説明

マルチ画面表示装置

【課題】本発明は、バックライトに故障が生じてもマルチ画面全体の輝度を均一に保つことが可能なマルチ画面表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によるマルチ画面表示装置において、マスター液晶表示装置およびスレーブ液晶表示装置の各々は、グラデーション補正部5によって補正されたエリアの輝度を故障前の輝度まで高めるように、あるいはそれができない場合は所定の輝度まで高めるように各バックライトの輝度補正であるバックライト輝度補正を行うバックライト輝度補正手段を備え、マスター液晶表示装置は、故障前の輝度まで高めることができない場合において、スレーブ液晶表示装置から受信したバックライト輝度補正の内容に基づいてマルチ画面表示装置全体の輝度を補正する補正指示を作成して自身で輝度補正を行うとともにスレーブ液晶表示装置に送信し、スレーブ液晶表示装置に補正指示に従った輝度補正を行わせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液晶表示装置を配列して一画面を構成するマルチ画面表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の液晶表示装置を組み合わせて大画面を構成するマルチ画面表示装置において、液晶表示装置の液晶パネルを照明するバックライトとして、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を配列して構成されたLEDバックライトを用いるものがある。
【0003】
従来のLEDバックライトを用いた液晶表示装置には、表示エリアを複数のサブエリアに分割し、当該サブエリアごとに対応するLEDバックライトの発光輝度を制御することによって、液晶表示装置全体の輝度むらを低減するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−71603号公報(第3〜12頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の液晶表示装置を用いてマルチ画面表示装置を構成した場合において、マルチ画面を構成する各液晶表示装置のバックライトを構成する複数のLEDのうちの一部のLEDが故障等によって不点灯となると、液晶表示装置に映像を出力して表示し続けることは可能であるが、不点灯のLEDが存在するエリアの輝度が低下するため、表示画面の一部分に輝度低下が生じてマルチ画面全体としての輝度の均一性が損なわれてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、バックライトに故障が生じてもマルチ画面全体の輝度を均一に保つことが可能なマルチ画面表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明によるマルチ画面表示装置は、マスターの液晶表示装置であるマスター液晶表示装置と、当該マスター液晶表示装置と通信可能に接続された少なくとも1つ以上のスレーブの液晶表示装置であるスレーブ液晶表示装置とを配列して一画面を構成したマルチ画面表示装置であって、マスター液晶表示装置およびスレーブ液晶表示装置の各々は、画面を複数のエリアに分割した各エリアを担当する複数のバックライトと、各バックライトの点灯制御をそれぞれ行う複数のバックライト制御手段と、各バックライトの故障をそれぞれ検出する複数の故障検出手段と、故障検出手段によって故障が検出されたバックライトに対応するエリアである故障エリアの輝度と、故障エリア以外のエリアの輝度との間でデジタル信号処理にて輝度補正を行うデジタル信号輝度補正手段と、デジタル信号輝度補正手段によって補正されたエリアの輝度を、故障前の輝度まで高めるように、あるいは、それができない場合は所定の輝度まで高めるように各バックライトの輝度補正であるバックライト輝度補正を行うバックライト輝度補正手段とを備え、マスター液晶表示装置は、故障前の輝度まで高めることができない場合において、スレーブ液晶表示装置からバックライト輝度補正の内容を受信し、当該バックライト輝度補正の内容に基づいてマルチ画面表示装置全体の輝度を補正する補正指示を作成して自身で輝度補正を行うとともにスレーブ液晶表示装置に送信し、スレーブ液晶表示装置に補正指示に従った輝度補正を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、マスター液晶表示装置およびスレーブ液晶表示装置の各々は、画面を複数のエリアに分割した各エリアを担当する複数のバックライトと、各バックライトの点灯制御をそれぞれ行う複数のバックライト制御手段