説明

マルチ通信制御置、及び電化製品ネットワーク

【課題】電化製品により構成された複数のネットワークを簡易に1つのネットワークとして構成することができるマルチ通信制御置を提供する。
【解決手段】電化製品による複数のネットワーク10、20、30、40からのそれぞれの信号を受信する複数の送受信手段62〜65と、複数の送受信手段のそれぞれに接続され、所定の種類の通信信号をこれとは異なる種類の通信信号に変換する複数の変換器66〜69と、電化製品の制御をするための演算をするとともに、変換器に接続され、変換器から信号を受信し、及び変換器へ信号を送信することにより電化製品の制御をする電化製品制御演算手段70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やビル等の建物に配置され、電化製品により形成された複数のネットワークを1つのネットワークとして制御することが可能なマルチ通信制御装置、及びこれを用いた電化製品ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では通信技術が進み、電化製品間で通信してネットワークを形成するような製品群がある。これによれば、ネットワークを形成した電化製品間で情報の共有や連動等の関連付けが行われ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0003】
ところが、住宅に配置されている電化製品の全てを1つのネットワークに組み込むことには困難があった。例えば複数の電化製品から構成されたあるネットワークと、他の複数の電化製品から構成された他のネットワークと、を1つのネットワークとして構成したいと考えても、通信信号の種類が異なるため容易に接続することができなかった。
【0004】
例えば図3に示したように、複数のネットワークA〜Eが構成されていた場合に、これらのすべてを関連付けるためには、多くの変換器(信号変換器)が必要となり、効率が悪かった。また、LAN等を利用する場合にはサーバを設置する必要があり、限られた空間の有効利用の観点から必ずしも好ましいものとはいえなかった。
【0005】
例えば特許文献1には、少なくとも二以上の異なった通信規格にそれぞれ対応する複数の入力手段と、少なくとも二以上の異なった通信規格にそれぞれ対応する複数の出力手段と、複数の入力手段の中から、情報の入力元を選択する入力元選択手段と、複数の出力手段の中から、情報の出力先を選択する出力先選択手段と、入力元選択手段で選択した入力手段により入力した情報を、出力先選択手段で選択した出力手段のプロトコルに変換するプロトコル変換手段と、を備えたことを特徴とするデータ変換装置が開示されている。
【0006】
これによれば通信規格の異なる複数のコンピュータを接続することができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−191468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、複数のコンピュータを接続する技術に関するものであり、電化製品を含む複数のネットワークを簡易に1つのネットワークに構成し、複数のネットワーク同士及びここに含まれる電化製品同士を関連付けることについて検討されているものではなかった。
【0009】
そこで本発明は、電化製品により構成された複数のネットワークを簡易に1つのネットワークとして構成することができるマルチ通信制御置を提供することを課題とする。また、これを有する電化製品ネットワークを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。ここでは分かり易さのため、図面に付した参照符号を括弧書きで併せて記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
請求項1に記載の発明は、電化製品(11、12、21、22、31、32、41、42)による複数のネットワーク(10、20、30、40)からのそれぞれの信号を受信する複数の送受信手段(62〜65)と、複数の送受信手段のそれぞれに接続され、所定の種類の通信信号をこれとは異なる種類の通信信号に変換する複数の変換器(66〜69)と、電化製品の制御をするための演算をするとともに、変換器に接続され、変換器から信号を受信し、及び変換器へ信号を送信することにより電化製品の制御をする電化製品制御演算手段(70)と、を備えるマルチ通信制御装置(50)である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチ通信制御装置(50)において、複数のネットワーク(10、20、30、40)のうち少なくとも1つは他のネットワークと異なる種類の通信信号によりネットワークが構成されており、複数の変換器(66〜69)は、電化製品制御演算手段(70)に対して所定の統一された種類の通信信号を送信することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、複数の電化製品(11、12、21、22、31、32、41、42)により形成される複数のネットワーク(10、20、30、40)と、複数のネットワークが接続される請求項1又は2に記載のマルチ通信制御装置(50)と、を備える電化製品ネットワーク(2)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電化製品により構成された複数のネットワークを簡易に1つのネットワークとして構成することができる。そして、ネットワークに属する電化製品同士を関連づけること、及び一括して制御することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】1つの実施形態を説明するための住宅を模式的に示した図である。
