説明

マレイミジル基含有ポリマー粒子およびその製造方法

【課題】 十分なマレイミジル基を有するポリマー粒子及びその製造方法の提供。
【解決手段】 (メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を共重合させて得られた架橋ポリマー粒子に下記化学式(1)で示されるマレイミジル基が導入されたマレイミジル基含有ポリマー粒子。前記架橋ポリマー粒子が、前記モノマー混合物を、非重合性溶剤と前記モノマー混合物との合計量に対して前記非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、前記非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去する工程と、を経て得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マレイミジル基含有ポリマー粒子およびその製造方法に関し、特に診断薬および医薬品担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤および化粧品添加剤のような用途に好適に使用可能なマレイミジル基含有ポリマー粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂、キレート樹脂のような機能性ポリマー粒子は、種々の化学物質の担体として従来から広く用いられている。このような機能性ポリマー粒子は、不溶性の重合体の表面に種々の反応性基を有する。従来からカルボキシル基、水酸基、および1級および2級アミノ基のような種々の活性水素含有基が導入された機能性ポリマーが種々の用途に用いられてきた。
【0003】
近年では、核酸やペプチド、抗体のような生体分子あるいは生体分子類似の合成分子を活性を保持したままポリマー粒子に固定し、アフィニティクロマトグラフィや診断薬、検査薬などに用いられるようになった。このようにより選択性の高い担持体粒子として用いる場合は、生体分子あるいは生体分子類似の合成分子中のSH基との間に選択的で安定な結合を形成し確実に担持可能なマレイミジル基(マレイミド基)を有するものが望まれていた。このような用途では、ポリマー担体は所望量の物質を均一かつ確実に担持する必要があり、かつ、水系溶媒に対する良好な分散性を有する必要がある。
【0004】
マレイミジル基を有するポリマー粒子の公知例は少ない。例えば、マレイミジル基を含有するリン脂質膜が表面に存在する微粒子が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この方法では、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)サクシンイミドのごときマレイミジル基含有化合物をリン脂質と反応させ、カラムクロマトグラフィなどの方法で精製してマレイミジル基含有リン脂質をあらかじめ作製しなければならない。さらに、多段の処理を経てマレイミジル基を含有するリン脂質膜を作製し、これを磁性粒子のごとき核粒子上に形成するので、工程がきわめて複雑で、さらに核粒子とマレイミジル基を含有するリン脂質膜とは化学結合していないので物理的に弱いという欠点がある。
また、マレイミジル基を含有するポリスチレン粒子が掲載されている例がある(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、マレイミジル基は疎水性が強い官能基で、水性媒体中での分散性が非常に悪いものであった。さらに、ポリマー粒子に導入されるマレイミジル基の量が不十分であった。
【特許文献1】特開平11−106391号公報
【非特許文献1】2001/2002製品カタログ,Fulka社,p.909
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、十分なマレイミジル基を有するポリマー粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、
<1> (メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を共重合させて得られた架橋ポリマー粒子に下記化学式(1)で示されるマレイミジル基が導入されたマレイミジル基含有ポリマー粒子であって、前記架橋ポリマー粒子が、前記モノマー混合物を、前記モノマー混合物が可溶性を示し且つ前記(メタ)アクリレートと前記スチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す非重合性溶剤と前記モノマー混合物との合計量に対して前記非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、前記非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去する工程と、を経て得られたものであるマレイミジル基含有ポリマー粒子である。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、m及びnは1以上の整数を表す。)
【0009】
<2> 前記非重合性溶剤が、沸点が100℃以上の炭化水素、長鎖アルコール、長鎖カルボン酸及び長鎖エステルから選ばれる少なくとも一種である<1>に記載のマレイミジル基含有ポリマー粒子である。
【0010】
<3> 水銀圧入法による平均細孔半径が0.005〜0.1μmである<1>又は<2>に記載のマレイミジル基含有ポリマー粒子である。
【0011】
<4> (メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を、前記モノマー混合物が可溶性を示し且つ前記(メタ)アクリレートと前記スチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す非重合性溶剤と前記モノマー混合物との合計量に対して前記非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、前記非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去して架橋ポリマー粒子を得る工程と、前記架橋ポリマー粒子に下記化学式(1)で示されるマレイミジル基を導入する工程と、を有するマレイミジル基含有ポリマー粒子の製造方法である。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、m及びnは1以上の整数を表す。)
