に良好な凝集性で高い接着力につながる。
【0095】
それゆえに、(特に両面)感圧接着製品への採用が非常に良好に取扱い可能で型抜き可能な積層テープおよび積層フィルムにつながる、魅力的な感圧接着剤が、本発明のマルチモード、特に二モード(コ)ポリマーから製剤化されうる。したがって本発明は、接着性と凝集性の応用技術的に有利なバランスを非常に良好な加工性と結びつけることで、提起された課題の魅力的な解決となる感圧接着剤ベースの感圧接着製品を生み出す。
【0096】
試験法
試験法A − GPC:
分子量分布、ならびにそれに関連して分子量分布の数平均M、分子量分布の重量平均Mおよび一モードコポリマーでの最大または二モードもしくはマルチモードコポリマーの場合の分子量分布の最大Mの決定を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって行った。溶離液として0.1体積%のトリフルオロ酢酸を有するTHFを使用した。測定は23℃で行った。プレカラムとしてPSS SDV、10μ、103A、ID 8.0mm×50mmを使用した。分離するために、ID 8.0mm×300mmのカラム組合せPSS−SDV、10μ、Linear−oneを使用した。試料濃度は1g/lであり、流量は0.5ml/minであった。ポリスチレン標準に対して測定した。M値は、エルグラム(Elugramm)から図式的に算出した。データ処理のためにPSS社のソフトウェアWinGPC Unityバージョン7.20を利用した。
【0097】
試験法B − 接着力:
接着力(剥離強度)を決定するために、PSTC−1に準拠して以下のように行う:厚さ25μmのPETフィルム上に厚さ50μmの感圧接着層を塗布する。研磨された鋼板上で5kgローラーにより往復5回ローラーをかけることによってこの検体の幅2cmのストリップを接着させる。その鋼板を固定し、張力試験機上で自己接着ストリップを自由端を経て剥離角180°および速度300mm/minで引っ張る。結果をN/cm単位で示す。
【0098】
試験法C − 微小剪断経路(Mikroscherweg):
ASTM D4498に準拠して以下のように行う:転写式接着テープの厚さ50μmの検体を剥離ライナーから剥がし、安定化するために片面に厚さ50μmのアルミニウム箔を施す。幅10mm、長さ約50mmの試験ストリップを鋼板上に接着させ、接着面積が130mmとなるようにする。接着は、重量2kgで往復3回ローラーをかけることによって行う。鋼板を測定装置中で調整し、試験ストリップが垂直位置に存在し、30℃に温度調節されるようにする。この系を40℃に加温する。クランプ(自重6.4g)により試験ストリップの自由端に500gの重りを取付け、その重りは、重力により剪断性の荷重を試料にかける。鋼板から突き出た試験接着ストリップの短片にマイクロメータを置き、そのマイクロメータは、偏位を測定時間の関数として記録する。微小剪断経路についての結果は、60分の測定時間後に記録された値である。加えて、剪断応力後に重りを外し、接着ストリップの緩和を追跡することにより弾性を記録する。さらなる60分後にマイクロメータの値を記録し、荷重下での微小剪断経路の比率のパーセンテージで表す。高いパーセンテージの値は、試料の高い復元(回復)性に対応する高い弾性を示す。
【0099】
試験法D − 色度b
DIN6174に従って行い、3種類の色パラメータL、aおよびbにわたる、三次元空間における色の特性をCIELabにより検討した。それに関して、D/65°ランプを備えるBYK Gardener spectro−guide測定装置を使用した。CIELabシステム内でLはグレースケール、aは緑から赤への色軸、bは青から黄への色軸を示す。bについてのプラス値の領域は、黄色成分の強度を示す。1.05のbを有する白色セラミックタイルを参照として役立てた。加えてこのタイルは、被験接着層が重層される試料ホルダーとして役立った。色の測定は、純粋な接着層を剥離ライナーから剥がした後の、そのときどきの接着層で行った。
【0100】
試験法E − 転化率の検査:
