説明

マルチモード波長掃引光源

【課題】より小型に且つ低コストに構成する。
【解決手段】半導体レーザ21の両端面21a、21bを無反射端面とし、一方の端面21aから出射された光を第1レンズ22によって集光して筐体50の窓50aに導き、窓50aに一端側が固定された光ファイバ23に入射させ、その一部を光ファイバ23の他端側に装着された光反射器24によって半導体レーザ21の一方の端面21aに戻し、半導体レーザ21の他方の端面21bから出射された光を第2レンズ28で平行光にして回折格子30へ所定の入射角で入射させ、その回折光を回動ミラー33によって逆光路で回折格子30に反射させ、回折格子30に対する回動ミラー33の角度によって決まる波長成分の光を半導体レーザ21の他方の端面21bに戻す構造であり、光ファイバ23の他端に装着された光反射器24を通過する光を出力光として出射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の近接した波長成分を含む光を出射し、且つその光の中心波長を掃引するマルチモード波長掃引光源に関し、その光源を小型化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
広い波長範囲を掃引可能な波長掃引光源として、外部共振器型のものが知られている。外部共振器型の波長掃引光源は、基本的に、光増幅素子としての半導体レーザと、半導体レーザを含む光路の両端に形成された反射器(一方は半導体レーザの一方の端面が用いられる)からなる外部共振器と、その外部共振器内にあって共振器長によって波長間隔が決まる励起波長のうち、特定領域の波長成分に対して選択性を示す波長選択部とを有し、共振器長に応じた波長間隔で励起される光のうち波長選択部で選択された波長成分を継続的に発振出力させるとともに、共振器長および波長選択部の選択波長を連続的に変化させることで所定範囲内で掃引する光を出射している。
【0003】
このような波長掃引光源の外部共振器の一般的な構成として、半導体レーザの一方の端面を一つの反射器として用い、他方の無反射端面から出射された光を固定の回折格子で受け、その回折光のうち特定波長領域の光を回動式のミラーによって回折格子に逆光路で戻して、回折格子とミラーの角度によって決まる特性波長領域の光に対する2度の波長選択を行い半導体レーザ側に戻す、所謂リトマン型のものが知られている。
【0004】
上記のような半導体レーザの一方の端面と回動式のミラーで二つの反射器を形成するとともに、半導体レーザからの出射光が回折格子に入射する角度と、回折格子に対する回動式のミラーの角度によって発振波長領域を限定する外部共振器型の光源において、出射光のスペクトラムに注目すると、共振器長で決まる波長間隔で励起される光のうちの一本だけを選択的に出射するシングルモード型と、共振器長で決まる波長間隔で励起される光の隣合う複数本の光を選択して出射するマルチモード型とがある。
【0005】
シングルモード型で光波長を掃引する場合、ミラーの回動に伴う共振器長の変化による励起波長の変化に追従して前記選択波長領域が変化しないと、モードホップ(発振光の波長が隣の励起波長にホップしてしまう現象)が起こってしまい、光が出力されない光波長領域が生じてしまう。そのために、半導体レーザ、回折格子およびミラーの位置関係が予め決められた特定条件を極めて高い精度で満たす必要があり、必然的にコスト高となる。
【0006】
これに対し、マルチモード型は、選択波長領域内に複数の励起成分を含み、その選択波長領域の幅に対して励起波長の間隔を十分短くすることで、選択波長領域で決まる擬似的な単峰のスペクトラムを形成する。このため、ミラーの回動に伴う選択波長領域の変化に対して、それに含まれる励起波長の変化が必ずしも同期していなくても選択波長領域で決まる擬似的に単峰のスペクトラムをもつ光を発振出力させることができる。このため、シングルモード型のように各光学素子の位置関係に格別の精度は要求されず、製造コストを格段に下げられるメリットがあり、厳しい測定精度が要求されない各種光学装置に利用できる。
【0007】
マルチモード波長掃引光源として、図6の構成のものが従来から知られている。