【0014】
<5> 前記非重合性溶剤が、沸点が100℃以上の炭化水素、長鎖アルコール、長鎖カルボン酸及び長鎖エステルから選ばれる少なくとも一種である<4>に記載のマレイミジル基含有ポリマー粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、十分なマレイミジル基を有するポリマー粒子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を共重合させて得られた架橋ポリマー粒子に下記化学式(1)で示されるマレイミジル基が導入された粒子であって、前記架橋ポリマー粒子が、前記モノマー混合物を、前記モノマー混合物が可溶性を示し且つ前記(メタ)アクリレートと前記スチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す非重合性溶剤と前記モノマー混合物との合計量に対して前記非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、前記非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去する工程と、を経て得られたものである。
【0017】
【化3】

【0018】
式中、m及びnは1以上の整数を表す。
【0019】
また、本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子の製造方法は、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を、前記モノマー混合物が可溶性を示し且つ前記(メタ)アクリレートと前記スチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す非重合性溶剤と前記モノマー混合物との合計量に対して前記非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、前記非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去して架橋ポリマー粒子を得る工程と、前記架橋ポリマー粒子に下記化学式(1)で示されるマレイミジル基を導入する工程と、を有するものである。
【0020】
【化4】

【0021】
式中、m及びnは1以上の整数を表す。
【0022】
ところで、ポリマー粒子を作製するに際し、モノマー混合液は溶解する(可溶性を示す)が該モノマー混合液の重合物であるポリマーには難溶性の溶剤を添加して重合することは公知(例えば、J. Polymer Sci., Part A, vol. 2, p.835−843(1964))であるが、これらの方法はポリマー粒子を多孔質化することを目的とした技術である。しかしながら、本発明に係る架橋ポリマー粒子は、水銀圧入法で細孔径を測定すると平均細孔半径が0.1μm以下であり、少なくとも走査型電子顕微鏡(SEM)による観察では粒子表面に明確な多孔質構造は形成されていないので、単に比表面積が増えてマレイミジル基量が増大したものとは思われない。
本発明の効果はよくわからないが、粒子表面の化学的あるいは物理的性質が変化し、粒子末端のOH基とヒドロキシマレイミドとの反応が効率よく行われるようになったものと考えられる。
【0023】
ここで「(メタ)アクリレート」とは、常用されるように「アクリル酸エステル」および「メタクリル酸エステル」をいう。また、(ポリ)エチレングリコールとはエチレングリコールおよびポリエチレングリコールをいう。
【0024】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0025】
<マレイミジル基含有ポリマー粒子>
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は、化学式(1)で示されるマレイミジル基が架橋ポリマー粒子中に導入されたものである。
【0026】
一般式(1)中、マレイミジル基はエチレンオキシド鎖を介して架橋ポリマー粒子に化学結合しており、該エチレンオキシド鎖のmは、1以上の整数を表す。前記エチレンオキシド鎖は、(ポリ)エチレングリコールと架橋ポリマー粒子とを反応させて化学的に結合することにより得ることができるし、(ポリ)エチレングリコールが導入された(メタ)アクリレートもしくは、その前駆体が導入された(メタ)アクリレートを共重合させて直接導入しても良い。
【0027】
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は、化学式(1)で表されるマレイミジル基を、前記架橋ポリマー粒子の表面に有しても、また、架橋ポリマー粒子の内部に有しても、また、表面及びその内部の両方に有しても良い。
一般的に、水系溶媒中で良好な分散性を得る観点から、mは2以上であることが好ましい。
また、ヒドロキシメチルマレイミドに代表されるヒドロキシアルキルマレイミドは、(ポリ)エチレングリコールが導入されたポリマー粒子にマレイミジル基を導入するための原料化合物として好適であることからnは1以上が好ましい。
【0028】
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は化学式(1)で表されるマレイミジル基を0.001mmol/g以上含有することが好ましく、単位質量当たりの反応量をできるだけ多くするという観点から、0.01mmol/g以上が好ましく、特に、0.02mmol/g以上がさらに好ましい。0.02mmol/g以上とすることによりSH基含有化合物との反応速度を上げることができる。
【0029】
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は、マレイミジル基と架橋ポリマー粒子との間に親水性のエチレングリコールまたはポリエチレングリコール鎖が存在しているので、水系溶媒における分散性が良好であるという性質を有している。
