説明

マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法

【課題】保存・貯蔵中の副反応を抑制し着色物質の生成を抑えることにより色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中、ラジカル重合開始剤を用いて炭素数2〜4個のオレフィン単量体及びマレイミド単量体のラジカル共重合反応を行った後、ラジカル重合禁止剤を添加することを特徴とするマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、透明性及び機械特性に優れたマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、保存・貯蔵中の副反応を抑制し着色物質の生成を抑えることにより色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マレイミド共重合体は、透明性、耐熱性及び機械特性に優れた樹脂として、光学材料、電子部品等幅広い用途での展開に期待されており、一般的にラジカル共重合することにより製造され、その製造方法として多くの製造方法が提案されている(例えば特許文献1,2参照。)。
【0003】
また、マレイミド共重合体フィルムを製膜するための保存安定性に優れた樹脂溶液に関する提案もなされている(例えば特許文献3参照。)。
【0004】
【特許文献1】米国特許第2971939号公報
【特許文献2】特開2006−036914号公報
【特許文献3】特開2006−028369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2に提案された方法においては、重合後に残存する未反応単量体とラジカル重合開始剤が反応して着色物質を副生するために得られるマレイミド・オレフィン共重合体の色調が悪化するという課題を有する。
【0006】
また、特許文献3に提案されている保存安定性に優れたマレイミド・オレフィン樹脂溶液においても、その保存時の溶液粘度等に関する保存安定性は改善されたものではあるが、やはり保存中に着色物質が副生し、マレイミド・オレフィン共重合体の色調を悪化させるという課題を有する。
【0007】
そこで、本発明は、色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マレイミド・オレフィン共重合体を製造する際、重合反応後に未反応単量体とラジカル重合開始剤が反応し着色物質を副生し、該着色物質の副生を抑制することにより色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤を用いて炭素数2〜4個のオレフィン単量体及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体のラジカル共重合反応を行った後、ラジカル重合禁止剤を添加することを特徴とするマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法に関するものである。
【0010】
【化1】

(1)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明のマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法は、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤を用い、炭素数2〜4個のオレフィン単量体及び上記一般式(1)で示されるマレイミド単量体のラジカル共重合反応を行った後に、ラジカル重合禁止剤を添加する製造方法である。ここで、ラジカル重合禁止剤は、共重合反応の後に進行する未反応単量体とラジカル重合開始剤の副反応により副生する着色物質の発生を抑制するものであり、該ラジカル重合禁止剤を添加しない場合、得られるマレイミド・オレフィン共重合体は色調に劣るものとなる。
【0012】
本発明に用いられる炭素数2〜4個のオレフィン単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン等が挙げられ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性、透明性及び機械特性に優れるマレイミド・オレフィン共重合体が得られることからイソブテンが好ましい。また、該オレフィン単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0013】
本発明に用いられるマレイミド単量体としては、上記一般式(1)で示されるマレイミド単量体であれば如何なるものを用いることも可能である。ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基を示し、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えばシクロブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。そして、炭素数が6を越えるアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基である場合、排除体積効果が大きく共重合反応が進行し難く共重合体を得ることが困難となる。該マレイミド単量体としては、例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、その中でも、容易に耐熱性、機械特性に優れたマレイミド・オレフィン共重合体が得られることからN−フェニルマレイミドが好ましい。また、該マレイミド単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
この際のマレイミド単量体とオレフィン単量体の共重合反応を行う際のオレフィン単量体の使用量としては、マレイミド・オレフィン共重合体が得られる限りにおいて制限はないが、生産効率よく高分子量の色調に優れるマレイミド・オレフィン共重合体が得られることから、マレイミド単量体:オレフィン単量体=1:0.7〜1:2(モル比)であることが好ましい。
【0015】
そして、本発明の製造方法により得られるマレイミド・オレフィン共重合体の具体的例示としては、例えばマレイミド・エチレン共重合体、マレイミド・1−ブテン共重合体、マレイミド・イソブテン共重合体、N−メチルマレイミド・エチレン共重合体、N−メチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−エチルマレイミド・エチレン共重合体、N−エチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−エチレンマレイミド・イソブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・エチレン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・エチレン共重合体、N−フェニルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体等を挙げることができ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れるマレイミド・オレフィン共重合体となることからN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体であることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる有機溶媒としては、ラジカル重合反応が可能な有機溶媒でよく、公知の有機溶媒を用いることができ、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキセンオキシド等の環状エーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エステル類又は芳香族溶媒とアルコ−ルの混合溶媒等が挙げられる。