と、各バックライトの故障をそれぞれ検出する複数の故障検出手段と、故障検出手段によって故障が検出されたバックライトに対応するエリアである故障エリアの輝度と、故障エリア以外のエリアの輝度との間でデジタル信号処理にて輝度補正を行うデジタル信号輝度補正手段と、デジタル信号輝度補正手段によって補正されたエリアの輝度を、故障前の輝度まで高めるように、あるいは、それができない場合は所定の輝度まで高めるように各バックライトの輝度補正であるバックライト輝度補正を行うバックライト輝度補正手段とを備え、マスター液晶表示装置は、故障前の輝度まで高めることができない場合において、スレーブ液晶表示装置からバックライト輝度補正の内容を受信し、当該バックライト輝度補正の内容に基づいてマルチ画面表示装置全体の輝度を補正する補正指示を作成して自身で輝度補正を行うとともにスレーブ液晶表示装置に送信し、スレーブ液晶表示装置に補正指示に従った輝度補正を行わせるため、バックライトに故障が生じてもマルチ画面全体の輝度を均一に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1によるマルチ画面表示装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1による液晶表示装置の表示エリアの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1による電圧監視部の配置の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1による液晶表示装置(スレーブ機)の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1による液晶表示装置(マスター機)の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1によるグラデーション補正部による補正の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1による液晶表示装置におけるグラデーション補正後の水平方向の輝度のダイナミックレンジの一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1による液晶表示装置におけるグラデーション補正後の垂直方向の輝度のダイナミックレンジの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1による液晶表示装置におけるグラデーション補正後の水平方向のダイナミックレンジの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1による液晶表示装置における映像の入力信号に対する出力輝度の特性の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2による電圧監視部の配置の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2による液晶表示装置の表示エリアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。
【0011】
〈実施の形態1〉
図1は、本発明の実施の形態1によるマルチ画面表示装置の構成を示す図である。図1に示すように、マルチ画面表示装置は、4つの液晶表示装置100〜103を備えており、当該4つの液晶表示装置100〜103によってマルチ画面(一画面)を構成している。また、液晶表示装置100〜103のうち、液晶表示装置100(マスター液晶表示装置)はマスターの液晶表示装置であり(図1のマスターセット)、液晶表示装置101〜103(スレーブ液晶表示装置)は液晶表示装置100と通信可能に接続されたスレーブの液晶表示装置である(図1のスレーブセット1〜3)。すなわち、本実施の形態1によるマルチ画面表示装置は、マスターの液晶表示装置であるマスター液晶表示装置と、当該マスター液晶表示装置と通信可能に接続された少なくとも1つ以上のスレーブの液晶表示装置であるスレーブ液晶表示装置とを配列して一画面を構成している。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態1による液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図2に示すように、各液晶表示装置100〜103は、セット間通信端末IN1およびセット間通信端末OUT2を介して互いにデータ通信し、外部制御端子8を介して外部のPC等から制御することも可能である。また、液晶表示装置100〜103は、LCDパネル30と、LCDパネル30に光を照射するバックライト21〜29と、各バックライト21〜29を制御するバックライト制御部11〜19と、映像入力部4と、グラデーション補正部5(デジタル信号輝度補正手段)と、装置全体輝度制御部6と、LCD制御部7とを備えている。なお、各構成要素の詳細は、後述の通りである。