この光源は、一端面1aが所定の反射率で、他端面1bが無反射の半導体レーザ(LD)1と、半導体レーザ1の他端面1bから出射された光を集光するレンズ2と、レンズ2で集光された光を一端3a側で受けて内部に導く所定長の光ファイバ3と、光ファイバ3の他端3bから出射された光を受けて平行光にするレンズ4と、一面5a側に回折用の溝5b(紙面に直交する向きで)が設けられ、レンズ4から出射された光を一面5a側に対して所定入射角で且つ溝5bに直交する向きで受け入れる回折格子5と、回折格子5の一面5aに向けた反射面6aを、回折格子5の溝5bと平行な軸で回動させる回動ミラー6とを有している。また、半導体レーザ1の一端面1aを透過した光は、レンズ7によって、出射用光ファイバ8の一端に集光され、その出射用光ファイバ8の他端側から出射される。
【0008】
このように構成された光源では、半導体レーザ1の一端面1aから回動ミラー6の反射面6aに至る光路の長さ(共振器長)で決まる波長間隔で半導体レーザ1により光が励起され、そのうち、前記平行光の回折格子5への光入射角と、その回折格子5に対する回動ミラー6の角度によって決定される波長領域の光が選択的に半導体レーザ1側へ折り返され、継続的に発振出力され、その一部が半導体レーザ1の一端面1aを透過し、レンズ7を介して出射用光ファイバ8へ出射される。なお、共振器長によって励起波長は決まるが、その励起波長間隔は共振器長が長い程小さくなるから、前記波長選択領域内に多数の励起波長が含まれるようにするためには、光ファイバ3で光路長を稼げばよい。
【0009】
そして、回動ミラー6の角度変化に応じて励起波長とともに波長選択領域も変化するが、両方の変化の度合いが完全に同期していなくても、波長選択領域内には多くの励起波長成分が含まれているから、その波長選択領域で決まる擬似的な単峰のスペクトラムをもつ光が継続的に発振出力され、回動ミラー6の角度変化とともにその波長が変化することになる。
【0010】
なお、波長可変される光の出射は、上記したように半導体レーザ1の一端面1aを透過した光をレンズ7で集光して出射用光ファイバ8に入射させる場合の他に、回折格子5の0次回折光(図6で矢印Bで示す)をレンズで集光して出射用光ファイバへ入射させる場合がある。
【0011】
ここで、共振器長を稼ぐための光ファイバ3として、例えば数10cm〜数mのものを用いることで、1550nm波長帯のマルチモードにおける波長連続性や出射強度の安定性を確保している。
【0012】
なお、上記構成のマルチモード波長掃引光源は、例えば次の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−49785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記したようにマルチモード型の光源は、複数の近接した波長成分を含んだ波長選択領域で決まる擬似的に単峰のスペクトラムをもつため、シングルモード型に比べて出射光のスペクトラム幅は広くなるが、製造費等を含めて極めて安価にできる。このため、各種光学機器に内蔵されることが予測され、その適用範囲を拡げるために小型化が重要な課題となり、さらなる低コスト化が要求されている。
【0015】
これに対し、上記した従来構成の光源では、数10cm〜数mの長さを有する光ファイバ3の両側に、半導体レーザ1を含む光学系と、回折格子5、回動ミラー6を含む光学系とが別れて存在しており、しかも光ファイバの巻き込みには最低でも3cm程度の曲げ半径が必要であるので、光ファイバ3を含めた光学系全体を収容する大きさの筐体を用いることは装置が大型化することから採用できず、必然的に、光ファイバ3の両側の光学系をそれぞれ別の筐体10、11で覆う構造となる。各筐体には、半導体等の光学部品が含まれているため、シーム溶接等により、それぞれ窒素で封止しなければならない。さらに、各筐体10、11毎に温度の制御管理が必要となり、やはり装置全体を小型化できず、コスト高になる。
【0016】
また、上記従来構成の光源では、3つのレンズ2、4、7についての光軸調整が必要となり、しかも、これらの3つのレンズ2、4、7からの出射光を光ファイバ3の両端、出射用光ファイバ8の一端に高効率で結合するように筐体10、11に設けた導光用の窓の位置にアライメントして固定するための作業も必要であり、それらの作業工数によりさらなるコスト高を招くという問題もあった。
【0017】
本発明は、これらの問題を解決して、より小型に且つ低コストに構成できるマルチモード波長掃引光源を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明のマルチモード波長掃引光源は、