そして、溶媒量としては、特に効率よく、耐熱性、透明性及び機械特性に優れたマレイミド・オレフィン共重合体が得られることから、該オレフィン単量体及び該マレイミド単量体の総単量体量に対して2〜5倍の重量であることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレ−ト、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。該ラジカル重合開始剤は仕込み段階、昇温中、反応中に適宜添加すればよい。また、ラジカル共重合反応を行う際の重合温度は、該ラジカル重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定すればよく、一般的には40℃〜120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、オレフィンとマレイミド単量体とのラジカル共重合の後に、ラジカル重合禁止剤を添加することを特徴とするものであり、該ラジカル重合禁止剤としては、例えばp−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、メトキシ−p−ベンゾキノン、t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−t−ブチルカテコール、3−フェニルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられ、その中でも効率よく色調に優れるマレイミド・オレフィン共重合体を製造することが可能となることから、p−ベンゾキノン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、p−t−ブチルカテコールであることが好ましい。オレフィン単量体とマレイミド単量体とのラジカル共重合の後に、該ラジカル重合禁止剤を添加することにより、着色物質の副生を抑制することが可能となり、その結果色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体を得ることが出来る。
【0019】
本発明の製造方法により得られるマレイミド・オレフィン共重合体は、耐熱性、透明性及び機械特性に優れるマレイミド・オレフィン共重合体であり、特にマレイミド残基単位量が55〜65モル%を含有するマレイミド・オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法により得られるマレイミド・オレフィン共重合体は、成形性、機械特性、色調等に優れることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCという)を用い、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とし40℃の温度で測定した際の標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)が、1×10〜3×10であることが好ましい。また、分子量の調節は、単量体濃度、ラジカル重合開始剤量、重合温度等の条件設定により調整することが可能である。また、連鎖移動剤の添加により調整してもよく、そのような連鎖移動剤としては、例えばラウリルメルカプタン、硫黄等の硫黄化合物;アミン、尿素等の窒素化合物;ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;α−メチルスチレンのダイマー等が例示できる。
【0021】
本発明により得られるマレイミド・オレフィン共重合体は透明性と耐熱性を損なわない範囲内で他の樹脂とブレンドしても良い。例えば、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、耐熱性、透明性及び機械特性に優れ、特に色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体を製造するものである。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
〜マレイミド・オレフィン共重合体の構造確認〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JSX)により、H−NMR測定を行い、その構造を確認した。
【0025】
〜マレイミド単量体の反応率の測定〜
マレイミド・オレフィン共重合体溶液をテフロン(登録商標)シート上に展開し、40℃で真空乾燥を実施した。クロロホルムを溶媒としてGPC(東ソー株式会社製、商品名HLC−8020GPC)を用いて40℃で測定し、波長316nmの吸収強度によりマレイミド・オレフィン共重合体中のマレイミド単量体の含有量を測定し、反応率を算出した。
【0026】
〜重量平均分子量(Mw)の測定〜
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒としてGPC(東ソー株式会社製、商品名HLC−8020GPC)を用いて40℃で測定し、得られた溶出曲線により標準ポリスチレン換算値として測定した。また、この際同時に重量平均分子量1万以下の低分子量成分の含有量も定量した。
【0027】
〜色調(黄色度の測定)〜
得られたマレイミド・オレフィン共重合体19.6gをアクリロニトリル・スチレン共重合体(ダイセル化学製、商品名セビアン080)26.0gと塩化メチレン60gと混合し、スターラーにより溶解させた。この溶液を流延法により製膜して厚み0.100mmのフィルムとし、カラーコンピューター(スガ試験機株式会社製、商品名SMカラーコンピューター)を用い、黄色度(YI)の測定を行った。
【0028】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、オレフィン導入管、ラジカル重合禁止剤導入管、温度計および脱気管を装着した3リットルオートクレーブ中に、N−フェニルマレイミド327g(1.89モル)、ラジカル重合開始剤として72重量%t−ブチルパーオキシピバレート0.9gおよび重合溶媒としてメチルエチルケトン603gを仕込み、窒素で数回パージした後、オレフィン導入管から液化イソブテン103g(1.84モル)を仕込み、60℃まで昇温して10時間ラジカル共重合反応を行った。重合条件を表1に示す。
【0029】
該共重合反応終了後、該重合溶液を少量抜出し、N−フェニルマレイミド単量体の反応率を測定した。N−フェニルマレイミド単量体の反応率は98.0%であった。
【0030】
また、ラジカル重合禁止剤としてp−ベンゾキノン0.08gをメチルエチルケトン50gに溶解し、ラジカル重合禁止剤導入管より該3リットルオートクレーブに導入し、該ラジカル重合禁止剤添加後のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体溶液を40℃まで冷却し、常圧になるまで未反応のイソブテンを放出した。イソブテン放出後、40℃で12時間撹拌保存した。
