説明

マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法

【課題】 重合速度を一定とすることで反応器の冷却能力を効率的に使用可能とすることにより、より生産効率に優れるマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 炭素数2〜4個のオレフィン単量体及びマレイミド単量体の重合を行うに際し、10時間半減期温度の差が5〜15℃の範囲内にある少なくとも2種類のラジカル重合開始剤を用い、重合反応途中で重合温度を昇温し重合反応を行うマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、オレフィン単量体及びマレイミド単量体の重合反応によりマレイミド・オレフィン共重合体の製造を行う際の重合反応速度が一定となるマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マレイミド・オレフィン共重合体は透明性、耐熱性及び機械特性に優れ、光学材料、電子部品等幅広い用途に利用されており、一般的にラジカル共重合することにより製造され、その製造方法として多くの方法が提案されている(例えば特許文献1および2参照。)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第2971939号公報
【特許文献2】特開2006−036914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に提案された方法においては、重合溶剤、マレイミド単量体、オレフィン単量体及び1種類のラジカル重合開始剤を仕込み、1段階の重合温度で重合を実施しており、該方法によれば単量体やラジカル重合開始剤の消費に伴い、経時的に重合速度が低下するため、最も重合反応による発熱量の大きい重合初期に合わせて反応器の冷却能力を設計ことが必要なる。このような設計を行った場合、重合速度が低下し発熱量の低くなる重合後期においては、反応器の有する最大冷却能力より遥かに低い除熱量で運転することが必要となり生産効率に劣るという課題を有する。
【0005】
また、特許文献2に提案された方法においては、マレイミド単量体とオレフィン単量体の重合中にマレイミド単量体を追加することでマレイミド・オレフィン共重合体の共重合組成を制御しており、該方法でも単量体やラジカル重合開始剤の消費に伴い、重合速度が経時的に低下していくため、やはり最も発熱量の大きい重合初期に合わせて反応器の冷却能力を設計することが必要となり、この場合も重合速度が低下し発熱量の低くなる重合後期においては、反応器の有する最大冷却能力より遥かに低い除熱量で運転することが必要となり生産効率に劣るという課題を有する。
【0006】
そして、反応器の冷却能力を効率よく最大限に利用することにより生産効率に優れる製造方法とするには、重合初期から重合後期まで発熱量が安定している重合、いわゆる等速重合を行うことが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、重合速度を一定とすることで反応器の冷却能力を効率的に使用可能とすることにより、より生産効率に優れるマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マレイミド・オレフィン共重合体を製造する際、特定のラジカル重合開始剤を組み合わせて用い、重合反応途中で重合温度を昇温することにより重合時間によらず重合速度は一定となり、反応器の冷却能力を効率的に使用した生産効率に優れるマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法となることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
即ち、本発明は、炭素数2〜4個のオレフィン単量体及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体の重合を行うに際し、10時間半減期温度の差が5〜15℃の範囲内にある少なくとも2種類のラジカル重合開始剤を用い、重合反応途中で重合温度を昇温し重合反応を行うことを特徴とするマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法に関するものである。
【0010】
【化1】

(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法は、炭素数2〜4個のオレフィン単量体及び上記一般式(1)で示されるマレイミド単量体を、10時間半減期温度の差が5〜15℃の範囲内にある少なくとも2種類のラジカル重合開始剤を用い、重合反応途中で重合温度を昇温し重合反応を行う製造方法に関するものである。
【0012】
本発明に用いられる炭素数2〜4個のオレフィン単量体としては、該範疇に属するオレフィン単量体であれば如何なるものも用いることが可能であり、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン等が挙げられ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れるマレイミド・オレフィン共重合体が得られることからイソブテンであることが好ましい。また、該オレフィン単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0013】
本発明に用いられるマレイミド単量体としては、上記一般式(1)で示されるマレイミド単量体であれば如何なるものを用いることも可能である。ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基を示し、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えばシクロブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。そして、炭素数が6を越えるアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基である場合、排除体積効果が大きく共重合反応が進行し難くマレイミド・オレフィン共重合体を得ることが困難となる。該マレイミド単量体としては、例えばマレイミド単量体、N−メチルマレイミド単量体、N−エチルマレイミド単量体、N−プロピルマレイミド単量体、N−ブチルマレイミド単量体、N−ヘキシルマレイミド単量体、N−シクロプロピルマレイミド単量体、N−シクロブチルマレイミド単量体、N−シクロヘキシルマレイミド単量体、N−フェニルマレイミド単量体等が挙げられ、その中でも、容易に耐熱性、機械特性に優れたマレイミド・オレフィン共重合体が得られることからN−フェニルマレイミド単量体が好ましい。また、該マレイミド単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
