説明

マルチライン電話機

【課題】複数ラインを保留しながら、通話中の呼が切断、又は被切断された時、利用者が所望する順位で次に保留解除するラインを決定できるようにする。
【解決手段】VoIP電話システムにおけるマルチライン電話機であって、ラインの呼を保留解除する判定基準を設定テーブルに設定可能とする。そして、複数ラインの呼を保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された時、前記設定テーブルに格納された判定基準に基づいて保留中のラインの内から1ラインを選択して保留解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VoIP(Voice over Internet Protocol)電話システムにおいて、同時に複数ライン(又は複数電話番号)を利用可能なマルチライン電話機に関するものであり、特に、複数ラインの呼を保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された時、前記判定基準設定テーブルに格納された判定基準に基づいて保留中のラインの内から1ラインを選択して保留解除するようにしたマルチライン電話機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IP(Internet Protocol)ネットワークを使用したIP電話サービスが行なわれている。IP電話システムにおいて、送話側からの音声はディジタル化され、さらにIPパケットに変換され、IPネットワーク上を流れ、通話先(受話側)まで到達する。通話先において受信されたIPパケットは元の情報に復元され、こうして送話側と通話先との間で通話を行なうことができる。このIP電話システムは、既存の電話網と比べて、運用・保守・管理コストを削減することができるため、広く使用されつつある。
【0003】
IP電話システムにおいて、特定のIP電話機に着信があった場合、相手側(発信側)IP電話機と着信側IP電話機との間で、音声コーデックやパケット長などの接続メディアを確認しあった後に接続、通話が開始される。このプロセスを一般にはネゴシエーションプロセスという。ネゴシエーションプロセスは、例えば現在市販されているVoIP(Voice over Internet Protocol)システムを用いて行われる。
【0004】
このネゴシエーションプロセスは、特定のIP電話機に着信があり、接続、通話を開始する前に発信側と着信側のIP電話機の通信環境を整合させるために行われる。
【0005】
VoIPシステムの代表的な呼制御プロトコルとしてSIP(Session Initiation Protocol)がある。このSIPのサーバによる呼制御にはINVITEと呼ばれる発信用の制御コマンドがある。INVITEコマンドは発信側のIP電話機より送信先に送られる最初の制御メッセージで、このメッセージには、宛先アドレス、発信者アドレス、通信能力情報のほか発信者名や会社名などをIP電話機毎に発呼用の付帯情報として着信先に送ることができる。
【0006】
IPネットワークでは、IPアドレスのような機器に割当てられたアドレスを使用することによって相手を一意に認識する必要がある。このため、一般に、ゲートキーパと呼ばれる装置を使用する。ゲートキーパは、IP電話機に割当てられた電話番号とIPアドレスとを関連付けたデータベースを管理しており、IP電話機からの電話番号の指定に応じ、対応するIPアドレスを検索することによって、通話先のIP電話機のIPアドレスを指定できるようにされている。
【0007】
VoIP電話システムは、IPネットワークを利用して音声信号を送る技術である。そのVoIP電話システムにおける電話機には、例えば、特許文献1(特開2005−191881号公報)、特許文献2(特開2004−356746号公報)に示されるように、着信の電話番号を複数設定してそれらを切り替えて使えるようにしたマルチライン電話機がある。
【0008】
特許文献1に開示されたマルチライン電話機は、複数の電話番号が割り当てられたマルチライン対応のSIP電話機が、ネットワークを介して接続されるVoIPシステムであって、被保留状態で、保留されている電話番号以外のラインを使用中のSIP電話機に、保留側のSIP電話機から保留解除要求があった場合、被保留側のSIP電話機は、保留解除要求を受け付けた後、保留側のSIP電話機に逆に保留要求を送って保留する構成としたものである。
【0009】
また、上記特許文献2に開示されたマルチライン電話機は、1以上の設定項目と該設定項目の設定内容からなる設定テーブルを記憶するRAMを有するVoIP電話端末と、前記設定テーブルの1以上の設定項目と該設定項目の初期設定内容を有する初期設定ファイルをVoIP端末に出力するサーバとを有し、VoIP電話端末はサーバの初期設定ファイルに基づいてVoIP電話端末のRAMに記憶される設定テーブルを初期化する制御回路を有するVoIPシステムにおいて、VoIP電話端末の制御回路は、前記初期化において前記初期設定ファイルにない前記設定テーブルの設定項目の内容は変更せず、前記初期設定ファイルに同一の項目はあるがその内容はない前記設定テーブルの設定項目の内容を削除するように構成したものである。
【0010】
マルチライン電話機には、例えば、最大25ライン(25個の電話番号)を同時利用可能なものがあり、そのような電話機では、理論上、24ラインを保留しながら、残りの1ラインで通話することが可能となる。そのような電話機では、複数ラインを保留しながらある1ラインで通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された場合、今まで保留されていた複数のラインの内、次にどのラインを保留解除してアクティブラインにするかが固定的に扱われていた。例えば、各電話機において、各ラインにライン番号が付されていて、保留されているラインの内、ライン番号が最も小さいラインをアクティブラインにするというようにされていた。
【特許文献1】特開2005−191881号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開2004−356746号公報(図1、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来のマルチライン電話機では、同時に多数のラインを保留するような状態が発生している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断されて、いずれかのラインの呼を保留解除するかが前述したように固定的に扱われていたため、電話機メーカ側が提供する優先順位に従ったものになり、必ずしも利用者が所望する順位で保留解除ができないという問題点があった。