【0030】
このように、本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は、水系溶媒における分散性が良好で、該マレイミジル基含有ポリマー粒子の担持性は生体分子あるいは生体分子類似の合成分子中のSH基との間に選択的で安定な結合を形成するもので、選択性の高い担持体粒子として利用できる。
【0031】
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は、特に限定されるものではなく、種々の用途に応じて選択可能であるが、一般的にその平均粒径が1〜1000μmであり、中でも、固液分離の容易性の観点から、3〜500μmであることが好ましく、特に、5〜100μmであることが好ましい。
平均粒径を1〜1000μmの範囲とすることにより単位質量当たりの十分な反応量を維持したまま、濾過あるいは遠心分離による固液分離特性を上げることができる。
【0032】
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子の水銀圧入法による平均細孔半径は、0.005〜0.1μmが好ましく、0.01〜0.05μm以下がさらに好ましい。平均細孔半径が0.005〜0.1μmであると、マレイミジル基の導入量が高くペプチド反応性も高いマレイミジル基含有ポリマー粒子を得ることができる。
【0033】
<架橋ポリマー粒子>
本発明に係る架橋ポリマー粒子は、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を、該モノマー混合物が可溶性を示し且つ(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す非重合性溶剤とモノマー混合物との合計量に対して非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去する工程と、を経て得られたものである。
【0034】
(メタ)アクリレートにおいて、(メタ)アクリル酸エステルのアルコール残基のアルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基であり、無置換でも置換基を有していても良く、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル、ヒドロキシエチル、水酸基をジヒドロピラン等の疎水性保護基で保護したヒドロキシエチル、ポリオキシエチレン等が挙げられる。ポリマーを加水分解して(ポリ)エチレングリコールを導入させる場合には、t−ブチル(メタ)アクリレートをその一成分として存在させることが好ましい。
【0035】
前記スチレン系モノマーとしては、炭素数6〜12のアリール基を有するビニル基含有モノマーであり、無置換でも置換基を有していても良く、例えば、フェニル、ナフチル、トリル、p−n−オクチルオキシフェニル等が挙げられるが、フェニルが好ましい。
【0036】
前記置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基等が挙げられる。
該アルキル基としては、前述のアルキル基の場合と同義である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられ、メトキシ、エトキシが好ましい。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
該アリール基としては、前述のアリール基の場合と同義である。
【0037】
前記架橋剤としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
モノマー混合物中の(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーとの含有量の比は、モル比で(メタ)アクリレート:スチレン系モノマー=90:10〜10:90が好ましく、25:75〜75:25がさらに好ましい。また、モノマー混合物中の架橋剤の含有量は、(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーと合計量100部に対して0.5〜30部が好ましく、1.0〜20部がさらに好ましい。
【0039】
また、前記架橋ポリマー粒子は、前記単量体の重合体成分の共重合比を変えることで粒子に導入されたポリエチレングリコール量を制御することができ、従って、マレイミジル基含有ポリマー粒子中のマレイミジル基の制御ができる。
【0040】
本発明に用いられる非重合性溶剤は、モノマー混合物が可溶性を示し且つ(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示すものである。
本発明において「モノマー混合物が可溶性を示す」とは、15℃でのモノマー混合物の非重合性溶剤への溶解量が2.5g/g以上であることをいい、また「(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す」とは、該共重合体の非重合性溶剤への溶解量が2.5g/g以下であることをいう。
非重合性溶剤は、特に限定されるものではないが沸点が100℃以上の炭化水素、長鎖アルコール、長鎖カルボン酸及び長鎖エステルから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。非重合性溶剤は一種単独でも二種以上を併用して用いてもよい。
非重合性溶剤としては、デカン、ドデカン、ヘキサデカン等の炭化水素、アミルアルコール、オクタノール、デカノール、ウンデカノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の長鎖アルコール、ラウリン酸、ステアリン酸等の長鎖カルボン酸、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル等の長鎖エステルが挙げられる。重合温度を高くできる点で、沸点が100℃以上であることが好ましい。さらには重合後の粒子の凝集を抑制し、後処理の作業性が良くするために、融点が10℃以上であることが好ましい。