そして、本発明により製造されるマレイミド・オレフィン共重合体の具体的例示としては、例えばマレイミド・エチレン共重合体、マレイミド・1−ブテン共重合体、マレイミド・イソブテン共重合体、N−メチルマレイミド・エチレン共重合体、N−メチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−エチルマレイミド・エチレン共重合体、N−エチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−エチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・エチレン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・エチレン共重合体、N−フェニルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体等を挙げることができ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れるマレイミド・オレフィン共重合体となることからN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体であることが好ましい。
【0015】
本発明により得られるマレイミド・オレフィン共重合体は、耐熱性及び機械特性にも優れるマレイミド・オレフィン共重合体となることから、該マレイミド単量体残基単位量55〜65モル%を含有するマレイミド・オレフィン共重合体であることが好ましい。また、成形性、機械特性、色相等に優れるものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCという)を用い、N−メチルピロリドンを溶媒とし40℃の温度で測定した際の標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)が、1×10〜3×10であることが好ましい。
【0016】
また、該マレイミド単量体と該オレフィン単量体の共重合反応を行う際のマレイミド単量体とオレフィン単量体の割合としては、マレイミド・オレフィン共重合体が得られる限りにおいて制限はなく、その中でも特に生産効率よく高分子量のマレイミド・オレフィン共重合体の製造が可能となることから、マレイミド単量体:オレフィン単量体=1:0.7〜1:2(モル比)であることが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法は、重合開始剤として10時間半減期温度の差が5〜15℃の範囲内にある少なくとも2種類のラジカル重合開始剤を組み合わせて用い、重合反応途中で重合温度を昇温し反応を行うことにより、重合速度が一定である製造方法となることを特徴とするものである。ここで、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度とは、ベンゼン若しくはトルエン中0.05〜0.10モル/リットルの濃度において測定することが可能である。また、重合速度が一定になるとは、仕込量に対してマレイミド単量体が80%重合するまでの間において、1時間当たりのオレフィン単量体とマレイミド単量体の合計反応量の最小値(A)と最大値(B)の比、A/Bが0.6以上(モル比)であることを意味する。
【0018】
そして、本発明におけるラジカル重合開始剤としては、特に安定的な生産効率に優れたマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法となることから10時間半減期温度が40〜90℃であるラジカル重合開始剤を10時間半減期温度の差が5〜15℃の範囲内で組み合わせて用いることが好ましく、該ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイルパ−オキサイド(74℃)、4−メチルベンゾイルパ−オキサイド(71℃)、ラウロイルパ−オキサイド(62℃)、オクタノイルパ−オキサイド(62℃)、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(59℃)、t−ブチルパーオキシネオデカネ−ト(46℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(53℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(55℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(65℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(72℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(70℃)等の有機過酸化物;2.2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(51℃)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(67℃)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(65℃)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(88℃)等のアゾ系開始剤を挙げることができ(( )内は10時間半減期温度を示す。)、その中でも特にt−ブチルパーオキシピバレート(55℃)とラウロイルパ−オキサイド(62℃)の組み合わせ、ラウロイルパ−オキサイド(62℃)とt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(70℃)の組み合わせ、が好ましい。
【0019】
これらラジカル重合開始剤は、10時間半減期温度の差が5〜15℃の範囲内であることにより、重合発熱が重合時間によらず一定となり、反応器の冷却能力を効率的に使用することが可能となる。これらラジカル重合開始剤の添加時期としては、昇温前、昇温中、反応中に適宜添加すればよく、これらラジカル重合開始剤を同時に、又は分割して添加してもよい。
【0020】
ここで、10時間半減期温度の差が5℃未満(ラジカル重合開始剤の単独使用の場合を含む。)である場合、重合反応の後期における発熱量が低下し、反応器の冷却能力を効率よく利用することが出来なくなることから生産効率よくマレイミド・オレフィン共重合体を製造することが困難となる。一方、10時間半減期温度の差が15℃を越える場合、重合反応初期又は後期のいずれかに偏った発熱が見られるため、反応器の冷却能力を効率よく利用することが出来なくなることから生産効率よくマレイミド・オレフィン共重合体を製造することが困難となる。
【0021】
また、重合温度としては特に生産効率に優れた製造法となることから40〜120℃の範囲であることが好ましく、特に重合発熱が重合時間によらず一定となり、反応器の冷却能力を効率的に使用することが可能となる製造方法となることから重合反応途中で重合温度を昇温する際の昇温差範囲は5〜20℃であることが好ましい。ここで、重合反応途中で重合温度の昇温を行わない場合、重合速度が一定とならず効率的にマレイミド・オレフィン共重合体を製造することが困難となる。