【0013】
バックライト21〜29は、例えば図3に示すエリア1〜9のそれぞれに対応しており、m個(mは2以上の整数)のLEDによって構成されている。すなわち、バックライト21〜29は、画面を複数のエリアに分割した各エリアを担当している。
【0014】
バックライト制御部11〜19(バックライト制御手段)は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、各バックライト21〜29の輝度制御(点灯制御)を行う。バックライト制御部11〜19では、CPU3から入力された輝度制御パラメータDをバックライトパルス幅に変換し、変換したパルス幅に従ってバックライト21〜29の点灯制御を行うことによって輝度制御を行う。すなわち、輝度制御パラメータDの値が大きくなると、バックライト制御部11〜19から出力されるバックライトパルス幅が大きくなるため、バックライト21〜29の点灯時間が長くなり輝度が上がる。
【0015】
バックライト制御部11〜19は、各バックライト21〜29を構成するm個(mは2以上の整数)のLEDの状態を監視する電圧監視部50(故障検出手段)を有し、電圧監視部50による監視結果はCPU3に出力される。実際には、例えば図4に示すように、m個のLEDは直列に接続されており、電圧監視部50はLEDの終端部分の電圧を監視している。例えば、図4に示される1個のLEDが故障した場合において、故障したLEDがショートされ、電圧監視部50にて検出される電圧はLED1個分高くなるため、故障したLEDの個数を検出することができる。すなわち、電圧監視部50を備えることによって、バックライトを構成するLEDの故障を検出することができる。具体的には、m=40個のLEDに130Vの電圧が印加されてLED1個当たりの電圧降下が3.2Vの場合において、すべてのLEDが正常に動作しているときは電圧監視部50にて2Vの電圧が検出されるが、1個のLEDが故障したときは電圧監視部50にて5.2Vの電圧が検出される。
【0016】
CPU3では、バックライト21〜29に対する電圧の監視結果に基づいて、各バックライト21〜29にて故障したLEDの個数を検出する。LEDが故障したバックライトが対応する(担当する)エリアは、周辺のエリア(LEDが故障していないエリア)と比較して輝度が低下する。そのため、CPU3は、液晶表示装置の画面全体の輝度を均一に保つために、エリア1〜9ごとにグラデーション補正を行うようグラデーション補正部5を制御する。次に、バックライトを構成する一部のLEDが故障した液晶表示装置に対して、グラデーション補正によって低下した輝度を元の(故障前の)輝度レベルで維持できるように制御パラメータDを変更(操作)し、変更した制御パラメータDでバックライト21〜29の輝度を補正するようバックライト制御部11〜19を制御する。
【0017】
また、各液晶表示装置100〜103は、他の液晶表装置内のLEDが故障することによって生じた輝度低下の情報をセット間通信端末IN1を介して受信し、受信した輝度低下の情報に従った輝度の制御(補正)が装置全体輝度制御部6にて行われる。その後、LCD制御部7がLCDパネル30を制御することによってバックライト21〜29から出力された光が偏光され、装置全体輝度制御部6にて輝度補正された映像が表示される。
【0018】
以下、液晶表示装置100〜103の動作について図5,6を用いて説明する。
【0019】
図5は、液晶表示装置101〜103(以下、スレーブ機とも称する)の動作を示すフローチャートである。また、図6は、液晶表示装置100(以下、マスター機とも称する)の動作を示すフローチャートである。
【0020】
まず、ユーザーは、初期設定時に各液晶表示装置100〜103の輝度調整を行う。このとき、マルチ画面全体の輝度が均一になるように、CPU3を介して装置全体輝度制御部6における輝度の初期設定の調整を行う。各液晶表示装置100〜103は、装置全体輝度制御部6にて設定された初期輝度調整値Sn0を記憶する(ステップS501,601)。
【0021】
次に、CPU3の制御によって、電圧監視部50にて行われたバックライト21〜29の電圧の監視結果から、LEDの故障の有無を検出する(ステップS502,602)。
【0022】