具体的には、ヘキサデカン、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチルが挙げられる。
【0041】
モノマー混合物の共重合反応は、モノマー混合物と非重合性溶剤との合計量に対して非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で行われる。好ましくは38質量%以上であり、さらに好ましくは42質量%以上である。非重合性溶剤の含有量が35質量%未満であると、粒子に導入されるマレイミジル基の量が不十分となることがある。さらに後述のごとく架橋ポリマー粒子にエステル交換で(ポリ)エチレングリコールを導入しようとする場合、水酸基の導入量が不十分になり、より多くの量の触媒と反応時間を必要とする場合がある。
モノマー混合物の共重合反応により非重合性溶剤を含む架橋ポリマー粒子(非重合性溶剤含有粒子)が得られる。
【0042】
本発明において、架橋ポリマー粒子を得るには公知の方法が利用でき、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法等が好適に用いられる。さらに、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁重合することもできる。
【0043】
上述のようにして得られた非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤が除去される。非重合性溶剤はエタノール、イソプロパノール、アセトン、トルエン等の溶剤を用いて抽出除去される。この場合、ソックスレー抽出器等を用いることができる。
【0044】
モノマー混合物の共重合反応には、必要に応じて、当業者には周知の重合開始剤を用いることができる。
具体的には、ジアシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイドおよびアルキルハイドロパーオキサイドのような有機過酸化物;過酸化水素およびオゾンのような無機過酸化物;およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN;和光純薬社よりV−60として入手可能)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬社よりV−59として
入手可能)および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社
よりV−65として入手可能)のような油溶性アゾ系有機化合物;2,2’−アゾビス(
2−アミジノプロパン)二酸塩(和光純薬社よりV−50として入手可能)、2,2’−
アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬社よりVA−086として入手可能)および2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン
−2−イル)プロパン]二酸塩(和光純薬社よりVA−044として入手可能)のような水溶性アゾ系有機化合物が挙げられる。重合開始剤を用いる場合は、それらは重合が良好に開始されるのに充分な量で用いられる。このような量は当業者に周知である。一般には、0.1〜5.0質量%の量で用いることが好ましい。
【0045】
さらに架橋ポリマー粒子の着色を目的に、公知の染料、顔料、カーボンブラック、磁性粉などを添加することも可能である。
【0046】
本発明における架橋ポリマー粒子は、特殊な反応性官能基を有さないので添加剤や溶媒との反応、残存による粒子物性への悪影響が全くないか、きわめて少ないという利点がある。
【0047】
<水酸基含有ポリマー粒子>
本発明に用いられる水酸基含有ポリマー粒子は、架橋ポリマー粒子に(ポリ)エチレングリコールを導入して得られたポリマー粒子である。
また、(ポリ)エチレングリコールは、HO(CH2CH2O)nHの一般式で表されるジオール化合物を意味する。nは、前記化学式(1)のn数と同義である。
該架橋ポリマー粒子に、(ポリ)エチレングリコールを導入する方法としては、いかなる方法であってもよく、その目的によって適宜選択することができる。
例えば、上記架橋ポリマー粒子を酸もしくはアルカリで加水分解し、(メタ)アクリレート残基のエステル部を一旦カルボキシル基に変換し、エステル化反応用触媒の存在下、エチレングリコールあるいはポリエチレングリコールなどのジオール化合物の水酸基とエステル反応させることにより水酸基含有ポリマー粒子としても良いし、あるいは、架橋ポリマー粒子に、エチレングリコールあるいはポリエチレングリコールなどのジオール化合物を適当なエステル交換触媒で直接エステル交換反応させることにより架橋ポリマー粒子と結合して水酸基含有ポリマー粒子としてもよい。
【0048】
本発明において、水酸基含有ポリマー粒子は架橋ポリマー粒子を、加水分解して得られたカルボキシル基と(ポリ)エチレングリコールとを反応させることにより得られることが好ましい。さらに、含金属エステル交換反応用触媒の存在下、架橋ポリマー粒子を(ポリ)エチレングリコールと直接エステル交換反応で得られる水酸基含有ポリマーであることも好ましい。
エステル交換をスムーズに進行させるため、架橋ポリマー粒子に含まれる官能基の総モル量に対し等量以上の(ポリ)エチレングリコールを反応させることが好ましいが、実際にはポリマー粒子中の全ての官能基がエステル交換するわけではないので等量以下であってもかまわない。
架橋ポリマー粒子の架橋度が高い場合には、反応促進の目的でポリマー粒子を膨潤させうる非反応性溶媒を助溶剤として添加することができる。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、シメン、ジメトキシベンゼンなどの芳香族化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーエル、フェネトール、ブチルフェニルエーテルなどのエーテル化合物、アセトフェノン、イソホロン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン化合物、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロトルエンなどのハロゲン化合物があげられるが、前記目的を達成する非反応性溶媒であればいずれでも使用できる。この中でも、特に、トルエン、キシレン、メシチレン、ジメトキシベンゼンなどの芳香族化合物が反応性の点で好ましい。