所定位置に光の通過が可能な窓を有する筐体(50)と
前記筐体内に固定され、両端面が無反射の半導体レーザー(21)と、
前記筐体内に固定され、前記半導体レーザの一方の端面から出射された光を集光して前記窓へ導く第1レンズ(22)と、
前記筐体の外側にあって、その一端側が前記窓の位置に固定され、前記第1レンズで集光された光を前記一端側に受け入れて他端側に伝搬させる所定長の光ファイバ(23)と、
前記光ファイバの前記他端側に設けられ、該光ファイバの前記他端から出射された光の一部を前記一端側に戻し、他部を出力光として通過させる光反射器(24)と、
前記筐体内に固定され、前記半導体レーザの他方の端面から出射された光を平行光にする第2レンズ(28)と、
前記筐体内に固定され、前記第2レンズを透過した光を所定入射角で一面側に受ける回折格子(30)と、
前記筐体内に設けられ、前記回折格子の前記一面側に対向する反射面を有し、前記回折格子に対して所定角度範囲往復回動可能に形成され、前記回折格子から前記反射面に直交する向きで出射された回折光を逆光路で前記回折格子に戻す回動ミラー(33)とを備え、
前記光ファイバの前記他端側の前記光反射器から、前記光ファイバ、前記第1レンズ、前記半導体レーザ、前記第2レンズおよび前記回折格子を経て、前記回動ミラーの反射面に至る共振器長によって決まる波長間隔で励起される光のうち、前記回折格子に対する前記回動ミラーの角度によって中心波長が決まる波長選択領域内の光を選択的に連続発振させてその一部を出力光として前記光反射器から出射する。
【0019】
また、本発明の請求項2のマルチモード波長掃引光源は、請求項1記載のマルチモード波長掃引光源において、
前記回動ミラーの反射面と、前記回折格子の前記一面またはその延長面とで挟まれる領域に平面ミラー(29)が配置され、
前記半導体レーザ、前記第1レンズおよび前記第2レンズが、前記回折格子の前記一面またはその延長面を挟んで、前記回動ミラーと反対側に配置されており、
前記半導体レーザの前記他方の端面から前記第2レンズを介して出射された光を前記平面ミラーで反射させて前記回折格子に入射させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項3のマルチモード波長掃引光源は、請求項1または請求項2記載のマルチモード波長掃引光源において、
前記光反射器の前記出力光が出力される側に光アイソレータ(25)を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明のマルチモード波長掃引光源は、半導体レーザの両端面を無反射端面とし、その一方の端面から出射された光を第1レンズによって集光して筐体の窓に導き、その窓に一端側が固定された光ファイバに入射させ、その一部を光ファイバの他端側に装着された光反射器によって筐体内の半導体レーザの前記一方の端面に戻し、半導体レーザの他方の端面から出射された光を第2レンズで平行光にして回折格子へ所定の入射角で入射させ、その回折光を回動ミラーによって逆光路で回折格子に反射させ、回折格子に対する回動ミラーの角度によって決まる波長成分の光を半導体レーザの他方の端面に戻す構造であり、さらに、光ファイバの他端に装着された光反射器を通過する光を出射させるようにしている。
【0022】
このため、光ファイバを除く光学系、即ち、半導体レーザ、第1レンズ、第2レンズ、回折格子および回動ミラーを、単一の筐体に収容させることができ、それらを互いに近接配置させることで、筐体全体を格段に小さくすることができ、温度調整を行う場合でも、従来の2筐体タイプが必要とした2系統の制御を1系統に減らすことができ、小型で低コストに実現できる。
【0023】
また、光軸合わせが必要なレンズは、従来の3つのレンズから、第1レンズと第2レンズの二つだけとなり、しかも、筐体に対して光ファイバをアライメントして固定する作業も従来の3箇所から1箇所へ大幅に減らせるので、組み立て作業工数を大幅に減らすことができ、さらに低コスト化できる。
【0024】
また、半導体レーザから第2レンズを介して出射された光を平面ミラーで反射させて回折格子に入射させる構成では、回動ミラーと回折格子の間隔を狭くでき、それらの光学部品に対して半導体レーザと二つのレンズの位置の自由度が大きくなり、光学系全体をより小さなスペースに収容でき、筐体をさらに小型化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】実施形態の要部の内部概略図