LEDの故障が検出されない場合は(ステップS502,602のNo)、スレーブ機ではステップS510に移行し、マスター機ではステップS609に移行する。一方、LEDの故障が検出される場合は(ステップS502,602のYes)、スレーブ機ではステップS503に移行し、マスター機ではステップS603に移行し、グラデーション補正部5は、CPU3の制御によってLEDが故障したエリアの輝度の低下が目立たなくなるようにデジタル信号処理によってグラデーション補正を行う(ステップS503,603)。ステップS503,603の後、グラデーション補正部5は、グラデーション補正を行うことによって低下した映像表示全体(画面全体)の輝度低下情報として輝度低下率psを算出する(ステップS504,604)。ここで、輝度低下率psとは、画面全体の輝度が、故障前とグラデーション補正後とでどの程度低下したのかを示したものである。
【0023】
例えば、液晶表示装置100のエリア5(図3参照)において、LEDの故障によってエリア5全体の輝度が5%低下した場合、グラデーション補正部5は、エリア5の輝度のダイナミックレンジを100%とし、他のエリア1〜4,6〜9の輝度のダイナミックレンジを95%として、デジタル信号処理によって画面全体の輝度が均一になるようにエリア単位の輝度補正を行う。すなわち、グラデーション補正部5(デジタル信号輝度補正手段)は、映像入力部4から入力された映像信号に対してデジタル信号処理を施すことによって、電圧監視部50によって故障が検出されたバックライトに対応するエリアである故障エリアの輝度と、故障エリア以外のエリアの輝度との間で輝度補正を行う。
【0024】
実際には、故障エリアを含む水平方向に対しては、図8に示すような輝度のダイナミックレンジの変化(故障エリア5の100%から隣接エリア4,6の95%)となるように信号処理される。また、故障エリアを含む垂直方向に対しては、図9に示すような輝度のダイナミックレンジの変化(故障エリア5の100%から隣接エリア2,8の95%)となるように信号処理される。すなわち、グラデーション補正部5は、故障エリアと、当該故障エリアに隣接して配置されたエリア(隣接エリア)との間において、故障エリアの輝度のダイナミックレンジと、隣接エリアの輝度のダイナミックレンジとが滑らかに変化するようにデジタル信号処理を行う。
【0025】
次に、CPU3(バックライト輝度補正手段)は、グラデーション補正によって画面全体で低下した輝度を、元の輝度(故障前の画面全体の輝度)まで高めることを目標として輝度制御パラメータDを操作(変更)し、変更した輝度制御パラメータDに基づいてバックライト21〜29の輝度を補正するようにバックライト制御部11〜19を制御する。本実施の形態1では、図7〜9に示すように、画面全体の輝度が95%になるようにデジタル信号処理によってグラデーション補正を行っているため、CPU3は、バックライト21〜29の輝度がグラデーション補正前の105%の輝度となるように補正を行い、画面全体の輝度が故障前の輝度を維持するようにバックライト制御部11〜19を制御する。
【0026】
CPU3(バックライト輝度補正手段)による輝度パラメータDの操作(変更)について説明する。輝度パラメータDは、バックライト21〜29の輝度を制御する調光パラメータであり、例えば100%から10%までのバックライトの輝度制御を行うことができる。
【0027】
本実施の形態1による輝度パラメータDは、グラデーション補正部5にて行われたデジタル信号処理によるグラデーション補正によって低下した画面全体の輝度を、故障前の輝度となるような制御を行うために用いられる。例えば、バックライト21〜29の輝度が100%のときの輝度パラメータDをDm、バックライト21〜29の輝度を補正する前の輝度パラメータDをDb、バックライト21〜29の輝度を補正した後の輝度パラメータDをDcとすると、Dc≦Dmの場合において、輝度パラメータDは以下の式(1)によって算出される。
【0028】
D=Db×(1+ps)・・・(1)
バックライト制御部11〜19は、CPU3にて式(1)に基づいて操作(変更)された輝度パラメータDを用いてバックライト21〜29の輝度の制御を行う。すなわち、CPU3(バックライト輝度補正手段)は、故障前の輝度となるようにバックライト21〜29の輝度の補正が可能か否かを判断し(ステップS505,605)、可能である場合は(ステップS505,605のYes)、バックライト制御部11〜19によってバックライト21〜29の輝度が故障前の輝度となるように上記の式(1)に基づいて制御を行う(ステップS506,606)。ステップS506,606の後、スレーブ機ではステップS510に移行し、マスター機ではステップS609に移行する。このように、バックライトの故障が発生した液晶表示装置100〜103において、画面全体の輝度を故障前の輝度に補正できた場合は、輝度補正の処理を終了する。また、マスター機である液晶表示装置100は、自身の画面全体の輝度を故障前の輝度に補正できた場合は、他のスレーブ機である液晶表示装置に対する制御を行わずに輝度補正の処理を終了する。