このようにして得られた水酸基含有ポリマー粒子を本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子の原料として用いることが好ましい。
【0049】
本発明において、架橋ポリマー粒子と、(ポリ)エチレングルコールとの反応割合は、架橋ポリマー粒子のカルボキシル基またはエステル部の組み合わせ及びこれら官能基の導入量により異なるが、基本的には架橋ポリマー粒子の重量で約2倍から10倍量の前記(ポリ)エチレングリコールを用い、必要に応じて用いられる上記非反応性溶媒中、エステル化反応で、80℃から150℃、エステル交換反応で120℃から200℃の反応条件で、5〜24時間程度加熱して反応させることにより、水酸基含有ポリマー粒子を得ることができる。
ここで、水酸基導入量の再現性の面で、あらかじめ反応前に粒子を分級処理し、粒径をそろえてから反応させることが望ましい。こうして得られた水酸基含有ポリマー粒子は、メタノール等の溶媒に希釈分散させ、濾別し、更に水洗及び/又は溶剤洗浄の後、噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によって粉体として単離し、次工程のマレイミジル基導入反応に供することもできるし、乾燥工程を経ないで湿潤状態で次工程の反応系に供し、マレイミジル基導入反応の前、もしくは同時に反応系から溶媒を除去することもできる。
【0050】
本発明で添加するエステル化反応用触媒は、公知のエステル化反応用触媒が好適に使用できる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸やp−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、酢酸等の有機酸が使用できる。DCC(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド)のような縮合剤も好適に利用できる。
本発明で添加する含金属エステル交換反応用触媒としては、ポリエステル合成時に使用される、いわゆるエステル交換反応用触媒が好適に利用できる。
含金属エステル交換反応用触媒としては、例えば、酢酸鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトネート亜鉛、酢酸カドニウム、酢酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、酢酸チタン、テトラブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、チタニウムオキシアセチルアセトネート、酢酸鉄、アセチルアセトネート鉄、酢酸ニオブなどの遷移金属化合物、ジブチルスズオキシド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート、三酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、炭酸ビスマスオキシド、酢酸ビスマスオキシドなどの典型金属化合物があげられる。
また、酢酸マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム,炭酸セシウムなどのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物、さらに、酢酸ランタン、酢酸サマリウム、酢酸ユウロピウム、酢酸エルビウム、酢酸イッテルビウムなどの希土類化合物も用いることができる。
【0051】
これらの触媒は、単独で用いても、2種以上組合せて用いてもよい。含金属エステル交換反応用触媒としては、チタニウムテトラアルコキシドが溶媒への溶解性、反応性の点でより好ましい。チタニウムテトラアルコキシドとしては、例えば、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラ−第二−ブトキシチタン、テトラ−n−アミルオキシチタン、トリイソアミルオキシイソプロポキシチタンなどが挙げられる。
【0052】
前記架橋ポリマー粒子に対する触媒の添加量(含有量)は、粒子総重量100質量部に対して、通常0.01〜50質量部が用いられる。好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
触媒を0.01〜50質量部の範囲とすることにより、水酸基が導入し易くなり、また、反応後の触媒の除去も有利に進行させることができる。
【0053】
<マレイミジル基含有ポリマー粒子の製造方法>
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は、(ポリ)エチレングリコールを導入して得られた水酸基含有ポリマー粒子にヒドロキシメチルマレイミドを反応させることにより得られる。本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子の製造方法において、架橋ポリマー粒子に化学式(1)で示されるマレイミジル基を導入する工程は、上述した架橋ポリマー粒子から水酸基含有ポリマー粒子を得る工程と、該水酸基含有ポリマー粒子からマレイミジル基含有ポリマー粒子を得る工程とを含む。
【0054】
水酸基含有ポリマー粒子とヒドロキシメチルマレイミドとの反応は、水1分子が外れて縮合した形態であり、従来公知の反応によって行うことができるが、中でも、エーテル化触媒の存在下で行うことが好ましい。
この反応には酸性あるいは塩基性の公知のエーテル化触媒が好適に使用できる。例えば、塩基性の触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が使用でき、単独又は2種類以上混合して使用できる。酸性の触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸やp−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、酢酸等の有機酸が使用でき、これらは水和物の形態でもよい。また、ハイドロタルサイト類の固体触媒も使用が可能である。