【図3】実施形態の要部の概略構造図
【図4】本発明の別の実施形態の構成図
【図5】波長校正機能を含む構成の要部を示す図
【図6】従来装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したマルチモード波長掃引光源20の構成を示している。
【0027】
このマルチモード波長掃引光源20は、内部の気密を保つための筐体50を有している。この筐体50の所定位置には導光用の窓50aが設けられている。また、図示しないが、筐体50には、電源供給用の端子、回動ミラー駆動信号供給用の端子、温度制御する場合には、温度センサの信号出力用の端子、ペルチェ素子などの温度制御素子駆動用の端子が設けられているものとする。
【0028】
筐体50の内部には、半導体レーザ(LD)21、第1レンズ22、第2レンズ28、平面ミラー29、回折格子30および回動ミラー33が収容されている(なお、温度制御管理を行う場合には、温度センサやペルチェ素子などの温度制御素を筐体の内部あるいは外表部に設ける)。
【0029】
半導体レーザ(LD)21は、両方の端面21a、21bが無反射となるものを用いており、一方の端面21aが筐体50の窓50aに正対する向きで筐体内に固定されている。この一方の端面21aと窓50aの間に第1レンズ22が固定され、半導体レーザ21の一方の端面21aから出射された光は、第1レンズ22によって窓50aを通って所定位置に集光される。この集光位置には、筐体50の外部にある所定長(例えば数10cm〜数m)の光ファイバ23の一端23a側先端が図示しないホルダにより固定保持され、第1レンズ22によって集光された光はこの光ファイバ23の一端23a側に入射されて他端23b側へ伝搬される。
【0030】
なお、両端面が無反射の半導体レーザ21は、端面を無反射コーティング処理するとともに、図2の(a)、(b)示すように、素子内の光導波路21cの少なくとも両端部が、素子の両端面21a、21bに対して所定の傾き(非直交)をもって交わるように形成し、光導波路21cの端部での反射成分(点線矢印)が光導波路21cに戻らないようにすることで素子端面間での実質的な反射率を下げている。
【0031】
光ファイバ23の他端23bには、所定の反射率を有する光反射器24が装着されている。光反射器24は、光ファイバ23から一端側に入射した光の一部を反射し、他部を出力光として他端側へ通過させる。また、この光反射器24の他端側には光アイソレータ25が接続されている。光アイソレータ25は、光ファイバ23側から光反射器24を透過した光成分を一端側に受け入れて他端側へ出射し、その他端側に接続された出射用光ファイバ等(図示せず)へ高い透過率で通過させるとともに、他端側からの光反射器24側への光の入射を阻止して、その光アイソレータ25以降の出力光用の光路が、共振器に含まれないようにしている。なお、光アイソレータ25を備えない構成にしてもよい。
【0032】
一方、半導体レーザ21の他方の端面21bから出射された光は、第2レンズ28によって平行光に変換されて、回折格子30の一面30aと回動ミラー33の反射面(またはそれらの延長面)の間に配置された平面ミラー29を介して回折格子30の一面30a側に入射される。
【0033】
このように、半導体レーザ21から出射された光を平面ミラー29で反射させて回折格子30の一面30aに入射させる構造にすることで、回折格子30と回動ミラー33の間隔を狭くした場合でも、それらの位置に関わらず、半導体レーザ21、第1レンズ22、第2レンズ28の直列の光学系の配置に大きな自由度を与えることができ、図のように各光学系を近接させて、それらを収容する筐体50の大きさを最小化することができる。
【0034】
回折格子30の一面30a側には、入射光の光軸と直交する回折用の溝30bが所定間隔で設けられており、第2レンズ28から平面ミラー29を介して入射された光がその波長に応じた角度で出射される。
【0035】
回動ミラー33は、その反射面33aを回折格子30の一面30a側に対向させた状態で配置されている。この回動ミラー33には、平板状のミラー本体(後述する反射板36)を、回折格子30の溝30bと平行な軸で所定の角度範囲内を往復回動させる回動駆動手段34が設けられている。