【図2】電化製品ネットワークのブロック図である。
【図3】従来のネットワークの一つの例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、1つの実施形態を説明する住宅1を模式的に示した図である。また、図2は電化製品ネットワーク2を説明するためのブロック図である。
住宅1は、電化製品ネットワーク2を有し、該電化製品ネットワーク2には、第一ネットワーク10、第二ネットワーク20、第三ネットワーク30、第四ネットワーク40、及びマルチ通信制御装置50が備えられている。住宅1におけるその他の構成は一般的な住宅と同様である。以下に各構成について説明する。
【0018】
第一ネットワーク10には、電化製品11、12が含まれ、これらにより1つのネットワークが形成されており、これが第一ネットワーク10として機能している。同様に第二ネットワーク20には電化製品21、22、第三ネットワーク30には電化製品31、32、及び第四ネットワーク40には電化製品41、42がそれぞれ含まれ、これらがネットワークを形成している。
【0019】
例えば、第一ネットワーク10に含まれる電化製品11、12は、該電化製品11、12間では同種の通信信号により互換性があって独自のネットワークが形成されている。しかしながら、そのまま他のネットワークである第二〜第四ネットワーク20、30、40、及びここに含まれる電化製品21、22、31、32、41、42とは通信信号の種類が異なるため互換性がなく、そのままではネットワークを形成することができない。
すなわち、第一〜第四ネットワーク10、20、30、40に属する各電化製品11、12、21、22、31、32、41、42は、自身が属するネットワーク(10、20、30、40)内では、ここに属する電化製品とネットワークを形成することができるように構成される。しかしながら、各電化製品11、12、21、22、31、32、41、42は他のネットワーク(10、20、30、40)、及びここに属する他の電化製品とはそのままではネットワークを構成することができないように形成されている。
【0020】
ここで、電化製品の種類は特に限定されるものではなく、例えば電動窓、電動シャッター等の電動建具、エアコン、暖房機器、ファン等の空調設備、冷蔵庫、テレビ、洗濯機等の家電、照明機器等、あらゆるものを対象とすることができる。当該電化製品は公知のものを適用することができる。
【0021】
マルチ通信制御装置50は、第一〜第四ネットワーク10、20、30、40を接続し、これらにより1つのネットワークを形成させる装置である。マルチ通信制御装置50は、操作手段51とマルチ通信制御器60とを備えている。
【0022】
操作手段51は、住宅1の室内側に配置され、利用者の操作に供される機器である。利用者は操作手段51に備えられる各種選択キー等を選択することにより、利用者の意思をマルチ通信制御器60に反映させ、最終的には電化製品11、12、21、22、31、32、41、42を制御することができる。例えば操作手段51には、電動建具の開閉動作を指令する基本的な選択手段が具備されていること等を挙げることができる。
このような操作手段51は、リモコン式や据え付け式等の種類が可能であるが、特に限定されるものでなく、公知のものを適用することができる。
【0023】
マルチ通信制御器60は、図2からわかるように、送受信手段61〜65、変換器66〜69、中央演算子70、記憶手段71、及びRAM72を有して構成されている。
【0024】
送受信手段61は、操作手段51からの信号を受信するとともに、操作手段51へ信号を送信する接続部位である。いわゆる入出力ポート、入出力コネクタ等がこれに含まれる。接続の態様は有線、無線を問わない。
【0025】
送受信手段62は、第一ネットワーク10からの通信信号を受信するとともに、第一ネットワーク10へ通信信号を送信する接続部位である。いわゆる入出力ポート、入出力コネクタ等がこれに含まれる。接続の態様は有線、無線を問わない。
【0026】
同様に送受信手段63〜65は、それぞれ第二ネットワーク20、第三ネットワーク30、及び第四ネットワーク40からの通信信号を受信するとともに、各ネットワーク(20、30、40)へ通信信号を送信する接続部位である。いわゆる入出力ポート、入出力コネクタ等がこれに含まれる。接続の態様は有線、無線を問わない。
【0027】
変換器66は、第一ネットワーク10の通信信号の種類を変換し、中央演算子70で演算可能な通信信号の種類とするものである。また逆に中央演算子70からの通信信号を第一ネットワーク10の通信信号の種類に変換する。
中央演算子70で演算可能な信号形態は特に限定されることはないが、通信規格の1つであるUART(4PIN、電源、送信、受信、GND)に対応する通信信号を挙げることができる。
【0028】
変換器67、68、69についても同様であり、それぞれ第二ネットワーク20、第三ネットワーク30、第四ネットワーク40に対応している。
【0029】
中央演算子70はいわゆるCPUであり、電化製品制御演算手段として機能する。すなわち、第一〜第四ネットワーク10、20、30、40に属する電化製品11、12、21、22、31、32、41、42を関連づけて1つのネットワークとして構成するとともに、これら電化製品11、12、21、22、31、32、41、42を制御するための演算をおこなう。
演算の種類は特に限定されることはなく、個別の電化製品の作動や設定、さらにこれら電化製品の連動に関する演算であってもよい。また、中央演算子70は、その他にもマルチ通信制御器60に含まれる各部材に接続されて、これらを制御することができるように構成されている。