塩基性触媒や酸性触媒を使用する場合のその使用量は、対応する塩基又は酸として、ヒドロキシメチルマレイミドに対して、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜15質量%である。固体触媒の場合は、ヒドロキシメチルマレイミドに対して、0.001〜100質量%、好ましくは0.1〜50質量%である。前記触媒等は、反応液に均一に溶解した状態で使用しても不溶の状態で使用しても良いが、均一溶解状態では、使用量を少なくすることができる。一方、不溶の状態では、反応後に反応液から常法により容易に触媒を分離回収することができる。
【0055】
前記水酸基含有ポリマー粒子とヒドロキシメチルマレイミドとの反応割合は、水酸基含有ポリマー粒子のエステル部の組み合わせ及びこれら官能基の導入量により異なるが、基本的には水酸基含有ポリマー粒子の重量に対して約0.1〜10倍量の前記ヒドロキシメチルマレイミドを用いことによりマレイミド含有ポリマー粒子を得ることができる。
【0056】
また、この反応における反応温度、反応時間は、水酸基含有ポリマー粒子のエステル部の組み合わせ、これら官能基の導入量及びエチレンオキサイド鎖長等により異なり、適宜選択できる。一般的に、80〜180℃の反応条件で、2〜20時間加熱して反応させることにより、マレイミド含有ポリマー粒子を得ることができる。
【0057】
前記エーテル化反応の溶剤としては、反応を阻害しないものであればいずれの溶媒も使用できる。例えば、トルエン、キシレン、メシチレンが挙げられる。
【0058】
前記マレイミジル基導入量の再現性の面で、あらかじめ反応前に粒子を分級処理し、粒径をそろえてから反応させることが望ましい。こうして得られたマレイミド含有ポリマー粒子は、メタノール等の溶媒に希釈分散させ、濾別し、更に水洗及び/又は溶剤洗浄の後、噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によって粉体として単離することができる。
【0059】
また、本発明の製造方法は、大気下のみならず、加圧下においても、反応させることができるが、これらのその他の反応条件は、必要に応じて適用されるもので、特に限定されるものでははい。
【0060】
前記操作により得られたマレイミジル基含有ポリマー粒子におけるマレイミジル基量は、粒子に存在するマレイミジル基を過剰量の2−メルカプトエチルアミンと反応させ、反応後に残った2−メルカプトアミンの量を測定することにより、逆に粒子のマレイミジル基量を求めることができる。その具体例としては、例えば、(株)同仁化学研究所の総合カタログ(平成14年3月29日発行)第一部プロトコル集の80ページに記載されている。
【0061】
本発明の製造方法により有用なマレイミジル基含有ポリマー粒子を得ることができ、診断薬および医薬品担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤および化粧品添加剤のような用途に好適に使用可能である。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部は質量部を示す。
【0063】
(架橋ポリマー粒子1の合成)
スチレン(和光純薬(株)製)35部、t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)47部、ジビニルベンゼン(純度55%)12部、ラウリルアルコール(和光純薬(株)製)75部および重合開始剤V601(和光純薬(株)製)2.0部を用いて懸濁重合を行い、洗浄/乾燥後、エタノールでソックスレー抽出を10時間行った後、分級操作を施し平均粒径55μmの架橋ポリマー粒子を得た。得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋ポリマー粒子1を得た。モノマー混合物(スチレン、t−ブチルメタクリレート及びジビニルベンゼン)と非重合性溶剤(ラウリルアルコール)との合計量に対する該非重合性溶媒の含有量は、44%であった。
【0064】
(架橋ポリマー粒子2の合成)
スチレン(和光純薬(株)製)35部、t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)47部、ジビニルベンゼン(純度55%)12部、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)75部および重合開始剤V601(和光純薬(株)製)2.0部を用いて懸濁重合を行い、洗浄/乾燥後、エタノールでソックスレー抽出を10時間行った後、分級操作を施し平均粒径55μmの架橋ポリマー粒子を得た。得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋ポリマー粒子2を得た。モノマー混合物と非重合性溶剤との合計量に対する該非重合性溶媒の含有量は、44%であった。
【0065】
(架橋ポリマー粒子3の合成)
スチレン(和光純薬(株)製)35部、t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)47部、ジビニルベンゼン(純度55%)12部、ステアリン酸ブチルエステル(和光純薬(株)製)75部および重合開始剤V601(和光純薬(株)製)2.0部を用いて懸濁重合を行い、洗浄/乾燥後、エタノールでソックスレー抽出を10時間行った後、分級操作を施し平均粒径55μmの架橋ポリマー粒子を得た。得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋ポリマー粒子3を得た。モノマー混合物と非重合性溶剤との合計量に対する該非重合性溶媒の含有量は、44%であった。
【0066】
(架橋ポリマー粒子4の合成)