【0022】
本発明の製造方法においては重合溶剤を用いることが可能であり、該重合溶媒としては、ラジカル重合反応が可能な重合溶剤であれば公知の重合溶剤を用いることができ、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキセンオキシド等の環状エーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エステル類又は芳香族溶媒とアルコ−ルの混合溶媒等が挙げられる。また、重合溶剤量としては、該オレフィン及び該マレイミド単量体の総単量体量に対して2〜5倍の重量であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の製造方法においては、マレイミド・オレフィン共重合体の分子量を調節する際には、単量体濃度、ラジカル重合開始剤濃度、重合温度等の条件設定により調整することが可能である。また、連鎖移動剤の添加により調整してもよく、そのような連鎖移動剤としては、例えばラウリルメルカプタン、硫黄等の硫黄化合物;アミン、尿素等の窒素化合物;ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;α−メチルスチレンのダイマー等が例示できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造法により、反応器の冷却能力を有効利用し、効率よくマレイミド・オレフィン共重合体を製造することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
〜1時間あたりの単量体反応量の定量および得られた共重合体の構造確認〜
反応器中から1時間毎にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、商品名GC−9A)により未反応単量体量の測定を行った。また、サンプリングにより得られた共重合体の構造確認をH−NMR(日本電子製、商品名JSX)の測定により行った。未反応単量体量および共重合体の構造より1時間当たりのオレフィン単量体およびマレイミド単量体の反応量を算出した。
【0027】
〜重量平均分子量(Mw)の測定〜
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒としてGPC(東ソー株式会社製、商品名HLC−8020GPC)を用いて40℃で測定し、得られた溶出曲線により標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0028】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、オレフィン導入管、ラジカル重合開始剤導入管、温度計、サンプリング管および脱気管を装着したオートクレーブ中にN−フェニルマレイミド327g(1.89モル)および重合溶剤としてメチルエチルケトン603gを仕込み、30℃で10分間攪拌溶解した。30℃で20分間窒素置換した後、オレフィン導入管から液化イソブテン103g(1.84モル)を導入し、5分間攪拌を行った。その後、ラジカル重合開始剤導入管からラジカル重合開始剤として72wt%t−ブチルパーオキシピバレート0.6gおよびラウロイルパーオキサイド0.8gを添加した後、60℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始2時間後より0.5時間かけて70℃まで昇温し、さらに1.5時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0029】
反応器中から1時間毎にサンプリングして、ガスクロマトグラフィーにより未反応単量体量の測定およびH−NMRにより得られた共重合体の構造確認を行い、1時間毎のN−フェニルマレイミドとイソブテンの合計反応量を算出した。その結果、該合計反応量の最小値(A)と最大値(B)の比、A/Bが0.75(モル比)と重合速度が一定となり、重合速度の制御性に優れていた。表2に重合中のN−フェニルマレイミドの反応量、イソブテンの反応量、それぞれの合計反応量を示す。
【0030】
重合反応終了後、該重合溶液を大量のメタノールに加えてN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を沈澱させ、100℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー370gを回収した。
【0031】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造確認及び重量平均分子量の測定を行ったところ、N−フェニルマレイミド残基単位61モル%を含有し、Mw140000を有するものであった。 得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表3に示す。
【0032】
実施例2
実施例1と同様のオートクレーブ中にN−フェニルマレイミド327g(1.89モル)および重合溶剤としてメチルエチルケトン603gを仕込み、30℃で10分間攪拌溶解した。30℃で20分間窒素置換した後、オレフィン導入管から液化イソブテン103g(1.84モル)を導入し、5分間攪拌を行った。その後、ラジカル重合開始剤導入管からラジカル重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.8g及び90wt%t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.7gを添加した後、70℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始2時間後より0.5時間かけて80℃まで昇温し、さらに1.5時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0033】
反応器中から1時間毎にサンプリングして、ガスクロマトグラフィーにより未反応単量体量の測定およびH−NMRにより得られた共重合体の構造確認を行い、1時間毎のN−フェニルマレイミドとイソブテンの合計反応量を算出した。その結果、該合計反応量の最小値(A)と最大値(B)の比、A/Bが0.77(モル比)と重合速度が一定となり、重合速度の制御性に優れていた。表2に重合中のN−フェニルマレイミドの反応量、イソブテンの反応量、それぞれの合計反応量を示す。
【0034】
重合反応終了後、該重合溶液を大量のメタノールに加えてN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を沈澱させ、100℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー330gを回収した。
【0035】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造確認及び重量平均分子量の測定を行ったところ、N−フェニルマレイミド残基単位62モル%を含有し、Mw130000を有するものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表3に示す。