【0031】
40℃、12時間保存後の該溶液を少量抜出し、N−フェニルマレイミド単量体の反応率を測定した。N−フェニルマレイミド単量体の反応率は98.0%であり、40℃保存時にN−フェニルマレイミド単量体の消費は見られなかった。
【0032】
そして40℃、12時間保存後のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体溶液をメタノール6.0kgに加えて沈澱させ、120℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー380gを回収し、得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造および重量平均分子量を測定した。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位61モル%を含有し、Mwが150000であった。
【0033】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは1.0と色調に優れていた。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0034】
実施例2
ラジカル重合禁止剤としてp−ベンゾキノン0.08gの添加を行った代わりに、ラジカル重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.12gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の製造を行った。
【0035】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位61モル%を含有し、Mwが150000であった。また、得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定したところ、フィルムのYIは1.0と色調に優れていた。
【0036】
比較例1
共重合反応後に、p−ベンゾキノンの添加を実施しないこと以外は、実施例1と同様の方法によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の製造を行った。
【0037】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0038】
N−フェニルマレイミドの反応率は重合後が98.0%であり、40℃、12時間保存後の反応率は98.5%であり、保存中に副反応が進行していることが確認できた。
【0039】
また、得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは1.9と色調に劣るものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0040】
実施例3
実施例1と同様のオートクレーブ中にN−フェニルマレイミド323g(1.87モル)、ラジカル重合開始剤として72重量%t−ブチルパーオキシピバレート2.1gおよび重合溶媒としてメチルエチルケトン606gを仕込み、窒素で数回パージした後、オレフィン導入管から液化イソブテン94g(1.68モル)を仕込み、60℃まで昇温して4時間ラジカル共重合反応を行った。
【0041】
該ラジカル共重合反応終了後、該重合溶液を少量抜出し、N−フェニルマレイミド単量体の反応率を測定した。N−フェニルマレイミド単量体の反応率は97.5%であった。
【0042】
また、ラジカル重合禁止剤としてp−t−ブチルカテコール0.16gをメチルエチルケトン50gに溶解し、禁止剤導入管よりオートクレーブに導入した。実施例1と同様にラジカル重合禁止剤添加後、40℃で12時間撹拌保存した。
【0043】
そして、40℃、12時間保存後の該溶液を少量抜出し、N−フェニルマレイミド単量体の反応率を測定した。N−フェニルマレイミド単量体の反応率は97.5%であり、40℃保存時にN−フェニルマレイミド単量体の消費は見られなかった。
【0044】
40℃、12時間保存後のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体溶液をメタノール6.0kgに加えて沈澱させ、120℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー375gを回収し、得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造および重量平均分子量を測定した。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位57モル%を含有し、Mwは130000であった。
【0045】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは1.1と色調に優れていた。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0046】
比較例2
共重合反応後にp−t−ブチルカテコールの添加を実施しないこと以外は、実施例3と同様の方法によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の製造を行った。
【0047】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。N−フェニルマレイミドの反応率は重合後が97.5%、40℃、12時間保存後が98.2%であり、保存中に副反応が進行していることが確認できた。
【0048】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは2.0と色調に劣るものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、ラジカル重合開始剤を用いて炭素数2〜4個のオレフィン単量体及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体のラジカル共重合反応を行った後、ラジカル重合禁止剤を添加することを特徴とするマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【化1】

(1)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
【請求項2】
p−ベンゾキノン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及びp−t−ブチルカテコールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のラジカル重合禁止剤であることを特徴とする請求項1に記載のマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項3】
オレフィン単量体がイソブテンであり、マレイミド単量体がN−フェニルマレイミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−156398(P2008−156398A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343996(P2006−343996)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】