スチレン(和光純薬(株)製)35部、t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)47部、ジビニルベンゼン(純度55%)12部、ステアリン酸(和光純薬(株)製)75部および重合開始剤V601(和光純薬(株)製)2.0部を用いて懸濁重合を行い、洗浄/乾燥後、エタノールでソックスレー抽出を10時間行った後、分級操作を施し平均粒径55μmの架橋ポリマー粒子を得た。得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋ポリマー粒子4を得た。モノマー混合物と非重合性溶剤との合計量に対する該非重合性溶媒の含有量は、44%であった。
【0067】
(比較用架橋ポリマー粒子5の合成)
ラウリルアルコールを入れない他は架橋ポリマー粒子1の場合と全く同様な操作を行い、平均粒径55μmの架橋ポリマー粒子を得た。得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋ポリマー粒子5を得た。モノマー混合物と非重合性溶剤との合計量に対する該非重合性溶媒の含有量は、0%であった。
【0068】
(比較用架橋ポリマー粒子6の合成)
スチレン(和光純薬(株)製)35部、t−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)47部、ジビニルベンゼン(純度55%)12部、ラウリルアルコール(和光純薬(株)製)15部および重合開始剤V601(和光純薬(株)製)2.0部を用いて懸濁重合を行い、洗浄/乾燥後、エタノールでソックスレー抽出を10時間行った後、分級操作を施し平均粒径55μmの架橋ポリマー粒子を得た。得られた粒子をイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して架橋ポリマー粒子6を得た。モノマー混合物(スチレン、t−ブチルメタクリレート及びジビニルベンゼン)と非重合性溶剤(ラウリルアルコール)との合計量に対する該非重合性溶媒の含有量は、14%であった。
【0069】
(ヒドロキシメチルマレイミドの合成)
24部のマレイミド(アルドリッチ(株)製)、21部の35%HCOH(和光純薬(株)製)、5%NaOH水溶液を0.7部入れ、40℃で2時間反応させたところ、ヒドロキシメチルマレイミドの白色結晶が析出した。減圧濾過後、常温で真空乾燥した。このようにして得たヒドロキシメチルマレイミドの粗結晶を酢酸エチルで再結晶し、22部のヒドロキシメチルマレイミドを得た。
【0070】
(実施例1乃至4並びに比較例1及び2)
(ポリオキシエチレン鎖の導入)
架橋ポリマー粒子1乃至6の各10部をそれぞれ塩酸(和光純薬(株)製)75部に分散させ、ジオキサン(和光純薬(株)製)150部を加え、80℃で6時間反応させた。得られた粒子をメタノールに分散/洗浄しさらにイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥してポリメタクリル酸含有担体粒子を得た。カルボン酸の定量から架橋ポリマー粒子1乃至4は共重合体のt−ブチルメタクリレート成分の86%から89%がメタクリル酸に変換されていた。同様に、カルボン酸の定量から架橋ポリマー粒子5及び6の共重合体はt−ブチルメタクリレート成分の84%から85%がメタクリル酸に変換されていた。
このようにして得られた上記ポリメタクリル酸含有担体粒子各10部に、それぞれポリエチレングリコール200(和光純薬(株)製)150部、硫酸(和光純薬(株)製)15部、トルエン(和光純薬(株)製)50部を混合して、トルエンとの共沸を利用して、生成してくる水を系外に除去しながら、120℃で5時間反応させた。得られた粒子をエタノール、アセトン、メタノール、イオン交換水で洗浄後、単離乾燥して架橋ポリマー粒子にポリオキシエチレン鎖を導入したポリオキシエチレン鎖導入架橋粒子(水酸基含有ポリマー粒子)1乃至6を得た。このようにして得られたポリオキシエチレン鎖導入架橋粒子の水酸基量を以下の方法で測定した。
【0071】
粒子をキャップ付き試験管に秤量し、あらかじめ調製した無水酢酸(和光純薬(株)製)のピリジン(和光純薬(株)製)溶液を一定量加え、95度の温度条件で24時間加熱した。
さらに、蒸留水を加えて試験管中の無水酢酸を加水分解させた後、3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みに分けた。粒子をさらにエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にフェノールフタレイン(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式に従って水酸基量(Ammol/g)を算出した。
A=((B−C)×0.1×f)/w
ここで、Bはブランク実験での滴下量(ml)、Cはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、wは粒子の重量(g)である。
ポリオキシエチレン鎖導入架橋粒子1乃至6の水酸基を上記方法で測定した結果を表1に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1からわかるように、非重合性溶剤を添加しないで作製したポリオキシエチレン鎖導入架橋粒子5,および非重合性溶剤を14%添加して作製したポリオキシエチレン鎖導入架橋粒子6がとりわけ少ないということはなかった。
【0074】
(マレイミジル基の導入)
ポリオキシエチレン鎖導入架橋粒子各10部にそれぞれヒドロキシメチルマレイミド0.8部、トルエン350部を入れ60−70℃に加熱撹拌し、触媒のp−トルエンスルホン酸一水和物0.5部を入れ、温度を上げて7時間還流下反応させた。得られた粒子をメタノールに分散/洗浄しさらに、エタノールで8時間ソックスレー抽出を行った。濾過した後、イオン交換水及び溶剤で再度洗浄後、単離乾燥して本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子1から4、および比較のマレイミジル基含有ポリマー粒子5、6を得た。このようにして得られたマレイミジル基含有ポリマー粒子の平均細孔半径およびマレイミジル基量を測定した。平均細孔半径はオートポアIII9420(MICROMERITICS社製)を用いて水銀圧入法で測定した。その結果を表2に示した。また、マレイミジル基量については以下の方法で測定した。
【0075】
(マレイミジル基含有ポリマー粒子中のマレイミジル基定量法)