【0036】
比較例1
ラジカル重合開始剤としてラジカル重合開始剤として72wt%t−ブチルパーオキシピバレート0.6gおよびラウロイルパーオキサイド0.8gの代わりに72wt%t−ブチルパーオキシピバレート0.6gとし、重合温度を60℃一定とし5時間重合した以外は、実施例1と同様に重合を実施した。表4に重合条件を示す。
【0037】
反応器中から1時間毎にサンプリングして、ガスクロマトグラフィーにより未反応単量体量の測定およびH−NMRにより得られた共重合体の構造確認を行い、1時間毎のN−フェニルマレイミドとイソブテンの合計反応量を算出した。その結果、該合計反応量の最小値(A)と最大値(B)の比、A/Bが0.32(モル比)と重合速度が一定とならず、重合速度の制御性に劣るものであった。表5に重合中のN−フェニルマレイミドの反応量、イソブテンの反応量、それぞれの合計反応量を示す。
【0038】
重合反応終了後、該重合溶液を大量のメタノールに加えてN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を沈澱させ、100℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー328gを回収した。
【0039】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造確認及び重量平均分子量の測定を行ったところ、N−フェニルマレイミド残基単位62モル%を含有し、Mw160000を有するものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表6に示す。
【0040】
比較例2
重合温度を60℃一定とし4時間重合した以外は、実施例1と同様に重合を実施した。表4に重合条件を示す。
【0041】
反応器中から1時間毎にサンプリングして、ガスクロマトグラフィーにより未反応単量体量の測定およびH−NMRにより得られた共重合体の構造確認を行い、1時間毎のN−フェニルマレイミドとイソブテンの合計反応量を算出した。その結果、該合計反応量の最小値(A)と最大値(B)の比、A/Bが0.48(モル比)と重合速度が一定とならず、重合速度の制御性に劣るものであった。表5に重合中のN−フェニルマレイミドの反応量、イソブテンの反応量、それぞれの合計反応量を示す。
【0042】
重合反応終了後、該重合溶液を大量のメタノールに加えてN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を沈澱させ、100℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー320gを回収した。
【0043】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造確認及び重量平均分子量の測定を行ったところ、N−フェニルマレイミド残基単位62モル%を含有し、Mw150000を有するものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表6に示す。
【0044】
比較例3
ラジカル重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.8g及び90wt%t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.7gの代わりに90wt%t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを反応前に0.7g、反応開始2時間後に更に0.7gを添加した以外は、実施例2と同様に重合を実施した。表4に重合条件を示す。
【0045】
反応器中から1時間毎にサンプリングして、ガスクロマトグラフィーにより未反応単量体量の測定およびH−NMRにより得られた共重合体の構造確認を行い、1時間毎のN−フェニルマレイミドとイソブテンの合計反応量を算出した。その結果、該合計反応量の最小値(A)と最大値(B)の比、A/Bが0.38(モル比)と重合速度が一定とならず、重合速度の制御性に劣るものであった。表4に重合中のN−フェニルマレイミドの反応量、イソブテンの反応量、それぞれの合計反応量を示す。
【0046】
重合反応終了後、該重合溶液を大量のメタノールに加えてN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を沈澱させ、100℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー338gを回収した。
【0047】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造確認及び重量平均分子量の測定を行ったところ、N−フェニルマレイミド残基単位62モル%を含有し、Mw120000を有するものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表6に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2〜4個のオレフィン単量体及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体の重合を行うに際し、10時間半減期温度の差が5〜15℃の範囲内にある少なくとも2種類のラジカル重合開始剤を用い、重合反応途中で重合温度を昇温し重合反応を行うことを特徴とするマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【化1】

(ここで、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項2】
t−ブチルパーオキシピバレートとラウロイルパ−オキサイド、又は、ラウロイルパ−オキサイドとt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、とをラジカル重合開始剤として用いることを特徴とする請求項1に記載のマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項3】
重合反応途中で重合温度を5〜20℃の範囲内で昇温することを特徴とする請求項1又は2に記載のマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項4】
オレフィン単量体がイソブテンであり、マレイミド単量体がN−フェニルマレイミドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−303352(P2008−303352A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153855(P2007−153855)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】