【0029】
一方、CPU3(バックライト輝度補正手段)は、故障前の輝度となるようにバックライト21〜29の輝度の補正が不可能であると判断すると(ステップS505,605のNo)、バックライト制御部11〜19によってバックライト21〜29の輝度(所定の輝度)が最大(100%)となるように制御を行う(ステップS507,607)。すなわち、Dc>Dmの場合において、輝度パラメータDは以下の式(2)によって算出される。
【0030】
D=Dm・・・(2)
このように、CPU3(バックライト輝度補正手段)は、グラデーション補正部5によって補正されたエリアの輝度を、故障前の輝度まで高めるように、あるいは、それができない場合は所定の輝度まで高めるように各バックライト21〜29の輝度補正(バックライト輝度補正)を行う。
【0031】
ステップS507,607の後、CPU3(バックライト輝度補正手段)は、バックライト21〜29の輝度の補正を行った後の映像表示全体(画面全体)の輝度低下情報として輝度低下率pnを算出する(ステップS508,608)。ここで、輝度低下率pnとは、画面全体の輝度が、故障前とバックライトの輝度補正後とでどの程度低下したのかを示したものである。
【0032】
例えば、上述のように、図7に示すエリア5のバックライトが故障した場合において、グラデーション補正後の画面全体の輝度は故障前の輝度に対して95%に低下する(ps=0.95)。その後、CPU3(バックライト輝度補正手段)のバックライトの輝度補正によって故障前の輝度に対して最大2%の輝度補正が可能であるとすると、バックライトの輝度補正後の輝度低下率pnはpn=0.97となる。なお、以下では、マスター機(液晶表示装置100)のLED(バックライト)が故障し、pn=0.97であるものとして説明する。
【0033】
スレーブ機(液晶表示装置101〜103)は、ステップS508にて算出した輝度低下率pnをマスター機(液晶表示装置100)に送信し、マスター機は、スレーブ機から送信された輝度低下率pn(バックライト輝度補正の内容)を受信する(ステップS609)。なお、ここではマスター機のLEDが故障した場合について説明しているため、LEDが故障していないスレーブ機からマスター機に対しては輝度低下率pnが送信されない。また、ステップS506において、バックライトの輝度を補正することによって故障前の輝度まで高めることができた場合も、スレーブ機からマスター機に対しては輝度低下率pnが送信されない。すなわち、マスター機は、故障前のバックライトの輝度を補正することによって故障前の輝度まで高めることができない場合において輝度低下率pnを受信する。このような場合、マスター機は、スレーブ機のLEDが故障していないと判断し、スレーブ機の輝度低下率pn=1.0であると推定する。
【0034】
マスター機では、受信した輝度低下率pnに基づいて、マルチ画面表示装置全体の輝度を補正する補正係数P(補正指示)を算出する(ステップS610)。ここで、補正係数Pとは、マルチ画面全体の輝度が均一になるように輝度補正するための係数である。具体的には、図7の場合において、マスター機の輝度低下率pn=0.97、スレーブ機の輝度低下率pn=1.0であるため、補正係数P=0.97となる。
【0035】
マスター機にて算出された補正係数Pはスレーブ機に送信され(ステップS611)、スレーブ機は、マスター機から送信された補正係数Pを受信する(ステップS510)。
【0036】
マスター機およびスレーブ機では、補正係数Pと輝度低下率pnとの比P/pn=1であるか否かの判定を行う(ステップS511,612)。P/pn=1であると判定された場合は(ステップS511,612のYes)、装置全体輝度制御部6にて画面全体の輝度制御(輝度補正)を行う必要がないためステップS502,602に移行する。一方、P/pn=1ではない(すなわち、P/pn<1)と判定された場合は(ステップS511,612のNo)、装置全体輝度制御部6にて画面全体の輝度制御(輝度補正)を行う(ステップS512,613)。
【0037】