【0036】
回動ミラー33は、半導体基板に対するエッチング技術を用いて、軽量小型で、安定で且つ高速な掃引が可能に構成された所謂MEMS型のものであり、その概略構造の一例を図3に示す。
【0037】
この回動ミラー33は、横長の長方枠状のフレーム板35と、そのフレーム35の枠内に同心に配置された横長の長方形の反射板36と、フレーム35の上板35aの中央下縁から反射板36の上辺中央まで細く延びた上連結部37と、フレーム35の下板35bの中央上縁から反射板36の下辺中央まで細く延びた下連結部38とが、一枚の半導体基板に対するエッチング処理で一体形成されている。反射板36の表面は光を高い反射率で反射する処理(例えば金属膜形成)がなされている。
【0038】
両連結部37、38は、反射板36を左右方向に2等分する中心線に沿っており、しかも元になる基板の厚さと同程度に細く形成されていて、長さ方向に沿って捩れ変形が自在となっている。したがって、反射板36は両連結部37、38の捩れにより、それを結ぶ中心線を軸にして回動できる。
【0039】
また、フレーム板35、反射板36および両連結部37、38の表面は、導電性の膜(図示せず)に覆われており、フレーム35の横板35c、35dの少なくとも一方(この場合、横板35c)には絶縁体からなるスペーサ39が固定され、そのスペーサ39の上には導電性を有する電極板40が反射板36の一端側に対向するように固定されている。
【0040】
そして、フレーム35の表面の導電膜と電極板40との間に電圧を印加すれば、反射板36の一端とそれに対向する電極板40との間に吸引力が発生し、反射板36が回動することになる。ここで、反射板36と両連結部37、38の形状によって決まる反射板36の固有振動数(100Hz〜数10kHz)と等しい周波数の電圧信号Vを駆動信号発生器41から供給することで、反射板36を共振させることができ、少ない電力で大きな振幅の往復回動を得ることができる。なお、図1で示した前記した回動駆動手段34は、上記電極板40と駆動信号発生器41を含むものである(ただし、駆動用の信号Vは、半導体レーザ21への電源等とともに外部から供給してもよい)。
【0041】
このように構成されたマルチモード波長掃引光源20では、光ファイバ23の他端の光反射器24から回動ミラー33の反射面33aの間で共振器が形成され、その共振器長に応じた狭い波長間隔(例えば0.1pm)で光が励起されることになり、その光のうち、回折格子30への光入射角、回動ミラー33の角度に応じた波長領域(例えば、波長幅100pm)の光が半導体レーザ21側に戻されて連続的に発振出力され、その一部の光が光反射器24を通過し、光アイソレータ25を介してこの光源の出力光として出射される。
【0042】
そして、回動ミラー33の角度が可変されることにより、発振出力される光の中心波長が連続的に変化して、所定波長範囲(例えば1550±100nm)を掃引される。
【0043】
この構造のマルチモード掃引波長光源21では、光軸合わせが必要なレンズは、第1レンズ22、第2レンズ28の二つで済み、しかも光ファイバ23の一端23aのみを筐体50に固定すればよい。
【0044】
したがって、従来構造に比べて作業コストが大幅に下がり、しかも、ファイバ固定用のスペースも片端分減らすことができ、格段に小型化できる。
【0045】
また、光ファイバ23の他端に装着する光反射器24や光アイソレータ25は、通常インライン型(ファイバ端部を差し込むだけで装着される同軸コネクタ接続構造)と呼ばれる市販のものを用いることができ、光ファイバコネクタを介して容易に出力光を出射用光ファイバに結合することができる。
【0046】
なお、ここでは平面ミラー29を用いていたが、図4のように、回動ミラー33と回折格子30の間隔を拡げ、半導体レーザ21から出射されて第2レンズ28を通過した光を直接回折格子30に入射させることもできる。この場合、光学系としては比較的大きな回動ミラーが必要となり、その回動ミラーと回折格子との間隔も広がるので、装置の小型化という点では若干不利であるが、レンズの光軸合わせや筐体に対するファイバ固定作業の工数の削減効果は前記実施形態と同様に得られ、1筐体である点とその作業工数削減から従来光源より格段に小型化で低コストを実現できる。
【0047】