粒子を一定量ねじ口試験管にW(g)秤量し、あらかじめ調製した2−メルカプトエチルアミン(東京化成社製)の反応液を、2−メルカプトエチルアミンが過剰量になるよう一定量加え、攪拌反応させた。
粒子を遠心分離したのち上澄み溶液の2−メルカプトアミンと4,4’−ジチオジピリジンと反応させ、324nmの吸光度からモル吸光係数ε=19800を用いて上澄み溶液中の2−メルカプトエチルアミン量D(mol)を求めた。ブランクとして、サンプルを含まない系の2−メルカプトアミン量E(mol)も同様に測定し、下記の式に従ってマレイミジル基M(mmol/g)を求めた。
M=(E−D)/W×1000
【0076】
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子1から4のマレイミジル基量および比較のマレイミジル基含有ポリマー粒子5、6のマレイミジル基量を表2に示した。同じ量のヒドロキシメチルマレイミドを反応させたが、本発明に係る架橋ポリマー粒子由来のマレイミジル基含有ポリマー粒子は一桁高いマレイミジル基を有していた。
【0077】
(マレイミジル基含有担体粒子の末端SHペプチドとの反応性)
粒子を一定量キャップ付きマイクロチューブに100mg秤量し、あらかじめ調製したラミニンノナペプチド(Calbiochem社製)溶液を1ml加え、室温で穏やかに攪拌して30分間反応させた。粒子を遠心分離したのち上澄み溶液の波長280nmの吸光度Fを測定した。ブランクとして、サンプルを含まない系のラミニンノナペプチド溶液の波長280nm吸光度Gも測定し、下記の式に従ってペプチドの粒子への結合率L%を求めた。
L=(1−F/G)×100
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子1から4および、比較のマレイミジル基含有ポリマー粒子5、6のペプチド結合率を表2に示した。本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子は高いペプチド反応性を有していた。
【0078】
【表2】

【0079】
(各粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)観察)
本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子1乃至4を、SEM(キーエンス社製VE−7800)を用いて、1000倍の倍率で表面観察をした。その結果を図1乃至4に示す。本発明のマレイミジル基含有ポリマー粒子には明確な多孔質構造は観察されなかった。また、亀裂が入ったり、破壊された粒子、あるいは融着した粒子などは見られず、機械的および化学的に強いことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】マレイミジル基含有ポリマー粒子1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】マレイミジル基含有ポリマー粒子2の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】マレイミジル基含有ポリマー粒子3の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】マレイミジル基含有ポリマー粒子4の走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を共重合させて得られた架橋ポリマー粒子に下記化学式(1)で示されるマレイミジル基が導入されたマレイミジル基含有ポリマー粒子であって、
前記架橋ポリマー粒子が、
前記モノマー混合物を、前記モノマー混合物が可溶性を示し且つ前記(メタ)アクリレートと前記スチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す非重合性溶剤と前記モノマー混合物との合計量に対して前記非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、
前記非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去する工程と、
を経て得られたものであるマレイミジル基含有ポリマー粒子。
【化1】

(式中、m及びnは1以上の整数を表す。)
【請求項2】
前記非重合性溶剤が、沸点が100℃以上の炭化水素、長鎖アルコール、長鎖カルボン酸及び長鎖エステルから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のマレイミジル基含有ポリマー粒子。
【請求項3】
水銀圧入法による平均細孔半径が0.005〜0.1μmである請求項1又は2に記載のマレイミジル基含有ポリマー粒子。
【請求項4】
(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及び架橋剤を含むモノマー混合物を、前記モノマー混合物が可溶性を示し且つ前記(メタ)アクリレートと前記スチレン系モノマーとの共重合体が難溶性を示す非重合性溶剤と前記モノマー混合物との合計量に対して前記非重合性溶剤の含有量が35質量%以上となる状態で共重合させて非重合性溶剤含有粒子を得る工程と、
前記非重合性溶剤含有粒子から非重合性溶剤を除去して架橋ポリマー粒子を得る工程と、
前記架橋ポリマー粒子に下記化学式(1)で示されるマレイミジル基を導入する工程と、
を有するマレイミジル基含有ポリマー粒子の製造方法。
【化2】

(式中、m及びnは1以上の整数を表す。)
【請求項5】
前記非重合性溶剤が、沸点が100℃以上の炭化水素、長鎖アルコール、長鎖カルボン酸及び長鎖エステルから選ばれる少なくとも一種である請求項4に記載のマレイミジル基含有ポリマー粒子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−23109(P2007−23109A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204882(P2005−204882)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】