具体的には、図7の場合において、マスター機(液晶表示装置100)では、補正係数P=0.97、輝度低下率pn=0.97となり、P/pn=1であるため、装置全体輝度制御部6にて画面全体の輝度制御を行う必要がない。一方、スレーブ機(液晶表示装置101〜103)では、補正係数P=0.97、輝度低下率pn=1.0となり、P/pn<1であるため、装置全体輝度制御部6にて画面全体の輝度制御を行う。ただし、液晶ディスプレイの場合において、映像入力値(映像の入力信号)に対する出力輝度は、例えば図11に示されるようなγ特性を有しており、特性が線形ではない。従って、装置全体輝度制御部6では、映像の入力信号に対する出力輝度が97%となる補正係数αを乗じることによってダイナミックレンジを97%に制御(補正)する。このように、装置全体輝度制御部6は、グラデーション補正部5から入力された映像信号に対して、CPU3(バックライト輝度補正手段)によるバックライトの輝度補正を考慮したデジタル信号処理を施すことによって、画面全体の輝度補正を行っている。
【0038】
以上のことから、本実施の形態1によれば、バックライトを構成する一部のLEDが故障してもマルチ画面全体の輝度を均一に保つことができ、バックライトが故障したエリアの輝度低下が目立たないようにすることができる。また、バックライトの輝度を制御することによって故障発生前のマルチ画面全体の輝度を維持することが可能となる。
【0039】
なお、本実施の形態1では、マルチ画面表示装置を4つの液晶表示装置で構成したが、2つ以上の液晶表示装置で構成されていればよい。
【0040】
また、本実施の形態1では、グラデーション補正部5によるグラデーション補正をエリアごとに行ったが、液晶表示装置の表示エリア全体で補正を行うようにしてもよい。例えば、図10に示すように、LEDの故障が検出されたエリアの中心を100%として、表示画面の両端(エリア4の左端、エリア6の右端)が95%となるように、輝度のダイナミックレンジが滑らかに変化するようにグラデーション補正を行ってもよい。すなわち、グラデーション補正部5は、故障エリアの輝度のダイナミックレンジと、端に位置するエリアの輝度のダイナミックレンジとが、故障エリアの中心から端に位置するエリアの最端部にかけて滑らかに変化するようにデジタル信号処理を行う。このような画面全体でグラデーション補正を行うことによって、バックライトを構成するLEDの故障による輝度低下がより目立ちにくくなるようにすることができる。
【0041】
また、本実施の形態1では、P/pn=1ではない(すなわち、P/pn<1)と判定された場合は(ステップS511,612のNo)、液晶表示装置の画面全体の輝度のダイナミックレンジを制御したが、輝度制御パラメータDを操作(変更)することによってバックライトの輝度を制御するようにしてもよい。この場合は、γ特性に依存したデジタル信号処理を行う必要はない。
【0042】
〈実施の形態2〉
図12は、本発明の実施の形態2による電圧監視部60A〜60Dの配置の一例を示す図である。本実施の形態2では、図12に示すように、m/4個のLEDごとに電圧監視部60A〜60Dを配置することによって、故障したLEDのエリア内での詳細な場所を検出し、グラデーション補正部5が各エリア内の1/4のエリア(サブエリア)ごとにグラデーション補正を行うことを特徴としている。その他の構成および動作は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0043】
図13は、本実施の形態2による液晶表示装置の表示エリアの一例を示す図である。図13に示すように、図12の各m/4個のLEDに対応するサブエリアが存在し、エリア5(エリア4とエリア6との間のエリア)の左上のサブエリアにてLEDの故障が検出され、当該サブエリアの輝度が5%低下した場合において、グラデーション補正部5は、故障が検出されたサブエリアの輝度のダイナミックレンジを100%とし、他のサブエリアの輝度のダイナミックレンジを95%となるようなグラデーション補正を行い、その後バックライトの輝度補正を行う。
【0044】
以上のことから、本実施の形態2によれば、故障したLEDの配置箇所を詳細に検出することができ、バックライトが故障したエリアの輝度低下が目立たないようにすることができる。
【0045】
なお、本実施の形態2では、図13に示すように、各エリアを4つのサブエリアに分割したが、任意の複数のサブエリアに分割してもよい。
【0046】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 セット間通信端末IN、2 セット間通信端末OUT、3 CPU、4 映像入力部、5 グラデーション補正部、6 装置全体輝度制御部、7 LCD制御部、8 外部制御端子、11〜19 バックライト制御部、21〜29 バックライト、30 LCDパネル、50 電圧監視部、60A〜60D 電圧監視部、100〜103 液晶表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターの液晶表示装置であるマスター液晶表示装置と、当該マスター液晶表示装置と通信可能に接続された少なくとも1つ以上のスレーブの液晶表示装置であるスレーブ液晶表示装置とを配列して一画面を構成したマルチ画面表示装置であって、