【0012】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、複数ラインの呼を保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された時、前記判定基準設定テーブルに格納された判定基準に基づいて保留中のラインの内から1ラインを選択して保留解除するようになせば、上記の問題点を解消し得ることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、マルチライン電話機において、複数ラインを保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された場合、利用者が所望する順位で保留解除ができるようにしたマルチライン電話機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
VoIP電話システムにおけるマルチライン電話機であって、ラインの呼を保留解除する判定基準を設定可能な判定基準設定テーブルと、複数ラインの呼を保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された時、前記判定基準設定テーブルに格納された判定基準に基づいて保留中のラインの内から1ラインを選択して保留解除する保留解除手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記判定基準として、保留時間の長い呼を優先することを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1又は請求項2にかかる発明において、前記判定基準を、発番号通知機能により取得した相手先電話番号に基づいて設定することを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項にかかる発明において、前記判定基準を、着信した自電話番号に基づいて設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマルチライン電話機は、次のような効果を奏する。
【0019】
すなわち、請求項1にかかる発明においては、ラインの呼を保留解除する判定基準を設定可能とし、複数ラインの呼を保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された時、利用者により設定された判定基準に基づいて保留中のラインの内から1ラインを選択して保留解除するようにした。その結果、複数ラインを保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された場合、利用者が所望する順位で保留解除ができるようになる。
【0020】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるマルチライン電話機において、前記判定基準として、保留時間の長い呼を優先するようにしたので、長く待たせた相手から順に保留解除でき、極端に長時間保留で待たせることを少なくできる。
【0021】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1又は請求項2にかかるマルチライン電話機において、前記判定基準を、発番号通知機能により取得した相手先電話番号に基づいて設定するようにしたので、重要顧客,取引先等に、長時間保留で待たせることを少なくできる。
【0022】
また、請求項4にかかる発明においては、請求項1ないし請求項3の何れかにかかるマルチライン電話機において、前記判定基準を、着信した自電話番号に基づいて設定するようにしたので、外部の人からの電話である可能性が高い外線番号で受けた電話を優先させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのマルチライン電話機を例示するものであって、本発明をこの実施例のマルチライン電話機に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のマルチライン電話機にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明のマルチライン電話機を適用するVoIP電話システムの構成を示すブロック図である。このVoIP電話システムは、マルチライン対応の電話機A,B,C,・・・,Nなどと、ルータ20とゲートウェイ30と呼制御サーバ40とから構成される。電話機A,B,C,・・・,N、ルータ20、ゲートウェイ30及び呼制御サーバ40は、LAN13により接続されており、呼制御サーバ40は、SIP(Session Initiation Protocol)プロトコルを適用したSIPサーバを用いることができる。
【0025】
電話回線網12に接続された加入者電話機14から電話機A,B,C,・・・,Nへの呼はゲートウェイ30を介して行われ、呼制御サーバ40の呼接続制御のもとで電話機A,B,C,・・・,Nに接続される。また、ルータ15に接続される他のIP電話システムに設置された電話機からの呼は、インターネット網11、ルータ20を介して呼制御サーバ40の呼接続制御のもとで電話機A,B,C,・・・,Nに接続される。なお、図1において電話機A以外の電話機B,C,・・・,Nはその構成の図示を省略しているが、電話機Aと同様の構成である。
【0026】
電話機A50は、制御部501、音声送受話部502、表示部503、入力部504、メモリ505、内蔵時計506を備えて構成される。制御部501はRAM、ROMを有するマイクロプロセッサから構成され、ROMに記憶された制御プログラムに基づいて各部を制御する。音声送受話部502はマイク、スピーカからなり通話に使用される。
【0027】
表示部503は液晶表示ユニットなどから構成され、電話機A50の各種設定画面や着信電話の表示などに使用される。入力部504は英数キー、機能キーなどを有し、電話番号入力や発信など各種操作に使用される。
【0028】
メモリ505は、後述する設定テーブルなどを記憶する。内蔵時計506は、現在日時を計時したり、通話中に保留になった呼の保留時間を計時したりする。
【0029】
電話機A50に割り当てられた複数の回線(電話番号)の何れかに着信があった場合、呼制御サーバ40の呼接続制御のもとで電話機A50の該当回線に接続がなされるが、同時に複数の回線に着信があった場合には、既に接続されているアクティブライン(通話中の呼)以外の回線の呼は保留される。アクティブラインにおける通話が終了して回線が切断されると、保留されていた呼を接続してその回線がアクティブラインになる。