転化率を追跡するために、用意されたモノマーまたはモノマー混合物の不飽和C=C−二重結合に基づく反応の進行を、光導波路を介してNIR(近赤外)分光計と接続されたNIRプローブを用いてインラインで追跡する。プローブは、光路長10mmのBruker NIR浸漬型プローブ「Quarz Lang」XN035−xであり、分光計は、Bruker FT−NIR分光計IFS28/Nである。転化率検査のための測定点に対応する、一スペクトルあたりの測定時間は、4.4sである。12000 1/cmから4000 1/cmの間の波数領域を記録する。転化率検査のために、アクリレート−モノマーの場合6160 1/cmでのビニルC−H−単結合の第1倍音振動によって引き起こされたIR吸光(このモノマーに特徴的であって、重合の間にモノマーが消費されるのに伴い減少する)を使用する。他のモノマーまたはモノマー混合物の場合、対応するビニルC−H−単結合の第1倍音振動によって引き起こされる、対応するIR吸光を追跡する。アクリレートモノマーの場合、6160 1/cmで、または他のモノマーの場合、対応する波数での吸光は、開始剤の初回添加による最初の開始前に出発値として役立ち、0%の転化率についての値に対応する。考慮された波数でベースラインともはや区別されない吸光は、100%の転化率に対応する。
【0101】

例1:
ラジカル重合にとって通常の2L−鋼製リアクターに、窒素雰囲気下で285gの2−エチルヘキシルアクリレート、285gのn−ブチルアクリレート、6gの2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび500gの酢酸エチルを用意する。リアクターを内部温度70℃に加熱し、0.6gのジベンゾイルペルオキシドを用いてモノマー混合物の開始を行う。1時間30分後に0.3gのベンゾイルペルオキシドを用いて再開始を行う。この時点で温度は85℃である。さらなる30分後に、本発明の調節剤として3%のアセチルシステイン(ACC)のアセトン/酢酸エチル(1:1)溶液35gおよびさらなる6gの2−ヒドロキシメチルアクリレートを添加する。この時点は、C=C−二重結合に対する使用されたモノマーの転化率72%に対応する(測定方式E)。さらなる希釈および最終開始後に、21時間30分後に40℃に冷却し、無色透明なポリマーが排出される。
【0102】
減圧乾燥器中で生成物の試料から溶媒を除去する。GPC分析(試験A)は、M(短鎖)=31000g/molおよびM(長鎖)=850000g/molの二モード分子量分布をもたらした。長鎖コポリマーの割合は78%、短鎖の割合は22%であった。
【0103】
重合溶液のさらなる試料を、0.6% Desmodur L75を用いて架橋反応させ、ドクターブレードを用いて厚さ50μmのシリコーン化ポリエステルフィルム上に塗り、乾燥庫の中で乾燥させる。感圧接着層の層厚は50μmであった。それを厚さ36μmのシリコーン化ポリエステルライナーの薄層で覆う。それで転写式接着フィルムが得られた。適切な寸法のストリップを試験法BおよびCに供する。3.1N/cmの接着力、437μmの微小剪断経路および97%の弾性成分の割合が生じた。
【0104】
試験法Dによる色測定から1.15のb値が生じた。検体は臭いを発生しなかった。
【0105】
例2(参照):
ラジカル重合にとって通常の2L鋼製リアクターに窒素雰囲気下で285gの2−エチルヘキシルアクリレート、285gのn−ブチルアクリレート、6gの2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび500gの酢酸エチルを用意する。リアクターを内部温度70℃に加熱し、0.6mgのジベンゾイルペルオキシドを用いてモノマー混合物の開始を行う。1時間30分後に0.3gのベンゾイルペルオキシドを用いて再開始を行う。この時点で温度は85℃であった。さらなる30分後に調節剤として120gのイソプロパノールおよびさらなる6gの2−ヒドロキシメチルアクリレートを添加する。この時点は、C=C−二重結合に対する使用されたモノマーの転化率69%に対応する(測定方式E)。さらなる希釈および最終開始後に、21時間30分後に40℃に冷却し、無色透明のポリマーが排出される。
【0106】
減圧乾燥器の中で生成物の試料から溶媒を除去する。GPC分析(試験A)は、M(短鎖)=30000g/molおよびM(長鎖)=800000g/molの二モード分子量分布をもたらした。長鎖コポリマーの割合は74%、短鎖の割合は26%であった。
【0107】
0.6% Desmodur L75を用いて重合溶液のさらなる試料を架橋反応させ、ドクターブレードを用いて厚さ50μmのシリコーン化ポリエステルフィルム上に塗り、乾燥庫の中で乾燥させる。感圧接着層の層厚は50μmであった。それを厚さ36μmのシリコーン化ポリエステルライナーの薄層で覆う。それで転写式接着フィルムが得られた。接着技術的検査用検体を調製する試みの際に、第1の剥離ライナーの除去に困難が生じた。感圧接着層は、試験法BおよびCにより試験するに足る凝集性を有さないことから、この試料をそれ以上試験しなかった。
【0108】
【表1】

【0109】