前記マスター液晶表示装置および前記スレーブ液晶表示装置の各々は、
画面を複数のエリアに分割した各エリアを担当する複数のバックライトと、
各前記バックライトの点灯制御をそれぞれ行う複数のバックライト制御手段と、
各前記バックライトの故障をそれぞれ検出する複数の故障検出手段と、
前記故障検出手段によって故障が検出された前記バックライトに対応する前記エリアである故障エリアの輝度と、前記故障エリア以外の前記エリアの輝度との間でデジタル信号処理にて輝度補正を行うデジタル信号輝度補正手段と、
前記デジタル信号輝度補正手段によって補正された前記エリアの輝度を、故障前の輝度まで高めるように、あるいは、それができないときは所定の輝度まで高めるように各前記バックライトの輝度補正であるバックライト輝度補正を行うバックライト輝度補正手段と、
を備え、
前記マスター液晶表示装置は、故障前の輝度まで高めることができない場合において、前記スレーブ液晶表示装置から前記バックライト輝度補正の内容を受信し、当該バックライト輝度補正の内容に基づいて前記マルチ画面表示装置全体の輝度を補正する補正指示を作成して自身で輝度補正を行うとともに前記スレーブ液晶表示装置に送信し、前記スレーブ液晶表示装置に前記補正指示に従った輝度補正を行わせることを特徴とする、マルチ画面表示装置。
【請求項2】
前記所定の輝度は、前記各バックライトの最大輝度であることを特徴とする、請求項1に記載のマルチ画面表示装置。
【請求項3】
前記バックライト輝度補正手段は、前記バックライト輝度補正を行った前記エリアの輝度低下率を算出し、
前記マスター液晶表示装置は、前記輝度低下率を前記バックライト輝度補正の内容として受信することを特徴とする、請求項1または2に記載のマルチ画面表示装置。
【請求項4】
前記マスター液晶表示装置は、前記バックライト輝度補正の内容に基づいて前記マルチ画面表示装置全体の輝度を補正する補正係数を算出し、当該補正係数を前記補正指示として作成することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のマルチ画面表示装置。
【請求項5】
前記デジタル信号輝度補正手段は、前記故障エリアと、当該故障エリアに隣接して配置された前記エリアとの間において、前記故障エリアの輝度のダイナミックレンジと、前記エリアの輝度のダイナミックレンジとが滑らかに変化するようにデジタル信号処理することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のマルチ画面表示装置。
【請求項6】
前記デジタル信号輝度補正手段は、前記故障エリアの輝度のダイナミックレンジと、端に位置する前記エリアの輝度のダイナミックレンジとが、前記故障エリアの中心から端に位置する前記エリアの最端部にかけて滑らかに変化するようにデジタル信号処理することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のマルチ画面表示装置。
【請求項7】
前記マスター液晶表示装置および前記スレーブ液晶表示装置は、前記補正指示に基づく前記輝度補正をデジタル信号処理によって行うことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載のマルチ画面表示装置。
【請求項8】
前記マスター液晶表示装置および前記スレーブ液晶表示装置は、前記補正指示に基づく前記輝度補正を前記バックライト制御手段の前記点灯制御によって行うことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載のマルチ画面表示装置。
【請求項9】
前記各エリアは複数のサブエリアにさらに分割され、前記故障検出手段は前記サブエリアごとに故障の検出を行うことを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載のマルチ画面表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−80045(P2013−80045A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219045(P2011−219045)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】