本発明によれば、メモリ505にアクティブラインとして通話中の呼が切断又は被切断された時に、保留されていた呼のうちから、保留を解除して次にアクティブラインとする回線の選択基準を設定しておくことにより、ユーザが所望する優先度で保留中の呼を保留解除して接続するようにしたものである。
【0030】
図2は、マルチライン電話機の一例を示す図である。図2において、507はラインキー、508は液晶画面、509は保留ボタンである。ラインキー507は、ランプ内蔵の複数のキーがあり、入力部504の操作により、各キー毎に内線あるいは外線の電話番号が設定されている。また、内蔵のランプで、そのキーに割り当てられているラインの状態を、例えば、通話中は点灯し、保留中は点滅するなどして知らせる。液晶画面508は、通話や設定に係る情報を表示する。保留ボタン509は、通話を保留状態にする場合に用いられる。
【0031】
このような電話機において、複数ラインを保留しながら通話することが起こり得るが、そのような状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された場合、保留されていた複数のラインの内、どのラインを保留解除してアクティブラインにするかを、利用者が所望する優先順に従って自動的に決定する。そのため、本発明のマルチライン電話機では、最優先保留呼の判定基準を、利用者が事前に設定可能にし、例えば、図3に示すような判定基準設定テーブルをメモリ505に格納しておく。
【0032】
判定は、保留状態にある呼の保留時間,相手先電話番号,自電話番号等に基づいて行う。その内、保留時間は、保留時間が長い順に保留解除するラインを決定する。その際、保留時間は、内蔵時計506で計時してもよいし、別途、タイマーを設けてもよい。
【0033】
また、相手先電話番号は、相手側の電話番号に優先順位を設定し、それに基づいて保留解除するラインを決定する。優先順位の設定は、重要顧客,取引先等により電話番号をグループ化して、各グループ毎に優先順位を付けたり、グループに入らないものは内線番号より外線番号を優先するというように、予め設定しておく。その際、個別の番号単位で設定してもよい。なお、相手先電話番号は、発番号通知機能により取得することができる。
【0034】
また、自電話番号は、その電話機に割り当てられている電話番号の内、どの番号に着信した呼であるかにより優先順位を設定し、それに基づいて保留解除するラインを決定する。例えば、内線番号に着信した呼より外線番号に着信した呼を優先するというように設定できるし、個々の電話番号毎に優先順位を設定してもよい。
【0035】
これら保留時間,相手先電話番号,自電話番号の内、どの項目で判定するかは、判定する項目のコードにより指定できる。その際、一項目だけ指定してもよいし、同時に複数項目を指定してもよい。複数項目を指定する場合として、例えば、保留時間と相手先電話番号を指定すると、保留されている複数の呼の相手先電話番号が、同じグループに属する場合、保留時間が長い方の呼を優先するということが可能になる。
【0036】
保留の解除は次のようにして行われる。例えば、判定項目が保留時間に設定されていて、図4に示すように、ライン1で通話中、ライン2,3が保留になっている場合、ライン1の通話が終了して呼が切断されると、アクティブラインは保留時間の長いライン2に自動変更され、ライン2の相手先情報が液晶画面508に表示される。その後、保留ボタン509の押下、あるいは受話器を上げるなどの操作によって、ライン2の保留呼が保留解除される。
【0037】
なお、液晶画面508には該当ラインで保留している相手先情報(電話番号や電話帳登録名など)が表示され、また、相手先情報に基づく保留音鳴り分け機能が利用可能な場合には、該当ラインの相手先に応じた保留音がスピーカから鳴動している状態とすることができる。このとき、ユーザは特に操作を行う必要はない。その後、液晶画面508に表示されている相手先情報を目視確認し、簡単な保留解除操作(保留解除ボタン押下など)により、保留を解除すれば、自動的に最優先で対応すべき保留呼との通話に復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のマルチライン電話機を適用するVoIP電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】マルチライン電話機の一例を示す図である。
【図3】最優先保留呼の判定基準設定テーブルの一例を示す図である。
【図4】各ラインの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
11…インターネット網
12…電話回線網
13…LAN
14…加入者電話機
15,20…ルータ
30…ゲートウェイ
40…呼制御サーバ
50…マルチライン電話機
501…制御部
502…音声送受話部
503…表示部
504…入力部
505…メモリ
506…内蔵時計
507…ラインキー
508…液晶画面
509…保留ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VoIP電話システムにおけるマルチライン電話機であって、ラインの呼を保留解除する判定基準を設定可能な判定基準設定テーブルと、複数ラインの呼を保留しながら通話している状態から、通話中の呼が切断、又は被切断された時、前記判定基準設定テーブルに格納された判定基準に基づいて保留中のラインの内から1ラインを選択して保留解除する保留解除手段を備えたことを特徴とするマルチライン電話機。
【請求項2】
前記判定基準として、保留時間の長い呼を優先することを特徴とする請求項1に記載のマルチライン電話機。
【請求項3】
前記判定基準を、発番号通知機能により取得した相手先電話番号に基づいて設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマルチライン電話機。
【請求項4】
前記判定基準を、着信した自電話番号に基づいて設定することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のマルチライン電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−166941(P2008−166941A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351947(P2006−351947)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】