表1は、例の結果をまとめたものである。異なる調節剤を用いて、分子量分布に関して、特にモード性に関して類似の結果を達成できることが分かる。しかしながら、様々な調節系がポリマーのさらなる加工性に差を示すことが明らかになる(例2)。これに関する説明のアプローチは、調節物質として使用される本発明のアミノ酸が特に高い連鎖移動定数を有することにある。このことは、必要な調節物質を、例えばイソプロパノールのような公知の調節剤よりもはるかに少量で使用できるようにする。その際、例2においてより大量に使用されたイソプロパノールは、明らかに応用技術的特性に及ぼすマイナス効果の原因である。そのうえこの例は、本発明の方法が、その色の特性のため光学的に価値の高い接着利用に使用可能な(コ)ポリマーの提供を可能にすることを実証している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不飽和C=C−二重結合を有するモノマーまたはモノマー混合物を提供するステップ;
(b)開始剤の最初の添加によってラジカル(共)重合を開始するステップ;および続いて
(c)調節物質として少なくとも1種のアミノ酸を添加するステップ
を含むラジカル(共)重合法であって、調節物質の添加が、ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物の不飽和C=C−二重結合に対して50%の転化率の達成後に行われるラジカル(共)重合法。
【請求項2】
調節物質の添加が、ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物の不飽和C=C−二重結合に対して95%の転化率の達成までに行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)のアミノ酸が、ステップ(a)で提供されたモノマーまたはモノマー混合物に対して0.05〜5mol%の量で添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸が、チオール基、セラニル基およびヒドロキシ基含有アミノ酸から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
アミノ酸が、末端チオール基、セラニル基および/またはヒドロキシ基を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アミノ酸が、N−アセチルシステインである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
モノマー混合物が、少なくとも1種のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む、1〜6請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
モノマー混合物が、少なくとも70重量%の少なくとも1種のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む、1〜7請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法により入手可能な(コ)ポリマー。
【請求項10】
少なくとも一つの短鎖ポリマーモード(a)および一つの長鎖ポリマーモード(b)を有する(メタ)アクリレートコポリマーである、請求項9に記載の(コ)ポリマー:
(a)少なくとも5000g/molで最高100000g/molの分子量M(短鎖)を有する短鎖ポリマーモード、および
(b)少なくとも500000g/molで最高3000000g/molの分子量M(長鎖)を有する長鎖ポリマーモード。
【請求項11】
短鎖ポリマーモード(a)および長鎖ポリマーモード(b)の合計量に対して少なくとも50重量%の長鎖ポリマーモード(b)を含む、請求項10に記載の(コ)ポリマー。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一つに記載の(コ)ポリマーを含む感圧接着剤。
【請求項13】
請求項12に記載の感圧接着剤を含む感圧接着製品。

【公表番号】特表2013−516529(P2013−516529A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547476(P2012−547476)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070222
【国際公開番号】WO2011/083035
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】