また、図5の(a)、(b)に示すように、回折格子30の入射光に対する0次回折光(点線矢印で示す)を、エタロン等のように通過光波長が複数あり且つそれが安定で既知の光フィルタ60に入射し、その出射光の強度を受光器61で検出するようにすれば、掃引中の出射光波長が特定波長になったタイミングを特定でき、この特定されたタイミングと既知波長とから掃引周期内における各タイミングと波長の関係を求めることができ、波長校正が可能となる。
【0048】
勿論、図6に示した場合と同じように、回折格子30の0次回折光を別系統の出力光とすることもできる。この場合には、0次回折光をレンズとアイソレータを介して出射用の光ファイバ等に入射すればよい。
【0049】
また、図5の(c)のように、平面ミラー29を用いた構成において、平面ミラー29をハーフミラーで構成し、その平面ミラー29を透過した光を、回動ミラー33との間に設けた別の平面ミラー29′に入射させその反射光を別系統の出力光とすることや、図示しないがさらにこの平面ミラー29′をハーフミラーにして、その透過光をさらに別の平面ミラーで受けてさらに別系統の出力光とすることもでき、光ファイバ23の端部から出力される光の他に、0次回折光を含め複数系統の出力光を出射させることができる。
【符号の説明】
【0050】
20……マルチモード波長掃引光源、21……半導体レーザ、22……第1レンズ、23……光ファイバ、24……光反射器、25……光アイソレータ、28……第2レンズ、29……平面ミラー、30……回折格子、33……回動ミラー、34……回動駆動手段、35……フレーム板、36……反射板、37……上連結部、38……下連結部、39……スペーサ、40……電極板、41……駆動信号発生器、50……筐体、50a……窓、60……光フィルタ、61……受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に光の通過が可能な窓を有する筐体(50)と
前記筐体内に固定され、両端面が無反射の半導体レーザー(21)と、
前記筐体内に固定され、前記半導体レーザの一方の端面から出射された光を集光して前記窓へ導く第1レンズ(22)と、
前記筐体の外側にあって、その一端側が前記窓の位置に固定され、前記第1レンズで集光された光を前記一端側に受け入れて他端側に伝搬させる所定長の光ファイバ(23)と、
前記光ファイバの前記他端側に設けられ、該光ファイバの前記他端から出射された光の一部を前記一端側に戻し、他部を出力光として通過させる光反射器(24)と、
前記筐体内に固定され、前記半導体レーザの他方の端面から出射された光を平行光にする第2レンズ(28)と、
前記筐体内に固定され、前記第2レンズを透過した光を所定入射角で一面側に受ける回折格子(30)と、
前記筐体内に設けられ、前記回折格子の前記一面側に対向する反射面を有し、前記回折格子に対して所定角度範囲往復回動可能に形成され、前記回折格子から前記反射面に直交する向きで出射された回折光を逆光路で前記回折格子に戻す回動ミラー(33)とを備え、
前記光ファイバの前記他端側の前記光反射器から、前記光ファイバ、前記第1レンズ、前記半導体レーザ、前記第2レンズおよび前記回折格子を経て、前記回動ミラーの反射面に至る共振器長によって決まる波長間隔で励起される光のうち、前記回折格子に対する前記回動ミラーの角度によって中心波長が決まる波長選択領域内の光を選択的に連続発振させてその一部を出力光として前記光反射器から出射することを特徴とするマルチモード波長掃引光源。
【請求項2】
前記回動ミラーの反射面と、前記回折格子の前記一面またはその延長面とで挟まれる領域に平面ミラー(29)が配置され、
前記半導体レーザ、前記第1レンズおよび前記第2レンズが、前記回折格子の前記一面またはその延長面を挟んで、前記回動ミラーと反対側に配置されており、
前記半導体レーザの前記他方の端面から前記第2レンズを介して出射された光を前記平面ミラーで反射させて前記回折格子に入射させることを特徴とする請求項1記載のマルチモード波長掃引光源。
【請求項3】
前記光反射器の前記出力光が出力される側に光アイソレータ(25)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のマルチモード波長掃引光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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