すなわち、中央演算子70は、記憶媒体として機能する記憶手段71に記憶された各種プログラムを実行し、これに基づいて第一〜第四ネットワーク10、20、30、40に属する電化製品11、12、21、22、31、32、41、42を関連づけ、1つのネットワークとして構成し、これら電化製品11、12、21、22、31、32、41、42を制御するとともに、他の各種演算をおこなう。
【0030】
記憶手段71は、中央演算子70でおこなわれる演算の根拠となる各種プログラムやデータが保存される記憶媒体として機能する部材である。また記憶手段71には、プログラムの実行により得られた中間、最終の各種結果を保存することができてもよい。
【0031】
RAM72は、中央演算子70による演算の作業領域や一時的なデータの記憶手段として機能する部材である。RAM72は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等で構成することができ、公知のRAMと同様である。
【0032】
このようなマルチ通信制御器60を形成する具体的な態様の例としては、制御基板を挙げることができる。制御基板に備えられる送受信手段を送受信手段61〜65として用い、制御基板に備えられる記憶装置を記憶手段71として各種プログラム等を記憶させておくことができる。そして各種演算や制御、指令は制御基板に備えられる中央演算子(CPU)が中央演算子70として機能し、記憶手段71に記憶された各種プログラムを実行することによりおこなわれる。当該制御基板には、送受信手段と中央演算子との間に変換器66〜69が配置されればよい。
マルチ通信制御器60の形態はこのような制御基板によるものに限定されることはないが、これによればホームサーバー等の高価なネットワーク環境を構築する必要がないので簡易な構成とすることができる。
【0033】
以上のように構成されるマルチ通信制御装置50、及びこれを備える電化製品ネットワーク2によれば、従来においてネットワークを構成することができなかった、又はネットワーク間の全てに変換器を備えないと通信することができなかったような、複数のネットワークを簡易に1つのネットワークとして構成することができる。そして、ネットワークに属する電化製品同士を関連づけること、及び一括して制御することも可能となる。
これにより、異なるネットワークとせざるを得ないために今まで関連付けて制御することができなかった電化製品同士を関連づけて制御することが可能となる。例えば、シャッターや窓等の開閉機器と空調機器との連動や、シャッターと照明機器との連動、家電製品と照明機器との連動等、及びその複合的な連動制御等ができる。
【0034】
また、マルチ通信制御装置50によれば、第一〜第四ネットワーク10、20、30、40等のような既存のネットワークにはなんら変更を加えることなく簡易に上記の構成を形成することができる。従って設置のための工事、場所、及びそのための費用等を低く抑えることが可能である。
【0035】
以上説明した実施形態では、送受信手段62〜65、及び変換器66〜69がマルチ通信制御器60と一体に形成されている例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、送受信手段62〜65及び変換器66〜69を別体として設けることも可能である。これにより配線が容易になる場合もある。このときには、変換器から中央演算子までの間に別途送信手段及び受信手段を設ける必要があるが、これを例えば上記UARTにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 住宅
2 電化製品ネットワーク
10 第一ネットワーク
11、12 電化製品
20 第二ネットワーク
21、22 電化製品
30 第三ネットワーク
31、32 電化製品
40 第四ネットワーク
41、42 電化製品
50 マルチ通信制御装置
51 操作手段
60 マルチ通信制御器
61、62、63、64、65 送受信手段
66、67、68、69 変換器
70 中央演算子(電化製品制御演算手段)
71 記憶手段
72 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電化製品による複数のネットワークからのそれぞれの信号を受信する複数の送受信手段と、
前記複数の送受信手段のそれぞれに接続され、所定の種類の通信信号をこれとは異なる種類の通信信号に変換する複数の変換器と、
前記電化製品の制御をするための演算をするとともに、前記変換器に接続され、前記変換器から信号を受信し、及び前記変換器へ信号を送信することにより前記電化製品の制御をする電化製品制御演算手段と、を備えるマルチ通信制御装置。
【請求項2】
前記複数のネットワークのうち少なくとも1つは他のネットワークと異なる種類の通信信号によりネットワークが構成されており、前記複数の変換器は、前記電化製品制御演算手段に対して所定の統一された種類の通信信号を送信することを特徴とする請求項1に記載のマルチ通信制御装置。
【請求項3】
複数の電化製品により形成される複数のネットワークと、
前記複数のネットワークが接続される請求項1又は2に記載のマルチ通信制御装置と、を備える電化製品ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−90029(P2013−90029A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226567(P2011−226567)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】